白血球についてオプソニン化された犠牲ビーズを用いて血液試料を改質すると、イムノアッセイにおける白血球干渉が低減されることが最近発見された。その全体が参照により本明細書に組み込まれている、米国特許出願第12/620,179号及び同第12/620,230号を参照されたい。本発明は、イムノアッセイにおいて白血球が存在することによって引き起こされる干渉を低減又は排除するための磁気犠牲ビーズの使用に関する。特に、本発明は、分析物イムノアッセイにおける白血球からの干渉を低減する方法であって、白血球を含有する生体試料を、生体試料中の前記白血球の少なくとも一部を磁気犠牲ビーズに結合させるのに十分な条件下で、前記白血球に対してオプソニン化された磁気犠牲ビーズと接触させるステップと、磁気犠牲ビーズを免疫センサーと実質的に接触させないで磁気的に保持するステップとを含む方法を対象とする。このようにして、磁気犠牲ビーズに結合される白血球は、免疫センサーと接触することが防止され、それによって白血球干渉が低減又は排除される。本明細書で使用する場合、用語「磁気」は、犠牲ビーズを記述するのに使用される場合、ビーズが磁場による移動に感受性であり、又はそれ自体で磁場を作り出すことを意味する。
図8は、分析物、例えば、BNP及びTnIなどの心臓機能のマーカーの存在及び量を判定し、白血球干渉を低減するためのオプソニン化された磁気犠牲ビーズを使用するための電流測定イムノアッセイの原理を例示する。流体試料、例えば、血液試料が、イムノアッセイカートリッジ中に導入され、コーティングされた乾燥試薬で改質される。乾燥試薬は、磁気犠牲ビーズ102を含み、これは、試料中に溶解すると、試料中に含有している場合のある白血球103に選択的に結合する。犠牲ビーズが白血球に結合する機会を有した後、磁場が印加されることによって、ビーズが免疫センサーと実質的に接触しない領域に保持され、それによって免疫センサーにおける白血球干渉が低減又は排除される。
このように、好適な実施形態では、本発明は、以下の分野の1つ又は複数において使用される:最も特に、ポイントオブケア検査との関連で、免疫センサー;電気化学的イムノアッセイ;免疫参照センサーと併せた免疫センサー;全血イムノアッセイ;使い捨てカートリッジベースのイムノアッセイ;1回の洗浄ステップのみを伴う、非連続イムノアッセイ;及び乾燥試薬コーティング。特に、上記に参照された米国特許出願公開第2006/0160164号(「’164出願」)は、抗ヒト血清の添加、免疫センサー上へのアルブミン抗体のコーティング、及びアッセイ媒質への塩の添加に基づく白血球に関連した、ある特定の干渉に対処している一方で、本明細書は、白血球に関連したバイアスの追加の源を開示し、干渉を低減するための新規解決策を提供する。当業者によって理解されるように、本明細書で開示される一般的な概念は、多くのイムノアッセイ法及びプラットフォームに適用可能である。
このように、好適な実施形態では、本発明は、以下の分野の1つ又は複数において使用される:最も特に、ポイントオブケア検査との関連で、免疫センサー;電気化学的イムノアッセイ;免疫参照センサーと併せた免疫センサー;全血イムノアッセイ;使い捨てカートリッジベースのイムノアッセイ;1回の洗浄ステップのみを伴う、非連続イムノアッセイ;及び乾燥試薬コーティング。特に、上記に参照された米国特許出願公開第2006/0160164号(「’164出願」)は、抗ヒト血清の添加、免疫センサー上へのアルブミン抗体のコーティング、及びアッセイ媒質への塩の添加に基づく白血球に関連した、ある特定の干渉に対処している一方で、本明細書は、白血球に関連したバイアスの追加の源を開示し、干渉を低減するための新規解決策を提供する。当業者によって理解されるように、本明細書で開示される一般的な概念は、多くのイムノアッセイ法及びプラットフォームに適用可能である。
本発明は、分析物センサーのアレイ、及び免疫センサー又は分析物アレイに改質された試料を順次提示するための手段を有するカートリッジを使用して、分析物の迅速なインサイツ判定を可能にする。好適な実施形態では、本発明は、1992年3月17日に発行されたLauksらの米国特許第5,096,669号(上記に参照されている)、又は2008年9月2日に発行されたDavisらの米国特許第7,419,821号(上記に参照されている)に開示されたものなどの、読取デバイスを用いて稼動されるように設計されたカートリッジで使用される。これらの特許の両方は、その全体が本明細書に参照により組み込まれている。本発明は、この脈絡において最良に理解される。その結果として、ポイントオブケアイムノアッセイシステムを稼動するのに適したデバイス及び方法が最初に記載され、続いて全血イムノアッセイにおける白血球干渉をさらに低減又は排除するのに、システムを最良に適応させることができる方法が記載される。
様々な実施形態では、本発明は、電極表面における、又は電極表面付近でのサンドイッチの形成に基づくヘテロジニアス電気化学的イムノアッセイにおいて使用される。しかし、他の実施形態では、本発明は、他の形態のイムノアッセイに対するものである。例えば、本発明の磁気犠牲ビーズは、ヘテロジニアス又はホモジニアスビーズベースアッセイにおいて、並びに非競合(サンドイッチ)イムノアッセイ又は競合イムノアッセイにおいて使用することができる。この脈絡において、用語「ヘテロジニアス」及び「ホモジニアス」は、捕捉ステップを指す。したがって、ホモジニアスアッセイについては、捕捉ステップは、流体媒質中で起こる一方で、ヘテロジニアスアッセイでは、捕捉ステップは、巨視的な表面上、例えば、センサー表面上で起こる(競合又は非競合様式で)。これらの例のそれぞれにおいて、アッセイビーズは、アッセイが血液試料中で実施される場合、白血球による攻撃に感受性となる。競合アッセイ及び非競合アッセイにおいて、この作用は、白血球についてオプソニン化された磁気犠牲ビーズを添加することによって低減することができる。
図21に例示されたヘテロジニアス競合アッセイは、試料中に存在する(未標識)分析物が、固体表面、例えば、センサーエレメント上の結合部位を、標識分析物と競合する。対象とする分析物を含有する疑いのある試料(試料分析物)は、標識にコンジュゲートされた同じ分析物、すなわち、標識分析物を含むある量の試薬で改質される。標識は、色素、又は酵素、例えば、ALPなどの任意のシグナル生成成分とすることができる。いくつかの例示的な実施形態では、標識分析物は、放射標識、酵素、発色団、フルオロフォア、化学発光種、イオノフォア、及び電気活性種からなる群から選択される標識で標識することができる。別の実施形態では、標識分析物は、フルオレセイン、フェロセン(任意選択によりカルボキシル化フェロセン、又はジカルボキシル化フェロセン、又はアミノフェロセン)、及びp−アミノフェノールからなる群から選択される標識で標識される。
競合アッセイによって一般に同定並びに/又は測定される分析物には、治療剤、例えば、ジゴキシン、テオフィリンなど、及び生物マーカー、例えば、C反応性タンパク質(CRP)、他にまたフェノバルビタール、フェニトイン、バルプロ酸、及びバンコマイシンなどが含まれる。好適な実施形態では、試料分析物は、ジゴキシン、フェノバルビタール、フェニトイン、テオフィリン、バルプロ酸、及びバンコマイシンからなる群から選択される。本発明の一実施形態では、改質された試料は、対象とする分析物に対する抗体が固定化された固体表面と接触させられる。試料が運ぶ分析物と標識分析物は、この固体表面で結合を競合し、その結果、標識分析物の量、及びしたがって、標識分析物から生成されるシグナルの量は、元の試料中の分析物の濃度に反比例する。センサー表面から非特異的に結合した物質を洗浄した後、標識の量が測定される。酵素標識の場合、これは、酵素に適当な基質を供給すること、及び(例えば、電気化学的又は光学的に)生成物を検出することを伴う。ヘテロジニアス競合イムノアッセイにおいて使用される場合、血液試料は、白血球に対してオプソニン化された磁気犠牲ビーズ(例えば、IgGコート磁気微粒子)を用いて、固体表面、すなわち、センサーと接触させる前に、改質されることが好ましい。
I.カートリッジ
様々な実施形態では、本発明は、試料中の分析物の存在又は量を判定するために液体試料を処理するためのカートリッジ及び方法に関する。デバイスは、例えば、1つの試料で満たされ、検査のために1回使用され、次いで廃棄される使い捨てカートリッジであることが好ましい。図面を参照すると、本発明のカートリッジは、カバー(図1及び2に示される実施形態)、ベース(図4に示される実施形態)、ベースとカバーの間に配置された薄膜接着性ガスケット(図3に示される実施形態)、及び永久磁石又は電磁石を含む磁石領域(図5及び6に示される実施形態)を備える。
磁場は、実際の免疫センサーから離れた、カートリッジの領域内で生成されるべきである。磁石領域は、例えば、免疫センサーから数ミリメートル(例えば、1〜25mm又は1〜10mm)に直接隣接しても、試料流入ポートと免疫センサーの間の任意の他の位置にあってもよい。センサーの上流でビーズを磁気的に捕捉することが好ましいが、捕捉は任意選択により下流であってもよい。重要な特徴は、捕捉が、免疫センサーが稼動する導管の範囲から離れて局在化していることである。磁石は、カートリッジ内の永続的治具とすることができ、又は別の実施形態では、稼動するためにカートリッジが接続する機器(読取装置)内に備えられていてもよい。したがって、いくつかの実施形態では、カートリッジは、磁気犠牲ビーズを含むが、磁場生成エレメントをまったく含まない場合がある。
図1を参照すると、カバー1は、剛性の物質、好ましくはプラスチックでできており、ひびが入ることなく、可動性のヒンジ領域5、9、10で繰り返し変形することができる。カバーは、可動性ヒンジ9によってカバーの本体に取り付けられた蓋2を備える。稼動中、試料を試料保持チャンバー34内に導入した後、蓋は、試料流入ポート4の入口上に固定され、試料の漏れを防止することができ、蓋は、フック3によって所定の位置に保持される。カバーは、2つのパドル6、7をさらに備え、これらは、カバーの本体に対して移動することができ、可動性のヒンジ領域5、10によって本体に取り付けられている。ポンプ手段によって操作されるとき、パドル6は、薄膜ガスケット21によって覆われた、空洞43を備える空気ブラダー(air bladder)に力をかけることによって、カートリッジの導管内の流体を移動させる。第2のポンプ手段によって操作されるとき、パドル7は、ガスケット21に力をかけ、これは、その中に切られたスリット22のために変形することができる。カートリッジは、読取装置内に挿入するように適応されており、したがって、この目的のために複数の機械的及び電気的接続を有する。本発明の他の実施形態では、カートリッジを手動で操作することが可能である。
読取装置内にカートリッジを挿入すると、ガスケットは、空洞42内に位置した、分析/洗浄液(「流体」)約130μLで満たされた流体の入ったホイルパック上に圧力を伝達し、スパイク38上でパッケージを破裂させ、ベース内の短い、横断する導管を介してセンサーの導管に接続された導管39内に流体を排出する。分析流体は、最初に分析導管の前部を満たし、キャピラリーストップとして作用するテープガスケット中の小さい開口部上に流体を押しつける。カートリッジに施される分析器の機構の他の動作は、分析導管内の制御された位置で、1つ又は複数のセグメント、例えば、空気セグメントを分析流体中に投入するのに使用される。これらのセグメントは、最少の流体を用いてセンサー表面及び周囲の導管の洗浄を補助するのに使用される。
本発明のある特定の実施形態では、カバーは、薄い柔軟膜8によって覆われた穴をさらに備える。稼動中、膜にかけられる圧力は、ガスケット中の小さい穴28を通して、導管20内に1つ又は複数の空気セグメントを排出する。
図2を参照すると、ベースの下方の表面は、第2の導管11、及び第1の導管15をさらに備える。第2の導管11は狭窄部12を含み、これは、流体の流れに抵抗をもたらすことによって流量を制御する。任意選択のコーティング13、14は、疎水性表面を与え、これらは、ガスケットの穴31、32と一緒に、第2及び第1の導管11、15の間の流量を制御する。ベース内の陥凹17は、導管34内の空気をガスケット中の穴27を通して導管34に送るための経路を提供する。
図3を参照すると、薄膜ガスケット21は、ベース及びカバー内の導管同士間の流体の移動を促進し、必要な場合、圧力下でガスケットを変形させるための様々な穴及びスリットを備える。したがって、穴24は、流体が導管11から廃棄物チャンバー44内に流れるのを可能にし、穴25は、導管34と15の間にキャピラリーストップを備え、穴26は、陥凹18と導管40の間で空気が流れるのを可能にし、穴27は、陥凹17と導管34の間に空気の移動をもたらし、穴28は、流体が導管19から、任意選択の閉鎖可能な(closeable)バルブ41を介して廃棄物チャンバー44に流れるのを可能にする。穴30及び33は、それぞれカッタウェイ35及び37内に収容された複数の電極が、導管15内で流体に接触するのを可能にする。特定の実施形態では、カッタウェイ37は、接地電極、及び/又は対参照電極を収容し、カッタウェイ35は、少なくとも1つの分析物センサー、及び任意選択により電気伝導度測定センサーを収容する。図3において、テープ21は、機器が、バーブ38上のエレメント42内のカリブラントポーチ(calibrant pouch)を破裂させるために下向きの力をかけるとき、3つの切れ目22によって囲まれたテープが変形するのを可能にするための22におけるスリットである。このテープはまた、23において切れ目であり、これは、機器が下向きの力を与えるとき、テープがエレメント43内に下向きに曲がるのを可能にし、チャンバー43から空気を排出し、導管15を通してセンサーに試料流体を移動させる。図3中のエレメント29は、テープ内の開口部として作用し、カバー(図2)内の領域を、ベース(図4)と接続している。
図4において、導管34は、組み立てられたカートリッジ内で、試料流入ポート4を第1の導管11に接続する試料保持チャンバーである。カッタウェイ35は、任意選択の1つ又は複数の電気伝導度測定センサーと一緒に、1つ若しくは複数の分析物センサー、又は分析物応答性表面を収容する。カッタウェイ37は、電気化学的センサーのための戻り電流経路として必要な場合、接地電極を収容し、任意選択の電気伝導度測定センサーを収容することもできる。カッタウェイ36は、ガスケットの穴31と32の間の流体経路を提供し、その結果流体は、第1と第2の導管の間を通過することができる。陥凹42は、読取装置内に挿入された後にパドル7上にかけられる圧力のために、スパイク38によって穴を開けられる組み立てられたカートリッジ内に、流体を含むパッケージ、例えば、破裂可能なポーチを収容する。穴を開けられたパッケージからの流体は、39で第2の導管内に流れる。空気ブラダーは陥凹43を備え、これは、ガスケット21によってその上面で密封される。空気ブラダーは、ポンプ手段の一実施形態であり、パドル6にかけられる圧力によって作動し、これは、導管40内の空気を移動させ、それによって、試料を試料チャンバー34から第1の導管15内に移動させる。
カートリッジのある特定の実施形態では、試料セグメントを計量するための手段は、ベースのプラスチック部分に提供される。試料セグメントのサイズは、ベース内のコンパートメントのサイズ、並びにキャピラリーストップ及びテープガスケット中の空気パイプ穴の位置によって制御される。この体積は、0.001〜1000μL、例えば、1〜500μL及び2〜200μLに容易に変更することができる。試料サイズのこの範囲のさらなる拡大は、本発明の脈絡の範囲内で可能である。
いくつかの実施形態では、流体は、試料がセンサー導管19に差し出される前に、試薬(例えば、磁気犠牲ビーズ、非磁気犠牲ビーズ、可溶性分子、IgM若しくはその断片、又はこれらの組合せ)を改質するのに使用することができる分析前用導管11を通して、試料中に押し出される。或いは、改質試薬は、部分16を越えて部分15内に位置することができる。分析前用導管を通して試料を押し出すことはまた、ダイヤフラムポンプパドル7に張力を導入する機能を果たし、これは、流体移動の始動に対するその応答性を改善する。このカートリッジが稼動するシステムは、一般に、試料が、所定の期間、例えば、1〜30分間、試薬と接触したままになることを可能にする。
空気が、ブラダーから試料保持チャンバー(ガスケットの穴27)に入る位置、及びキャピラリーストップ25は、試料保持チャンバーの所定の体積を一緒に画定する。パドル6が押し下げられるとき、この体積に対応する量の試料が第1の導管内に移動する。この配置は、計量された量の未計量試料をカートリッジの導管内に送るための計量手段の1つの可能な実施形態である。
本発明のある特定の実施形態によれば、分析物の定量化が要求される場合、計量はいくつかのアッセイで有利である。図4において、カートリッジの外表面の汚染を防止するために、導管から排出される試料及び/又は流体のための廃棄物チャンバー44が提供される。廃棄物チャンバーを外部の大気に接続する排出口45も提供される。本発明のカートリッジの1つの望ましい特徴は、生体試料が装填されると、オペレーター又は試料に接触する他のものを伴わずに、分析を完了し、カートリッジを廃棄することができることである。
図5は、本発明の一実施形態によるカートリッジ及びそのコンポーネントの概略図であり、51〜57及び65は、試料又は流体を改質するための乾燥試薬で任意選択によりコーティングすることができる、導管及び試料チャンバーの一部である。生体試料又は流体は、乾燥試薬の上を少なくとも1回通過することによって、乾燥試薬を溶解させる。試料を改質するのに使用される試薬は、以下のうちの1つ又は複数を含むことができる。白血球に対してオプソニン化された本発明の磁気犠牲ビーズ、非磁気犠牲ビーズ、抗体−酵素コンジュゲート(シグナル抗体)、1つ若しくは複数の白血球試薬(leukocidal reagent)、IgM及び/若しくはその断片、IgG及び/若しくはその断片、並びに/又はアッセイ化合物の間で特異的若しくは非特異的な結合反応を防止する他の遮断剤。一実施形態では、試薬は、磁気犠牲ビーズ及び非磁気犠牲ビーズの両方を含む。可溶性でないが、カートリッジの内表面にアッセイ成分が非特異的に吸着するのを防止するのに役立つ表面コーティングも、ある特定の実施形態において利用することができる。
図5及び6において、このデバイスは、磁石領域65を含み、これは、例えば、免疫センサーの上流で、磁気犠牲ビーズ及び任意の付随した結合した白血球を、免疫センサーと実質的に接触させないで保持するための磁石を含む。磁石領域65は、例えば、磁石領域65の表面の上又は下でカートリッジに組み込まれた永久磁石又は電磁石を含むことができる。いくつかの実施形態では、磁石は、導管の指定されたゾーンに隣接した機器内に配置される。他の実施形態では、磁石は、カートリッジ本体中に埋め込まれる。図5に示した好適な実施形態では、磁石は、試料保持チャンバーとセンサー領域の間の領域内のカートリッジ本体中に配置される。
特定の実施形態及び図5において、閉鎖可能なバルブが、第1の導管と廃棄物チャンバーの間に提供される。一実施形態では、このバルブ58は、不浸透性物質でコーティングされた、乾燥スポンジ物質を含む。稼動中、スポンジ物質が試料又は流体と接触すると、スポンジが膨潤することによって、空洞41(図4)を塞ぎ、それによって廃棄物チャンバー44(図4)への液体のさらなる流れが実質的に遮断される。濡れたバルブは、第1の導管と廃棄物チャンバーの間の空気の流れも遮断し、これにより、試料チャンバーに接続された第1のポンプ手段が、第2の導管内の流体を移動させ、第2の導管から第1の導管へと流体を移動させることが可能になる。
図6は、本発明の一実施形態の免疫センサーカートリッジの概略の構成を例示し、この構成において、3つのポンプ61〜63が提供されている。これらのポンプは、特定の実施形態の観点から記載されているが、ポンプ61〜63のそれぞれの機能を実施することができる任意のポンピングデバイスを、本発明の範囲内で使用することができることが容易に理解されるであろう。したがって、ポンプ1の61は、試料保持チャンバーから第1の導管内に試料を移動させることができるべきであり、ポンプ2の62は、第2の導管内の流体を移動させることができるべきであり、ポンプ3の63は、少なくとも1つのセグメントを第2の導管内に挿入することができるべきである。本願に想定される他のタイプのポンプとして、それだけに限らないが、圧力が空気袋にかけられる気圧力学手段と接触している空気袋、可動性ダイヤフラム、ピストンとシリンダー、電磁ポンプ、及び音波ポンプが挙げられる。ポンプ3の63を参照すると、用語「ポンプ」は、1つ又は複数のセグメントが第2の導管内に挿入されるすべてのデバイス及び方法、例えば、空気袋から空気を移動させるための気圧力学手段、溶解するとガスを生じる乾燥化学物質、又は電流源に作動可能に接続された複数の電気分解電極などを含む。特定の実施形態では、セグメントは、1つを超える空気ブラダー又はチャンバーを有することができる機械的なセグメント生成ダイヤフラムを使用して生成される。示したように、ウェル8は、1つの開口部を有し、これは、内側のダイヤフラムポンプとセグメントが注入される、流体が満たされた導管20とを接続する。ダイヤフラムは、複数のセグメントを生成するために区分することができ、それぞれのセグメントは、流体で満たされた導管内の特定の位置に注入される。図6において、エレメント65は、磁石領域を示し、エレメント64は、免疫センサーが、捕捉反応を実施することによって、固定化抗体、分析物、及びシグナル抗体を含むサンドイッチを形成する領域を示す。
本発明の代替の実施形態では、空気セグメントは、受動的な機能を使用して注入される。カートリッジのベース内のウェルは、テープガスケットによって密封される。ウェルを覆うテープガスケットは、いずれかの端部に2つの小さい穴を有する。一方の穴は開いているが、他方は、流体と接触すると湿るフィルター物質で覆われている。このウェルは、目の粗い親水性物質、例えば、セルロース繊維フィルター、紙フィルター、又はガラス繊維フィルターなどで満たされている。この親水性物質は、キャピラリー作用を介してベースのウェル内に液体を引き込み、先にウェル内にあった空気を移動させる。空気は、テープガスケット中の開口部を通じて排出され、体積が、ウェルの体積及び目の粗い親水性物質の空隙体積によって決定されるセグメントを作り出す。ベース内のウェルへの入口の一方を覆うのに使用されるフィルターは、流体がウェルを満たす速度を計測し、それによってセグメントが、カバー内の導管中に注入される速度を制御するように選択することができる。この受動的な機能は、任意の数の制御されたセグメントが、流体経路内の特定の位置に注入されることを可能にし、最小の空間で済む。
上述したように、本発明のカートリッジは、好ましくは計量手段を含み、これにより、未計量体積の試料を導入することが可能になり、この手段から、計量された量が、カートリッジ及びその付随した読取装置によって処理される。したがって、医師又はオペレーターは、測定前に試料の体積を手動で測定することから解放され、それによって時間、努力を節約し、精度及び再現性を増大させる。計量手段は、一実施形態では、キャピラリーストップを境界とし、長さに沿って空気流入ポイントを有する長い試料チャンバーを備える。空気流入ポイントでかけられる空気圧により、計量された体積の試料が、キャピラリーストップを通過させられる。計量される体積は、空気流入ポイントとキャピラリーストップの間の試料チャンバーの体積によって予め設定される。
カートリッジは、気密様式で試料ポートを密封するための閉鎖デバイスを有することができる。この閉鎖デバイスは、好ましくは、カートリッジの本体に対してスライド可能であり、ポートの領域内に位置した過剰の試料を追い出すせん断作用をもたらすことができ、それによって流入ポートとキャピラリーストップの間の保持チャンバー中の試料部分を確実に密封する。例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれている、米国特許第7,682,833号を参照されたい。一実施形態では、カートリッジは、例えば、過剰の流体試料を試料流れ口から追い出し、内部流体試料保持チャンバー内の、ある体積の流体試料を密封し、流体試料が内部キャピラリーストップを尚早に突き破るのを抑制する様式で、カートリッジの表面上で密封エレメントをスライド可能なように動かすことによって密封することができる。このスライド可能な閉鎖デバイスによって得られる密封は、非可逆性であることが好ましく、過剰の血液がカートリッジ内に貯まることを防止し、その理由は、閉鎖デバイスは、血液がカートリッジに入る流れ口の面内を移動し、流入ポートの面より下の血液を密封するせん断作用をもたらし、それによって、過剰の血液、すなわち、流れ口の面より上の血液を流入ポートから離し、任意選択により廃棄物チャンバーに移すためである。
本発明の一実施形態の例示的な閉鎖デバイスは、図1に示されており、カバー1の一体化したエレメント2、3、4、及び9を備える。この実施形態では、閉鎖デバイス2は、フック3がパチンと閉まって試料流入ポート4を遮断するまでヒンジの周りを回転する。図1のカバー1の一体化したエレメント2、3、4、及び9を備える閉鎖デバイスの代替案が、図15及び16中に、別個のスライド可能なエレメント200として示されている。図15及び16は、別個のスライド可能な閉鎖エレメント200とともに、図3に示された介在する接着性層21を伴った、図4中の底部と同様の底部に取り付けられた図1のカバーの改良版を備えるカートリッジデバイスを示す。図16は、開いた位置での閉鎖デバイス200を示し、この場合、試料流入ポート4は、試料、例えば、血液を受け入れることができる。図15は、閉じた位置での閉鎖デバイス200を示し、この場合、これは、気密様式で試料流入ポートを密封する。稼動中、試料、例えば、血液が流入ポートに添加され、保持チャンバー34に入った後、エレメント200は、開いた位置から閉じた位置に手動で動かされる。示した実施形態では、流入ポートの領域内のいずれの過剰の血液も、オーバーフローチャンバー201、又は隣接する保持領域若しくは空洞に移動される。このチャンバー又は領域は、過剰の試料、例えば、血液を保持するための流体吸収パッド又は物質を含むことができる。
試料流入ポート4は、図16に示したような円形、又は楕円形である流れ口とすることができ、流れ口の直径は一般に、0.2〜5mm、好ましくは1〜2mmの範囲内であり、又は楕円形の周囲長が1〜15mmである。流れ口の周囲の領域は、適用される試料の液滴形状を制御することによって、流入ポート中への流入を促進するために、疎水性又は親水性であるように選択することができる。図15及び16に示された閉鎖デバイスの1つの利点は、これは、試料が保持チャンバー34の端部のキャピラリーストップエレメント25を越えて押されるのを防止することである。キャピラリーストップを越えて少量の試料、例えば血液が存在することは、分析物のバルク濃度を測定する検査に有意でなく、したがって、試料体積に依存しない。しかし、試料の計量が一般に有利であるイムノアッセイ用途について、密封エレメントは、デバイスの計量精度を改善し、分析器により試料がカートリッジ導管内に動かされるとき、試料のアッセイされるセグメントが免疫センサーに対して適切に配置されるのを確実にする。
稼動中、試料、例えば、血液がカートリッジに添加されるとき、これは、キャピラリーストップへと移動する。したがって、キャピラリーストップから試料流入ポートまでの領域、すなわち、保持チャンバー34が試料を含むとき、アッセイに十分な試料が存在する。保持チャンバーを満たすプロセスの間、一部の試料が、流入ポートの流れ口の面の上に残る場合がある。密封エレメントが、開いた位置から閉じた位置に移動されるとき、流入ポートの上にあるいずれの試料も、閉鎖の動作の際に追加の試料を取り込むことなくせん断されて除かれ、それによって試料がキャピラリーストップ25を越えて移動しないことを確実にする。好適な実施形態では、密封エレメント200は、図3のテープガスケット21の表面の上の数千分の1インチ以内に配置される。流入ポートは、密封エレメントが、ロック機構212及び213に噛み合うとき、200の表面が接着性テープガスケットまで引き続いて低下することによって密封される。テープは、本質的に非圧縮性であり、流れ口の直径は小さいので、ユーザーによって密封エレメントにかけられるいずれの不意の圧力も、キャピラリーストップを越えて試料を移動させることにならない。
数滴の試料を分析する、ある特定のカートリッジの実施形態では、気泡は、アッセイに影響し得るので、保持チャンバー内でまったく形成しないことが望ましい。したがって、1滴を超える試料、例えば、血液を、気泡を中に閉じ込めることなく保持チャンバー34内に導入するための信頼できる手段が開発された。本発明の一実施形態によると、試料流入ポートは、コロナ及び/又は試薬カクテルを用いて保持チャンバーを最初に処理することによって、次の液滴が、取り込まれた気泡を保持チャンバー34内に形成させることなく、複数の液滴の試料を受け入れるように設計する。
使い捨て医療用デバイスにコロナ処理を使用することは、当技術分野で周知であり、実質的に任意の物質、例えば、金属化表面、ホイル、紙、板紙原料、又はプラスチック、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ビニル、ポリ塩化ビニル(PVC)、及びポリエリレンテレフタレート(PET)などの表面活性を増大させる有効な方法である。このコロナ処理は、これらの物質をインク、コーティング、及び接着剤に対してより受容性にする。実際には、処理されている物質は、放電、又は「コロナ」に曝される。放電範囲内の酸素分子が壊れて原子になり、処理されている物質中の分子に結合し、化学的に活性化された表面をもたらす。コロナ処理のための適当な装置は市販されている(例えば、Corotec Corporation、Farmington、Connecticut、USA)。プロセス変数は周知であり、例えば、物質を処理するのに必要とされるパワー量、物質速度、幅、処理される面の数、及びコロナ処理に対する特定の物質の応答性が含まれる。一般的なコロナ処理設備の場所は、プリント、コーティング、又はラミネートプロセスとインラインである。別の一般的な設置は、インフレーションフィルム又はキャストフィルム押出機の直接上であり、その理由は、新鮮な物質は、コロナ処理に対して相対的により受容性であるためである。
本発明のカートリッジは、試料及び第2の流体が、アッセイシーケンスの間の異なる時間にセンサーアレイに接触することができるという利点を有する。試料及び第2の流体はまた、それぞれの導管内に乾燥コーティングとして最初に存在する他の試薬又は化合物を用いて独立して改質することができる。カートリッジ内の液体の制御された動きはさらに、試料又は流体が導管の新しい領域に移されるときはいつでも、1つを超える物質が各液体中に改質されるのを可能にする。このようにして、各流体への複数の改質のための対応がなされ、実施することができる自動化されたアッセイの複雑性を大いに拡張し、したがって、本発明の有用性を増強する。
本発明のいくつかの実施形態では、カートリッジは使い捨てである。使い捨てカートリッジでは、含まれる液体の量は、費用及びサイズを最小限にするために、少なく維持されることが好ましい。本発明では、導管内のセグメントは、少なくとも1回すすがれるセンサーアレイ上のセグメント又は他の領域の空気−液体界面を通過させることによって、導管の掃除及びすすぎを補助するのに使用することもできる。より多い量の流体による連続的なすすぎと比較して、より少ない流体を使用するより効率的なすすぎが本方法によって実現されることが見出された。
導管内の制約は、本発明におけるいくつかの目的を果たす。一実施形態では、試料保持チャンバーと第1の導管の間に位置したキャピラリーストップは、十分な圧力がかけられることによって、キャピラリーストップの抵抗を克服するまで、保持チャンバー内の試料が移動するのを防止することによって、保持チャンバー内で試料計量を促進するのに使用される。別の実施形態では、第2の導管内の制約は、流体が狭窄部に到達するとき、廃棄物チャンバーに向かう代替経路に沿って洗浄流体をそらすのに使用される。ガスケット中の小さい穴が、疎水性コーティングと一緒に提供されることによって、十分な圧力がかけられるまで、第1の導管から第2の導管までの流れを防止する。本発明の導管内及び導管同士間の液体の流れを制御する機能は、本明細書で一括して「バルブ」と呼ばれる。
本発明の一実施形態は、分析物センサー又は分析物センサーのアレイを含む第1の導管に試料保持チャンバーが接続された使い捨てカートリッジを提供する。流体をある程度含む第2の導管は、第1の導管に接続され、第2の導管内の流体中に空気セグメントを導入することによって、これを区分することができる。ポンプ手段が第1の導管内の試料を移動させるのに提供され、これは、流体を第2の導管から第1の導管へと移動させる。したがって、1つ又は複数のセンサーは、試料に最初に接触し、次いで第2の流体に接触することができる。
別の実施形態では、カートリッジは、第1の導管と廃棄物チャンバーの間に位置した閉鎖可能なバルブを含む。この実施形態は、第1の導管に接続された唯一のポンプ手段を使用して、第2の導管から第1の導管への流体の移動を可能にする。この実施形態はさらに、本発明のカートリッジの導管を効率的に洗浄することを可能にし、これは、小さい使い捨てカートリッジの重要な機能である。稼動中、試料は移動されてセンサーに接触し、次いで閉鎖可能なバルブを通じて廃棄物チャンバーへと移動される。濡れると、閉鎖可能なバルブは、廃棄物チャンバーへの開口部を密封し、気密シールをもたらし、これは、第1の導管に接続されたポンプ手段のみを使用して、第2の導管内の流体が引き込まれてセンサーに接触するのを可能にする。この実施形態では、閉鎖可能なバルブは、流体がこのようにして移動するのを可能にし、廃棄物チャンバーから第1の導管に空気が入るのを防止する。
別の実施形態では、閉鎖可能なバルブ、及び導管中にセグメントを導入するための手段の両方が提供される。この実施形態は、多くの利点、その中でも、センサー又はセンサーのアレイ上で区分された流体を往復運動させる能力を有する。したがって、第1のセグメント又は一連のセグメントがセンサーをすすぐのに使用され、次いで新鮮なセグメントが、測定を行うためにこれを差し替える。1つのポンプ手段(第1の導管に接続された)だけが必要とされる。
II.シグナル生成反応
上述したように、非競合(サンドイッチ)イムノアッセイ形式は、最も広く使用されるイムノアッセイ法であり、分析デバイス、例えば、本発明のカートリッジにおいて好適な形式である。この実施形態では、1つの抗体(固定化抗体)が固体支持体又は免疫センサーに結合され、第2の抗体(シグナル抗体)が、酵素、例えば、アルカリホスファターゼなどのシグナル生成試薬にコンジュゲート/結合される。
簡単に言えば、図17は、分析の間に起こるシグナル生成反応を例示し、図17(A)は、電気活性なp−アミノフェノールを生成するためのアルカリホスファターゼによる基質の切断を示し、図17(B)は、p−アミノフェノールの酸化を示す。図17(A)中の反応は、センサー構造の上側層で起こり、一方、図17(B)中の反応は、金電極表面において起こる。図17(A)中の挿入図は、アルカリホスファターゼで触媒される加水分解のpH依存性を例示する。中央の図解は、試料に曝す前の免疫センサー構造の全体的な特徴を表す。
シグナル生成試薬(例えば、非競合アッセイのためのシグナル抗体、又は競合アッセイのための標識分析物)は、以下に記載されるように、分析デバイス中の乾燥試薬コーティングの一部とすることができ、好ましくは、試料が免疫センサーに到達する前に生体試料中に溶解する。非競合アッセイについて、試料及び非特異的に結合した試薬を洗い流した後、固体支持体上に残っているシグナル生成試薬(例えば、シグナル抗体)の量は、試料中の分析物の量に、原理上は比例するはずである。上記に論じた競合アッセイについて、試料及び非特異的に結合した試薬を洗い流した後、固体支持体上に残っているシグナル生成試薬(例えば、標識分析物)の量は、試料中の分析物の量に、原理上は反比例するはずである。しかし、これらのアッセイ構成の1つの制限は、試料中に存在する白血球によって引き起こされる干渉(単数又は複数)に対する感受性である。
代替の実施形態では、抗体又は他の分析物結合分子にコンジュゲートした酵素は、ウレアーゼであり、基質は尿素である。アンモニウム感受性電極を使用することによって、尿素の加水分解で生成されるアンモニウムイオンが、この実施形態では検出される。アンモニウム特異的電極は、当業者に周知である。例えば、適当な、微細加工されたアンモニウムイオン選択的電極は、参照により本明細書に組み込まれている米国特許第5,200,051号に開示されている。基質と反応してイオンを生じる他の酵素は、それとともに使用される他のイオンセンサーと同様に、当技術分野で公知である。例えば、アルカリホスファターゼ基質から生成されるリン酸は、リン酸イオン選択的な電極において検出することができる。
III.磁気犠牲ビーズ
本発明の様々な実施形態では、生体試料、例えば、血液試料は、白血球に対して特異的にオプソニン化された「犠牲」磁気ビーズ又は「デコイ(decoy)」磁気ビーズを用いて改質される。好適な実施形態では、磁気犠牲ビーズは、試料と均質に混合されている。他の実施形態では、磁気犠牲ビーズは、試料とあまり均質に混合されていない場合があるが、目的は、可能な限り多くの白血球を捕捉することである。磁気犠牲ビーズを利用すると、試料が免疫センサーに到達する前に、生体試料から白血球を実質的に除去することが可能になる。
例えば、一実施形態では、上述したサンドイッチアッセイプロセスと同様に、磁気犠牲ビーズは、カートリッジの保持チャンバー内の生体試料、例えば、血液と、及び任意選択により、酵素標識された第2の抗体とも混合される。次いで試料は、混合を促進するために、任意選択により保持チャンバー内で往復され、その間に、白血球がオプソニン化された磁気ビーズと付随した状態になる。混合は、所定の期間、例えば、アッセイサイクルの最初の1〜5分間行うことができる。アッセイの次ステップでは、試料は、導管を通じて免疫センサーに移動される。先に述べたように、免疫センサーは、分析物についての捕捉抗体を有する。免疫センサーに対して保持チャンバーに近位の導管の領域において、磁気ビーズは磁石領域に入り、そこでの印加磁場は、流体から犠牲ビーズの大部分、好ましくは実質的にすべて、例えば、少なくとも50重量%、少なくとも75重量%、少なくとも85重量%、又は少なくとも90重量%を保持し、磁石領域(一般的に導管)の壁にこれらを有効に固定するのに十分である。本質的には、カートリッジ内のポンプが始動され、試料を、導管を通じて前進させる際、磁気犠牲ビーズは、気圧による力に抵抗し、磁石によって印加された磁場のために磁石領域内に残ることができる。試料の残りの部分は、免疫センサー領域へと進み続ける。免疫センサー上でサンドイッチが形成された後(ヘテロジニアス非競合的実施形態について)、血液試料は、好ましくは廃棄物チャンバーへと洗浄され、標識と反応する試薬、例えば、ALPが添加される。
いくつかの実施形態では、磁場は、導管の指定されたゾーンに隣接した機器内の永久磁石又は電磁石によって生成することができる。他の実施形態では、磁石は、カートリッジ本体中に埋め込まれる。本発明で利用される磁石は、当技術分野で公知の任意の形状、サイズ、及び磁性物質のものとすることができる。図5に示した好適な実施形態では、磁石は、試料保持チャンバーとセンサー領域の間の磁石領域65内のカートリッジ本体中に配置される。すべてのこのような実施形態において、磁石と磁気犠牲ビーズの相互作用により、試料中の白血球の実質的な部分が、導管の免疫センサー領域に到達するのが防止される。この脈絡において、用語「実質的な」「実質的に」は、50重量%より多い量を意味する。
磁気犠牲ビーズは、本発明のデバイス中、又はこのデバイスと合わせて利用される磁石、例えば、永久磁石又は電磁石に敏感な、当技術分野で公知の任意の物質を含むことができる。本発明のいくつかの実施形態では、犠牲ビーズは、好ましくはコーティング材で完全又は部分的にコーティングされた磁気コアを含む。磁気コアは、Fe、Co、Mn、Niの1つ又は複数、これらの元素の1つ又は複数を含む金属、これらの元素の秩序合金、これらの元素を含む結晶、フェライトなどの磁性酸化物構造、及びこれらの組合せを含むことができる。他の実施形態では、磁気コアは、磁鉄鉱(Fe3O4)、磁赤鉄鉱(γ−Fe2O3)、又は式Me1−xOFe3+xO3(式中、Meは、例えば、Cu、Fe、Ni、Co、Mn、Mg、若しくはZn、又はこれらの物質の組合せであり、xは、0.01〜99の範囲である)によって与えられる二価の金属フェライトを含むことができる。
コーティングに適した物質として、合成ポリマー及び生体高分子、コポリマー、並びにポリマーブレンド、並びに無機材料が挙げられる。ポリマー物質として、アクリレート、シロキサン、スチレン、アセテート、アルキレングリコール、アルキレン、アルキレンオキシド、パリレン、乳酸、及びグリコール酸のポリマーの様々な組合せを挙げることができる。無機コーティング材として、金属、金属合金、及びセラミックの任意の組合せを挙げることができる。セラミック材料の例として、ヒドロキシアパタイト、炭化ケイ素、カルボキシレート、スルホネート、ホスフェート、フェライト、ホスホネート、及び元素の周期律表のIV族元素の酸化物を挙げることができる。本発明の好適な実施形態では、磁気ビーズは、磁鉄鉱(Fe3O4)を含み、カルボキシル基で修飾された表面をもたらすために、スチレン−アクリル酸コポリマーでコーティングされている。
本発明の他の実施形態では、磁気犠牲ビーズは、例えば、ポリスチレン、ポリアクリル酸、及びデキストランからなる群から選択される材料で形成された非磁気基質ビーズを含み、その上に磁気コーティングが施されている。
原理上は、磁気犠牲ビーズの分散性の要求を考慮して、白血球についてオプソニン化され得る任意の正確なサイズの磁気ビーズを本発明において利用することができる。いくつかの例示的な実施形態では、磁気犠牲ビーズの平均粒径は、0.01〜20μm、例えば、0.1〜10μm、1〜5μm、又は3〜5μmの範囲となり得る。本明細書で使用する場合、用語「平均粒径」は、当技術分野で周知の方法によって求められる場合の、粒子の平均最長寸法、例えば、球状粒子の直径を指す。磁気犠牲ビーズの粒径分布は、単峰性であることが好ましいが、多峰性分布も、本発明によって使用することができる。
球状磁気ビーズを使用することが好適であるが、他の実施形態では、他のビーズ形状及び構造、例えば、楕円形、亜球状、円柱状、及び他の不規則な形状をした粒子も、本明細書で使用及び定義される用語「ビーズ」並びに用語「微粒子」の意味の範囲内である。
表面コーティングが、アッセイされる試料に曝された後にオプソニン化され、又はオプソニン化可能(opsonizable)にされるように、磁気ビーズを、様々な表面コーティング材料を用いてコーティングすることができる。いくつかの実施形態では、磁気犠牲ビーズは、動物種から単離された非ヒトIgG(IgGクラスの免疫グロブリン)又はその断片でコーティングされる。本明細書で使用する場合、用語「断片」は、指定された分子に由来する任意のエピトープ担持断片を指す。したがって、IgG断片は、例えば、エピトープ担持F(ab’)2断片若しくはFab断片、又はFc断片を含むことができる。さらに、「IgG又はその断片」という語句は、IgG単独、IgG断片単独(すなわち、IgGのF(ab’)2断片、Fab断片、及び/若しくはFc断片の1つ若しくは複数)、又はIgGとIgG断片の組合せを意味する。本発明の好適な実施形態では、ヤギIgG又はヒツジIgGでコーティングされた粒子が使用されるが、例えば、マウスIgG又はウサギIgGなどの他のIgG源も使用することができる。
個々のモノマーが、F(ab’)2領域に結合されたFc領域から形成され、その結果として2つのFab領域を含む全IgG分子を使用して磁気犠牲ビーズをコーティングすることに加えて、又はその代わりに、上記に定義したIgGの断片を使用することも可能である。IgG断片化は、F(ab’)2断片、Fab断片、及び/又はFc断片のいくつかの組合せを作り出すために、ジスルフィド結合の還元(−S−S−から−SH HS−)、及び酵素のペプチン又はパパイン消化の組合せを使用して、様々に実現することができる。これらの断片は、別個に使用するためにクロマトグラフィーによって分離し、又は組合せで使用することができる。例えば、遮断部位がFc断片上にある場合、これは、全IgG分子の代わりに使用することができる。同じことが、Fab断片及びF(ab’)2断片にも当てはまる。
相対的により小さい犠牲ビーズ、例えば、IgGでコーティングされた0.2μm未満の平均粒径を有するものを使用することができるが、IgGでコーティングされた磁気犠牲ビーズの平均粒径は、3〜5μmの範囲内であることが好ましい。
本発明の磁気ビーズは、例えば、血液収集デバイスの一体部分、又は標準的なマニュアル添加ステップなどとして、カートリッジに導入する前に生体試料に添加することができることを当業者は理解するであろう。しかし、ユーザーの利便性のため、及び高品質なアッセイを保証するために、磁気ビーズは、検査デバイス内に含められることが好ましい。
一実施形態では、磁気犠牲ビーズは、乾燥試薬コーティング中に組み込まれる。いくつかの実施形態では、カートリッジ筐体の少なくとも一部を、非ヒトIgGでコーティングされた磁気犠牲ビーズを含むことができる乾燥試薬を用いてコーティングすることができる。重要な特徴は、乾燥試薬が、試料中に溶解し、白血球を結合に引きつけることができることである。これは一般に、試料中で、潜在的に干渉性の白血球を隔離するのに十分である。
ある特定の実施形態では、磁気犠牲ビーズは、シグナル生成試薬(例えば、非競合アッセイのためのシグナル抗体、又は競合アッセイのための標識分析物)を含有する、同じ乾燥試薬コーティング中に組み込まれる。したがって、本発明の一実施形態では、分析デバイスは、(a)白血球の作用を改善するのに適した成分、例えば、IgG若しくはその断片でコーティングされた磁気犠牲ビーズ、及び/又は(b)シグナル抗体若しくは標識分析物などのシグナル生成試薬のいずれか、又は両方を含む乾燥試薬コーティングを含む。
本発明は、生体試料中の標的分析物についてのイムノアッセイを実施する方法も対象とする。一実施形態では、この方法は、検査カートリッジ中の保持チャンバー内に、白血球を含有する血液試料を導入するステップであって、保持チャンバーの一部は、白血球に対してオプソニン化された磁気犠牲ビーズでコーティングされているステップと、生体試料中の白血球の少なくとも一部を磁気犠牲ビーズに結合させるのに十分な条件下で、血液試料を磁気犠牲ビーズと接触させるステップと、血液試料を導管内に移動させるステップと、導管の少なくとも一部に局在化した磁場を印加することによって、磁気犠牲ビーズを導管の壁の少なくとも一部に引き寄せ、保持し、それによって、磁気犠牲ビーズが免疫センサーと接触するのを実質的に防止するステップと、血液試料を免疫センサーと接触させることによって、固定化捕捉抗体、試料分析物、及び標識シグナル抗体を含むサンドイッチを形成するステップと、免疫センサーから血液試料を洗浄するステップと、免疫センサーを、前記標識シグナル抗体と反応することができる試薬と接触させることによって、血液試料中の試料分析物の存在に関連する、免疫性センサーにおけるシグナルを生成するステップとを含む分析物サンドイッチイムノアッセイを実施することを含む。
この同じ一般的な手法は、競合イムノアッセイにも適している。サンドイッチアッセイについて上述した実質的に同じカートリッジ形式では、白血球は、免疫センサーにおいて(ヘテロジニアス競合アッセイについて)、又は可動性粒子上で(ホモジニアス競合アッセイについて)起こる分析物と標識分析物の競合的結合の前に、磁気手段によって試料から実質的に除去される。
ヘテロジニアス競合分析物イムノアッセイを実施することの詳細は、検査カートリッジ中の保持チャンバー内に、白血球を含有する血液試料を導入するステップであって、保持チャンバーの一部は、白血球に対してオプソニン化された磁気犠牲ビーズでコーティングされているステップと、生体試料中の白血球の少なくとも一部を磁気犠牲ビーズに結合させるのに十分な条件下で、血液試料を磁気犠牲ビーズと接触させるステップと、血液試料を導管内に移動させるステップと、導管の少なくとも一部に局在化した磁場を印加することによって、磁気犠牲ビーズを導管の壁の少なくとも一部に引き寄せ、保持し、それによって、磁気犠牲ビーズが免疫センサーと接触するのを実質的に防止するステップと、血液試料を免疫センサーと接触させることによって、競合的な比の結合試料分析物と結合標識分析物を形成するステップと、免疫センサーから血液試料を洗浄するステップと、免疫センサーを、標識分析物と反応することができる試薬と接触させることによって、血液試料中の試料分析物の存在に逆に関連する、免疫性センサーにおけるシグナルを生成するステップとを含む。
IV.添加剤
本発明のいくつかの実施形態では、添加剤を、カートリッジ内に含め、又はアッセイとともに使用することができる。ある特定の実施形態では、抗凝固剤を添加することができる。例えば、いくつかの実施形態では、試料が、ヘパリン化された管内に収集されなかった、又はヘパリン化された管内で適切に混合されなかった場合に、性能を改善するためにヘパリンを添加することができる。新鮮なヘパリン化されていない血液が、カートリッジのアッセイサイクルの間、一般に2〜20分の範囲内で、凝血しないままであるように、十分な量のヘパリンが添加される。他の実施形態では、イムノアッセイの分野で公知の異好性抗体問題に対処するためにヤギIgG及びマウスIgGを添加することができる。さらに他の実施形態では、プロクリン、DEAE−デキストラン、tris緩衝液、及びラクチトールのうちの1つ又は複数を、試薬安定剤として添加することができる。他の実施形態では、例えば、Tween(登録商標)20としても知られるポリソルベート20などの界面活性剤を添加することによって、タンパク質が、カートリッジに好適な物質であるプラスチックに結合するのを低減することができる。界面活性剤の添加はまた、試薬がプラスチック表面を均等にコーティングするのを促進し、糖(例えば、ラクチトール)の結晶化を最小限にする。本発明の他の実施形態では、抗菌剤又は殺生物剤(例えば、アジ化ナトリウム)を添加することによって、細菌増殖を阻害することができる。
V.プリントカクテル(print cocktail)の調製及びプリント
磁気ビーズ/微粒子は、様々な形態で市販されている。磁気コアは、磁性物質又は超常磁性物質とすることができる。一般的に、コアは、ポリマー、例えば、ポリスチレン、ポリアクリル酸、又はバイオポリマー、例えば、デンプン若しくは同様の炭水化物でコーティングされる。磁気ビーズ配合物の商業的供給源には、Invitrogen(商標)、Ademtech(Pessac、FR)、及びChemicell GmbH(Berlin)が含まれる。これらの製品の多くは、微粒子上に抗体、例えばIgGを固定化するのに使用することができる表面機能化を組み込んでおり、例えば、−カルボキシル、−アミノ、又はストレプトアビジンで修飾された磁気ビーズである。磁気ビーズ配合物は、Advanced Enzyme Technologies(Pontypool、UK)によって供給されるものなどの、例えば、ラクチトールとDEAE−デキストランの混合物中の懸濁液として、デバイスの適当な領域内に堆積させることができる。溶媒、通常、水が蒸発すると、ガラス状の堆積物が生じ、この中でビーズが固定化される。ラクチトール/DEAE−デキストランは、微粒子が、試料に接触すると溶解する、機械的及び生化学的に安定な状態でデバイス内に局在化することを可能にする。
好適な実施形態では、ベースプリントカクテルは、1リットル(L)のバッチについて以下のように調製される。タンパク質安定化溶液(PSS、AET Ltd.、50%の固体、100.0g)が、塩化ナトリウム(8.00g)及びアジ化ナトリウム(0.500g)の水溶液200〜250mLに添加され、得られた溶液は、1L容のフラスコに移される。マウスIgGの溶液は、マウスIgG(0.9g)を脱イオン水75mLに添加することによって調製され、溶解が完全になるまで15〜60分間撹拌される。ヤギIgGの同様に濃縮された溶液も同一の様式で調製され、両溶液は、1.2μMのフィルターを通して濾過される。マウスIgMは、供給者(例えば、Sigma−Aldrich)から液体として得られる。3つの免疫グロブリン(Ig)原液のそれぞれのタンパク質濃度は、280nmで、分光光度法で測定される。マウスIgG(0.75g)、ヤギIgG(0.75g)、及びマウスIgM(25mg)を提供するのに必要とされるこれらのIg溶液の質量が計算され、これらの量がプリント溶液(printing solution)に添加される。ジエチルアミノエチル−デキストラン(DEAE−デキストラン)の溶液は、DEAE−デキストラン(2.5g)を脱イオン水50〜100mLに添加し、30分間撹拌することによって調製される。このDEAE−デキストラン溶液は、プリント溶液に添加される。これに、ナトリウムヘパリン(10,000IU/mL、3.00mL)、Tween(登録商標)20(3.00g)、及びローダミンの5%(重量/体積)の水溶液(200μL)が添加される。得られた溶液は、脱イオン水で1.000Lに希釈され、使用されるまでフリーザー又は冷蔵庫内で貯蔵される。白血球干渉を低減又は排除するためのIgGでコーティングされた磁気ビーズは(任意選択によりIgGでコーティングされた非磁気ビーズと組み合わせて)、最終的な希釈の前、又は検査デバイス、例えば、図1〜6に示されたタイプのいずれかのカートリッジ内への堆積の直前に添加することができる。
本発明の様々な実施形態では、カートリッジコンポーネント上に乾燥試薬コーティングを形成するために、プリントカクテル及び同様の流体をプリントするステップは、好ましくは、その全体が参照により本明細書に組み込まれている、Cozzetteらの米国特許第5,554,339号(「’339特許」)に開示されているように、自動化され、コンポーネントを整列させるためのカメラ及びコンピューターシステムを含むマイクロディスペンシングシステムに基づく。’339特許において、ウエハーチャックは、プラスチックカートリッジのベースをディスペンシングヘッドに送るためのトラックに取り替えられる。トラックは、所定の配向でベースをヘッドに差し出すことによって、一貫した位置での分注を保証する。
VI.収集及び分析
本発明の様々な実施形態によれば、血液試料は、試料収集デバイス、例えば、キャピラリー、Vacutainer(登録商標)、又はシリンジなどを使用して得られる。一実施形態では、磁気犠牲ビーズは、試料収集デバイス、例えば、キャピラリー、Vacutainer(登録商標)、又はシリンジ内に組み込むことができる。いくつかの実施形態では、磁気犠牲ビーズコーティングは、収集デバイスの内壁上に形成することができる。
VII.免疫センサーの実施形態、及びそれに関係した方法
本発明は、イムノアッセイシステムに広く適用可能であるが、上記に引用された共同所有の係属中及び発行済み特許に記載されているように、i−STAT(登録商標)イムノアッセイシステム(Abbott Point of Care Inc.、Princeton、New Jersey, 米国)との関連で最良に理解される。その全体が参照により本明細書に組み込まれている、2009年12月18日に出願された、「Foldable Cartridge Housings for Sample Analysis」という表題の米国特許出願第61/288,189号も参照されたい。
様々な実施形態では、このシステムは、アッセイの間に起こる非特異的結合(NSB)の程度を評価する目的で、免疫参照センサー(例えば、上記に参照した、その全体が参照により本明細書に組み込まれている、Millerらの米国特許出願公開第2006/0160164号を参照されたい)を使用する。いくつかの場合、NSBは、不十分な洗浄、又は干渉の存在のために発生し得る。アッセイからの正味のシグナルは、免疫参照センサーから生じる非特異的シグナルを減じることによって補正された、分析物免疫センサーから生じる特異的シグナルを含む。免疫参照センサーにおけるシグナルの量は、品質管理アルゴリズムによって定義される限界に支配される。免疫センサーは、心血管マーカー、例えば、TnI、TnT、CKMB、ミオグロビン、BNP、NT−proBNP、及びproBNPなどの分析物を検出するのを対象とすることが好ましい。
本発明の実施形態は、i−STAT(登録商標)イムノアッセイ形式の、白血球によって引き起こされる干渉に対する耐性を改善する。これらの実施形態では、生体試料は、白血球干渉を低減又は排除するために、本発明の磁気犠牲ビーズで改質される。そのような実施形態は、細胞が分析媒質中に存在する場合、標準的なELISA形式にも同様に適用可能である。
従来のサンドイッチアッセイは、白血球レベルが高い生体試料について誤った結果を生じる場合がある一方で、先のi−STAT(登録商標)システムアッセイは、システムが、偽シグナルを検出し、エラーコードでユーザーに警告し、結果が表示されることを抑制するアルゴリズムを含むので、これらの試料について、不正確な結果を報告しなかった。これは、信頼できるポイントオブケア検査のための品質システムの一実施形態であり、ここでは分析システムの品質及び完全性が維持される。
本発明の要旨に関して、ある特定のイムノアッセイ検査カートリッジ、特に脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)カートリッジが、以前に知られていない干渉機構から生じる予期しない正及び負の傾きをした波形を示すことが発見された。例えば、それぞれ図9(A)及び(B)を参照されたい。これにより、洗浄ステップの間に電極を正電位にパルシングする効果についての実験に基づいて、干渉の機構に関する仮説が導かれた。図9(C)及び(D)に示したように、理論に基づいて予期される通常の免疫センサー応答は、低分析物濃度でゼロ付近の傾きを有し、測定が酵素限界ではなく、基質限界となり得る高分析物濃度でのみ、負の傾きが予期される。
動的な(非定常状態)電流測定シグナルを引き起こすいくつかの潜在的な機構が存在する。動的な電極活性(有効電極面積の変化)はありそうになく、その理由は、電極は、ポリビニルアルコール(PVA)層上の固定化されたアッセイビーズ(微粒子)の存在のために、形成されるエレメントから隔離されており、そのどちらも血漿試料中でこの効果を示さないためである。動的な層厚、例えば、流体との接触に応じた上記コンポーネントの膨張又は縮小はありそうになく、その理由は、正及び負の傾きの両方を誘発する現象の原動力がまったく存在しないためである。酵素の動的なカバー率(例えば、ALP、酵素の表面濃度の変化)は除外され、その理由は、薄層形式において、測定の時間スケールにわたって、センサーから酵素(例えば、ALP)が拡散することは可能でないためである。酵素基質、例えば、パラ−アミノフェノールホスフェート(p−APP)の電極表面への動的な輸送は、相対的に小さく、拡散が相対的に容易である(D≒5×10−6cm2/s)分子のサイズを考慮するとありそうにない。したがって、消去プロセスによって、且つ理論に束縛されることを望むわけではなく、動的なALP活性が、動的なセンサーシグナルの最も可能性のある原因と考えられたので、この機構を評価するためにさらなる調査を行った。ALPによるp−APPの加水分解は、pH依存性であり、最適条件は、pH10付近である。いくつかの実施形態では、カートリッジ内で、9.2の作業pHが使用され、その理由は、このわずかに低いpH値が免疫複合体の安定性を保証するためである。さらに、電極におけるパラ−アミノフェノール(p−AP)の酸化は、pH依存性であり、pHの低下1当たり約+59mVシフトすることが予期され、すなわち、より低いpHで、反応は、より強く推進されなければならず、すなわち、印加電位の上昇が必要とされる。
プリント層の浸透性が、干渉成分との相互作用のために、センサー構造内の試料流体(pH7.4)が洗浄ステップの間に分析流体(pH9.2)と完全に置換することができない程度により低くなることになった実施形態では、これは、特に、分析流体の流入箇所から最も遠い領域で起こる電極反応について、準最適な検出ステップのpHをもたらす。この流体置換の障害は、経時的に緩和するpH勾配を作り出す。酵素反応及び電極反応の相対速度が変化するので、観察されるシグナルも変化することになる。この技術的な評価は、これが正及び負の傾きのシグナルの両方を説明するという相当な利点を有する。例えば、図9(A)及び(B)を参照されたい。
観察される干渉が、プリント層の「詰まり」又は「ファウリング」による不完全な洗浄ステップと関連するという概念は、洗浄ステップの間に、極端な電位までパルスを印加することによって、例えば、酸化電位までパルスを印加することによってさらに評価された。正の傾きの波形は、不活性な遮断されたセンサーによって引き起こされる場合があり、分析ステップの前に電極を浄化するために、パルシングを使用することができることが期待された。通常の試料における洗浄ステップの間に酸化パルスを印加しても、観察されるシグナルに対して、及び引き続く分析において効果はまったくないことが観察された。図10(A)を参照されたい。しかし、異常な高バフィー試料の場合では、パルシングの効果は、大きくて動的なシグナルであり、さらに、これらのシグナルは、分析物の濃度を考慮して予期されるより大きかった。図10(B)を参照されたい。
これらの2つの場合における酸化電位パルスに対する応答の差異は、センサー構造内の流体が実際に異なることを実証した。期待されたように、正しい応答は、センサー上に所望の分析流体が存在したことから生じ、一方、異常な応答は、センサー構造上の流体が、血漿、又は血漿と分析流体の組合せであったために生じた。応答の差異は、以下のように理解することができる:酸化パルスは、H2O→1/2O2+2H++2e−によって、酸素を発生させ、pHを低下させる。
pH9.2に緩衝された分析流体を含有するセンサー構造の場合では、電極で発生するプロトンは、緩衝液(分析流体中100mMの炭酸塩)の存在下で急速に消費された。しかし、分析流体によって得られる緩衝作用の非存在下で、プロトンは電極領域内で残り続け、酸性流体のプルームをもたらした。この酸性プルームは、p−アミノフェニルホスフェート(p−APP)のパラ−アミノフェノール(p−AP)への酸触媒加水分解をもたらし、期待されるより大きいシグナルを生成した。具体的には、異常波形は、p−APPに対する酵素、例えば、ALPの酵素作用、及びまた、非酵素的な酸触媒加水分解によって生成されたp−APから生じた。
酸触媒加水分解反応は、pAPPについては、アミノ基が、低pHでプロトン化されるようにプロトン化されない限り、有意に起こらないことが注目される。これは、反応がパラ位において強い電子吸引性置換基を必要とするためである(例えば、Barnardら、J.Chem.Soc.(1966)、227〜235を参照)。当技術分野で知られているように、−NH2置換基は著しく電子供与性であるが、プロトン化すると、−NH3 +置換基は非常に電子求引性になる(−NO2よりさえも電子吸引性になる;例えば、Hammetのパラ−ρ値は、−NH2について−0.66、−NH3 +について1.70である)。
これらの実験は、観察される干渉を「高バフィー」試料と関係づけ、「富化されたバフィーコート」とともに全血試料を流すことによって意図的に引き出すことができた。この用語は、血液試料が遠心分離されるとき、血漿−赤血球境界で形成する白血球と血小板の層に与えられる。白血球、及び潜在的に血小板をファウリング作用物質として関係させるさらなる証拠が、顕微鏡写真の図14(A)(犠牲ビーズ又は白血球試薬を使用しないアッセイ)、及び図14(B)(非磁気犠牲ビーズを使用した後のアッセイ)に示されている。比較のために、血液試料と接触させる前の無垢の免疫センサーが、図17に例示されている。免疫センサーが位置する範囲から離れて磁気ビーズが局在化し得るという視覚的な確認をもたらす、同様の結果が得られた。
図14(A)は、10分のセンサーインキュベーション時間とともに、標準的な測定サイクルを使用して高バフィー試料(1μL当たり約105個の白血球)に曝されたセンサーを示す。試料は、オプソニン化された犠牲ビーズに曝されなかった。アッセイビーズでコーティングされたセンサー表面の一部は、細胞の接着層で覆われていることが明らかであり、これは、洗浄ステップによって容易に除去されなかった。
対照的に、図14(B)は、10分のセンサーインキュベーション時間とともに、標準的な測定サイクルを使用して高バフィー試料(1μL当たり約105個の白血球)に曝されたセンサーを示す。しかし、図14(A)に示したアッセイと対照的に、図14(B)に示した試料は、オプソニン化された(IgGでコーティングされた)(非磁気)犠牲ビーズに曝された。アッセイビーズでコーティングされたセンサー表面の一部は、洗浄ステップ後に図14(A)と比較した場合、接着細胞が著しく少なかったことが明らかである。
IgGはオプソニンとして作用し、オプソニンは、例えば、白血球による食作用について病原体をマーキングすることができる物質である。IgGは一般に、共同所有された、係属中の米国出願第12/411,325号に記載された異好性抗体干渉を管理するために、イムノアッセイに添加され、本明細書に記載されるBNPカートリッジ中の固定化されたアッセイビーズ(微粒子)上に存在する。その結果として、IgGのこの源(イムノアッセイデバイス中に存在する場合)、又は血液試料中に天然に存在するIgGは、白血球に対してセンサー表面を望ましくなくオプソニン化するように作用する場合がある可能性がある。さらに、アッセイビーズは、食作用の天然の標的である生体細胞(細菌)とサイズが同様であるので、アッセイビーズ上のIgGの蓄積は、これらのビーズ上の白血球の蓄積を望ましくなく促進していることが考えられる。これは、高白血球数を有する試料、及びおそらく、活性化された免疫状態を有する試料において観察される干渉と一致する。本発明は、IgGでコーティングされた犠牲磁気ビーズを用いた試料の改質が、センサー上の主要な免疫試薬から白血球活性をそらすように白血球活性を減少させるための手段をもたらす、この白血球干渉に対する解決策を提供する。
本発明のいくつかの実施形態では、IgGでコーティングされた固定化されたアッセイビーズ(微粒子)の調製は、MES緩衝液(2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸)中でのカルボキシル化ポリスチレン固定化微粒子上へのIgGの吸着、その後のEDAC(1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド)の存在下での架橋を伴う。しかし、固定化されたアッセイビーズは、当技術分野で公知の任意の適当な物質を含むことができる。
次に、固定化されたアッセイビーズ(微粒子)を形成するための限定されない一方法が説明される。1つの手順では、未処理の固定化微粒子は、その基質(水中10%の微粒子、Seradyn)から、18,000RCF(相対遠心力)で20分間遠心分離することによってペレット化され、25mMのMES緩衝液中で、100〜200mg/mLの微粒子の濃度に再懸濁される。次いで、25mMのMES緩衝液中に溶解したIgGが、微粒子の重量の約1〜5%に等しい量で添加される。冷蔵庫内で15〜20分、転頭運動させた後、微粒子は、1300RCFで20分間遠心分離することによってペレット化され、新鮮なMES緩衝液中で、75mg/mLの濃度に再懸濁される。IgGが微粒子上に吸収されたことを確認するために、280nmで吸光度を測定することによって、遠心分離からの上澄みが、タンパク質含量についてアッセイされる(1mL当たり1mgのタンパク質当たり1.4AUの有効吸光係数)。新たに調製されたEDAC架橋剤(MES緩衝液中10mM)が再懸濁された微粒子に添加されて、約2〜4mMの最終濃度にされる。次いでこの混合物は、冷蔵庫内で120±15分間、転頭運動によって撹拌される。次いで微粒子は、1300RCFで20分間遠心分離することによって再びペレット化し、1/5PPS(リン酸緩衝食塩水)中に再懸濁し、冷蔵庫内で15〜30分間、転頭運動させることができる。最後の遠心分離の後、PBS+0.05%のアジ化ナトリウム、又は1:1の1/5PPB:PSS(1/5PPBは、4部の水で希釈されたPBSである、PSS=タンパク質安定化溶液、Applied Enzyme Technologies、Ponypool、英国)中で、10%の固体の濃度に、微粒子を再懸濁することができる。得られる配合物を、アリコートし、好ましくは−60℃で凍結貯蔵することができる。このプロセスによって形成されたPBS中に懸濁された微粒子及び(非磁気)犠牲ビーズが、本明細書に記載される実験において使用され、血液試料中に直接投与された。
上述したある特定のアッセイは、固定化されたアッセイビーズ(微粒子)に結合した固定化された第1の抗体を使用し、このビーズは、さらには、電極が下にある多孔質層に結合しているが、この第1の抗体は、電極若しくは任意の他の表面上に直接固定化し、又は可溶性ビーズ上に固定化することができる。
本明細書に記載される実験において使用するために記載される、富化された、又は高いバフィー全血試料(EBS)の例示的な調製方法は、以下の通りであった。好ましい手順では、新鮮な全血がドナーから抜き取られて2つの6mLのEDTA抗凝固処理Vacutainers(登録商標)中に入れられ、2000RCF(標準的な回転子)で10分間遠心分離された。BNP「陽性」試料が望まれた場合、管は、遠心分離の前にBNP抗原でスパイクされた。血漿/バフィーコート/赤血球界面の上の最後の1ミリメートルを除く血漿のすべてが引き出され、確保された。次いで二面間の領域が、ピペッターを使用して(可能な限り多くのバフィーコート層を取り出す意図で)引き出され、確保された。赤血球が取り出され、確保された。バフィーコート物質を血漿画分及び赤血球画分のより少ない部分と再び合わせることによって、通常の試料ヘマトクリット、例えば、35〜55wt.%を保持しながら、高バフィー血液試料を作り出すことが可能であった。同様に、存在するバフィー物質(白血球及び血小板)が少ない、又は本質的にまったくない試料を作り出すことができる。
実験において、BNP検査カートリッジを、(i)高バフィー試料、(ii)実行する直前に、PBS中、IgG(μP−IgG)でコーティングされた10重量パーセントの微粒子の10容量パーセントの懸濁液で処理された高バフィー試料、(iii)高ヘマトクリット無白血球試料、及び(iv)低ヘマトクリット無白血球試料を用いて試験した。
図18は、電気化学的免疫センサーのシグナルの傾きに対する白血球干渉の作用、及び傾きに対する(非磁気)犠牲ビーズ処理の効果を例示するグラフデータを含む。右パネル及び左パネル中に例示されているのは、通常の全血試料(右パネル)、及び高バフィー血液試料(富化された白血球、高バフィー、左パネル)についての、正味のシグナル(x軸)の関数としてプロットされたセンサー傾き(y軸)である。左パネルは、犠牲ビーズの非存在下で(サブロット1)、高バフィー試料中で観察されるシグナルの傾きの相当なばらつきを例示する。このばらつきは、非磁気犠牲ビーズの存在下で(サブロット2及びサブロット3)実質的に改善された。最小のシグナルの傾きのばらつきが、犠牲ビーズを含む、及び含まない両方の通常の全血試料(右パネル)において観察された。本発明による磁気犠牲ビーズを使用することによって、同じ又はより良好な結果が実現されるはずである。
アッセイ後のセンサーの顕微鏡検査により、高バフィー(HB)中で実行されたチップ上に厚い堆積物が存在し、HB/μP−IgG中で実行された試料上に堆積物が存在しないことが明らかになった。免疫センサーの顕微鏡写真は、図14(A)及び14(B)に示され、その関連する分析器の波形が、それぞれ図19(A)及び(B)に例示されている。図17に例示されたような、血液試料と接触する前の無垢の免疫センサーと、犠牲ビーズで処理された血液と接触した後の免疫センサー(図14(B))との比較から、視覚的に著しい改善、すなわち、図14(A)と比較した接着白血球の低減があることが明らかである。多くの観察に基づくと、この視覚的な改善は、免疫センサーの性能の実際の改善と直接相関する。やはり、本発明による磁気犠牲微粒子(sacrificial microparticle)を使用することによって、同じ又はより良好な結果が得られるはずである。
追加の実験により、干渉現象は、血漿単独中、又は血小板を含有するが、白血球を含有しない試料中で起こらず、しかし、高バフィーレベルを含有する試料中のみで起こることが示された。さらに、IgGでコーティングされたより小さいビーズ、例えば、平均粒径が0.2μm未満のものは、センサーの傾きに対して、より大きい粒子が有するのと同じ干渉低減又は排除効果を有さない。まとめると、実験データは、白血球が、センサーの浸透性が洗浄サイクル中でより低くなる現象の主原因であり、このイムノアッセイ干渉は、アッセイ媒質にIgGでコーティングされた犠牲粒子を添加することによって改善することができるという結論を支持する。
本発明の免疫センサーの好適な実施形態のウエハーレベルの微細加工は、以下の通りである。図7は、1つの基板上のいくつかの電極のためのマスク設計を例示する。マスキング及びエッチング技法によって、独立した電極及びリードを堆積することができる。したがって、複数の免疫センサー、94及び96、並びに電気伝導度測定センサー、90及び92が、読取装置への電気的接続を行うための、そのそれぞれの接続パッド91、93、95、及び97と一緒に、低コストでコンパクトな範囲に提供される。原理上は、それぞれが異なる分析物に感受性であり、又は対照センサー若しくは参照免疫センサーとして作用するセンサーの非常に大きいアレイをこのようにしてアセンブルすることができる。
本発明の特定の実施形態では、免疫センサーは、以下のように作製することができる。シリコンウエハーを熱酸化することによって、厚さ約1ミクロンの絶縁酸化物層が形成される。チタン/タングステン層が、100〜1000オングストロームの間の好ましい厚さまで、酸化物層上にスパッタされ、その後、最も好ましくは800オングストロームの厚さである金の層がスパッタされる。次に、フォトレジストがウエハー上にスピニングされ、乾燥され、適切にベーキングされる。次いで、図7中に例示したものに対応するマスクなどのコンタクトマスクを使用して、表面が露光される。潜像が現像され、ウエハーが金エッチャントに曝される。パターン形成された金層が感光性ポリイミドでコーティングされ、適切にベーキングされ、コンタクトマスクを使用して露光され、現像され、O2プラズマ中で浄化され、好ましくは350℃で5時間イミド化される。抵抗性加熱素子として作用するために、ウエハーの裏面の任意選択のメタライゼーションを実施することができ、この場合、免疫センサーは、サーモスタットで調節された形式で使用されるべきである。次いで表面が、抗体でコーティングされたビーズでプリントされる。好ましくは体積が約20nLであり、脱イオン水中、1%の固体含量を含む液滴がセンサー領域上に堆積され、空気乾燥によって、定位置で乾燥される。任意選択により、抗体安定化試薬(SurModica Corporation、Eden Prairie、Minnesota、米国、又はApplied Enzyme Technology Ltd、Pontypool、英国によって供給された)が、センサー上にオーバーコートされる。
粒子の乾燥は、基質を含有する試料又は流体中に溶解するのを防止する様式で、粒子を表面に接着させる。この方法は、センサーチップを大量に製造するのに適した、信頼でき、再現可能な固定化プロセスを提供する。
図7に示されるように、ベース電極94は、15μmの中心上に、7μmの金ディスクの正方形アレイを備える。アレイは、直径が約600μmの円形領域を覆い、Si/SiO2/TiW/Auを含む一連の層でできた基板上に、厚さ0.35μmのポリイミドの薄層を光パターン形成することによって実現される。7μmの微小電極のアレイは、電気活性種の高収集効率をもたらし、露出した金属の電気容量に関連する任意の電気化学的バックグラウンド電流からの寄与が低減される。金属上にポリ(ビニルアルコール)(PVA)層を含めることにより、バックグラウンド電流の低減が著しく増強される。
いくつかの実施形態では、多孔質PVA層は、ウエハー上の微小電極の上に、PVAとスチルビゾニウム(stilbizonium)光活性架橋剤の水性混合物をスピンコーティングすることによって調製される。スピンコーティング混合物は、ウシ血清アルブミン(BSA)を任意選択により含む。次いでウエハーは、光パターン形成されることによって、アレイの上及び周囲の領域のみを覆い、好ましくは、約0.6μmの厚さを有する。
示差測定法の一般的な概念は、電気化学分野及びセンシング分野において公知である。電気化学的免疫センシングシステムにおいて干渉シグナルを低減するための新規手段が、これから説明される。これは、電流測定電気化学的センサーの組について記載されるが、これは、電位差測定センサー、電界効果トランジスタセンサー、及び電気伝導度測定センサーを含むがこれらに限定されない、他の電気化学的センシングシステムにおいても等しく有用なものである。本発明の実施形態は、光学センサー、例えば、エバネッセント波センサー、及び光導波路、並びに音波センシング及び温度測定センシングを含む他のタイプのセンシングなどにも適用可能である。したがって、本発明の様々な実施形態によれば、固定化抗体は、電流測定用電極、電位差測定用電極、電気伝導度測定用電極、光導波路、表面プラズモン共鳴センサー、音波センサー、及び圧電センサーからなる群から選択されるセンサーに付着させることができる。
理想的には、非競合アッセイの実施形態では、免疫センサー(IS)からのシグナルは、固定化抗体(Ab1)、分析物、及び標識されたシグナル抗体(Ab2)を含むサンドイッチの構造からもっぱら由来し、スキーム(1)で以下に示されるように、標識(例えば、酵素)は基質(S)と反応することによって、検出可能な生成物(P)を形成する。
表面−Ab1−分析物−Ab2−酵素;酵素+S→P (1)
スキーム(2)及び(3)で以下に示されるように、シグナル抗体(Ab2)の一部は、表面に非特異的に結合する場合があり、洗浄ステップの間に、免疫センサーの領域(最大約100ミクロン離れた)から完全に洗い流されない場合があり、それによって表面−Abl−分析物−Ab2−酵素イムノアッセイサンドイッチ構造の機能ではない、検出される生成物全体の一部を生じ、それによって干渉シグナルを作り出すことが知られている。
表面−Ab2−酵素;酵素+S→P (2)
表面−分析物−Ab2−酵素;酵素+S→P (3)
上記に示したように、免疫参照センサー(IRS)として作用し、主免疫センサー上で起こるのと同じ(又は予想通りに関係した)程度の非特異的結合(NSB)を与える第2の免疫センサーを、カートリッジ内に任意選択により配置することができる。位一実施形態では、干渉は、この免疫参照センサーのシグナルを、主免疫センサーのシグナルから減じることによって低減することができ、すなわち、以下のスキーム(4)に示されるように、シグナルのNSB成分が除去され、アッセイの性能を改善する。別の実施形態では、補正は、追加のオフセット値の減算又は加算を任意選択により含んでもよい。
補正されたシグナル=IS−IRS (4)
本発明の好適な実施形態では、参照免疫センサーは、免疫−参照センサーとも呼ばれ、すべての重要な点(例えば、寸法、多孔質スクリーニング層、ラテックス粒子コーティング、及び金属電極組成)において、分析物(例えば、cTnI)についての捕捉抗体が、高濃度で、試料(通常試料及び病理学的試料の両方)中に天然に存在する血漿タンパク質に対する抗体と置換されていることを除いて、主な免疫センサーと同じである。免疫センサー及び参照免疫センサーは、図7に示されるように、シリコンチップ上に、それぞれ隣接する構造94及び96として作製することができる。好適な実施形態が、トロポニンI及び脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)アッセイについて記載されているが、この構造は、例えば、トロポニンT、クレアチンキナーゼMB、プロカルシトニン、proBNP、NTproBNP、ミオグロビンなどを含めた他の心臓マーカーアッセイ、並びに臨床診断において使用される他のサンドイッチアッセイ、例えば、PSA、D−二量体、CRP、HCG、NGAL、ミエロペルオキシダーゼ及びTSHにも有用である。
血漿タンパク質に結合する適当な抗体の例には、ヒト血清アルブミン、フィブリノーゲン、及びIgG fc領域に対する抗体が含まれ、ヒト血清アルブミンが好適である。しかし、適切な抗体が入手可能である場合、約100ng/mL超の濃度で発生する任意の天然タンパク質又は血液成分を使用することができる。ただし、タンパク質は、分析物アッセイを実施するのに必要な時間に対して急速にセンサーをコーティングするのに十分な量で存在するべきである。好適な実施形態では、タンパク質は、血液試料と接触して約100秒以内に、参照免疫センサー上の利用可能な抗体の50%超に結合するのに十分な濃度で血液試料中に存在する。一般に、第2の固定化抗体は、約1×10−7〜約1×10−15Mの親和定数を有する。例えば、血液試料中のアルブミンのモル濃度が約1×10−4Mと高いために、約1×10−10Mの親和定数を有するアルブミンに対する抗体が好適である。
本発明の様々な実施形態によれば、試料に由来する天然アルブミンによって覆われた表面を提供することにより、存在し得る他のタンパク質及び細胞物質の結合が著しく低減される。この方法は、NSBを最小限にするために従来の遮断剤を使用する従来のイムノアッセイより一般に優れており、その理由は、これらの作用剤は、一般にドライダウンされ、使用するまで数カ月間又は数年間安定なままでなければならず、この時間の間にこれらは劣化する場合があり、望まれるより粘着性の表面を作り出し、古くなるとともに上昇するNSBをもたらすためである。対照的に、本発明の実施形態では、使用時に新鮮な表面が提供される。
NSBの作用を低減するために示差測定法を実施するための、参照免疫センサーを伴ったBNP用免疫センサーの一実施形態が、以下のように記載される。一実施形態では、抗BNP及び抗ヒト血清アルブミン(HSA)でコーティングされた、カルボキシレート修飾ラテックス微粒子(Bangs Laboratories Inc.、Fishers、Indiana、米国、又はSeradyn Inc.、Indianapolis、Indiana、米国によって供給されている)を含むアッセイビーズ(微粒子)は、ともに同じ方法で調製される。アッセイビーズは、遠心分離によって最初に緩衝液交換され、その後抗体が添加され、これは、ビーズ上に受動的に吸着させられる。次いでアッセイビーズ上のカルボキシル基は、pH6.2のMES緩衝液(2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸)中で、(1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド)(EDAC)で活性化されることによって、抗体にアミド結合を形成する。いずれのビーズ凝集物も遠心分離によって除去され、完成したビーズは凍結して貯蔵される。
別の実施形態では、抗HSA抗体について、ビーズを飽和被覆すると、ビーズ質量が約7%増加する。さらに別の実施形態では、コーティングされたビーズは、抗HSA 7mg及びビーズ100mgを含む混合物から、共有結合を使用して調製される。この配合物を使用して、脱イオン水中に約1%の固体を含む約0.4nLの液滴が、光パターン形成された多孔質PVA選択透過性層カバーセンサー96上に微量分注され(上で参照され、その全体が参照により本明細書に組み込まれている、米国特許第5,554,339号の方法及び装置を使用して)、乾燥される。乾燥した粒子は多孔質層に接着し、血液試料又は洗浄流体中にこれらが溶解するのを実質的に防止する。
本発明の一実施形態では、BNP抗体について、ビーズ表面を飽和被覆すると、ビーズの質量が約10%増加する。したがって、抗BNP 10mgをカップリング試薬とともにビーズ100mgに添加することによって、飽和被覆が実現された。次いでこれらのビーズは、センサー94上に微量分注された。
さらに別の実施形態では、免疫センサー94は、血漿タンパク質抗体、例えば、抗HSA、及び分析物抗体、例えば、抗BNPの両方を有するアッセイビーズでコーティングされる。抗BNPで飽和コーティングされたビーズ100mg当たり抗HSA約2mg以下で作製されたビーズは、免疫センサーにおいて優れたNSB特性を示した。利用可能な分析物(抗原)を捕捉するのに、ビーズ上に十分な抗BNPが存在するので、トロポニンアッセイの勾配(シグナル対分析物濃度)は、実質的に影響されないことが見出された。様々な抗体についてのビーズの飽和濃度、及び標的分析物に対する抗体のみを含むビーズを有する免疫センサーの勾配を求めることによって、抗体の組合せの適切な比を、所与の分析物及び血漿タンパク質の両方に対する抗体を有するビーズについて求めることができる。
参照免疫センサーを有する免疫センサーの重要な態様は、血漿タンパク質、好ましくはHSA/抗HSAの組合せの層によって作り出される表面の「ヒト化」である。この表面「ヒト化」は、ビーズの、抗体−酵素コンジュゲートのNSBへの傾向を少なくし、ビーズばらつきを低減するように思われる。理論によって束縛されることなく、センサーが試料によって覆われるにつれて、抗HSA表面のために、これらは天然アルブミンで急速にコーティングされると思われる。これは、製造中にドライダウンされ、一般に長い期間貯蔵された後に再水和される従来の遮断物質と比較して優れた結果を与える。センサー表面を「ヒト化する」ことの別の利点は、これが、ヒト抗マウス抗体(HAMA)及び他の異好性抗体の干渉に対する耐性の追加の機序をもたらすことである。HAMAのイムノアッセイに対する効果は周知である。
別の実施形態では、免疫参照センサーは本発明のデバイス及び方法において使用され、分析サイクルの間に得られる洗浄効率をモニターする。上述したように、バックグラウンドノイズの1つの源は、依然として溶液中にある、又はセンサー上に非特異的に吸収され、洗浄ステップによって除去されない少量の酵素コンジュゲートである。本発明のこの態様は、本明細書に述べられているように、空気セグメントを導入することによって、小体積の洗浄流体を使用して、効率的な洗浄ステップを実施することに関する。
電流測定の電気化学的システムである好適な実施形態を稼動する際、ALPの活性から生じる、免疫センサー94及び免疫参照センサー96におけるp−アミノフェノールの酸化に関連する電流が、分析器によって記録される。免疫センサー及び免疫参照センサーにおける電位は、銀−塩化銀参照電極に対して同じ値に保たれる。干渉の効果を除去するために、分析器は、上記式(4)に従って、免疫センサーのシグナルから免疫参照センサーのシグナルを減じる。2つのセンサーの間に特徴的な一定のオフセットが存在する場合、この値も減じられる。免疫参照センサーが、免疫センサーとすべて同じ非特異的特性を有することは必要でなく、免疫参照センサーがアッセイの洗浄部分及びNSB部分の両方において一貫して比例していることのみが必要である。一実施形態では、分析器に組み込まれたアルゴリズムは、2つのセンサー間の任意の他の本質的に一定の差異を捕らえることができる。
免疫センサー単独ではなく、免疫センサーと免疫参照センサーの示差的組合せの使用は、アッセイに以下の改善をもたらす。好適な実施形態では、カートリッジの設計により、約10μLの血液試料中に溶解した約40〜50億の酵素コンジュゲート分子を生じる乾燥試薬が提供される。結合ステップ及び洗浄ステップの最後で、センサーにおける酵素分子の数は、約70,000である。好適な実施形態を用いた実験では、非特異的に結合したバックグラウンドとして、免疫センサー及び参照免疫センサー上に、平均で約200,000(±約150,000)の酵素分子が存在した。免疫参照センサーを用いた示差測定法を使用して、不確定度の約65%が除去され、アッセイの性能を著しく改善した。他の実施形態は、他の程度の改善を有することができるが、アッセイ性能の全体的な改善のための根本的なことが残っている。
任意選択の免疫参照センサーの追加の用途は、例えば、不適切に抗凝固性の試料などの異常な試料状態を検出することであり、これは、導管全体にわたって物質を堆積させ、免疫センサー及び免疫参照センサーの両方で、測定される電流を増大させる。この作用は、非特異的に吸着された酵素、及び測定ステップの間に、センサー上の洗浄流体の薄層中に残っている酵素の両方に関連する。
任意選択の免疫参照センサーの別の用途は、洗浄効率についてシグナルを補正することである。ある特定の実施形態では、免疫センサーにおけるシグナルのレベルは、洗浄の程度に依存する。例えば、より多くの流体/空気セグメントの移行を用いたより長い洗浄は、特異的に結合したコンジュゲートの一部が洗い流されるために、より低いシグナルレベルを与える場合がある。これは、相対的に小さい作用、例えば、5%未満である場合があるが、補正は、アッセイの全体的な性能を改善することができる。補正は、センサーにおける相対的なシグナルに基づいて、又は空気セグメント/流体の移行を検出し、その数を計数するためのセンサーとして作用する、センサーに隣接する導管内に配置された伝導率センサーとともに実現することができる。これは、分析器に組み込まれたアルゴリズム補正手段のためのインプットを提供する。
内因性タンパク質、例えば、HSAを用いた参照免疫センサーの別の実施形態では、外因性タンパク質、例えば、ウシ血清アルブミン(BSA)に対する抗体でコーティングされた免疫参照センサーを有することによって同じ目的を実現することが可能である。この場合、センサーに接触させる前に、追加の試薬として提供される、試料中のBSAの一部を溶解させるステップが必要である。この溶解ステップは、カートリッジの試料保持チャンバー内、又は外部収集デバイス、例えば、BSAでコーティングされたシリンジ内で、乾燥試薬としてBSAを用いて行うことができる。この手法は、ある特定の利点を提供し、例えば、表面電荷、特異的な表面基、グリコシル化の程度などについてタンパク質を選択することができる。これらの特性は、内因性タンパク質の利用可能な選択肢中に必ずしも存在しなくてもよい。
塩に加えて、他の試薬もイムノアッセイにおける全血精度(whole−blood precision)を改善することができる。これらの試薬は、迅速な溶解を促進するように血液試料に差し出されるべきである。いくつかの実施形態では、血液保持チャンバー(又は別の導管)の壁上にコーティングされる、セルロース、ポリビニルアルコール(PVA)、及びゼラチン(又はこれらの混合物)を含めた支持基質は、例えば、15秒未満以内に90%超完了する迅速な溶解を促進する。
別の実施形態では、分析物測定は、分析物センサーをコーティングする液体の薄膜中で実施される。そのような薄膜判定は、電流測定で実施されることが好ましい。このカートリッジは、試料がバルブを通じて追い出されるとき密封される閉鎖バルブ、及び導管内の換気口であって、少なくとも1つの空気セグメントが測定流体中に引き続いて導入されることを可能にし、それによって、試料がセンサーからすすがれる効率を増大させ、さらに、測定前にセンサーから実質的にすべての液体を除去することを可能にし、なおさらに、精度を改善し、再現性を内部チェックするために、センサー全体に新鮮な液体のセグメントが運ばれるのを可能にすることによって、連続した、繰り返しの測定を可能にする換気口の両方を有することにおいて、前述の実施形態と異なる。
非競合アッセイの実施形態では、上記に論じたように、低濃度の免疫活性分析物を検出するための分析スキームは、酵素標識抗体/分析物/表面結合抗体「サンドイッチ」複合体の形成に依拠する。試料中の分析物の濃度は、酵素の比例した表面濃度に変換される。酵素は、基質を検出可能な生成物に変換することによって、分析物の化学的なシグナルを増幅することができる。例えば、アルカリホスファターゼが酵素である場合、1個の酵素分子は、1分当たり約9000の検出可能な分子を生成することができ、電気活性種がアルカリホスファターゼの代わりに抗体に結合されるスキームと比較して、分析物の検出性が数桁改善される。
免疫センサーの実施形態では、センサーを最初に試料と、次いで、センサーからの応答を記録する前に洗浄流体と接触させるのが有利である。いくつかの特定の実施形態では、白血球干渉を低減するために、IgGコート微粒子を用いて改質されることに加えて、試料は、改質された試料がセンサーと接触する前に、試料内の対象とする分析物に結合する抗体−酵素コンジュゲート(シグナル抗体)を用いて改質される。試料中の結合反応により、分析物/抗体−酵素複合体が生成される。センサーは、電極表面付近に付着される分析物に対する固定化抗体を含む。センサーに接触すると、分析物/抗体−酵素複合体は、電極表面付近で固体化抗体に結合する。この時点で、可能な限り多くの非結合抗体−酵素コンジュゲートを電極の近傍から除去することによって、センサーからのバックグラウンドシグナルを最小にすることが有利である。抗体−酵素複合体の酵素は、有利には、流体中に供給される基質を変換することによって、電気化学的に活性な種を生成することができる。この活性種は電極付近で生成され、適当な電位が印加されるとき、電極での酸化還元反応から電流をもたらす(電流測定動作)。或いは、電気活性種がイオンである場合、これは、電位差測定で測定することができる。電流測定では、電位は、測定の間固定するか、又は所定の波形に従って変更することができる。例えば、サイクリックボルタンメトリーの周知技法において使用されるように、限度間で電位をスイープするのに三角波を使用することができる。或いは、矩形波などのデジタル技法を使用することによって、電極に隣接する電気活性種の検出の感度を改善することができる。電流又は電圧測定から、試料中の分析物の量又は存在が計算される。これら及び他の分析的電気化学的方法は、当技術分野で周知である。
カートリッジが免疫センサーを含む実施形態では、免疫センサーは、有利には、非反応性金属、例えば、金、白金、又はイリジウムなどのベースセンサー、及び微粒子、例えば、ラテックスビーズに付着された生理活性層を重ね合わされた多孔質選択透過性層から微細加工される。微粒子は、電極表面を覆う多孔質層上に分配され、接着した、多孔質生理活性層を形成する。生理活性層は、対象とする分析物に特異的に結合する特性、又は分析物が存在するとき、検出可能な変化を現す特性を有し、分析物に対する固定化抗体であることが最も好ましい。
IX.白血球干渉を低減又は排除するためのデバイス、キット、及び方法
本発明は、サンドイッチイムノアッセイ及び競合イムノアッセイの両方に適用可能である。サンドイッチアッセイの実施形態では、試料は、標的分析物に対する固定化された第1の抗体を含む免疫センサー、及び前記標的分析物に対する標識された第2の抗体と接触する。競合アッセイの実施形態では、試料は、前記標的分析物に対する固定化された第1の抗体を含む免疫センサー、及び標的分析物と結合を競合する標識された標的分析物と接触する。一般的な分析物として、それだけに限らないが、TnI、TnT、BNP、NTproBNP、proBNP、HCG、TSH、NGAL、ジゴキシン、テオフィリン、及びフェニトインなどが挙げられる。
本発明のいくつかの実施形態では、試料、例えば、全血試料が最初に収集され、次いで磁気犠牲ビーズを含む乾燥試薬を試料中に溶解させることによって改質される。ある特定の実施形態では、試料中の白血球に対して過剰のビーズを供給するように、十分な犠牲ビーズが利用される。これは、試料1μl当たり少なくとも5μg、例えば、試料1μl当たり少なくとも10μg、又は試料1μl当たり少なくとも15μgの溶解した犠牲ビーズ濃度を有する試料を生じ、この濃度は、試料中のあらゆる白血球を実質的に連結するのに十分である。範囲に関して、乾燥試薬は、試料1μl当たり約5μg〜約40μgのビーズ、好ましくは、試料1μl当たり約10〜約20μgのビーズの犠牲ビーズ濃度を与えるように試料中に溶解することが好ましい。ビーズのサイズに応じて、これは、試料1μl当たり少なくとも約104個のビーズ、試料1μl当たり少なくとも約105個のビーズ、又は試料1μl当たりおよそ約105〜約106個のビーズに相当する。したがって、いくつかの好適な実施形態では、犠牲ビーズが、試料1μl当たり少なくとも104個のビーズ、例えば、試料1μl当たり少なくとも約105個のビーズ、又は試料1μl当たり約105〜約106個のビーズの溶解した犠牲ビーズ濃度をもたらすのに十分な量で存在する。このステップが完了すると、改質された試料に対してイムノアッセイ、例えば、電気化学的イムノアッセイを実施することによって、分析物の濃度を求めることが可能である。
乾燥試薬の溶解、及びサンドイッチ形成ステップは、同時に、又は段階的な様式で行うことができる。本発明の方法の実施形態は、心血管マーカー、例えば、TnI、TnT、CKMB、ミオグロビン、BNP、NT−proBNP、及びproBNPである分析物を主に対象とするが、他のマーカー、例えば、β−HCG、TSH、ミエロペルオキシダーゼ、ミオグロビン、D−二量体、CRP、NGAL、及びPSAなどにも使用することができる。白血球の大部分が検出ステップの前に隔離されることを保証するために、試料改質ステップは、約1分〜約30分の範囲内の選択された所定の期間のものであることが好ましい。
好適な実施形態では、この方法は、免疫センサー、導管、試料流入ポート、及び試料保持チャンバーを備え、これらのエレメントの少なくとも1つの少なくとも一部が、乾燥試薬でコーティングされているカートリッジ内で実施される。乾燥試薬は、白血球干渉を低減するための磁気犠牲ビーズ、白血球試薬、緩衝液、塩、界面活性剤、安定化剤、単純炭水化物、複合炭水化物、及び様々な組合せのうちの1つ又は複数を含むことができる。さらに、乾燥試薬は、分析物に対する酵素−標識抗体(シグナル抗体)も含むことができる。
アッセイステップの前に、カートリッジの表面、例えば、カートリッジの導管上に、任意の付随した白血球とともに、且つ免疫センサーと実質的に接触させないで磁気犠牲ビーズを保持するために、磁場が磁気犠牲ビーズに印加される。
実際のアッセイステップでは、好適な実施形態において、固定化抗体とシグナル抗体の間でサンドイッチが形成されたら、試料媒質を引き続いて廃棄物チャンバーへと洗浄し、その後、酵素と反応して電気化学的検出可能な生成物を形成することができる基質にこのサンドイッチを曝す。好適な形式は、電気化学的酵素結合免疫吸着アッセイである。
本発明のある特定の実施形態は、磁気犠牲ビーズを含む、イムノアッセイを実施するためのキットを対象とする。このキット又は方法は、白血球を含有する任意の試料、例えば、全血に適用可能であり、抗凝固剤、例えば、EDTA、ヘパリン、フッ化物、シトレートなどで改質された血液試料とすることができる。
いくつかの実施形態では、磁気犠牲ビーズは、第1の容器又は位置において生体試料、例えば血液を改質するのに使用され、次いで試料が、捕捉抗体及びシグナル抗体を有する第2の容器又は位置に送られる。他の実施形態では、磁気犠牲ビーズは、溶液中に含められ、生体試料と混合され、得られる改質された試料は、分析デバイス中に導入される。例えば、血液試料を磁気犠牲ビーズと混合することによって、改質された試料を形成することができ、次いでこれは、カートリッジ中に導入される。ある特定の実施形態では、分析デバイス、例えば、カートリッジは、磁気犠牲ビーズを含む液体を含むポーチを含み、これは、デバイス中で生体試料と混合され、次いで概ね本明細書に記載されるように処理されることによって分析物検出のためのアッセイ、例えば、サンドイッチアッセイを形成することができる。
他の実施形態では、磁気犠牲ビーズを含む第1の液体を、液体生体試料、例えば血液と混合するのに、エレクトロウェッティングが使用される。そのような一実施形態では、液滴を操作するための装置が提供される場合がある。この装置は、例えば、すべての導電性エレメントが、液滴が操作される1つの表面上に含まれる、片面の電極設計を有することができる。他の実施形態では、操作される液滴を入れる目的のために、第1の表面と平行に追加の表面が提供される。液滴は、エレクトロウェッティングに基づく技法を実施することによって操作され、この技法において、第1の表面上に含まれ、又はこの表面中に埋め込まれた電極が、制御された様式で順次電圧を印加され、電圧を切られる。装置は、2つの液滴を一緒に合わせ、混合すること、1つの液滴を2つ以上の液滴に分割すること、流れから個々に制御可能な液滴を形成することによって連続する液体の流れを試料採取すること、及び所望の混合比を得るために液滴を繰り返して二成分混合又はデジタル混合することを含めた、いくつかの液滴操作プロセスを可能にすることができる。このようにして、磁気犠牲ビーズ、及び任意選択により1つ又は複数の白血球試薬を含む第1の液体の液滴は、液体生体試料、例えば、血液を慎重に且つ制御可能に合わせ、混合することができる。例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれている、Pamulaらの米国特許第6,911,132号を参照されたい。
さらに、当技術分野で公知の現在のイムノアッセイ形式を、例えば、試料前処理ステップにおいてビーズを添加することによって、本発明の磁気犠牲ビーズを含むように改変することができる。この前処理は、血液収集デバイス内、別個の容器内に犠牲ビーズを組み込むことによって達成することができ、又はデバイスの検査サイクル内で犠牲ビーズを組み入れることによって、分析(イムノアッセイ)デバイス自体で行うことができる。
本発明を脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)検査カートリッジとの関連で説明してきたが、これは、白血球が存在し、干渉の原因となり得る任意のイムノアッセイに同様に適用可能である。同様に、この方法又はキットは、BNPに限定されず、それだけに限らないが、proBNP、NTproBNP、cTnI、TnT、HCG、TSH、PSA、D−二量体、CRP、ミオグロビン、NGAL、CKMB、ミエロペルオキシダーゼ、及びガレクチン−3を含めて、任意のイムノアッセイに適応させることができる。さらに、この方法及びキットは、磁気犠牲ビーズが、マウス、ヤギ、ウシ、及びルピナスを含めた任意の非ヒトIgG又はその断片でコーティングされた、或いは犠牲ビーズが、活性化されたヒトIgG又はその断片でコーティングされたアッセイに適用可能である。磁気犠牲ビーズは、タンパク質、細菌、ウイルス、及び生体異物から選択される物質若しくはこれらの断片でコーティングされた基質ビーズを含むことができ、又は任意選択により基質ビーズを用いずに、休止中の、若しくはさもなければ安定化された細菌性細胞、胞子、若しくはこれらの断片、例えば、大腸菌(E.coli)によって得ることができる。
本発明のキット又は方法は、可溶性乾燥試薬の形態である第2の標識抗体を含むことができる。いくつかの実施形態では、可溶性乾燥試薬は、可溶性乾燥試薬の一部として、又は様々な成分が別個の乾燥試薬の位置内にある場合、1つ若しくは複数の白血球試薬、及び/又はオプソニン化された犠牲ビーズを含む。白血球試薬の考察については、その全体が参照により本明細書に組み込まれている、同時係属中の米国特許出願第12/771,634号を参照されたい。固定化抗体及び標識抗体はともに、モノクローナル、ポリクローナル、これらの断片、及びこれらの組合せとすることができることに注意されたい。さらに、第2の抗体は、放射標識、酵素、発色団、フルオロフォア、化学発光種、及びイムノアッセイの分野で公知の他のものを含めた様々な標識で標識することができる。第2の抗体が酵素で標識される場合、この酵素は、ALP、西洋わさびペルオキシダーゼ、又はグルコースオキシダーゼであることが好ましい。
この方法又はキットが非競合イムノアッセイを実施するために使用される場合、(i)分析物を含有する疑いのある血液試料を、白血球についてオプソニン化された磁気犠牲ビーズを含む試薬と混合するステップ、(ii)磁気犠牲ビーズを白血球に結合させるステップ、(iii)ビーズ及び任意の付随した白血球を磁場領域内に磁気的に保持するステップ、(iv)血液試料を、分析物に対する固定化された第1の抗体と混合し、固定化抗体と前記分析物の間で複合体を形成するステップ、(v)血液試料を、標識された第2の抗体と混合することによって、前記分析物と前記固定化抗体を含む複合体を形成するステップを含む一連の混合ステップが存在する場合がある。これらの混合ステップは、同時に、又は指定された順序で実施することができることに注意されたい。例えば、ステップ(iv)及び(v)を同時に行うことができ、又はステップ(i)及び(v)をステップ(iv)の前に実施することができる。最終ステップにおいて、固定化された第1の抗体、分析物、及び標識された第2の抗体の間で形成された複合体の量の判定がある。
本発明は、以下の非限定的な予言的な例を考慮して、より良好に理解されるであろう。
(例1)
一実施形態では、未計量の流体試料が、試料流入ポート4を通じて、カートリッジの試料保持チャンバー34中に導入される。キャピラリーストップ25は、この段階で試料が導管15へと通過するのを防止し、保持チャンバー34は、試料で満たされる。蓋2又はエレメント200は、カートリッジから試料が漏れるのを防止するために閉じられている。次いでカートリッジは、参照により本明細書に組み込まれている、米国特許第5,821,399号に開示されているものなどの、読取装置内に挿入される。読取装置内にカートリッジを挿入することにより、42に位置した流体を含むパッケージに、このパッケージがスパイク38に対して押されたとき、穴を開ける機構が作動する。それによって流体は、第2の導管内に排出され、39、20、12及び11に順に到達する。12における狭窄部は、流体のさらなる移動を防止し、その理由は、流体が第2の導管部分11を介して廃棄物チャンバー44内に流れることによって、残留する静水圧が放散されるためである。第2のステップでは、ポンプ手段を稼動することにより、空気ブラダー43に圧力をかけ、導管40を通じ、カッタウェイ17及び18を通じて、導管34内に所定の位置27で空気を押し込む。キャピラリーストップ25及び位置27は、元の試料の計量された部分を区切る。試料が試料保持チャンバー34内にある間、試料は、チャンバーの内表面上の、磁気犠牲ビーズ、及び任意選択により非磁気犠牲ビーズ、及び/又は1つ若しくは複数の白血球試薬、及び任意の他の所望の物質を含む乾燥試薬コーティングで改質される。次いで試料の計量された部分は、空気ブラダー43内で生じる空気圧によって、キャピラリーストップを通じて排出される。試料は、例えば、保持チャンバー34及び/又は導管15内で、試料中に含まれる白血球が、磁気犠牲ビーズに結合するのを可能にするのに十分な(任意選択により、試料の往復で促進された)条件下で、磁気犠牲ビーズと混合させられることが好ましい。次いで、磁場が試料に印加されることによって、導管の表面上に、且つ免疫センサーと実質的に接触しないで、磁気犠牲ビーズが保持される。試料は次いで通り、カッタウェイ35内に位置した1つ又は複数の分析物センサーに接触する。
カットアウト35内に位置した免疫センサーを使用する実施形態では、試料は、センサーに到達する前に、例えば、酵素−抗体コンジュゲート(シグナル抗体)によって改質される。分析物がセンサーに効率的に結合するのを促進するために、分析物を含有する試料は、任意選択により、往復性の動きでセンサー上を繰り返して通される。好ましくは、約0.2と2Hzの間の往復振動数が使用され、最も好ましくは0.7Hzである。こうして、シグナル抗体に付随するシグナル酵素は、試料中に存在する分析物の量に比例して、電流測定電極表面のごく近くに運ばれる。
分析物/酵素−抗体コンジュゲート複合体が免疫センサーに結合する機会が提供された後、試料は、空気ブラダー43にかけられるさらなる圧力によって排出され、試料は廃棄物チャンバー44に進む。次に洗浄ステップにより、非特異的に結合した酵素−コンジュゲート及び犠牲ビーズが、センサーチャンバーから除去される。第2の導管における流体は、ポンプ手段43によって移動されてセンサーと接触する。分析流体は、第1の空気セグメントが伝導率センサーで検出されるまで、徐々に引き寄せられる。
1つ又は複数の空気セグメントは、それだけに限らないが、(1)受動的な手段、(2)空気がフラップ又はバルブを通じて導管内に引き寄せられるポンプを使用する、導管内の圧力の一過性の低下を含めた能動的な手段、又は(3)導管内で流体と接触するとガスを遊離する、導管内に予め配置された化合物であって、カーボネート、ビカーボネートなどを挙げることができる化合物を溶解させることによるものを含めた、任意の適当な手段によって導管内に作製することができる。このセグメントは、試料が混入した流体を導管15から一掃することにおいて極めて有効である。センサー領域をすすぐ効率は、説明したように、1つ又は複数の空気セグメントを第2の導管中に導入することによって大いに増強される。空気セグメントの先頭縁部及び/又は後縁部は、センサー上を1回又は複数回通過することによって、試料から堆積する場合のある異質の物質をすすぎ、再懸濁する。異質の物質には、特異的に結合した分析物又は分析物/抗体−酵素コンジュゲート複合体以外の任意の物質が含まれる。しかし、すすぎが、それほど長引かず、又はセンサーからの、特異的に結合した分析物若しくは分析物/抗体−酵素コンジュゲート複合体の解離を促進するほど活発であることは、本発明の目的である。
流体中に空気セグメントを導入することの第2の利点は、流体を区分することである。例えば、流体の第1のセグメントが、センサーをすすぐのに使用された後、次いで第2のセグメントは、2つのセグメントの混合を最小にして、センサー上に配置される。この機能は、非結合の抗体−酵素コンジュゲートをより効率的に除去することによって、センサーからのバックグラウンドシグナルをさらに低減する。先端洗浄(front edge washing)の後、分析流体は、第1の空気セグメントが伝導率センサーにおいて検出されるまで徐々に引き寄せられる。このセグメントは、第1の分析流体試料と混合された、試料が混入した流体を一掃することにおいて極めて有効である。測定のために、流体の新しい部分がセンサー上に配置され、操作のモードに適切な場合、電流又は電位が時間の関数として記録される。
(例2)
次に図12を参照すると、免疫センサーカートリッジの上面図が示されている。カートリッジ150は、好ましくはプラスチックで構築されたベース及び頂部部分を備える。2つの部分は、薄い接着性ガスケット又は薄い柔軟な膜によって接続されている。先の実施形態と同様に、組み立てられたカートリッジは、試料保持チャンバー151を備え、この中に、対象とする分析物を含有する試料が、試料入口167を介して導入される。試料は、オプソニン化された磁気犠牲ビーズで改質され、センサーチップ153に送達される前に、磁石168が使用されることによって、試料に由来する標的物質(例えば、白血球)が積まれたビーズが保持される。試料の計量された部分は、カートリッジの2つの部分を接続するガスケット又は膜中に、0.012インチ(0.3mm)のレーザーカットされた穴によって好ましくは形成されたキャピラリーストップ152と、試料ダイヤフラム156上を押しつけるパドルなどのポンプ手段の作用によって空気が導入される試料保持チャンバー内の所定箇所に位置した流入点155との合わせた作用によって、以前と同様に試料導管154(第1の導管)を介してセンサーチップ153に送達される。結合することが可能になるようにセンサーと接触した後、試料は、排出口157に移動され、この排出口はウィッキング材を含み、これは、試料を吸収し、それによって、液体又は空気のさらなる通過に対して排出口を閉じて密封する。ウィッキング材は、綿繊維物質、セルロース物質、又は孔を有する他の親水性物質であることが好ましい。この物質は、以下に記載される試料ダイヤフラム作動手段を引き続いて引っ込めることと釣り合った時間内でバルブが閉じ、その結果試料が、センサーチップの領域内に引き続いて引き戻されないほど十分に吸収性である(すなわち十分なウィッキング速度を有する)ことが、本願において重要である。
示した特定の実施形態と同様に、一端で排出口159に、他端で、排出口157とセンサーチップ153の間に位置した試料導管のある箇所160の試料導管に接続された洗浄導管(第2の導管)158が提供される。読取装置内にカートリッジを挿入すると、流体は、導管158に導入される。好ましくは、流体は、ホイルポーチ(foil pouch)161内に最初に存在し、これは、作動手段によりポーチに圧力がかけられるとき、ピンによって穴を開けられる。ガスケット163中の小さい開口部を介して流体を導管154に接続する短い導管162も提供される。第2のキャピラリーストップは、流体がキャピラリーストップ160に到達するのを最初に防止し、その結果、流体は導管158内に保持される。
排出口157が閉じられた後、ポンプが作動され、導管154内に圧力低下を作り出す。振動することによって断続的な空気のストリームをもたらす、ガスケット又は膜中にカットされた小さいフラップを好ましくは備える換気口164は、空気が第2の排出口165を介して導管158に入るための手段を提供する。第2の排出口165も、湿ったとき排出口を閉じることができるウィッキング材を好ましくは含み、これは、必要に応じて、試料ダイヤフラム156を引き続いてへこませることによって排出口165を閉じることを可能にする。試料ダイヤフラム156の作動と同時に、流体は、導管158からキャピラリーストップ160を通じて導管154に引き寄せられる。流体の流れが排出口164に入る空気によって妨害されるので、少なくとも1つの空気セグメント(セグメント又はセグメントのストリーム)が導入される。
試料ダイヤフラム156がさらに引っ込むと、少なくとも1つの空気セグメントを含有する液体が引き戻され、センサーチップ153の感知表面を横切る。液体内に空気−液体の境界が存在することにより、残っている試料を除去するためのセンサーチップ表面のすすぎが増強される。好ましくは、試料ダイヤフラム156の運動は、分析物センサーに隣接するセンサーチップ内に収容された伝導率電極から受信されるシグナルと連動して制御される。このようにして、センサー上の液体の存在が検出され、別個のステップにおける流体の動きによって、複数の読み取りを実施することができる。
流体の薄膜が、センサー、接地チップ165、及びセンサーと接地電極の間の導管154の壁の接触部分を覆うときのみ、分析物測定を実施することが、この実施形態では有利である。適当な膜は、センサーの隣に位置した電気伝導度測定センサーが、バルクの流体は、導管154のその領域内にもはや存在しないことを示すまで、試料ダイヤフラム156を操作することにより、流体を引き抜くことによって得られる。測定は、非常に低い(nA)電流で実施することができ、(バルクの流体と比較して)接地チップとセンサーチップの間の薄膜の抵抗を増大させることによって生じる電位降下は、重要でないことが判明した。
接地チップ165は、銀/塩化銀であることが好ましい。二酸化ケイ素の表面などのより親水性の領域が点在した銀/塩化銀の小さい領域として接地チップをパターン形成するのに、相対的に疎水性の塩化銀表面上に容易に形成する空気セグメントを回避することが有利である。したがって、好適な接地電極構成は、高密度に配置され、二酸化ケイ素が点在した銀/塩化銀の正方形のアレイを含む。銀/塩化銀の領域がある程度くぼんでいる場合、意図していないセグメントを回避することにさらなる利点が存在する。
次に図13を参照すると、免疫センサーカートリッジの好適な実施形態の流体工学の概略図が示されている。領域R1〜R8は、特定の運転機能に関連する導管の特定の領域を表す。したがって、R1は試料保持チャンバーを表し、R2は試料導管を表し、それによって白血球を含む試料の計量された部分が捕捉領域に移される。試料は、R1又はR2の壁上にコーティングされた物質、例えば、オプソニン化された磁気犠牲ビーズで改質することができる。上記に論じたように、ビーズは、白血球についてオプソニン化されており、試料中に溶解すると結合することが好ましい。磁石領域65において、磁石が使用されることによって、磁気ビーズ及び試料に由来する付随した白血球が、免疫センサーと実質的に接触しないで磁気的に保持される。R3は、電気伝導度測定センサー及び分析物センサーを収容する捕捉領域を表す。R4及びR5は、第1の導管の部分を表し、これらは、導管壁上にコーティングされた物質で流体をさらに改質するのに任意選択により使用され、それによってより複雑なアッセイスキームが実現され、R6は、第2の導管の部分を表し、カートリッジが読取装置内に挿入されると、その中に流体が導入される。R7は、キャピラリーストップ160と166の間に配置された導管の部分を備え、その中でさらなる改質を行うことができる。R8は、箇所160と排出口157の間に配置された導管154の部分を表し、これは、その中に含まれる液体を改質するのにさらに使用することができる。
本発明の実施形態は、遠心分離又は濾過によって残留白血球を除去する意図にもかかわらず、残留白血球が存在し得る試料、例えば、血漿に適用可能である。ある特定の実施形態は、例えば、緩衝液を用いて希釈された場合のある試料にも適用可能である。さらに、本発明は一般に、試料中に乾燥試薬を溶解させることによって試料を改質することを対象とするが、分析の間、又は試料収集の間に、試薬、例えば、磁気犠牲ビーズを液体として試料に添加することも、他の実施形態では実用的である。したがって、本発明の範囲は、特許請求の範囲によって、もっぱら限定されることが意図されている。