図1は、本発明が適用されるハイブリッド車両10の概略構成を説明する図であると共に、ハイブリッド車両10における各種制御の為の制御系統の要部を説明する図である。図1において、ハイブリッド車両10は、動力伝達装置12と、走行用の駆動力源として機能するエンジン14及び電動機MGとを備えたハイブリッド車両である。動力伝達装置12は、非回転部材としてのトランスミッションケース20内において、エンジン14側から順番に、エンジン断接用クラッチK0(以下、断接クラッチK0という)、トルクコンバータ16、及び自動変速機18等を備えている。また、動力伝達装置12は、自動変速機18の出力回転部材である変速機出力軸24に連結されたプロペラシャフト26、そのプロペラシャフト26に連結されたディファレンシャルギヤ28、そのディファレンシャルギヤ28に連結された1対の車軸30等を備えている。このように構成された動力伝達装置12は、例えばFR(フロントエンジン・リヤドライブ)型の車両10に好適に用いられる。動力伝達装置12において、エンジン14の動力(特に区別しない場合にはトルクや力も同義)は、断接クラッチK0が係合された場合に、エンジン14のクランク軸と断接クラッチK0とを連結するエンジン連結軸32から、断接クラッチK0、トルクコンバータ16、自動変速機18、プロペラシャフト26、ディファレンシャルギヤ28、及び1対の車軸30等を順次介して1対の駆動輪34へ伝達される。電動機MGは、トランスミッションケース20内において、断接クラッチK0とトルクコンバータ16との間の動力伝達経路に連結されており、電動機MGの動力は、トルクコンバータ16、自動変速機18等を順次介して駆動輪34へ伝達される。このように、動力伝達装置12は、エンジン14から駆動輪34までの動力伝達経路を構成する。
トルクコンバータ16は、ポンプ翼車16aに入力された動力を流体を介して伝達することでタービン翼車16bから出力する流体式伝動装置である。ポンプ翼車16aは、断接クラッチK0を介してエンジン連結軸32と連結されていると共に、直接的に電動機MGと連結されている。タービン翼車16bは、自動変速機18の入力回転部材である変速機入力軸36と直接的に連結されている。ポンプ翼車16aにはオイルポンプ22が連結されている。オイルポンプ22は、エンジン14(及び/又は電動機MG)によって回転駆動されることにより、自動変速機18の変速制御や断接クラッチK0の係合解放制御などを実行する為の作動油圧を発生する機械式のオイルポンプである。
自動変速機18は、エンジン14及び電動機MGと駆動輪34との間の動力伝達経路の一部を構成し、走行用駆動力源(エンジン14及び電動機MG)からの動力を駆動輪34側へ伝達する変速機である。自動変速機18は、例えば変速比(ギヤ比)γ(=変速機入力回転速度Nin/変速機出力回転速度Nout)が異なる複数の変速段(ギヤ段)が選択的に成立させられる公知の遊星歯車式多段変速機、或いはギヤ比γが無段階に連続的に変化させられる公知の無段変速機などである。自動変速機18は、例えば油圧アクチュエータが油圧制御回路40によって制御されることにより複数段のギヤ段を選択的に成立させる複数個の摩擦係合装置を備え、それらの摩擦係合装置のうちの2つが選択的に係合させられることで、運転者のアクセル操作や車速V等に応じた所定のギヤ段(ギヤ比)が成立させられる。パーキングポジション或いはニュートラルポジションへ操作されているときには、上記摩擦係合装置はいずれも解放させられるので、自動変速機18内の動力伝達経路が解放されるようになっている。図1では、それら複数の摩擦係合装置がクラッチCLとして代表的に表示されている。
電動機MGは、原動機として機能するとともに、電気エネルギから機械的な動力を発生させる発動機としての機能及び機械的なエネルギーから電気エネルギを発生させる発電機としての機能を有する所謂モータジェネレータである。この電動機MGは、永久磁石型電動機たとえば着磁により複数の磁極がロータに形成されていてステータが回転磁界を形成する3相の永久磁石型交流同期電動機(Interior Permanent Magnet Synchronous Motor :IPM)から構成されている。このため、たとえば温度上昇によりロータ或いはステータの磁力が低下してモータの出力特性が低下する所謂電動機の減磁が発生する。
電動機MGは、電源制御ユニット(PCU)50を介してバッテリユニット52に接続されている。電動機MGは、動力源であるエンジン14の代替として、或いはそのエンジン14と共に走行用の動力を発生させる走行用の駆動力源として機能する。電動機MGは、エンジン14により発生させられた動力や駆動輪34側から入力される被駆動力から回生により電気エネルギを発生させ、その電気エネルギを電源制御ユニット50を介してバッテリユニット52に蓄積する等の作動を行う。電動機MGは、作動的にポンプ翼車16aに連結されており、電動機MGとポンプ翼車16aとの間では、相互に動力が伝達される。従って、電動機MGは、断接クラッチK0を介することなく自動変速機18の変速機入力軸36と動力伝達可能に連結されている。
始動用電動機SMは、エンジン14のクランク軸32に設けられたリングギヤと噛み合うピニオンを出力軸に有し、エンジン14の始動時にエンジン14を回転駆動する。また、エンジン14の出力トルクの一部を電気エネルギに変換する。
断接クラッチK0は、例えば互いに重ねられた複数枚の摩擦板が油圧アクチュエータにより押圧される湿式多板型の油圧式摩擦係合装置であり、オイルポンプ22が発生する油圧を元圧とし油圧制御回路40によって係合解放制御される。その係合解放制御においては、例えば油圧制御回路40内のリニヤソレノイドバルブ等の調圧により、断接クラッチK0のトルク容量(以下、K0トルクという)が変化させられる。断接クラッチK0の係合状態では、エンジン連結軸32を介してポンプ翼車16aとエンジン14とが一体的に回転させられる。従って、エンジン14と電動機MGとは相対回転が差動することなく、断接クラッチK0を介して間接的に連結されている。一方で、断接クラッチK0の解放状態では、エンジン14とポンプ翼車16aとの間の動力伝達が遮断される。すなわち、断接クラッチK0を解放することでエンジン14と駆動輪34とが切り離される。電動機MGはポンプ翼車16aに連結されているので、断接クラッチK0は、エンジン14と電動機MGとの間の動力伝達経路に設けられて、その動力伝達経路を断接するクラッチとしても機能する。
電源制御ユニット50は、電動機MGの作動に関わる電力の授受を制御するインバータ部54と、バッテリユニット52とインバータ部54との間に配設された昇圧コンバータ部56と、バッテリユニット52側の比較的高電圧を12V乃至24V程度の低電圧に降圧することで補機バッテリ58の充電を行うDC/DCコンバータ60と、補機バッテリ58の電力を供給して始動用電動機SMを制御するリレーDRと、昇圧コンバータ部56のバッテリユニット52側の端子間に設けられた入力コンデンサ(或いはフィルタコンデンサ)Ciとを有する電気回路である。
インバータ部54は、例えば公知のスイッチング素子を備えており、電動機MGに対して要求された出力トルク或いは回生トルクが得られるように、後述する電子制御装置90(特には、MG_ECU)からの指令によってそのスイッチング素子のスイッチング作動が制御される。昇圧コンバータ部56は、リアクトルL、上アーム62(スイッチング素子Q1及びダイオードD1)、下アーム64(スイッチング素子Q2及びダイオードD2)、電動機MGの作動に関わる電力を一時的に蓄電する蓄電部材としての平滑コンデンサCsと、平滑コンデンサCsに対して並列に設けられた放電抵抗Rdとを備えている。放電抵抗Rdは、十分に大きな抵抗値を有するものであり、例えばイグニッションオフ時には、平滑コンデンサCsに蓄電された電荷をゆっくりと放電する。
バッテリユニット52は、例えばリチウムイオン組電池やニッケル水素組電池などの充放電可能な2次電池であるバッテリ部68と、後述する電子制御装置90(特には、HV_ECU)からの指令によって電源制御ユニット50との間の電気経路の開閉を行う(すなわち電源制御ユニット50に対するバッテリ部68の接続と遮断とを行う)システムリレーSR1,SR2とを備えている。尚、バッテリ部68は、例えばコンデンサやキャパシタなどであっても差し支えない。
車両10には、例えば車両全体の制御などに関連する車両10の制御装置を含む電子制御装置90が備えられている。電子制御装置90は、例えばCPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより車両10の各種制御を実行する。例えば、電子制御装置90は、エンジン14の出力制御、電動機MGの回生制御を含む電動機MGの駆動制御、自動変速機18の変速制御、断接クラッチK0のトルク容量制御等を実行するようになっており、必要に応じて車両全体の制御を行うハイブリッド制御用のコンピュータ(HV_ECU)や電動機制御用のコンピュータ(MG_ECU)や変速制御用のコンピュータ(AT_ECU)等に分けて構成される。電子制御装置90には、各種センサ(例えばエンジン回転速度センサ70、タービン回転速度センサ72、出力軸回転速度センサ74、電動機回転速度センサ76、アクセル開度センサ78、加速度センサ80、バッテリセンサ82、電動機回転位相センサ84、電動機駆動電流センサ86、レバーポジションセンサ88など)による検出値に基づく各種信号(例えばエンジン14の回転速度であるエンジン回転速度Ne、タービン回転速度Ntすなわち変速機入力軸36の回転速度である変速機入力回転速度Nin、車速Vに対応する変速機出力軸24の回転速度である変速機出力回転速度Nout、電動機MGの回転速度である電動機回転速度Nmg、運転者による車両10に対する駆動要求量に対応するアクセル開度θacc、車両10に働く加速度(或いは減速度)G、バッテリ部68の充電状態(充電容量)SOC、電動機MGの回転位相θ、電動機MGへの駆動電流Iu、Iv、Iw、シフトレバー89のポジションPsなど)が、それぞれ供給される。電子制御装置90からは、車両10に設けられた各装置(例えばエンジン14、インバータ部54、油圧制御回路40、バッテリユニット52、リレーDRなど)に各種指令信号(例えばエンジン制御指令信号Se、電動機制御指令信号Sm、油圧制御指令信号Sp、電源制御指令信号Sbat、始動信号Sssなど)が供給される。
図2は、電子制御装置90による制御機能の要部,すなわち電動機MGに減磁が発生したときに一律に電動機MGの運転を制限するのではなく、車両に支障がでない範囲で可及的に電動機MGの運転を許可して走行性能或いは発電性能を向上させる制御を説明する機能ブロック線図である。図2において、HV_ECUに含まれるハイブリッド制御手段すなわちハイブリッド制御部92は、エンジン14の駆動を制御する機能と電動機MGの運転を指令する機能とを含んでおり、それら制御機能によりエンジン14と電動機MGとを駆動力源として走行するハイブリッド駆動制御を含む車両10全体の制御を実行する。例えば、ハイブリッド制御部92は、アクセル開度θaccや車速Vに基づいて運転者による車両10に対する駆動要求量(すなわちドライバ要求量)としての要求駆動トルクTouttgtを算出し、伝達損失、補機負荷、自動変速機18のギヤ比γ、バッテリ部68の充電容量SOC等を考慮して、その要求駆動トルクTouttgtが得られる走行用駆動力源(エンジン14及び電動機MG)の出力トルクを算出する。ハイブリッド制御部92は、算出したエンジン14の出力トルク(エンジントルク)Teが得られるように、スロットル弁開度、燃料噴射量(燃料供給量)、及び点火時期などを各々制御するエンジン制御指令信号Seを出力する。また、ハイブリッド制御部92は、算出した電動機MGの出力トルク(MGトルク)Tmgが得られるように電動機MGを制御する指令信号を後述する電動機制御部94へ出力する。前記駆動要求量としては、駆動輪34における要求駆動トルクTouttgt[Nm]の他に、駆動輪34における要求駆動力[N]、駆動輪34における要求駆動パワー[W]、変速機出力軸24における要求変速機出力トルク、及び変速機入力軸36における要求変速機入力トルク等を用いることもできる。また、駆動要求量として、単にアクセル開度θacc[%]やスロットル弁開度や吸入空気量等を用いることもできる。
ハイブリッド制御部92は、電動機MGのみを走行用の駆動力源として走行するモータ走行(EV走行)を行う場合には、断接クラッチK0を解放させてエンジン14とトルクコンバータ16との間の動力伝達経路を遮断すると共に、後述する電動機制御部94によりEV走行に必要なMGトルクTmgを電動機MGから出力させる。一方で、ハイブリッド制御部92は、少なくともエンジン14を走行用の駆動力源として走行するエンジン走行すなわちハイブリッド走行(EHV走行)を行う場合には、断接クラッチK0を係合させてエンジン14とトルクコンバータ16との間の動力伝達経路を接続すると共に、エンジン14にEHV走行に必要なエンジントルクTeを出力させつつ必要に応じて電動機制御部94によりアシストトルクとしてMGトルクTmgを電動機MGから出力させる。
電動機制御部94は、ハイブリッド制御部92からの指令信号に基づいて(すなわちハイブリッド制御部92との間での通信に基づいて)、必要なMGトルクTmgが得られるようにインバータ部54などを制御する電動機制御指令信号Smを出力して、電動機MGによる駆動力源又は発電機としての作動を制御する。
変速制御部96は、例えば予め定められた公知の関係(変速線図、変速マップ;不図示)から車両状態(例えば実際の車速V及びハイブリッド制御部92により算出された駆動要求量)に基づいて、自動変速機18の変速を実行すべきか否かを判断し、その判断したギヤ段(ギヤ比)が得られる為の油圧制御指令信号Sp(例えば変速指令値)を油圧制御回路40へ出力して、自動変速機18の自動変速制御を実行する。
ここで、ハイブリッド制御部92は、電動機MGの減磁が発生したときには、一律に電動機MGの運転を停止させるのではなく、運転モード毎に使用目的を限定することで退避性能を向上させるために、モータ減磁判定部100、反力キャンセルモード判定部102、クラッチ解放判定部104、車両制動判定部106、エンジン回転吹上り判定部108、電動機力行許可部110、電動機発電許可部112を備えている。
モータ減磁判定部100は、車両走行中の電動機MGに減磁が発生したか否かが、たとえば電動機MGの温度Tmgが予め設定された減磁温度値Tmg1に到達したこと、或いは、予め記憶された算出式から、実際のq軸の電圧操作量Vq、予め記憶されたマップから求めた減磁していないときのq軸の電圧操作量Vq_map、モータ回転数MRNに基づいて算出された減磁量が予め設定された減磁判定値を越えたことに基づいて判定する。この減磁温度値Tmg1或いは減磁判定値は、減磁によって電動機MGの出力トルク等が制御の上で支障が発生する程度に低下したことを判定するためのものであり、予め実験的に定められた値である。上記q軸の電圧操作量Vqは、モータ駆動電流Iu、Iv、Iwからモータの回転角θを用いて変換されたq軸に流れる電流Iqと電流指令(目標)値Iq*との偏差ΔIdをフィードバック制御で解消するための操作量である。減磁量は、減磁が生じていないときに交差磁束数Φcと減磁が生じているときの交差磁束数Φ1との差(Φc−Φ1)で表わされ、たとえば、減磁がないときのq軸の電圧操作量をVqc、減磁が生じているときのq軸の電圧操作量をVq1、ロータの回転角速度をωとすると、次式(1)から算出される。
Φc−Φ1=(Vqc−Vq1)/ω ・・・(1)
反力キャンセルモード判定部102は、電動機MGの動作要求モードが反力キャンセルモードであるか否か、すなわちエンジン14の出力の一部を電動機MGのトルクで打ち消す動作要求状態であるか否かを、たとえば車両の減速走行や発電要求により電動機MGが負トルクすなわち発電電流を出力する発電動作が要求されているか否か、或いは走行中のアクセル開度が零であるか否かに基づいて判定する。クラッチ解放判定部104は、電動機MGと駆動輪34との間の動力伝達経路のクラッチCLが解放されているか否かを、たとえばシフトレバー89がパーキンポジション或いはニュートラルポジションであるか否かに基づいて又は自動変速機18のいずれのギヤ段も成立していないか否かに基づいて判定する。車両制動判定部106は、上記クラッチ解放判定部104により電動機MGと駆動輪34との間の動力伝達経路のクラッチCLが解放されていると判定されている場合に、車両の制動操作により比較的大きな制動力が付与されている状態であるか否かを、たとえばブレーキペダルによる踏込み量、踏力或いは制動油圧の大きさが所定値を越えたことに基づいて判定する。エンジン回転吹上り判定部108は、上記クラッチ解放判定部104により電動機MGと駆動輪34との間の動力伝達経路が解放されていると判定されている場合に、エンジン14の回転数Neが一時的に時間経過と共に急上昇する吹き上がりが発生したか否かが、たとえばエンジン14の回転数Neおよび/またはその変化率に基づいて判定する。
電動機力行許可部110は、モータ減磁判定部100により電動機MGの減磁が判定されている場合において、反力キャンセルモード判定部102において車両の減速走行や発電要求がないことすなわち電動機MGの反力キャンセルモードでないことが判定された場合、換言すれば電動機MGの力行運転(車両の加速走行)においてモータアシスト運転を要求する指令が出されていると判定される場合は、その電動機MGの力行作動を許可し、電動機MGの運転を制限しない。この場合、好適には、ハイブリッド制御部92は、電動機MGが減磁していない正常時であるときと同等のトルクを電動機MGから出力させる動作指令、或いは電動機MGから出力するトルクを零またはその付近とする動作指令を電動機制御部94へ出力することで、減磁分を上まわらないように考慮して電動機MGの上限トルクを制限する。電動機MGの減磁による影響は車両の加速不良或いは減速不良に留まるので、意に反した加速或いは減速を発生させないためである。しかし、電動機MGの減磁状態の推定トルクの精度が十分に高く、減磁分が正確に得られる場合には、その減磁分を考慮して正常時であるときのトルクより大きいトルクを電動機MGから出力させる動作指令を出力したり、エンジン14の直達トルクを用いたりして電動機MGの減磁によるトルク不足分を補うようにしてもよい。
電動機発電許可部112は、モータ減磁判定部100により電動機MGの減磁が判定されている場合において、車両の減速走行や発電要求により、反力キャンセルモード判定部102において電動機MGの動作要求モードが反力キャンセルモードであると判定された場合すなわち電動機MGの発電運転指令が出された場合は、その電動機MGの発電作動を許可し、電動機MGの運転を制限しない。次いで、クラッチ解放判定部104により電動機MGと駆動輪34との間の動力伝達経路が自動変速機18内のクラッチCLによって解放されていると判定された場合には、ハイブリッド制御部92は、電動機MGが減磁していない正常時であるときと同等の発電トルクを電動機MGから出力させる動作指令を電動機制御部94へ出力することで、減磁分を上まわらないように考慮して電動機MGの発電トルクの上限を制限する。この場合、電動機MGの発電トルク不足でエンジン14の回転数Neが吹き上がったとしても、駆動輪34に伝わらない。また、電動機発電許可部112は、クラッチ解放判定部104により電動機MGと駆動輪34との間の動力伝達経路が解放されていると判定されることによって電動機MGの発電が許可されている場合に、エンジン回転吹上り判定部108によりエンジンの回転数が吹き上がったと判定された場合は、ハイブリッド制御部92は、電動機MGの発電トルクをさらに増加させる指令を電動機制御部94へ出力することで、減磁分を上まわらないように考慮して電動機MGの発電トルクの上限を制限する。また、エンジン14の出力を低下させる指令をエンジン14に出力する。これにより、エンジン14の回転数Neの吹き上がりを抑制する。
さらに、電動機発電許可部112は、クラッチ解放判定部104により電動機MGと駆動輪34との間の動力伝達経路が解放されていないと判定されている場合で、車両制動判定部106により車両の制動操作により比較的大きな制動力が付与されている状態であると判定された場合には、回生トルクが電動機MGから発生しても制動中の車両への影響はないので、電動機MGの発電動作を許可し、電動機MGの運転を制限しない。
図3は、電子制御装置90のハイブリッド制御部92の制御作動の要部すなわち電動機に減磁が発生したときに一律に電動機MGの運転を制限するのではなく、車両に支障がでない範囲で可及的に電動機MGの運転を許可して走行性能或いは発電性能を向上させる制御の作動を説明するフローチャートであり、例えば数msec乃至数十msec程度の極めて短いサイクルタイムで繰り返し実行される。
図3において、モータ減磁判定部100に対応するS1では電動機MGを駆動源として用いた、車両走行中の電動機MGに減磁が発生したか否かが、たとえば電動機MGの温度Tmgが予め設定された減磁温度値Tmg1に到達したこと、或いは、予め記憶された算出式から算出された減磁量が予め設定された減磁判定値を越えたことに基づいて判断される。このS1の判断が否定された場合は本ルーチンが終了させられるが、肯定される場合は、反力キャンセルモード判定部102に対応するS2において、電動機MGの動作要求モードが反力キャンセルモードすなわちエンジン14の出力の一部を電動機MGのトルクで打ち消す動作要求状態であるか否かが、たとえば電動機MGが負トルクすなわち発電電流を出力する発電動作が要求されているか否かに基づいて判定される。このS2の判断が否定される場合は、電動機MGが駆動源として作動するアシストモードであるので、電動機力行許可部110に対応するS3においてその電動機MGの力行が許可される。同時に、ハイブリッド制御部92では、電動機MGが減磁していない正常時であるときと同等のトルクを電動機MGから出力させる動作指令が電動機制御部94へ出力されることで、減磁分を上まわらないように考慮して電動機MGの上限トルクが制限される。上記S3が実行されると本ルーチンが終了させられる。
上記S2の判断が肯定される場合は、電動機発電許可部112に対応するS4において、減速走行時や発電要求時における電動機MGに対する発電指令に従う電動機MGによる発電が許可される。次いで、クラッチ解放判定部104に対応するS5において、電動機MGと駆動輪34との間の動力伝達経路が解放されているか否かが、たとえばシフトレバー89がパーキンポジション或いはニュートラルポジションであるか否かに基づいて又は自動変速機18のいずれのギヤ段も成立していないか否かに基づいて判断される。このS5の判断が否定される場合は、車両走行ポジションであって電動機MGと駆動輪34との間の動力伝達経路が解放されていない状態であるので、車両制動判定部106に対応するS6において、車両の制動操作により比較的大きな制動力が付与されている状態であるか否かが、たとえばブレーキペダルによる踏力或いは制動油圧の大きさが所定値を越えたことに基づいて判断される。このS6の判断が否定される場合は本ルーチンが終了させられるが、肯定される場合は、電動機発電許可部112に対応するS7において電動機MGの発電作動が許可される。電動機MGに発電制動が発生しても制動操作中の車両への影響はないからである。
しかし、上記S5の判断が肯定される場合は、車両非走行ポジションであって電動機MGと駆動輪34との間の動力伝達経路が解放されている状態であるので、電動機発電許可部112に対応するS8において、電動機MGと駆動輪34との間の動力伝達経路が自動変速機18内のクラッチCLによって解放されている状態で、ハイブリッド制御部92により、電動機MGが減磁していない正常時であるときと同等の発電トルクを電動機MGから出力させる動作指令が電動機制御部94へ出力されることで、減磁分を上まわらないように考慮して電動機MGの発電トルクの上限が制限される。この場合、電動機MGの発電トルク不足でエンジン14の回転数Neが吹き上がったとしても、駆動輪34に伝わらない。
次いで、エンジン回転吹上り判定部108に対応するS9において、電動機MGと駆動輪34との間の動力伝達経路が解放されていると判定されている場合に、エンジン14の回転数Neが一時的に急上昇する吹き上がりが発生したか否かが、たとえばエンジン14の回転数Neおよび/またはその変化率に基づいて判定される。このS9の判断が否定された場合は本ルーチンが終了させられるが、肯定された場合は、電動機発電許可部112に対応するS10において、ハイブリッド制御部92により、電動機MGの発電トルクをさらに増加させる指令が電動機制御部94へ出力されることで、減磁分を考慮した電動機MGの発電トルクの上限が制限されるとともに、エンジン14の出力を低下させる指令がエンジン14に出力される。これにより、エンジン14の回転数Neの吹き上がりが抑制される。
上述のように、本実施例によれば、電動機MGに減磁が発生したとき、車両の加速走行中に前記電動機を力行させる場合、又は車両の減速走行中に前記電動機を発電させる場合には、該電動機の運転が許可される。加速走行中では、減磁中の電動機MGを運転しても運転者の要求以上の加速とはならず、電動機MGの作動を停止させる場合に比較して電動機MGによるアシスト分だけ車両を加速し易くなる。また、たとえば減速走行中や非走行ポジションでは、電動機MGを発電させることで、電動機MGの作動を停止させる場合に比較して電動機MGによる発電分だけ電力を発生させることができる。すなわち、電動機MGに減磁が発生したときであっても、車両の加速走行中にはその電動機MGを力行させることで車両の加速に寄与でき、また、車両の非加速走行或いは停止中にはその電動機MGを発電作動させることで発電能力を向上させることができる。
また、本実施例のハイブリッド車両は、電動機MGと駆動輪34との間に介挿された自動変速機18内に備えられたクラッチCLを有しており、そのクラッチCLの解放状態であるときは電動機MGの発電が許可される。このため、電動機MGに減磁が発生したときにクラッチCLが解放されていれば、電動機MGの発電トルクが駆動輪34に作用しないので、ハイブリッド車両の駆動力に影響を与えることなく電力の回収すなわち蓄電器60への充電を行なうことができ、車両の退避走行性能を向上させることができる。
また、本実施例では、クラッチCLの解放状態で電動機MGの発電が許可される場合において、その電動機MGの発電時においてエンジン14の回転数が吹き上がるときは、そのエンジン14の出力を低下させるので、エンジン14の回転数の吹き上がりが好適に抑制される。
また、本実施例では、クラッチCLの解放状態で電動機MGの発電が許可される場合において、そのクラッチCLが係合状態であり且つブレーキペダルが所定値よりも大きく踏み込まれているときにも、電動機MGによる発電が許可される。このため、クラッチCLが係合状態であり且つブレーキペダルが所定値よりも大きく踏み込まれている車両制動時にも電動機MGによる発電が許可される。クラッチCLが係合状態であって電動機MGと駆動輪34との間の動力伝達経路が成立していても、ブレーキペダルが所定値よりも大きく踏み込まれていてホイールブレーキによる制動力が得られる場合には、電動機MGの減磁によって電動機MGの発電量が低下していても、ホイールブレーキによる車両の制動力によって車両の移動を抑制しつつ電動機MGの回生により電力を好適に回収できる。
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
例えば、前述の実施例では、エンジン14と電動機MGとの間にクラッチK0が設けられていたが、必ずしも設けられていなくても良く、エンジン14と電動機MGとは直接的に連結されていても良い。
また、前述の実施例において、エンジン14と電動機MGとの間に、エンジン14に連結された第1回転要素と、差動制御用電動機に連結された第2回転要素と、電動機MGに連結された第3回転要素とを有する遊星歯車装置を含む電気式無段変速機が介挿されていてもよい。このような場合は、トルクコンバータ16や自動変速機18の少なくとも一方が省略されてもよい。
また、前述のエンジン14は、例えば燃料の燃焼によって動力を発生するガソリンエンジンであるが、ディーゼルエンジンやその他の内燃機関であってもよい。
また、前述の実施例では、流体式伝動装置としてトルクコンバータ16が用いられていたが、トルク増幅作用のない流体継手などの他の流体式伝動装置が用いられても良い。また、この流体式伝動装置は必ずしも設けられなくても良い。
また、前述の実施例において、車両10には、自動変速機18が設けられていたが、前後進切換機構を有する無段変速機や、平行軸式常時噛合型の変速機であっても良い。
尚、上述したのはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。