JP6057278B2 - 網目状の金属酸化物骨格を有する多孔質膜及びその製造方法 - Google Patents

網目状の金属酸化物骨格を有する多孔質膜及びその製造方法 Download PDF

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本発明は、網目状の金属酸化物骨格を有する多孔質膜及びその製造方法に関するものであり、更に詳しくは、例えば、光触媒コーティング部材、生体関連分子の吸着分離材、生体関連分子などを含めた感光性の有機色素分子を利用する色素増感型デバイスの電極部材として有用な網目状の金属酸化物骨格を有する多孔質膜に関するものである。
一般に、マクロポーラス酸化物材料(球状マクロ孔を大量に含む酸化物材料)の粉末試料の合成には、ポリスチレンやポリメタクリル酸メチルなどの高分子化合物の球状粒子を規則的に積層させたオパール構造(六方最密構造)が鋳型として利用されている。オパール構造に規則配列した球状粒子の隙間に原料溶液を浸漬させ、固化、粉砕した後に、焼成して球状粒子を除去することで構造転写型のマクロポーラス酸化物材料(逆オパール構造)が得られる(非特許文献1)。
球状粒子の規則的な間隙を全て充填すれば逆オパール構造のマクロポーラス材料が得られるが、特殊な例としてスケルトン構造の酸化チタンの合成も報告されており、球状粒子の規則的な間隙内で酸化チタンの縮合反応を制御すると棒状の酸化物が規則的に連結した構造となる(非特許文献2)。
このようなマクロポーラス酸化物材料の開発によって、従来のゼオライトやメソポーラス材料などの規則性多孔体では困難であった、タンパク質やDNAなどの巨大な生体関連分子をマクロ孔内で大量に取り扱うことが可能となる。
また、色素増感型太陽電池の電極部材としての酸化チタン(非特許文献3、4)の構造モデルとして、色素分子を大量に吸着させるための多孔質化が求められている。例えば、メソポーラス酸化チタン薄膜を用いた場合、単位体積当たりの色素吸着量は多くできるが、膜厚が十分でないために色素吸着量の絶対値が増やせない。
酸化チタンなどの半導体酸化物を電極部材として利用するためには結晶性を付与する必要があるが、結晶性を高くし過ぎると多孔質構造が崩壊して表面積が大きく低下してしまう。その結果、多孔質薄膜を電極部材として利用しても光の捕捉が不十分となり、エネルギー変換効率を高くできていないのが現状である。加えて、酸化物骨格表面に結晶粒子がどの程度露出しているか、導電経路として結晶粒子同士がどの程度接触しているかなど、相互に関連する機能を最適化していく必要がある。
酸化チタンのマクロポーラス化に関する研究も行われているが、孔径が大きくなると表面積が小さくなる。この欠点を補うには膜厚を増大させる必要がある。マクロポーラス酸化物に関する研究開発では、成膜技術の開発も不十分であり、厚膜を得る試みはない。
例えば、逆オパール構造の酸化物材料を例に説明すると、球状粒子の隙間に原料溶液を浸漬させるので、球状粒子の囲まれた空間には十分な原料が取り込まれるが、球状粒子同士の接点部分近傍には厚みを持たせることができず、焼成過程で酸化物骨格が収縮すると最終的に逆オパール構造が規則的に崩壊して球状粒子の囲まれた空間の形状を反映した酸化物粒子へと変化してしまう。
また、材料内部に導入された規則的な球状の空気層の存在による光学特性を利用する試みが多いため、マクロポーラス酸化チタン自身を電極材料として利用するために必要不可欠な酸化チタン骨格の結晶化について十分な検討がなされていない(非特許文献5〜7)。
一方、高分子化合物の球状粒子を利用したマクロポーラス材料の合成では、球状マクロ孔の直径が200nmを超えるようなものは比較的多く報告されている。しかし、球状粒子の大きさが小さくなると粒子径の均一性(単分散性)が低下してしまい、規則的な積層構造を形成させるのが困難になる。その他にも、例えば、スピンコート法で成膜すると溶媒の揮発速度が速いために球状粒子が積層する前に薄膜が形成していまい、球状粒子が孤立した状態で薄膜内部に導入されてしまう。
このような背景から、高分子化合物の球状粒子を利用したマクロポーラス酸化物の簡便な成膜法の開発が求められているが、現状は、球状粒子の積層、酸化物材料の原料溶液を浸漬、固化、分散溶媒の乾燥など多段階の合成プロセスでなければマクロポーラス酸化物を成膜できない。
球状マクロ孔を形成させる簡便な方法として、ポリスチレン−ポリオキシエチレンジブロック共重合体(以下、PS−b−PEOと表記する。n、mは各ユニットの重合数を表す)を利用した合成法も知られているが、この方法では膜厚が極めて薄く、クレーター状の空間が形成されただけであった(非特許文献8〜10)。
本発明者らは、先に上記方法において、上記原料として特有なPS−b−PEOを使用し合成条件等を最適化することにより、大孔径ナノ空間を有する遷移金属酸化物の透明薄膜が得られ、このものが生体関連分子の吸着材として有用であることを知見した(特許文献1、非特許文献11、12)。
特開2011−195394号公報
Chemistry of Materials, 2008, Vol. 20, p. 649-666.「Morphological control in colloidal crystal templating of inverse opals, hierarchical structures, and shape particles」 Chemistry of Materials, 2003, Vol. 15, p. 568-574.「New type of inverse opals: titania with skeleton structure」 Nature, 1991, Vol. 353, p. 737-740.「A low-cost, high-efficiency solar cell based on dye-sensitized colloidal TiO2 films」 Nature, 1998, Vol. 395, p. 583-585.「Solid-state dye-sensitized mesoporous TiO2solar cells with high photon-to-electron conversion efficiencies」 Science, 1998, Vol. 281, p. 538-540.「Synthesis of macroporous minerals with highly ordered three-dimensional arrays of spheroidal voids」 Science, 1998, Vol. 281, p. 802-804.「Preparation of photonic crystals made of air spheres in titania」 Chemistry of Materials, 2008, Vol. 20, p. 4925-4930.「Optimizing sol-gel infiltration and processing methods for the fabrication of high-quality planar titania inverse opals」 Small, 2007, Vol. 3, p. 1379-1382.「Ultrathin anatase TiO2 films with stable vesicle morphology templated by PMMA-b-PEO」 Journal of the American Chemical Society, 2006, Vol. 128, p. 4658-4674.「Morphology phase diagram of ultrathin anatase TiO2 films templated by a single PS-b-PEO block copolymer」 Soft Matter, 2008, Vol. 4, p. 515-521.「One step route to the fabrication of arrays of TiO2 nanobowls via a complementary block copolymer templating and sol-gel process」 Journal of Materials Chemistry, 2011, Vol. 21, p. 5738-5744.「Dye-sensitized biosystem sensing using macroporous semiconducting metal oxide films」 Physical Chemistry Chemical Physics, 2011, Vol. 13, p. 12529-12535.「Connectivity of PS-b-PEO templated spherical pores in titanium oxide films」
上記のように、PS−b−PEOを利用したマクロポーラス遷移金属酸化物薄膜の合成法が提案されてはいるが、ここには適度なマクロ空間を有し、かつ金属酸化物骨格が網目状のネットワークを形成する、新規な金属酸化物多孔質薄膜およびその製造方法については何ら触れられていない。
本発明は、上記従来技術に鑑みてなされたものであって、光触媒コーティング部材、生体分子の吸着分離材、光学デバイス部材、色素増感型デバイス電極部材として有用な、適度なマクロ空間を有し、かつ網目状の金属酸化物骨格を有する、新規な酸化チタン多孔質薄膜およびその製造方法を提供することを課題とする。
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を積み重ねた結果、PS−b−PEO等のブロック共重合体の高濃度の透明溶液に水を添加することで生成させた球状粒子の空間排除効果と、金属酸化物種の存在量等を調節して成膜後の金属酸化物骨格の収縮の程度を制御すると、意外にも、金属酸化物骨格を十分に結晶化させた後にも、上記球状粒子よりも大きなマクロ構造が形成され、しかも該金属酸化物骨格は網目状ネットワークを形成することを見出し、本発明を完成するに到った。
上記課題を解決するための本発明は、以下の技術的手段から構成される。
第1に、親水性ユニットと疎水性ユニットを有するポリスチレン−ポリオキシエチレンジブロック共重合体の有機溶媒溶液に水を添加し、該ブロック共重合体の球状粒子を形成してなる界面活性剤溶液に、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、シリカおよびアルミナから選ばれた少なくとも一種である金属アルコキシドの金属酸化物源を用いるとともに、該金属酸化物源の反応制御剤として濃塩酸を用い、その添加量をHCl/金属のモル比で1.5以下とし、該ブロック共重合体に対する重量比が金属酸化物換算で0.15〜0.50の範囲に調製された前記金属酸化物源を混合して成膜した後、焼成し、その焼成過程で金属酸化物骨格を収縮させて形成させた網目状ネットワーク構造が崩壊して存在する、前記ブロック共重合体の球状粒子よりも大きな、直径30〜300nmのマクロ空間と、棒状の金属酸化物骨格が上下、左右の三次元方向に自由に結合し、網目状ネットワークを形成した網目状の金属酸化物骨格を形成させたことを特徴とする金属酸化物多孔質膜の製造方法である。
第2に、上記第1の発明の金属酸化物多孔質膜の製造方法において、ブロック共重合体の親水性ユニットの単位ユニットがオキシエチレンであり、疎水性ユニットの単位ユニットがスチレンである。
第3に、上記第1又は第2の発明の金属酸化物多孔質膜の製造方法において、網目状の金属酸化物骨格が形成された多孔質膜の焼成過程で、金属酸化物骨格が結晶化及び結晶成長する。
第4に、上記第1から第3の発明の金属酸化物多孔質膜の製造方法において、網目状の金属酸化物骨格が形成された多孔質膜の焼成過程で、粒子成長によって生成した金属酸化物の結晶粒子の間に間隙が形成される。
第5に、親水性ユニットと疎水性ユニットを有するポリスチレン−ポリオキシエチレンジブロック共重合体の有機溶媒溶液に水を添加し、該ブロック共重合体の球状粒子を形成してなる界面活性剤溶液に、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、シリカおよびアルミナから選ばれた少なくとも一種である金属アルコキシドの金属酸化物源を用いるとともに、該金属酸化物源の反応制御剤として濃塩酸を用い、その添加量をHCl/金属のモル比で1.5以下とし、該ブロック共重合体に対する重量比が金属酸化物換算で0.15〜0.50の範囲に調製された前記金属酸化物源を混合して成膜した後、焼成し、その焼成過程で金属酸化物骨格を収縮させて形成させた網目状ネットワーク構造が崩壊して存在する、前記ブロック共重合体の球状粒子よりも大きな、直径30〜300nmのマクロ空間と、棒状の金属酸化物骨格が上下、左右の三次元方向に自由に結合し、網目状ネットワークを形成した網目状の金属酸化物骨格を有することを特徴とする金属酸化物多孔質膜である。
第6に、上記第5の発明の金属酸化物多孔質膜において、金属酸化物骨格が非晶質相、各組成に固有の結晶相またはそれらの混合相から形成されている。
第7に、上記第5又は第6の発明の金属酸化物多孔質膜を含有する光触媒コーティング部材である。
第8に、上記第5又は第6の発明の金属酸化物多孔質膜を含有する生体分子の吸着分離材である。
第9に、上記第5又は第6の発明の金属酸化物多孔質膜を含有する光学デバイス部材である。
第10に、上記第5又は第6の発明の金属酸化物多孔質膜を含有する色素増感型デバイス電極部材である。
本発明によれば、水に対して溶解性が低い有機系ブロック共重合体の高濃度の透明溶液に水を添加することで生成する球状粒子の存在下で、金属酸化物種の存在量等を調節することにより、マクロ空間を含む網目状の金属酸化物骨格が形成された多孔質膜を得ることができる。
本発明の新規な金属酸化物多孔質膜、特に酸化チタン多孔質膜は、結晶性を高めながら、マクロ空間を含む網目状の金属酸化物骨格(網目状のネットワークを形成する金属酸化物骨格)が形成され、その骨格表面を最大限に露出できるので、生体関連分子や色素分子を大量に固定化できることから、生体関連分子の吸着分離材や色素増感太陽電池の電極部材、色素増感の原理を利用した有害化学物質の高感度センサーの電極部材、更には光触媒コーティング部材などとして利用することができる。
(a)〜(c)PS960−b−PEO3,400の球状粒子の存在下、チタン源の添加量を変化させて得られた酸化チタン膜のSEM観察結果(400℃焼成後) (a)〜(c)PS960−b−PEO3,400の球状粒子の存在下、チタン源の添加量を変化させて得られた酸化チタン膜のSEM観察結果(400℃焼成後) (a)〜(c)異なる温度で焼成した網目状ネットワーク構造の酸化チタン膜のSEM観察結果 (a)、(b)異なる温度で焼成した網目状ネットワーク構造の酸化チタン膜の高分解能TEM観察結果 網目状ネットワーク構造の酸化チタン膜(400℃焼成)へのCyt−cの吸着実験 網目状ネットワーク構造の酸化チタン膜(400℃焼成)へのMbの吸着実験 網目状ネットワーク構造の酸化チタン膜を用いたMBの吸着、光分解実験
次に、本発明について更に詳細に説明する。
(本発明に係る金属酸化物多孔質膜の製造方法)
本発明の、マクロ空間の直径が30〜300nmにあり、網目状の金属酸化物骨格を有する金属酸化物多孔質膜の製造方法は、親水性ユニットと疎水性ユニットを有するブロック共重合体の有機溶媒溶液に水を添加し、該ブロック共重合体の球状凝集粒子を形成してなる界面活性剤溶液に、金属酸化物源を混合した液(以下、前駆溶液ともいう)を成膜した後、焼成し、その焼成過程で金属酸化物骨格を収縮させ、前記ブロック共重合体の球状粒子よりも大きなマクロ空間と網目状の金属酸化物骨格を形成させたことを特徴としている。
(本発明に係る金属酸化物多孔質膜)
また、このような方法で得られる金属酸化物多孔質膜は、マクロ空間の直径が30〜300nmにあり、網目状の金属酸化物骨格を有することを特徴とするものであり、本発明者らによって初めて見出された新規な金属酸化物多孔質膜である。
なお、本発明でいう網目状の金属酸化物骨格とは、棒状の金属酸化物骨格が上下、左右の三次元方向に自由に結合し、網目状のネットワークを形成した骨格を意味する。
また、本発明でいうマクロ空間とは、上記のような網目状の金属酸化物骨格内に形成される巨大空間を意味する。
(本発明の製造方法の具体的な態様)
(界面活性剤溶液)
本発明の金属酸化物多孔質膜の製造方法で用いる界面活性剤溶液は、親水性ユニットと疎水性ユニットを有するブロック共重合体からなる界面活性剤の有機溶媒溶液に水を添加することにより調製される。
本発明においては、この水の添加が極めて重要である。水の添加により、ブロック共重合体を速やかにコロイド状の球状粒子(球状凝集体)とすることができ、また、このような球状粒子を予め形成しておくとことにより、成膜過程の溶媒揮発の速度が速くても膜内に球状凝集体を比較的均一に分布させることができるといった作用効果が発現するからである。
予め水を添加しておかないと、成膜過程で有機溶媒が揮発した後、溶液中に含まれるアルコキシドの加水分解のために添加している少量の塩酸由来の水の存在に誘起されて集合構造を形成することになるが、溶媒の揮発速度が速く、先行技術(特許文献1、非特許文献11、12)で示されているように球状マクロ孔が生成し、その結果、単位体積当たりの表面積が小さくなってしまい(30mcm−3、膜厚200nm程度)、本発明の所期の作用効果が発現しない。
(ブロック共重合体:界面活性剤)
本発明で界面活性剤として用いられる親水性ユニットと疎水性ユニットを有するブロック共重合体は、親水性と疎水性の差が大きなブロック共重合体であれば、特に制約されない。即ち、親水性ユニットの単位ユニットをオキシエチレンとして溶液中で無機種との相互作用が可能な状態にしているので、親水性と疎水性の差が大きいと判断できるのは炭素数の差が2以上、好適には3以上となる。
特に、疎水性ユニットの単位ユニットが炭素数5以上の炭化水素ユニットであれば、溶液中で球状凝集体を形成する傾向が極めて高くなるので好ましい。このような炭化水素ユニットとしては、スチレン、イソプレン、へキシレン等が挙げられるが、高分子量のスチレンが最も好ましい。
本発明で好ましく使用されるブロック共重合体としては、例えば、親水性ユニットの単位ユニットがオキシエチレンであり、疎水性ユニットの単位ユニットがスチレンであるジブロック共重合体PS−b−PEO(n,mは各ユニットの重合数)やトリブロック共重合体PEO−PS−PEO(n,mは各ユニットの重合数)等が挙げられる。この中でもジブロック共重合体PS−b−PEOが好ましく用いられる。
この親水性ユニットの単位ユニットがオキシエチレンであるブロック共重合体は、後述するように、溶液中でポリオキシエチレン(PEO)ユニットが溶解無機種と水素結合によって相互作用するが、塩酸酸性溶液中で使用することでプロトン化したPEOユニットと溶解酸化物種がより強く静電的に相互作用し、ブロック共重合体が自己集合する過程でも親水部近傍に安定的に酸化物種を存在させることができ、無機種間の結合生成などを経て、前駆体を一段階で生成させることができる。
親水性ユニットとしてPEOユニットが好ましい理由は、溶液中で溶解酸化物種と水素結合によって相互作用することが可能であり、また、塩酸酸性溶液中で使用することでプロトン化したPEOユニットと溶解酸化物がより強く静電的に相互作用し、界面活性剤が自己集合する過程でも親水性部近傍に安定的に酸化物を存在させることができ、酸化物種間の結合生成等を経て、無機有機メソ構造体を生成させることができるからである。
疎水性を示すユニットとしてPSユニットが好ましい理由は、疎水性が大きいポリマーユニット自身の性質として水溶液中で球状の集合体を形成し易く、重合度の大きいブロック共重合体を用いた場合でも界面活性剤としての自己集合構造を形成するからである。また、親水性と疎水性の差が大きい場合には、分子量の大きい、即ち重合度の大きいブロック共重合体を用いた場合にも界面活性剤としての自己集合構造を形成するからである。
例えば、EOPOEOを用いたメソ多孔体の合成は世界中から数多く論文報告されているが、ユニット毎の重合数は最大でも100程度である。それ以上の重合度のEOPOEOを利用すると相分離を起こす場合があるので、できればポリオキシプロピレン鎖ではなく、疎水性の強いPSユニットを含むブロック共重合体を用いることが好ましい。
(ブロック共重合体の有機溶媒溶液)
上記ブロック共重合体の有機溶媒溶液はその溶解能に優れた有機溶媒に溶解させることにより調製される。
有機溶媒としては、テトラヒドロフラン(以下、THFと略称する)、THFとエタノールとの混合溶媒が挙げられる。かかる溶媒は比較的容易に透明な界面活性剤溶液を調製することができる。また、ジオキサン等の極性溶媒もPS−b−PEOを溶解する能力に優れており好適に用いることができる。
(界面活性剤溶液の調製:ブロック共重合体球状粒子の形成)
界面活性剤溶液の調製は、上記で得たブロック共重合体の有機溶媒溶液に水を添加することにより行われる。前述したように、水の添加により、ブロック共重合体は凝集し球状粒子化する、即ち、PSなどの親油性ユニットをコアとし、PEOなどの親水性ユニットをシェルとするコア―シェル構造の球状粒子(凝集体)となる。
この球状粒子のサイズは、他の因子によっても異なるが、通常、水の添加量が多いほど、またブロック共重合体の濃度が高いほど大きくなる。ブロック共重合体の重合数は孔径や溶解性、分子量分布は主に孔径分布に影響するので、これらのことを適宜考慮する。
また、PEOユニットの重合数を減ずることでも、相互作用によりシェル部分に存在できる酸化物種の量も制御できるので、重合数と金属源原料の添加量は合成条件を最適化する過程で考慮した方がよい。
マクロ孔を含む網目状ネットワークを形成した酸化物膜の形成においては、重合の程度が低い酸化物骨格が焼成する過程で縮合してマクロ孔を形成するので、ブロック共重合体の分子量分布よりも、ブロック共重合体が溶液中で球状凝集体を形成することが重要となる。
ただし、ブロック共重合体の分子量分布はブロック共重合体の球状粒子がコア部分がPSユニット、シェル部分がPEOユニットという構造からなるので、直径が30nmを超えるようなブロック共重合体の球状粒子を形成させるには、特に、球状粒子のコア部分に相当するPSユニットの重合数(n)が重要である。
一般に界面活性剤の会合数は分子量が大きいほど多くなると言われているので、重合数と会合能力の両方を考慮してブロック共重合体の球状粒子のサイズを規定することができる。ただし、水に対する溶解性が低いPS−b−PEOなどは、水の存在量が多くなると球状集合体のサイズも大きくなるので、前駆溶液中の水の存在量も重要な合成条件の1つである。
また、PSユニットの重合数が大きくなると各種溶媒に対する溶解性が低下してしまうおそれがあるが、その場合には、加熱することにより、PS−b−PEOの高濃度の透明溶液を調製することができる。
PSユニットからなるコア部分を覆っていれば、PEOユニットの重合数(m)にそれほど厳密な制限はない。即ち、シェル部分と相互作用して骨格を形成する金属酸化物種の量に応じてマクロ孔間を連結する孔が生成したり消失したりする。
(金属酸化物源)
金属酸化物源としては、溶液中での反応性の制御が可能な金属酸化物を含有するものであれば、特に制限はない。金属酸化物種の重合反応を連続的に制御するには金属アルコキシドを利用するのが最も一般的であるが、金属塩或いは金属アルコキシドと金属塩の内から選択される1種以上であれば金属源として利用できる。
例えば、金属アルコキシドを用いた場合は、反応を制御する目的と同時に、塩酸を添加して酸性の前駆溶液を調製すればよく、最終的に無機原料を含む溶液が塩酸酸性であれば、各種金属塩(硝酸塩、酢酸塩など)を出発原料に用いても何ら問題はない。金属塩化物と金属アルコキシドを混合するだけでも金属酸化物の形成が促され、同時に塩化水素が発生して酸性の前駆溶液が調製できる。
金属酸化物骨格として、酸化チタンに代表されるような溶液中で連続的な結合生成が進行する組成から選択される1種及びそれらの複合組成としているのは、シリカのように、アルミナ、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化ニオブ、酸化タンタルなどの金属酸化物種は、縮合反応が溶液中で連続的に変化し、生成した金属オキソ種とPEOユニットとが相互作用しやすいからである。
溶液中に溶解している金属イオン種の場合は、骨格形成が進行しないために膜内部にマクロ孔を導入するのは簡単ではない。
金属酸化物源の使用に当たって、本発明において留意すべきことは、後記する焼成過程において、金属酸化物骨格を収縮させ、前記ブロック共重合体の球状粒子よりも大きな、直径30〜300nmのマクロ空間が形成され、かつ網目状の金属酸化物骨格を形成されるように、その使用量等を調製することである。
本発明者の検討によれば、金属酸化物源の使用量は、前記ブロック共重合体に対して重量比を金属酸化物換算で0.15〜0.50、好ましくは0.20〜0.45の範囲に調製しておくことにより、前記ブロック共重合体の球状粒子よりも大きな、直径30〜300nmのマクロ空間が形成され、かつ網目状の金属酸化物骨格を形成されることが判明した。
また、骨格内の金属酸化物の重合反応を抑制するために、金属酸化物源の反応制御剤として用いる濃塩酸の添加量をHCl/金属のモル比で1.5以下にすると、同様にマクロ空間が形成され、かつ、網目状の金属酸化物骨格が形成されることが判明した。
金属酸化物源の使用量を上記のような範囲に調製することにより、上記のように、前記ブロック共重合体の球状粒子よりも大きな、直径30〜300nmのマクロ空間が形成され、かつ網目状の金属酸化物骨格を形成される理由は、界面活性剤の有機溶媒溶液に水を添加することで生成した球状凝集体が前駆溶液中に予め存在していることで成膜後比較的均一に膜内に分散させることができ、焼成過程では膜内に分散している球状凝集体の中間線方向に向かって酸化物骨格が収縮するためである。
(前駆溶液の調製・その成膜)
前記で得た、ブロック共重合体の球状粒子を含んだ界面活性剤溶液と、該ブロック共重合体に対して金属酸化物源を混合すると、ブロック共重合体のコロイド状の球状粒子(球状凝集粒子)の周りに金属源が付着した前駆溶液が得られる。
すなわち、この前駆溶液中では、PS−b−PEOの球状凝集体を金属酸化物種が取り囲んだコア−シェル構造(親水性ユニットPEO:シェル部;親油性ユニットPS:コア部)を形成していることで、溶媒が揮発する過程でそれらが集合しても骨格の厚みを十分に確保できる。
前駆溶液の成膜法は、基板上にこれを塗布できるのであれば、いずれの方法であってもよい。基板には、ガラス、石英、シリコン、単結晶ITO、グラファイト、ポリテトラフルオロエチレンなどを用いることができる。これらの基板は用途によって使い分けする必要はあるが、成膜技術として見ると特別な制限はない。
(焼成)
本発明においては、焼成過程で金属酸化物骨格を収縮させ、前記ブロック共重合体の球状粒子よりも大きな、直径30〜300nm、好ましくは50〜150nmのマクロ空間と網目状の金属酸化物骨格を形成させる。
本発明においては、従来の知見と異なり、前記ブロック共重合体の球状粒子よりも大きな、直径30〜300nm、好ましくは50〜150nmのマクロ空間と網目状の金属酸化物骨格を形成できる。
低温での焼成或いはUVオゾン処理によりブロック共重合体を除去すると、非晶質骨格からなる金属酸化物膜を得ることができる。各種金属酸化物の結晶化温度以上で焼成すると、結晶化が進行し、結晶性を付与した網目状ネットワークを形成した多孔質膜を得ることができる。例えば、酸化チタンの場合、焼成温度の上昇とともに、400℃では微結晶を含む(非晶質構造と結晶構造の中間相)状態、550℃ではほとんどが結晶化したと思われるナノ粒子からなる網目状ネットワークを形成した多孔質膜を得ることができる。更に高温(例えば、700℃)で焼成すると、粒成長により網目状ネットワーク構造は崩壊してしまうが、生成した数十nmの結晶粒子の間隙にマクロ空間が存在する結晶性の極めて高い多孔質膜を得ることができる。
(応用)
次に、本発明の、マクロ空間の直径が30〜300nmの範囲にあり、網目状の金属酸化物骨格を有する、新規な金属酸化物多孔質膜の利用方法について具体的に説明する。
本発明の網目状の金属酸化物骨格を有する多孔質膜は、10nmを超えるようなタンパク質やDNAなどの巨大な生体関連分子を選択的にハンドリングすることができ、網目状の金属酸化物骨格の表面が最大限に露出していることから、大量の生体関連分子を吸着(固定化)することができる。即ちタンパク質やDNAのような生体内で極めて選択的かつ効率的に各種反応に重要な役割を果たすような機能性有機化合物を取り扱うための特異反応場を提供できる。
また、結晶化した酸化チタンなど金属酸化物骨格の表面との相互作用を利用することで、機能性色素分子が強く固定化できる場合には混合物からの分離も可能である。
Gratzel型の色素増感太陽電池(非特許文献3、4)に関する研究では、酸化チタン、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化タングステンなどの遷移金属酸化物と色素との各種組み合わせが検討されているが、酸化チタンとルテニウム錯体との組み合わせを超えるような変換効率を示すものは見つかっていない。
例えば、酸化チタンのナノ結晶粒子とルテニウム錯体との組み合わせで変換効率10%を実現したと報告されている。酸化チタン電極をナノ結晶粒子で設計しているのは色素分子(ルテニウム錯体)の吸着量をより多くするためであるということが記されている。
通常膜厚が同一であれば孔径が大きいと表面積が小さくなり、色素分子の吸着サイトが減少するので色素増感太陽電池の電極部材としては相応しくない。
しかし、本発明のマクロ空間を含む金属酸化物多孔質膜は、金属酸化物骨格の表面が最大限に露出しており、しかも、多孔質構造を保持したままでの金属酸化物骨格の結晶化も実現できるので、酸化チタンのアナターゼ相の性質である光触媒機能が発現するだけでなく、導電性や導電経路の連続性が非常に良くなっている。大量の機能性色素分子が酸化物表面に強く固定化できると、光エネルギーを大量の色素分子で捕捉して半導体電極へ移動させられるので、本発明の酸化チタンなどの多孔質膜が色素増感太陽電池の電極材料として優れた機能を発現する。
また、本発明のマクロ空間を含む網目状ネットワーク構造の金属酸化物多孔質膜は色素増感の原理を利用したセンサー系の構築に利用できる。色素増感太陽電池では、光励起した色素からエネルギーが半導体電極に移動して電流が発生するという原理で太陽光の利用が可能になる。
センサー系では、光励起された標識色素から発生する蛍光或いは電子(光電流)をそれぞれ蛍光スペクトル測定或いは電流計を用いて検出する。本発明においては、実際に、網目状ネットワーク構造が酸化物表面を最大限に露出する効果により多くの生体関連分子の固定化が可能であり、シトクロムやミオグロビンなどの感光性ユニットを含む生体関連分子を大量に固定化することができているので、生体関連分子の極めて選択性の高い反応を利用した各種化合物の捕捉、センシングが可能になる。
次に、実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によって何ら限定されることはない。
実施例1
PS−b−PEOとして、PSユニットの数平均分子量が100,000(重合数が約960)、PEOユニットの数平均分子量150,000(重合数が約3,400)のもの(PS960−b−PEO3,400)を用いて網目状ネットワークを形成した酸化チタン多孔質膜の合成を行った。
まず、PS960−b−PEO3,400(0.50g)を、THF(8g)/エタノール(2g)混合溶媒に完全に溶解させた溶液に水(1.54g)を添加し、溶液を白濁させて界面活性剤溶液を調製した。
次に、チタンテトラプロポキシド(0.85g)に濃塩酸(0.46g、水の総量は2.00g)をゆっくり滴下して予め加水分解した透明な溶液を調製した後、前記界面活性剤の溶液と混合して前駆溶液を調製した。
チタン源を添加することで溶液はオレンジ色に変化し、チタン源の添加量が多ければ多いほどオレンジ色は濃くなった。この現象は、溶液中のPEOユニットが酸化チタン種と相互作用したことと関係している。
得られた前駆溶液を基板上にスピンコート、50℃で乾燥することでマクロポーラス酸化チタン膜の前駆体を得た。この前駆体を400℃で焼成してPS960−b−PEO3,400の除去を行った。
チタンテトラプロポキシドの添加量を変化させて得られた膜の走査型電子顕微鏡(SEM)観察から網目状ネットワークからなる構造が膜全体に存在している様子が確認できた(図1(a)〜(c))。
チタン源の添加量を減らしていくと、網目状ネットワークを形成する棒状の酸化チタンが細くなり、マクロ空間を含む網目状ネットワーク構造がより明瞭に観察された。透過型電子顕微鏡(TEM)観察からも同様の構造が確認され(図2(a)〜(c))、SEM及びTEM観察の結果を総合的に判断すると、30〜300nmの範囲にマクロ空間が存在していると考えられた。
液体窒素温度でのクリプトン(Kr)ガスの吸着測定から表面積を算出すると、何れの膜も単位体積当たり130mcm−3前後であった。従って、チタン源の添加量が多い場合はマクロ空間の形状がほぼ球状になっていることを考慮すると、網目状ネットワークからなる構造は酸化物膜の内部表面を最大限に露出させる構造であると考えることができる。
実施例2
実施例1の図1(b)と同様の合成手順で、網目状ネットワーク構造の酸化チタン多孔質膜の前駆体を得た。この前駆体を種々の温度(400℃、550℃及び700℃)で焼成し、得られた網目状のネットワーク構造の酸化チタン膜中の酸化チタン骨格並びに多孔質構造の変化について調べた。
異なる温度で焼成した網目状ネットワーク構造の酸化チタン膜のSEM観察の結果を図3(a)〜(c)に示す。焼成温度が400℃で観察されたマクロ空間を含む網目状ネットワーク構造は、550℃焼成後にも保持されている。400℃焼成した膜よりも550℃焼成した膜の方がマクロ空間のサイズが増大していると思われ、酸化チタン骨格の収縮により網目状ネットワーク構造が生成していることを裏付けている。
700℃で焼成すると網目状ネットワーク構造は崩壊し、数十nmのサイズの酸化チタン結晶粒子の生成が確認された。結晶粒子の間隙にはマクロ空間が存在しており、時折、網目状ネットワーク構造に由来すると思われる更に大きなマクロ空間の存在も確認された。膜厚が十分ではないために、エックス線回折(XRD)測定で結晶性を評価することはできなかったが、高分解能TEM観察からある程度酸化チタン骨格の結晶性に関する情報を入手することができた。400℃焼成した膜でも既に10nm未満のアナターゼ結晶粒子が存在している様子が確認でき、550℃焼成した膜では十分に結晶化した粒子が網目状ネットワーク構造を構築している様子が確認された。(図4(a)〜(b))
実施例3(生体分子の吸着分離)
網目状ネットワーク構造の酸化チタン膜の生体関連分子の吸着特性を評価するために、感光性色素であるポルフィリン環を含むタンパク質であるシトクロムc(Cyt−c)及びミオグロビン(Mb)を利用した。100nMのタンパク質水溶液を調製し、この溶液3.5mL中に膜(10×30mm)を浸漬して、濃度変化を紫外可視分光光度計(UV−Vis)により測定した。
その結果を図5および図6に示す。なお、用いた膜は、実施例1の(a)および(c)に相当する。実験に用いた膜の表面積及び膜厚の測定値は図中に記した。比較用の膜として、特許文献1のマクロポーラス酸化チタン薄膜(膜厚:200nm程度:表面積;30mcm−3)を用いた。
図5から、Cyt−cの緩衝溶液(pH=7)にこの膜に浸漬すると、比較用の膜に比し、Cyt−cがより多く吸着されることがわかった。特に、網目状ネットワーク構造が明瞭に観察されている実施例1の(c)と同様の網目状ネットワーク構造の膜(膜厚150nm)では、膜厚が比較例の膜(膜厚200nm)よりも薄いにも拘わらず、より多くのCyt−cの吸着が確認されており、本実施例膜の表面積の増大効果が現れている。
図6から、Mbの吸着実験では、生体分子の等電点(6.8〜7.2)が低いために、緩衝溶液中でなくても大量のMbの固定化が可能であることが確認された。
なお、酸化チタン骨格が結晶化している方がタンパク質分子との相互作用が強くなることが知られているので、焼成温度が400℃の膜よりも、網目状ネットワーク構造を保持している550℃焼成した酸化チタン膜、更には、700℃焼成して網目状ネットワーク構造が崩壊しているもののマクロ空間を大量に含み結晶性が極めて高い膜も優れた吸着分離材になると考えられる。
以上より、本発明に係る酸化チタン膜は、結晶性と表面積とのバランスを考えて露出している結晶面の量を最適化することで生体関連分子の優れた吸着媒体になる。加えて、色素分子を含有する生体関連分子が大量に吸着できることは、酸化チタン骨格表面に大量の色素分子を固定化することが可能であることと同義であり、色素増感型太陽電池或いはセンサーの電極部材としても利用できる。
実施例4(光触媒活性)
網目状ネットワーク構造の酸化チタン膜の光触媒特性を評価するために、メチレンブルー(MB)の光分解反応を行った。100nMのMB水溶液を調製し、この溶液3.5mL中に膜(10×30mm)を浸漬して、MBの吸着過程及び光照射時の濃度減少をUV−Visにより測定し、金属酸化物膜の光触媒特性を評価した。その結果を図7に示す。
なお、膜としては、異なる温度で焼成した実施例1の(c)の網目状ネットワーク構造の酸化チタン膜を用いた。焼成温度によって酸化チタン骨格の収縮の程度が異なるので、膜厚はそれぞれ150nm(400℃)、140nm(550℃)及び100nm(700℃)であったが、膜中に存在する酸化チタン量は全て同じである。実験に用いた膜の表面積を図中に記した。
図7から、これらの膜は何れも高い光触媒活性を示し、特に、700℃で焼成した結晶性の高い酸化チタン膜は、優れた光触媒特性を示すことが分かる。
以上より、マクロ空間を含む網目状ネットワーク構造の酸化チタン膜の製造技術を各種材料へのコーティング技術として適用することで、光触媒コーティング部材としての展開が可能である。

Claims (10)

  1. 親水性ユニットと疎水性ユニットを有するポリスチレン−ポリオキシエチレンジブロック共重合体の有機溶媒溶液に水を添加し、該ブロック共重合体の球状粒子を形成してなる界面活性剤溶液に、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、シリカおよびアルミナから選ばれた少なくとも一種である金属アルコキシドの金属酸化物源を用いるとともに、該金属酸化物源の反応制御剤として濃塩酸を用い、その添加量をHCl/金属のモル比で1.5以下とし、該ブロック共重合体に対する重量比が金属酸化物換算で0.15〜0.50の範囲に調製された前記金属酸化物源を混合して成膜した後、焼成し、その焼成過程で金属酸化物骨格を収縮させて形成させた網目状ネットワーク構造が崩壊して存在する、前記ブロック共重合体の球状粒子よりも大きな、直径30〜300nmのマクロ空間と、棒状の金属酸化物骨格が上下、左右の三次元方向に自由に結合し、網目状ネットワークを形成した網目状の金属酸化物骨格を形成させたことを特徴とする金属酸化物多孔質膜の製造方法。
  2. ブロック共重合体の親水性ユニットの単位ユニットがオキシエチレンであり、疎水性ユニットの単位ユニットがスチレンであることを特徴とする請求項1に記載の金属酸化物多孔質膜の製造方法。
  3. 網目状の金属酸化物骨格が形成された多孔質膜の焼成過程で、金属酸化物骨格が結晶化及び結晶成長することを特徴とする、請求項1または2に記載の金属酸化物多孔質膜の製造方法。
  4. 網目状の金属酸化物骨格が形成された多孔質膜の焼成過程で、粒子成長によって生成した金属酸化物の結晶粒子の間に間隙が形成されることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の金属酸化物多孔質膜の製造方法。
  5. 親水性ユニットと疎水性ユニットを有するポリスチレン−ポリオキシエチレンジブロック共重合体の有機溶媒溶液に水を添加し、該ブロック共重合体の球状粒子を形成してなる界面活性剤溶液に、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、シリカおよびアルミナから選ばれた少なくとも一種である金属アルコキシドの金属酸化物源を用いるとともに、該金属酸化物源の反応制御剤として濃塩酸を用い、その添加量をHCl/金属のモル比で1.5以下とし、該ブロック共重合体に対する重量比が金属酸化物換算で0.15〜0.50の範囲に調製された前記金属酸化物源を混合して成膜した後、焼成し、その焼成過程で金属酸化物骨格を収縮させて形成させた網目状ネットワーク構造が崩壊して存在する、前記ブロック共重合体の球状粒子よりも大きな、直径30〜300nmのマクロ空間と、棒状の金属酸化物骨格が上下、左右の三次元方向に自由に結合し、網目状ネットワークを形成した網目状の金属酸化物骨格を有することを特徴とする金属酸化物多孔質膜。
  6. 金属酸化物骨格が非晶質相、各組成に固有の結晶相またはそれらの混合相から形成されていることを特徴とする請求項5に記載の金属酸化物多孔質膜。
  7. 請求項5又は6に記載の金属酸化物多孔質膜を含有する光触媒コーティング部材。
  8. 請求項5又は6に記載の金属酸化物多孔質膜を含有する生体分子の吸着分離材。
  9. 請求項5又は6に記載の金属酸化物多孔質膜を含有する光学デバイス部材
  10. 請求項5又は6に記載の金属酸化物多孔質膜を含有する色素増感型デバイス電極部材
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