JP6085724B2 - 接合用組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、無機粒子を主成分、有機成分を副成分とする接合用組成物に関する。
金属部品と金属部品を機械的及び/又は電気的及び又は熱的に接合するために、従来より、はんだ、導電性接着剤、銀ペースト及び異方導電性フィルム等が用いられている。これら導電性接着剤、銀ペースト及び異方導電性フィルム等は、金属部品だけでなく、セラミック部品や樹脂部品等を接合する場合に用いられることもある。例えば、LED(発光ダイオード)等の発光素子の基板への接合、半導体チップの基板への接合、及びこれらの基板の更に放熱部材への接合等が挙げられる。
なかでも、はんだ並びに金属からなる導電フィラーを含む接着剤、ペースト及びフィルムは、電気的な接続を必要とする部分の接合に用いられている。更には、金属は一般的に熱伝導性が高いため、これらはんだ並びに導電フィラーを含む接着剤、ペースト及びフィルムは、放熱性を上げるために使用される場合もある。
特にLED等の発光素子を用いて高輝度の照明デバイスや発光デバイスを作製する場合は、発熱量が上昇する傾向にある。加えて、接合時の外部加熱により、LED等の発光素子の温度が上昇するため、接合温度を可能な限り低くすることで、接合時における素子の損傷を防ぐ必要がある。これらの観点から、低い接合温度で十分な接合強度を確保できると共に、十分な放熱特性を有する接合材が切望されている。
これに対し、高温はんだの代替材料として、銀、金などの貴金属を中心とする金属ナノ粒子を用いた接合材が開発されている。例えば、特許文献1(特開2008−178911号公報)においては、平均粒径が1nm以上50μm以下の金属酸化物、金属炭酸塩、又はカルボン酸金属塩の粒子から選ばれる1種以上の金属粒子前駆体と有機物からなる還元剤とを含み、金属粒子前駆体の含有量が接合用材料中における全質量部において50質量部を超えて99質量部以下であることを特徴とする接合用組成物が開示され、当該接合用材料に関し、還元剤の400℃までの加熱における熱重量減少を99%以上とすることで、良好な金属接合が可能であるということが示されている。
ここで、実際に接合用組成物をLED等の接合に用いる場合、接合用組成物の塗布のしやすさ及び被接合界面における接合用組成物の広がり等を考慮する必要があるが、上記特許文献1に記載の接合材においては、当該観点について十分に検討されていない。
また、LEDには優れた発光効率及び長寿命を有することが要求されるが、これらの特性は基板への接合状態にも依存する。より具体的には、接合部にフィレットが形成されてしまうと、当該フィレットによってLEDの発光が阻害されると共に、フィレットの経時的な変色によって、発光強度を長期間維持することが困難となる。しかしながら、上記特許文献1に記載の接合材においては、当該フィレットの形成については全く考慮されていない。
特開2008−178911号公報
以上のような状況に鑑み、本発明の目的は、比較的低温での接合によって高い接合強度が得られると共に、被接合界面への十分な広がりを維持しつつ、フィレットの形成を抑制できる接合用組成物を提供することにある。
本発明者は、上記目的を達成すべく接合用組成物の組成及び粘度等について鋭意研究を重ねた結果、無機粒子を主成分、有機成分を副成分とする接合用組成物に関し、粘度及びチクソ比を最適化することが、上記目的を達成する上で極めて有効であることを見出し、本発明に到達した。
即ち、本発明は、
無機粒子及び有機成分を含む接合用組成物であって、
前記無機粒子の平均粒径が1〜200nmであり、
略25℃における粘度が、せん断速度10s-1において10〜30Pa・sであり、
略25℃においてせん断速度1s-1で測定した粘度V1を、略25℃においてせん断速度10s-1で測定した粘度V10で除した値で定義されるチクソ比Rが3〜7であること、
を特徴とする接合用組成物を提供する。
本発明の接合用組成物を構成する無機粒子の粒径は、融点降下が生じるようなナノメートルサイズ、望ましくは1〜200nmが適切であるが、必要に応じてミクロンメートルサイズの粒子を添加することも可能である。この場合、ナノメートルサイズの粒子がミクロンメートルサイズの粒子の周囲で融点降下することにより、接合が達成される。
前記無機粒子の表面の少なくとも一部には前記有機成分が付着していること(即ち、前記無機粒子の表面の少なくとも一部が前記有機成分で構成される有機保護層で被覆されていること)、が好ましい。融点降下能を示すナノメートルサイズの無機粒子を安定的に保管するためには、無機粒子の表面の少なくとも一部に有機保護層が必要である。ここで、アミンは官能基が無機粒子の表面に適度の強さで吸着することから、有機保護層として好適に用いることができる。
本発明の接合用組成物を大気雰囲気で500℃程度まで加熱すると、有機物等が酸化分解され、大部分はガス化されて消失する。接合用組成物を大気雰囲気で室温から500℃まで昇温速度10℃/分で加熱したときの重量減少が20質量%を超える場合、焼成後に有機物が焼成層(接合層)中に残存して空隙を生じるため、接合強度の低下及び焼成層(接合層)の導電性を低下させる原因となる。これに対し、接合用組成物を大気雰囲気で室温から500℃まで昇温速度10℃/分で加熱したときの重量減少を20質量%以下とすることで、200℃程度の低温接合によって導電性の高い焼成層(接合層)を得ることができる。一方で、接合用組成物の重量減少が小さ過ぎるとコロイド状態での分散安定性が損なわれるため、接合用組成物を大気雰囲気で室温から500℃まで昇温速度10℃/分で加熱したときの重量減少は0.1〜20.0質量%であることが好ましく、0.5〜18.0質量%であることがより好ましい。
また、本発明の接合用組成物は、前記無機粒子が、金、銀、銅、ニッケル、ビスマス、スズ及び白金族元素よりなる群から選択される少なくとも1種類の金属で構成される金属粒子であること、が好ましい。このような構成による接合用組成物を用いれば、優れた接合強度や耐熱性を得ることができる。
また、本発明の接合用組成物は、前記有機成分が、アミン及び/又はカルボン酸を含むこと、が好ましい。アミンの一分子内におけるアミノ基は、比較的高い極性を有し、水素結合による相互作用を生じ易いが、これら官能基以外の部分は比較的低い極性を有する。更に、アミノ基は、それぞれアルカリ性的性質を示し易い。したがって、アミンは、本発明の接合用組成物中で、無機粒子の表面の少なくとも一部に局在化(付着)すると(即ち、無機粒子の表面の少なくとも一部を被覆すると)、有機成分と無機粒子とを十分に親和させることができ、無機粒子同士の凝集を防ぐことができる(分散性を向上させる)。即ち、アミンは官能基が無機粒子の表面に適度の強さで吸着し、無機粒子同士の相互の接触を妨げるため、保管状態での無機粒子の安定性に寄与する。また、接合温度においては無機粒子の表面から移動及び又は揮発することにより、無機粒子同士の融着や無機粒子と基材との接合を促進するものと考えられる。
また、カルボン酸の一分子内におけるカルボキシル基は、比較的高い極性を有し、水素結合による相互作用を生じ易いが、これら官能基以外の部分は比較的低い極性を有する。更に、カルボキシル基は、酸性的性質を示し易い。また、カルボン酸は、本発明の接合用組成物中で、無機粒子の表面の少なくとも一部に局在化(付着)すると(即ち、無機粒子の表面の少なくとも一部を被覆すると)、有機成分と無機粒子とを十分に親和させることができ、無機粒子同士の凝集を防ぐことができる(分散性を向上させる)。カルボキシル基は無機粒子の表面に配位しやすく、当該無機粒子同士の凝集抑制効果を高めることができる。また、疎水基と親水基が共存することで、接合用組成物と接合基材との濡れ性を飛躍的に高める効果も存在する。
また、必要に応じて分散媒が添加された場合においても、有機成分が分散剤の作用をするため、分散媒中における無機粒子の分散状態が著しく向上する。即ち、本発明の接合用組成物によれば、無機粒子が凝集しにくく、塗膜中でも無機粒子の分散性がよく、均一に融着して強い接合強度が得られる。
ここで、本発明の接合用組成物は、より具体的には、無機粒子と有機成分とで構成されるコロイド粒子を主成分とする組成物であるが、更に分散媒とを含むコロイド分散液であってもよい。「分散媒」は上記コロイド粒子を分散液中に分散させるものであるが、上記コロイド粒子の構成成分の一部は「分散媒」に溶解していてもよい。なお、「主成分」とは、構成成分のうちの最も含有量の多い成分のことをいう。
本発明の接合用組成物では、略25℃における粘度を、せん断速度10s-1において10Pa・s以上とすることで、接合用組成物の流動性が高くなり過ぎることを防止することができる。その結果、LED等のチップをマウントする際に、接合用組成物が被接合界面からはみ出し、フィレットが形成されることを抑制することができる。
また、略25℃における粘度を、せん断速度10s-1において30Pa・s以下とすることで、接合用組成物の流動性が低くなり過ぎることを防止することができる。接合用組成物の流動性が低い場合、LED等のチップをマウントする際に接合用組成物が円形に広がることから、チップ全域に接合用組成物が濡れ広がるまでにフィレットが形成してしまう。これに対し、略25℃における粘度を、せん断速度10s-1において30Pa・s以下とすることで、当該フィレットの形成を抑制することができる。
本発明の接合用組成物では、チクソ比(せん断速度1s-1で測定した略25℃における粘度V1を、せん断速度10s-1で測定した略25℃における粘度V10で除した値)Rを3以上とすることで、接合用組成物が塗布した時点で広範囲に濡れ広がってしまうことを防止でき、フィレットの形成を抑制することができる。
また、チクソ比(せん断速度1s-1で測定した略25℃における粘度V1を、せん断速度10s-1で測定した略25℃における粘度V10で除した値)Rを7以下とすることで、接合用組成物の塗布形状がいびつになることを防止でき、LED等のチップをマウントする際に接合用組成物が不均一に広がることに起因するフィレットの形成を抑制することができる。
本発明の接合用組成物は、LED(発光ダイオード)チップと基板との接合に用いること、が好ましい。上述のとおり、本発明の接合用組成物を用いることでフィレットの形成を抑制することができるため、フィレットの形成によるLEDパッケージの発光効率の低下を効果的に抑制することができる。
更に、本発明の接合用組成物は、
前記接合用組成物を塗布した前記基板に前記LED(発光ダイオード)チップを積層させ、前記接合用組成物を焼成することで前記基板と前記LED(発光ダイオード)チップとを接合させる場合において、
前記基板と前記LED(発光ダイオード)チップとの略全界面に前記接合用組成物の焼成層が形成し、
前記LED(発光ダイオード)チップの側面に形成される前記接合用組成物のフィレットの高さが10μm未満となること、が好ましい。
LED(発光ダイオード)チップの側面に形成される前記接合用組成物のフィレットの高さが10μm未満となることで、フィレットの形成によるLEDパッケージの発光効率の低下を極めて効果的に抑制することができる。ここで、フィレットの高さは、基板表面からLED(発光ダイオード)チップの側面に形成される接合用組成物焼成層の最も高い位置の長さを意味し、ビデオマイクロスコープ等を用いて容易に測定することができる。
また、本発明は、
基板にLED(発光ダイオード)チップが接合された電子部品接合体であって、
前記基板と前記LED(発光ダイオード)チップとが、本発明の接合用組成物を用いて接合されていること、
を特徴とする電子部品接合体も提供する。
本発明の接合用組成物を用いて基板とLED(発光ダイオード)チップとを接合することで、フィレットレスの電子部品接合体を得ることができる。ここで、フィレットレスとは、LED(発光ダイオード)チップの側面に形成される接合用組成物のフィレットの高さが10μm未満となることを意味する。
本発明の電子部品接合体においては、フィレットの高さが10μm未満となっていることから、フィレットによるLED発光の阻害が抑制されると共に、フィレットの経時的な変色による発光強度の変化が抑制されている。その結果、本発明の電子部品接合体のLEDは、優れた発光効率及び長寿命を有している。
本発明によれば、比較的低温での接合によって高い接合強度が得られると共に、被接合界面への十分な広がりを維持しつつ、フィレットの形成を抑制できる接合用組成物を提供することができる。
以下、本発明の接合用組成物の好適な一実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明では、本発明の一実施形態を示すに過ぎず、これらによって本発明が限定されるものではなく、また、重複する説明は省略することがある。
(1)接合用組成物
本実施形態の接合用組成物は、無機粒子を主成分、有機成分を副成分とする。以下においてこれら各成分について説明する。
(1−1)無機粒子
本実施形態の接合用組成物の無機粒子としては、特に限定されるものではないが、本実施形態の接合用組成物を用いて得られる接着層の導電性を良好にすることができるため、亜鉛よりもイオン化傾向が小さい(貴な)金属で構成される金属粒子であるのが好ましい。
かかる金属としては、例えば金、銀、銅、ニッケル、ビスマス、スズ、鉄並びに白金族元素(ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム及び白金)のうちの少なくとも1種が挙げられる。上記金属としては、金、銀、銅、ニッケル、ビスマス、スズ又は白金族元素よりなる群から選択される少なくとも1種の金属の粒子であることが好ましく、更には、銅又は銅よりもイオン化傾向が小さい(貴な)金属、即ち、金、白金、銀及び銅のうちの少なくとも1種であるのが好ましい。これらの金属は単独で用いても、2種以上を併用して用いてもよく、併用する方法としては、複数の金属を含む合金粒子を用いる場合や、コア−シェル構造や多層構造を有する金属粒子を用いる場合がある。
例えば、上記接合用組成物の無機粒子として銀粒子を用いる場合、本実施形態の接合用組成物を用いて形成した接着層の導電率は良好となるが、マイグレーションの問題を考慮して、銀及びその他の金属からなる接合用組成物を用いることによって、マイグレーションを起こりにくくすることができる。当該「その他の金属」としては、上述のイオン化列が水素より貴である金属、即ち金、銅、白金、パラジウムが好ましい。
本実施形態の接合用組成物における無機粒子(乃至は無機コロイド粒子)の平均粒径は、融点降下が生じるような平均粒径を有しており、例えば、1〜200nmであればよく、2〜100nmであることが好ましい。無機粒子の平均粒径が1nm以上であれば、良好な接着層を形成可能な接合用組成物が得られ、無機粒子製造がコスト高とならず実用的である。また、200nm以下であれば、無機粒子の分散性が経時的に変化しにくく、好ましい。
また、必要に応じてミクロンメートルサイズの無機粒子を併用して添加することも可能である。そのような場合は、ナノメートルサイズの無機粒子がミクロンメートルサイズの無機粒子の周囲で融点降下することにより、接合できる。
なお、本実施形態の接合用組成物における無機粒子の粒径は、一定でなくてもよい。また、接合用組成物が、任意成分として、後述する分散媒、高分子分散剤、樹脂成分、有機溶剤、増粘剤又は表面張力調整剤等を含む場合、平均粒径が200nm超の無機コロイド粒子成分を含む場合があるが、凝集を生じたりせず、本発明の効果を著しく損なわない成分であればかかる200nm超の平均粒径を有する粒子成分を含んでもよい。
ここで、本実施形態の接合用組成物(無機コロイド分散液)における無機粒子の粒径は、動的光散乱法、小角X線散乱法、広角X線回折法で測定することができる。ナノサイズの金属粒子の融点降下を示すためには、広角X線回折法で求めた結晶子径が適当である。例えば広角X線回折法では、より具体的には、理学電機(株)製のRINT−UltimaIIIを用いて、回折法で2θが30〜80°の範囲で測定することができる。この場合、試料は、中央部に深さ0.1〜1mm程度の窪みのあるガラス板に表面が平坦になるように薄くのばして測定すればよい。また、理学電機(株)製のJADEを用い、得られた回折スペクトルの半値幅を下記のシェラー式に代入することにより算出された結晶子径(D)を粒径とすればよい。
D=Kλ/Bcosθ
ここで、K:シェラー定数(0.9)、λ:X線の波長、B:回折線の半値幅、θ:ブラッグ角である。
(1−2)有機成分
本実施形態の接合用組成物において、無機粒子の表面の少なくとも一部に付着している有機成分、即ち、無機コロイド粒子中の「有機成分」は、いわゆる分散剤として上記無機粒子とともに実質的に無機コロイド粒子を構成する。当該有機成分には、金属中に最初から不純物として含まれる微量有機物、後述する製造過程で混入して金属成分に付着した微量有機物、洗浄過程で除去しきれなかった残留還元剤、残留分散剤等のように、無機粒子に微量付着した有機物等は含まれない概念である。なお、上記「微量」とは、具体的には、無機コロイド粒子中1質量%未満が意図される。
上記有機成分は、無機粒子を被覆して当該無機粒子の凝集を防止するとともに無機コロイド粒子を形成することが可能な有機物であり、被覆の形態については特に規定しないが、本実施形態においては、分散性および導電性等の観点から、アミン及びカルボン酸を含むことが好ましい。なお、これらの有機成分は、無機粒子と化学的あるいは物理的に結合している場合、アニオンやカチオンに変化していることも考えられ、本実施形態においては、これらの有機成分に由来するイオンや錯体等も上記有機成分に含まれる。
アミンとしては、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよく、また、側鎖を有していてもよい。例えば、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘキシルアミン等のアルキルアミン(直鎖状アルキルアミン、側鎖を有していてもよい。)、シクロペンチルアミン、シクロヘキシルアミン等のシクロアルキルアミン、アニリン、アリルアミン等の第1級アミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ピペリジン、ヘキサメチレンイミン等の第2級アミン、トリプロピルアミン、ジメチルプロパンジアミン、シクロヘキシルジメチルアミン、ピリジン、キノリン等の第3級アミン等が挙げられる。
上記アミンは、例えば、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アルコキシ基、カルボニル基、エステル基、メルカプト基等の、アミン以外の官能基を含む化合物であってもよい。また、上記アミンは、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。加えて、常温での沸点が300℃以下、更には250℃以下であることが好ましい。
本実施形態の接合用組成物は、本発明の効果を損なわない範囲であれは、上記のアミンに加えて、カルボン酸を含んでいてもよい。カルボン酸の一分子内におけるカルボキシル基が、比較的高い極性を有し、水素結合による相互作用を生じ易いが、これら官能基以外の部分は比較的低い極性を有する。更に、カルボキシル基は、酸性的性質を示し易い。また、カルボン酸は、本実施形態の接合用組成物中で、無機粒子の表面の少なくとも一部に局在化(付着)すると(即ち、無機粒子の表面の少なくとも一部を被覆すると)、有機成分と無機粒子とを十分に親和させることができ、無機粒子同士の凝集を防ぐ(分散性を向上させる。)。
カルボン酸としては、少なくとも1つのカルボキシル基を有する化合物を広く用いることができ、例えば、ギ酸、シュウ酸、酢酸、ヘキサン酸、アクリル酸、オクチル酸、オレイン酸等が挙げられる。カルボン酸の一部のカルボキシル基が金属イオンと塩を形成していてもよい。なお、当該金属イオンについては、2種以上の金属イオンが含まれていてもよい。
上記カルボン酸は、例えば、アミノ基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、カルボニル基、エステル基、メルカプト基等の、カルボキシル基以外の官能基を含む化合物であってもよい。この場合、カルボキシル基の数が、カルボキシル基以外の官能基の数以上であることが好ましい。また、上記カルボン酸は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。加えて、常温での沸点が300℃以下、更には250℃以下であることが好ましい。また、アミンとカルボン酸はアミドを形成する。当該アミド基も銀粒子表面に適度に吸着するため、有機成分にはアミド基が含まれていてもよい。
本実施形態の接合用組成物中における無機コロイド中の有機成分の含有量は、0.5〜50質量%であることが好ましい。有機成分含有量が0.5質量%以上であれば、得られる接合用組成物の貯蔵安定性が良くなる傾向があり、50質量%以下であれば、接合用組成物の導電性が良い傾向がある。有機成分のより好ましい含有量は1〜30質量%であり、更に好ましい含有量は2〜15質量%である。
アミンとカルボン酸とを併用する場合の組成比(質量)としては、1/99〜99/1の範囲で任意に選択することができるが、好ましくは20/80〜98/2であり、更に好ましくは30/70〜97/3である。なお、アミン又はカルボン酸は、それぞれ複数種類のアミン又はカルボン酸を用いてもよい。
本実施形態の接合用組成物には、上記の成分に加えて、本発明の効果を損なわない範囲で、使用目的に応じた適度な粘性、密着性、乾燥性又は印刷性等の機能を付与するために、分散媒、高分子分散剤、例えばバインダーとしての役割を果たすオリゴマー成分、樹脂成分、有機溶剤(固形分の一部を溶解又は分散していてよい。)、界面活性剤、増粘剤又は表面張力調整剤等の任意成分を添加してもよい。かかる任意成分としては、特に限定されない。
任意成分のうちの分散媒としては、本発明の効果を損なわない範囲で種々のものを使用可能であり、例えば炭化水素及びアルコール等が挙げられる。
炭化水素としては、脂肪族炭化水素、環状炭化水素、脂環式炭化水素及び不飽和炭化水素等が挙げられ、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
脂肪族炭化水素としては、例えば、テトラデカン、オクタデカン、ヘプタメチルノナン、テトラメチルペンタデカン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、トリデカン、メチルペンタン、ノルマルパラフィン、イソパラフィン等の飽和又は不飽和脂肪族炭化水素が挙げられる。
環状炭化水素としては、例えば、トルエン、キシレン等が挙げられる。
脂環式炭化水素としては、例えば、リモネン、ジペンテン、テルピネン、ネソール、シネン、オレンジフレーバー、テルピノレン、フェランドレン、メンタジエン、テレベン、サイメン、ジヒドロサイメン、モスレン、カウツシン、カジェプテン、オイリメン、ピネン、テレビン、メンタン、ピナン、テルペン、シクロヘキサン等が挙げられる。
不飽和炭化水素としては、例えば、エチレン、アセチレン、ベンゼン、1−ヘキセン、1−オクテン、4−ビニルシクロヘキセン、テルペン系アルコール、アリルアルコール、オレイルアルコール、2−パルミトレイン酸、ペトロセリン酸、オレイン酸、エライジン酸、チアンシ酸、リシノール酸、リノール酸、リノエライジン酸、リノレン酸、アラキドン酸、アクリル酸、メタクリル酸、没食子酸及びサリチル酸等が挙げられる。
これらのなかでも、水酸基を有する不飽和炭化水素が好ましい。水酸基は無機粒子の表面に配位しやすく、当該無機粒子の凝集を抑制することができる。水酸基を有する不飽和炭化水素としては、例えば、テルペン系アルコール、アリルアルコール、オレイルアルコール、チアンシ酸、リシノール酸、没食子酸及びサリチル酸等が挙げられる。好ましくは、水酸基を有する不飽和脂肪酸であり、例えば、チアンシ酸、リシノール酸、没食子酸及びサリチル酸等が挙げられる。
前記不飽和炭化水素はリシノール酸であることが好ましい。リシノール酸はカルボキシル基とヒドロキシル基とを有し、無機粒子の表面に吸着して当該無機粒子を均一に分散させると共に、無機粒子の融着を促進する。
また、アルコールは、OH基を分子構造中に1つ以上含む化合物であり、脂肪族アルコール、環状アルコール及び脂環式アルコールが挙げられ、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、OH基の一部は、本発明の効果を損なわない範囲でアセトキシ基等に誘導されていてもよい。
脂肪族アルコールとしては、例えば、ヘプタノール、オクタノール(1−オクタノール、2−オクタノール、3−オクタノール等)、ノナノール、デカノール(1−デカノール等)、ラウリルアルコール、テトラデシルアルコール、セチルアルコール、イソトリデカノール、2−エチル−1−ヘキサノール、オクタデシルアルコール、ヘキサデセノール、オレイルアルコール等の飽和又は不飽和C6-30脂肪族アルコール等が挙げられる。
環状アルコールとしては、例えば、クレゾール、オイゲノール等が挙げられる。
更に、脂環式アルコールとしては、例えば、シクロヘキサノール等のシクロアルカノール、テルピネオール(α、β、γ異性体、又はこれらの任意の混合物を含む。)、ジヒドロテルピネオール等のテルペンアルコール(モノテルペンアルコール等)、ジヒドロターピネオール、ミルテノール、ソブレロール、メントール、カルベオール、ペリリルアルコール、ピノカルベオール、ベルベノール等が挙げられる。
本実施形態の接合用組成物中に分散媒を含有させる場合の含有量は、粘度などの所望の特性によって調整すれば良く、接合用組成物中の分散媒の含有量は、1〜30質量%であるのが好ましい。分散媒の含有量が1〜30質量%であれば、接合性組成物として使いやすい範囲で粘度を調整する効果を得ることができる。分散媒のより好ましい含有量は1〜20質量%であり、更に好ましい含有量は1〜15質量%である。
上記高分子分散剤としては、市販されている高分子分散剤を使用することができる。市販の高分子分散剤としては、例えば、上記市販品としては、例えば、ソルスパース(SOLSPERSE)11200、ソルスパース13940、ソルスパース16000、ソルスパース17000、ソルスパース18000、ソルスパース20000、ソルスパース24000、ソルスパース26000、ソルスパース27000、ソルスパース28000(日本ルーブリゾール(株)製);ディスパービック(DISPERBYK)142;ディスパービック160、ディスパービック161、ディスパービック162、ディスパービック163、ディスパービック166、ディスパービック170、ディスパービック180、ディスパービック182、ディスパービック184、ディスパービック190、ディスパービック2155(ビックケミー・ジャパン(株)製);EFKA−46、EFKA−47、EFKA−48、EFKA−49(EFKAケミカル社製);ポリマー100、ポリマー120、ポリマー150、ポリマー400、ポリマー401、ポリマー402、ポリマー403、ポリマー450、ポリマー451、ポリマー452、ポリマー453(EFKAケミカル社製);アジスパーPB711、アジスパーPA111、アジスパーPB811、アジスパーPW911(味の素社製);フローレンDOPA−15B、フローレンDOPA−22、フローレンDOPA−17、フローレンTG−730W、フローレンG−700、フローレンTG−720W(共栄社化学工業(株)製)等を挙げることができる。低温焼結性及び分散安定性の観点からは、ソルスパース11200、ソルスパース13940、ソルスパース16000、ソルスパース17000、ソルスパース18000、ソルスパース28000、ディスパービック142又はディスパービック2155を用いることが好ましい。
高分子分散剤の含有量は0.1〜15質量%であることが好ましい。高分子分散剤の含有量が0.1%以上であれば得られる接合用組成物の分散安定性が良くなるが、含有量が多過ぎる場合は接合性が低下することとなる。このような観点から、高分子分散剤のより好ましい含有量は0.03〜3質量%であり、更に好ましい含有量は0.05〜2質量%である。
樹脂成分としては、例えば、ポリエステル系樹脂、ブロックドイソシアネート等のポリウレタン系樹脂、ポリアクリレート系樹脂、ポリアクリルアミド系樹脂、ポリエーテル系樹脂、メラミン系樹脂又はテルペン系樹脂等を挙げることができ、これらはそれぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
有機溶剤としては、上記の分散媒として挙げられたものを除き、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、2−プロピルアルコール、1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、1−エトキシ−2−プロパノール、2−ブトキシエタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、重量平均分子量が200以上1,000以下の範囲内であるポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、重量平均分子量が300以上1,000以下の範囲内であるポリプロピレングリコール、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、グリセリン又はアセトン等が挙げられ、これらはそれぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
増粘剤としては、例えば、クレイ、ベントナイト又はヘクトライト等の粘土鉱物、例えば、ポリエステル系エマルジョン樹脂、アクリル系エマルジョン樹脂、ポリウレタン系エマルジョン樹脂又はブロックドイソシアネート等のエマルジョン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等のセルロース誘導体、キサンタンガム又はグアーガム等の多糖類等が挙げられ、これらはそれぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記有機成分とは異なる界面活性剤を添加してもよい。多成分溶媒系の無機コロイド分散液においては、乾燥時の揮発速度の違いによる被膜表面の荒れ及び固形分の偏りが生じ易い。本実施形態の接合用組成物に界面活性剤を添加することによってこれらの不利益を抑制し、均一な導電性被膜を形成することができる接合用組成物が得られる。
本実施形態において用いることのできる界面活性剤としては、特に限定されず、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤の何れを用いることができ、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、4級アンモニウム塩等が挙げられる。少量の添加量で効果が得られるので、フッ素系界面活性剤が好ましい。
なお、有機成分量を所定の範囲に調整する方法は、加熱を行って調整するのが簡便である。また、無機粒子を作製する際に添加する有機成分の量を調整することで行ってもよく、無機粒子調整後の洗浄条件や回数を変えてもよい。加熱はオーブンやエバポレーターなどで行うことができ、減圧下で行ってもよい。常圧下で行う場合は、大気中でも不活性雰囲気中でも行うことができる。更に、有機成分量の微調整のために、上記アミン(及びカルボン酸)を後で加えることもできる。
本実施形態の接合用組成物には、主成分として、無機粒子がコロイド化した無機コロイド粒子が含まれるが、かかる無機コロイド粒子の形態に関しては、例えば、無機粒子の表面の一部に有機成分が付着して構成されている無機コロイド粒子、上記無機粒子をコアとして、その表面が有機成分で被覆されて構成されている無機コロイド粒子、それらが混在して構成されている無機コロイド粒子等が挙げられるが、特に限定されない。なかでも、無機粒子をコアとして、その表面が有機成分で被覆されて構成されている無機コロイド粒子が好ましい。当業者は、上述した形態を有する無機コロイド粒子を、当該分野における周知技術を用いて適宜調製することができる。
本実施形態の接合用組成物は、無機粒子と有機成分とで構成されるコロイド粒子を主成分とする流動体であり、無機粒子、無機コロイド粒子を構成する有機成分のほかに、無機コロイド粒子を構成しない有機成分、分散媒または残留還元剤等を含んでいてもよい。
本実施形態の接合用組成物においては、略25℃における粘度を、せん断速度10s-1において10Pa・s以上とすることで、接合用組成物の流動性が高くなり過ぎることを防止することができる。その結果、LED等のチップをマウントする際に、接合用組成物が被接合界面からはみ出し、LED等のチップの側面にフィレットが形成されることを抑制することができる。
また、略25℃における粘度を、せん断速度10s-1において30Pa・s以下とすることで、接合用組成物の流動性が低くなり過ぎることを防止することができる。接合用組成物の流動性が低い場合、LED等のチップをマウントする際に接合用組成物が円形に広がることから、チップ全域に接合用組成物が濡れ広がるまでに、LED等のチップの側面にフィレットが形成してしまう。これに対し、略25℃における粘度を、せん断速度10s-1において30Pa・s以下とすることで、当該フィレットの形成を抑制することができる。
本発明の接合用組成物では、チクソ比(せん断速度1s-1で測定時の略25℃における粘度を、せん断速度10s-1で測定時の略25℃における粘度で除した値)を3以上とすることで、接合用組成物が塗布した時点で広範囲に濡れ広がってしまうことを防止でき、フィレットの形成を抑制することができる。
また、チクソ比(せん断速度1s-1で測定時の略25℃における粘度を、せん断速度10s-1で測定時の略25℃における粘度で除した値)を7以下とすることで、接合用組成物の塗布形状がいびつになることを防止でき、LED等のチップをマウントする際に接合用組成物が不均一に広がることに起因するフィレットの形成を抑制することができる。
本発明の接合用組成物は、LED(発光ダイオード)チップと基板との接合に用いること、が好ましい。上述のとおり、本発明の接合用組成物を用いることでフィレットの形成を抑制することができるため、フィレットの形成によるLEDパッケージの発光効率の低下を効果的に抑制することができる。
更に、本発明の接合用組成物は、
前記接合用組成物を塗布した前記基板に前記LED(発光ダイオード)チップを積層させ、前記接合用組成物を焼成することで前記基板と前記LED(発光ダイオード)チップとを接合させる場合において、
前記基板と前記LED(発光ダイオード)チップとの略全界面に前記接合用組成物の焼成層が形成し、
前記LED(発光ダイオード)チップの側面に形成される前記接合用組成物のフィレットの高さが10μm未満となること、が好ましい。
LED(発光ダイオード)チップの側面に形成される前記接合用組成物のフィレットの高さが10μm未満となることで、フィレットの形成によるLEDパッケージの発光効率の低下を極めて効果的に抑制することができる。
なお、本発明の接合用組成物を用いることで、チップのサイズ及び形状、接合用組成物の焼成層の厚さによらず、フレットの高さを抑制することができる。ここで、例えば、チップのサイズ(面積)は0.2mm×0.2mm〜2.0mm×2.0mmとすることができ、焼成層の厚さは1〜50μmとすることができる。
基材上に接合用組成物を塗布する方法としては、例えば、ディッピング、スクリーン印刷、スプレー方式、バーコート法、スピンコート法、インクジェット法、ディスペンサー法、ピントランスファー法、刷毛による塗布方式、流延法、フレキソ法、グラビア法、オフセット法、転写法、親疎水パターン法、又はシリンジ法等のなかから適宜選択して採用することができるようになる。
粘度の調整は、無機粒子の粒径の調整、有機物の含有量の調整、分散媒その他の成分の添加量の調整、各成分の配合比の調整、増粘剤の添加等によって行うことができる。接合用組成物の粘度は、例えば、コーンプレート型粘度計(例えばアントンパール社製のレオメーターMCR301)により測定することができる。
(1−3)接合用組成物の重量減少
本実施形態の接合用組成物は、各状況における重量減少の制御によって、接合用組成物としての特性が最適化されている。
本実施形態の接合用組成物は、室温の大気中に6時間放置した際の重量減少が0.5質量%以下であることが好ましく、大気雰囲気で室温から100℃まで昇温速度10℃/分で加熱したときの重量減少が3.0質量%以下であることが好ましい。
接合用組成物を室温の大気中に6時間放置した際の重量減少が0.5質量%を超える場合は、成分の揮発により粘度が上昇し、接合用組成物のハンドリング性が劣化する原因となる。なお、接合用組成物の印刷性を長く保持するためには、室温の大気中に6時間放置した際の重量減少を0.3質量%以下とすることがより好ましい。
接合用組成物を室温の大気中に6時間放置した際の重量減少は、主に、有機物及び分散剤として使用する有機物等の揮発に起因することから、接合用組成物中に残存する低沸点成分の含有量を低減させる。例えば、エバポレーターで取り除く等の処理をすることで好適に制御することができる。
また、接合用組成物を大気雰囲気で室温から100℃まで昇温速度10℃/分で加熱したときの重量減少が3.0質量%よりも大きな場合、室温で激しく成分が揮発して粘度が変化するため、接合用組成物のハンドリング性が悪くなる。ここで、接合用組成物を大気雰囲気で室温から100℃まで昇温速度10℃/分で加熱したときの重量減少は2.0質量%以下であることがより好ましく、1.0質量%以下であることが更に好ましい。
接合用組成物を室温から100℃まで昇温速度10℃/分で加熱した時の重量減少は主に、SP値が10以上の有機物及び分散剤として使用した有機物に起因し、接合用組成物中に残存する低沸点成分の含有量を低減させる。例えば、エバポレーターで取り除く等の処理をすることで好適に制御することができる。
更に、接合用組成物は、前記接合用組成物を大気雰囲気で室温から500℃まで昇温速度10℃/分で加熱したときの重量減少が20.0質量%以下であること、が好ましい。
上述のとおり、接合用組成物を大気雰囲気で500℃まで加熱すると、有機物等が酸化分解され、大部分はガス化されて消失する。接合用組成物を大気雰囲気で室温から500℃まで昇温速度10℃/分で加熱したときの重量減少が20質量%を超える場合、焼成後に有機物が焼成層(接合層)中に残存して空隙を生じるため、接合強度の低下及び焼成層(接合層)の導電性を低下させる原因となる。これに対し、接合用組成物を大気雰囲気で室温から500℃まで昇温速度10℃/分で加熱したときの重量減少を20質量%以下とすることで、200℃程度の低温接合によって導電性の高い焼成層(接合層)を得ることができる。一方で、接合用組成物の重量減少が小さ過ぎるとコロイド状態での分散安定性が損なわれるため、接合用組成物を大気雰囲気で室温から500℃まで昇温速度10℃/分で加熱したときの重量減少は0.1質量%以上であることが好ましく、0.5〜18.0質量%であることがより好ましい。
接合用組成物を室温から500℃まで昇温速度10℃/分で加熱した時の重量減少は主に、接合用組成物中に含まれる全有機成分に起因し、材料として使用する有機成分の種類及び量を制御することで好適に制御することができる。
(2)接合用組成物の製造
本実施形態の接合用組成物を製造するためには、副成分である有機成分で被覆された主成分である無機粒子(無機コロイド粒子)を調製する。
なお、有機成分量及び重量減少の調整方法は、特に限定されないが、加熱及び減圧を行って調整するのが簡便である。また、無機粒子を作製する際に添加する有機成分の量を調整することで行ってもよく、無機粒子調整後の洗浄条件や回数を変えてもよい。加熱はオーブンやエバポレーター等で行うことができる。加熱温度は50〜300℃程度の範囲であればよく、加熱時間は数分間〜数時間であればよい。減圧下で加熱することで、より低い温度で有機物量の調整を行うことができる。常圧下で行う場合は、大気中でも不活性雰囲気中でも行うことができる。更に、有機分量の微調整のためにアミンやカルボン酸を後で加えることもできる。
上記調整の結果、接合用組成物を室温の大気中に6時間放置した際の重量減少を0.5質量%以下とし、大気雰囲気で室温から100℃まで昇温速度10℃/分で加熱したときの重量減少を3.0質量%以下とすることで、本実施形態の接合用組成物を得ることができる。また、接合用組成物を大気雰囲気で室温から500℃まで昇温速度10℃/分で加熱したときの重量減少を20.0質量%以下とすることが好ましい。
本実施形態の有機成分で被覆された無機粒子を調製する方法としては、特に限定されないが、例えば、無機粒子を含む分散液を調製し、次いで、その分散液の洗浄を行う方法等が挙げられる。無機粒子を含む分散液を調製する工程としては、例えば、下記のように、溶媒中に溶解させた金属塩(又は金属イオン)を還元させればよく、還元手順としては、化学還元法に基づく手順を採用すればよい。
即ち、上記のような有機成分で被覆された無機粒子は、無機粒子を構成する金属の金属塩と、分散剤としての有機物と、溶媒(基本的にトルエン等の有機系であるが、水を含んでいてもよい。)と、を含む原料液(成分の一部が溶解せず分散していてもよい。)を還元することにより調製することができる。
この還元によって、分散剤としての有機成分が無機粒子の表面の少なくとも一部に付着している無機コロイド粒子が得られる。この無機コロイド粒子は、それのみで本実施形態の接合用組成物として供することができるが、必要に応じて、これを後述する工程において分散媒に添加することにより、無機コロイド分散液からなる接合用組成物として得ることもできる。
有機物で被覆された無機粒子を得るための出発材料としては、種々の公知の金属塩又はその水和物を用いることができ、例えば、硝酸銀、硫酸銀、塩化銀、酸化銀、酢酸銀、シュウ酸銀、ギ酸銀、亜硝酸銀、塩素酸銀、硫化銀等の銀塩;例えば、塩化金酸、塩化金カリウム、塩化金ナトリウム等の金塩;例えば、塩化白金酸、塩化白金、酸化白金、塩化白金酸カリウム等の白金塩;例えば、硝酸パラジウム、酢酸パラジウム、塩化パラジウム、酸化パラジウム、硫酸パラジウム等のパラジウム塩等が挙げられるが、適当な分散媒中に溶解し得、かつ還元可能なものであれば特に限定されない。また、これらは単独で用いても複数併用してもよい。
また、上記原料液においてこれらの金属塩を還元する方法は特に限定されず、例えば、還元剤を用いる方法、紫外線等の光、電子線、超音波又は熱エネルギーを照射する方法等が挙げられる。なかでも、操作の容易の観点から、還元剤を用いる方法が好ましい。
上記還元剤としては、例えば、ジメチルアミノエタノール、メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、フェニドン、ヒドラジン等のアミン化合物;例えば、水素化ホウ素ナトリウム、ヨウ素化水素、水素ガス等の水素化合物;例えば、一酸化炭素、亜硫酸等の酸化物;例えば、硫酸第一鉄、酸化鉄、フマル酸鉄、乳酸鉄、シュウ酸鉄、硫化鉄、酢酸スズ、塩化スズ、二リン酸スズ、シュウ酸スズ、酸化スズ、硫酸スズ等の低原子価金属塩;例えば、エチレングリコール、グリセリン、ホルムアルデヒド、ハイドロキノン、ピロガロール、タンニン、タンニン酸、サリチル酸、D−グルコース等の糖等が挙げられるが、分散媒に溶解し上記金属塩を還元し得るものであれば特に限定されない。上記還元剤を使用する場合は、光及び/又は熱を加えて還元反応を促進させてもよい。
上記金属塩、有機成分、溶媒及び還元剤を用いて、有機物で被覆された金属粒子(無機粒子)を調製する具体的な方法としては、例えば、上記金属塩を有機溶媒(例えばトルエン等)に溶かして金属塩溶液を調製し、当該金属塩溶液に分散剤としての有機物を添加し、ついで、ここに還元剤が溶解した溶液を徐々に滴下する方法等が挙げられる。
上記のようにして得られた分散剤としての有機成分で被覆された無機粒子を含む分散液には、無機粒子の他に、金属塩の対イオン、還元剤の残留物や分散剤が存在しており、液全体の電解質濃度が高い傾向にある。このような状態の液は、電導度が高いため、無機粒子の凝析が起こり、沈殿し易い。あるいは、沈殿しなくても、金属塩の対イオン、還元剤の残留物、又は分散に必要な量以上の過剰な分散剤が残留していると、導電性を悪化させるおそれがある。そこで、上記無機粒子を含む溶液を洗浄して余分な残留物を取り除くことにより、有機物で被覆された無機粒子を確実に得ることができる。
上記洗浄方法としては、例えば、有機成分で被覆された無機粒子を含む分散液を一定時間静置し、生じた上澄み液を取り除いた上で、アルコール(メタノール等)を加えて再度撹枠し、更に一定期間静置して生じた上澄み液を取り除く工程を幾度か繰り返す方法、上記の静置の代わりに遠心分離を行う方法、限外濾過装置やイオン交換装置等により脱塩する方法等が挙げられる。このような洗浄によって有機溶媒を除去することにより、本実施形態の有機成分で被覆された無機粒子を得ることができる。
本実施形態のうち、無機コロイド分散液は、上記において得た有機成分で被覆された無機粒子と、上記本実施形態で説明した分散媒と、を混合することにより得られる。かかる有機成分で被覆された無機粒子と分散媒との混合方法は特に限定されるものではなく、撹拌機やスターラー等を用いて従来公知の方法によって行うことができる。スパチュラのようなもので撹拌したりして、適当な出力の超音波ホモジナイザーを当ててもよい。即ち、本発明の接合用組成物は、無機粒子(コロイド)を洗浄して、分散媒を加えてペースト化し、その後に減圧乾燥して調製する。
無機粒子、分散媒、その他の有機物等の種類及び添加量や、減圧乾燥工程等によって、接合用組成物の略25℃における粘度を、せん断速度10s-1において10〜30Pa・sとし、かつ、せん断速度1s-1で測定した略25℃における粘度を、せん断速度10s-1で測定した略25℃における粘度で除した値で定義されるチクソ比を3〜7とすることで、本発明の接合用組成物を得ることができる。
なお、複数の金属を含む無機コロイド分散液を得る場合、その製造方法としては特に限定されず、例えば、銀とその他の金属とからなる無機コロイド分散液を製造する場合には、上記の有機物で被覆された無機粒子の調製において、無機粒子を含む分散液と、その他の無機粒子を含む分散液とを別々に製造し、その後混合してもよく、銀イオン溶液とその他の金属イオン溶液とを混合し、その後に還元してもよい。
(3)接合方法
本実施形態の接合用組成物を用いれば、加熱を伴う部材同士の接合において比較的低い接合温度で高い接合強度を得ることができる。即ち、上記接合用組成物を第1の被接合部材(LED(発光ダイオード)チップ)と第2の被接合部材(基板)との間に塗布する接合用組成物塗布工程と、第1の被接合部材と第2の被接合部材との間に塗布した接合用組成物を、所望の温度(例えば300℃以下、好ましくは150〜200℃)で焼成して接合する接合工程と、により、第1の被接合部材と第2の被接合部材とを接合することができる。この際、加圧することもできるが、特に加圧しなくとも十分な接合強度を得ることができるのも本発明の利点のひとつである。また、焼成を行う際、段階的に温度を上げたり下げたりすることもできる。また、予め被接合部材表面に界面活性剤又は表面活性化剤等を塗布しておくことも可能である。
また、本実施形態の接合用組成物を用いれば、被接合面へ接合用組成物を塗布した後、加熱による接合工程までの時間が長い場合であっても、良好な接合体を得ることができる。よって、本実施形態の接合用組成物は、電子デバイス等の量産ラインに好適に用いることができる。
本発明者は、鋭意検討を重ねた結果、前記接合用組成物塗布工程での接合用組成物として、上述した本実施形態の接合用組成物を用いれば、第1の被接合部材と第2の被接合部材とを、高い接合強度をもってより確実に接合できる(接合体が得られる)と共に、フィレットの形成が極めて効果的に抑制されることを見出した。
ここで、本実施形態の接合用組成物の「塗布」とは、接合用組成物を面状に塗布する場合も線状に塗布(描画)する場合も含む概念である。塗布されて、加熱により焼成される前の状態の接合用組成物からなる塗膜の形状は、所望する形状にすることが可能である。したがって、加熱による焼成後の本実施形態の接合体では、接合用組成物は、面状の接合層及び線状の接合層のいずれも含む概念であり、これら面状の接合層及び線状の接合層は、連続していても不連続であってもよく、連続する部分と不連続の部分とを含んでいてもよい。
本実施形態において用いることのできる第1の被接合部材及び第2の被接合部材としては、接合用組成物を塗布して加熱により焼成して接合することのできるものであればよく、特に制限はないが、接合時の温度により損傷しない程度の耐熱性を具備した部材であるのが好ましい。
このような被接合部材を構成する材料としては、例えば、ポリアミド(PA)、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル、ポリカーボネート(PC)、ポリエーテルスルホン(PES)、ビニル樹脂、フッ素樹脂、液晶ポリマー、セラミクス、ガラス又は金属等を挙げることができるが、なかでも、金属製の被接合部材が好ましい。金属製の被接合部材が好ましいのは、耐熱性に優れているとともに、無機粒子が金属である本発明の接合用組成物との親和性に優れているからである。
また、被接合部材は、例えば板状又はストリップ状等の種々の形状であってよく、リジッドでもフレキシブルでもよい。基材の厚さも適宜選択することができる。接着性若しくは密着性の向上又はその他の目的ために、表面層が形成された部材や親水化処理等の表面処理を施した部材を用いてもよい。
接合用組成物を被接合部材に塗布する工程では、種々の方法を用いることが可能であるが、上述のように、例えば、ディッピング、スクリーン印刷、スプレー式、バーコート式、スピンコート式、インクジェット式、ディスペンサー式、ピントランスファー法、刷毛による塗布方式、流延式、フレキソ式、グラビア式、又はシリンジ式等のなかから適宜選択して用いることができる。
上記のように塗布した後の塗膜を、被接合部材を損傷させない範囲で、例えば300℃以下の温度に加熱することにより焼成し、本実施形態の接合体を得ることができる。本実施形態においては、先に述べたように、本実施形態の接合用組成物を用いるため、被接合部材に対して優れた密着性を有する接合層が得られ、強い接合強度がより確実に得られる。
本実施形態においては、接合用組成物がバインダー成分を含む場合は、接合層の強度向上及び被接合部材間の接合強度向上等の観点から、バインダー成分も焼結することになるが、場合によっては、各種印刷法へ適用するために接合用組成物の粘度を調整することをバインダー成分の主目的として、焼成条件を制御してバインダー成分を全て除去してもよい。
上記焼成を行う方法は特に限定されるものではなく、例えば従来公知のオーブン等を用いて、被接合部材上に塗布または描画した上記接合用組成物の温度が、例えば300℃以下となるように焼成することによって接合することができる。上記焼成の温度の下限は必ずしも限定されず、被接合部材同士を接合できる温度であって、かつ、本発明の効果を損なわない範囲の温度であることが好ましい。ここで、上記焼成後の接合用組成物においては、なるべく高い接合強度を得るという点で、有機物の残存量は少ないほうがよいが、本発明の効果を損なわない範囲で有機物の一部が残存していても構わない。
なお、本発明の接合用組成物には、有機物が含まれているが、従来の例えばエポキシ樹脂等の熱硬化を利用したものと異なり、有機物の作用によって焼成後の接合強度を得るものではなく、前述したように融着した無機粒子の融着によって十分な接合強度が得られるものである。このため、接合後において、接合温度よりも高温の使用環境に置かれて残存した有機物が劣化ないし分解・消失した場合であっても、接合強度の低下するおそれはなく、したがって耐熱性に優れている。
本実施形態の接合用組成物によれば、例えば150〜200℃程度の低温加熱による焼成でも高い導電性を発現する接合層を有する接合を実現することができるため、比較的熱に弱い被接合部材同士を接合することができる。また、焼成時間は特に限定されるものではなく、焼成温度に応じて、接合できる焼成時間であればよい。
本実施形態においては、上記被接合部材と接合層との密着性を更に高めるため、上記被接合部材の表面処理を行ってもよい。上記表面処理方法としては、例えば、コロナ処理、プラズマ処理、UV処理、電子線処理等のドライ処理を行う方法、基材上にあらかじめプライマー層や導電性ペースト受容層を設ける方法等が挙げられる。
(4)電子部品接合体
本実施形態の電子部品接合体は、基板にLED(発光ダイオード)チップが接合された電子部品接合体であって、基板とLED(発光ダイオード)チップとが、本発明の接合用組成物を用いて接合されている。
本発明の接合用組成物を用いることで、電子部品接合体を大量生産する場合であっても、基板とLED(発光ダイオード)チップとの略全界面に接合用組成物の焼成層が形成されると共に、LED(発光ダイオード)チップの側面に形成される接合用組成物のフィレットの高さが10μm未満となっている。その結果、フィレットの形成によるLEDパッケージの発光効率の低下が効果的に抑制されている。
なお、チップのサイズ及び形状、接合用組成物の焼成層の厚さは特に限定されないが、例えば、チップのサイズ(面積)は0.2mm×0.2mm〜2.0mm×2.0mmとすることができ、焼成層の厚さは1〜50μmとすることができる。
以上、本発明の代表的な実施形態について説明したが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。例えば、上記実施形態においては、無機粒子として金属粒子を採用した無機金属コロイド分散液について説明したが、例えば、導電性、熱伝導性、誘電性、イオン伝導性等に優れたスズドープ酸化インジウム、アルミナ、チタン酸バリウム、鉄リン酸リチウム等の無機粒子を用いる(混合する)こともできる。
以下、実施例において本発明の接合用組成物について更に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
≪実施例1≫
ドデシルアミン(和光純薬工業(株)製の試薬一級)0.60gと、ヘキシルアミン(和光純薬工業(株)製の試薬一級)7.0gと、ブチルアミン(和光純薬工業(株)製の試薬一級)3.0gと、を混合して、マグネティックスターラーで十分に撹拌した。ここに、撹拌を行いながらシュウ酸銀(東洋化学工業(株)製の試薬特級)7.0gを添加して増粘させた。
次に、得られた粘性物質を110℃の恒温槽に入れ、約10分反応させた。反応後の懸濁液の分散媒を置換するため、メタノール(和光純薬工業(株)製の試薬一級)10mlを当該懸濁液に加えて撹拌後、遠心分離によって銀微粒子を沈殿させて分離し、分離した銀微粒子に対して再度メタノール(和光純薬工業(株)製の試薬一級)10mlを加え、撹拌及び遠心分離を行うことで銀微粒子を沈殿させて分離した。
得られた銀微粒子1gに分散媒としてジヒドロターピニルアセテート0.15g及びオレイン酸0.1gを加えて撹拌した。ダイヤフラムポンプを用いて数分間減圧して少量残存していたメタノールを蒸発させ、接合用組成物1を得た。なお、広角X線回折法を用いて銀微粒子の平均粒径を測定したところ、20nmであった。
[評価試験]
(1)接合組成物のせん断粘度
接合用組成物1の粘度を、コーンプレート型粘度計(アントンパール社製レオメーター,MCR301)を用いて測定した。測定条件は、測定モード:せん断モード、せん断速度:1s-1又は10s-1、測定治具:コーンプレート(CP−50−2;直径50mm,アングル2°,ギャップ0.045mm)、サンプル量:5g、測定温度:25℃とした。せん断速度が1s-1の場合のせん断粘度、せん断速度が10s-1の場合のせん断粘度、及び(せん断速度1s-1で測定時のせん断粘度)/(せん断速度10s-1で測定時のせん断粘度)で求めたチクソ比を、それぞれ表1に示した。
(2)フィレット高さの評価
ダイボンダー(ハイソル社製)を用いて、表面に銀メッキを施したアルミナ板(3mm×3mm)に接合用組成物1を10μg載せ、その上に、市販の青色LEDチップ(エピスター社製ES−CADBV24H、底面積:600μm×600μm、高さ:150μm、重量:0.2mg)を積層した。
次に、得られた積層体を200℃に調整した熱風循環式オーブンに入れ、大気雰囲気下で120分間の加熱による焼成処理を行った。積層体を熱風循環式オーブンから取り出して冷却した後、ビデオマイクロスコープ(キーエンス社製)でフィレット高さを計測した。得られた値を表1に示した。
(3)接合強度測定
ボンドテスター(レスカ社製)を用いて、上記焼成処理後の積層体のせん断強度試験を行った。剥離時の接合強度をチップの底面積で除し、単位面積当たりの接合強度(MPa)を算出した。判断基準として、20MPa以上を○、20MPa未満を×とし、得られた結果を表1に示した。
(4)発光特性の評価
分光測光装置(浜松ホトニクス社製)を用いて、上記焼成処理後の青色LEDチップの輝度を測定した。初期の輝度を100とし、温度85℃、湿度85%の環境下で1000時間連続点灯後の輝度を相対値で示し、得られた結果を表1に示した。なお、表1に示している比較例の発光強度(初期)は、実施例1の発光強度を100とした場合の相対強度を示している。
≪実施例2≫
分散媒をジヒドロターピニルアセテート0.15g及び1−デカノール(和光純薬工業(株)製の試薬一級)0.1gにした以外は、実施例1と同様にして接合用組成物2を調製し、実施例1と同様にして各種特性を評価した。得られた結果を表1に示した。
≪実施例3≫
分散媒をジヒドロターピニルアセテート0.15g及びテルソルブMTPH(日本テルペン(株)製)0.1gにした以外は、実施例1と同様にして接合用組成物3を調製し、実施例1と同様にして各種特性を評価した。得られた結果を表1に示した。
≪実施例4≫
分散媒をテルピネオール(和光純薬工業(株)製の試薬一級)0.15g及びオレイン酸0.1gにした以外は、実施例1と同様にして接合用組成物4を調製し、実施例1と同様にして各種特性を評価した。得られた結果を表1に示した。
≪実施例5≫
分散媒をテルピネオール(和光純薬工業(株)製の試薬一級)0.15gと1−デカノール0.1gにした以外は、実施例1と同様にして接合用組成物5を調製し、実施例1と同様にして各種特性を評価した。得られた結果を表1に示した。
≪比較例1≫
分散媒として加えたジヒドロターピニルアセテートの重量を0.10gにしたこと以外は、実施例1と同様にして比較接合用組成物1を調製し、実施例1と同様にして各種特性を評価した。得られた結果を表1に示した。
≪比較例2≫
分散媒として加えたジヒドロターピニルアセテートの重量を0.40gにしたこと以外は、実施例1と同様にして比較接合用組成物2を調製し、実施例1と同様にして各種特性を評価した。得られた結果を表1に示した。
≪比較例3≫
分散媒を1−デカノール0.15gにしたこと以外は、実施例1と同様にして比較接合用組成物3を調製し、実施例1と同様にして各種特性を評価した。得られた結果を表1に示した。
≪比較例4≫
分散媒を1−デカノール0.30gにしたこと以外は、実施例1と同様にして比較接合用組成物4を調製し、実施例1と同様にして各種特性を評価した。得られた結果を表1に示した。
≪比較例5≫
分散媒を1−ノナノール(和光純薬工業(株)製の試薬一級)0.1gにしたこと以外は、実施例1と同様にして比較接合用組成物5を調製し、実施例1と同様にして各種特性を評価した。得られた結果を表1に示した。
≪比較例6≫
分散媒を1−ノナノール(和光純薬工業(株)製の試薬一級)0.2gにしたこと以外は、実施例1と同様にして比較接合用組成物6を調製し、実施例1と同様にして各種特性を評価した。得られた結果を表1に示した。
≪比較例7≫
分散媒を1−デカノール0.2gとジペンテンT(日本テルペン化学(株)社製)0.1gにしたこと以外は、実施例1と同様にして比較接合用組成物7を調製し、実施例1と同様にして各種特性を評価した。得られた結果を表1に示した。
≪比較例8≫
分散媒を1−ノナノール(和光純薬工業(株)製の試薬一級)0.2gとジペンテンT(日本テルペン化学(株)社製)0.1gにしたこと以外は、実施例1と同様にして比較接合用組成物8を調製し、実施例1と同様にして各種特性を評価した。得られた結果を表1に示した。
Figure 0006085724
表1に示す結果から、本発明の実施例に係る接合用組成物においては、フィレットが形成されていないことが分かる。また、初期の発光強度が高いことに加え、1000時間後も初期と同程度の発光強度が維持されている。これに対し、比較例に係る接合用組成物においては、高さが11〜45μmのフィレットが形成されており、実施例の場合と比較すると、初期の発光強度が低くなっている。更に、1000時間後の発光強度低下率が、実施例の場合よりも明らかに高くなっている。なお、今回得られた積層体は、全て20MPa以上の高いせん断強度を有していた。

Claims (4)

  1. 金属粒子及びアミン及び/又はカルボン酸を含む接合用組成物であって、
    前記金属粒子の平均粒径が1〜200nmであり、
    略25℃における粘度が、せん断速度10s−1において10〜30Pa・sであり、
    せん断速度1s−1で測定した略25℃における粘度Vを、せん断速度10s−1で測定した略25℃における粘度V10で除した値で定義されるチクソ比Rが3〜7であること、
    を特徴とする接合用組成物。
  2. LED(発光ダイオード)チップと基板との接合に用いること、
    を特徴とする請求項1に記載の接合用組成物。
  3. 前記接合用組成物を塗布した前記基板に前記LED(発光ダイオード)チップを積層させ、前記接合用組成物を焼成することで前記基板と前記LED(発光ダイオード)チップとを接合させる場合において、
    前記基板と前記LED(発光ダイオード)チップとの略全界面に前記接合用組成物の焼成層が形成し、
    前記LED(発光ダイオード)チップの側面に形成される前記接合用組成物のフィレットの高さが10μm未満となること、
    を特徴とする請求項1又は2に記載の接合用組成物。
  4. 基板にLED(発光ダイオード)チップが接合された電子部品接合体であって、
    前記基板と前記LED(発光ダイオード)チップとが、請求項1〜3のうちのいずれかに記載の接合用組成物を用いて接合されていること、
    を特徴とする電子部品接合体。
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