JP6080422B2 - 感震装置の検査方法及び感震装置の検査装置 - Google Patents

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本発明は、直流電力を供給する電源回路と、当該電源回路から電力を供給されて、水平方向の加速度を検出する第1加速度計と、第1加速度計の方向に直交する水平方向の加速度を検出する第2加速度計とを備え、当該第1加速度計又は前記第2加速度計の検出結果を出力する感震装置の検査方法及び感震装置の検査装置に関する。
従来、地震動を感知する感震装置として、電源回路から電力を供給されて、水平方向の加速度を検出する第1加速度計と、第1加速度計の方向に直交する水平方向の加速度を検出する第2加速度計とを備え、これらの加速度計に直流電力を供給する電源回路とを備えたものが知られている(特許文献1を参照)。
当該特許文献1に開示の感震装置では、第1加速度計及び第2加速度計にて検知された加速度としてのアナログ信号が、ローパスフィルタにより低周波成分を除かれた後、A/Dコンバータにてサンプリングされ、デジタル信号として出力される。
特許第4510071号公報
上述した特許文献1に開示の感震装置は、一日の温度サイクルが、比較的低い最低温度から、最高温度まで徐々に上昇する環境で使用されるのであるが、感震装置によっては、このような温度変化環境で使用する場合、第1加速度計、第2加速度計の何れか一方、又は両方が、異常信号を出力することがあった。
当該異常信号につき、具体的に、図4に例示する。
図4は、感震装置を、実際の使用環境に設置したときの、第1加速度計の出力(X軸加速度計の出力として表示)と、第2加速度計の出力(Y軸加速度計の出力として表示)とを示している。
当該図4では、感震装置が設置された使用環境において地震動が発生しなかったにも拘わらず、X軸加速度計の出力が、12:00から17:00までの間に、正常信号の振幅を大きく超える振幅を有する異常信号が出力されている。
発明者らは、この異常信号を発生した感震装置について、日本工業規格の規格番号C60068−2−14の定速温度変化試験を実施済みであり、当該定速温度変化試験にて正常であると判定された感震装置であった。
本願の発明者らは、このような問題に着目し、鋭意検討した結果、感震装置が上述のような異常信号を出力するものであるか否かを検査可能な検査方法及び検査装置を新たに見出した。
即ち、本願は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、従来の検査方法にて正常であると判定された感震装置であっても、使用環境によっては、異常信号を出力する場合がある感震装置を、信頼性高く検査するための検査方法、及び検査装置を提供する点にある。
〔構成1〕
上記目的を達成するための感震装置の検査方法は、
直流電力を供給する電源回路と、
当該電源回路から電力を供給されて、水平方向の加速度を検出する第1加速度計と、当該第1加速度計の方向に直交する水平方向の加速度を検出する第2加速度計とを備え、前記第1加速度計又は前記第2加速度計の検出結果を出力する感震装置の検査方法であって、その第1特徴構成は
記感震装置の使用環境における一日の温度サイクルのうち最低温度未満の温度である検査開始温度から、一日の温度サイクルのうち最高温度より高い温度である検査終了温度まで、7℃/時間以上10℃/時間以下の検査温度変化率で環境温度を変化させる温度変化工程と、
前記温度変化工程において、前記感震装置から異常信号が出力されたか否かを判定する出力判定工程を有する点にある。
上記目的を達成するための本発明の感震装置の検査装置は、
直流電力を供給する電源回路と、
当該電源回路から電力を供給されて、水平方向の加速度を検出する第1加速度計と、当該第1加速度計の方向に直交する水平方向の加速度を検出する第2加速度計とを備え、前記第1加速度計又は前記第2加速度計の検出結果を出力する感震装置の検査装置であって、その第1特徴構成は
記感震装置の使用環境における一日の温度サイクルのうち最低温度未満の温度である検査開始温度から、前記一日の温度サイクルのうち最高温度より高い温度である検査終了温度まで、7℃/時間以上10℃/時間以下の検査温度変化率で環境温度を変化させる温度変化手段と、
前記温度変化手段において、前記感震装置から異常信号が出力されたか否かを判定する出力判定手段とを有する点にある。
一般的な使用環境では、環境温度は、日本工業規格の定速温度変化試験にて推奨される基準温度変化率よりも、かなり小さい温度変化率(具体的には、7℃/時間以上10℃/時間以下の温度変化率)にて変化する。従って、本願が検査対象とする感震装置でも同様な温度履歴を辿る。
そこで、本発明にあっては、その温度変化工程において、検査開始温度から検査終了温度までの温度変化率を、日本工業規格の定速温度変化試験にて推奨される基準温度変化率よりも小さい検査温度変化率(7℃/時間以上10℃/時間以下の温度変化率)で、温度変化させることにより、使用環境の温度変化率に近い状態で、温度変化工程を実行する。
そして、このように使用環境に近い温度変化状態を再現した温度変化工程において、感震装置から異常信号が出力されたか否かを判定する出力判定工程を実行することにより、実際の使用環境において、異常信号がでるものか否かを、信頼性高く判定することができる。
本発明の感震装置の検査方法の更なる特徴構成は、
前記温度変化工程を行う温度変化時間は、8時間以上16時間以下である点にある。
本発明にあっては、温度変化工程を行う温度変化時間は、一般的な使用環境において、一日の温度サイクルで最低温度から最高温度まで変化するのにかかる時間である8時間以上で、最低温度から最高温度を介してさらに最低温度に変化する16時間以下とすることで、実際の使用環境で温度変化する時間幅に合わせた状態で、温度変化工程を実行することができる。
本発明の感震装置の検査方法の更なる特徴構成は、
前記検査開始温度は、−20℃以下の温度であり、
前記検査終了温度は、60℃以上の温度である点にある。
本発明にあっては、検査開始温度を、−20℃以下の温度とし、検査終了温度は、60℃以上の温度とすることが好ましい。これにより、感震装置が、使用環境において温度変化する範囲を確実にカバーした状態で、その検査を実行できる。
本発明の感震装置の検査方法の更なる特徴構成は、
前記温度変化工程及び前記出力判定工程は、少なくとも複数回実行される点にある。
上記特徴構成によれば、温度変化工程において出力判定工程の実行を、複数回に亘って実行することで、その検査の信頼性を高めることができる。
また、これまで説明してきた感震装置の検査方法及び検査装置は、特に、内部にスイッチング回路を有する直流電源と内部に発信回路を有する加速度計を備えた感震装置を対象として、その検査を行うことができる。スイッチング回路及び発信回路は、高速で出力を変化させる電気機器であり、微妙な温度変化が発生した場合に、時として、複合的に異常信号を発生することがあるためである。
感震装置の検査装置の概略構成図 検査対象の感震装置のブロック図 検査方法における温度変化工程を説明するためのグラフ図 使用環境に設置された感震装置の出力変化を示すグラフ図
本発明の警報装置50の検査装置100は、日本工業規格にて規格番号C60068−2−14にて規定されている定速温度変化試験にて規定されている温度変化率の推奨値として、60℃/時間程度の比較的速い変化率においては、正常に作動すると判定されたものであっても、実際の使用環境において、図4に示すような異常信号を出力する場合がある感震装置50が、異常と判定すべきものであることを、判定することができるものである。
当該検査装置100の説明に先立ち、検査対象である感震装置50の構成について、説明する。
〔感震装置の基本構成〕
感震装置50には、図2に示すように、外部から供給される12Vの直流電圧を5Vの直流電圧に変換して後述するX軸加速度計52及びY軸加速度計53に電力を供給するDC/DC電源51が設けられている。
そして、地震動の進行方向に沿った方向であるX軸方向に関しては、当該X軸方向の加速度を検出するX軸加速度計52(第1加速度計の一例)と、X軸加速度計52の出力を増幅するX軸ゲインアンプ52aと、X軸ゲインアンプ52aにて増幅された信号の低周波成分をカットするX軸LPF回路52bとが設けられている。
因みに、X軸ゲインアンプ52aは、電源電圧、温度等によらず一定の電圧を出力するX軸リファレンス回路52cから一定電圧(ここでは、0V)が入力されると共に、増幅量の変化度合いを調整するためのX軸ゲイン調整回路52dから調整電圧(ここでは、1V)が入力されるように構成されている。
一方、地震動の進行方向に直交する方向であるY軸方向に関しては、当該Y軸方向の加速度を検出するY軸加速度計53(第2加速度計の一例)と、Y軸加速度計53の出力を増幅するY軸ゲインアンプ53aと、Y軸ゲインアンプ53aにて増幅された信号の低周波成分をカットするY軸LPF回路53bとが設けられている。
Y軸ゲインアンプ53aは、X軸ゲインアンプ52aと同様に、Y軸リファレンス回路53cから一定電圧が入力されると共に、Y軸ゲイン調整回路53dから調整電圧が入力されるように構成されている。
ここで、本願の発明者らは、鋭意検出した結果、DC/DC電源51が、内部にスイッチング回路を有するため単独で定常ノイズを発生する虞があると共に、X軸加速度計52及びY軸加速度計53が、内部に発信回路を有するため単独で定常ノイズを発生する虞があり、当該定常ノイズが原因で異常信号が発生する場合があるという知見を、新たに得た。このような異常信号は、誤作動の原因となるため、できる限り、発生しないことが好ましい。
しかしながら、このような異常信号は、従来の定速温度変化試験では、出力されるものではないと共に、特定の時間(例えば、定期的に)必ず出力されるものでもなく、特定の温度となった場合に必ず出力されるといったものでもないため、感震装置50が当該異常信号を出力するものか否かは、容易に判定することはできなかった。
但し、発明者らは、内部にスイッチング回路を有する直流電源51及び内部に発信回路を有する加速度計52、53が、複合的に、本願において問題とする感震装置50の温度変化が小さい側の挙動を引き起こしているのではないかと推定している。
そこで、本願の発明者らは、このような異常信号を出力する感震装置50か否かを判定可能な検査装置100を開発した。
尚、上述した感震装置50では、図2に網掛け部分として示すように、自己診断のために、自己診断用の信号であるBIT信号を、X軸加速度計52に入力するように構成されると共に、BIT信号の入力によりX軸加速度計52から出力された固定信号と、発信回路54から出力される信号との論理積を反転して出力するX軸NANDゲート52eを備えており、Y軸加速度計53に関しても同様の回路が設けられている。
しかしながら、本願の発明者らは、これらの自己診断用の回路は、上述した異常信号を発生する原因ではないと考えているため、ここでは、その詳細な説明は割愛する。
〔検査装置〕
検査装置100は、図1に示すように、感震装置50を、その外部から外部電源11により電力供給可能な状態、且つ、その出力を外部の制御装置Sへ出力可能な状態で、内部に配設可能な恒温槽12と、当該恒温槽12の内部の温度を測定する温度センサ13と、恒温槽12の内部を昇温可能な加熱ヒータ14と、恒温槽12の内部を降温可能な冷却装置15と、温度センサ13の測定結果に基づいて、加熱ヒータ14及び冷却装置15とを働かせて、恒温槽12の内部の温度を制御すると共に、感震装置50からの出力に異常信号が含まれているか否かを判定する制御装置Sとを備えている。
冷却装置15は、液体窒素等の冷却用流体を貯留可能な貯留部15aと、当該貯留部15aに貯留された冷却用流体を恒温槽12の内部へ供給する供給路15bと、当該供給路15bを通流する冷却用流体の流量を調整する流量調整弁15cとを備えて構成されている。
制御装置Sは、加熱ヒータ14の加熱状態を制御する加熱源制御部S2と、冷却装置15の冷却用流体の流量を調整する流量調整弁15cの開度状態を制御する冷却源制御部S3と、温度センサ13にて測定された温度に基づいて、加熱源制御部S2と冷却源制御部S3とを働かせる温度制御部S1とを備えると共に、感震装置50の出力に異常信号が含まれているか否かを判定する出力判定部S4とを備えている。
制御装置Sは、図3に示すように、検査の実行において、感震装置50の使用環境における一日の温度サイクルのうち最低温度未満の温度である検査開始温度(例えば、−20℃)から、一日の温度サイクルのうち最高温度より高い温度である検査終了温度(例えば、60℃)まで、上述した従来の定速温度変化試験にて規定される基準温度変化率β(例えば、60℃/時間)より小さい検査温度変化率α(7℃/時間以上10℃/時間以下の温度変化率)で、温度変化工程を実行する温度変化手段として働く。
ここで、検査温度変化率は、感震装置50の使用環境での温度変化率に近いものとするため、基準温度変化率(60℃/時間)の20%以下(12℃/時間以下)程度とすることが好ましい。
また、温度変化工程にかける時間は、使用環境に沿った時間とするために、一日の温度サイクルにおいて、最低温度から最高温度になるまでにかかる時間である8時間程度から、最低温度から最高温度となり再度最低温度になるまでにかかる時間である16時間程度までであることが好ましい。
制御装置Sは、上述した温度変化工程において、その出力判定部S4において、感震装置50の出力を監視し、当該出力の振幅が、判定閾値以上となった場合に、その感震装置50が異常信号を出力する虞のあるものであると判定し、判定閾値未満となった場合に、その感震装置50が異常信号を出力する虞のないものであると判定する出力判定工程を実行する、出力判定手段として働く。
制御装置Sは、当該温度変化工程及び出力判定工程を、複数回(具体的には、2〜5回程度)行うことで、その判定精度を向上させることができる。
本発明の感震装置の検査装置及び検査方法は、従来の検査方法にて正常であると判定された感震装置であっても、使用環境によっては、異常信号を出力する場合がある感震装置を、精度良く検査可能な、検査方法、及び検査装置として、有効に利用可能である。
50 :感震装置
51 :DC/DC電源
52 :X軸加速度計
53 :Y軸加速度計
100 :検査装置
S :制御装置
S1 :温度制御部
S4 :出力判定部

Claims (7)

  1. 直流電力を供給する電源回路と、
    当該電源回路から電力を供給されて、水平方向の加速度を検出する第1加速度計と、当該第1加速度計の方向に直交する水平方向の加速度を検出する第2加速度計とを備え、前記第1加速度計又は前記第2加速度計の検出結果を出力する感震装置の検査方法であって
    記感震装置の使用環境における一日の温度サイクルのうち最低温度未満の温度である検査開始温度から、一日の温度サイクルのうち最高温度より高い温度である検査終了温度まで、7℃/時間以上10℃/時間以下の検査温度変化率で環境温度を変化させる温度変化工程と、
    前記温度変化工程において、前記感震装置から異常信号が出力されたか否かを判定する出力判定工程を有する感震装置の検査方法。
  2. 前記温度変化工程を行う温度変化時間は、8時間以上16時間以下である請求項1に記載の感震装置の検査方法。
  3. 前記検査開始温度は、−20℃以下の温度であり、
    前記検査終了温度は、60℃以上の温度である請求項1又は2に記載の感震装置の検査方法。
  4. 前記温度変化工程及び前記出力判定工程は、少なくとも複数回実行される請求項1〜3の何れか一項に記載の感震装置の検査方法。
  5. 前記電源回路が、内部にスイッチング回路を有するものであり、
    前記第1加速度計及び前記第2加速度計が、内部に発信回路を有するものである請求項1〜4の何れか一項に記載の感震装置の検査方法。
  6. 直流電力を供給する電源回路と、
    当該電源回路から電力を供給されて、水平方向の加速度を検出する第1加速度計と、当該第1加速度計の方向に直交する水平方向の加速度を検出する第2加速度計とを備え、前記第1加速度計又は前記第2加速度計の検出結果を出力する感震装置の検査装置であって、
    前記感震装置の使用環境における一日の温度サイクルのうち最低温度未満の温度である検査開始温度から、前記一日の温度サイクルのうち最高温度より高い温度である検査終了温度まで、7℃/時間以上10℃/時間以下の検査温度変化率で環境温度を変化させる温度変化手段と、
    前記温度変化手段において、前記感震装置から異常信号が出力されたか否かを判定する出力判定手段とを有する感震装置の検査装置。
  7. 前記電源回路が、内部にスイッチング回路を有するものであり、
    前記第1加速度計及び前記第2加速度計が、内部に発信回路を有するものである請求項6に記載の感震装置の検査装置。
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