本発明を説明するにあたり、以下の用語が使用されるが、これは、以下に示されるように定義されることを意図する。
本明細書において使用される場合、「ナノ粒子」は、ナノメートル規模を有する粒子を指し、いかなる具体的な形状制限も示唆することを意図しない。特に、「ナノ粒子」は、ナノスフェア、ナノチューブ、ナノボックス、ナノクラスター、ナノロッド等を包含する。ある特定の実施形態において、本明細書において企図されるナノ粒子および/またはナノ粒子コアは、略多面体または球状構造を有する。
複数の炭水化物含有リガンドを含むナノ粒子は、例えば、WO2002/032404、WO2004/108165、WO2005/116226、WO2006/037979、WO2007/015105、WO2007/122388、WO2005/091704(そのそれぞれの全内容は、参照により本明細書に明示的に組み込まれる)に記載されており、そのようなナノ粒子は、本発明による使用を見出すことができる。さらに、酸化鉄フェライト(式XFe2O4(式中、X=Fe、MnまたはCoである)を有する)の磁性コアを含む金被覆ナノ粒子は、その全内容が参照により本明細書に明示的に組み込まれる欧州特許出願公開第EP2305310号に記載されており、本発明による使用を見出すことができる。
本明細書において使用される場合、「コロナ」は、ナノ粒子コアの露出表面を部分的または完全に被覆し得る層またはコーティングを指す。コロナは、少なくとも1つの炭水化物部分を含む複数のリガンドを含む。したがって、コロナは、金属コアを包囲する、または部分的に包囲する有機層であるとみなすことができる。ある特定の実施形態において、コロナは、ナノ粒子のコアの不動態化を提供する、および/またはそれに関与する。したがって、ある特定の場合において、コロナは、金属含有コアを実質的に安定化させるのに十分完全なコーティング層を含み得る。しかしながら、例えば貴金属でコーティングされた金属酸化物含有内部コアを含むコアを有するある特定のナノ粒子は、コア表面を部分的にのみコーティングするコロナを含んでもよいことが、本明細書において特に企図される。
本明細書において使用される場合、「ペプチド」は、任意の配列のアミノ酸を包含することを意図し、特に、ペプチド、ポリペプチドタンパク質(2次、3次および/または4次構造を有するタンパク質を含む)ならびにそれらの断片を含む。「〜に結合したペプチド」という表現は、ナノ粒子の複数のリガンドの1つまたは複数の、1つまたは複数の一部(例えば、化学基または部分)と結合相互作用を形成するペプチドのアミノ酸配列の一部を包含する(ただし全体を含んでもよい)ことを特に意図する。ある特定の実施形態において、ペプチドは、500kDa未満、100kDa未満、50kDa未満、例えば20kDaまでの分子量を有してもよい。
「結合した」という用語は、2つの成分の間の物理的および/または化学的会合を含むことを意図する。この用語は、化学的連結の任意の形態、例えば、共有結合、イオン結合、水素結合、またはファンデルワールス力もしくは静電気力等の分子間力を含む。この用語は、物理的接続または連結を含む。この物理的および/または化学的会合は、可逆的であること、すなわち、成分が一方から他方へ分離または解離して、例えば担体成分から活性成分を放出してもよいことを意図し得る。
本明細書において使用される場合、「炭水化物」という用語は、一般式Cn(H2O)m(式中、n=mであり、nは、3より大きい)の化合物を含むことを意図する。また、一般式Cn(H2O)mに含まれない炭水化物類似体/模倣物も、炭水化物の定義に含まれる。炭水化物類似体/模倣物は、擬似糖(カルバ糖)、アミノ糖、イミノ糖およびイノシトールを含むが、これらに限定されない。アミノ糖は、ポリヒドロキシル化ピペリジン、ピロリジン、ピロリジジンおよびインドリジジンを含む。
「活性物質の均一性」および「活性物質含量の均一性」という語句は、製造された生成物またはそのある分割部分から、実質的に等しいサイズの用量単位が調製され得るような、および、用量単位の活性物質含量が、互いに比較して約10重量%を超えて変動しないような量で、活性物質が生成物中に存在することを意味するように意図される。すなわち、用量単位間の活性物質含量の分散は、約10%以下である。「活性物質の均一性」および「活性物質含量の均一性」という語句は、均一性の他の物理的特性、例えば視覚的均一性とは異なり、別個であることが意図される。視覚的均一性は、例えば、均一な、平滑な、もしくは光沢のある外観、または光を反射する能力を含んでもよく、これらはいずれもフィルムの含量に直接関連しない。例えば、「斑がない」または「光沢を有する」という特性は、それぞれ、表面の外観および光沢度に関する。これらの特性は、生成物中の含量が均一であることを示すものではない。フィルム等の生成物は、斑がない、または光沢を有し得るが、その活性物質含量が均一であるとは限らない可能性がある。逆もまた成立し得る。当然ながら、フィルム生成物は、上に概説した均一特性のそれぞれを有し得ることが可能であるが、それぞれの特性は異なり、他方に依存しない。
本明細書において使用される場合、「劣化温度」という用語は、活性物質のある程度の劣化が生じる温度を意味するように意図される。医薬品および生物学的活性物質等の活性物質は、様々な温度の範囲にわたり、および他の材料の存在下で劣化することが知られている。「劣化温度」という用語は、活性物質の劣化が開始する温度とは限らないが、単独で、または他の材料の存在下で活性成分のある程度の劣化が生じる、または生じ続ける温度の範囲を含むことを意図する。活性物質の劣化が生じるいかなる温度も、この用語に含まれる。
本明細書において使用される場合、「フィルム」という用語は、長方形、正方形、または他の所望の形状を含む任意の形状の、フィルム、シート、ディスク、ウエハー等を含む任意の厚さの送達システムを含む。フィルムは、フィルムの連続ロールの形態であってもよく、または、所望の長さおよび幅に採寸されてもよい。本明細書において説明されるフィルムは、使用目的に好適な任意の所望の厚さおよびサイズであってもよい。例えば、本発明のフィルムは、使用者の口腔内に設置され得るように採寸されてもよい。他のフィルムもまた、使用者の皮膚への貼り付け、すなわち局所使用のために採寸され得る。例えば、いくつかのフィルムは、約0.1ミルから約10ミルの比較的薄い厚さを有してもよく、またいくつかは、約10ミルから約30ミルの幾分より厚い厚さを有してもよい。いくつかのフィルム、特に局所使用を意図するフィルムにおいては、厚さは、さらにより厚い、すなわち約30ミルを超えてもよい。当然ながら、フィルムの厚さは、使用される製剤によって制限され得ること、また、より厚いフィルムは、より長い乾燥時間を必要とし得ることが理解される。さらに、より厚いフィルムは、望ましくは、より薄いフィルムのラミネーションにより形成されてもよい。さらに、「フィルム」という用語は、単一層組成、およびラミネートフィルム、フィルム上のコーティング等の複数層組成を含む。乾燥フィルム形態での組成物は、フィルムの制御乾燥の適用により、成分の均一な分布を維持する。フィルムは、2つのフィルムの間に、薬物のパウチまたは領域を含んでもよい。
本明細書において使用される活性成分は、フィルム送達システムの一部として形成されてもよい。このようにして、本明細書において説明される活性成分は、フィルム全体にわたり分散されてもよく、または、フィルムの1つまたは複数の表面上に堆積されてもよい。いずれの場合も、単位面積当たりのナノ粒子の量は、望ましくは、フィルム全体にわたり実質的に均一である。本発明のフィルムは、所与のフィルムの体積全体にわたる成分分布の均一性を含むことが望ましい。そのような均一性は、ナノ粒子がフィルムのマトリックス内にあるか、またはその1つもしくは複数の表面上にコーティング、ラミネートもしくは安定化されているかに関わらず、フィルムの単位体積当たりのナノ粒子の実質的に均一な量を含む。そのようなフィルムが個々の単位に切断される場合、単位内のナノ粒子の量は、かなりの精度をもって知ることができる。
フィルム全体にわたる成分の均一性は、使用者への正確および有効な用量の投与に有益である。参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる米国特許第7,425,292号、米国特許第7,357,891号、および米国特許第7,666,337号に記載の方法および材料を含む、均一フィルムを形成する様々な方法、ならびに様々な添加剤および充填剤を使用することができる。いくつかの特に望ましい実施形態において、単位体積当たりの活性物質担持成分の量、または活性物質自体の量は、上述のように、約10%を超えて変動しない。したがって、フィルムの大型シートを作製することができ、またそのシートから切断された等しいサイズの用量単位、および各用量単位における活性物質担持成分または活性物質自体の量は、単位間で10重量%を超えて変動しない。
本発明は、
(i)金属および/または半導体を含むコアと、
(ii)コアに共有結合により連結した複数のリガンドを含むコロナであって、前記リガンドの少なくとも1つが、炭水化物部分を含む、コロナと、
(iii)コロナに結合した少なくとも2つの異なる種のペプチドと
を含むナノ粒子を提供する。前記少なくとも2つの異なる種のペプチドは、可逆的におよび/または非共有結合によりコロナに結合していてもよい。
ペプチドの組合せは、ナノ粒子を生理溶液、例えば生理食塩水に接触させると、結合したペプチドのそれぞれの少なくとも一部またはそれ以上がナノ粒子から放出されるように、コロナに結合していてもよい。この放出は、例えばペプチドをその生物学的受容体と相互作用させることにより、活性ペプチドの生物学的効果を促進し得る。一般に、ペプチドは、生物活性ペプチドであり、すなわち、哺乳動物対象における生理学的反応を刺激することができる。いくつかの場合において、本発明によれば、少なくとも2つの異なる種のペプチドのそれぞれは、インスリン、グルカゴン様ペプチド-1(「GLP-1」;GLP-1(7-37)およびGLP-1-(7-36)NH2を含むがこれらに限定されない)、IGF1、IGF2、リラキシン、INSL5、INSL6、INSL7、膵臓ポリペプチド(PP)、ペプチドチロシンチロシン(PTT)、神経ペプチドY、オキシトシン、バソプレッシン、GnRH、TRH、CRH、GHRH/ソマトスタチン、FSH、LH、TSH、CGA、プロラクチン、ClIP、ACTH、MSH、エンドルフィン、リポトロピン、GH、カルシトニン、PTH、インヒビン、hCG、HPL、グルカゴン、ソマトスタチン、メラトニン、チモシン、チムリン、ガストリン、グレリン、チモポエチン、CCK、GIPセクレチン、モチンVIP、エンテログルカゴン、IGF-1、IGF-2、レプチン、アディポネクチン、レジスチン、オステオカルシン、レニン、EPO、カリシトロール、ANP、BNP、ケモカイン、サイトカイン、アディポカイン、PYY(3-36)、オキシントモジュリン、および本明細書において列挙されるペプチドのいずれか1つの全ての好適な生物活性類似体からなる群から独立して選択され得る。したがって、ある特定の場合において、ペプチドの1つまたは複数は、哺乳動物対象における血中グルコースレベルの低減を刺激することができてもよい。例えば、ペプチドの1つは、単量体および/もしくは二量体ヒトインスリンまたはヒトインスリンの好適な類似体を含んでもよく、またはそれらからなってもよい。さらに、いくつかの場合において、ペプチドの1つは、GLP-1またはその好適な類似体を含んでもよく、またはそれらからなってもよい。ある特定の場合において、組合せは、(i)インスリンまたはインスリン類似体と、(ii)GLP-1または好適なGLP-1類似体、ならびにエキセナチドおよびその好適な類似体との組合せであってもよい。いくつかの好適なGLP-1類似体が当該技術分野において知られており、本発明の任意の態様による使用を見出すことができる。
本明細書において説明されるように、本発明者らは、同じナノ粒子のコロナに結合したインスリンおよびGLP-1の両方を有するナノ粒子のin vivoの生物学的効果が、コロナに結合したインスリンを有する第1のナノ粒子およびコロナに結合したGLP-1を有する第2のナノ粒子の混合物により示される効果とは異なることを見出した。インスリンおよびGLP-1の両方がコロナに結合した組合せナノ粒子(NP-インスリン/GLP-1)は、上述の混合物とは異なり、また多くの面で治療的観点から優れた薬力学的および薬物動態学的特性を示す。組合せNP-インスリン/GLP-1粒子は、哺乳動物対象に投与された場合、グルコースチャレンジに応じたグルコース変動幅の低減、インスリンの生体内分布の向上、グルカゴン反応の向上、in situ膵臓インスリン分泌促進作用の低減から選択される1つまたは複数の特性を有利に示し得る。いかなる具体的な理論にも束縛されることを望まないが、現在、組合せNP-インスリン/GLP-1粒子に基づく治療は、膵炎、例えば外因性または内因性GLP-1のin situ膵臓インスリン分泌促進作用により誘導された、または悪化した膵炎のリスクの低減に関連し得ると考えられている。
いくつかの場合において、本発明によれば、2つの異なる種のペプチドは、異なる第1および第2のペプチドを含み、前記第1のペプチド対前記第2のペプチドのモル比は、1:100から100:1の範囲内であり、好ましくは、比は、1:10から10:1の範囲内である。ある特定の場合において、第1のペプチドは、インスリンを含み、第2のペプチドは、GLP-1を含み、インスリン対GLP-1のモル比は、5:1から20:1の範囲内である。
いくつかの場合において、本発明によれば、前記炭水化物部分は、単糖および/または二糖を含んでもよい。炭水化物部分は、本明細書においてさらに定義される通りであってもよく、炭水化物模倣物を含む。炭水化物部分は、硫黄含有連結基、アミノ含有連結基、リン酸含有連結基および酸素含有連結基からなる群から選択される連結基を介してコアに共有結合により連結していてもよい。いくつかの場合において、連結基は、少なくとも2つの炭素のアルキル鎖を含む。
本発明によれば、炭水化物部分を含む前記少なくとも1つのリガンドは、いくつかの場合において、2'-チオエチル-α-D-ガラクトピラノシド、2'-チオエチル-β-D-グルコピラノシド、2'-チオエチル-2-アセトアミド-2-デオキシ-β-D-グルコピラノシド、5'-チオペンタニル-2-デオキシ-2-イミダゾールアセトアミド-α,β-D-グルコピラノシドおよび2'-チオエチル-α-D-グルコピラノシドからなる群から選択され得、炭水化物部分を含む前記少なくとも1つのリガンドは、その硫黄原子を介してコアに共有結合により連結している。
コアに共有結合により連結した前記複数のリガンドは、少なくとも第1のリガンドおよび第2のリガンドを含んでもよく、第1および第2のリガンドは異なることが、本明細書において特に企図される。例えば、第1および第2のリガンドは、以下の通りであってもよい。
(a)前記第1のリガンドは、2'-チオエチル-α-D-ガラクトピラノシドを含み、前記第2のリガンドは、1-アミノ-17-メルカプト-3,6,9,12,15-ペンタオキサ-ヘプタデカノールを含むか、
(b)前記第1のリガンドは、2'-チオエチル-β-D-グルコピラノシドまたは2'-チオエチル-α-D-グルコピラノシドを含み、前記第2のリガンドは、5'-チオペンタニル-2-デオキシ-2-イミダゾールアセトアミド-α,β-D-グルコピラノシドを含むか、
(c)前記第1のリガンドは、2'-チオエチル-β-D-グルコピラノシドまたは2'-チオエチル-α-D-グルコピラノシドを含み、前記第2のリガンドは、1-アミノ-17-メルカプト-3,6,9,12,15-ペンタオキサ-ヘプタデカノールを含むか、または、
(d)前記第1のリガンドは、2'-チオエチル-2-アセトアミド-2-デオキシ-β-D-グルコピラノシドを含み、前記第2のリガンドは、1-アミノ-17-メルカプト-3,6,9,12,15-ペンタオキサ-ヘプタデカノールを含み、
前記第1および第2のリガンドは、そのそれぞれの硫黄原子を介してコアに共有結合により連結している。
いくつかの場合において、第1のリガンドは、炭水化物部分を含んでもよく、前記第2のリガンドは、非炭水化物リガンドであってもよい。リガンドの1つまたは複数は、アミン基であってもよい。特に、第2のリガンドは、その硫黄原子を介してコアに共有結合により連結した1-アミノ-17-メルカプト-3,6,9,12,15-ペンタオキサ-ヘプタデカノールを含んでもよい。
本明細書においてさらに説明されるように、ナノ粒子上に異なるリガンドが存在する場合、リガンドは、例えば、ある特定の規定の比または比の範囲で存在し得る。例えば、第1のリガンドおよび前記第2のリガンドは、1:40から40:1、1:10から10:1、またはさらに1:2から2:1の範囲内の比でナノ粒子上に存在し得る。
本発明によるナノ粒子は、コロナを形成する様々な数のリガンドを有し得ることが判明している。例えば、いくつかの場合において、コロナは、コア1個当たり少なくとも5個のリガンド、例えばコア1個当たり約10個から約1000個の間のリガンド、またはコア1個当たり44〜106個のリガンドを含む。
コア1個当たりの結合ペプチド分子の数は、特に限定されない。ある特定の用途においては、コア1個当たりわずか2個、3個または4個のペプチドを使用することが望ましくなり得るが、他の場合においては、本発明のナノ粒子は、コア1個当たり少なくとも5個、10個、20個、50個またはそれ以上の結合ペプチド分子を含んでもよい。
ナノ粒子「コア」は、金属および/または半導体を含む。好適なコアは、例えば、WO2002/032404、WO2004/108165、WO2005/116226、WO2006/037979、WO2007/015105、WO2007/122388、WO2005/091704(そのそれぞれの全内容は、参照により本明細書に明示的に組み込まれる)に記載されており、そのようなナノ粒子コアは、本発明による使用を見出すことができる。さらに、酸化鉄フェライト(式XFe2O4(式中、X=Fe、MnまたはCoである)を有する)の磁性コアを含む金被覆ナノ粒子は、その全内容が参照により本明細書に明示的に組み込まれる欧州特許出願公開第EP2305310号に記載されており、本発明による使用を見出すことができる。
いくつかの場合において、本発明によれば、ナノ粒子コアは、Au、Ag、Cu、Pt、Pd、Fe、Co、Gd、Znまたはそれらの任意の組合せの群から選択される金属を含む。コアは、Au、Ag、Pt、PdおよびCu、またはそれらの任意の組合せの群から選択される不動態化金属を含んでもよい。ある特定の実施形態において、金属の特定の組合せ、例えばAu/Fe、Au/Ag、Au/Cu、Au/Ag/Cu、Au/Pt、Au/Pd、Au/Ag/Cu/Pd、Au/Gd、Au/Fe/Cu、Au/Fe/Gd、Au/Fe/Cu/Gdの群から選択される金属の組合せが使用されてもよい。
いくつかの場合において、本発明によれば、ナノ粒子コアは、磁性であってもよい。コアは、Mn2+、Gd3+、Eu2+、Cu2+、V2+、Co2+、Ni2+、Fe2+、Fe3+およびランタニド3+の群から選択される金属等のNMR活性原子を含んでもよい。
いくつかの場合において、本発明によれば、ナノ粒子コアは、セレン化カドミウム、硫化カドミウム、テルル化カドミウムおよび硫化亜鉛の群から選択されるもの等の半導体を含んでもよい。
いくつかの場合において、本発明によれば、ナノ粒子コアは、Au、Ag、Cu、Pt、PdおよびZn、またはそれらの任意の組合せの群から選択される金属でコーティングされた金属酸化物を含んでもよい。金属酸化物は、有利には、式XFe2O4(式中、Xは、Fe、MnおよびCoの群から選択される金属である)の金属酸化物であってもよい。
本発明によるナノ粒子コアは、いくつかの場合において、約0.5nmから約50nm、例えば約1nmから約10nm、または約1.5nmから約2nmの範囲内の直径を有してもよい。
ナノ粒子に結合した2種以上のペプチドの存在は、単一種のペプチドの結合と比較して、好ましい特性(特に、バイオアベイラビリティまたは治療プロファイル等の薬力学的および/または薬物動態学的特性)を示し得る。特に、ペプチドの組合せは、ペプチドが相互に有益もしくは相補的な機能を果たす、および/または、例えば相乗的に呼応して作用するように、ナノ粒子上に担持され得る。2種以上の存在は、1つまたは複数の状態の治療を目的として、および1つまたは複数の治療適応症のために使用され得る。
本発明によれば、本発明のナノ粒子は、二価状態を有する成分、例えば二価状態を有する金属もしくは化合物、またはそれらの酸化物もしくは塩を含んでもよい。例えば、二価状態で存在する能力を有する金属または金属錯体が、特に有用である。そのような成分は、添加時に二価状態であってもよく、または、添加後に二価状態に変換されてもよい。二価成分の酸化物および塩もまた有用であり、直接添加されてもよく、または添加後にその場で形成されてもよい。二価成分の有用な塩には、ハロゲン化物塩、例えば塩化物、ヨウ化物、臭化物およびフッ化物が含まれる。そのような二価成分は、例えば、亜鉛、マグネシウム、銅、ニッケル、コバルト、カドミウム、またはカルシウム、ならびにそれらの酸化物およびそれらの塩を含み得る。成分は、望ましくは、安定化効果を生成するのに十分な量、および/または、二価状態を有する成分の非存在下でのコロナに対するペプチドの結合レベルよりも高いレベルまで、コロナに対するペプチドの結合を向上させるのに十分な量で存在する。いくつかの場合において、二価状態を有する成分は、望ましくは、コア金属(例えば金)に対して約0.5当量から2.0当量、または任意選択でコア金属(例えば金)に対して約0.75当量から1.5当量の量で存在する。本発明に関して、「当量」は、モル当量であってもよく、例えば、1.0当量の亜鉛は、ナノ粒子のコア内の金原子の数と同じ数の亜鉛原子またはZn2+陽イオンを意味すると解釈され得る。
二価成分は、いくつかの場合において、ナノ粒子のコロナ内に存在してもよい。二価成分は、ナノ粒子の合成プロセスにおける二価成分の含有の結果として、ナノ粒子のコロナ内を含むナノ粒子内に含まれてもよいことが、本明細書において特に企図される。追加的に、または代替的に、二価成分は、ナノ粒子の合成後に添加されてもよい。いくつかの場合において、本発明によれば、亜鉛等の二価成分は、Zn2+およびZnOから選択され得る。例えば、亜鉛は、ZnCl2の形態であってもよい。
さらなる態様において、本発明は、複数の本発明のナノ粒子を提供する。例えば、複数は、100個、1000個、100000個またはそれ以上であってもよい。複数は、会合した形態であってもよく、懸濁液であってもよく、または、単一パッケージ、容器もしくは担体内に共に含有されてもよい。ある特定の場合において、複数は、1つまたは複数の用量(例えば、規定量のペプチドまたはペプチド活性単位)の形態、例えば、治療用量または規定数の用量の形態をとってもよい。
さらなる態様において、本発明は、複数の本発明のナノ粒子と、1種または複数の薬学的に許容される担体または賦形剤とを含む、医薬組成物を提供する。いくつかの場合において、医薬組成物は、静脈内(i.v.)、筋肉内(i.m.)、皮内(i.d.)または皮下(s.c)経路による哺乳動物対象への投与用に製剤化されてもよい。
本発明のさらなる態様において、複数の本発明のナノ粒子を含む医薬組成物は、経鼻送達システムに組み込まれてもよい。そのような送達システムは、典型的には緩衝水溶液中の様々な安定化剤、表面活性剤、浸透剤を含んでもよい。望ましくは、溶液のpHは、鼻粘膜の刺激を最小限化しながら、活性物質の吸収のために浸透が向上するように選択される。これにより、インスリン/GLP-1ナノ粒子等の活性物質の血流への迅速な吸収が可能となる。有用な表面活性剤には、非イオン性薬剤、例えばポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルコールエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルコールエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン水添ヒマシ油、およびそれらの組合せが含まれる。一般に、約9から約22の範囲内の親水性-親油性バランス値を有する表面活性剤が好ましい。ポリエチレングリコールもまた、上述の表面活性剤の代わりに、またはそのような薬剤に加えて使用され得る。約200から約7500、より好ましくは約600から7500の分子量を有するポリエチレングリコールがより好ましい。経鼻送達システム組成物のインスリン含量は、約0.1重量%から約10重量%であってもよい。上限は、沈殿および/または安定性問題の防止の必要性により決定される。
本発明の別の態様において、インスリン/GLP-1ナノ粒子を体内に制御可能に放出するように設計される、埋め込み型組成物が提供される。そのような埋め込み型組成物は、ポリ(グリコール酸)(PGA)、ポリ(乳酸)(PLA)、ポリジオキサノン、ポリオキサレート、ポリ(α-エステル)、ポリ無水物、ポリアセテート、ポリカプロラクトンおよびそれらの組合せ等の1種または複数の生体内分解性ポリマーを含んでもよい。これらのポリマーは、活性物質の放出プロファイルおよび生体内分解性、ひいては吸収を向上させるために、本明細書に記載のような様々な他の成分と組み合わされてもよい。埋込物は、フィルム、微粒子、ディスクの形態、または他の好適な送達形態であってもよい。
本発明の別の態様において、頬の膜に貼り付いて活性物質を制御可能に放出するように設計される、口腔投与剤形が提供される。そのような剤形は、本発明のナノ粒子、具体的にはインスリン/GLP-1ナノ粒子を含有する、本明細書に記載のフィルム組成物の1つまたは複数を含んでもよい。いくつかの態様において、口腔投与剤形は、外側フィルムおよび内側フィルムを含んでもよく、それにより本発明のナノ粒子は、その2つのフィルムの1つまたは複数に存在してもよい。望ましくは、活性物質を含有するナノ粒子は、内側フィルムに存在する。より望ましくは、外側フィルムは、内側フィルムを塞いで頬への接着性を提供し、一方内側フィルムは、外側フィルムに囲まれて本発明のナノ粒子の放出を提供する。そのようにして、活性物質を含有するナノ粒子は、口腔の粘膜に向けて放出される。
また、本発明のナノ粒子は、例えば本発明のフィルム組成物を使用して、舌下に送達されてもよい。吸収は、複数の粘膜を介してもよく、例えば、複数用量が使用されてもよく、または単一用量が複数の膜に作用してもよい。さらに、調剤は、液体媒体中で再構成され、注射用組成物に使用されてもよい。
さらなる態様において、本発明は、少なくとも2つの異なるペプチドの組合せの少なくとも1つの薬力学的および/または薬物動態学的特性を変更する方法であって、
少なくとも2つのペプチドをナノ粒子に結合させる条件下で、少なくとも2つのペプチドの組合せをナノ粒子に接触させるステップ
を含む方法を提供する。ナノ粒子は、本発明の第1の態様に従い説明されるようなナノ粒子であってもよい。具体的には、ナノ粒子は、
(i)金属および/または半導体を含むコアと、
(ii)コアに共有結合により連結した複数のリガンドを含むコロナであり、前記リガンドの少なくとも1つが、炭水化物部分を含む、コロナと
を含んでもよい。
方法は、インスリン、GLP-1、IGF1、IGF2、リラキシン、INSL5、INSL6、INSL7、膵臓ポリペプチド(PP)、ペプチドチロシンチロシン(PTT)、神経ペプチドY、オキシトシン、バソプレッシン、GnRH、TRH、CRH、GHRH/ソマトスタチン、FSH、LH、TSH、CGA、プロラクチン、ClIP、ACTH、MSH、エンドルフィン、リポトロピン、GH、カルシトニン、PTH、インヒビン、hCG、HPL、グルカゴン、ソマトスタチン、メラトニン、チモシン、チムリン、ガストリン、グレリン、チモポエチン、CCK、GIPセクレチン、モチンVIP、エンテログルカゴン、IGF-1、IGF-2、レプチン、アディポネクチン、レジスチン、オステオカルシン、レニン、EPO、カリシトロール、ANP、BNP、ケモカイン、サイトカイン、アディポカイン、および本明細書において列挙されるペプチドのいずれか1つの好適な生物活性類似体からなる群から独立して選択される、少なくとも2つの異なるペプチドの組合せの少なくとも1つの薬力学的および/または薬物動態学的特性を変更する方法であってもよい。いくつかの場合において、前記ペプチドの少なくとも1つは、単量体および/もしくは二量体ヒトインスリンまたはヒトインスリンの好適な類似体を含む。いくつかの場合において、前記ペプチドの少なくとも1つは、GLP-1またはその好適な類似体を含む。いくつかの場合において、少なくとも2つの異なる種のペプチドは、(i)インスリンまたはその類似体と、(ii)GLP-1またはその好適な類似体、ならびにエキセナチドおよびその好適な類似体とを含む。
本発明のこの態様による方法は、哺乳動物対象への前記ペプチドの組合せの投与後に、ペプチドの組合せの生体内分布を向上させるための方法であってもよい。例えば、ナノ粒子に共に結合した2つ以上の異なる種のペプチドの生体内分布は、ナノ粒子に共に結合していない同じペプチドの混合物と比較して向上され得る。
したがって、本発明は、
グルコースチャレンジに応じた対象のグルコース変動幅を低減するため、
対象における生体内分布および/もしくはバイオアベイラビリティを向上させるため、
対象のグルカゴン反応を向上させるため、ならびに/またはインスリンおよびGLP-1が哺乳動物対象に投与された場合に、対象における膵臓インスリン分泌促進作用を低減するための方法であって、
前記インスリンおよび前記GLP-1をナノ粒子に結合させる条件下で、インスリンおよびGLP-1の両方をナノ粒子に接触させ、それによりインスリンおよびGLP-1の両方が結合したナノ粒子を形成するステップ
を含む方法を提供する。
さらなる態様において、本発明は、それを必要とする哺乳動物対象(例えばヒト)における血中グルコースを低下させる方法であって、治療上有効な量の本発明のナノ粒子、例えばコロナに結合したインスリンおよびGLP-1を有するナノ粒子を投与するステップを含む方法を提供する。
さらなる態様において、本発明は、それを必要とする哺乳動物対象における糖尿病を治療する方法であって、治療上有効な量の本発明のナノ粒子、例えばコロナに結合したインスリンおよびGLP-1を有するナノ粒子を投与するステップを含む方法を提供する。本発明のナノ粒子またはナノ粒子を含む医薬組成物は、任意の好適な投与経路により対象に投与され得る。具体的な場合において、本発明のナノ粒子または前記ナノ粒子を含む医薬組成物は、静脈内(i.v.)、筋肉内(i.m.)、皮内(i.d.)または皮下(s.c.)投与されてもよい。
さらなる態様において、本発明は、医学的治療方法における使用のための本発明のナノ粒子を提供する。ナノ粒子は、例えば、1つ、または典型的には複数の本発明のナノ粒子を、1種または複数の薬学的に許容される賦形剤または担体と組み合わせることにより、薬学的使用のために製剤化され得る。本発明のナノ粒子または前記ナノ粒子を含む医薬組成物は、対象への任意の好適な送達経路による投与用に製剤化され得る。特に、本発明のナノ粒子または前記ナノ粒子を含む医薬組成物は、静脈内(i.v.)、筋肉内(i.m.)、皮内(i.d.)または皮下(s.c.)投与用に製剤化され得る。
さらなる態様において、本発明は、それを必要とする哺乳動物対象における血中グルコースを低下させる、および/またはそれを必要とする哺乳動物対象における糖尿病を治療する方法における使用のための、本発明のナノ粒子(例えばコロナに結合したインスリンおよびGLP-1を有するナノ粒子)を提供する。
さらなる態様において、本発明は、それを必要とする哺乳動物対象における血中グルコースを低下させる、および/または糖尿病を治療する方法における使用のための医薬の調製における、本発明のナノ粒子(例えばコロナに結合したインスリンおよびGLP-1を有するナノ粒子)の使用を提供する。
対象は、ヒト、または様々な家畜、農業動物、実験動物もしくはペット用動物、例えばイヌ、ネコ、ウシ、ヒツジ、ブタ、ウマ、ヒト以外の霊長類、マウス、ラットもしくはウサギであってもよい。いくつかの場合において、対象は、糖尿病(1型糖尿病、2型糖尿病、インスリン耐性または妊娠性糖尿病を含む)を有する、またはその発症のリスクを有すると診断されている。追加的に、または代替として、対象は、膵炎(インスリンまたはGLP-1誘導膵炎を含む)を有する、またはその発症のリスクを有してもよい。
さらなる態様において、本発明は、
少なくとも1つの本発明のナノ粒子と、
少なくとも1つのナノ粒子を収容するための容器と、
添付文書および/またはラベルと
を備える製造品を提供する。
本発明のある特定の実施形態を参照しながら本明細書において説明されるように、ペプチドは、ナノ粒子を生理溶液に接触させると、結合したペプチドの少なくとも一部または一部分がナノ粒子から放出されるように結合していてもよい。本明細書において説明されるように、ペプチドは、ペプチドが、結合している間安定化される(例えば熱安定化される)が、生物学的に活性な形態で放出可能および利用可能である(例えば、結合ペプチドのそれぞれがELISAにより検出可能である、および/または、遊離ペプチドの特徴であるin vitroもしくはin vivo系における少なくとも1つの生物学的作用を発揮することができるように放出可能である)ように、ナノ粒子に結合していてもよい。特に、ペプチドが(ヒト)インスリンを含む場合、ナノ粒子への結合は、ナノ粒子の懸濁液が、(ヒト)インスリンに対するELISAにおいて肯定的結果をもたらす、および/または哺乳動物対象への投与後にその対象における血中グルコースレベルに影響を与えるようであってもよい。
ナノ粒子からの結合ペプチド分子の解離に関して、2段階または複数段階の放出(例えば、最初の高速放出に次ぐ、より遅い後続の放出段階)を含む、様々な放出反応速度論が企図される。例えば、放出は、ナノ粒子からの異なる種の結合ペプチド分子の1つまたは複数の数秒または数分以内の急速解離に次ぐ、少なくとも2時間、4時間、6時間、8時間またはそれ以上の期間にわたるさらに持続的な放出を含み得る。そのような放出反応速度論は、ある特定の状況、例えば、遊離ペプチドの注射等に比べて持続的作用が望ましい場合において有利となり得る。
フィルム形成マトリックスの混合
上述のように、本発明の活性成分は、フィルム剤形の形態で提供されてもよい。そのような実施形態において、流動性フィルム形成マトリックスは、本発明の教示に従って、含量が均一となるように調製される。均一性は、流動性物質がフィルムとして形成され乾燥される際に維持されるべきである。本発明の乾燥プロセスの間、いくつかの因子によって、活性成分を安全な温度に、すなわち劣化が生じる温度未満に維持しながら、フィルム内の均一性がもたらされる。まず、本発明のフィルムは、全温度暴露が可能な限り最小限となるように、通常はわずか約数分の極めて短い熱履歴を有する。フィルムは、成分の凝集および移動を防止するとともに、内部での発熱を防止するために、制御可能に乾燥される。フィルムは、底部から乾燥されてもよい。しかしながら、いずれの乾燥方法においても、最初の15分の乾燥以内、望ましくは最初の10分の乾燥以内、さらにより好ましくは最初の4分の乾燥以内に粘弾性フィルムを急速に形成することが望ましい。短時間の熱暴露および蒸発冷却により、薬物または揮発性活性物質等のフィルム成分は、高温により影響を受けず、活性薬剤の微小粒子は、非凝集状態に維持される。一方、上部表面上の被膜形成は、フィルム内のエネルギーが増加した液体担体分子を捕捉し、それにより、フィルム内の温度を上昇させ、活性成分を潜在的に有害な高い温度に暴露する。好ましくは、フィルムの内部は、中に含有される活性物質の劣化が生じるレベルに到達せず、または、生じる場合には、劣化はフィルムの有効性に影響しない。粘弾性フィルムの急速形成が達成されたら、単位用量当たりの活性物質含量の均一性を「固定」するために、フィルムは、例えば熱、放射線、または他の乾燥源への暴露によりさらに乾燥されてもよい。このようにして形成された粘弾性フィルムをさらに乾燥させるステップは、フィルム内の水または溶媒含量を、10重量%未満、8重量%未満、6重量%未満、4重量%未満、または2重量%未満まで低減し得る。
次に、制御乾燥および表面被膜形成がないことに起因して、フィルム内で熱混合が生じる。熱混合は、フィルム内の対流により生じる。フィルムの底部に熱が加えられると、底部付近の液体は温度上昇し、膨張し、より低密度となる。したがって、このより高温の液体は上昇し、より低温の液体が置き換わる。上昇中、より高温の液体はより低温の液体と混合し、それと熱エネルギーを共有する、すなわち熱を移動させる。サイクルが反復するにつれて、熱エネルギーはフィルム全体にわたり広がる。
本発明の制御乾燥プロセスにより達成される確実な熱混合は、フィルム全体にわたる均一な熱拡散をもたらす。そのような熱混合がない場合、「ホットスポット」が発達し得る。フィルム内の熱のポケットは、フィルム内の粒子凝集物または危険領域の形成、およびその結果としての不均一性をもたらす。そのような凝集物または集塊の形成は、活性物質が不規則に分布し得る不均一フィルムをもたらすため、望ましくない。そのような一様でない分布は、フィルム当たりの活性物質の量の大きな差をもたらす可能性があり、これは、安全性および有効性の観点から問題となる。
さらに、熱混合は、フィルム内のより低い全体温度の維持に役立つ。フィルム表面は、活性成分が劣化する温度を超える温度に暴露され得るが、フィルム内部はこの温度に達し得ない。この温度差により、活性物質は、実現可能な活性物質の量を望ましくない量に低減するレベルまで劣化しない。すなわち、乾燥中にある程度の活性物質の劣化は生じ得るが、残りの活性物質は、以下で説明されるように、活性物質の標的レベルの約10%以内である。
例えば、本発明のフィルムは、所望の溶媒含量を達成するために、15分以下、望ましくは10分以下の期間乾燥されてもよい。フィルムを80℃で10分間乾燥させると、約5℃の温度差が生じる。これは、10分間の乾燥後、フィルムの内部の温度が、外部暴露温度より5℃低いことを意味する。しかしながら、多くの場合において、10分未満、例えば4分から6分の乾燥時間で十分である。4分間の乾燥は、約30℃の温度差をもたらすことができ、6分間の乾燥は、約25℃の差をもたらすことができる。そのような大きな温度差により、フィルムは、熱に敏感な活性物質を劣化させることなく、効率的な高い外部温度で乾燥され得る。溶媒含量をさらに低いレベルに低減するために、さらなる乾燥が使用されてもよい。
機械的混合後、フィルムは、乾燥プロセス中の連続的熱混合のためにコンベヤ上に設置され得る。乾燥プロセスの最初に、フィルムは、好ましくは、コンベヤで移動する際に底部から加熱される。熱は、これに限定されないが、乾燥器等の加熱機構によりフィルムに供給され得る。フィルムが加熱されると、液体担体、または揮発性物質が蒸発し始める。また、より高温の液体が上昇し、より低温の液体が置き換わる際に熱混合が発生する。フィルムの上部表面上に被膜が形成されないため、揮発性液体は蒸発し続け、熱混合はフィルム全体にわたり熱エネルギーを分配し続ける。十分な量の揮発性液体が蒸発したら、熱混合はフィルム全体にわたり均一な熱拡散を発生させている。成分は、望ましくは、フィルム全体にわたり均一な分布に固定される。粘弾性固体を急速に、例えば最初の15分以内、望ましくは最初の10分以内、より好ましくは最初の6分以内、最も望ましくは最初の0.5分から4分以内に形成することが望ましくなり得る。粘弾性フィルムの形成後に少量の液体担体、すなわち水、水/アルコール担体、または他の好適な担体が残留し得るが、所望により、活性物質含量の所望の均一性およびフィルムの不均質性に影響することなく、フィルムをさらに乾燥させてもよい。さらなる乾燥において、望ましくは、最終フィルム内に10%未満の溶媒が残留するように、より望ましくは8%未満の溶媒が残留するように、最も望ましくは6%未満の溶媒が残留するように粘弾性固体から溶媒を除去することにより、最終フィルムが形成される。
乾燥中のフィルムマトリックスの内部温度は、望ましくは約100℃未満、望ましくは約70℃未満、約60℃未満、約50℃未満、約40℃未満、または約30℃未満である。フィルムが乾燥される外部温度は、内部温度より高くてもよく、例えば、40℃以上、50℃以上、60℃以上、70℃以上であってもよく、80℃以上であってもよく、または100℃以上であってもよい。フィルムは、約数分未満等の短期間、約100℃以上等の高温に暴露されてもよい。例えば、フィルムを乾燥させるために使用される空気温度は、約130℃以上であってもよく、上限は、具体的な配合(例えば、溶媒、ポリマー、充填剤等の種類および量)および使用される活性物質により決定される。空気温度はまた、本明細書において説明されるように、粘弾性フィルムを急速に形成して含量の均一性を固定するために必要な乾燥の長さにより決定される。
さらに、粒子または粒子状物質は、フィルム形成組成物または材料がフィルムにキャストされた後に、組成物または材料に添加されてもよい。例えば、粒子は、フィルムの乾燥前にフィルムに添加されてもよい。粒子は、好適な技術により、例えば、フィルムの表面にわずかにまたは軽く接触してフィルム表面上に粒子を制御可能に配置するドクターブレードの使用により、フィルムに制御可能に計量供給されてフィルム上に配置されてもよい。他の好適な、ただし限定されない技術は、粒子をフィルム表面上に設置するための追加のローラの使用、フィルム表面への粒子の噴霧等を含む。粒子は、対置するフィルム表面のいずれかまたは両方、すなわち上部および/または底部フィルム表面上に配置されてもよい。望ましくは、粒子は、フィルム上に固定可能に配置され、例えばフィルム内に埋設される。さらに、そのような粒子は、望ましくは、フィルム内に完全に封入または完全に埋設されず、粒子が部分的に埋設または部分的に封入される場合のように、フィルムの表面に露出したままである。
フィルムの厚さの監視および制御もまた、均一な厚さのフィルムを提供することによる均一なフィルムの生成に寄与する。フィルムの厚さは、βゲージ等のゲージ用いて監視することができる。ゲージは、フィードバックループを通して通信し、コーティング装置内の開口を制御および調節して、均一なフィルム厚の制御をもたらすように、乾燥装置、すなわち乾燥炉またはトンネル乾燥器の端部の別のゲージに接続されてもよい。あるいは、フィルムの厚さはまた、生成プロセス中に手動測定により制御され、フィルムの所望の厚さを達成してもよい。
フィルム生成物は、一般に、適切に選択されたポリマーおよび極性溶媒、ならびに所望により任意の薬剤または充填剤を組み合わせることにより形成される。望ましくは、組合せの溶媒含量は、組合せ全体の少なくとも約30重量%である。この組合せにより形成される材料は、望ましくはロールコーティングによりフィルムとして形成され、次いで、望ましくは急速および制御乾燥プロセスにより乾燥されて、フィルムの均一性、より具体的には非自己凝集性の均一な不均質性が維持される。結果として生じるフィルムは、望ましくは、約10重量%未満の溶媒、より望ましくは約8重量%未満の溶媒、さらにより望ましくは約6重量%未満の溶媒、最も望ましくは約2%未満の溶媒を含有する。溶媒は、水、エタノール、イソプロパノール、アセトン、塩化メチレン、またはそれらの任意の組合せを含むがこれらに限定されない極性有機溶媒であってもよい。
また、これらに限定されないが、レオロジー特性、粘度、混合方法、キャスト方法および乾燥方法等の上記パラメータの考慮は、本発明の異なる成分のための材料選択に影響する。さらに、適切な材料選択に関するそのような考慮は、単位体積当たり10%以下の医薬的および/または化粧品の活性物質の分散、または、フィルム生成物の単位体積当たり十重量パーセント(10重量%)以下の、活性物質担持成分(例えばナノ粒子)の分散を有する、医薬的および/または化粧品としての剤形またはフィルム生成物を含む、本発明の組成物を提供する。組成の均一な分布は、フィルムから実質的に等しいサイズの個々の単位用量を調製することにより測定することができ、実質的に等しいサイズの個々の単位用量は、活性成分の10%を超えて互いに変動しない。
換言すれば、本発明の均一性は、マトリックス全体にわたり10重量%以下の医薬成分、生物学的成分、生体作用性成分、活性物質含有成分および/もしくは化粧料の分散の存在により決定され得、または、換言すれば、同じフィルムから切断された実質的に等しいサイズの用量単位は、活性物質含量の目標レベルの約10%を超えて互いに変動しない。望ましくは、分散は、5重量%未満、2重量%未満、1重量%未満、または0.5重量%未満である。
いくつかの実施形態において、組成の均一性は、活性物質の目標または所望のレベルに関して測定され得る。フィルムは、各単位用量中に目標レベルの活性物質を提供するように調製される。組成の均一性は、個々の単位用量のそれぞれが、活性物質の目標レベルの10(重量)%以下で変動する場合に達成される。より望ましくは、各単位用量は、活性物質の目標レベルの8%以下、活性物質の目標レベルの6%以下、または活性物質の目標レベルの4%以下で変動する。さらに、プロセス中に活性物質の任意の劣化が生じる場合、劣化していない残りの活性物質の量は、目標レベルの10%以内、目標レベルの約8%以内、または目標レベルの約6%以内、または目標レベルの約4%以内となるべきである。
フィルム形成ポリマー
本発明のフィルム単位は、少なくとも1種の水溶性ポリマーを含む。また、フィルムは、所望により、水膨潤性または水不溶性ポリマーを含んでもよい。
いくつかの実施形態において、自立型フィルムは、水溶性である糖ベースのポリマーを含む。例えば、糖ベースのポリマーは、セルロースまたはセルロース誘導体であってもよい。有用な糖ベースの水溶性ポリマーの具体例は、これらに限定されないが、ポリデキストロース、プルラン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシエチルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、トラガカントガム、グアーガム、アカシアガム、アラビアガム、デンプン、ゼラチン、およびそれらの組合せを含む。
いくつかの実施形態において、糖ベースのポリマーは、少なくとも1種のセルロース系ポリマー、ポリデキストロースまたはそれらの組合せであってもよい。また、フィルムは、非糖ベースの水溶性または水不溶性ポリマーを含み得る。非糖ベースの水溶性ポリマーの例は、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリアクリル酸、メチルメタクリレートコポリマー、カルボキシビニルコポリマー、およびそれらの組合せを含む。有用な水不溶性ポリマーの具体例は、これらに限定されないが、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルエチルセルロース、酢酸フタル酸セルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびそれらの組合せを含む。
いくつかのさらに好ましい実施形態において、ポリマーは、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびポリエチレンオキシドの組合せである。いくつかの他の好ましい実施形態において、ポリマーは、ポリデキストロースおよびポリエチレンオキシドの組合せである。さらに好ましい実施形態において、ポリマーは、ポリデキストロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびポリエチレンオキシドの組合せである。
本明細書において使用される場合、「水溶性ポリマー」という語句およびその変化形は、少なくとも部分的に水に可溶である、望ましくは完全にまたは大部分が水に可溶である、または水を吸収するポリマーを指す。いくつかの実施形態において、本発明のフィルム単位は、湿潤物質に暴露されると少なくとも部分的に溶解可能である。いくつかの他の実施形態において、本発明のフィルム単位は、湿潤物質に暴露されると実質的に溶解可能である。
水を吸収するポリマーは、しばしば水膨潤性ポリマーと呼ばれる。本発明に関して有用な材料は、室温および他の温度、例えば室温を超える温度で水溶性または水膨潤性であってもよい。さらに、材料は、大気圧未満の圧力で水溶性または水膨潤性であってもよい。望ましくは、水溶性ポリマーは、少なくとも20重量パーセントの吸水量を有する水溶性または水膨潤性ポリマーであってもよい。25重量パーセント以上の吸水量を有する水膨潤性ポリマーもまた有用である。そのような水溶性ポリマーから形成された本発明のフィルムまたは剤形は、望ましくは、体液との接触後に溶解可能であるように十分水溶性である。
本発明のフィルムへの組込みに有用な他のポリマーは、生体分解性ポリマー、コポリマー、ブロックポリマーおよびそれらの組合せを含む。上記の基準を満たす既知の有用なポリマーまたはポリマークラスには、ポリ(グリコール酸)(PGA)、ポリ(乳酸)(PLA)、ポリジオキサノン、ポリオキサレート、ポリ(α-エステル)、ポリ無水物、ポリアセテート、ポリカプロラクトン、ポリ(オルトエステル)、ポリアミノ酸、ポリアミノカーボネート、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリ(アルキルシアノアクリレート)、ならびにそれらの混合物およびコポリマーが含まれる。さらなる有用なポリマーは、L-およびD-乳酸のステレオポリマー、ビス(p-カルボキシフェノキシ)プロパン酸およびセバシン酸のコポリマー、セバシン酸コポリマー、カプロラクトンのコポリマー、ポリ(乳酸)/ポリ(グリコール酸)/ポリエチレングリコールコポリマー、ポリウレタンおよびポリ(乳酸)のコポリマー、α-アミノ酸のコポリマー、α-アミノ酸およびカプロン酸のコポリマー、グルタミン酸α-ベンジルおよびポリエチレングリコールのコポリマー、スクシネートおよびポリ(グリコール)のコポリマー、ポリホスファゼン、ポリヒドロキシ-アルカノエート、ならびにそれらの混合物を含む。二元および三元系が企図される。
有用な他の具体的なポリマーは、MedisorbおよびBiodelの商標で市販されているものを含む。Medisorb材料は、Wilmington、DelawareのDupont Companyにより市販されており、一般に、「ヒドロキシ酢酸のヒドロキシポリマーを含む、プロパン酸2-ヒドロキシ-ポリマー」を含有する「ラクチド/グリコリドコポリマー」として同定されている。4種のそのようなポリマーは、338°F〜347°F(170℃〜175℃)の範囲内の融点を有する100%ラクチドと考えられるラクチド/グリコリド100L;437°F〜455°F(225℃〜235℃)の範囲内の融点を有する100%グリコリドと考えられるラクチド/グリコリド100L;338°F〜347°F(170℃〜175℃)の範囲内の融点を有する85%ラクチドおよび15%グリコリドと考えられるラクチド/グリコリド85/15;ならびに、338°F〜347°F(170℃〜175℃)の範囲内の融点を有する50%ラクチドおよび50%グリコリドのコポリマーと考えられるラクチド/グリコリド50/50を含む。
Biodel材料は、化学的に異なる様々なポリ無水物のファミリーである。
多種多様なポリマーが使用され得るが、乾燥前に混合物の所望の粘度を提供するようにポリマーを選択することが望ましい。例えば、薬剤または他の成分が選択された溶媒に可溶でない場合、均一性の維持を補助するためにより大きな粘度を提供するポリマーが望ましい。一方、成分が溶媒に可溶である場合、より低い粘度を提供するポリマーが好ましい場合がある。
ポリマーは、フィルムの粘度に影響を与える上で重要な役割を担う。粘度は、溶液、エマルジョン、コロイドまたは懸濁液中の局所剤の安定性を制御する、液体の1つの特性である。一般に、マトリックスの粘度は、約400cpsから約100000cpsまで、好ましくは約800cpsから約60000cpsまで、最も好ましくは約1000cpsから約40000cpsまで変動する。望ましくは、フィルム形成マトリックスの粘度は、乾燥プロセスの開始後に急速に増加する。
粘度は、マトリックス内の他の成分に依存して、選択された局所剤成分に基づき調節され得る。例えば、成分が選択された溶媒に可溶でない場合、結果として生じるフィルムの均一性に悪影響を与える成分の沈降を防止するように、適切な粘度が選択され得る。粘度は、異なる手法で調節されてもよい。フィルムマトリックスの粘度を増加させるために、より高い分子量のポリマーが選択されてもよく、または、カルシウム、ナトリウムおよびカリウムの塩等の架橋剤が添加されてもよい。また、粘度は、温度を調節することにより、または粘度増加成分を添加することにより調節され得る。粘度を増加させる、またはエマルジョン/懸濁液を安定化する成分は、限定されることなく、アルギネート、カラギーナン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ローカストビーンガム、グアーガム、キサンタンガム、デキストラン、アラビアガム、ジェランガムおよびそれらの組合せを含む、より高分子量のポリマーおよび多糖およびガムを含む。
また、単独で使用される場合、可撓性フィルムを実現するために通常は可塑剤を必要とするある特定のポリマーが、可塑剤なしで組み合わされても可撓性フィルムを実現することができることが観察されている。例えば、HPMCおよびHPCは、組み合わされて使用されると、製造および保存に適切な可塑性および弾性を有する可撓性の強固なフィルムをもたらす。可撓性のために、追加の可塑剤またはポリアルコールは必要ない。
さらに、ポリエチレンオキシド(PEO)は、単独または親水性セルロース系ポリマーおよび/またはポリデキストロースと組み合わせて使用されると、可撓性の強固なフィルムを実現する。可撓性のために、追加の可塑剤またはポリアルコールは必要ない。PEOとの組合せに好適なセルロース系ポリマーの限定されない例は、HPCおよびHPMCを含む。PEOおよびHPCは、本質的にゲル化温度を有さないが、HPMCは、58〜64℃のゲル化温度を有する(Dow Chemical Co.から入手可能なMethocel EF)。さらに、これらのフィルムは、実質的に有機溶媒を含まない場合であっても十分に可撓性であり、この有機溶媒は、フィルム特性を損なうことなく除去され得る。したがって、溶媒が存在しない場合、フィルム中に可塑剤は存在しない。また、PEOベースのフィルムは、ポリマー成分が適切なレベルのPEOを含有する場合、良好な引裂き抵抗を示し、カールをほとんど示さず、または示さず、急速な溶解速度を示す。
所望のフィルム特性を達成するために、ポリマー成分中のPEOのレベルおよび/または分子量が変化されてもよい。PEO含量の変更は、引裂き抵抗、溶解速度、および接着傾向に影響する。したがって、フィルム特性を制御するための1つの方法は、PEO含量を変更することである。例えば、いくつかの実施形態において、速溶性フィルムが望ましい。ポリマー成分の含量を変更することにより、所望の溶解特性を達成することができる。
本発明によれば、PEOは、望ましくは、ポリマー成分中約20重量%から100重量%の範囲である。いくつかの実施形態において、PEOの量は、望ましくは、約1mgから約200mgの範囲である。親水性セルロースポリマーおよび/またはポリデキストロースは、約0重量%から約80重量%の範囲であるか、または、PEOとの比が最大約4:1、望ましくは比が約1:1である。
いくつかの実施形態において、ある特定のフィルム特性を促進するために、PEOレベルを変化させることが望ましい場合がある。高い引裂き抵抗および急速な溶解速度を有するフィルムを得るために、ポリマー成分中約50%以上のPEOレベルが望ましい。接着防止、すなわちフィルムが口蓋に接着するのを防止することを達成するためには、約20%から75%のPEOレベルが望ましい。しかしながら、いくつかの実施形態においては、例えば動物または子供への投与のために、口蓋への接着が望ましい場合がある。そのような場合、より高いレベルのPEOが使用され得る。より具体的には、フィルムの構造的完全性および溶解は、使用目的に依存して、フィルムが粘膜に接着して容易に取り外すことができるように、または、より強固に接着して取り外しが困難となり得るように制御することができる。
また、PEOの分子量が変化されてもよい。フィルムの粘膜接着を増加させるためには、約400万等の高分子量PEOが望ましい場合がある。より望ましくは、分子量は、約100000から900000、より望ましくは約100000から600000、最も望ましくは約100000から300000の範囲であってもよい。いくつかの実施形態において、ポリマー成分中、高分子量(600000から900000)PEOを低分子量(100000から300000)PEOと組み合わせることが望ましい場合がある。
例えば、ある特定のフィルム特性、例えば急速な溶解速度および高い引裂き抵抗は、少量の高分子量PEOをより大量の低分子量PEOと組み合わせることにより達成され得る。望ましくは、そのような組成物は、PEOブレンドポリマー成分中、約60%以上のレベルの低分子量PEOを含有する。
接着防止、急速な溶解速度、および良好な引裂き抵抗の特性を均衡化するために、望ましいフィルム組成物は、任意選択で少量の高分子量PEOと組み合わせた全組成物の約50%から75重量%の低分子量PEOを含んでもよく、ポリマー成分の残りは、親水性セルロース系ポリマー(HPCもしくはHPMC)および/またはポリデキストロースを含有する。
いくつかの実施形態において、フィルムは、単独または少なくとも1種の追加のポリマーと組み合わせたポリビニルアルコール(PVA)を含んでもよい。追加のポリマーの例は、セルロース系ポリマー、デンプン、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリエチレンオキシド(PEO)、アルギネート、ペクチン、またはそれらの組合せを含む。PVAは、フィルム強度を改善するため、ならびに/または溶解時間を変動させる、および遅らせるために、フィルム中に使用することができる。フィルムは、化粧品、栄養補助食品および医薬の送達に特に有用である。好ましい実施形態において、フィルムは、PVAを含み、いかなる可塑剤も添加されない。例えば、フィルムは、フィルムに強度を提供するPVA、およびフィルムに可撓性を提供するPEOの両方を含むことができ、可塑剤の必要性を排除し得る。
PVAは、生成物の用途および所望の特性に依存して、様々な量で使用することができる。例えば、一般に、より大量のPVAは、フィルム強度を増加させ、溶解時間を増加させる。高い活性物質用量を必要とするフィルムにおいては、PVAは、フィルム強度を改善するために、フィルムの0.5重量%、好ましくは1重量%、より好ましくは5重量%という最小量で効果的に使用することができる。PVAは、最大量で、例えばフィルムの80重量%、好ましくは50重量%、より好ましくは25重量%で効果的に使用することができる。溶解時間を遅らせるためには、PVAは、80%という高いレベルで使用することができる。活性物質を含有するフィルムは、フィルムの溶解およびフィルムからの活性物質の放出を変更するために、表面の一方または両方をPVA含有層でコーティングされ得る。
高い配合量の活性物質は、フィルムの強度および可撓性を低減し得る。単独で、または少なくとも1種の他のポリマーと組み合わせてPVAをフィルムに含有させると、フィルムの引張強度が増加し得る。また、薬物粒子または風味をマスクした、もしくはコーティングした、もしくは放出調節された薬物粒子は、より大きな粒径を有し得、これは、それらの粒子をフィルム内に配合することを困難とし得る。PVAは、フィルム溶液の粘度を増加させ、薬物配合の改善を可能とし得る。
制御放出フィルム
「制御放出」という用語は、予め選択された、または所望の速度での成分の放出を意味するように意図される。例えば、フィルムがフィルム本体内にナノ粒子を含む実施形態において、フィルムからのその放出を制御することが望ましい場合がある。この速度は、用途に依存して変動する。望ましい速度は、急速または即時放出プロファイル、および遅延、持続または逐次放出を含む。放出パターンの組合せ、例えば、活性物質の最初の急激な放出に続く、より低レベルの持続放出が企図される。薬剤のパルス放出もまた企図される。
溶解性フィルムは、一般に、即溶解性、中間溶解性、および徐溶解性の3つの主要なクラスに分類される。本発明のフィルムは、液体の存在下で、例えば使用者の口腔内で、または水等の液体と混合された時に溶解可能である。即溶解性フィルムは、一般に、約1秒から約30秒で溶解する。中間溶解性フィルムは、一般に、約1分から約30分で溶解し、徐溶解性フィルムは、一般に、30分超、例えば最長約60分以上で溶解する。即溶解性フィルムは、低分子量親水性ポリマー(すなわち、約1000から200000の間の分子量を有するポリマー)からなってもよい。一方、徐溶解性フィルムは、一般に、高分子量ポリマー(すなわち数百万の分子量を有する)を有する。
中間溶解性フィルムは、即溶解性フィルムと徐溶解性フィルムとの間に該当する傾向を有する。中間溶解性フィルムは、幾分速やかに溶解するだけでなく、良好なレベルの粘膜接着性も有し得る。中間フィルムはまた、可撓性であり、速やかに湿潤可能であり、典型的には使用者に対する刺激性を有さない。口内溶解性フィルムの場合、中間溶解性フィルムが好ましいが、これは、そのようなフィルムが、十分速やかな溶解速度(約1分から約5分の間)を提供しながら、フィルムが使用者の口腔内に設置されると容易に取り外すことができないような、許容される粘膜接着レベルを提供するためである。
また、本発明のフィルム用に選択されるポリマーは、成分の制御崩壊を可能とするように選択され得る。これは、経時的にフィルムから放出されるナノ粒子を組み込んだ実質的に水不溶性のフィルムを提供することにより達成することができる。これは、多種多様な可溶性または不溶性ポリマーを組み込むことにより達成することができ、それに組み合わせて生体分解性ポリマーも含むことができる。あるいは、ナノ粒子の制御放出特性を達成するために、コーティングされた制御放出薬剤粒子が、容易に可溶なフィルムマトリックス内に組み込まれてもよい。
定期的に複数の単一用量を投与することとは対照的な、長期間制御された様式で成分を放出する医薬の1つの単一用量を投与する利便性は、製薬技術分野において長い間認識されている。一貫した均一なレベルの医薬を長期間にわたり身体に送達させる上での患者および臨床医学者に対する利点もまた、同様に認識されている。
いくつかの実施形態において、フィルムの侵食または崩壊(例えば滞留時間)は、因子の組合せにより制御することができる。1つの因子は、フィルムの厚さであってもよく、その物理的寸法により、体内、例えば口腔内でのより厚いフィルムの崩壊は、口腔投与剤形と同様に、より薄い寸法を有するフィルムよりも遅くなるように設計される。さらに、ポリマーの量および種類、ならびに/またはポリマーの分子量の選択、さらに添加剤または崩壊助剤の包含を使用して、滞留時間を変動させることができる。ポリマーの選択および添加剤の包含は、所望の滞留時間を達成するために、単独で、または異なる厚さの使用と組み合わせて使用されてもよい。これらの因子は、所望の時間での活性物質の放出を達成する能力を有する。
任意選択の成分
様々な他の成分および充填剤がまた、本発明のフィルムに添加されてもよい。これらは、限定されることなく、界面活性剤;混合物内の成分の適合化を補助する可塑剤;ポリアルコール;フィルムから酸素を放出することによってより滑らかなフィルム表面を促進する消泡剤、例えばシリコーン含有化合物;ならびに、成分の分散の維持に役立つ熱硬化性ゲル、例えばペクチン、カラギーナン、およびゼラチンを含み得る。
本発明の組成物に組み込むことができる様々な添加剤は、多種多様な機能を提供し得る。添加剤のクラスの例は、賦形剤、潤滑剤、緩衝剤、安定剤、発泡剤、顔料、着色剤、充填剤、増量剤、香料、剥離調整剤、アジュバント、可塑剤、フロー促進剤、離型剤、ポリオール、造粒剤、希釈剤、結合剤、緩衝剤、吸着剤、流動促進剤、接着剤、接着防止剤、酸味料、柔軟剤、樹脂、粘滑剤、溶媒、界面活性剤、乳化剤、エラストマーおよびそれらの混合物を含む。これらの添加剤は、活性要素とともに添加されてもよい。
有用な添加剤には、例えば、ゼラチン、植物性タンパク質、例えばヒマワリタンパク質、大豆タンパク質、綿実タンパク質、落花生タンパク質、ブドウ種子タンパク質、乳漿タンパク質、血漿タンパク質、卵タンパク質、アクリル化タンパク質、水溶性多糖、例えばアルギネート、カラギーナン、グアーガム、寒天、キサンタンガム、ジェランガム、アラビアガムおよび関連ガム(ガティガム、カラヤガム、トラガカントガム)、ペクチン、セルロースの水溶性誘導体:アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロースおよびヒドロキシアルキルアルキルセルロース、例えばメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、セルロースエステルおよびヒドロキシアルキルセルロースエステル、例えば酢酸フタル酸セルロース(CAP)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC);カルボキシアルキルセルロース、カルボキシアルキルアルキルセルロース、カルボキシアルキルセルロースエステル、例えばカルボキシメチルセルロースおよびそのアルカリ金属塩;水溶性合成ポリマー、例えばポリアクリル酸およびポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸およびポリメタクリル酸エステル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテートフタレート(PVAP)、ポリビニルピロリドン(PVP)、PVY/酢酸ビニルコポリマー、ならびにポリクロトン酸を含み、またフタル酸化ゼラチン、コハク酸ゼラチン、架橋ゼラチン、シェラック、デンプンの水溶性化学誘導体、3級または4級アミノ基等、例えば所望により4級化されていてもよいジエチルアミノエチル基を有する陽イオン改質アクリレートおよびメタクリレート;ならびに他の同様のポリマーも好適である。
そのような体質顔料は、任意選択で、全ての成分の重量を基準として、望ましくは約80%までの範囲内、望ましくは約3%から50%、より好ましくは3%から20%の範囲内の任意の所望量で添加され得る。
さらなる添加剤は、望ましくは全ての成分の重量を基準として約0.02重量%から約3重量%、望ましくは約0.02%から約1%の濃度範囲の、流動促進剤および乳白剤、例えばマグネシウムアルミニウム、ケイ素、チタン等の酸化物であってもよい。
添加剤のさらなる例は、ポリマーの重量を基準として約0.5%から約30%の範囲、望ましくは約0.5%から約20%の範囲の濃度で添加される、ポリアルキレンオキシド、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレン-プロピレングリコール、低分子量を有する有機可塑剤、例えばグリセロール、グリセロールモノアセテート、ジアセテートまたはトリアセテート、トリアセチン、ポリソルベート、セチルアルコール、プロピレングリコール、ソルビトール、ジエチルスルホコハク酸ナトリウム、クエン酸トリエチル、クエン酸トリブチル等を含む可塑剤である。
さらに、デンプン物質のテクスチャを改善するために、望ましくは水素化形態の動物性または植物性脂肪、特に室温で固体であるもの等の化合物が添加されてもよい。これらの脂肪は、望ましくは、50℃以上の融点を有する。C12、C14、C16、C18、C20およびC22脂肪酸とのトリグリセリドが好ましい。これらの脂肪は、体質顔料または可塑剤を添加することなく単独で添加することができ、また、単独で、あるいはモノおよび/もしくはジグリセリドまたはホスファチド、特にレシチンとともに有利に添加することができる。モノおよびジグリセリドは、望ましくは、上述の脂肪の種類、すなわちC12、C14、C16、C18、C20およびC22脂肪酸から誘導される。
脂肪、モノ、ジグリセリドおよび/またはレシチンの全使用量は、全組成物の最大約5重量%、好ましくは約0.5重量%から約2重量%の範囲内である。
二酸化ケイ素、ケイ酸カルシウム、または二酸化チタンを、全組成物の約0.02重量%から約1重量%の濃度で添加することがさらに有用である。これらの化合物は、乳白剤および流動助剤として機能する。
これらの添加剤は、その使用目的を達成するのに十分な量で使用されるべきである。一般に、これらの添加剤のいくつかの組合せは、活性要素の全体的な放出プロファイルを改変し、放出を変更する、すなわち遅らせる、または促進するために使用され得る。
レシチンは、本発明における使用のための1種の表面活性剤である。レシチンは、約0.25重量%から約2.00重量%の量で原料に含めることができる。他の表面活性剤、すなわち界面活性剤は、これらに限定されないが、セチルアルコール、ラウリル硫酸ナトリウム、ICI Americas, Inc.から市販されているSpans(商標)およびTweens(商標)を含む。エトキシル化ヒマシ油、例えばBASF社から市販されているCremophor(登録商標)ELを含むエトキシル化油もまた有用である。Carbowax(商標)は、本発明において非常に有用なさらに別の改質剤である。Tweens(商標)または表面活性剤の組合せは、所望の親水性-親油性バランス(「HLB」)を達成するために使用され得る。しかしながら、本発明は、界面活性剤の使用を必要とせず、本発明のフィルムまたはフィルム形成組成物は、界面活性剤を本質的に含まないが、それでも本発明の所望の均一性の特徴を提供することができる。
本発明の手順および生成物を向上させる追加的な改質剤が特定されているため、本出願人らは、そのような追加的な改質剤の全てを、本明細書において請求される本発明の範囲内に含めることを意図する。
他の要素は、フィルムの形成の容易性および全体的な品質に寄与する結合剤を含む。結合剤の限定されない例は、デンプン、αデンプン、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、ポリアクリルアミド、ポリビニルオキサゾリドン、およびポリビニルアルコールを含む。
本発明のフィルム、具体的には使用者による経口摂取に有用なフィルムは、1種または複数の味覚向上剤、例えば香料および/または甘味料をさらに含んでもよい。好適な香料および甘味料は、参照により本明細書にその全内容が組み込まれる米国特許第7,425,292号に記載のものを含む。
さらなる潜在的な添加剤は、溶解度向上剤、例えば活性成分と包接化合物を形成する物質を含む。そのような薬剤は、非常に不溶性および/または不安定な活性物質の特性の改善に有用となり得る。一般に、これらの物質は、疎水性の内部空洞および親水性の外側を有するドーナツ形状分子である。不溶性および/または不安定活性物質は、疎水性空洞内に適合し、それにより水に可溶である包接錯体を生成することができる。したがって、包接錯体の形成により、非常に不溶性および/または不安定な活性物質は水に溶解することができる。そのような薬剤の特に望ましい例は、デンプンから誘導化される環状炭水化物であるシクロデキストリンである。しかしながら、他の類似物質も、本発明の範囲内に十分含まれるものとみなされる。
本発明の様々な実施形態は、透過および浸透向上剤を含んでもよい。そのような有用な向上剤には、中鎖モノおよびジアシルグリセロール脂肪酸誘導体、例えばラウリン酸グリセロール、およびそれらの混合物;合成および天然界面活性剤およびそれらの混合物;中鎖脂肪酸ならびにモノ、ジおよびトリグリセリドを含むそれらの塩およびエステル、例えばカプリル酸ナトリウムおよびカプリン酸ナトリウムおよびそれらの混合物;胆汁塩;キレート剤、例えばEDTA;洗浄剤;シクロデキストリン、エナミン誘導体、リン脂質、レシチン、セトマクロゲル、サリチル酸ナトリウム、ナトリウム-5-メトキシサリチル酸;グリセロールおよびポリエチレングリコールエステル、例えばLabrasolの商品名で販売されているもの;閉鎖帯毒素;ならびにアルキルグリコシドが含まれる。さらに、異なるクラスからの透過および浸透向上剤の組合せもまた有用である。
追加的な浸透向上剤は、ポリソルベート80、ホスファチジルコリン、n-メチルピペラジン、サリチル酸ナトリウム、メリチン、およびパルミトイルカルニチンクロリド(pcc)、23-ラウリルエーテル、アプロチニン、アゾン、塩化ベンザルコニウム、塩化セチルピリジニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、シクロデキストリン、硫酸デキストラン、ラウリン酸、ラウリン酸/プロピレングリコール、リゾホスファチジルコリン、メントール、メトキシサリチレート、オレイン酸メチル、オレイン酸、ホスファチジルコリン、ポリオキシエチレン、ナトリウムEDTA、グリココール酸ナトリウム、タウロコール酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、サリチル酸ナトリウム、グリコデオキシコール酸ナトリウム、タウロデオキシコール酸ナトリウム、スルホキシド、ならびにそれらの組合せを含む。
追加的な浸透および/または透過向上剤は、ジメチルスルホキシド、デシルメチルスルホキシド、アルキルスルホキシド;アルカノール、例えばエタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、2-ブタノール、2-ペンタノール、ベンジルアルコール;脂肪酸およびその対応するアルコール、例えばカプリル、デシル、ラウリル、2-ラウリル、ミリスチル、セチル、ステアリル、オレイル、リノレイル、リノレニルアルコール;直鎖カルボン酸、例えば吉草酸、ヘプタン酸、ペラルゴン酸、カプロン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、カプリル酸、分岐カルボン酸、例えばイソ吉草酸、ネオペンタン酸、ネオヘプタン酸、ネオノナン酸、トリメチルヘキサン酸、ネオデカン酸、イソステアリン酸;脂肪酸エステル、例えば脂肪酸-イソプロピルn-ブチレート、イソプロピルn-ヘキサノエート、イソプロピルn-デカノエート、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル;アルキルエステル、例えば酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸メチル、吉草酸メチル、プロピオン酸メチル、セバシン酸ジエチル、オレイン酸エチル;プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセロール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサントリオール、尿素、ジメチルアセトアミド、ジエチルトルアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルオクタミド、ジメチルデカミド;生体分解性環状尿素、例えば1-アルキル-4-イミダゾリン-2-オン;ピロリドン誘導体、例えば1-メチル-2-ピロリドン、2-ピロリドン、1-ラウリル-2-ピロリドン、1-メチル-4-カルボキシ-2-ピロリドン、1-ヘキシル-4-カルボキシ-2-ピロリドン、1-ラウリル-4-カルボキシ-2-ピロリドン、1-メチル-4-メトキシカルボニル-2-ピロリドン、1-ヘキシル-4-メトキシカルボニル-2-ピロリドン、1-ラウリル-4-メトキシカルボニル-2-ピロリドン、N-シクロヘキシルピロリドン、N-ジメチルアミノプロピルピロリドン、N-ココアルキルピロリドン、N-タロウアルキルピロリドン;生体分解性ピロリドン
誘導体、例えばN-(2-ヒドロキシエチル)-2-ピロリドンの脂肪酸エステル;環状アミド、例えば1-ドデシルアザシクロヘプタン-2-オン(Azone)、1-ゲラニルアザシクロヘプタン-2-オン、1-ファルネシルアザシクロヘプタン-2-オン、1-テラニルゲラニルアザシクロヘプタン-2-オン、1-(3,7-ジメチルオクチル)アザシクロヘプタン-2-オン、1-(3,7,11-トリメチルドデシル)アザシクロヘプタン-2-オン、1-ゲラニルアザシクロヘキサン-2-オン、1-ゲラニルアザシクロペンタン-2,5-ジオン、1-ファルネシルアザシクロペンタン-2-オン;ヘキサメチレンラウラミドおよびその誘導体;ジエタノールアミン、トリエタノールアミン;陰イオン性界面活性剤、例えばラウリン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム;陽イオン性界面活性剤、例えば臭化セチルトリメチルアンモニウム、臭化テトラデシルトリメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化オクタデシルトリメチルアンモニウム、塩化セチルピリジニウム、塩化ドデシルトリメチルアンモニウム、塩化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム;非イオン性界面活性剤、例えば、Poloxamer(231、182、184)、Brij(30、93、96、99)、Span(20、40、60、80、85)、Tween(20、40、60、80)、Myrj(45、51、52)、Miglyol 840の商品名で販売されているもの;胆汁塩、例えばコール酸ナトリウム、タウロコール酸、グリコール酸およびデスオキシコール酸のナトリウム塩;レシチン;炭化水素、例えばD-リモネン、a-ピネン、B-カレン;アルコール、例えばa-テルピネオール、テルピネン-4-オール、カルボール;ケトン、例えばカルボン、プレゴン、ピペリトン、メントン;オキシド、例えばシクロヘキセンオキシド、リモネンオキシド、a-ピネンオキシド、シクロペンテンオキシド、1,8-シネオール;油、例えばイランイラン、アニス、アカザ、ユーカリ;N-ヘプタン、N-オクタン、N-ノナン、N-デカン、N-ウンデカン、N-ドデカン、N-トリデカン、N-テトラデカン、N-ヘキサデカン;サリチル酸およびサリチレート(そのメチル、エチル、およびプロピルグリコール誘導体を含む);クエン酸およびコハク酸を含む。
前述のように、異なるクラスの透過および浸透向上剤の組合せもまた有用である。
フィルムの形成
本発明のフィルムは、乾燥前にフィルムストリップまたはシートとして形成されてもよい。所望の成分が組み合わされてポリマー、水、およびナノ粒子、ならびに所望により任意の他の成分を含む複数成分マトリックスを形成した後、組合せは、複数成分マトリックスのコーティング、展着、キャストまたは引出等の当技術分野において知られた任意の方法により、シートまたはフィルムとして形成される。複数層フィルムが望ましい場合、これは、同じまたは異なる組成であってもよい成分の2つ以上の組合せの共押出により達成されてもよい。複数層フィルムはまた、既に形成されたフィルム層に組合せをコーティング、展着またはキャストし、このようにして既に形成されたフィルム層および第2の層を有する複数層フィルムを形成することにより達成されてもよい。既に形成されたフィルム層は、第2の層と同じであってもよい、または異なってもよい。既に形成されたフィルム層は、その表面上に第2の層がコーティング、展着またはキャストされた際に部分的に乾燥されてもよく、または所望の溶媒含量まで完全に乾燥されてもよい。既に形成されたフィルム層は、溶解性または崩壊性であってもよく、その溶解または崩壊時間は、第2のフィルム層の溶解または崩壊時間よりも長くても、または短くてもよい。
最終フィルム内の気泡混入を防止するために、混合段階において複数の技術を使用することができる。最終生成物内に実質的に気泡形成を有さない組成物混合物を提供するために、消泡剤または表面張力低下剤が使用される。さらに、望ましくは、混合物中に空気を引き込むような混合物のキャビテーションを防止するように混合速度が制御される。最後に、フィルムを乾燥させる前に気泡が逃げるのに十分な時間混合物を放置することにより、さらに気泡の低減を行うことができる。望ましくは、本発明の方法は、活性要素または揮発性材料を有さないフィルム形成成分のマスターバッチをまず形成する。一実施形態において、活性物質は、キャスト直前に、マスターバッチのより少量の混合物と組み合わされる。したがって、活性薬剤または他の要素の不安定性を心配することなく、マスターバッチプレ-ミックスをより長期間放置することができる。
多種多様なフィルム形成技術が使用され得るが、リバースロールコーティング等の可撓性フィルムを提供する方法を選択することが望ましい。フィルムの可撓性により、保存のために、または個々の剤形に切断されるまで、フィルムのシートを巻いて運搬することが可能となる。望ましくは、フィルムはまた、自立型であってもよく、または、換言すれば、別個の支持体がなくてもその完全性および構造を維持することができてもよい。さらに、本発明のフィルムは、可食または摂取可能な材料から選択されてもよい。
フィルム組成物のキャストまたは堆積
本発明は、成分の実質的に均一な分布を有する自立型フィルムを作製するための方法を使用する。自立型フィルムは、本明細書において説明されるような活性物質の送達に特に有用である。フィルムを作製するためのプロセスは、フィルム全体にわたり分布した成分の組成の均一性を維持するように設計されるが、これは、薬学的活性物質等の活性物質がフィルムに組み込まれる場合特に必要である。薬学的観点から、フィルムが個々のフィルム用量単位に分割され得るように組成的に均一であることが必須であり、各用量単位は、規制認可が確保され得るように、投与される際に適切な量の活性物質を有する。
方法は、さらに、可食水溶性ポリマーおよび水のマスターバッチプレ-ミックスを形成する予備ステップと、任意選択で(例えば混合により)プレ-ミックスを脱気する予備ステップと、所定量のプレ-ミックスを少なくとも1つの混合器に供給する予備ステップと、ナノ粒子を混合器に加える予備ステップと、成分を混合してその均一な分布を達成する予備ステップとを含んでもよい。その後、湿潤フィルムが形成および乾燥される。
本発明のフィルムを形成するためには、コーティング法またはキャスト法が特に有用である。具体例は、特に複数層フィルムが望ましい場合、リバースロールコーティング、グラビアコーティング、含浸もしくはディップコーティング、メータリングロッドもしくはマイヤーバーコーティング、スロットダイもしくは押出コーティング、ギャップもしくはナイフオーバーロールコーティング、エアナイフコーティング、カーテンコーティング、またはそれらの組合せを含む。
ロールコーティング、またはより具体的にはリバースロールコーティングは、本発明によるフィルムを形成する場合に特に望ましい。この手順は、本発明において望ましい、結果として生じるフィルムの優れた制御および均一性を提供する。この手順において、コーティング材料は、上部計量ローラとその下の塗布ローラとの間のギャップの正確な設定により、塗布器ローラ上に計測供給される。コーティングは、基板が塗布ローラに隣接した支持ローラの周囲を通過する際に塗布ローラから基板に転写される。3ロールおよび4ロールプロセスの両方が一般的である。
グラビアコーティングプロセスは、コーティング浴中で作動している彫り込まれたローラに基づくものであり、ローラの彫り込まれた点または線がコーティング材料で充填される。ローラ上の過剰のコーティングは、ドクターブレードにより拭き取られ、次いで、コーティングは、彫り込まれたローラと圧力ローラとの間を基板が通過する際に基板上に堆積される。
コーティングが基板に転写される前に中間ローラ上に堆積される、オフセットグラビアが一般的である。
含浸またはディップコーティングの単純なプロセスでは、基板は、コーティングの浴内に浸漬されるが、コーティングは、基板が持ち上げられた際にコーティングが再び浴内に流れ落ちることができるように通常低粘度である。
メータリングロッドコーティングプロセスでは、基板が浴ローラ上を通過する際に過剰のコーティングが基板上に堆積される。巻き線型のメータリングロッドは、時折マイヤーバーとしても知られるが、所望量のコーティングを基板上に残すことを可能にする。量は、ロッド上に使用される巻き線の直径により決定される。
スロットダイプロセスでは、コーティングは、重力により、または圧力下で、スロットを通して基板上に搾り出される。コーティングが100%固体である場合、プロセスは「押出」と呼ばれ、この場合、ライン速度は、多くの場合押出速度よりはるかに速い。これにより、コーティングは、スロットの幅よりも大幅に薄くなり得る。
ギャップまたはナイフオーバーロールプロセスは、コーティングが基板に塗布され、次いで基板が「ナイフ」と支持ローラとの間の「ギャップ」を通過することに基づくものである。コーティングおよび基板が通過すると、過剰のコーティングが掻き落とされる。
エアナイフコーティングでは、コーティングが基板上に塗布され、過剰のコーティングはエアナイフからの強力な噴射により「吹き落とされる」。この手順は、水溶液コーティングに有用である。
カーテンコーティングプロセスでは、基部にスロットを有する浴により、コーティングの連続カーテンが2つのコンベヤの間のギャップ内に落下し得る。コーティングされる物体は、制御された速度でコンベヤに沿って通過され、したがってその上面にコーティングを受ける。
フィルムの乾燥
乾燥ステップもまた、フィルム組成物の均一性を維持する点での要因であり得る。制御乾燥プロセスは、粘度増加組成物、または、例えばポリマーの選択により粘度が制御される組成物の非存在下において、フィルム内の成分が、凝集または集塊化する傾向の増加を有し得る場合、特に重要である。制御乾燥プロセスを必要としない、正確な用量のフィルムを形成する代替の方法は、所定のウェル上にフィルムをキャストすることである。この方法を用いれば、成分は凝集し得るが、各ウェル自体が用量単位を画定し得るため、隣接した剤形への活性物質の移動はもたらされない。
フィルムを作製するために使用される1つの方法は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第7,425,292号に記載されている。この方法において、フロー移動および分子間力が凝集物または集塊を形成するのを防止し、それによりフィルム中の成分の組成的に均一な分布を維持するために、高温気流をフィルムに適用することによって粘弾性フィルムを急速に形成することにより、さらに、粘弾性フィルムを乾燥させて自立型フィルムを形成することにより、フィルムが調製される。
湿潤フィルム形成マトリックスは、まず、高温気流の適用前に表面の上部側に供給され得る。湿潤フィルムは、望ましくは、含有される活性物質が劣化する前の期間内に、脱気されたマトリックスから形成される。方法は、さらに、乾燥したフィルムを等しい寸法および組成的構成の個々の用量単位に分割するステップを含んでもよい。所望により、上部表面に高温気流が適用されてもよい。そのような実施形態において、乾燥中、フィルムの上部表面よりも高速でフィルムの底部表面に高温気流が適用されることが望ましい場合がある。フィルムの上部を乾燥させるために適用される高温気流は、好ましくは、表面の皺形成または被膜形成をもたらす気流よりも低い。これにより、フィルムは、被膜のない表面を通した水の蒸発を可能としながら、体積の均一性を固定するのに十分濃度が濃くなることができる。
制御または急速乾燥プロセスが使用される場合、湿潤フィルムにおいて得られる均一性、またはより具体的には非自己凝集性の均一な不均質性が維持されるように、液体担体がフィルムから除去される。
望ましくは、固体の粘弾性構造がまず形成され、フィルムの内容物が「固定」されるように、フィルムは急速に乾燥される。これは、乾燥プロセスの最初の数分、例えば最初の約0.5分から約15分、望ましくは最初の約10分、最も望ましくは最初の約4.0分以内に生じ得る。この急速乾燥は、乾燥プロセスの開始時にフィルムの粘度を増加させることにより、例えば、最初にフィルムを熱または放射エネルギー等の乾燥源に暴露することにより達成され得る。急速乾燥とは、乾燥プロセスの開始時にフィルム生成物の粘度が増加し始め、上述のような活性物質含量の均一性を固定することを意味する。フィルム内の熱伝達の初期速度は、粘弾性フィルム形成を達成するために十分高くなるべきであるため、粘度の急速な増加は、乾燥の初期段階において達成される。
この初期乾燥段階中に、上部空気流の量を限定することが望ましい場合がある。このようにして乾燥を制御することにより、従来の乾燥方法によりもたらされるフィルムの上部表面の破壊および再形成が防止される。これは、フィルムを形成し、上部側および底部側を有する表面の上部側に設置することにより達成される。次いで、液体担体を蒸発させる、または別の方法で除去するために必要なエネルギーを提供するために、まずフィルムの底部側に熱が加えられる。このようにして乾燥されるフィルムは、空気乾燥フィルム、または従来の乾燥手段により乾燥されるフィルムに比べて、より急速および一様に乾燥する。まず上部および縁部で乾燥する空気乾燥フィルムとは対照的に、底部に熱を加えることにより乾燥されたフィルムは、中央および縁部で同時に乾燥する。これはまた、従来の手段により乾燥されたフィルムにおいて生じる要素の沈降を防止する。
乾燥中のフィルム形成マトリックスの内部温度は、望ましくは約100℃以下、望ましくは約70℃以下、最も望ましくは約60℃以下である。フィルム内の温度が、フィルム形成マトリックス中の任意の溶媒の沸点未満であるように、フィルムを乾燥させることが望ましい場合がある。さらに、フィルム形成マトリックス内の温度が、フィルム内に含有される活性物質の実質的な劣化が生じる温度未満に維持されることが望ましい。しかしながら、フィルムの外側の温度は、フィルム内の温度を超えてもよく、いくつかの場合において、フィルム内の温度よりも実質的に高くてもよいことに留意されたい。フィルムの内部は、フィルム内に含有される活性物質の実質的な劣化が生じる温度未満の温度を維持する。一般に、活性物質のある程度の劣化は生じるが、そのような劣化は、非劣化活性物質含量の均一性が上記の均一性レベル外となるような実質的な量となるべきではないことが理解される。すなわち、フィルムから切断された単位用量は、互いに、または活性物質の目標レベルから、実現可能な非劣化活性物質含量の約10%変動するべきではない。
単独で、または上で開示されたような他の制御された方法と組み合わせて使用され得る乾燥プロセスを制御する別の方法は、フィルムが乾燥されている乾燥装置内の湿度を制御および変更することを含む。このようにして、フィルムの上部表面の早すぎる乾燥が回避され得る。
別の乾燥方法は、Magoonにより以前に説明された、水の興味深い特性に基づく方法に従うものである。水は、その内部および周囲環境の両方に伝導および対流によりエネルギーを伝達するが、水は、その内部および水に対してのみエネルギーを放射する。したがって、Magoonの装置は、果肉が設置される表面を含み、これは赤外線に対し透明である。表面の下側は、温度制御水浴と接触している。水浴温度は、望ましくは、水の沸点を若干下回る温度で制御される。湿潤した果肉が装置の表面上に設置されると、これは「屈折窓」を形成する。これは、赤外線エネルギーが、表面を通して、果肉により占有される表面上の領域のみに放射し得ることを意味する。Magoonの装置は、本発明のフィルムに、フィルムの成分の凝集の発生を低減する効率的な乾燥時間を提供する。
本明細書において説明される乾燥プロセスの目的は、上記の「皺形成」効果等の問題を回避するフィルムの乾燥方法を提供することであり、この問題は、まずフィルムの上部表面を乾燥させて内部に水分を捕捉する従来の乾燥方法に関連する。従来の炉内乾燥方法において、内部に捕捉された水分がその後蒸発すると、上部表面は、引き裂かれ、次いで再形成されることにより改変される。
これらの問題は、本発明の乾燥方法により回避され、フィルムの深部を乾燥させる前に、まずフィルムの底部表面を乾燥させることにより、または別の方法でフィルムの上部表面上のポリマーフィルム(被膜)の形成を防止することにより、均一なフィルムが提供される。これは、上述のように熱を加えて、または代替的に放射線(例えば制御されたマイクロ波)を導入して、フィルム内の水もしくは他の極性溶媒を蒸発させることにより達成され得る。いくつかの実施形態において、フィルムは、乾燥の最初の10分以内に、より具体的には乾燥の最初の4分以内に、粘弾性構造を形成するように急速に乾燥される。望ましくは、フィルムは、ナノ粒子を含む任意の成分が不要に互いに凝集することがないような速い速度で乾燥される。湿潤マトリックスを急速に乾燥させることにより、かなりの数のナノ粒子は集塊化する時間がない。
さらに、代替的に、乾燥は、均衡した流体流、例えば均衡した空気流を使用することにより達成されてもよく、底部および上部空気流は均一フィルムを提供するように制御される。そのような場合、フィルムの上部に方向付けられた空気流は、気流により生成された力による湿潤フィルム内に存在する粒子の移動をもたらす状態を形成するべきではなく、すなわち、この乾燥段階中に存在するいかなる上部空気流も、フィルム表面の固有粘度に打ち勝つには不十分となるべきである。さらに、フィルムの底部に方向付けられたいかなる気流も、望ましくは、フィルムが空気からの力により持ち上がることがないように制御されるべきである。被膜形成、皺形成、または望ましくない凝集もしくは不均一性をもたらすマトリックス内の粒子の移動を回避するように気流が制御される限り、底部気流よりも上部気流が多くてもよい。フィルムの上または下の制御されていない気流は、最終フィルム生成物における不均一性を形成し得る。上部表面周囲の領域の湿度レベルもまた、ポリマー表面の早すぎる閉鎖または被膜形成を防止するように、適切に調節され得る。
本発明は、組成成分の凝集を低減するように注意が払われれば、極めて均一なフィルム生成物を提供する。混合プロセスにおいて過剰の空気の導入を回避およびそのような空気を排除し、制御可能な粘度を提供するようにポリマーおよび溶媒を選択し、フィルムを底部から急速に乾燥させることによって、そのようなフィルムが得られる。様々な乾燥方法は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第7,425,292号および米国特許第7,357,891号に記載されているものを含む。
フィルムは、最初に約500μmから約1500μm、または約20ミルから約60ミルの厚さを有してもよく、乾燥時には約3μmから約250μm、または約0.1ミルから約10ミルの厚さを有してもよい。いくつかの実施形態において、フィルム生成物は、0.1ミルを超える厚さを有する。いくつかの他の実施形態において、フィルム生成物は、約10ミル以下の厚さを有する。いくつかのさらなる実施形態において、フィルム生成物は、約0.5ミルから約5ミルの厚さを有する。望ましくは、乾燥フィルムは、約2ミルから約8ミル、より望ましくは、約3ミルから約6ミルの厚さを有する。
フィルム組成物の押出
代替の実施形態において、本発明のフィルム生成物は、キャストまたは堆積法ではなく、押出により成形されてもよい。押出は、後述されるように、ポリエチレンオキシド系ポリマー成分を含有するフィルム組成物に対して特に有用である。例えば、本発明によれば、単軸押出プロセスを使用することができる。そのような押出プロセスによれば、ダイを通して押し出され得る、または型内に射出され得るように、ポリマー溶融物内で圧力が高まる。
PEOポリマー成分を含有するフィルム組成物を成形するための押出方法を使用することが特に望ましい場合がある。これらの組成物は、ポリマー成分中にPEOまたはPEOブレンドを含有し、添加された可塑剤、および/または界面活性剤、およびポリアルコールを本質的に含まなくてもよい。
組成物は、約90℃未満の処理温度でシートとして押し出されてもよい。押出は、均一なマトリックスを得るために、ローラまたはダイを通してフィルム組成物を搾り出すことにより進行してもよい。押し出されたフィルム組成物は、次いで、当業者に知られている任意の機構により冷却される。例えば、冷却ローラ、空冷ベッド、または水冷ベッドが使用されてもよい。PEOは熱を保持する傾向があるため、冷却ステップは、PEOポリマー成分を含有するフィルム組成物に対して特に望ましい。このようにして成形されたシートは、所望により様々な形状に成形され得る。
薄いフィルムの使用
本発明の薄いフィルムは、多くの使用に好適である。フィルムの成分の高度の均一性により、フィルムは、医薬品の組込みに特に好適である。さらに、フィルムの構築に使用されるポリマーは、フィルムの崩壊時間の範囲を可能とするように選択され得る。フィルムが崩壊する期間の変動または延長により、活性物質が放出される速度に対する制御が達成され得るが、これは持続放出送達システムを可能とし得る。さらに、フィルムは、粘膜を有するものを含む、皮膚および他の体表面に対するナノ粒子の投与に使用されてもよい。
フィルムは、局所投与、経口投与、または望ましい任意の他の投与によりナノ粒子を投与するために使用されてもよい。フィルムはまた、好適な液体担体中で再構成され、その後注射または注入により投与されてもよい。投与は、例えば、上述のようにフィルムを調製し、フィルムを哺乳動物の皮膚または粘膜表面に導入し、必要に応じてフィルムを湿潤させることにより達成され得る。所望により、このフィルムは、調製されて第2の層または支持層に接着されてもよく、使用前、すなわち皮膚への貼付前にその層からフィルムが取り外される。フィルムを支持体または裏打ち材料に取り付けるために、接着剤が使用されてもよく、当技術分野において知られている接着剤のいずれかであってもよく、好ましくは水溶性ではない。接着剤が使用される場合、接着剤は、望ましくは、活性物質の特性を改変しない接着剤である。粘膜接着組成物もまた有用である。フィルム組成物は、多くの場合、それ自体粘膜接着剤として機能する。
本発明のフィルムは、湿潤すると、すなわち水または唾液等の湿潤物質との接触により速やかに溶解するフィルムの傾向を利用する。本発明によるフィルムを調製し、そのフィルムを液体に導入し、またフィルムを溶解させることにより、ナノ粒子を液体に導入することができる。これは、ナノ粒子の液体剤形を調製するために使用することができ、次いでこれは使用者に投与され得る。
以下は、例示を目的として示されるものであり、特許請求の範囲の限定として解釈されるべきではない。
(実施例)
(実施例1)
リガンドの調製
2-チオ-エチル-α-D-ガラクトシド(α-ガラクトースC2SH)の調製
ガラクトース(3g、16.65mmol)の2-ブロモエタノール(30ml)中の懸濁液に、酸性樹脂Amberlite 120-Hを、pH2に達するまで添加する。反応物を50〜60℃で16時間撹拌する。反応混合物を濾過し、MeOHで洗浄する。pH8に達するまでトリエチルアミンを添加する。粗反応物を濃縮し、トルエンと3回共蒸発させる。反応混合物をピリジン(75mL)に溶解し、Ac2O(35mL)および触媒量のDMAPを0℃で添加し、室温で3時間撹拌する。混合物をAcOEtで希釈し、1.H2O、2.HCl(10%)、3.NaHCO3溶液、4.H2Oで洗浄する。有機層を回収し、無水Na2SO4で脱水する。TLC(ヘキサン:AcOEt 3:1、2回溶出)は、(所望の)主要生成物およびより低いRfの副生成物を示す。ヘキサン:酢酸エチル 6:1混合物を溶離液として使用したフラッシュクロマトグラフィーにより生成物を精製すると、2-ブロモエチル-α-ガラクトシド(2)が得られる。
前の反応の生成物2を、27mlの2-ブタノンに溶解する。この溶液に、触媒量のテトラブチルアンモニウムヨージドおよび4当量のチオ酢酸カリウムを添加する。得られる懸濁液を、室温で2時間撹拌する。この期間中、反応物を、出発材料の消失についてTLC(ヘキサン-AcOEt 2:1、2回溶出)により試験する。混合物を20mlのAcOEtで希釈し、飽和NaCl溶液で洗浄する。有機相を脱水し、濾過し、真空下で蒸発させる。生成物をヘキサン/AcOEt 2:1→1:1中で精製すると、アセチルチオ-α-ガラクトシド3が得られる。
新たな反応生成物3を、ジクロロメタン-メタノール2:1混合物に溶解する。この混合物に、1Nナトリウムメトキシド(1当量)の溶液を添加し、室温で1時間撹拌する。pH5〜6に達するまで、Amberlite IR-120H樹脂を添加する。次いで、得られる混合物を濾過し、乾燥するまで濃縮すると、最終生成物(α-ガラクトースC2SH)が得られる。
アミノ-チオール連結基の調製
PPh3(3g、11.4mmol)の乾燥THF20ml中の溶液に、DIAC(2.3g、11.4mmol)を添加する。混合物を0℃で15分間、白色生成物が出現するまで撹拌する。この混合物に、ヘキサエチレングリコール(1.45mL、5.7mmol)およびHSAc(610μl、8.55mmol)の乾燥THF(20mL)中の溶液を滴下(滴下漏斗)により添加する。15分後、生成物はTLC上でRf0.2で出現し始める。溶液をエバポレーター内で濃縮する。粗反応物を50mlのジクロロメタンに溶解し、K2CO3の10%溶液で洗浄する。有機相を無水Na2SO4で脱水し、濾過し、真空下で濃縮する。溶離液としてAcOEt:ヘキサン1:1、AcOEtおよび最後にDCM:MeOH 4:1を使用した粗生成物のフラッシュクロマトグラフィーにより、アセチル-チオ-ヘキサエチレングリコール誘導体が得られた。
反応生成物を5mlのDMFに溶解し、PPh3(2.25g、8.55mmol)、NaN3(0.741g、11.4mmol)およびBrCl3C(0.845ml、8.55mmol)を添加し、続いて溶液を室温で40分間撹拌する。TLC(DCM:MeOH 25:1)を行うと、得られる生成物は、出発生成物よりも高いRfを有する。反応混合物を100mlのジエチルエーテルで希釈し、H2Oで3回洗浄する。有機相を無水Na2SO4で脱水し、濾過し、真空下で蒸発させる。DMC/MeOH 200:1およびDCM/MeOH 40:1の溶離液混合物を使用したフラッシュクロマトグラフィーにより生成物を精製すると、アジド-アセチルチオ-ヘキサエチレングリコール誘導体が得られる。
トリフェニルホスフィンオキシドを除去するために、反応生成物を10mlのTHFに溶解し、この溶液に0.5gのMgCl2を添加する。反応物を80℃で2時間、白色沈殿物が出現するまで撹拌し、次いでセライトを通して濾過する。生成物をエタノール:H2O 3:1の混合物に溶解し、Zn粉末(0.45g、6.84mmol)およびNH4Cl(0.6g、11.4mmol)を添加する。反応物を還流下で1時間、出発材料の存在がTLC(DCM/MeOH 25:1)により検出できなくなるまで撹拌する。セライトを通して反応物を濾過し、溶媒を蒸発させる。粗反応物をAcOEtで希釈し、5mlのH2Oで抽出する。水相を乾燥するまで蒸発させると、アミノ-チオール-ヘキサエチレングリコール生成物が得られる。
(実施例2)
混合金ナノ粒子の調製
β-グルコースC2誘導体1、N-アセチルグルコサミンC2誘導体2、α-ガラクトースC2誘導体3、α-グルコースC2誘導体4、グルコサミンC5誘導体5およびヘキサエチレングリコールアミン連結基6は、Midatech Bioguneストックからのものを使用した。N-(3-ジメチルアミノプロピル)-N'-エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC・HCl)、HAuCl4、NaBH4は、Sigma-Aldrich Chemical Companyから購入した。イミダゾール-4-酢酸一塩酸塩は、Alfa Aesar Companyから購入した。高品質MeOHおよびNanopure水(18.1mΩ)を、全ての実験および溶液に使用した。
リガンドの命名
GlcC2
2'-チオエチル-β-D-グルコピラノシド(β)
GlcNHAcC2
2'-チオエチル-2-アセトアミド-2-デオキシ-β-D-グルコピラノシド(β)
GlcNH2-IAA-C5
5'-チオペンタニル-2-デオキシ-2-イミダゾールアセトアミド-α,β-D-グルコピラノシド(α、β異性体混合物)
α-GalC2(α)
2'-チオエチル-α-D-ガラクトピラノシド(α)
α-GlcC2(α)
2'-チオエチル-α-D-グルコピラノシド
EG6NH2
1-アミノ-17-メルカプト-3,6,9,12,15-ペンタオキサ-ヘプタデカノールまたは1-アミノ-6-メルカプト-ヘキサエチレングリコール(俗称)
複数のリガンドを有するナノ粒子(NP)の調製
NP-GlcC2(9)GlcNAc(1)
1(21.6mg、90μmmol)および2(2.8mg、10μmmol)のMeOH(8.3mL)中の溶液に、HAuCl4の0.025M水溶液(1.33mL、33μmmol)を添加した。溶液を30秒間振盪し、次いで、NaBH4の1N水溶液(0.67mL、0.67mmol)を、数回に分けて添加した(134μL×5)。暗色懸濁液を100分間振盪した。メタノール層を除去し、ペレットを10mLの水に溶解し、遠心濾過(10KDa AMICON 4mL、4500g、15分、15℃)により精製した。このプロセスを3回繰り返し、2mLの水で洗浄した。残渣を7mLの水に溶解した。定量のために一定分量を凍結乾燥した。[NP]=0.8mg/mL。
いかなる理論にも束縛されることを望まないが、9:1のGlcC2:GlcNAc比の複数のリガンドを有する得られたナノ粒子「NP-GlcC2(9)GlcNAc(1)」の概略図を、図1に示す。
NP-GlcC2(4)GlcNAc(1)
1(19.2mg、80μmmol)および2(5.6mg、20μmmol)のMeOH(8.3mL)中の溶液に、HAuCl4の0.025M水溶液(1.33mL、33μmmol)を添加した。溶液を30秒間振盪し、次いで、NaBH4の1N水溶液(0.67mL、0.67mmol)を、数回に分けて添加した(134μL×5)。暗色懸濁液を100分間振盪した。メタノール層を除去し、ペレットを10mLの水に溶解し、遠心濾過(10KDa AMICON 4mL、4500g、15分、15℃)により精製した。このプロセスを3回繰り返し、2mLの水で洗浄した。残渣を7mLの水に溶解した。定量のために一定分量を凍結乾燥した。[NP]=0.8mg/mL。
いかなる理論にも束縛されることを望まないが、4:1のGlcC2:GlcNAc比の複数のリガンドを有する得られたナノ粒子「NP-GlcC2(4)GlcNAc(1)」の概略図を、図2に示す。
NP-GlcC2(1)GlcNAc(1)
1(12mg、50μmmol)および2(14mg、50μmmol)のMeOH(8.3mL)中の溶液に、HAuCl4の0.025M水溶液(1.33mL、33μmmol)を添加した。溶液を30秒間振盪し、次いで、NaBH4の1N水溶液(0.67mL、0.67mmol)を、数回に分けて添加した(134μL×5)。暗色懸濁液を100分間振盪した。メタノール層を除去し、ペレットを10mLの水に溶解し、遠心濾過(10KDa AMICON 4mL、4500g、15分、15℃)により精製した。このプロセスを3回繰り返し、2mLの水で洗浄した。残渣を7mLの水に溶解した。定量のために一定分量を凍結乾燥した。[NP]=0.9mg/mL。
いかなる理論にも束縛されることを望まないが、1:1のGlcC2:GlcNAc比の複数のリガンドを有する得られたナノ粒子「NP-GlcC2(1)GlcNAc(1)」の概略図を、図3に示す。
NP-GlcC2(1)GlcNAc(9)
1(2.4mg、10μmmol)および2(25.3mg、90μmmol)のMeOH(8.3mL)中の溶液に、HAuCl4の0.025M水溶液(1.33mL、33μmmol)を添加した。溶液を30秒間振盪し、次いで、NaBH4の1N水溶液(0.67mL、0.67mmol)を、数回に分けて添加した(134μL×5)。暗色懸濁液を100分間振盪した。メタノール層を除去し、ペレットを10mLの水に溶解し、遠心濾過(10KDa AMICON 4mL、4500g、15分、15℃)により精製した。このプロセスを3回繰り返し、2mLの水で洗浄した。残渣を7mLの水に溶解した。定量のために一定分量を凍結乾燥した。[NP]=0.8mg/mL。
いかなる理論にも束縛されることを望まないが、1:9のGlcC2:GlcNAc比の複数のリガンドを有する得られたナノ粒子「NP-GlcC2(1)GlcNAc(9)」の概略図を、図4に示す。
NP-GlcC2(1)α-Gal(1)
1(12mg、50μmmol)および3(12mg、50μmmol)のMeOH(8.3mL)中の溶液に、HAuCl4の0.025M水溶液(1.33mL、33μmmol)を添加した。溶液を30秒間振盪し、次いで、NaBH4の1N水溶液(0.67mL、0.67mmol)を、数回に分けて添加した(134μL×5)。暗色懸濁液を100分間振盪した。メタノール層を除去し、ペレットを10mLの水に溶解し、遠心濾過(10KDa AMICON 4mL、4500g、15分、15℃)により精製した。このプロセスを3回繰り返し、2mLの水で洗浄した。残渣を7mLの水に溶解した。定量のために一定分量を凍結乾燥した。[NP]=0.7mg/mL。
いかなる理論にも束縛されることを望まないが、1:1のGlcC2:α-Gal比の複数のリガンドを有する得られたナノ粒子「NP-GlcC2(1)α-Gal(1)」の概略図を、図5に示す。
NP-βGlcC2(1)EG6NH2(1)
1(12mg、50μmmol)および6(14.85mg、50μmmol)のMeOH(8.3mL)中の溶液に、HAuCl4の0.025M水溶液(1.33mL、33μmmol)を添加した。溶液を30秒間振盪し、次いで、NaBH4の1N水溶液(0.67mL、0.67mmol)を、数回に分けて添加した(134μL×5)。暗色懸濁液を100分間振盪した。メタノール層を除去し、ペレットを10mLの水に溶解し、遠心濾過(10KDa AMICON 4mL、4500g、15分、15℃)により精製した。このプロセスを3回繰り返し、2mLの水で洗浄した。残渣を7mLの水に溶解した。定量のために一定分量を凍結乾燥した。[NP]=0.9mg/mL。
いかなる理論にも束縛されることを望まないが、1:1のβGlcC2:EG6NH2比の複数のリガンドを有する得られたナノ粒子「NP-βGlcC2(1)EG6NH2(1)」の概略図を、図6に示す。
NP-GlcNHAc(1)EG6NH2(1)
2(14mg、50μmmol)および6(14.85mg、50μmmol)のMeOH(8.3mL)中の溶液に、HAuCl4の0.025M水溶液(1.33mL、33μmmol)を添加した。溶液を30秒間振盪し、次いで、NaBH4の1N水溶液(0.67mL、0.67mmol)を、数回に分けて添加した(134μL×5)。暗色懸濁液を100分間振盪した。メタノール層を除去し、ペレットを10mLの水に溶解し、遠心濾過(10KDa AMICON 4mL、4500g、15分、15℃)により精製した。このプロセスを3回繰り返し、2mLの水で洗浄した。残渣を6mLの水に溶解した。定量のために一定分量を凍結乾燥した。[NP]=0.6mg/mL。
いかなる理論にも束縛されることを望まないが、1:1のGlcNHAc:EG6NH2比の複数のリガンドを有する得られたナノ粒子「NP-GlcNHAc(1)EG6NH2(1)」の概略図を、図7に示す。
NP-α-Glc(1)EG6NH2(1)
4(12mg、50μmmol)および6(14.85mg、50μmmol)のMeOH(8.3mL)中の溶液に、HAuCl4の0.025M水溶液(1.33mL、33μmmol)を添加した。溶液を30秒間振盪し、次いで、NaBH4の1N水溶液(0.67mL、0.67mmol)を、数回に分けて添加した(134μL×5)。暗色懸濁液を100分間振盪した。メタノール層を除去し、ペレットを10mLの水に溶解し、遠心濾過(10KDa AMICON 4mL、4500g、15分、15℃)により精製した。このプロセスを3回繰り返し、2mLの水で洗浄した。残渣を4mLの水に溶解した。定量のために一定分量を凍結乾燥した。[NP]=0.8mg/mL。
いかなる理論にも束縛されることを望まないが、1:1のα-Glc:EG6NH2比の複数のリガンドを有する得られたナノ粒子「NP-α-Glc(1)EG6NH2(1)」の概略図を、図8に示す。
NP-α-Glc
4(24mg、100μmmol)のMeOH(8.3mL)中の溶液に、HAuCl4の0.025M水溶液(1.33mL、33μmmol)を添加した。溶液を30秒間振盪し、次いで、NaBH4の1N水溶液(0.67mL、0.67mmol)を、数回に分けて添加した(134μL×5)。暗色懸濁液を100分間振盪した。メタノール層を除去し、ペレットを10mLの水に溶解し、遠心濾過(10KDa AMICON 4mL、4500g、15分、15℃)により精製した。このプロセスを3回繰り返し、2mLの水で洗浄した。残渣を5mLの水に溶解した。定量のために一定分量を凍結乾燥した。[NP]=1.0mg/mL。
いかなる理論にも束縛されることを望まないが、α-Glcの複数のリガンドを有する得られたナノ粒子「NP-α-Glc」の概略図を、図9に示す。
NP-GlcC2(1)GlcNH_IAA(1)
1(12mg、50μmmol)および5(12mg、50μmmol)のMeOH(8.3mL)中の溶液に、HAuCl4の0.025M水溶液(1.33mL、33μmmol)を添加した。溶液を30秒間振盪し、次いで、NaBH4の1N水溶液(0.67mL、0.67mmol)を、数回に分けて添加した(134μL×5)。暗色懸濁液を100分間振盪した。メタノール層を除去し、ペレットを10mLの水に溶解し、遠心濾過(10KDa AMICON 4mL、4500g、15分、15℃)により精製した。このプロセスを3回繰り返し、2mLの水で洗浄した。残渣を8mLの100mM MESに溶解し、EDC(153mg、0.8mmol)およびイミダゾール-4-酢酸一塩酸塩(81mg、0.5mmol)で14時間処理した。混合物を遠心濾過(10KDa AMICON 4mL、4500g、15分、15℃)により精製した。このプロセスを3回繰り返し、2mLの水で洗浄した。残渣を4mLの水に溶解した。定量のために一定分量を凍結乾燥した。[NP]=0.9mg/mL。
いかなる理論にも束縛されることを望まないが、1:1のGlcC2:GlcNH_IAA比の複数のリガンドを有する得られたナノ粒子「NP-GlcC2(1)GlcNH_IAA(1)」の概略図を、図10に示す。
NP-α-Gal(1)EG6NH2(1)
アミンα-gal金ナノ粒子Batch MI-NP-10-AMINE-GALの調製:1:1(0.58mmol、3当量)の比のアミン-メルカプトヘキサエチレングリコール連結基6およびα-ガラクトースリガンド3のMeOH(49mL)中の混合物に、金塩の水溶液(7.86mL、0.19mmol、0.025M)を添加した。反応物を30秒間撹拌し、次いで、NaBH4(1N)の水溶液を、数回に分けて添加した(4.32mL、4.32mmol)。反応物を、900rpmで100分間振盪した。この時間後、懸濁液を14000rpmで1分間遠心分離した。上清を除去し、沈殿物を2mLの水に溶解した。次いで、2mLの懸濁液を2つのフィルタ(AMICON、10KDa、4mL)に導入し、4500gで5分間遠心分離した。フィルタ内の残渣をさらに2回水で洗浄した。最終残渣を80mLの水に溶解した。
いかなる理論にも束縛されることを望まないが、1:1のα-Gal:EG6NH2比の複数のリガンドを有する得られたナノ粒子「NP-α-Gal(1)EG6NH2(1)」の概略図を、図11に示す。
金NPの調製において、製造は層流キャビネット下であった。全てのガラスおよびプラスチック材料(例えばエッペンドルフ、バイアルおよび瓶)ならびに溶媒(水、HAc)は、まずオートクレーブ内で滅菌した。他の全ての使い捨て器具(例えばチップおよびフィルタ)は、事前に滅菌された状態であった。
(実施例3)
ナノ粒子へのインスリン結合
以下の方法は、αGal(1)EG6NH2(1)NPに対するインスリンの結合がいかにして行われたかを詳細に示すものである。方法は、一定インスリンおよび様々なNPレベルを使用し、試験された他のNP試料に対してはより低い/異なるレベルのNPが使用されたが、これ以外は方法は試験された全てのNPに対して同じであった。
インスリンストック溶液の調製;清浄なガラスバイアルに20mgのヒトインスリンを量り入れ、8.7mlの10mM HCl混合物を静かに添加すると、インスリンは完全に溶解し、次いで1.3mlの100mMトリス塩基を添加することによりpHを7.5に戻し、溶液は、インスリンがその等電点を通過すると速やかに懸濁し、pHが7.5であることを確認し、蓋をして4℃で保存し、これを2mg/mlインスリンストック溶液とする。
様々な量のαGal(1)EG6NH2(1)NP、例えば15、30、60、120、240および480ナノモルの金含量のNPを、エッペンドルフまたは好適なサイズの容器に入れ、水で全体積を200μlとし、次いで50μlのヒトインスリン(トリスHCl pH7.5中2mg/ml、インスリンストック溶液の調製については上記を参照)を添加する。静かに混合し、室温で2時間放置し、続いて2分間の卓上遠心分離(2000rpm)を行って凝集物を沈降させる。最大上清値を得るために、ちょうど200μlの水および50μlのインスリンを有する標準管に対して行うべきであり、同様にブランク、すなわち50μlのトリスHCl pH7.5+200μlの水に対しても行うべきである。高精度が必要とされる場合は、既知量のαGal(1)EG6NH2(1)NPを含有する試料、すなわち10μgの金含量の試料を水で200μlとし、50μlのインスリン緩衝剤を添加し(トリスHCl pH7.5)、これを使用して、BCAアッセイにおいてαGal(1)EG6NH2(1)NPが与えるわずかに陽性の結果を補正することができる(以下参照*)。
標準的マイクロBCAアッセイ(Pierceキット23235)により上清20μlを3回分析するが、これによって上清にどれ程のインスリンが残留しているかを示すデータが得られる。この値をインスリンのみの標準に対する値から差し引くことにより、NPに結合したインスリンの量を計算するが、これはまた、必要に応じてパーセントとして表現することができる。ここで得られたデータは、使用した100μgのインスリンを最大限に結合させるために必要なαGal(1)EG6NH2(1)-NPの量を示し、これらの条件は、必要量のαGal(1)EG6NH2(1)-NP-インスリンを生成するためにスケールアップすることができる。
*データは、BCAアッセイにおける遊離αGal(1)EG6NH2(1)-NPのわずかな干渉に対して補正することができる。これを行うためには、全ての最終試料に対して金分析を行い、様々な上清中にどれ程の金が残留しているかを計算するが、インスリンに対して過剰のNPを有する試料においてより高いレベルが観察される。以下の例により示されるように、10μgの金含量のNPに対するBCA値を使用して、観察される金含量に対して補正を行う。
インスリンを有さない10μgの金含量のNPがBCAにより0.5を示し、40μgAu試験NP上清が1.25のBCAを示し、また5μgの金含量を示す場合、これは、0.25のBCA値(0.5の50%)が実際には遊離NPによるものであり、したがって、40μg金試験NP上清に対する補正値は、1.25ではなく1.00となるべきであることを意味する。これは単純化された説明のための例であり、上清中の金含量が低い場合は、補正因子は最小限となる。
金の量(ナノモル)当たりの結合ヒトインスリンの量(ナノモル)を図12に示すが、図中、
Glc=2'-チオエチル-β-D-グルコピラノシドであり、
GlcNAc=2'-チオエチル-2-アセトアミド-2-デオキシ-β-D-グルコピラノシドであり、
GlcamineIAA=5'-チオペンタニル-2-デオキシ-2-イミダゾールアセトアミド-α,β-D-グルコピラノシド(α、β異性体混合物)であり、
AGal=2'-チオエチル-α-D-ガラクトピラノシドであり、
EG6NH2=1-アミノ-17-メルカプト-3,6,9,12,15-ペンタオキサ-ヘプタデカノールであり、
AGlc=2'-チオエチル-α-D-グルコピラノシドであり、
凡例中の数字は、リガンドの化学量を指す。
図12を参照することにより分かるように、約1:1の比のAGalおよびEG6NH2のコロナを有するナノ粒子を使用して、比較的高程度のインスリン結合が得られた。インスリン結合はまた、以下のコロナ組成物のいずれかを有するナノ粒子によっても示された。
AGal:EG6NH2 1:1(トレース11、図12)
Glc:GlcamineIAA 1:1(トレース10、図12)
AGlc:EG6NH2 1:1(トレース8、図12)
BGlc:EG6NH2 1:1(トレース6、図12)
GlcNAc:EG6NH2 1:1(トレース7、図12)。
本明細書において説明されるようなナノ粒子に結合したインスリンは、生理溶液(例えば生理食塩水)との接触後に放出可能であることが判明し、また、(ヒト)インスリンに対するELISAにおいて肯定的な結果が達成されるように検出可能であることが判明した。これらの結果は、本発明のインスリン結合ナノ粒子が、生体系および/または生物学的要素との相互作用に利用可能な形態のインスリンを提供することを示している。したがって、ナノ粒子は、インスリンの担体/安定剤(例えば、保存、および/または製剤等に組み込むための処理のため)として作用することができると同時に、例えば対象、臓器またはその細胞への送達後にインスリン(例えば単量体インスリン)にその生物学的効果を発揮させる、または発揮するように利用可能とする能力を維持することができる。
(実施例4)
ナノ粒子の特性決定
I)インスリン金ナノ粒子バッチMI-NP-10-Ins(NP-α-Gal(1)EG6NH2(1))の特性決定
a)金含量:エトプロパジンと、Au(III)への完全酸化後の金との間の着色錯体の形成に基づく方法を使用して、金含量を測定した。513nmにおいて試料の吸光度を測定し、既知量の金を有する同様の溶液と定量的に比較する。
金含量は、262.5±56.3mg/L(バッチ#NP10)と決定された。
TEM:ナノ粒子懸濁液の透過型電子顕微鏡(TEM)画像を、図13に示す。
試料は、金コアにおいて以下のサイズ特性を有すると決定された。
カウント=783
平均(直径)=2.323nm±0.716nm
最小=1.002nm
最大=4.859nm
最頻値=2.104nm
b)動的光散乱による粒径分布:MI-NP-10アミン-gal(すなわちNP-α-Gal(1)EG6NH2(1)ナノ粒子)に対し、動的光散乱(DLS)により数および体積分布を測定し、それぞれ図14AおよびBに示す。
図14Aに示されるピークのピーク値は、以下の通りである。
ピーク1 4.875nm
図14Bに示されるピークのピーク値は、以下の通りである。
ピーク1 5.289nm
III)インスリン金ナノ粒子バッチMI-NP-10-INSの最終調製
金ナノ粒子MI-NP-10(13.041mg金)の溶液を、水で49.68mLとした。最終溶液に酢酸を添加し、pH=4.6を得た。次いで、27.85mLのトリスHCl pH7.5中の55.7mgのヒトインスリンを添加した。懸濁液を24時間放置し、この時間後に、4500gで1分間遠心分離した。上清を除去し、さらなるインスリンおよび金含量の分析のために保存した。沈殿物を3.220mLの水に再懸濁させ、500単位インスリン/mLの最終インスリン濃度を得た。
DLS分析により、インスリン-金ナノ粒子の粒径分布を測定した。BCA標準アッセイにより、インスリン含量を測定した。
**インスリン金NPの最終調製物は、層流キャビネット下で製造した。使用した全てのガラスおよびプラスチック材料(例えばエッペンドルフおよび瓶)ならびに溶媒(例えば水、トリスHClおよびHAc)は、オートクレーブ内で滅菌した。他の全ての使い捨て器具(例えばチップおよびフィルタ)は、事前に滅菌された状態であった。
特性決定:
a)MI-NP-10-INS(アミン-gal-INSULINナノ粒子)の数および体積による動的光散乱での粒径分布を、それぞれ図15AおよびBに示す。
図15Aに示されるピークのピーク値は、以下の通りである。
ピーク1 68.46nm
図15Bに示されるピークのピーク値は、以下の通りである。
ピーク1 88.38nm
b)インスリン含量:
ナノ粒子へのインスリン結合の%を、以下の式により決定した。
NP-インスリンナノ粒子中のインスリンおよび金の濃度:
インスリン:55.7mgインスリン
金:13.041mgの金
全体積:3.23mL水
最終インスリン濃度:17.25mgインスリン/mL=500単位/mL
最終金濃度:4.037mgAu/mL。
いかなる理論にも束縛されることを望まないが、本発明者らは、以下のように考える。
102個のAu原子/NP、これは数学的に、1個のNPに14個のインスリン分子が繋がっている結果となる。幾何学的考察では、ナノ粒子の表面上に約7個のインスリン分子の空間が許容されるため、これらの結果は、各NPが7個のインスリン二量体単位を含有することを示唆している。
インスリン金ナノ粒子バッチMI-NP-10-INSのさらなる特性決定により、以下の結果が得られた。
最終インスリン濃度:17.25mgインスリン/mL=500U/mL、既知濃度のインスリン標準溶液に対する補正後の比色ビシンコニン酸アッセイにより測定。
最終金濃度:4.037mgAu/mL、既知濃度の金標準溶液に対する補正後のエトプロパジンアッセイを用いた比色アッセイにより測定。
全体積:MilliQ水中3.23mL。
幾何学的考察を行うと、1個のα-ガラクトース-EG-アミン-Auナノ粒子は102原子の金コアを含有する。したがって、
4.037mg=2.049e-5モル=1.234e19原子=1.21e17ナノ粒子
17.25mg=2.97e-6モル=1.789e18分子
したがって、1個のα-ガラクトース-EG6NH2-Auナノ粒子は、約14個から15個の間のインスリン分子に結合して、最終ナノ粒子を生成する。
熱重量分析の結果:
いかなる理論にも束縛されることを望まないが、本発明者らは、インスリン-NPに関して、乾燥重量が500ugであり、そのうち410ugが分解していると考える。したがって、有機物パーセントは82%である。1個のα-ガラクトース-EG6NH2-Auナノ粒子中に102原子の金を考えると、金重量は、20091(18%)であり、有機物コロナは12122である。したがって、82有機物%である粒子を有するには、111616の重量、すなわち91525の有機物を有さなければならない。有機物の12122はコロナであるため、有機物の約79403がインスリンとなる。インスリンはMW5808を有するため、粒子1個当たり14モルインスリンとなるはずである。
図16は、実験的熱重量分析(TGA)データを示す。
(実施例5)
インスリン結合のZn最適化
金ナノ粒子(NP)、αGal(1)EG6NH2(1)NPを、上記実施例2に記載のように調製した。NPへのインスリン結合に対するZnの影響を評価するために、Znの非存在下でNPの第1のバッチを合成した。NPの第2のバッチは、1.33当量のZnの存在下で合成した。NPの第3のバッチは、Znの非存在下で合成したが、合成後に1.33当量のZnCl2をNPに添加した。次いで、3つのバッチの金NPに対するヒトインスリンの結合を測定した。
結果を図17に示す。図17は、様々な金NP濃度に対し、17.2ナノモルという一定量のインスリンが結合していることを示すグラフを示す。Znなしで合成されたNP、1.33当量で合成されたNP、および1.33当量のZnCl2を添加したZn不含NPの比較。
図17中のグラフは、亜鉛が存在しない場合、インスリン結合が非常に低いレベルであることを示している。亜鉛が存在する場合、インスリン結合は、定量可能な程まで大幅に高くなる。亜鉛がNP合成中に存在するか、合成後に添加されるかに関わらず、同等のインスリン結合が生じる。
いかなる理論にも束縛されることを望まないが、本発明者らは、Zn2+陽イオンが金NPへの改善されたインスリン結合をもたらすと考える。Znの他の形態、例えばZnOもまた、改善されたインスリン結合を媒介し得る。特に、数ヶ月の期間保存された金NP試料中のZnOの存在は、ZnOが形成可能であり、Zn2+陽イオンに加えて、またはその代替として、NPへの改善されたインスリン結合を媒介または促進し得ることを示す。
インスリンの結晶化、形態および機能におけるZn2+の重要性は、以前に報告されている。しかしながら、本明細書に記載のデータは、Zn2+の存在下を含めて、NPに結合したインスリンが、Zn2+の存在下でのヒトインスリン(すなわちNPに結合していないインスリン)により一般的に関連する六量体形態ではなく、単量体または二量体形態であることを示している。多くの状況(例えば臨床的状況)においては、六量体インスリンと比較して単量体または二量体インスリンが好ましいため、これは、本発明に関連する大きな利点を提示し得る。
本発明者らは、金NP(本明細書において説明される)に対するGLP-1の結合が、Zn(Zn2+および/またはZnOを含むがこれらに限定されない)の存在下で生じることを見出した。本明細書において説明される金NPへのGLP-1結合は、Znの存在下で合成されたNPに対するものであった。本明細書において、Znは、GLP-1結合金ナノ粒子組成物中に存在してもよいことが特に企図される。
(実施例6)
金ナノ粒子へのGLP-1結合
金ナノ粒子(NP)、αGal(1)EG6NH2(1)NPを、上記実施例2に記載のように調製した。インスリンを添加するのではなく、GLP-1を添加した。GLP-1がNPに結合することが判明した。様々な金NP濃度に対し、一定の29.8ナノモルのGLP-1が結合することが、図18に示されている。これらの結果は、インスリン以外のペプチドが本発明のナノ粒子に結合することを示している。
(実施例7)
2種以上のタンパク質が共結合したナノ粒子:インスリン/GLP-1ナノ粒子の組合せ
金ナノ粒子(NP)、αGal(1)EG6NH2(1)NPを、上記実施例2に記載のように調製した。インスリンおよびGLP-1の両方をNPに添加した。GLP-1/インスリンNPの水溶液を、MALDIによる分析に供したが、その結果を図19に示す。GLP-1/インスリンNPをHPLCに供したが、そのトレースを図20に示す。HPLCデータは、19.8mgのインスリンおよび1.33mgのGLP-1が測定されたことを示している。
1:1のインスリンおよびGLP-1のモル比を使用して、結合反応を行った。HPLCデータは、インスリン:GLP-1の近似的な比が9:1であったことを示しており、これは、GLP-1に比べ、インスリンのナノ粒子コロナ表面への優先的結合を示している。
MALDIおよびHPLCデータは、金ナノ粒子に対するGLP-1およびインスリンの混合結合を示している。いかなる理論にも束縛されることを望まないが、本発明者らは、本発明のナノ粒子に対する2つ以上の異なる種のペプチドの共結合が、単一種のペプチドの結合と比較して、ある特定の状況(例えばある特定の臨床的状況)において好ましくなり得ると考える。特に、ペプチドの組合せは、ペプチドが相互に有益な機能を果たす、および/または、例えば相乗的に呼応して作用するように、ナノ粒子上に担持され得る。
(実施例8)
インスリン担持ナノ粒子、GLP-1担持ナノ粒子、それらの混合物およびインスリン/GLP-1組合せナノ粒子による、ミニブタのin vivo処置
NP-インスリンの単量体放出特性をさらに探究するために、インスリンおよびGLP-1の構造体を合成した。我々は、(酵素分解ではなく)受容体により血漿からGLP-1が即座に除去されること、および、GLP-1の薬力学的(PD)効果が、インスリンと同様に、一時的で薬物動態学(PK)とは量的に無関係であり、わずか数分であると考えられることを提案した。我々は以前、IVGが内因性単量体インスリンの放出を刺激する10分前に、受容体遮断のための単量体インスリン源を提供するためにNP-インスリンを使用した。次いで、第1段階および第2段階を通した内因性インスリンのPKを可視化した。また、我々は、Novo Rapidエントレインメントを使用してインスリン受容体を遮断し、NP-インスリンのPKを測定した。この試験において、我々は、NP-インスリンの投与と共にNP-GLP-1の併用投与を使用して、膵臓インスリン分泌促進作用を提供し、IVGに応じた内因性放出インスリンおよび外因性NP-インスリンの両方のクリアランス速度を低減した。内因性放出および外因性NP-インスリンの両方のPKを測定した。
NP-インスリン、同じナノ粒子上に担持されたインスリンおよびGLP-1の両方を有する組合せナノ粒子(NP-インスリン/GLP-1(調製の詳細については実施例7を参照されたい))、ならびにNP-インスリンおよびNP-GLP-1の混合調製物のPKおよびPDを、健常な雌ミニブタを使用して評価した。表面分析は、単独NP-インスリン粒子が、約16モルのインスリン/粒子を有し、NP-インスリン/GLP-1粒子が、約26モルのインスリン/粒子を有することを示した。図21に示されるようなNP-インスリン/GLP-1ナノ粒子の分析では、同じ粒子上のインスリン対GLP-1のモル比が9/1であることが明らかとなった。単独粒子を使用するか、またはインスリン/GLP-1のモル比を9/1とするようにNP-インスリン粒子およびNP-GLP-1粒子を混合して、インスリンの投与用量は2.5U/動物であり、GLP-1の用量は0.1nmol/kg(平均重量19kg)であった。この化学量は、単独粒子上のインスリンおよびGLP-1の両方の治療用量を送達する機会を提供する。
動物を一晩絶食させ、次いで麻酔下に置いた。120分後、水ビヒクル中で試験品の皮下(s.c.)注射を行い、10分後に0.33gm/kgの静脈内グルコース(IVG)負荷を静脈内投与で行った。間隔をおいて血液を採取し、インスリン、グルコース、C-ペプチドおよびグルカゴンの測定値を記録した。体外から投与されたGLP-1は、高血糖の存在下で膵臓インスリン分泌促進作用のみを刺激するため、IVGが必要であった。さらに、グルコースの全身投与後には内因性放出に必要な血漿/門脈グルコース差が存在しないため、IVGは、腸内分泌L細胞からのGLP-1の内因性放出をもたらさない。これは、内因性GLP-1を誘導する経口グルコース試験とは対照的である。また、GLP-1は、血漿インスリンの異化率を低下させることにより、血漿インスリンレベルを増加させることが示されている。短い半減期を有するホルモンに関しては、これは血漿レベルに対して急速かつ有意な効果を有し得る。分離した膵島を用いた研究に基づく直接的なインスリン分泌促進作用が提案されているが、in vivoメカニズムは明確に確立されていない。外因性GLP-1の膵外作用は、経口グルコース試験(OGT)またはIVGプロトコルにおいて存在する。経口耐糖能試験後の血中グルコースレベルの低減は、胃内容排出の低減に続発することが提案されているが、このGLP-1の作用は最近疑問視されており、その効果には悪心が関与する可能性がある。体外から投与された天然GLP-1の作用メカニズムの説明は、必ずしもエキセンジン類似体またはGLP-1プロテアーゼ阻害剤に対する試験から推定され得るわけではない。本実験プロトコルにおいては、試験品はグルコースチャレンジの前に与えられており、したがって、後のグルコースの付与に対する潜在的な薬力学的(PD)効果、すなわち糖尿病の食前処置をモデル化するものである。
図22は、NP-インスリンおよびNP-インスリン/GLP-1粒子のグルコースクリアランスのPDを示す。データは、グルコースCmaxの大きさが、NP-インスリン調製物を使用した処置と比較して、NP-インスリン/GLP-1の組合せにおいてほぼ50%低減されたことを示している。Cmaxの鈍化は、頭相インスリン放出の特徴であり、分布容積(Vd)の増加を示し得る。GLP-1は、AVグルコース差を低減することが知られており、したがって、この効果は、グルコースがより効率的に間質腔に進入するのを促進することができ、筋肉および肝臓(ディッセ腔)の標的器官はグルコースを排出することができる。インスリン注射後の正常および糖尿病患者におけるFDGのPETスキャンは、肝臓および筋肉が主要な標的器官であり、糖尿病患者において筋肉内の異常な蓄積亢進が見られ、一方正常個体においては、ほぼ全てのグルコースが肝臓により除去されることを示した。グルコースチャレンジに応じたグルコースCmaxの大きさを低減するNP-インスリン/GLP-1の能力は、「グルコース変動幅」が、グルコースチャレンジに応じて糖尿病患者により典型的に示される大きなグルコース変動幅と比較して、相対的に正常化されることを示す。これは、NP-インスリン/GLP-1が、グルコースチャレンジに応じたグルコース変動幅の制御という、糖尿病状態の重要な特徴に対応することを示す(参照によりその全内容が本明細書に明示的に組み込まれる、Baggerら、2011、J. Clin. Endocrinol. Metab.、Vol. 96(3)、737〜745頁を参照されたい)。これは、治療上有益であると期待される。本発明者らは、現在、NP-インスリン/GLP-1が、グルコースチャレンジ後の処置された糖尿病患者におけるグルコース変動幅が、ベースライン血中グルコース濃度の約2倍の正常な非糖尿病範囲まで、またはその近くまで低減されるように、「インクレチン効果」を有利に制御し得ると考えている。
図23および24は、IVG後6分(5分間の矩形波注入の終わりから1分後)からプロットされたデータを示す。NP-インスリンによる前処理は、グルコースの初期クリアランス(血管区画1)に対して劇的な効果を有し、半減期は1.1分であった。第2のクリアランスの半減期は、間質腔排除(区画2)の42分であった。同じ粒子上のGLP-1の存在は、Cmax(グルコース変動幅)を劇的に減衰する効果を有し、2つの区画モデルは使用することができず、データは、単一指数にのみフィッティングすることができ、28分という計算半減期が得られた。
図25は、インスリンまたはGLP-1を含有する2つの粒子の混合に対するPDデータを示す(すなわち、インスリンおよびGLP-1は別個の粒子上にあった)。この場合も、Cmaxの著しい減衰が観察され、グルコースの大部分は約29分の半減期で排除され、これは、インスリンおよびGLP-1の両方を含有する粒子に類似していた。図26は、同じブタにおける3種の試験品を比較したものである。GLP-1含有試験品は共にグルコース矩形波注入のCmaxを減衰し、GLP-1のこの固有のPD効果が確認された。グルコース変動幅の低減は、II型糖尿病の治療において重要であり、我々が知る限り、これは遊離GLP-1またはアシル化類似体においてはこれまで報告されていない。GLP-1は、最近、水分吸収を低減することが示されており、我々が観察する効果がVd再分配に起因する場合、これらの2つの観察が関連している可能性がある。
図27および28は、個々の動物におけるNP-インスリンおよびNP-インスリン/GLP-1の投与後のグルカゴンレベルを示す。以前に我々がIVGの非存在下で見出したように、皮下(s.c.)NP-インスリンは、グルカゴンの麻酔誘導抑制の維持に対して劇的な効果を有する。対照的に(図28)、NP-インスリン/GLP-1粒子は、sc注射後最初の10分の間に、全ての動物においてグルカゴンレベルを増加させた。IVG後10分の時点ですぐにレベルが急速に降下し、グルコースレベルが正常血糖に戻るに従い、上昇したレベルが戻った。図29において、データは、異なる開始値を正規化するために、パーセント変化の平均としてプロットされている。試験における動物はいずれも低血糖ではなかったため(図26)、グルカゴン反応の差は、低血糖への反応よりも、正常血糖を維持するために必要なカウンターホルモンとの間の平衡の指標となるはずである。これらのデータは、NP-インスリン/GLP-1に関して図24に示されるグルコースPKが、グルカゴンのグルコース上昇能により中和されていたNP-インスリンの強いグルコース低下作用の平衡であることを示唆している。いくつかの即効性インスリンの特徴は、麻酔下のミニブタにおいて明確なカウンターホルモン反応を示さずに低血糖をもたらすことである。NP-インスリンへのGLP-1成分の追加は、このプロトコルにおいてもカウンターホルモン反応を提供するようである。
図27に報告されているように、我々は、IVG後にほとんど検出不可能なレベルのグルカゴンを見出したが、これは、図28に示されるように、NP-インスリン/GLP-1の投与により著しく上昇した。図30は、NP-インスリン/GLP-1の組合せと比較した、別個の粒子上のインスリンおよびGLP-1を投与した効果を示す。両方の試験品において、グルカゴンの初期スパイク、続いて急速な低下が測定され、次いで、IVG後に、グルカゴンレベルの上昇は、NP-インスリン/GLP-1粒子において著しく上昇した。これは、NP-インスリン/GLP-1処置が、NP-インスリンおよびNP-GLP-1の混合物と比較して、より正常なグルカゴン反応(カウンターホルモン反応としても知られる)を誘導することを示している。これは、NP-インスリン/GLP-1の組合せが、いかなる望ましくない低血糖も回避または最小限化し得ることを示唆している。
この実験は、同じ粒子上のインスリンおよびGLP-1を投与することが、GLP-1またはインスリンが繋がった2種の粒子を投与することとは異なるPD効果をもたらすことの予備的証拠を提供する。GLP-1およびインスリンの放出速度は血漿中において迅速であるが、おそらくは、NPインスリンおよびGLP-1のいくつかは少なくとも1回の循環中に粒子に会合したままとなることが予測される。この条件下において、インスリンまたはGLP-1は、インスリンおよびGLP-1の送達が同じ標的に対するものであるようにホーミング分子として機能し得る。例えば、ほとんどの投与インスリンの行く先は膵臓であり、したがってこれは、その区画へのGLP-1の標的化をもたらし得る。対照的に、GLP-1は、主に腎臓により排除され、同様のインスリンは膵臓に局在し、これにより、インスリン/GLP-1は、膵臓ではあるが異なる組織学的部位に送達され得るようになる。
図31は、sc NP-インスリンの投与後のIVGに対するC-ペプチド反応を示す。インスリンは、インスリン合成を抑制せず、C-ペプチドレベルは、原則的に、膵臓に対するグルコース刺激および内因性インスリンの放出を反映する。図32は、NP-インスリン/GLP-1を投与した同じブタの個々の反応を示す。インスリンと同じ粒子に繋がっている場合、図32に示されるように、GLP-1の明確なインスリン分泌促進作用は観察されなかったが、ただし、ブタ3においては可能性がある。図33においては、NP-インスリンとNP-インスリン/GLP-1との間にC-ペプチド合成の差は見られない。対照的に、別個の粒子上のインスリンおよびGLP-1の投与は、インスリン分泌促進作用をもたらした。これは、NP-インスリン/GLP-1の組合せが、NP-インスリンおよびNP-GLP-1の混合物と比較して、対象におけるGLP-1誘導インスリン分泌促進作用を有利に回避または低減することを示唆している。したがって、GLP-1が、インスリンもまた含有する粒子に繋がっている場合には、期待されるGLP-1インスリン分泌促進反応は観察されない。これは、GLP-1のインスリン標的化のさらなる証拠である。これは議論の余地があるが、膵炎および膵臓腫瘍が現在報告されているため、GLP-1の直接的膵臓作用はGLP-1治療の禁忌となり得る。GLP-1を送達して膵臓におけるインスリン分泌促進活性を回避する能力は、NP-インスリン/GLP-1構造体の潜在的に重要な特徴である。
強いインスリン分泌促進作用はまた、粒子の混合物で処置された場合のブタに対するデータを示す図34に示されるように、インスリンPK測定においても明確に見られ、図34は、GLP-1のインスリン分泌促進作用により高められた内因性インスリン放出およびs.c.投与された外因性NP-インスリンの複合状態を示す。エントレインメント実験から、IVGの10分前の動物の前処理が受容体遮断を誘導することが分かり、また、主に内因性産生単量体インスリンのPKが観察され得る。図35は、NP-インスリン/GLP-1を使用した後のインスリンPKを示す。図36は、グルコース注入と同時の、対照および遊離GLP-1と比較したNP-GLP-1の静脈内注入の効果を示す。これらの条件下において、GLP-1は、インスリン分泌促進作用により、または、インスリンの排出もしくは分解を低減することでインスリンCmaxを向上させることにより、第1および第2段階反応を向上させると考えられる。これは、NP-インスリン/GLP粒子が、GLP-1の安定化活性(10〜12分付近のピーク)を提供しているが、図34に示されるような50〜75分後に明らかとなるインスリン分泌促進作用を提供しないことを裏付けている。
GLP-1のインスリン分泌促進作用は、内因性GLP-1が分解する前にどのようにして解剖学的に膵臓に到達し得るかを説明することが困難であるため、議論の余地がある。GLP-1はまた、その生体内分布をより予測困難なものとするリンパ管内に放出されると考えられる。類似体GLP-1は、より長い血漿半減期を有し、明らかに膵臓に到達してインスリン分泌促進作用を有することができるが、この作用は、膵島細胞の過剰刺激および膵炎等の異常な生理学に関連する可能性がある。NP-インスリン/GLP-1およびその2種の粒子の混合物は、異なる生物学的効果を有することが明らかである。2種の構造体の生体内分布は、2つのペプチドが同じ粒子に繋がっている場合、それらの相対的放出速度に依存して、非常に異なる可能性がある。「サイドカー」現象は、最終的な生物学的結果を決定する上で重要となり得る。
要約すると、インスリンCmaxを増加させ、膵臓インスリン分泌促進作用を回避するGLP-1の能力を分離する能力は、大きな医療上の利益となり得、おそらくは膵炎のリスクを低減する。糖尿病患者は、食後またはグルコースチャレンジ後に放出される腸内内因性GLP-1の量に欠陥を有さない。しかし、糖尿病患者における末梢インスリン耐性は、GLP-1組織耐性と並行し、すなわち、受容器における低減された生物活性および代謝メカニズムが同一となり得る。したがって、GLP-1処置のための主要な治療作用は、内因性産生または体外投与インスリンのバイオアベイラビリティを向上させることを目標とすべきである。これらの問題の両方を解決するNP-インスリン/GLPの能力は、治療薬品のために非常に魅力的である。
(実施例9)
上述のように、本発明の組成物は、経鼻送達により送達され得る。例えば、インスリン/GLP-1ナノ粒子を含有する水溶液を製剤化し、アトマイザー、ネブライザーまたは噴霧器を使用して、鼻粘膜に噴霧の形態で適用され得る。ナノ粒子を保持する溶液の噴霧は、鼻粘膜に接触し、それにより吸収される。例えば、経鼻送達システムは、様々な成分、例えば等張剤、緩衝剤、防腐剤、消毒剤、界面活性剤および安定剤、ならびにそれらの組合せを含み得る。例えば、実施例7のインスリン/GLP-1ナノ粒子は、経鼻送達用の水性緩衝液と組み合わされる。
(実施例10)
インスリンフィルムストリップ(1IU)
以下の成分および後述のプロセスを用いて、フィルムマトリックス組成物を調製する。
1. 5.171g(49.25%)のポリエチレンオキシド(PEO) WSR N10 LEO(Dow社製)
2. 2.586g(24.63%)のHPMC E15(Dow社製)
3. 1.293g(12.31%)の固形物および0.431gの水を含有する1.724gのマルチトールシロップ(Lycasin 80/55)(Roquette社製)
4. 1.293g(12.31%)の天然グリセリン(Spectrum社製)
5. 0.053g(0.50%)のSpan 80(Spectrum社製)
6. 0.105g(1.00%)の二酸化チタンUSP(Brenntag社製)
7. 3.0mlのインスリン/GLP-1ナノ粒子(Midatech社製)
8. 14.069gの滅菌水USP(McGaw社製)
成分3、4、5、6、および8を、加工ガラスボウルに加えた。次いで、成分1および2のブレンドをボウルに加えた。Degussa Dental Multivac Compactを使用して、以下に示すように溶液を調製する。
40分撹拌=100rpm 真空=60%(16in Hg)
40分撹拌=100rpm 真空=90%(25in Hg)
12分撹拌=100rpm 真空=95%(27in Hg)
8分撹拌=100rpm 真空=98%(27.5in Hg)
滅菌水を添加してQSを得た。
4分撹拌=100rpm 真空=100%(28.5in Hg)
成分7を添加した。
滅菌水を添加してQSを得た。
8分撹拌=100rpm 真空=100%(28.5in Hg)
マイクロメートルの調節可能なウェッジバーを440ミクロンから460ミクロンに設定したKコントロールコーターを使用して、紙基板のHDP側に溶液を2枚のフィルムにキャストする。一方のフィルムを100℃の対流式炉内で15分間乾燥させ、他方のフィルムを60℃の対流式炉内で30分間乾燥させる。本発明に従って乾燥を行い、結果として生じるフィルムおよびそのフィルムから切断した単位用量における含量の均一性をもたらした。フィルムを0.875×0.5インチのストリップに切断したが、これは33mgから39mgの重量である。
(実施例11)
ストリップ当たり20IUのインスリンおよび69マイクログラムのGLP-1(インスリン/GLP-1モル比7:1)を含有する、舌下送達用口腔活性ストリップ
以下の成分を、加工ガラスボウルに加える。
1. 2.868グラム(47.310%)のポリエチレンオキシド(PEO) WSR N10 LEO(Colorcon社製)
2. 1.434グラム(23.660%)のHPMC E15(Dow社製)
3. 0.717グラム(11.825%)のマルチトールおよび0.239gの水を含有する0.956グラムのマルチトールシロップ(Lycasin 80/55)(75%固形物)(Roquette社製)
4. 0.717グラム(11.825%)のグリセリン(Spectrum社製)
5. 0.029グラム(0.480%)のPeceol(Gattefosse社製)
6. 0.058グラム(0.961%)の二酸化チタン(Brenntag社製)
7. 0.239グラム(3.939%)の金/リガンド/インスリン/GLP-1および9.761gの水(Midatech社製)を含有する10グラムの金/リガンド/インスリン/GLP-1懸濁液(6062.8IUのインスリンおよび0.021gのGLP-1)(インスリン:GLP-1モル比7:1)
8. 4.146gの滅菌水(Braun社製)
ボウルに撹拌器上部を装着する。Degussa Dental Multivac Compactを使用して、撹拌および真空下で以下に示すように溶液を調製する。
40分撹拌=125rpm 真空=60%(18in Hg)
40分撹拌=125rpm 真空=90%(25.5in Hg)
12分撹拌=125rpm 真空=95%(27in Hg)
8分撹拌=125rpm 真空=98%(27.5in Hg)
水の損失分を補うために滅菌水を添加
10分撹拌=125rpm 真空=100%(28.5in Hg)
マイクロメータの調節可能なウェッジバーを335ミクロンに設定したKコントロールコーターを使用して、マイラー基板上に溶液を湿潤フィルムにキャストする。フィルムを80℃の空気乾燥炉内で20分間乾燥させる。フィルムは、2.80%の含水率を有する。フィルムシートを、14×18mmのストリップに切断する。フィルムストリップは、20mgの乾燥目標ストリップ重量、および水分に関して補正した20.58mgの目標ストリップ重量を有する。各ストリップは、20IUのインスリンおよび69マイクログラムのGLP-1を含有し、インスリン/GLP-1モル比は7:1である。舌下に設置して溶解させることにより、ストリップを患者に適用する。
(実施例12)
生体接着を得るための二重層活性フィルム用遅速性閉塞フィルム
遅速性閉塞フィルムに使用される成分を以下に示す。
1. 7.85グラム(7.48%)のPEO WSR 1105 LEO(Colorcon社製)
2. 53.97グラム(51.40%)のPEO WSR N80 LEO(Colorcon社製)
3. 12.76グラム(12.15%)のマルチトールおよび4.25グラムの水を含有する17.01グラムのマルチトールシロップ(Lycasin 80/55)(75%固形物)(Roquette社製)
4. 12.76グラム(12.15%)のグリセリン(Spectrum社製)
5. 10.79グラム(10.28%)のHPMC E15(Dow社製)
6. 2.10グラム(2.00%)のスクラロース(EMD社製)
7. 4.20グラム(4.00%)のペパーミント2303香料(Ungerer社製)
8. 0.53グラム(0.50%)のPeceol(Gattefosse社製)
9. 0.04グラム(0.04%)のFD & C青(顆粒)(Sensient Tech社製)
10. 240.75グラムの滅菌水(Braun社製)
PEO WSR 1105、マルチトールシロップ、グリセリン、Peceol、および滅菌水を、加工ガラスボウルに加える。ボウルに加熱マントルを装着し、加熱を開始する。以下に示すように溶液を調製する。
24分撹拌=150rpm 真空=0%
温度=73.5℃
40分撹拌=150rpm 真空=0%
温度=60℃
加熱を停止し、加熱マントルを取り外す。
PEO WSR N80 LEO、HPMC E15、スクラロース、およびFD & C青(顆粒)のブレンドをボウルに加える。
水の損失分を補うために滅菌水を添加する。
20分撹拌=100rpm 真空=60%(18in Hg)
12分撹拌=100rpm 真空=90%(27in Hg)
28分撹拌=100rpm 真空=100%(28.5in Hg)
ペパーミント香料を添加する。
水の損失分を補うために滅菌水を添加する。
8分撹拌=150rpm 真空=100%(28.5in Hg)
マイクロメータの調節可能なウェッジバーを900ミクロンに設定したKコントロールコーターを使用して、マイラー基板上に溶液を湿潤フィルムにキャストする。フィルムを80℃の炉内で27分間乾燥させる。フィルムは、2.46%の含水率を有する。フィルムシートを、22×190mmのストリップに切断する。ストリップの許容される重量範囲は、0.79グラムから0.97グラムである。22×190mmストリップの1つを、80mgの平均ストリップ重量を有する10個の22×18mmストリップに切断する。遅速性閉塞フィルムのこれらの18×22mmストリップは、生体接着を可能とする金/リガンド/インスリン/GLP-1の二重層フィルムストリップを調製するためのものである。
(実施例13)
7:1のインスリン/GLP-1モル比を有する、20IUのインスリン/60マイクログラムのGLP-1の口腔送達用経口二重層フィルムストリップ
実施例1からの20IUのインスリンおよび69マイクログラムのGLP-1を含有する14×18mm活性ストリップの1つを、実施例2からの閉塞フィルムの18×22mmストリップの1つの中央に配置する。ストリップを、折り畳んだHDPE 6330L紙の中に設置する。折り畳んだ紙の中のストリップを、88℃から90℃の温度のGBC Heat Sealer H212に2回通過させる。2分間冷却後、ラミネートストリップを紙基板の間から取り出す。プロセスを繰り返して、さらなるラミネートストリップを得る。各ラミネートストリップは、20IUのインスリンおよび69マイクログラムのGLP-1を含有し、インスリン:GLP-1モル比は7:1である。活性ストリップを頬領域に向けて下向きに設置して、ラミネート二重層経口フィルムストリップを患者の頬領域に適用する。
(実施例14)
静脈注射用滅菌ナノ/インスリン/GLP-1製剤:
全部で1000IUのインスリンおよび3,450マイクログラムのGLP-1となるように、606IUインスリン/mlを含有する1.65mlの金ナノ/リガンド/インスリン/GLP-1(7:1の分子比のインスリン:glp-1)の懸濁液を、20mLのバイアルに加える。この懸濁液に、30mgのm-クレゾールおよび160mgのグリセリンを添加する。この混合物に、10gとなるまで十分な量の滅菌水を添加する。この懸濁液/溶液を、2N HClおよび2N水酸化ナトリウムを使用して、7.4のpHに調整する。静脈注射の各1mlは、100IUのインスリンおよび345マイクログラムのGLP-1を含有する。
(実施例15)
皮下注射用滅菌ナノ/インスリン/GLP-1製剤:
全部で1000IUのインスリンおよび3,450マイクログラムのGLP-1となるように、606IUのインスリン/mlを含有する1.65 mlの金/ナノ/リガンド/インスリン/GLP-1(7:1の分子比のインスリン:glp-1)の懸濁液を、20mLのバイアルに加える。この懸濁液に、3mgのm-クレゾール、6mgのトロメタミン、5mgの塩化ナトリウムおよび0.01mgのポリソルベート20を添加する。この混合物に、10gとなるまで十分な量の滅菌水を添加する。この懸濁液/溶液を、2N HClおよび2N水酸化ナトリウムを使用して、7.4のpHに調整する。皮下注射の各1mlは、100IUのインスリンおよび345マイクログラムのGLP-1を含有する。
(実施例16)
インスリン/GLP-1の凍結乾燥錠剤製剤
3,636IUのインスリンおよび12.544mgのGLP-1を含有する6グラムの金/ナノ/リガンド/インスリン/GLP-1(7:1の分子比のインスリン:glp-1)を、74グラムの蒸留水に添加する。この溶液に、10グラムの125ブルームゼラチン、6グラムのマンニトール、2グラムのグリセリン、0.5グラムのスクラロースおよび1.5グラムのペパーミント香料を添加する。ゼラチンが溶液となるまで、成分を混合する。550mgの溶液を、181個の直径1cmのブリスターパックにピペットで注入する。Navalyphe-N2 500 Freeze Dryer内で溶液をフリーズドライし、アルミニウム箔の裏打ちで包装する。各凍結乾燥錠剤は、20mgのインスリンおよび69マイクログラムのGLP-1+または-10%を含有する。プロセスフローは以下の通りである。
活性物質+ポリマー担体溶液→ブリスターパック→窒素フリーズドライトンネル→凍結乾燥→アルミニウム箔裏打ち包装
本明細書において引用される全ての参考文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれ、あらゆる目的において、個々の出版物または特許もしくは特許出願のそれぞれが、具体的および個別に、参照によりその全体が組み込まれるものとして示されるのと同等に組み込まれる。
本明細書に記載の特定の実施形態は、限定を目的とせず、例示を目的として示される。本明細書におけるいずれの副題も、利便性のみを目的として含まれ、いかなる様式でも、本開示を制限するものとして解釈されるべきではない。