JP6081950B2 - 脱水触媒、及び共役ジエンの製造方法 - Google Patents

脱水触媒、及び共役ジエンの製造方法 Download PDF

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本発明は、脱水触媒、及び共役ジエンの製造方法に関する。
アルコールの脱水反応によってオレフィンを製造する種々の方法が知られている。例えば、下記特許文献1には、エタノール、プロパノール、ブタノール又はフェニルプロパノール等の脱水によって、オレフィンを製造する方法が開示されている。下記特許文献2には、クミルアルコールの脱水によって、α−メチルスチレンを製造する方法が開示されている。
特表2013−533236号公報 特開2007−99729号公報
上記のような脂肪族飽和アルコール又は芳香族アルコールの脱水には、固体酸触媒が用いられる。上記アルコールを固体酸触媒に接触させることにより、アルコールの分子内脱水が起こり、オレフィンが生成する。しかし、脂肪族不飽和アルコールを従来の固体酸触媒に接触させると、分子内脱水反応のみならず、分子間脱水反応等の副反応も起こり易いため、脂肪族不飽和アルコールを、目的とするオレフィンへ、選択的に転化させることが困難である。
本発明は、脂肪族不飽和アルコールを共役ジエンへ選択的に転化させることができる脱水触媒、及び共役ジエンの製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、鋭意研究の結果、特定のシリカアルミナを脱水触媒として用いることにより、特定のアルコールを共役ジエンへ選択的に転化させ易いことを発見し、下記本発明に到った。
本発明の一側面に係る脱水触媒は、シリカアルミナを備え、シリカアルミナのケイバン比が18以下であり、シリカアルミナに含まれる全てのケイ素原子のうち、ヒドロキシ基と直接結合していないケイ素原子Qの割合が、80モル%以上であり、炭素数が4以上であるα,β−脂肪族不飽和アルコールを脱水して、共役ジエンを生成させる。
本発明の一側面に係る脱水触媒においては、ケイバン比が11以下であってよい。
本発明の一側面においては、α,β−脂肪族不飽和アルコールが、クロチルアルコールであってよく、共役ジエンが、1,3−ブタジエンであってよい。
本発明の一側面に係る共役ジエンの製造方法は、上記本発明の一側面に係る脱水触媒を用いて、炭素数が4以上であるα,β−脂肪族不飽和アルコールを脱水して、共役ジエンを生成させる工程を備える。
本発明によれば、脂肪族不飽和アルコールを共役ジエンへ選択的に転化させることができる脱水触媒、及び共役ジエンの製造方法が提供される。
以下では、本発明の好適な一実施形態に係る脱水触媒、及び当該脱水触媒を用いた共役ジエンの製造方法について説明する。ただし、本発明は下記の実施形態に何ら限定されるものではない。
本実施形態に係る共役ジエンの製造方法は、本実施形態に係る脱水触媒を用いて、炭素数が4以上であるα,β−脂肪族不飽和アルコールを脱水して、共役ジエンを生成させる工程を備える。
本実施形態によれば、脂肪族不飽和アルコールの分子内脱水反応に伴う副反応(例えば、分子間脱水反応)を抑制し、脂肪族不飽和アルコールを共役ジエンへ選択的に転化させることができる。つまり、下記式1で定義される転化率が増加し、下記式2で定義される選択率が増加する。
転化率R(モル%)={1−(m/m)}×100 (式1)
選択率R(モル%)={m/(m−m)}×100 (式2)
は、脱水反応に供した脂肪族不飽和アルコールのモル数である。つまりmは、共役ジエンの原料に含まれる脂肪族不飽和アルコールのモル数である。
は、脱水反応の生成物中に残存する脂肪族不飽和アルコールのモル数である。
は、脱水反応の生成物に含まれる共役ジエンのモル数である。
(m−m)は、脱水反応によって他の物質に転化した脂肪族不飽和アルコールのモル数と言い換えてよい。
本実施形態に係る脱水触媒は、特に、クロチルアルコールを脱水して1,3−ブタジエンへ選択的に転化させる活性に優れる。
α,β−脂肪族不飽和アルコールの炭素数は、例えば、4〜8であってよい。α,β−脂肪族不飽和アルコールは、例えば、クロチルアルコール、プレノール、1−ブテン−3−オール、1−ペンテン−3−オール、2−ペンテン−3−オール、1−ヘキセン−3−オール、又は2−ヘキセン−3−オールなどであってよい。α,β−脂肪族不飽和アルコールは、製造の目的物である共役ジエンの種類に応じて、上記の物質の中から適宜選択されてよい。共役ジエンは、特に限定されないが、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、3−メチル−1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、2,4−ヘキサジエン、1,3−ヘプタジエン、又は2,4−ヘキサジエンなどであってよい。
本実施形態に係る脱水触媒は、固体酸触媒の一種であるシリカアルミナを備える。脱水触媒は、シリカアルミナに加えて、例えば、アルミナ又はシリカを備えてもよい。脱水触媒は、シリカアルミナのみからなっていてもよい。シリカアルミナは、不可避的な不純物を含んでもよい。
シリカアルミナのケイバン比が18以下である。シリカアルミナを構成するシリカ(SiO)のモル数がMSiであり、シリカアルミナを構成するアルミナ(Al)のモル数がMAlであるとき、ケイバン比は、MSi/MAlと表される。ケイバン比が小さいほど、シリカアルミナ中のアルミナの含有量は多い。したがって、ケイバン比が18以下である場合、シリカアルミナがアルミナに由来する多数の酸点を有するため、α,β−脂肪族不飽和アルコールの脱水の進行に伴う脱水触媒の劣化が抑制され、転化率が増加する。ケイバン比は、例えば、0より大きく18以下であってよい。ケイバン比は、11以下であってもよい。ケイバン比は、例えば、2〜18、2〜12、2〜11、2〜10、2〜5、4〜18、4〜12、4〜11、4〜10、4〜5、4.1〜10.9、又は4.1〜4.5であってもよい。
シリカアルミナに含まれる全てのケイ素原子のうち、ヒドロキシ基(‐OH)と直接結合していないケイ素原子Qの割合は、80モル%以上である。ケイ素原子Qとは、シリカアルミナにおいて4つの中性酸素原子と結合しているケイ素原子と言い換えてよい。中性酸素原子とは、シリカアルミナにおいてケイ素原子及びアルミニウム原子のいずれか一方のみ又は両方のみと結合している酸素原子と言い換えてよい。中性酸素原子とは、シリカアルミナ中において水素原子と結合していない酸素原子と言い換えてもよい。ケイ素原子Qの割合は、例えば、29Si DD/MAS NMR(29Si Dipolar Decoupling / Magic−Angle Spinning Nuclear Magnetic Resonance)によって測定されてよい。ケイ素原子Qの割合の測定の精度を向上させるために、測定前に脱水触媒に吸着した水を除去してもよい。水を除去する場合、脱水触媒を乾燥させてよく、脱水触媒を窒素又は希ガス等の不活性ガス中に保持してもよい。ただし、ケイ素原子Qの割合は、脱水触媒が置かれる雰囲気の湿度によって変動し難い値である。
ケイ素原子Qの割合が高いほど、シリカアルミナにおいて存在するヒドロキシ基が少ない。したがって、ケイ素原子Qの割合が80モル%以上である場合、脱水反応において生成する水が脱水触媒に吸着し難く、反応系外に排出され易いため、脱水反応が促進され、転化率及び選択率が増加する。ケイ素原子Qの割合は、例えば、80〜100モル%、82〜100モル%、又は90〜100モル%であってよい。シリカアルミナは、ヒドロキシ基を備えなくてもよい。
シリカアルミナに含まれる全てのケイ素原子のうち、ヒドロキシ基と直接結合しているケイ素原子Q及びQの割合は、0モル%以上20モル%未満、0モル%以上180モル%未満、又は0モル%以上10モル%未満であってよい。ケイ素原子Qとは、2つの中性酸素原子及び2つのヒドロキシ基と直接結合したケイ素原子である。ケイ素原子Qとは、3つの中性酸素原子及び1つのヒドロキシ基と直接結合したケイ素原子である。ケイ素原子Q及びQの割合が小さいほど、脱水反応において生成する水が脱水触媒に吸着し難く、反応系外に排出され易いため、脱水反応が促進され、転化率及び選択率が増加する。ケイ素原子Q及びQの割合もまた、29Si DD/MAS NMRによって測定されてよい。ただし、ケイ素原子Q及びQの割合は、脱水触媒が置かれる雰囲気の湿度によって変動し易い値である。よって、ケイ素原子Q及びQの割合を測定する場合、測定前に脱水触媒に吸着した水を除去したほうがよい。
シリカアルミナは酸点を有し、シリカアルミナの単位質量当たりの全ての酸点の数が、NACID[m mol/g]であり、シリカアルミナの単位質量当たりの弱酸点の数が、n[m mol/g]であるとき、n/NACIDは、0.78以上であってよい。n/NACIDが大きいほど、転化率及び選択率が増加し易い傾向がある。n/NACIDは、0.78〜1.00、0.84〜1.00、0.85〜1.00、又は0.86〜1.00であってもよい。
ACIDは、シリカアルミナに吸着させたアンモニアの全数から算出される、シリカアルミナの単位質量当たりの全ての酸点の数であってよい。nは、シリカアルミナに吸着させたアンモニアのうち、550℃以下でシリカアルミナから脱離するアンモニアの数から算出される、シリカアルミナの単位質量当たりの酸点の数であってよい。つまり、n及びNACIDは、アンモニアを用いた昇温脱離法(NH−TPD)の測定結果に基づき、算出される。NH3−TPDでは、シリカアルミナにプローブ分子(塩基)であるアンモニアを吸着させた後、シリカアルミナの温度を連続的に上昇させると共に、各温度(脱離温度)においてシリカアルミナから脱離したアンモニアの数(モル数)を質量分析によって測定する。シリカアルミナの温度が、アンモニアが検出されなくなる温度(最高温度)に達するまで、上記測定を継続する。シリカアルミナの温度が上昇し始めてから最高温度に達するまでの間にシリカアルミナから脱離したアンモニアの数(モル数)を積分する。つまり、シリカアルミナに吸着していたアンモニアの全数を求める。シリカアルミナに吸着していたアンモニアの全数をシリカアルミナの質量で割ることにより、NACIDを定量してよい。シリカアルミナの温度が上昇し始めてから550℃に達するまでの間にシリカアルミナから脱離したアンモニアの数(モル数)を積分して、この積分値をシリカアルミナの質量で割ることにより、数nを定量してよい。シリカアルミナの温度が550℃を超えてから最高温度に達するまでの間にシリカアルミナから脱離したアンモニア量を積分して、この積分値をシリカアルミナの質量で割ることにより、シリカアルミナの単位質量当たりの強酸点の数nを定量してよい。NACIDは、(n+n)に等しい。
シリカアルミナが有するブレンステッド酸点(B酸点)の数(例えば、モル数)がMであり、シリカアルミナが有するルイス酸点(L酸点)の数(例えば、モル数)がMであるとき、M/Mは0.2〜0.5であってよい。なお、ブレンステッド酸点とは、シリカアルミナの部位のうち、反応基質(α,β−脂肪族不飽和アルコール)に対してプロトン(H)を与える性質を有する部位(活性点)である。ルイス酸点とは、シリカアルミナの部位のうち、反応基質(α,β−脂肪族不飽和アルコール)から電子対を受け取る性質を有する部位(活性点)である。M/Mが0.2〜0.5である場合、転化率及び選択率が増加し易い傾向がある。同様の理由から、M/Mは0.26〜0.46であってもよい。γ−アルミナのB酸点の数は少なく、そのM/Mが小さ過ぎるため、γ−アルミナを用いて高い転化率及び選択率を達成することは困難である。プロトン型ゼオライトのB酸点の数は多く、そのM/Mが大き過ぎるため、プロトン型ゼオライトを用いた場合には高い転化率及び選択率を達成することは困難である。
/Mは、例えば、以下の赤外分光(IR)法によって測定されてよい。
約10mgのシリカアルミナを秤量して、このシリカアルミナを成型して、直径が約10mmφである円盤を作製する。この成型されたシリカアルミナを加熱拡散反射セル内に充填する。前処理として、セルを500℃程度に加熱しながら、セル内を1時間程度排気する。前処理後、セルを30℃まで冷却し、リファレンス測定を実施した後、セルを100℃程度に加熱し、ピリジン(CN)の蒸気をセル内に5分程度導入する。蒸気圧は2.5KPa程度であってよい。ピリジンはシリカアルミナに化学吸着する。一部のピリジンはシリカアルミナに物理吸着する。ピリジンの導入後、セルを150℃程度に加熱して、セル内を60分程度排気する。この加熱及び排気により、物理吸着したピリジンがシリカアルミナから除去される。続いてセルを30℃まで冷却した後、セル内のシリカアルミナのIRスペクトル(拡散反射スペクトル)を測定する。Kubelka−Munk式(KM式)に基づき、拡散反射スペクトルからKM吸光度スペクトルを算出する。KM吸光度スペクトルは、透過法における吸光度スペクトルに相当する。KM吸光度スペクトルにおいて波数が約1540cm−1であるピークPは、ピリジニウムイオンに由来する。ピリジニウムイオンは、ピリジンがシリカアルミナのB酸点に吸着することによって形成される。よって、ピークPの面積は、シリカアルミナのB酸点の数に対応する。KM吸光度スペクトルにおいて波数が約1450cm−1であるピークPは、シリカアルミナのL酸点に配位結合したピリジンに由来する。よって、ピークPの面積は、シリカアルミナのL酸点の数に対応する。ピークP及びピークP其々の面積に基づき、M/Mが算出される。
本実施形態に係る脱水触媒に用いるシリカアルミナとして、既存のシリカアルミナの中から、ケイバン比が18以下であり、ケイ素原子Qの割合が80モル%以上であるシリカアルミナを選定してもよい。
α,β−脂肪族不飽和アルコールの脱水反応の反応温度は、例えば、100〜350℃、又は130〜250℃であってよい。反応温度とは、例えば、脱水触媒(反応器内の脱水触媒層)の温度と言い換えてもよい。反応温度が上記の下限値以上である場合、転化率及び選択率が増加し易い傾向がある。反応温度が上記の上限値以下である場合、炭素の析出による脱水触媒の劣化が抑制され易い傾向がある。
α,β−脂肪族不飽和アルコールの脱水反応は、気相反応であってもよく、液相反応であってもよい。つまり、α,β−脂肪族不飽和アルコールを含むガス状の原料(反応基質)を脱水触媒に接触させてもよく、α,β−脂肪族不飽和アルコールを含む液状の原料(反応基質)を脱水触媒に接触させてもよい。反応基質をガス又は液体で希釈してもよい。α,β−脂肪族不飽和アルコールの分子間脱水によるエーテルの生成が、反応基質の希釈によって抑制される。その結果、転化率及び選択率が増加し易い。例えば、反応基質を有機溶媒で希釈してよい。有機溶媒は、特に限定されない。有機溶媒は、例えば、脱水反応の反応温度において気化する物質であってよい。有機溶媒は、反応基質及び生成物と相溶する物質であってもよい。有機溶媒は、脱水反応を阻害しない物質であってもよい。有機溶媒は、沸点差を利用した分留等によって、脱水反応の生成物から分離し易い物質であってもよい。有機溶媒は、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ドデカン、シクロヘキサン、デカリン、又はトルエンなどであってよい。希釈倍率は、例えば、20倍以下であってよい。希釈に係るコストを抑制するために、希釈倍率は、10倍以下、又は5倍以下であってもよい。
脱水反応が気相反応である場合、ガス空間速度(GHSV)は、例えば、2〜6000h−1であってよい。GHSVは、Vgas/Vcatと定義される。Vcatは、脱水触媒の体積である。Vgasは、脱水触媒に単位時間(1h)当たりに供給されるガス状のα,β−脂肪族不飽和アルコールの体積(流量)である。脱水反応が液相反応であるとき、液空間速度(LHSV)は、例えば、0.01〜20h−1、又0.05〜5h−1であってよい。LHSVは、Vliquid/Vcatと定義される。Vliquidは、脱水触媒に単位時間(1h)当たりに供給される液状のα,β−脂肪族不飽和アルコールの体積(流量)である。GHSV又はLHSVが上記の下限値以上である場合、副生成物の生成が抑制され易い傾向がある。GHSV又はLHSVが上記の上限値以下である場合、転化率が増加し易い傾向がある。
脱水反応が気相反応である場合、反応系の気圧(反応器内の気圧)は、例えば、常圧〜3MPa、又は常圧〜1MPaであればよい。反応系の気圧が上記の下限値以上である場合、プロセス上有利となる傾向がある。反応系の気圧が上記の上限値以下である場合、平衡上有利となり、転化率が増加し易い傾向がある。
反応様式は、例えば、管状反応器等を用いる流通式であってよく、オートクレーブ等を用いるバッチ式であってよい。
以下では実施例及び比較例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。
(実施例1)
[脱水触媒]
実施例1では、脱水触媒として、日揮触媒化成(株)製のシリカアルミナ「IS−28N」を用いた。「IS−28N」を、以下では「シリカアルミナA」又は「A」と記す。シリカアルミナAは、破砕及び分級によって調製された粒子であった。シリカアルミナAの粒径は0.85〜1.4mmであった。シリカアルミナAのケイバン比及びBET比表面積を、下記表1に示す。
<ケイ素原子Qの割合の測定>
シリカアルミナAにおけるケイ素原子Qの割合を、固体高分解能NMR(29Si NMR)によって測定した。固体高分解能NMR装置としては、Varian社製の「Varian NMR system 500」を用いた。測定条件は、以下のように設定した。
29Si共鳴周波数: 99.28MHz。
測定モード: DD/MAS。
観測温度: 300K(室温)。
外部基準物質: シリコーンゴム(化学シフト値は−22.3ppmである)。
シリカアルミナAにおけるケイ素原子Qの割合の測定値を、下記表1に示す。
<n/NACIDの測定>
シリカアルミナAのn/NACIDを、下記のアンモニア昇温脱離法(NH−TPD)に基づき算出した。
シリカアルミナAを測定用セル内に充填した。このセル内へHeガスを流通させながら、約500℃で1時間セル内の減圧乾燥を行い、シリカアルミナAに吸着していた水を除去した。続いて、セル内を約200℃に加熱し、Heガスをセル内へ流通させながら、NHをパルスとしてセル内へ導入することにより、NHをシリカアルミナAに吸着させた。続いて、減圧下においてHeガスを200℃で60分セル内に流通させた。続いて、セルを800℃まで10℃/分の速度で加熱して、各温度においてシリカアルミナなら脱離するNHを質量分析計で定量した。200〜550℃の範囲でシリカアルミナAから脱離したNHの総量から、シリカアルミナAの単位質量当たりの弱酸点の数n[m mol/g]を算出した。シリカアルミナAの温度が550℃を超えてから800℃に達するまでの間に脱離したNHの総量から、シリカアルミナAの単位質量当たりの強酸点の数n[m mol/g]を算出した。n及びnの和から、シリカアルミナAの単位質量当たりの全酸点の数NACIDを求めた。
シリカアルミナAのn/NACIDを、下記表1に示す。
<M/Mの測定>
約10mgのシリカアルミナを秤量して、このシリカアルミナを成型して、直径が約10mmφである円盤を作製した。この成型されたシリカアルミナを加熱拡散反射セル内に充填した。前処理として、セルを500℃程度に加熱しながら、セル内を1時間程度排気した。前処理後、セルを30℃まで冷却し、リファレンス測定を実施した後、セルを100℃程度に加熱し、ピリジン(CN)の蒸気をセル内に5分程度導入した。蒸気圧は2.5KPa程度であった。ピリジンの導入後、セルを150℃程度に加熱して、セル内を60分程度排気した。この加熱及び排気により、シリカアルミナAに物理吸着したピリジンをシリカアルミナから除去した。続いてセルを30℃まで冷却した後、セル内のシリカアルミナAのIRスペクトル(拡散反射スペクトル)を測定した。Kubelka−Munk式(KM式)に基づき、拡散反射スペクトルからKM吸光度スペクトルを算出した。KM吸光度スペクトルにおいて波数が1540cm−1であるピークPの面積を求めた。KM吸光度スペクトルにおいて波数が1454cm−1であるピークPの面積を求めた。ピークP及びピークP其々の面積に基づき、シリカアルミナAのM/Mを算出した。
シリカアルミナAのM/Mを、下記表1に示す。
[クロチルアルコールの脱水反応]
以下のクロチルアルコールの脱水反応を行った。クロチルアルコールは、炭素数が4以上であるα,β−脂肪族不飽和アルコールの一種である。
クロチルアルコールを、クロチルアルコールの2倍の質量のヘキサンで希釈して、原料R2を調製した。クロチルアルコールを、クロチルアルコールの5倍の質量のヘキサンで希釈して、原料R5を調製した。
3mLの脱水触媒を、反応管に充填した。反応管はSUS製であり、反応管の内径は10mmであった。反応管の内部の温度を250℃に維持し、反応管の内部の気圧を常圧に維持して、以下の順序で、原料R2及び原料R5を気相として反応管内に流通させた。
まず原料R5を、0.45ml/minで1時間反応管内に流通させた。続いて、原料R5を、0.90ml/minで30分間反応管内に流通させた。続いて、原料R2を、0.225ml/minで2時間反応管内に流通させた。続いて、原料R2を、0.45ml/minで1時間反応管内に流通させた。最後に、原料R5を、0.45ml/minで30分間反応管内に流通させた。最後の30分間に反応管から排出されたガス(生成ガス)を採取した。
生成ガスをガスクロマトグラフィーで分析した。ガスクロマトグラフィーは、下記の条件下で行った。
ガスクロマトグラフ: Agilent社 社製の6850。
カラム: HP−1。
検出器: 水素炎イオン検出器(FID)。
インジェクション温度: 250 ℃。
ディテクター温度: 300 ℃。
水素流量: 30 mL/分。
Air流量 400 mL/分。
ガスクロマトグラフィーによる分析の結果、生成ガスは1,3−ブタジエン(C)を含むことが確認された。1,3−ブタジエンは、共役ジエンの一種である。生成ガス中には、未反応のクロチルアルコールが残存していることが確認された。下記式1によって、転化率Rを算出した。下記式2によって、選択率Rを算出した。実施例1の転化率R及び選択率Rを下記表1に示す。
転化率R(モル%)={1−(m/m)}×100 (式1)
選択率R(モル%)={m/(m−m)}×100 (式2)
は、最後の30分間に反応管へ供給した原料R5に含まれていたクロチルアルコールのモル数である。mは、原料R5についてのガスクロマトグラフィーに基づいて求められた値である。mは、生成ガス中に残存していたクロチルアルコールのモル数である。mは、生成ガスに含まれていた1,3−ブタジエンのモル数である。m及びmは、生成ガスについてのガスクロマトグラフィーに基づいて求められた値である。
(実施例2,3、比較例1〜6)
脱水触媒の種類を除いて実施例1と同様の方法で、実施例2,3及び比較例1〜6其々のクロチルアルコールの脱水反応を行った。
実施例2では、脱水触媒として、シリカアルミナAの代わりに、日揮触媒化成(株)製のシリカアルミナ「N632HN」を用いた。「N632HN」を、以下では「シリカアルミナB」又は「B」と記す。
実施例3では、脱水触媒として、シリカアルミナAの代わりに、日揮触媒化成(株)製のシリカアルミナ「N632L」を用いた。「N632L」を、以下では「シリカアルミナC」又は「C」と記す。
比較例1では、脱水触媒として、シリカアルミナAの代わりに、富士シリシア化学(株)製のシリカアルミナ「308」を用いた。「308」を、以下では「シリカアルミナD」又は「D」と記す。
比較例2では、脱水触媒として、シリカアルミナAの代わりに、エヌ・イー ケムキャット(株)製のシリカアルミナ「F24x」を用いた。「F24x」を、以下では「シリカアルミナE」又は「E」と記す。
比較例3では、脱水触媒として、シリカアルミナAの代わりに、エヌ・イー ケムキャット(株)製のシリカアルミナ「F25」を用いた。「F25」を、以下では「シリカアルミナF」又は「F」と記す。
比較例4では、脱水触媒として、シリカアルミナAの代わりに、東ソー(株)製のゼオライト「HSZ−640HOD1A」を用いた。「HSZ−640HOD1A」を、以下では「ゼオライトG」又は「G」と記す。
比較例5では、脱水触媒として、シリカアルミナAの代わりに、東ソー(株)製のゼオライト「HSZ−842HOD1C」を用いた。「HSZ−842HOD1C」を、以下では「ゼオライトH」又は「H」と記す。
比較例6では、脱水触媒として、シリカアルミナAの代わりに、住友化学(株)製のγ‐アルミナ「KHO−12」を用いた。「KHO−12」を、以下では「γ-アルミナI」又は「I」と記す。
B,C,D,E,F,G及びH其々のケイバン比を、下記表1に示す。B,C,D,E,F及びI其々のBET比表面積を、下記表1に示す。実施例1と同様の方法で測定したB,C,D,E及びF其々のケイ素原子Qの割合を、下記表1に示す。実施例1と同様の方法で算出したB,C,D,E,F,G,H及びI其々のn/NACIDを、下記表1に示す。実施例1と同様の方法で算出したB及びC其々のM/Mを、下記表1に示す。
実施例1と同様の方法で、実施例2,3及び比較例1〜6其々の脱水反応の生成ガスを分析した。実施例2,3及び比較例1〜6の生成ガスのいずれも、1,3−ブタジエンを含むことが確認された。また、実施例2,3及び比較例1〜6の生成ガスのいずれにおいても、未反応のクロチルアルコールが残存していることが確認された。実施例1と同様の方法で求めた実施例2,3及び比較例1〜6其々の転化率R及び選択率Rを、下記表1に示す。
Figure 0006081950
表1に示すに、全実施例の転化率R及び選択率Rは全比較例の転化率R及び選択率Rよりも高いことが確認された。
ケイバン比が18より大きく、アルミナ由来の酸点の数が少ないシリカアルミナDを用いた比較例1では、シリカアルミナDの劣化が早く、転化率Rが低かった。ヒドロキシ基と直接結合していないケイ素原子Qの割合が小さいシリカアルミナE,Fを用いた比較例2,3では、脱水反応時に生成した水がシリカアルミナに吸着して、反応系外に排出され難かったため、脱水反応が進行し難く、転化率R及び選択率Rが共に低かった。
本発明に係る脱水触媒を用いた脂肪族不飽和アルコールの脱水反応によれば、共役ジエンを高い転化率及び選択率で製造することができる。

Claims (4)

  1. シリカアルミナを備え、
    前記シリカアルミナのケイバン比が18以下であり、
    前記シリカアルミナに含まれる全てのケイ素原子のうち、ヒドロキシ基と直接結合していないケイ素原子Qの割合が、80モル%以上であり、
    炭素数が4以上であるα,β−脂肪族不飽和アルコールを脱水して、共役ジエンを生成させる、
    脱水触媒。
  2. 前記ケイバン比が11以下である、
    請求項1に記載の脱水触媒。
  3. 前記α,β−脂肪族不飽和アルコールが、クロチルアルコールであり、
    前記共役ジエンが、1,3−ブタジエンである、
    請求項1又は2に記載の脱水触媒。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項に記載の脱水触媒を用いて、炭素数が4以上であるα,β−脂肪族不飽和アルコールを脱水して、共役ジエンを生成させる工程を備える、
    共役ジエンの製造方法。
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