第1の発明は、ドラムと、前記ドラムを駆動するドラムモータと、圧縮機を有し乾燥時に前記ドラム内の空気を除湿するヒートポンプと、前記圧縮機に電流を供給する第1のインバータ回路と、前記ドラムモータに電流を供給する第2のインバータ回路と、前記第1のインバータ回路と前記第2のインバータ回路に共通の直流電圧を供給する直流電源と、前記ドラムモータに設けられたエンコーダ、または電気的な諸量からの計算、によって速度信号を得る構成と、前記速度信号によって前記ドラムの回転速度を検出するとともに、前記第1のインバータ回路と前記第2のインバータ回路を制御する制御部とを有し、前記制御部は、前記第2のインバータ回路から前記第1のインバータ回路に回生電力を供給して、前記ドラムを停止させるブレーキ工程を行い、前記ブレーキ工程に、前記ドラムの速度の低下に伴い前記第1のインバータ回路の出力電力を低下させる工程を有することにより、前記工程の高速側では、回生電力が大となってブレーキが強く効くものとなってブレーキ時間の短縮効果があり、前記工程の低速側では、回生電力が小となり、ドラムが有する運動エネルギーをなるべく残さずに回生電力として取り出すことができるものとなる。
また、回生電力を取り出す際の前記ドラムモータの損失も抑えることができるものとなり、省エネ面での効果が上がる。
第2の発明は、特に、第1の発明の構成に加え、前記制御部は、前記ブレーキ工程に、前記第1のインバータ回路の出力電力を調整する第1の直流電圧制御手段を有し、前記第1の直流電圧制御手段は、前記直流電源の直流電圧が第1の直流電圧設定値を超えないように前記第1のインバータ回路の出力電力を調整することにより、簡単な構成で、ブレーキ工程のドラム速度が低速となるのにつれて、前記ドラムの回生電力を低減させながら、第1のインバータ回路に供給して有効に取り出し、ドラムが有する運動エネルギーをなるべく残さずに回生電力として取り出すことができるものとなる。
第3の発明は、特に、第2の発明の構成に加え、前記制御部は、前記ブレーキ工程に、前記第2のインバータ回路の回生電力を調整する第2の直流電圧制御手段を有し、前記第1のインバータ回路の出力電力は、上限値を有し、前記第2の直流電圧制御手段は、前記直流電源の直流電圧が第2の直流電圧設定値を超えないように前記第2のインバータ回路の回生電力を、前記ドラムの速度によって変化する限度内で調整し、前記第1の直流電圧設定値は前記第2の直流電圧設定値より低くすることにより、比較的簡単な構成で、ブレーキ工程のドラム速度が低速となるのにつれて、前記ドラムの回生電力を低減させながら、第1のインバータ回路に供給して有効に取り出し、かつ第1のインバータ回路の出力電力が過大となることも防いで、信頼を高め、ドラムが有する運動エネルギーをなるべく残さずに回生電力として取り出すことができるものとなる。
第4の発明は、特に、第1〜3のいずれか1つの発明の第1のインバータ回路は、前記ブレーキ工程に、前記圧縮機が停止した状態で交流成分を含んだ電流を供給することにより、銅線の発熱、すなわち銅損だけでなく、鉄損を利用して圧縮機の予熱が行えることから、第2のインバータ回路からの電流の最大値を抑えながら、圧縮機の予熱の電力を大きくとることができ、また圧縮機の銅線のみの温度上昇ではなく、満遍なく温度上昇がなされることにより、銅線の絶縁の劣化を抑えることもできる。
第5の発明は、特に、第1〜4のいずれか1つの発明の前記ドラムモータは永久磁石を有し、前記第2のインバータ回路は、前記永久磁石の有する磁束ベクトルと平行な第1の電流成分と、前記第1の電流成分に直交する第2の電流成分を独立制御する電流ベクトル制御手段と、前記第2の電流成分の指令値を調整する速度制御手段を有し、前記ブレーキ工程の前記速度制御手段の速度指令値は、時間とともに減少するものとすることにより、力行時に速度制御と電流ベクトル制御を行う構成をそのまま使用できる簡単な構成でありながら、ブレーキ工程の高速側では、回生電力が大となってブレーキが強く効くものとなってブレーキ時間の短縮効果があり、前記工程の低速側では、回生電力が小となり、ドラムが有する運動エネルギーをなるべく残さずに回生電力として取り出すことができるものとなる。
第6の発明は、特に、前記ブレーキ工程の単位時間当たりの前記ドラムの速度の変化の
絶対値は、上限値を有するものとすることにより、比較的簡単な構成により、特にブレーキ期間の後半のドラムが低速にまで減速された段階での速度変化の速さ(加速度)を抑え、制御の安定性を確保するとともに、運動エネルギーを圧縮機の予熱として取り出す有効活用をより高めることができる。
第7の発明は、特に、第1〜6のいずれか1つの発明の構成に加え、洗濯後に乾燥を行う第1のコース設定と、乾燥を行わない第2のコース設定が可能なコース設定手段を有し、前記第2のコース設定での前記ブレーキ工程の前記ドラムモータの電流の実効値は、前記第1のコース設定での前記ブレーキ工程に比べて大とすることにより、前記第2のコース設定ではブレーキ時間の短縮が優先されて洗濯の時間の短縮効果が高く、前記第1のコース設定では、ブレーキの期間における運動エネルギーを圧縮機の予熱に有効活用する効果が優先され、乾燥時間の短縮と、省エネの効果として大きなものを得ることができる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における洗濯乾燥機の断面図を示すものである。
図1において、衣類21を収納するドラム22は、ポリプロピレン製の受け筒23の内側に回転自在に設けられており、ドラムモータ24から、小プーリ25、ベルト26、大プーリ27を介して、速度が8.25分の1に減速されて、ドラム22の回転駆動がなされるものとなっている。
ここで、ドラム22の回転軸は、水平に対して傾いたものとしているため、衣類21をドラム22に出し入れする際の使用者の負担が小さく、また使用する水量も少なくて済むという効果もある。
しかしながら、ドラム22の回転軸が水平に対して傾いたものとすることが、必要不可欠というものではなく、水平にしても良く、また古くから縦型洗濯機として知られるような、ドラム22の回転軸がほぼ垂直に立っている形の洗濯乾燥機であっても構わない。
また本実施の形態においては、小プーリ25、ベルト26、大プーリ27による機構的な減速を用いる構成としていることから、ドラムモータ24に必要な定格トルクが小となり、その分小型化、低コスト化ができるという効果があり、また特にドラム22の駆動に必要なトルクが大となる洗いの際には、高い効率が得られるものとなる。
同様に毎分数十回転という程度の低速でドラム22が駆動される乾燥時についても、機構的な減速を用いた構成は、損失パワーの低減において有利となり、かなりの長時間の乾燥運転とする場合には、消費エネルギーを抑えるのに効果的なものとなる。
加えて、ブレーキ工程においてブレーキトルクを発生させる際にも有効に作用するものとなる。
ドラム22の高速回転が必要な脱水時における効率については、特に上記の減速の比が高い場合には不利となる傾向が見られるが、脱水の時間と比較して、洗いやすずき、また乾燥などドラム22の低速での駆動の時間が長いというシーケンスを用いる場合においては、トータルとしてメリットが大きいものとなる。
しかしながら、小プーリ25、ベルト26、大プーリ27が必ずしも必要な構成要素で
あるというものではなく、ギアを噛ませた減速機構や、ドラム22とドラムモータ24の軸を直に接続した「ダイレクト」などと呼ばれるもの、またクラッチ機構を用いて、機構的な減速比を洗いと脱水で切り替えられるようにしたものであっても構わない。
また、ドラムモータ24については、永久磁石を用いた同期モータ以外にも、リラクタンスモータ、誘導モータなどを用いても良く、力行と回生の運転ができるものであれば良い。
乾燥時にドラム22内の空気を除湿するヒートポンプ30、送風機31が設けられており、ヒートポンプ30は、圧縮機32、熱交換器33、34を有している。
ここで、圧縮機32によって圧縮される物質は、一般に冷媒と呼ばれており、本実施の形態においては、代替フロンが使用したものとなっているが、冷媒の種類は様々なものが可能であり、例えばアンモニアなどでも良く、また二酸化炭素(CO2)を超臨界状態になるまで圧縮しながら使用するようなものであっても良い。
ちなみに、CO2の超臨界流体を冷媒として用いる場合には、特に熱交換器34として、ガスクーラーなどを用いるものとなり、一般に凝縮器と呼ばれるものとは構造が異なるものを使用することになる。
本実施の形態において、圧縮機32には第1のインバータ回路36から電流が供給され、ドラムモータ24には第2のインバータ回路38から電流が供給されるものとなっており、第1のインバータ回路36と第2のインバータ回路38は、共通の直流電圧を供給する直流電源40に接続されている。
直流電源40は、220V50Hzの交流電源41を受けるブリッジ型の整流器42と、整流器42の出力に接続したコンデンサ43により構成されている。
このような直流電源40の構成により、無負荷時においては、220V(実効値)のルート2倍の311Vの直流電圧が得られるものなる。
しかしながら、直流電源40の構成としては、他の構成であっても良く、例えば日本国内では100Vの交流電源から倍電圧整流、あるいは倍圧整流と呼ばれるような2つの直列接続したコンデンサを用いる構成などであっても良く、さらに交流電源の系統からの力率の改善と共に、出力の直流電圧としてより高いものが得られるようなコンバータ回路を持ったものとしても構わず、整流器42の構成についても、1つのパッケージに4本のダイオードが入った形の全波整流ブリッジを用いて構成したもの以外にも、例えば1本のダイオードで構成する半波整流の構成なども可能であり、ダイオードの材質もシリコン以外のSiC、ゲルマニウム、セレンなども使用できる。
リアクタと呼ばれるようなインダクタンス要素を持つ部品を用いて交流電源41の力率をある程度改善する構成要素を用いても構わない。
直流電源40から共通の直流電圧が供給される、第1のインバータ回路36と第2のインバータ回路38は、制御部45によって制御されるものとなっており、制御部45は、第1のインバータ回路36を制御する第1の制御回路46と、第2のインバータ回路38を制御する第2の制御回路47を有しており、特に本実施の形態においては、ドラムモータ24に設けられたエンコーダ49からの速度信号ωと位相信号θが、第1の制御回路46と第2の制御回路47の両方に伝わる構成となっている。
なお、エンコーダ49は、例えば3個程度のホール素子を用いて、電気角60度毎にエッジが発生するものでも良く、分解能の粗い/細かいに関わらず、位相信号θに相当するものが得られるものであれば、その微分処理で速度信号ωも得ることができ、必要に応じてこれらの信号を使い分けることができる。
本実施の形態においては、送風機31の詳細な構成は図示していないが、永久磁石を用いたモータをインバータ回路で駆動するものとしており、直流電源40の出力から直流電圧を受けて動作するものとなっている。
さらに、洗濯時に、ドラム22内への給水を制御する給水弁51、およびドラム22からの排水を制御する排水弁52が備えられている。
洗いの動作は、排水弁52を閉じた状態で、給水弁51からドラム22内に入れられた水が貯まった状態で、ドラムモータ24の回転により、ドラム22が毎分50回転程度で回転することにより、洗剤と共に衣類21が回るものとなる。
脱水の動作は、排水弁52を開いた状態で、ドラムモータ24の回転により、ドラム22が毎分千回転前後という高速で回転することにより、遠心力が作用して衣類21は脱水がなされるものとなる。
洗濯を行う間には、脱水の動作は濯ぎも含めて数回有り、脱水が終わるとその都度、ドラム22にブレーキを作用させるものとなり、本実施の形態では、制御部45にて、第2のインバータ回路38から第1のインバータ回路36に回生電力を供給する回生ブレーキを作用させるものとなっている。
図2は、本発明の実施の形態1における洗濯乾燥機の第1のインバータ回路36の出力電力と、ドラム22の速度の関係を示したグラフである。
なお、本発明の各実施の形態においては、簡単のため第1のインバータ回路の入力電力は、第1のインバータ回路の出力電力と同じ値として説明を行う。
第1のインバータ回路の主たる目的は、圧縮機への電圧、電流、電力の供給であることから、出力側の電気量が圧縮運転中には制御対象となるものであり、一方本発明のドラム22のブレーキ工程における第1のインバータ回路の役割としては、電力の消費となるため、第1のインバータ回路の入力電力に着目することが基本とはなるが、一般に第1のインバータ回路の損失が小さく、無視しうるものと考え、第1のインバータ回路の出力電力、すなわち圧縮機の入力電力としての説明を行うものとする。
もっとも、第1のインバータ回路での損失が無視できない場合には、それを足した電力が、直流電源40からの消費電力として作用するものであり、要は第1のインバータ回路の出力電力を加減することにより、その入力電力も連動して変化させることができるものとなる。
本実施の形態においては、ブレーキ工程のドラム22の回転速度が、ブレーキの作用によって、高速から低速へと低下していく際に、第1の制御回路46は、エンコーダ49からの信号によって速度の検出を行うとともに、圧縮機32に交流成分を含んだ電流が供給されるように、第1のインバータ回路36を制御しており、ドラム22の速度が毎分800回転(800r/min)以下の低速域では、第1のインバータ回路36の出力電力は、ほぼ速度に比例するものとし、800r/min以上の高速域では、第1のインバータ回路36の出力電力が300Wの一定値となるように、第1の制御回路46による制御が
なされている。
よって、ブレーキ工程にドラム22の速度低下に伴い、第1のインバータ回路36の出力電力を低下させる工程が存在する構成となっている。
図3は、本発明の実施の形態1における洗濯乾燥機のブレーキ工程の特性を示した図で、(ア)はドラム22の速度、(イ)は第1のインバータ回路36の出力電力を、それぞれ横軸にブレーキ開始から経過時間を取って示したものである。
ブレーキ開始から12秒後までは、800r/minよりも高速の「高速域」であるため、第1のインバータ回路36の出力電力が300Wとなるように、第1の制御回路46による制御がなされ、その後「低速域」では、速度に比例する形で第1のインバータ回路36の出力電力は減少していき、速度の変化(加速度)はほぼ一定の状態でブレーキが動作を続け、ブレーキ開始から約18秒後にドラム22の速度がゼロとなり、ブレーキが完了した状態となる。
従って、ドラム22の速度の低下に伴って、第1のインバータ回路36の出力電力を低下させる工程が低速域に存在するものとなる。
これによって、ドラム22の回転による運動エネルギーのかなりのものは回生されて、圧縮機32を予熱するための熱エネルギーとして圧縮機32の内部構成部品、および一部は冷媒に蓄えられるものとなるが、乾燥を行う際に必要な熱の一部として、有効活用することができるものとなる。
なお、直流電源40からのVCOについて、それを入力とするスイッチング電源などを設けて、各種制御回路の動作のための低い電圧の直流電力を供給する構成としてもよく、その場合には、それらの構成要素に対しても、ドラム22の運動エネルギーの一部が有効活用されるものとなる。
ここで、一般に電動機を発電機として使用する時に、速度が低速となるほど、回生電力が得にくくなる傾向があり、無理に大きな回生電力を取ろうとすると、効率が悪くなり、すなわちドラムモータ24の損失が大となり、圧縮機32の予熱に有効に活用できるエネルギーが減るという傾向が発生し、また低速域での回生電力の限度があるため、運動エネルギーがドラム22に残っていても、活用できないという状態となる。
しかしながら、本実施の形態では、ドラム22の速度が大である高速域の期間には、第1のインバータ回路36の出力電力が300Wという大きな値となり、ドラム22に十分なブレーキトルクが作用するものとなり、ブレーキが長くなることがない。
その後ブレーキの作用によってドラム22の速度が小となった低速域の期間には、第1のインバータ回路36の出力電力が小となり、ドラム22の運動エネルギーが効率良く回生され、また低速まで無理なく回生動作が継続できるものとなり、ブレーキ開始時点でドラム22に蓄えられている運動エネルギーの有効活用が可能となる。
脱水時にドラム22が有する運動エネルギーの大きさは、速度1700r/min、慣性モーメント0.5kg平米とした場合に2.2W時あり、これに濯ぎも含む数回のブレーキ回数を考慮すると、ヒートポンプ30の冷媒の温度上昇に換算して、セ氏10度程度の加熱が、乾燥に入る直前までに行うことができるものとなり、乾燥時のヒートポンプ30の運転開始からの温度の立ち上がりに要する時間短縮と省エネが可能となり、乾燥時間の短縮はその間の送風機31やマイコンなどを用いた各種制御回路や表示回路などの電力
消費によるエネルギーの節約効果も発生するものとなり、乾燥時間の短縮による性能の向上と、省エネによる地球環境保護の面での貢献ができるものとなる。
なお、本実施の形態では、低速域でのブレーキのトルクはほぼ一定値となり、過大なトルクによる各部の機構の騒音の発生や破壊などの心配も抑えることができ、品位が高く、また信頼性の高い洗濯乾燥機の実現が可能となる。
(実施の形態2)
図4は、本発明の実施の形態2における洗濯乾燥機の要部回路図を示すものである。
図4において、直流電源40、ドラムモータ24、圧縮機32については、実施の形態1と同等のものを用いており、さらに圧縮機32に電流を供給する第1のインバータ回路55、ドラムモータ24に電流を供給する第2のインバータ回路56、制御部58を設けており、洗濯乾燥機としての手順に従った号令信号S1を出力するシーケンス発生回路59、第1の直流電圧制御手段60を有している。
ドラム22のブレーキ工程には、シーケンス発生回路59は「力行」、「ブレーキ」、「乾燥」の区別をするS1信号が出力され、「ブレーキ」である場合には、第1の直流電圧制御手段60は、直流電源40の電圧VCOが第1の直流電圧設定値Vr1(=410V)を超えないように、第1のインバータ回路55の出力電力を限度内で調整するものとなっている。
本実施の形態における第2のインバータ回路56は、シーケンス発生回路59からのS1信号により、力行時、および乾燥時には、速度設定値ωrを出力する力行速度設定手段98からの信号を受けて、速度制御を行う一方、ドラム22のブレーキ工程には後述する構成により、ωrを無視し、別途ブレーキトルクをほぼ一定とする制御を行う。
なお、速度に関しては、本実施の形態においては、すべてドラム22の回転速度で述べているが、機構的な減速を噛ます前の、ドラムモータ24の速度で設定値等を設ける構成としても全く問題なく、またドラムモータ24の電気周波数や角速度などを用いても良く、特に永久磁石を使用したり、リラクタンストルクを用いたりする同期モータとした場合には、スベリがないことから、ほぼ一定の係数がかかったものとして同等に用いることができる。
第1の直流電圧制御手段60は、Vr1の直流電圧を出力する直流電圧源63、VCO−Vr1を比例成分と積分成分の和として誤差増幅し、電力設定値として出力する増幅器64、通常の圧縮機32の運転での速度設定値を出力する圧縮機速度設定手段65、第1のインバータ回路55への信号を切り替える切替手段66を有しており、シーケンス発生回路59からのS1信号が力行である場合には休止、S1信号が乾燥である場合には、圧縮機速度設定手段65からの速度設定の信号を採用し、S1信号がブレーキである場合には、増幅器64からの電力設定の信号を採用し、第1のインバータ回路55に信号Pを出力するものとなっている。
図5は、本発明の実施の形態2における洗濯乾燥機の第2のインバータ回路56の周辺の詳細ブロック図を示すものである。
第2のインバータ回路56は、速度制御手段67と、ドラムモータ24の内部の永久磁石の有する磁束ベクトルと平行な第1の電流成分Idと、Idに直交する第2の電流成分Iqを独立制御する電流ベクトル制御手段68、シーケンス発生回路59からのS1信号が「力行」および「乾燥」の時には速度制御手段67の出力、S1信号が「ブレーキ」の
時には−1.2Aという値を選択して、q軸電流の設定値Iqrとして出力する切替器69を備えている。
ただし、エンコーダ49を使用することが絶対的な条件となるものではなく、電気的な諸量から、計算によってθとωを推定するセンサレスと呼ばれるような構成であっても構わず、またドラムモータ24が例えば誘導電動機である場合などにおいては、θを用いない非同期の構成であっても良い。
電流ベクトル制御手段68に入力される第2の電流成分の設定値Iqrについては、速度制御に関係するものであり、速度設定値ωrとエンコーダ49からの速度信号ωの誤差増幅を行ってIqの設定値Iqrを比例と積分の和で計算して出力することにより、力行時およびブレーキ工程のIqの指令値Iqrを調整するというものである。
第1の電流成分Idの誤差を比例と積分の和で計算し、Vdとして出力するd軸電流誤差増幅器72、同じく第2の電流成分Iqの誤差を同様に比例と積分の和で計算し、Vqとして出力するq軸電流誤差増幅器73、VdとVqとエンコーダ49からの位相信号θを入力し、Vu、Vv、Vwに変換して出力する第1の回転換算器74、さらに3相6石のパワースイッチング素子とPWM回路を内蔵し、ドラムモータ24のU、V、Wに3相の電流を出力する3相インバータ75、3相インバータ75からの3相の出力電流Iu、Iv、Iwをそれぞれ検知するための電流検知器78、79、80、3相電流Iu、Iv、Iwとエンコーダ49からの位相信号θを入力して、IdとIqを計算しd軸電流誤差増幅器72とq軸電流誤差増幅器73に出力する第2の回転換算器82が設けられている。
なお、電流検知器78、79、80については、3相の電流の総和(Iu+Iv+Iw)が常にゼロであるというキルヒホッフの法則を利用し、3つの内の2つのみとし、残りの1相の電流値は、他の2相の電流の和に逆符号を付したものとして計算することもできる。
ここで、本実施の形態において第2のインバータ回路56は、第1の電流成分について、d軸電流誤差増幅器72に入力されるd軸電流の設定値Idrを出力する、弱メ界磁制御手段84を設けており、弱メ界磁制御手段84は、電圧設定器85、電圧絶対値演算器86、誤差増幅器87、上限器88、上限値発生器89を有している。
電圧設定器85は、本実施の形態においては、Var=170Vを出力し、電圧絶対値演算器86は、d軸電流誤差増幅器72の出力Vdとq軸電流誤差増幅器73の出力Vqの2つ電圧成分を入力し、両者についてそれぞれ二乗したものを加え合わせた値の平方根を求めて、ドラムモータ24の入力電圧ベクトルの大きさVaを出力する。
VarとVaは、誤差増幅器87に入り、比例と積分の要素の和を出力し、さらに上限器88で、上限値発生器89が出力するIdrの上限値Idm(=0A)に制限したIdr値を出力するものとなっており、誤差増幅器87のi端子に上限器88の出力Idr値を入力することにより、上限器88がIdmの制限動作した場合には、積分の要素がIdmから逆算され、固定されるものなっている。
本実施の形態において、電圧設定器85の出力Varは、170Vとしているため、脱水中のドラムモータ24の入力電圧の、線間電圧の実効値は、ほぼ170Vに制限されるものとなる。
なお、Varの値を170Vという一定値に固定する代わりに、直流電源40の出力電
圧VCOの値に応じて変化させても良く、例えばVCOの0.71倍(ルート2の0.5倍)に設定した場合には、常にVCO電圧を100%使用した電圧がドラムモータ24の入力電圧として使用される状態となるため、回生電力を圧縮機32に供給する際のドラムモータ24の電流値を最小限に低減し、損失をさらに低下させ、圧縮機32で有効利用できるエネルギーを増加させることもできる。
また、本実施の形態においては、弱メ界磁制御手段84の出力値Idrの上限は、Idm=0Aに制限されているため、低速域となる洗い、乾燥の際などには、Id=0の制御となるとともに、誤差増幅器87内の積分の要素がi端子に入力されるIdrによって逆算された固定値となることにより、積分の要素の不要な発散を抑えた安定な動作が保たれる。
また本実施の形態においては、ブレーキ工程においても、Idm=0Aが作用するものとなるため、ブレーキ中のドラムモータ24の電流値もほぼ必要最小限に抑えられ、ドラムモータ24内部の損失が低く抑えられることから、ドラム22の運動エネルギーは、圧縮機32の予熱に効率良く活用できるものとなる。
ただし、ドラムモータ24が、回転子に永久磁石を埋め込んだ構成のものを用いる場合には、ブレーキ工程において、さらにドラムモータ24の損失を抑えた条件での回生運転を行うために、Idmを若干プラスとした値(例えば0.5A)などとする、またはブレーキトルク、Iqに応じて変化する値としても良く、強メ界磁条件におけるリラクタンストルクの有効活用も図りながら、回生動作が行われ、低損失のブレーキ動作を行わせることができるものとなり、省エネ効果において、さらに大きなものが得られる。
図6は、本実施の形態におけるブレーキ工程の動作波形図で、(ア)はドラム22の速度、(イ)は第1のインバータ回路55の出力電力を、(ウ)は直流電源40のコンデンサ43の電圧、すなわち出力電圧VCOを、それぞれ横軸にブレーキ開始から経過時間を取って示したものである。
ブレーキ開始時点から、Iqrとして−1.2Aという負の値を設定された第2のインバータ回路56からは、負のトルクを発生し、ドラム22の運動エネルギーを回生電力して、直流電源40のコンデンサ43へと充電するものとなる。
コンデンサ43の充電によってVCOが上昇し、ほぼVr1に達した時点で第1のインバータ回路55の出力電力が発生し、第1の直流電圧制御手段60により、VCOはVr1に保たれるものとなり、この状態で交流電源41は、実質的に切り離された状態となるため、パワーの収支が等しい状態であることから、回生電力と等しいパワーが、第1のインバータ回路55の出力電力となり、本実施の形態においては、結果として510Wに達する。
Iqr=−1.2Aという一定値としていることから、ドラム22に作用するブレーキトルクは、ほぼ一定となり、その後のドラム22の速度は、ほぼ一定の傾きで時間と共に低下し、停止に向かうものとなる。
また、ブレーキトルクがほぼ一定となることから、第2のインバータ回路56からの回生電力についても、ドラム速度に合わせて、ほぼ一定の傾きで時間と共に低下していくものとなる。
第1のインバータ回路55の出力電力については、第1の直流電圧制御手段60により、VCOをVr1に保つ動作がなされることから、常に第2のインバータ回路56の回生
電力と等しい値となり、ドラム速度に合わせて、ほぼ一定の傾きで時間と共に低下していくものとなる。
このように、本実施の形態においては、ドラム22のブレーキ工程に、電流ベクトル制御に使用されるIqの負側の制限値を決めておくことにより、実施の形態1に設けたようなドラム22の速度の関数として電力値を設定する構成は存在しないが、第2のインバータ回路56の回生電力が、ドラム22の速度によって変化し、第1の直流電圧制御手段60は、直流電源40の電圧VCOが第1の直流電圧設定値Vr1を超えないように第1のインバータ回路55の出力電力を調整する構成とすることにより、ドラム22の速度がほぼゼロとなる15秒時点に至るまで、ほぼドラム22の速度の低下に比例して第1のインバータ回路55の出力電力は低下するものとなる。
したがって、制御部58の作用により、ブレーキ工程には、ドラム22の速度低下に伴って、第1のインバータ回路55の出力電力を低下させる工程が存在するものとなる。
なお、完全な停止に至る前に、第2のインバータ回路56の出力電圧をゼロとするなどして、ドラムモータ24を短絡状態とした短絡ブレーキに移っても良く、例えば余りにも低速となり過ぎて、VCOがVr1にも達しないという場合、またエンコーダ49を使用せず、電気的な諸量からθとωを推定して制御するセンサレスと呼ばれる構成においては、低速側でのθとωの推定には限度が出てくるため、ある程度の低速となった時点で、短絡ブレーキに移ることが必要となることもある。
短絡ブレーキに移った後は、そのままドラム22の停止まで短絡状態を保つことにより、比較的大きなブレーキトルクが得られる場合もあり、ブレーキの所要時間、すなわち完全にドラム22の回転が停止するまでにかかる時間を短縮することができるという効果もある。
ただ、短絡ブレーキに入った時点で、残っているドラム22の回転による運動エネルギーは、圧縮機32の予熱には利用できないことになり、省エネの面からは、なるべくドラム22が低速回転となるまで、短絡ブレーキに入れない方が有利となる傾向があるが、従来の技術のようにブレーキの期間中において、第1のインバータ回路55の出力電力、すなわち第2のインバータ回路56からの回生電力の値を始終固定してブレーキをかける場合と比べると、短絡ブレーキに移る時点でのドラム22の残留運動エネルギーは、小さな値に抑えることができ、省エネ効果はあがるものとなる。
なお、本実施の形態においては、第1の電流成分Idと第2の電流成分Iqの制御を行うためのd軸電流誤差増幅器72、q軸電流誤差増幅器73は、それぞれId誤差からVdを計算し、Iq誤差からVqを計算するという、相互の干渉なしに設けた構成となっているが、永久磁石モータを含むモータは一般に、磁束に対して直交する位相に電圧が生ずるものとなるため、非干渉制御などと呼ばれるような、構成も存在する。
例えば、Vqの算出にあたり、永久磁石の磁束ΨaにIdとインダクタンスLdを掛け合わせた成分を足した合成磁束を計算して角速度ω倍した起電力成分を、q軸電流誤差増幅器73に加え合わせ、また一方Vdの算出にIqに角速度ωとインダクタンスLqを掛け合わせた成分を、d軸電流誤差増幅器72から差し引くなどの方法が用いられることもあり、それらの計算で使用されるId値、Iq値として、第2の回転換算器82の出力IdとIqを用いる構成、あるいは設定値となるIdrとIqrを用いる構成もある。
これらの構成を用いれば、IdとIqの収束をより速やかにできる可能性があり、IdrとIqrという設定値を独立に設けているという点から、第1の電流成分と第2の電流
成分を独立制御する本発明の構成の範囲内にあるものとみなされる。
(実施の形態3)
図7は、本発明の実施の形態3における洗濯乾燥機の要部回路図を示すものである。
図7において、直流電源40、ドラムモータ24、圧縮機32、第1のインバータ回路55については、実施の形態2と同等のものを用いた上で、ドラムモータ24を駆動する第2のインバータ回路90、制御部91を備えている。
本実施の形態においては、第2のインバータ回路90は、第2の直流電圧制御手段92からの速度指令信号ωrを受ける構成となっており、Vr2の直流電圧を出力する直流電圧源95、VCO−Vr1を比例成分と積分成分の和として誤差増幅し、速度設定値として出力する増幅器96、上限手段97、力行時の速度設定値を出力する力行速度設定手段98、第2のインバータ回路90への出力を切り替える切替手段66を有している。
上限手段97は、増幅器96の出力の単位時間当たりの変化に対して、上限値、すなわちブレーキ工程の加速度の絶対値を、最大130r/min/sに抑えることにより、特にドラム22が低速となった場合で低下する回生能力の限度を考慮して、十分に回生電力が供給できる上限の条件を設定しているものとなっている。
シーケンス発生回路59からのS1信号がブレーキである場合には、上限手段97からの信号を採用し、S1信号がそれ以外である場合には、力行速度設定手段98からの信号を採用し、第2のインバータ回路90に設定速度ωrを出力するものとなっている。
本実施の形態においては、増幅器96は、内部で比例成分に加えて積分成分も計算して合算して速度設定値を出力するものとしているが、加速度(角加速度)とした上で、その上限を制限した出力が積分器を通すことにより速度設定値として以降の構成に用いる構成などとしても良く、ブレーキによるドラム22の速度低下中にも、良好なVCO電圧制御の追従性が得られるものとなる。
また、本実施の形態においては、第1のインバータ回路55の出力電力の信号Pを与える第1の直流電圧制御手段101は、上限手段97を有している点が、実施の形態2とは異なるが、その他の構成要素は、実施の形態2と同等のものである。
すなわち、上限手段103が、増幅器64の出力の上限、すなわちブレーキ工程における第1のインバータ回路55の出力電力Pを第1のインバータ回路55の構成部品の電気的な耐量、例えば第1のインバータ回路55の出力電流値などが、限度内に入るよう上限を抑えるものとなっている。
ドラム22のブレーキ工程には、シーケンス発生回路59は「力行」、「ブレーキ」、「乾燥」の区別をするS1信号が出力され、「ブレーキ」である場合には、第2の直流電圧制御手段92は、直流電源40の電圧VCOが第2の直流電圧設定値Vr2(=430V)を超えないように、第2のインバータ回路90の回生電力を回生能力の限度内で調整し、第1の直流電圧制御手段101は、やはり直流電源40の電圧VCOが第1の直流電圧設定値Vr1(=410V)を超えないように、第1のインバータ回路55の出力電力を限度内で調整するものとなっており、Vr1<Vr2としているものである。
図8は、本発明の実施の形態3における洗濯乾燥機の第2のインバータ回路90の周辺の詳細ブロック図を示すものである。
第2のインバータ回路90は、本実施の形態においては、力行、回生、乾燥のいずれの場合においても、速度制御手段67の出力が、Iqの指令値Iqrとして電流ベクトル制御手段68に出力されるものとなっている。
電流ベクトル制御手段68、および弱メ界磁制御手段84は、実施の形態2と同等の構成となっている。
図9は、実施の形態3におけるブレーキ工程の動作波形図で、(ア)はドラム22の速度、(イ)は第1のインバータ回路55の出力電力を、(ウ)は直流電源40のコンデンサ43の電圧、すなわち出力電圧VCOを、それぞれ横軸にブレーキ開始から経過時間を取って示したものである。
ブレーキ開始時点から、第2のインバータ回路90からの回生電力により、直流電源40のコンデンサ43は充電されて、VCOが上昇し、Vr1を超えた時点で第1のインバータ回路55の出力電力が発生し、第1の直流電圧制御手段101により300Wの上限値まで上昇する。
しかしながら、この時点で回生電力は300Wを超えたものとなるため、さらにVCOの上昇が見られ、0.5秒時点で、VCOがVr2に達した時点で、第2の直流電圧制御手段92は、第2のインバータ回路90の回生能力の限度内、すなわち本実施の形態においては上限手段97により決定される制限内での回生電力の調整を行い、前記限度内では、VCOはほぼVr2に保たれ、回生電力は第1のインバータ回路55の出力電力である300Wにほぼ等しい状態での動作となる。
その後ブレーキによりドラム22の速度の低下中である、11秒時点で、単位時間当たりの速度の変化が上限手段97で設定された上限値、130r/min/sに達した状態となり、これが本実施の形態における回生能力の限度として作用するものとなって、以降は回生電力が300Wを下回るようになり、その結果、コンデンサ43の静電エネルギーが放出され、VCOの低下が始まる。
本実施の形態においては、特に上限手段97により、ブレーキ工程の加速度の絶対値に対して、最大130r/min/sという値を設定したことにより、ドラム22の速度低下とともに、回生能力の限度が生じさせる動作が行われ、VCOがVr2から低下し始めるという動作となる。
そして、上記の130r/min/sという値については、特にドラム22が低速となった場合で低下する回生能力の限界を考慮して、十分に回生電力が供給できる上限の条件を設定することにより、第2のインバータ回路90の回生能力の限度としているものとなっている。
VCOがVr1まで低下した時点で、第1の直流電圧制御手段101の動作により、VCOの値が、Vr1と等しくなるように、第1のインバータ回路55の出力電力の調整が行われるという点は、実施の形態2と同様となるものであり、その後、第1のインバータ回路55の出力電力は、ドラム22の速度がほぼゼロとなる18秒時点に至るまで、ほぼドラム22の速度の低下に比例して低下するものとなる。
すなわち、本実施の形態においても、ドラム22の速度から、直接、第1のインバータ回路55の出力電力を決めているものではないが、巧妙な構成により、ブレーキ工程には、ドラム22の速度低下に伴って、第1のインバータ回路55の出力電力を低下させる工程が存在するものとなる。
一般に、第2のインバータ回路90の回生能力、すなわちドラム22の運動エネルギーを直流電源40の出力に電気パワーとして、効率よく供給できる電力の限度は、ドラム22の速度の低下とともに低下していくものであり、その局面において、VCOがVr2からVr1に移ることになり、それ以降は第1の直流電圧制御手段101による、第1のインバータ回路55の出力電力の調整がなされることになり、第2のインバータ回路90からの回生能力の限度がどのような制御、あるいは構成要素の特性から自ずと発生しているものかは問わず、第1のインバータ回路55の出力電力の低下がなされる工程が存在するものとなるため、ドラム22の運動エネルギーの有効利用が実現されるものとなる。
図9(ア)においては、900r/min以上の速度条件では、ブレーキによるドラム22の速度低下は見られるが、第1のインバータ回路55の出力電力は、0Wから300Wへの立ち上がり、すなわち増加であったり、300Wの一定であったりするものとなるが、少なくとも工程の高速側である800r/min付近と、ゼロ付近の低速側で比較すると、高速側でブレーキトルクが大となってブレーキ時間の短縮効果があり、また低速側ではブレーキトルクが抑えられ、低速まで無理なく回生動作が継続できるという効果は、確実に得られるものとなる。
本実施の形態において、第2の直流電圧制御手段92は、ドラム22のブレーキ工程のVCOの制御を、速度設定値ωrを用いた制御手段を介して、Iqの設定値Iqrを調整する形で構成しているため、(ア)に示されるように、ドラム22のブレーキ工程の速度制御手段67に設定される速度指令値ωrは、開始時点t=0から、停止に至るまでの期間、時間とともに減少するものとなる。
このように、速度制御の設定値ωrを介して、ブレーキ工程にも力行時と同様に速度制御手段67を活用する構成は、速度制御と電流制御が常にセットとなった状態での動作安定性が保証されたシステムへの応用の面で有利であり、センサレスの構成においてはブレーキ工程のθ、ωの推定動作保証がしやすく信頼性の高い洗濯乾燥機とすることができるものとなる。
なお、本実施の形態においても、ドラム22が完全な停止に至る前に、第2のインバータ回路90の出力電圧をゼロとするなどして、ドラムモータ24を短絡状態とした短絡ブレーキに移っても良い。
図10は、実施の形態3における圧縮機32のモータを示す図であり、(ア)は断面図、(イ)は結線図を示したものである。
図10において、固定子111が、鉄心112、巻線114、115、116、117、118、119によって構成され、U、V、W、という3相の回転磁界が発生できる状態に仕上げられ、その内側に固定子111に対して回転自在に出力軸121、鉄心122、永久磁石123、124、125、126で構成した回転子127を設けている。
本実施の形態においては、(ア)に示されるように、永久磁石123、124、125、126はネオジウムを用いた弓形のものとしており、鉄心122の奥深く埋め込んで設けた、埋め込み磁石といわれる構成としている。
埋め込み磁石の構成としたことにより、リラクタンストルクを活用した高効率の運転が可能となり、効率面で有効となる。
しかしながら、埋め込み磁石の構成が必須となるというものではなく、表面磁石(SP
M)と呼ばれるように、回転子の表面に磁石を張り付けた構成のものなどであっても良い。
永久磁石123、125は、固定子111に対向する外側にN極が、また永久磁石124、126は、固定子111に対向する外側にS極が出るように配置され、4極の構成のインナーロータの構成となっている。
これに関しても、回転子が固定子の外側に配置されるアウターロータや、軸方向の空隙を挟んで回転子と固定子が対向するアキシャルギャップなどとも呼ばれる構成、さらにそれらを組み合わせた構成としても構わない。
(イ)の結線図においては、U相の巻線114、117、V相の巻線115、118、W相の巻線116、119のように、2つずつの巻線が直列に接続された上で、中性点Nを中心にスター接続され、U、V、Wの3相の入力端子を持ったものとなっており、いずれの巻線も黒丸のついた端子から電流が流れ込んだ場合には、回転子127との対向側にN極が生ずる極性となっている。
図11は、本実施の形態において停止中の圧縮機のドラム22のブレーキ工程における電流ベクトル図および波形図であり、(ア)d−q平面の電流ベクトル図、(イ)Idの波形図、(ウ)Iqの波形図を示したものである。
ドラムモータ24についても永久磁石を用いた構成を説明したが、圧縮機32についても、一般にIdと呼ばれる、永久磁石123、124、125、126の有する磁束ベクトルと平行な第1の電流成分と、それに直交する一般にIqと言われる第2の電流成分に分けて表すことができる。
(ア)に示される電流Iaは、圧縮機32に入る電流の合成ベクトルであり、本実施の形態においては、直流Idcがd軸成分の電流として供給され、その上に、反時計方向に毎分1000回転する交流成分Iacが重畳したベクトル和がIaとなっている。
(イ)に示されるIdの波形については、直流成分Idcを中心として、上下に増減するものとなっている。
(ウ)に示すIqについては、直流成分は含まず、交流成分のみの波形となっている。
IdとIqの合成した電流Iaが、第1のインバータ回路55から、ドラム22のブレーキ工程に、停止している状態の圧縮機32に供給されることにより、圧縮機32には、交流成分を含んだ電流が供給されるものとなる。
圧縮機32の電力消費に関して、特に従来の技術に見られる直流励磁との大きな違いは、鉄損の存在にある。
従来の技術に見られる直流励磁では、圧縮機の損失が各巻線の抵抗分で発生するものに限定されるのに対し、本実施の形態においては、交流成分を含んでいることから、銅損だけでなく、鉄損すなわち鉄心112、122内で渦電流損やヒステリシス損としても発生するものとなり、結果的に圧縮機32への電流の実効値を抑えた状態、すなわち第1のインバータ回路55の損失を抑えた状態でも、圧縮機32の発熱とにつながる電力消費を大きく得ることができ、また圧縮機32のより広い部分が発熱するものとなるため、ブレーキ工程に第1のインバータ回路55での不要な発熱を抑えながら、鉄損も併用した圧縮機32の合理的な予熱を行うことができるものとなる。
また、圧縮機32の発熱が、鉄損によっても行われる分、同一発熱パワーを得る場合には、鉄損分だけ直流励磁よりも、銅損を低減することができるため、エナメル線を用いた巻線114、115、116、117、118、119の温度上昇を抑えることができ、ブレーキ工程の発熱による絶縁不良などの心配のない、信頼性の高い洗濯乾燥機を提供することができるものとなる。
なお、本実施の形態においては、図11(ア)に示したように、交流成分Iacを楕円状に変化させるものとしており、Iq変化による振動トルクの発生を低減させるものとしたが、圧縮機に供給する電流は、このような電流ベクトルで示されるものにすることが必要というものではなく、図11に示した電流以外のものであっても構わない。
なお、振動するIqを含む場合、回転子127は回転しないまでも、微小な往復運動を伴う場合もあるが、そのような状態についても、冷媒を圧縮する動作は行われないことから、停止として捉えるものとしている。
停止している圧縮機に交流成分を含む電流を供給している状態においては、少なくともd−q平面上での電流ベクトルIaの位相、絶対値の少なくとも一方は、交流成分の周波数で時間と共に変動するものとなる。
圧縮機が3相の場合であれば、3線の電流波形を測定した場合に、少なくとも2線に交流電流成分が重畳されている状態となることも、直流励磁とは異なる状態として観測に現れるものとなる。
また、停止している圧縮機32に対して、直流成分Idcをd軸に供給し続けるということは、電流の実効値が、相によってアンバランスとなる状態が続くことになるため、たとえば数秒間隔で、直流成分を流す相を入れ替えるなどの構成としてもよく、それによりすべての巻線の負担がほぼ均等となるようにすることができ、一部の巻線のみの温度が過剰に上昇することを防ぐことができる。
このように、本実施の形態においては、ドラム22のブレーキ工程の単位時間当たりの速度の変化の絶対値は、上限値を有するものとし、またドラム22のブレーキ工程の第1のインバータ回路55の出力電力にも、300Wという上限値を設け、その上限値に制限されつつ、直流電源の電圧VCOが、第1の直流電圧設定値Vr1よりも高く、ほぼVr2となる状態が存在するものとなっているため、結果として、第2のインバータ回路90からの回生電力の上限値が300Wに制限されるものとなり、第1のインバータ回路55、第2のインバータ回路90の構成部品への電気的ストレスが過大となることを防ぐことができ、信頼性の高い洗濯乾燥機を実現することができるものとなる。
しかしながら、第1のインバータ回路55の出力電力の上限値を設定する制御要素が必ずしも必要というものではなく、例えば圧縮機32に供給する電流の変動や、直流電源40の出力の変動などに対して、第1のインバータ回路55の出力電力値の変動の限度が自ずと決まり、それが装置の動作に問題がない範囲に収まる場合などについては、設けることは必要がない。
さらに、洗濯乾燥機においては、乾燥動作の開始、すなわち圧縮機32の運転を、洗濯動作の途中、例えば最終の脱水を行っている期間に開始するということも、乾燥性能の向上や乾燥時間短縮の点から有利となる場合があり、第1のインバータ回路55への信号については、切替手段66が圧縮機速度設定手段65の信号を選択する状態として実現することが可能である。
この場合、圧縮機32の停止中と比較すると、第1のインバータ回路55の出力電力は大となり、かつ第1の直流電圧制御手段101による、VCOをVr1に保とうとする機能も存在しないものとなる。
本実施の形態においては、その状態で、ドラム22のブレーキを動作させた場合には、ドラム22の速度が大きい期間には、第2のインバータ回路90から大きな回生電力が発生して、VCOに対してVr2の電圧を維持する動作となるが、ブレーキによる速度の低下によって、ドラム22の加速度(角加速度)の絶対値が130r/min/sに達した時点、すなわち回生能力が限度に達した時点で、VCOはVr2から低下するものとなり、その状態では第1の直流電圧制御手段101による第1のインバータ回路55の出力電力の調整機能もない状態であることから、VCOは280V程度まで低下した状態で、交流電源41からの電力供給を受けるものとなる。
よって、ドラム22のブレーキによる回生電力で、第1のインバータ回路55の出力電力のすべてを賄うことはできないが、それでもドラム22の運動エネルギーをなるべく効率良く直流電源40の出力にまで取り出して、第1のインバータ回路55の出力電力の一部として活用し、省エネ効果を上げることはできるものとなる。
なお、第1のインバータ回路55について、本実施の形態においては、出力電力値(W値)を指令値として入力された状態で、制御されるものとしているが、例えば、交流成分を含む電流値の(A値)や、線間電圧値(V値)などとしても良く、要は第1のインバータ回路55が消費する電力が加減できる要素があれば良く、それによって、ブレーキ工程における直流電源40の出力電圧VCOが、第1の直流電圧制御手段101によって制御され、結果として、第1のインバータ回路55の出力電力が可変となるものである。
Vr1とVr2の差については、本実施の形態においては、20Vとしているが、各部の構成部品ばらつきや制御時の変動などにより、設計を加減することができるものであり、Vr1、Vr2ともに、通常の運転時の直流電源40の出力電圧よりも高めに設定することにより、Vr1、およびVr2に制御された状態においては、交流電源41からの電力供給がなくなった状態、すなわち実質的に交流電源41から切り離された状態での運転となるため、ブレーキ工程の回生電力が、圧縮機32の予熱に回ることになる。
よって、例えば力行時の力率改善、あるいは直流電圧VCOを高めるため、交流電源の周波数の2倍や、数十キロヘルツなどのスイッチング素子を設けて昇圧機能を有するコンバータ回路などが設けられたものを直流電源として使用する場合には、Vr1およびVr2は、さらに高めの値に設定しておいても良いが、ブレーキ工程に上記コンバータ回路の昇圧動作を停止するか、出力電圧を十分に絞った設定に切り替えることにより、通常の力行時のVCO程度の電圧に、Vr1やVr2を設定することも可能となり、各部品の耐電圧をそれほど高いものにする必要もない。
また、圧縮機32は永久磁石123、124、125、126を有し、第1のインバータ回路55は、ドラム22のブレーキ工程に、圧縮機32が停止した状態で交流成分を含んだ電流を供給するものとしている。
これにより、ドラム22の速度がたとえば毎分1700回転というような高速の状態で、ブレーキを開始した場合、まず第1のインバータ回路55の出力電力の上限値300Wに制限された状態で、第2のインバータ回路90の回生電力も同等値にバランスした期間において、十分なブレーキトルクがドラム22に作用し、急速にドラム22の運動エネルギーを圧縮機32に回収し、短いブレーキ時間とすることに効果を上げることができ、そ
の後のドラム22の単位時間当たりの速度変化が上限値に抑えられた期間には、第1のインバータ回路55の出力電力が低下していくことにより、第2のインバータ回路90によるドラム22の速度に応じた無理のない回生電力の発生がなされ、ドラムモータ24や第2のインバータ回路90での電力損失を下げた状態での運転となり、ドラム22の速度が相当低い値となるまで、回生電力を利用した圧縮機32の予熱が可能となるので、省エネ面で非常に大きな効果を上げることができるものとなる。
圧縮機32の予熱に使用されたエネルギーは、洗濯の後の乾燥を行う際に、ヒートポンプ30の温度の立ち上がりを早める熱として使用されるものとなるため、ドラム22の運動エネルギーが有効に使用されるものとなり、省エネ面で有利となるとともに、ヒートポンプ30の温度の立ち上がり時間の短縮による乾燥時間の短縮にも効果が期待できるものとなる。
なお、回生電力が次第に低下していく期間におけるドラム22のブレーキトルクについては、電力/速度の関係から、ほぼ一定値に近いものとなり、機構系への無理な力が加わることもなく、スムーズな停止動作が行われるものとなる。
(実施の形態4)
図12は、本発明の実施の形態4において停止中の圧縮機のドラムのブレーキ工程における電流ベクトル図および波形図であり、(ア)d−q平面の電流ベクトル図、(イ)Idの波形図、(ウ)Iqの波形図を示したものである。
本実施の形態においては、実施の形態3と比較して、圧縮機32に供給される電流Iaの生成が異なるものとしているが、その他の構成に関しては、実施の形態2と全く同等である。
(ア)に示される電流Iaは、圧縮機32に入る電流の合成ベクトルであり、本実施の形態においては、直流Idcがd軸成分の電流として供給され、その上に、d軸に平行に毎分2000回交番する交流成分Iacが重畳したベクトル和がIaとなっている。
(イ)に示されるIdの波形については、直流成分Idcを中心として、上下に増減するものとなっており、本実施の形態においては、Iaのd軸成分IdについてId<0にまで振れている。
(ウ)に示すIqについては、ゼロとなる。
合成した電流Iaが、第1のインバータ回路55から、ドラム22のブレーキ工程に、停止している状態の圧縮機32に供給されることにより、圧縮機32には、交流成分を含んだ電流が供給されるものとなる。
(実施の形態5)
図13は、本発明の実施の形態5において停止中の圧縮機32のドラム22のブレーキ工程における電流ベクトル図および波形図であり、(ア)d−q平面の電流ベクトル図、(イ)Idの波形図、(ウ)Iqの波形図を示したものである。
本実施の形態においても、第3および実施の形態4と比較して、圧縮機32に供給される電流Iaの生成が異なるものとしているが、その他の構成に関しては、第2および実施の形態3と全く同等である。
(ア)に示される電流Iaは、圧縮機32に入る電流の合成ベクトルであり、本実施の
形態においては、直流Idcがd軸成分の電流として供給され、その上に、交流成分Iacが重畳しており、Iaの電流ベクトルの先端が、ほぼ8の字を描く形で、毎分1000回周回している。
(イ)に示されるIdの波形については、直流成分Idcを中心として、上下に毎分1000回の頻度で増減するものとなっている。
(ウ)に示すIqについては、ゼロを中心に正/負に交番する波形となり、交番の頻度は、Idの2倍の毎分2000回となる。
合成した電流Iaが、第1のインバータ回路55から、ドラム22のブレーキ工程に、停止している状態の圧縮機32に供給されることにより、圧縮機32には、交流成分を含んだ電流が供給されるものとなる。
よって、本実施の形態においては、異なるIdとIqは周波数成分を有している。
以上、実施の形態3〜5において、ドラム22のブレーキ工程に、圧縮機32に供給される電流のベクトルIaについて、3つの例を示したが、これ以外のものであっても良く、要は停止している圧縮機32に対し、いずれかの線電流に交流成分を含んでいるものであれば、鉄損の発生による効果的な電力消費が実現できるという本願の効果を得ることができるものであり、複数の周波数成分が線電流に入り混じったもの、また周波数が時間とともに変化していくものなども含め、本願の範疇となる。
(実施の形態6)
図14は、本発明の実施の形態6における洗濯乾燥機のブレーキ工程のフローチャートを示すものである。
本実施の形態においては、実施の形態3と異なる部分のみを説明するものとし、それ以外の部分については、実施の形態3と同等のハードおよびソフトの構成となっている。
図14において、洗濯乾燥機に衣類が入れられ、電源が供給させた時点でスタート130となり、次にコース設定131に入る。
コース設定131では、使用者による操作が可能なスイッチを有するコース設定手段132からの信号を受け取るという動作を行い、洗濯後に乾燥を行う第1のコース設定と、乾燥は行わない第2のコース設定のいずれかが選択され、運転が開始される。
ここで、「洗濯」とは、衣類21が洗剤入りの水が入った状態で、ドラム22の回転を行う「洗い」、洗剤を入れない水を入れた状態でドラム22を回転させ、洗剤と汚れを水に流しだす「すすぎ」の動作を、「洗い」から「すすぎ」の順に行うものであり、かつ「洗い」から「すすぎ」に移る際には、洗剤を含んだ水の排水後に「脱水」がなされ、また「すすぎ」については、本実施の形態においては、2回行っており、1回目の「すすぎ」の後、やはり排水後に「脱水」が行われ、2回目の「すすぎ」が終わった後にも、「脱水」が行われるものとなっている。
「脱水」については、ドラム22をドラムモータ24から毎分1700回転の高速で回転させることにより、遠心力による衣類21からの水分の除去を行うものとなっている。
本実施の形態においては、乾燥を行わない第2のコースは、具体的には洗濯のみが行われ、最終的には、すすぎの後、脱水された状態でコースを終了するものとなり、第2のコ
ースの終了後には、使用者は衣類21を取り出して、天日に干して乾燥させるという作業を行うものとなる。
したがって、第1のコースと第2のコースは、いずれも脱水の動作が含まれており、本実施の形態においては、それらの脱水の終了時にドラム22にブレーキを用いるものとなっている。
ブレーキ工程133は、ブレーキ工程に入ったかどうかの判定を行うものであり、「洗い」、「乾燥」である場合には、Noとなり、再びブレーキ工程133に戻るループとなる。
ブレーキ工程にはYesとなるため、コース番号134の判断に進むものとなる。
なお、本実施の形態においては、ブレーキ工程となるのは、「洗い」の後の排水後と、「すすぎ」の途中で、1回目の排水後、および2回目(最終すすぎ)の排水後であり、いずれもドラム22の速度が毎分1000回転以上(最大毎分1700回転)という高速で回転している状態で発生させているが、高速でドラム22が回転している状態以外でブレーキを行ってもよく、例えば「洗い」や「すずき」で、ドラム22を毎分100回転程度の低速で、左右交互に頻繁に回転方向を変えている場合などにも、ドラム22にブレーキを作用させることにより、衣類21への機械力の増大が図られ、洗濯性能の向上につながることはあり、運動エネルギーとしては、ブレーキ1回当たりの運動エネルギーの回生による省エネ効果としては、高速時よりも低いが、回数が幾度も重なることによって、有効活用を図る対象となる場合もあり得る。
コース設定手段132で設定されたコース番号が、第1のコース、すなわち洗濯と乾燥の順に行う場合には、設定135に進み、ここで直流電圧源95に対してVr2=430Vの設定、直流電圧源63に対してVr1=410Vの設定、電圧設定器85に対して、Var=170Vの設定がなされ、ちょうど実施の形態3で説明した状態となる。
その後、第1のコースは、ドラム速度<50r/min136の判断に入り、ブレーキによるドラム22の速度低下が、50r/minを下回るまで進むのを待つループとして作用し、ドラム22の速度が50r/minを下回った時点で、短絡ブレーキ140に入り、ここでドラムモータ24は、線間電圧がゼロとなる状態、すなわち3線が短絡された状態に相当するように第2のインバータ回路90が働くことにより、停止に至るものとなる。
これに対して、第2のコース、すなわち洗濯のみの場合には、設定137に進み、Vr1=200V、Vr2=430V、Var=100Vの設定がなされるものとなる。
第2のコースを進んだ場合には、次にドラム速度<500r/min138の判断に入り、ブレーキによるドラム22の速度低下により、ドラム22の速度が500r/minを下回る状態になるまでは、Noにてループ待ちの状態となり、500r/minを下回った時点でYesが立ち、短絡ブレーキ140に入る。
図15は、本発明の実施の形態6における洗濯乾燥機のドラムのブレーキ工程におけるドラムモータのU相の電流Iuの波形図で、(ア)は第1のコース設定の場合、(イ)は第2のコース設定の場合のものを示したもので、(ア)と(イ)の両者について、1700r/minからブレーキを開始した後、ドラム22の速度が1600r/minに達した段階のものを前半に、またドラム22の速度が200r/minに達した段階のものを後半に示している。
本実施の形態においては、第2のコース設定では、Var=100Vで第1のコース設定よりも低い電圧値となっているため、高速域となる1600r/minにおいては、弱メ界磁がより大きく作用する動作となり、Idの絶対値が大となり、よってIuのピーク値は、7Aという大きい値となる。
これに対し、第1のコース設定では、Var=170Vという高めの電圧設定となるため、弱メ界磁のための電流成分(Id)の絶対値は、ほぼ必要最小限となり、Iuのピーク値も、5.5Aにとどまる。
よって、第2のコース設定の方が、第1コース設定よりも1600r/minでのドラムモータ24の損失は大きくなるが、第1のインバータ回路55の出力電力に加えて、ドラムモータ24の損失も大きい値として加算されたものが、第2のインバータ回路90からの回生電力となるため、ドラム22に作用するブレーキトルクとしては大きいものが得られるものとなる。
200r/minにまでドラム22の速度が低下した段階については、第1のコース設定においては、第1のインバータ回路55の出力電力が、300Wよりもかなり絞られた状態となっていることと、Idが0A、すなわち弱メ界磁ではない運転となることから、ピークで2.5Aという小さい値となりつつ、回生電力を圧縮機32の予熱パワーとして供給し続けているのに対し、第2のコース設定した場合には、短絡ブレーキの動作により、回生電力は発生せず、8Aのピーク電流値となり、それによるドラムモータ24の損失によってドラム22のブレーキトルクが生じている状態となっている。
なお、本実施の形態においては、設定137にて通常の力行時の直流電源40の出力電圧VCOよりも低いVr1=200Vという設定も加えており、この設定により、VCOの値が、Vr1と等しくなるように、第1のインバータ回路55の出力電力を調整するという第1の直流電圧制御手段101の機能は、実質的に殺された状態となり、その結果、第1のインバータ回路55の出力電力は、300Wに固定された状態となり、500r/minまでドラム22の速度が低下する間の動作としては、第2のインバータ回路90の回生電力は、ほぼ300Wの一定値を保った状態となる。
これらの要因により、本実施の形態における第2のコース設定でのドラム22のブレーキ工程のドラムモータ24の電流の実効値は、第1のコース設定でのドラム22のブレーキ工程に比べて大となり、ブレーキでドラム22が停止するまでに要する時間という面では、第2のコース設定の方が短くなる。
第2のコース設定では、乾燥を行わないため、ブレーキ工程にドラム22が持つ運動エネルギーを、効率よく圧縮機32に導いたとしても、無駄なものとなって捨てる熱にしかならないことから、意味が薄いものとなり、むしろブレーキ時間の短縮による洗濯時間の短縮が可能となる、本実施の形態のように電流の実効値を増したブレーキの掛け方が有効となる。
図15で示した電流値は、すべて線電流Iuのピーク値で示しているが、d−q面上の値で見ても、電流波形が正弦波と仮定した例では、Iuピーク値の1.22(1.5の平方根)倍となるというように、スケールが変わるだけであり、大小関係については、やはり第2のコース設定の場合が、第1のコース設定の場合よりも大となることには変わりない。
ブレーキ期間中のドラムモータ24の電流の実効値については、同一のドラム22の速
度から、ドラム22のブレーキの開始からドラム22が停止するまでの時間での実効値、すなわち線電流の瞬時値の二乗をブレーキ期間で時間積分した値を時間平均し、さらに平方根(スクエアルート)をとった値で比較することができる。
なお、第1のコース設定と第2のコース設定で、脱水のドラム22の速度が異なるなど、ブレーキ開始時点の速度が異なる場合には、ブレーキ開始時点のドラム22の速度が低い方のコースでのブレーキ開始時速度から停止するまでの期間での電流値の実効値で比較することができる。
また、本実施の形態においては、コース設定手段132により選択できるコース数は2つとしているが、より多くのコース数から選択ができるものであってもよく、その場合には、脱水後のブレーキ工程のドラムモータ24の電流値に関して、洗濯と乾燥の順に行うすべてコース設定での最小値が、乾燥を行わないすべてのコース設定(例えば、洗いとすすぎ、洗いのみ、すすぎのみ、脱水のみなど)での最大値よりも小となる場合には、本発明の範疇とみることができる。
なお、第2〜6の各実施の形態においては、いずれもドラムモータのIdとIqを独立制御する電流ベクトル制御手段を用いた構成としているが、第1の発明において、特に電流ベクトル制御を構成することがどうしても必要となるというものではなく、例えば電圧ベクトルの大きさと位相を設定する制御などであっても構わない。
また、本実施の形態においては、Var値の設定を第1のコースと第2のコースで異なった値とすることにより、後者でのId値の絶対値は、前者でのId値の絶対値よりも大となり、その結果として、ドラムモータ24の電流値の差が生じるものとなっており、力行時に使用している構成要素をそのまま使用できる点で、設計の工数が削減できるなどの効果があるものとなっている。
しかしながら、このような構成に限定されるというものではなく、例えば第2のコースでは、ブレーキ工程に直接Id値の設定を行うものとし、第1のコースの場合よりも大きな電流値がドラムモータ24に供給されるようにする構成などであっても構わない。
さらに、ブレーキ工程のIdm値の設定については、本実施の形態では、0としているが、正の値にすることもよく、ドラム22が低速となった際に、誘導起電力の低下した状態で、ドラムモータ24の入力電圧Vaは、引き続きVarに保たれるよう、Idが正、すなわち強メ界磁の状態となるが、Idが存在する分電流値を増大させる運転となるので、特に第2のコースでの低速域、例えばドラム22の速度が300r/min前後の短絡ブレーキの前段階で、Var=170V程度の設定と合わせて行う構成により、ブレーキ時間の短縮効果が上がり、かつドラムモータ24やドラム22の振動を防止する効果も上げられる場合もある。