以下,本発明を具体化した実施の形態について,添付図面を参照しつつ詳細に説明する。図1に,本形態の画像形成装置1の概略構成を示す。画像形成装置1は,プリント部2の内部に中間転写ベルト30を有する,いわゆるタンデム型のカラープリンターである。中間転写ベルト30は,導電性を有する無端状のベルト部材であり,その図1中両端部がローラー31,32によって支持されている。画像形成時には,図1中右側のローラー31が,図中矢印で示すように反時計回りに回転駆動される。これにより,中間転写ベルト30および図1中左側のローラー32はそれぞれ,図中に矢印で示す方向に従動回転する。
中間転写ベルト30のうち,図1中右側のローラー31に支持されている部分の外周面には,2次転写ローラー40が設けられている。2次転写ローラー40は,中間転写ベルト30へ向けて軸と垂直の方向(図1中左向き)に圧接されている。中間転写ベルト30と2次転写ローラー40とが接触している部分には,中間転写ベルト30上のトナー像を用紙Pに転写させる2次転写ニップN1が形成されている。2次転写ローラー40は,画像形成時には,回転する中間転写ベルト30への圧接による摩擦力によって,図1中に矢印で示す方向に従動回転する。
また,中間転写ベルト30のうち,図1中左側のローラー32に支持されている部分の外周面には,ベルトクリーナー41が設けられている。本形態のベルトクリーナー41は,図1に示すようにローラー形状をしており,芯金の表面に導電性のブラシを有するものである。この導電性のブラシ繊維としては,ナイロン系,ポリエステル系,アクリル系,レーヨン系などのものが使用できる。ベルトクリーナー41は,中間転写ベルト30の表面に付着しているトナーを回収するためのものである。つまり,ベルトクリーナー41は,2次転写ニップN1において用紙Pに転写されなかった転写残トナーや,後述する廃棄トナー像の回収を行う。
中間転写ベルト30の図1中下部には左から右に向かって順に,イエロー(Y),マゼンタ(M),シアン(C),ブラック(K)の各色の画像形成部10Y,10M,10C,10Kが配置されている。画像形成部10Y,10M,10C,10Kはいずれも,該当色のトナー像を形成して中間転写ベルト30上に転写するためのものである。画像形成部10Y,10M,10C,10Kはいずれも,その構成は同じである。このため,図1では,画像形成部10Yによって代表して符号をつけている。
画像形成部10Y,10M,10C,10Kは,円筒状の静電潜像担持体である感光体11,および,その周囲に配置された帯電装置12,露光装置13,現像装置14,1次転写ローラー15,および感光体クリーナー16を有している。帯電装置12は,感光体11の表面を均一に帯電させるためのものである。露光装置13は,該当色の画像データに基づいたレーザー光を感光体11の表面に照射させ,静電潜像を形成するためのものである。この露光装置13により静電潜像が形成される各色の感光体11上の位置をそれぞれ,TOD(Top Of Data)Y,TODM,TODC,TODKとする。現像装置14は,収容しているトナーを感光体11の表面に付与するためのものである。
1次転写ローラー15は,感光体11と中間転写ベルト30を挟んで対向する位置に配置されている。1次転写ローラー15は,中間転写ベルト30へ向けて軸と垂直の方向(図1中下向き)に圧接されている。この圧接により,中間転写ベルト30と感光体11とが接触している部分にはそれぞれ,各色の感光体11上のトナー像を中間転写ベルト30上に転写させる1次転写ニップY1,M1,C1,K1が形成されている。感光体クリーナー16は,感光体11上から中間転写ベルト30上に転写されなかったトナーを回収するためのものである。
なお,図1では,感光体クリーナー16として,板状でその一端部が感光体11の外周面に接触しているものを示しているが,本発明はこれに限るものではない。その他のクリーニング部材,例えば固定ブラシ,回転ブラシ,ローラーまたはそれらのうちの複数の部材を組み合わせたものを使用することができる。あるいは,感光体11上の未転写トナーを現像装置14により回収するクリーナーレス方式を採用すれば,感光体クリーナー16はなくてもよい。
また,中間転写ベルト30の図1中上方には,各色のトナーを収容したホッパー20Y,20M,20C,20Kが配置されている。これらに収容されている各色のトナーはそれぞれ,各色の現像装置14へと適宜補給される。
本形態の画像形成装置1は,プリント部2の下に位置する給紙部3に,給紙トレイ51,52,手差しトレイ53を有している。これらの各給紙部には,用紙Pが,積載により収容されている。また,給紙トレイ51,52,手差しトレイ53はそれぞれ,用紙Pの有無を検出するセンサー81,82,83を有している。センサー81,82,83は,給紙トレイ51,52,手差しトレイ53のそれぞれの用紙Pのエンプティーを検出するためのものである。
図1に示すように,給紙トレイ51,52の図1中右側にはそれぞれ,用紙Pを送り出すための給紙経路61,62が設けられている。また,手差しトレイ53の図1中左側には,用紙Pを送り出すための給紙経路63が設けられている。そして,給紙トレイ51,52,手差しトレイ53に収容された用紙Pは,その最上部のものより各給紙経路を通って搬送経路70へと搬送されるようになっている。
給紙部3より送り出された用紙Pの搬送経路70には,1対のレジストローラー71,2次転写ニップN1,定着装置72,排紙ローラー73がこの順で配置されている。搬送経路70のさらに下流側には,画像形成の完了した用紙Pが排出される排紙部74が設けられている。レジストローラー71は,用紙Pを2次転写ニップN1へ送り出すタイミングを微調整するためのものである。定着装置72は,用紙Pを加熱しつつ加圧することにより,用紙Pに転写されたトナー像の定着処理を行うためのものである。
また,本形態の画像形成装置1は,図1に示すように,両面搬送経路60を有している。両面搬送経路60は,一度,搬送経路70を通過した用紙Pを再度,搬送経路70に搬送するためのものである。これにより,画像形成装置1は,用紙Pの両面に画像を形成することができる。なお,給紙経路61,62,63,搬送経路70,両面搬送経路60の各所には,用紙Pの到達や通過を検出するためのセンサーが設けられている。
また,中間転写ベルト30の図1中左側を支持するローラー32は,図1中上下方向に移動することができる。さらに,画像形成部10K以外の画像形成部10Y,10M,10Cの1次転写ローラー15と,ベルトクリーナー41とについても,ローラー32とともに図1中上下方向に移動することができる。これにより,中間転写ベルト30は必要に応じて,画像形成部10K以外のカラーの画像形成部10Y,10M,10Cの感光体11に対して圧接状態あるいは離間状態となることができる。
また,2次転写ローラー40は,図1中左右方向に移動することができる。これにより,2次転写ローラー40は必要に応じて,中間転写ベルト30に対して圧接状態あるいは離間状態となることができる。
図2に,画像形成装置1の制御構成の概略を示す。画像形成装置1は,各部の制御を行うために,エンジン部4とコントローラー部5とを有している。エンジン部4は,全体の制御処理を行うCPU6と,本体に付属されている不揮発性メモリ7とを有している。
不揮発性メモリ7には,例えば,1次転写ニップY1,M1,C1,K1,2次転写ニップN1の各間の距離,給紙トレイ51,52や手差しトレイ53から2次転写ニップN1までの距離など,画像形成装置1の機械的寸法の値が記憶されている。また例えば,ローラー31の回転速度や各感光体11の回転速度,用紙Pの搬送速度などの値が記憶されている。
CPU6は,不揮発性メモリ7に記憶されている値に基づいて,画像形成装置1の各部を制御する。例えば,各露光装置13による静電潜像の形成開始のタイミングを調整することにより,中間転写ベルト30上にズレのないカラートナー像を形成する。また,各露光装置13による静電潜像を形成するタイミングと,給紙部3より用紙Pを給紙するタイミングとを調整することにより,これらの2次転写ニップN1への突入タイミングが合うように制御する。さらにCPU6は,搬送中の用紙Pの実際の位置を,給紙経路61,62,63,搬送経路70,両面搬送経路60の各所に設置されたセンサーより取得している。よってCPU6は,搬送を制御することによる用紙Pの目標位置と,搬送経路70などのセンサーより取得する実際の位置とを比較することにより,用紙Pのジャムの発生などを検出する。
またエンジン部4は,画像形成装置1に含まれている各種ユニット8を制御するとともに,各種ユニット付属の不揮発性メモリ9の書き込みや読み出しを行う。各種ユニット8には例えば,トナーボトルやイメージングユニットなどが含まれる。そして,各種ユニット付属の不揮発性メモリ9には,例えばトナーボトルに付属のメモリにはトナー残量など,イメージングユニットに付属のメモリには印刷枚数などが記憶されている。
また,コントローラー部5は,外部のパソコンなどに接続されて指示入力を受けるものである。例えば,画像形成指令をパソコンから受信することにより,画像形成装置1には画像形成ジョブが発生する。さらに,エンジン部4とコントローラー部5とで,ドットカウンタ値などの各種の情報がやりとりされる。
次に,本形態の画像形成装置1による,通常の画像形成動作の一例について簡単に説明する。以下の説明は,給紙トレイ51に収容されている用紙Pに,4色のトナーを用いてカラー画像を形成するカラーモードにおける画像形成動作の一例である。
通常のカラー画像の形成時においては,中間転写ベルト30は各色の感光体11に対して,2次転写ローラー40は中間転写ベルト30に対して,それぞれ圧接状態となっている。このため,図1に示すように,1次転写ニップY1,M1,C1,K1および2次転写ニップN1が形成されている。そして,通常のカラー画像の形成時には,中間転写ベルト30および各色の感光体11はそれぞれ,図1に矢印で示す向きに所定の周速度で回転される。
通常のカラー画像の形成時においては,まず,感光体11の外周面は,帯電装置12によりほぼ一様に帯電される。帯電された感光体11の外周面のそれぞれTODY,TODM,TODC,TODKの位置には,露光装置13によって画像データに応じた光が投射され,静電潜像が形成される。続いて,静電潜像は現像装置14によって現像され,感光体11上にはトナー像が形成される。各色のトナー像は,1次転写ニップY1,M1,C1,K1において,中間転写ベルト30上に転写(1次転写)される。すなわち,中間転写ベルト30上には,イエロー(Y),マゼンタ(M),シアン(C),ブラック(K)のトナー像がこの順で重ね合わされる。このため,イエロー(Y)に係る画像形成部10YのTODYにおいて最も早く,露光装置13による静電潜像の印字動作が開始される。その後,TODM,TODC,TODKの順に,露光装置13による静電潜像の印字動作が開始される。
また,中間転写ベルト30に転写されず,1次転写ローラー15を過ぎた後も感光体11上に残留している転写残トナーは,感光体クリーナー16によって掻き取られ,感光体11上から除去される。そして,重ね合わされた4色のトナー像は,中間転写ベルト30の回転によって2次転写ニップN1に搬送される。
一方,給紙トレイ51に収容されている用紙Pは,最上部のものから1枚ずつ給紙経路61に引き出される。引き出された用紙Pは,給紙経路61,搬送経路70の順に,これらに沿って2次転写ニップN1に搬送される。用紙Pの2次転写ニップN1への突入タイミングは,中間転写ベルト30上のトナー像の2次転写ニップN1への突入タイミングと一致するように,レジストローラー71により微調整される。これにより,2次転写ニップN1において,重ね合わされた4色のトナー像が用紙Pに転写(2次転写)される。
トナー像が転写された用紙Pは,さらに搬送経路70の下流側へと搬送される。つまり,用紙Pは,定着装置72によってトナー像が定着された後,排紙ローラー73によって排紙部74に排出される。なお,2次転写ニップN1を通過した後も中間転写ベルト30上に残留する転写残トナーは,ベルトクリーナー41によって回収される。これにより,中間転写ベルト30上から除去される。
なお,用紙Pに対して両面印刷を行う場合,搬送経路70を通過することにより第1面に画像の形成された用紙Pは,排紙ローラー73によって両面搬送経路60に搬送される。そして,両面搬送経路60を通過した用紙Pは再度,レジストローラー71より搬送経路70に搬送される。これにより,用紙Pの第1面とは反対の第2面に画像を形成することができる。このようにして両面に画像が形成された用紙Pはその後,排紙部74へと排出される。
ここで本形態の画像形成装置1においては,用紙Pが2次転写ニップN1に到達することができないことにより,その用紙Pに対応するトナー像を廃棄処理しなければならないことがある。この廃棄トナー像が発生する場合には,用紙Pのエンプティーによる場合,用紙Pのジャムによる場合などがある。まず,給紙トレイ51の用紙Pを用いてカラー画像を形成する場合の廃棄トナー像の発生について説明する。
本形態の画像形成装置1においては,感光体11の回転による感光体11表面の移動速度,ローラー31の回転による中間転写ベルト30表面の移動速度,給紙経路61や搬送経路70などを搬送される用紙Pの搬送速度などのシステム速度はいずれも,同じである。1次転写ニップY1,M1,C1,K1や2次転写ニップN1におけるトナー像の転写を,ズレのないように行うためである。
また画像形成装置1において,給紙トレイ51から2次転写ニップN1までの長さは,TODYから2次転写ニップN1までの長さよりも短い。給紙トレイ51から2次転写ニップN1までの長さは,給紙経路61の長さと,搬送経路70における給紙経路61との合流地点から2次転写ニップN1までの長さとの合計の長さである。TODYから2次転写ニップN1までの長さは,感光体11表面のTODYから1次転写ニップY1までの回転方向における長さと,中間転写ベルト30表面の1次転写ニップY1から2次転写ニップN1までの回転方向における長さとの合計の長さである。
このため,画像形成装置1では,給紙トレイ51の用紙Pにカラー画像を形成する場合,TODYにおける静電潜像の形成を,用紙Pの給紙よりも先に行う印字先行型の制御により画像を形成する。トナー像と用紙Pとの,2次転写ニップN1への突入タイミングを合わせるためである。
この印字先行型でカラー画像を印刷する場合,用紙Pのエンプティー,ジャムのいずれよっても,廃棄トナー像が発生することがある。用紙Pのエンプティーにより廃棄トナー像が発生するのは,複数のカラー画像のジョブを連続して行うカラー連続印刷において,そのカラー連続印刷中の2枚目以降の画像形成に係る用紙Pのエンプティーが検出された場合である。
すなわち,センサー81により,カラー連続印刷中の2枚目以降の画像形成に係る用紙Pが給紙トレイ51にないことが検出された場合,その用紙Pのエンプティーが検出されたときにはすでに,TODYにおける印字処理が開始されていることがある。一旦,静電潜像を形成し始めた露光装置13は,その画像データに係る印字処理を最後まで完了させなければならない。しかし,形成されたトナー像は,用紙Pのエンプティーにより2次転写ニップN1において転写対象が存在しないため,廃棄処理しなければならない廃棄トナー像となる。
また,印字先行型でカラー画像を印刷する際のジャムの発生により廃棄トナー像が発生するのは,用紙Pが給紙経路61あるいは搬送経路70の2次転写ニップN1より上流側で詰まった場合である。この用紙Pのジャムが検出されたときにおいてもすでに,TODYにおける印字処理が開始されている。よって,このようなジャムの発生時においても,ジャムの検出された用紙Pに係るトナー像は,廃棄トナー像となる。
また画像形成装置1においては,手差しトレイ53から2次転写ニップN1までの長さは,TODYから2次転写ニップN1までの長さよりも短い。手差しトレイ53から2次転写ニップN1までの長さは,給紙経路63の長さと,搬送経路70における給紙経路63との合流地点から2次転写ニップN1までの長さとの合計の長さである。このため,手差しトレイ53の用紙Pにカラー画像を形成する場合にも,印字先行型の制御により画像形成を行う。よって,手差しトレイ53の用紙Pにカラー連続印刷を行う場合についても上記の給紙トレイ51と同様に,2枚目以降の用紙Pのエンプティー,およびジャムの発生により廃棄トナー像が発生する。
一方,画像形成装置1において,給紙トレイ52から2次転写ニップN1までの長さは,TODYから2次転写ニップN1までの長さよりも長い。給紙トレイ52から2次転写ニップN1までの長さは,給紙経路62の長さと,搬送経路70における給紙経路62との合流地点から2次転写ニップN1までの長さとの合計の長さである。このため,給紙トレイ52の用紙Pにカラー画像を形成する場合には,用紙Pの給紙を,TODYの位置における静電潜像の形成よりも先に行う給紙先行型の制御により画像を形成する。
このため,給紙トレイ52の用紙Pにカラー画像を形成する場合には,2枚目以降の用紙Pのエンプティーが検出されることにより,廃棄トナー像が発生することはない。用紙Pのエンプティーが検出された時にはまだ,TODYにおける印字処理が開始されていないからである。しかし,給紙トレイ52の用紙Pにカラー画像を形成する際のジャムの発生時には,そのジャムが発生した位置により,廃棄トナー像が発生する場合がある。すなわち,用紙Pのジャムの発生が検出された時に,すでにTODYの位置における印字処理が開始されていた場合である。
なお,連続印刷において1枚目の用紙Pがエンプティーである場合,その検出は,TODYの位置における印字処理の開始前に可能である。画像形成ジョブが入力されたとき,すでに用紙Pがないからである。よって,連続印刷の1枚目の用紙Pがエンプティーである場合には,廃棄トナー像が発生することはない。
また,本形態の画像形成装置1では,給紙トレイ51から2次転写ニップN1までの長さは,TODKから2次転写ニップN1までの長さよりも長い。給紙トレイ52および手差しトレイ53においても同様である。なお,TODKから2次転写ニップN1までの長さは,感光体11表面のTODKから1次転写ニップK1までの回転方向における長さと,中間転写ベルト30表面の1次転写ニップK1から2次転写ニップN1までの回転方向における長さとの合計の長さである。
このため,画像形成装置1は,給紙トレイ51,52,手差しトレイ53のいずれの用紙Pにモノクロ画像を形成する場合であっても,給紙先行型の制御により画像を形成する。よって,複数のモノクロ画像を連続印刷する場合においては,用紙Pのエンプティーが検出されることにより,廃棄トナー像が発生することはない。しかし,給紙トレイ51,52,手差しトレイ53のいずれの用紙Pにモノクロ画像を形成する場合であっても,用紙Pのジャムの発生が検出されたとき,すでにTODKの位置における印字処理が開始されていた場合には,廃棄トナー像が発生する。
上記のように,カラー連続印刷に係る2枚目以降の用紙Pのエンプティー,あるいは用紙Pのジャムにより,廃棄トナー像が発生する。このような廃棄トナー像の発生した場合であっても,画像形成装置1に入力済みの画像形成ジョブに係る画像形成動作を続行できることがある。例えば,カラー連続印刷中において,給紙トレイ51の2枚目の用紙Pがエンプティーである場合でも,給紙トレイ52の用紙Pを用いて画像形成を続行することができる場合である。また例えば,給紙経路61においてジャムが発生しているが,そのジャムに係る用紙Pが給紙トレイ52の給紙経路62および搬送経路70を塞いでおらず,給紙トレイ52の用紙Pを用いて画像形成を続行することができる場合である。
また例えば,両面印刷時であって,給紙部3においてジャムが発生しているが,そのジャムに係る用紙Pが搬送経路70と両面搬送経路60との合流地点より下流側を塞いでいない場合である。この場合には,両面搬送経路60を搬送中の用紙Pの第2面の画像を形成することが可能である。よって,これらのように,すでに入力されているジョブの画像形成が続行できる場合には,これら用紙Pのエンプティー,ジャムの発生した状態をユーザーに知らせるとともに,画像形成動作を続行することが好ましい。さらには,発生した廃棄トナー像の廃棄処理は,できるだけ早く完了させることが好ましい。廃棄トナー像の廃棄処理の後の画像形成をより早く再開できるため,画像形成の生産性を高めることができるからである。
ここで前述のように,画像形成装置1では,2次転写ローラー40を中間転写ベルト30に対して,圧接状態あるいは離間状態とすることができる。また,中間転写ベルト30は,画像形成部10Y,10M,10Cの感光体11に対して,圧接状態あるいは離間状態とすることができる。そして,通常のカラー画像の形成時の2次転写ローラー40は,2次転写ニップN1を形成するため,圧接状態とされている。中間転写ベルト30についても,1次転写ニップY1,M1,C1を形成するため,各感光体11に対して圧接状態とされている。
画像形成装置1は,廃棄トナー像の発生時には,これら2次転写ローラー40および中間転写ベルト30の圧接,離間状態を制御しつつ,廃棄トナー像の廃棄処理を行う。すなわち,2次転写ローラー40を離間状態とすることにより,中間転写ベルト30上に1次転写された廃棄トナー像が2次転写ローラー40の圧接位置を通過する際の,廃棄トナー像の2次転写ローラー40の表面への付着を防止することができる。また,中間転写ベルト30を離間状態とすることにより,感光体11上に形成された廃棄トナー像の中間転写ベルト30上への1次転写を防止することができる。そして以下,2次転写ローラー40および中間転写ベルト30の圧接,離間状態を制御しつつ行う廃棄トナー像の廃棄処理方法について,図3から図8により説明する。
図3などに示すN2は,中間転写ベルト30上の2次転写ニップN1から5mm,中間転写ベルト30の回転方向における下流側の位置である。F2は,搬送経路70上の2次転写ニップN1から5mm,搬送経路70の搬送方向における下流側の位置である。また,K2は,中間転写ベルト30上の1次転写ニップK1から5mm,中間転写ベルト30の回転方向における下流側の位置である。
画像形成装置1の仕様を次に示す。
システム速度(V):0.3[mm/ms]
Y1からF2までの長さ(L1):260[mm]
K2からN2までの長さ(L2):75[mm]
2次転写ローラー40の圧接,離間に要する時間(TR):200[ms]
中間転写ベルト30の圧接,離間に要する時間(TB):500[ms]
<A4使用時>
A4の搬送方向の長さ(LA4):210[mm]
A4印刷時の用紙間距離(LP4):20[mm]
A4用紙ピッチ(PA4):230[mm](LA4+LP4)
<A3使用時>
A3の搬送方向の長さ(LA3):420[mm]
A3印刷時の用紙間距離(LP3):100[mm]
A3用紙ピッチ(PA3):520[mm](LA3+LP3)
なお,これら画像形成装置1の仕様はすべて,設計上,既知の値である。
まず,給紙トレイ51に収容されたA4の用紙Pを用いたカラー画像の連続印刷中において,2枚目以降の用紙Pのエンプティーが検出されたことにより発生した廃棄トナー像を,中間転写ベルト30を離間状態として廃棄処理する場合について説明する。図3は,給紙トレイ51に収容されたA4の用紙Pを用い,複数のカラー画像を連続印刷している途中の状態を示している。図3において,2次転写ニップN1を通過中のトナー像T1と用紙P1とについては,正常に画像形成処理がなされている。なお,用紙P1が給紙された後,給紙トレイ51には用紙Pが存在しない。しかし,図3の状態ではまだ,用紙P1がセンサー81により検出される位置にある。このため,画像形成装置1は,給紙トレイ51のエンプティーを検出していない。
ここで前述したように,本形態の画像形成装置1は,給紙トレイ51の用紙Pを用いてカラー画像の形成を行う場合,印字先行型の制御により画像形成を行う。このため図3では,給紙トレイ51のエンプティーが検出される前に,画像形成部10Yにおいて,トナー像T1の次のトナー像T2のTODYにおける印字処理が開始されている。さらに図3では,TODYにおいて形成されたトナー像T2に係る静電潜像の,現像装置14による現像が開始されている。
そして,図3の状態の後,用紙P1の後端がセンサー81の検出位置を通過することにより,給紙トレイ51がエンプティーであることが検出される。すでにTODYにおける印字処理の開始されているトナー像T2は,1次転写ニップY1により中間転写ベルト30上に転写されることとなる。しかし,中間転写ベルト30上に転写されたトナー像T2は,2次転写ニップN1において転写対象が無いため,廃棄トナー像T2となる。
ただし,図3のように用紙P1とトナー像T1とが2次転写ニップN1を通過している途中の状態においては,2次転写ローラー40および中間転写ベルト30はいずれも,離間状態とすることができない。2次転写ローラー40を離間させた場合,2次転写ニップN1が解除され,トナー像T1の用紙P1への2次転写が適切にされなくなるからである。また,中間転写ベルト30を離間させる際には,わずかながら振動が発生する。この中間転写ベルト30の離間に伴う振動により,用紙P1に2次転写されているトナー像T1にノイズが発生するおそれがあるからである。
よって,2次転写ローラー40および中間転写ベルト30の離間はいずれも,トナー像T1および用紙P1が2次転写ニップN1を通過し,トナー像T1の用紙P1への2次転写が完了した後に開始される。本形態においては,図4に示すように,用紙P1の後端が搬送によってF2に到達したときに,2次転写ローラー40および中間転写ベルト30の離間を開始する。なお,図4に示す2次転写ローラー40および中間転写ベルト30の位置はいずれも,これらが完全な離間状態となったときの位置である。しかし,実際の用紙P1の後端がF2に到達したときの2次転写ローラー40および中間転写ベルト30の状態は,圧接状態から離間が開始されるときの状態である。
ここで上記のように,A4用紙ピッチ(PA4)は,230mmである。また,1次転写ニップY1からF2までの長さ(L1)は,260mmである。つまり,用紙PがA4の場合には,A4用紙ピッチ(PA4)よりも,1次転写ニップY1からF2までの長さ(L1)の方が長い。このため,2次転写ローラー40および中間転写ベルト30の離間が開始されるときにはすでに,1次転写ニップY1における廃棄トナー像T2の中間転写ベルト30への1次転写はすべて完了している。よって,図4に示す中間転写ベルト30上のイエロートナーによる廃棄トナー像T2の長さ(LT2)は,入力された画像データであるA4の搬送方向の長さ(LA4)と同じ210mmである。
なお,図4に示すように,中間転写ベルト30を離間状態としたことにより,1次転写ニップY1,M1,C1は解除される。このため,画像形成部10M,10Cにより形成されたマゼンタ,シアンのトナー像の一部は,中間転写ベルト30上のイエロートナーの廃棄トナー像T2の上に1次転写されている。しかし,この1次転写されたマゼンタ,シアンのトナー像の長さは,イエロートナーの廃棄トナー像T2よりも短い。なお,画像形成部10M,10Cの感光体11上には,中間転写ベルト30に転写されないトナー像が残ることとなる。この残留廃棄トナー像についてはその後,画像形成部10M,10Cの感光体クリーナー16によってそれぞれの感光体11上から除去される。
一方,中間転写ベルト30を離間状態とした状態においても,1次転写ニップK1は形成されたままである。このため,中間転写ベルト30が離間状態であっても,画像形成部10Kにより形成されるトナー像はすべて,中間転写ベルト30上に1次転写される。これにより,中間転写ベルト30上に形成される廃棄トナー像T2は,少なくともイエローおよびブラックのトナーによる2層以上のものとなる。
廃棄トナー像T2は,図4に示す状態の後,中間転写ベルト30の回転によって搬送される。なお,2次転写ニップN1は解除されているため,廃棄トナー像T2が2次転写ローラー40の表面に付着することはない。そして,搬送された廃棄トナー像T2は,ベルトクリーナー41を通過する。これにより,中間転写ベルト30上から回収される。
ここで,廃棄トナー像T2は,少なくともイエローおよびブラックのトナーによる2層以上の,それも2次転写ニップN1を通過した後の転写残トナーではない完全なトナー像である。このため,トナーの付着量が多い。よって,ベルトクリーナー41は,廃棄トナー像T2を1回クリーニングしただけでは,これを中間転写ベルト30上から完全に除去することができないことがある。つまり,図5に示すように,ベルトクリーナー41を通過した後にも,中間転写ベルト30上には,廃棄トナー像T2の跡が残ってしまうことがある。
このため,画像形成装置1では,中間転写ベルト30における廃棄トナー像T2を担持する位置が,次の画像形成がなされるまでの間に2回,ベルトクリーナー41を通過するようにする。次に形成される画像に,廃棄トナー像T2によるゴーストが混入することを防止するためである。よって,図5に示すように,中間転写ベルト30および2次転写ローラー40を離間状態としたまま,廃棄トナー像T2を搬送する。
そして,中間転写ベルト30については,図5に示す状態の後であって,中間転写ベルト30上の廃棄トナー像T2が,すべての感光体11の圧接位置を通過した後,圧接を開始する。図5に示すような状態で中間転写ベルト30を圧接させた場合,廃棄トナー像T2と各感光体11とが接触することとなる。よって,その接触の衝撃により,廃棄トナー像T2の粉煙が画像形成装置1内に飛散することを防止するためである。なお,本形態においては,廃棄トナー像T2の後端が1次転写ニップK1より5mm下流側のK2の位置に到達したときを,廃棄トナー像T2がすべての感光体11の圧接位置を通過したときとする。画像形成部10Kが,中間転写ベルト30の回転方向の最も下流側に位置しているからである。またこれにより,廃棄トナー像T2は,中間転写ベルト30上に転写されてから2回,画像形成部10Kの感光体11の圧接位置を通過することとなる。
2次転写ローラー40については,図5に示す状態の後であって,廃棄トナー像T2が2次転写ローラー40の圧接位置を通過した後,圧接を開始する。廃棄トナー像T2が2次転写ローラー40の圧接位置を通過する前の状態で2次転写ローラー40を圧接させた場合,廃棄トナー像T2は2次転写ニップN1を通過することとなる。その際には,廃棄トナー像T2は2次転写ローラー40に付着する。そして,2次転写ローラー40に付着した廃棄トナー像T2は,その後の画像形成において用紙Pに転写され,用紙Pには裏汚れが発生してしまうからである。なお,本形態においては,廃棄トナー像T2の後端が2次転写ニップN1より5mm下流側のN2の位置に到達したときを,廃棄トナー像T2が2次転写ローラー40の圧接位置を通過したときとする。またこれにより,廃棄トナー像T2は,中間転写ベルト30上に転写されてから2回,2次転写ローラー40の圧接位置を通過することとなる。
図6に,中間転写ベルト30および2次転写ローラー40がいずれも圧接状態となったときを示す。図6の状態ではまだ,中間転写ベルト30上に廃棄トナー像T2が残っている。しかし,廃棄トナー像T2は,次の画像形成に伴って中間転写ベルト30が回転することにより,ベルトクリーナー41を通過する。この廃棄トナー像T2のベルトクリーナー41の通過は,2回目である。つまり,廃棄トナー像T2は,次の画像が形成されるまでに2回,ベルトクリーナー41によりクリーニングされる。これにより,廃棄トナー像T2は,中間転写ベルト30上から確実に除去される。このため,図6の状態より後に形成が開始される画像に,廃棄トナー像T2のゴーストが混入することはない。
なお,本形態のベルトクリーナー41は,2次転写ニップN1において正常に2次転写がなされた後にも中間転写ベルト30上に残留している転写残トナーについては当然,1回のクリーニングにより確実に中間転写ベルト30上から除去することができる。また,ベルトクリーナー41は,単色のトナーによる単層のトナー像程度であれば,転写残トナーと同様に,1回のクリーニングにより除去することが可能である。
そして,図6に示す状態が,次の画像形成動作を再開できる状態である。よって,画像形成装置1は,給紙トレイ52や手差しトレイ53の用紙Pを用い,廃棄トナー像T2と同じ画像の形成を開始することができる。あるいは,両面印刷時であれば,両面搬送経路60を通過中の用紙Pについて,その第2面の画像の形成を開始することができる。また,図6に示す次の画像形成動作を再開できるタイミングは,中間転写ベルト30と2次転写ローラー40とのうち,圧接の完了するタイミングの遅い方のタイミングである。
2次転写ローラー40の圧接が完了するタイミングは,廃棄トナー像T2の先端がN2に到達したときを基準に,廃棄トナー像T2が先端から後端までN2を通過するのに要する時間と,2次転写ローラー40が圧接に要する時間(TR)との和により算出される。廃棄トナー像T2が先端から後端までN2を通過するのに要する時間は,廃棄トナー像T2の長さ(LT2)を,廃棄トナー像T2の搬送速度であるシステム速度(V)で除することにより算出される。よって,2次転写ローラー40の圧接が完了するタイミングは,廃棄トナー像T2の先端がN2に到達したときを基準とした場合,以下の式(1)により表わされる。
(LT2/V)+TR (1)
ここで前述したように,中間転写ベルト30上の廃棄トナー像T2の長さ(LT2)は,210mmである。よって,式(1)より,2次転写ローラー40の圧接が完了するタイミングは,廃棄トナー像T2の先端がN2に到達したときより,900ms後である。
一方,中間転写ベルト30の圧接が完了するタイミングは,廃棄トナー像T2の先端がK2に到達したときを基準に,廃棄トナー像T2が先端から後端までK2を通過するのに要する時間と,中間転写ベルト30が圧接に要する時間(TB)との和により算出される。廃棄トナー像T2が先端から後端までK2を通過するのに要する時間は,上記の廃棄トナー像T2が先端から後端までN2を通過するのに要する時間と同じである。このため,中間転写ベルト30の圧接が完了するタイミングは,廃棄トナー像T2の先端がK2に到達したときを基準とした場合,以下の式(2)により表わされる。
(LT2/V)+TB (2)
また,中間転写ベルト30の圧接が完了するタイミングを,廃棄トナー像T2の先端がN2に到達したときを基準として算出する場合には,式(2)よりシステム速度(V)におけるK2からN2までの移動時間を減ずればよい。K2からN2までの移動時間は,K2からN2までの長さ(L2)を,廃棄トナー像T2の搬送速度であるシステム速度(V)で除することにより算出される。よって,中間転写ベルト30の圧接が完了するタイミングは,廃棄トナー像T2の先端がN2に到達したときを基準とした場合,以下の式(3)により表わされる。
(LT2/V)+TB−(L2/V) (3)
よって,式(3)より,中間転写ベルト30の圧接が完了するタイミングは,廃棄トナー像T2の先端がN2に到達したときより,950ms後である。
従って,中間転写ベルト30の圧接が完了するタイミングの方が,2次転写ローラー40の圧接が完了するタイミングよりも50ms遅いことがわかる。よって,給紙トレイ51のA4の用紙Pを用いた画像形成時において発生した廃棄トナー像T2を,中間転写ベルト30を離間状態として廃棄処理した場合,廃棄トナー像T2の先端がN2に到達したときより950ms後に,次の画像形成を開始することができる。この中間転写ベルト30を離間状態として廃棄トナー像T2を廃棄処理した場合の次の画像形成が再開できるタイミングを,第1再開タイミングとする。なお,中間転写ベルト30の離間時に画像形成部10M,10Yの感光体11上に残っていたトナー像は(図4),中間転写ベルト30や2次転写ローラー40の圧接が完了するまでには,感光体クリーナー16によって感光体11上から除去されている。
次に,給紙トレイ51に収容されたA4の用紙Pを用いたカラー画像の連続印刷中において,2枚目以降の用紙Pのエンプティーが検出されたことにより発生した廃棄トナー像を,中間転写ベルト30を圧接状態としたまま廃棄処理する場合について説明する。この場合においても,図3に示す廃棄トナー像T2の発生,図4に示す2次転写ローラー40の離間の開始のタイミングについては,上記の中間転写ベルト30を離間状態とする場合と同じである。
しかし,中間転写ベルト30を圧接状態としたまま,廃棄トナー像T2の廃棄処理を行う。このため,画像形成部10Y,10M,10C,10Kにおいて現像されたトナー像はすべて,各感光体11から中間転写ベルト30上に転写される。1次転写ニップY1,M1,C1,K1がいずれも,形成されたままだからである。これにより,中間転写ベルト30上の廃棄トナー像T2の長さ(LT2)は,入力された画像データであるA4の搬送方向の長さ(LA4)と同じ210mmである。また,廃棄トナー像T2は,イエロー,マゼンタ,シアン,ブラックのトナーによる4層の,トナーの付着量が多いトナー像である。そして,画像形成装置1は,中間転写ベルト30における廃棄トナー像T2を担持する位置が,次の画像形成がなされるまでの間に2回,ベルトクリーナー41を通過するようにする。
なお,中間転写ベルト30は圧接状態のままであるため,2次転写ローラー40の圧接が完了したときが,次の画像形成を再開できるタイミングとなる。そして,2次転写ローラー40の圧接は,ベルトクリーナー41を1回通過した廃棄トナー像T2の後端がN2に到達したとき開始される。
つまり,2次転写ローラー40の圧接が完了するタイミングは,廃棄トナー像T2の先端がN2に到達したときを基準とした場合,上記の中間転写ベルト30を離間状態としたときと同様の式(1)により表わされる。ここで前述したように,中間転写ベルト30上の廃棄トナー像T2の長さ(LT2)は,210mmである。
すなわち,中間転写ベルト30を圧接状態としたままA4の廃棄トナー像T2の廃棄処理した場合,廃棄トナー像T2の先端がN2に到達したときより900ms後に,次の画像形成を開始することができる。この中間転写ベルト30を圧接状態のまま廃棄トナー像T2を廃棄処理した場合の次の画像形成が再開できるタイミングを,第2再開タイミングとする。よって,第2再開タイミングは,上記の第1再開タイミングよりも50ms早い。従って,画像形成装置1では,給紙トレイ51のA4の用紙を用いたカラー画像形成時に廃棄トナー像T2が発生した場合,これを中間転写ベルト30を圧接状態としたまま廃棄処理した方が,離間状態として廃棄処理するよりも早く,次の画像形成を再開できる。
次に,給紙トレイ51に収容されたA3の用紙Pを用いたカラー画像の連続印刷中において,2枚目以降の用紙Pのエンプティーが検出されたことにより発生した廃棄トナー像を,中間転写ベルト30を離間状態として廃棄処理する場合について説明する。この場合においても,廃棄トナー像T2の発生については,図3において説明した用紙PがA4の場合と同じである。
また,図7に,2次転写ローラー40および中間転写ベルト30の離間が開始されるときを示す。なお,図7に示す2次転写ローラー40および中間転写ベルト30の位置はいずれも,これらが完全な離間状態となったときの位置である。しかし,実際の用紙P1の後端がF2に到達したときの2次転写ローラー40および中間転写ベルト30の状態は,圧接状態から離間が開始されるときの状態である。ここで上記のように,A3印刷時の用紙間距離(LP3)は100mmである。つまり,A3印刷時の用紙間距離(LP3)は,1次転写ニップY1からF2までの長さ(L1)である260mmよりも短い。このため,図7ではすでに,画像形成部10Yから中間転写ベルト30上への,廃棄トナー像T2の1次転写が開始されている。なお,画像形成部10M,10Cについても同様に,1次転写が開始されている。
また,A3用紙ピッチ(PA3)は,520mmである。このため,用紙PがA3の場合には,A3用紙ピッチ(PA3)よりも,1次転写ニップY1からF2までの長さ(L1)の方が短い。このため,図7に示す中間転写ベルト30の離間が開始されるときは,1次転写ニップY1における廃棄トナー像T2の中間転写ベルト30への1次転写がすべて完了する前である。このため,中間転写ベルト30に1次転写されるイエロートナーによる廃棄トナー像T2の長さ(LT2)は,入力された画像データであるA3の搬送方向の長さ(LA3)よりも短い。具体的には,図7に示すイエロートナーによる中間転写ベルト30上の廃棄トナー像T2の長さ(LT2)は,1次転写ニップY1からF2までの長さ(L1)から,A3印刷時の用紙間距離(LP3)を減じた160mmである。
なお,マゼンタ,シアンのトナーについても,中間転写ベルト30上のイエロートナーによる廃棄トナー像T2の上に転写されている。ただし,中間転写ベルト30上に転写されるマゼンタ,シアンのトナー像の長さは,イエロートナーによる廃棄トナー像T2の長さ(LT2)よりも短い。
一方,図7に示す状態ではまだ,画像形成部10Kから中間転写ベルト30上への1次転写は開始されていない。しかし,中間転写ベルト30を離間状態としても,1次転写ニップK1は形成されたままである。このため,画像形成部10Kにより形成されるトナー像はすべて,中間転写ベルト30上に1次転写される。これにより,中間転写ベルト30上に転写されるブラックトナーによるトナー像の長さは,入力された画像データであるA3の搬送方向の長さ(LA3)と同じ420mmである。つまり,ブラックのトナー像は,図7に示す廃棄トナー像T2の上,さらには,廃棄トナー像T2の後端よりも中間転写ベルト30の回転方向の下流側にも転写される。
中間転写ベルト30上に1次転写された廃棄トナー像T2が,ベルトクリーナー41を通過している状態を図8に示す。図8には,少なくともイエローとブラックとのトナーによる2層以上の廃棄トナー像T2を,太い実線により示している。また,ブラックトナーのみによる単層のブラックトナー像T2Kを,太い破線により示している。つまり,図8に示す中間転写ベルト30上の廃棄トナー像T2の長さ(LT2)は,160mmである。ブラックトナー像T2Kの長さは,A3の搬送方向の長さ(LA3)から160mmを減じた260mmである。
2層以上の廃棄トナー像T2は付着量が多いトナー像であるため,中間転写ベルト30における廃棄トナー像T2を担持する位置については,次の画像形成がなされるまでの間に2回,ベルトクリーナー41を通過させなければならない。一方,単層のブラックトナー像T2Kについては付着量が比較的少ない。このため,ブラックトナー像T2Kについては,ベルトクリーナー41を1回通過するだけで中間転写ベルト30上から除去される。つまり,ベルトクリーナー41を1回通過した後にも中間転写ベルト30上に残るのは,図8に太い実線で示す廃棄トナー像T2のみである。
このため,中間転写ベルト30は,図8に示す状態の後であって,廃棄トナー像T2の後端がK2に到達したときに圧接を開始する。また,2次転写ローラー40は,廃棄トナー像T2の後端がN2に到達したときに圧接を開始する。そして,中間転写ベルト30を離間状態として廃棄トナー像T2を廃棄処理した場合の次の画像形成が再開できる第1再開タイミングは,中間転写ベルト30と2次転写ローラー40とのうち,圧接の完了するタイミングの遅い方のタイミングである。
2次転写ローラー40の圧接が完了するタイミングは,廃棄トナー像T2の先端がN2に到達したときを基準とした場合,上記A4の場合と同様の式(1)により表わされる。ここで前述したように,中間転写ベルト30上の廃棄トナー像T2の長さ(LT2)は,160mmである。よって,式(1)より,2次転写ローラー40の圧接が完了するタイミングは,廃棄トナー像T2の先端がN2に到達したときより,約733ms後である。
一方,中間転写ベルト30の圧接が完了するタイミングは,廃棄トナー像T2の先端がK2に到達したときを基準とした場合,上記A4の場合と同様の式(2)により表わされる。また,中間転写ベルト30の圧接が完了するタイミングは,廃棄トナー像T2の先端がN2に到達したときを基準とした場合,上記A4の場合と同様の式(3)により表わされる。よって,式(3)より,中間転写ベルト30の圧接が完了するタイミングは,廃棄トナー像T2の先端がN2に到達したときより,約783ms後である。
従って,中間転写ベルト30の圧接が完了するタイミングの方が,2次転写ローラー40の圧接が完了するタイミングよりも50ms程度遅いことがわかる。よって,給紙トレイ51のA3の用紙Pを用いたカラー画像形成時において廃棄トナー像T2が発生した場合の第1再開タイミングは,廃棄トナー像T2の先端がN2に到達したときより約783ms後である。
次に,給紙トレイ51に収容されたA3の用紙Pを用いたカラー画像の連続印刷中において,2枚目以降の用紙Pのエンプティーが検出されたことにより発生した廃棄トナー像を,中間転写ベルト30を圧接状態としたまま廃棄処理する場合について説明する。この場合でも,廃棄トナー像T2の発生については,図3において説明した用紙PがA4の場合と同じである。
しかし,中間転写ベルト30を圧接状態としたまま,廃棄トナー像T2の廃棄処理を行う。このため,画像形成部10Y,10M,10C,10Kにおいて現像されたトナー像はすべて,各感光体11から中間転写ベルト30上に転写される。これにより,中間転写ベルト30上の廃棄トナー像T2は,イエロー,マゼンタ,シアン,ブラックのトナーによる4層の,トナーの付着量が多いトナー像である。そして,画像形成装置1は,中間転写ベルト30における廃棄トナー像T2を担持する位置が,次の画像形成がなされるまでの間に2回,ベルトクリーナー41を通過するようにする。また,中間転写ベルト30上の廃棄トナー像T2の長さ(LT2)は,入力された画像データであるA4の搬送方向の長さ(LA4)と同じ420mmである。
なお,中間転写ベルト30は圧接状態のままであるため,2次転写ローラー40の圧接が完了したときが,次の画像形成を再開できる第2再開タイミングである。また,2次転写ローラー40の圧接は,ベルトクリーナー41を1回通過した廃棄トナー像T2の後端がN2に到達したとき開始される。つまり,2次転写ローラー40の圧接が完了するタイミングは,廃棄トナー像T2の先端がN2に到達したときを基準とした場合,上記の式(1)により表わされる。ここで前述したように,中間転写ベルト30上の廃棄トナー像T2の長さ(LT2)は,420mmである。
よって,給紙トレイ51のA3の用紙Pを用いたカラー画像形成時において廃棄トナー像T2が発生した場合の第2再開タイミングは,廃棄トナー像T2の先端がN2に到達したときより1600ms後である。これは,上記の第1再開タイミングよりも約817ms遅い。従って,画像形成装置1では,給紙トレイ51のA3の用紙を用いたカラー画像形成時に廃棄トナー像T2が発生した場合,これを中間転写ベルト30を離間状態として廃棄処理した方が,圧接状態としたまま廃棄処理するよりも早く,次の画像形成を再開できる。
なお,上記では,給紙トレイ51の用紙Pを用いたカラー画像の連続印刷中において,2枚目以降の用紙Pのエンプティーが検出されたことにより発生した廃棄トナー像の処理方法について説明している。しかし,手差しトレイ53の用紙Pを用いたカラー画像の連続印刷中において,2枚目以降の用紙Pのエンプティーが検出されたことにより発生した廃棄トナー像の処理方法についても同様である。また,用紙Pのジャムにより廃棄トナー像が発生した場合の処理方法についても同様である。すなわち,これらの場合においても,中間転写ベルト30上の廃棄トナー像T2の長さ(LT2),第1再開タイミング,第2再開タイミングなどはすべて,設計上既知である画像形成装置1の仕様の値により算出することが可能である。また,設計上既知である画像形成装置1の仕様の値は,本体に付属されている不揮発性メモリ7に記憶されている。
そして以下,本形態の画像形成装置1のCPU6により行われる廃棄トナー像が発生した場合の廃棄トナー像の処理手順について,図9のフローチャートにより説明する。CPU6は,画像形成装置1に画像形成のジョブが入力されるとともに,図9に示すフローを開始する。つまり,CPU6は,画像形成装置1による画像形成動作を開始するとともに,廃棄トナー像が発生したか否かの判断を開始する(S101)。すなわち,前述した中間転写ベルト30上の廃棄トナー像の発生するような,連続印刷中の用紙Pのエンプティー,ジャムの発生などの検出を開始する。
そして,廃棄トナー像の発生を検出した場合には(S101:YES),まず,第1再開タイミングと第2再開タイミングとを算出する(S102)。前述したように,第1再開タイミングは,中間転写ベルト30を離間状態として廃棄トナー像の廃棄処理を行った場合の,次の画像形成を再開できるタイミングである。また,第2再開タイミングは,中間転写ベルト30を圧接状態のまま廃棄トナー像の廃棄処理を行った場合の,次の画像形成を再開できるタイミングである。また,第1,第2再開タイミングはいずれも,不揮発性メモリ7に記憶されている画像形成装置1の仕様より算出される。
次に,廃棄トナー像の前の画像形成に係るトナー像および用紙Pが,2次転写ニップN1を通過したか否かを判断する(S103)。前述したように,本形態においては,廃棄トナー像の前の画像形成に係る用紙Pの後端が,搬送経路70上の2次転写ニップN1から5mm下流側の位置F2に到達したときに,用紙Pが2次転写ニップN1を通過したと判断する。
そして,廃棄トナー像の前の画像形成に係る用紙Pが2次転写ニップN1を通過したと判断したとき(S103:YES),2次転写ローラー40の離間を開始する(S104)。また,ステップS102において算出した第1再開タイミングと第2再開タイミングとの比較を行う(S105)。
そして,第1再開タイミングの方が遅いと判断される場合には(S105:YES),中間転写ベルト30を圧接状態のまま,廃棄トナー像の廃棄処理を行う。すなわち,廃棄トナー像に係る画像データの長さを,中間転写ベルト30上の廃棄トナー像の長さとする(S106)。また,その廃棄トナー像が,ベルトクリーナー41を通過後(S107:YES),2次転写ローラー40の圧接位置を通過したか否かを判断する(S113)。本形態においては,廃棄トナー像の後端が,中間転写ベルト30上の2次転写ニップN1から5mm下流側の位置N2に到達したときに,廃棄トナー像が2次転写ローラー40の圧接位置を通過したと判断する。なお,ステップS113で判断される通過は,廃棄トナー像の,2次転写ローラー40の圧接位置の2回目の通過である。廃棄トナー像が,2次転写ローラー40の圧接位置を通過したと判断したとき(S113:YES),2次転写ローラー40の圧接を開始する(S114)。そして,2次転写ローラー40が圧接状態となったとき(S115:YES),画像形成装置1は次の画像形成を再開する。
一方,ステップ105において,第1再開タイミングの方が早いと判断される場合には(S105:NO),中間転写ベルト30を離間状態として(S108),廃棄トナー像の廃棄処理を行う。すなわち,中間転写ベルト30の離間時にすでに中間転写ベルト30上に1次転写されているイエロートナー像の長さを,廃棄トナー像の長さとする(S109)。また,その廃棄トナー像が,ベルトクリーナー41を通過後(S110:YES),すべての感光体11の圧接位置を通過したか否かを判断する(S111)。本形態においては,廃棄トナー像の後端が,中間転写ベルト30上の1次転写ニップK1から5mm下流側の位置K2に到達したときに,廃棄トナー像がすべての感光体11の圧接位置を通過したと判断する。なお,ステップS111で判断される通過は,廃棄トナー像の,画像形成部10Kの感光体11の圧接位置の2回目の通過である。
次に,廃棄トナー像が,すべての感光体11の圧接位置を通過したと判断したとき(S111:YES),中間転写ベルト30の圧接を開始する(S112)。続いて,廃棄トナー像が,2次転写ローラー40の圧接位置を通過したと判断したとき(S113:YES),2次転写ローラー40の圧接を開始する(S114)。そして,2次転写ローラー40および中間転写ベルト30がいずれも圧接状態となったとき(S115:YES),画像形成装置1は次の画像形成を再開する。
以上詳細に説明したように本形態の画像形成装置1では,廃棄トナー像の発生が検出された場合,CPU6において,不揮発性メモリ7に記憶されている画像形成装置1の仕様を基に,第1再開タイミングと第2再開タイミングとを算出する。第1再開タイミングは,中間転写ベルト30を離間させて廃棄トナー像の廃棄処理を行った場合の,次の画像の形成を再開できるタイミングである。第2再開タイミングは,中間転写ベルト30を圧接させたまま廃棄トナー像の廃棄処理を行った場合の,次の画像の形成を再開できるタイミングである。そして,第1再開タイミングの方が遅いと判断される場合には,中間転写ベルト30を圧接状態としたまま,廃棄トナー像の廃棄処理を行う。一方,第1再開タイミングの方が早いと判断される場合には,中間転写ベルト30を離間状態として,廃棄トナー像の廃棄処理を行う。これにより,廃棄トナー像が発生した場合においても,画像形成の生産性の高い画像形成装置が実現されている。
なお,本実施の形態は単なる例示にすぎず,本発明を何ら限定するものではない。従って本発明は当然に,その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良,変形が可能である。例えば,本形態においては,画像形成部10Y,10M,10Cの感光体11に対して離間状態となる中間転写ベルト30について説明しているが,これに限るものではない。中間転写ベルト30は,画像形成部10Y,10M,10Cに加え,画像形成部10Kの感光体11に対しても離間状態となるものであってもよい。
また例えば,給紙部3は,さらに多くの給紙トレイや手差しトレイを有するものであってもよい。また例えば,画像形成部10Y,10M,10C,10Kの配置は,中間転写ベルト30の回転方向についてこの順に限るものではない。また本発明は,カラープリンターに限らず,複写機などにも適用可能である。