以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一又は同等の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
図1は、一実施形態に係る画像処理装置の機能構成を示すブロック図である。図1に示す画像処理装置1は、2次元画像であるフレームを複数含む動画像を処理する装置である。画像処理装置1は、例えば監視カメラ等により監視対象エリアを撮影することで得られた動画像を処理することにより、監視対象エリアへの移動物体の出入りを検知する用途で用いられる。監視対象エリアとは、移動物体の出入りを監視する対象として設定されたエリアのことである。監視対象エリアの例としては、例えば部外者の出入りが禁止される工事現場等が挙げられる。また、移動物体とは、フレーム内に映る物体であり、時間変化によってフレーム内における位置が変化する物体である。移動物体の例としては、例えば人、動物、車両等が挙げられる。図1に示すように、画像処理装置1は、機能要素として、1次元情報生成部11と、差分情報生成部12と、状態情報生成部13と、検知部14と、を備える。
図2は、画像処理装置1のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。図2に示すように、画像処理装置1は、一以上のCPU(Central Processing Unit)101、主記憶装置であるRAM(Random Access Memory)102及びROM(Read Only Memory)103、例えば監視カメラ等の外部装置とのデータ通信を行うための通信モジュール104、並びにハードディスク等の補助記憶装置105等のハードウェアを備えるコンピュータシステムとして構成される。画像処理装置1は、物理的に1台の装置として構成されてもよいし、互いに協調して動作する複数の装置として構成されてもよい。画像処理装置1の各機能要素は、例えば、RAM102等のハードウェア上に所定のコンピュータソフトウェアを読み込ませることにより、CPU101の制御のもとで通信モジュール104を動作させ、RAM102、ROM103及び補助記憶装置105におけるデータの読み出し及び書き込みを行うことで実現される。
1次元情報生成部11は、上述のように監視カメラ等により監視対象エリアを撮影することで得られた動画像を取得し、動画像に含まれる複数のフレームのうち処理対象の複数のフレームのそれぞれについて、第1のライン及び第2のラインを設定し、第1のライン上の画素の画素値からなる第1の1次元情報と第2のライン上の画素の画素値からなる第2の1次元情報とを生成する機能要素である。ここで、ラインとは、フレーム上の特定の2つの座標同士を結んだ仮想的な線分である。ラインは、例えば監視対象エリアへの移動物体の出入りを検知するために、監視対象エリアの周囲又は監視対象エリアの出入り口に設定される監視ラインとして機能する。また、1次元情報とは、フレーム内の画素のうちライン上の画素の画素値を1次元に配列した情報である。
1次元情報生成部11の処理対象となるフレームは、例えば動画像に含まれる複数のフレームから所定フレーム間隔で抽出される複数のフレームである。例えば、動画像が1秒間に60個のフレームを含み、動画像を1秒間隔で監視したい場合には、1次元情報生成部11は、動画像に含まれる複数のフレームから60フレーム間隔で抽出される各フレームについて処理を実行すればよい。
図3を用いて、1次元情報生成部11による第1及び第2の1次元情報の生成について説明する。図3の例では、1次元情報生成部11は、18×18画素からなる処理対象の各フレームXについて、監視対象エリアAを包囲する外側の囲いを形成する第1のラインL1と、監視対象エリアAを包囲する内側の囲いを形成する第2のラインL2とを設定する。ここで、監視対象エリアAは、移動物体の出入りを監視する対象のエリアとしてオペレータ等により予め設定されたエリアである。本実施形態では一例として、各フレームXは、例えば工事現場等の監視対象エリアAの上方に固定された監視カメラにより監視対象エリアAを俯瞰的に撮影することで得られる動画像に含まれるフレームであり、監視対象エリアAは四角形状である。また、ラインL1及びラインL2は、四角形状の監視対象エリアAの4辺に対応して4本ずつ設定される。ただし、監視対象エリアAの形状は四角形状以外の任意の形状であってよく、設定されるラインL1及びラインL2の本数も監視対象エリアAの形状に応じて任意に定めてよい。
1次元情報生成部11は、例えば監視対象エリアAの隅に設置された複数(図3の例では4つ)の目印となる対象物(例えばパイロン等)を画像認識することにより、複数の対象物のそれぞれの位置を示す座標P1を取得し、隣接する座標P1同士を結ぶことにより、ラインL1を設定する。続いて、1次元情報生成部11は、複数のラインL1により包囲される領域をフレームXにおける縦方向に縮小した領域の隅の座標P2を取得し、フレームXにおける横方向に隣接する座標P2同士を結ぶことにより、ラインL2を設定する。同様に、1次元情報生成部11は、複数のラインL1により包囲される領域をフレームXにおける横方向に縮小した領域の隅に対応する複数の座標P2を取得し、フレームXにおける縦方向に隣接する座標P2同士を結ぶことにより、ラインL2を設定する。
ただし、ラインL1,L2の設定手順は上記手順に限定されない。例えば、1次元情報生成部11は、先に内側のラインL2を設定した後に外側のラインL1を設定してもよい。具体的には、1次元情報生成部11は、例えば複数のラインL2を先に設定した後に、複数のラインL2により包囲される領域をフレームXにおける縦方向又は横方向に拡大した各領域の隅に対応する複数の座標を取得し、フレームXにおける横方向又は縦方向に隣接する座標同士を結ぶことにより、ラインL1を設定してもよい。また、1次元情報生成部11は、オペレータの操作等により、ラインL1,L2を設定してもよい。
また、1次元情報生成部11は、ラインL1及びラインL2が互いに平行となり且つフレームX内における検知対象の移動物体の幅に応じた間隔だけ離間するように、ラインL1及びラインL2を設定してもよい。検知対象の移動物体とは、ラインL1及びラインL2を横切った際に検知する対象として予めオペレータ等により定められた移動物体である。具体的には、1次元情報生成部11は、オペレータの操作等により、上述のように調整されたラインL1及びラインL2を設定してもよい。或いは、1次元情報生成部11は、例えばオペレータ等により入力された検知対象の移動物体の幅に応じた間隔をパラメータとして取得し、上述のようにラインL1を設定した後に複数のラインL1により包囲される領域を上記パラメータに応じた縮小率で縮小し、縮小された領域の隅の座標P2に基づいてラインL2を設定してもよい。
ここで、検知対象の移動物体の幅に応じた間隔とは、例えば、検知対象の移動物体(例えば人)がフレームX内においてラインL1及びラインL2を横切る際に、当該移動物体がラインL1及びラインL2の両方に同時にかかる状態が生じるような間隔のことである。言い換えると、検知対象の移動物体の幅に応じた間隔とは、例えば、フレームX内における移動物体の平均的な幅よりも小さい間隔のことである。一方、1次元情報生成部11は、検知対象の移動物体よりも小さい移動物体(例えば鳥)がフレームX内においてラインL1及びラインL2を横切る際に、当該移動物体がラインL1及びラインL2の両方に同時にかかる状態が生じないようにラインL1及びラインL2の間隔を設定してもよい。すなわち、1次元情報生成部11は、フレームX内において、検知対象の移動物体の平均的な幅よりも小さく、且つ検知対象の移動物体よりも小さい移動物体の平均的な幅よりも大きい間隔を、検知対象の移動物体の幅に応じた間隔として、ラインL1及びラインL2を設定してもよい。このようにラインL1及びラインL2を設定することで、後述する検知部14は、ラインL1及びラインL2に同時にかかる状態が生じた移動物体を検知することにより、検知対象の移動物体を精度良く検知することが可能となる。
図3に示すように、1次元情報生成部11は、各フレームXについて、ラインL1上の画素の画素値からなる第1の1次元情報Q1とラインL2上の画素の画素値からなる第2の1次元情報Q2とを生成する。具体的には、1次元情報生成部11は、ラインL1,L2上の画素の画素値を、それぞれラインL1,L2の一端側から他端側へと並べることで、ラインL1,L2上の各画素の画素値が1次元的に配列された1次元情報Q1,Q2を生成する。図3では、監視対象エリアAの上辺側に位置する一対のラインL1及びラインL2に対応する1次元情報Q1,Q2を例示している。この例では、1次元情報Q1,Q2は、それぞれ13個の画素値からなる。
差分情報生成部12は、第1のフレームXにおける1次元情報Q1と第1のフレームXよりも後の第2のフレームXにおける1次元情報Q1との間における画素毎の画素値の差分を示す第1の差分情報D1を生成する機能要素である。また、差分情報生成部12は、第1のフレームXにおける1次元情報Q2と第2のフレームXにおける1次元情報Q2との間における画素毎の画素値の差分を示す第2の差分情報D2を生成する機能要素でもある。ここで、差分とは、画素値の差の絶対値である。また、第1のフレームX及び第2のフレームXは、1次元情報生成部11の処理対象となる複数のフレームのうち時間的に隣接する2つのフレームである。例えば、差分情報生成部12は、所定のフレーム間隔で抽出された処理対象の各フレームについて1次元情報生成部11により生成される1次元情報Q1,Q2を順次入力し、入力された1次元情報Q1,Q2と1つ前の時点に入力された1次元情報Q1,Q2とに基づいて差分情報D1,D2を順次生成する。
図4に示すように、差分情報生成部12は、第1のフレームXにおける1次元情報Q1,Q2により示される各画素の画素値と第2のフレームXにおける1次元情報Q1,Q2により示される各画素の画素値との差の絶対値を差分として示す差分情報D1,D2を生成する。具体的には、第1のフレームXにおける1次元情報Q1,Q2により示されるi番目(図4の例では、iは1から13までの整数)の画素の画素値をV1[i]とし、第2のフレームXにおける1次元情報Q1,Q2により示されるi番目の画素の画素値をV2[i]とすると、差分情報D1,D2により示されるi番目の画素の画素値の差分V3[i]は、下記式(1)により算出される。
V3[i]=|V1[i]−V2[i]| ・・・(1)
さらに、差分情報生成部12は、差分情報D1,D2のそれぞれが示す画素値の差分を、該差分が予め定めた閾値以上か否かによって、差分があることを示す第1の値又は差分がないことを示す第2の値に変換してもよい。具体的には、差分情報生成部12は、差分情報D1,D2により示される各画素の画素値の差分について、差分が閾値以上の場合(或いは閾値より大きい場合)には、差分を「1」(第1の値)に変換し、差分が閾値未満の場合(或いは閾値以下の場合)には、差分を「0」(第2の値)に変換してもよい。より具体的には、差分情報生成部12は、上記式(1)により算出されたi番目の画素の画素値の差分V3[i]に対して、下記式(2),(3)による変換処理を実行することにより、各画素の画素値の差分を2値変換することができる。下記式(2),(3)において、THは閾値を示し、V4[i]はi番目の画素の画素値の差分の2値変換後の値を示す。
IF(TH<V3[i]) V4[i]=1 ・・・(2)
ELSE IF(V3[i]≦TH) V4[i]=0 ・・・(3)
図4に示す2値変換後の差分情報D1,D2は、上記式(1)により算出された差分情報D1,D2の各画素の画素値の差分V3[i]に対して、閾値THを15として上記式(2),(3)による変換処理を実行することで得られたものである。このようにして得られた2値変換後の差分情報D1,D2において、差分が「1」に変換された画素は、当該画素に対応する領域において、時間的に前後する2つの時点(第1のフレームXが撮影された時点と第2のフレームXが撮影された時点)の間で差分があること、すなわち当該画素に対応する領域において移動物体があることを示す。一方、差分情報D1,D2において、差分が「0」に変換された画素は、当該画素に対応する領域において、時間的に前後する2つの時点の間で差分がないこと、すなわち当該画素に対応する領域において移動物体がないことを示す。
上述のように、差分を2値変換することにより、以下の効果が奏される。すなわち、閾値TH以下の画素値の差分を「0」に変換することにより、当該差分を無視することができる。これにより、例えばランダムノイズ等による画面の揺らぎ等によって意図しない極小の画素値の変動が生じた場合に、当該画素値の変動の影響を排除した上で、画素値の差分の有無(すなわち、移動物体の有無)を適切に示す2値変換後の差分情報D1,D2を得ることができる。また、差分情報D1,D2における各画素の差分を2値で表すことにより、後述する状態情報生成部13による処理を単純化することができる。以下の状態情報生成部13についての説明において、差分情報D1,D2は、特にことわりのない限り、2値変換後の差分情報D1,D2を指す。
状態情報生成部13は、差分情報D1及び差分情報D2に基づいて、ラインL1及びラインL2における各画素の画素値の差分に基づく状態値を有する状態情報を生成する機能要素である。具体的には、状態情報生成部13は、ラインL1上の各画素の画素値の差分(差分情報D1が示す各画素の画素値の差分)と、ラインL1の各画素に対応するラインL2上の各画素の画素値の差分(差分情報D2が示す各画素の画素値の差分)との組み合わせに応じた状態値を有する状態情報Sを生成する。ここで、ラインL1上の画素に対応するラインL2上の画素とは、ラインL1,L2に略垂直な方向においてラインL1上の画素と対向する位置にあるラインL2上の画素のことを指す。本実施形態では、ラインL1,L2を互いに平行且つ対向するように設定しているため、1次元情報Q1のi番目の要素(画素値)に対応する画素と1次元情報Q2のi番目の要素(画素値)に対応する画素とが互いに対応する。よって、本実施形態では、状態情報生成部13は、差分情報D1が示すi番目の画素の画素値の差分と差分情報D2が示すi番目の画素の画素値の差分との組み合わせに応じた状態値をi番目の要素とする状態情報Sを生成する。
状態情報生成部13は、例えば以下のルールに基づいて、状態情報Sの各要素の状態値を設定する。状態情報生成部13は、差分情報D1が示すi番目の画素の画素値の差分が「0」であり、差分情報D2が示すi番目の画素の画素値の差分が「0」である場合に、状態値として「0」を設定する。状態情報生成部13は、差分情報D1が示すi番目の画素の画素値の差分が「1」であり、差分情報D2が示すi番目の画素の画素値の差分が「0」である場合に、状態値として「1」を設定する。状態情報生成部13は、差分情報D1が示すi番目の画素の画素値の差分が「1」であり、差分情報D2が示すi番目の画素の画素値の差分が「1」である場合に、状態値として「2」を設定する。状態情報生成部13は、差分情報D1が示すi番目の画素の画素値の差分が「0」であり、差分情報D2が示すi番目の画素の画素値の差分が「1」である場合に、状態値として「3」を設定する。差分情報D1が示すi番目の画素の画素値の差分と差分情報D2が示すi番目の画素の画素値の差分とは、いずれも「0」又は「1」の2通りの値を取るため、上述のように、状態値は4値(0,1,2,3)により表すことができる。
図4に示すように、状態情報生成部13は、差分情報D1及び差分情報D2に基づいて、各要素の値が4値のいずれかで表される状態情報Sを生成する。
図5を用いて、状態情報Sの状態値と移動物体Yの位置との対応関係について説明する。状態情報Sのi番目の状態値が「0」であることは、ラインL1,L2上のi番目の画素の画素値に差分がないことを示す。すなわち、図5の(a)又は(e)に示すように、ラインL1,L2上のi番目の画素に対応する領域において移動物体Yがないことを示す。つまり、状態値「0」は、フレームXにおいて、ラインL1,L2にかかっている移動物体Yが存在しないことを示す。
状態情報Sのi番目の状態値が「1」であることは、ラインL1上のi番目の画素の画素値には差分がある一方でラインL2上のi番目の画素の画素値には差分がないことを示す。すなわち、図5の(b)に示すように、ラインL1上のi番目の画素に対応する領域には移動物体Yがある一方でラインL2上のi番目の画素に対応する領域には移動物体Yがないことを示す。つまり、状態値「1」は、フレームXにおいて、移動物体YがラインL1,L2のうちラインL1のみにかかっている状態を示す。
状態情報Sのi番目の状態値が「2」であることは、ラインL1,L2上のi番目の画素の画素値に差分があることを示す。すなわち、図5の(c)に示すように、ラインL1,L2上のi番目の画素に対応する領域において移動物体Yがあることを示す。つまり、状態値「2」は、フレームXにおいて、ラインL1,L2に同時にかかっている移動物体Yが存在することを示す。
状態情報Sのi番目の状態値が「3」であることは、ラインL2上のi番目の画素の画素値には差分がある一方でラインL1上のi番目の画素の画素値には差分がないことを示す。すなわち、図5の(d)に示すように、ラインL2上のi番目の画素に対応する領域には移動物体Yがある一方でラインL1上のi番目の画素に対応する領域には移動物体Yがないことを示す。つまり、状態値「3」は、フレームXにおいて、移動物体YがラインL1,L2のうちラインL2のみにかかっている状態を示す。
検知部14は、複数世代における状態情報Sを比較することにより、第1のラインL1又は第2のラインL2を横切る移動物体Yの移動方向を検知する機能要素である。ここで、検知部14は、状態情報生成部13により順次生成される状態情報Sを取得及び蓄積することにより、複数世代における状態情報Sを取得する。図5を用いて説明した通り、1つの状態情報Sの各要素に対応する状態値から、移動物体YがラインL1,L2に対してどのような位置に存在するかを把握することができる。しかし、1つの状態情報Sから把握できるのは、あくまで一時点において移動物体YがラインL1又はラインL2上に存在するか否かであり、移動物体Yの移動方向を把握することはできない。そこで、検知部14は、複数世代における状態情報Sを比較することにより、ラインL1及びラインL2を横切る移動物体の移動方向を検知する。
例えば、検知部14は、複数世代における状態情報Sから状態値の遷移パターンを抽出し、抽出された遷移パターンが予め定めた検知対象の遷移パターンに該当するか否かを判定することにより、検知対象の遷移パターンで移動する移動物体Yを検知してもよい。ここで、遷移パターンとは、状態情報Sの各要素に対応する状態値がどのように変化するかを示すパターンである。例えば、移動物体YがラインL1側からラインL1,L2を横切る場合(すなわち、図5の(a)、(b)、(c)の順にラインL1,L2に対する移動物体Yの位置が変化する場合)には、状態値は、「0」、「1」、「2」の順に遷移する。遷移パターンとは、このように状態値が遷移する順序を示す情報である。よって、検知部14は、ラインL1側からラインL1,L2を横切る移動物体Yを検知したい場合には、状態値が「0」、「1」、「2」の順に遷移する遷移パターンを検知対象の遷移パターンとして設定すればよい。
ここで、1次元情報生成部11が動画像に含まれる複数のフレームを抽出するフレーム間隔が小さい場合には、移動物体YがラインL1側からラインL1,L2を横切る動作をしたとしても、上述のように予め定めた検知対象の遷移パターン(状態値が「0」、「1」、「2」の順に変化するパターン)が抽出されないおそれがある。具体的には、複数世代における状態情報Sの各要素に対応する状態値の遷移パターンは、「0」、「0」、「1」、「1」、「1」、「2」、「2」のように同じ状態値を何度か繰り返した後に、異なる状態値に遷移する可能性がある。そこで、検知部14は、状態値が異なる値に遷移する前後の状態値のみを抽出することによって状態値の遷移パターンを抽出してもよい。このようにすれば、検知部14は、実際には状態値が「0」、「0」、「1」、「1」、「1」、「2」、「2」のように遷移する場合であっても、状態値が「0」、「1」、「2」の順に遷移する遷移パターンを抽出することができ、当該遷移パターンが検知対象の遷移パターンと一致するとの判定を行うことができる。以下の説明においては、検知部14により抽出される遷移パターンは、上述のように同じ状態値の繰り返しを考慮した上で抽出される遷移パターンを示す。
以下、検知部14による移動物体Yの検知について具体的に説明する。検知部14は、上述のように複数世代における状態情報Sを参照し、状態情報Sの状態値の遷移パターンを状態情報Sの要素毎に抽出する。そして、検知部14は、抽出された要素毎の遷移パターンについて、検知対象の遷移パターンに該当するか否かを判定する。抽出された要素毎の遷移パターンのうちに検知対象の遷移パターンに該当する遷移パターンがある場合には、検知部14は、当該遷移パターンが抽出された状態情報Sの要素に対応する画素の領域において、検知対象の遷移パターンで移動する移動物体Yがあることを検知する。このように複数世代における状態情報Sに示される状態値の遷移パターンに基づく検知を実行することにより、予め定めた特定の遷移パターン(例えば第1のライン側から第2のライン側へ移動するパターン)で移動する移動物体Yを適切に検知することができる。
また、検知部14は、ラインL1及びラインL2の両方に同時にかかる移動物体Yを検知してもよい。例えば、検知部14は、検知対象の遷移パターンの中にラインL1及びラインL2に同時にかかる状態(状態値が「2」の状態)を含めることにより、ラインL1及びラインL2の両方に同時にかかる移動物体Yを検知することができる。例えば、フレームX内における検知対象の移動物体Y(例えば人)の平均的な幅よりもラインL1及びラインL2の間隔を小さくすることで、ラインL1及びラインL2の両方に同時にかかる移動物体を検知することができる。上記の場合において、さらに、検知対象でない移動物体(例えば鳥)の平均的な幅よりもラインL1及びラインL2の間隔を大きくすることで、ラインL1及びラインL2の両方に同時にかかる状態とならない移動物体については検知しないようにすることができる。このように、1次元情報生成部11が、ラインL1及びラインL2を互いに平行とし且つ検知対象の移動物体Yの幅に応じた間隔だけ離間させ、検知部14が、ラインL1及びラインL2の両方に同時にかかる移動物体Yを検知することで、検知対象の移動物体Yを精度良く検知することが可能となる。
また、検知部14は、検知対象の遷移パターンで移動する移動物体Yを検知した場合に、移動物体Yの検知を示すアラートを出力してもよい。アラートの出力方法は何でもよく、画像処理装置1に接続されたディスプレイ上に表示してもよいし、スピーカ等により音声出力してもよい。また、アラートに関する情報を外部装置に送信したり、ログとして補助記憶装置105等に記憶したりしてもよい。このように、検知部14が検知対象の遷移パターンで移動する移動物体Yを検知した際にアラートを出力することで、移動物体Yの検知をオペレータ等に把握させることが可能となる。
次に、図6を用いて、一実施形態に係る画像処理方法を含む画像処理装置1の動作について説明する。まず、1次元情報生成部11が、動画像に含まれる複数のフレームから所定フレーム間隔で抽出した処理対象のフレームXのそれぞれについて、ラインL1及びラインL2を設定し、ラインL1上の画素の画素値からなる1次元情報Q1とラインL2上の画素の画素値からなる1次元情報Q2とを生成する(ステップS1、1次元情報生成ステップ)。
続いて、差分情報生成部12が、第1のフレームXにおける1次元情報Q1と第1のフレームXよりも後の第2のフレームXにおける1次元情報Q1との間における画素毎の画素値の差分を示す差分情報D1と、第1のフレームXにおける1次元情報Q2と第2のフレームXにおける1次元情報Q2との間における画素毎の画素値の差分を示す差分情報D2とを生成する(ステップS2、差分情報生成ステップ)。図4に示したように、差分情報生成部12は、1次元情報生成部11により生成された1次元情報Q1,Q2を順次入力し、入力された1次元情報Q1,Q2と1つ前の時点に入力された1次元情報Q1,Q2とに基づいて差分情報D1,D2を順次生成する。
続いて、状態情報生成部13が、差分情報D1及び差分情報D2に基づいて、ラインL1及びラインL2における画素値の差分に基づく状態値を有する状態情報Sを生成する(ステップS3、状態情報生成ステップ)。図4に示したように、状態情報生成部13は、差分情報生成部12により生成された差分情報D1,D2を順次入力し、入力された差分情報D1,D2に基づいて状態情報Sを順次生成する。
続いて、検知部14が、上述したような方法で、複数世代における状態情報Sを比較し、ラインL1及びラインL2を横切る移動物体Yの移動方向を検知する(ステップS4、検知ステップ)。
以上述べた画像処理装置1又は画像処理方法では、1次元情報生成部11が、各ラインL1,L2についての1次元情報Q1,Q2を生成する。そして、差分情報生成部12が、時間的に前後する第1のフレームX及び第2のフレームXにおける各ラインL1,L2についての1次元情報Q1,Q2から、各画素の画素値の差分を示す差分情報D1,D2を生成する。さらに、状態情報生成部13が、各ラインL1,L2の差分情報D1,D2に示される画素毎の画素値の差分に基づく状態値を有する状態情報Sを生成する。そして、検知部14が、このようにして生成された複数世代の状態情報Sを比較することにより、ラインL1,L2を横切る移動物体Yの移動方向を検知する。上記画像処理装置1又は画像処理方法によれば、処理対象のフレームX全体を対象とした画像処理を実行することなく、ラインL1,L2上の1次元情報Q1,Q2を対象とした画像処理を実行することで、移動物体Yの移動方向を検知することができる。従って、ラインL1側又はラインL2側への移動物体Yの出入りをより簡易な処理によって検知することができる。
以上、本発明をその実施形態に基づいて詳細に説明した。しかし、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。例えば、検知部14は、複数世代における状態情報Sを参照することにより、移動物体YがラインL1及びラインL2の一方のラインを横切ってから他方のラインを横切るまでの時間を取得し、当該時間とラインL1,L2の間隔とに基づいて、移動物体Yの推定速度を算出してもよい。
また、上記実施形態では、動画像の例として、工事現場等の監視対象エリアAを上方から俯瞰的に撮影することで得られる動画像について説明したが、画像処理装置1による処理対象となる動画像は、上記動画像に限定されない。例えば、画像処理装置1は、特定の場所のゲートを横方向から撮影した動画像を処理することにより、ゲートを出入りする移動物体を検知する用途に用いられてもよい。