JP6074609B2 - しわのよったナノ多孔質金属箔 - Google Patents

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Description

本発明は、しわのよったナノ多孔質金属箔に関する。
金属箔にnmオーダーの気孔を形成したナノ多孔質金属箔が作製されている。このようなナノ多孔質金属箔の表面に吸着させたローダミン6G(R6Gと呼ぶ。)等の色素は、ラマン散乱信号測定で著しい表面増強ラマン散乱(Surface-Enhanced Raman Scattering、SERSと呼ぶ。)が観察される(特許文献1参照)。
特許文献1では、金属箔として金(Au)と銀(Ag)の合金を用いてナノ多孔質金属箔が作製されている。
さらに、従来の銀コロイドを使用する方法でも、SERSが測定されており、1分子を測定できる検出感度を有していることが報告されている(非特許文献1及び2参照)。
特開2008−184671号公報
Nie, S et al.,"Probing Single Molecules and Nanoparticles by Surface-Enhanced Raman Scattering,"Science, Vol.275, pp.1102-1106, 1997 Kneipp, K et al.,"Single Molecule Detection Using Surface-Enhanced Raman Scattering(SERS),"Phys. Rev. Lett., Vol.78, pp.1667-1670, 1997
特許文献1のナノ多孔質金属箔では、銀コロイドのような表面増強ラマン散乱が得られず、例えば、R6Gの1分子を測定できないという課題がある。
一方、銀コロイドの場合には、表面増強ラマン散乱の増強の度合いである増強因子は大きいが、特定のnmオーダーの径を有している銀コロイドを再現性良く作製することはできなかった。
本発明は、上記課題に鑑み、例えばR6Gの1分子のSERSスペクトルを測定可能な、しわのよったナノ多孔質金属箔を提供することを目的としている。
本発明者等は、ナノ多孔質金属箔をアモルファスの樹脂基板に張り付けた後、ナノ多孔質金属箔を樹脂のガラス遷移温度から融点の間の温度で熱処理を施し、ナノ多孔質金属箔の熱収縮を行なってしわを形成することにより、ナノ多孔質金属箔よりも増強因子が著しく増強されるとの知見を得て本発明に想到した。
上記の目的を達成するため、本発明のしわのよったナノ多孔質金属箔は、nmオーダーの気孔が形成されたナノ多孔質金属箔と、ナノ多孔質金属箔に形成されたしわと、を備え、ナノ多孔質金属箔は少なくとも2原子以上の合金からなっており、このしわは山と谷からなり、山にはラマン散乱における表面増強を生起させる複数のホットスポットが形成されている。
上記構成において、好ましくは、ナノ多孔質金属箔の気孔の大きさは、10〜50nmである。
しわは、好ましくは、二次元的に繰り返す波状の波形を有している。このしわの二次元的に繰り返す波状の波形は、好ましくは、一方の周期が約3μm〜5μmであり、他方の周期が約20μm〜30μmである。
しわの山には、大きさが1nm以下から数十nmの割れ目が多数形成されている。また、しわの山の割れ目は、延性の塑性変形による。
ホットスポットによる前記ラマン散乱における増強因子は、好ましくは、1010〜1011である。
合金は、好ましくは、AuとAgからなる。或いは、合金は、好ましくは、CuとMnからなる。
本発明のしわのよったナノ多孔質金属箔によれば、従来のナノ多孔質金属箔よりも表面増強ラマン散乱における増強因子をさらに増大させ、再現性よく各種の分子を1分子迄検出することが可能になる。
本発明のしわのよったナノ多孔質金属箔を示す模式図である。 本発明のしわのよったナノ多孔質金属箔の応用例を示す斜視図である。 しわのよったナノ多孔質金属箔の製造方法を説明する図である。 樹脂製の基板に張り付けたナノ多孔質金属箔を模式的に示す斜視図である。 樹脂製の基板に張り付けたしわのよったナノ多孔質金属箔を模式的に示す斜視図である。 作製したナノ多孔質金属箔及びしわのよったナノ多孔質金属箔のSEM像(走査型電子顕微鏡像)であり、(a)〜(d)はナノ多孔質金属箔、(e)〜(h)はしわのよったナノ多孔質金属箔を示している。 しわのよったナノ多孔質金属箔のSEM像及びSTEM像(走査型透過電子顕微鏡像)を示し、(a)〜(c)はSEM像、(d)及び(e)はSTEM像である。 HSAで修飾したしわのよったナノ多孔質金属箔を緑色の光で励起したときのCV分子の蛍光像であり、(a)は露光時間が2秒、(b)は露光時間が100m秒の場合を示している。 10−8MのCV溶液で修飾したしわのよったナノ多孔質金属箔とナノ多孔質金属箔のSERSスペクトルである。 10−8MのCV溶液で修飾したしわのよったナノ多孔質金属箔のSERSスペクトルである。 10−8MのCV溶液で修飾したしわのよったナノ多孔質金属箔においてしわの複数の山を測定したSERSスペクトルである。 10−11MのR6G溶液で修飾したしわのよったナノ多孔質金属箔においてしわの複数の山を測定したSERSスペクトルである。 共にR6Gが吸着されたしわのよったナノ多孔質金属箔とAuの単結晶膜のラマンスペクトルを示す図である。 作製したナノ多孔質金属箔のSEM像を示す図であり、拡大図も併せて示している。 作製したナノ多孔質金属箔のX線分析の結果を示す図である。 作製したしわのよったナノ多孔質金属箔のSEM像を示す図であり、拡大図も併せて示している。 作製したしわのよったナノ多孔質金属箔1のSEM像を示す図であり、(a)は低倍率、(b)は高倍率を示している。 10−12M及び10−10MのR6G溶液で修飾したしわのよったナノ多孔質金属箔と比較例として10−10MのR6G溶液で修飾したナノ多孔質金属箔のSERSスペクトルを示す図である。 10−12MのR6G溶液で修飾したしわのよったナノ多孔質金属箔のラマンマップである。 図19のラマンマップにさらに同じ観察領域の光学顕微鏡像を重ねた図である。 10−12M及び10−10MのR6G溶液で修飾したしわのよったナノ多孔質金属箔のホットスポットのSERSスペクトルを示す図である。 10−9Mのアデニン溶液で修飾したしわのよったナノ多孔質金属箔1のラマン測定と測定した箇所の光学像であり、(a)はラマンマップ、(b)は光学像、(c)はラマンマップと光学像を重ね合わせた像を示している。 10−9Mのアデニン溶液で修飾したしわのよったナノ多孔質金属箔のホットスポットのSERSスペクトルを示す図である。 10−9Mのアデニン溶液で修飾したしわのよったナノ多孔質金属箔のSERSスペクトルである。 10−12Mのアデニン溶液で修飾したしわのよったナノ多孔質金属箔のSERSスペクトルである。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
(第1の実施形態)
図1は本発明のしわのよったナノ多孔質金属箔を示す模式図である。
図1に示すように、しわのよったナノ多孔質金属箔1は、ナノメートル(nm)オーダーの気孔が形成されたナノ多孔質金属箔と、ナノ多孔質金属箔に形成されたしわと、を備え、ナノ多孔質金属箔は少なくとも2原子以上の合金からなり、しわは山1aと谷1bからなり、山1aには、ラマン散乱における表面増強を生起させる複数の後述するホットスポットが形成されている。しわのよったナノ多孔質金属箔1は、図3を用いて後述するように、ナノ多孔質金属箔2を、基板8に張り付けた後で熱処理を施し、室温まで冷却して形成することができる。
しわのよったナノ多孔質金属箔1は、後述するようにナノ多孔質金属箔2を、基板8に張り付けた後で熱処理を施し、室温まで冷却して形成することができる。ナノ多孔質金属箔2は、nmオーダーの気孔が形成されており、少なくとも2原子以上の合金からなる。気孔の大きさは、5〜10000nm(10μm)とすることができる。気孔の大きさは、後述する製造方法におけるナノ多孔質金属箔2の腐食時間で制御可能である。後述するラマン散乱における増強因子を大きくするためには、ナノ多孔質金属箔2の気孔の大きさは、例えば10〜50nmとすればよい。
金属箔は、例えばAuとAgからなる合金やCuとMnからなる2原子以上の合金からなる。金属箔の厚さは、40nm〜50nm、つまり数十nm〜10000nm(10μm)とすることができる。金属箔の厚さは、例えば100nmである。
ナノ多孔質金属箔2に形成されるしわは、山1aと谷1bからなる。しわの山1aには、ラマン散乱における表面増強を生起させるホットスポットが多数形成されている。
しわは、二次元的に繰り返す波状の形状の波形を有しており、しわの山1aには、大きさが1nm以下から数十nmの割れ目が多数形成されている。これらの山1aの割れ目は延性の塑性変形によって形成されたものである。
ナノ多孔質金属箔2を張り付けるための基板8は、予備歪みを加えた熱可塑性樹脂を用いた高分子基板が好ましい。樹脂製の高分子基板8は、非晶質(アモルファスと呼ぶ)である樹脂を使用することができる。このような樹脂製の高分子基板8は、軟化するガラス遷移温度と樹脂自体の融点とを有している。樹脂製の高分子基板8の厚さは、例えば10μm〜30μmである。金属箔の厚さは40〜50nm、つまり数十nm〜10000nmとすることができる。金属箔の厚さは、例えば100nmである。このような熱可塑性樹脂としては、ポリスチレン(PS)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素樹脂、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、アクリルニトリル(AS)、アクリル(PMMA)、ナイロン等のポリアミド(PA)、ポリアセタール(POM)、ポリカーボネート(PC)、変性ポリフェニレンエーテル(変性PPE)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、グラスファイバー強化ポリエチレンテレフタレート(GF-PET)、環状ポリオレフィン(COP)、ポリフェニレンスルファイド(PPS)、ポリスルホン(PSF)、ポリエーテルサルフォン(PES)、非晶ポリアリレート(PAR)、液晶ポリマー(LCP)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、熱可塑性ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)等が挙げられる。
図2は、本発明のしわのよったナノ多孔質金属箔1の応用例を示す斜視図である。
図2に示すように、しわのよったナノ多孔質金属箔1は、ガラス板10に張り付けられている。しわのよったナノ多孔質金属箔1は、例えば接着剤によりガラス板10に張り付けられている。ガラス板10に張り付けられたしわのよったナノ多孔質金属箔1は、例えば顕微ラマン分光用の試料に使用することができる。しわのよったナノ多孔質金属箔1には、プローブとなる分子が吸着されていてもよい。
(しわのよったナノ多孔質金属箔1の製造方法)
次に、しわのよったナノ多孔質金属箔1の製造方法について説明する。
図3は、しわのよったナノ多孔質金属箔1の製造方法を説明する図である。
第1工程(図3(a)参照):
先ず、金属箔6を用いてナノ多孔質金属箔2を製造する。具体的には、所定の厚さの合金からなる金属箔6をビーカー3に入れて酸溶液4に浸漬して、nmオーダーの気孔を形成する。具体的には、図示するように金属箔6を、ビーカー3内に満たした酸等の腐食溶液に入れて、合金の内の腐食され易い金属を腐食する。腐食が済んだら、金属箔6を、例えば硝酸の溶液4から取り出し、硝酸を除去するための洗浄を行う。この第1工程によりナノ多孔質金属箔2が作製される。ナノ多孔質金属箔2に腐食で形成される気孔の大きさは、腐食時間、酸溶液4の温度や濃度等により制御することができる。酸の溶液4の温度が同じ場合には、酸溶液4による金属箔6の腐食時間が短い程、金属箔6に形成される気孔の大きさは小さくなる。
第2工程(図3(b)参照):
次に、第1工程で作製したナノ多孔質金属箔2を、予備歪みを加えた熱可塑性樹脂の基板8に張り付ける。図4は、樹脂製の基板8に張り付けたナノ多孔質金属箔2を模式的に示す斜視図である。
第3工程(図3(c)参照):
第2工程で作製した樹脂製の基板8に張り付けたナノ多孔質金属箔2を熱処理する。予備歪みを加えた樹脂からなる基板8は暖めると縮む。このため、熱処理により、ナノ多孔質金属箔2が収縮し、しわのよったナノ多孔質金属箔1が作製される。ナノ多孔質金属箔2の収縮の度合い、つまり収縮率は、熱処理条件により制御することができる。予備歪みを加えた熱可塑性樹脂からなる基板8の予備歪みを調整しても、収縮率を変えることができる。これにより、しわのよったナノ多孔質金属箔1を製造することができる。図5は、熱可塑性樹脂からなる基板8に張り付けたしわのよったナノ多孔質金属箔1を模式的に示す斜視図である。
以下、本発明を実施例によってさらに詳細に説明する。
(実施例1)(しわのよったナノ多孔質金属箔1)
しわのよったナノ多孔質金属箔1は、以下のようにして作製した。
厚さが100nmのAu35Ag65からなる合金箔6を、室温で71%の硝酸溶液4中で腐食させてナノ多孔質金属箔2とした。硝酸溶液4中の腐食時間は、それぞれ10分、60分、360分である。金属箔6の腐食時間が短い程、金属箔6に形成される気孔の大きさは小さくなる。
このようにして作製したナノ多孔質金属箔2を脱イオン水(比抵抗が18.2MΩcm)で注意して洗浄した後に、この2cm×2cmの厚さが100nmのナノ多孔質金属箔2を予め応力を加えた厚さ25ミクロンのポリスチレンからなる基板8(Grafix社、KSF50−C、以下PS基板と呼ぶ。)に物理的に固着した。ナノ多孔質金属箔2を張り付けたPS基板8を80℃で1時間加熱し、ナノ多孔質金属箔2とPS基板8の結合を強固にした。この温度においては、応力が印加されたPS基板8とナノ多孔質金属箔2の間は非常に安定である。そして、PS基板8の体積の収縮は起こらず、またナノ多孔質金属箔2のナノ孔の広がりも検出されなかった。最後に160℃で6分加熱した。
予め応力を加えたPS基板8はアモルファスの高分子であり、ガラス遷移温度以上に加熱されたときに収縮する。実施例1で使用したPS基板8のガラス遷移温度及び融点は、それぞれ95℃、240℃である。上記収縮のための熱処理に用いた160℃、6分の温度は、ガラス遷移温度よりも高く、融点よりも低い温度である。これにより、PS基板8の体積は約半分以上収縮する。この場合、作製したしわのよったナノ多孔質金属箔1の大きさは、例えば8mm×8mm程度になる。
作製したナノ多孔質金属箔2及びしわのよったナノ多孔質金属箔1の表面を、走査型電子顕微鏡(日本電子株式会社製、JIB−4600CF)及び走査型透過電子顕微鏡(日本電子株式会社製、JEM−2100B)で測定した。
図6は、作製したナノ多孔質金属箔2及びしわのよったナノ多孔質金属箔1のSEM像(走査型電子顕微鏡像)であり、(a)〜(d)はナノ多孔質金属箔2、(e)〜(h)はしわのよったナノ多孔質金属箔1を示している。
図6(a)は硝酸溶液4中の腐食時間が10分の場合であり、作製したナノ多孔質金属箔2の気孔径は12nmであった。図6(b)は硝酸溶液4中の腐食時間が60分の場合であり、作製したナノ多孔質金属箔2の気孔径は26nmであった。図6(c)は硝酸溶液4中の腐食時間が360分の場合であり、作製したナノ多孔質金属箔2の気孔径は38nmであった。図6(d)は、図6(c)をさらに低倍率で観察したSEM像であり、ナノ多孔質金属箔2の表面は、μmスケールでは平坦であることが分かる。SEM像で観察される数μmの明暗は、Au35Ag65からなる金属箔6自体の粒界に起因している。
図6(e)は気孔の大きさが38nmのしわのよったナノ多孔質金属箔1を低倍率で観察したSEM像である。しわの分布は、小さな周期と大きな周期からなる波状の波形で構成されていることが分かる。つまり、μmオーダーに拡大して観察すると、測定範囲では2次元方向で均一で周期性があることが分かる。しわの小さな周期である一次分布の波長は約3〜5μmであり、しわの大きな周期である二次分布の波長は約20〜30μmである。
図6(f)〜(h)は、それぞれ気孔の大きさが12nm、26nm、38nmのしわのよったナノ多孔質金属箔1を高倍率で観察したSEM像である。図6(e)の低倍率からさらに高倍率で観察すると、しわはバラの花びらのような三次元形状を有していることが分かる。ナノ多孔質金属箔2にしわを形成する熱処理では、ナノ多孔質金属箔2の有していた気孔の大きさはごく僅かに増加することを除けば、ほぼ同じ大きさとなる。作製した3種のしわのよったナノ多孔質金属箔1の形状が互いに相似であるので、しわの長さは、気孔の大きさによらずに、収縮率で制御することができる。
ナノ多孔質金属箔2にしわを形成することによる大きな変形のため、しわのよったナノ多孔質金属箔1では、しわの山1aに沿って亀裂が頻繁に観測される。
図7は、しわのよったナノ多孔質金属箔1のSEM像と、STEM像(走査型透過電子顕微鏡像)を示し、(a)〜(c)はSEM像、(d)及び(e)はSTEM像である。図7(a)〜(c)は、それぞれ気孔の大きさが12nm、26nm、38nmの場合である。
図7(a)に示すように、しわのよったナノ多孔質金属箔1の気孔の大きさが12nmの割れ目は、一般に鋭く切れた割れの端を伴う脆弱性から生じている。図7(b)に示すように、しわのよったナノ多孔質金属箔1の気孔の大きさが26nmの割れた山1aは、金の梁部分に検出可能な塑性変形が観察される。一方、図7(c)に示すように、しわのよったナノ多孔質金属箔1の気孔の大きさが38nmの場合には、梁の山1aは、延性を示すように塑性変形し、割れ目は殆ど観察されなかった。上記の観察は、ナノ多孔質金属箔の伸びから破壊に至る寸法の依存性に一致している。
さらに、気孔の大きさが26nmのしわのよったナノ多孔質金属箔1をSTEMで観察した。図7(d)及び(e)から明らかなように、山1aの割れ目は、1nm以下〜数10nmの幅を有している。これは、金の梁の割れ目を伴った種々のナノギャップを形成している。
STEMの分析からは、破壊した金の梁の直径が5nm以下の頂点を有していることが分かった。この頂点の大きさは、最初のナノ多孔質金属箔2の梁よりも遥かに小さいものである。梁では、ツイン変形や積層欠陥のような変形欠陥が頻繁に観察される。これは、鋭い先端の形成が、Auの山1aが破壊中に起きる局所的な塑性変形に由来することを示している。
しわのよったナノ多孔質金属箔1の有している不均一なナノ構造の表面プラズモンの分布を明らかにするために、気孔の大きさが26nmのしわのよったナノ多孔質金属箔1上に担持したクリスタルバイオレットの蛍光顕微鏡観察を行った。クリスタルバイオレット(Crystal Violet、以下CVと呼ぶ。)は、PH指示薬等に使用される色素である。
ヒト血清アルブミン(以下、HSAと呼ぶ。)を蛍光測定における像取得のスペーサとして用いた。蛍光像は、オリンパス社製蛍光顕微鏡、モデルBX51で測定した。しわのよったナノ多孔質金属箔1は、20μM(1μMは1×10−6モル/リットル)HSA溶液に24時間以上浸漬し、取り出して空気中で乾燥する前に脱イオン水で洗浄した。10−10MのCV(アルドリッチ社、CV)のメタノール溶液2μLを、HSAで修飾した基板8に滴下した。乾燥後、滴下した中央部の蛍光像を取得した。
図8は、HSAで修飾したしわのよったナノ多孔質金属箔1を緑色の光で励起したときのCV分子の蛍光像であり、(a)は露光時間が2秒、(b)は露光時間が100m秒を示している。
図8(a)に示すように、露光時間が2秒で、明るい山1aと暗い谷1bからなるしわの構造がよく認識されることが分かる。蛍光観察のコントラストは局所的な電磁界の強度に直接関係しているので、しわの明るい山1aは、明らかにより強い表面プラズモン共鳴を生じさせている。
図8(b)に示すように、露光時間が短い100m秒でも、CCDカメラを飽和させる程の強度を有している高密度の明るい山1aが、大凡しわの山1aに沿って観察されることが分かった。これらの明るい山1aは、しわの山1aの割れのナノギャップにおける電磁気的なホットスポットに対応している。
(SERS測定)
次にSERS測定について説明する。
SERS測定のためのプローブとしては、CV及びローダミン6G(アルドリッチ社、R6G)のアルコール溶液を用いた。SERS測定の試料は、以下のようにして作製した。R6Gは、色素レーザ等に使用される蛍光分子である。
しわのよったナノ多孔質金属箔1を、10−8MのCV溶液に24時間以上浸漬し、取り出して空気中で乾燥する前にメタノールで洗浄した。このような処理により、しわのよったナノ多孔質金属箔1には、単分子層以下(サブ単分子層とも呼ぶ。)のCV分子を被覆率が約2.5×10/μmでしわのよったナノ多孔質金属箔1付きの基板8に担持させることができる。
SERS測定は、マイクロラマン分光器(Renishaw社製、InVia RM 1000)により測定した。しわのよったナノ多孔質金属箔1に照射するレーザ光の波長は、514.5nmと632.8nmである。レーザ光のビーム寸法は、平均したSERSスペクトルを取得するために直径を約5μmと大きく設定した。レーザ光の出力は、試料に対する刺激による損傷を排除するために非常に低レベルに設定した。R6Gを吸着させたしわのよったナノ多孔質金属箔1に照射するレーザ光の出力は0.06mWとした。CVを吸着させたしわのよったナノ多孔質金属箔1に照射するレーザ光の出力は0.3mWとした。各スペクトルに対する蓄積時間は、50秒である。
図9は、10−8MのCV溶液で修飾したしわのよったナノ多孔質金属箔1とナノ多孔質金属箔2のSERSスペクトルであり、図10は、10−8MのCV溶液で修飾したしわのよったナノ多孔質金属箔1のSERSスペクトルである。図9及び図10において、横軸はラマンシフトの波数(cm−1)、縦軸は信号強度(任意目盛)である。
図9から明らかなように、気孔の大きさが12nm、26nm、38nmのしわのよったナノ多孔質金属箔1のSERSスペクトルの強度は、何れもナノ多孔質金属箔2のSERSスペクトルよりも大きいことが分かる。しわのよったナノ多孔質金属箔1のSERSスペクトルの強度が増す度合いは、気孔の寸法に強く依存していることを示している。気孔の大きさが12nm、26nm、38nmにおけるSERSスペクトルの強度は、ナノ多孔質金属箔のSERSスペクトルに比較して、それぞれ、約20倍、約60倍、約50倍である。つまり、図10に示すように、しわのよったナノ多孔質金属箔1の気孔の大きさが26nmの場合に最も強い信号が得られた。
一方、従来のナノ多孔質金属箔の場合には、気孔の寸法が小さい程SERSスペクトルの強度が増すことが分かる。つまり、図9から明らかなように、気孔の寸法が12nmの場合が最もSERSスペクトルの信号強度が大きくなる。
上記の結果から、しわのよったナノ多孔質金属箔1の場合には、気孔の大きさが26nmの場合がSERSスペクトルの信号強度が最も大きくなる。このように、従来のナノ多孔質金属箔2に対してSERSスペクトルの強度が、しわのよったナノ多孔質金属箔1の場合で増強されるのは、主にしわのよったナノ多孔質金属箔1の微細構造がしわの形成により誘起されることを示している。しわの形成は収縮率を調整することで変えることができる。これにより、しわのよったナノ多孔質金属箔1のSERSスペクトルは、気孔の寸法としわの収縮率により変えることができる。
さらに、レーザ光のビーム寸法を約1μmに絞り、しわのよったナノ多孔質金属箔1の各点からのSERSスペクトルを取得して、SERSスペクトルの均一性について測定した。この測定から、蛍光観察で得られたしわの山1aの明るい箇所に一致した箇所ではSERSスペクトルの強度が、しわの谷1bよりも増強されることが分かった。
さらに、しわのよったナノ多孔質金属箔1において、しわの山1aに沿ってレーザ光を走査すると、測定箇所毎にラマン強度が大きく変化することを見出した。
図11は、10−8MのCV溶液で修飾したしわのよったナノ多孔質金属箔1においてしわの複数の山1aを測定したSERSスペクトルであり、図12は、10−11MのR6G溶液で修飾したしわのよったナノ多孔質金属箔1においてしわの複数の山1aを測定したSERSスペクトルである。図11及び図12の横軸及び縦軸は図10と同じである。
図11に示すように、しわの山1aを6箇所測定した結果、SERSスペクトルの強度は測定箇所(サイト)毎に変化し、最大強度は所謂ホットスポットに対応しており、その最大強度は最小強度の箇所の10倍位であることが判明した。
図12は、10−11MのR6G溶液で修飾したしわのよったナノ多孔質金属箔1であるが、図11と同様の結果を得た。
10−11MのR6G溶液で修飾したしわのよったナノ多孔質金属箔1を514.5nmの波長のレーザ光で励起した表面増強ラマン散乱の増強因子(Enhancement Factor、EFと呼ぶ)の測定を行った。気孔の大きさは26nmである。しわのよったナノ多孔質金属箔1に1×10−11MのR6Gのメタノール溶液の2μLの液滴を滴下した。この溶液は、しわのよったナノ多孔質金属箔1の表面に直径が約0.8cmの染みが形成されるように拡散した。
表面増強ラマン散乱は、レーザ光のビーム径を約2μmとして、液滴の中心で測定した。比較用の試料として、0.01MのR6Gのメタノール溶液を2μL滴下した直径が0.8cmのAuの単結晶膜を作製した。
表面増強ラマン散乱の増強因子は下記(1)式により計算される(特許文献1参照)。
増強因子=(ISERRS/NSERRS)/(IRRS/NRRS) (1)
ここで、ISERRSはしわのよったナノ多孔質金属箔1を用いて得られたR6Gのラマンスペクトルの強度、NSERRSはしわのよったナノ多孔質金属箔1に吸着されたR6Gの濃度、IRRSはR6G粉末より得られたラマンスペクトルの強度、NRRSはR6G粉末の濃度である。
ここで、プローブとなるR6G分子は、上記したしわのよったナノ多孔質金属箔1とAuの単結晶膜に均一に分布すると仮定する。SERSスペクトルに用いるしわのよったナノ多孔質金属箔1とラマンスペクトル測定に用いるAuの単結晶膜は同じ方法で作製されるので、検出されるR6Gの分子数Nは、下記(2)式で算出される。
N=(NMVsolution/Ssub)Slaser (2)
ここで、Nはアボガドロ定数、MはR6G溶液のモル濃度、Vsolutionは液滴の体積、Ssubは基板の大きさ、Slaserはレーザ光のビーム面積である。
R6Gの分子数Nを計算するための上記(2)式の各パラメータの値を、表1に示す。
図13は、共にR6Gが吸着されたしわのよったナノ多孔質金属箔1とAuの単結晶膜のラマンスペクトルを示す図である。図13の横軸及び縦軸は図10と同じである。
図13から、しわのよったナノ多孔質金属箔1の増強因子は、(1)式から約0.7×10と計算される。この値は、Auの単結晶膜よりも大きく、さらにナノ多孔質金属箔2の10よりも大きい。図11及び図12に示すように場所によりSERSスペクトルの強度の最大と最小では10倍の差があるので、所謂ホットスポットにおける増強因子は、10であると推定される。この増強因子の値は、1個の分子を検出できる値である。
しわのよったナノ多孔質金属箔1における増強因子が大きくなる機構を理解するために、CV分子のラマンバンドの性質を調べた。
表2は、CV分子が担持されたしわのよったナノ多孔質金属箔1のラマンバンドを示すものである。ラマンバンドの波数の右側に示している(vs)等の表記は、vsが信号強度が非常に強い、sは強い、mは中位、wは弱い、vwは非常に弱い場合を示している。ラマンバンドは、例えば1170cm−1の分極している場合(p)と、1185cm−1の分極していない、つまり非分極の場合(dp)との対で示している。
分極の分子振動は全体で対称である。一方、非分極の振動は全体では対称でない。一般に、SERSスペクトルの増強が化学的な効果に起因する場合には、プローブとなる分子とこの分子が吸着されている基板との間の強い化学的相互作用により、ラマンバンドのシフトは約20cm−1となる。しかしながら、表2に示すように、観測されたラマンバンドのシフトは従来報告されたフーリエ分光ラマン(FT−ラマン)スペクトルと比較すると非常に小さいことが分かる。これは、CV分子としわのよったナノ多孔質金属箔1の化学的な相互作用が非常に弱いことを示している。Herzberg−Tellerの表面選択則によれば、全体で対称ではないモードにおいて、金属表面に対してCV分子の近傍でSERSスペクトルが増強される。このように、電荷の遷移で化学的増強がされる場合には、非分極(dp)のモードが、SERSスペクトルで増強される。しかしながら、しわのよったナノ多孔質金属箔1の場合には1170cm−1と1617cm−1における全体で対称(P)なモードで最も強度の大きい。このことは、さらに、しわのよったナノ多孔質金属箔1の非常に大きな増強因子は、化学的な効果が少ないことを示している。
以上の結果から、実施例のしわのよったナノ多孔質金属箔1では、しわを形成することにより、レーザ光に対して平行な垂直に立ったナノ多孔質金属箔とレーザ光との非常に強い電磁気結合が生じる。気孔の大きさが26nmのしわのよったナノ多孔質金属箔1では、気孔の大きさが12nmで脆弱な割れが生じたナノ多孔質金属箔1とは異なり、延性のある割れが生じている。これにより、気孔の大きさが26nmのしわのよったナノ多孔質金属箔1では、種々のギャップを有している微細な割れが多数生じる。これにより、適度なギャップ幅に結合する局所的な光学結合によりホットスポットが非常に多く形成されることが可能となっている(図7(b)参照)。さらに、破壊した梁の鋭い先端も非常に局在化した電磁界を形成する効果と、鋭い先端に生じる光照射効果によりSERSスペクトルの増強に寄与していると推定される。
(実施例2)(しわのよったナノ多孔質金属箔1の変形例)
金属箔6の組成をAu25Ag75とし、69%の硝酸溶液を用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例2のしわのよったナノ多孔質金属箔1を作製した。SERSスペクトルの測定の試料としては、しわのよったナノ多孔質金属箔1に、1×10−12MのR6G水溶液と0.1mMのNaCl水溶液中に溶解したアデニン(アルドリッチ社製、A)とをプローブ分子として用いた。
図14は、作製したナノ多孔質金属箔2のSEM像を示す図であり、拡大図も併せて示している。図14に示すように、作製したナノ多孔質金属箔2の気孔の大きさは20〜25nmであった。
図15は、作製したナノ多孔質金属箔2のX線分析の結果を示す図である。X線分析は、走査型電子顕微鏡に付属のエネルギー分散型の分光器で行った。図15の横軸は特性X線のエネルギー(keV)であり、縦軸はカウント数である。
図15から、作製したナノ多孔質金属箔2の組成(at%)は、Au:Ag=71:29となり、硝酸溶液4を用いた腐食により、銀が減少したことが分かる。
図16は、作製したしわのよったナノ多孔質金属箔1のSEM像を示す図であり、拡大図も併せて示している。図16に示すように、実施例2のナノ多孔質金属箔は、実施例1の気孔の大きさが26nmのしわのよったナノ多孔質金属箔1と同様のモルフォロジー(表面形態)を有している。
図17は、作製したしわのよったナノ多孔質金属箔1のSEM像を示す図であり、(a)は低倍率、(b)は高倍率を示している。図17に示すように、実施例2のしわのよったナノ多孔質金属箔1は、実施例1の気孔の大きさが26nmのしわのよったナノ多孔質金属箔1と同様の割れ目を有している。
図18は、10−12M及び10−10MのR6G溶液で修飾したしわのよったナノ多孔質金属箔1と、比較例として10−10MのR6G溶液で修飾したナノ多孔質金属箔2のSERSスペクトルを示す図である。図18の横軸はラマンシフトの波数(cm−1)、縦軸は信号強度(任意目盛)である。レーザ光の波長は532nmである。図18から明らかなように、しわのよったナノ多孔質金属箔1のSERSスペクトルの強度は、R6Gの濃度によらず、何れもナノ多孔質金属箔2のSERSスペクトルよりも大きいことが分かる。
図19は、10−12MのR6G溶液で修飾したしわのよったナノ多孔質金属箔1のラマンマップである。図20は、図19のラマンマップにさらに同じ観察領域の光学顕微鏡像を重ねた図である。図19の四角(□)で示した箇所が後述するホットスポットに対応している。
図20に示すように、図19のホットスポットは、しわの山1aの部分に位置していることが分かる。
図21は、10−12M及び10−10MのR6G溶液で修飾したしわのよったナノ多孔質金属箔1のホットスポットのSERSスペクトルを示す図である。図21の横軸及び縦軸は図18と同じである。10−12のR6G溶液で修飾したしわのよったナノ多孔質金属箔1のSERSスペクトル((A)、(B)、(C))は、図19に四角(□)で示した箇所に対応している。図21の挿入図は、28箇所のホットスポットにおける強度分布を示している。
図21に示すように、10−12MのR6G溶液で修飾したしわのよったナノ多孔質金属箔1で検出しているのは、上記(2)式の計算からはR6G1分子に相当している。つまり、実施例2のしわのよったナノ多孔質金属箔1によりR6Gの1分子が検出されている。挿入図に示されているように、ホットスポットの最大の信号強度は最小強度の10倍以上である。
実施例2の10−12MのR6G溶液で修飾したしわのよったナノ多孔質金属箔1のホットスポットのSERSスペクトルにおける増強因子は、平均値が約3×10であった。この値は、しわのよった純粋なAuからなるナノ多孔質金属箔の約4倍の値となった。ラマン像の測定では、最も強度の高いホットスポットの強度は、平均値の500倍の強度であった。したがって、しわのよったナノ多孔質金属箔1の増強因子は最大で、1010〜1011となることを示している。
(非共鳴のバイオ分子であるDNA核酸塩基アデニンの検出)
次に、R6Gに変えて非共鳴のバイオ分子であるDNA核酸塩基アデニン(以下、アデニンと呼ぶ。)を吸着させた実施例2のしわのよったナノ多孔質金属箔1のSERSスペクトルを測定した。溶液中のDNA核酸塩基アデニンは、電気的に中性なので、しわのよったナノ多孔質金属箔1にはR6Gよりも遥かに少量の分子しか吸着されない。レーザ光の波長は、アデニン分子が共鳴しない785nmとした。
図22は、10−9Mのアデニン溶液で修飾したしわのよったナノ多孔質金属箔1のラマン測定と測定した箇所の光学像であり、(a)はラマンマップ、(b)は光学像、(c)はラマンマップと光学像を重ね合わせた像を示している。図22から、ホットスポットは、山1aの部分に生じていることが分かる。
図23は、10−9Mのアデニン溶液で修飾したしわのよったナノ多孔質金属箔1のホットスポットのSERSスペクトルを示す図である。図23の横軸及び縦軸は、図18と同じである。測定した箇所は、挿入図に示すA、B、Cのホットスポットである。実施例1の場合と同様に測定箇所毎に得られる信号強度が変化していることが分かる。
図24は、10−9Mのアデニン溶液で修飾したしわのよったナノ多孔質金属箔1のSERSスペクトルであり、図25は、10−12Mのアデニン溶液で修飾したしわのよったナノ多孔質金属箔1のSERSスペクトルである。図24及び図25の横軸及び縦軸は図18と同じである。
図24及び図25から、10−9Mから10−12Mに変化させても十分にアデニン分子が検出されていることが判明した。
以上の実施例1及び2から、本発明のしわのよったナノ多孔質金属箔1によれば、プローブとなる各種の分子を1分子の濃度で測定でき、かつその再現性があることが判明した。
本発明は、上記実施例に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれることはいうまでもない。
1:しわのよったナノ多孔質金属箔
1a:山
1b:谷
2:ナノ多孔質金属箔
3:溶液
4:ビーカー
6:金属箔
8:基板
10:ガラス板

Claims (9)

  1. 気孔が形成されたナノ多孔質金属箔と、該ナノ多孔質金属箔に形成されたしわと、該しわに形成された表面増強ラマン散乱の強度を増強するための複数のホットスポットと、を備え、
    前記ナノ多孔質金属箔は少なくとも2原子以上の合金からなり、前記気孔の大きさは、10〜50nmであり、
    前記しわは山と谷からなるμmオーダーの波形を有し、
    前記山には、1nm〜数10nmの幅の割れ目からなる多数のナノギャップが形成されており、
    前記ナノギャップにより前記ホットスポットが構成される、しわのよったナノ多孔質金属箔。
  2. 前記しわの波形は、3μm〜5μmの小さな周期と20μm〜30μmの大きな周期を有する、請求項に記載のしわのよったナノ多孔質金属箔。
  3. 前記ホットスポットによる前記ラマン散乱における増強因子が、1010〜1011である、請求項1に記載のしわのよったナノ多孔質金属箔。
  4. 前記合金は、AuとAgからなる、請求項1に記載のしわのよったナノ多孔質金属箔。
  5. 前記合金は、CuとMnからなる、請求項1に記載のしわのよったナノ多孔質金属箔。
  6. 請求項1〜5の何れかに記載のしわのよったナノ多孔質金属箔の製造方法であって、
    所定の厚さの合金からなる金属箔を酸溶液に浸漬して、前記気孔を形成してナノ多孔質金属箔を作製する第1工程と、
    前記ナノ多孔質金属箔を、予備歪みを加えた熱可塑性樹脂の基板に張り付ける第2工程と、
    前記樹脂製の基板に張り付けたナノ多孔質金属箔を、熱処理により収縮し、室温まで冷却して、多数のナノギャップが形成されたしわのよったナノ多孔質金属箔を作製する第3工程と、を含む、しわのよったナノ多孔質金属箔の製造方法。
  7. 前記しわに山と谷を形成し、
    前記山には、1nm〜数10nmの幅の割れ目からなる前記多数のナノギャップが形成され、該多数のナノギャップによりラマン散乱における表面増強を生起させる複数のホットスポットが構成される、請求項に記載のしわのよったナノ多孔質金属箔の製造方法。
  8. 前記予備歪みを加えた熱可塑性樹脂の基板、アモルファスの高分子からなる基板であり
    前記熱処理を、前記熱可塑性樹脂のガラス遷移温度よりも高く、融点よりも低い温度で行う、請求項に記載のしわのよったナノ多孔質金属箔の製造方法。
  9. 前記ナノ多孔質金属箔の収縮の度合いを、前記熱可塑性樹脂からなる基板の予備歪みを調整することにより制御するか、又は、前記熱処理の条件により制御する、請求項に記載のしわのよったナノ多孔質金属箔の製造方法。
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