ところで、上記特許文献1,2に記載されている水力発電装置は、図12に示すように、水管内を通流する水Wを軸受給水口119から取出し、給水配管114を介してプロペラブレード111の軸受部112及び113に循環させて回転支持する構造となっている(この明細書及び特許請求の範囲の書類中では、水潤滑軸受に循環させる「水」を「循環水」ともいう)。この水潤滑式軸受112及び113は、油を使用しない軸受として水力発電装置110には有効であるが、給水配管114及び貫通穴123を設けて軸受部113及び112への連続給水ができるような構造にしなければならない。そして、プロペラブレード111と一体的に回転するランナ115と、スラスト軸受部117及びラジアル軸受部116との間の軸受隙間に常に水膜を形成し、その水膜によってランナ115のスラスト力及びラジアル力を支持する必要がある。
この軸受構造では、プロペラブレード111よりも上流方向の上流側水管部分118に設けられた軸受給水口119から循環水Wを取出している。そして、この循環水Wを給水配管114を介してステータ120の冷却用として用いた後、下流側の負荷側軸受部113(図12に示す右側)へ供給し、さらに上流側の軸受部112にも貫通穴123及びキャン122の内側を通って循環するようにしている。
また、このような水潤滑式の軸受部に取出す水Wは、水管内を流れる水Wを取出しているため、水中の異物(この明細書及び特許請求の範囲の書類中における「異物」は、水管内の水とともに流れる木材、枯葉、紙、及び上記砂などの重量異物、その他のゴミ等を全て含む)が軸受部に循環させられるおそれがある。そのため、主流からの取出し部である軸受給水口119には、給水配管114への大きな異物の取出しを防止するためのスリット(ルーバー)121が設けられ、大きな異物が軸受給水口119から取出されないようにしている。
一方、上記ダムにおける河川維持放流水や、小河川水、農業用水等には、例えば、台風や集中豪雨(ゲリラ豪雨)等によって想定していたよりも多量の異物が水中に混入する場合がある。また、河川維持放流水の場合など、ダムの取水口125(図11)に設けられた異物除去網などを清掃した時などには多量の異物が水管内の水Wに入る場合がある。このような場合、上記した軸受給水口119のスリット121によって大部分の異物が取出されないように分離できるが、スリット121の隙間を通過する異物Tが水潤滑軸受113に供給する水Wの中に取込まれるおそれがある。
この異物Tは、多少の量であれば軸受部で破砕することができるが、許容範囲以上の異物Tが軸受給水口119から取出されると、ステータ120とランナ115との間や軸受部112,113の隙間に詰りを発生させるおそれがある。そして、軸受部112,113の隙間に異物Tが詰まると潤滑できなくなり、そのままの状態で回転を続けると回転翼が回転できなくなるおそれも生じる。
さらに、上記異物がステータ120とランナ115との間に入ると、ステータ120の内面をカバーしているキャン122を損傷するおそれがある。キャン122は、ステータ120の内面全面をカバーしているため、損傷して交換する場合は多くの時間と労力を要する。また、水力発電装置110の稼働率を低下させてしまう。
なお、上記特許文献1,2には、異物の大きさと軸受部の隙間との関係による異物の詰まりについて何ら記載されておらず、上記したように許容範囲以上の異物が水管内を流れた場合には上記したような問題を生じるおそれがある。
また、上記特許文献3には、水潤滑軸受の潤滑用水に混入している砂などの異物を除去することは記載されているが、除去した砂などの異物を排出することについては何ら記載されておらず、例えば、上記したような台風や集中豪雨時によって大量の異物が混入した場合には安定した異物除去が難しい。
さらに、上記特許文献4では、選別槽で潤滑用水に混入している砂などの異物を除去するとともに、選別槽に堆積した沈殿物を攪拌して排出口まで移動するようにしているが、電動機やスクリューを用いた複雑な排出構造が必要であり、この場合も、例えば、上記したような台風や集中豪雨時によって大量の異物が混入した場合には安定した異物除去が難しい。
また、このような異物の問題を解決する対策として、大型フィルタを設置して異物を除去した浄水を軸受部に供給する方法も考えられるが、設備が大掛かりになり、大幅なコストの上昇とフィルタのメンテナンスに費用と時間を要することになり、小水力発電のメリットが失われてしまう。
そこで、本発明は、水車本体の上流部から取出した潤滑水中に水潤滑軸受の軸受部で問題となる異物が混入しないように安定して除去できる水潤滑式水力発電装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明は、水が通流する水管の中途に設置し、該水管と内部が連通する水車本体を備えた水潤滑式水力発電装置であって、前記水車本体は、該水車本体内を通流する水によって回転するプロペラブレードを有するとともに該プロペラブレードと一体的に回転するランナ及び永久磁石を有する回転翼と、前記回転翼の永久磁石と対向するように設けたステータと、を備え、前記回転翼は、前記ランナの上流部と下流部とをラジアル支持及びスラスト支持する水潤滑軸受により回転可能に支持され、前記水潤滑軸受は、前記水車本体の上流部に設けた軸受給水口から取出される水を給水配管を介して該水潤滑軸受に供給し、前記回転翼との間に水膜を形成して軸受として機能するように構成され、前記軸受給水口は、該軸受給水口から取出される水中から前記水潤滑軸受と回転翼との隙間よりも大きい異物を除去するフィルタ部材を備え、更に、前記軸受給水口と前記水潤滑軸受との間に、前記フィルタ部材を通過した重量異物を沈下させる沈下容器部を備え、該沈下容器部の下部を前記回転翼の下流側に開放している。この明細書及び特許請求の範囲の書類中における「フィルタ部材」は、所定の大きさの開口を有するメッシュ状のフィルタ材や、所定の大きさの開口を有する板状のフィルタ材等を具備したものをいう。
この構成により、軸受給水口から水潤滑軸受に取込まれる水中から水潤滑軸受と回転翼との隙間よりも大きい異物がフィルタ部材で除去されるので、水潤滑軸受と回転翼との間に供給される水は、この水潤滑軸受と回転翼との隙間よりも大きい異物が確実に除去された水となり、水潤滑軸受部分において異物の詰まり等を生じることを確実に防止することができる。従って、ステータとランナとの隙間に異物が詰まるのを防止し、ランナやキャン及びステータ等に問題が生じるのを未然に防ぐことができる。しかも、取水された水中の重量異物を沈下容器部で沈下させるので、細かい重量異物が取水されたとしても水潤滑軸受に達する前に除去することができ、小さい重量異物によってランナやキャン及びステータ等に問題が生じることも未然に防ぐことができる。その上、沈下容器部の下部を回転翼の下流側に開放させたことにより、沈下容器部の下部に沈んだ重量異物は回転翼の上流高圧側と下流低圧側との圧力差で下流側へ排出されるので、沈下容器部に重量異物を貯めることなく自動的に排出することができる。
また、前記ランナは、前記プロペラブレードの外周囲に設けられ、前記永久磁石は、前記ランナの外周囲に設けられ、前記ステータは、前記永久磁石の外方に設けられ、前記沈下容器部は、前記ステータの外周で冷却部を兼ねるように設けられていてもよい。このように構成すれば、沈下容器部の水でステータを外周から冷やし、軸受給水口から取水された水中の重量異物を沈下させながらその水を発電機の冷却水として兼用させることができる。
また、前記沈下容器部は、前記ステータの全周に連続して設けられていてもよい。このように構成すれば、ステータを全周から効率良く冷却することができる。
また、前記沈下容器部は、前記軸受給水口からの入水口が、前記水潤滑軸受への出水口よりも下方に設けられていてもよい。このように構成すれば、入水口から入った水中の重量異物を沈下容器部で早期に沈下させることができる。
また、前記沈下容器部は、該沈下容器部を上向きに移動する水の流速を調整する水流調整手段を備えていてもよい。このように構成すれば、沈下容器部内に取水される水中に多く含まれる重量異物の粒子径と水の流速との関係から、沈下容器部内における流速を沈下させたい粒子径に応じた流速に設定することができる。例えば、水潤滑軸受部の隙間が決定すれば、この隙間よりも大きな重量異物の粒子径と水中における沈降速度との関係式から、沈下容器部内での水の流速をその沈降速度よりも遅く設定することで、所望の粒子径の重量異物が沈下するように設定される。
また、前記沈下容器部は、水中の異物が通過するのを邪魔する邪魔板を備えていてもよい。このように構成すれば、沈下容器部内を移動する水の流れ方向を変化させて、水中に混在している重量異物をより確実に沈下させることができる。
また、前記軸受給水口は、前記水車本体の水平方向両側方よりも上方位置に配置されていてもよい。このように構成すれば、水車本体内を流れる土砂等の重い異物が軸受給水口から取出され難いようにすることができる。
また、前記フィルタ材は、内表面が水車本体の内表面と同一面となるように形成され、前記給水配管を流れる水の流速を、前記水車本体内を通流する水の流速の1/5を下回るようにしてもよい。このように構成すれば、フィルタ材の内表面に異物が付着したとしても、その異物が水車本体内を通流する水によって下流方向へ押し流されるようにできる。
また、前記給水配管に流量監視機器を設け、該流量監視機器で監視している流量が所定の流量を下回ると回転翼を停止させるように構成されていてもよい。このように構成すれば、フィルタ材に異物が詰まった場合や、軸受隙間に異物が堆積して水潤滑軸受部に所定の潤滑水流量が得られない場合でも、回転翼を迅速に停止させることができる。従って、水潤滑軸受への流量不足時に即時停止させて、潤滑水不足による回転翼への影響を最小限に食い止めることができる。上記流量監視機器としては、例えば、電磁流量計が利用でき、この電磁流量計で給水配管中の流量を常時監視することで、詰まりによる流量低下を生じたことを迅速に検知して自動的に回転翼を停止させることができる。
また、前記フィルタ部材は、前記フィルタ材を前記軸受給水口に取付けるフィルタ取付部材と、該フィルタ取付部材を前記水車本体に固定するフィルタ固定部材とを具備した接続構造を有していてもよい。このように構成すれば、フィルタ材に異物が詰まったとしても、フィルタ固定部材を外してフィルタ取付部材を水車本体から取外すことでフィルタ材を外して容易に掃除又は交換することができる。
また、前記軸受給水口は、前記水車本体の上流部に複数個配設され、前記給水配管は、前記複数個の軸受給水口から取出される水を前記水潤滑軸受と前記回転翼との間に供給するように構成されていてもよい。このように構成すれば、1つの軸受給水口に異物が詰まって取出す循環水量が減ったとしても、他の軸受給水口から取出した循環水を水潤滑軸受に供給することができるので、長期間の安定運用ができる。
本発明によれば、回転翼を支持する水潤滑式軸受部分に回転翼との隙間よりも大きな異物とともに重量異物が入り込まないようにでき、異物の多い使用条件であっても安定した運用ができる水潤滑式水力発電装置を提供することが可能となる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。以下の実施形態では、上述した図11に示すような、ダムの河川維持放流水によって発電する水力発電装置1を例に説明する。また、水力発電装置1の軸中心方向を「内方向」、半径方向外方向を「外方向」という。さらに、回転翼の軸受部における半径方向を「ラジアル方向」、それと直交する回転軸方向を「スラスト方向」という。図中の矢印Wは、水Wの流れ方向を示す。
図1,2に示すように、この実施形態の水力発電装置1は、水管102(図11)の中途に設置される水車本体2を有している。この水車本体2は、内径が水管102と同径に形成されている。また、水車本体2は、上流側水管部分3と発電機本体部分4と下流側水管部分5とから構成されている。この水力発電装置1は、上流側水管部分3と下流側水管部分5の端部に設けられたフランジ6,7を水管102に設けられたフランジ(図示略)と結合することで、水管102の中途に設けられる。
図3に示すように、上記水車本体2の上流側内周面には、周方向に等間隔で配設された複数のガイドベーン10が固定されている。これらのガイドベーン10の中心位置には、筒状のボス11が設けられている。また、ボス11は、ガイドベーン10の下流方向に延び、その外周囲には、所定の隙間を保って軸流型に湾曲する複数枚のプロペラブレード15を有する回転翼17が配設されている。プロペラブレード15は、ボス11の周囲に等間隔で配置されており、ボス11とは非接触で回転するようになっている。
上記ガイドベーン10は、プロペラブレード15の傾きに対して逆方向に傾いて湾曲する軸流型をなしており、水流がプロペラブレード15に適切な角度で効率良く当たるように形成されている。
上記プロペラブレード15は、発電機本体部分4の内方に位置し、円筒状のランナ16の内周面に固定されている。これにより、プロペラブレード15が回転すると、ランナ16が一体的に回転するようになっている。ランナ16には、水車本体2の内径と同径のランナショルダ18が上流方向及び下流方向に突設されている。ランナ16の外周面側には、永久磁石19が配設されている。
回転翼17は、このランナ16とランナショルダ18の上流側と下流側とに配設された上流側水潤滑軸受30及び下流側水潤滑軸受31によって支持されている。これらの水潤滑軸受30,31は、ランナショルダ18の外周面をラジアル支持するとともに、ランナ16の前後方向支持面をスラスト支持するように構成されている(詳細は後述する)。
また、ランナ16に設けられた永久磁石19の外方周囲には、所定の隙間を開けてステータ20(「ステータコア(積層鉄芯)」及び「ステータコイル」を含む)が設けられている。ステータ20の内周面はキャン21によって覆われており、外周側は発電機カバー22で覆われている。
このような水力発電装置1によれば、水車本体2内に流れる水Wがガイドベーン10によって方向が調整されると共に増速され、この水Wでプロペラブレード15が効率良く回転させられる。そして、このプロペラブレード15と一体的にランナ16が回転させられ、ランナ16に固定された永久磁石19が、ステータ20(ステータコア)に対して回転させられ、これによってステータ20で発電することができる。
一方、図3及び図4(a) に示すように、上記水車本体2の内部を通流する水Wから上記水潤滑軸受30,31に循環水Wを取出す軸受給水口40が、上記水車本体2の上流側水管部分3に設けられている。この軸受給水口40は、水車本体2の水平方向両側方よりも上方位置(この例では、上流側水管部分3の頂部)に配置されている。このように軸受給水口40を上方位置に配置することにより、水車本体2内を流れる土砂等の重量異物tが軸受給水口40から取込まれ難いようにしている。
そして、上記発電機本体部分4の外周に、上記軸受給水口40に接続された給水配管41から取出された循環水Wが供給される沈下容器部70が設けられている。この沈下容器部70は、発電機本体部分4における上記ステータ20の周囲に設けられた発電機カバー22の外周に設けられている。発電機カバー22の両側部には半径方向外方に突出する側壁部23が設けられ、その外周に外板71が設けられ、これら発電機カバー22と側壁部23と外板71とで囲われた空間に沈下容器部70が形成されている。これにより、発電機本体部分4に設けられたステータ20の全周で連続するように沈下容器部70が形成されている。
このように形成された沈下容器部70には、上流側水管部分3から取出した循環水Wが供給され、発電機カバー22を介してステータ20が発電時に発生する熱を循環水Wで効率的に除去するようになっている。つまり、この実施形態の沈下容器部70は、循環水Wを発電機部分の冷却水として兼用する冷却容器でもある。また、この沈下容器部70は、後述するように、取出された循環水Wに混入している砂などの重量異物tを沈下させて除去している。詳細な構成は後述する。
さらに、この沈下容器部70の上部に設けられた給水配管42から重量異物tが除去された循環水Wが取出され、下流側水潤滑軸受31に下流方向から供給される。下流側水潤滑軸受31の下流側端面には、凹部32が全周に形成されており、この凹部32に上記給水配管42から循環水Wが供給されている。
この給水配管42には、電磁流量計47が設けられており、沈下容器部70から水潤滑軸受31,30に供給される軸受潤滑水量が監視できるようになっている。また、給水配管42には、流量調整バルブ(流量調整手段)48が設けられており、水潤滑軸受31,30に供給される軸受潤滑水量の調整ができるようになっている。
そして、下流側水潤滑軸受31の凹部32に供給された水Wが、貫通穴33から下流側水潤滑軸受31とランナ16との隙間Sに供給されて水膜が形成されるようになっている。この下流側水潤滑軸受31の凹部32に供給された循環水Wは、ランナ16と下流側水潤滑軸受31、キャン21及び上流側水潤滑軸受30との間に供給される。
上記凹部32に供給された循環水Wは、下流側水潤滑軸受31の上流側端面(スラスト軸受面)に供給されて水膜を形成する。この循環水Wは、下流側水潤滑軸受31から上流方向に離間した軸受給水口40から静圧が作用しているため、この静圧が作用している循環水Wによって形成される水膜は、下流側水潤滑軸受31にスラスト対抗力を発生させる。しかし、ランナ16は、運転(発電)と同時に水流によって下流側に押付けられるので、この実施形態では下流側水潤滑軸受31のスラスト面を凹凸形状部34(例えば、所定間隔で凹溝を形成)に加工し、この凹凸形状部34によって回転するランナ16と下流側水潤滑軸受31との間の潤滑水Wに大きなスラスト対抗力が発生するようにしている。これにより、下流側水潤滑軸受31のスラスト対抗力発生に十分な水圧を保ち、ランナ16に作用する大きな下流方向のスラスト力を下流側水潤滑軸受31で支持している。
また、この水潤滑軸受30,31とランナショルダ18との間にも循環水Wが供給されて水膜が形成され、ランナショルダ18の外周面(ラジアル軸受面)に形成された水膜でラジアル方向の力を支持している。ラジアル方向は通常の円筒形状であるため、回転により潤滑水Wには外向きの対抗力が発生し、その対抗力によってラジアル方向の力を支持している。
さらに、下流側水潤滑軸受31に供給された循環水Wは、ランナ16の外周面とステータ20のキャン21の内周面との隙間Sから上流側水潤滑軸受30にも供給される。そして、上流側水潤滑軸受30でも、ランナ16及びランナショルダ18との間に水膜を形成し、ラジアル方向の力及びスラスト方向の力を支持している。
これら上流側水潤滑軸受30及び下流側水潤滑軸受31の潤滑に利用された水は、水車本体2の内方に排出されて下流方向へと流される。
なお、上記水潤滑軸受30,31は、例えば、ステンレス製で形成され、その軸受面がセラミック製で形成される。これにより、水潤滑軸受30,31に供給される水に異物が混入したとしても、軸受面で粉砕して水と一緒に排出してしまうことができる。しかし、上記したように、多量の異物が流入した場合には破砕されずに詰まりを生じるおそれがある。その上、回転翼17のランナ16と固定側であるステータ20のキャン21との隙間Sよりも大きな異物Tが混入した場合、樹脂等で形成されるキャン21を傷付けてしまうおそれもある。
そこで、上記軸受給水口40に、上記回転翼17のランナ16と固定側のキャン21との隙間Sよりも大きい異物Tを除去するフィルタ部材50が設けられている。このフィルタ部材50に設けられたフィルタ材51は、ランナ16とキャン21との隙間Sよりも小さい目開きのメッシュ等が利用される。このように、軸受給水口40に目開き(「メッシュサイズ」ともいう)の細かいフィルタ材51を取付けることにより、給水配管41へ大きい異物Tが取出されるのを防止している。つまり、フィルタ材51により、上記水潤滑軸受30,31と回転翼17との隙間Sに詰まるような大きさの異物Tを、上記軸受給水口40で予め除去している。
図4(b) に示すように、この実施形態のフィルタ材51は、板材に所定の目開きの開口穴52を設けたものが採用されている。また、フィルタ材51は、内表面が水車本体2の内表面と同一面となるように形成されている。このようにすれば、フィルタ材51の内表面に異物Tが付着したとしても、その異物Tが水車本体2内を通る水Wによって押し流され易いようにできる。
また、フィルタ材51の内表面側を流れる水Wの流速に対し、フィルタ材51から取出されて給水配管41内を流れる水Wの流速を1/5を下回るように設定すれば、フィルタ材51の内表面に異物Tが付着したとしても、その異物Tが水車本体2内を通る水Wによって安定して押し流されるようにできる。この給水配管41内における水Wの流速は、好ましくは、水車本体2内を流れる水Wの流速の1/10程度とすることで、更にフィルタ材51の内表面に付着した異物Tが押し流されやすいようにできる。
また、この実施形態では、図4(a) に示すように軸受給水口40を1つ設けているが、複数個の軸受給水口40を設けることで、1つの軸受給水口40に異物Tが詰まって取出し水量が減ったとしても、他の軸受給水口40から十分な循環水Wを取出すようにできる。軸受給水口40の数は、使用条件等に応じて決定すればよい。
さらに、上記給水配管41には、途中に流量監視機構である電磁流量計45が設けられている。この電磁流量計45により、給水配管41内を流れる流量(水量)を監視している。電磁流量計45を設けることにより、上記フィルタ材51に異物Tが詰まって軸受給水口40から水Wが取出せなくなったことを給水配管41内の流量低下で自動的に検知し、その給水配管41内の流量低下で異物Tの詰り等が発生したと判断して水力発電装置1を停止させるような制御を自動的に行うことができる。
一方、図5に示すように、上記発電機本体部分4の外周に設けられた沈下容器部70は、この実施形態では円筒形状の空間に形成されており、発電機本体部分4の周囲に同じ断面積で形成されている。
そして、上記フィルタ部材50から取出された循環水Wが、沈下容器部70の両側部に設けられた入水口72から沈下容器部70の内部に供給されている。この沈下容器部70は、入水口72から供給された循環水Wに混入している重量異物tを下方へ沈下させて除去する容器であり、出水口73が上部に設けられている。
この実施形態では、沈下容器部70の両側部に入水口72を設けて循環水Wを入れることで、沈下容器部70内における循環水Wの流速を遅くしている。この沈下容器部70の内部における循環水Wの上向き流速は、例えば、水潤滑軸受30,31の隙間Sが決定すれば、この隙間Sよりも大きな重量異物tの粒子径と水中における沈降速度との関係式から、沈下容器部70内での水の流速をその沈降速度よりも遅く設定することで、所望の粒子径の重量異物tが沈下するように設定される。従って、循環水Wに混入している重量異物tは、入水口72から沈下容器部70に入った位置から下方へ沈下させられる。
また、この沈下容器部70の上部に設けられた出水口73には、重量異物tを沈下させた循環水Wを潤滑用水として取出す給水配管42が接続されている。この給水配管42から取出された循環水Wは、後流側の水潤滑軸受31に供給されている。この沈下容器部70の上部から取出される水Wは、水潤滑軸受31の隙間に詰まったり軸受面を傷つける重量異物tが含まれていないため、これらを傷つけることはない。
さらに、この給水配管42には、上述したように電磁流量計47と流量調整バルブ48とが設けられており、水潤滑軸受31,30に供給される軸受潤滑水量の監視と水量調整とができるようになっている。この電磁流量計47を監視することでも、上記フィルタ材51に異物Tが詰まって軸受給水口40から水Wが取出せなくなったことを自動的に検知し、給水配管42内の流量低下で異物Tの詰り等が発生したと判断して水力発電装置1を停止させるような制御を自動的に行うことができる。流量調整バルブ48を調整すれば、水潤滑軸受31,30に供給される軸受潤滑水量を調整することができる。
また、沈下容器部70の下部には排出管43が設けられている。この排出管43は、沈下容器部70の下部を回転翼17の下流側である下流側水管部分5の下部に接続している。この排出管43には流量調整バルブ44が設けられている。この流量調整バルブ44は、水流調整手段であり、沈下容器部70の下部から下流側に排出される流量を調整することにより、上記したように沈下容器部70内で上向きに移動する水Wの流速を調整できるようにしている。
さらに、沈下容器部70の下部を回転翼17の下流側に開放することにより、回転翼17の上流側と下流側との圧力差によって、沈下容器部70の下部に沈下した重量異物tを含む水Wが回転翼17の下流方向へ排出されるようにしている。この重量異物tを含む水Wの排出は、回転翼17の上流側と下流側とにおける圧力差で行っているため、自動的に行うことができる。また、沈下容器部70の下方へ沈下した重量異物tは留まることなく下流側へ排出されるので、沈下容器部70内における重量異物tの掃除も不要である。
なお、この実施形態では沈下容器部70の両側部に入水口72を設けているが、二点鎖線で示すように、沈下容器部70の下部に入水口72を設けるようにしてもよい。また、沈下容器部70の内部流速によっては、1箇所から入水させるようにしてもよい。
図6は上記沈下容器部70の内部に設けられた邪魔板74の構成を示す側面図である。この実施形態では、上記沈下容器部70の内部に軸方向の前後から突出する邪魔板74が設けられている。この邪魔板74は、沈下容器部70の内部を上方へ流れる循環水Wの流れを邪魔し、循環水Wに混入した重量異物tが上方へ移動するのを抑止している。この実施形態では、邪魔板74を設けた例を示したが、他の構成で重量異物tが上方へ移動するのを抑止するようにしてもよい。
このような沈下容器部70によれば、両側部から供給された循環水Wは、その入水口72の位置から混入している重量異物tが下方へ沈下させられる。また、沈下容器部70の内部を上方へ流れる循環水Wは、邪魔板74によって細かい粒径の重量異物tの移動も抑止され、沈下容器部70の上部に設けられた給水配管42からは循環水Wの上澄みが潤滑用水として取出される。
この給水配管42に取出された循環水Wは、上記したように後流側の水潤滑軸受31に供給される。沈下容器部70の上部から取出される循環水Wは、重量異物tが含まれていないため、水潤滑軸受31の隙間に詰まったり、軸受面を傷つけることはない。
しかも、沈下容器部70において沈下した重量異物tは、常に排出管43を介して下流側へ排出されているため、例えば、台風や集中豪雨などによって大量の小さな砂などの重量異物tがフィルタ材51から給水配管41に取出されてしまったとしても、沈下容器部70において重量異物tを連続的に沈下させて下流方向に排出することができるので、連続的な重量異物tの除去が安定してできる。
従って、沈下容器部70で重量異物tを沈下させた循環水Wの上澄みを水潤滑軸受30,31の潤滑水として安定して供給することができる。
図7は、上記電磁流量計45による流量監視と水力発電装置1の自動停止とを行う制御の一例を示すグラフである。横軸には経過時間を示し、縦軸には軸受に供給される水量Vを示している。この例では、流量変化を時間軸で監視し、給水配管41内の水量Vが所定の閾値(図示する一点鎖線)を下回ったら、フィルタ材51に異物Tの詰り等が発生したと判断して水力発電装置1を停止させる信号が発せられるようにしている。この閾値としては、水潤滑軸受30,31に応じて問題の生じない水量Vに設定すればよい。
このように、水力発電装置1の運転中に水潤滑軸受30,31への水量低下を流量監視機構で検知して、優先的に水力発電装置1を停止する運転プログラムとすることにより、回転翼17の軸受部分に水量低下による問題が生じる前に水力発電装置1を即時停止させて、問題が生じるのを未然に防ぐ運用ができるようにしている。
さらに、図8及び図9(a),(b) に示すように、上記フィルタ部材50は、フィルタ材51を簡単に取外すことができるフランジ接続構造としてもよい。上記図4では、給水配管41の端部をフィルタ部材50にボルト結合しているが、この例では、フィルタ材51を固定するフィルタ取付部材54と、このフィルタ取付部材54を水車本体2に固定するフィルタ固定部材53とを有している。具体的には、水車本体2の上部にフランジ材56を固定し、このフランジ材56にピン61で回動可能に支持されたフィルタ固定部材53を設けている。このフランジ材56の上部には、所定長さのフィルタ取付部材54を取付け、その上部に給水配管41を接続するような構造としている。フィルタ取付部材54の上端と給水配管41とは、図9(a) に示すように、固定具60で固定されるようになっている。また、フィルタ取付部材54の下端は、図9(b) に示すように、フィルタ固定部材53のボルト57で固定されるようになっている。
図8に示すように、軸受給水口40のより具体的な構造としては、フィルタ取付部材54の下端にはフランジ部55が設けられており、このフランジ部55と上記水車本体2の上面に設けられたフランジ材56との間にフィルタ材51の上部とパッキン62とを挟んで設けられる。そして、フィルタ取付部材54のフランジ部55を、フィルタ固定部材53のボルト57でフランジ材56に固定することにより、フランジ部55とフランジ材56との間でフィルタ材51が保持されている。この状態で、フィルタ材51の内表面が、水車本体2の内表面と同一面に保持されている。また、フィルタ取付部材54の上端にはフランジ58が設けられ、上記給水配管41に設けられたフランジ46とがパッキン59を挟んで固定具60で固定されている。この固定具60は、締付けることでフランジ58,46を密接させるようになっている。
このようにしてフィルタ取付部材54を介してフィルタ材51を取付けるようにしたフィルタ接続構造によれば、フィルタ固定部材53と固定具60とを外せば、フィルタ取付部材54を側方から取外し又は取付けることができる。
図10に示すように、フィルタ材51が詰まった時の確認時には、フィルタ固定部材53のボルト57を緩めてフィルタ固定部材53をフィルタ取付部材54から外すとともに、固定具60(図8、図9(a) )を外せば、フィルタ取付部材54を横方向に取外すことができる。これにより、フィルタ材51の上方に空間を形成することができ、フィルタ材51を上方に取外すことが容易にできる。従って、フィルタ材51に異物Tが詰まった場合でも、水力発電装置1を水管102に固定した状態でフィルタ材51を容易に取外して、清掃又は交換を行うことができる。
以上のような水力発電装置1によれば、フィルタ部材50によって水潤滑軸受30,31とランナ16及びキャン21との隙間(潤滑部隙間)Sよりも大きな異物Tが除去された循環水Wが給水配管41内に取出されるので、水潤滑軸受30,31とランナ16及びランナショルダ18との間に供給した循環水Wで形成した水膜で安定した水潤滑軸受30,31の機能を保ち、水力発電装置1の安定した継続運転ができる。
また、フィルタ部材50から給水配管41内に取出された循環水W中に小さな異物Tが混入したとしても、その異物Tは潤滑部隙間Sよりも小さな異物Tであるため、キャン21やランナ16等を傷付けることなく排出することができ、異物Tの多い使用条件であっても安定して水力発電装置1を運用することができる。
しかも、沈下容器部70によって取水された水中の重量異物tを沈下させて除去するので、細かい重量異物tが取水されたとしても水潤滑軸受30,31に達する前に除去することができ、小さい重量異物tによってランナ16やキャン21及びステータ20等に問題が生じることも未然に防ぐことが可能となる。
その上、沈下容器部70の下部を回転翼17の下流側に開放させているので、回転翼17の上流高圧側と下流低圧側との圧力差で沈下容器部70の下部に沈んだ重量異物tを貯めることなく下流側へ自動的に排出することができ、台風や集中豪雨などによって重量異物tが一時的に多く流れるようなことが生じても水力発電装置1の安定した連続運転が可能である。
また、水中の異物Tでフィルタ材51に詰まりを生じたとしても、水潤滑軸受30,31の潤滑水量が所定量以下になると水力発電装置1を自動的に停止させることができ、回転翼17に問題を生じる前に水力発電装置1を停止させることで安定した運用が可能となる。
さらに、軸受給水口40を水車本体2の上部に設けることにより、土砂等の重たい異物Tが水潤滑軸受30,31に入ることがないようにして、水力発電装置1の安定した運転を可能としている。
また、大掛かりな自動ストレーナ等を設置することなく異物Tを除去でき、さらに別途きれいな潤滑水Wを供給するように構成する必要もないため、設備費用を抑えた水潤滑式水力発電装置1を構成することができる。
なお、上記実施形態では、フィルタ部材50をフランジ接続構造として簡単に取外せるようにしているが、他の構造で取付けるようにしてもよく、上記実施形態に限定されるものではない。
また、上記実施形態では、プロペラブレード15の外周囲にランナ16が設けられ、そのランナ16の外周囲に永久磁石19が一体回転するように設けられた回転翼17と、その回転翼17の永久磁石19の外方にステータ20が設けられた水車本体2を例に説明したが、これらの構成の配置は上記実施形態に限定されるものではない。
さらに、上述した実施形態は一例を示しており、本発明の要旨を損なわない範囲での種々の変更は可能であり、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。