本発明の実施の形態について、図面に基づいて以下に説明する。
<前提技術>
まず、本発明の前提となる技術について説明する。図1は、本発明の前提となる技術に係る表示装置の構成を示す断面図である。この表示装置は、右の画像(右眼に対する視差画像、または、第1の観察方向用の画像)、及び、左の画像(右眼に対する視差画像と少しだけ異なる左眼に対する視差画像、または、第2の観察方向用の画像)、すなわち2画像を同時に表示可能である。この表示装置によれば、特殊な眼鏡を用いなくても裸眼で立体画像を視認でき、あるいは、観察方向別に異なる画像を表示できたりすることができる。以下においては、主に、表示装置が、右眼及び左眼の視差画像を表示する場合について説明する。
この表示装置は、後述する裸眼立体画像表示装置と、観察者の頭などの位置(移動)を検出する検出部31と、検出部31の検出結果や映像信号等に基づいてこれらを統括的に制御する制御部32とを備えている。なお、以下の説明においては、図1に示す上下方向を前後方向と呼び、図1に示す左右方向を横方向と呼び、図1での奥行方向を縦方向と呼ぶ。
図1には、裸眼立体画像表示装置の断面構造が示されている。この図1に示すように、裸眼立体画像表示装置は、表示パネル11と、当該表示パネル11の前方(図1において上側)に配置された視差バリアシャッタパネル21(光学誘導部材)とを備えている。
表示パネル11は、マトリクス型表示パネルであり、例えば、有機ELパネル、プラズマディスプレイ装置、液晶ディスプレイが適用される。なお、表示パネル11に液晶ディスプレイが適用される場合には、図示しないが、視差バリアシャッタパネル21は、表示パネル11の後方に配置されてもよい。図1では、液晶ディスプレイを適用した表示パネル11が例として示されており、液晶14と、液晶14を挟み、駆動するサブ画素透明電極12及び対向透明電極15と、サブ画素透明電極12及び対向透明電極15の透明基板にそれぞれ設けられた中間偏光板17及び裏面偏光板16と、裏面偏光板16の後方(図1において下側)に配置されたバックライト3とを備えている。
表示パネル11には、上述の右の画像を表示するサブ画素411a(411)、及び、上述の左の画像を表示するサブ画素411b(411)が、それぞれ遮光壁18で挟まれた状態で、横方向に交互に配置されている。
サブ画素411a及びサブ画素411bの横幅は、互いに同一またはほぼ同一である。
ここでは、隣り合うサブ画素411a及びサブ画素411bは、左右に異なる2画像(左右の視差画像、または、第1及び第2の観察方向用の画像)を表示するサブ画素ペア41を構成しており、このように構成されたサブ画素ペア41は表示パネル11において横方向に所定の均一なピッチで配列されている。なお、この裸眼立体画像表示装置では、サブ画素ペア41は、横方向だけでなく縦方向にも配列されている。
なお、この裸眼立体画像表示装置では、サブ画素ペア41の横幅に対応する横方向の基準ピッチである基準視差バリアピッチPが規定されている。ここでは、サブ画素ペア41を構成するサブ画素411a,411bの中間にある遮光壁18の中央から出て、対応する基準視差バリアピッチP内の中央点を通過した仮想の光線LOが、裸眼立体画像表示装置から正面前方に設計観察距離Dだけ離れた設計視認点DOに集まるように、基準視差バリアピッチPは設定されている。
視差バリアシャッタパネル21は、2枚の透明基板(第1透明基板22及び第2透明基板26)と、それらの間に保持された液晶層24と、第1及び第2透明電極23,25と、第1透明基板22の液晶層24と反対側の面に設けられた表示面偏光板27と、第2透明基板26の表示パネル11側の面に設けられた偏光板とを備えている。ここでは、当該偏光板として、表示パネル11の中間偏光板17が兼用されている。
液晶のモードは、ツイストネマティック(TN)、スーパーツイストネマティック(STN)、インプレインスイッチング(In Plane Switching)、オプティカリーコンペンセイティッドベンド(OCB)などが利用可能である。なお、このうちのいくつかを利用する例については、後で説明する。
第1透明基板22の液晶層24側の表面には、縦方向(図1の奥行方向)に延在する複数の第1透明電極23が形成され、第2透明基板26の液晶層24側の表面には、横方向(図1の左右方向)に延在する複数の第2透明電極25が形成されている。これら複数の第1透明電極23及び複数の第2透明電極25は、液晶層24に電界を印加することにより、液晶層24の液晶を駆動する。
各第1透明電極23は、当該基準視差バリアピッチPの領域内で1つの透明電極を偶数個(ここでは8つ)に分割されてなる各電極に相当している。つまり、本裸眼立体画像表示装置では、複数の第1透明電極23は、各サブ画素ペア41の横方向の基準視差バリアピッチPの領域内において偶数個(ここでは8つ)配列されている。なお、複数の第1透明電極23同士は、特に言及しない限り、互いに電気的に絶縁されているものとする。
一方、複数の第2透明電極25は、サブ画素ペア41の縦方向ピッチで縦方向(図1の奥行方向)に配列されている。
さて、上述した複数の第1及び第2透明電極23,25には、電圧が選択的に印加される。したがって、視差バリアシャッタパネル21においては、第1及び第2透明電極23,25の幅単位で、光透過状態及び遮光状態を切り替え可能となっている。そこで、以下の説明においては、電気的な制御により、第1透明電極23の横幅単位で光透過状態及び遮光状態を切り替え可能な、視差バリアシャッタパネル21における光学的な開口を、サブ開口210と呼ぶ。
本裸眼立体画像表示装置では、上述したように、複数の第1透明電極23が、視差バリアシャッタパネル21において横方向に配列されていることから、複数のサブ開口210は、視差バリアシャッタパネル21において横方向に配列されるものとなっている。また、上述したように、偶数個(ここでは8つ)の第1透明電極23が、視差バリアシャッタパネル21のうちの基準視差バリアピッチPの領域内に配列されていることから、それと同数の偶数個(ここでは8つ)のサブ開口210が、視差バリアシャッタパネル21のうちの基準視差バリアピッチPの領域内に含まれるものとなっている。
図2〜10は、視差バリアシャッタパネル21を示す図である。ここでは、上述と同様に、8つの第1透明電極23が各サブ画素ペア41に対応しているものとし、図2に示すように、(1)〜(8)が付された8つのサブ開口210が、各基準視差バリアピッチPの領域内に含まれている。この偶数個(8つ)のサブ開口210のうち、図3〜図10に示すように、各基準視差バリアピッチPの領域内では、偶数個の半分の数(4つ)の互いに隣り合うサブ開口210を光透過状態にするとともに、残りの半分の数(4つ)のサブ開口210(その他のサブ開口210)を遮光状態にすることによって、上述の任意の数の光透過状態にあるサブ開口210により、1つの総合開口300が視差バリアシャッタパネル21に形成されている。なお、総合開口300(サブ開口210)は、左の画像を表示するサブ画素411bから放出された光と、右の画像を表示するサブ画素411aから放出された光とを互いに異なる方向に誘導する。
図3に示すパターン1では、各基準視差バリアピッチPの領域内において、(1)〜(4)が付された連続した4つのサブ開口210を光透過状態にし、(5)〜(8)のサブ開口210(その他のサブ開口210)を遮光状態にすることによって、光透過状態の4つのサブ開口210により1つの総合開口300を形成している。
ここで、このパターン1において、(1)が付されたサブ開口210を遮光状態にし、(5)が付されたサブ開口210を光透過状態にすると、パターン2と同じ状態となる。
このようにパターン1からパターン2にパターンが遷移した場合には、視差バリアシャッタパネル21において、総合開口300が、サブ開口210のピッチ(以下「サブ開口ピッチΔSW」と呼ぶこともある)で右側に移動する。つまり、総合開口300の一端のサブ開口210を遮光状態にし、総合開口300の他端と隣り合うサブ開口210を光透過状態にすると、総合開口300をサブ開口ピッチΔSWで、当該一端から当該他端に向かう方向に移動させることができる。
なお、後述するように、第1透明電極23同士は多少離れていることから、その間に液晶層24に電界を印加することができない境界部が存在し、厳密には、サブ開口ピッチΔSW=サブ開口の横幅+境界部の横幅となっている。
次に、以上のような本表示装置の動作について簡単に説明する。上述したように、図1に示す検出部31は、観察者の位置(動き)を検出する。制御部32は、検出部31の検出結果に基づいて、表示パネル11及び視差バリアシャッタパネル21を統括的に制御する。具体的には、制御部32は、検出部31の検出結果に基づいて、複数のサブ開口210の中で光透過状態とするものを変更することにより、視差バリアシャッタパネルの横方向における総合開口300の位置を制御する。つまり、本表示装置によれば、観察者の位置が左右に移動した場合には、当該観察者の位置に応じて総合開口300を横方向に移動させることができる。その結果、観察者は、移動していても立体画像を見ることができる。
ここで、配光角度分布(配光輝度分布)のばらつきが大きい場合や、総合開口300の移動が適切でない場合には、移動している観察者は、その立体画像の輝度のばらつき(ちらつき)を感じることになる。このような画像の輝度のばらつきを抑制するためには、以下の条件(C1)〜条件(C3)を満たすことが必要である。具体的には、条件(C1)としてサブ開口210の光透過状態及び遮光状態の切り替えがない観察領域において観察者の左右の眼に対する視差画像の輝度が平坦(一定)であること、条件(C2)として一方の眼に対する視差画像が観察される領域において、他方の眼に対する視差画像が観察されない範囲があること、条件(C3)として総合開口300の移動に伴うサブ開口210の光透過状態及び遮光状態の切り替えが行われても、観察者の移動経路上において輝度が平坦(一定)であること、が必要である。そこで、以上の3つの条件を満たす構成について、以下説明する。
<条件(C1)>
まず、条件(C1)を満たす構成について説明する。ここでは、図11を用いて、右画像表示用のサブ画素411aを出て、視差バリアシャッタパネル21の総合開口300を通過(透過)した光の配光角度分布を考える。なお、SWは総合開口300の開口横幅(以下「総合開口幅」)を示し、GWはサブ画素411の発光域横幅(以下「サブ画素幅」)を示し、BWは遮光壁18の横幅(以下「遮光壁幅」)を示す。
また、この図11では、便宜上、設計観察距離Dを、視差バリアシャッタパネル21とサブ画素411との距離L(画素−バリア間距離L)に比べて同程度に示しているが、実際には、設計観察距離Dは画素−バリア間距離Lに比べて100〜1000倍程度大きい。また、説明を簡単化するため、サブ画素411からの放射光は位置及び放射角度によらず均一であるものとし、視差バリアシャッタパネル21の表面における屈折はないと仮定する。このように仮定すると、サブ画素411の輝度に対して、図中の光線の見た目の角度の大きさは意味が無く、当該光線のサブ画素411及び総合開口300の相対的な位置関係に意味があるものとなる。
以上を前提にして、右画像表示用のサブ画素411aから放射された光の、裸眼立体画像表示装置から設計観察距離Dだけ離れた仮想スクリーン100上での輝度分布(照度分布)について説明する。
図11に示すサブ画素411aの右端の一点から放射された光線L1,L2は、総合開口300を通過し、仮想スクリーン100上の位置P1と位置P2との間の斜線ハッチングで示される領域を照射する。同様に、サブ画素411aの左端の一点から放射された光線L3,L4は、総合開口300を通過し、仮想スクリーン100上の位置P3と位置P4との間の領域を照射する。なお、ここで照射される領域は、便宜上、図11の上側に少しずらして斜線ハッチングで示している。同様に、サブ画素411aでの右端及び左端以外の任意の一点から放射された光線も、総合開口300を通過して同程度の領域を照射する。なお、ここで照射される領域は、斜線ハッチングで示された二つの領域の間に連続的に示されている。
仮想スクリーン100でのサブ画素411aの輝度分布は、以上のような斜線ハッチングで示される領域の重なりを、横方向の位置ごとに累積していくことにより得られる。したがって、サブ画素411aからの光からは、図11に示す輝度分布LPが仮想スクリーン100上に形成される。なお、この図11においては、輝度分布LPの線が図の上側に位置するほど、その位置での輝度が高いことを意味している。なお、以下の図のいくつかにおいても、輝度分布を同様に示している。
さて、輝度分布LPにおいては、位置P2と位置P3との間は平坦となっているが、位置P1と位置P2との間、及び、位置P3と位置P4との間は勾配が生じている。
ここで、上述の条件(C1)を満たす、つまり配光角度分布によらず、なるべく輝度が平坦(一定)となるためには、輝度分布LPの平坦部分が広くなるように、位置P2と位置P3との距離を長くすることが必要である。つまり、光線L2の放射角度θ1と光線L3の放射角度θ2とが平行でなく、それらの間の差がなるべく大きくなることが必要である。すなわち、画素の中の発光領域の横幅(サブ画素411の横幅)であるサブ画素幅GWと、総合開口幅SWとの差がなるべく大きいことが必要である。このようにすれば、輝度が一定となる角度範囲が広がる。
図12は、表示パネル11のサブ画素411を出て、視差バリアシャッタパネル21の総合開口300を通過した光の配光角度分布の計算結果を示す図である。ここで、表示パネル11のサブ画素ピッチGWは0.050mm、視差バリアシャッタパネル21の基準視差バリアピッチPは0.100mm、画素−バリア間距離Lは1.000mm、総合開口幅SWは基準視差バリアピッチPの50%である0.050mmと設定した。また、表示パネル11及び視差バリアシャッタパネル21の屈折率は1.5と設定した。以上の条件において、遮光壁幅BWを、基準視差バリアピッチPの20%、15%、10%として変化させたときの配光角度分布が、図12に示されている。
図13は、条件をより様々に変えながら、輝度平坦領域角度幅など様々な特性を調べた結果を示す図である。この図13に示すように、条件1,2,3において、幅の差|GW−SW|をそれぞれ0.020mm,0.015mm,0.010mmとした場合には、輝度平坦領域角度幅は、2度,1.5度,1度となっている。つまり、幅の差が大きいほど輝度分布の平坦部が広くなるという上述の説明と一致する結果が得られた。したがって、条件(C1)を満たす、つまり輝度平坦領域角度幅を大きくするためには、サブ画素幅GWと総合開口幅SWとの差を大きくすることが必要である。
<条件(C2)>
次に、上述の条件(C2)を満たす構成、つまり一方の眼に対する視差画像が観察される領域において、他方の眼に対する視差画像が観察されない範囲があることを満たす構成について説明する。ここでは図14を用いて、左画像表示用のサブ画素411bを出て、総合遮光部400によって、遮光されなかった余分な光の配光角度分布を考える。なお、総合遮光部400は、遮光状態のサブ開口210により視差バリアシャッタパネル21に形成される遮光部であり、SBWは、当該総合遮光部400の横幅(以下「総合遮光部幅」)を示す。
なお、この図14においても、図11と同様に、便宜上、設計観察距離Dを、画素−バリア間距離Lに比べて同程度に示しているが、実際には、設計観察距離Dは画素−バリア間距離Lに比べて100〜1000倍程度大きい。また、説明を簡単化するため、サブ画素411aからの放射光は位置及び放射角度によらず均一であるものとし、視差バリアシャッタパネル21の表面における屈折はないと仮定する。このように仮定すると、図11と同様に、サブ画素411aの輝度に対して、図中の光の経路を示す線の見た目の角度の大きさは意味が無く、当該線のサブ画素411a,総合開口300及び総合遮光部400の相対的な位置関係に意味があるものとなる。
以上を前提にして、左画像表示用のサブ画素411bから放射された余分な光の、仮想スクリーン100での輝度分布について説明する。
図14に示すサブ画素411bの右端の一点から放射された破線で示される光線LB1,LB2は、総合遮光部400により遮光されることから、仮想スクリーン100上の位置P15と位置P16との間には光が到達しない。同様に、サブ画素411bの左端の一点から放射された破線で示される光線LB3,LB4は、総合遮光部400により遮光されることから、仮想スクリーン100上の位置P17と位置P18との間には光が到達しない。したがって、サブ画素411bからの余分な光からは、図14に示す輝度分布LBPが仮想スクリーン100上に形成される。
ここで、上述の条件(C2)を満たすための必要条件として、視差画像が観察されない完全遮光角度範囲が存在するための条件を考える。この条件を満たすためには、位置P17が位置P16よりも左側に存在することが必要である。そして、この条件が、任意の設計観察距離Dに対して満たされるためには、光線LB2の放射角度θ3が、光線LB3の放射角度θ4以上となることが必要である。つまり、総合遮光部幅SBWが、サブ画素幅GW以上となることが必要である。なお、完全遮光角度範囲は、幅の差|SBW−GW|が大きくなるにつれて広くなる。
次に、上述の条件(C2)を満たすための必要条件として、右画像表示用のサブ画素411aからの光を完全遮光角度範囲に内在させるための条件を考える。この条件を満たすためには、総合遮光部幅SBWが、総合開口幅SW以上であることが必要である。ここで、総合遮光部幅SBWが総合開口幅SWと等しい(SBW=SW)場合に、位置ズレをなくすためには、サブ画素411aの中央ズレが総合開口300の中央と総合遮光部400の中央のズレと等しくなる、つまり基準視差バリアピッチPの半分であることが必要である。これは、サブ画素411a及びサブ画素411bの左右の遮光壁幅BWが互いに等しいことが必要であることを意味している。
例えば、総合遮光部幅SBWと、総合開口幅SWとが、それぞれ基準視差バリアピッチPの半分であって互いに等しく、表示パネル11の遮光壁幅BWが均一である場合には、サブ画素411a,411bの一方の完全遮光角度範囲と、他方の輝度平坦領域は重なる。
先ほど説明した図13には、条件を様々に変えながら、輝度平坦領域及び完全遮光域の角度幅を調べた結果が示されている。ここで、条件1〜6のいずれにおいても、視差バリアシャッタパネル21の基準視差バリアピッチPを0.100mmとしている。
条件1〜3では、視差バリアシャッタパネル21の総合開口幅SWを、サブ画素幅GWよりも大きくしている。ここでは、総合開口幅SWを基準視差バリアピッチPの半分である0.050mmで一定とし、条件1,2,3において、サブ画素幅GWをそれぞれ0.030mm,0.035mm,0.040mmとしている。この場合には、条件1,2,3になるにつれて幅の差|SW−GW|が順に小さくなることから、上述したように、輝度平坦領域角度幅も順に狭くなっている。
なお、この図13には、相対ピーク輝度も示されている。一般に、相対ピーク輝度に対応する平均輝度は、基準視差バリアピッチPに対するサブ画素幅GWの割合(GW/P)か、基準視差バリアピッチPに対する総合開口幅SWの割合(SW/P)のうち小さい方を、表示パネル11のサブ画素411の輝度に乗じた値となる。そこで図13には、これら割合も示している。なお、条件1〜3においては、SW/PよりもGW/Pの方が小さいことから、SW/Pではなく、GW/Pが、相対ピーク輝度と対応するものとなっている。
また、条件1〜3において、総合遮光部幅SBW(=P−SW)は、0.050mmとなる。そして、条件(C2)で説明したように、完全遮光角度範囲(完全遮光角度幅)は、幅の差|SBW−GW|に対応するものとなっている。
次に、条件4〜6について説明する。条件4〜6では、条件1〜3とは逆に、サブ画素幅GWを、視差バリアシャッタパネル21の総合開口幅SWよりも大きくしている。ここでは、幅の差|SW−GW|を一律に0.02mmとし、条件4,5,6、において、サブ画素幅GWをそれぞれ0.040mm,0.045mm,0.050mmとし、総合開口幅SWをそれぞれ0.020mm,0.025mm,0.030mmとしている。この場合には、条件4〜6において、幅の差|SW−GW|が一定であることから、輝度平坦領域角度幅も一定となる。
また、条件4〜6の相対ピーク輝度については、GW/PよりもSW/Pの方が小さいことから、割合GW/Pではなく、割合SW/Pが、相対ピーク輝度と対応するものとなっている。また、条件4,5,6において、総合遮光部幅SBW(=P−SW)は、それぞれ0.080mm,0.075mm,0.070mmとなる。そして、条件(C2)で説明したように、完全遮光角度範囲(完全遮光角度幅)は、幅の差|SBW−GW|に対応するものとなっている。ここで、条件4,5,6のそれぞれの完全遮光角度幅である4度,3度,2度は、条件1〜3の完全遮光角度幅の最大値2度以上となっている。
なお、条件1と条件6とを比較すると、一方の条件は、他方の条件においてサブ画素幅GWの値と、総合開口幅SWの値とを入れ替えたものとなっているが、両者の輝度平坦領域角度幅、相対ピーク輝度、完全遮光角度幅は互いに同じであることが分かる。また、ここでは示さないが、例えば、条件2において、サブ画素幅GWの値と、総合開口幅SWの値とを入れ替えた条件においても、条件2と同じ輝度平坦領域角度幅、相対ピーク輝度、完全遮光角度幅が得られる。
以上のことをまとめると、輝度を高くする観点から、GW/P及びSW/Pのうち大きい一方を40〜50%に設定することが好ましい。そして、他方(小さい方)は、大きくなりすぎると、|GW−SW|が小さくなって輝度平坦領域角度が狭まり、逆に小さくなりすぎると、相対ピーク輝度が低下してしまうことから、これらを勘案して適切に設定することが好ましい。
なお、実際の液晶ディスプレイでは遮光壁18が存在するため、サブ画素幅GWは、基準視差バリアピッチPの半分より小さくなる。したがって、液晶ディスプレイにおいては、視差バリアシャッタパネル21における総合開口幅SWをサブ画素幅GWよりも大きくするほうが、総合開口幅SWとサブ画素幅GWとを大きくすることができる。
<条件(C3)>
次に、上述の条件(C3)を満たす構成、つまり総合開口300の移動に伴うサブ開口210の光透過状態及び遮光状態の切り替えが行われても、観察者の移動経路上において輝度が平坦(一定)であることを満たす構成について説明する。ここでは図15を用いて、総合開口300の移動に伴う、右画像表示用のサブ画素411aを出た光の配光角度分布の変化を考える。
なお、この図15においても、図11及び図14と同じ前提が適用されているものとする。また、ここでは、条件(C1)の結果を踏まえて、仮想スクリーン100上において輝度が一定となる領域は広くなる、つまり配光角度分布における平坦部が広くなるように、総合開口幅SWをサブ画素幅GWよりも大きくしている。
以上を前提にして、右画像表示用のサブ画素411aから放射された光の、仮想スクリーン100での輝度分布について説明する。
図15では、3つのサブ開口210a,210b,210cにより総合開口300が形成されている。サブ画素411aから放射された光線は、サブ開口210aを通過し、仮想スクリーン100上に、輝度分布LP1を形成する。同様に、サブ画素411aから放射された光線は、サブ開口210b,210cを通過し、仮想スクリーン100上に、輝度分布LP2,LP3を形成する。そして、これら輝度分布LP1,LP2,LP3を合計して得られる総合輝度分布TLP1が、仮想スクリーン100上に形成される実際の輝度分布となる。
この総合輝度分布TLP1の平坦部の左端に対応する仮想スクリーン100上の位置P22を決めているのは、サブ画素411aの左端の一点から放射され、1つのサブ開口210aの左端を通過している光線L5である。また、当該平坦部の右端に対応する仮想スクリーン100上での位置P23を決めているのは、サブ画素411aの右端の一点から放射され、サブ開口210aの右端を通過している光線L6である。
次に、サブ開口210aを遮光状態にし、サブ開口210dを光透過状態にすることにより、3つのサブ開口210b,210c,210dにより総合開口300を形成した状態を考える。つまり、上述の状態から総合開口300をサブ開口ピッチΔSWで右側に移動させた状態を考える。このときには、輝度分布LP1は形成されずに、サブ画素411aからの光線がサブ開口210を通過して輝度分布LP4が形成される。そして、これら輝度分布LP2,LP3,LP4を合計して得られる総合輝度分布TLP2が、総合開口300を通過した光が仮想スクリーン100上に形成する輝度分布となる。
この総合輝度分布TLP2の平坦部の左端に対応する仮想スクリーン100上での位置P32を決めているのは、サブ画素411aの左端の一点から放射され、サブ開口210bの左端を通過している光線L7である。ここで、仮に位置P32が位置P23よりも右側に存在する場合には、総合輝度分布TLP1の平坦部と、総合輝度分布TLP2の平坦部との間に谷間が生じることになり、条件(C3)を満たすことができなくなる。
したがって、条件(C3)を満たすためには、位置P32が位置P23よりも左側に存在することが必要である。ここで、仮に、光線L5と光線L7との間の角θ5が、光線L5と光線L6との間の角θ6よりも大きい場合(図15に示す場合)に、設計観察距離Dが大きくなると、光線L7と光線L6とが交差し、位置P32が位置P23よりも右側に存在してしまうことになる。特に、図15においては、設計観察距離Dは、便宜上短くされていることから、通常、この現象が生じてしまうと考えられる。
そこで、条件(C3)が、任意の設計観察距離Dに対して満たされるためには、図15に示すような状態ではなく、光線L5と光線L7との間の角θ5が、光線L5と光線L6との間の角θ6以下であることが必要である。そして、角θ5をサブ開口ピッチΔSWと近似した場合には、角θ6を総合開口幅SWとサブ画素幅GWとの差と近似することができることから、サブ開口ピッチΔSWが、総合開口幅SWとサブ画素幅GWとの差以下であることが必要である。
ここで、観察者が図15に示す矢印の方向(右方向)に移動した場合、検出部31が、観察者の位置(動き)を検出する。そして、制御部32が、その検出結果に基づいて、観察者の左眼が、位置P32とP23との間に位置するときに、視差バリアシャッタパネル21のサブ開口210aを遮光状態にしてサブ開口210dを光透過状態にするように制御する。本表示装置は、以上のように構成されていることから、観察者は移動していても、画像の輝度の変化を感じないで立体画像を視認し続けることができる。
次に、以上に説明した内容を図16〜図19を用いて詳細に説明する。なお、図16〜図19は、サブ開口210の切り替え動作に伴う配光角度分布の変化についての計算結果を示す。ここで、図16〜図18に係る計算を行う際の条件は、図13に係る条件1とほぼ同じとしている。ここでは、視差バリアシャッタパネル21の基準視差バリアピッチPを0.100mm、画素−バリア間距離Lは1.000mm、総合開口幅SWを基準視差バリアピッチPの半分である0.050mm、サブ画素幅GWを0.030mm、幅の差|GW−SW|を0.020mmとしている。
図16、図17、図18では、この条件1において、サブ開口ピッチΔSWを基準視差バリアピッチPの1/N(N:4以上の偶数)とした条件の計算結果を示しており、具体的には、それぞれ1/4(N=4)、1/6(N=6)、1/8(N=8)としている。なお、総合開口幅SWは、基準視差バリアピッチPの半分の0.050mmであるので、総合開口300は(N/2)個のサブ開口210で構成されていることになる。
ここで、図16に係るN=4である条件(以下「条件1−1」と呼ぶ)においては、サブ開口ピッチΔSWが0.025mm(=P/N)であり、幅の差|GW−SW|=0.020mmよりも大きいことから、条件(C3)を満たす構成とはなっていない。一方、図17に係るN=6である条件(以下「条件1−2」と呼ぶ)においては、サブ開口ピッチΔSWが約0.017mm(=P/N)であり、幅の差|GW−SW|=0.020mmよりも小さいことから、条件(C3)を満たす構成となっている。また、図18に係るN=8である条件(以下「条件1−3」と呼ぶ)においては、サブ開口ピッチΔSWが約0.0125mm(=P/N)であり、幅の差|GW−SW|=0.020mmよりも小さいことから、条件(C3)を満たす構成となっている。
さて、図16〜図18には、個々のサブ開口210を通過した光による輝度分布が実線で示されており、それらを重ねて得られる、平坦部を有する総合輝度分布が破線で示されている。また、同図16〜18には、総合開口300をサブ開口ピッチΔSWで右側に移動させた場合の、総合開口300を通過した光による総合輝度分布などが、二点鎖線で示されている。
また、各図中では、仮定の観察者の眼の位置の切り替えポイントが一点鎖線で示されている。検出部31が、観察者の眼が右方向に移動し切り替えポイントを超えたことを検出すると、制御部32の制御により、総合輝度分布が形状を変えずに右側に移動するものとする。以上を前提にして、条件1−1〜条件1−3の計算結果について、以下説明する。
条件1−1は、条件(C3)を満たす構成ではないことから、図16に示すように、切り替り前後の総合輝度分布の平坦部同士の間に勾配が生じている。したがって、観察者の眼が切り替えポイントを超えた時からサブ開口210の切り替えが完了するまでに時間差がない場合であっても、輝度の変化を観察者に感じさせるものとなっている。また、当該時間差が長い場合には、さらに大きな輝度の変化ΔL1を観察者に感じさせるものとなっている。
これに対し、条件1−2は、条件(C3)を満たす構成であることから、図17に示すように、切り替えポイント近傍の総合輝度分布の平坦部同士は重なっており、勾配は存在していない。したがって、観察者の眼が切り替えポイントを超えた時からサブ開口210の切り替えが完了するまでに時間差がない場合には、輝度の変化を観察者に感じさせないものとなっている。また、当該時間差が多少長くても、比較的小さな輝度の変化ΔL2しか観察者に感じさせないものとなっている。
同様に、条件1−3は、条件(C3)を満たす構成であることから、条件1−3と同様に、総合開口300を移動させるサブ開口210の切り替えに時間差がない場合には、輝度の変化を観察者に感じさせないものとなっている。また、当該時間差が多少長くても、比較的小さな輝度の変化ΔL3しか観察者に感じさせないものとなっている。なお、この条件1−3の輝度の変化ΔL3は、条件1−2の輝度の変化ΔL2よりも小さくなっている。したがって、輝度の変化をなるべく抑制することができるように、サブ開口ピッチΔSWは、なるべく小さい方が好ましい。
図19は、以上の算出結果のまとめを示す図である。この図では、切り替り前後の総合輝度分布の平坦部同士が離れていることを「×」で示し、当該平坦部同士が狭い範囲で重なっていることを「○」で示し、当該平坦部同士が広い範囲で重なっていることを二重丸で示している。
また、図19には、図13に係る条件3において、サブ開口ピッチΔSWを、それぞれ基準視差バリアピッチPの1/6(N=6)、1/8(N=8)、1/10(N=10)とした計算結果も示している。条件3−1(N=6)においては、サブ開口ピッチΔSWが約0.017mm(=P/N)であり、幅の差|GW−SW|=0.010mmよりも大きいことから、平坦部同士の重なりは無い。また、条件3−2(N=8)においては、サブ開口ピッチΔSWが0.0125mm(=P/N)であり、幅の差|GW−SW|=0.010mmよりも大きいことから、平坦部同士の重なりは無い。一方、図17に係る条件3−3(N=10)においては、サブ開口ピッチΔSWが0.010mm(=P/N)であり、幅の差|GW−SW|=0.010mmと同じであることから、平坦部同士が重なっている。
以上のことから、条件(C3)を満たすためには、サブ開口ピッチΔSWを小さくする必要があることが分かる。ただし、現在の生産技術において、第1透明電極23の分断幅を1μm程度以下にすると、製造プロセスの設備コストの上昇や絶縁不良の発生頻度を高めてしまうことから、サブ開口ピッチΔSWは4μm以上であることが望ましい。
さらに、ここで、表示装置の現実的な使用状況を想定すると、観察者の観察位置に応じて、立体視域を制御する必要性が高い裸眼立体画像表示装置としては、一人の観察者が、固定のディスプレイを見る場合であり、かつ、対角10〜20インチ程度の中型ディスプレイでのサブ画素幅GWは0.040〜0.100mmである場合と考えられる。この場合、基準視差バリアピッチPは0.080mm〜0.200mmとなる。
そうすると、以上のようにサブ開口ピッチΔSWを4μmとし、基準視差バリアピッチPを0.080〜0.200mmとする場合には、サブ開口ピッチΔSWは、基準視差バリアピッチPの2%〜5%となる。したがって、所望のサブ開口ピッチΔSWを得るための現実的な分割数Nとしては、0.080〜0.200mmの基準視差バリアピッチPのそれぞれの値に応じて、最大で、20〜50程度であるということになる。
ただし、分割数Nが増えるにつれて、視差バリアシャッタパネル21における第1透明電極23同士の間の境界部の幅の合計が増加する。この境界部は液晶層24に電界を印加できない部分であり、境界部を光透過可能にすると光漏れが生じて3Dクロストークが悪化し、逆に、境界部を光吸収体で遮光可能にすると光透過係数が低下してしまう。
図20に、分割数Nによる総合相対ピーク輝度(対画素発光部輝度)の関係を示す。ここでは、境界部が光吸収体からなるものとし、当該境界部(以下「境界遮光部」と呼ぶ)の増加するほど透過率は低下するものとする。
また、ここでは分断幅を1μmとし、境界遮光部はその2倍程度(ここでは2μm)としている。また、基準視差バリアピッチPは0.100mm、総合開口幅SWは0.050mm(50%)で一定とし、サブ画素幅GWと総合開口幅SWとの差がちょうどサブ開口ピッチΔSWに等しくなる、つまりSW−GW=ΔSWとなるようにしている。
条件7−1〜条件7−7に示すように、分割数Nが大きくなるにつれてサブ開口ピッチΔSWは小さくなっていくが、ここではGW=SW−ΔSW、かつ、総合開口幅SWを一定としていることから、サブ画素幅GWが大きくなっていき、それに応じて相対ピーク輝度(図の上から4段目)も大きくなる。その結果、条件7−1〜条件7−4においては、分割数Nが大きくなるにつれて、総合相対ピーク輝度が大きくなる。しかし、分割数Nが大きくなるにつれて、境界遮光部の面積比率が大きくなり、分割数Nがある程度大きくなると、境界遮光部の面積比率の増加に起因する総合相対ピーク輝度の低下が、相対ピーク輝度の上昇に起因する総合相対ピーク輝度の上昇よりも顕著となる。その結果、条件7−4〜条件7−7に示されるように、分割数Nが大きくなるにつれて、総合相対ピーク輝度が小さくなる。
ここでの結果は、分割数N=10の場合に、総合相対ピーク輝度は最大値をとり、分割数N=6〜18の場合に、総合相対ピーク輝度が30%を超えている。なお、基準視差バリアピッチPが0.100mmよりも小さく、境界遮光部の幅が2μmより大きい場合には、総合相対ピーク輝度が最大となる分割数Nは小さくなり、逆に、基準視差バリアピッチPが0.100mmよりも大きく、境界遮光部の幅が2μmより小さい場合には、総合相対ピーク輝度が最大となる分割数Nは大きくなる。
<まとめ>
以上のような表示装置では、視差バリアシャッタパネル21のサブ開口210のピッチが、表示パネル11のサブ画素411の横幅と、視差バリアシャッタパネル21の総合開口300の横幅との差以下となっている。したがって、切り替り前後の輝度分布の平坦部間の谷間の発生を抑制することができることから、移動中の観察者に感じさせる画像の輝度の変化を無くし、ちらつきを抑制することができる。
また、上述したように、基準視差バリアピッチPに対するサブ画素幅GWの割合(GW/P)と、基準視差バリアピッチPに対する総合開口幅SWの割合(SW/P)とのいずれか大きいほうは、40〜50%に設定することが望ましい。また、サブ開口ピッチΔSWは、基準視差バリアピッチPの6〜18分割が適当であることから、サブ開口ピッチΔSWは、基準視差バリアピッチPの10%〜25%程度が適当である。つまり、割合(GW/P)及び割合(SW/P)のいずれか小さい一方は、大きい他方から10%〜25%差し引いた値に設定することが適当である。ただし、透過率の半減をなるべく避けることができるように、当該小さい一方は、当該大きい他方から10%〜20%差し引いた値に設定することが望ましい。
以上のように設定することにより、光利用効率を高めることができ、観察者の位置に応じて総合開口の端に位置するサブ開口210の遮光と光透過を切り替えて総合開口300をずらす際の画像の輝度変化を無くし、観察者にちらつきを感じさせないようにすることができる。
なお、上述したように、図1に示す検出部31は、観察者の位置(動き)を検出する。
制御部32は、検出部31の検出結果に基づいて、サブ開口210の中で光透過状態とするものを変更することにより、視差バリアシャッタパネル21の横方向における総合開口300の位置を制御する。つまり、本表示装置によれば、観察者の位置が左右方向に移動した場合には、当該観察者の位置に応じて総合開口300を横方向に移動させることができる。その結果、観察者は、移動していても立体画像を見ることができる。ただし、観察者が表示装置の正面から大きく傾いた位置に移動した場合など、検出部31が観察者の位置を検出できない場合がある。このような場合に、視差バリアシャッタパネル21の総てのサブ開口210を光透過状態にし、同時に、表示パネル11のサブ画素411a及びサブ画素411bに同じ画像データを表示するように構成れば、2次元画像を表示することもできる。したがって、このような構成によれば、検出部31の動作不良時も確実に画像を表示することができる。
この際、表示パネル11のサブ画素411a及びサブ画素411bの全体で一つの2次元画像データを表示するようにしてもよい。この場合には、検出部31の動作不良時も確実に通常の2次元画像を表示することができる。
<実施の形態1>
次に、本発明の実施の形態1に係る裸眼立体画像表示装置について説明する。
前提となる技術で説明した裸眼立体画像表示装置においては、視差バリアシャッタパネル21の縦方向に延在する第1透明電極23の数が、表示パネル11の縦方向に延在する配線数のN/2倍となっており、比較的多くなっている。このような構成では、視差バリアシャッタパネル21でのセグメント方式の駆動は困難であり、また電圧を外部から印加するためのフレキシブル基板回路との接合点数が増え、接合部ピッチが狭くなることから実装作業が多少困難になる。あるいは、駆動用のICの必要数が増え、部材コストが増加する。また、観察距離が設計観察距離Dと異なる場合に、輝線や暗線と視認される局所的な輝度の変化によるチラツキを感じる危険性がある。
そこで、本発明の実施の形態1に係る裸眼立体画像表示装置においては、これらの問題を解決することが可能となっている。なお、以下、本実施の形態に係る裸眼立体画像表示装置の説明においては、前提となる技術で説明した構成要素と同一または類似するものについては同じ符号を付し、異なる点を中心に説明する。
図21は、向きを90度回転させたときの、本実施の形態に係る裸眼立体画像表示装置の視差バリアシャッタパネル21の構成を示す平面結線図である。本実施の形態では、視差バリアシャッタパネル21の表示エリアを横方向(図21の上下方向)に分割してなる第一の共通駆動エリア251a、ならびに、第二の共通駆動エリア251bが設けられている。同様に、第二の共通駆動エリア251bの右側には第三の共通駆動エリア251cがあり、さらに複数の共通駆動エリア251が設けられているが、ここでは第二の共通駆動エリア251cの一部までしか図示していない。
そして、1つの共通駆動エリア251に、横方向(図21の上下方向)において互いに隣り合う第1のサブ画素ペア41a、及び、第2のサブ画素ペア41bが属している。なお、図21では、便宜上、5組のサブ画素ペア41だけを示しているが、他の領域においても同様であるため、その図示は省略している。
第1透明電極23は、縦方向(図21の左右方向)に延在している。そして、複数の第1透明電極23は、各サブ画素ペア41に対応した基準視差バリアピッチP内で偶数であるN(N=8)分割されている。つまり、複数の第1透明電極23は、各サブ画素ペア41に対応させて横方向に偶数個N(ここでは8つ)配列されている。ここで、総合開口300を形成する配線数はN/2(ここでは4つ)とする。
そして、本実施の形態では、1つの共通駆動エリア251内では、第1のサブ画素ペア41aに対応する偶数個N(8つ)の第1透明電極23のそれぞれと、第2のサブ画素ペア41bに対応する偶数個N(8つ)の第1透明電極23のそれぞれとが、サブ開口210の位置を対応させて電気的に接続されている。
例えば、第1のサブ画素ペア41aにおける番号(1)が付された第1透明電極23は、第1のサブ画素ペア41aにおける番号(1)から数えてN本目(ここでは8本目)の、第2のサブ画素ペア41bにおける同番号(1)が付された第1透明電極23と、共通配線201及びコンタクトホール202を介して電気的につながれている。同様に、第1のサブ画素ペア41aにおける(2)〜(N)(ここでは8)が付された第1透明電極23は、それぞれから数えてN本目の第2のサブ画素ペア41bにおける同番号(2)〜(N)(ここでは8)が付された第1透明電極23(サブ開口210の位置が対応する第1透明電極23)と、共通配線201及びコンタクトホール202を介してそれぞれ電気的につながれている。ここではM個(Mは正の整数、ここでは4)のサブ画素ペア41内における同番号が付された第1透明電極23(サブ開口210の位置が対応する第1透明電極23)と、共通配線201及びコンタクトホール202を介してそれぞれ電気的につながれている。すなわち、第一の共通駆動エリア251a内では、第1透明電極23がN本おきに、共通配線201及びコンタクトホール202を介して、それぞれ、M本が電気的につながれている。なお、第1透明電極23が「N本おきに」電気的につながれるとは、1本目の第1透明電極23、(N+1)本目の第1透明電極23、(N・2+1)本目の第1透明電極23、(N・3+1)本目の第1透明電極23、・・・(N・M+1)本目の第1位透明電極23が電気的に接続されることを表す。つまり、電気的に接続される第1透明電極23と第1透明電極23との間に、電気的に接続されない第1透明電極23が(N−1)本配置されるように、第1透明電極23がN本周期で接続されることを表す。
さらに、第一の共通駆動エリア251aの右端には、(N/2)本(ここでは4本)の番号(1)〜(4)が付された第1透明電極23が付け加えられている。これら4本の第1透明電極23も同様に、同番号が付された第1透明電極23と、共通配線201及びコンタクトホール202を介してそれぞれ電気的につながれている。ここでも、第1透明電極23がN本おきに(N本周期で、間に(N−1)本空けて)、共通配線201及びコンタクトホール202を介して、それぞれ、電気的につながれているとういう関係は維持されている。
そして、番号(1)〜(8)が付された第1透明電極23と接続された8つの共通配線201は、8つの端子La1〜La8とそれぞれ接続されている。したがって、共通配線201及びコンタクトホール202を介してそれぞれ電気的につながれている第1透明電極23の数は、番号(1)から(4)が付された第1透明電極23では(M+1)個であり、番号(5)から(8)が付された第1透明電極23ではM個である。ここでは、M=N/2(ここでは4つ)としている。
なお、第二の共通駆動エリア251bにおいても、番号(9)〜(16)が付された第1透明電極23の次に、また、番号(9)〜(16)が付された第1透明電極23が配置されており、これが、M回繰り返されている。そして、第二の共通駆動エリア251bの右端には、(N/2)本(ここでは4本)の番号(9)〜(12)が付された第1透明電極23が付け加えられている。これら4本の第1透明電極23も同様に、同番号が付された第1透明電極23と、共通配線201及びコンタクトホール202を介してそれぞれ電気的につながれている。ここでも、第1透明電極23がN本おきに(N本周期で、間に(N−1)本空けて)、共通配線201及びコンタクトホール202を介して、それぞれ、電気的につながれているとういう関係は同じである。これら、番号(9)〜(16)が付された第1透明電極23と接続された8つの共通配線201は、8つの端子La9〜La16とそれぞれ接続されている。さらに、第三の共通駆動エリア251cにおいても同様に、番号(17)〜(24)が付された第1透明電極23と接続された8つの共通配線201は、8つの端子La17〜La24とそれぞれ接続されている。
このような表示装置によれば、端子La1〜La8に電圧を選択的に印加することにより、第一の共通駆動エリア251a内の同じ番号が付された第1透明電極23に、同一の電圧を一律に印加することができ、かつ、異なる番号が付された第1透明電極23に、異なる電圧を印加することができる。他の共通駆動エリア251内においても同様である。
次に第2透明電極25について説明する。図21に示すように、第2透明電極25は、横方向と縦方向に広い一枚の共通電極であり、端子Lb1と接続された共通配線211と接続されている。
なお、端子La1〜La8ならびに端子Lb1は、視差バリアシャッタパネル21の表示領域外の周辺部でフレキシブル基板回路や駆動用ICと接合され、それらを介して外部からの電圧を受けるように構成されている。このような表示装置によれば、サブ開口210を制御するための端子を、第1透明電極23に対して1つずつ設けなくて済む。例えば、図21に示される一つの共通駆動エリア251について、各サブ開口210を駆動しようとする場合には、従来であれば、第1透明電極23に対して36個の端子が必要である。しかし、本実施の形態によれば、第1透明電極23に対して8個(端子La1〜La8)の端子で済む。これは、対応する横幅内の表示パネル11のサブ画素透明電極12の数9よりも少ないため、表示パネル11を駆動するためのICと同じ端子ピッチのICを利用できることになる。さらに、一つの共通配線201及びコンタクトホール202を介して電気的につながれる、第1透明電極23の数Mを増やせば、より端子数を削減できる。
以上のように、本実施の形態に係る表示装置では、第一のサブ画素ペア41aに対応する第1透明電極23は、第2のサブ画素ペア41bに対応する第1透明電極23と電気的に接続されていることから、第1透明電極23の端子の数を減らすことができ、実装作業を容易化することができる。また、第1透明電極23が設けられる基板のサイズを小さくすることができる。さらに、駆動用のICの数を低減することができることから、部材コストを抑制することができる。
次に、以上の構成からなる本実施の形態に係る表示装置の動作について説明する。
図22は、本実施の形態に係る視差バリアシャッタパネル21の第一から第三の共通駆動エリア251aから251cの第1透明電極23の番号(1)〜(20)が付されたものに印加する電圧のパターンを示す図である。図22においては、共通駆動エリア251aと共通駆動エリア251bとの境界、及び共通駆動エリア251bと共通駆動エリア251cとの境界に注目して表している。ここで、本実施の形態では、視差バリアシャッタパネル21の液晶層24の液晶モードとして、ノーマリーホワイトのツイステッドネマティック(TN)モードを想定している。また、総合開口300を形成する配線数はN/2(ここでは4つ)である。なお、第2透明電極25の端子Lb1には0電圧が印加されている。すなわち、図22において、0は電圧無印加状態でありサブ開口210が光透過状態であることを意味し、+は電圧印加状態でありサブ開口210が遮光状態であることを意味する。
次に、具体的な動作について、図22に示す電圧パターンNo1を例に説明する。ここで、共通駆動エリア251毎に、端子に印加する+電圧と0電圧の順番はそれぞれ異なっている。例えば、第二の共通駆動エリア251b内の左端から4個分の端子La9〜La12には+電圧が印加されているが、第三の共通駆動エリア251c内の左端から4個分の端子La17〜La20には0電圧が印加されている。つまり、各共通駆動エリア251に設けられた端子の順番に対する電圧の値が隣り合う共通駆動エリア251間で4個ずれている。このように、隣り合う共通駆動エリア251の端子の電圧を比較したときに、(N/2)個(ここでは4個)ずれた位置の端子が同じ電圧となるように電圧を印加することにより、図21のように(N・M+N/2)本の第1透明電極23がN本おきに(N本周期で、間に(N−1)本空けて)電気的に接続されている構成の表示装置において、図22のような電圧パターン(共通駆動エリア251a〜251cに渡って、遮光状態と光透過状態の第1透明電極23が4個ずつ繰り返されるパターン)をつくることができる。よって、この電圧パターンNo1では、第一の共通駆動エリア251aの第1透明電極23の端子La1〜La4に0電圧を、端子La5〜La8に+電圧をそれぞれ印加し、第二の共通駆動エリア251bの第1透明電極23の端子La9〜La12に+電圧を、端子La13〜La16に0電圧をそれぞれ印加し、さらに、第三の共通駆動エリア251cの第1透明電極23の端子La17〜La20に0電圧を、端子La21〜La24に+電圧を、それぞれ印加している。これにより、それぞれ同じ番号を付された第1透明電極23にそれぞれ0電圧、+電圧が印加されることになる。その結果、図22の電圧パターンNo1を実現することができる。
図23は、図22に示す電圧パターンNo1の電圧を第1透明電極23へ印加した状態を示す図である。電圧パターンNo1は、観察距離が設計観察距離Dと等しい場合に印加する電圧パターンの1つであり、全ての共通駆動エリアに渡って、遮光状態と光透過状態の第1透明電極23が(N/2)個ずつ規則的に繰り返されるパターンである。
電圧パターンNo1の場合、図23に示すように、+が付された第1透明電極23に対応する4つのサブ開口210は遮光状態となり、0が付された第1透明電極23に対応する4つのサブ開口210は光透過状態となる。これにより、図3に示すパターン1と同等の基準視差バリアピッチPの半分の幅の総合開口300が形成された状態となる。そして、図22の電圧パターンNo2からNo8に示すように、+を印加する端子を一つずつずらすことにより、図4から図10に示すように総合開口300の位置をサブ開口ピッチΔSWで移動させることができる。
図24は、視差バリアシャッタパネル21の全体の動作状態を説明する平面図である。
視差バリアシャッタパネル21の表示面内には複数の共通駆動エリア251があり、それぞれにおいて、独立に電圧パターンを設定することにより、総合開口300の幅と位置を制御できる。図24に示す動作状態では、連続する複数の共通駆動エリア251に対し、同じ電圧パターンを用いて電圧を印加する共通バリアモードエリア260が、5個形成されている。この一つの共通バリアモードエリア260の内部では、等しいピッチと等しい幅で総合開口300が左右方向に並んでいる。しかしながら、隣接する共通バリアモードエリア260間では、総合開口300の位相がずれている。位相のずれについては後で詳しく説明する。この共通バリアモードエリア260の境界であるバリアモードシフト境界270の位置は、共通駆動エリア251の幅で移動可能である。
図25は、本実施の形態に係る裸眼立体画像表示装置における、視差バリアシャッタパネル21の総合開口300に対する表示パネル11のサブ画素411の配置の状態を示す平面図である。図25においては、表示パネル11の画素は、明るさの順に第1主要色(白、W)、第2主要色(緑、G)、第3主要色(赤、R)及び第4主要色(青、B)のサブ画素411から構成されている。ここで、各サブ画素411の横幅は全て等しい。縦ストライプ状の視差バリアシャッタパネル21の総合開口300と組み合わせた際に、第1の観察方向にて見える第1列と第3列において、第1列目に第1主要色(W)及び第2主要色(G)が割り当てられたサブ画素411と、第3列目に第2主要色(G)及び第1主要色(W)が割り当てられたサブ画素411とがそれぞれ同一行に配置されている。また、上記組み合わせた際に第2の観察方向にて見える第2列と第4列において、第2列目に第1主要色(W)及び第2主要色(G)が割り当てられたサブ画素411と、第4列目に第2主要色(G)及び第1主要色(W)が割り当てられたサブ画素411とがそれぞれ同一行に配置されている。そして、第1列から第4列にわたって第1主要色(白、W)などが斜めに並ぶように配置している。
ここで、複数の第1透明電極23は、各サブ画素411の二つ分に対応した横方向の基準視差バリアピッチP内で偶数であるN(N=8)分割し、総合開口300を形成する配線数はN/2(ここでは4つ)とし、視差バリアシャッタパネル21における総合開口300の位置が縦ストライプ状に形成されている。
このような表示パネル11の画素構成によれば、視差バリアシャッタパネル21の総合開口300が縦ストライプ状に配列されていても、単色表示を行った際の立体画像の解像度感の劣化を抑制することができる。また、視差バリアシャッタパネル21を全透過状態にした場合に、滑らかな解像度感の2次元画像を提供できる。
<観察者の位置に対する視差バリアシャッタパネルの動作の説明>
図26は、本発明の実施例における、表示パネル11のサブ画素ペア41を構成するサブ画素411aと411bから放射される光の境界が、画面各位置から画面前方の空間に広がっている様子を示す模式図である。サブ画素411aと411bの間の遮光壁18の中央から仮想的に放射された光がこの境界線に一致する。次に、この図26を用いて、本実施の形態に係る表示装置において行われる、視差バリアシャッタパネル21の制御について説明する。
この図26(a)においては、裸眼立体画像表示装置の表示面の左右方向(横方向)に並んだ6点を例に、境界線(仮想の光線)が矢印によって示されている。さらに、図26(a)には、視差バリアシャッタパネル21全体の面内の動作の状態を示す平面図も示されている。図26(b)は、図26(a)の裸眼立体画像表示装置の右端の一点鎖線の楕円AAで囲まれた部分の拡大図であり、仮想の光線の放射方向を決めるサブ画素ペア41と視差バリアシャッタパネルの総合開口300のズレ量を説明する断面拡大図である。
図26(a)において実線で示される境界線LOAは、視差バリアシャッタパネル21のすべての共通駆動エリア251の電極群に同じ電圧パターンNo3の電圧を印加した場合の、仮想光線である。視差バリアシャッタパネル21の表示面内には複数の共通駆動エリア251があるが、図26に示す動作状態においては、すべての共通駆動エリア251の電極群に同じ電圧パターンの電圧が印加される。よって、図26(a)では、共通バリアモードエリア260が1つ形成されている。つまり、共通バリアモードエリア260の境界であるバリアモードシフト境界270は存在しない。
図26(a)に示すように、本実施の形態1に係る表示装置は、各共通駆動エリア251の境界線LOAが、白丸で示す画面中央正面の集光点D3に集光するように構成されている。これは、サブ画素ペア41のサブ画素411aと411bの間の遮光壁18の中央位置と、総合開口300の中央位置との間に設けるべき最適ズレ量Zを、表示パネル11の左右中央(横方向における中央)からの距離Xに対して、以下の数1にしたがって設定することにより実現できる。
ここで、Tは表示パネル11の開口の面と視差バリアシャッタパネル21の開口の面との間の距離であり、nはその間の媒体の屈折率であり、Dは設計観察距離である。
このとき、表示パネル11のサブ画素ペアのピッチPoに対し、視差バリアシャッタパネル21の基準視差バリアピッチPを以下の数2に示す値に設定することになる。
図26(a)において破線で示される境界線LOBは、視差バリアシャッタパネル21のすべての共通駆動エリア251の電極群に、上述の電圧パターンNo5で電圧を印加した場合の境界線を示している。この場合は、図26(a)に示すように、各共通駆動エリア251の境界線LOBが、白丸で示す集光点D5に集光する。同様に、共通駆動エリア251の電極群に、電圧パターンNo1,2,4で電圧を印加した場合に、各共通駆動エリア251の境界線は、白丸で示す集光点D1,D2,D4に集光する。
本実施の形態では、制御部32は、検出部31の検出結果に基づいて、視差バリアシャッタパネル21での総合開口300の位置を共通駆動エリア251ごとに決定するものとなっている。具体的には、制御部32は、検出部31の検出結果に基づいて、観察者が設計観察距離Dの近傍に位置すると判断した場合には、各共通駆動エリア251の境界線を集光点1〜5のいずれか1つにのみ集光させるように、視差バリアシャッタパネル21を制御するものとなっている。これにより、表示パネル11の画面内の全ての位置の右眼用サブ画素411aの光が観察者の右眼に、全ての位置の左眼用サブ画素411aの光が観察者の左眼に照射されることになり、観察者は画面全体において立体画像を視認できる。
このとき、視差バリアシャッタパネル21のすべての共通駆動エリア251の電極群に同じ電圧パターンの電圧が印加されているので、全画面が一つの共通バリアモードエリア260となっている。
具体的には、観察者が、裸眼立体画像表示装置から画面正面方向に設計観察距離Dだけ離れた観察点MAに位置する場合には、各共通駆動エリア251の電極群に、電圧パターンNo3で電圧を印加することにより、各共通駆動エリア251からの境界線を、観察者の左右の眼の間に位置する集光点3に集光させる。
この状態から、観察者が、片方の眼が集光点3に位置する観察点MBに移動した場合には、各共通駆動エリア251の電極群に、電圧パターンNo5で電圧を印加することにより、各共通駆動エリア251からの境界線を、観察者の左右の眼の間に位置する集光点5に集光させる。
以上のような動作を行う本実施の形態に係る表示装置によれば、境界線を左右の眼の間の一点に集めている。したがって、観察者は左右方向に移動しても、画面全体で良好な立体画像を観察することが可能となっている。この時、一般に境界線近傍では3Dクロストークが大きく、また、輝度の変化も大きいので、境界線の集まる点は、観察者の左右の眼の中央付近であることが望ましい。
図27は、図26と同様、サブ画素ペア41を構成するサブ画素411a,411bの間の遮光壁18の中央から光が仮想的に放射された場合に、その仮想の光線に一致する境界線を示す模式図である。この図27においては、観察者が、設計観察距離Dよりも長い実観察距離Rだけ裸眼立体画像表示装置から離れた観察点MCに位置する場合の境界線が示されている。特に、破線の矢印は裸眼立体画像表示装置の表示面の端部付近に対応する境界線、一点鎖線の矢印は裸眼立体画像表示装置の表示面の中央付近に対応する境界線である。
本実施の形態に係る制御部32は、検出部31の検出結果に基づいて、観察者が設計観察距離Dより遠方に位置すると判断した場合には、各共通駆動エリア251からの境界線を、表示画面内の位置毎に、異なる集光点D1〜5に集光させるように、視差バリアシャッタパネル21を制御するものとなっている。
具体的には、図27に示すように、観察者が観察点MCに位置する場合には、5つの共通バリアモードエリア260a〜260eが形成されている。制御部32は、中央部の共通バリアモードエリア260c内の共通駆動エリア251の電極群に、電圧パターンNo3で電圧を印加することにより、各共通駆動エリア251からの境界線を集光点D3に集光させる。また、制御部32は、最左の共通バリアモードエリア260a内の共通駆動エリア251の電極群に電圧パターンNo1で電圧を印加することにより、各共通駆動エリア251からの境界線を集光点D1に集光させる。以下、同様にして、他の共通バリアモードエリア260b,d,e内の共通駆動エリア251からの境界線を、それぞれ集光点D2,D4,D5に集光させている。
ここで、各集光点D1〜D5に集光された各境界線は、設計観察距離Dより遠方では再び広がっていくが、全て観察点MCに位置している観察者の右眼と左眼の間を通過している。よって、観察者が設計観察距離Dより遠方に位置する場合でも、左右の眼にそれぞれ左眼用画像と右眼用画像が視認され、画面全体で良好な立体画像を観察することが可能となっている。
次に、共通バリアモードエリア260のバリアモードシフト境界270の位置を決める方法に関して述べる。
図28は、観察者の左右の眼の間の一点に、画面全域からの境界線を集光可能にするための、サブ画素ペア41を構成するサブ画素411aとサブ画素411bとの間の遮光壁18の中央位置と、総合開口300の中央位置との間に設けるべき最適ズレ量の計算結果を示している。ここでは、表示パネル11の画面幅を300mm、サブ画素ペア41のピッチを0.100mmとし、視差バリアシャッタパネル21の基準視差バリアピッチPの分割数Nを8、サブ開口ピッチΔSWを0.0125mmとしている。なお、設計観察距離Dは1000mmであり、表示パネル11の開口の面と視差バリアシャッタパネル21の開口の面との間の距離Tは1.0mmで、屈折率nはガラスの1.5である。
図中の点線は、観察者が設計観察距離Dの1000mmで、画面の正面方向に居る場合の画面左右位置における最適ズレ量の変化である。数1が示すように、点線は右上がりの直線となっている。今、視差バリアシャッタパネル21を表示パネル11の観察者側に置くことを想定しているため、基準視差バリアピッチPは、数2が示すように、サブ画素ペア41のピッチPoに対し、149.9/150の比率だけ小さい。
図28中の太い一点鎖線PA1〜PA8は、共通駆動エリア251に印加する電圧パターンを変え、第1透明電極23に印加する電圧パターンを、図22に示す電圧パターンNo1からNo8まで変えた場合に実現される、サブ画素ペア41の中央位置と総合開口300の中央位置との間のズレ量の表示面内における変化を示す。視差バリアシャッタパネル21の基準視差バリアピッチPは、設計観察距離Dを1000mmとして設計されているので、太い一点鎖線の傾きは、点線の傾きと一致している。共通駆動エリア251に印加する電圧パターンを変えることにより、ズレ量はサブ開口210のピッチΔSWのピッチで上下に移動している。ここでは、ΔSWは0.0125mmである。
ここで、観察者が、設計観察距離の1000mmで画面の正面から右に移動した場合、最適ズレ量を示す点線も右方向に平行移動することになるが、共通駆動エリア251に印加する電圧パターンを適宜変えることにより、実現される総合開口300サブ開口ピッチΔSWの0.0125mmの変化幅で、この最適ズレ量を模擬することができる。このとき全画面内で、最適ズレ量と模擬出来るズレ量の誤差は、ΔSWの半分、0.00625mm以内とすることが可能である。
図28においては、観察者の観察距離が700mmと、1500mmの場合の、画面左右位置における最適ズレ量も示されている。観察者の観察距離が700mmと、1500mmの場合は、それぞれの観察距離における最適なズレ量は数1が示すように、観察距離Dにより異なる。このため、最適ズレ量は画面左右位置に対して直線的に変化するが、傾きは観察距離1000mmの場合とは異なっている。したがって、図中の黒丸と白三角で示すように、それぞれ電圧パターンの異なる複数の共通バリアモードエリア260を画面内に設け、それぞれの観察距離における最適ズレ量を模擬している。
観察距離が1500mmの場合、最適ズレ量の計算結果のグラフは、太い実線で示すように設計観察距離の1000mmの場合よりも勾配が小さい。このため、画面は左右方向に5つの共通バリアモードエリア260に分けられ、それぞれ異なる5種の電圧パターンPA5,PA4,PA3,PA2,PA1が印加されている。ここで、一つの共通バリアモードエリア260においては、その地点における最適ズレ量に最も近い、実現可能なズレ量を発生させる電圧パターンが選ばれている。すなわち、バリアモードシフト境界270の位置は、その位置における観察距離に対する最適ズレ量と模擬的に実現できるズレ量の差が最大のサブ開口ピッチΔSWの半分になる地点である。これにより、全表示面内における最適ズレ量と実現しているズレ量の差をサブ開口ピッチΔSWの半分以下にすることができる。
また、観察距離が700mmの場合は、破線で示すように最適ズレ量の計算結果のグラフは、設計観察距離Dである1000mmの場合よりも勾配が大きい。ここでも、同様に、画面は左右方向に5つの共通バリアモードエリア260に分けられ、同様にそれぞれ異なる5種の電圧パターンPA1,PA2,PA3,PA4,PA5が印加されている。バリアモードシフト境界270の位置は、その位置における観察距離に対する最適ズレ量と模擬的に実現できるズレ量の差が最大のサブ開口ピッチΔSWの半分になる地点である。これにより、全表示面内における最適ズレ量と実現しているズレ量の差をサブ開口ピッチΔSWの半分以下にすることができる。
ただし、共通配線201及びコンタクトホール202を介してそれぞれ電気的につながれている第1透明電極23の数Mを大きくした場合に、共通駆動エリア251の幅が大きすぎると、最適ズレ量と実現可能な実際のズレ量の差が、サブ開口ピッチΔSWの半分よりも大きくなる。したがって、共通バリア駆動エリア251の幅は出来るだけ小さくする方が望ましい。
次に、バリアモードシフト境界270近傍での共通駆動エリア251の第1透明電極23に印加する電圧パターンについて述べる。ここでは、視差バリアシャッタパネル21が表示パネル11の観察者側に設置されている場合について述べる。
この場合、数2に示すように理想的な視差バリアピッチはサブ画素ペア41のピッチよりも僅かに小さく設計される。観察距離が大きくなるにつれて、理想的な視差バリアピッチは大きくなりサブ画素ペア41のピッチに近づく。このため、図28に示したように、観察距離が設計観察距離Dよりも大きい場合、最適ズレ量の計算結果のグラフの勾配が設計観察距離Dの場合の計算結果のグラフより小さくなる。逆に、観察距離が小さくなるにつれて理想的な視差バリアピッチはさらに小さくなり、サブ画素ペア41のピッチとの差が大きくなる。このため、図28に示したように、観察距離が設計観察距離Dよりも小さい場合、最適ズレ量の計算結果のグラフの勾配が設計観察距離Dの場合の計算結果のグラフより大きくなる。
すなわち、観察距離が設計観察距離Dよりも大きい場合は、表示面内の平均の視差バリアピッチを大きくするために、バリアモードシフト境界270において、1つのサブ開口210分だけ、透過状態のサブ開口210の数と遮光状態のサブ開口210の数の和である局所的な視差バリアピッチを大きくする必要がある。逆に、観察距離が設計観察距離Dよりも小さい場合は、表示面内の平均の視差バリアピッチを小さくするために、バリアモードシフト境界270において、1つのサブ開口210ピッチ分だけ、透過状態のサブ開口210の数と遮光状態のサブ開口210の数の和である局所的な視差バリアピッチを小さくする必要がある。
具体的な視差バリアパネル21の駆動方法を述べる。
まず、観察距離が設計観察距離Dよりも大きい場合は、先に述べたように、表示面内の平均の視差バリアピッチを大きくするために、バリアモードシフト境界270において1つのサブ開口ピッチ分だけ、透過状態のサブ開口210の数と遮光状態のサブ開口210の数の和である局所的な視差バリアピッチを大きくする必要がある。
ここで、上記を実現する方法としては、透過状態のサブ開口210を増やし遮光状態のサブ開口210の数を変えない方法と、透過状態のサブ開口210数を変えないで遮光状態のサブ開口210を増やす方法が考えられる。しかしながら、後で述べるように、透過状態のサブ開口210数を変えないで遮光状態のサブ開口210を増やす方法の方が、観察者が左右に移動する際に輝度のチラツキを感じにくいという効果があり好適である。
図29にバリアモードシフト境界270の付近の第1透明電極23への電圧印加の状態を示す。図29は、図22に示す電圧パターンNo9の電圧を印加した状態である。電圧パターンNo9は、視差バリアシャッタパネル21が表示パネル11の前側に配置され、観察距離が遠視距離(観察距離>設計観察距離D)となる場合に対応して、図22に示す電圧パターンの中から選択された電圧パターンである。ここでは、第一の共通駆動エリア251aと第二の共通駆動エリア251bの境界部に+電圧が印加され遮光された第1透明電極23が5本配置されている。その他の箇所では、透過4本、遮光4本のピッチが維持されており、第一の共通駆動エリア251aと第二の共通駆動エリア251bの境界部で総合開口300の間隔が第1透明電極23の1本分増えている。すなわち、バリアモードシフト境界270が、第一の共通駆動エリア251aと第二の共通駆動エリア251bとの境界部に形成されている。また、バリアモードシフト境界270において、透過状態のサブ開口210数を変えないで遮光状態のサブ開口210を増やすことにより、透過状態のサブ開口210の数と遮光状態のサブ開口210の数の和である局所的な視差バリアピッチが第1透明電極23の1本分(1つのサブ開口ピッチ分)増えている。言い換えると、透過状態のサブ開口210の数と遮光状態のサブ開口210の数の和である視差バリアピッチが、バリアモードシフト境界270において、局所的に、第1透明電極23の1本分増えている。図22に、バリアモードシフト境界270で分けられ、総合開口300のピッチが維持される共通バリアモードエリア260を破線の矩形で示す。
また、図22に示す電圧パターンNo10の状態は、同じく観察者が設計観察距離Dよりも遠い観察距離で右方向に動くのに対応して、視差シャッターパネル21の総合開口300を右側に移動させる場合である。ここでは、第一の共通駆動エリア251aと第二の共通駆動エリア251bの境界部に+電圧が印加され遮光された第1透明電極23を5本配置することが出来ないが、第二の共通駆動エリア251bと第三の共通駆動エリア251cの境界部に+電圧が印加され遮光された第1透明電極23を5本配置することが出来ている。その他の箇所では、透過4本、遮光4本のピッチが維持されており、第二の共通駆動エリア251bと第三の共通駆動エリア251cの境界部で総合開口300の間隔が第1透明電極23の1本分増えている。すなわち、バリアモードシフト境界270が、第二の共通駆動エリア251bと第三の共通駆動エリア251cの境界部に形成され、透過状態のサブ開口210数を変えないで遮光状態のサブ開口210を増やすことにより、透過状態のサブ開口210の数と遮光状態のサブ開口210の数の和である局所的な視差バリアピッチが第1透明電極23の1本分増えている。
また、図22に示す電圧パターンNo11の状態も電圧パターンNo10の場合とほぼ同様であり、第二の共通駆動エリア251bと第三の共通駆動エリア251cの境界部に+電圧が印加され遮光された第一の透明電極23を5本配置することが出来ている。その他の箇所では、透過4本、遮光4本のピッチが維持されている。これより、観察者の右方向への移動に対応して、バリアモードシフト境界270の両側の共通バリアモードエリア260内でそれぞれ、総合開口300が等しい幅とピッチを維持しながら右方向に第1透明電極23のピッチで移動できていることがわかる。
これは、共通駆動エリア251の中に、基準視差バリアピッチP内の第1透明電極23の数を偶数のNとして、(N・M+N/2)本の第1透明電極23を配置した構成としたためである。ここで、Mは任意の正の整数である。これにより、透過状態と遮光状態の第1透明電極23の本数が等しい(N/2)本の状態で駆動する場合、共通駆動エリア251の左右の端で、総合開口300の位相が半周期ずれているため、どちらかの端で必ず遮光状態の第1透明電極が現れる。このため、共通駆動エリア251の左右のどちらかの端で遮光状態の第1透明電極23の本数を1つ増やすことが出来るので、共通駆動エリア251の左右のどちらかの端をバリアモードシフト境界270とすることが出来るのである。
ここで、図21の構成の立体画像表示装置の各端子Laに印加する電圧について、図29を用いて詳しく説明する。図29では、第一の共通駆動エリア251aと第二の共通駆動エリア251bの境界部にバリアモードシフト境界270が形成されている。よって、総合開口300の位相は、バリアモードシフト境界270の左右で1つのサブ開口分ずれている。一方、それぞれの共通バリアモードエリア260内では、総合開口300の位相は一定に保たれている。
しかしながら、図21の構成の立体画像表示装置では、共通駆動エリア251に含まれる(N・M+N/2)本の第1透明電極23がN本おきに(N本周期で、間に(N−1)本空けて)電気的に接続されている。よって、共通バリアモードエリア260内において、総合開口300の位相を一定に保つためには、隣接する共通駆動エリア251で印加する電圧の順番をN/2ずつ変えなければならない。具体的には、第二の共通駆動エリア251bの端子La9〜12には+電圧、L13〜16には0電圧を印加し、第三の共通駆動エリア251cの端子La17〜20には0電圧、L21〜24には+電圧を印加する。つまり、隣接する共通駆動エリア251間で印加する電圧の順番をN/2だけずらすことにより、共通バリアモードエリア260内における総合開口300の位相が一定となる。
次に、観察距離が設計観察距離Dよりも小さい場合は、先に述べたように表示面内の平均の視差バリアピッチを小さくするために、バリアモードシフト境界270において1つのサブ開口ピッチ分だけ、透過状態のサブ開口210の数と遮光状態のサブ開口210の数の和である局所的な視差バリアピッチを小さくする必要がある。
ここで、上記を実現する方法としては、透過状態のサブ開口210を減らし遮光状態のサブ開口210の数を変えない方法と、透過状態のサブ開口210数を変えないで遮光状態のサブ開口210を減らす方法が考えられるが、後で述べるように、透過状態のサブ開口210の数を減らし、遮光状態のサブ開口210の数を変えない方法の方が、輝度のチラツキを感じにくいという効果があり好適である。
図30にバリアモードシフト境界270の付近の第1透明電極23への電圧印加の状態を示す。図30は、図22に示す電圧パターンNo15の電圧を印加した状態である。電圧パターンNo15は、視差バリアシャッタパネル21が表示パネル11の前側に配置され、観察距離が近視距離(観察距離<設計観察距離D)となる場合に対応して、図22に示す電圧パターンの中から選択された電圧パターンである。ここでは、第二の共通駆動エリア251bと第三の共通駆動エリア251cの境界部に0電圧が印加され、透過状態の第1透明電極23が3本配置されている。その他の箇所では、透過4本、遮光4本の配置が維持されており、第二の共通駆動エリア251bと第三の共通駆動エリア251cの境界部で、バリアモードシフト境界270が形成されている。そして、バリアモードシフト境界270において、透過状態のサブ開口210の数を減らし、遮光状態のサブ開口210の数を変えないことにより、透過状態のサブ開口210の数と遮光状態のサブ開口210の数の和である局所的な視差バリアピッチが1つのサブ開口ピッチ分(第1透明電極23の1本分)だけ小さくなっている。言い換えると、透過状態のサブ開口210の数と遮光状態のサブ開口210の数の和である視差バリアピッチが、バリアモードシフト境界270において、局所的に、第1透明電極23の1本分減っている。
また、図22に示す電圧パターンNo16の状態は、同じく観察者が設計観察距離Dよりも近い観察距離で右方向に動くのに対応して、視差シャッターパネル21の総合開口300を右側に移動させる場合である。ここでも、第二の共通駆動エリア251bと第三の共通駆動エリア251cの境界部に0電圧が印加され、透過状態の第1透明電極23が3本配置できている。その他の箇所では、透過4本、遮光4本の配置が維持されており、第二の共通駆動エリア251bと第三の共通駆動エリア251cの境界部で、バリアモードシフト境界270が形成されている。そして、バリアモードシフト境界270において、透過状態のサブ開口210の数を減らし遮光状態のサブ開口210の数を変えないことにより、透過状態のサブ開口210の数と遮光状態のサブ開口210の数の和である局所的な視差バリアピッチが1つのサブ開口ピッチ分だけ小さくなっている。
さらに、図22に示す電圧パターンNo17の状態では、第一の共通駆動エリア251aと第二の共通駆動エリア251bの境界部に0電圧が印加され、透過状態の第1透明電極23を3本配置することが出来ている。その他の箇所では、透過4本、遮光4本のピッチが維持されており、第一の共通駆動エリア251aと第二の共通駆動エリア251bの境界部で、バリアモードシフト境界270が形成されている。そして、バリアモードシフト境界270において、透過状態のサブ開口210の数を減らし遮光状態のサブ開口210の数を変えないことにより、透過状態のサブ開口210の数と遮光状態のサブ開口210の数の和である局所的な視差バリアピッチが1つのサブ開口ピッチ分だけ小さくなっている。
このように、観察距離が設計観察距離Dよりも近い場合にも、観察者の右方向への移動に対応して、バリアモードシフト境界270の両側の共通バリアモードエリア260内でそれぞれ、総合開口300が等しい幅とピッチを維持しながら右方向に第1透明電極23のピッチで移動できていることがわかる。
これは、共通駆動エリア251の中に、基準視差バリアピッチP内の第1透明電極23の数を偶数のNとして、(N・M+N/2)本の第1透明電極23を配置した構成としたためである。ここで、Mは任意の正の整数である。これにより、透過状態と遮光状態の第1透明電極23の本数が等しい(N/2)本の状態で駆動する場合、共通駆動エリア251の左右の端で、総合開口300の位相が半周期ずれているため、どちらかの端で必ず光透過状態の第1透明電極が現れる。このため、共通駆動エリア251の左右のどちらかの端で光透過状態の第1透明電極23の本数を1つ減らすことが出来るので、共通駆動エリア251の左右のどちらかの端をバリアモードシフト境界270とすることが出来るのである。
なお、これまでの説明では、すべての共通駆動エリア251に(N・M+N/2)本の第1透明電極23を配置した構成について説明したが、これに限るものでなく、いくつかの共通駆動エリア251では、(N・M)本の第1透明電極23を配置した構成としても良い。(N・M)本の第1透明電極23を配置した共通駆動エリア251をバリアモードシフト境界270に設定することは出来なくなるが、この数が少なければ、影響は少なく抑えられる。
<遮光状態と透過状態のサブ開口の幅と配光特性の関係>
バリアモードシフト境界270において遮光状態と透過状態のサブ開口の数を変えた場合の配光特性について述べる。
ここでは、図31に示す、表示パネル11のサブ画素411、及び視差バリアシャッタパネル21の総合開口300のモデルを想定し、幾何光学を用いて配光特性の計算を行った。図31においては、左右のサブ画素411a、411bの間の遮光壁18の中央位置と総合開口300aの中央位置とが対応している。また、総合開口300aの左側に総合開口300b、右側に総合開口300cがそれぞれ配置されている。サブ画素ペア41のピッチは0.12mm、表示パネル11の開口の面と視差バリアシャッタパネル21の開口の面との間の距離は1mm、サブ画素の開口幅は0.03mmである。設計観察距離Dは800mmで、基準視差バリアピッチP内のサブ開口210の数は偶数のN=12である。液晶シャッターパネル21の光透過状態と遮光状態のサブ開口210の数はN/2=6で等しく、総合開口300の幅は、基準視差バリアピッチの50%である。なお、遮光状態の6つのサブ開口画素210により1つの総合遮光部330を形成している。
図32に示すのは、透過状態と遮光状態のサブ開口210の数をそれぞれN/2=6本とした場合の配光特性の計算結果である。これは、バリアモードシフト境界270が表示面内に存在しない場合であり、観察距離が設計観察距離Dに等しい場合に相当する。横軸は、表示面の正面方向を0度とした左右方向の角度であり、縦軸は相対輝度である。図31に示すように、左右のサブ画素411a、411bから出て、総合開口300aを中心に総合開口300b、総合開口300cを通過する4つの光LM1,LM2,LM3,LM4について計算している。これは、これら4つの光が観察者に近い方向に向うためである。ここで、左右のサブ画素411a、411bにそれぞれ白表示をした場合の合計輝度の分布を、マーカー付の実線で示している。
ここで、観察者の眼間距離を65mmとすると、眼間角度は4.6度である。左右の眼は、それぞれ、太い実線と太い点線で示す、サブ画素411aと411bを出て総合開口300aを通過した光LM2,LM3の配光分布のピークの中心に位置している。そして、合計輝度の分布は中央付近の広い角度範囲で完全に平坦になっている。このため、観察者が観察距離800mmで左右に移動した場合、輝度の変化によるチラツキを感じることはない。
すなわち、観察者の横方向の移動時に輝度チラツキを感じさせないためには、液晶シャッターパネル21の総合開口300の幅が基準視差バリアピッチPの50%であり、表示パネル11のサブ画素ペア41を構成する二つのサブ開口411aとサブ開口411bの中心がサブ画素ペア41のピッチPoの半分となっていることが適している。すなわち、光透過状態と遮光状態の第1透明電極23の本数をN/2で等しくすることが適している。
次に、観察距離が1000mmと設計観察距離Dよりも遠い場合を考える。この場合、バリアモードシフト境界270において、透過状態のサブ開口210の数と遮光状態のサブ開口210の数の和である局所的な視差バリアピッチを1つのサブ開口ピッチ分だけ増やす必要がある。図33に示すのは、図31に示すモデルにおいて、総合開口300aの幅が、1サブ開口210分広い7開口分の場合である。その他の総合開口300bと300cの幅、ならびに、総合遮光部330a,330b,330cの幅はそれぞれサブ開口210の6本分で変えていない。この場合、正面方向に輝度の山が発生している。これは、バリアモードシフト境界270において総合開口300aの幅を7開口分としたこと、つまり、7本分のサブ開口210を透過状態としたことに起因して生じた輝度の山で、輝線と視認される。ここで、観察者の眼間距離を65mmとすると、眼間角度は3.7度と、設計観察距離の場合に比べ狭い。図33に示すように、輝度の山に比べ眼間角度が狭いため、観察者が左右に少し移動しただけで、バリアモードシフト境界270において輝線と視認される輝度変化を感じてしまう危険性がある。
これに対し、図34に示すのは、図31に示すモデルにおいて、総合開口300aの幅は6開口分のままで、総合遮光部330aの幅が1サブ開口分広い7開口分の場合である。その他の総合開口300b,300cの幅、ならびに、総合遮光部330b,330cの幅は、それぞれサブ開口210の6本分で変えていない。この場合、正面方向の輝度は平坦で右端に輝度の谷間が発生している。これは、バリアモードシフト境界270において総合遮光部330aの幅を7開口分としたこと、つまり、7本分のサブ開口210を遮光状態としたことに起因して生じた輝度の谷で、暗線と視認される。なお、図中の太い破線で示すのは、総合開口300cを中心とした3つの総合開口300について計算した場合の配光角度分布であって、総合開口300aを中心とする配光分と左右対称な分布である。また、いずれの配光分布でも中央部に輝度の平坦域があることがわかる。ここで、観察者の眼間角度と比べると、観察者が左右に少し移動しても暗線と視認されるバリアモードシフト境界270の輝度差を感じない領域が存在していることがわかる。
すなわち、観察距離が設計観察距離Dよりも遠い場合には、観察者の眼間角度が小さくなるため、バリアモードシフト境界270において総合遮光部330のサブ開口210の数を増やす方が、総合開口300のサブ開口210の数を増やす場合にくらべ、観察者の左右移動時にバリアモードシフト境界270において輝線や暗線と視認される輝度変化を感じる危険性が少なくなる。
次に、観察距離が600mmと設計観察距離Dよりも近い場合を考える。この場合、バリアモードシフト境界270において、透過状態のサブ開口210の数と遮光状態のサブ開口210の数の和である局所的な視差バリアピッチを1つのサブ開口210分減らす必要がある。図35に示すのは、図31に示すモデルにおいて、総合開口300aの幅が、1サブ開口210分狭い5開口分の場合である。その他の総合開口300b,300cの幅、ならびに、総合遮光部330a,330b,330cの幅はそれぞれサブ開口210の6本分で変えていない。この場合、正面方向に輝度の谷間が発生している。これは、バリアモードシフト境界270において総合開口300aの幅を5開口分としたこと、つまり、5本分のサブ開口210を透過状態としたことに起因して生じた輝度の谷で、暗線と視認される。しかし、観察者の眼間距離を65mmとすると眼間角度は6.2度と広い。このため、図35に示すように、輝度の谷間に比べ眼間角度が広いため、観察者が左右に移動しても、バリアモードシフト境界270において暗線と視認される輝度変化を感じない領域がある。
これに対し、図36に示すのは、図31に示すモデルにおいて、総合開口300aの幅は6開口分のままで、総合遮光部330aの幅が、1サブ開口分狭い5開口分の場合である。その他の総合開口300b,300cの幅、ならびに、総合遮光部330b,330cの幅は、それぞれサブ開口210の6本分で変えていない。この場合、正面方向の輝度は平坦で右端に輝度の山が発生している。これは、バリアモードシフト境界270において総合遮光部330aの幅を5開口分としたこと、つまり、5本分のサブ開口210を遮光状態としたことに起因して生じた輝度の山で、輝線と視認される。図中の太い破線で示すのは、総合開口300cを中心とした3つの総合開口300について計算した場合の配光角度分布であって、総合開口300aを中心とする配光分と左右対称な分布である。また、いずれの配光分布でも中央部に輝度の平坦域があることがわかる。しかし、ここで、観察者の眼間角度と比べると、観察者が左右に少し移動したら、左右の輝度の山のために輝線と視認されるバリアモードシフト境界270の輝度差を感じてしまう危険性がある。
すなわち、観察距離が設計観察距離Dよりも近い場合には、観察者の眼間角度は大きくなるため、バリアモードシフト境界270において総合開口300のサブ開口210の数を減らす方が、総合遮光部330のサブ開口210の数を減らす場合にくらべ、観察者の左右移動時にバリアモードシフト境界270において輝線や暗線と視認される輝度変化を感じる危険性が少なくなる。
以上のように、本実施の形態1によれば、観察者の位置が設計観察距離より小さいことを検出した場合に、光透過状態とする隣り合うサブ開口の数が(N/2−1)個となる箇所を横方向において少なくとも1箇所設け、遮光状態とする隣り合うサブ開口の数を全て(N/2)個とすることにより、設計観察距離より小さい観察距離にいる観察者が左右方向に移動したとしても、バリアモードシフト境界270において輝線や暗線と視認される輝度変化を感じることなく、立体画像を視認することができる。
また、本実施の形態1によれば、観察者の位置が設計観察距離より大きいことを検出した場合に、光透過状態とする隣り合うサブ開口の数が(N/2+1)個となる箇所を横方向において少なくとも1箇所設け、遮光状態とする隣り合うサブ開口の数を全て(N/2)個とすることにより、設計観察距離より大きい観察距離にいる観察者が左右方向に移動したとしても、バリアモードシフト境界270において輝線や暗線と視認される輝度変化を感じることなく、立体画像を視認することができる。
さらに、本実施の形態1によれば、共通駆動エリア251内に配置される(N・M+N/2)本(M:正の整数)の第1透明電極23をN本おきに(N本周期で、間に(N−1)本空けて)電気的に接続することにより、配線数を削減することができる。
なお、本実施の形態1では、(N・M+N/2)本の第1透明電極23がN本おきに電気的に接続される構成の立体画像表示装置について説明したが、これに限らず、第1透明電極23ごとに端子Laを設ける構成であっても差し支えない。
また、光透過状態とする隣り合うサブ開口の数の変更は、必要に応じて、観察者の位置が設計観察距離より小さいことを検出したときのみ、あるいは観察者の位置が設計観察距離より大きいことを検出したときのみ行うことにしてもよい。
<実施の形態2>
実施の形態1の表示装置では、視差バリアシャッタパネル21が表示パネル11の観察者側に設置されている場合について述べたが、ここでは、表示パネル11に透過型の液晶パネルを用い、表示パネル11である液晶パネルの観察者と反対側に設置したバックライトとの間に視差バリアシャッタパネル21を設置した場合について述べる。
この場合、サブ画素ペア41を構成するサブ画素411a,411bの間の遮光壁18の中央位置と、総合開口300の中央位置との間に設けるべき最適ズレ量Zを、表示パネル11の左右中央(横方向における中央)からの距離Xに対して、以下の数3にしたがって設定することにより実現できる。
ここで、Tは表示パネル11の開口の面と視差バリアシャッタパネル21の開口の面との間の距離であり、nはその間の媒体の屈折率であり、Dは設計観察距離である。ここで、数3では、数1と比べて符号が逆になっている。
このとき、表示パネル11のサブ画素ペアのピッチPoに対し、視差バリアシャッタパネル21の基準視差バリアピッチPを以下の数4に示す値に設定することになる。
この場合、基準視差バリアピッチPはサブ画素ペア41のピッチPoよりも僅かに大きく設計される。
観察距離が大きくなるにつれて、理想的な視差バリアピッチは数4が示すように小さくなり、サブ画素ペア41のピッチPoに近づく。逆に、観察距離が小さくなるにつれて、理想的な視差バリアピッチは大きくなる。
すなわち、観察距離が設計観察距離Dよりも大きい場合は、表示面内の平均の視差バリアピッチを小さくするために、バリアモードシフト境界270において、透過状態のサブ開口210の数と遮光状態のサブ開口210の数の和である局所的な視差バリアピッチを1つのサブ開口ピッチΔSW分だけ小さくする必要がある。
逆に、観察距離が設計観察距離Dよりも小さい場合は、表示面内の平均の視差バリアピッチを大きくするために、バリアモードシフト境界270において、透過状態のサブ開口210の数と遮光状態のサブ開口210の数の和である局所的な視差バリアピッチを1つのサブ開口ピッチ分ΔSWだけ大きくする必要がある。
さらに、具体的なバリアの駆動方法を述べる。まず、観察距離が設計観察距離Dよりも大きい場合は、先に述べたように、表示面内の平均の視差バリアピッチを小さくするために、バリアモードシフト境界270において1つのサブ開口ピッチ分ΔSWだけ、透過状態のサブ開口210の数と遮光状態のサブ開口210の数の和である局所的な視差バリアピッチを小さくする必要がある。ここで、1つのサブ開口ピッチ分総合開口300間の距離を小さくする方法としては、光透過状態のサブ開口210を減らして遮光状態のサブ開口210の数を変えない方法と、光透過状態のサブ開口210の数を変えないで遮光状態のサブ開口210を減らす方法がある。しかしながら、後で述べるように、光透過状態のサブ開口210の数を変えないで遮光状態のサブ開口210を減らす方法の方が、観察者が移動する際に輝度のチラツキを感じにくいという効果があり好適である。
図37にバリアモードシフト境界270の付近の第1透明電極23への電圧印加の状態を示す。図37は、図22に示す電圧パターンNo12の電圧を印加した状態である。電圧パターンNo12は、視差バリアシャッタパネル21が表示パネル11の後側に配置され、観察距離が遠視距離(観察距離>設計観察距離D)となる場合に対応して、図22に示す電圧パターンの中から選択された電圧パターンである。ここでは、第一の共通駆動エリア251aと第二の共通駆動エリア251bの境界部に+電圧が印加され遮光された第1透明電極23が3本配置されている。その他の箇所では、透過4本、遮光4本のピッチが維持されており、第一の共通駆動エリア251aと第二の共通駆動エリア251bの境界部にバリアモードシフト境界270がある。また、光透過状態のサブ開口210の数を変えないで遮光状態のサブ開口210を減らすことにより、光透過状態のサブ開口210の数と遮光状態のサブ開口210の数の和である局所的な視差バリアピッチが1つのサブ開口ピッチΔSW分だけ小さくなっている。
また、図22に示す電圧パターンNo13の状態は、同じく観察者が設計観察距離Dよりも遠い観察距離で左方向に動くのに対応して、視差シャッターパネル21の総合開口300を右側に移動させる場合である。ここでも、第一の共通駆動エリア251aと第二の共通駆動エリア251bの境界部に+電圧が印加され遮光された第1透明電極23を3本配置することが出来ている。その他の箇所では、透過4本、遮光4本のピッチが維持されており、第一の共通駆動エリア251aと第二の共通駆動エリア251bの境界部にバリアモードシフト境界270が形成され、光透過状態のサブ開口210の数を変えないで遮光状態のサブ開口210を減らすことにより、光透過状態のサブ開口210の数と遮光状態のサブ開口210の数の和である局所的な視差バリアピッチが1つのサブ開口ピッチΔSW分だけ小さくなっている。
また、図22に示す電圧パターンNo14の状態では、第一の共通駆動エリア251aと第二の共通駆動エリア251bの境界部には+電圧が印加され遮光された第1透明電極23を3本配置することは出来ていないが、第二の共通駆動エリア251bと第三の共通駆動エリア251cの境界部に+電圧が印加され遮光された第一の透明電極23を3本配置することが出来ている。その他の箇所では、透過4本、遮光4本のピッチが維持されており、観察者の右方向への移動に対応して、第一の共通駆動エリア251a(第一の共通バリアモードエリア260内)と第三の共通駆動エリア251c(第二の共通バリアモードエリア260内)で、総合開口300が等しい幅とピッチを維持しながら右方向に第一の透過電極23のピッチで移動できていることがわかる。
これは、共通駆動エリア251の中に、基準視差バリアピッチP内の第1透明電極23の数を偶数のNとして、(N・M+N/2)本の第1透明電極23を配置した構成としたためである。ここで、Mは任意の正の整数である。これにより、透過状態と遮光状態の第1透明電極23の本数が等しい(N/2)本の状態で駆動する場合、共通駆動エリア251の左右の端で、総合開口300の位相が半周期ずれているため、どちらかの端で必ず遮光状態の第1透明電極が現れる。このため、共通駆動エリア251の左右のどちらかの端で遮光状態の第1透明電極23の本数を1つ減らすことが出来るので、共通駆動エリア251の左右のどちらかの端をバリアモードシフト境界270とすることが出来るのである。
次に、観察距離が設計観察距離Dよりも小さい場合は、先に述べたように表示面内の平均の視差バリアピッチを大きくするために、バリアモードシフト境界270において、光透過状態のサブ開口210の数と遮光状態のサブ開口210の数の和である局所的な視差バリアピッチを1つのサブ開口ピッチ分だけ増やす必要がある。
ここで、1つのサブ開口ピッチ分だけ共通駆動エリア251の幅を大きくする方法としては、光透過状態のサブ開口210を増やし遮光状態のサブ開口210の数を変えない方法と、光透過状態のサブ開口210の数を変えないで遮光状態のサブ開口210を増やす方法がある。しかしながら、後で述べるように、光透過状態のサブ開口210を増やし遮光状態のサブ開口210の数を変えない方法の方が、観察者の移動時に輝度のチラツキを感じにくいという効果があり好適である。
図38にバリアモードシフト境界270の付近の第1透明電極23への電圧印加の状態を示す。図38は、図22に示す電圧パターンNo18の電圧を印加した状態である。電圧パターンNo18は、視差バリアシャッタパネル21が表示パネル11の後側に配置され、観察距離が近視距離(観察距離<設計観察距離D)となる場合に対応して、図22に示す電圧パターンの中から選択された電圧パターンである。ここでは、第二の共通駆動エリア251bと第三の共通駆動エリア251cの境界部に0電圧が印加され透過状態の第1透明電極23が5本配置されている。その他の箇所では、透過4本、遮光4本の配置が維持されており、第二の共通駆動エリア251bと第三の共通駆動エリア251cの境界部で、バリアモードシフト境界270が形成され、光透過状態のサブ開口210を増やし遮光状態のサブ開口210の数を変えないで、光透過状態のサブ開口210の数と遮光状態のサブ開口210の数の和である局所的な視差バリアピッチを1つのサブ開口ピッチ分だけ増やすことが出来ている。
また、図22に示す電圧パターンNo19の状態は、同じく観察者が設計観察距離Dよりも近い観察距離で、左方向に動くのに対応して視差シャッターパネル21の総合開口300を右側に移動させる場合である。ここでは、第一の共通駆動エリア251aと第二の共通駆動エリア251bの境界部に0電圧が印加され透過状態の第1透明電極23が5本配置されている。その他の箇所では、透過4本、遮光4本のピッチが維持されており、第一の共通駆動エリア251aと第二の共通駆動エリア251bの境界部で、バリアモードシフト境界270が形成され、光透過状態のサブ開口210を増やし遮光状態のサブ開口210の数を変えないで、光透過状態のサブ開口210の数と遮光状態のサブ開口210の数の和である局所的な視差バリアピッチを1つのサブ開口ピッチ分だけ増やすことが出来ている。
さらに、図22に示す電圧パターンNo20の状態でも同様に、第一の共通駆動エリア251aと第二の共通駆動エリア251bの境界部に0電圧が印加され透過状態の第1透明電極23を5本配置することが出来ている。その他の箇所では、透過4本、遮光4本のピッチが維持されており、第一の共通駆動エリア251aと第二の共通駆動エリア251bの境界部で、バリアモードシフト境界270が形成され、光透過状態のサブ開口210を増やし遮光状態のサブ開口210の数を変えないで、光透過状態のサブ開口210の数と遮光状態のサブ開口210の数の和である局所的な視差バリアピッチを1つのサブ開口ピッチ分だけ増やすことが出来ている。
このように、観察距離が設計観察距離Dよりも近い場合にも、観察者の右方向への移動に対応して、第一の共通駆動エリア251a(第一の共通バリアモードエリア内)と第三の共通駆動エリア251c(第二の共通バリアモードエリア)内で、総合開口300が等しい幅とピッチを維持しながら右方向に第1透明電極23のピッチΔSWで移動できていることがわかる。
これは、共通駆動エリア251の中に、基準視差バリアピッチP内の第1透明電極23の数を偶数のNとして、(N・M+N/2)本の第1透明電極23を配置した構成としたためである。ここで、Mは任意の正の整数である。これにより、透過状態と遮光状態の第1透明電極23の本数が等しい(N/2)本の状態で駆動する場合、共通駆動エリア251の左右の端で、総合開口300の位相が半周期ずれているため、どちらかの端で必ず光透過状態の第1透明電極が現れる。このため、共通駆動エリア251の左右のどちらかの端で光透過状態の第1透明電極23の本数を1つ増やすことが出来るので、共通駆動エリア251の左右のどちらかの端をバリアモードシフト境界270とすることが出来るのである。
<遮光状態と透過状態のサブ開口の幅と配光特性の関係>
バリアモードシフト境界において遮光状態と透過状態のサブ開口の数を変えた場合の配光特性の計算結果について述べる。
ここでは、図39に示す、表示パネル11のサブ画素411、及び視差バリアシャッタパネル21の総合開口300のモデルを考える。図39においては、左右のサブ画素411e、411fの間の遮光壁18の中央位置と総合開口300aの中央位置とが対応している。また、総合開口300eの左側に総合開口300f、右側に総合開口300gがそれぞれ配置されている。また、図39は、図31に示すモデルにおいて、表示パネル11と視差バリアシャッタパネル21の上下位置を変えたモデルである。サブ画素ペア41のピッチは0.12mm、画素/バリア間距離は1mm、サブ画素の開口幅は0.03mmである。設計観察距離Dは800mmで、基準視差バリアピッチP内の第1透明電極23の数は偶数のN=12である。幾何光学計算においては、配光特性は図31のモデルの結果と全く同じになる。
図40に示すのは、透過状態と遮光状態のサブ開口210の数をそれぞれN/2=6本とした場合の配光特性の計算結果である。これは、バリアモードシフト境界270が表示面内に存在しない場合であり、観察距離が設計観察距離Dに等しい場合に相当する。横軸は、表示面の正面方向を0度とした左右方向の角度であり、縦軸は相対輝度である。図39に示すように、総合開口300eを中心に総合開口300f、総合開口300gを通過して、左右のサブ画素411e,411fから出る4つの光LM11,LM12,LM13,LM14について計算している。これは、これら4つの光が観察者に近い方向に向うためである。ここで、左右のサブ画素411e、411fにそれぞれ白表示をした場合の合計輝度の分布を、マーカー付の実線で示している。この結果は、図32に示す配光と全く同じである。
ここで、観察者の眼間距離を65mmとすると、眼間角度は4.6度である。左右の眼は、それぞれ、太い実線と太い点線で示す、総合開口300eを出てサブ画素411eと411fを通過した光LM12,LM13の配光分布のピークの中心に位置している。そして、合計輝度の分布は中央付近の広い角度範囲で完全に平坦になっている。このため、観察者が観察距離800mmで左右に移動した場合、輝度の変化によるチラツキを感じることはない。
すなわち、観察者の横方向の移動時に輝度チラツキを感じさせないためには、液晶シャッターパネル21の総合開口300の幅が基準視差バリアピッチPの50%であり、表示パネル11のサブ画素ペア41を構成する二つのサブ開口411aとサブ開口411bの中心がサブ画素ペア41のピッチPoの半分となっていることが適している。すなわち、光透過状態と遮光状態の第1透明電極23の本数をN/2で等しくすることが適している。
次に、観察距離が1000mmと設計観察距離よりも遠い場合を考える。この場合、バリアモードシフト境界270において、光透過状態のサブ開口210の数と遮光状態のサブ開口210の数の和である局所的な視差バリアピッチを1つのサブ開口ピッチ分だけ減らす必要がある。図41に示すのは、図39に示すモデルにおいて、総合開口300eの幅が、1サブ開口分狭い5本分の場合である。その他の総合開口300fと300gの幅、ならびに、総合遮光部330e,330f,330gの幅はそれぞれサブ開口6本で変えていない。この場合、正面方向に輝度の谷が発生している。これは、バリアモードシフト境界270において総合開口300eの幅を5開口分としたこと、つまり、5本分のサブ開口210を透過状態としたことに起因して生じた輝度の谷で、暗線と視認される。ここで、観察者の眼間距離を65mmとすると、眼間角度は3.7度と狭い。図41に示すように、輝度の谷に比べ眼間角度が狭いため観察者が左右に少し移動しただけで、バリアモードシフト境界270において暗線と視認される輝度変化を感じてしまう危険性がある。
これに対し、図42に示すのは、図39に示すモデルにおいて、総合開口300eの幅は6本分のままで、総合遮光部330fの幅が、1サブ開口210分狭い5本分の場合である。この場合、正面方向に輝度は平坦で右端に輝度の山が発生している。これは、バリアモードシフト境界270において総合遮光部330fの幅を5開口分としたこと、つまり、5本分のサブ開口210を遮光状態としたことに起因して生じた輝度の山で、輝線と視認される。図中の太い破線で示すのは、総合開口300fを中心とした場合の配光角度分布である、総合開口300eを中心とする配光分と左右対称な分布であり、いずれの配光分布でも中央部に輝度の平坦域があることがわかる。ここで、観察者の眼間角度と比べると、観察者が左右に少し移動しても輝線と視認されるバリアモードシフト境界270の輝度差を感じない領域が存在していることがわかる。
すなわち、観察距離が設計観察距離Dよりも遠い場合には、観察者の眼間角度が小さくなるため、バリアモードシフト境界270において、総合遮光部330のサブ開口210の数を減らす方が、総合開口300のサブ開口210の数を減らす場合にくらべ、観察者の左右移動時にバリアモードシフト境界270において輝線や暗線と視認される輝度変化を感じる危険性が少なくなる。
次に、観察距離が600mmと設計観察距離Dよりも近い場合を考える。この場合、バリアモードシフト境界270において、光透過状態のサブ開口210の数と遮光状態のサブ開口210の数の和である局所的な視差バリアピッチを1つのサブ開口ピッチ分だけ増やす必要がある。図43に示すのは、図39に示すモデルにおいて、総合開口300eの幅が、1サブ開口210分広い7開口分の場合である。その他の総合開口300fと300gの幅、ならびに、総合遮光部330e,330f,330gの幅はそれぞれサブ開口6本で変えていない。この場合、正面方向に輝度の山が発生している。これは、バリアモードシフト境界270において総合開口300eの幅を7開口分としたこと、つまり、7本分のサブ開口210を透過状態としたことに起因して生じた輝度の山で、輝線と視認される。しかし、観察者の眼間距離を65mmとすると眼間角度は6.2度と広い。このため、図43に示すように、輝度の山間に比べ眼間角度が広いため、観察者が左右に移動しても、バリアモードシフト境界270において輝線と視認される輝度変化を感じない領域がある。
これに対し、図44に示すのは、図39に示すモデルにおいて、総合開口300eの幅は6本分のままで、総合遮光部330fの幅が、1サブ開口分広い7開口分の場合である。その他の総合開口300f,300gの幅、ならびに、総合遮光部330e,330gの幅はそれぞれサブ開口6本で変えていない。この場合、正面方向の輝度は平坦で右端に輝度の谷が発生している。これは、バリアモードシフト境界270において総合遮光部330fの幅を7開口分としたこと、つまり、7本分のサブ開口210を遮光状態としたことに起因して生じた輝度の谷で、暗線と視認される。図中の太い破線で示すのは、総合開口300fを中心とした場合の配光角度分布である、総合開口300eを中心とする配光分と左右対称な分布であり、いずれの配光分布でも中央部に輝度の平坦域があることがわかる。しかし、ここで、観察者の眼間角度と比べると、観察者が左右に少し移動したら、左右の輝度の谷のために暗線と視認されるバリアモードシフト境界270の輝度差を感じてしまう危険性がある。
すなわち、観察距離が設計観察距離よりも近い場合には、観察者の眼間角度は大きくなるため、バリアモードシフト境界270において総合開口300のサブ開口210の数を増やした方が、総合遮光部330のサブ開口210の数を増やす場合にくらべ、観察者の左右移動時にバリアモードシフト境界270において輝線や暗線と視認される輝度変化を感じる危険性が少なくなる。
なお、本発明は、その発明の範囲内において、各実施の形態を自由に組み合わせたり、各実施の形態を適宜、変形、省略したりすることが可能である。