以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、先行する実施形態で説明した事項と互いに同一もしくは均等である部分には、同一の参照符号を付し、その説明を省略する場合がある。
(第1実施形態)
第1実施形態について説明すると、本実施形態では、本発明のヒートポンプ用差圧弁16(以下、単に差圧弁16と記載する。)を備えるヒートポンプサイクル10を、走行用電動モータから車両走行用の駆動力を得る電気自動車の車両用空調装置1に適用している。
ヒートポンプサイクル10は、車両用空調装置1において、空調対象空間である車室内へ送風される室内送風空気を熱交換対象流体とし、室内送風空気を冷却あるいは加熱する機能を果たす。
本実施形態のヒートポンプサイクル10は、車室内を冷房する冷房運転モードや車室内を除湿しながら暖房する除湿暖房運転モードの冷媒回路(図1)、および車室内を暖房する暖房運転モードの冷媒回路(図2、図3)を切替可能に構成されている。
また、本実施形態のヒートポンプサイクル10では、後述するように暖房運転モードとして、外気温が極低温時(例えば、0℃以下の時)に実行される第1暖房モードの冷媒回路(図2)、通常の暖房が実行される第2暖房モード(図3)の冷媒回路を切替可能に構成されている。
本実施形態では、図2に示す第1暖房モードの冷媒回路がガスインジェクションサイクル(二段圧縮サイクル)を構成し、冷房運転モードおよび除湿暖房モードの冷媒回路や第2暖房モードの冷媒回路が通常サイクル(一段圧縮サイクル)を構成している。
従って、本実施形態のヒートポンプサイクル10は、ガスインジェクションサイクル(二段圧縮サイクル)、およびガスインジェクションサイクル以外の通常サイクル(一段圧縮サイクル)に切り替え可能なサイクルとして構成されている。なお、図1の全体構成図は、冷房運転モードおよび除湿暖房運転モードに切り替えた際の冷媒回路を示しており、図2、図3の全体構成図が暖房運転モードに切り替えた際の冷媒回路を示している。また、図1〜図3では、それぞれの運転モードにおける冷媒の流れを実線矢印で示している。
ヒートポンプサイクル10では、冷媒としてHFC系冷媒(例えば、R134a)を採用しており、高圧側冷媒圧力が冷媒の臨界圧力を超えない蒸気圧縮式の亜臨界冷凍サイクルを構成している。勿論、HFO系冷媒(例えば、R1234yf)や二酸化炭素CO2等を採用してもよい。なお、冷媒には圧縮機11を潤滑するための冷凍機油が混入されており、冷凍機油の一部は冷媒とともにサイクルを循環している。
ヒートポンプサイクル10の構成機器のうち、圧縮機11は、車両のボンネット内に配置され、ヒートポンプサイクル10において冷媒を吸入し、圧縮して吐出するものである。圧縮機11は、外殻を構成するハウジング内部に、圧縮室11a内の冷媒を圧縮する圧縮機構、および圧縮機構を回転駆動する電動モータを収容して構成された電動圧縮機で構成されている。
圧縮機11のハウジングには、圧縮室11aへ低圧冷媒を吸入させる吸入ポート11b、圧縮室11aから高圧冷媒を吐出する吐出ポート11c、サイクルの中間圧冷媒を圧縮室11aへ導くと共に、圧縮過程の冷媒に合流させる中間圧ポート11dが設けられている。
なお、本実施形態では、圧縮機11の圧縮機構として、作動停止時に中間圧ポート11dと圧縮室11aとの間が連通する圧縮機構を採用している。すなわち、本実施形態の圧縮機11は、回転角を検出するセンサを用いて停止位置を制御すること等により、作動停止時に中間圧ポート11dと圧縮室11aとの間が遮断されない構成となっている。
従って、本実施形態のヒートポンプサイクル10では、冷媒充填作業において、圧縮機11の中間圧ポート11d側から真空引きを実施可能となっている。なお、圧縮機11の圧縮機構としては、作動停止時に中間圧ポート11dと圧縮室11aとの間が連通する圧縮機構であれば、スクロール型圧縮機構、ベーン型圧縮機構、ローリングピストン型圧縮機構等の各種形式のものを採用することができる。
また、圧縮機11には、中間圧ポート11dに接続される後述の中間圧冷媒通路15側から圧縮室11aへの冷媒の流入を許容し、圧縮室11aから中間圧冷媒通路15側への冷媒の流入を禁止する逆止弁11eが内蔵されている。これにより、圧縮室11aの冷媒圧力が中間圧冷媒通路15の冷媒圧力(中間圧ポート11d側の冷媒圧力)よりも高くなった際に、中間圧ポート11dを介して圧縮室11aから中間圧冷媒通路15側へ冷媒が逆流してしまうことを防止できる。
電動モータは、後述する空調制御装置40から出力される制御信号によって、その作動(回転数)が制御されるもので、交流モータ、直流モータのいずれの形式を採用してもよい。そして、この回転数制御によって、圧縮機11の冷媒吐出能力が変更される。従って、本実施形態では、電動モータが圧縮機11の吐出能力変更手段を構成している。
なお、圧縮機11は、中間圧ポート11dから中間圧冷媒を流入させて圧縮過程の冷媒に合流させると共に、圧縮機構により中間圧ポート11dと圧縮室11aとの間が一時的に閉塞される構成であれば、複数の圧縮機構を有する形式の圧縮機を採用してもよい。
圧縮機11の吐出ポート11cには、室内凝縮器12の冷媒入口側が接続されている。室内凝縮器12は、後述する室内空調ユニット30の空調ケース31内に配置され、圧縮機11から吐出された高圧冷媒を放熱させて、後述する室内蒸発器23を通過した室内送風空気を加熱する放熱器である。
室内凝縮器12の冷媒出口側には、室内凝縮器12から流出した高圧冷媒を中間圧冷媒となるまで減圧可能な高段側膨脹弁13の入口側が接続されている。この高段側膨脹弁13は、絞り開度を変更可能に構成された弁体と、この弁体の絞り開度を変化させるステッピングモータからなる電動アクチュエータとを有して構成される電気式の可変絞り機構である。
高段側膨脹弁13は、減圧作用を発揮する絞り状態と減圧作用を発揮しない全開状態とに設定可能に構成されている。換言すれば、本実施形態の高段側膨脹弁13は、室内凝縮器12から流出した冷媒を少なくとも中間圧冷媒となるまで減圧させる絞り状態に設定可能に構成されている。
具体的には、高段側膨脹弁13では、冷媒を減圧させる際に、絞り通路面積が相当直径φ0.5〜φ3mmとなる範囲で絞り開度を変化させるように構成されている。また、高段側膨脹弁13は、絞り開度を全開とする際に、絞り通路面積を相当直径φ10mm程度確保して、冷媒減圧作用を発揮させないようにすることもできる。なお、高段側膨脹弁13は、空調制御装置40から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
高段側膨脹弁13の出口側には、統合弁14の冷媒の入口側が接続されている。この統合弁14は、ヒートポンプサイクル10をガスインジェクションサイクルとして機能させるために必要な構成機器の一部を一体的に構成したものであり、サイクルを循環する冷媒の冷媒回路を切り替える冷媒回路切替手段としての機能を果たす。
具体的には、統合弁14は、冷媒の気液を分離する気液分離手段(気液分離空間141b)、気液分離手段で分離された液相冷媒を減圧させる減圧手段(固定絞り17等)、気液分離手段で分離された気相冷媒の冷媒通路を開閉する差圧弁16等により構成されている。なお、差圧弁16は、減圧手段(固定絞り17等)の前後の圧力差に応じて中間圧冷媒通路15を開閉する中間圧開閉弁として機能する。
統合弁14の詳細については、図4〜図8を用いて説明する。図4、図5は、統合弁14の模式的な上下方向断面図である。なお、図4、図5における上下の各矢印は、統合弁14を車両用空調装置1に搭載した状態における上下の各方向を示している。このことは、以降の実施形態においても同様である。
統合弁14は、その外殻を形成すると共に、内部に差圧弁16等を収容するハウジング140を有している。ハウジング140は、その軸方向が上下方向に延びる略角筒状の金属ブロック体(例えば、アルミニウム)で構成されている。本実施形態のハウジング140は、下方側に配置されるロワーブロック141、およびロワーブロック141の上方側に取り付け固定されるアッパーブロック142によって構成されている。
ロワーブロック141には、その内部に高段側膨脹弁13から流出した冷媒の気液を分離する気液分離空間141bが形成されている。この気液分離空間141bは、その軸線方向が上下方向に延びる円柱状に形成されている。
また、ロワーブロック141は、その外側壁面に高段側膨脹弁13からの冷媒を流入させる冷媒流入口141aが形成されている。この冷媒流入口141aは、気液分離空間141bの内側壁面に開口する冷媒導入穴141gを介して、気液分離空間141bに連通している。
ここで、冷媒流入口141aから冷媒導入穴141gへ至る冷媒通路を構成する冷媒導入通路141hは、気液分離空間141bの軸線方向から見たときに、気液分離空間141bの内側壁面の接線方向に延びるように形成されている。
これにより、冷媒流入口141aから気液分離空間141bに流入した冷媒は、気液分離空間141bの内側壁面に沿って旋回して流れる。そして、この旋回流れによって生ずる遠心力により、気液分離空間141bに流入した冷媒の気液が分離され、分離された液相冷媒が重力により気液分離空間141bの下方側へ落下する。なお、本実施形態の気液分離空間141bは、遠心分離方式の気液分離手段を構成している。
ロワーブロック141の気液分離空間141bの下方側には、分離された液相冷媒を液相冷媒通路141d側へ流出させる液相側流出穴141cが形成されている。液相冷媒通路141dは、気液分離空間141bの下方側に形成されており、気液分離空間141bから流出した冷媒を、統合弁14の外部へ流出させる液相側流出口141e側へ導く冷媒通路である。
より具体的には、液相冷媒通路141dは、気液分離空間141bの軸線方向に垂直な方向(本実施形態では水平方向)に延びて、ロワーブロック141の中心部を通過して側面同士を貫通するように形成された貫通穴により構成されている。なお、液相冷媒通路141dを構成する貫通穴の一端側の開口部が、液相側流出口141eを構成している。
この液相冷媒通路141dの内部には、液相冷媒通路141dを開閉する液相側弁体181、液相側弁体181に液相冷媒通路141dを閉じる方向へ荷重をかけるスプリング181a等が収容されている。
スプリング181aは、液相側弁体181に対し、液相側弁体181の先端部に配置された樹脂性の環状のシール部材181bを液相冷媒通路141dに形成された弁座部141fに押し付けてシール性を高める方向へ荷重をかけるものである。なお、弁座部141fは、シール部材181bに適合する環状の突起部により構成されている。
液相側弁体181には、シャフト181cを介してソレノイドアクチュエータ182(以下、単にソレノイド182と記載する。)の可動部材に連結されている。ソレノイド182は、給電により電磁力を発生させて可動部材を変位させる駆動機構であり、後述の空調制御装置40からの出力される制御電圧によって、その作動が制御される。
本実施形態では、空調制御装置40がソレノイド182へ給電すると、可動部材に作用する電磁力によって、シャフト181cを介して液相側弁体181に液相冷媒通路141dを開く側の荷重がかかるようになっている。そして、電磁力による荷重がスプリング181aによる荷重を上回ることで、図4に示すように、液相側弁体181が弁座部141fから離間する位置に変位する。これにより、液相冷媒通路141dが開放される。
なお、ソレノイド182への給電が停止されると、可動部材に電磁力が作用せず、スプリング181aによる荷重によって、図5に示すように、液相側弁体181が弁座部141fへ当接する位置に変位する。これにより、液相冷媒通路141dが閉鎖される。
本実施形態の液相側弁体181、ソレノイド182といった液相冷媒通路141dを開閉する構成は、ノーマルクローズ型の電磁弁18を構成している。なお、ソレノイド182は、液相冷媒通路141dを構成する貫通穴の他端側の開口部を閉塞する閉塞部材としても機能している。
ここで、ロワーブロック141には、液相側弁体181が液相冷媒通路141dを閉じた際に、気液分離空間141bから流入した冷媒を減圧させて液相側流出口141e側へ流出させる固定絞り17が形成されている。
液相側弁体181が液相冷媒通路141dを開いた状態で、冷媒が液相冷媒通路141dを通過する際に生ずる圧力損失は、冷媒が固定絞り17を通過する際に生ずる圧力損失に対して極めて小さい。
このため、液相側弁体181が液相冷媒通路141dを開いた状態では、冷媒が、固定絞り17にて減圧されることなく、弁座部141fの内周側に形成された冷媒通路を介して液相側流出口141eから流出する。
一方、液相側弁体181が液相冷媒通路141dを閉じた状態では、冷媒が固定絞り17にて減圧され、固定絞り17にて減圧された冷媒が液相側流出口141eから流出する。
本実施形態の統合弁14は、液相側弁体181による液相冷媒通路141dの開閉により、気液分離空間141bにて分離された液相冷媒を減圧する絞り状態、および気液分離空間141bを通過した冷媒を減圧しない全開状態に切替可能となっている。なお、本実施形態では、統合弁14における固定絞り17および電磁弁18が、気液分離手段で分離された液相冷媒を減圧可能な減圧手段を構成している。
ここで、固定絞り17としては、絞り開度が固定されたノズル、オリフィス等を採用することができる。ノズル、オリフィス等の固定絞りでは、絞り通路面積が急縮小あるいは急拡大するので、上流側と下流側との圧力差(出入口間差圧)の変化に伴って、固定絞りを通過する冷媒の流量および固定絞り上流側冷媒の乾き度を自己調整(バランス)することができる。
具体的には、圧力差が比較的大きい場合には、サイクルを循環させる必要のある必要循環冷媒流量が減少するに伴って、固定絞り上流側冷媒の乾き度が大きくなるようにバランスする。一方、圧力差が比較的小さい場合には、必要循環冷媒流量が増加するに伴って、固定絞り上流側冷媒の乾き度が小さくなるようにバランスする。
続いて、アッパーブロック142について説明する。アッパーブロック142は、差圧弁16を構成する各種部品(主弁部材161、弾性部材162等)を収容するボデーを構成している。
本実施形態のアッパーブロック142は、その外側壁面に圧縮機11の中間圧ポート11d側に気相冷媒を流出させる冷媒流出部142aが形成されている。なお、図示しないが冷媒流出部142aには、中間圧ポート11dへ導く中間圧冷媒通路15が接続されている。
アッパーブロック142は、その内部に気液分離空間141bにて分離された気相冷媒が流通する気相冷媒通路142bが形成されている。この気相冷媒通路142bは、後述の冷媒流入部142dから流入した気相冷媒を冷媒流出部142aに導く冷媒通路である。
アッパーブロック142は、ロワーブロック141と一体化した際に、気液分離空間141bと同軸上に配置される丸管状のパイプ部142cが設けられている。なお、気液分離空間141bに流入した冷媒は、パイプ部142cの周囲を旋回して流れる。
このパイプ部142cは、最も下方側の下方端部が気液分離空間141bの内部に位置付けられるように延びており、当該下方端部に、気液分離空間141bにて分離された気相冷媒を気相冷媒通路142bへ流入させる冷媒流入部142dが形成されている。
本実施形態の気相冷媒通路142bは、パイプ部142c内側の空間、およびアッパーブロック142における気液分離空間141bの軸線方向に垂直に延びる有底穴の一部で構成されている。この有底穴の底面の側壁面には、冷媒流出部142aが開口している。また、有底穴には、後述する主弁部材161の一端部を構成する弁体部161aが接離する主弁座部142fが形成されている。
本実施形態では、気相冷媒通路142bにおける主弁座部142fよりも冷媒流出部142a側の冷媒通路を下流側通路142gとし、主弁座部142fよりも冷媒流入部142d側の冷媒通路を上流側通路142hとする。なお、下流側通路142gは、中間圧冷媒通路15に連通している。このため、下流側通路142gの圧力は、中間圧冷媒通路15の圧力と同等の圧力となる。
また、気相冷媒通路142bを構成する有底穴には、差圧弁16を構成する各種部品(主弁部材161、弾性部材162等)が収容されている。
差圧弁16は、一端部が主弁座部142fに接触する位置と、主弁座部142fから離間する位置との間で変位することで、気相冷媒通路142bを開閉する主弁部材161を備えている。
具体的には、主弁部材161は、主弁座部142fに接離する一端部を構成する弁体部161a、弁体部161aと反対側の他端部を構成する均圧ピストン部161c、および均圧ピストン部161cと弁体部161aとを連結する胴体部161bで構成されている。
弁体部161aは、気相冷媒通路142bを閉じる方向に上流側通路142hの圧力を受けると共に、気相冷媒通路142bを開く方向に下流側通路142gの圧力を受けるように構成されている。
換言すれば、弁体部161aは、気相冷媒通路142bを閉じる方向に上流側通路142hの圧力を受ける受圧面を有し、気相冷媒通路142bを開く方向に下流側通路142gの圧力を受ける受圧面を有している。なお、弁体部161aにおける上流側通路142hに露出する端面が、上流側通路142hの圧力を受ける受圧面を構成し、下流側通路142gに露出する端面が、下流側通路142gの圧力を受ける受圧面を構成している。
また、弁体部161aには、主弁座部142fに接触する部位に、主弁座部142fと弁体部161aとの間から冷媒が漏れることを抑制するシール部材161dが設けられている。このシール部材161dは、弁体部161aが主弁座部142f側に押し付けられた際に、弾性変形して主弁座部142fに密着する弾性体(例えば、樹脂性のOリング)で構成されている。
胴体部161bは、アッパーブロック142に形成された有底穴において、気相冷媒通路142b側の空間と、固定絞り17の冷媒流れ下流側の圧力が導入される主圧力室142eを形成する空間とを区画する部材である。なお、胴体部161bは、外径が有底穴の内径よりも僅かに小さい円柱状に形成されており、有底穴の内側壁面に摺動可能に支持されている。
そして、胴体部161bは、気相冷媒通路142bを開く方向に上流側通路142hの圧力を受けると共に、気相冷媒通路142bを閉じる方向に主圧力室142eの圧力を受けるように構成されている。
換言すれば、胴体部161bは、気相冷媒通路142bを開く方向に上流側通路142hの圧力を受ける受圧面を有し、気相冷媒通路142bを閉じる方向に主圧力室142eの圧力を受ける受圧面を有する。なお、胴体部161bにおける上流側通路142hに露出する端面が、上流側通路142hの圧力を受ける受圧面を構成し、主圧力室142eに露出する端面が、主圧力室142eの圧力を受ける受圧面を構成している。
ここで、主圧力室142eには、固定絞り17の冷媒流れ下流側の冷媒通路に連通する圧力導入通路19が接続されており、この圧力導入通路19を介して固定絞り17の冷媒流れ下流側の圧力が導入される。なお、圧力導入通路19は、ロワーブロック141に形成された固定絞り17の冷媒流れ下流側の冷媒通路に連通する連通路、およびアッパーブロック142に形成された主圧力室142eに連通する連通路により構成されている。
また、主圧力室142eには、主弁部材161の変位を規制する規制部材163が収容されている。この規制部材163は、有底穴の内径に適合する外径を有する有底の筒状体であり、主弁部材161の変位を規制するストッパ、およびアッパーブロック142に形成された有底穴を閉塞する閉塞部材として機能する部材である。
続いて、均圧ピストン部161cは、規制部材163の内側空間において、主圧力室142eを形成する空間と、下流側通路142g側の圧力が導入される均圧室142iを形成する空間とを区画する部材である。なお、均圧ピストン部161cは、外径が規制部材163の内径よりも僅かに小さい円柱状に形成されており、規制部材163の内側壁面に摺動可能に支持されている。
そして、均圧ピストン部161cは、気相冷媒通路142bを閉じる方向(紙面左方向)に均圧室142iの圧力を受けるように構成されている。換言すれば、均圧ピストン部161cは、気相冷媒通路142bを閉じる方向に均圧室142iの圧力を受ける受圧面を有する。なお、均圧ピストン部161cにおける均圧室142iに露出する端面が、均圧室142iの圧力を受ける受圧面を構成している。
本実施形態の均圧ピストン部161cにおける均圧室142iの圧力を受ける受圧面の面積は、弁体部161aにおける下流側通路142gの圧力を受ける受圧面の面積と同等の大きさに設定されている。
これにより、主弁部材161には、下流側通路142gの圧力が、一端部(弁体部161a)と他端部(均圧ピストン部161c)それぞれに、同等の力が逆方向に作用する。
ここで、均圧室142iは、下流側通路142gに連通する均圧連通路161eを介して、下流側通路142gの圧力が導入されるようになっている。本実施形態の均圧連通路161eは、主弁部材161の一端部(弁体部161a)から他端部(均圧ピストン部161c)に延びる貫通穴で構成されている。換言すれば、主弁部材161の内部には、下流側通路142gと均圧室142iとを連通させる均圧連通路161eが形成されている。
また、均圧室142iには、主弁部材161に気相冷媒通路142bを閉じる方向に荷重をかけるコイルバネ等で構成される弾性部材162が収容されている。弾性部材162は、主弁部材161に対して、主弁部材161の弁体部161aに形成されたシール部材161dを主弁座部142fに押し付けてシール性を高める方向、すなわち、主弁部材161が気相冷媒通路142bを閉じる方向に荷重をかける。
ここで、図6〜図8を用いて本実施形態の差圧弁16の作動について説明する。図6に示すように、本実施形態の主弁部材161の弁体部161aには、上流側通路142hの圧力P2と下流側通路142gの圧力P1との圧力差[P2−P1]による力[A1×(P2−P1)]が主弁部材161の閉弁方向に作用する。なお、「A1」は、弁体部161aにおける上流側通路142hの圧力P2および下流側通路142gの圧力P1を受ける受圧面の面積である。
また、主弁部材161の胴体部161bには、上流側通路142hの圧力P2と主圧力室142eの圧力P3の圧力差[P2−P3]による力[A2×(P2−P3)]が主弁部材161の開弁方向に作用する。なお、「A2」は、胴体部161bにおける上流側通路142hの圧力P2および主圧力室142eの圧力P3を受ける受圧面の面積である。
また、主弁部材161の均圧ピストン部161cには、均圧室142iの圧力P4による力[A3×P4]、および弾性部材162による荷重Fspが主弁部材161の閉弁方向に作用する。なお、「A3」は、均圧ピストン部161cにおける均圧室142iの圧力P4を受ける受圧面の面積である。
そして、主弁部材161に対して開弁方向に作用する力が、閉弁方向に作用する力以下となる際に、図7に示すように、主弁部材161が主弁座部142fに接触する位置に変位して、気相冷媒通路142bが閉鎖される。
一方、主弁部材161に対して開弁方向に作用する力が、閉弁方向に作用する力を上回る際に、図8に示すように、主弁部材161が主弁座部142fから離間する位置に変位して、気相冷媒通路142bが開放される。
具体的には、主弁部材161が気相冷媒通路142bを開く条件は、以下の[数1]に示す関係となった際に成立する。
A2×(P2−P3)>A1×(P2−P1)+A3×P4+Fsp・・・[数1]
ここで、均圧室142iおよび下流側通路142gは、均圧連通路161eを介して連通していることから、均圧室142iの圧力P4は、下流側通路142gの圧力P1と同等の圧力となる(P1=P4)。
また、本実施形態では、均圧ピストン部161cにおける均圧室142iの圧力が作用する受圧面の面積A3を、弁体部161aにおける下流側通路142gの圧力が作用する受圧面の面積A1と同等の大きさに設定している(A1=A3)。
このため、下流側通路142gの圧力P1より主弁部材161の開弁方向に作用する力(A1×P1)と、均圧室142iの圧力P3より主弁部材161の閉弁方向に作用する力(A3×P4)とが、互いに逆方向に作用して相殺される。
従って、主弁部材161が気相冷媒通路142bを開く条件は、以下の[数2]に示す関係となった際に成立する。
A2×(P2−P3)>A1×P2+Fsp・・・[数2]
上述の[数2]から明らかであるが、上流側通路142hの圧力P2、主圧力室142eの圧力P3、および弾性部材162の荷重Fspに応じて、主弁部材161が気相冷媒通路142bを開閉することになる。
なお、上流側通路142hの圧力P2は、固定絞り17および電磁弁18からなる減圧手段の冷媒流れ上流側の圧力であり、主圧力室142eの圧力P3は、固定絞り17および電磁弁18からなる減圧手段の冷媒流れ下流側の圧力である。このため、本実施形態の差圧弁16は、固定絞り17および電磁弁18からなる減圧手段の前後の圧力差に応じて気相冷媒通路142bを開閉することになる。
ここで、本実施形態の弾性部材162は、電磁弁18により液相冷媒通路141dが閉鎖されて、上流側通路142hの圧力P2と主圧力室142eの圧力P3との圧力差が拡大した際に、[数2]が成立するように荷重Fspが設定されている。
図1〜図3に戻り、室外熱交換器20は、ボンネット内に配置されて、内部を流通する冷媒と送風ファン21から送風された車室外空気(外気)とを熱交換させるものである。この室外熱交換器20は、第1、第2暖房モード時等に冷媒を蒸発させて吸熱作用を発揮させる蒸発器として機能し、冷房運転モード時等に冷媒を放熱させる放熱器として機能する熱交換器である。
室外熱交換器20の冷媒出口側には、低段側膨脹弁22の冷媒入口側が接続されている。低段側膨脹弁22は、冷房運転モード時等に室外熱交換器20から流出し、室内蒸発器23へ流入する冷媒を減圧させるものである。この低段側膨脹弁22の基本的構成は、高段側膨脹弁13と同様であり、空調制御装置40から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
低段側膨脹弁22の出口側には、室内蒸発器23の冷媒入口側が接続されている。室内蒸発器23は、室内空調ユニット30の空調ケース31内のうち、室内凝縮器12の送風空気流れ上流側に配置され、冷房運転モード時や除湿暖房運転モード時に、冷媒を蒸発させて吸熱作用を発揮させることにより車室内への送風空気を冷却する熱交換器である。
室内蒸発器23の冷媒出口側には、アキュムレータ24の入口側が接続されている。アキュムレータ24は、その内部に流入した冷媒の気液を分離して余剰冷媒を蓄えるものである。さらに、アキュムレータ24の気相冷媒出口側には、圧縮機11の吸入ポート11bが接続されている。従って、室内蒸発器23は、圧縮機11の吸入ポート11b側へ流出させるように接続されている。
さらに、室外熱交換器20の冷媒出口側には、室外熱交換器20から流出した冷媒を低段側膨脹弁22および室内蒸発器23を迂回させてアキュムレータ24の入口側へ導く迂回通路25が接続されている。
この迂回通路25には、迂回用開閉弁251が配置されている。この迂回用開閉弁251は、迂回通路25を開閉する電磁弁であり、空調制御装置40から出力される制御信号によって、その開閉作動が制御される。
本実施形態の迂回用開閉弁251は、迂回通路25を開閉することによって、サイクル構成(冷媒流路)を切り替える機能を果たす。従って、本実施形態の迂回用開閉弁251は、サイクルを循環する冷媒の冷媒流路を切り替える冷媒流路切替手段を構成している。なお、冷媒が迂回用開閉弁251を通過する際に生じる圧力損失は、低段側膨脹弁22を通過する際に生じる圧力損失に対して極めて小さい。従って、室外熱交換器20から流出した冷媒は、迂回用開閉弁251が開いている場合には迂回通路25を介してアキュムレータ24へ流入し、迂回用開閉弁251が閉じている場合には低段側膨脹弁22を介して室内蒸発器23へ流入する。
ところで、ヒートポンプサイクル10は、製品の製造時やサイクル構成機器の交換等を実施する際に、サイクル内へ冷媒を充填する冷媒充填作業が必要となる。この冷媒充填作業では、サイクル内の空気や水分を取り除く真空引き工程を実施し、真空引き完了後にサイクル内へ規定量の冷媒を充填する充填工程を実施する。
このような冷媒充填作業を実施するために、ヒートポンプサイクル10には、サイクル内の高圧側から冷媒を充填する第1充填ポート26a、サイクル内における低圧側から冷媒を充填する第2充填ポート26bが設けられている。
本実施形態では、第1充填ポート26aが室内凝縮器12から高段側膨脹弁13へ至る冷媒通路に設けられ、第2充填ポート26bがアキュムレータ24から圧縮機11の吸入ポート11bへ至る冷媒通路に設けられている。なお、本実施形態では、第1充填ポート26aが真空引きを実施するためのポートとしても機能する。
次に、室内空調ユニット30について説明する。室内空調ユニット30は、車室内最前部の計器盤(インストルメントパネル)の内側に配置されて、室内空調ユニット30の外殻を形成すると共に、その内部に車室内に送風される室内送風空気の空気通路を形成する空調ケース31を有している。そして、この空気通路に送風機32、前述の室内凝縮器12、室内蒸発器23等が収容されている。
空調ケース31の空気流れ最上流側には、車室内空気(内気)と外気とを切替導入する内外気切替装置33が配置されている。この内外気切替装置33は、空調ケース31内に内気を導入させる内気導入口および外気を導入させる外気導入口の開口面積を、内外気切替ドアによって連続的に調整して、内気の風量と外気の風量との風量割合を連続的に変化させるものである。
内外気切替装置33の空気流れ下流側には、内外気切替装置33を介して吸入した空気を車室内へ向けて送風する送風機32が配置されている。この送風機32は、遠心多翼ファン(シロッコファン)を電動モータにて駆動する電動送風機であって、空調制御装置40から出力される制御信号によって回転数(送風量)が制御される。
送風機32の空気流れ下流側には、前述の室内蒸発器23および室内凝縮器12が、室内送風空気の流れに対して、室内蒸発器23→室内凝縮器12の順に配置されている。換言すると、室内蒸発器23は、室内凝縮器12に対して、空気流れ上流側に配置されている。
また、空調ケース31内には、室内蒸発器23通過後の送風空気を、室内凝縮器12を迂回して流すバイパス通路35が設けられており、室内蒸発器23の空気流れ下流側であって、室内凝縮器12の空気流れ上流側には、エアミックスドア34が配置されている。
このエアミックスドア34は、室内蒸発器23通過後の送風空気のうち、室内凝縮器12を通過させる風量とバイパス通路35を通過させる風量との風量割合を調整して、室内凝縮器12の熱交換能力を調整する熱交換能力調整手段である。なお、エアミックスドア34は、空調制御装置40から出力される制御信号によって作動が制御される図示しないサーボモータによって駆動される。
また、室内凝縮器12およびバイパス通路35の空気流れ下流側には、室内凝縮器12にて冷媒と熱交換して加熱された送風空気とバイパス通路35を通過して加熱されていない送風空気が合流する合流空間36が設けられている。
空調ケース31の空気流れ最下流部には、合流空間36にて合流した送風空気を、空調対象空間である車室内へ吹き出す開口穴が形成されている。具体的には、車両前面窓ガラス内側面に向けて空調風を吹き出すデフロスタ開口穴37a、車室内の乗員の上半身に向けて空調風を吹き出すフェイス開口穴37b、乗員の足元に向けて空調風を吹き出すフット開口穴37cが形成されている。
各開口穴37a〜37cの空気流れ下流側は、それぞれ空気通路を形成するダクトを介して、車室内に設けられたフェイス吹出口、フット吹出口およびデフロスタ吹出口に接続されている。
また、各開口穴37a〜37cの空気流れ上流側には、デフロスタ開口穴37aを開閉するデフロスタドア38a、フェイス開口穴37bを開閉するフェイスドア38b、フット開口穴37cを開閉するフットドア38cが配置されている。各ドア38a〜38cは、車室内への空気の吹出モードを切り替える吹出モード切替手段を構成する。なお、各ドア38a〜38cは、空調制御装置40から出力される制御信号によってその作動が制御される図示しないサーボモータによって駆動される。
次に、本実施形態の電気制御部について説明する。空調制御装置40は、CPU、ROMおよびRAM等を含む周知のマイクロコンピュータとその周辺回路から構成されている。空調制御装置40は、ROM等に記憶された制御プログラムに基づいて各種演算、処理を行い、出力側に接続された各制御機器(圧縮機11、高段側膨脹弁13、電磁弁18、迂回用開閉弁251、送風機32等)の作動を制御する。
また、空調制御装置40の入力側には、各種空調制御用のセンサ群41が接続されている。センサ群41としては、車室内温度を検出する内気センサ、外気温を検出する外気センサ、車室内の日射量を検出する日射センサ、室内蒸発器23の温度を検出する蒸発器温度センサ、圧縮機11から吐出された高圧冷媒圧力を検出する吐出圧センサ等が挙げられる。
さらに、空調制御装置40の入力側には、計器盤付近に配置された図示しない操作パネルが接続され、この操作パネルに設けられた各種空調操作スイッチからの操作信号が入力される。操作パネルに設けられた各種空調操作スイッチとしては、具体的に、車両用空調装置1の作動スイッチ、車室内温度を設定する車室内温度設定スイッチ、冷房運転モードと暖房運転モードとの選択スイッチ等が設けられている。
ここで、空調制御装置40は、その出力側に接続された各制御機器の作動を制御する制御手段が一体に構成されたものであるが、各制御機器の作動を制御する構成(ハードウェアおよびソフトウェア)が各制御機器の作動を制御する制御手段を構成している。
例えば、本実施形態では、電磁弁18、迂回用開閉弁251の開閉作動を制御する構成(ハードウェアおよびソフトウェア)が流路切替制御手段を構成している。なお、空調制御装置40における流路切替制御手段を、空調制御装置40とは別の制御装置により構成してもよい。
次に、上記構成における本実施形態のヒートポンプサイクル10への冷媒充填作業、および車両用空調装置1の作動について説明する。まず、本実施形態のヒートポンプサイクル10への冷媒充填作業について説明する。
冷媒充填作業では、真空ポンプおよび冷媒充填ポンプを有する冷媒充填装置(図示略)を第1、第2充填ポート26a、26bに接続する。そして、電磁弁18および迂回用開閉弁251を開弁した状態で、冷媒充填装置によって第1充填ポート26aからサイクル内に残存する空気等を吸引する(真空引き工程)。なお、真空引き工程では、例えば、冷媒充填装置によって第2充填ポート26bからサイクル内に残存する空気等を吸引するようにしてもよい。
真空引き工程の完了後、冷媒充填装置によって第1充填ポート26a、および第2充填ポート26bからサイクル内へ冷媒を充填する(充填工程)。なお、充填工程では、冷媒充填装置によって第1充填ポート26aおよび第2充填ポート26bの一方のポートからサイクル内へ冷媒を充填するようにしてもよい。
ここで、[発明が解決しようとする課題]で説明したように、従来のヒートポンプサイクルでは、真空引き工程により中間圧冷媒通路15が真空状態(P1≒0)となると、差圧弁16の閉弁方向の力が増大し、中間圧冷媒通路15を開くことができないことがあった。
これに対して、本実施形態の差圧弁16は、上流側通路142hの圧力P2、主圧力室142eの圧力P3、および弾性部材162の荷重Fspに応じて、主弁部材161が気相冷媒通路142bを開閉する構造となっている。つまり、下流側通路142gの圧力(中間圧冷媒通路15の圧力)が、差圧弁16による中間圧冷媒通路15(気相冷媒通路142b)の開閉作動に影響しない構成となっている。
このため、上流側通路142hの圧力P2および主圧力室142eの圧力P3の圧力差を調整すること、すなわち、固定絞り17および電磁弁18からなる減圧手段の前後の圧力差を調整することで、中間圧冷媒通路15を開くことができる。
例えば、冷媒充填工程で中間圧冷媒通路15に冷媒を充填する場合、電磁弁18のソレノイド182への通電を停止して、上流側通路142hの圧力P2および主圧力室142eの圧力P3の圧力差を拡大させることで、主弁部材161を開弁状態にすればよい。なお、冷媒充填工程ではなく、ヒートポンプサイクル10をガスインジェクションサイクルとして作動させる段階で、差圧弁16により気相冷媒通路142bを開放して、中間圧冷媒通路15へ冷媒を充填してもよい。
続いて、本実施形態の車両用空調装置1の作動を説明すると、車両用空調装置1は、冷房運転モード、暖房運転モード、および除湿暖房運転モードに切り替えることができる。以下、各運転モードにおける作動を説明する。
(A)冷房運転モード
冷房運転モードは、例えば、操作パネルの作動スイッチが投入(ON)された状態で、選択スイッチによって冷房運転モードが選択されると開始される。
冷房運転モードでは、空調制御装置40が、高段側膨脹弁13を全開状態(減圧作用を発揮しない状態)、低段側膨脹弁22を絞り状態(減圧作用を発揮する状態)、迂回用開閉弁251を閉弁状態とする。
さらに、空調制御装置40が、電磁弁18のソレノイド182へ給電し、液相側弁体181が液相冷媒通路141dを開いた状態(電磁弁18の開弁状態)とする。この場合、固定絞り17の前後の圧力が同等となるので、図4に示すように、主弁部材161が気相冷媒通路142bを閉じた状態(差圧弁16の閉弁状態)となる。これにより、ヒートポンプサイクル10は、図1の実線矢印で示すように冷媒が流れる冷媒回路に切り替えられる。
この冷媒回路の構成で、空調制御装置40が空調制御用のセンサ群41の検出信号および操作パネルの操作信号を読み込み、車室内へ吹き出す空気の目標温度である目標吹出温度TAOを算出する。さらに、算出された目標吹出温度TAOおよびセンサ群の検出信号に基づいて、空調制御装置40の出力側に接続された各制御機器の作動状態を決定する。
例えば、圧縮機11の電動モータに出力される制御信号については、以下のように決定される。まず、目標吹出温度TAOに基づいて、予め空調制御装置40に記憶された制御マップを参照して、室内蒸発器23の目標蒸発器吹出温度TEOを決定する。そして、蒸発器温度センサの検出値(吹出空気温度)が目標蒸発器吹出温度TEOに近づくように、圧縮機11の電動モータに出力される制御信号が決定される。
また、低段側膨脹弁22へ出力される制御信号については、低段側膨脹弁22へ流入する冷媒の過冷却度が、COPを略最大値に近づくように予め決定された目標過冷却度に近づくように決定される。
また、エアミックスドア34のサーボモータへ出力される制御信号については、エアミックスドア34が室内凝縮器12の空気通路を閉塞し、室内蒸発器23通過後の送風空気の全流量がバイパス通路35を通過するように決定される。
そして、上記の如く決定された制御信号等を各制御機器へ出力する。その後、操作パネルによって車両用空調装置1の作動停止が要求されるまで、所定の制御周期毎に、各信号の読み込み→目標吹出温度TAOの算出→各制御機器の作動状態決定→制御信号の出力といった制御ルーチンが繰り返される。なお、このような制御ルーチンの繰り返しは、他の運転モード時にも同様に行われる。
従って、冷房運転モードのヒートポンプサイクル10では、図9のモリエル線図に示すように、圧縮機11の吐出ポート11cから吐出された高圧冷媒(図9のa11点)が室内凝縮器12へ流入する。この際、エアミックスドア34が室内凝縮器12の空気通路を閉塞しているので、室内凝縮器12へ流入した冷媒は殆ど室内送風空気へ放熱することなく、室内凝縮器12から流出する。
室内凝縮器12から流出した冷媒は、高段側膨脹弁13が全開状態となっているので、高段側膨脹弁13にて殆ど減圧されることなく統合弁14内部の気液分離空間141bに流入する。
この際、気液分離空間141bへ流入する冷媒は過熱度を有する気相状態となっているものの、差圧弁16が閉弁状態となっているので、冷媒流出部142aから中間圧冷媒通路15へ冷媒が流出することなく、液相冷媒通路141dに流入する。さらに、液相冷媒通路141dに流入した冷媒は、電磁弁18が開弁状態となっているので、固定絞り17にて殆ど減圧されることなく液相側流出口141eから流出する。
そして、統合弁14の液相側流出口141eから流出した冷媒は、室外熱交換器20へ流入し、室外熱交換器20にて送風ファン21から送風された外気と熱交換して放熱する(図9のa11点→b11点)。室外熱交換器20から流出した冷媒は、迂回用開閉弁251が閉弁状態となっているので、絞り状態となっている低段側膨脹弁22へ流入して低圧冷媒となるまで、等エンタルピ的に減圧膨脹される(図9のb11点→c11点)。
そして、低段側膨脹弁22にて減圧された冷媒は、室内蒸発器23へ流入し、送風機32から送風された室内送風空気から吸熱して蒸発する(図9のc11点→d11点)。これにより、室内送風空気が冷却される。
室内蒸発器23から流出した冷媒は、アキュムレータ24へ流入して気液分離される。そして、分離された気相冷媒が圧縮機11の吸入ポート11b(図9のe11点)から吸入されて、再び圧縮される(図9のe11点→a111点→a11点)。なお、アキュムレータ24にて分離された液相冷媒は、サイクルが要求されている冷凍能力を発揮するために必要としていない余剰冷媒としてアキュムレータ24内に蓄えられる。
ここで、図9においてd11点とe11点が異なっている理由は、アキュムレータ24から圧縮機11の吸入ポート11bへ至る冷媒配管を流通する気相冷媒に生じる圧力損失と、気相冷媒が外部(外気)から吸熱する吸熱量を表したものである。従って、理想的なサイクルでは、d11点とe11点が一致していることが望ましい。このことは、以下のモリエル線図においても同様である。
以上の如く、冷房運転モードでは、エアミックスドア34にて室内凝縮器12の空気通路を閉塞しているので、室内蒸発器23にて冷却された送風空気を車室内へ吹き出すことができる。これにより、車室内の冷房を実現することができる。
(B)暖房運転モード
次に、暖房運転モードについて説明する。この暖房運転モードは、例えば、操作パネルの作動スイッチが投入(ON)された状態で、選択スイッチによって暖房運転モードが選択されると開始される。
そして、暖房運転モードが開始されると、空調制御装置40がセンサ群41の検出信号および操作パネルの操作信号を読み込み、圧縮機11の冷媒吐出能力(圧縮機11の回転数)を決定する。さらに、決定された回転数に応じて、第1暖房モードあるいは第2暖房モードを実行する。
(B1):第1暖房モード
まず、第1暖房モードについて説明すると、第1暖房モードでは、空調制御装置40が、高段側膨脹弁13を絞り状態、低段側膨脹弁22を全閉状態、迂回用開閉弁251を開弁状態とする。
さらに、空調制御装置40が、電磁弁18のソレノイド182への通電を停止し、液相側弁体181が液相冷媒通路141dを閉じた状態(電磁弁18の閉弁状態)とする。この場合、固定絞り17の前後の圧力差が拡大し、図5に示すように、主弁部材161が気相冷媒通路142bを開いた状態(差圧弁16の開弁状態)となる。これにより、ヒートポンプサイクル10は、図2の実線矢印で示すように冷媒が流れる(ガスインジェクションサイクルの冷媒回路)に切り替えられる。
この冷媒回路の構成で、空調制御装置40が、冷房運転モードと同様に、センサ群41の検出信号等を読み込み、目標吹出温度TAO等に基づいて、空調制御装置40の出力側に接続された各種制御機器の作動状態を決定する。
なお、第1暖房モード時に高段側膨脹弁13へ出力される制御信号については、室内凝縮器12における冷媒圧力が予め定めた目標高圧となるように、あるいは、室内凝縮器12から流出する冷媒の過冷却度が予め定めた目標過冷却度となるように決定される。また、エアミックスドア34のサーボモータへ出力される制御信号については、エアミックスドア34がバイパス通路35を閉塞し、室内蒸発器23通過後の送風空気の全流量が室内凝縮器12を通過するように決定される。
従って、第1暖房モードのヒートポンプサイクル10では、図10に示すように、圧縮機11の吐出ポート11cから吐出された高圧冷媒(図10のa12点)が室内凝縮器12へ流入する。室内凝縮器12へ流入した冷媒は、送風機32から送風されて室内蒸発器23を通過した室内送風空気と熱交換して放熱する(図10のa12点→b12点)。これにより、室内送風空気が加熱される。
室内凝縮器12から流出した冷媒は、絞り状態となっている高段側膨脹弁13にて中間圧冷媒となるまで等エンタルピ的に減圧膨脹される(図10のb12点→c112点)。そして、高段側膨脹弁13にて減圧された中間圧冷媒は、統合弁14の気液分離空間141bに流入し、気液分離空間141bにて気液が分離される(図10のc12点→c212点、c12点→c312点)。
気液分離空間141bにて分離された気相冷媒は、差圧弁16が開弁状態となっているので、冷媒流出部142aから中間圧冷媒通路15へ流入して、中間圧冷媒通路15を介して圧縮機11の中間圧ポート11dへ流入する(図10のc212点)。そして、中間圧ポート11dへ流入した冷媒は、圧縮室11aにおける圧縮過程の冷媒(図10のa112点)と合流し(図10のa212点)、圧縮室11aにて圧縮される。
一方、気液分離空間141bにて分離された液相冷媒は、液相冷媒通路141dに流入する。この際、電磁弁18が全閉状態となっているので、固定絞り17にて低圧冷媒となるまで等エンタルピ的に減圧膨脹される(図10のc312点→c412点)。そして、固定絞り17にて減圧された冷媒は、統合弁14の液相側流出口141eから流出する。
統合弁14の液相側流出口141eから流出した冷媒は、室外熱交換器20へ流入して、送風ファン21から送風された外気と熱交換して吸熱する(図10のc412点→d12点)。室外熱交換器20から流出した冷媒は、低段側膨脹弁22が全閉状態となり、迂回用開閉弁251が開弁状態となっているので、迂回通路25を介して、アキュムレータ24へ流入して気液分離される。そして、アキュムレータ24にて分離された気相冷媒が圧縮機11の吸入ポート11b(図10のe12点)から吸入されて再び圧縮される。
以上の如く、第1暖房モードでは、室内凝縮器12にて圧縮機11から吐出された冷媒の有する熱を室内送風空気に放熱させて、加熱された室内送風空気を車室内へ吹き出すことができる。これにより、車室内の暖房を実現することができる。
この第1暖房モードでは、固定絞り17にて減圧された低圧冷媒を圧縮機11へ吸入させると共に、高段側膨脹弁13にて減圧された中間圧冷媒を圧縮機11の圧縮過程の冷媒と合流させるガスインジェクションサイクルを構成することができる。
これにより、圧縮機11の吸入冷媒圧力と吐出冷媒圧力との圧力差を縮小させて、圧縮機11の圧縮効率を向上させることができる。その結果、ヒートポンプサイクル10全体としてのCOPを向上させることができる。
(B2):第2暖房モード
次に、第2暖房モードについて説明すると、第2暖房モードでは、空調制御装置40が、高段側膨脹弁13を絞り状態、低段側膨脹弁22を全閉状態、迂回用開閉弁251を開弁状態とする。
さらに、空調制御装置40が、電磁弁18のソレノイド182へ通電し、液相側弁体181が液相冷媒通路141dを開いた状態(電磁弁18の開弁状態)とする。この場合、固定絞り17の前後の圧力が同等となるので、図4に示すように、主弁部材161が気相冷媒通路142bを閉じた状態(差圧弁16の閉弁状態)となる。これにより、ヒートポンプサイクル10は、図3の実線矢印で示すように冷媒が流れる冷媒回路に切り替えられる。
この冷媒回路の構成で、空調制御装置40が、センサ群41の検出信号等を読み込み、目標吹出温度TAO等に基づいて、空調制御装置40の出力側に接続された各制御機器の作動状態を決定する。なお、第2暖房モード時に高段側膨脹弁13へ出力される制御信号等については、第1暖房モードと同様に決定される。
従って、第2暖房モード時のヒートポンプサイクル10では、図11に示すように、圧縮機11の吐出ポート11cから吐出された高圧冷媒(図11のa13点)が室内凝縮器12へ流入し、室内送風空気と熱交換して放熱する(図11のa13点→b13点)。これにより、室内送風空気が加熱される。
室内凝縮器12から流出した冷媒は、絞り状態となっている高段側膨脹弁13にて低圧冷媒となるまで等エンタルピ的に減圧膨脹され(図11のb13点→c13点)、統合弁14の気液分離空間141bに流入する。
そして、気液分離空間141bへ流入した冷媒は、冷房運転モードと同様に、差圧弁16が閉弁状態となっているので、冷媒流出部142aから中間圧冷媒通路15へ冷媒が流出することなく、液相冷媒通路141dに流入する。さらに、液相冷媒通路141dに流入した冷媒は、電磁弁18が開弁状態となっているので、固定絞り17にて殆ど減圧されることなく統合弁14の液相側流出口141eから流出する。
統合弁14の液相側流出口141eから流出した冷媒は、室外熱交換器20へ流入し、室外熱交換器20にて送風ファン21から送風された外気と熱交換して吸熱する(図11のc13点→d13点)。以降の作動は第1暖房モードと同様であるため説明を省略する。
以上の如く、第2暖房モードでは、室内凝縮器12にて圧縮機11から吐出された冷媒の有する熱を室内送風空気に放熱させて、加熱された室内送風空気を車室内へ吹き出すことができる。これにより、車室内の暖房を実現することができる。
ここで、第2暖房モード時を、第1暖房モードに対して、外気温が高い場合等のように暖房負荷が比較的低い場合に実行することの効果を説明する。第1暖房モードでは、上述の如く、ガスインジェクションサイクルを構成することができるので、ヒートポンプサイクル10全体としてのCOPを向上させることができる。
つまり、理論的には、圧縮機11の回転数が同一であれば、第1暖房モードは、第2暖房モード時よりも高い暖房性能を発揮することができる。換言すると、同一の暖房性能を発揮させるために必要な圧縮機11の回転数(冷媒吐出能力)は、第2暖房モードよりも第1暖房モード時の方が低くなる。
ところが、圧縮機11には、圧縮効率が最大(ピーク)となる最大効率回転数があり、最大効率回転数よりも回転数が低くなると、圧縮効率が大きく低下してしまうという特性がある。このため、暖房負荷が比較的低い場合に圧縮機11を最大効率回転数よりも低い回転数で作動させると、第1暖房モードでは、却ってCOPが低下してしまうことがある。
そこで、本実施形態では、上述の最大効率回転数を基準回転数として、第1暖房モードの実行中に、圧縮機11の回転数が基準回転数以下となってしまう場合に第2暖房モードへ切り替えるようにしている。なお、第2暖房モードから第1暖房モードへの切替は、第2暖房モードの実行中に基準回転数に対して予め定めた所定量を加えた回転数以上となった際に行うようにすればよい。
これにより、第1暖房モードおよび第2暖房モードのうち高いCOPを発揮できる運転モードを選択することができる。従って、第1暖房モードの実行中に、圧縮機11の回転数が基準回転数以下となってしまう場合であっても、第2暖房モードへ切り替えることにより、ヒートポンプサイクル10全体としてのCOPを向上させることができる。
(C)除湿暖房運転モード
次に、除湿暖房運転モードについて説明する。除湿暖房運転モードは、例えば、冷房運転モード時に車室内温度設定スイッチによって設定された設定温度が外気温よりも高い温度に設定された際に実行される。
除湿暖房運転モードでは、空調制御装置40が、高段側膨脹弁13および低段側膨脹弁22を全開状態あるいは絞り状態とし、迂回用開閉弁251を閉弁状態とする。
さらに、空調制御装置40が、電磁弁18のソレノイド182へ通電し、液相側弁体181が液相冷媒通路141dを開いた状態(電磁弁18の開弁状態)とする。この場合、固定絞り17の前後の圧力が同等となるので、図4に示すように、主弁部材161が気相冷媒通路142bを閉じた状態(差圧弁16の閉弁状態)となる。これにより、ヒートポンプサイクル10は、冷房運転モードと同様に、図1の実線矢印で示すように冷媒が流れる冷媒回路に切り替えられる。
この冷媒回路の構成で、空調制御装置40が、冷房運転モードと同様に、センサ群41の検出信号等を読み込み、目標吹出温度TAO等に基づいて、空調制御装置40の出力側に接続された各制御機器の作動状態を決定する。
例えば、エアミックスドア34のサーボモータへ出力される制御信号については、エアミックスドア34がバイパス通路35を閉塞し、室内蒸発器23通過後の送風空気の全流量が室内凝縮器12を通過するように決定される。
さらに、本実施形態の除湿暖房運転モードでは、設定温度と外気温との温度差に応じて、高段側膨脹弁13および低段側膨脹弁22の絞り開度を変化させている。具体的には、前述した目標吹出温度TAOの上昇に伴って、第1除湿暖房モードから第4除湿暖房モードの4段階の除湿暖房モードを実行する。
(C1):第1除湿暖房モード
第1除湿暖房モードでは、高段側膨脹弁13を全開状態とし、低段側膨脹弁22を絞り状態とする。従って、サイクル構成(冷媒流路)については、冷房運転モードと全く同様となるものの、エアミックスドア34が室内凝縮器12の空気通路を全開しているので、サイクルを循環する冷媒の状態については図12のモリエル線図に示すように変化する。
すなわち、図12に示すように、圧縮機11の吐出ポート11cから吐出された高圧冷媒(図12のa14点)は、室内凝縮器12へ流入して、室内蒸発器23にて冷却されて除湿された室内送風空気と熱交換して放熱する(図12のa14点→b114点)。これにより、室内送風空気が加熱される。
室内凝縮器12から流出した冷媒は、高段側膨脹弁13が全開状態となっているので、高段側膨脹弁13にて殆ど減圧されることなく統合弁14内部の気液分離空間141bに流入する。
そして、統合弁14の気液分離空間141bに流入した冷媒は、冷房運転モードと同様に、固定絞り17にて殆ど減圧されることなく液相側流出口141eから流出し、室外熱交換器20へ流入する。
室外熱交換器20へ流入した冷媒は、送風ファン21から送風された外気と熱交換して放熱する(図12のb114点→b214点)。以降の作動は冷房運転モードと同様であるため説明を省略する。
以上の如く、第1除湿暖房モード時には、室内蒸発器23にて冷却され除湿された室内送風空気を、室内凝縮器12にて加熱して車室内へ吹き出すことができる。これにより、車室内の除湿暖房を実現することができる。
(C2):第2除湿暖房モード
次に、第1除湿暖房モードの実行中に、目標吹出温度TAOが予め定めた第1基準温度よりも高くなった際には、第2除湿暖房モードが実行される。第2除湿暖房モードでは、高段側膨脹弁13を絞り状態とし、低段側膨脹弁22の絞り開度を第1除湿暖房モードよりも増加させた絞り状態とする。従って、第2除湿暖房モードでは、サイクルを循環する冷媒の状態については図13のモリエル線図に示すように変化する。
すなわち、図13に示すように、圧縮機11の吐出ポート11cから吐出された高圧冷媒(図13のa15点)は、第1除湿暖房モードと同様に、室内凝縮器12へ流入して、室内蒸発器23にて冷却されて除湿された室内送風空気と熱交換して放熱する(図13のa15点→b115点)。これにより、室内送風空気が加熱される。
室内凝縮器12から流出した冷媒は、絞り状態となっている高段側膨脹弁13によって外気温よりも温度の高い中間圧冷媒となるまで等エンタルピ的に減圧される(図13のb115点→b215点)。
高段側膨脹弁13にて減圧された冷媒は、統合弁14の気液分離空間141bに流入して、冷房運転モードと同様に、固定絞り17にて殆ど減圧されることなく液相側流出口141eから流出する。
統合弁14の液相側流出口141eから流出した冷媒は、室外熱交換器20へ流入し、室外熱交換器20にて送風ファン21から送風された外気と熱交換して放熱する(図13のb215点→b315点)。
さらに、室外熱交換器20から流出した冷媒は、低段側膨脹弁22にて等エンタルピ的に減圧されて(図13のb315点→c15点)、室内蒸発器23へ流入する。以降の作動は冷房運転モードと同様であるため説明を省略する。
以上の如く、第2除湿暖房モードでは、第1除湿暖房モードと同様に、室内蒸発器23にて冷却され除湿された室内送風空気を、室内凝縮器12にて加熱して車室内へ吹き出すことができる。これにより、車室内の除湿暖房を実現することができる。
この際、第2除湿暖房モードでは、高段側膨脹弁13を絞り状態としているので、第1除湿暖房モードに対して、室外熱交換器20へ流入する冷媒の温度を低下させることができる。従って、室外熱交換器20における冷媒の温度と外気温との温度差を縮小して、室外熱交換器20における冷媒の放熱量を低減できる。
その結果、第1除湿暖房モード時に対してサイクルを循環する冷媒循環流量を増加させることなく、室内凝縮器12における冷媒圧力を上昇させることができ、第1除湿暖房モードよりも室内凝縮器12から吹き出される温度を上昇させることができる。
(C3):第3除湿暖房モード
次に、第2除湿暖房モードの実行中に、目標吹出温度TAOが予め定めた第2基準温度(第2基準温度>第1基準温度)よりも高くなった際には、第3除湿暖房モードが実行される。第3除湿暖房モードでは、高段側膨脹弁13の絞り開度を第2除湿暖房モードよりも縮小させた絞り状態とし、低段側膨脹弁22の絞り開度を第2除湿暖房モードよりも増加させる。従って、第3除湿暖房モードでは、サイクルを循環する冷媒の状態については図14のモリエル線図に示すように変化する。
すなわち、図14に示すように、圧縮機11の吐出ポート11cから吐出された高圧冷媒(図14のa16点)は、第1除湿暖房モードと同様に、室内凝縮器12へ流入して、室内蒸発器23にて冷却されて除湿された室内送風空気と熱交換して放熱する(図14のa16点→b16点)。これにより、室内送風空気が加熱される。
室内凝縮器12から流出した冷媒は、絞り状態となっている高段側膨脹弁13によって外気温よりも温度の低い中間圧冷媒となるまで等エンタルピ的に減圧される(図14のb16点→c116点)。
高段側膨脹弁13にて減圧された冷媒は、統合弁14の気液分離空間141bに流入し、冷房運転モードと同様に、固定絞り17にて殆ど減圧されることなく液相側流出口141eから流出する。
液相側流出口141eから流出した冷媒は、室外熱交換器20へ流入し、室外熱交換器20にて送風ファン21から送風された外気と熱交換して吸熱する(図14のc116点→c216点)。
さらに、室外熱交換器20から流出した冷媒は、低段側膨脹弁22にて等エンタルピ的に減圧されて(図14のc216点→c316点)、室内蒸発器23へ流入する。以降の作動は冷房運転モードと同様であるため説明を省略する。
以上の如く、第3除湿暖房モードでは、第1除湿暖房モードと同様に、室内蒸発器23にて冷却され除湿された室内送風空気を、室内凝縮器12にて加熱して車室内へ吹き出すことができる。これにより、車室内の除湿暖房を実現することができる。
この際、第3除湿暖房モードでは、高段側膨脹弁13の絞り開度を縮小させることによって、室外熱交換器20を蒸発器として作用させているので、第2除湿暖房モードに対して、室外熱交換器20における冷媒の吸熱量を増加させることができる。
その結果、第2除湿暖房モード時に対して、圧縮機11の吸入冷媒密度を上昇させることができ、圧縮機11の回転数を増加させることなく、室内凝縮器12における冷媒圧力を上昇させることができる。従って、第3除湿暖房モードでは、第2除湿暖房モードよりも室内凝縮器12から吹き出される温度を上昇させることができる。
(C4):第4除湿暖房モード
次に、第3除湿暖房モードの実行中に、目標吹出温度TAOが予め定めた第3基準温度(第3基準温度>第2基準温度)よりも高くなった際には、第4除湿暖房モードが実行される。第4除湿暖房モードでは、高段側膨脹弁13の絞り開度を第3除湿暖房モードよりも縮小させた絞り状態とし、低段側膨脹弁22を全開状態とする。従って、第4除湿暖房モードでは、サイクルを循環する冷媒の状態については図15のモリエル線図に示すように変化する。
すなわち、図15に示すように、圧縮機11の吐出ポート11cから吐出された高圧冷媒(図15のa17点)は、第1除湿暖房モードと同様に、室内凝縮器12へ流入して、室内蒸発器23にて冷却されて除湿された室内送風空気と熱交換して放熱する(図15のa17点→b17点)。これにより、室内送風空気が加熱される。
室内凝縮器12から流出した冷媒は、絞り状態となっている高段側膨脹弁13によって外気温よりも温度の低い低圧冷媒となるまで等エンタルピ的に減圧される(図15のb17点→c117点)。
高段側膨脹弁13にて減圧された冷媒は、統合弁14の気液分離空間141bに流入し、冷房運転モードと同様に、固定絞り17にて殆ど減圧されることなく液相側流出口141eから流出する。
統合弁14の液相側流出口141eから流出した冷媒は、室外熱交換器20へ流入し、室外熱交換器20にて送風ファン21から送風された外気と熱交換して吸熱する(図15のc117点→c217点)。
さらに、室外熱交換器20から流出した冷媒は、低段側膨脹弁22が全開状態となっているので、減圧されることなく室内蒸発器23へ流入する。以降の作動は冷房運転モードと同様であるため説明を省略する。
以上の如く、第4除湿暖房モードでは、第1〜第3除湿暖房モード時と同様に、室内蒸発器23にて冷却され除湿された室内送風空気を、室内凝縮器12にて加熱して車室内へ吹き出すことができる。これにより、車室内の除湿暖房を実現することができる。
この際、第4除湿暖房モードでは、第3除湿暖房モードと同様に室外熱交換器20を蒸発器として作用させると共に、第3除湿暖房モードよりも高段側膨脹弁13の絞り開度を縮小させているので、室外熱交換器20における冷媒蒸発温度を低下させることができる。従って、第3除湿暖房モードよりも室外熱交換器20における冷媒の温度と外気温との温度差を拡大させて、室外熱交換器20における冷媒の吸熱量を増加させることができる。
その結果、第3除湿暖房モード時に対して、圧縮機11の吸入冷媒密度を上昇させることができ、圧縮機11の回転数を増加させることなく、室内凝縮器12における冷媒圧力を上昇させることができる。従って、第4除湿暖房モードでは、第3除湿暖房モードよりも室内凝縮器12から吹き出される温度を上昇させることができる。
以上説明した本実施形態の車両用空調装置1では、上記の如く、ヒートポンプサイクル10の冷媒回路を切り替えることによって、種々のサイクル構成を実現して、車室内の適切な冷房、暖房、および除湿暖房を実現できる。
本実施形態のように電気自動車に適用される車両用空調装置1では、内燃機関(エンジン)を搭載する車両のようにエンジンの廃熱を車室内の暖房のために利用できない。従って、本実施形態のヒートポンプサイクル10のように、暖房運転モード時にガスインジェクションサイクル、および通常サイクルに切り替えることで、暖房負荷によらず高いCOPを発揮させることできることは、極めて有効である。
また、本実施形態では、ヒートポンプサイクル10をガスインジェクションサイクルとして機能させるために必要な差圧弁16、気液分離手段(気液分離空間141b)、固定絞り17、電磁弁18等の構成部品と一体的に構成した統合弁14を採用している。このため、ガスインジェクションサイクルと通常サイクルとを切替可能なヒートポンプサイクル10を、簡素なサイクル構成で実現することができる。
特に、本実施形態では、中間圧冷媒通路15を開閉する差圧弁16の主弁部材161の一端部(弁体部161a)と他端部(均圧ピストン部161c)の双方に、中間圧冷媒通路15の圧力(下流側通路142gの圧力)が、互いに逆方向に作用する構成としている。
これによれば、中間圧冷媒通路15の圧力変化が主弁部材161の気相冷媒通路142bの開閉動作へ影響してしまうことを抑制できる。このため、冷媒充填作業の真空引きによって中間圧冷媒通路15が真空(圧力≒0)となったとしても、固定絞り17および電磁弁18からなる減圧手段の前後の圧力差を調整することで、気相冷媒通路142bを開く位置へ主弁部材161を変位させることが可能となる。
従って、本実施形態の構成によれば、冷媒充填作業の真空引きにより、差圧弁16の開閉作動が不能となってしまうことを抑制することが可能となる。
また、本実施形態では、主弁部材161の内部に、下流側通路142gと均圧室142iとを連通させる均圧連通路161eを形成している。これによれば、別途、均圧連通路161eを設けるスペースを確保する必要がないので、差圧弁16やボデーを構成するアッパーブロック142の体格が大きくなってしまうことを抑制することができる。
さらに、本実施形態では、主弁部材161の均圧ピストン部161cにおける均圧室142iの圧力を受ける受圧面の面積A3を、弁体部161aにおける下流側通路142gの圧力を受ける受圧面の面積A1と同等の大きさに設定している。
これによれば、中間圧冷媒通路15の圧力によって主弁部材161の一端部(弁体部161a)および他端部(均圧ピストン部161c)に逆方向にかかる力を釣り合わせることができる。このため、中間圧冷媒通路15の圧力変化が主弁部材161の気相冷媒通路142bの開閉動作へ影響してしまうことを効果的に抑制できる。
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。本実施形態では、第1実施形態の差圧弁16の一部を変更した例について説明する。なお、本実施形態では、第1実施形態と同様または均等な部分についての説明を省略、または簡略化して説明する。
本実施形態の圧縮機11は、サイクル内の中間圧冷媒が圧縮室11a内に適切に噴射されるように、圧縮機構が中間圧ポート11dと圧縮室11aとの間の連通状態を周期的に閉塞するように構成されている。
具体的には、圧縮機11の圧縮機構として、例えば、従来技術(特許文献2)と同様のスクロール型圧縮機構を採用することができる。この場合、固定スクロールの端板部に設けられた中間圧ポート11dが、図示しない可動スクロールの歯先により周期的に閉塞される。なお、圧縮機11の圧縮機構としては、中間圧ポート11dと圧縮室11aとの間の連通状態が一時的に閉塞される圧縮機構であれば、スクロール型圧縮機構に限らず、ベーン型圧縮機構、ローリングピストン型圧縮機構等の各種形式のものを採用することができる。
ここで、圧縮機11が中間圧ポート11dと圧縮室11aとの間の連通状態が一時的に閉塞される構成となっていると、冷媒充填作業時に差圧弁16にて中間圧冷媒通路15を開くことができず、中間圧冷媒通路15の真空引きを実施できない不具合が生ずることがある。
そこで、本実施形態では、第1実施形態の差圧弁16に対して、下流側通路142gの圧力が上流側通路142hの圧力よりも高くなった際に、上流側通路142hと下流側通路142gとを連通させる逆止弁164を追加している。
具体的には、本実施形態の差圧弁16には、図16および図17に示すように、主弁部材161の弁体部161aに上流側通路142hと下流側通路142gとを連通させる高圧側連通路161fが形成されている。
そして、高圧側連通路161fの上流側通路142h側には、高圧側連通路161fの開口部を開閉する弁体164a、当該弁体164aを高圧側連通路161fの開口部を閉じる方向に荷重をかけるスプリング164bで構成される逆止弁164が配置されている。
本実施形態の逆止弁164は、下流側通路142gの圧力P1から上流側通路142hの圧力P2を差し引いた上下差圧ΔP(=P1−P2)が所定開弁圧を上回る際に、開弁するように構成されている(図17参照)。なお、逆止弁164の弁体164aが高圧側連通路161fの開口部を開く位置に変位することで、高圧側連通路161fを介して上流側通路142hと下流側通路142gとが連通する。
また、本実施形態の逆止弁164は、下流側通路142gの圧力P1から上流側通路142hの圧力P2を差し引いた上下差圧ΔPが所定開弁圧以下となる際に、閉弁するように構成されている(図16参照)。なお、逆止弁164の弁体164aが高圧側連通路161fの開口部を閉じる位置に変位することで、高圧側連通路161fを介した上流側通路142hと下流側通路142gとの連通が遮断される。
ここで、「所定開弁圧」は、圧縮機11の中間圧ポート11dが閉塞された状態で真空引きを実施する際に、逆止弁164が開弁する圧力に設定されている。なお、所定開弁圧の設定は、弁体164aに対してかけるスプリング164bの荷重調整によって変更可能である。
続いて、真空引きを実施する際の逆止弁164の作動を説明する。圧縮機11の中間圧ポート11dが閉塞された状態で真空引きを実施すると、上流側通路142hが真空(圧力≒0)となるが、主弁部材161により気相冷媒通路142bが閉鎖されることで、下流側通路142gが大気圧程度の圧力が残る。この際、下流側通路142gの圧力から上流側通路142hの圧力を差し引いた上下差圧が所定開弁圧よりも高くなる。
このため、逆止弁164の弁体164aが高圧側連通路161fの開口部を開く位置に変位して、高圧側連通路161fを介して上流側通路142hと下流側通路142gとが連通する。つまり、本実施形態の逆止弁164は、冷媒充填作業の真空引き工程にて高圧側連通路161fを開くように構成されている。
その他の構成および作動は、第1実施形態と同様である。本実施形態の差圧弁16によれば、第1実施形態で説明した差圧弁16の効果に加えて、次の効果を奏する。すなわち、本実施形態の差圧弁16は、下流側通路142gの圧力が上流側通路142hの圧力よりも高くなる際に、上流側通路142hと下流側通路142gとの間を連通させる逆止弁164を備えている。
これによれば、冷媒充填作業時に高圧側連通路161fを介して中間圧冷媒通路15の真空引きを実施することができる。つまり、本実施形態によれば、冷媒充填作業時に中間圧冷媒通路15の真空引きを実施できない不具合を解消することができる。
従って、本実施形態の構成によれば、冷媒充填作業の真空引き工程にて中間圧冷媒通路15の真空引きができない不具合を解消すると共に、中間圧冷媒通路15の真空引きにより差圧弁16の開閉作動が不能となってしまうことを抑制することが可能となる。
なお、本実施形態の如く、冷媒充填作業の真空引き工程に生ずる不具合、および中間圧冷媒通路の真空引きにより生ずる不具合の双方に対応する構成とすることが望ましいが、これに限定されない。
例えば、ヒートポンプサイクル10において、中間圧冷媒通路15の真空引きにより差圧弁16の開閉作動が不能となってしまう不具合が生じ難い場合等には、差圧弁16の均圧ピストン部161cや均圧室142iを廃止して、逆止弁164だけを備える構成としてもよい。これによれば、冷媒充填作業の真空引き工程に生ずる不具合を解消することができる。
(第3実施形態)
次に、第3実施形態について説明する。本実施形態では、差圧弁16の構造を変更した例について説明する。なお、本実施形態では、第1実施形態と同様または均等な部分についての説明を省略、または簡略化して説明する。
図18に示すように、本実施形態の気相冷媒通路142bは、アッパーブロック142における気液分離空間141bの軸線方向に垂直に延びる有底穴の一部で構成されている。なお、本実施形態では、有底穴の開口部が冷媒流出部142aを構成している。また、本実施形態の有底穴には、主弁部材161の一端部を構成する弁体部161aが接離する主弁座部142fを形成する部材が収容されている。
続いて、本実施形態の差圧弁16を構成する各種部品(主弁部材161、弾性部材162等)の詳細について説明する。
本実施形態の主弁部材161は、主弁座部142fに接離する一端部を構成する弁体部161a、および弁体部161aに連結された胴体部161bで構成されている。なお、弁体部161aは、上流側通路142hの圧力を受ける受圧面、および下流側通路142gの圧力を受け受圧面を有する。また、胴体部161bは、上流側通路142hの圧力を受ける受圧面、および主圧力室142eの圧力を受ける受圧面を有する。
本実施形態の主圧力室142eには、主弁部材161に気相冷媒通路142bを閉じる方向(紙面左方向)に荷重をかけるコイルバネ等で構成される弾性部材162が収容されている。この弾性部材162は、主弁部材161に対して、主弁部材161の弁体部161aに形成されたシール部材161dを主弁座部142fに押し付けてシール性を高める方向、すなわち、主弁部材161が気相冷媒通路142bを閉じる方向に荷重をかける。
また、本実施形態の有底穴の底面側には、その内部に均圧ピストン部167が摺動する空間が形成されたカップ状部材168が収容されている。このカップ状部材168は、有底穴の底面側において有底穴に連結される有底の筒状体で構成され、均圧ピストン部167が摺動するシリンダとして機能する。
また、本実施形態の主弁部材161には、その変位方向(主弁部材161の軸方向)に延びる貫通穴161gが形成されている。この貫通穴161gには、その内周面に摺動可能に支持されたシャフト165が配置されている。
本実施形態の主弁部材161には、一端部を構成する弁体部161a側に上流側通路142hと下流側通路142gとを連通させるバイパス連通路161hが形成されている。このバイパス連通路161hは、弁体部161aにおけるシャフト165と対向する内側に形成された溝部、および弁体部161aと胴体部161bとの連結部に形成された貫通穴により構成されている。なお、弁体部161aにおける下流側通路142g側に露出する端面には、バイパス連通路161hにおける下流側通路142g側の開口部を構成するバイパス孔161iが形成されている。
シャフト165には、弁体部161a側の一端部にバイパス孔161iを開閉するバイパス弁体166が連結されると共に、胴体部161b側の他端部に均圧ピストン部167が連結されている。
均圧ピストン部167は、カップ状部材168の内側空間において、主圧力室142eを形成する空間と、下流側通路142g側の圧力が導入される均圧室142iを形成する空間とを区画する部材である。なお、均圧ピストン部167は、外径がカップ状部材168の内径よりも僅かに小さい円柱状に形成されており、カップ状部材168の内側壁面に摺動可能に支持されている。
そして、均圧ピストン部167は、バイパス孔161iを閉じる方向に主圧力室142eの圧力を受けると共に、バイパス孔161iを開く方向に均圧室142iの圧力を受けるように構成されている。換言すれば、均圧ピストン部167は、バイパス孔161iを閉じる方向に主圧力室142eの圧力を受ける受圧面、およびバイパス孔161iを開く方向に均圧室142iの圧力を受ける受圧面を有する。なお、均圧ピストン部167における主圧力室142e側に露出する端面が、主圧力室142eの圧力を受ける受圧面を構成し、均圧ピストン部167における均圧室142i側に露出する端面が、均圧室142iの圧力を受ける受圧面を構成している。
バイパス弁体166は、バイパス孔161iを閉じる方向に下流側通路142gの圧力を受けるように構成されている。換言すれば、バイパス弁体166は、バイパス孔161iを閉じる方向に下流側通路142gの圧力を受ける受圧面を有する。なお、バイパス弁体166における下流側通路142g側に露出する端面が、下流側通路142gの圧力を受ける受圧面を構成している。
ここで、本実施形態のバイパス弁体166がバイパス孔161iを閉じる方向は、主弁部材161が気相冷媒通路142bを開く方向と一致する方向となっている。逆に、バイパス弁体166がバイパス孔161iを開く方向は、主弁部材161が気相冷媒通路142bを閉じる方向と一致する方向となっている。
そして、バイパス弁体166がバイパス孔161iを閉じる位置に変位すると、バイパス弁体166と主弁部材161の弁体部161aとが接触する。この際、均圧室142iの圧力により均圧ピストン部167に作用する力は、バイパス弁体166を介して、主弁部材161に対して気相冷媒通路142bを開く方向に作用するようになっている。
このように、本実施形態のバイパス弁体166は、バイパス孔161iを閉じる位置に変位した際に、均圧室142iの圧力により均圧ピストン部167に作用する力が主弁部材161に対して気相冷媒通路142bを開く方向に作用するように構成されている。
ここで、本実施形態の均圧ピストン部167における均圧室142iの圧力を受ける受圧面の面積A5は、弁体部161aにおける下流側通路142gの圧力を受ける受圧面の面積A1以上の大きさに設定されている(A1≦A5)。
また、本実施形態の均圧ピストン部167における均圧室142iの圧力を受ける受圧面の面積A5は、バイパス弁体166における下流側通路142gの圧力を受ける受圧面の面積A4よりも大きくなるように設定されている(A5>A4)。なお、「A4」は、バイパス弁体166における下流側通路142gの圧力P1を受ける受圧面の面積であり、「A5」は、均圧ピストン部167における均圧室142iの圧力P4を受ける受圧面の面積である。
これにより、シャフト165の両端部には、下流側通路142gの圧力が、一端部(バイパス弁体166)と他端部(均圧ピストン部167)それぞれに逆方向に作用する。そして、均圧ピストン部167には、均圧室142iの圧力によるバイパス孔161iを閉じる方向に作用する力が、バイパス弁体166に対して均圧室142iの圧力によるバイパス孔161iを開く方向に作用する力よりも大きくなる。
ここで、本実施形態の均圧室142iは、下流側通路142gに連通する均圧連通路165aを介して、下流側通路142gの圧力が導入されるようになっている。本実施形態の均圧連通路161eは、シャフト165の一端部(バイパス弁体166)から他端部(均圧ピストン部167)に延びる貫通穴で構成されている。換言すれば、シャフト165の内部には、下流側通路142gと均圧室142iとを連通させる均圧連通路165aが形成されている。
次に、本実施形態の差圧弁16の作動について説明する。図18に示すように、本実施形態の主弁部材161の弁体部161aには、上流側通路142hの圧力P2と下流側通路142gの圧力P1との圧力差[P2−P1]による力[A1×(P2−P1)]が主弁部材161の閉弁方向に作用する。なお、「A1」は、弁体部161aにおける上流側通路142hの圧力P2および下流側通路142gの圧力P1を受ける受圧面の面積である。
また、主弁部材161の胴体部161bには、上流側通路142hの圧力P2と主圧力室142eの圧力P3の圧力差[P2−P3]による力[A2×(P2−P3)]が主弁部材161の開弁方向に作用する。また、主弁部材161の胴体部161bには、弾性部材162による荷重Fspが主弁部材161の閉弁方向に作用する。なお、「A2」は、胴体部161bにおける上流側通路142hの圧力P2および主圧力室142eの圧力P3を受ける受圧面の面積である。
そして、主弁部材161に対して開弁方向に作用する力が、閉弁方向に作用する力以下となる際に、図19および図20に示すように、主弁部材161が主弁座部142fに接触する位置に変位して、気相冷媒通路142bが閉鎖される。
一方、主弁部材161に対して開弁方向に作用する力が、閉弁方向に作用する力を上回った際に、図21に示すように、主弁部材161が主弁座部142fから離間する位置に変位して、気相冷媒通路142bが開放される。
図18に戻り、シャフト165の一端側のバイパス弁体166には、下流側通路142gの圧力による力[A4×P1]が、バイパス弁体166の閉弁方向(バイパス孔161iを閉じる方向)に作用する。
一方、シャフト165の他端側の均圧ピストン部167には、均圧室142iの圧力による力[A5×P4]が、バイパス弁体166の開弁方向(バイパス孔161iを開く方向)に作用する。また、均圧ピストン部167には、主圧力室142eの圧力による力[A5×P3]が、バイパス弁体166の閉弁方向(バイパス孔161iを閉じる方向)に作用する。
そして、バイパス弁体166に対して開弁方向に作用する力が、閉弁方向に作用する力以下となる際に、図20に示すように、バイパス弁体166がバイパス孔161iに接触する位置に変位して、バイパス孔161iが閉鎖される。
一方、バイパス弁体166に対して開弁方向に作用する力が、閉弁方向に作用する力を上回る際に、図19に示すように、バイパス弁体166がバイパス孔161iから離間する位置に変位して、バイパス孔161iが開放される。
次に、本実施形態の差圧弁16の冷媒充填作業時における作動について説明する。まず、圧縮機11の中間圧ポート11dが閉塞された状態で真空引きを実施すると、上流側通路142hが真空(圧力≒0)となるが、主弁部材161により気相冷媒通路142bが閉鎖されることで、下流側通路142gが大気圧程度の圧力が残る。
この際、バイパス弁体166には、下流側通路142gの圧力による力[A4×P1]が、バイパス弁体166の閉弁方向に作用する。また、均圧ピストン部167には、均圧室142iの圧力による力[A5×P4]が、バイパス弁体166の開弁方向(バイパス孔161iを開く方向)に作用する。
ここで、均圧室142iおよび下流側通路142gは、均圧連通路165aを介して連通していることから、均圧室142iの圧力P4は、下流側通路142gの圧力P1と同等の圧力となる(P1=P4)。
また、本実施形態では、均圧ピストン部167における均圧室142iの圧力が作用する受圧面の面積A5を、バイパス弁体166における下流側通路142gの圧力が作用する受圧面の面積A4よりも大きい面積に設定している(A5>A4)。
このため、均圧室142iの圧力P3より均圧ピストン部167の開弁方向に作用する力[A5×P4]が、下流側通路142gの圧力P1よりバイパス弁体166の開弁方向に作用する力[A4×P1]を上回る。
従って、圧縮機11の中間圧ポート11dが閉塞された状態で真空引きを実施すると、図19に示すように、バイパス弁体166がバイパス孔161iから離間する位置に変位して、バイパス孔161iが開放される。これにより、バイパス連通路161hを介して下流側通路142gと上流側通路142hとが連通するので、下流側通路142gおよび中間圧冷媒通路15の真空引きを実施することが可能となる。
なお、圧縮機11の中間圧ポート11dが閉塞された状態で真空引きを実施する際には、上流側通路142hと主圧力室142eとの圧力差が生じない。このため、主弁部材161が主弁座部142fに接触する位置に変位して、気相冷媒通路142bが閉鎖される。
続いて、真空引き工程後の充填工程では、下流側通路142gおよび中間圧冷媒通路15が真空(圧力≒0)となっているため、均圧ピストン部167には、主圧力室142eの圧力による力[A5×P3]が、バイパス弁体166の閉弁方向(バイパス孔161iを閉じる方向)に作用する。なお、バイパス弁体166および均圧ピストン部167には、下流側通路142gの圧力による力が作用しない。
このため、バイパス弁体166は、図20に示すように、バイパス弁体166がバイパス孔161iに接触する位置に変位して、バイパス孔161iが閉鎖される。
この際、均圧室142iの圧力により均圧ピストン部167に作用する力[A5×P3]は、主弁部材161に対して気相冷媒通路142bを開く方向に作用する。つまり、主弁部材161には、上流側通路142hの圧力P2と主圧力室142eの圧力P3との圧力差による力[A2×(P2−P3)]に加えて、均圧ピストン部167に作用する力[A5×P3]が気相冷媒通路142bを開く方向に作用する。
このように、下流側通路142gおよび中間圧冷媒通路15が真空となっているとしても、主弁部材161に対して気相冷媒通路142bを開く方向に作用する力が増加する。このため、上流側通路142hの圧力P2および主圧力室142eの圧力P3の圧力差を調整すること、すなわち、固定絞り17および電磁弁18からなる減圧手段の前後の圧力差を調整することで、図21に示すように、中間圧冷媒通路15を開くことが可能となる。
例えば、冷媒充填工程で中間圧冷媒通路15に冷媒を充填する場合、電磁弁18のソレノイド182への通電を停止して、上流側通路142hの圧力P2および主圧力室142eの圧力P3の圧力差を拡大させることで、主弁部材161を開弁状態にすればよい。なお、冷媒充填工程ではなく、ヒートポンプサイクル10をガスインジェクションサイクルとして作動させる段階で、差圧弁16により気相冷媒通路142bを開放して、中間圧冷媒通路15へ冷媒を充填してもよい。
次に、サイクル作動時の差圧弁16の作動を説明する。まず、ヒートポンプサイクル10をガスインジェクションサイクル以外の通常サイクルとして機能させる各運転モード(冷房運転モード、第2暖房モード、除湿暖房運転モード)における差圧弁16の作動を説明する。
冷房運転モード、および第1除湿暖房モードでは、高段側膨脹弁13が全開状態(減圧作用を発揮しない状態)となり、液相側弁体181が液相冷媒通路141dを開いた状態(電磁弁18の開弁状態)となる。
この場合、上流側通路142hの圧力P2および主圧力室142eの圧力P3が同等の圧力となり、さらに、上流側通路142hの圧力P2および主圧力室142eの圧力P3は、下流側通路142gの圧力P1よりも高い圧力となる。
このため、図20に示すように、主弁部材161により気相冷媒通路142bが閉鎖されると共に、バイパス弁体166によりバイパス孔161iが閉鎖される。これにより、上流側通路142hと下流側通路142gとの連通が遮断されて、中間圧冷媒通路15が閉鎖される。
ここで、冷房運転モードは、他の運転モードと異なり、圧縮機11から吐出された冷媒の熱を室内凝縮器12にて室内送風空気に放熱させない運転モードである。このため、冷房運転モード時に、バイパス弁体166が開弁し、気相冷媒が中間圧冷媒通路15を介して圧縮機11の中間圧ポート11dに流入すると、ヒートポンプサイクル10における性能が悪化してしまう。
これに対して、本実施形態の差圧弁16では、冷房運転モード時にバイパス弁体166によりバイパス孔161iが確実に閉鎖される構成となっているので、ヒートポンプサイクル10における性能が悪化するような問題は生じない。
また、第2暖房モード、および第2〜第4除湿暖房モードでは、高段側膨脹弁13が絞り状態(減圧作用を発揮する状態)となり、液相側弁体181が液相冷媒通路141dを開いた状態(電磁弁18の開弁状態)となる。
この場合、上流側通路142hの圧力P2および主圧力室142eの圧力P3が同等の圧力となるため、主弁部材161により気相冷媒通路142bが閉鎖される。これにより、上流側通路142hと下流側通路142gとの連通が遮断されて、中間圧冷媒通路15が閉鎖される。
なお、第2暖房モードおよび第2〜第4除湿暖房モードでは、高段側膨脹弁13が絞り開度が小さいと、上流側通路142hの圧力P2および主圧力室142eの圧力P3が、下流側通路142gの圧力P1と同程度となり、バイパス弁体166が開弁する虞がある。
しかし、仮にバイパス弁体166が開弁し、気相冷媒が中間圧冷媒通路15を介して圧縮機11の中間圧ポート11dに流入したとしても、ヒートポンプサイクル10における性能に悪い影響とならない。理由は、第2暖房モードや第2〜第4除湿暖房モードは、圧縮機11の吐出冷媒の熱を室内凝縮器12にて室内送風空気に放熱させる運転モードであり、気相冷媒が圧縮機11の中間圧ポート11dへ流入することで、暖房性能が向上する方向に作用するからである。
続いて、ヒートポンプサイクル10をガスインジェクションサイクルとして機能させる第1暖房モードにおける差圧弁16の作動を説明する。この第1暖房モードでは、高段側膨脹弁13が絞り状態(減圧作用を発揮する状態)となり、液相側弁体181が液相冷媒通路141dを閉じた状態(電磁弁18の閉弁状態)となる。
この場合、上流側通路142hの圧力P2および主圧力室142eの圧力P3の圧力差が拡大する。これにより、主弁部材161が主弁座部142fから離間する位置に変位して、気相冷媒通路142bが開放される。つまり、上流側通路142hと下流側通路142gとが連通し、中間圧冷媒通路15が開放される。なお、第1暖房モードでは、下流側通路142gの圧力P1が主圧力室142eの圧力P3よりも大きくなることから、バイパス弁体166も開弁する。
その他の構成および作動は、第1実施形態と同様である。本実施形態の構成では、中間圧冷媒通路15の圧力を受ける受圧面の面積をバイパス弁体166に比べて均圧ピストン部167の方が大きくなるように設定している。
これにより、冷媒充填作業の真空引きを行う際に、中間圧冷媒通路15の圧力により均圧ピストン部167に作用する力が、バイパス弁体166に作用する力を上回り、バイパス弁体がバイパス孔を開く位置に変位する。従って、バイパス連通路161hを介して中間圧冷媒通路15の真空引きを行うことが可能となる。
また、冷媒充填作業の真空引きにより中間圧冷媒通路が真空(圧力≒0)となっている場合、均圧ピストン部167およびバイパス弁体166の双方に中間圧冷媒通路15の圧力が作用しない。このため、バイパス弁体166は、主圧力室142eの圧力により均圧ピストン部167に作用する力によってバイパス孔161iを閉じる位置に変位する。
この際、主弁部材161には、中間圧冷媒通路15の圧力が気相冷媒通路142bを開く方向に作用しないものの、主圧力室142eの圧力により均圧ピストン部167に作用する力が、バイパス弁体166を介して気相冷媒通路142bを開く方向に作用する。
このため、中間圧冷媒通路15が真空となっているとしても、主弁部材161に対して気相冷媒通路142bを開く方向に作用する力が増加するので、上流側通路142hの圧力および主圧力室142eの圧力の圧力差を調整することで、気相冷媒通路142bを開くことが可能となる。
従って、本実施形態の構成によれば、冷媒充填作業の真空引き工程にて中間圧冷媒通路15の真空引きができない不具合を解消すると共に、中間圧冷媒通路15の真空引きにより差圧弁16の開閉作動が不能となってしまうことを抑制することが可能となる。
また、本実施形態では、シャフト165の内部に、下流側通路142gと均圧室142iとを連通させる均圧連通路165aを形成している。これによれば、別途、均圧連通路165aを設けるスペースを確保する必要がないので、差圧弁16やボデーを構成するアッパーブロック142の体格が大きくなってしまうことを抑制することができる。
また、本実施形態では、均圧ピストン部167における均圧室142iの圧力を受ける受圧面の面積A5を、弁体部161aにおける下流側通路142gの圧力を受ける受圧面の面積A1以上の大きさに設定している。
これによれば、バイパス弁体166によりバイパス孔161iが閉鎖された際に、均圧ピストン部167に作用する力[A5×P3]を増大させることが可能となる。なお、バイパス弁体166によりバイパス孔161iが閉鎖された際に、均圧ピストン部167に作用する力[A5×P3]が充分に大きければ、均圧ピストン部167の受圧面の面積A5を、弁体部161aの受圧面の面積A1より小さい大きさに設定してもよい。
(他の実施形態)
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能である。例えば、以下のように種々変形可能である。
(1)上述の各実施形態では、本発明の差圧弁16を電気自動車の車両用空調装置1のヒートポンプサイクル10に適用する例について説明したが、これに限定されない。例えば、ハイブリッド自動車の如く、エンジン廃熱が不充分なり得る車両の空調装置のヒートポンプサイクル10に、本発明の差圧弁16を適用してもよい。
(2)上述の各実施形態では、本発明の差圧弁16を車両用空調装置1のヒートポンプサイクル10に適用した例を説明したが、これに限定されず、例えば、据置型空調装置や液体加熱装置(例えば、給湯機)等のヒートポンプサイクル10に適用してもよい。
(3)上述の各実施形態では、各膨脹弁13、22、電磁弁18、迂回用開閉弁251等にてヒートポンプサイクル10の冷媒回路の切り替えることで、種々の運転モードを実現する例について説明したが、これに限定されない。
ヒートポンプサイクル10は、ガスインジェクションサイクルとガスインジェクションサイクル以外の通常サイクルとを切替可能な構成であればよい。例えば、ヒートポンプサイクル10は、第1暖房モードおよび第2暖房モードからなる暖房運転モードだけが実現可能な構成となっていてもよいし、第1暖房モードおよび冷房運転モードだけが実現可能な構成となっていてもよい。勿論、種々の運転モードを設ける方が、熱交換対象流体(送風空気)の温度を適切に温度調整できる点で有効である。
(4)上述の各実施形態では、高段側膨脹弁13を電気式の可変絞り機構で構成する例について説明したが、これに限定されない。例えば、高段側膨脹弁13を、固定絞り、固定絞りを迂回する迂回通路、当該迂回通路を開閉する通路開閉弁で構成してもよい。
(5)上述の各実施形態では、液相冷媒通路141dを開閉する電磁弁18を、ノーマルクローズ型の電磁弁により構成する例について説明したが、ノーマルオープン型の電磁弁で構成してもよい。
(6)上述の各実施形態では、電磁弁18を駆動する駆動機構としてソレノイド182を採用する例について説明したが、これに限らず、例えば、ステッピングモータを電磁弁18の駆動機構として採用してもよい。
(7)上述の各実施形態では、本発明の差圧弁16を、統合弁14として気液分離手段(気液分離空間141b)および減圧手段(固定絞り17、電磁弁18)と一体化した例について説明したが、これに限定されない。例えば、本発明の差圧弁16を、気液分離手段(気液分離空間141b)や減圧手段(固定絞り17、電磁弁18)と一体化せず、別体で構成してもよい。
(8)上述の第1実施形態では、均圧連通路161eを主弁部材161の内部に形成した例について説明したが、これに限定されず、例えば、均圧連通路161eをアッパーブロック142に形成してもよい。
(9)上述の第1実施形態では、均圧ピストン部161cにおける受圧面の面積A3を、弁体部161aにおける受圧面の面積A1と同等の大きさに設定する例について説明したが、これに限定されない。均圧室142iの圧力により均圧ピストン部161cに作用する力、および下流側通路142gの圧力により弁体部161aに作用する力が、逆方向に釣り合う構成であれば、均圧ピストン部161cの受圧面の面積A3を任意の大きさに設定してもよい。
(10)上述の第2実施形態では、上流側通路142hと下流側通路142gとを連通させる高圧側連通路161fを主弁部材161に形成する例について説明したが、これに限定されない。例えば、アッパーブロック142に高圧側連通路を形成し、当該高圧側連通路を逆止弁164にて開閉する構成としてもよい。
(11)上述の第3実施形態では、均圧連通路165aをシャフト165の内部に形成する例について説明したが、これに限定されず、例えば、均圧連通路165aをアッパーブロック142に形成してもよい。
(12)上述の第3実施形態では、バイパス連通路161hを、上流側通路142hと下流側通路142gと連通させる連通路で構成する例について説明したが、これに限定されない。バイパス連通路161hは、主圧力室142eと下流側通路142gと連通させる連通路で構成してもよい。このように、バイパス連通路161hを主圧力室142eと下流側通路142gと連通させる構成としても、バイパス弁体166自体に作用する力が殆ど変化しないので、第3実施形態と同様の効果を得ることができる。
(13)上述の第3実施形態では、バイパス連通路161hを、弁体部161aにおけるシャフト165と対向する内側に形成された溝部、および弁体部161aと胴体部161bとの間に形成された貫通穴で構成する例について説明したが、これに限定されない。例えば、バイパス連通路161hを、シャフト165における弁体部161aと対向する外側に形成された溝部、および弁体部161aと胴体部161bとの間に形成された貫通穴で構成してもよい。
(14)上述の各実施形態は、互いに無関係なものではなく、組み合わせが明らかに不可な場合を除き、適宜組み合わせが可能である。
(15)上述の各実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。
(16)上述の各実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されない。
(17)上述の各実施形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その形状、位置関係等に限定されない。