実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係る空気調和機の室外機100の斜視図である。図1に示されるように、室外機100の外郭は筐体50で構成される。図2は本実施の形態に係る空気調和機の室外機100の分解斜視図である。図3は本実施の形態に係る空気調和機の室外機100の分解斜視図であり、図2を詳細に示した図である。
図2に示されるように、筐体50は、前側面パネル50a、右側面パネル50b、底面パネル50c、天面パネル50d及び背面パネル50e(図4にて、下記に詳細を示す。)で構成される。前側面パネル50aは、筐体50の前面側及び左側面側を構成するものであり、例えば平面視L字形状の部材で構成される。また、図2に示されるように、筐体50の内部には仕切板1が設けられている。仕切板1が設けられることで、筐体50の内部は機械室10及び送風機室20に区画される。なお、前側面パネル50aは、筐体50の前面部を構成する部分と、筐体50の左側面部を構成する部分とを別部品で構成してもよい。すなわち、前側面パネル50aを、筐体50の前面部を構成する前面パネルと、筐体50の左側面部を構成する左側面パネルとに分割してもよい。
機械室10には、圧縮機11及び電気品箱12が設けられる。電気品箱12の内部には、制御基板(図示省略)が設けられている。図示省略の制御基板は、圧縮機11の回転数を制御したり、後述するヒータ30等を駆動したりするための部材である。なお、図示省略の制御基板は、例えば、この機能を実現する回路デバイスなどのハードウェア、又はマイコン若しくはCPUなどの演算装置上で実行されるソフトウェアで構成される。
送風機室20には、室外熱交換器21、ファン22、ファンモータ23(図4にて、下記に詳細を示す。)、ファンモータ支持板24、上部板25、及び支持板接続部26が設けられる。室外熱交換器21は、ファン22、ファンモータ23、ファンモータ支持板24、上部板25、及び支持板接続部26よりも室外機100の背面側に設けられるようになっている。
室外熱交換器21は、例えば平面視してL字形状のものであり、前側面パネル50aの左側面側の面、及び背面パネル50eに沿うように設けられる。ファン22は、例えばプロペラファンで構成される送風手段であり、熱交換を効率的に行うための空気循環を生成する。ファン22は、室外機100の背面側から室外機100内部に外気を導入し、室外機100内部に導入された外気を室外機100の前面側に向かって排出する機能を有する。
ファンモータ23は、ファン22を駆動する駆動手段であり、例えばネジ等の固定手段を用いてファンモータ支持板24に取り付けられる。ファンモータ支持板24は、ファンモータ23を支持するためのものであり、底面パネル50cから上方に向かう枠状の部材である。なお、ファンモータ支持板24は図示のように一つでなく複数設けられていてもよい。
上部板25は、例えば底面パネル50cと略水平に設けられる板状の部材である。上部板25は、ファンモータ23が大型化した場合を考慮して、ファンモータ支持板24の強度補強を図るための部材であり、ファンモータ支持板24に接続されている。上部板25は、例えばファンモータ支持板24の最上端から前方に向かうようにして取り付けられる。
支持板接続部26は、例えばU字形状の部材であり、ファンモータ支持板24と一体で構成される。支持板接続部26は、その内面が室外熱交換器21の上面に接触するようにして設けられている。このように、支持板接続部26が室外熱交換器21に取り付けられることで、ファンモータ支持板24は、室外熱交換器21に固定される。
図3に示されるように、前側面パネル50aには開口部50a1が形成されている。開口部50a1は、室外機100内部に導入された外気を室外機100外部に排出するための開口部である。また、前側面パネル50aの背面側であってファン22の外周を囲むようにベルマウス27が設けられている。
ベルマウス27は、例えば、開口部50a1の周縁から半径方向内側に向かって縮径するように後方に張り出した縮径部27aと、縮径部27aの後端から半径方向外側に向かって拡径するように後方に張り出した拡径部27bと、を有する。ベルマウス27は、前側面パネル50aと一体として成形される。ベルマウス27は、筐体50内部に導入された外気を開口部50a1に導く機能を有する。なお、ベルマウス27は、縮径部27aと拡径部27bとの間に前後方向に延びる部位を有するように構成してもよい。
図4は図1のX−X断面図である。図5は図1のY−Y断面図である。なお、図4,図5においては、空気流れを模式的に矢印で空気流Aとして示している。以下、図4,図5を用いて筐体50の内部及び外部に形成される風路について説明する。ファンモータ23が駆動されるとファン22が回転し、外気は、筐体50内部に導入される。筐体50内部に導入された外気は、室外熱交換器21を通ってベルマウス27等の部材に吹き付けられる。このように筐体50内部を循環した外気は、開口部50a1を通って筐体50外部に排出される。なお、ベルマウス27の外周においては、図示のように空気の淀みA1が生じやすい。前述のように、デフロスト運転時に発生した水蒸気は、筐体内部に滞留して筐体自体に再凍結する場合がある。特に低外気温度である寒冷地においては、雪や高湿度または高能力運転によって熱交換器が着霜し易いために、ドレン水、水蒸気の量が多い。水蒸気が凍結して発生した氷は、デフロスト運転では溶けず、デフロスト運転を繰り返す度に再凍結を繰り返して成長し、氷柱化する場合がある。または、吹き込んだ雪が積層していって固まったり、氷結化したりする場合もある。特に、プロペラファン自身においては、デフロスト後のファン運転再開時の空気の流れが他部位に比べて少なく、空気の淀みが発生し、デフロスト運転にて発生した水蒸気が滞留し易く、プロペラファンのボス部や羽部に水蒸気が付着し、氷結化した氷が成長し易い。また、吸い込む雪によってもボス部や羽部の氷や雪の塊は加速されて巨大化する。天気が悪く極低温が続けば溶けることなく巨大化する。
図6は本実施の形態に係る空気調和機の室外機100の内部構造を示す図である。図7は本実施の形態に係る空気調和機の室外機100の内部にヒータ30を設けた図である。図8は、図1のX−X断面図であり、室外機100の内部にヒータ30を設けた図である。図9は、図1のY−Y断面図であり、室外機100の内部にヒータ30を設けた図である。図6に示されるように、ファンモータ支持板24は、上部24a、胴部24b、及び下部24cを備える。上部24aの下方には胴部24bが位置し、胴部24bの下方には下部24cが位置している。上部24aは、支持板接続部26に繋がる部位である。胴部24bは、ファンモータ23が取り付けられる部位である。下部24cは、例えばネジ(図示省略)等の固定手段によって底面パネル50cに固定される部位である。上部24aは、例えば空洞部24a1を有する矩形の枠状の部材で構成される。下部24cは、例えば空洞部24c1を有する矩形の枠状の部材で構成される。このように、空洞部24a1,24c1が形成されているため、ファンモータ支持板24に吹き出された空気流れAの一部は、空洞部24a1,24c1を通過して筐体50の前面側に排出される。すなわち、空洞部24a1,24c1が形成されることで、空気流れAの妨げを抑制することができる。
図7に示されるように、ヒータ30は筐体50の内部に設けられている。ヒータ30は、例えばシーズヒータで構成される加熱手段であり、筐体50内部で発生した水蒸気を加熱するものである。ヒータ30の内部にはニクロム線が設けられている。なお、ヒータ30をフレキシブル(可撓性)ヒータで構成してもよい。このように構成すれば、ヒータ30を筐体50内に配置し易くなる。
ヒータ30は、例えば消費電力100Wで、また、例えば温度が30℃の状態で用いられる。ヒータ30の通電は、暖房運転時で且つ外気温度センサ(図示省略)が所定温度以下の場合に、開始される。なお、ヒータ30の消費電力や温度は、上述した値に限定されるものではなく、筐体50の内部で発生する水蒸気が過熱されるように適宜決定される。 ヒータ30は、背面ヒータ30aと、側面ヒータ30bと、前面ヒータ30cと、底面ヒータ30dと、を有する。なお、背面ヒータ30aが本実施の形態における第1ヒータに相当する。また、側面ヒータ30bが本実施の形態における第2ヒータに相当する。また、前面ヒータ30cが本実施の形態における第3ヒータに相当する。また、底面ヒータ30dが本実施の形態における第4ヒータに相当する。以下、ヒータ30の構成について説明する。なお、背面ヒータ30a、側面ヒータ30b、前面ヒータ30c、及び底面ヒータ30dは、一体として設けられている。
背面ヒータ30aは、例えばネジ等の固定手段を用いて、ファンモータ支持板24に取り付けられる。背面ヒータ30aは、ファンモータ支持板24の上部において折り返され、正面視して下向きU字となるように設けられる。ファンモータ支持板24の上部において、ファンモータ支持板24に接続された上部板25が設けられている。また、背面ヒータ30aは、底面パネル50cの上面のうちファンモータ支持板24の下部周囲に設けられている。
側面ヒータ30bは、室外熱交換器21のうち前側面パネル50aの左側面に沿って設けられた前後方向に延びる部位と、ベルマウス27のうち前側面パネル50aの左側面に対向する縮径部27aの後端と、の間に設けられている。側面ヒータ30bは、ヒータ支持部材28付近で折り返され、側面視して下向きU字となっており、室外熱交換器21の周辺に位置している。図8に示されるように、側面ヒータ30bの横断面は円形状になっている。
前面ヒータ30cは、ベルマウス27の外周に沿って、例えば180度以上に亘って円弧状に設けられる。前面ヒータ30cは、筐体50の内部の下方で底面ヒータ30dと接続されている。図9に示されるように、前面ヒータ30cの縦断面は円形状になっている。前面ヒータ30cは、縮径部27a及び拡径部27bの外周に沿って設けられる。具体的には、前面ヒータ30cは、ベルマウス27のうち最も外径が小さい部位の外周に設けられている。なお、縮径部27a及び拡径部27bの外周に沿って設けられる例に限定されず、例えば、縮径部27a又は拡径部27bの外周に沿って設けられていてもよい。なお、前面ヒータ30cは、ベルマウス27の外周に沿って、例えば180度以上に亘って円弧状に設けられる例について説明したが、具体的な角度はこれに限定されない。360度を上限角度とし、ベルマウス27の外周の少なくとも一部に沿うように構成されていればよい。また、ベルマウス27の外周に沿って360度に亘り前面ヒータ30cを設ける場合には、前面ヒータ30cの外径をベルマウス27の最大外径よりも大きく構成することが望ましい。これは、前面ヒータ30cの外径がベルマウス27の最大外径よりも小さい場合には、縮径部27a及び拡径部27bの少なくとも一方の外周の少なくとも一部に沿うように前面ヒータ30cを配置することができず、ベルマウス27に付着した水蒸気の凍結を効果的に抑制できないためである。
底面ヒータ30dは、底面パネル50cの上面に左右方向に延びるように設けられる。具体的には例えば、底面ヒータ30dは、底面パネル50cの上面のうち、平面視したベルマウス27の後端よりも前面側に設けられる。このように構成すれば、ベルマウス27に付着した水蒸気の凍結を抑制でき、室外熱交換器21から流れ出たドレン水の凍結を抑制することができる。
次に、外気温度が0℃以下の極寒冷地における室外機100の運転を説明する。上述した図示省略の制御基板は、例えば使用者等が運転モードを設定する操作手段(図示省略)の操作を受けて、室外機100の運転を制御する。運転モードは例えば暖房運転や冷房運転等があるが、ここでは暖房運転が設定されたものと仮定して以下説明する。暖房運転が設定されるとファン22が回転するため、上述したように外気は筐体50内部に導入される。ここで、室外熱交換器21は蒸発器としての機能を有するため、筐体50内部に導入された外気は、室外熱交換器21の内部で冷媒と熱交換され、温度低下する。温度低下した外気は、送風室10内部のファンモータ支持板24及びベルマウス27等の部材に吹き付けられる。そして、外気温度センサが検知する外気温度が所定温度以下になると、制御基板はヒータ30の通電を開始する。このようにヒータ30の通電が開始されることで、ヒータ30の熱がファンモータ支持板24及びベルマウス27に伝わり、ファンモータ支持板24及びベルマウス27の着霜は抑制される。
制御基板は、暖房運転が一定時間行われた後に、圧縮機11の運転を停止させ、四方弁(図示省略)を冷房側に切り替える。そして、制御基板は、圧縮機11の運転を再度開始させ、ファン22の回転を停止させる。こうしてデフロスト運転が開始される。デフロスト運転時においては、室外熱交換器21は凝縮器としての機能を有するため、圧縮機11から吐出された冷媒は室外熱交換器21に流入し、室外熱交換器21は加熱される。このため、デフロスト運転を行うことで、室外熱交換器21内の熱を利用して筐体50の内部の温度を高くすることができる。デフロスト運転を行うことで、ファンモータ支持板24及びベルマウス27に付着した霜の温度は上昇して水蒸気となり、この水蒸気は、外気温度が0℃以下の極寒冷地において、再凍結しようとする。しかしながら、ファンモータ支持板24及びベルマウス27に設けられたヒータ30が、ファンモータ支持板24及びベルマウス27に付着する水蒸気を加熱する。このため、ファンモータ支持板24及びベルマウス27に付着した水蒸気の再凍結を抑制することができる。デフロスト運転時に発生した水蒸気は、ファンに付着して再凍結する。特に低外気温度である寒冷地においては、雪や高湿度または高能力運転によって熱交換器が着霜し易いために、ドレン水、水蒸気の量が多い。ボス部は、デフロスト後のファン運転再開時の空気の流れが他部位に比べて少なく、水滴が除去されにくい。そこで、本実施の形態では、後述する通り、ファンのボス部分に空気層をもつために水をはじきやすく、雪を剥がしやすい超撥水性のコーティング組成物を施している。更に、はじめから水滴をつけないために、別の効果的な制御方法として、四方弁(図示省略)を冷房側に切り替えた後に、圧縮機11の運転を再度開始させ、室外熱交換器21は凝縮器としての機能を有するようにデフロスト運転が開始した後もファンを回転させた。
ファンを回転させると熱交換器を溶かす時間が遅くなるので、低速の回転数で運転した。低速とは、通常の室外熱交換器21を蒸発器とした運転使用範囲の回転数の中で低め、弱風量、または最も低い回転数、または最も低い回転数よりも低い回転数である。デフロストを早く終わらせるためになるべく低い回転数で運転させることが望ましい。このようにすることで、コーティング組成物によって水滴が付着しづらくなっている効果に加えて、回転の遠心力によって水滴を付着しづらくし、更に水滴をすぐに振り飛ばす効果も得られる。従って、ファンのボス上には、デフロスト中にファンを停止していた場合に比べて、水滴の付着量が少なくなる。また、ファンを回すので、デフロスト中に室外機の内部に水蒸気を籠らせることなく水蒸気が出たと同時にすばやく排出できる効果もある。なお、背面ヒータ30aは、ファンモータ支持板24に設けられる場合に限定されず、ファンモータ支持板24の周辺に設けられるように構成してもよい。このように構成しても、背面ヒータ30aをファンモータ支持板24に取り付けた場合と同様に、背面ヒータ30aから発せられる熱をファンモータ支持板24に伝えることができる。このとき、ファンモータ支持板24に沿うように背面ヒータ30aを設けてもよいが、ファンモータ支持板24の近傍には配線が設けられているため、この配線と背面ヒータ30aとがなるべく接触しないように背面ヒータ30aを設けると一層好ましい。
また、背面ヒータ30aは、図示のように上下方向に直線的に延ばさないで、例えば左右方向に屈曲させながら上下方向に延ばしてもよい。このように構成すれば、ファンモータ支持板24に向かって熱を放出する背面ヒータ30aの表面積が増えるため、底面パネル50cに付着した水蒸気の凍結を一層抑制することができる。また、ファンモータ支持板24に沿って背面ヒータ30aを複数回上下に折り返して設けてもよい。このように構成すれば、水蒸気の凍結を一層抑制することができる。また、室外機100の運転時には、機械室10内の圧縮機11が回転するため、送風機室20のうち、送風機室20の右側(機械室10側)の温度は、送風機室20の左側の温度よりも高くなる。このような事情を考慮して、ファンモータ支持板24の左側を、ファンモータ支持板24の右側よりも一層加熱するようにしてもよい。
また、背面ヒータ30a、側面ヒータ30b、及び前面ヒータ30cの少なくとも何れかは、圧縮機11から吐出される冷媒の少なくとも一部を室外熱交換器21に直接供給するホットガスバイパス回路(図示省略)で構成されていてもよい。ここで、ホットガスバイパス回路には、圧縮機11から吐出されて室内熱交換器(図示省略)を経由して室外熱交換器21に供給される冷媒よりも高温高圧の冷媒が流れる。このため、このホットガスバイパス回路を流れる冷媒の熱を利用することで、ファンモータ支持板24又はファンモータ支持板24の周辺及びベルマウス27を加熱することができる。
以上のように、本実施の形態に係る空気調和機の室外機100は、開口部が形成された前面パネルを有する筐体50と、筐体50の内部に形成された送風機室20に設けられたファン22と、送風機室20に設けられ、ファン22を駆動するファンモータ23と、送風機室20に設けられた室外熱交換器21と、送風機室20で且つ室外熱交換器21よりも前面側に設けられ、ファンモータ23を支持するファンモータ支持板24と、送風機室20に設けられ、開口部50a1の周縁から後方に張り出すベルマウス27と、ファンモータ支持板24又はファンモータ支持板24の周辺に設けられた背面ヒータ30aと、送風機室20に上下方向に延びるように設けられた側面ヒータ30bと、ベルマウス27の外周の少なくとも一部に沿って設けられた前面ヒータ30cと、を備えたものである。このため、デフロスト運転時において、ファンモータ支持板24及びベルマウス27に水蒸気が付着しても、ヒータ30が発熱することで、ファンモータ支持板24及びベルマウス27に付着した水蒸気は0℃以上となる。したがって、外気温度0℃以下での極低温環境下において、ファンモータ支持板24及びベルマウス27に付着する水蒸気の凍結を抑制することができる。また、背面ヒータ30a、側面ヒータ30b、及び前面ヒータ30cは一体として構成されているため、背面ヒータ30a、側面ヒータ30b、及び前面ヒータ30cをそれぞれ別体として構成した場合に比べて生産性が向上する。
図10は、本実施の形態に係る空気調和機の室外機100の内部に、図7とは異なる背面ヒータ30aを設けた図である。図10に示されるように、上部板25の上面の周辺に背面ヒータ30aを設けてもよい。このようにすれば、上部板25に付着した水蒸気の凍結を抑制することができる。また、背面ヒータ30aは、上部板25の上面の周辺でなく上部板25に取り付けられるように設けてもよい。このように構成しても、背面ヒータ30aを上部板25の上面の周辺に設けた場合と同様に、上部板25に背面ヒータ30aの熱を伝えることができる。また、上部板25の下面に背面ヒータ30aを設けてもよい。このように構成すれば、上部板25のうち最も水蒸気が付着しやすい上部板25の下面に付着した水蒸気の凍結を一層抑制することができる。また、上部板25の上面と天面パネル50dの下面との間に背面ヒータ30aを設ける空間を確保する必要が無くなるため、室外機100の省スペース化を図ることができる。
図11は、本実施の形態に係る空気調和機の室外機100の内部に、図7とは異なる側面ヒータ30bを設けた図である。図11に示されるように、側面ヒータ30bを複数回屈曲させ、上向きのU字形状及び下向きのU字形状が複数形成されるように構成してもよい。また、側面ヒータ30bは、図示のように上下方向に直線的に延ばさないで、例えば左右方向に屈曲させながら上下方向に延ばしてもよい。このように構成すれば、ベルマウス27に向かって熱を放出する側面ヒータ30bの表面積が増えるため、ベルマウス27に付着した水蒸気の凍結を一層抑制することができる。
図12は、本実施の形態に係る空気調和機の室外機100の内部に、図7とは異なる側面ヒータ30bを設けた図である。図12に示されるように、側面ヒータ30bをベルマウス27の最上端よりも上方に、左右方向に延びるようにさらに設けてもよい。このように構成すれば、ベルマウス27に付着した水蒸気の凍結を一層抑制することができる。
図13は、本実施の形態に係る空気調和機の室外機100の内部に、図7とは異なる側面ヒータ30bを設けた図である。図13に示されるように、側面ヒータ30bがベルマウス27の上下方向の中央付近で屈曲されるように構成してもよい。このように側面ヒータ30bを構成すれば、ベルマウス27のうち最も空気の淀みやすいベルマウス27の上下方向の中央部分を熱することが出来る。このため、側面ヒータ30bの設置スペースが十分に確保できない場合であっても、効率よくベルマウス27に付着した水蒸気の凍結を抑制することができる。本実施の形態は、上述のような課題を背景としてなされたもので、プロペラファンに、底面パネルやグリル近傍における氷や雪の成長を抑制して、プロペラファンに起因する空気調和機の停止や故障を抑制することを目的とする。
図14において、本実施の形態に係る空気調和機の室外機のファン22の詳細を示す。ファンは、ボス部と羽部で構成される。本実施の形態に係る空気調和機の室外機のファン22では、溶剤に溶解したバインダー樹脂4中に、疎水性微粒子2と、カードハウス状の凝集構造を形成した扁平状微粒子3とが分散されているコーティング組成物を塗布した。コーティング組成物は、水滴との接触角が150°以上の超撥水コーティングである。コーティング組成物は、扁平状微粒子3が作り出した凹凸により、基材表面に空気膜を形成しているとみなすことができる。基材と外界が、空気の膜で隔てられていることになり、あらゆる物質の付着を抑制できる。また、凹凸によって膜全体が傷を受けにくいため摩擦に対して強くなる。また、凹凸と超撥水性成分によって、水や雪の付着を抑制することができ、付着した水や氷や雪を簡単に振り落とすことができる。
ファン22にこのような凹凸があって超撥水の性質をもつコーティング組成物を塗布することで、回転による遠心力がかかって氷や雪を室外機100の内部の送風機室20に振り落とすことが容易となる。また、デフロストで溶けた着霜の水蒸気があがってファン22のボス部や羽部に水滴がついたとしても容易に振り落とすことができる。従って、デフロストが要因でのファンへの氷結が無い。また、吸い込んだ雪がファン22のボス部や羽部に積雪しても簡単に振り落とすことができる。ファン22の停止中であってもその表面エネルギーの低さで雪が容易に室外機内部の送風機室20の底面パネル50cに滑り落ちる。従って、ファン22への氷や雪の付着を抑制できる効果が得られる。
ファン22に氷や雪が積層して巨大化すると、ファン22が扁心して回転するため、回転の力によってファンモータ23のネジ固定部を破損してしまったり、ファンモータ支持板24の下部から破損してしまったりするが、ファン22に上記コーティング組成物を塗布することで、このような不具合を避けることができる。また、プロペラファンが氷や雪で重たくなることで所望の風量が得られなくなるため、省エネ効率の低下を招くが、ファン22に上記コーティング組成物を塗布することで、このような不具合を避けることができる。コーティング組成物の構成に関しては、後述する。
ファン22から滑り落ちたり、振り落とされたりした氷や雪は底面パネル50cに落下する。この氷や雪はデフロスト運転では溶けず、デフロスト運転を繰り返す度に再凍結を繰り返して成長し、氷柱化する場合がある。氷柱化した氷はファン22に接触して危険である。たとえ、底面パネル50cに傾斜があっても、氷や雪は水と違って簡単には底面パネル50c上を移動できない。そこで、本実施の形態では、ファン22の下方であって底面パネル50c上にヒータ30を設置した。ファン22の下方にヒータ30を設置することでファン22から落ちた氷や雪を効率よく溶かすことができる。
更に詳細には、上面視でファンモータ23と前側面パネル50aの間であって、ファン22の下方で底面パネル50c上にヒータ30を設置した。ファンモータ23と前側面パネル50aの間であって、ファン22の下方にヒータ30を配置することで、ファン22から滑り落ちた雪や氷、または振り落とされた雪や氷が、ヒータ30の近傍に来るため、効率よく確実に溶かすことができる。
更に詳細には、上面視でファンモータ23と前面パネル50aの間であって、ファン22の下方で底面パネル50c上であって、ベルマウス27の下部にヒータ30を設置した。ファンモータ23と前面パネル50aの間であって、ファン22の下方でかつベルマウス27の下部にヒータ30を配置することで、ファン22から滑り落ちた雪や氷、または振り落とされた雪や氷が、ヒータの近傍に来るため、効率よく確実に溶かすことができるとともに、ベルマウス27への雪や氷の付着やつららの成長を抑制も同時に行うことができ、ファン22との接触を避けることができる効果を有する。
更に効果を高めるために、上面視でファンモータ23と前面パネル50aの間であって、ファン22の下方で底面パネル50c上にヒータ30を2本設置して、1本をベルマウス27の下部に設置して、もう1本を前記ヒータ30とファンモータ支持板24の付け根の間に設置するとよい。このようにすることでファン22から滑り落ちた雪や氷、または振り落とされた雪や氷が、更にヒータの近傍に来て2本で溶かすことができるため、効率よく確実に溶かすことができるとともに、ベルマウス27への雪や氷の付着やつららの成長を抑制も同時に行うことができ、ファン22との接触を避けることができる効果を有する。
別の形態として、ファン22の側方で、かつ、上面視でファン22と送風機室20の側面に設置された室外熱交換器21の間であって、送風機室20に上下方向に延びるようにヒータ30を設置した。このようにすることでファン22から振り落とされた雪や氷が、側面方向に飛んだ場合にも、雪や氷がヒータ30の近傍に来て効率よく確実に溶かすことができる。更に側面から吸い込んだ雪によるベルマウス27の近傍での氷付着やつららの成長を抑制も同時に行うことができ、ファン22との接触を避けることができる効果を有する。
前述のように、室外機100のファンの表面には超撥水性能を有するコーティング組成物が塗布されている。ファン22を回転させれば、羽部は遠心力によって氷や雪を簡単に落とすことができる。しかし、ボス部においては例えファンが回転していても風が生まれないためボス部を通る風速は非常に遅い。場所によってはほぼ風が流れないため、コーティングを施していても氷や雪が滑落しづらい。また、風が流れないためデフロスト時にも水を振り切りにくい。
そこで、本実施の形態のファン22のボス部にはボス部上に外周から内周に向かって曲線または円弧上のリブを複数もうけた(図15)。このリブは放射状に設けられている。このようにすることで、風を羽部側からボス部側に風を吸い込むことができて、ボス部の表面に風が流れることになる。ファンが回転している時に、ボス部の表面を流れる風量が増える。これによって、ボス部に塗布されたコーティング組成物と風との相乗効果で雪や氷が滑落しやすくなる。また、付着した水滴を振り落としやすくなる。
また、別の方法として、本実施の形態のファン22のボス部には裏面と表面を貫通する穴をもうけた(図16)。穴をもうけることで風が裏面から表面に抜けるのでボス部の表面を風がなめることになる。ファン22が停止している時も外界から得られる風の影響を受けて少なからずボス部の表面を流れる風量は増える。また、ファンが回転している時もボス部の表面を流れる風量は増える。これによって、ボス部に塗布されたコーティング組成物と風との相乗効果で雪や氷が滑落しやすくなる。また、付着した水滴を振り落としやすくなる。
穴は、複数の円・楕円でくりぬいても良いし、放射状にボス部の内周から外周に向かって、四角・楕円・線のいずれかでくりぬいても良い。1個でなくて複数個でもよい。穴は、強度の低下が懸念されるため、羽部がついている部分のボス部は避けて穴を空けるとよい。例えば、羽部と羽部の間のボス部分に穴をあけると強度が保たれてよい。例えば、羽部が3枚の場合は、羽部と羽部の間に1個ずつで合計3個の穴をあけるとよい。
プロペラファンのボス部分についた氷や雪が巨大化することで、前方のグリル部もしくはグリル部についた雪と接触または合体してしまいプロペラファンが回らなくなるという課題があった。そこで、本実施の形態では、ファンのボス部分の前方にあたるグリル部を上面視でフロントパネルの前後位置よりも所定の距離だけ前に膨らませて配置した。このようにすることで、ファンのボス部分に氷や雪がたくさん付着していても、ベルマウスとファンの距離を規定しながらもファンのボス部分とグリル部との接触を避けることができる。
また、グリル部は、樹脂製ではなく金属ワイヤーを用いた。金属ワイヤーの方が円形でかつ強度も得られ、細く成形できるので、雪が付着しづらい。従って、金属ワイヤーは樹脂に比べて、積雪や着氷が巨大化しづらい。ファンのボス部分とグリル部との接触を避けることができる。金属ワイヤーは横格子を縦格子に比べて少なくすることで、雪が横格子に乗ったりひっかかったりしないので、着雪を抑制できる。
次に、本実施の形態のファン22に塗布するコーティング組成物について説明する。図17は、本実施の形態に係るコーティング膜を備えた空気調和機の室外機のファンの模式断面図である。図18は、本実施の形態に係るコーティング膜を備えた空気調和機の室外機のファンの模式上面図である。図19は、本実施の形態に係るコーティング膜を備えた空気調和機の室外機のファンの模式斜視図である。これらの図では、ファン22の上面に、疎水性微粒子2、扁平状微粒子3及びバインダー樹脂4からなるコーティング膜5が設けられている。
コーティング膜5において、バインダー樹脂4に対する疎水性微粒子2の質量比(疎水性微粒子2の質量/バインダー樹脂4の質量)は、通常0.5以上、好ましくは0.5以上12以下、より好ましくは2以上8以下である。この疎水性微粒子2の存在によって、コーティング膜5の表面に微小な凹凸が形成される。この表面の微小な凹凸構造により、コーティング膜5の撥水性を高めることができる。バインダー樹脂4に対する疎水性微粒子2の質量比が0.5未満であると、コーティング膜5の表面全体に微細な凹凸構造が形成されず、所望の撥水性を有するコーティング膜5が得られない場合があるので好ましくない。一方、バインダー樹脂4に対する疎水性微粒子2の質量比が12を超えると、バインダー樹脂の量が少なすぎるため、所望の強度を有するコーティング膜5が得られず、コーティング膜5がファン22から剥離してしまう場合があるので好ましくない。
本実施の形態では、コーティング膜5において、扁平状微粒子3が、扁平状微粒子3の卓面と端面が互いに接してカードハウス状の凝集構造を形成していることに特徴がある。このカードハウス状の凝集構造により、コーティング膜5の表面に凹凸が形成される。この表面の凹凸により、疎水性微粒子2によって形成される微小な凹凸が複合化され、Cassie式における液体と表面との界面における液−気接触面積の割合が多くなることで、超撥水性を発現することができる。一方、扁平状微粒子3が、カードハウス状の凝集構造を形成していない場合には、図20に示すような表面凹凸構造となるため、所望の撥水性は得られない。この表面凹凸構造は、扁平状微粒子3を含まない場合に形成される表面凹凸構造と似ている(図21参照)。
コーティング膜5において、扁平状微粒子3に対する疎水性微粒子2の質量比(疎水性微粒子2の質量/扁平状微粒子3の質量)は、0.5以上、好ましくは0.5以上5以下、より好ましくは1以上2以下である。この疎水性微粒子2の存在によって、扁平状微粒子3の表面に微小な凹凸が形成される。この表面の微小な凹凸構造により、疎水性微粒子2のコーティング膜5の撥水性を高めることができる。扁平状微粒子3に対する疎水性微粒子2の質量比が0.5未満であると、扁平状微粒子3の表面を疎水性微粒子2が完全に被覆することができず、所望の撥水性をコーティング膜5に付与することができない場合があるので好ましくない。一方、扁平状微粒子3に対する疎水性微粒子2の質量比が5を超えると、疎水性微粒子2が扁平状微粒子3の表面を被覆するだけではなく、扁平状微粒子3の凹凸構造が疎水性微粒子により埋もれてしまい、所望の撥水性をコーティング膜5に付与することができない場合があるので好ましくない。
コーティング膜5において、バインダー樹脂4に対する扁平状微粒子3の質量比(扁平状微粒子3の質量/バインダー樹脂4の質量)は、0.25以上、好ましくは0.25以上12以下、より好ましくは0.5以上8以下である。この扁平状微粒子3の存在によって、コーティング膜5の表面に凹凸が形成される。この表面の凹凸構造により、コーティング膜5の撥水性を高めることができる。バインダー樹脂4に対する扁平状微粒子3の質量比が0.25未満であると、コーティング膜5の全体に扁平状微粒子3を分散させることができず、所望の撥水性を有するコーティング膜5が得られない場合があるので好ましくない。一方、バインダー樹脂4に対する扁平状微粒子3の質量比が12を超えると、バインダー樹脂4の量が少なすぎるため、所望の強度を有するコーティング膜5が得られず、コーティング膜5がファン22から剥離してしまう場合があるので好ましくない。
疎水性微粒子2の一次粒子又は二次粒子の平均粒径が、好ましくは100nm以下、より好ましくは5nm以上100nm以下、最も好ましくは10nm以上50nm以下である。疎水性微粒子2の一次粒子又は二次粒子の平均粒径が100nmを超えると、コーティング膜5の表面の凹凸が大きくなりすぎ、コーティング膜5の表面の液−気接触面積の割合が低減されず、所望の撥水性を有するコーティング膜5が得られない場合があるので好ましくない。また、コーティング膜5の表面の凹凸が大きくなりすぎると、外部からの物理的な刺激(例えば、異物の衝突や摩擦など)によって、コーティング膜5の表面形状が変化してしまい、撥水性が損なわれてしまうことがある。一方、疎水性微粒子2の一次粒子又は二次粒子の平均粒径が5nm未満であると、疎水性微粒子2が凝集し易くなり、コーティング組成物の流動性が低下し、ファン22上にコーティング組成物を塗布することが難しくなる場合があるので好ましくない。なお、本実施の形態において、疎水性微粒子2の一次粒子又は二次粒子の平均粒径は、動的光散乱法により測定された値である。
微粒子表面を疎水化する方法としては、微粒子表面に疎水性を付与することができれば特に限定されることはなく、適宜採用される。例えば、表面にフッ素やアルキル基を含有させることが好ましい。微粒子表面にフッ素やアルキル基を含有させる方法としては、シリル化剤、シランカップリング剤、アルキルアルミニウム等の有機金属化合物を用いる方法等が挙げられる。ここでシリル化剤とは、無機材料に対して親和性あるいは反応性を有する加水分解性シリル基に、アルキル基、アリル基、フッ素を含有したフルオロアルキル基等を結合させた化合物である。珪素に結合した加水分解性基としては、アルコキシ基、ハロゲン、アセトキシ基等が挙げられるが、通常、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、塩素が好ましく使用される。例えば、トリメチルシリル化剤、アルキルシラン類、アリールシラン類、フルオロアルキルシラン類等を挙げることができる。
本実施の形態においては、疎水性微粒子2は、表面が疎水性であるシリカであることが好ましい。ここで、「シリカ」とは、厳密にSiO2の状態で存在するものだけではなく、ケイ素酸化物も含むことを意味する。表面が疎水性であるシリカとしては、例えば、シリカの表面が疎水化処理されたものが挙げられる。また、疎水性微粒子2として、親水性のシリカに疎水化処理を行なって表面を疎水性にしたものを用いてもよい。
本実施の形態のコーティング組成物で用いる疎水性微粒子2としては、商品名「アエロジル200」(日本アエロジル株式会社製)、商品名「アエロジル300」(日本アエロジル株式会社製)、商品名「アエロジル380」(日本アエロジル株式会社製)、商品名「アエロジル90G」(日本アエロジル株式会社製)、商品名「アエロジルOX50」(日本アエロジル株式会社製)、商品名「アエロジルR972」(日本アエロジル株式会社製)、商品名「アエロジル972∨」(日本アエロジル株式会社製)、商品名「アエロジルR972CF」(日本アエロジル株式会社製)、商品名「アエロジルR974」(日本アエロジル株式会社製)、商品名「アエロジルR812」(日本アエロジル株式会社製)、商品名「アエロジルR805」(日本アエロジル株式会社製)、商品名「アエロジルRX200」(日本アエロジル株式会社製)、商品名「アエロジルRX300」(日本アエロジル株式会社製)、商品名「アエロジルRY200」(日本アエロジル株式会社製)、商品名「WACKER HDK H15」(旭化成ワッカーシリコーン社製)、商品名「WACKER HDK H18」(旭化成ワッカーシリコーン社製)、商品名「WACKER HDK H20」(旭化成ワッカーシリコーン社製)、商品名「WACKER HDK H30」(旭化成ワッカーシリコーン社製)、商品名「レオロシールHM20S」(株式会社トクヤマ製)、商品名「レオロシールHM30S」(株式会社トクヤマ製)、商品名「レオロシールHM40S」(株式会社トクヤマ製)、商品名「レオロシールZD30S」(株式会社トクヤマ製)、商品名「レオロシールDM30S」(株式会社トクヤマ製)等を商業的に入手することができる。
本実施の形態において、扁平状微粒子3は、板状、鱗片状、短冊状、円盤状等の微粒子であり、微粒子の卓面と端面とのアスペクト比が10以上のものが好ましい。扁平状微粒子3のアスペクト比が10未満であると、棒状あるいは針状といった形状に近づき、カードハウス状の凝集構造が形成されにくくなるため、所望の撥水性を有するコーティング膜5が得られない場合があるので好ましくない。
扁平状微粒子3の一次粒子の平均粒径が、好ましくは100nm以上100μm以下、より好ましくは100nm以上10μm以下、最も好ましくは200nm以上3μm以下である。ここで、扁平状微粒子3の粒径とは、長辺方向の長さのことである。扁平状微粒子3の一次粒子の平均粒径が100nm未満であると、撥水性の向上に必要な凹凸構造が得られない場合があるので好ましくない。また、扁平状微粒子3の一次粒子の平均粒径が100μmを超えると、扁平状微粒子3同士の間隔が液滴よりも大きくなりすぎるため、所望の撥水性を有するコーティング膜5が得られない場合があるので好ましくない。なお、本実施の形態において、扁平状微粒子3の一次粒子の平均粒径は、動的光散乱法により測定された値である。
また、扁平状微粒子3の凝集状態の平均粒径が、好ましくは125nm以上200μm以下、より好ましくは10μm以上100μm以下である。扁平状微粒子3の凝集状態の平均粒径が125nm未満であると、疎水性微粒子2によって形成される微細凹凸構造との差が小さくなるために凹凸構造の組み合わせによる撥水性の向上効果が得られない場合があるので好ましくない。また、扁平状微粒子3の凝集状態の平均粒径が200μmを超えると、バインダー樹脂4との密着性が低下し、外部からの刺激によって、コーティング膜5の表面形状が変化してしまい、撥水性が損なわれる場合があるので好ましくない。
カードハウス構造を形成する扁平状微粒子3としては、スメクタイト、トバモライト、ベントナイト、カオリン、マイカ、ベーマイト、アルミニウム、アルミナ、シリカ、珪酸カルシウム、炭酸カルシウム、ケイ酸塩鉱物、アルミナ、シリカ、炭酸カルシウム、窒化ホウ素、グラフェン、酸化チタン、水酸化系化合物、炭酸塩系化合物、リン酸塩系化合物、ケイ酸塩系化合物、チタン酸塩系化合物等が挙げられる。例えば、扁平状微粒子3としては、商品名「トバモライトTJ」(日本インシュレーション社製)、商品名「セラシュールBMF」(河合石灰工業株式会社製)、商品名「セラシュールBMM」(河合石灰工業株式会社製)、商品名「セラシュールBMT」(河合石灰工業株式会社製)、商品名「セラシュールBMN」(河合石灰工業株式会社製)、商品名「サンラブリー」(AGCエスアイテック社製)、商品名「テラセス」(大塚化学社製)、商品名「アルミニウムペースト」(東洋アルミニウム株式会社製)、商品名「セラフ」(キンセイマテック社製)、商品名「シルキーフレーク」(日本板硝子社製)、商品名「ガラスフレーク」(日本板硝子社製)、商品名「ミクロマイカ」(コープケミカル社製)、商品名「ソマシフ」(コープケミカル社製)、商品名「ルーセンタイト」(コープケミカル社製)、商品名「SBN」(昭和電工社製)、商品名「デンカボロンナイトライド」(電気化学工業社製)、商品名「PS35−A」(ニューライム社製)、商品名「PS15−A」(ニューライム社製)等を商業的に入手することができる。
バインダー樹脂4としては、溶剤可溶型のものであれば特に限定されず、当該技術分野において公知のものを用いることができる。本実施の形態において好ましく使用されるバインダー樹脂4としては、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、フルオロオレフィン共重合体等が挙げられる。フルオロオレフィン共重合体を与えるモノマー成分としては、クロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、各種置換基を有するビニルエステル等が挙げられる。
本実施の形態のコーティング組成物に用いる溶剤としては、極性を有する有機溶媒でも非極性の有機溶媒でも使用することができる。本実施の形態において好ましく使用される有機溶媒としては、フッ素系溶剤、塩素系溶剤、トルエンやキシレンなどの芳香族炭化水素系溶剤、脂肪族炭化水素系溶剤、酢酸エチルや酢酸ブチルなどのエステル系溶剤、メチルイソブチルケトンやアセトンなどのケトン系溶剤、エーテル系溶剤等が挙げられる。本実施の形態のコーティング組成物には、本実施の形態の効果を阻害しない範囲で、分散剤、レベリング剤、蒸発抑制剤、付着性改良剤等の公知の添加剤を添加してもよい。
上述したコーティング組成物をファン22上に塗布・乾燥させることによりコーティング膜5を形成することができる。ここで、コーティング組成物の塗布方法としては、特に限定されず、当該技術分野において公知の方法を用いることができる。塗布方法の例としては、スプレー塗布、浸漬塗布などが挙げられる。また、乾燥条件は、コーティング組成物の組成などに応じて適宜調整すればよく、特に限定されない。
本実施の形態において、疎水性微粒子を均一に分散させるためには、有機溶媒中で、キャビテーション作用により分散させることが好ましい。ここで、キャビテーション作用を起こさせるためには、例えば、微粒子を有機溶媒に入れて、高圧湿式メディアレス微粒化装置等を用いて、分散させることにより、達成される。なお、ホモジナイザー等の分散機によって分散させても超撥水性を発揮することがあるが、均一なコーティング膜を得ることが困難である。
本実施の形態において、カードハウス型の凝集構造を形成した扁平状微粒子を、有機溶媒中で、強いせん断力のかからない方法により分散させることが好ましい。ここで、強いせん断力をかけることなく分散させるためには、例えば、カードハウス型の凝集構造を形成した扁平状微粒子を有機溶媒に入れて、振とう器等を用いて分散させることにより達成される。一方、強い剪断力をかけた場合には、カードハウス型の凝集構造が破壊され、所望の撥水性が得られない。
以下に実施例を示して本実施の形態を具体的に説明するが、これらにより本実施の形態は何ら制限を受けるものではなく、本実施の形態の技術的範囲を逸脱しない範囲内で種々の応用が可能である。なお、各実施例及び各比較例は以下に示す方法で測定及び評価を行った。
<撥水性の評価>
撥水性の評価のために、以下のようにして初期水滴接触角の評価を行った。ここでの「撥水性」とは、水のはじきやすさであり、撥水性が高いほど水をはじきやすい。
協和界面化学製のDM301型接触角計を用い、大気中(約25℃)で2μLの水滴をコーティング膜に滴下して、水滴の静的接触角θを測定した。なお、撥水性を示すコーティング膜表面は、水滴の静的接触角θが90度以上であり、なかでも水滴の静的接触角θが150度以上を示すものを超撥水性という。撥水性の評価は、下記評価基準に基づいて評価を行った。
〇:水滴の静的接触角θが150度以上のもの
×:水滴の静的接触角θが150度未満のもの
<耐水性の評価>
耐水性の評価のために、以下のようにして長時間の水との接触に伴う水滴の接触角の変化の評価を行った。ここでの「耐水性」とは、水に一定時間浸漬させた場合に、初期の撥水性能をどの程度維持できるかをいい、耐水性が高いほど初期性能を維持することができる。
コーティング膜を塗布した試験片を水中に浸漬させ、一定時間経過するごとに、試験片を乾燥させ、協和界面化学製のDM301型接触角計を用い、大気中(約25℃)で2μLの水滴をコーティング膜に滴下して、水滴の静的接触角を測定した。耐水性の評価は、下記評価基準に基づいて評価を行った。
〇:一定時間経過後の水滴の静的接触角θが150度以上のもの
×:一定時間経過後の水滴の静的接触角θが150度未満のもの
<着雪性の評価>
着雪性の評価は、人工降雪装置を用いて、室温を−5℃に設定して降雪を行ないながら、暖房運転を3時間連続運転させることにより、ファン表面の着雪量を目視確認にて、五段階で評価した。着雪性の評価は、下記評価基準に基づいて評価を行った。
〇:着雪がほとんどないもの
×:着雪が多いもの
〔実施例1〕
表面が疎水性で、平均一次粒子径が約12nmの疎水性シリカ(商品名「アエロジルRX200」、日本アエロジル株式会社製)3.0質量部及びバインダー樹脂(商品名「フルオネートK−700」、大日本インキ社製)3.0質量部を、酢酸ブチル91.0質量部に添加し、湿式微粒化装置を用いて混合及び分散処理を行った後、平均一次粒子径が1μmで、凝集状態の平均粒子径が17μmの扁平状微粒子(商品名「トバモライトTJ」、日本インシュレーション社製)3.0質量部を添加し、振盪撹拌して、コーティング組成物を得た。得られたコーティング組成物を、基材(ファン)上に塗布・乾燥してコーティング膜を備えた評価用部材を作製した。
〔実施例2〕
表面が疎水性で、平均一次粒子径が約12nmの疎水性シリカ(商品名「アエロジルRX200」、日本アエロジル株式会社製)3.0質量部及びバインダー樹脂(商品名「SSG ME90L」、ニットーボーメディカル社製)3.0質量部を、ブタノール91.0質量部に添加し、湿式微粒化装置を用いて混合及び分散処理を行った後、平均一次粒子径が1μmで、凝集状態の平均粒子径が17μmの扁平状微粒子(商品名「トバモライトTJ」、日本インシュレーション社製)3.0質量部を添加し、振盪撹拌して、コーティング組成物を得た。得られたコーティング組成物を用いて実施例1と同様に評価用部材を作製した。
〔実施例3〕
表面が疎水性で、平均一次粒子径が約12nmの疎水性シリカ(商品名「アエロジルRX200」、日本アエロジル株式会社製)3.0質量部及びバインダー樹脂(商品名「フルオネートK−700」、大日本インキ社製)3.0質量部を、酢酸ブチル91.0質量部に添加し、湿式微粒化装置を用いて混合及び分散処理を行った後、平均一次粒子径が3μmで、凝集状態の平均粒子径が5μmの扁平状微粒子(商品名「サンラブリー」、AGCエスアイテック社製)3.0質量部を添加し、振盪撹拌して、コーティング組成物を得た。得られたコーティング組成物を、基材(ファン)上に塗布・乾燥してコーティング膜を備えた評価用部材を作製した。
〔実施例4〕
表面が疎水性で、平均一次粒子径が約12nmの疎水性シリカ(商品名「アエロジルRX200」、日本アエロジル株式会社製)3.0質量部及びバインダー樹脂(商品名「SSG ME90L」、ニットーボーメディカル社製)3.0質量部を、ブタノール91.0質量部に添加し、湿式微粒化装置を用いて混合及び分散処理を行った後、平均一次粒子径が3μmで、凝集状態の平均粒子径が5μmの扁平状微粒子(商品名「サンラブリー」、AGCエスアイテック社製)3.0質量部を添加し、振盪撹拌して、コーティング組成物を得た。得られたコーティング組成物を用いて実施例1と同様に評価用部材を作製した。
〔実施例5〕
表面が疎水性で、平均一次粒子径が約10nmの疎水性シリカ(商品名「WACKER HDK H18」、旭化成ワッカーシリコーン社製)3.0質量部及びバインダー樹脂(商品名「フルオネートK−700」、大日本インキ社製)3.0質量部を、酢酸ブチル91.0質量部に添加し、湿式微粒化装置を用いて混合及び分散処理を行った後、平均一次粒子径が1μmで、凝集状態の平均粒子径が17μmの扁平状微粒子(商品名「トバモライトTJ」、日本インシュレーション社製)3.0質量部を添加し、振盪撹拌して、コーティング組成物を得た。得られたコーティング組成物を、基材(ファン)上に塗布・乾燥してコーティング膜を備えた評価用部材を作製した。
〔実施例6〕
表面が疎水性で、平均一次粒子径が約10nmの疎水性シリカ(商品名「WACKER HDK H18」、旭化成ワッカーシリコーン社製)3.0質量部及びバインダー樹脂(商品名「SSG ME90L」、ニットーボーメディカル社製)3.0質量部を、ブタノール91.0質量部に添加し、湿式微粒化装置を用いて混合及び分散処理を行った後、平均一次粒子径が1μmで、凝集状態の平均粒子径が17μmの扁平状微粒子(商品名「トバモライトTJ」、日本インシュレーション社製)3.0質量部を添加し、振盪撹拌して、コーティング組成物を得た。得られたコーティング組成物を用いて実施例1と同様に評価用部材を作製した。
〔比較例1〕
振盪撹拌の代わりに湿式微粒化装置を用いて分散処理を行った以外は実施例1と同様にしてコーティング組成物を調製した。なお、コーティング組成物では、分散処理により扁平状微粒子のカードハウス状の凝集構造が破壊されていた。得られたコーティング組成物を用いて実施例1と同様に評価用部材を作製した。
〔比較例2〕
振盪撹拌の代わりに湿式微粒化装置を用いて分散処理を行った以外は実施例2と同様にしてコーティング組成物を調製した。なお、コーティング組成物では、分散処理により扁平状微粒子のカードハウス状の凝集構造が破壊されていた。得られたコーティング組成物を用いて実施例1と同様に評価用部材を作製した。
〔比較例3〕
表面が疎水性で、平均一次粒子径が約12nmの疎水性シリカ(商品名「アエロジルRX200」、(日本アエロジル株式会社製)3.0質量部及びバインダー樹脂(商品名「フルオネートK−700」、大日本インキ社製)3.0質量部を、酢酸ブチル94.0質量部に添加し、湿式微粒化装置を用いて混合及び分散処理を行い、コーティング組成物を得た。得られたコーティング組成物を用いて実施例1と同様に評価用部材を作製した。
〔比較例4〕
表面が疎水性で、平均一次粒子径が約12nmの疎水性シリカ(商品名「アエロジルRX200」、日本アエロジル株式会社製)3.0質量部及びバインダー樹脂(商品名「フルオネートK−700」、大日本インキ社製)3.0質量部を、酢酸ブチル91.0質量部に添加し、湿式微粒化装置を用いて混合及び分散処理を行った後、棒状微粒子(商品名「ウォラストナイト」、原田産業社製)3.0質量部を添加し、振盪撹拌して、コーティング組成物を得た。得られたコーティング組成物を用いて実施例1と同様に評価用部材を作製した。
〔比較例5〕
振盪撹拌の代わりに湿式微粒化装置を用いて分散処理を行った以外は比較例4と同様にしてコーティング組成物を調製し、評価用部材を作製した。
〔比較例6〕
平均一次粒子径が1μmで、凝集状態の平均粒子径が17μmの扁平状微粒子(商品名「トバモライトTJ」、日本インシュレーション社製)3.0質量部及びバインダー樹脂(商品名「フルオネートK−700」、大日本インキ社製)3.0質量部を、酢酸ブチル94.0質量部に添加し、振盪撹拌して、コーティング組成物を得た。得られたコーティング組成物を用いて実施例1と同様に評価用部材を作製した。
〔比較例7〕
振盪撹拌の代わりに湿式微粒化装置を用いて分散処理を行った以外は比較例6と同様にしてコーティング組成物を調製した。なお、コーティング組成物では、分散処理により扁平状微粒子のカードハウス状の凝集構造が破壊されていた。得られたコーティング組成物を用いて実施例1と同様に評価用部材を作製した。
実施例1〜6及び比較例1〜7の評価結果を表1に示す。
表1の結果からわかるように、疎水性微粒子とカードハウス状の凝集構造を形成した扁平状微粒子とを組み合わせた場合にのみ、高い耐水性と着雪性を有することがわかった。
〔実施例7〜9及び比較例8〕
平均一次粒子径が1μmで、凝集状態の平均粒子径が17μmの扁平状微粒子(商品名「トバモライトTJ」、日本インシュレーション社製)の配合量を表2に示すように変化させた以外は実施例1と同様にしてコーティング組成物を調製し、評価用部材を作製した。その評価結果を表2に示す。
表2の結果から、扁平状微粒子の添加量が少ない場合には、凹凸の複合化による耐水性の向上効果は得られないことが分かった。
以上の結果から分かるように、本実施の形態の空気調和機の室外機のファンの表面には、溶剤に溶解したバインダー樹脂中に、疎水性微粒子と、カードハウス状の凝集構造を形成した扁平状微粒子とが分散されているコーティング組成物が塗布したため、保有する表面の凹凸と空気層によって摩擦や水分による劣化を抑制しながら、氷や雪が剥がしやすくなり、ファンにおける氷結や着雪を防止できる。また、保有する表面の凹凸と空気層によって雪や汚泥や水に起因する汚れも防止できる。更に、ファンの下方であって、底面パネル上に第1ヒータを備えたのでファンから落ちた氷や雪を直接下方直下の第1ヒータで受け取ってすばやく溶かすことができるため氷や雪の再成長を抑制できる。