JP6070919B2 - ガスクロマトグラフ - Google Patents

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Description

本発明は、キャリアガスの漏洩に対する二重安全構造を備えたガスクロマトグラフに関する。
ガスクロマトグラフのキャリアガスは、分析カラムに不活性で粘性の低いことが条件とされるが、そのような不活性ガスとしてヘリウムガス、水素ガス、窒素ガス、アルゴンガスなどが使用される。
このなかで窒素ガスは安価で安全なキャリアガスであるが、最適線速度が遅いため分析時間がかかり、最適線速度域が狭いという欠点がある。水素ガスは安価で最適線速度が速く、また最適線速度域が広いため、理想的なキャリアガスであるが、安全面を考慮して、一般的には使用を避けることが多い。そのため、なるべく安全で広い最適線速度域をもつヘリウムガスがよく使用されることになるが、水素炎イオン化検出器(FID)などでは水素ガスがキャリアガスとして使用される。
しかしながら、ヘリウムガスは、近年、その価格が高騰しており高価であるので、キャリアガスとしてヘリウムガスを用いる場合には、漏洩等による浪費は避けられなければならない。また、水素ガスをキャリアガスとして使用する場合、漏出して空気中でその濃度が4%を超えると爆発を起こす危険性があるので、漏洩対策を含めてその取扱いには十分な注意が必要である。
一方、従来のガスクロマトグラフでは、キャリアガス流量は分離や保持時間の再現性に重要なファクターであり、その流量を最適な流量に制御するため、キャリアガス流路には流量センサーからの信号により制御される流量制御弁が配置されている(例えば特許文献1参照)。
したがって、分析カラム(キャピラリーカラム)の破損や分析カラムと試料導入部または分析カラムと検出器との間の接続部の不具合、欠陥などにより、キャリアガスが漏洩し、一定流量以上の過大な流量が流れたときには、本来の目的とは相違するが、流量センサーでこれを検知し、制御部からの信号に基づき流量制御弁によりキャリアガス流路を閉じ、またはその流量を制御(制限)し、キャリアガスの漏洩に対処していた。
特開2000−19165号公報
しかし、流量センサーおよび流量制御弁、あるいはこれらを制御する制御部は、通常、電磁気的に駆動・制御されるため、その電気系統(回路)に故障や停電事故などがあったときには、従来のガスクロマトグラフでは、流量センサーや流量制御弁を動作させることが不可能となり、キャリアガスの漏洩を防止することができず、キャリアガスの漏出による浪費や爆発等の二次的な事故の発生に対して十分な対応がとれなかった。
本発明は、このような従来技術の問題を解決するためになされたものであり、流量センサーや流量制御弁、制御部の電気系統の故障や不具合により動作しなかった場合であっても、キャリアガスの漏洩を効果的に防止して高価なキャリアガス(ヘリウムガス)の浪費をなくするとともに、危険なキャリアガス(水素ガス)の漏出による二次的な事故の発生を引き起こすことのない二重安全構造を備えたガスクロマトグラフを提供することを目的としている。
上記課題を解決するため、請求項1記載の本発明のガスクロマトグラフでは、ガスボンベに充填したキャリアガスを試料導入部および分析カラムに導入するに際し、ガスボンベと試料導入部の間のキャリアガス流路に設けた流量制御弁により、その流量を制御するようにしたガスクロマトグラフであって、前記流量制御弁は、一定流量以上の過大なキャリアガスの流量に対して、前記キャリアガス流路を流れるキャリアガスの漏洩を防止する流量に電磁的に制限し、さらに、一定流量以上の過大なキャリアガスの流量に対して、機械的に動作し、前記キャリアガス流路を流れるキャリアガスの漏洩を防止する流量に制限する弁機構を備えた流量制限弁を、前記流量制御弁とは別に、キャリアガス流路の前
流量制御弁の上流側に配置したものである。
また、請求項2記載の本発明のガスクロマログラフはガスボンベに充填したキャリアガスを試料導入部および分析カラムに導入するに際し、ガスボンベと試料導入部の間のキャリアガス流路に設けた電磁的な流量制御弁により、その流量を電磁的に制御するようにしたガスクロマトグラフにおいて、キャリアガスが水素である場合に、前記流量制御弁は、一定流量以上の過大なキャリアガスの流量に対してキャリアガス流量を750ml/min以下のキャリアガス流量に電磁的に制限し、さらに、キャリアガスの一定流量以上の過大な流量に対してキャリアガス流量を750ml/min以下のキャリアガス流量に機械的に制限することができる弁機構を備えた流量制限弁を、前記流量制御弁とは別に、キャリアガス流路の前記流量制御弁の上流側に配置したものであってもよい。
さらに、請求項3記載の本発明のガスクロマトグラフでは、前記流量制限弁は、キャリアガスの一定流量以上の過大な流量に対してキャリアガス流路を閉塞しキャリアガスの流れを遮断することができる弁機構を備えたものである。
さらにまた、請求項4記載の本発明のガスクロマトグラフでは、前記流量制限弁を、キャリアガス流路の前記流量制御弁とガスボンベとの間に配置したものである。
本発明によれば、分析カラム(キャピラリーカラム)の破損や分析カラムと試料導入部または分析カラムと検出器との間の接続部の不具合、欠陥などにより、キャリアガスが漏洩し、キャリアガスの一定流量以上の過大な流量に対して、たとえ流量センサーおよび流量制御弁、あるいはこれらを制御する制御部に故障や不具合があっても、機械的に流量を制限することができる弁機構を備えた流量制限弁を、既設の流量制御弁とは別に、キャリアガス流路の試料導入部の上流側に配置しているので、ヘリウムガス等のキャリアガスの漏洩を効果的に防止し、かつ、水素ガス等のキャリアガスの漏出に起因して生じる二次的な事故の発生を未然に防止することができる。
また、本発明によれば、流量制限弁は、キャリアガスの一定流量以上の過大な流量に対してキャリアガス流量を一定流量以下のあらかじめ設定された流量に制限することができる弁機構を備えているので、水素ガス等のキャリアガスの漏出に起因して生じる二次的な事故の発生を未然に防止するとともに、所定のキャリアガス流量を維持し、検出器を通して外界の空気が分析カラムへ逆流し、分析カラム内面の固定相と反応(酸化)して分析カラムが劣化することを回避することができる。
さらに、本発明によれば、流量制限弁は、キャリアガスの一定流量以上の過大な流量に対してキャリアガス流路を閉塞しキャリアガスの流れを遮断することができる弁機構を備えているので、高価なキャリアガス(ヘリウムガス)の漏洩による浪費をなくすることができる。
さらにまた、本発明によれば、流量制限弁を、キャリアガス流路の流量制御弁とガスボンベとの間に配置しているので、流量センサーおよび流量制御弁、あるいはこれらを制御する制御部の電気系統の故障のみならず、流量センサーや流量制御弁の損傷等にともなうキャリアガスの漏洩に対しても十分に対応することができる。
このように、本発明では、従来の電気系統により制御される安全機構と、機械的構造のみで制御される安全機構の二重安全構造を具備しているので、キャリアガスとして高価なヘリウムガスの漏洩を効果的に防止し、かつ、水素ガスの漏出に起因して生じる二次的な事故の発生を未然に回避することができ、ガスクロマトグラフ使用者にとっては安心かつ安全に分析作業に従事することができる。
本発明のガスクロマトグラフの一実施例の構成図である。 本発明のガスクロマトグラフに適用されるヒューズ弁の一例を示す概念図である。
以下、図を使って、本発明のガスクロマトグラフの実施形態の一例を説明する。
図1は、本発明の実施形態であるガスクロマトグラフの構成図である。図において、キャリアガス流路11に試料気化室(図示せず)を含む試料導入部1、分析カラム2および検出器4が順に配置されている。分析カラム2は、通常、溶融石英製キャピラリーカラムが用いられ、断熱材で囲われたオーブン3内に収容され、そのカラム温度が制御される。検出器4は、例えば水素炎イオン化検出器である。
キャリアガスを供給するガスボンベ5には、例えば水素ガスが充填されている。キャリアガス流路11の試料導入部1の上流には電磁気的に駆動・制御される流量制御弁6および流量センサー7が配置され、流量制御弁6は流量センサー7で測定された値に基づき、CPUからなる制御部8よりの制御信号によって最適な流量のキャリアガスを試料導入部1および分析カラム2に供給するよう制御される。
上記ガスクロマトグラフの構成で、試料を分析する場合には、通常、液体試料をシリンジ等で試料導入部1の試料気化室(図示せず)に注入し、高温の気化室で気化した後、キャリアガスとともにオーブン3内に収容された分析カラム2に導入する。試料は分析カラム2にてクロマトグラフィーの原理によって試料中の各成分が分離され、分析カラム2の後段に接続された検出器4に導かれ、クロマトグラムとして検出される。
ガスクロマトグラフでは、頻繁でないにしても、分析カラム2(キャピラリーカラム)の破損や分析カラム2と試料導入部1または分析カラム2と検出器4との間の接続部の不具合、欠陥などによりキャリアガスが漏洩することがある。例えば、液体試料を分析カラム2に直接導入するオンカラム試料導入の場合、分析カラム2の最上部にシリンジニードルが差し込まれるが、比較的薄い肉厚で強度のない分析カラム2(キャピラリーカラム)は破損しやすい。図1では漏洩箇所を破損箇所10として模式的に表示しているが、このような場合、漏出したキャリアガスはオーブン3内に流出し、キャリアガス流路11には過大な流量が流れることになる。
図1に示したガスクロマトグラフでは、従来のガスクロマトグラフの一般的構成に加えて、ガスボンベ5と流量制御弁6との間に流量制限弁9が設けられている。流量制限弁9は、キャリアガスの一定流量以上の過大な流量に対して機械的に動作し、キャリアガス流路11を流れるキャリアガス流量を制限する弁機構を備えたものである。
このような流量制限弁9の弁機構としては、機能的に次の態様のものが含まれる。
(1)キャリアガスの一定流量以上の過大な流量に対してキャリアガス流量を一定流量以下のあらかじめ設定された流量に制限する。すなわち、所定のキャリアガス流量の流通を許容する。
(2)キャリアガスの一定流量以上の過大な流量に対してキャリアガス流路11を閉塞し、キャリアガスの流れを遮断する。
流量制限弁9の弁機構としていずれの機能を用いるかは、キャリアガスの種類や漏洩防止の主たる目的によって適宜選択される。
キャリアガス流路11を閉塞しキャリアガスの流れを完全に遮断した場合には、高価なヘリウムガスの流出を防いで無駄使いをなくすることができ、また、キャリアガスに危険な水素ガスを使用しているときには漏出に起因する爆発等の二次的災害を未然に防止することができるので好適である。
一方、キャリアガスの流れを完全に遮断した場合には、検出器4を通して外界の空気が分析カラム2へ逆流し、分析カラム2内面の固定相と反応(酸化)して分析カラム2を劣化させるおそれがある。
そこで、流量制限弁9の弁機能として、通常、キャリアガスの流れを完全に遮断するのではなく、キャリアガス流量を一定流量以下のあらかじめ設定した流量に制限し、少ない流量であってもキャリアガスの流れを維持するようにしたものを選択し、キャリアガスとして高価なヘリウムガスを使用する場合の漏洩による浪費を多少犠牲にしながら、漏出による爆発限界(空気中での濃度4%)の条件も十分考慮に入れて水素ガスの使用にも対応できるようにし、かつ外界から分析カラム2への空気の流入を防いで分析カラム2の劣化を回避するようにしている。
流量制限弁9を図2の概念図に示す。図2(A)は通常状態を示し、図2(B)は動作時を示している。
通常時(A)は、シリンダ12内に配置されたボール13は、その重量およびボール13とストッパ14との間に配置されたバネ15の弾性力によりシリンダ12内に止まっているが、キャリアガスの漏洩等により一定流量以上の過大な流量が流れたとき、すなわち動作時(B)には、ボール13がその重量およびバネ15の弾性力に抗して出口側へ上昇し、バランスしたところで停止して、キャリアガス流量を一定流量以下のあらかじめ設定された流量しか流れないようにその流量を制限する。すなわち、キャリアガス流路11を閉塞しキャリアガスの流れを完全に遮断するのではなく、あらかじめ設定された一定流量のキャリアガスの流れを許容する。どの程度のキャリアガス流量を許容するかはバネ15の弾性力を調整することにより適宜設定することができる。
もちろん、バネの弾性力のかわりにボールの自重でバランスさせるなどの構造でもよい。
例えば、流量制限弁9が制限(許容)するキャリアガス流量としては、(株)島津製作所製「キャピラリガスクロマトグラフGC−2010Plus」では約750ml/min以上のキャリアガス流量が、分析カラム2を含むキャリアガス流路11に流れないように設定される。キャリアガスとして水素ガスを使用する場合、約750ml/min以下のキャリアガス流量であれば、たとえ分析カラム2の破損箇所10から漏出しオーブン3内に水素ガスが充満したときであっても、水素ガスの爆発限界の4%を超えることはない。オーブン3を囲っている断熱材には透過性があり、また、開閉扉は機密構造であるが若干の隙間もあるため、約750ml/minを超える過大な流量が流入しない限り水素ガスの爆発限界の4%に達しないことが確認されている。もちろん、分析カラム2の劣化も生じない。
図1のガスクロマトグラフの実施形態では、ガスボンベ5と流量制御弁6との間に流量制限弁9を設けている。この場合には、流量制御弁6の損傷事故等によるキャリアガスの漏洩にも対応することができるので好適であるが、本発明としては、少なくとも試料導入部1の上流側に流量制限弁9を設置すればその目的を達成することができる。
また、機械的構造のみで動作する流量制限弁9としては、制限できる流量を任意に設定できる流量可変の構造のものを含めて種々の構成の流量制限弁または流量制御弁が市販されており、本発明にとっては特定の構造のものに限定されるものではない。
1 試料導入部
2 分析カラム
3 オーブン
4 検出器
5 ガスボンベ
6 流量制御弁
7 流量センサー
8 制御部
9 流量制限弁
10 破損箇所
11 キャリアガス流路

Claims (4)

  1. ガスボンベに充填したキャリアガスを試料導入部および分析カラムに導入するに際し、ガスボンベと試料導入部の間のキャリアガス流路に設けた電磁的な流量制御弁により、その流量を電磁的に制御するようにしたガスクロマトグラフにおいて、前記流量制御弁は、一定流量以上の過大なキャリアガスの流量に対して、前記キャリアガス流路を流れるキャリアガスの漏洩を防止する流量に電磁的に制限し、さらに、一定流量以上の過大なキャリアガスの流量に対して、機械的に動作し、前記キャリアガス流路を流れるキャリアガスの漏洩を防止する流量に制限する弁機構を備えた流量制限弁を、前記流量制御弁とは別に、キャリアガス流路の前記流量制御弁の上流側に配置したことを特徴とするガスクロマトグラフ。
  2. ガスボンベに充填したキャリアガスを試料導入部および分析カラムに導入するに際し、ガスボンベと試料導入部の間のキャリアガス流路に設けた電磁的な流量制御弁により、その流量を電磁的に制御するようにしたガスクロマトグラフにおいて、キャリアガスが水素である場合に、前記流量制御弁は、一定流量以上の過大なキャリアガスの流量に対してキャリアガス流量を750ml/min以下のキャリアガス流量に電磁的に制限し、さらに、キャリアガスの一定流量以上の過大な流量に対してキャリアガス流量を750ml/min以下のキャリアガス流量に機械的に制限することができる弁機構を備えた流量制限弁を、前記流量制御弁とは別に、キャリアガス流路の前記流量制御弁の上流側に配置したことを特徴とするガスクロマトグラフ。
  3. 前記流量制限弁は、キャリアガスの一定流量以上の過大な流量に対してキャリアガス流
    量を閉塞しキャリアガスの流れを遮断することができる弁機構を備えたものであることを
    特徴とする請求項1に記載のガスクロマトグラフ。
  4. 前記流量制限弁は、キャリアガス流路の前記流量制御弁とガスボンベとの間に配置され
    ていることを特徴とする請求項1〜3までのいずれかに記載のガスクロマトグラフ。
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