JP6093273B2 - ペナルティ算出方法、ペナルティ算出器、及びデジタルコヒーレント光伝送システム - Google Patents

ペナルティ算出方法、ペナルティ算出器、及びデジタルコヒーレント光伝送システム Download PDF

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Description

本発明は、デジタルコヒーレント光伝送システムにおける線形の信号劣化要因によるペナルティを算出するペナルティ算出方法、ペナルティ算出器、及びデジタルコヒーレント光伝送システムに関する。
近年、コヒーレント伝送方式にデジタル信号処理技術を適用したデジタルコヒーレント光伝送方式の研究開発が進み、一部導入が始まっている。本方式ではまず、受信光信号をコヒーレント検波により電気信号に変換する。さらに、アナログ/デジタル変換器によりデジタル信号に変換しデジタル信号処理を施した後信号データを識別する(例えば非特許文献1を参照)。 ここでデジタル信号処理において、信号の偏波分離、偏波・波長分散補償、波形歪補償、周波数・位相オフセット補償などを行う(非特許文献2を参照)。通常、信号の偏波分離及び偏波分散補償を行うために線形等化器が適用され、伝送路上で発生するその他の線形的な波形歪みも同時に補償される。この時、トランスバーサルフィルタのタップ係数を動的に制御するアルゴリズムにより線形等化器の応答は信号の時間変動に応じて適応的に決まる。例えばCMA(Constant Modulus Algorithm)により信号強度を一定にするようタップ係数を制御するアルゴリズムが挙げられる。これにより、偏波分離及び偏波分散補償を行うと同時に、伝送路上の光増幅器で付加されるASE雑音との干渉や、光信号を波長単位で方路設定することで高品質に転送する機能を有する光ノードを信号が多段に通過する際に波長選択デバイスに起因して発生する信号帯域狭窄化、波長選択デバイスの多ポートから漏れこむクロストークとの干渉による波形歪みが補償され線形信号劣化に対する耐力が向上する。
このように、デジタルコヒーレント光伝送方式において線形信号劣化が信号品質に及ぼす影響はデジタル信号処理内の線形等化器の応答に依存すると考えられる。しかしながら、線形の信号劣化要因によるペナルティに関する従来の算出方法は、例えば、非特許文献3に示すように、線形信号劣化に対する線形等化器の応答を考慮したモデルではなかった。このため、復調処理後の信号の状態とペナルティの関係が物理的に把握されていなかった。また、システム設計におけるパラメータ最適化の際、多様な伝送パラメータに対するペナルティ算出には毎回復調処理が必要であり、出力されるデータサンプルの識別結果を基にペナルティを算出していた。
D. S. Ly-Gagnon, et al., "Coherent Detection of Optical Quadrature Phase-Shift Keying Signals With Carrier Phase Estimation", Journal of Lightwave Technology, vol.24, no.1 (2006) Seb J. Savory, "Digital filters for coherent optical receivers," Optics Express, vol. 16, no. 2, pp. 804-817 (2008) Y.Sakamaki et al., "Evaluation of optical filtering penalty in digital coherent detection system" IEICE ComEX vol.1, no.2,pp.54-59
上述の従来の方法では信号品質劣化の程度を定量的に把握することは可能だが、復調処理後の信号状態とペナルティの関係を物理的に把握できない。この理由は、多種多様な線形信号劣化に対して、線形等化器の応答も多種多様になるため、あらゆる条件でもその応答を表す解析的あるいは近似的な定式化ができないためである。そのため、伝送システムにおけるパラメータ最適化の指針を確立することが困難である。これより、パラメータ最適化において多様な伝送パラメータに対するペナルティを算出する場合には、伝送条件を変えるたびに個別に定式化を行うか、もしくは毎回復調処理やデータ識別により算出しなければならなかった。そのため、試行錯誤的に伝送システムのパラメータを決定せざるを得ず、デジタルコヒーレント方式の方式設計に莫大な時間を要する、といった課題があった。
上述の課題を鑑み、本発明は、デジタルコヒーレント光伝送システムにおいて受信機内の線形等化器の周波数特性を考慮したモデル化を行うことにより簡易にペナルティを算出するペナルティ算出方法、ペナルティ算出器、及びデジタルコヒーレント光伝送システムを提供することを目的とする。
上述の課題を鑑み、本発明に係るペナルティ算出方法は、デジタルコヒーレント光伝送システムにおいて、光ノードを含む伝送路で発生する線形の信号劣化によるペナルティの算出方法であって、光ノードが持つ周波数特性と信号劣化を補償する線形等化器の周波数特性の積が一定の特性となるモデルを適用し、光ノードの周波数特性と線形等化器の周波数特性との積を既知情報として付与し、光ノードの周波数特性と線形等化器の周波数特性との積に基づいて、線形の信号劣化によるペナルティを算出することを特徴とする。
本発明に係るペナルティ算出器は、デジタルコヒーレント光伝送システムにおいて、光ノードを含む伝送路で発生する線形の信号劣化によるペナルティを算出するペナルティ算出器であって、光ノードが持つ周波数特性と信号劣化を補償する線形等化器の周波数特性の積が一定の特性となるモデルを適用し、光ノードの周波数特性と線形等化器の周波数特性との積を既知情報として入力する既知情報入力部と、光ノードの周波数特性と線形等化器の周波数特性との積に基づいて、線形の信号劣化によるペナルティを算出するペナルティ算出部とを備えることを特徴とする。
本発明に係るデジタルコヒーレント光伝送システムは、光送信機、伝送路、光ノード、光増幅器、及びデジタルコヒーレント受信機から構成され、伝送路で発生する線形の信号劣化を線形等化器で補償するデジタルコヒーレント光伝送システムであって、光ノードの周波数特性と線形等化器の周波数特性との積に基づいて、線形の信号劣化によるペナルティを算出するペナルティ算出器を設け、ペナルティ算出器で予測されたペナルティを基に、光ノード及び光増幅器の配置を最適化することを特徴とする。
本発明によれば、受信機内の線形等化器の周波数特性を考慮したモデル化を行うことにより、復調処理を行うことなく、ペナルティを算出できる。これにより、復調処理後の信号状態とペナルティの関係を記述でき、伝送システムのパラメータを最適化する指針を容易に得ることができ、システム設計にかかる作業時間を大幅に削減できる。
本発明が適用できるデジタルコヒーレント光伝送システムの説明に用いるブロック図である。 適用するモデルの妥当性の検証に用いるグラフである。 本発明の第1の実施形態に係るデジタルコヒーレント光伝送システムの説明に用いるブロック図である。 本発明の第1の実施形態に係るデジタルコヒーレント光伝送システムの説明に用いるフローチャートである。 本発明の第2の実施形態に係るデジタルコヒーレント光伝送システムの説明に用いるブロック図である。 本発明の第2の実施形態に係るデジタルコヒーレント光伝送システムの説明に用いるフローチャートである。 フィルタリングペナルティのシミュレーション結果を示すグラフである。 本発明の第3の実施形態に係るデジタルコヒーレント光伝送システムの説明に用いるブロック図である。 本発明の第3の実施形態に係るデジタルコヒーレント光伝送システムの説明に用いるフローチャートである。 クロストークペナルティのシミュレーション結果を示すグラフである。 本発明の第4の実施形態に係るデジタルコヒーレント光伝送システムの説明に用いるブロック図である。 本発明の第4の実施形態に係るデジタルコヒーレント光伝送システムにおけるペナルティ算出器の説明に用いるブロック図である。 本発明の第4の実施形態に係るデジタルコヒーレント光伝送システムの説明に用いるフローチャートである。 デジタルコヒーレント光伝送システムにおけるフィルタリングペナルティのシミュレーション結果を示すグラフである。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。まず、本発明の実施形態の説明に先立ち、本発明が適用できるデジタルコヒーレント光伝送システムについて説明する。
図1は、本発明が適用できるデジタルコヒーレント光伝送システムの構成を示すブロック図である。図1に示すように、本発明が適用できるデジタルコヒーレント光伝送システムは、光送信機11と、伝送路12と、デジタルコヒーレント受信機13とから構成される。
伝送路12は、光ファイバ21、光ノード22、光増幅器23を含む。光ノード22は、光信号を波長単位で方路設定することにより高品質に転送する機能を有する。デジタルコヒーレント受信機13は、O/E(Optical to Electronic)変換部31、A/D(Analog to Digital)変換部32、デジタル信号処理部33、データ識別部34を含む。O/E変換部31は、伝送路12を介して受信した光送信機11からの光信号をコヒーレント検波により電気信号に変換する。A/D変換部32は、O/E変換部31からの信号を、デジタル信号に変換する。デジタル信号処理部33は、信号の偏波分離、偏波・波長分散補償、波形歪補償、周波数・位相オフセット補償などを行う。デジタル信号処理部33は、線形的な波形歪みを補償する線形等化器を含んでいる。データ識別部34は、デジタル信号処理部33でデジタル信号処理を施した信号から、データを識別する
なお、実際の伝送路は中継系となっているため、破線で囲んで示す伝送路12の枠内を1スパンとし、それを複数縦続する周期的な構造が一般的であるが、以降では簡単のため、伝送路12が1スパンのみの構成を考える。ただし、本発明は、多スパン中継系においても適用可能である。また、光送信機11の送信信号スペクトルをS(ω)、伝送路12の周波数特性として光ノード22内の波長選択デバイスが持つ周波数特性をH(ω)、光増幅器23で付加されるASE雑音スペクトルをASE(ω)、デジタル信号処理部33にある線形等化器の周波数特性をH(ω)とした。伝送路12の周波数特性には光ファイバ21が持つ周波数特性により波長分散が発生するが、デジタルコヒーレント受信機13内のデジタル信号処理部33で波長分散は完全に補償されるとして、その影響を考慮していない。
図1に示すデジタルコヒーレント光伝送システムにおいて、デジタル信号処理部33の線形等化器は、線形信号劣化要因のうちASE雑音の影響が支配的な場合、ASE雑音の影響を低減するフィルタとして動作する。また、ASE雑音の影響が無視できる場合、光ノード22の周波数特性H(ω)とデジタル信号処理部33の線形等化器の周波数特性Hd(ω)との積は、(Hd(ω)×H(ω)=1)となり、伝送路12の周波数特性の影響をデジタル信号処理部33の線形等化器で補償する。
以上から、特定の受信OSNR(Optical Signal-to-Noise Ratio)において、伝送路と線形等化器の周波数特性の積F(ω)(F(ω)=Hd(ω)×H(ω))が、光ノードの周波数特性H(ω)に依らず一定の特性となるモデルを考えることができる。
モデルの妥当性を検証するため、図2に、伝送路と線形等化器の周波数特性の積F(ω)の周波数特性を示す。ここでは、信号変調方式をPDM−QPSK(Polarization Division Multiplexed Quadrature Phase Shift Keying)、光ノードの周波数特性H(ω)を2次のスーパーガウス関数、受信OSNRを17dB、線形等化器のタップ長を「13」、とした。横軸を周波数、縦軸を振幅とした。そして、ノードが持つ透過率特性(周波数特性H(ω)の絶対値2乗)の特徴量である3dB帯域幅をパラメータとして、周波数35GHz及び40GHzの二つのケースでシミュレーションを行った。図2に示す結果から、伝送路と線形等化器の周波数特性の積F(ω)は、光ノードの周波数特性H(ω)に依らず一定の特性となることが分かり、モデルの妥当性を確認した。また図2では、伝送路と線形等化器の周波数特性の積F(ω)に対する近似曲線としてルートレイズドコサイン(二乗余弦の式で表される関数)でフィッティングしている様子を示す。このように、ルートレイズドコサイン(RRC)の関数でフィッティングすることにより、簡易にペナルティを推定することができる。
なお、ここでは、伝送路と線形等化器の周波数特性の積F(ω)に対する近似曲線としてルートレイズドコサインでフィッティングしている。この伝送路と線形等化器の周波数特性の積F(ω)の周波数特性の近似曲線は、ルートレイズドコサイン以外の曲線で近似しても良い。
ここで、ペナルティとは、信号劣化がない場合の信号品質に対する、信号劣化要因による信号品質の減少量である。例えば、信号劣化がない場合のQ値(信号品質を表す指標)に対する、信号劣化要因によるQ値の減少量をQペナルティと言う。Q値およびQペナルティはdB単位で表すことが多い。例えば、信号劣化が無い場合のQ値が10dBで、信号劣化がある場合のQ値が8dBとすると、Qペナルティは2dBになる。
以下の説明では、信号劣化要因がフィルタリング、クロストークである場合のQペナルティを、それぞれフィルタリングペナルティ、クロストークペナルティとしている。
以上のように、デジタル信号処理部33の線形等化器において、伝送路12上で発生する線形的な波形歪みが補償されることを考慮すると、データ識別部34でのデータ識別時点では、伝送路と線形等化器の周波数特性の積F(ω)は、光ノード22の周波数特性H(ω)に係わらず、一定の特性になることが確認された。これを用いてペナルティを算出すれば、線形信号劣化に対する線形等化器の応答を考慮したモデルでペナルティを算出できるため、復調処理後の信号の状態とペナルティの関係を物理的に把握できる。そして、復調処理を行うことなく、ペナルティを算出することで、システム設計におけるパラメータを最適化することができる。
次に、本発明の第1の実施形態について説明する。図3は、第1の実施形態に係るデジタルコヒーレント光伝送システムの例を示すブロック図である。図3において、光送信機111、伝送路112、デジタルコヒーレント受信機113は、図1における、光送信機11、伝送路12、デジタルコヒーレント受信機13に対応している。また、光ファイバ121、光ノード122、光増幅器123、O/E変換部131、A/D変換部132、デジタル信号処理部133、データ識別部134は、図1における、光ファイバ21、光ノード22、光増幅器23、O/E変換部31、A/D変換部32、デジタル信号処理部33、データ識別部34に対応している。
この実施形態においては、ペナルティ算出器114は、既知情報入力部141と、ペナルティ算出部142とを有している。既知情報入力部141には、既知情報として、伝送路と線形等化器の周波数特性の積F(ω)が与えられる。
図4は、本発明の第1の実施形態におけるペナルティ算出処理を示すフローチャートである。図4において、既知情報入力部141には、既知情報として、伝送路と線形等化器の周波数特性の積F(ω)が付与される(ステップS101)。このとき、特定のOSNR条件に対する伝送路と線形等化器の周波数特性の積は既知としている。
その後、ペナルティ算出部142は、伝送路と線形等化器の周波数特性の積F(ω)を用いて、各々の線形信号劣化要因に応じたペナルティ算出方法により、線形信号劣化要因に対するペナルティを算出する(ステップS102)。なお、ペナルティ算出方法は信号劣化要因ごとに異なるため、本ブロックにおける具体的な算出方法をフィルタリングペナルティ、クロストークペナルティの場合について後述する。
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。図5は、本発明の第2の実施形態によるデジタルコヒーレント光伝送システムの例を示すブロック図である。図5において、光送信機211、伝送路212、デジタルコヒーレント受信機213は、図1における、光送信機11、伝送路12、デジタルコヒーレント受信機13に対応している。また、光ファイバ221、光ノード222、光増幅器223、O/E変換部231、A/D変換部232、デジタル信号処理部233、データ識別部234は、図1における、光ファイバ21、光ノード22、光増幅器23、O/E変換部31、A/D変換部32、デジタル信号処理部33、データ識別部34に対応している。
この実施形態においては、ペナルティ算出器214は、既知情報入力部241と、ペナルティ算出部242とを有している。既知情報入力部241には、既知情報として、伝送路と線形等化器の周波数特性の積F(ω)と、光ノードの周波数特性H(ω)と、ASE雑音スペクトルASE(ω)とが与えられる。
本モデルを適用した場合、データ識別時の信号状態が
F(ω)×(S(ω)+ASE(ω)/H(ω))
と記述できる。上式で、S(ω)×F(ω)が信号部分、F(ω)×ASE(ω)/H(ω)がノイズ部分であるから、以下式(1)
Figure 0006093273
でデータ識別時のSNR(Signal to Noise Ratio(信号対雑音パワー比))を記述できる。
多スパン中継系(スパン数n)では、各光増幅器223で重畳されるASE雑音スペクトルをASE(ω)とすると、受信ASE雑音スペクトルは
(1−H(ω))/(1−H(ω))×ASE(ω)
となる。しかしながら、光ノードの周波数特性H(ω)に依存する係数自体も含めてASE雑音スペクトルをASE(ω)と表記するので多スパン中継系においても式(1)は適用可能である。さらに、光ノードの周波数特性の絶対値は|H(ω)|<1であり、光ノードの周波数特性H(ω)に応じてASE雑音が増幅されSNRが劣化することから、フィルタリングペナルティは等価的にSNR劣化によるペナルティで算出することができる。
Figure 0006093273
したがって、ペナルティ算出部242において、既知情報と(2)式を用いてフィルタリングペナルティの算出が可能である。
図6は、本発明の第2の実施形態におけるペナルティ算出処理を示すフローチャートである。図6において、既知情報入力部241には、既知情報として、伝送路と線形等化器の周波数特性の積F(ω)と、光ノードの周波数特性H(ω)と、ASE雑音スペクトルASE(ω)が付与される(ステップS201)。
ペナルティ算出部242は、伝送路と線形等化器の周波数特性の積F(ω)と、光ノードの周波数特性H(ω)と、ASE雑音スペクトルASE(ω)とを用いて、(2)式により、フィルタリングペナルティを算出する(ステップS202)。
図7にシミュレーション結果と(2)式から算出した結果の比較を示す。計算条件は図2の場合と同様である。横軸をH(ω)の3dB帯域幅、縦軸をペナルティとした。シミュレーション結果と(2)式から算出した結果が一致しており(2)式の妥当性を確認した。
フィルタリングペナルティ算出の具体例を以下に示す。ここでは角周波数ωではなく周波数fを変数とし、(2)式を用いてペナルティを算出する。既知情報は(2)式の要素である、光ノードの周波数特性H(f)、伝送路と線形等化器の周波数特性の積F(f)、ASE雑音スペクトルASE(f)のスペクトル形状である。
まず、光ノードの周波数特性H(f)は、非特許文献3の(1)式を用いて2次のスーパーガウス関数
Figure 0006093273
で与える。ただしB3dBは3dB帯域幅である。
次に、伝送路と線形等化器の周波数特性の積F(f)は、図2に示すルートレイズドコサイン関数であり
Figure 0006093273
で与える。ただしAは正規化係数、βはロールオフ率、Δfはシンボルレートを表す。
また、ASE雑音スペクトルASE(f)を
Figure 0006093273
で与える。ただしNは雑音スペクトル密度であり、本算出例では周波数によらず一定値であると仮定すると、(5)式は(2)式中では分母分子で消去される。
これら(3)〜(5)式を(2)式に代入することでペナルティが算出できる。一例として積分範囲を0≦f≦Δf、B3dB=40GHz、β=0.5、Δf=32GHz、A=1.1とし、刻み幅0.0625GHzで台形公式による数値積分を施すことで、ペナルティ0.8dBを得る。これは図7の横軸40GHzにおける破線の値と等しい。これにより、(2)式によるペナルティ算出の妥当性が確認できる。
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。図8は、本発明の第3の実施形態に係るデジタルコヒーレント光伝送システムの例を示すブロック図である。図8において、光送信機311、伝送路312、デジタルコヒーレント受信機313は、図1における、光送信機11、伝送路12、デジタルコヒーレント受信機13に対応している。また、光ファイバ321、光ノード322、光増幅器323、O/E変換部331、A/D変換部332、デジタル信号処理部333、データ識別部334は、図1における、光ファイバ21、光ノード22、光増幅器23、O/E変換部31、A/D変換部32、デジタル信号処理部33、データ識別部34に対応している。
この実施形態においては、ペナルティ算出器314は、既知情報入力部341と、ペナルティ算出部342とを有している。既知情報入力部341には、既知情報として、伝送路と線形等化器の周波数特性の積F(ω)と、送信信号スペクトルS(ω)と、ASE雑音スペクトルASE(ω)と、クロストーク光スペクトルX(ω)とが与えられる。
本モデルを適用した場合、データ識別時の信号状態が
F(ω)×(S(ω)+X(ω)+ASE(ω))
と記述できるので、信号対クロストークパワー比(XT)は、以下のように記述できる。
Figure 0006093273
また、信号対雑音パワー比(SNR)は、以下のように記述できる。
Figure 0006093273
なお、クロストークペナルティを考える場合、光ノードにおけるフィルタリングは考慮されておらず、つまり、H(ω)=1としている。したがって、SNRは(7)式のようになる。
既知情報(F(ω),S(ω),ASE(ω),X(ω))と、(6)、(7)式により、信号対クロストークパワー比(XT)、信号対雑音パワー比(SNR)が求まるので、正弦波干渉によるクロストークペナルティは、以下のように算出できる。
Figure 0006093273
(Qはε=0の時のQの値)ただし、
Figure 0006093273
Figure 0006093273
また、クロストーク光がガウス雑音であると仮定した場合のクロストークペナルティは、以下のように算出できる。
Figure 0006093273
図9は、本発明の第3の実施形態におけるペナルティ算出処理を示すフローチャートである。図9において、既知情報入力部341には、既知情報として、伝送路と線形等化器の周波数特性の積F(ω)と、送信信号スペクトルS(ω)と、ASE雑音スペクトルASE(ω)と、クロストーク光スペクトルX(ω)とが付与される(ステップS301)。
ペナルティ算出部342は、伝送路と線形等化器の周波数特性の積F(ω)と、送信信号スペクトルS(ω)と、クロストーク光スペクトルX(ω)とから、(6)式により、信号対クロストークパワー比(XT)を算出する。また、ペナルティ算出部342は、伝送路と線形等化器の周波数特性の積F(ω)と、送信信号スペクトルS(ω)と、ASE雑音スペクトルASE(ω)とから、(7)式により、信号対雑音パワー比(SNR)を算出する(ステップS302)。
そして、ペナルティ算出部342は、(8)式により、クロストークペナルティを算出する。また、ガウス近似適用時には、ペナルティ算出部342は、(11)式により、クロストークペナルティを算出する(ステップS303)。
図10に、正弦波干渉によるクロストークペナルティについてシミュレーション結果と(8)式から算出した結果の比較を示す。計算条件は、信号変調方式をPDM−QPSK、受信OSNRを16dB、線形等化器のタップ長を「13」、とした。横軸を正弦波と信号光との周波数差、縦軸をペナルティとした。また、XTを−18dB,−22dBの2つのケースで比較した。シミュレーション結果と(8)式から算出した結果が一致しており(8)式の妥当性を確認した。
クロストークペナルティ算出の具体例を以下に示す。ここでは角周波数ωではなく周波数fを変数とし、(8)式を用いて正弦波干渉によるクロストークペナルティを算出する。既知情報は(6)式および(7)式の要素である、クロストーク光スペクトルX(f)、送信信号スペクトルS(f)、伝送路と線形等化器の周波数特性F(f)、ASE雑音スペクトルASE(f)のスペクトル形状である。
まず、クロストーク光スペクトルX(f)は正弦波干渉であるので、周波数領域では
Figure 0006093273
で与える。ただしPXTはクロストークパワー、ΔfXTは信号とクロストークの中心周波数差である。次に、送信信号スペクトルS(f)は、時間領域でNRZ(Non Return to Zero)矩形信号を仮定すると、周波数領域ではSinc関数で与えられる。また、伝送路と線形等化器の周波数特性F(f)は(4)式で、ASE雑音スペクトルASE(f)は(5)式で与えられる。
一例として、ΔfXT=15GHz、信号対クロストークパワー比−18dB、OSNR=16dBの場合のクロストークペナルティを計算する。まず(6)式よりΔfXT=15Hzのときε=−20.4dBと計算できる。次に(7)式よりSNRを計算するが、これはOSNRが与えられると次の関係式(13)
Figure 0006093273
で結び付けられることが分かっている。ただしBはOSNR算出時のASE雑音帯域、Δfはシンボルレートであり、本計算例ではそれぞれB=12.5GHz、Δf=32GHzを用いる。したがってOSNR=16dBを代入すると、ρ=15.55と計算できる。以上より、(8)式を用いてクロストークペナルティ0.49dBを得る。これは図10の横軸15GHzにおけるXT=−18dBの場合の破線の値と等しい。これにより、(8)式によるペナルティが算出の妥当性が確認された。
上記のペナルティ算出方法については、デジタルコヒーレント光伝送システムにおいてフィルタリングペナルティが支配的な場合に第2の実施形態に示したフィルタリングペナルティ算出方法を適用し、クロストークペナルティが支配的な場合に第3の実施形態に示したクロストークペナルティ算出方法を適用する。
次に、本発明の第4の実施形態について説明する。この実施形態は、データ復調を行うことなく、ペナルティを推定することで、光ノード及び光増幅器の配置を最適化できるようにしたものである。
図11は、デジタルコヒーレント光伝送システムの光ノード及び光増幅器の配置を説明するものである。図11における、光送信機411、伝送路412、デジタルコヒーレント受信機413は、図1における、光送信機11、伝送路12、デジタルコヒーレント受信機13に対応している。また、光ファイバ421、光ノード422、光増幅器423、O/E変換部431、A/D変換部432、デジタル信号処理部433、データ識別部434は、図1における、光ファイバ21、光ノード22、光増幅器23、O/E変換部31、A/D変換部32、デジタル信号処理部33、データ識別部34に対応している。
図11(A)では、光増幅器423は、光ノード422の後段に配置される(ケース1)。ケース1では、信号が光ノード422を通過した後に、光増幅器423によるASE雑音が付加される場合を想定している。図11(B)では、光増幅器423は、光ノード422の前段に配置される(ケース2)。ケース2では、信号に光増幅器423によるASE雑音が付加された後に、光ノード422を通過する場合を想定している。
図11(A)に示すように、ケース1では、データ識別時の信号状態はF(ω)×(S(ω)+ASE(ω)/H(ω))となり、フィルタリングペナルティは式(2)で表される。一方で、図11(B)に示すように、ケース2では、データ識別時の信号状態はF(ω)×(S(ω)+ASE(ω))となり、信号状態が光ノードの周波数特性に依存せず決まりフィルタリングペナルティが発生しない。
図12は、本発明の第4の実施形態におけるペナルティ算出器414を示すものである。ペナルティ算出器414は、既知情報入力部441と、ペナルティ算出部442と、判定部443を有する。既知情報入力部441には、伝送路と線形等化器の周波数特性の積F(ω)を含む既知情報が入力される。ペナルティ算出部442は、既知情報を用いて、ケース1の場合とケース2の場合とでペナルティを算出する。判定部443は、ケース1の場合とケース2の場合とでペナルティを比較し、この比較結果に基づいて、光ノード422及び光増幅器423の配置を最適化する。
図13は、本発明の第4の実施形態に係るデジタルコヒーレント光伝送システムの動作例を示すフローチャートである。ペナルティ算出器414の既知情報入力部441には、伝送路と線形等化器の周波数特性の積F(ω)を含む既知情報が付与される(ステップS401)。
次に、ペナルティ算出部442は、ケース1におけるフィルタリングペナルティを算出し(ステップS402)、また、ケース2におけるフィルタリングペナルティを算出する(ステップS403)。そして、判定部443は、ステップS402で測定されたケース1におけるフィルタリングペナルティと、ステップS403で測定されたケース2におけるフィルタリングペナルティとを比較し(ステップS404)、ペナルティの低いケースに基づいて、光ノード及び光増幅器の配置位置を決定する(ステップS405)。
本実施形態の具体例を以下に示す。ケース1の場合は、(2)式を用いたフィルタリングペナルティ算出例と同様に考えると、B3dB=40GHzのときペナルティ0.8dBとなる。一方でケース2の場合は、フィルタリングペナルティが発生しないため、B3dB=40GHzのときでもペナルティ0dBとなる。ケース1とケース2を比較すると、ケース2の方がペナルティが低くなる。したがって、図11(B)に示したように、光ノード422を光増幅器423の後段に配置するのが最適である。
図14に上記解析の妥当性を示す。計算条件は図2の場合と同様である。ケース1ではフィルタリングペナルティが発生しているのに対し、ケース2では発生していない。これにより、本モデルを適用することで、フィルタリングペナルティは光ノードまたは光増幅器の配置に依存することが分かる。
本実施形態では、フィルタリングペナルティ算出方法を適用することで、発生しうるペナルティを予測し、光ノード及び光増幅器の配置を最適化したシステムを容易に設計することが可能である。
以上説明したように、本発明は、線形信号劣化の変動が小さい時、ないし線形等化器で変動を補償できる場合に限定することで、伝送路と線形等化器の周波数特性の積が一定の周波数特性をとるモデルを適用し、復調せずに線形信号劣化に対するペナルティを算出することができる。
また、本発明における線形信号劣化の種類は、フィルタリング、クロストーク、ASE雑音である。また変動の範囲は、図7を一例とすると、受信OSNR17dB一定、伝送路周波数応答は3dB帯域幅25GHzから60GHzの2次スーパーガウス関数である。また図10を一例とすると受信OSNR16dB一定、正弦波クロストーク−18dBおよび−22dB、信号中心周波数に対する相対周波数差は0GHzから25GHzである。
上記以外の範囲でも、伝送路と線形等化器の周波数特性の積を予め測定しておき、既知情報として付与することで本発明のペナルティ算出方法は利用可能である。
以上説明したように、本発明は、デジタルコヒーレント光伝送システムにおいて、信号品質劣化の物理的要因を解析でき、伝送システムの設計指針や最適化手法を容易に確立することができる。それにより、伝送システムの設計が簡便になる。
11,111,211,311,411:光送信機
12,112,212,312,412:伝送路
13,113,213,313,413:デジタルコヒーレント受信機
114,214,314,414: ペナルティ算出器
21,121,221,321,421:光ファイバ
22,122,222,322,422:光ノード
23,123,223,323,423:光増幅器
31,131,231,331,443:O/E変換部
32,132,232,332,432:A/D変換部
32,133,233,333,433:デジタル信号処理部
34,134,234,334,434:データ識別部
141,241,341,441:既知情報入力部
142,242,342,442:ペナルティ算出部
443 判定部

Claims (6)

  1. デジタルコヒーレント光伝送システムにおいて、光ノードを含む伝送路で発生する線形の信号劣化によるペナルティを算出するペナルティ算出器が実行するペナルティ算出方法であって、
    前記光ノードが持つ周波数特性と前記信号劣化を補償する線形等化器の周波数特性の積が一定の特性となるモデルを適用し、
    既知情報入力部が、前記光ノードの周波数特性と前記線形等化器の周波数特性との積を既知情報として入力する既知情報入力ステップと
    ペナルティ算出部が、前記光ノードの周波数特性と前記線形等化器の周波数特性との積に基づいて、前記線形の信号劣化によるペナルティを算出するペナルティ算出ステップと
    を有し、
    前記既知情報入力ステップでは、前記既知情報入力部が、前記既知情報として、前記光ノードの周波数特性と前記線形等化器の周波数特性との積と共に、光ノードの周波数特性及びASE雑音スペクトルを入力し、
    前記ペナルティ算出ステップでは、前記ペナルティ算出部が、前記光ノードの周波数特性と前記線形等化器の周波数特性との積をF(ω)、前記光ノードの周波数特性をH(ω)、前記ASE雑音スペクトルをASE(ω)とするとき、下式
    Figure 0006093273
    で与えられるデータ識別時の信号対雑音パワー比の劣化によるペナルティにより等価的にフィルタリングペナルティを算出する
    ことを特徴とするペナルティ算出方法。
  2. デジタルコヒーレント光伝送システムにおいて、光ノードを含む伝送路で発生する線形の信号劣化によるペナルティを算出するペナルティ算出器が実行するペナルティ算出方法であって、
    前記光ノードが持つ周波数特性と前記信号劣化を補償する線形等化器の周波数特性の積が一定の特性となるモデルを適用し、
    既知情報入力部が、前記光ノードの周波数特性と前記線形等化器の周波数特性との積を既知情報として入力する既知情報入力ステップと、
    ペナルティ算出部が、前記光ノードの周波数特性と前記線形等化器の周波数特性との積に基づいて、前記線形の信号劣化によるペナルティを算出するペナルティ算出ステップと
    を有し、
    前記既知情報入力ステップでは、前記既知情報入力部が、前記既知情報として、前記光ノードの周波数特性と前記線形等化器の周波数特性との積と共に、送信信号スペクトル、クロストーク光スペクトル、及びASE雑音スペクトルを入力し、
    前記ペナルティ算出ステップでは、前記ペナルティ算出部が、前記光ノードの周波数特性と前記線形等化器の周波数特性との積をF(ω)、前記送信信号スペクトルをS(ω)、前記クロストーク光スペクトルをX(ω)、前記ASE雑音スペクトルをASE(ω)とすると、下式
    Figure 0006093273
    で与えられるデータ識別時の信号対クロストークパワー比と、下式
    Figure 0006093273
    で与えられるデータ識別時の信号対雑音パワー比を用いて、下式
    Figure 0006093273
    で与えられる正弦波干渉によるクロストークペナルティを算出し、
    並びに、下式
    Figure 0006093273
    で与えられる、クロストーク光がガウス雑音であると仮定した場合のクロストークペナルティを算出する
    ことを特徴とするペナルティ算出方法。
  3. 前記光ノードの周波数特性と前記線形等化器の周波数特性との積F(ω)をルートレイズドコサインでフィッティングする
    ことを特徴とする請求項1または2に記載のペナルティ算出方法。
  4. デジタルコヒーレント光伝送システムにおいて、光ノードを含む伝送路で発生する線形の信号劣化によるペナルティを算出するペナルティ算出器であって、
    前記光ノードが持つ周波数特性と前記信号劣化を補償する線形等化器の周波数特性の積が一定の特性となるモデルを適用し、
    前記光ノードの周波数特性と前記線形等化器の周波数特性との積を既知情報として入力する既知情報入力部と、
    前記光ノードの周波数特性と前記線形等化器の周波数特性との積に基づいて、前記線形の信号劣化によるペナルティを算出するペナルティ算出部と
    を備え
    前記既知情報入力部は、前記既知情報として、前記光ノードの周波数特性と前記線形等化器の周波数特性との積と共に、光ノードの周波数特性及びASE雑音スペクトルを入力し、
    前記ペナルティ算出部は、前記光ノードの周波数特性と前記線形等化器の周波数特性との積をF(ω)、前記光ノードの周波数特性をH(ω)、前記ASE雑音スペクトルをASE(ω)とするとき、下式
    Figure 0006093273
    で与えられるデータ識別時の信号対雑音パワー比の劣化によるペナルティにより等価的にフィルタリングペナルティを算出する
    ことを特徴とするペナルティ算出器。
  5. デジタルコヒーレント光伝送システムにおいて、光ノードを含む伝送路で発生する線形の信号劣化によるペナルティを算出するペナルティ算出器であって、
    前記光ノードが持つ周波数特性と前記信号劣化を補償する線形等化器の周波数特性の積が一定の特性となるモデルを適用し、
    前記光ノードの周波数特性と前記線形等化器の周波数特性との積を既知情報として入力する既知情報入力部と、
    前記光ノードの周波数特性と前記線形等化器の周波数特性との積に基づいて、前記線形の信号劣化によるペナルティを算出するペナルティ算出部と
    を備え、
    前記既知情報入力部は、前記既知情報として、前記光ノードの周波数特性と前記線形等化器の周波数特性との積と共に、送信信号スペクトル、クロストーク光スペクトル、及びASE雑音スペクトルを入力し、
    前記ペナルティ算出部は、前記光ノードの周波数特性と前記線形等化器の周波数特性との積をF(ω)、前記送信信号スペクトルをS(ω)、前記クロストーク光スペクトルをX(ω)、前記ASE雑音スペクトルをASE(ω)とすると、下式
    Figure 0006093273
    で与えられるデータ識別時の信号対クロストークパワー比と、下式
    Figure 0006093273
    で与えられるデータ識別時の信号対雑音パワー比を用いて、下式
    Figure 0006093273
    で与えられる正弦波干渉によるクロストークペナルティを算出し、
    並びに、下式
    Figure 0006093273
    で与えられる、クロストーク光がガウス雑音であると仮定した場合のクロストークペナルティを算出する
    ことを特徴とするペナルティ算出器。
  6. 光送信機、伝送路、光ノード、光増幅器、及びデジタルコヒーレント受信機から構成され、前記伝送路で発生する線形の信号劣化を線形等化器で補償するデジタルコヒーレント光伝送システムであって、
    請求項4または5に記載のペナルティ算出器を設け、
    前記ペナルティ算出器で予測されたペナルティを基に、前記光ノード及び前記光増幅器の配置を最適化する
    ことを特徴とするデジタルコヒーレント光伝送システム。
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