(実施の形態1)
以下、本発明の実施の形態1について図面を用いて説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
[構成および基本動作]
図1は、本発明の実施の形態1に係る無線通信装置の使用状況を説明するための図である。
図1を参照して、本発明の実施の形態1に係る無線通信装置100は、本体部10と、アンテナ部11とを備え、たとえば信号灯器付近に設置されたアンテナ部11から、車道などの対象領域Eに向けて無線信号を送信する。
そして、無線通信装置100は、対象領域Eにおいて反射した無線信号をアンテナ部11により受信する。このアンテナ部11は、たとえば複数のアンテナ素子を有するアレイアンテナである。無線通信装置100は、各アンテナ素子により受信された無線信号の周波数または位相のずれ等に基づいて所定の演算処理を行い、対象領域Eに存在する対象物の有無、対象物が存在する場合には当該対象物のおよその位置、当該対象物の進行方向または当該対象物の移動速度などの情報を取得する。
ここで、対象物とは、たとえば車両または歩行者などであり、無線通信装置100は、検知した車両または歩行者に対して付近の交差点情報、規定速度情報または車間距離情報などの情報を無線通信により提供する。
具体的には、無線通信装置100は、対象物の位置、進行方向および移動速度などの情報のうち少なくとも1つの情報と、当該対象物へ提供すべき情報(以下、「提供情報」と称する)の内容とを予め対応づけた対応テーブルを記憶する。
無線通信装置100は、この対応テーブルを参照して、検知した対象物の位置等の情報に基づいて提供情報の内容を決定する。そして、無線通信装置100は、決定した提供情報を含む信号を、無線通信により対象物に対して送信する。たとえば、無線通信装置100は、取得した対象物の位置が交差点から所定の範囲内である場合、当該対象物の周囲に交差点があることを示す情報を、当該対象物へ提供する。
次に、無線通信装置100の詳細な構成について説明する。図2は、本発明の実施の形態1に係る無線通信装置の構成を示す図である。
図2を参照して、無線通信装置100は、上述のとおり、本体部10と、アンテナ部11とを備える。また、本体部10は、送受信部12と、分岐回路13,14と、発振器15,16と、選択部17と、センサ部18と、通信部19とを含む。
アンテナ部11は、たとえば4本のアンテナ素子を有し、各アンテナ素子により無線信号を送受信する。
送受信部12は、アンテナ部11における各アンテナ素子に対応して、無線変換部30と、A/Dコンバータ(ADC)24と、D/Aコンバータ(DAC)25との組を4つ有する。また、無線変換部30は、デュプレクサ(Duplex)21と、ローノイズアンプ22と、ミキサ23,26と、パワーアンプ27とを有する。
デュプレクサ21は、アンテナ部11から受けた無線信号をローノイズアンプ22へ出力する。また、デュプレクサ21は、パワーアンプ27から受けた無線信号をアンテナ部11へ出力する。デュプレクサ21は、アンテナ部11から受けた無線信号と、パワーアンプ27から受けた無線信号との分離を行ない、両信号間の干渉を防ぐ。
ローノイズアンプ22は、デュプレクサ21を通過した無線信号を増幅して出力する。
ミキサ23は、ローノイズアンプ22から受けた無線信号と、分岐回路13を介して発振器15から受けたローカル信号とを乗算することにより、ローノイズアンプ22から受けた無線信号を周波数変換してA/Dコンバータ24へ出力する。
A/Dコンバータ24は、ミキサ23から受けた信号をデジタル信号に変換し、選択部17を介してセンサ部18または通信部19へ出力する。
D/Aコンバータ25は、選択部17を介してセンサ部18または通信部19から受けたデジタル信号をアナログ信号に変換し、ミキサ26へ出力する。
ミキサ26は、D/Aコンバータ25から受けたアナログ信号と、分岐回路14を介して発振器16から受けたローカル信号とを乗算することにより、D/Aコンバータ25から受けたアナログ信号を周波数変換してパワーアンプ27へ出力する。
パワーアンプ27は、ミキサ26から受けた無線信号を増幅してデュプレクサ21へ出力する。さらに、デュプレクサ21は、パワーアンプ27から受けた無線信号をアンテナ部11へ出力し、アンテナ部11は当該無線信号を送信する。
選択部17は、A/Dコンバータ24およびD/Aコンバータ25を介した無線変換部30の接続先をセンサ部18と通信部19との間で切り替える。すなわち、選択部17により、無線変換部30の接続先がセンサ部18に切り替えられた場合、無線変換部30から出力されたアナログ信号は、A/Dコンバータ24においてデジタル信号に変換され、変換されたデジタル信号は、センサ部18へ出力される。また、この場合、センサ部18から出力されたデジタル信号は、選択部17経由でD/Aコンバータ25に出力され、D/Aコンバータ25においてアナログ信号に変換され、変換されたアナログ信号は、無線変換部30へ出力される。
一方、選択部17により、A/Dコンバータ24およびD/Aコンバータ25を介した無線変換部30の接続先が通信部19に切り替えられた場合、無線変換部30から出力されたアナログ信号は、A/Dコンバータ24においてデジタル信号に変換され、変換されたデジタル信号は、センサ部19へ出力される。また、この場合、通信部19から出力されたデジタル信号は、選択部17経由でD/Aコンバータ25に出力され、D/Aコンバータ25においてアナログ信号に変換され、変換されたアナログ信号は、無線変換部30へ出力される。
センサ部18は、変復調部31と、データ処理部32とを含む。データ処理部32は、対象領域Eに存在する対象物の検知に用いるための情報を示すデータを変復調部31へ出力する。変復調部31は、データ処理部32から出力されたデータに対して変調処理を行い、変調処理後の信号(以下、「検知信号」と称する)を選択部17経由でD/Aコンバータ25へ出力する。そして、検知信号は、D/Aコンバータ25においてアナログ信号に変換され、さらに、無線変換部30において無線信号に変換されてアンテナ部11により対象領域Eに向けて送信される。
そして、対象領域Eにおいて無線信号が反射すると、反射した無線信号がアンテナ部11により受信され、送受信部12および選択部17を介してセンサ部18に出力される。そして、変復調部31は、選択部17を介してA/Dコンバータ24から受けたデジタル信号を復調し、復調データをデータ処理部32へ出力する。
そして、データ処理部32は、アンテナ部11の各アンテナ素子により受信された無線信号の位相のずれ等を示す復調データを変復調部31から受けて、この復調データに基づいて所定の演算処理を行い、対象領域Eに存在する対象物の有無、対象物が存在する場合には当該対象物の位置および当該対象物の移動速度などの情報を取得する。
また、データ処理部32は、対象領域Eに存在する対象物を検知した場合、検知結果を選択部17および通信部19のデータ処理部34へ出力する。選択部17は、データ処理部32から対象物が存在することを示す検知結果を受けると、A/Dコンバータ24およびD/Aコンバータ25を介した無線変換部30の接続先をセンサ部18から通信部19に切り替える。そして、選択部17は、たとえば、上記接続先を通信部19に切り替えたタイミングから所定時間経過後のタイミングで、A/Dコンバータ24およびD/Aコンバータ25を介した無線変換部30の接続先をセンサ部18に切り替える。
通信部19は、変復調部33と、データ処理部34とを含む。データ処理部34は、たとえば対応テーブルなどを参照して、センサ部18のデータ処理部32から受けた検知結果に含まれる対象物の位置などの情報に基づいて提供情報の内容を決定する。
また、データ処理部34は、検知結果に含まれる対象物の位置などの情報に基づいて、各アンテナ素子から送信される無線信号の制御を行うことにより、アンテナ部11の指向性を調整する。たとえば、データ処理部34は、各アンテナ素子から位相の異なる無線信号が送信されるように、各アンテナ素子から送信される無線信号の位相を制御するための位相制御情報および上記提供情報を含むデータをアンテナ素子ごとに生成することにより、アンテナ部11から送信される無線信号のビーム方向を調整する。また、たとえば、データ処理部34は、アンテナ素子ごとに無線信号の送信と送信停止とを切り替えることにより、アンテナ部11から送信される無線信号のビーム幅を調整することも可能である。具体的には、各アンテナ素子と送受信部12との間に無線信号の送信と送信停止とを切り替えるためのスイッチが設けられ、データ処理部34は、各アンテナ素子に接続されたスイッチを制御し、無線信号の送信に使用するアンテナ素子を適宜選択することにより、アンテナ部11から送信される無線信号のビーム幅を調整することができる。
そして、データ処理部34は、生成した提供情報を示すデータを、変復調部33へ出力する。変復調部33は、データ処理部34から出力されたデータに対して変調処理を行い、変調処理後の信号(以下、「通信信号」と称する)を選択部17経由でD/Aコンバータ25へ出力する。そして、検知信号は、D/Aコンバータ25においてアナログ信号に変換され、さらに、無線変換部30において無線信号に変換される。そして、変換された無線信号は、アンテナ部11の各アンテナ素子から対象物に向けて送信される。
なお、アンテナ部11は、各アンテナ素子と送受信部12との間の経路の長さを変更可能な経路長調整部を有していてもよい。この場合、データ処理部34は、各アンテナ素子から送信される無線信号の位相を調整するための位相制御情報を生成し、生成した位相制御情報を示すデータを、選択部17を介して送受信部12へ出力する。そして、送受信部12は、この位相制御情報に基づいて各アンテナ素子と送受信部12との経路長に差が生じるようにアンテナ部11の経路長調整部を制御することにより、対象物に向けてアンテナ部11のビーム幅およびビーム方向のうち少なくとも一方を調整することが可能である。
また、センサ部18により検知された対象物が複数ある場合、センサ部18は、各対象物の移動速度などに基づき、たとえば移動速度が最も速い対象物など所定条件を満たす対象物を特定する。そして、通信部19は、センサ部18により特定された対象物に向けてアンテナ部11のビーム幅およびビーム方向のうち少なくとも一方を調整するために、提供情報を示すデータをアンテナ素子ごとに生成することができる。
ここで、アンテナ部11により送信される無線信号、すなわち検知信号が変換された無線信号および通信信号が変換された無線信号は、いずれも周波数がおよそ71GHzから86GHzのミリ波であり、より具体的には79GHz帯を中心とする同一周波数帯の無線信号が使用される。
このミリ波は、波長が小さいことから、周囲によるわずかな影響を受けた場合であっても信号の強弱に大きく差が生じるため、対象領域Eに存在する比較的小さな対象物の検知に適している。すなわち、ミリ波を使用することにより、車両だけでなく歩行者等の有無、歩行者等の位置、または、歩行者等の移動速度などの詳細な検知を行うことができる。
また、無線通信装置100では、検知信号が変換された無線信号と、通信信号が変換された無線信号とが同一周波数帯となるため、対象物の検知に用いた無線信号が反射した無線信号の受信電力に基づいて、通信信号が変換された無線信号を送信した場合の対象物における受信電力の大きさ等を推定することができる。
具体的には、センサ部18から通信部19へ出力される検知結果には、対象領域Eにおいて反射した無線信号のたとえば受信電力の大きさを示す情報が含まれている。そして、通信部19のデータ処理部34は、送信電力の大きさと受信電力の大きさとの差に基づいて、通信信号が変換された無線信号を送信した場合の対象物における受信電力の大きさを推定する。そして、データ処理部34は、推定した受信電力の大きさに基づいて、通信信号を変換した無線信号の送信電力の大きさ等を決定する。
なお、センサ部18および通信部19は、検知信号が変換された無線信号の送信電力を、通信信号が変換された無線信号の送信電力より小さく設定することができる。
また、データ処理部34は、推定した受信電力の大きさに基づいて、通信信号の伝送速度を決定することも可能である。たとえば、データ処理部34は、推定した受信電力の大きさが小さいほど通信信号の伝送速度を遅くするように決定することができる。
なお、図2に示す無線通信装置100では、選択部17が、A/Dコンバータ24およびD/Aコンバータ25を介した無線変換部30の接続先を、センサ部18と通信部19との間で切り替える。しかしながら、選択部17が検知信号および通信信号のうちいずれか一方を選択して、選択した信号を無線変換部30へ出力する構成であれば、図2に示す構成には限定されない。
たとえば、無線変換部30は、A/Dコンバータ24およびD/Aコンバータ25を介して、センサ部18および通信部19の双方と接続されていてもよい。この場合、センサ部18および通信部19が選択部に相当し、当該選択部が、検知信号および通信信号のうちいずれか一方を選択し、選択した信号を無線変換部30へ出力することが可能である。
[動作]
次に、本発明の実施の形態1に係る無線通信装置100による対象物の検知および対象物に対する情報提供の動作の流れについて説明する。
図3は、本発明の実施の形態1に係る無線通信装置による対象物の検知および対象物に対する情報提供の動作手順を示すフローチャートである。
無線通信装置100は、フローチャートの各ステップを含むプログラムを図示しないメモリから読み出して実行する。このプログラムは、外部からインストールすることができる。このインストールされるプログラムは、たとえば記録媒体に格納された状態で流通する。
図3を参照して、まず、センサ部18は、対象領域Eに存在する対象物の検知に用いられる検知信号を出力する。そして、送受信部12は、選択部17を介して受けた検知信号を無線信号に変換して、アンテナ部11により対象領域Eへ送信する(ステップS11)。
次に、送受信部12は、対象領域Eにおいて反射した無線信号をアンテナ部11により受信し、受信した無線信号をデジタル信号に変換して選択部17を介してセンサ部18へ出力する(ステップS12)。
次に、センサ部18は、送受信部12から受けデジタル信号に基づいて所定の演算処理を行い、対象領域Eに対象物が存在するか否かを検知するとともに、対象領域Eに対象物が存在する場合には当該対象物の位置および当該対象物の移動速度などの情報を取得する(ステップS13)。
センサ部18は、対象物を検知した場合には(ステップS14において「Yes」)、対象物の位置等の情報を含む検知結果を選択部17および通信部19へ出力する(ステップS15)。なお、この検知結果には、検知信号が変換された無線信号の送信電力の大きさ、および、対象領域Eにおいて反射した無線信号の受信電力の大きさを示す情報が含まれている。
次に、選択部17は、センサ部18から検知結果を受けると、A/Dコンバータ24およびD/Aコンバータ25を介した無線変換部30の接続先をセンサ部18から通信部19へ切り替える(ステップS16)。なお、選択部17は、センサ部18から検知結果を受けた直後に無線変換部30の接続先を通信部19に切り替える代わりに、たとえば、上記検知結果を受けたタイミングから所定時間経過後、または、対象物を検知した後に当該対象物が所定の位置へ移動したタイミングで、無線変換部30の接続先を通信部19に切り替えても良い。
一方、センサ部18は、対象物を検知しなかった場合(ステップS14において「No」)、検知結果の出力を行わず、検知信号の無線信号への変換および送信を再び行う(ステップS11)。
また、通信部19は、センサ部18から検知結果を受けると、検知結果に含まれる対象物の位置等の情報などに基づいて当該対象物に対する提供情報の内容を決定する(ステップS17)。
たとえば、通信部19は、対応テーブル等を参照して、検知された対象物が道路を走行している車両である場合、付近の交差点情報、規定速度情報または車間距離情報などの情報を提供情報の内容として決定する。
また、たとえば、検知された対象物がデパートの入口付近に位置する歩行者であって、デパートに向かって進行している歩行者である場合、通信部19は、このデパートに関する当日の情報を提供情報の内容として決定する。また、たとえば、検知された対象物がデパートの入口付近に位置する歩行者であって、デパートから離れる方向へ進行している歩行者である場合、通信部19は、このデパートに関する翌日以降の情報を提供情報の内容として決定する。
また、たとえば、検知された対象物が横断歩道の付近に位置する歩行者であって、この横断歩道に向かって進行している歩行者である場合、通信部19は、この横断歩道の周囲に位置する車両に関する情報を提供情報の内容として決定する。また、たとえば、検知された対象物が横断歩道の付近に位置する歩行者であって、この横断歩道から離れる方向へ進行している歩行者である場合、通信部19は、この横断歩道の周辺施設に関する情報を提供情報の内容として決定する。
次に、通信部19は、検知結果に含まれる検知信号が変換された無線信号の送信電力の大きさ、および、対象領域Eにおいて反射した無線信号の受信電力の大きさを示す情報に基づいて、送信電力の大きさと受信電力の大きさとの差を算出する。
そして、通信部19は、送信電力の大きさと受信電力の大きさとの差に基づいて、通信信号が変換された無線信号を送信した場合の対象物における受信電力の大きさを推定する。そして、通信部19は、推定した受信電力の大きさに基づいて、通信信号を変換した無線信号の送信電力の大きさを決定する(ステップS18)。
次に、通信部19は、推定した受信電力の大きさに基づいて、通信信号の伝送速度を決定する(ステップS19)。
次に、通信部19は、検知結果に含まれる対象物の位置などの情報に基づいて、対象物に向けてアンテナ部11の各アンテナ素子のビーム幅およびビーム方向のうち少なくとも一方を調整するために、提供情報を示すデータをアンテナ素子ごとに生成する(ステップS20)。
次に、通信部19は、生成した提供情報を示すデータに対して変調処理を行い、変調処理後の通信信号を送受信部12へ出力する。そして、送受信部12は、選択部17を介して受けた通信信号を無線信号に変換して、アンテナ部11により対象物へ送信する。このとき、送受信部12は、ステップS18において決定された送信電力の大きさ、および、ステップS19において決定された伝送速度に従って当該無線信号を対象物へ送信する(ステップS21)。
次に、選択部17は、たとえば、A/Dコンバータ24およびD/Aコンバータ25を介した無線変換部30の接続先を通信部19に切り替えたタイミングから所定時間経過後のタイミングで、無線変換部30の接続先をセンサ部18に切り替える(ステップS22)。なお、上述したステップS16およびS22において選択部17が無線変換部30の接続先の切り替えを完了するまでに、無線変換部30がセンサ部18および通信部19のいずれにも接続されていない期間があってもよい。
ところで、無線通信装置から送信される無線信号の対象物における受信品質は、対象物と無線通信装置との間の距離、対象物の移動速度および周囲環境による影響等を受けて変化する。
しかしながら、上述した特許文献1に記載の情報中継装置では路側通信装置として光ビーコンを用いており、この情報中継装置のように光ビーコンを用いて車載機へ情報を送信する場合、当該光ビーコンの直下を通過する1または複数の車両の車載機に対して所定の送信電力の大きさで無線信号を送信することが一般的である。このため、走行位置または移動速度などの異なる複数の車両間で受信品質に差が生じることがあり、受信品質が十分でないことによって情報提供を正確に行うことができないという虞があった。
これに対して、本発明の実施の形態1に係る無線通信装置100では、センサ部18が、対象領域Eに存在する対象物の検知に用いられる検知信号を出力し、対象物を検知する。また、通信部19が、対象物に対する提供情報を含む通信信号を出力する。また、選択部17が、検知信号および通信信号のうちいずれか一方を選択する。また、無線変換部30が、選択部17により選択された信号を無線信号に変換し、変換した無線信号を送信する。
このように、共通の無線変換部30が検知信号の無線信号への変換および通信信号の無線信号への変換を選択的に行う構成、具体的には、共通の発振器15,16およびミキサ23,26等を用いて無線信号への周波数変換が行われる構成により、検知信号が変換された無線信号と、通信信号が変換された無線信号との周波数帯が同一となる。
そして、検知信号が変換された無線信号と、通信信号が変換された無線信号との周波数帯が同一であることにより、検知信号が変換された無線信号が対象物において反射して無線通信装置100により受信されると、無線通信装置100は、受信した無線信号の受信電力の大きさに基づいて、通信信号が変換された無線信号を送信した場合の対象物における受信電力の大きさを推定することができる。
このとき推定される受信電力の大きさは、実際に無線通信装置100において受信された同一周波数帯の無線信号の受信電力の大きさに基づいて求められるものである。このため、電波伝送環境を考慮して正確に推定された受信電力の大きさに基づいて、通信信号を変換した無線信号の送信電力等を調整することができ、対象物における受信品質を向上させることができる。
また、検知信号の無線信号への変換および通信信号の無線信号への変換を共通の無線変換部30を用いて行う構成であるため、部品点数を少なくすることができ、コストを低く抑えることができる。
また、本発明の実施の形態1に係る無線通信装置100では、選択部17は、センサ部18が対象物を検知したことに応じて、検知信号の選択から通信信号の選択に切り替える。
このように、対象物が検知されるまでの間は無線変換部30の接続先の切り替えを行わない構成により、検知動作および情報提供動作を効率よく行うことができる。
また、本発明の実施の形態1に係る無線通信装置100では、検知信号が変換された無線信号の送信電力は、通信信号が変換された無線信号の送信電力より小さい。
このように、対象物の検知のために用いられる無線信号の送信電力を小さく設定することにより、上記検知の際に他の通信機へ与える影響を低く抑えることができる。また、対象物が検知された場合に無線変換部30の接続先が通信部19へ切り替えられる構成、すなわち無線変換部30において検知信号の無線信号への変換が優先して行われる構成である場合、無線通信装置100全体として使用される電力量を少なくすることができる。
また、本発明の実施の形態1に係る無線通信装置100は、さらに、無線変換部30に接続された複数のアンテナ素子で構成されるアンテナ部11を含む。また、通信部19は、各アンテナ素子から送信される無線信号の制御を行うことにより、センサ部18により検知された対象物に向けてアンテナ部11の指向性を調整する。
このような構成により、アンテナゲインが高まり、対象物への通信成功率を向上させることができる。また、対象物において受信されることのない電波を減らすことができるため、対象物の周囲に存在する他の通信機への干渉を防ぐことができる。
また、本発明の実施の形態1に係る無線通信装置100では、センサ部18は、対象物として車両を検知する。
このような構成により、安全運転に有効な情報等を車両の運転者に提供することができる。
(変形例1)
なお、上述した本発明の実施の形態1に係る無線通信装置100によれば、センサ部18により検知された対象物に向けて、通信信号が変換された無線信号が送信されるようにアンテナ部11の指向性、すなわちアンテナ部11のビーム幅およびビーム方向のうち少なくとも一方を調整する。しかしながら、このような形態に限定されず、たとえば、センサ部18は、通信部19と同様に、アンテナ部11から送信される無線信号の制御を行うことが可能である。
具体的には、センサ部18は、対象領域Eに存在する対象物を検知すると、この対象物に向けてアンテナ部11のビーム幅およびビーム方向のうち少なくとも一方を調整するために、アンテナ素子ごとに検知信号を生成する。そして、センサ部18は、生成した検知信号を選択部17経由で送受信部12へ出力する。
そして、検知信号は、送受信部12において無線信号に変換され、変換された無線信号は、アンテナ部11から対象物に向けて送信される。
すなわち、センサ部18において対象物が検知された後、再びセンサ部18から検知信号が出力され、この検知信号が無線信号に変換される。そして、アンテナ部11のビーム幅およびビーム方向のうち少なくとも一方が調整され、この無線信号が対象物に向けてアンテナ部11から送信される。これにより、センサ部18は、より詳細な対象物の位置または移動速度などを取得することができる。
(変形例2)
また、上述した本発明の実施の形態1に係る無線通信装置100によれば、センサ部18により検知された対象物に対して提供情報が送信されるが、このような形態に限定されず、無線通信装置100は、検知した対象物以外の他の通信機へ提供情報を送信することが可能である。
たとえば、規定速度を大幅に超えて走行している車両、蛇行車両または信号無視車両など危険な走行を行っている危険車両が検知された場合、無線通信装置100は、当該危険車両に関する情報を含む通信信号を無線信号に変換して、当該危険車両の周囲の車両に対して送信することができる。なお、無線通信装置100は、上記のような場合、たとえば、速度を落として走行することを指示するための通信信号を、無線信号に変換して当該危険車両へ送信することも可能である。
また、たとえば、横断歩道の周辺を走行する車両が検知された場合、無線通信装置100は、当該車両に関する情報を含む通信信号を無線信号に変換して、当該横断歩道を通行している歩行者および当該横断歩道の待機場所に位置する歩行者へ送信することができる。
(変形例3)
また、上述した本発明の実施の形態1に係る無線通信装置100によれば、図2に示すように、A/Dコンバータ24およびD/Aコンバータ25と、センサ部18および通信部19との間に選択部17が設けられている。しかしながら、無線変換部30の接続先がセンサ部18と通信部19との間で選択的に切り替えられる構成であれば、選択部17が設けられる箇所は限定されず、たとえば図4に示すような構成であってもよい。
図4は、本発明の実施の形態1の変形例3に係る無線通信装置の構成を示す図である。
図4に示すように、本発明の実施の形態1の変形例3に係る無線通信装置200では、選択部17は、ミキサ23およびミキサ26と、A/Dコンバータ24a,24bおよびD/Aコンバータ25a,25bとの間に設けられている。さらに、A/Dコンバータ24aおよびD/Aコンバータ25aがセンサ部18に接続され、A/Dコンバータ24bおよびD/Aコンバータ25bが通信部19に接続されている。
このような構成によれば、ミキサ23は、周波数変換した信号を選択部17へ出力する。そして、選択部17は、ミキサ23から受けた信号を、A/Dコンバータ24aまたはA/Dコンバータ24bへ出力する。
A/Dコンバータ24aは、選択部17から受けた信号をデジタル信号に変換してセンサ部18へ出力する。また、A/Dコンバータ24bは、選択部17から受けた信号をデジタル信号に変換して通信部19へ出力する。
また、D/Aコンバータ25aは、センサ部18から出力された検知信号をアナログ信号に変換し、選択部17を介してミキサ26へ出力する。D/Aコンバータ25bは、通信部19から出力された通信信号をアナログ信号に変換し、選択部17を介してミキサ26へ出力する。
(実施の形態2)
以下、本発明の実施の形態2について図面を用いて説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
上述した本発明の実施の形態1に係る無線通信装置100によれば、センサ部18により対象領域Eに存在する対象物が検知された場合に、無線変換部30の接続先がセンサ部18から通信部19に切り替えられる。これに対して、本発明の実施の形態2に係る無線通信装置300は、センサ部18により対象物が検知されたか否かにかかわらず、予め定められたタイムスケジュールに従って、無線変換部30の接続先をセンサ部18から通信部19へ切り替える。
図5は、本発明の実施の形態2に係る無線通信装置の構成を示す図である。
図5に示すように、本発明の実施の形態2に係る無線通信装置300は、タイミング制御部40を備える点で図2に示す本発明の実施の形態1に係る無線通信装置100と異なる。ここでは、図2に示す本発明の実施の形態1に係る無線通信装置100と異なる点について説明する。
タイミング制御部40は、予め定められたタイムスケジュールを示すタイミング情報を取得し、取得したタイミング情報をセンサ部18へ出力する。そして、センサ部18は、対象物の存在を検知したか否かにかかわらず、タイミング制御部40から受けたタイミング情報に従って、所定のタイミングで対象物の検知結果を選択部17へ出力する。そして、選択部17は、センサ部18から検知通結果を受けると、A/Dコンバータ24およびD/Aコンバータ25を介した無線変換部30の接続先を通信部19に切り替える。
なお、タイムスケジュールには、選択部17が検知信号を選択する期間と、選択部17が通信信号を選択する期間とが交互に設定されているが、各期間の長さは設定により変更することが可能である。また、このタイムスケジュールを示すタイミング情報として、対象領域Eの周辺に設置された信号灯器の点灯色が変化するタイミングを示すタイミング情報を用いることが可能である。たとえば、タイミング制御部40は、信号灯器の点灯を制御する信号制御装置、または、信号制御装置に信号灯器の点灯のための信号制御情報を送信する中央処理装置から信号制御情報を受信する。そして、タイミング制御部40は、受信した信号制御情報に含まれる、信号灯器の点灯色が変化するタイミング情報を取得する。
この場合、たとえばタイミング制御部40は、対象領域Eに対向している信号灯器が黄信号から赤信号に切り替わるタイミングを、センサ部18により検知結果が出力されるタイミングとして決定する。これにより、信号灯器が青信号または黄色信号を点灯していることにより対象領域Eにおける車両等の通行が許可されている期間は、無線変換部30の接続先が通信部19に切り替えられることなく、無線変換部30は、センサ部18から出力される検知信号の無線信号への変換を行う。このため、当該期間内は対象領域Eにおける対象物の検知が継続して行われる。
そして、センサ部18は、当該信号灯器が赤信号に変化したタイミングで検知結果を選択部17および通信部19へ出力し、無線変換部30の接続先が通信部19へ切り替えられる。これにより、通信部19からの通信信号が選択部17経由で送受信部12へ出力される。
このとき、通信部19は、センサ部18から受けた検知結果が対象領域Eにおいて対象物が存在しないことを示す場合、対象物が存在しないことを示す通信信号を出力する。そして、通信部19から出力された通信信号は、無線信号に変換されて、ブロードキャストなどによって周囲の通信機等へ送信される。
たとえば、中央処理装置が通信機経由で当該通信信号が変換された無線信号を受信した場合、中央処理装置は、受信した無線信号に含まれる情報、すなわち対象領域Eに対象物が存在しないことを示す情報に基づいて、信号灯器の点灯を制御することができる。
また、タイミング制御部40は、タイミング情報を選択部17へ出力する。そして、選択部17は、タイミング制御部40から受けたタイミング情報に従って、A/Dコンバータ24およびD/Aコンバータ25を介した無線変換部30の接続先が通信部19に切り替えられたタイミングから所定時間経過後のタイミングで、無線変換部30の接続先をセンサ部18に切り替える。
上記のように、タイミング情報が信号灯器の点灯色が変化するタイミングを示すタイミング情報である場合、たとえば選択部17は、信号灯器が赤信号から青信号に切り替わるタイミングで送受信部12の接続先を通信部19からセンサ部18へ切り替える。これにより、信号灯器の点灯によって車両等の通行が再び許可された対象領域Eにおける対象物の検知が再開される。
なお、センサ部18は、対象領域Eに存在する対象物を検知した場合には、上記タイムスケジュールにかかわらず検知結果を選択部17および通信部19へ出力することができる。そして、この場合、選択部17は、センサ部18から検知結果を受けると、上記タイムスケジュールにかかわらず無線変換部30の接続先をセンサ部18から通信部19へ切り替えることができる。
上述のように、本発明の実施の形態2に係る無線通信装置300では、選択部17は、予め定められたタイムスケジュールに従って、検知信号の選択から通信信号の選択への切り替え、および、通信信号の選択から検知信号の選択への切り替えを行う。
このような構成により、対象領域Eに対象物が存在しない場合であっても、たとえば何らかの情報を対象領域Eへ定期的に報知することができる。また、対象領域Eに対象物が存在しない場合であっても何らかの情報を他の通信機等へ送信することができるため、たとえば、対象物の検知が途切れることなく行われていること、または、対象領域Eに対象物が存在しないことなどを、他の通信機において定期的に確認することができる。
また、本発明の実施の形態2に係る無線通信装置300では、選択部17は、センサ部18が対象物を検知したことに応じて、タイムスケジュールにかかわらず検知信号の選択から通信信号の選択に切り替える。
このような構成により、対象領域Eに存在する対象物に対する情報提供を迅速に行うことができる。
上記実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。