JP6059998B2 - 点火装置 - Google Patents
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Description
一般に、希薄燃焼機関や、高過給気混合燃焼機関は難着火性であるため、より着火性に優れた点火装置が望まれている。
このような難着火性機関においても優れた着火性が期待できる点火装置として、特許文献1には、同軸導波管構造体の内側導体の一方の端部を内燃機関の燃焼室内に突出させ、他方の端部に高周波の電気的エネルギを同軸的に誘導式及び/又は容量式に結合される供給線路を設けた点火装置が開示されている。
また、特許文献1にあるような従来の点火装置では、供給線路結合部のウエブ構造が複雑で製造コストの増大を招くおそれがある。さらに、従来の点火装置では、電費が悪く、燃費向上に貢献できないおそれもある。
一端に同軸コネクタ(23)を設けた同軸ケーブル(22)を介して上記増幅器(21)と上記点火部(10、10a、10b)とを接続するに際して、
上記同軸コネクタ(23)内で上記同軸ケーブル(22)の内側導体に接続する入力アンテナ(24、24a)と、上記中心電極放電部(13)の基端側に延設した内側導体アンテナ部(111、111a)とを、具備し、
所定の比誘電率(εr)を有する耐熱性誘電材料からなる入力共振部誘電体(110、110a、110b)を設けて、上記入力アンテナ(24、24a)と上記内側導体アンテナ部(111、111a)とを上記入力共振部誘電体(110、110a、110b)内に向かって所定の長さだけ突出せしめると共に、上記入力アンテナ(24、24a)と上記内側導体アンテナ部(111、111a)とを、径方向、又は/及び、軸方向に所定のアンテナ間距離(LH、LV)だけ離隔して配設せしめた入力共振部(11、11a)を設けたことを特徴とする。
これにより、前記入力共振部(11、11a、11b)内部に蓄積される高周波電力が一定のままでも、上記中心導体放電部(13)の周囲に発生する高周波電界の最大電界強度(Emax)を、上記誘電体(110、110a、110b)の比誘電率εrの平方根倍に上昇させて、高周波放電を起こり易くして、前記増幅部(21)への負荷を低減しつつ、構成が簡易で、安定した着火を行う点火装置が実現できる。
点火装置1は、放電部13の先端において、高電界を作用させて高周波プラズマを発生して内燃機関3の燃焼室32内に導入した混合気を点火する点火装置であり、以下の特徴を有するものである。
高周波電源2は、所定の周波数fを有する高周波を発振する高周波発振部20と、高周波発振部20から発振された高周波電力を増幅する高周波増幅部21とによって構成されている。
本実施形態における入力共振部11は、一端に同軸コネクタ23を設けた同軸ケーブル22を介して増幅器21と点火部10とが接続されている。
同軸ケーブル22の内側導体には、同軸コネクタ23内で入力アンテナ24が接続されている。
本実施形態における入力共振部誘電体110は、点火部10の基端側に設けられ略円筒状に形成されている。
入力アンテナ24と内側導体アンテナ部111とを入力共振部誘電体110内に向かって所定の長さだけ突出せしめると共に、入力共振部誘電体110の中心に内側導体アンテナ部111を配設し、入力アンテナ24の中心軸を上記内側導体アンテナ部111に対して径方向に所定のアンテナ間距離LHだけずらした位置に配設せしめている。
なお、λは、高周波電源2から点火部10に入力される高周波の誘電体110内における波長を意味する。以下の説明においても同様である。
誘電体110は、例えば、Al2O3、SiO2、3Al2O3・2SiO2、2MgO・2Al2O3・5SiO2、TiO2、ZrO2、MgTiO3−CaTiO3、Ba(Sn・Mg・Ta)O3、B(Zn・Ta)O3、Ba(Zr・Zn・Ta)O3、(Zr・Sr・Ti)O4、Ba2Ti9O20、(Pb・Ba)Nd2Ti5O14、(Pb、Bi、Ba)Nd−TiO3、耐熱性結晶化ガラス、透光性アルミナ、PLZT(PbZrO3・PbTiO2・La2O3)、ルビー、サファイア、YAG、Ba(Mg、Ta)O3、Ba{Sn、Zr(Mg、Ta)}O3系ペロブスカイト型酸化物いずれかからの公知の耐熱性誘電材料を適宜用いることができる。
入力アンテナ24は、誘電体110を覆う筐体112の内側表面から、入力アンテナ24の先端部241までの長さを入力アンテナ突出長さLINとすると、LINは、λ/4に等しく、誘電体110の内側に向かって、λ/4だけ突出するように設けられている。
さらに、入力アンテナ24の先端部241と内側導体アンテナ部111の先端部との間の軸方向の距離はλ/4に設定されている。
なお、比誘電率εrの測定は周波数依存性があるため、入力条件と同じ周波数で測定した値を用いる。
式2は、誘電体110の直径D110と、水平方向のアンテナ間距離LHとの関係において、入力共振部11内におけるマイクロ波電界強度分布が、入力アンテナ24の位置で極小(Min)となり、内側導体アンテナ部111の位置で極大(Max)となる関係を零次ベッセル関数J0=0の解を求めることによって算出したものである。
また、入力アンテナ24から電磁波が入力されると、図1Cに示すようなTM020モードに入力共振部誘電体110が励振され、内側導体アンテナ部111の周辺の電界強度が最も高くなる。
なお、径方向アンテナ間距離LHは、±1ミリ程度の誤差を許容するものである。
このとき、径方向のアンテナ間距離LHを数2の式によって求めた2.33cmとすることによって、内側導体アンテナ部111周辺の電界強度が最も強くなる。
なお、比誘電率は入力周波数に依存して変化するため、各周波数における実測値を用いて、共振器直径及びアンテナ間距離を算出しており、図1D、1E及び表1に示す比誘電率εrは誘電体材料の違いを示す代表値である。
同軸共振部12は、中心導体121の先端で、誘電体120から燃焼室32内に突出する中心導体放電部13の周辺の電界強度が最も高くなるように、中心導体121に導入された高周波の定在波を形成し、中心導体放電部13の周辺の気体をプラズマ化して燃焼室32内の混合気の着火が可能となる。
なお、同軸共振部誘電体120の外径は、シリンダヘッド30のプラグホール31内に搭載する関係上φ30mm以下とするのが望ましい。
さらに、一般に同軸構造体の特性インピーダンスZ0は、下記式4で表されることが知られている。
外部導体122の先端の一部が内燃機関3の燃焼室32内に突出して、略環状のシュラウド部126を形成している。
なお、同軸ケーブル22、同軸コネクタ23は、公知のものを適宜利用することができ、いずれも特性インピーダンスZ0が、例えば、50Ωとなるようにインピーダンス整合が図られている。
高周波発生器20は、例えば、マグネトロンや直流電源から高周波交流を発生させる半導体発振器等の公知の高周波発生器を用いることができる。
これによって入力共振部11内部に蓄積される高周波電力は一定であっても電界強度を強くして放電の開始と維持が容易となり、少ない電力投入量でも高圧力場での放電形成が容易となり、着火性に優れた内燃機関の点火装置が実現できる。
また、本発明は、入力共振部11において、コネクタ23に設けた入力アンテナ24と内側導体アンテナ部111とを誘電体110内に対向させることによって、入力共振部11のサイズを誘電体110の比誘電率εrの平方根分の1に縮小して、電界強度を相対的に強化して、速やかに放電を引き起こして、早期に安定した着火の実現を図ることを必須の要件とする限りにおいて、適宜変更可能であり、同軸共振部12に代えて同軸ケーブルを介装して燃焼室32に接続するようにしても良い。
図2Aは、入力共振部11に誘電体110として比誘電率εr=1.00059の空気を用いた場合を比較例1とし、誘電体110として、比誘電率εrが3.4のクオーツを用いた場合を実施例1とし、比誘電率εr9.4のアルミナを用いた場合を実施例2として、共振部11の直径D110及び、中心導体13の周辺の最大電界強度Emax(V/m)を算出した結果を示す。
図2Bは、実施例1における中心導体先端部13周辺の電界強度分布を、図2Cは、実施例2の電界強度分布をシミュレーションした結果である。
同軸共振部12の特性インピーダンスを50Ωとすることにより、同軸ケーブル22、同軸コネクタ23等に市販品を用いた場合のインピーダンス整合が容易となる。
その結果、車載等のエンジンに用いる場合には、搭載性を考慮して、比誘電率εrの範囲を1〜100で適宜選択するのが望ましい。
このような場合、比誘電率が100を超えると、誘電体120が小さくなり、製造が困難となるおそれがあるためである。
但し、内燃機関の大きさに応じて、誘電体120の外径φD120は適宜選択可能であり、本発明において、必ずしも誘電体120の外径をφ30mm以下に限定する必要はなく、比誘電率εrを100以下に限定する必要もない。
上記実施形態においては、入力共振部11において、入力アンテナ24の軸芯と中心導体共振アンテナ部111の軸芯とが径方向に所定のアンテナ間距離LHだけずらして配設した例を示したが、本実施形態では、入力共振部11aにおいて、入力アンテナ24aと中心導体入力共振部111とが同軸上に配設され、軸方向に所定のアンテナ間距離LVだけ離した状態で設けられている点が相違する。
例えば、高周波電源の周波数fを、2.5GHzとしたときに、比誘電率εrが9.4のアルミナを誘電体110aとして用いることにより、外径φD110aをφ3.0cmに縮小することができ、軸方向のアンテナ間距離LVを、λ/4、即ち、3.0cmに設定することにより、誘電体110a内における電界強度分布が最大となる位置に中心導体11aを配設することができる。
なお、本実施形態においては、入力共振部11aが同軸構造となっているので、同軸共振部12と一体に設けても良い。
上記実施形態においては、所定の周波数fを有する高周波電力を給電するに際して、入力共振部11、11aに、所定の比誘電率εrの入力共振部誘電体110、110aを設けて、誘電体110、110a内に突出せしめた同軸コネクタ23に接続した入力アンテナ24、24aと、内側導体アンテナ部111、111aと、を所定のアンテナ間距離LH、LVだけ離隔して配設することにより、共振部11、11aのサイズを、誘電体として空気を用いた場合の√εr分の1に縮小し、電界強度を√εr倍にする構成について説明したが、本実施形態においては、上記実施形態と同様の構成を基本としつつ、入力共振部誘電体110b、及び、同軸共振部誘電体120bとして、透光性を有する誘電材料を用いる共に、増幅器21と同軸コネクタ23との間に介装した増幅器21から供給される高周波電力を分配する電力分配器40と、分配器40によって分配された電力を紫外線に変換する紫外線発生器41と、紫外線発生器41で発生した紫外線を入力共振部11bに伝送する紫外線光伝送手段42(光ファイバ)と、紫外線光伝送手段42を入力共振部11bに接続する光コネクタ43と、を具備する点が相違する。
本実施形態においては、高周波発振器20から発振された高周波電力は、増幅器21によって増幅された後、分配器40を介して、そのエネルギの一部を紫外線発光装置41に分配し、紫外線発光装置41から光ファイバ42及び光コネクタ43を介して紫外線導入孔113からプラグ部10b内に紫外線が照射される。
その結果、紫外線による初期電子効果により、高圧力場での高周波プラズマ放電が起こり易くすることができることが確認された。
放電の安定化を図るためには、きっかけとなる初期電子の存在が有効で、一定以上の紫外線を照射することにより、安定して初期電子を発生させることができるためと推察される。
本実施形態における点火装置1aを用い、紫外線発光装置41として水銀ランプを用いて、水銀ランプへの供給エネルギを1Wから10Wに変化させたときを実施例1、2、3とし水銀ランプからの紫外線照射を行わない状態を比較例として、放電形成に必要な高周波電力を計測した。なお、測定は常温、大気圧下で行った。
また、これにより、放電形成のために必要な電界を23%低減できることが実験的に確認された。
さらに、図6の実施例2、3に示すように、1Wから10Wまで紫外線放射用の電力を増加しても、放電形成のための高周波電力の削減効果は発揮されず、1W程度で効果が飽和し、必要以上に紫外線放射に電力を分配しても、却ってバラツキが大きくなり、着火安定性が損なわれることが判明した。
例えば、上記第1、第3の実施形態においては、入力共振部誘電体110の厚さをλ/2の厚さに形成し、入力アンテナ24の先端と内側導体アンテナ部111の先端と同一平面上に位置し、径方向にのみ位置すれさせた例を示したが、入力共振部誘電体110の厚さをλ/2より厚くし、入力アンテナ24の先端と内側導体アンテナ部111の先端とが軸方向にも離隔するように構成してもよい。
また、紫外線を導入する位置は必ずしも点火部10の中心とする必要はなく、径方向にずらした位置に設けても良い。
10、10a、10b 放電部(点火栓)
11、11a、11b 入力共振部
110、110a、110b 入力共振部誘電体
111、111a、111b 内側導体アンテナ部
112,112a、112b 入力共振部外部導体(ハウジング部)
12、12a、12b 同軸共振部
120、120a、120b 同軸共振部誘電体
121 中心導体
122 同軸共振管
123、124 ハウジング固定部
125 共振管露出部
13 放電部
2 高周波電源
20 高周波発振部
21 増幅部
22 同軸ケーブル
23 同軸コネクタ
230 雄コネクタ
231 雌コネクタ
24、24a 入力アンテナ
241、241a 入力アンテナ突出部
30 シリンダブロック
31 プラグホール
32 燃焼室
D110 入力共振部誘電体外径
D120 同軸共振部誘電体外径
D121 中心導体外径
LIN、LOUT1、LOUT2 アンテナ突出長さ(λ/4)
LH 径方向アンテナ間距離
LV 軸方向アンテナ間距離(λ/4)
Claims (6)
- 内燃機関(3)に設けられ、
少なくとも、
所定の周波数(f)を有する高周波を発振する高周波発振部(20)と、
該発振部(20)で発生した高周波電力を増幅する高周波増幅部(21)と、
該増幅部(21)で増幅された高周波を放射する内側導体放電部(13)と該放電部(13)と同心に配設した外側導体(122)とからなる同軸共振部(12、12b)を含む点火部(10)と、を具備し、
上記放電部(13)の先端において、高電界を作用させて高周波プラズマを発生して上記内燃機関(3)の燃焼室(31)内に導入した混合気を点火する点火装置であって、
一端に同軸コネクタ(23)を設けた同軸ケーブル(22)を介して上記増幅器(21)と上記点火部(10、10a、10b)とを接続するに際して、
上記同軸コネクタ(23)内で上記同軸ケーブル(22)の内側導体に接続する入力アンテナ(24、24a)と、
上記中心電極放電部(13)の基端側に延設した内側導体アンテナ部(111、111a)とを、具備し、
所定の比誘電率(εr)を有する耐熱性誘電材料からなる入力共振部誘電体(110、110a、110b)を設けて、
上記入力アンテナ(24、24a)と上記内側導体アンテナ部(111、111a)とを上記入力共振部誘電体(110、110a、110b)内に向かって所定の長さだけ突出せしめると共に、
上記入力アンテナ(24、24a)と上記内側導体アンテナ部(111、111a)とを、径方向、又/及び、軸方向に所定のアンテナ間距離(LH、LV)だけ離隔して配設せしめた入力共振部(11)を設けたことを特徴とする点火装置 - 上記同軸共振部(12、12b)が、
上記内側導体アンテナ部(111)に延設して設けた長軸状の内側導体(121)と、
該内側導体(121)を覆う略筒状の同軸共振部誘電体(120、120b)と、
該同軸共振部誘電体(120、1120b)を覆う略筒状の外側導体(122)とからなり、
上記同軸共振部の長さ(L12)が、上記増幅器(21)から供給される高周波の半波長(λ/2)の奇数倍である請求項1ないし3のいずれか記載の点火装置 - 上記入力共振部誘電体(110、110a、110b)が、Al2O3、SiO2、3Al2O3・2SiO2、2MgO・2Al2O3・5SiO2、TiO2、ZrO2、MgTiO3−CaTiO3、Ba(Sn・Mg・Ta)O3、B(Zn・Ta)O3、Ba(Zr・Zn・Ta)O3、(Zr・Sr・Ti)O4、Ba2Ti9O20、(Pb・Ba)Nd2Ti5O14、(Pb、Bi、Ba)Nd−TiO3、耐熱性結晶化ガラス、透光性アルミナ、PLZT(PbZrO3・PbTiO2・La2O3)、ルビー、サファイア、YAG、Ba(MgTa)O3、Ba{Sn、Zr(Mg、Ta)}O3系ペロブスカイト型酸化物いずれかから選択した耐熱性誘電材料からなる請求項1ないし4のいずれか記載の点火装置
- 上記増幅器(21)と上記同軸コネクタ(23)との間に介装した上記増幅器(21)から供給される高周波電力を分配する電力分配器(40)と、
該分配器(40)によって分配された電力を紫外線に変換する紫外線発生器(41)と、
該紫外線発生器(41)で発生した紫外線を上記入力共振部(11b)に伝送する紫外線光伝送手段(42)と、
該紫外線光伝送手段を上記入力共振部(11b)に接続する光コネクタ(43)と、を具備すると共に、
少なくとも、上記入力共振部誘電体(110b)が、石英、耐熱性結晶化ガラス、透光性アルミナ、PLZT(PbZrO3・PbTiO2・La2O3)、ルビー、サファイア、YAG、Ba(MgTa)O3、Ba{Sn、Zr(Mg、Ta)}O3系ペロブスカイト型酸化物のいずれかから選択した透光性誘電材料 からなる請求項1ないし5のいずれか記載の点火装置
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