JP6091474B2 - ワークの表面加工方法 - Google Patents
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Description
可動円錐板は、当該可動円錐板の円筒状の基部を固定円錐板の軸部に外挿して、固定円錐板に組み付けられており、この状態において、可動円錐板と固定円錐板とは、共通の回転軸回りの相対回転が規制された状態で、回転軸の軸方向に相対移動可能に組み付けられている。
車両用のベルト式無段変速機では、可動円錐板を回転軸の軸方向に移動させて、V溝の幅を変更することで、プライマリプーリとセカンダリプーリにおけるベルトの巻き掛け半径を変更するようになっており、これら可動円錐板と固定円錐板のシーブ面には、ベルトとの間の摩擦力の調整を目的とした溝が設けられている。
そのため、面加工工程ののち、面加工用の工具を溝加工用の工具に交換する手間が必要であるとともに、交換後に溝加工用の工具の位置調整を行う必要があった。
前記工具を切削前のワークの表面に押し当てたのち、前記工具を、前記切削前のワークの表面を基準とした所定の切り込み深さの位置で保持した状態で、前記回転軸の径方向に第1の速度で変位させて、前記ワークの表面を、前記工具の第1の弾性変形に応じた分だけ、前記切削前のワークの表面を基準とした所定の切り込み深さよりも浅く切削する面加工工程と、
前記面加工工程ののち、前記工具を、前記切削前の前記ワークの表面を基準とした前記所定の切り込み深さの位置で保持した状態で、前記回転軸の径方向に前記第1の速度よりも速い第2の速度で変位させて、前記ワークの表面を、前記工具の前記第1の弾性変形よりも小さい第2の弾性変形に応じた分だけ、前記切削前のワークの表面を基準とした所定の切り込み深さよりも浅く切削して溝を形成する溝加工工程と、を備える構成のワークの表面加工方法とした。
そうすると、溝加工工程で工具に作用する反力が小さくなる結果、溝加工工程での工具の弾性変形量が小さくなるので、溝加工工程では、ワーク表面に対する工具の切り込み深さが、工具の弾性変形量が小さくなった分だけ、面加工工程のときよりも深くなる。
ここで、溝加工工程では、切削前のワーク表面を基準とした工具の切り込み深さは面加工工程のときよりも深くなるものの、溝加工工程で切削される前のワーク表面は、既に面加工工程で所定の深さで切削されているので、溝加工工程では、工具の刃先の先端部分でワーク表面を浅く切削することになる。
よって、面加工工程と溝加工工程における工具の弾性変形量の違いを利用して、同一の工具で面加工と溝加工とを行うことができるので、面加工と溝加工とで別の工具を用いる場合よりも、工具の交換や摩耗量の測定、工具の位置調整を頻繁に行う必要なく、溝の切削を行える。
図1は、固定円錐板の表面加工方法を説明する図であり、(a)は、シーブ面141の加工装置での加工対象であるワーク10(固定円錐板)とバイト20(工具)との配置を説明する図であり、(b)は、(a)におけるA−A方向から見たワーク10の正面図であって、シーブ面141に形成される溝1412を説明する図である。
この旋盤によりシーブ面141を切削する際には、ワーク10を中心軸X1回りに回転させた状態で、バイト20に設けたチップ22(刃)を、中心軸X1の軸方向から、シーブ面141に押し当てたのち、チップ22のシーブ面141との接触位置を、中心軸X1の径方向に変位させることで、シーブ面141を研削するようになっている。
チップ22のノーズ221は、先端がR形状となっている。これにより、切削の際にノーズ221がシーブ面141に衝突した場合でも、ノーズ221が欠け難くなっている。
そして、ノーズ221が、加工終了位置P2に到達した時点で、ノーズ221をシーブ面141から離す方向に移動させてシーブ面141の切削を終了するようになっている。
図2は、ワーク10の表面加工方法の流れを説明するフローチャートである。
図3は、シーブ面141の加工過程を説明する断面図であり、(a)は、切削前のシーブ面141と、バイト20が備えるチップ22のノーズ221との位置関係を説明する図であって、切削前のシーブ面141を基準とする所定の切り込み深さhaを説明する図である。図3の(b)は、シーブ面141をチップ22のノーズ221で切削している状態を説明する図であって、切削前のシーブ面141を基準とする所定の切り込み深さhaと、実際の切り込み深さh1との関係を説明する図であり、(c)は、シーブ加工面1411の切削により溝1412を形成している状態を説明する図であって、切削前のシーブ面141を基準とする所定の切り込み深さhaと、実際の切り込み深さh2との関係を説明する図である。
これにより、切削前のシーブ面141が削られて、シーブ加工面1411が表面に露出する。
ここで、チップ22が取り付けられた基部21の基端側は、図示しない駆動機構側の部材で片持ち支持されているので、チップ22が取り付けられた基部21の一端側は、シーブ面141から作用する反力R1で、シーブ面141から離れる方向に弾性的に変位する。
なお、面加工工程においてシーブ面141をチップ22で切削する回数は、1回だけに限定されるものではなく、ノーズ221の加工開始位置P1から加工終了位置P2までの複数回の変位により、シーブ面141の加工開始位置P1から加工終了位置P2までの全面を、ノーズ221により隙間無く切削するようにしても良い。
さらに、この溝加工工程では、ノーズ221を加工開始位置P1から加工終了位置P2まで変位させるときの変位速度(第2の送り速度s2)を、面加工工程でのノーズ221の変位速度(第1の送り速度s1)よりも速くすることで(s2>s1)、面加工工程の結果得られたシーブ加工面1411が、径方向に間隔を開けてノーズ221により削られるようにしている。
これにより、ノーズ221の加工開始位置P1から加工終了位置P2までの1回の変位により、シーブ加工面1411に、中心軸X1の軸方向から見て螺旋状を成す溝1412を形成している。
溝加工工程におけるバイト20の回転軸X1の径方向の第2の送り速度s2を、面加工工程における第1の送り速度s1よりも速くすることで、同じチップ22を使用した場合であっても、切削時のノーズ221の位置を、切削前のシーブ面141を基準とする所定の切り込み深さhaで固定したままで、面加工と溝加工とを行えることを見いだした。
そして、第2の送り速度s2に応じた中心軸X1の径方向の間隔を開けて、溝1412が切削される。
そして、この溝深さ工程に続いて実施されるフィルムラッピング加工工程(ステップ105)では、溝深さ測定工程で測定された溝1412の深さh2に基づいて、フィルムラッピング加工の条件が決定されたのち、決定された加工条件に基づいて、シーブ加工面1411の表面粗さ仕上げと、溝1412深さの調整が行われることになる。
そのため、面加工工程で必要な大きさのチップ22を有するバイト20のように、従来の溝加工工程で使用していたバイトのチップよりも外径の大きなチップを用いて、面加工工程と溝加工工程での面加工と溝加工の両方を実施できる。これにより、チップ22が大きくなった分だけ、チップ22の耐久性が向上するので、フェース面の切削を繰り返すことによるチップ22の摩耗を抑えて、チップ22(バイト20)の交換頻度を減らすことができる。
ノーズ221を切削前のワーク10のシーブ面141に押し当てたのち、ノーズ221を、切削前のワーク10のシーブ面141を基準とした所定の切り込み深さhaの位置で保持した状態で、中心軸X1の径方向に第1の送り速度s1で変位させて、ワーク10のシーブ面141を、シーブ面141への押し当て力に対する反力R1による基部21の弾性変形(第1の弾性変形)に応じた厚みhbの分だけ、切削前のシーブ面141を基準とした所定の切り込み深さhaよりも浅く切削して、シーブ加工面1411を形成する面加工工程(ステップ102)と、
ノーズ221を、面加工工程で得られたシーブ加工面1411に押し立てたのち、ノーズ221を、切削前のワーク10のシーブ面141を基準とした所定の切り込み深さhaの位置で保持した状態で、回転軸X1の径方向に第1の送り速度s1よりも速い第2の送り速度s2で、ワーク10のシーブ面141に押し当てたバイト20の回転軸X1の径方向の外径側から内径側に向けた変位を、少なくとも1回以上行って、ワーク10のシーブ加工面1411を、シーブ加工面1411への押し当て力に対する反力R2による基部21の弾性変形(第2の弾性変形)に応じた厚みhcの分だけ、切削前のシーブ面141を基準とした所定の切り込み深さhaよりも浅く切削して、溝1412を形成する溝加工工程(ステップ103)と、を備えるワークの表面加工方法とした。
そのため、溝加工工程におけるバイト20の回転軸X1の径方向の第2の送り速度s2を、面加工工程における第1の送り速度s1よりも速くすることで、同じチップ22を使用した場合であっても、切削時のノーズ221の位置を、切削前のシーブ面141を基準とする所定の切り込み深さhaで固定したままで、面加工と溝加工とを行うことができる。
さらに、同一のバイト20で面加工と溝加工の両方の加工を行えるので、面加工と溝加工とで別のバイトを用いる場合よりも、長期に亘って精度良く溝を加工することができ、バイトの交換頻度や、バイトの摩耗測定や位置調整の頻度を少なくできる。
特に、チップ22の位置の内径側/外径側への変位と、外径側/内径側への変位とを交互に行う場合には、チップ22の位置を、内径側または外径側への一方向のみに変位させる場合よりも、チップ22の総変位量が少なくなるので、面加工工程と、溝加工工程での加工時間を短くすることができる。
3 回転センタ
10 ワーク
12 軸部
14 シーブ部
141 シーブ面
1411 シーブ加工面
1412 溝
20 バイト
21 基部
22 チップ
221 ノーズ
P1 加工開始位置
P2 加工終了位置
R1、R2 反力
ha、h1、h2 切り込み深さ
s1 第1の送り速度(第1の速度)
s2 第2の送り速度(第2の速度)
Claims (4)
- ワークを回転軸回りに回転させながら、切削用の工具を前記回転軸の軸方向から前記ワークの表面に押し当てたのち、前記工具の位置を、前記回転軸の軸方向と径方向に変位させて、前記ワークの表面を切削するワークの表面加工方法であって、
前記工具を切削前のワークの表面に押し当てたのち、前記工具を、前記切削前のワークの表面を基準とした所定の切り込み深さの位置で保持した状態で、前記回転軸の径方向に第1の速度で変位させて、前記ワークの表面を、前記工具の第1の弾性変形に応じた分だけ、前記切削前のワークの表面を基準とした所定の切り込み深さよりも浅く切削する面加工工程と、
前記面加工工程ののち、前記工具を、前記切削前の前記ワークの表面を基準とした前記所定の切り込み深さの位置で保持した状態で、前記回転軸の径方向に前記第1の速度よりも速い第2の速度で変位させて、前記ワークの表面を、前記工具の前記第1の弾性変形よりも小さい第2の弾性変形に応じた分だけ、前記切削前のワークの表面を基準とした所定の切り込み深さよりも浅く切削して溝を形成する溝加工工程と、を備えることを特徴とするワークの表面加工方法。 - 前記溝加工工程では、
前記ワークの表面に押し当てた前記工具の前記回転軸の径方向の内径側から外径側に向けた変位を、少なくとも1回行って、前記ワークの表面に前記溝を切削することを特徴とする請求項1に記載のワークの表面加工方法。 - 前記溝加工工程では、
前記ワークの表面に押し当てた前記工具の前記回転軸の径方向の外径側/内径側から内径側/外径側に向けた変位と、前記回転軸の径方向の内径側/外径側から外径側/内径側に向けた変位とを、交互に繰り返して、前記ワークの表面に前記溝を切削することを特徴とする請求項1に記載のワークの表面加工方法。 - 前記溝加工工程では、前記回転軸方向から見て、前記ワークの表面に押し当てた前記工具の位置を、前記ワークの回転軸の径方向に前記ワークの直径線に沿って連続して変位させて、前記ワークの表面に渦巻状の溝を形成することを特徴とする請求項1から請求項3の何れか一項に記載のワークの表面加工方法。
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