以下に添付図面を参照して、本実施形態にかかる13族窒化物結晶の製造方法、及び製造装置について説明する。なお、以下の説明において、図には発明が理解できる程度に構成要素の形状、大きさ及び配置が概略的に示されているに過ぎず、これにより本発明が特に限定されるものではない。また、複数の図に示される同様の構成要素については同一の符号を付して示し、その重複する説明を省略する場合がある。
本実施の13族窒化物結晶の製造方法では、フラックス法により、針状種結晶から窒化物結晶を成長させることで、13族窒化物結晶を製造する。
具体的には、本実施の形態の13族窒化物結晶の製造方法は、混合融液、針状種結晶、及び抑制部材を保持した反応容器における前記混合融液中に、窒素を溶解させる溶解工程と、前記針状種結晶に窒化物結晶を結晶成長させる結晶工程と、を含む。
混合融液は、フラックスとしてのアルカリ金属及びアルカリ土類金属の少なくとも一方と、13族金属とを少なくとも含む。本実施の形態の13族窒化物結晶の製造に用いる種結晶は、反応容器における混合融液中に設置して用いる。種結晶は、m面を有する六方晶構造の種結晶である。なお、種結晶は、m面を有する六方晶構造の種結晶であればよく、
±c軸方向両端面がc面の六角柱状であってもよいし、±c軸方向一端側が{10−11}面である針状であってもよい。
本実施の形態において、「±c軸方向」とは、種結晶30及び13族窒化物結晶19の結晶軸であるc軸の正方向である[0001]軸方向と、種結晶30及び13族窒化物結晶19の結晶軸であるc軸における、[0001]軸方向とは逆の方向である[000−1]軸方向と、の双方向を示す。
{10−11}面とは、P面を示す。すなわち、{10−11}面は、+p面と−p面の双方を含む。なお、+p面は、(10−11)、(1−101)、(01−11)、(0−111)、(−1101)、(−1011)を表す。−p面は(10−1−1)、(1−10−1)、(01−1−1)、(0−11−1)、(−110−1)、(−101−1)を表す。
また、本実施の形態の13族窒化物結晶の製造方法においては、反応容器は、抑制部材を備える。抑制部材は、種結晶の結晶成長により、該種結晶におけるm面の+c軸方向端部が−c軸方向に推移またはm面の−c軸方向端部が+c軸方向に推移することを抑制する部材である。
「+c軸方向」とは、種結晶30及び13族窒化物結晶19の結晶軸であるc軸の正方向である[0001]軸方向を示す。また、「−c軸方向」とは、種結晶30及び13族窒化物結晶19の結晶軸であるc軸における、[0001]軸方向とは逆の方向である[000−1]軸方向を示す。
本実施の形態では、種結晶の外周に窒化物結晶を結晶成長させることで13族窒化物結晶をするが、この結晶成長を、種結晶の結晶成長、種結晶から窒化物結晶が結晶成長、または13族窒化物結晶が結晶成長と表現する場合があるが、いずれも同じ意味である。
本実施の形態の13族窒化物結晶の製造方法では、フラックス法を用いた結晶成長において、種結晶にm面を有する六方晶構造の種結晶を用いると共に、上記抑制部材を反応容器内に保持して結晶成長させる。このため、抑制部材によって、種結晶におけるm面の+c軸方向端部が−c軸方向に推移またはm面の−c軸方向端部が+c軸方向に推移することを抑制することができる。
種結晶におけるm面の+c軸方向端部とは、種結晶におけるm面の+c軸方向の縁部である。同様に、m面の−c軸方向端部とは、種結晶におけるm面の−c軸方向の縁部である。
具体的には、種結晶がm面と{10−11}面とを有する針状である場合には、m面の+c軸方向端部は、{10−11}面とm面との境界を示す。また、種結晶が、±c軸方向両端面がc面である六角柱である場合には、該±c軸方向端部は、m面とc面との境界を示す。
従って、本実施の形態では、c面の大型化された13族窒化物結晶を製造することができる。
上記効果が奏される理由は明らかとなっていないが、以下のように推測される。しかしながらこの推測によって本発明は限定されない。上記抑制部材により、m面の結晶成長が種結晶の他の面に比べて優先して進行することになるためと推測される。具体的には、例えば、種結晶が針状である場合には、上記抑制部材により、結晶成長に伴って増加する{10−11}面の面積増加率に比べて、m面の面積増加率を大きくすることができ、m面の結晶成長が優先して進行することとなると推測される。このため、c面の大型化された13族窒化物結晶を製造することができると推測される。
以下、詳細を説明する。
―種結晶―
まず、本実施の形態の13族窒化物結晶の製造方法で用いる種結晶について説明する。
図1は、本実施の形態の13族窒化物結晶の製造方法において用いる種結晶30を示す模式図である。図2は、種結晶30の断面図である。
図1に示すように、本実施の形態で用いる種結晶30は、m面を有する六方晶の結晶構造(六方晶構造)の窒化ガリウム結晶である。
また、種結晶30における、c軸に対して垂直な断面であるc面の形状は、六角形である。なお、本実施形態において、六角形とは、正六角形、及び正六角形以外の六角形を含む。この六角形の辺に相当する種結晶30の側面は、主に、六方晶の結晶構造のm面({10−10}面)で構成される。
図1には、種結晶30が、底面をc面(0001)とし、中心軸をc軸とした六角柱状の結晶上に、底面をc面(0001)とし中心軸をc軸とする六角錐が設けられた針状である場合を示した。すなわち、種結晶30が、c軸方向に伸びた針状結晶である場合を示した。しかし、種結晶30は、六方晶構造であり、m面を有する構造であればよく、図1に示す形状に限られない。例えば、種結晶30は、図1に示す種結晶30の六角錐の頂点部分にc面の形成された形状であってもよい。また、上述したように、種結晶30は、六角柱状であってもよい。
図2は、図1に示す種結晶30におけるc軸とa軸に平行な断面図を示したものである。種結晶30のc軸方向の長さは限定されるものではないが、よりc面の大型化された13族窒化物結晶を製造する観点から、c軸方向の最大長Lとc面の最大径dとの比L/dが、0.813より大きい六方晶構造の窒化ガリウム結晶を用いることが好ましい。
種結晶30には、例えば、以下の方法を用いて製造したものを用いる。
図3は、種結晶30の製造装置1の一例を示す模式図である。
図3に示すように、製造装置1は、ステンレス製の外部耐圧容器28を備える。外部耐圧容器28内には内部容器11が設置され、内部容器11内にはさらに反応容器12が収容されている。すなわち、外部耐圧容器28は、二重構造を成している。内部容器11は外部耐圧容器28に対して着脱可能となっている。
反応容器12は、原料や添加物を融解させた混合融液24を保持して、種結晶30を得るための容器である。
外部耐圧容器28と内部容器11には、外部耐圧容器28の内部空間33と内部容器11の内部空間23に、原料である窒素(N2)ガスおよび全圧調整用の希釈ガスを供給する希釈ガス供給管20、及びガス供給管32が接続されている。ガス供給管14は窒素供給管17と希釈ガス供給管20に分岐しており、それぞれバルブ15、及びバルブ18で分離することが可能となっている。
希釈ガスとしては、不活性ガスのアルゴン(Ar)ガスを用いることが望ましいが、これに限定されず、その他のヘリウム(He)等の不活性ガスを希釈ガスとして用いてもよい。
窒素ガスは、窒素ガスのガスボンベ等と接続された窒素供給管17から供給されて、圧力制御装置16で圧力を調整された後、バルブ15を介してガス供給管14に供給される。一方、希釈ガス(例えば、アルゴンガス)は、希釈ガスのガスボンベ等と接続された希釈ガス供給管20から供給されて、圧力制御装置190で圧力を調整された後、バルブ18を介してガス供給管14に供給される。このようにして圧力を調整された窒素ガスと希釈ガスは、ガス供給管14にそれぞれ供給されて混合される。
窒素と希釈ガスの混合ガスは、ガス供給管14からバルブ31、及びバルブ29を経て外部耐圧容器28および内部容器11に供給される。なお、内部容器11はバルブ29部分で製造装置1から取り外すことが可能となっている。また、ガス供給管5は、バルブ6を介して外部につながっている。
ガス供給管14には、圧力計220が設けられており、圧力計220によって外部耐圧容器28および内部容器11内の全圧をモニターしながら外部耐圧容器28および内部容器11内の圧力を調整できるようになっている。
製造装置1では、窒素ガスおよび希釈ガスの圧力を、バルブ15及びバルブ18と、圧力制御装置16及び圧力制御装置190と、によって調整することにより、窒素分圧を調整する。すなわち、外部耐圧容器28および内部容器11の全圧を調整できるので、内部容器11内の全圧を高くして、反応容器12内のアルカリ金属(例えばナトリウム)の蒸発を抑制することができる。即ち、窒化ガリウムの結晶成長条件に影響を与える窒素原料となる窒素分圧と、ナトリウムの蒸発抑制に影響を与える全圧を、別々に制御する事が可能な構造となっている。
外部耐圧容器28内の内部容器11の外周にはヒーター13が配置されている。ヒーター13は、内部容器11および反応容器12を加熱することで、混合融液24の温度を調整する。
本実施形態では、フラックス法により、種結晶30を製造する。
種結晶30の製造方法は、例えば、混合融液24中にホウ素が溶け込むホウ素溶解工程と、窒化ガリウム結晶の成長時に結晶中にホウ素が取り込まれるホウ素取込工程と、混合融液24中のホウ素濃度を結晶成長過程とともに減少させるホウ素減少工程とを含む。なお、上記ホウ素減少工程は省略してもよい。
ホウ素溶解工程では、反応容器12内壁に含まれる窒化ホウ素(BN)または反応容器12内に設置された窒化ホウ素の部材から、混合融液24中にホウ素が溶解する。次に溶解したホウ素が、結晶成長する結晶内に取り込まれる(ホウ素取込工程)。そして、結晶成長に伴って結晶中に取り込まれるホウ素の量は次第に減少することとなる(ホウ素減少工程)。
ホウ素減少工程によれば、種結晶30がm面({10−10}面)を成長させながら結晶成長する場合に、c軸を横切る断面において外側の領域におけるホウ素の濃度を、内側の領域のホウ素濃度よりも低くすることができる。これにより、種結晶30のm面で構成される外周面(六角柱の6つの側面)において、不純物であるホウ素濃度と、不純物に起因する可能性のある結晶内の転位密度が低減され、種結晶30の外周面を、その内側の領域に比べて良質の結晶で構成することができる。
次に、ホウ素溶解工程、ホウ素取込工程、ホウ素減少工程についてより具体的に説明する。
(1)反応容器12が窒化ホウ素を含む方法
反応容器12として窒化ホウ素の焼結体(BN焼結体)を材料とした反応容器12を用いる。反応容器12が結晶成長温度まで昇温される過程において、反応容器12からホウ素が溶解し、混合融液24中に溶け出す(ホウ素溶解工程)。そして、種結晶30の成長過程において混合融液24中のホウ素が種結晶30中に取り込まれる(ホウ素取込工程)。種結晶30の成長にしたがって、混合融液24中のホウ素は次第に減少する(ホウ素減少工程)。
なお、上記では、BN焼結体の反応容器12を用いるとしたが、反応容器12の構成はこれに限定されるものではない。好適な実施形態としては、反応容器12において、混合融液24と接する内壁の少なくとも一部において、窒化ホウ素を含む物質(例えば、BN焼結体)が用いられていればよく、反応容器12のその他の部分は、パイロリティックBN(P−BN)等の窒化物、アルミナ、YAG等の酸化物、SiC等の炭化物等を使用してもよい。
(2)反応容器12内に窒化ホウ素を含む部材を載置する方法
次に、ホウ素溶解工程として、反応容器12内に窒化ホウ素を含む部材を設置する方法を説明する。例えば、反応容器12内にBN焼結体の部材を載置する。なお、反応容器12の材質は(1)と同様に特に限定されるものではない。
この方法においては、反応容器12が上述の結晶成長温度まで昇温される過程において、反応容器12内に設置された部材から、混合融液24中にホウ素が少しずつ溶け込む(ホウ素溶解工程)。
ここで、(1)、(2)の方法において、混合融液24と接する窒化ホウ素を含む部材の表面には窒化ガリウム結晶の結晶核が生成しやすい。従って、窒化ホウ素の表面上(即ち、上述した内壁面または部材表面)に窒化ガリウムの結晶核が生成してその表面が次第に被覆されてくると、被覆された窒化ホウ素から混合融液24中に溶け込むホウ素の量は次第に減少することとなる(ホウ素減少工程)。さらに、窒化ガリウム結晶の成長にしたがって当該結晶の表面積が大きくなり、窒化ガリウム結晶中にホウ素が取り込まれる密度が小さくなる(ホウ素減少工程)。
なお、上記(1)、(2)では、ホウ素を含む物質を用いて混合融液24中にホウ素を溶解させるとしたが、混合融液24中にホウ素を溶解させる方法は上記に限定されず、混合融液24中にホウ素を添加するなど、その他の方法を用いるとしてもよい。また、混合融液24中のホウ素濃度を減少させる方法についてもその他の方法を用いるとしてもよく、本実施形態の結晶製造方法としては、少なくとも上述のホウ素溶解工程と、ホウ素取込工程と、ホウ素減少工程とが含まれていればよい。
次に、種結晶30の製造における、原料等の調整および結晶成長条件について説明する。
反応容器12に原料等を投入する作業は、アルゴンガス等の不活性ガス雰囲気とされたグローブボックスに、反応容器11を設置した状態で行う。
(1)の方法で種結晶30の結晶製造を行う場合には、(1)で上述した構成の反応容器12に、(1)で上述したホウ素を含む物質と、フラックスとして用いられる物質と、原料とを投入する。
(2)の方法で種結晶30の結晶製造を行う場合には、(2)で上述した構成の反応容器12に、(2)で上述した窒化ホウ素を含む部材と、フラックスとして用いられる物質と、原料とを投入する。
フラックスとして用いる物質としては、ナトリウム、あるいはナトリウム化合物(例えば、アジ化ナトリウム)が用いられるが、その他の例として、リチウムや、カリウム等のその他のアルカリ金属や、当該アルカリ金属の化合物を用いてもよい。また、バリウム、ストロンチウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属や、当該アルカリ土類金属の化合物を用いてもよい。なお、複数種類のアルカリ金属またはアルカリ土類金属を用いてもよい。
原料としてはガリウムを用いる。なお、その他の原料の例として、ホウ素、アルミニウム、インジウム等の13族金属や、これらの混合物を原料として反応容器12内に投入してもよい。
また、本実施形態では、反応容器12は、ホウ素を含む構成である場合を説明したが、ホウ素を含む構成に限られず、B、Al、O、Ti、Cu、Zn、Siの内の少なくとも1種を含む構成であってもよい。
このように原料等をセッティングした後に、ヒーター13に通電して、内部容器11およびその内部の反応容器12を結晶成長温度まで加熱する。すると、反応容器12内においてフラックスとして用いられる物質と、原料等が溶融し、混合融液24が形成される。
また、この混合融液24に上記分圧の窒素を接触させて混合融液24中に溶解させることにより、種結晶30の原料である窒素を混合融液24中に供給することができる。さらに、混合融液24中には上述したようにホウ素が溶解する(ホウ素溶解工程)。
そして、反応容器12の内壁において、混合融液24に融解している原料とホウ素とから種結晶30の結晶核が生成される。そして、この結晶核に混合融液24中の原料およびホウ素が供給されて結晶核が成長し、種結晶30が製造される。
そして、上述したように、種結晶30の結晶成長過程において結晶中には混合融液24中のホウ素が取り込まれて(ホウ素添加工程)、種結晶30の内側にはホウ素濃度の高い領域が生成されやすい状態となり、種結晶30はc軸方向に長尺化されやすい状態となる。また、混合融液24中のホウ素濃度の減少とともに結晶中に取り込まれるホウ素が減少する(ホウ素減少工程)と、該領域の外側にはホウ素濃度の低い領域が生成されやすい状態となり、種結晶30はc軸方向への成長が鈍ってm軸方向へ成長しやすい状態となる。
なお、内部容器11内の窒素分圧は、5MPa〜10MPaの範囲内とすることが好ましい。また、混合融液24の温度(結晶成長温度)は、800℃〜900℃の範囲内とすることが好ましい。
好適な実施形態としては、ガリウムとアルカリ金属(例えば、ナトリウム)との総モル数に対するアルカリ金属のモル数の比率を75%〜90%の範囲内とし、混合融液24の結晶成長温度を860℃〜900℃の範囲内とし、窒素分圧を5MPa〜8MPaの範囲内とすることが好ましい。
さらに好適な実施形態としては、ガリウムとアルカリ金属とのモル比を0.25:0.75とし、結晶成長温度を860℃〜870℃の範囲とし、窒素分圧を7MPa〜8MPaの範囲とすることがより好ましい。
上記工程を経ることによって種結晶30が得られる。
なお、本実施の形態の13族窒化物結晶の製造に用いる種結晶30の製造方法は、上記方法に限られない。しかし、より高品質な13族窒化物結晶を製造する観点から、種結晶30は、上記製造方法で製造した種結晶30を用いることが好ましい。
―13族窒化物結晶―
次に、本実施の形態の、13族窒化物結晶の製造方法を詳細に説明する。
図4は、本実施の形態の13族窒化物結晶の製造方法によって製造された13族窒化物結晶19を示す模式図である。
図4に示すように、13族窒化物結晶19は、種結晶30に窒化物結晶27を結晶成長させることで製造された結晶である。本実施の形態では、フラックス法を用いて、詳細を後述する抑制部材の設置された反応容器内で、種結晶30に窒化物結晶を結晶成長させる。
図5は、13族窒化物結晶19の製造装置2の一例を示す模式図である。なお、製造装置1と同じ部材や材料には同じ符号を付与し、詳細な説明を省略する場合がある。
製造装置2は、ステンレス製の外部耐圧容器50を備える。外部耐圧容器50内には内部容器51が設置され、内部容器51内にはさらに反応容器52が収容されており、二重構造を成している。内部容器51は外部耐圧容器50に対して着脱可能となっている。
反応容器52は、種結晶30と混合融液24とを保持して、種結晶30から窒化物結晶27の結晶成長を行うための容器である。
反応容器52の材質は特に限定するものではなく、BN焼結体、P−BN等の窒化物、アルミナ、YAG等の酸化物、SiC等の炭化物等を使用する。また、反応容器52の内壁面、すなわち、反応容器52が混合融液24と接する部位は、混合融液24と反応し難い材質で構成されていることが望ましい。窒化物結晶27を窒化ガリウム結晶とする場合には、窒化ガリウムが結晶成長できる材質の例としては、窒化ホウ素(BN)や、パイロリティックBN(P−BN)や、窒化アルミニウム等の窒化物や、アルミナ、イットリウム・アルミニウム・ガーネット(YAG)等の酸化物、ステンレス鋼(SUS)等が挙げられる。
外部耐圧容器50と内部容器51には、外部耐圧容器50の内部空間67と内部容器51の内部空間68に、13族窒化物結晶19の原料である窒素(N2)ガスおよび全圧調整用の希釈ガスを供給するガス供給管65、及びガス供給管66が接続されている。ガス供給管54は窒素供給管57とガス供給管60に分岐しており、それぞれバルブ55、及びバルブ58で分離することが可能となっている。
希釈ガスとしては、不活性ガスのアルゴン(Ar)ガスを用いることが望ましいが、これに限定されず、その他のヘリウム(He)等の不活性ガスを希釈ガスとして用いてもよい。
窒素ガスは、窒素ガスのガスボンベ等と接続された窒素供給管57から供給されて、圧力制御装置56で圧力を調整された後、バルブ55を介してガス供給管54に供給される。一方、全圧調整用のガス(例えば、アルゴンガス)は、全圧調整用のガスのガスボンベ等と接続された全圧調整用のガス供給管60から供給されて、圧力制御装置59で圧力を調整された後、バルブ58を介してガス供給管54に供給される。このようにして圧力を調整された窒素ガスと全圧調整用のガスは、ガス供給管54にそれぞれ供給されて混合される。
そして、窒素および希釈ガスの混合ガスは、ガス供給管54から、バルブ63、ガス供給管65、バルブ61、ガス供給管66を経て、外部耐圧容器50および内部容器51内に供給される。なお、内部容器51はバルブ61部分で製造装置2から取り外すことが可能となっている。また、ガス供給管65は、バルブ62を介して外部につながっている。
また、ガス供給管54には、圧力計64が設けられており、圧力計64によって外部耐圧容器50と内部容器51内の全圧をモニターしながら外部耐圧容器50および内部容器51内の圧力を調整できるようになっている。
本実施形態では、このように窒素ガスおよび希釈ガスの圧力をバルブ55及びバルブ58と、圧力制御装置56及び圧力制御装置59と、によって調整することにより、窒素分圧を調整することができる。また、外部耐圧容器50と内部容器51の全圧を調整できるので、内部容器51内の全圧を高くして、反応容器52内のフラックス(たとえばナトリウム)の蒸発を抑制することができる。即ち、窒化ガリウムの結晶成長条件に影響を与える窒素原料となる窒素分圧と、ナトリウム等のフラックスの蒸発抑制に影響を与える全圧を、別々に制御する事が可能となっている。なお、フラックスは、種結晶30の形成時に用いたフラックスと同様である。
また、図5に示すように、外部耐圧容器50内の内部容器51の外周にはヒーター53が配置されている。ヒーター53は、内部容器51および反応容器52を加熱することで、混合融液24の温度を調整する。
反応容器52に、種結晶30やGaやNaと、Cなどの添加剤やGeなどのドーパント等の原料などを投入する作業は、内部容器51を例えばアルゴンガスのような不活性ガス雰囲気のグローブボックスに入れて行う。この作業は内部容器51に反応容器52を入れた状態で行ってもよい。
反応容器52には、種結晶30を設置する。また、反応容器52には、少なくとも13族金属を含む物質(例えば、ガリウム)と、上述したフラックスとして用いられる物質を投入する。本実施形態では、フラックスとして、アルカリ金属であるNaを用いる場合を説明するが、Naに限られない。
本実施の形態では、原料である13族金属を含む物質として、13族金属のガリウムを用いる場合を説明する。なお、13族金属として、ホウ素、アルミニウム、インジウム等の他の13族金属を用いてもよいし、13族金属から選ばれる複数の金属の混合物を用いてもよい。
13族金属とアルカリ金属とのモル比は、特に限定されるものではないが、13族金属とアルカリ金属との総モル数に対するアルカリ金属のモル比を、40%〜95%とすることが好ましい。
このように原料等を設置した後に、ヒーター53に通電して、内部容器51およびその内部の反応容器52を結晶成長温度まで加熱する。すると、反応容器52内において原料の13族金属、アルカリ金属、その他の添加物等が溶融し、混合融液24が形成される。また、この混合融液24に上記分圧の窒素を接触させて混合融液24中に溶解させることにより、13族窒化物結晶19の原料である窒素を混合融液24中に供給する(溶解工程)。
そして、混合融液24中に溶解している原料が種結晶30の外周表面に供給されて、当該原料によって種結晶30の外周表面から窒化物結晶27が結晶成長する(結晶成長工程)。
このように、種結晶30の外周面から窒化物結晶27が結晶成長することにより、種結晶30を含む13族窒化物結晶19を製造することができる。
ここで、本実施の形態では、反応容器52内には、抑制部材32が設置されている。
抑制部材32は、種結晶30の結晶成長により、種結晶30におけるm面の+c軸方向端部が−c軸方向に推移またはm面の−c軸方向端部が+c軸方向に推移することを抑制する部材である。本実施の形態では、抑制部材32の設置位置や、抑制部材32の材質等を調整することで、該端部の±c軸方向への推移を抑制する。
図6は、種結晶30と抑制部材32の位置関係の説明図である。
種結晶30を混合融液24内に設置し、混合融液24に窒素を溶解させることで種結晶30から窒化物結晶27を成長させる。なお、図6では、種結晶30は、針状結晶であることから、種結晶30におけるm面の+c軸方向端部(図6中、境界L参照)は、種結晶30における{10−11}面とm面との境界Lに相当する。また、図6に示す例では、種結晶30は、+c軸方向が上向きに(反重力方向)なるように設置した場合を示す。
この場合、図6に示すように、種結晶30から結晶成長した窒化物結晶27における{10−11}面とm面との境界Lは、結晶成長に伴って徐々に−c軸方向へ推移する(図6中、境界L1〜境界L4参照)。
すなわち、種結晶30からの窒化物結晶27の結晶成長に伴い、種結晶30(すなわち種結晶30から結晶成長した窒化物結晶27)における{10−11}面の面積が増加し、{10−11}面とm面との境界Lは、境界L1〜境界L4に示すように、−c軸方向に推移する。
同様に、種結晶30について、−c軸方向が上向き(反重力方向)になるように設置すると、境界Lは、窒化物結晶27の結晶成長に伴って徐々に+c軸方向へ推移する。
そこで、本実施の形態では、反応容器52内に抑制部材32を設置した状態で、13族窒化物結晶19の製造を行う。
抑制部材32は、具体的には、種結晶30について、+c軸方向が上向き(反重力方向)になるように設置した場合、結晶成長を開始する前の種結晶30におけるm面の+c軸方向端部より−c軸方向側で、且つ該端部の−c軸方向の推移を停止させる位置に予め設置する。−c軸方向の推移を停止させる位置とは、結晶成長を開始する前の種結晶30におけるm面の+c軸方向端部より−c軸方向側で、該種結晶30の結晶成長により該種結晶30から結晶成長した窒化物結晶27が接触する位置である。
また、種結晶30が針状である場合には、−c軸方向の推移を停止させる位置とは、結晶成長を開始する前の種結晶30におけるm面と{10−11}面との境界より−c軸方向側で、該種結晶30の結晶成長により該種結晶30から結晶成長した窒化物結晶27が接触する位置である。
また、抑制部材32は、種結晶30について、−c軸方向が上向き(反重力方向)になるように設置した場合、結晶成長を開始する前の種結晶30におけるm面の−c軸方向端部より+c軸方向側で、且つ該端部の+c軸方向の推移を停止させる位置に予め設置する。+c軸方向の推移を停止させる位置とは、結晶成長を開始する前の種結晶30におけるm面の−c軸方向端部より+c軸方向側で、該種結晶30の結晶成長により該種結晶30から結晶成長した窒化物結晶27が接触する位置である。
図7は、種結晶30が針状であり、且つ+c軸方向が上向き(反重力方向)となるように設置されている場合において、該種結晶30から窒化物結晶27が結晶成長したときの状態の一例を示す模式図である。抑制部材32が、境界の−c軸方向の推移を停止させる位置に設置されていると、図7に示すように、種結晶30への窒化物結晶27の結晶成長に伴い、{10−11}面とm面との境界Lが、境界L1、境界L2、境界L3というように−c軸方向に推移する。そして、この境界Lの−c軸方向への推移は、種結晶30から結晶成長した窒化物結晶27が抑制部材32に接触した位置で停止する。
これは、種結晶30から結晶成長した窒化物結晶27(すなわち13族窒化物結晶19)における{10−11}面の−c軸方向側端部が抑制部材32に接触することで、この{10−11}面からの結晶成長による境界Lの−c軸方向側への推移が抑制されるためと考えられる。
このため、抑制部材32に外周面が接触した後にさらに結晶成長が進行すると、図7に示すように、m軸方向への結晶成長が優先して進行することとなる。そして、境界Lの−c軸方向への移動が抑制された状態で、m面に垂直なm軸方向への結晶成長が進行することで、c面の大型化(肥大化)された13族窒化物結晶19を製造することができる。
なお、抑制部材32の材質は、反応容器52内で表面に結晶成長の生じない材料を用いる。例えば、抑制部材32には、SiO2を用いる。なお、抑制部材32の構成材料は、SiO2に限られず、混合融液24や原料に応じて適宜調整すればよい。
次に、抑制部材32の形状を説明する。
抑制部材32は、種結晶30の結晶成長によりm面の+c軸方向端部が−c軸方向に推移またはm面の−c軸方向端部が+c軸方向に推移することを抑制する位置に設けられていればよく、その形状は特に限定されない。例えば、抑制部材32の形状としては、以下の形状が挙げられる。
図8〜図11は、抑制部材32の設置された反応容器52を示す模式図である。なお各抑制部材32は、図示を省略する支持部材によって、上記機能を満たす位置に支持されていればよく、その支持方法は限定されない。
図8に示す例では、抑制部材32Aは、貫通孔33Aの設けられた板状の部材である。貫通孔33Aの大きさは、結晶成長前の種結晶30のm軸方向断面(c面)の最大径を超える直径であり、且つ、結晶成長した種結晶30(すなわち13族窒化物結晶19の外周)が接触しうる大きさに予め調整されている。
また、抑制部材32Aは、図8に示すように、種結晶30における、{10−11}面とm面との境界の位置の−c軸方向への推移を停止させる位置に予め設置する。
この設置位置は、例えば、抑制部材32を支持する支持部材(図示省略)の位置を調整することで実現すればよい。また、境界の−c軸方向への推移を停止させる所望の位置を予め求め、該位置に抑制部材32の位置が設置されるように予め調整すればよい。
種結晶30は、支持部材34によって、反応容器52の底部に−c軸方向端部を支持されている。図8に示す例では、支持部材34は、種結晶30のc軸方向が重力方向と略一致するように、該種結晶30を支持する。
この場合、支持部材34は、板状部材に種結晶30のc面断面の形状に沿った形状であり該種結晶30を嵌め込む事の可能な大きさの孔部を設け、この孔部に種結晶30の−c軸方向端部を差し込むことで、種結晶30を支持すればよい。
なお、種結晶30は、c軸方向が重量方向に略一致するように支持された形態に限られない。例えば、図9に示すように、支持部材34Aが、種結晶30を抑制部材32Aの貫通孔33Aの内壁に立て掛けるように種結晶30を支持してもよい。
この場合、支持部材34Aは、板状部材に種結晶30のc面断面の最大径より大きい径の孔部を設け、この孔部に種結晶30の−c軸方向端部を差し込むことで、種結晶30を支持すればよい。
なお、反応容器52内には、1本の種結晶30を設置する形態に限られず、複数の種結晶30を設置して同時に結晶成長させてもよい。
図10は、複数の種結晶30を反応容器52内に設置して結晶成長させる形態を示す模式図である。図10に示すように、複数の種結晶30を反応容器52内に設置する場合には、各種結晶30を支持する支持部材34Bと、各種結晶30に対応する貫通孔の設けられた抑制部材32Cと、を反応容器52(図10では図示省略)内に設置すればよい。
また、抑制部材32の形状は、図8及び図9に示すような板状に限られない。例えば、抑制部材32は、円環状であってもよいし、種結晶30における{10−11}面の少なくとも一部を覆う形状であってもよい。
図11は、抑制部材32の他の形態の一例を示す模式図である。
図11に示すように、例えば、反応容器52内の底部に種結晶30を支持する支持部材34を設置する。そして、この支持部材34によって、−c軸方向端部を支持された種結晶30について、種結晶30のm面の少なくとも一部を覆う形状の抑制部材32Dを設ける。
種結晶30における、抑制部材32Dによって覆われた領域は、結晶成長が抑制される。このため、種結晶30のm面の少なくとも一部を覆う形状の抑制部材32Dを反応容器52内に設置した状態で結晶成長させることで、m面の+c軸方向端部が−c軸方向に推移またはm面の−c軸方向端部が+c軸方向に推移することを抑制することができる。
なお、製造装置1を用いて製造した13族窒化物結晶19を、再度、種結晶30として用いて製造装置1の反応容器52内に設置し、13族窒化物結晶19を更に製造してもよい。
以上説明したように、本実施の形態の13族窒化物結晶の製造方法では、混合融液24と、混合融液24中に設置されると共にm面を有する六方晶構造の種結晶30と、抑制部材32と、を保持した反応容器52における混合融液24中に、窒素を溶解させ、種結晶30に窒化物結晶27を結晶成長させることで13族窒化物結晶19を製造する。
このため、種結晶30におけるm面の+c軸方向端部が−c軸方向に推移またはm面の−c軸方向端部が+c軸方向に推移することが、抑制部材32によって抑制される。
従って、c面の大型化された13族窒化物結晶を製造することができる。
なお、本実施の形態の13族窒化物結晶の製造方法によって製造された13族窒化物結晶19は、c軸に対して平行な断面における基底面転位の転位密度が、該断面におけるc面の貫通転位の転位密度より大きいものとなる。
c面の貫通転位とは、c面(c軸に垂直な面)に対して垂直な方向の転位である。本実施形態の13族窒化物結晶19における、c軸に対して平行な断面における基底面転位の転位密度は、該断面におけるc面の貫通転位の転位密度の100倍以上であることが好ましく、1000倍以上であることが更に好ましい。
基底面転位(BPD:Basal Plane Dislocation)とは、c面(c軸に垂直な面)に対して平行な方向の転位である。
このため、本実施形態では、上記効果に加えて、半導体デバイスの製造に適した13族窒化物結晶を提供することができる。また、本実施形態における13族窒化物結晶を用いて作製した13族窒化物結晶基板は、半導体デバイスの製造に適した13族窒化物結晶基板である。半導体デバイスの製造に適する、とは、具体的には、半導体デバイスの製造時に用いる針状種結晶(結晶成長の基とする基板)として適することを示す。
なお、半導体デバイスには、半導体レーザーや発光ダイオード等が挙げられるが、これらに限られない。
なお、本実施形態の13族窒化物結晶19における、c軸に対して平行な断面における、基底面転位の転位密度及びc面の貫通転位の転位密度は、下記方法によって測定する。
例えば、測定対象面の最表面をエッチングする事等により、エッチピットを出現させる。そして、エッチング後の測定対象面の組織写真を、電子顕微鏡を用いて撮影し、得られた写真から、エッチピット密度を算出する方法が挙げられる。
また、転位密度の測定方法としては、測定対象面を、カソードルミネッセンス(CL:Cathodoluminescence(電子線蛍光観察))で測定する方法が挙げられる。
この測定対象面には、本実施形態では、c軸に対して平行な断面として、m面{10−10}を用いる。
図12は、13族窒化物結晶19における側面(m面{10−10})を転位の測定対象面として用いた場合を示す模式図である。
図12に示すように、13族窒化物結晶19のm面{10−10}について、上記エッチングを行った後の電子顕微鏡による観察、またはカソードルミネッセンスによって、複数の転位が観察される。m面{10−10}において観察されるこれらの転位の内、点状の転位を基底面転位Pとして数えることで、基底面転位Pの転位密度を算出する。なお、c軸に対して垂直方向の線状の転位も基底面転位Pとして数える。一方、m面{10−10}において観察される転位の内、c軸方向に伸びる線状の転位は貫通転位Qとして捉えることができる。
なお、点状の転位とは、本実施形態では、観察される点状の転位の短径に対する、該点状の転位の長径の比が、1以上1.5以下のものを「点状」の転位として数える。このため、真円に限られず、楕円形状のものについても点状の転位として数える。更に具体的には、本実施形態では、観察される断面形状において長径が1μm以下の転位を、点状の転位として数える。
一方、線状の転位とは、本実施形態では、観察される線状の転位の短径に対する、該観察される転位の長径の比が、4以上のものを「線状」の転位として数える。更に具体的には、本実施形態では、観察される断面形状において長径が4μmを超える長さの転位を、線状の転位として数える。
図13は、c軸に対して平行な断面として、c軸に対して平行であり且つ種結晶30を通る断面を、転位の測定対象面として用いた場合の模式図である。
図13に示すように、13族窒化物結晶19のm面について、上記エッチングを行った後の電子顕微鏡による観察、またはカソードルミネッセンスによって、複数の転位が観察される。図13のm面{10−10}において観察されるこれらの転位の内、a軸と平行方向に伸びる線状の転位は基底面転位Pとして捉えることができる。一方、c軸と平行方向に伸びる線状の転位は貫通転位Qとして捉えることができる(図13では図示省略)。なお、点状の転位及び線状の転位の定義は、上記と同様である。
以下に本発明をさらに詳細に説明するために実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、符号は図6および図7を参照して説明した製造装置1、製造装置2の構成と対応している。
―針状種結晶の製造―
まず、下記の製造方法により、13族窒化物結晶の製造に用いる針状種結晶を製造した。
<針状種結晶の製造例>
図3に示した製造装置1を使用して、針状種結晶を製造した。
BN焼結体からなる内径92mmの反応容器12に、公称純度99.99999%のガリウムと公称純度99.95%のナトリウムとをモル比0.25:0.75として投入した。
グローブボックス内で、高純度のArガス雰囲気下、反応容器12を内部容器11内に設置し、バルブ31を閉じて反応容器12内部を外部雰囲気と遮断して、Arガスが充填された状態で内部容器11を密封した。
その後、内部容器11をグローブボックスから出して、製造装置1に組み込んだ。すなわち、内部容器11をヒーター13に対して所定の位置に設置して、バルブ31部分で窒素ガスとアルゴンガスとのガス供給管14に接続した。
次に、内部容器11からアルゴンガスをパージした後、窒素供給管17から窒素ガスを入れ、圧力制御装置16で圧力を調整してバルブ15を開け、内部容器11内の窒素圧力を3.2MPaとした。その後、バルブ15を閉じ、圧力制御装置16を8MPaに設定した。次いで、ヒーター13に通電し、反応容器12を結晶成長温度まで昇温した。本製造例1では、結晶成長温度は870℃とした。
結晶成長温度では反応容器12内のガリウムとナトリウムは融解し、混合融液24を形成する。なお、混合融液24の温度は反応容器12の温度と同温になる。また、この温度まで昇温すると本製造例1の製造装置1では、内部容器11内の気体が熱せられ全圧は8MPaとなる。
次に、バルブ15を開け、窒素ガス圧力を8MPaとして、内部容器11内部と窒素供給管17内部とを圧力平衡状態とした。
この状態で反応容器12を500時間保持して窒化ガリウムの結晶成長を行った後、ヒーター13を制御して、内部容器11を室温(20℃程度)まで降温した。内部容器11内のガスの圧力を下げた後、内部容器11を開けたところ、反応容器12内には、窒化ガリウム結晶が多数、結晶成長していた。結晶成長した窒化ガリウム結晶である種結晶30は無色透明であり、結晶径dは100〜1500μm程度であり、c軸方向の長さLは10mm〜40mm程度であり、長さLとc面の最大径dとの比L/dは20〜300程度であった。結晶成長した窒化ガリウム結晶である種結晶30は、c軸に概ね平行に成長しており、m面と、{10−11}面とを有する六方晶構造の柱状であった。
―13族窒化物結晶の製造―
次に、13族窒化物結晶を製造した。
(実施例1)
本実施例では、図5に示す製造装置2により、種結晶30から窒化物結晶27の結晶成長を行い、13族窒化物結晶19を製造した。
種結晶30としては、上記針状種結晶の製造例1で製造した針状の種結晶30を用いた。この種結晶30の大きさは、c面の最大径が1mm、c軸方向の長さ約40mmであった。
まず、内部容器51をバルブ61部分で製造装置2から分離し、Ar雰囲気のグローブボックスに入れた。次いで、アルミナからなる内径140mm、深さ100mmの反応容器52に、種結晶30を設置した。なお、種結晶30は、反応容器52内の底に設置した深さ4mmの穴部の設けられた支持部材34を設置し、この支持部材34の穴部に差し込んで保持した。
次に、抑制部材32として、材料アルミナで構成された板状部材を用意した。この抑制部材32としての板状部材は、厚み5mm、縦70mm、横70mmの板状であり、中央部に直径1.2mmの貫通孔が設けられている。
そして、この抑制部材32を、貫通孔の中央に種結晶30が位置するように、+c軸方向が上向きになるように設置した。また、この抑制部材32の高さ方向の設置位置は、種結晶30におけるm面と{10−11}面との境界位置から、部材底辺が−c軸方向に1mmずれた位置となるように調整した。そして、この位置で固定されるように、抑制部材32を支持部材によって反応容器52に固定した。
次に、フラックスとして、ナトリウム(Na)を加熱して液体にして反応容器52内に入れた。ナトリウムが固化した後、ガリウムを入れた。本実施例では、ガリウムとナトリウムとのモル比を0.25:0.75とした。
その後、グローブボックス内で、高純度のArガス雰囲気下、反応容器52を内部容器51内に設置した。そして、バルブ61を閉じてArガスが充填された内部容器51を密閉し、反応容器52内部を外部雰囲気と遮断した。次に、内部容器51をグローブボックスから出して、製造装置2に組み込んだ。すなわち、内部容器51をヒーター53に対して所定の位置に設置し、バルブ61部分でガス供給管54に接続した。
次に、内部容器51からアルゴンガスをパージした後、窒素供給管57から窒素ガスを入れ、圧力制御装置56で圧力を調整してバルブ55を開け、内部容器51内の全圧を1.2MPaにした。その後、バルブ55を閉じ、圧力制御装置56を3.0MPaに設定した。
次に、ヒーター53に通電し、反応容器52を結晶成長温度まで昇温した。結晶成長温度は870℃とした。そして、上記針状種結晶の製造例1における製造時と同様に、バルブ55を開け、窒素ガス圧力を3.0MPaとし、この状態で反応容器52を1500時間保持して窒化ガリウム結晶を成長させた。
その結果、反応容器52内には、種結晶30から結晶成長が生じ、c軸と垂直方向に結晶径が増大し、結晶径のより大きな13族窒化物結晶19(単結晶)が成長していた。
また、13族窒化物結晶19における{10−11}面とm面との境界は、抑制部材32の設置された位置で止まっていた。そして、抑制部材32の設置位置より−c軸方向側の領域は、m面のみが形成されており、{10−11}面は形成されていなかった。
製造した13族窒化物結晶19のc面の最大径は、67mmであった。また、製造した13族窒化物結晶19について、m面を横切る複数のc面(c軸方向に1.0mm置きに切断したもの)の最大径を測定し、平均値を算出したところ、64mmであった。
(実施例2)
実施例1において用いた抑制部材32に代えて、下記抑制部材32を下記の設置位置に設置した以外は、実施例1と同じ条件で13族窒化物結晶19を製造した。
次に、抑制部材32として、材料アルミナで構成された板状部材を用意した。この抑制部材32としての板状部材は、厚み5mm、縦70mm、横70mmの板状であり、中央部に直径1.2mmの貫通孔が設けられている。そして、この抑制部材32を、貫通孔の中央に種結晶30が位置するように設置した。また、この抑制部材32の高さ方向の設置位置は、種結晶30におけるm面と{10−11}面との境界位置から部材底辺が−c軸方向に15mmずれた位置となるように調整した。そして、この位置で固定されるように、抑制部材32を支持部材によって反応容器52に固定した。
抑制部材32以外については実施例1と同じ条件で13族窒化物結晶19を製造した結果、反応容器52内には、種結晶30から結晶成長が生じ、c軸と垂直方向に結晶径が増大し、結晶径のより大きな13族窒化物結晶19(単結晶)が成長していた。
また、13族窒化物結晶19における{10−11}面とm面との境界は、抑制部材32の設置された位置で止まっていた。そして、抑制部材32の設置位置より−c軸方向側の領域は、m面のみが形成されており、{10−11}面は形成されていなかった。
製造した13族窒化物結晶19のc面の最大径は、66mmであった。また、製造した13族窒化物結晶19について、m面を横切る複数のc面(c軸方向に1.0mm置きに切断したもの)の最大径を測定し、平均値を算出したところ、64mmであった。
(比較例1)
反応容器52内に抑制部材32を設置しなかった以外は、実施例1と同じ条件で13族窒化物結晶を製造した。
比較例1で製造した13族窒化物結晶について、{10−11}面とm面との境界位置を調べたところ、該境界は、実施例1で製造した13族窒化物結晶19に比べて−c軸方向へ33mm推移していた。
また、本比較例で製造した13族窒化物結晶のc面の最大径は、65mmであった。また、製造した13族窒化物結晶について、m面を横切る複数のc面(c軸方向に1.0mm置きに切断したもの)の最大径を測定し、平均値を算出したところ、36.2mmであった。このように、比較例1で製造した13族窒化物結晶のc面の径は、実施例1で製造した13族窒化物結晶19に比べて小さいものであった。
このように、実施例で製造した13族窒化物結晶19は、比較例で製造した13族窒化物結晶に比べてc面の大型化が実現されていることが確認できた。