JP6037382B2 - 高調波抑制装置 - Google Patents
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Description
このようなアクティブフィルタに関する技術として、下記の特許文献1,2および非特許文献1,2が知られている。
従って、特許文献1に記載の技術では、3次以降の全ての高調波成分を補償している。
そして、特許文献2に記載の技術では、アクティブフィルタを使用して、3次高調波と5次高調波のみを、選択的に相殺して抑制している。
非特許文献1に記載の技術では、5次や7次高調波が主な補償対象である三相アクティブフィルタとは異なり、主に補償する対象が3次高調波電流である単相アクティブフィルタに関して、負荷が急変した場合の直流電圧の変動に対応する技術である。
なお、非特許文献2に記載の技術では、3次以降の全ての高調波が抑制される。
特許文献1や非特許文献1,2に記載されているように、従来の単相アクティブフィルタは、単相の負荷から発生する高調波(奇数倍の周波数成分)を全て補償することを目的としているため、アクティブフィルタの電力容量が大きいという問題点がある。したがって、アクティブフィルタの体積が大きくなる問題がある。
特に、特許文献1,2や非特許文献1,2に記載されているような単相の機器では、3次高調波が含まれるため、従来の単相のアクティブフィルタでは、3次高調波の抑制を行うことが一般的であった。
少なくとも△結線を含む三相変圧器の出力側の二相に両端が接続された負荷に対して、前記負荷を流れる電流に含まれる高調波の成分において、5次以上の高調波を検出する高調波の検出部と、
検出された5次以降の高調波とは逆位相の波形の補償電流を供給する補償電流の供給部と、
を備え、
前記負荷に対して並列に接続され、且つ、三相変圧器の出力側の二相に両端が接続され、
3次高調波を補償せず且つ5次以上の高調波を補償することを特徴とする。
なお、以下の図面を使用した説明において、理解の容易のために説明に必要な部材以外の図示は適宜省略されている。
図1において、実施例1の高調波抑制装置を含む回路の一例として、住宅用における電気配線の回路1を示す。回路1は、住宅外の電線を利用して供給される三相200Vの電源2から、△−Y結線型の三相変圧器3を通じて、三相から単相に変換されて、住宅4に供給される。
住宅4内では、単相の交流電源に対して、負荷の一例としてのLED電球6が接続されている。LED電球6に対して、並列に、実施例1の高調波抑制装置の一例としてのアクティブフィルタ7が接続されている。すなわち、実施例1では、並列型のアクティブフィルタ7が使用されている。
なお、図1、図2において、住宅4内では、図2に示す単相の交流電源3aを有する回路1aが3つ存在していることと等価であるため、以下の説明では、図2を使用して、1つの単相の回路1aに基づいて説明を行い、残りの2つの単相の回路については説明を省略する。
図2において、実施例1のアクティブフィルタ7は、補償電流の供給部の一例としてのPWMインバータ8と、連系リアクトル9とを有する。PWMインバータ8は、スイッチング素子の一例としてのMOSFETが4つ組み合わされたフルブリッジ回路8aを有し、フルブリッジ回路8aの直流側にはコンデンサ8bが接続されている。
また、実施例1のアクティブフィルタ7では、スイッチングに伴うリプルを除去するためのフィルタが設けられていないが、例えば、フルブリッジ回路8aの交流側に並列にコンデンサを接続する等の公知のスイッチングリプル除去用のフィルタを設けることも可能である。
図2、図3において、アクティブフィルタ7は、制御手段の一例としての制御器11を有する。実施例1の制御器11は、集積回路の一例としてのFPGA(Field Programmable Gate Array)を使用している。すなわち、制御器11は、小型の情報処理装置、いわゆるマイクロコンピュータにより構成されており、外部との信号の入出力、必要な処理を実行するためのプログラムおよびデータ等が記憶されたROM、必要なデータを一時的に記憶するためのRAMや、前記ROMに記憶されたプログラムに応じた処理を行うCPU、ならびにクロック発振器等を有しており、前記ROMに記憶されたプログラムを実行することにより種々の機能を実現することができる。
実施例1の制御器11では、PLL(位相同期:Phase Locked Loop)、直流電圧制御、高調波検出、電圧フィードフォワード制御、アクティブフィルタの交流側電流制御を行う。
図3において、実施例1の制御器11は、第1の座標変換部の一例として、負荷電流iLが入力される基本波用の座標変換部12を有する。
また、負荷電流iLは、第1の遅延器の一例としての基本波用の遅延器13にも入力される。基本波用の遅延器13は、RAMを使用しており、負荷電流iLの波形を一時的にメモリに保存して、基本波の周期に対して1/4周期後に出力することで、波形の位相シフトを行う。したがって、例えば、基本波の周期が20ms(=周波数50Hz)の場合、基本波用の遅延器13は、1/4周期である5ms遅延させた電流iLD1を、基本波用の座標変換部12に出力する。
実施例1のdq変換では、負荷電流iLと、基本波用の遅延器13から出力された遅延した電流値iLD1と、基本波の周波数ωと、に基づいて、以下の数1の演算される。
なお、基本波の周波数ωは、交流電圧vsが入力されるPLL14で演算されたωtの信号から生成される。実施例1のPLL14は、交流電圧vsのゼロクロス間隔を利用して周波数ωtを出力している。
ローパスフィルタ16を通過した各成分iLPd1,iLPq1は、第1の逆変換部の一例としての基本波の逆変換部17に入力される。基本波の逆変換部17は、逆dq変換を行い、負荷電流iLの基本波成分iL1を演算する。なお、逆dq変換の際に必要な基本波の周波数ωは、PLL14から入力される。
したがって、基本波用の座標変換部12、基本波用の遅延器13、ローパスフィルタ16および基本波用の逆変換部17により、負荷電流iLから基本波成分iL1が演算されて出力される。
実施例1の3次高調波用の遅延器22では、3次高調波の周期に対して1/4周期だけ遅延させた信号を出力する。したがって、例えば、基本波の周期が20msの場合、3次高調波用の遅延器22は、3次高調波の周期(20/3)msの1/4周期である5/3=1.6ms遅延させた電流iLD3を出力する。
したがって、3次高調波用の座標変換部21、3次高調波用の遅延器22、ローパスフィルタ23および3次高調波用の逆変換部24により、負荷電流iLから3次高調波成分iL3が演算されて出力される。
負荷電流iLの基本波成分iL1と3次高調波成分iL3は加算され、加算された値iL1+iL3を負荷電流iLから減算することで、5次高調波以降の成分のみからなる高調波成分iLhが演算される。したがって、実施例1では、符号12〜24を付した各制御部により、5次以降の高調波成分iLhを検出する高調波の検出部12〜24が構成されている。
図5は実施例1のゲインの調整の説明図であり、図5Aは交流電圧のグラフ、図5Bは補償電流のグラフ、図5Cは可変ゲインのグラフである。
高調波成分iLhは、可変ゲイン部26に入力される。図4において、可変ゲイン26のゲインKvarは、ゲイン調整部27により調整される。図4、図5において、ゲイン調整部27の判別部27aには、予め設定された値であるピーク指令値IAFpeak *から、補償電流iAFの予め設定された期間におけるピーク値IAFpeakが減算された値が入力され、入力値の正負、すなわち、入力値が0以上(正)であるか、0未満(負)であるかが判別される。なお、実施例1では、ピーク値IAFpeakを検知する期間として、系統電圧vsがゼロクロスする間隔が設定されている。
なお、実施例1では、ピーク値に基づいて、補償電流iAFの最大値を調整する構成を例示したが、これに限定されず、例えば、補償電流iAFのサンプリング値を使用して、区分求積法による積分演算を行い、得られた値iAFrmと、予め設定された指令値iAFrm *との大小関係で、数2と同様にしてゲインKvarを調整することで、補償電流iAFの実効値を指令値通りに自動調整することも可能である。
また、ピーク値による調整や実効値による調整を行わず、ゲインKvarを固定値とすることも可能である。
そして、積分された値に、sinωtを積算した値を、可変ゲイン部26からの出力値と加算して、連系リアクトル9を流れる電流の指令値、すなわち、アクティブフィルタ7の電流指令値iAF *が得られる。
電圧指令信号vINV *に基づいて、5次以上の高調波の逆位相の電流を流すように、PWMインバータ8が制御されて、系統電圧vsおよび系統電流isに含まれる5次以上の高調波が抑制される。
前記構成を備えた実施例1のアクティブフィルタ7では、3次高調波は補償されず、5次高調波以上の高調波が補償される。したがって、系統電圧vsには、LED6で発生した3次高調波が含まれることになる。しかし、実施例1では、△−Y結線型の三相変圧器3が使用されており、3次高調波は、△結線内を循環して外部に出力されない。よって、結果として、下位の系統であるLED6で発生した3次高調波も5次以降の高調波も、上位の系統である3相の電源2側には出力されず、3次以降の高調波が補償される。
したがって、3次を補償せず、5次以降を補償する実施例1の単相用のアクティブフィルタ7は、3次高調波も補償する従来の単相用のアクティブフィルタに比べて、電力容量を小さくすることができる。したがって、アクティブフィルタ7を小型化することも可能である。また、実施例1のアクティブフィルタ7では、3次高調波を補償しないため、補償電流量を減少させることができる。したがって、インバータ損失を低減することができ、アクティブフィルタ動作時の電力の損失を低減することもできる。
図6は実験例の回路の説明図である。
実施例1の構成について、実験を行った。実験は、負荷として、LED6に替えて、コンデンサ入力形ダイオード整流回路41を使用した。実験例での回路41は、4つのダイオード42によるフルブリッジ回路43と、フルブリッジ回路43の直流側に接続された容量2200[μF]のコンデンサ44と、コンデンサ44に並列に接続された40[Ω]の抵抗46と、からなる。また、コンデンサ入力形ダイオード整流回路41の交流側には、動作時の負荷電流の増加を防ぐために、5[mH]のリアクトル47を接続した。
実験例1は、実施例1のアクティブフィルタの構成を利用した。なお、連系リアクトル9は、5.8[mH]のコイルを使用し、コンデンサ8bとして、容量1000[μF]のコンデンサを使用した。実験例1では、まず、下位系統である単相回路における系統電流isと、補償電流iAFの波形を測定して、3次、5次、7次の高調波電流の実効値ih3,ih5,ih7、系統電流のTHD(全高調波歪:Total Harmonic Distortion)、アクティブフィルタの容量および負荷電力に対する比を検出した。また、実験例1では、上位系統である三相回路における系統電流の波形を測定し、3次、5次、7次の高調波電流の実効値ih3,ih5,ih7、系統電流のTHD、入力した電圧を検出した。
(比較例1)
比較例1では、アクティブコンデンサを使用せずに、実験例1と同様に実験を行った。
(比較例2)
比較例2では、3次高調波も補償する従来のアクティブフィルタを使用して、実験例1と同様に実験を行った。
なお、比較例1では、アクティブフィルタを使用しない、すなわち、補償されないため、系統電流の波形は負荷電流の波形と一致し、且つ、補償電流は常時ゼロとなるため図示は省略する。また、実験例1、比較例1,2のいずれにおいても、負荷電流の波形は共通であるため、図7Aにのみ示し、全ての図示は省略する。
図7において、図7Aに示す負荷電流iLのグラフに対して、全ての高調波を補償する比較例2では、図7Bに示すように、補償後の系統電流isの波形は、系統電圧vsと同様に正弦波となっている。一方で、3次を補償しない実験例1では、図7Cに示すように、補償後の系統電流isの波形は、正弦波に対して、大きく歪んだ形となっている。
図8において、3次、5次、7次の高調波電流の実効値ih3,ih5,ih7を検出すると、比較例1では、全く補償されないため、各高調波が検出された。全ての高調波を補償する比較例2では、ほぼ全てがゼロとなっており、実験例1では、3次のみが比較例1と同様に補償されていなかった。したがって、THDは、比較例2はほぼゼロに近いが、比較例1および実験例1では50%に近い大きな値となっていた。
一方で、補償電流iAFは、比較例2が一番大きく、補償しない比較例1はゼロ、実験例1では比較例2の1/3程度になっている。なお、実験例では、負荷電力は457[VA]であり、2.7[A]の補償電流が流れる比較例2ではアクティブフィルタの必要な容量が270.1[VA]となる。したがって、負荷電力に対して、59%の電力容量が必要となる。これに対して、実験例1では、必要な容量が91.1[VA]で済み、負荷電力に対して19%で済む。すなわち、実験例1では、従来のアクティブフィルタである比較例2に比べて、容量が19/59≒1/3程度に容量を減らすことができる。
図10は実験結果の説明図であり、3次、5次、7次の高調波電流実効値、系統電流のTHD、入力された電圧の一覧表である。
図9において、図9Aの系統電圧に対して、高調波の補償がされない比較例1では、図9Bに示すように、波形が大きく歪む。したがって、下位系統の高調波が上位系統に悪影響を与えてしまう。全ての高調波が補償される比較例2では、図9Cに示すように、系統電圧に近い波形となっており、図10に示すように、THDは6.3%と低い値となっている。これらに対して、実験例1では、図9Dに示すように、比較例2と同様に系統電圧に近い波形となっており、図10に示すように、THDが4.7%となっている。したがって、3次高調波を補償しない実験例1のアクティブフィルタ7でも、3相変圧器3よりも上位系統では高調波の影響をほとんど与えず、結果として、3次高調波も補償された結果が得られた。
したがって、実験により、3次高調波を補償しないことで、従来のアクティブフィルタと同様に、全ての高調波を補償しつつ、アクティブフィルタの容量および電力の損失を削減することができることが確認された。したがって、従来のアクティブフィルタに対して小型化、軽量化が可能であり、実施例1のアクティブフィルタを、配電盤に設置するだけでなく、例えば、電源タップや電力量計のような小型の機器に組み込む等、アクティブフィルタを組み込みやすくなる。また、損失の低減により、省エネルギー化することも可能である。
ただし、単相のアクティブフィルタは、容量が0.1〜0.5[kVA]であるが、三相のアクティブフィルタは50〜300[kVA]程度の容量を有する点が異なる。したがって、容量が1000倍程度異なり、対象としている高調波の量も1000倍以上異なる。また、三相のアクティブフィルタには、原理上、三次高調波電流を流すことができないため、単相のアクティブフィルタとは、回路図が似てはいるが、装置の中身としては全く異なる。したがって、三相のアクティブフィルタの構成は、単相のアクティブフィルタに直接適用することは、技術的に極めて困難である。
以上、本発明の実施例を詳述したが、本発明は、前記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内で、種々の変更を行うことが可能である。本発明の変更例(H01)〜(H04)を下記に例示する。
(H01)前記実施例において、アクティブフィルタとしてMOSFETを使用する構成を例示したが、これに限定されない。例えば、IGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ:Insulated Gate Bipolar Transistor)等の任意の素子を使用するアクティブフィルタを使用可能である。
(H03)前記実施例において、アクティブフィルタ7を下位系統に設ける構成を例示したが、3相変圧器3よりも上位系統に設けることも可能である。
6…負荷、
7…高調波抑制装置、
8…補償電流の供給部、
12…高調波の検出部、
iAF…補償電流、
iL…負荷を流れる電流。
Claims (1)
- 少なくとも△結線を含む三相変圧器の出力側の二相に両端が接続された負荷に対して、前記負荷を流れる電流に含まれる高調波の成分において、5次以上の高調波を検出する高調波の検出部と、
検出された5次以降の高調波とは逆位相の波形の補償電流を供給する補償電流の供給部と、
を備え、
前記負荷に対して並列に接続され、且つ、三相変圧器の出力側の二相に両端が接続され、
3次高調波を補償せず且つ5次以上の高調波を補償することを特徴とする高調波抑制装置。
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