JP6039532B2 - フェライト系耐熱鋼用溶接材料 - Google Patents

フェライト系耐熱鋼用溶接材料 Download PDF

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本発明は、高温、高圧の環境下で作動する発電プラント等の溶接で用いられるフェライト系耐熱鋼用溶接材料に関するものである。
高温、高圧の環境下で作動する火力発電プラントの主蒸気管等に用いるフェライト系耐熱鋼用溶接材料として、下記の特許文献1〜11に示されるものが知られている。
特許文献1〜5には、NbまたはNb及びTaを添加してクリープ強度を向上または安定化させる技術が開示されている。
特許文献6には、NbとTaを組み合わせて添加することによって、クリープ強度を確保する技術が開示されている。
特許文献7には、本発明とは使用される分野が異なるが核融合炉において、誘導放射化元素の一つであるNbを規制し、Taを添加することによって、クリープ強度を向上させ、また組織微細化による耐衝撃性能を向上させる技術が開示されている。
特許文献8には、低Cr鋼と高Cr鋼との異材溶接において通常は2段階の熱処理を行うところ、Nbの代わりにTaを添加することにより、1回の熱処理で良好な耐衝撃性能が得られる高靱性溶接材料が開示されている。
また特許文献9には、特許文献8を基にCuを添加し、高強度、高靭性を得られる高Cr鋼溶接材料が開示されている。
特許文献10、11には、希土類元素(REM)を添加して不活性シールドガス中でアークを安定化させる技術が開示されている。
特許第4476018号公報 特許第3938068号公報 特開2000−301377号公報 特開平9−308989号公報 特開平7−96390号公報 特許第3375817号公報 特許第3155148号公報 特開平8−290290号公報 特許第3009658号公報 特開2001−191197号公報 特許第3854440号公報
高温、高圧の環境下で長時間使用される機器の溶接部では、クリープ破断強度(ある温度環境で所定の材料に一定応力をかけて放置し続けた場合に、クリープ変形によりその材料が破断するときの引張強度。以下、クリープ強度という)及び耐衝撃性能が求められる。また、実機の溶接施工においては拘束応力が高く溶接割れが発生しやすい厚肉構造部材での溶接に用いられることが多く、溶接金属の健全性を確保すること等の観点から優れた耐溶接割れ性が要求される。さらに、溶接作業能率向上及び施工に係るコスト低減の観点から、O2やCO2などの活性ガスを含むシールドガスを用いたガスメタルアーク溶接法(以下、ガスメタルアーク溶接法という)での溶接作業性の安定性が必要不可欠となる。また、より高品質な溶接金属が得られるTIG溶接法においても溶接ビード表面に発生する酸化スケールが多いと、融合不良などの溶接欠陥の原因となるため、酸化スケール発生量の少ない溶接材料が求められる。
また、通常フェライト系耐熱鋼溶接部は溶接施工後に溶接部の延性や耐衝撃性能を改善させるため溶接後熱処理を施す。この際、溶着金属のAc1変態点温度が溶接後熱処理温度より低い場合、クリープ強度や耐衝撃性能が大きく劣化する場合がある。ここで、Ac1変態点温度とは、マルテンサイトを加熱した際に、マルテンサイトの一部がオーステナイトに変態し始める温度をいう。クリープ強度及び耐衝撃性能をより安定的なものにするため、溶着金属のAc1変態点温度は電気工作物に関する法令(火力技術基準)で定められた溶接後熱処理温度の上限値である760℃以上となることが望ましい。
しかしながら、特許文献1〜11の技術では、TIG溶接等の作業に手間がかかる溶接を行わずに、ガスメタルアーク溶接法等の作業が簡便な溶接を行った場合は、溶着金属の機械的強度を高くしながら、溶接作業性を向上させることはできず、さらに、溶着金属のAc1変態点温度を760℃以上まで上げることはできなかった。
本発明の目的は、作業が簡便な溶接を行う場合でも、溶接金属の機械的特性を高くすることができ、かつ溶接作業性に優れたフェライト系耐熱鋼用溶接材料を提供することにある。
本発明の目的は、溶接金属の機械的特性および溶接作業性を低下させることなく、溶接後の熱処理温度を高くすることができるフェライト系耐熱用溶接材料を提供することにある。
本発明のフェライト系耐熱鋼用溶接材料は、C:0.05〜0.15質量%、Si:0.01〜1.00質量%、Mn:0.2〜2.0質量%、Cr:8.0〜14.0質量%、Ni:0.1〜1.0質量%、Mo:0.1〜0.7質量%、Ta:0.26〜0.60質量%、V:0.1〜0.7質量%、W:0.2〜2.5質量%、Cu:0.76〜2.0質量%、N:0.001〜0.08質量%、B:0.0100質量%以下(但しBが0質量%の場合を除く)を含有し、不可避的不純物としてP:0.010質量%以下、S:0.010質量%以下、O:0.07質量%以下、Al:0.02質量%以下、Ti:0.02質量%以下、Ca:0.01質量%以下、Mg:0.01質量%以下、Rem:0.01質量%未満を含有し、残部がFeからなる化学組成を有している。このような化学組成を有するフェライト系耐熱鋼用溶接材料を用いると、ガスメタルアーク溶接等の作業が簡便な溶接を行うことにより(すなわちTIG溶接等の作業に手間がかかる溶接を行わなくても)、溶接金属の機械的特性(引張強度、クリープ強度、耐衝撃性能、耐溶接割れ性)を高くすることができ、しかも安定した溶接作業性とすることができる。
また、発明者は、上記の化学組成を有することに加えて、該化学組成中のCr、W、Ni、Mn、Cu、Nの各元素が下記(1)式の関係を満たすことにより、溶接金属のAc1変態点温度が760℃以上となることを見い出した。なお、(1)式中の「Cr」、「W」、「Ni」、「Mn」、「Cu」、「N」で示された元素記号には、質量%で表された各元素の含有量が挿入される。
Cr+0.4W−10.7Ni−0.1Mn−0.7Cu−29.5N≧1.0
・・・(1)
すなわち、溶接後の熱処理温度の上限値が法令等で定められている場合に、定められた温度の上限値まで溶接後の熱処理温度を上げることができる。例えば、電気工作物に関する法令(火力技術基準)で定められた溶接後熱処理温度の上限値である760℃まで、溶接後の熱処理温度を上げることができる。そのため、溶接後の残留応力の除去や溶接金属の組織改善を確実に行うことができる。また、見方を変えると、法令で定められた最大熱処理温度の760℃で溶接後の熱処理を行っても、溶接金属の機械的強度を高い状態で維持することができる。
以下、各元素の作用及び含有量の限定理由について示す。
C(炭素)は、焼き入れ性を高め室温強度を高めると共に、炭化物を形成しクリープ強度を高める。Cが0.05質量%未満ではその効果が十分に得られず、また、Cが0.15質量%を超えると強度が高くなりすぎて耐溶接割れ性が低下するので、これらの点を考慮してC量は0.05〜0.15質量%にするのが好ましい。
Si(ケイ素)は、脱酸効果が得られ、また溶接作業性の点において溶接ビードのなじみ性を良好にさせるが、Siが0.01質量%未満ではこれらの効果が十分に得られず、またSiが1.00質量%を超えると耐衝撃性能が低下するので、Si量は0.01〜1.00質量%にするのが好ましい。
Mn(マンガン)は、Siと同様に脱酸元素として有効であり、また耐衝撃性能の改善に有効である。しかし、Mnが0.2質量%未満ではこれらの効果が十分に得られず、また、多量に添加するとクリープ強度が低下するため、Mn量は0.2〜2.0質量%にするのが好ましい。
Cr(クロム)は、クリープ強度を確保するために重要な元素である。Crが8.0質量%未満ではその効果が十分に得られず、またCrが14質量%を超えると溶接金属中にδフェライト組織の析出が顕著となり耐衝撃性能が低下するため、これらの点を考慮してCr量は8.0〜14.0質量%にするのが好ましい。
Ni(ニッケル)は、オーステナイト安定化元素であり、δフェライト組織の析出を抑制する効果がある。これにより溶接金属の耐衝撃性能を向上させることができる。しかし、Niが0.1質量%未満ではこれらの効果が十分に得られず、Niを多量に添加するとクリープ強度が低下するため、Ni量は0.1〜1.0質量%にするのが好ましい。
Mo(モリブデン)は、固溶体強化により室温強度及びクリープ強度を高める元素であるが、Moが0.1質量%未満ではこの効果が十分に得られず、多量に添加すると耐衝撃性能が低下するので、Mo量は0.1〜0.7%にするのが好ましい。
Ta(タンタル)は、耐溶接割れ性を低下させることなくクリープ強度を向上させるため重要な元素である。発明者は、Nbの替わりにTaを添加することで、耐溶接割れ性を低下させることなくクリープ強度を向上させることを見い出した。Ta量は0.26%以下ではその効果が弱く、また添加量が多すぎると過剰に析出物が発生し、耐衝撃性能が低下するため、Ta量は0.26〜0.60質量%にするのが好ましい。
V(バナジウム)はクリープ強度改善に効果のある元素であるが、V量が0.1%以下ではその効果が弱く、また多量に添加すると溶接性が低下するので、V量は0.1〜0.7質量%にするのが好ましい。
W(タングステン)は、Moと同様に固溶体強化元素としてクリープ強度の改善及び安定化に寄与する。しかし、Wが少量ではこれらの効果が十分に得られず、多量に添加すると耐衝撃性能を低下させるので、W量は0.2〜2.5質量%にするのが好ましい。
Cu(銅)は、Niと同様にオーステナイト安定化元素であり、耐衝撃性能の向上に効果がある。しかしながら、Cuが少量ではこの効果が十分に得られず、多量に添加するとAc1変態点温度を低下させクリープ強度が低下するので、Cu量は0.76〜2.0質量%にするのが好ましい。
N(窒素)は、固溶体強化により室温強度を高め、また高温では窒化物を形成し、クリープ強度を向上させる。しかしながら、Nの添加量が少ないと、この効果が弱く、また、過剰に添加した場合は、溶接作業性においてスパッタの発生量の増大、ブローホール発生の原因となる。そのため、N量は0.001〜0.080質量%にするのが好ましい。
B(ホウ素)は、粒界強化によりクリープ強度を向上させるのに有効である。多量に添加しすぎると、耐衝撃性能及び耐溶接割れ性が低下するので、B量は0.0100質量%以下(但しBが0質量%の場合を除く)にするのが好ましい。
本発明はさらに、P、S、O、Al、Ti、Ca、Mg、希土類(Rem)を以下に示す理由より規制する必要がある。
P(リン)は、不可避不純物であり、過剰に含まれると低融点不純物を形成し溶接割れ感受性を増大させる。よって、P量は0.010質量%以下とした。より溶接割れ感受性を向上させるには、P量は0.005質量%以下が望ましい。
S(硫黄)は、Pと同様に不可避不純物元素であり、過剰に含まれると溶接割れ感受性を増大させるため、極力低く抑える必要がある。よって、S量は0.010%以下とした。更に溶接割れ感受性を向上させるには、S量は0.005質量%以下が望ましい。
O(酸素)は、不可避不純物であり過剰に添加すると酸化物を形成し耐衝撃性能が著しく低下する。また溶接作業性の点においてもブローホールやスパッタの発生原因となるため、極力低く抑える必要がある。よって、O量は0.07質量%以下が望ましい。
溶接作業性(スパッタ発生の抑制等の効果)を向上させるため、活性ガスと親和力の強いCa、Mg及びRem(希土類)のうち、Ca、Mgはいずれも0.01質量%以下が好ましく、Rem(希土類)は0.01質量%未満が好ましい。また、Al、Tiは、不可避不純物として含有するが、各々0.02質量%以下が好ましい。
本発明のフェライト系耐熱鋼用溶接材料の実施例を示す化学組成と、効果を確認するための比較例の化学組成とを示す表である。 図1に示すフェライト系耐熱鋼溶接材料の実施例と比較例について、ガスメタルアーク溶接法での溶接作業性評価及びガスメタルア−ク溶接法により溶接された溶着金属のAc1変態点温度、引張強度、クリープ強度、耐衝撃性能および耐溶接割れ性を評価する表である。
以下、本発明のフェライト系耐熱鋼用溶接材料の実施の形態について説明する。図1は、本発明の実施の形態として、本発明のフェライト系耐熱鋼用溶接材料の化学組成と、本発明の効果を確認するための比較例の化学組成とを示す表である。図1より、実施例1〜17の化学組成は、いずれもC:0.05〜0.15質量%、Si:0.01〜1.00質量%、Mn:0.2〜2.0質量%、Cr:8.0〜14.0質量%、Ni:0.1〜1.0質量%、Mo:0.1〜0.7質量%、Ta:0.26〜0.60質量%、V:0.1〜0.7質量%、W:0.2〜2.5質量%、Cu:0.76〜2.0質量%、N:0.001〜0.08質量%、B:0.0100質量%以下(但しBが0質量%の場合を除く)を含有し、P:0.010質量%以下、S:0.010質量%以下、O:0.07質量%以下、Al:0.02質量%以下、Ti:0.02質量%以下、Ca:0.01質量%以下、Mg:0.01質量%以下、Rem:0.01質量%未満で、残部がFeからなる化学組成を有しており、かつ、下記(1)式の条件を満たしている。なお、下記(1)式中の「Cr」、「W」、「Ni」、「Mn」、「Cu」、「N」で示された元素記号には、質量%で表された各元素の含有量(数値)が入る。
Cr+0.4W−10.7Ni−0.1Mn−0.7Cu−29.5N≧1.0
・・・(1)
図1に示す実施例1〜17について、比較例との対比から、溶接材料としての性能を評価した。図2はガスメタルアーク溶接法による溶接作業性評価と溶着金属の引張強度、クリープ強度、耐衝撃性能、耐溶接割れ性及びAc1変態点温度を評価する図である。溶接作業性は、ビードオンプレート溶接により溶接を行い、ガスメタルアーク溶接法でのアーク安定性、スパッタ発生量及びビード形状について評価し、良好な溶接作業性が得られるものを合格とした。また、溶接作業性が良好であったものについて、以下の溶着金属の性能評価試験を行った。
溶着金属の性能評価としてはガスメタルアーク溶接法により溶接された溶着金属の試験片を作製し、引張試験ではJIS G0202に基づいて、室温における引張強度が620MPa以上で破断時の伸び率20%以上を合格とした。クリープ破断試験はJIS G0202に基づいて温度条件650℃、負荷応力98MPaの条件下で破断時間1000hr以上を合格とした。
耐衝撃性能はJIS G0202に基づいて、シャルピー衝撃試験により試験温度0℃でのシャルピー吸収エネルギーが3回の平均値で21J以上を合格とした。
耐溶接割れ性は、トランスバレストレイン溶接割れ試験を行った。板厚4mm×幅100mm×長さ100mmの試験片を用いて、ガスメタルア−ク溶接による肉盛溶接金属上をタングステンア−ク溶接によるナメ付け溶接を行い、溶接中に溶接方向に対して直角の方向に試験片を瞬間的に曲げることで、歪み(負荷歪み量2%)を与え、強制的に溶接割れを発生させ、発生した割れの最大割れ長さを測定し、耐溶接割れ性の定量評価を行った。また実機施工を想定した厚肉構造部材での耐溶接割れ性を評価するため、50mm厚板開先溶接部の側曲げ試験を行った。側曲げ試験は50mm板厚の開先溶接部から採取された板厚10mmの試験片を用いて、側曲げ試験はJIS Z 3122に基づいて実施し、型曲げ試験方法により行った。曲げ方法はジグの雄型を試験片がU字形になるように雌型ジグに押し付けて行い、その際の試験片曲率半径(R)は試験片板厚の2倍(R=20mm)とした。試験後曲げ表面をJIS Z 2343−1に基づき染色浸透探傷試験を行い、溶接部に発生した割れの個数並びに拡大鏡を用いて割れの長さを測定した。
耐割れ性試験は以上の2項目で評価し、トランスバレストレイン試験で最大割れ長さ
が0.6mm以下を合格とし、かつ実機施工を想定した側曲げ試験で電気工作物の溶接の技術省令第81号の規定に基づいて、(1)割れ(またはブローホール)の長さが3mmを超えないこと(縁角に発生するものを除く)、(2)上記(1)の条件を満たす割れの長さの合計が7mmを超えないこと、及び(3)割れ及び/またはブローホールの個数が10個を超えないこと、の全ての要件を満たしたものを合格とした。
Ac1変態点温度は、溶着金属から採取したφ3mm×10mmの試験片を用いて、フォーマスター測定方法により、加熱による相変態時の伸び量の変化を測定することでAc1変態点温度を求め、電気工作物に関する法令(火力技術基準)で定められる溶接後熱処理温度の上限温度である760℃以上を合格とした。
図2から、実施例1〜17の化学組成を有するフェライト系耐熱鋼用溶接材料(溶接ワイヤ)を用いると、ガスメタルアーク溶接法において良好な溶接作業性が得られ、ガスメタルアーク溶接法で溶接された溶着金属のAc1変態点温度が760℃以上を維持し、クリープ強度及び耐衝撃性能が共に良好で、且つ拘束応力の厳しい実機施工にも耐えうる耐溶接割れ性を備えた溶接部を得ることができた。
具体的に説明すると、比較例1ではCu量が実施例より低いため、十分な耐衝撃性能が得られず、かつTa量が実施例より低いため、十分なクリープ強度が得られていない。比較例2ではCu量の適正化により耐衝撃性能は確保できているが、Ta量が実施例より低いため、クリープ強度が不十分である。比較例3ではCu量は適正範囲内であるが、Taの過剰添加により耐衝撃性能が低下している。比較例4ではTaの適正添加によりクリープ強度は確保できているが、Cu量が実施例より低いため、十分な耐衝撃性能が得られていない。また比較例5ではCu量の過剰添加により適正なTa量であっても十分なクリープ強度が得られない。これに対して、実施例1〜17では、特にCu量とTa量を適正化することにより、耐衝撃性能とクリープ強度が共に良好な溶着金属を得ることができた。
比較例6ではNbの添加によりクリープ性能は確保できているが、トランスバレストレイン溶接割れ性評価において少量のNbであっても耐溶接割れ性が実施例より高い傾向を示し、実機施工を想定した厚肉構造部材での側曲げ試験では省令81号(1)項に示される割れ(またはブローホール)の長さが3mmを超えないことの要件を満足しなかった。また比較例7に示すNbとTaの複合添加においても、Nbを含有することで、比較例6と同様に耐溶接割れ性が高い傾向を示した。これに対して、実施例1〜17では、特にTaのみの添加とすることで、クリープ強度を確保しつつ、実機施工を想定した厚肉部材での側曲げ試験においても、省令81号を十分満足する耐溶接割れ性を得ることができた。
また、比較例8では、Al及びTiが、比較例9ではMg、Caが、比較例10ではRem(希土類)が実施例より多いため、ガスメタルアーク溶接において、スパッタの発生量が増加し安定した溶接作業性が得られず、比較例18ではN量が実施例より多いため、スパッタの発生が多く、またブローホールが発生し、良好な溶接作業性が得られなかった。これに対して、実施例1〜17ではAl、Ti、Mg、Ca、Rem、Nを適正化することで良好な溶接作業性を得ることができた。
また比較例11では、(1)式Cr+0.4W−10.7Ni−0.1Mn−0.7Cu−29.5N≧1.0を満足していないため、Ac1変態点が760℃未満となり、溶接後熱処理によりクリープ強度が合格基準を満たさず、また耐衝撃性能が実施例より低下している。これに対して、実施例1〜17の化学組成は、特に(1)式Cr+0.4W−10.7Ni−0.1Mn−0.7Cu−29.5N≧1.0を満足することで、いずれも溶着金属のAc1変態点温度が760℃以上となり、実機施工において実施される溶接後熱処理、つまりは電気工作物に関する法令(火力技術基準)で定められた溶接後の最大熱処理温度である760℃で行っても、クリープ強度と耐衝撃性を劣化させることなく維持することができる。
比較例12では、C量、Mo量、Cu量、N量がそれぞれ、実施例より少ないため、常温での引張試験強度が低く合格基準を満足せず、かつ、クリ−プ強度も不十分であった。これに対して実施例1〜17ではC量、Mo量、N量を適正化することで、良好な室温強度を得ることができた。
比較例13ではMn量、Ni量がそれぞれ実施例より多いため、クリ−プ強度が不十分であり、比較例14ではMn量、Ni量がそれぞれ実施例より少ないため、耐衝撃性能が不十分である。これに対して実施例1〜17ではMn量、Ni量を適正化することで、クリ−プ強度及び耐衝撃性能が共に良好な溶着金属を得ることができた。
また比較例15ではCr量、Mo量、W量、N量がそれぞれ実施例より多いため、耐衝撃性能が不十分であり、比較例16ではCr量、Mo量、W量がそれぞれ実施例より少ないため、引張強度が低くなり、クリ−プ強度が不十分である。これに対して、実施例1〜17ではCr量、Mo量、W量、N量を適正化することで、クリ−プ強度及び耐衝撃性能が共に良好な溶着金属を得ることができた。
比較例17ではB量が実施例より多いため、耐衝撃性能が不十分である。これに対して、実施例1〜17ではB量を適正化することで、耐衝撃性能が良好な溶着金属を得ることができた。
このように実施例1〜17及び比較例1〜18が示すように、上記の成分範囲内で化学組成を調整することにより、ガスメタルアーク溶接等の比較的手間のかからない簡便な溶接を行うだけで(言い換えると、TIG溶接等の手間のかかる溶接を行うことなく)、溶着金属の機械的強度(引張強度、クリープ強度、耐衝撃性、実機施工レベルの耐溶接割れ性)を高くすることができ、しかも溶接作業性を向上させることができることが判った。また、上記(1)式を満足する範囲内で化学組成を調整することで、溶着金属のAc1変態点温度が760℃以上となるため、上述の機械的強度を維持しながら、溶接後の熱処理温度を法令基準の熱処理温度の上限値まで上げることができることが判った。
以上、本発明の実施の形態(本発明のフェライト系耐熱鋼用溶接材料をフェライト系耐熱鋼用溶接ワイヤに適用した場合)について説明したが、本発明はこれらの実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づく変更が可能であるのは勿論である。
本発明によれば、フェライト系耐熱鋼用溶接材料の化学組成を、C:0.05〜0.15質量%、Si:0.01〜1.00質量%、Mn:0.2〜2.0質量%、Cr:8.0〜14.0質量%、Ni:0.1〜1.0質量%、Mo:0.1〜0.7質量%、Ta:0.26〜0.60質量%、V:0.1〜0.7質量%、W:0.2〜2.5質量%、Cu:0.76〜2.0質量%、N:0.001〜0.08質量%、B:0.0100質量%以下(但しBが0質量%の場合を除く)を含有し、不可避的不純物としてP:0.010質量%以下、S:0.010質量%以下、O:0.07質量%以下、Al:0.02質量%以下、Ti:0.02質量%以下、Ca:0.01質量%以下、Mg:0.01質量%以下、Rem:0.01質量%未満を含有し、残部がFeからなる化学組成を有するフェライト系耐熱鋼用溶接材料を用いると、TIG溶接等の手間がかかる溶接を行うことなく、ガスメタルアーク溶接等の簡便な溶接を行うだけで、溶接金属の機械的強度を高くすることができ、しかも耐溶接割れ性に優れたフェライト系耐熱鋼溶接材料を得ることができる。

Claims (1)

  1. C:0.05〜0.15質量%、Si:0.01〜1.00質量%、Mn:0.2〜2.0質量%、Cr:8.0〜14.0質量%、Ni:0.1〜1.0質量%、Mo:0.1〜0.7質量%、Ta:0.26〜0.60質量%、V:0.1〜0.7質量%、W:0.2〜2.5質量%、Cu:0.76〜2.0質量%、N:0.001〜0.08質量%、B:0.0100質量%以下(但しBが0質量%の場合を除く)を含有し、不可避不純物としてP:0.010質量%以下、S:0.010質量%以下、O:0.07質量%以下、Al:0.02質量%以下、Ti:0.02質量%以下、Ca:0.01質量%以下、Mg:0.01質量%以下、Rem:0.01質量%未満を含有し、残部がFeからなる化学組成を有し
    さらに下記(1)式
    Cr+0.4W−10.7Ni−0.1Mn−0.7Cu−29.5N≧1.0
    ・・・(1)(但し、式中の元素記号は各元素の質量%を示す。)
    を満足するフェライト系耐熱鋼用溶接材料。
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