JP6091316B2 - 振動型駆動装置の速度制御機構、振動型駆動装置、電子機器及び速度制御方法 - Google Patents
振動型駆動装置の速度制御機構、振動型駆動装置、電子機器及び速度制御方法 Download PDFInfo
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Description
この振動型駆動装置は、電磁モータに比べて高トルク密度、高保持トルク、静音であり、電磁ノイズを発生せず、かつその影響を受けない、などの利点を有している。こうした利点を生かしてカメラ用レンズの自動焦点調節装置に使用されているほか、ロボットや精密位置決めステージなどの分野への適用を目的とした研究開発が盛んに行われている。
その理由は、モータの設計者が意図しない振動は可動子の駆動に寄与しないだけでなく、可動子の速度変動を発生させてしまう可能性があるためである。
これらについて、エネルギ効率や可動子の駆動精度の観点から考えると、圧電素子に印加する電圧の周波数(以下、駆動周波数と呼ぶ)のみにより振動子が振動することが望ましい。
しかし、実際には、振動子と可動子には非線形性を有する接触力と摩擦力が作用するため、両者に駆動周波数と異なる周波数の振動(以下、不要振動と呼ぶ)が生じることがある。
この不要振動の周波数が可聴域の周波数となると、鳴きと呼ばれる騒音となる。さらに、不要振動の発生により駆動トルクが低下してしまうという問題が生じる。
経験的には、駆動周波数や、圧電素子に印加する二相の電圧の位相差、電圧の振幅などの駆動パラメータに依存して不要振動の発生に変化があることが知られている。そのため、駆動パラメータを制御することで不要振動の発生を防止することが試みられている。
例えば、特許文献1では、駆動周波数を駆動パラメータとする可動子の速度制御系において、駆動周波数に依存する不要振動を防止するための技術が記されている。
そこでは、振動型駆動装置から可聴音が発生してしまう駆動周波数の帯域をあらかじめ記録する。
そして、目標速度を実現するために必要な駆動周波数が可聴音の発生帯域に含まれる場合には、速度制御から駆動周波数を一定とする制御に制御方法を切り替えている。
駆動周波数により可動子の速度が変化するため、速度制御から駆動周波数を一定とする制御に切り替えると可動子の速度を制御できなくなってしまう。
そのため、制御可能な可動子の速度の範囲は、対応する駆動周波数が可聴音の発生帯域外となるような範囲に限られる。
これにより振動型駆動装置の応答性と駆動精度が制限されるため、自動焦点調節装置やロボット、精密位置決めステージなど、高速・高精度な制御が要求される用途へ上記の特許文献1の技術をそのまま適用することは困難である。
前記振動子に励起された振動波によって発生する摩擦力によって、前記可動子を駆動する振動型駆動装置の速度制御機構であって、
前記可動子の目標速度を入力し、前記可動子の速度を制御する二つ以上の駆動パラメータの組み合わせを出力し、前記駆動パラメータと、前記駆動パラメータを用いて前記振動型駆動装置を駆動した際の前記可動子の速度信号との対応関係を記憶する記憶部と、
前記記憶部から出力される前記記憶部に記憶された前記駆動パラメータのうち、対応する前記速度信号が前記目標速度と一致し、かつ、不要振動の振幅を所定の閾値以下とする前記駆動パラメータの組み合わせを選択する選択部と、
を備えることを特徴とする。
また、本発明の振動型駆動装置の速度制御方法は、振動子に励起された振動波によって発生する摩擦力により、可動子を駆動する振動型駆動装置の速度制御方法であって、
前記可動子の目標速度を入力し、前記可動子の速度を制御する二つ以上の駆動パラメータの組み合わせを出力する工程と、
前記出力された前記駆動パラメータのうち、対応する前記速度信号が前記目標速度と一致し、かつ、不要振動の振幅を所定の閾値以下とする前記駆動パラメータの組み合わせを選択する工程と、
を有することを特徴とする。
すなわち、振動型駆動装置の可動子の速度は、駆動周波数に加えて、2相の電圧の位相差、および電圧の振幅などの独立に制御可能な複数の駆動パラメータにより変化する。
従って、二種類以上からなる駆動パラメータの組み合わせを用いて可動子の速度を制御する場合、ある可動子の目標速度を実現するための組み合わせは複数存在する。
さらに、パラメータの組み合わせにより発生する不要振動の振動振幅が変化する。
このようなことから、不要振動を発生させない組み合わせを用いて目標速度を実現することが可能となることが見出されたものである。以下に、具体的な構成例に基づいて、説明する。
前記振動子に励起された振動波によって発生する摩擦力によって、前記可動子を駆動する。
以下では、円環型の振動型駆動装置に対して本発明の技術を適用した構成例について説明する。
また、そこでは圧電素子に印加する2相の電圧の駆動周波数fと位相差φを駆動パラメータとする。
図1に、本実施形態における例示的な振動型駆動装置の速度制御器(速度制御機構)のブロック線図を示す。
記憶部41は、不図示の上位装置から与えられる可動子の目標角速度ωrefを入力として、これを実現するための駆動周波数fと位相差φの組み合わせの候補を複数出力するテーブルである。
また、記憶部41が出力する候補のうち振幅Astが予め定めた閾値Ast0以上となるものは不要振動を発生させてしまうと考え、選択部42においてこれを駆動パラメータの候補から除外する。
そして、残った候補の中から不要振動の振幅Astが最小となる駆動パラメータを選択して出力する。
まず、処理部421は、駆動周波数fと位相差φの候補の中から振幅Astが所定の閾値Ast0(鳴きによる騒音や駆動トルクの低下が許容可能な不要振動の振幅の上限値)以下となる組み合わせを全て選択する(第1の工程)。
次に、処理部423は、処理部421が出力する組み合わせの中から振幅Astを最小化する組み合わせを一つだけ選択し、出力する(第2の工程)。
ただし、判断部422において振幅Astが閾値Ast0以下となる駆動パラメータが存在しないと判断されると、処理部424は上位装置に対してエラーメッセージを送信し、駆動パラメータの変更を行わない。
これにより、不要振動の振幅を一定値以下とし、かつ可動子の速度を目標速度ωrefに制御する駆動パラメータを演算することが可能となる。
なお、以上で説明した構成例では、不要振動の大きさの指標として可動子の角速度ωの振
動振幅Astを用いるが、定常状態における速度誤差の標準偏差や振動子の振動振幅などを指標として用いてもよい。
[実施例1]
実施例1では可動子の目標角速度ωrefを一定として、図1に示す速度制御器を用いて不要振動を低減する駆動パラメータを演算する振動型駆動装置の速度制御機構及び速度制御方法の構成例について説明する。
まず、本実施例で用いる振動型駆動装置のモデルを導出する。
次に、モデルを用いて速度制御器の記憶部41を作成する。なお、重複を避けるために図1で説明した個所については説明を省略する。
以下では、駆動パラメータに依存して生じる不要振動を再現可能な振動型駆動装置のモデルの導出について説明する。
まず、本実施例で用いる振動型駆動装置の駆動方法について説明する。
次に、モデルを導出するための仮定をおき、さらに、有限要素法を用いて振動子と可動子の運動方程式の導出について説明する。
図3に示すように、振動型駆動装置は振動子1、可動子2、駆動回路3より構成される。ここで、まず振動子1の円周方向をX軸、可動子2の回転軸方向をY軸とする座標系を用いて駆動方法を説明し、次いでモデルの導出について説明する。
モータは振動子1に発生する進行波によって駆動される。
駆動回路3は、振動子1に接着された不図示の圧電素子に電圧を印加することで、振動子1に進行波を発生させる。
このとき、振動子1の表面は楕円運動を行う。
振動子1と可動子2は加圧力によって接触しているため、楕円運動の半径と、楕円の長軸と短軸の比に依存する摩擦力が可動子2に伝達され、可動子2が回転する。
図4において、A相とB相はそれぞれ独立な電圧を印加することが可能な電圧の入力チャネルを表し、各相の添え字の正負の符号は圧電素子の分極の極性を表している。
また、圧電素子はA+相、B+相、A−相、B−相の順で繰り返し配置されており、進行波の波長をλとすると各相のX方向の長さはλ/4となる。
駆動回路3は、本発明の制御器において演算される駆動周波数fと位相差φを入力として、圧電素子のA相とB相に次式(1)、(2)で表される正弦電圧VA、VBを印加する。
(1)
(2)
ここで、V0は印加電圧の振幅、tは時刻とする。振動子1の楕円運動の半径は駆動周波数fに依存し、また、楕円の長軸と短軸の比は位相差φに依存するため、駆動周波数fと位相差φを駆動パラメータとして可動子2の角速度を制御することができる。
(仮定1)振動子をY方向の変位と曲げのみ考慮する一様な梁とする。そして、振動子が円環状であることを考慮して、梁の両端部におけるY方向の変位と曲げおよび速度が常に等しいとする境界条件を設ける。
(仮定2)振動子の減衰係数は剛性係数に比例する。
(仮定3)圧電素子は印加電圧に比例する曲げモーメントを発生する。
(仮定4)圧電素子の質量、剛性、減衰を非考慮とする。
(仮定5)可動子をY軸周りの回転1自由度を持つ剛体とする。
(仮定6)振動子に働く加圧力の大きさは時間と位置によらず一定とする。
(仮定7)振動子と可動子の接触部にはY軸方向の垂直抗力が働き、力の大きさは振動子のY軸方向の変位と速度に比例する。
(仮定8)可動子と振動子の間には、力の大きさが垂直抗力に比例するクーロン摩擦が働く。
また、摩擦力は動摩擦力のみを考慮し、可動子と振動子の表面の相対速度を減少させる方向に働くとする。
ここではまず、有限要素法により振動子の質量行列、剛性行列、減衰行列を導出する。
次に、圧電素子によって生じる分布荷重を質点系に作用する集中荷重に変換し、振動子の運動方程式を導出する。
さらに、可動子の運動方程式を導出し、振動子と可動子の間に働く垂直抗力と摩擦力を導出する。
(3)
また、図4に示す圧電素子の配置と仮定3より、曲げモーメントMA(x)とMB(x)は、進行波の波数nと印加電圧に対する曲げモーメントの比例係数αを用いて、次式(4)、(5)で表せる。
(4)
(5)
ただし、U(x)は、次式(6)を満たす単位ステップ関数である。
(6)
また、振動子の半径をrとすると、仮定1より境界条件は、次式(7)、(8)となる。
(7)
(8)
振動子をm個の微小な要素に分割し、i番目要素の変位をui(t)、たわみ角をθi(t)とする。
そして、i番目要素とi+1番目要素の間の変位y(x,t)を、時刻tに依存する関数wi(t)、位置xに依存する関数L(x)、要素の長さlを用いて、次式(9)、(10)、(11)、(12)のように近似させる。
(9)
(10)
(11)
(12)
ただし、i = mの場合には、wi(t)は上記式(7)と式(8)に示す境界条件より、次式(13)となる。
(13)
要素の位置エネルギUiと運動Tiエネルギは、次式(14)、(15)と表されるため
(14)
(15)
式(14)と(15)に式(9)の近似式を代入すると、次式(16)、(17)を得る。
(16)
(17)
ただし、行列keと行列meはそれぞれ、要素剛性行列と要素質量行列であり、式(16)、(17)に式(11)を代入すると、次式(18)、(19)となる。
(18)
(19)
振動子全体の剛性行列Ksと質量行列Msはそれぞれ、行列keとmeの重ね合わせで表されるため、次式(20)、(21)となる。
(20)
(21)
また、仮定2より、減衰行列Csは係数βを用いて、次式(22)となる。
(22)
圧電素子の曲げモーメントMによる仮想仕事δWiは上記式(9)を用いて、次式(23)のように近似させることができる。
(23)
ここで、力fmiを、
(24)
と定義すると、式(24)は、曲げモーメントMを要素に作用する集中荷重fmiに変換する式となる。式(24)に上記式(4)と式(5)を代入すると、圧電素子による分布力
Fmは、次式(25)、(26)となる。
(25)
(26)
ただし、kは圧電素子の各相に含まれる微小要素の数を表す。
式(20)、(21)、(25)と仮定6よりi番目の要素に働く加圧力、垂直抗力、摩擦力をそれぞれ、fpi、fri、ffiとすると、振動子単体の運動方程式は、次式(27)、(28)、(29)と表される。
(27)
(28)
(29)
また、仮定5より、可動子の角速度をω、慣性モーメントをJとすると、可動子の運動方程式は、次式(30)となる。
(30)
仮定7より、振動子のi番目の要素と可動子が接触する場合、すなわち振動子のi番目の要素の変位uiが、次式(31)を満たす場合、
(31)
垂直抗力friは変位と速度に対する比例係数kcとccを用いて、次式(32)と表される。
(32)
一方、変位uiが、次式(33)を満たす場合、
(33)
可動子と振動子は非接触となるため垂直抗力friは、次式(34)となる。
(34)
また、i番目の要素の表面速度vstは、次式(35)と表され、
(35)
可動子の表面速度vmvは、次式(36)と表されるため、
(36)
仮定8より、摩擦力ffiは動摩擦係数μを用いて、次式(37)となる。
(37)
これらのことから、上記式(20)、式(30)、式(32)、式(37)を用いて駆動周波数をf、位相差φとする電圧VA、VBを印加する場合の可動子の角速度ωを演算することが可能となる。
以下では、前節で導出したモデルを用いて図1に示す速度制御器の記憶部41の作成について説明する。
まず、駆動周波数fと位相差φの組み合わせの中から駆動回路3で実現可能なものを一つ選択する。
次に、これを駆動パラメータとして用いた数値シミュレーションを行い、可動子の角速度の時刻歴応答を演算する。
そして、定常状態における角速度ωと角速度の振動振幅Astを演算し、駆動周波数f、位相差φ、角速度ω、振幅Astの組み合わせを記憶部41に記憶する。
これを、駆動周波数fと位相差φが取りうる値の組み合わせ全てについて繰り返し行う。なお、本実施例では振動型駆動装置のモデルを用いて記憶部41を作成しているが、実際の振動型駆動装置を用いた実験によって作成してもよい。
つぎに、前節で設計した制御系を用いて行うシミュレーションについて説明する。
本実施例では、振動子の要素分割数mを64、ステータの高さhを5.0×10−3 m、半径rを60×10−3 m、ヤング率Eを2.0×1011 N/m2、密度ρを7.9×103 kg/m3、断面積Sを2.5×10−5 m2、断面二次モーメントIを5.2×10−11 m4、減衰の比例係数βを1.0×10−6とする。
また、可動子の慣性モーメントJを1.0×10−4 kgm2とし、加圧力fpi8.5N/m、接触部の剛性kcを3.9×106N/m2、減衰ccを1.2×102 N/m2s、摩擦係数μを 0.2とする。
さらに、印加電圧の振幅V0を100 V、比例係数αを0.01Nm/Vとする。
そして、可動子の目標速度ωrefを0.95rad/sとし、振動振幅の閾値Ast0を0.02 rad/sとする。
X軸は駆動周波数fを、Y軸は位相差φを、Z軸は角速度ωを、それぞれ表す。図5より、位相差φを一定とすると駆動周波数fが小さいほど角速度ωが増加し、駆動周波数fを一定とすると位相差φがπ/2 radに近いほど角速度ωが増加する。このことから、駆動周波数fと位相差φのどちらを用いても可動子の角速度ωを制御可能なことがわかる。
また、図5においてXY平面に示す曲線は、曲面とZ=ωrefを満たす平面との交線のXY平面への写像、すなわち等高線を表す。
さらに、点Aと点Bは等高線上に存在する駆動パラメータの組み合わせの例を表す。
従って、点Aと点Bのどちらを駆動パラメータとしても可動子の速度は目標速度ωrefとなる。なぜなら、等高線上に存在するどの駆動パラメータを用いても、可動子の速度は目標速度ωrefとなるためである。
このことから、記憶部41は点Aと点Bを含む等高線上の点に対応する駆動パラメータの複数の組み合わせの候補を出力することが分かる。
図6より、駆動周波数が5650Hzに近く、位相差がπ/2 radに近い程、振幅Astが増加することが分かる。
これは、可動子の速度がωrefとなる駆動パラメータの候補をいくつか選択した場合、発生する不要振動の振幅は候補によって異なることを意味する。
従って、図5の点Aと点Bに対応する駆動パラメータのうち、不要振動が小さくなるものを選択して角速度ωを目標速度ωrefに制御すればよい。
図7より、点Aは白抜きの領域の外部に、点Bは白抜きの領域の内部に、存在することがわかる。
白抜きの領域の外部に存在する点に対応する駆動パラメータを用いることで振幅Astを閾値Ast0以下とすることが可能となるため、選択部42の処理部421は点Aに対応する駆動パラメータを出力する。つまり、選択部42の処理部421は、白抜きの領域の外部に存在する点に対応する駆動パラメータの複数の候補の中から不要振動が最小となる駆動パラメータを出力する。
なお、等高線上に存在する全ての点が白抜きの領域に含まれる場合には、振幅AstをAst0以下とする駆動パラメータが存在しないため、処理部424は上位装置に対してエ
ラー信号を送信する。
また、点Bに対応して駆動周波数fを5595 Hz、位相差φをπ/2 radとするシミュレーションにおける時刻歴応答を、破線を用いて示す。図8より、点Aに対応する駆動パラメータを用いると、角速度ωは0.95 rad/sとなり目標速度ωrefと一致することがわかる。
さらに、振幅Astは0.015 rad/sとなり、閾値Ast0以下となることがわかる。
一方、点Bに対応する駆動パラメータを用いると角速度ωは目標速度を中心として、振幅Ast = 0.12 rad/sで振動してしまうことがわかる。
この振動の周波数は440 Hzであり駆動周波数fとは異なっているため、不要振動となる。
なお、この振動は、摩擦力と垂直抗力が有する非線形性により、振動子と可動子に駆動周波数f以外の周波数成分を含む外力が印加されるために発生している。これらのことから、本実施例の制御器を用いることで、可動子の角速度を目標速度と一致させ、かつ不要振動の振幅を所定の閾値Ast0以下とする駆動パラメータを導出できることがわかる。
実施例1では可動子の目標速度ωrefを一定として不要振動を低減する駆動パラメータを導出する方法を述べた。
しかし、組み立てロボットや精密位置決めステージなど、複雑な動作と高精度な位置決め性能の両立が要求される用途に振動型駆動装置を適用する際には、目標速度ωrefの変化に応じて可動子の速度ωを制御する必要がある。
そこでは、可動子の速度を変更するために駆動パラメータを切り替える必要があり、切り替え時には可動子と振動子に過渡的な不要振動が生じる。
しかし、実施例1の記憶部41は定常状態における不要振動の振幅Astのみを記憶しているため、実施例1に示した方法では過渡的な不要振動の大きさを評価することができない。
そのため、切り替え時に大きな不要振動が発生し、位置決め精度が低下してしまう。
しかし、過渡的な振動の大きさは切り替え後の駆動パラメータだけでなく、切り替え前のパラメータにも依存する。
切り替え前後の駆動パラメータの組み合わせ全てについて対応する過渡的な不要振動の振幅を記憶しようとすると、非常に大容量の記憶領域が必要となってしまう。
そこで、本実施例ではテーブルではなく、実施例1で導出した振動型駆動装置のモデルを用いて駆動パラメータの切り替えによる不要振動の大きさ予測し、過渡的な不要振動が最小となる駆動パラメータを導出する。
以下に本実施例の制御系の設計について説明する。本実施例の制御器のブロック線図を図9に示す。
記憶部51は、実施例1の記憶部41と同様に、目標速度ωrefを入力としてこれを実現するための駆動周波数fposと位相差φposの複数の組み合わせ候補、および定常状態における不要振動の振幅Astを出力する。
速度信号演算部53は、記憶部51が出力する駆動周波数fposと位相差φposおよ
び、現在の駆動周波数fpreと位相差φpreを入力とする。
そして、実施例1で導出したモデルを用いて、駆動周波数をfpreからfposへ、位相差をφpreからφposへ切り替えた際の角速度ωの時刻歴応答を演算する数値シミュレーションを行う。
さらに、角速度ωの応答から、駆動パラメータの切り替え直後に生じる過渡的な振動の振幅の最大値Atrを演算する。この数値シミュレーションを、駆動周波数fposと位相差φposの候補の全てに対して行い、駆動周波数fposと位相差φpos、およびこれに対応する振幅Atrと振幅Astをそれぞれ出力する。
選択部52は処理部521を備えている点が実施例1の選択部42と異なる。
処理部521は、速度信号演算部53が出力する駆動パラメータの複数の候補の中から、過渡的な不要振動の振動振幅Atrがあらかじめ定めた閾値Atr0以下となるものを全て選択する。
そして、残った候補に対して選択部42と同様の処理を行い、定常状態における振動振幅Astが最小となる駆動周波数fposと位相差φposを一つ選択する。
このように、実施例1で示したモデルを用いて過渡的な不要振動の大きさを予測することで、大容量の記憶領域を備えるテーブルが不要となる。
さらに、目標速度が変化する場合においても過渡的な不要振動と定常的な不要振動の双方を一定値以下としながら、可動子の速度を目標値に追従させることが可能となる。
なお、本実施例では速度信号演算部53として、実施例1で導出した振動型駆動装置の動力学モデルを用いたが、実験により同定した数理モデルを用いてもよい。
前節の制御系を用いて行うシミュレーションについて説明する。
可動子、振動子、加圧力、垂直抗力、摩擦力のパラメータを実施例1と同一とする。また、切り替え前の駆動周波数fpreを5850Hz、位相差φpreを0.4 radとする。このとき、定常状態における可動子の角速度は0.2 rad/sとなる。
さらに、切り替え後の目標速度ωrefを0.55 rad/s、過渡的な振動の振幅の閾値Atr0を0.03 rad/sとする。なお、駆動パラメータの切り替えはシミュレーション開始から0.02秒後に行う。
図11において、点Dは目標速度変更前の駆動周波数fpreと位相差φpreに対応する点を表す。
また、図7と同様に曲線はZ=ωrefとなる等高線を表し、点Eと点Fは等高線上に存在する駆動パラメータを表す。
なお、点Eは駆動周波数fpos=5850 Hz、位相差φpos=1.2 rad、点Fは駆動周波数fpos=5434 Hz、位相差φpos=0.5 radにそれぞれ対応する。
図11より、点Dから点Eへパラメータを変更する場合には位相差φが、点Dから点Fへパラメータを変更する場合には駆動周波数fが、それぞれ大きく変化することがわかる。
図12より、点Eで表される駆動パラメータを用いると振幅Atrは0.02 rad/sとなり、閾値Atr0以下となることが分かる。
一方、点Fで表される駆動パラメータを用いると振幅Atrは0.07 rad/sとなり、振幅の閾値Atr0を大きく超えてしまうことがわかる。
従って、選択部52の処理部521は点Eに対応する駆動パラメータのみを出力する。
これらのことから、本実施例の制御器を用いることで駆動パラメータの切り替え時に生じる過渡的な不要振動の振幅を、モデルを用いて予測値を求め、この予測値に基づいて不要振動を低減する駆動パラメータを導出できることが分かる。
42:選択部
Claims (11)
- 交流電圧印加手段による交流電圧の印加によって振動波が励起される振動子と、前記振動子に接触する可動子と、を備え、
前記振動子に励起された振動波によって発生する摩擦力によって、前記可動子を駆動する振動型駆動装置の速度制御機構であって、
前記可動子の目標速度を入力し、前記可動子の速度を制御する二つ以上の駆動パラメータの組み合わせを出力し、前記駆動パラメータと、前記駆動パラメータを用いて前記振動型駆動装置を駆動した際の前記可動子の速度信号との対応関係を記憶する記憶部と、
前記記憶部から出力される前記記憶部に記憶された前記駆動パラメータのうち、対応する前記速度信号が前記目標速度と一致し、かつ、不要振動の振幅を所定の閾値以下とする前記駆動パラメータの組み合わせを選択する選択部と、
を備えることを特徴とする振動型駆動装置の速度制御機構。 - 前記選択部での前記駆動パラメータの組み合わせの選択が、
定常的な不要振動を最小とするものを選択することにより行われることを特徴とする請求項1に記載の振動型駆動装置の速度制御機構。 - 前記駆動パラメータの切り替えにより生じる過渡的な不要振動の振幅の大きさの予測値を演算する速度信号演算部を備え、
前記選択部は、前記速度信号演算部から出力される前記予測値が予め定められた閾値以下となる前記駆動パラメータの組み合わせを選択し、更に、その組み合わせの中から定常的な不要振動の振幅を最小とするものを選択することを特徴とする請求項2に記載の振動型駆動装置の速度制御機構。 - 前記速度信号演算部は、振動型駆動装置の動力学モデルを用いて作成されていることを特徴とする請求項3に記載の振動型駆動装置の速度制御機構。
- 前記駆動パラメータは、前記振動型駆動装置の圧電素子に印加する2相の印加電圧の周波数、位相差、および振幅のいずれかであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の振動型駆動装置の速度制御機構。
- 交流電圧印加手段による交流電圧の印加によって振動波が励起される振動子と、前記振動子に接触する可動子と、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の振動型駆動装置の速度制御機構を備え、
前記振動子に励起された振動波によって発生する摩擦力によって、前記可動子を駆動する振動型駆動装置。 - 請求項6に記載の振動型駆動装置を備えた電子機器。
- 振動子に励起された振動波によって発生する摩擦力により、可動子を駆動する振動型駆動装置の速度制御方法であって、
前記可動子の目標速度を入力し、前記可動子の速度を制御する二つ以上の駆動パラメータの組み合わせを出力する工程と、
前記出力された前記駆動パラメータのうち、対応する前記速度信号が前記目標速度と一致し、かつ、不要振動の振幅を所定の閾値以下とする前記駆動パラメータの組み合わせを選択する工程と、
を有することを特徴とする振動型駆動装置の速度制御方法。 - 前記駆動パラメータの組み合わせを出力する工程は、前記駆動パラメータにおける駆動周波数と位相差の中から、定常的な前記不要振動の振幅を前記閾値以下とする前記駆動パラメータの組み合わせを全て出力し、
前記駆動パラメータの組み合わせを選択する工程は、前記出力された前記駆動パラメータの組み合わせの中から、定常的な不要振動の振幅を最小とする組み合わせを一つだけ選択し、出力する工程と、
を含むことを特徴とする請求項8に記載の振動型駆動装置の速度制御方法。 - 前記駆動パラメータの組み合わせを選択する工程は、前記不要振動の振幅が前記閾値以下となる前記駆動パラメータが存在しないとき、エラーメッセージを出力し、前記駆動パラメータの変更を行わない工程を含むことを特徴とする請求項8または請求項9に記載の振動型駆動装置の速度制御方法。
- 前記目標速度に応じて前記可動子の速度を制御した際に、駆動パラメータの切り替えにより生じる過渡的な不要振動の振幅の大きさの予測値を演算する工程と、
前記駆動パラメータの組み合わせを選択する工程が、前記予測値を演算する工程から出力される前記予測値が予め定められた閾値以下となる前記駆動パラメータの組み合わせを選択し、更に、その組み合わせの中から定常的な不要振動の振幅を最小とするものを選択する工程と、
を含むことを特徴とする請求項8乃至10のいずれか1項に記載の振動型駆動装置の速度制御方法。
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