作業の効率化及び作業の容易化を図るために、裏板を枠部材に配置する作業は、玄関ドアの施工現場ではなく、予め工場で行われることがある。このように予め工場で裏板を枠部材に配置する際には、裏板の外輪郭の一部を溶接により枠部材の裏面に接合することが行われることがある。裏板の大きさ及び形状は、この裏板と枠部材を介して対面する枠側羽根板と同じ又は略同じであり、言い換えると、裏板の外輪郭は、この裏板と枠部材を介して対面する枠側羽根板の外輪郭と同じ又は略同じになっている。このため、従来では、裏板の外輪郭の一部を溶接により枠部材の裏面に接合すると、この溶接痕が、薄板で形成されている枠部材の表面に表われてしまい、この溶接痕を消すために、研磨具等の工具で枠部材の表面を仕上げるなどの作業が行われている。
このような問題は、少なくとも一部が、枠側羽根板の外輪郭よりも内側において、枠部材に溶接が可能である溶接可能部となっている切除部を裏板に形成し、この溶接可能部において、枠部材の裏面に裏板を溶接で接合し、この溶接により枠部材の表面に生ずる溶接痕を、枠部材の表面に配置される枠側羽根板によって隠すことにより、解消することができる。
そして、このような切除部を裏板に形成する場合には、作業の容易化を実現できるようにするために、裏板を製造するときに切除部を裏板に効率的に形成できるようにすることが求められる。
本発明の目的は、蝶番の枠側羽根板等の建材用部品によって溶接痕を隠すことができる溶接可能部のための切除部を、裏板を製造するときに裏板に効率的に形成できる建材用裏板及び建材用裏板構造体の製造方法を提供するところにある。
本発明に係る建材用裏板の製造方法は、建材の表裏両面のうち、一方の面に配置される建材用部品と対面して他方の面に配置される建材用裏板であって、前記建材に溶接されるとともに、前記建材を貫通する結合具により前記建材用部品を前記建材に補強して結合するために用いられ、少なくとも一部が、前記建材用部品の外輪郭よりも内側において、前記建材に前記溶接が可能である溶接可能部となっている切除部が形成されている建材用裏板を製造するための方法であり、板金から前記建材用裏板を打ち抜くための打ち抜き工程と、前記建材用裏板に前記切除部を形成するための切除部形成工程とが、これらの工程が同時に行われる同時工程となっており、前記板金から前記建材用裏板を打ち抜くための打ち抜き加工時に、この打ち抜き加工により前記建材用裏板に前記切除部を形成することを特徴とするものである。
この建材用裏板の製造方法によると、建材用裏板は板金からの打ち抜きにより形成され、そして、少なくとも一部が、建材用部品の外輪郭よりも内側において、建材に溶接が可能である溶接可能部となっている切除部を建材用裏板に形成するための切除部形成工程は、板金から建材用裏板を打ち抜くための打ち抜き工程と同時に行われるため、板金から建材用裏板を打ち抜くための打ち抜き工程とは別の工程として切除部を建材用裏板に形成するための切除部形成工程を行うことは不要になり、板金から建材用裏板を打ち抜くと同時に切除部を裏板に形成できるため、蝶番の枠側羽根板等の建材用部品によって溶接痕を隠すことができる溶接可能部を設けるための切除部を、建材用裏板を製造するときに効率的にこの建材用裏板に形成できることになる。
本発明において、上述のように建材用裏板に切除部を設けることは、各種の形状となっている裏板について行うことができ、その一例は、切除部が形成されない場合の建材用裏板が4個の辺部によって外輪郭が形成される四角形となっている場合である。
また、切除部も各種の態様によって建材用裏板に形成することができ、これを具体的に説明すると、上述のように切除部が形成されない場合の建材用裏板が4個の辺部によって外輪郭が形成される四角形となっている場合における第1番目の例の切除部は、前記4個の辺部のうち、互いに直角又は略直角をなす第1辺部と第2辺部から建材用裏板の外輪郭の内側へ侵入することによって形成された部分を切除部とすることであり、第2番目の例の切除部は、建材用裏板の外輪郭を形成している1個の辺部からこの建材用裏板の外輪郭の内側へ侵入することによって形成された部分を切除部とすることであり、第3番目の例の切除部は、建材用裏板の外輪郭よりも内側に孔を形成し、この孔を切除部とすることである。
第1番目の例の切除部の場合において、第2辺部から第1辺部と平行又は略平行に建材用裏板の外輪郭の内側へ侵入している切除部の長さが、第1辺部の長さの半分以上となっていて、この切除部によって切除されずに建材用裏板に残存している部分が、第1辺部が先端部となっている突片部になる場合には、前述した打ち抜き工程を、表裏を逆とした少なくとも2個の建材用裏板を、互いに一方の建材用裏板の突片部を他方の建材用裏板の切除部のために切除される部分の少なくとも一部にして、前述した板金から打ち抜くための工程としてもよい。
これによると、板金から少なくとも2個の建材用裏板を同時に打ち抜きことができるとともに、この打ち抜きは、互いに一方の建材用裏板の突片部を他方の建材用裏板の切除部のために切除される部分の少なくとも一部にして行われるため、建材用裏板を1個ずつ打ち抜いた場合に廃棄される板金の部分を上記突片部とすることができ、このため、建材用裏板として利用される板金の歩留まりを向上させることができる。
また、本発明において、建材用部品を建材に建材用裏板で補強して結合するための前述の結合具は、任意な結合具でよく、この結合具の一例はビスであり、他の例の結合具はリベットである。
この結合具がビスであって、建材用裏板に、このビスが螺入される雌ねじが内周面に設けられる筒状突部がバーリング加工により形成される場合には、前述した同時工程と同時に、バーリング加工のための下孔を打ち抜く作業を行ってもよく、あるいは、この同時工程の後に、バーリング加工のための下孔を打ち抜く作業を行ってもよい。
前者によると、バーリング加工のための下孔は、前述した同時工程と同時に行われる打ち抜き作業によって形成されるため、この下孔だけを形成するための作業時間が不要になり、建材用裏板を製造する時間を短縮することができる。
そして、本発明では、下孔の打ち抜き作業を行った後に、バーリング加工により上述した筒状突部を形成することが行われる。
本発明に係る建材用裏板の製造方法は、建材用裏板に、この建材用裏板を建材に位置決めするための位置決め用突部を形成する場合にも適用することができ、このような位置決め突部を建材用裏板に形成する場合には、前述した同時工程の後に、位置決め用突部を形成するための半抜き加工を行うようにしてもよい。
そして、このように前述した同時工程の後に、位置決め用突部を形成するための半抜き加工を行う場合において、前述した結合具をビスとし、建材用裏板に、このビスが螺入される雌ねじが内周面に設けられる筒状突部をバーリング加工により形成する場合には、前述した同時工程の後に、位置決め用突部を形成するための半抜き加工とバーリング加工とを同時に行うようにしてもよい。
これによると、位置決め用突部を形成するための半抜き加工と、バーリング加工とが同時に行われるため、作業の共通化を図ることができ、全体の作業時間を短縮できる。
また、本発明に係る建材用裏板の製造方法は、建材用裏板に、前述した結合具を貫通させるための貫通孔を形成し、建材用裏板における前記建材側とは反対側の面に、この貫通孔を覆うための覆い部材を配置し、建材用裏板に、この覆い部材を固定するための固定用突部を形成する場合にも適用することができ、このような固定用突部を建材用裏板に形成する場合には、前述した同時工程の後に、固定用突部を形成するための半抜き加工を行うようにしてもよい。
そして、このように前述した同時工程の後に、固定用突部を形成するための半抜き加工を行う場合において、前述した結合具をビスとし、建材用裏板に、このビスが螺入される雌ねじが内周面に設けられる筒状突部をバーリング加工により形成する場合には、前述した同時工程の後に、固定用突部を形成するための半抜き加工とバーリング加工とを同時に行うようにしてもよい。
これによると、固定用突部を形成するための半抜き加工と、バーリング加工とが同時に行われるため、これによっても作業の共通化を図ることができ、これにより、全体の作業時間を短縮できる。
本発明に係る建材用裏板構造体の製造方法は、建材の表裏両面のうち、一方の面に配置される建材用部品と対面して他方の面に配置される建材用裏板であって、前記建材に溶接されるとともに、前記建材を貫通する結合具により前記建材用部品を前記建材に補強して結合するために用いられ、少なくとも一部が、前記建材用部品の外輪郭よりも内側において、前記建材に前記溶接が可能である溶接可能部となっている切除部が形成されている建材用裏板と、前記結合具を貫通させるための貫通孔が形成されている前記建材用裏板における前記建材側とは反対側の面に固定され、前記貫通孔を覆うための覆い部材と、を含んで構成される建材用裏板構造体を製造するための方法であり、板金から前記建材用裏板を打ち抜くための打ち抜くときに、前記切除部を形成するための工程と、前記覆い部材を製造する工程と、前記覆い部材を、前記建材用裏板のうち、前記切除部から外れた箇所に固定する工程と、を有することを特徴とするものである。
この製造方法によると、板金から建材用裏板を打ち抜くときに形成された切除部を覆い部材で覆うことなく、裏板に覆う部材を固定することができる。
以上説明した本発明は、任意な建材用部品のための建材用裏板及び建材用裏板構造体に適用することができ、この建材用部品は、玄関ドア等のドアのための蝶番でもよく、あるいは、ドアクローザでもよく、ドアのラッチを受けるためのラッチ受けでもよく、さらには、ドアのデッドボルトを受けるためのデッドボルト受けでもよい。
また、建材用部品を蝶番とする場合には、この蝶番は、例えば、旗蝶番でもよく、平蝶番でもよく、フランス蝶番でもよく、儀星蝶番でよく、任意の蝶番でよい。
さらに、本発明において、建材用部品を玄関ドア等のドアのための蝶番とする場合には、裏板は、この蝶番のうち、枠側羽根板のための裏板でもよく、ドア側羽根板のための裏板でもよい。
本発明によると、蝶番の枠側羽根板等の建材用部品によって溶接痕を隠すことができる溶接可能部のための切除部を、裏板を製造するときに裏板に効率的に形成できるという効果を得られる。
以下に本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。初めに、本実施形態に係る建材用裏板自体及び建材用裏板構造体自体について説明する。
以下に説明する実施形態における建材用部品は、図1に示されている玄関ドア1のための蝶番10であり、また、本実施形態における建材は、玄関ドア1で開閉される開口部2Aを内側に形成している外枠2である。図1には、上下3個の蝶番10により、玄関ドア1が外枠2に開閉自在に取り付けられている状態が示されており、この外枠2は、上枠部材3と左右の側枠部材4,5と下枠部材6とにより構成されている。図2は、図1のS2−S2断面図であり、この図2に示されているように、左右の側枠部材4,5は、コンクリート製の壁7の内部の配筋材7Aに連結部材8で連結され、板金の折り曲げ品であるこれらの側枠部材4,5の内部空間Sには、コンクリート9が充填材として充填されている。
図3には、一部を二点鎖線による想像線で表した蝶番10の部分の斜視図が示され、図4には、図3で示されている側枠部材5を省略して表した蝶番10等の分解斜視図が示されている。図3及び図4から分かるように、本実施形態に係る蝶番10は、側枠部材5側の羽根板となっている枠側羽根板11と、この枠側羽根板11の基端に設けられている筒部11Aと、玄関ドア1側の羽根板となっているドア側羽根板13と、このドア側羽根板13の基端に設けられている筒部13Aと、この筒部13Aに結合されて下方へ延びるピン12とからなる旗蝶番である。枠側羽根板11の筒部11Aの内部にピン12が上方から挿入されることにより、枠側羽根板11とドア側羽根板13とがピン12を介して連結されるとともに、このピン12を中心にドア側羽根板13が枠側羽根板11に対して回動自在となる。枠側羽根板11は、図3及び図4で示されている5個のビス15により側枠部材5に結合され、枠側羽根板11よりも上側に配置されているドア側羽根板13は、図示しない複数個のビスにより玄関ドア1の端面に結合され、これにより、玄関ドア1は、蝶番10により側枠部材5に回動自在に取り付けられる。
図3に示されているように、枠側羽根板11は、側枠部材5の表裏両面5A,5Bのうち、表面5Aに配置され、側枠部材5の裏面5Bには、本実施形態に係る建材用裏板である裏板20が枠側羽根板11と対面して配置される。側枠部材5の表面5Aとは、図2に示されているように、玄関ドア1側に向いている面であり、側枠部材5の裏面5Bとは、図2のコンクリート9が充填される側枠部材5における内部空間Sを形成している側の面である。そして、図3及び図4に示されているように、裏板20における側枠部材5の側とは反対側の面には、覆い部材30が配置される。
本実施形態では、裏板20と、この裏板20における側枠部材5の側とは反対側の面に固定される覆い部材30とにより、裏板構造体が構成されている。
裏板20には、図4に示されているとおり、この裏板20の一部を切除することによって形成された上下2個の切除部21が設けられており、これらの切除部21が形成されていない場合における裏板20の外輪郭23は、上辺部20Aと、左右の側辺部20B,20Cと、下辺部20Dとからなる縦長の四角形の輪郭となっている。本実施形態において、上辺部20Aは第1辺部であり、2個の側辺部20B,20Cのうち、側辺部20Bは第2辺部であり、下辺部20Dは第3辺部であり、側辺部20Cは第4辺部である。
そして、2個の切除部21のうち、上側の切除部21Aは、裏板20の外輪郭23を形成しているこれらの辺部20A〜20Dのうち、互いに直角又は略直角をなす第1辺部である上辺部20Aと、第2辺部である側辺部20Bとから裏板20の外輪郭23の内側へ侵入することによって形成された部分となっており、下側の切除部21Bは、辺部20A〜20Dのうち、互いに直角又は略直角をなす第3辺部である下辺部20Dと、第2辺部である側辺部20Bとから裏板20の外輪郭23の内側へ侵入することによって形成された部分となっている。これらの切除部21は、上辺部20A,側辺部20B、下辺部20Dから裏板20の外輪郭23の内側へ侵入していて、上辺部20A,側辺部20B、下辺部20Dに対し直角又は略直角をなして侵入しているため、それぞれの切除部21における先端部22は、直角形状又は略直角形状となっている部分、言い換えると、2個の辺部が角度をなしている部分となっている。
なお、後述するように、裏板20は板金の打ち抜き加工により製造されており、それぞれの切除部21は、この板金の打ち抜き加工を行うときに、この打ち抜き加工によって形成されている。このため、板金から裏板20を製造するときに、切除部21も同時に形成されている。
裏板20は、図6に示されているように、蝶番10の枠側羽根板11のうち、蝶番10のピン12の側とは反対側の大面積を有する部分と側枠部材5を介して対面しており、切除部21が形成されていない場合における裏板20の大きさ及び形状は、この裏板20と対面している枠側羽根板11の上記部分(以下、対面部分11Bという。)の大きさ及び形状と同じ又は略同じである。図6では、裏板20の大きさ及び形状は、枠側羽根板11の対面部分11Bと略同じ、言い換えると、対面部分11Bの大きさ及び形状よりもやや大きめに設定されている。そして、裏板20の切除部21は、枠側羽根板11の対面部分11Bの外輪郭14の内側へ侵入した部分となっている。
図4に示されているように、枠側羽根板11には、前述のビス15を挿入するための孔24が形成され、また、図3のS5−S5線断面図である図5に示されているように、側枠部材5にもビス15を挿入するための孔25が形成されているとともに、裏板20には、図4に示されているように、ビス15を螺入、貫通させるための貫通孔となっていて内周面に雌ねじ26Bが設けられたねじ孔26Aが形成されている。これらのねじ孔26Aは、後述するように、バーリング加工により裏板20に形成された筒状突部26(図5を参照)の内周面となっており、これらの内周面に雌ねじ26Bが設けられている。
また、図4に示されているとおり、裏板20には、半抜き加工により、枠側羽根板11の側へ突出した上下2個の突部27が形成されており、図5に示されているように、側枠部材5には、これらの突部27と対応する箇所において、2個の孔28が形成されている。このため、それぞれの突部27をそれぞれの孔28に嵌合することにより、裏板20は側枠部材5に位置決めされて配置される。したがって、突部27は、裏板20を側枠部材5に位置決め配置するための位置決め用突部27となっており、この位置決め用突部27と孔28は、裏板20と側枠部材5に形成された本実施形態における位置決め部29を形成している。
図6に示されているように、裏板20に形成されている上下2個の切除部21は、左右の側辺部20B,20Cの間隔が長さL1となっている裏板20において、第2辺部である側辺部20Bから第4辺部である側辺部20Cの側へ、第1辺部である上辺部20A及び第3辺部である下辺部20Dと平行に長さL2に渡って裏板20の外輪郭23の内側へ侵入しており、この長さL2は、枠側羽根板11の対面部分11Bの外輪郭14の内側へも、切除部21が侵入している長さになっているとともに、長さL2は、長さL1の半分よりも少し長い長さになっている。このため、裏板20を側枠部材5の裏面5Bに溶接で接合するために、それぞれの切除部21の先端部22にアーク溶接の溶接棒又は溶接ワイヤの先端部を係止させてアーク溶接を行い、これにより生ずる溶接部40で裏板20を側枠部材5の裏面5Bに接合したときには、これらの溶接部40の側辺部20Bからの距離L3は、長さL1の半分又は略半分となる。
この実施形態において、図4及び図5で示したビス15を螺入させるために裏板20に設けられているねじ孔26Aは、図4に示されているように、5個あり、これらのねじ孔26Aのうち、4個のねじ孔26Aは、図6から分かるように、上下左右に分かれて裏板20に設けられている。これら4個のねじ孔26Aのうち、上下2個で一組をなすねじ孔26Aの左右二組のうち、一方の組のねじ孔26Aは、側辺部20Bから距離L4の位置に設けられ、他方の組のねじ孔26Aも、側辺部20Bとは反対側の側辺部20Cから距離L4の位置に設けられている。
このため、裏板20を側枠部材5にアーク溶接で接合するために、溶接可能部となっている切除部21の先端部22についてアーク溶接を行ったときに、左右2個のねじ孔26Aは、切除部21の先端部22が溶接されることにより生ずる溶接部40に対し、互いに等しい又は略等しい距離に存在していることになる。
このため、上述の左右2個のねじ孔26Aは、溶接熱を均等又は略均等に受けることになり、左右2個のねじ孔26Aのうち、一方のねじ孔26Aが溶接熱を多く受けることをなくすことができるため、上述の4個のねじ孔26Aのうち、1個又は2個のねじ孔26Aが溶接熱で変形等してビス15の螺入が困難になることを防止でき、これにより、それぞれのねじ孔26Aにビス15を所定どおり螺入できることになる。
また、裏板20に設けられている上下2個の切除部21は、上述したように、裏板20の側辺部20Bから上辺部20A及び下辺部20Dと平行に側辺部20Cの側へ長さL2に渡って侵入していて、この長さL2は、左右の側辺部20B,20Cの間隔であって裏板20の左右の幅寸法でもある長さL1よりも短いため、裏板20には、第4辺部である側辺部20Cの側に偏った箇所において、上下2個の突片部20E,20Fが設けられている。言い換えると、これらの突片部20E,20Fは、切除部21によって切除されずに裏板20に残存している部分となっているとともに、裏板20の前述した第1辺部となっている上辺部20Aが突片部20Eの先端部になっており、第3辺部となっている下辺部20Dが突片部20Fの先端部になっている。
図4で示されている覆い部材30は板金の折り曲げ品であって、図6から分かるように、背面から見たときに裏板20よりもやや小さい大きさを有するものとなっている。また、この覆い部材30は、図4に示されているように、ボックス部30Aと、このボックス部30Aの上下に設けられた突片部30B,30Cとからなり、ボックス部30Aは、裏板20の側の面である正面のみが開口していて、上下面、左右の両側面及び背面が閉じた面となっている。また、このボックス部30Aは、図6から分かるように、覆い部材30が裏板20における側枠部材5の側とは反対側の面に配置されたときに、裏板20に貫通孔として5個設けられているねじ孔26Aの全部を覆うようになっている。
それぞれの突片部30B,30Cは、裏板20の突片部20E,20Fにおける側枠部材5の側とは反対側の面に当てられ、また、これらの突片部30B,30Cは、ボックス部30Aの左右の両側面の間隔よりも短い左右長さを有しており、このため、突片部30B,30Cの左右長さは裏板20の切除部21まで延びる長さとなっておらず、切除部21の手前までの長さとなっている。これを言い換えると、この切除部21は、裏板20のうち、覆い部材30によって覆われない箇所に設けられている。したがって、覆い部材30を裏板20における側枠部材5の側とは反対側の面に配置したときに、裏板20の切除部21が覆い部材30によって覆われることはない。
この覆い部材30は、裏板20が側枠部材5に前述のアーク溶接で接合される前に、予め2個の固定部31により裏板30に固定配置されている。これらの固定部31は、図6のS7−S7線断面図である図7に示されているとおり、裏板20を半抜き加工することによりこの裏板20の突片部20E,20Fに形成された突部32を、覆い部材30の突片部30B,30Cに形成した孔33に挿入した後に、孔33から突出した突部32の先端部に、この先端部を拡大変形させるカシメ加工を行うことにより形成されたものとなっている。このため、裏板20の突片部20E,20Fに形成された突部32は、覆い部材30を裏板20に固定するための固定用突部32となっている。
図7は、図1で示されている玄関ドア1の施工現場に搬入される前における工場での側枠部材5と裏板20と覆い部材30を示している。工場では、裏板20に覆い部材30を固定部31で固定配置する作業が行われるとともに、側枠部材5の裏面5Bに裏板20を前述の位置決め部29により位置決め配置し、そして、側枠部材5の裏面5Bに裏板20を前述のアーク溶接により接合する作業が行なわれる。本実施形態の位置決め部29は、裏板20に形成された2個の突部27と、側枠部材5に形成された2個の孔28とからなるため、側枠部材5の裏面5Bに裏板20を位置決め配置することは、裏板20の2個の突部27を側枠部材5の2個の孔28に嵌合することにより行い、このように裏板20を側枠部材5の裏面5Bに位置決め配置した後に、裏板20の切除部21の先端部22にアーク溶接の溶接棒又は溶接ワイヤの先端部を当接させ、これにより、側枠部材5の裏面5Bに裏板20をアーク溶接によって接合する。アーク溶接によって生ずる溶接部40は、図6において、二点鎖線によって示されている。
以上のように工場において、覆い部材30が固定配置された裏板20を側枠部材5に溶接で接合するとともに、図1で示した上枠部材3と左右の側枠部材4,5と下枠部材6とを溶接で接合することにより、玄関ドア1で開閉される開口部2Aのための外枠2を形成し、この後に、これらを図1で示した玄関ドア1に施工現場に搬入する。この施工現場では、左右の側枠部材4,5を図2で示した壁7の配筋材7Aに連結部材8で連結し、次いで、これらの側枠部材4,5の内部空間Sにコンクリート9を充填する作業を行う。
また、蝶番10の枠側羽根板11の孔24から図3及び図4で示したそれぞれのビス15を挿入し、これらのビス15を側枠部材5の孔25に挿入するとともに、裏板20のねじ孔26Aに螺入し、それぞれのビス15を締め付けることにより、枠側羽根板11をビス15によって側枠部材5の表面5Aに結合し、この結合を、側枠部材5よりも厚さが大きい裏板20によって補強する。
このため、本実施形態に係るビス15は、建材である側枠部材5を貫通し、建材用部品となっている蝶番10の枠側羽根板11を側枠部材5に裏板20により補強して結合するための結合具となっている。
そして、蝶番10のドア側羽根板13を、枠側羽根板11と同様にして、玄関ドア1の端面に図示しないビスにより結合し、この後に、蝶番10の図4で示したピン12を枠側羽根板11の筒部11Aの内部に上方から挿入する。これにより、玄関ドア1の外枠2への取付作業が終了する。
前述の玄関ドア1の施工現場において、蝶番10の枠側羽根板11をビス15によって側枠部材5の表面5A及び裏板20に結合したときには、図6に示されている裏板20の切除部21の先端部22は、枠側羽根板11の前述した対面部分11Bの外輪郭14の内側に存在している。そして、本実施形態では、工場において、この先端部22にアーク溶接の溶接棒又は溶接ワイヤの先端部を当接させることにより、裏板20を側枠部材5の裏面5Bに接合するためのアーク溶接が行なわれているため、切除部21の先端部22は、枠側羽根板11の対面部分11Bの外輪郭14よりも内側に設けられたアーク溶接のための本実施形態の溶接可能部となっている。
そして、この溶接可能部でアーク溶接が行われることにより生じた図6の溶接部40は、枠側羽根板11の前述した対面部分11Bの外輪郭14よりも内側に存在しているため、この溶接部40による溶接痕が、たとえ側枠部材5の表面5Aに表われることがあっても、この溶接痕を、側枠部材5の表面5Aに配置された枠側羽根板11によって隠すことができる。このため、溶接痕を消すために研磨具等の工具で側枠部材5の表面5Aを仕上げる作業を行う必要がなく、したがって、作業を大幅に省略できて作業性を改善することができる。
また、上述のアーク溶接を行うときには、裏板20は側枠部材5に対して突部27及び孔28による位置決め部29で位置決めされているため、裏板20が側枠部材5に対して移動することを阻止してこのアーク溶接を行えることになり、このため、裏板20を側枠部材5の裏面5Bの所定箇所に正確に接合することができる。
また、本実施形態では、蝶番10の枠側羽根板11は、側枠部材5を貫通してこの枠側羽根板11と裏板20とに達する結合具となっているビス15により、側枠部材5及び裏板20に結合されているため、裏板20には、ビス15が螺入、貫通するねじ孔26Aが形成されているが、裏板20には、ねじ孔26Aを覆うボックス部30Aを有する覆い部材30が取り付けられているため、裏板20が接合されている側枠部材5の裏面5Bが、図2で示したコンクリート9が充填される側枠部材5の内部空間Sを形成する面となっていても、このコンクリート9が裏板20のねじ孔26Aに侵入することを覆い部材30で防止できる。これにより、ビス15によって蝶番10の枠側羽根板11を側枠部材5及び裏板20に確実に結合することができる。
なお、側枠部材5の裏面5Bで形成される内部空間Sにコンクリート9が充填されない玄関ドア1の施工現場については、覆い部材30が取り付けられていない裏板20を用いる。しかし、内部空間Sにコンクリート9が充填されない玄関ドア1の施工現場についても、覆い部材30が取り付けられている裏板20を用いてもよく、これによると、それぞれの玄関ドア1の施工現場で用いる裏板を共通化できることになり、覆い部材30付きの裏板20と、覆い部材30無しの裏板20とを区別して管理、保存等する必要がなくなる。
また、覆い部材30が取り付けられた裏板20を工場から玄関ドア1の施工現場に搬送するとき等において、裏板20に貫通孔として形成されているねじ孔26Aが外力等によって損傷することを覆い部材30によって防止でき、覆い部材30でねじ孔26Aを保護することができる。
上述のように、側枠部材5の裏面5Bで形成される内部空間Sにコンクリート9が充填されない玄関ドア1の施工現場について、覆い部材30が取り付けられていない裏板20を用いる場合には、この裏板20に、覆い部材30を裏板20に固定するための前述した固定用突部32を設ける必要はない。
図8には、以上説明した裏板20の斜視図が示されており、(A)は表面斜視図、(B)は裏面斜視図である。この裏板20は、固定用突部32が設けられているものである。裏板20には、前述したように上下2個の切除部21が形成されているため、上下2個の突片部20E,20Fも設けられ、さらに、それぞれ上下2個ずつの位置決め用突部27と固定用突部32が形成されている。また、裏板20の厚さ方向に貫通した5個のねじ孔26Aが裏板20に設けられているとともに、これらのねじ孔26Aは、バーリング加工によって裏板20に設けられた筒状突部26の内周面となっており、これらの内周面に雌ねじ26Bが形成されている。
なお、前述の説明から分かるように、位置決め用突部27は、側枠部材5の側へ突出しており、固定用突部32及び筒状突部26は、側枠部材5の側とは反対側へ突出しており、したがって、位置決め用突部27と、固定用突部32及び筒状突部26は、互いに裏板20の厚さ方向の反対側へ突出した突部となっている。
図9には、このような裏板20を製造するための工程が示されている。打ち抜き工程50は、図10で示した板金60から上下型61によって第1次裏板素材62を打ち抜くための工程である。本実施形態に係る板金60は、アンコイラーから間欠送りによって順次繰り出されるコイル材であり、板金60の間欠送りのそれぞれの停止時において、上下型61により第1次裏板素材62が板金60から打ち抜かれる。打ち抜き孔63が形成された板金60は、切断具により、1個又は複数個の打ち抜き孔63ごとに切断され、この切断が行われる位置は、図10の一点鎖線による切断位置64として示されている。このように打ち抜き後の板金60を切断することにより、板金60を廃材等として処理する際に、この処理を容易に行えることになる。
図11は、第1次裏板素材62の斜視図であり、(A)は表面斜視図、(B)は裏面斜視図である。この図11に示されているように、第1次裏板素材62には、上下2個の切除部21が形成されている。すなわち、図9の打ち抜き工程50は、上下型61によって板金60から第1次裏板素材62を打ち抜くと同時に、この第1次裏板素材62に切除部21を打ち抜きによって形成する工程にもなっている。
このため、板金60から第1次裏板素材62を打ち抜くための打ち抜き工程と、この第1次裏板素材62に切除部21を形成するための切除部形成工程は、これらの工程が同時に行われる同時工程となっている。したがって、板金60から第1次裏板素材62を打ち抜くための打ち抜き工程とは別の工程として切除部21を第1次裏板素材62に形成するための切除部形成工程を実施することは不要になり、蝶番10の枠側羽根板11によって溶接痕を隠すことができる溶接可能部を設けるための切除部21を、第1次裏板素材62を板金60の打ち抜きで製造するときに、この第1次裏板素材62に効率的に形成できることになる。
また、打ち抜き工程50において、第1次裏板素材62に切除部21が形成されることにより、この第1次裏板素材62に、打ち抜き工程50で自ずと突片部20E,20Fも形成できることになる。
図9の打ち抜き工程50の次に実施される下孔加工工程51は、第1次裏板素材62に図8等で示した筒状突部26をバーリング加工によって形成する作業の前作業として、図12で示す下孔65を形成するための工程であり、この工程51により、第1次裏板素材62におけるそれぞれの筒状突部26を形成する箇所と対応する箇所に下孔65が設けられ、これらの下孔65は、上下型によって第1次裏板素材62を打ち抜くことにより形成される。図12には、5個の下孔65が貫通して形成された第2次裏板素材66が示されており、(A)は表面斜視図、(B)は裏面斜視図である。
図9の下孔加工工程51の次に実施される半抜き及びバーリング加工工程52は、半抜き加工により、第2次裏板素材66に位置決め用突部27及び固定用突部32を形成するとともに、バーリング加工により、第2次裏板素材66における下孔65の箇所と対応する箇所に筒状突部26を形成するための工程である。この工程52は、第2次裏板素材66の上面に接触する高さ位置まで下降した上型を、下型に対してさらに所定量下降させることにより行われる。このため、本実施形態に係る半抜き及びバーリング加工工程52は、位置決め用突部27の突出量と、固定用突部32の突出量と、筒状突部26の突出量とが同じなっている場合に採用される。
そして、この半抜き及びバーリング加工工程52によると、位置決め用突部27及び固定用突部32を形成するための作業と、筒状突部26を形成するための作業とを同時に行うことができ、このため、全体の作業時間を短縮でき、作業効率を向上させることができる。
図13には、位置決め用突部27と固定用突部32と筒状突部26とが形成された第3次裏板素材67が示されており、(A)は表面斜視図、(B)は裏面斜視図である。
図9の半抜き及びバーリング加工工程52の次に実施されるタッピング工程53は、第3次裏板素材67の貫通孔となっているそれぞれの筒状突部26の内周面に、図8等で示した雌ねじ26Bを形成する工程であり、この工程53が実施されることにより、上記貫通孔はねじ孔26Aとなり、そして、第3次裏板素材67は、図8等で示した裏板20となる。
図14は、板金60から2個の第1次裏板素材62を上下型71により同時に打ち抜く実施形態を示している。これらの第1次裏板素材62は、板金60の送り方向である板金60の長さ方向に並べられて板金60から打ち抜かれるとともに、互いに表裏が逆となっている。
2個の第1次裏板素材62を板金60の長さ方向に並べることは、板金60に形成される2個の打ち抜き孔63の形状から分かるように、2個の第1次裏板素材62A,62Bのうち、第1次裏板素材62Aの突片部20Eを、第1次裏板素材62Bの切除部21のために切除される部分の一部とし、第1次裏板素材62Bの突片部20E又は20Fを、第1次裏板素材62Aの切除部21のために切除される部分の一部とすることにより行われる。
これによると、図10の板金60から第1次裏板素材62を1個ずつ打ち抜いた場合に廃棄される板金60の部分を突片部20Eや突片部20Fとして活用することができるため、板金60の歩留まりを向上させることができる。
なお、このようにして2個の第1次裏板素材62を板金60の長さ方向に並べて同時に打ち抜くこと、言い換えると、2個の第1次裏板素材62の一部同士を板金60の長さ方向に重複した部分として打ち抜くことは、図6で説明したように、左右の側辺部20B,20Cの間隔が長さL1となっている裏板20において、この裏板20に形成される切除部21の左右方向の長さをL2とし、この長さL2を長さL1の半分よりも長くしているために、可能となる。
以上のように複数個の第1次裏板素材62を板金60の長さ方向に並べて同時に打ち抜くことは、第1次裏板素材62の個数を3個以上とする場合にも、実施することができる。
なお、図14の実施形態でも、打ち抜き孔63が形成された板金60は、切断位置64において、切断具により切断される。
図15は、図9とは異なる工程によって裏板20を製造する実施形態を示している。図15の打ち抜き及び下孔加工工程80は、板金60の打ち抜きにより、切除部21及び突片部20E,20Fが形成された裏板素材を製造するときに、この裏板素材に、バーリング加工のための図12で示した下孔65も板金60の打ち抜きによって同時に形成するための工程である。
このため、図15の実施形態では、図9の実施形態における打ち抜き工程50と下孔加工工程51とが同時に行われることになり、バーリング加工のための下孔65は、切除部21が形成された裏板素材を板金60から打ち抜くときに、この裏板素材に同時に形成されるため、下孔65だけを形成するための作業時間が不要になり、これにより、裏板20を製造するための全体の時間を短縮することができる。
また、図15の実施形態では、打ち抜き及び下孔加工工程80の次に、位置決め用突部27及び固定用突部32を形成するための半抜き工程81が実施され、この後に、下孔65の箇所と対応する箇所に筒状突部26を形成するためのバーリング加工工程82が実施され、次いで、筒状突部26の内周面に雌ねじ26Bを形成するためのタッピング工程83が行われる。
この実施形態によると、半抜き工程81とバーリング加工工程82は別工程となっており、これらの工程は、それぞれ別の上下型を用いて行われるため、位置決め用突部27及び固定用突部32の突出量と筒状突部26の突出量とが異なる大きさになっている裏板を製造できることになる。
本実施形態に係る裏板20は、以上説明したそれぞれの実施形態により製造することができ、裏板20を製造した後に、この裏板20に図4等で示した覆い部材30を前述の固定部31で固定するための作業を行う。この固定作業は、裏板20のうち、切除部21から外れた箇所に覆い部材30を固定することにより行われ、このように切除部21から外れた裏板20の箇所に覆い部材30を固定することは、言い換えると、裏板20の外輪郭23の内側において覆い部材30を裏板20に固定することは、前述したように、半抜き加工することにより裏板20の突片部20E,20Fに形成された固定用突部32を、覆い部材30の突片部30B,30Cに形成した孔33に挿入した後に、孔33から突出した固定用突部32の先端部に、この先端部を拡大変形させるカシメ加工を行うことにより実施される。
そして、板金の折り曲げで形成される覆い部材30を製造することは、裏板20を製造しているとき、あるいは、裏板20の製造前や製造後に行われている。
以上のようにして実施される裏板20と覆い部材30とからなる裏板構造体の製造方法によると、板金から打ち抜くときに形成された切除部21を覆い部材30で覆うことなく、裏板20に覆う部材30を固定することができる。