以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。なお、作用、機能が同じ働きを担う構成要素及び処理には、全図面を通して同じ符合を付与し、重複する説明を適宜省略する場合がある。
また、黄色をY、マゼンタ色をM、シアン色をC、黒色をKで表すと共に、各部品を色毎に区別する必要がある場合には、符号の末尾に各色に対応する色符号(Y、M、C、K)を付して区別する。
なお、各部品を色毎に区別せずに総称する場合には、符号の末尾に付加される色符号を省略する。
<第1実施形態>
図1に、本実施形態に係る電子写真方式を用いた画像形成装置20の要部構成を示す概略側面図を示す。画像形成装置20には、図示しない通信回線を介して各種データを受信し、受信したデータに基づきカラー画像形成処理を行う画像形成機能が搭載されている。
画像形成装置20は、Y、M、C、K毎に、図中矢印Aの方向に回転する4つの感光体1Y、1M、1C、1Kと、帯電バイアスを印加することにより各感光体の表面を帯電する帯電器2Y、2M、2C、2Kを備える。
また、画像形成装置20は、帯電された感光体1表面を各色の画像情報に基づいて変調された露光光により露光し、感光体1上に静電潜像を形成するレーザ出力部3Y、3M、3C、3Kと、各色現像剤(トナー)を保持する現像剤保持体である現像ロール34Y、34M、34C、34Kを各々備える。
また、画像形成装置20は、図示しない現像バイアス用電源によって現像ロール34Y、34M、34C、34Kに現像バイアスを印加することにより、感光体1上の静電潜像を各色トナーで現像して感光体1上にトナー像を形成する現像器4Y、4M、4C、4Kと、感光体1上の各色トナー像を中間転写ベルト6に転写する一次転写器5Y、5M、5C、5Kを備える。
更に、画像形成装置20は、用紙Pを収納する用紙収容部Tと、中間転写ベルト6上のトナー像を用紙Pに転写する二次転写装置7と、用紙Pに転写されたトナー像を定着する定着器10と、トナー像を用紙Pに転写後、中間転写ベルト6表面に残留するトナーをクリーニングする図示しないベルトクリーナーを備える。
また、画像形成装置20は、各感光体1の表面をクリーニングする図示しないクリーナーと、各感光体1表面の残留電荷を除去する図示しない除電器を備える。
また、画像形成装置20は、画像形成動作環境における温度を計測する温度計58、及び画像形成動作環境における湿度を計測する湿度計60を備える。ただし、温度計58及び湿度計60は画像形成装置20に必須の部材ではなく、必要に応じて画像形成装置20に備えられる。
次に、図1に示されている画像形成装置20における画像形成動作について説明する。
まず、例えば、図示しない通信回線を介して図示しないパーソナルコンピュータ等の端末装置から画像形成装置20へ、画像形成対象の原画像情報が出力される。
画像形成装置20に原画像情報が入力されると、画像形成装置20は帯電器2に帯電バイアスを印加し、感光体1の表面を負極に帯電する。
一方、原画像情報は、画像形成装置20の後述する制御部40に入力される。制御部40は、原画像情報をそれぞれYMCK各色の画像データに分解した後、各色の画像データに基づいた変調信号を、対応する色のレーザ出力部3に出力する。すると、レーザ出力部3は、入力された変調信号に従って変調されたレーザ光線11を出力する。
この変調されたレーザ光線11は、それぞれ感光体1の表面に照射される。感光体1表面は帯電器2により負極に帯電した状態にあるが、感光体1表面にそれぞれレーザ光線11が照射されると、レーザ光線11が照射された部分の電荷が消滅して、感光体1上にはそれぞれ原画像情報に含まれるYMCK各色の画像データに対応した静電潜像が形成される。
更に、各色現像器4Y、4M、4C、4Kには、それぞれY、M、C、Kに着色されると共に負極に帯電したトナー、及び各トナーを感光体1表面に付着する現像ロール34が入っている。
感光体1上に形成された静電潜像が現像器4に到達すると、図示しない現像バイアス用電源によって現像器4内の現像ロール34に現像バイアスが印加される。すると、現像ロール34Y、34M、34C、34Kの周面に保持された各色のトナーが、それぞれ感光体1Y、1M、1C、1Kの静電潜像に付着し、感光体1Y、1M、1C、1Kに原画像情報の各色の画像データに対応したトナー像が形成される。
更に、図示しないモータによりローラ12A、12B、12C、及び二次転写装置7のバックアップロール7Aが回転し、中間転写ベルト6が一次転写器5と感光体1により形成される間隙に搬送されることで、中間転写ベルト6が感光体1に押し当てられる。この際、一次転写器5により一次転写バイアスが印加されると、感光体1に形成された各色の画像データのトナー像が、中間転写ベルト6に転写される。この場合、各色のトナー像の中間転写ベルト6への転写開始位置を一致させるようにローラ12A、12B、12C、バックアップロール7Aの回転を制御することで、各色のトナー像を重ね合わせ、原画像情報に対応したトナー像が中間転写ベルト6に形成される。
中間転写ベルト6へトナー像を転写した感光体1は、図示しないクリーナーにより表面に付着した残留トナー等の付着物が除去され、図示しない除電器により残留電荷が除去される。
一方、二次転写装置7は中間転写ベルト6を張架するバックアップロール7Aと後述する二次転写器9を含んで構成され、二次転写器9は中間転写ベルト6に接触すると、中間転写ベルト6の搬送に追従して回転する構造になっている。
また、図示しないモータにより用紙搬送ローラ13が回転することで、用紙収容部T内の用紙Pが二次転写装置7のバックアップロール7Aと二次転写器9とにより形成される間隙、より具体的には、バックアップロール7Aと二次転写ロール7Bとにより形成される間隙に搬送される。
そして、用紙Pが、トナー像が形成されている中間転写ベルト6の面と対向した状態で中間転写ベルト6と共に、バックアップロール7Aと二次転写ロール7Bの間隙に挟まれる際に、バックアップロール7A及び二次転写器9(以下、転写部材という)に後述する二次転写電源7Gから二次転写バイアスが供給され、中間転写ベルト6に形成された原画像情報に対応したトナー像が用紙Pに転写される。そして、用紙Pは中間搬送ローラ14A、14Bにより定着器10に搬送され、定着器10では用紙P上に転写されたトナー像を加熱溶融して、用紙Pに定着する。
一方、用紙Pへトナー像を転写した中間転写ベルト6は、図示しないベルトクリーナーにより表面に付着した残留トナー等の付着物が除去される。
なお、図1には用紙収容部Tは1つしか明示されていないが、これに限らず、例えば、用紙Pの種類、紙厚、サイズ等毎に用紙収容部Tを複数設けてもよいことは言うまでもない。
以上により、原画像情報に対応した画像が用紙Pに形成され、画像形成動作が終了する。
次に、本実施形態に係る画像形成装置20の二次転写装置7の要部構成を表した図2を用いて、二次転写装置7による用紙Pへの転写動作について詳細に説明する。
二次転写装置7は、図示しないモータによりローラ12A、12B、12Cと共に中間転写ベルト6を張架しながら搬送するバックアップロール7Aと、中間転写ベルト6を挟んでバックアップロール7Aと対向する位置に設けられた二次転写器9と、転写部材に電圧を供給する二次転写電源7Gと、二次転写電源7Gにより転写部材に電圧を供給した際に転写部材を流れる電流を検知する電流計7Hを含んで構成される。
更に、二次転写器9は、二次転写ロール7Bと、補助ロール7Cと、二次転写ロール7B及び補助ロール7Cに張架され、二次転写ロール7Bの回転に追従して用紙Pを搬送する二次転写ベルト8と、を含んで構成される。二次転写器9をこのような構成にすることで、中間転写ベルト6に形成されるトナー像を用紙Pに転写した後、用紙Pが定着器10に搬送されずに中間転写ベルト6に貼り付いてしまう所謂POB(Paper On Belt)ジャムの発生を抑制する効果が期待される。
なお、二次転写器9として補助ロール7C及び二次転写ベルト8は必須ではなく、二次転写器9が二次転写ロール7Bのみから構成されてもよいことは言うまでもない。
二次転写電源7Gの正極は基準電位であるグランド電位(ここでは、0V)に接続される。一方、二次転写電源7Gの負極は電流計7Hと直列に接続された上で、バックアップロール7Aの中心部分に位置する金属シャフトに接続される。
バックアップロール7Aは、金属シャフトの周囲に、例えば導電性のソリッドゴムを貼り合わせて構成される。また、二次転写ロール7Bも金属シャフトの周囲に、例えば導電性の発泡ゴムを張り合わせて構成されると共に、二次転写ロール7Bの金属シャフトはグランド電位に接続されている。
二次転写装置7の後述する制御部70は、転写部材によって形成される間隙に用紙Pが搬送され、用紙Pを挟み込んだ状態で、二次転写電源7Gから転写部材へ負極の電圧を供給するように二次転写電源7Gを制御する。
これにより、転写部材が回転しながら用紙Pを間隙に挟み込んで、用紙P及び中間転写ベルト6を押圧する押圧力に加え、二次転写電源7Gから供給される電圧によって転写部材の間隙に発生する負極の電界により、負極に帯電しているトナー像を中間転写ベルト6から剥離させる力が発生し、中間転写ベルト6に形成されているトナー像が用紙Pへ転写される。
また、バックアップロール7Aは、矢印D1方向及び矢印D2方向に移動可能な構造となっており、後述する二次転写装置7の制御部70によって、バックアップロール7Aの位置が制御される。
バックアップロール7Aの位置の制御は、制御部70が後述する駆動部78を制御することで実現される。制御部70が駆動部78を制御して、例えば、偏芯カムを回転駆動させると、偏芯カムの回転に伴い偏芯カムに接触するバックアップロール7Aが矢印D1方向及び矢印D2方向に移動する。
この場合、バックアップロール7Aが矢印D1方向に移動すると、転写部材により形成される間隙の距離は長くなり、バックアップロール7Aが矢印D2方向に移動すると、転写部材により形成される間隙の距離は短くなる。
このような画像形成動作を実施する本実施形態に係る画像形成装置20の制御部40は、図3に示すように、例えばコンピュータ40として構成される。コンピュータ40は、CPU(Central Processing Unit)40A、ROM(Read Only Memory)40B、RAM(Random Access Memory)40C、不揮発性メモリ40D、及び入出力インターフェース(I/O)40Eがバス40Fを介して各々接続された構成であり、I/O40Eには画像形成部50、操作表示部52、用紙供給部54、用紙排出部56、及びネットワーク通信I/F62が接続されている。
この場合、コンピュータ40に実行させる画像形成プログラムを、例えばROM40Bに書き込んでおき、これをCPU40Aが読み込んで実行する。なお、プログラムは、CD−ROM等の記録媒体により提供するようにしてもよい。
画像形成部50は、画像形成装置20が前述した画像形成動作を実行するのに必要な装置、例えば、感光体1、帯電器2、レーザ出力部3、現像器4、中間転写ベルト6、及び二次転写装置7、定着器10等を含んで構成される。
操作表示部52は、ソフトウェアプログラムによって操作指示の受け付けを実現する表示ボタンや各種情報が表示されるタッチパネル式の図示しないディスプレイ、及び、テンキーやスタートボタンなどの図示しないハードウェアキー等を含んで構成されている。
用紙供給部54は、例えば、用紙Pが収容される用紙収容部Tや、用紙収容部Tから画像形成部50へ用紙Pを供給する供給機構等を含んで構成される。
用紙排出部56は、例えば、用紙Pが排出される排出部や、画像形成部50で画像が形成された用紙Pを排出部上に排出させるための排出機構等、例えば、中間搬送ローラ14A及び14B等を含んで構成される。
ネットワーク通信I/F62は、図示しないパーソナルコンピュータ等の端末装置と、相互にデータ通信を行うためのインターフェースである。
更に、画像形成部50に含まれる本実施形態に係る二次転写装置7の制御部70は、図4に示すように、例えばコンピュータ70として構成される。コンピュータ70は、CPU70A、ROM70B、RAM70C、及びI/O70Eがバス70Fを介して各々接続された構成であり、I/O70Eにはバックアップロール7A、二次転写器9、二次転写電源7G、電流計7H、駆動部78、及び不揮発性メモリ82が接続されている。
駆動部78は、例えば、偏芯カム、偏芯カムを回転駆動させる図示しないモータ、及び偏芯カムの回転軸と図示しないモータを接続する連結機構等を含んで構成される。そして、コンピュータ70からの指示に基づいて図示しないモータを回転させると、図示しないモータの回転に伴い偏芯カムが回転駆動することで、偏芯カムに接触しているバックアップロール7Aが矢印D1方向及び矢印D2方向に移動し、転写部材により形成される間隙の距離が変化する。
不揮発性メモリ82は、例えば、電流計7Hで検知した電流の値及び転写部材により形成される間隙の距離を記憶する。なお、不揮発性メモリ82は二次転写装置7に必須のものではなく、例えば、画像形成装置20のコンピュータ40に含まれる不揮発性メモリ40Dで代用してもよい。
ところで、本実施形態に係る二次転写装置7のように、転写部材が回転しながら用紙Pを間隙に挟み込み、用紙P及び中間転写ベルト6を押圧しながら二次転写電源7Gから電圧を供給して中間転写ベルト6に形成されているトナー像を用紙Pに転写する転写装置では、転写部材により形成される間隙の距離をどのように設定すればよいかが問題となる。
間隙の距離を長くすると、転写部材による用紙P及び中間転写ベルト6への押圧力、及び二次転写電源7Gからの電圧の供給に伴い転写部材により形成される間隙に発生する電界強度が弱くなるため、トナー像の用紙Pへの転写不良が発生しやすくなる。
一方、間隙の距離を短くすると、転写部材による用紙P及び中間転写ベルト6への押圧力が必要以上に強くなる。
例えば、中間転写ベルト6の搬送方向と交差する方向に複数の線状のトナー像が形成されている中間転写ベルト6が、用紙Pと共に間隙に挟み込まれると、中間転写ベルト6、用紙P、及び複数の線状のトナー像によって密閉空間が形成される。この場合に、押圧力がある閾値以上になると、押圧力により密閉空間内の空気が密閉空間の外へ噴き出す。この際、空気の噴き出しに伴って用紙Pに転写されるトナー像が乱れ、トナー像の用紙Pへの転写不良が発生し易くなる。
こうした押圧力の上昇に伴う転写不良は、隣り合う線状のトナー像の間隔が2mm以上6mm以下である場合に、特に顕著に発生する。
なお、密閉空間内の空気が密閉空間の外へ噴き出す際の押圧力の閾値は、例えば温度及び湿度等の環境条件や、用紙Pの透気度等により定められる値である。
そこで、転写部材により形成される間隙の距離の設定に関して、発明者は鋭意検討を重ねた結果、間隙の距離に応じて変化する二次転写装置7のシステム抵抗変化率に着目した。
図5は、間隙の距離に対する二次転写装置7のシステム抵抗変化率を示したグラフである。ここで、二次転写装置7のシステム抵抗とは、転写部材の合成抵抗のことである。
同図の横軸は、転写部材により形成される間隙の距離を表しており、負方向に大きくなる程、バックアップロール7Aと二次転写器9との距離が離れることを示し、正方向に大きくなる程、バックアップロール7A周面と二次転写器9周面の接触の度合いが大きくなることを示している。なお、間隙の距離が0mmとは、バックアップロール7Aと二次転写器9がちょうど接触し始めた位置を示している。
また、グラフ80〜グラフ83は、環境条件毎の間隙の距離に対する二次転写装置7のシステム抵抗変化率を例示したものであり、グラフ80は低温、グラフ81は中温、グラフ82は高温、グラフ83は中温低湿の下での結果を示している。
なお、本実施形態では、一例として、高温を28℃以上、中温を10℃を超え28℃未満、低温を10℃以下、多湿を80%以上、中湿を15%を超え80%未満、低湿を15%以下とする。
同図によれば、何れの環境下においても、間隙の距離が特定の距離になると、システム抵抗変化率の変化の度合いが変化する箇所(以下、変化点という)が存在する。本実施形態の例では、楕円85により囲まれた箇所が変化点であり、間隙の距離が約0.3mmの箇所であることを示している。
こうした変化点が存在するのは、間隙の距離を0mmから徐々に短くするに従って、バックアップロール7Aと二次転写器9との接触面積が大きくなるため、システム抵抗が減少していくが、システム抵抗の減少は徐々に飽和し、最終的には間隙の距離をこれ以上短くしてもシステム抵抗が変化しない距離に達するためである。
なお、図5では、間隙の距離に対する二次転写装置7のシステム抵抗変化率を用いて変化点を検出しているが、二次転写電源7Gから、転写部材に定電圧を供給した際に転写部材を流れる電流の変化の度合いからも変化点は検出される。また、二次転写電源7Gから転写部材に定電流を供給した際に転写部材に発生する電圧の変化の度合いからも変化点が検出されることは言うまでもない。
そこで、以下では、転写部材を流れる電流の変化の度合いから変化点を検出し、バックアップロール7Aの位置を変化点に対応した間隙の距離となるよう設定する二次転写装置7の作用に関して、図6及び図7を参照しながら詳細に説明する。
図6は画像形成の際に二次転写装置7のコンピュータ70のCPU70Aにより実行される間隙距離設定プログラムの処理の流れを示すフローチャートであり、間隙距離設定プログラムはROM70Bの予め定められた領域に予め記憶されている。
なお、間隙距離設定プログラムは、CD−ROM等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納された状態で提供される形態、有線又は無線による通信手段を介して配信される形態等を適用してもよい。
また、間隙距離設定プログラムは、例えば、画像形成装置20の電源投入後の初期化処理が実行されるタイミング、画像形成処理の待機期間に実施されるトナー濃度調整処理が実行されるタイミング、予め定めた時間が経過する毎のタイミング、及び画像形成装置20の利用者から間隙距離設定プログラムの実施を指示されたタイミング等の、少なくとも何れか1つのタイミングでCPU70Aにより実行される。
まず、ステップS100では、偏芯カムを駆動させることでバックアップロール7Aを移動させ、転写部材により形成される間隙の距離が予め定めた初期値である基準間隙距離になるように駆動部78を制御する。
基準間隙距離は、例えば、不揮発性メモリ82の予め定めた領域に予め記憶されている値であり、本実施形態に係る基準間隙距離は、一例として0mmに設定されている。
ステップS102では、転写部材に予め定めた電圧を供給するように二次転写電源7Gを制御する。ここで予め定めた電圧とは、変化点を検出する際に転写部材に供給する定電圧の試験電圧である。試験電圧の大きさは、例えば、不揮発性メモリ82の予め定めた領域に予め記憶されており、不揮発性メモリ82から読み出した試験電圧の大きさに従って二次転写電源7Gを制御し、試験電圧を転写部材に供給する。
ステップS104では、ステップS102で二次転写電源7Gから転写部材に供給した試験電圧によって転写部材に流れる電流を検知するように電流計7Hを制御する。そして、検知した電流の値を電流計7Hから取得し、当該電流の値と基準間隙距離とを関連付けて、例えば不揮発性メモリ82の予め定めた領域に記憶する。
ステップS106では、現在のバックアップロール7Aの位置を予め定めた距離だけ矢印D2方向に移動し、間隙の距離が短くなるように駆動部78を制御する。なお、予め定めた距離を小さく設定するほど変化点を検出する際の精度が向上するが、変化点検出までに要する時間は長くなる。
ステップS108では、ステップS102の処理と同様に、転写部材に試験電圧を供給するように二次転写電源7Gを制御する。
ステップS110では、ステップS104の処理と同様に、ステップS108で二次転写電源7Gから転写部材に供給した試験電圧によって転写部材に流れる電流を検知するように電流計7Hを制御すると共に、検知した電流の値を電流計7Hから取得し、当該電流の値と現在の間隙の距離とを関連付けて、例えば不揮発性メモリ82の予め定めた領域に記憶する。
ステップS112では、ステップS110で記憶した電流の値及び間隙の距離と、ステップS106の処理により間隙の距離を低減する直前に検知した電流の値及びその際の間隙の距離と、を不揮発性メモリ82から読み出す。
ここで、ステップS110で記憶した電流の値及び間隙の距離を、それぞれ、現在の電流値Ip(n)、現在の間隙距離D(n)で表すと共に、ステップS106の処理により間隙の距離を低減する直前に検知した電流の値及びその際の間隙の距離を、それぞれ、前回の電流値Ip(n−1)、前回の間隙距離D(n−1)で表す。ここで、nは現在の時系列を意味する。
そして、現在の間隙距離D(n)と前回の間隙距離D(n−1)との差分に対する現在の電流値Ip(n)と前回の電流値Ip(n−1)との差分の割合Eが、予め定めた閾値εより小さくなるか否かを判定する。肯定判定の場合には、ステップS114に移行する。
ステップS114では、現在の間隙距離D(n)を二次転写装置7で転写を実施する際の基準距離(以下、転写基準距離という)として、例えば不揮発性メモリ82の予め定めた領域に記憶する。すなわち、変化点における間隙の距離を転写基準距離とする。
以後、転写部材により形成される間隙の距離が転写基準距離になるように駆動部78を制御した上で、用紙Pへの転写を実施する。
一方、ステップS112において否定判定の場合には、ステップS106に移行し、ステップS106〜ステップS112の処理を繰り返す。
すなわち、予め定めた距離ずつ間隙の距離が短くなるよう駆動部78を制御する毎に、ステップS110で検知した現在の電流値Ip(n)及び現在の間隙距離D(n)、並びに、同じくステップS110で検知した前回の電流値Ip(n−1)及び前回の間隙距離D(n−1)に基づいて算出される割合Eを算出し、割合Eが予め定めた閾値εより小さくなるまで、ステップS106〜ステップS112の処理を繰り返す。
図7は、本実施形態に係る間隙距離設定プログラムに基づき設定した転写基準距離を含む、間隙の距離に対するライン欠陥発生率を表したグラフである。
同図の横軸は、転写基準距離を0mmとした相対転写基準距離を表しており、負方向に大きくなる程、転写部材により形成される間隙の距離が長くなることを示し、正方向に大きくなる程、転写部材同士の接触の度合いが大きくなることを示している。
また、同図の縦軸は、中間転写ベルト6の搬送方向と交差する方向に2mm間隔で形成された線のトナー像を用紙Pに転写する際に、転写する線の本数に対して転写不良が発生した線の本数の割合を示している。
また、グラフ90〜グラフ92は、環境条件ごとの相対転写基準距離に対するライン欠陥発生率を例示したものであり、グラフ90は高温多湿、グラフ91は中温中湿、グラフ92は低温低湿の下での結果を示している。
同図から、転写基準距離におけるライン欠陥発生率は、中温中湿及び低温低湿の環境条件下では約0%、高温多湿の環境条件下では約5%であることが示され、間隙の距離を転写基準距離より正方向に大きくした場合のライン欠陥発生率と比較して、転写基準距離でのライン欠陥発生率が低くなっていることがわかる。
更に、同図から間隙の距離が同じであっても、転写の際の環境条件の違いによってライン欠陥発生率が変化することがわかる。
具体的には、温度及び湿度が高くなるにしたがって、ライン欠陥発生率も高くなる傾向が見られる。
従って、例えば、画像形成装置20のI/O40Eに温度計58及び湿度計60を接続し、二次転写装置7のCPU70Aが温度及び湿度を受け付けるようにして、ステップS114の処理の後に、温度計58及び湿度計60から温度及び湿度を受け付け、温度及び湿度の値からステップS114で設定した転写基準距離を調整する処理を追加してもよい。
具体的には、温度及び湿度の値から高温多湿であると判定した場合に、ステップS114で設定した転写基準距離をより長くするように駆動部78を制御する。
このように、本実施形態によれば、二次転写電源7Gから転写部材に定電圧を供給した際に転写部材を流れる単位間隙距離当たりの電流の変化の度合いが、予め定めた閾値より小さくなる変化点の距離を転写基準距離として設定し、トナー像を用紙Pに転写する。
これにより、一対の転写部材により形成される間隙の距離を固定にした場合と比較して、転写の際に生ずる画質の劣化が抑制される。
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態に係る二次転写装置7の作用に関して説明する。
第2実施形態では、第1実施形態の内容に加えて、更に、用紙Pへの転写の際の環境に関する情報を示す環境情報及び用紙Pの種別情報のうち、少なくとも1つの情報を受付け、転写基準距離を調整する処理を実施する。
図8は、本実施形態に係る画像形成装置20の電気系の要部構成を示すブロック図である。
第1実施形態に係る画像形成装置20の電気系の要部構成を示した図3との相違点は、I/O40Eに温度計58及び湿度計60が接続された点であり、その他の構成は第1実施形態と同様の構成となっている。
温度計58は、画像形成装置20の画像形成動作環境における温度を計測する。なお、温度計58は画像形成装置20の内部温度の計測に限らず、例えば、画像形成装置20が設置されている場所の温度、すなわち、画像形成装置20の外部温度を計測するようにしてもよい。
湿度計60は、画像形成装置20の画像形成動作環境における湿度を計測する。なお、湿度計60も温度計58と同様に、画像形成装置20の内部湿度の計測に限らず、例えば、画像形成装置20が設置されている場所の湿度、すなわち、画像形成装置20の外部湿度を計測するようにしてもよい。
この場合、CPU70Aは、画像形成装置20のコンピュータ40と接続されており、例えば、画像形成装置20の操作表示部52から指定された画像形成に用いられる用紙Pの種別(普通紙、エンボス紙、コート紙等)や用紙Pの厚み等の情報を含んだ種別情報を受け付ける。更に、CPU70Aは、例えば、画像形成装置20の温度計58から温度情報を受け付けると共に、湿度計60から湿度情報を受け付ける。
図9は画像形成の際に二次転写装置7のコンピュータ70のCPU70Aにより実行される間隙距離調整プログラムの処理の流れを示すフローチャートであり、間隙距離調整プログラムはROM70Bの予め定められた領域に予め記憶されている。
なお、間隙距離調整プログラムは、CD−ROM等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納された状態で提供される形態、有線又は無線による通信手段を介して配信される形態等を適用してもよい。
また、間隙距離調整プログラムは、例えば、画像形成装置20の電源投入後の初期化処理が実行されるタイミング、画像形成処理の待機期間に実施されるトナー濃度調整処理が実行されるタイミング、予め定めた時間が経過する毎のタイミング、及び画像形成装置20の利用者から間隙距離設定プログラムの実施を指示されたタイミング等の、少なくとも何れか1つのタイミングでCPU70Aにより実行される。
ステップS100〜ステップS114は、第1実施形態における図6の処理と同様であるため説明を省略する。
ステップS114で転写基準距離を設定した後のステップS116では、コンピュータ40から、例えば、転写に用いられる用紙Pの種別、厚み等の情報を含んだ用紙Pの種別情報、並びに、温度計58で計測した温度及び湿度計60で計測した湿度等の情報を含んだ環境情報を受付ける。
通常、用紙Pは画像形成の目的に応じて使い分けられるため、普通紙、エンボス紙、コート紙等、様々な種類の用紙Pが用いられる。従って、用紙Pの種別とは、画像形成に用いられる用紙Pの種類を区別するための情報である。
同様に、画像形成の目的に応じて様々な厚みをもつ用紙Pが用いられる。通常、用紙Pの厚みは1m2当たりの用紙Pの重量(以下、坪量という)で表されるが、これは単位面積当たりの用紙Pの重量が重くなる程、用紙Pの厚みが増す傾向にあるためである。
従って、本実施形態に係る用紙Pの厚みの情報には用紙Pの坪量を用いるが、これに限らず、例えば、用紙Pの紙厚等を直接用いてもよいことは言うまでもない。
ステップS118では、ステップS116で受付けた用紙Pの種別情報及び環境情報の下でトナー像を用紙Pへ転写した場合に、転写不良が発生するか否かを、例えば、不揮発性メモリ82の予め定めた領域に予め記憶されている間隙距離調整テーブルに基づいて判定する。そして、転写不良が発生する可能性が認められる場合には、駆動部78を制御し、ステップS114で設定した転写基準距離を調整する。
図10は、用紙Pの種別がコート紙の場合の間隙距離調整テーブルの一例を示している。
間隙距離調整テーブルは、例えば環境条件毎に作成され、不揮発性メモリ82に記憶されている。同図(A)は高温多湿の環境下で用いられる間隙距離調整テーブル、同図(B)は中温中湿の環境下で用いられる間隙距離調整テーブル、同図(C)は低温低湿の環境下で用いられる間隙距離調整テーブルをそれぞれ示している。
同図(A)〜(C)の各間隙距離調整テーブルには、例えば、コート紙の坪量[g/m2]と転写基準距離を基準とした相対転写基準距離との対応関係が記載されている。
また、同図(A)〜(C)の各欄における「○」は、ステップS116で受付けた用紙Pの種別情報及び環境情報の下で、当該「○」が記載された欄に対応した相対転写基準距離で転写を実施しても、転写不良は認められないことを表している。
一方、各欄における「×」は、ステップS116で受付けた用紙Pの種別情報及び環境情報の下で、当該「×」が記載された欄に対応した相対転写基準距離で転写を実施した場合、転写不良が認められることを表している。
なお、「×」に続くかっこ内に、発生が認められる転写不良の種類が記載されている。例えば「×(巻付)」は、二次転写装置7での転写後、用紙Pが中間転写ベルト6に貼り付き排出部に排出されない障害が発生する可能性があることを表し、「×(画質)」は、「○」が記載された欄に対応した相対転写基準距離で転写した場合と比較して、用紙Pに転写された画像の画質が劣る可能性があることを表している。
こうした間隙距離調整テーブルは、例えば、二次転写装置7の実機による実験や二次転写装置7の設計仕様に基づくコンピュータシミュレーション等により予め求められる。
以下に、ステップS118における処理の内容を具体例に沿って詳細に説明する。
一例として、ステップS114で設定した転写基準距離が0.3mm、温度計58で計測された温度が8℃、湿度計60で計測された湿度が10%、用紙Pはコート紙で且つ当該コート紙の坪量が64g/m2であったとする。
この場合、温度及び湿度の値に基づいて、低温低湿の環境条件に係る間隙距離調整テーブル(この場合、図10(C))を不揮発性メモリ82の予め定めた領域から読み出す。
次に、低温低湿の環境条件に係る間隙距離調整テーブルにおいて、ステップS114で設定した転写基準距離、すなわち変化点±0の列と、坪量が64g/m2の行とが交差する欄の内容を読み取り、転写基準距離の調整が必要か否か判定する。なお、本実施形態の場合、交差する欄の内容が「×(巻付)」となっているため、転写基準距離の調整が必要と判断される。
従って、低温低湿の環境条件に係る間隙距離調整テーブルにおいて、坪量が64g/m2の場合であっても転写不良が認められない相対転写基準距離を検索する。本実施形態の場合、例えば、相対転写基準距離を変化点+0.1に調整すればよいことが検索結果として得られる。
そして、この検索結果に従って、間隙の距離が変化点+0.1mm、すなわち0.4mmとなるように駆動部78を制御する。
なお、本実施形態の場合、相対転写基準距離を変化点+0.2に調整してもよいが、転写基準距離からの調整距離ができるだけ小さくなるような相対転写基準距離に調整する方が好ましい。
本実施形態の場合、転写に使用する用紙Pの種別情報、及び転写の際の温度及び湿度に代表される環境情報を用いて、転写部材により形成される間隙の距離を調整したが、温度及び湿度の何れか一方の環境情報しか存在しない場合、並びに、環境情報及び用紙Pの種別情報の何れか一方しか存在しない場合等であっても、これら転写基準距離の調整に用いられる環境情報や用紙Pの種別情報等の有無に応じた間隙距離調整テーブルを、不揮発性メモリ82の予め定めた領域に予め記憶しておけばよい。
また、本実施形態に係る間隙距離調整処理は、用紙Pがコート紙である場合に特に効果的である。これは、コート紙の場合、紙の表面をコート剤で塗布しているため、普通紙やエンボス紙に比べて紙の厚さ方向に空気が通り抜ける透気性が低いためである。
このように本実施形態によれば、一度設定した転写基準距離を、用紙Pへの転写の際の環境に関する情報を示す環境情報及び用紙Pの種別情報のうち、少なくとも1つの情報に基づいて調整する。
これにより、第1実施形態の場合と比較して、転写の際に生ずる画質の劣化がより抑制される。
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。発明の要旨を逸脱しない範囲で上記実施の形態に多様な変更または改良を加えることができ、当該変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
例えば、第1実施形態及び第2実施形態では、図6に係る間隙距離設定処理及び図9に係る間隙距離調整処理をソフトウエア構成によって実現した場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば間隙距離設定処理及び間隙距離調整処理をハードウェア構成により実現する形態としてもよい。
この場合の形態例としては、例えば、二次転写装置7の制御部70と同一の処理を実行する機能デバイスを作成して用いる形態がある。この場合は、上記実施の形態に比較して、処理の高速化が期待される。
なお、第1実施形態及び第2実施形態に係る画像形成装置20はカラー画像形成を行うものとして説明したが、モノクロ画像形成を行う画像形成装置20であってもよいことは言うまでもない。
また、第1実施形態及び第2実施形態に係る間隙距離設定処理及び間隙処理調整処理は、画像形成装置20の二次転写装置7を例として説明したが、一次転写器5に適用してもよく、更に、トナー像を転写する被転写体は紙に限られず、例えば、OHP(OverHead Projector)シート等に代表されるプラスチックシート及びゴム等からなる被転写体であってもよい。
また、第1実施形態及び第2実施形態に係る二次転写装置7では、二次転写電源7Gから転写部材に試験電圧を供給した際に転写部材を流れる電流を電流計7Hで検知したが、二次転写電源7Gが電流源である場合には、二次転写電源7Gから定電流の試験電流を転写部材に供給した際に転写部材に発生する電圧を電圧計で検知するようにしてもよい。
この場合、ステップS112において、単位間隙距離に対する転写部材に発生する電圧の変化の度合いに基づいて、変化点を検出するようにする。
更に、第1実施形態及び第2実施形態に係る間隙距離設定処理及び間隙処理調整処理のステップS106では、間隙の距離を、ステップS100で設定した基準間隙距離から短くするように駆動部78を制御したが、基準間隙距離から長くするように駆動部78を制御してもよい。
この場合、基準間隙距離を、間隙の距離を短くするように制御する場合と比較して、より転写部材同士が密着している位置に設定する。