以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明による記録媒体の一実施例である。本実施例において、記録媒体Mは、板状の透明媒体であり、その材質は、石英ガラスなどのガラスあるいはプラスチック、アルミナなどの透明媒体である。以下では、便宜上、媒体の隅を基準として、図示したようにXY、Z軸を定義する。Zは媒体の厚み方向、XYはそれに直交する平面上の座標を示す。
記録媒体Mの内部には多数の微小変性領域(ドット)DOTが離散的に形成されている。ドットDOTは、レーザ光を記録媒体Mの内部に集光することにより形成されたもので、周囲の媒体と屈折率などの光学特性が異なっている。なお、短パルスレーザの集光による局所的な変性は、周囲との屈折率との差だけではなく特許文献3、4に記載されているように偏光特性や発光特性として発現させることもできる。
上記のドットは、LAとLBの1組のサブ層をなして形成されており、それぞれの層は、Z座標がほぼ一定の値、すなわち、XY平面上に形成されている。上記サブ層のZ方向の距離を以下では、DZと表記する。ここではLA層のZ座標をZAと定義する。このため、LB層のZ座標はZA+DZとなる。以下では各々LA層とLB層内でのドットのピッチをX方向についてはDX、Y方向についてはDYと標記する。
LA層とLB層上のドットの記録領域は、それぞれ記録媒体M内部のXY平面の端に近いところまで拡げることが可能である。図1では点線の領域RECODE−XY−AREAを使ってドットが記録されており、図示してはいないが、LA層、LB層とも2次元的にドットが並んだ1つあるいは複数のブロックから構成されている。
各々ブロックの大きさとその数は、適宜決めればよく、例えば、32×32ドットや128×256ドットのブロックを縦横32×32個並べるなど媒体のXY方向の大きさやドットの最小間隔、あるいは一度に記録、あるいは再生できる大きさを考慮して自由に決めることができる。本図では、原理を理解しやすくするために4×4ドットと小さいブロックを仮定して説明する。
また、図において黒丸は、ドットを示しており、格子状の線は、理解を助けるための補助線であり、この交点にドットを記録するかしないかでデータを表現している。LA層のドット配置は図1に示したデータ行列Dの‘1’のデータ配列を記録しており、LB層のドット配置はデータ行列Dの‘0’の配列を記録している。
したがって、記録するデータ行列Dにおける‘1’、‘0’の配置によって、各々層のドットのXY座標が決定される。図1から、容易にわかるように、両者のドット配列を1つのXY平面上に合成すると、X方向にDX、Y方向にDYの間隔で格子状にドットが並ぶことになる。
LA層とLB層を合わせたときのXY平面内のビット密度は、1/(DX・DY)となる。そのためX方向とY方向のドットの最小加工ピッチに特に違いがなければ、DXとDYを等しくするときに面内のドット密度は最大値となる。その値は、ドットの最小加工ピッチをFとすると1/F2となる。
本実施例の媒体に記録されたデータは、データ行列1と0の両方の情報を物理的に記録している。具体的な再生方法の実施例は、後述するが、媒体Mに光を照射して‘1’の情報を記録したLA層のドットから得られる信号と‘0’の情報を記録したLB層のドットから得られる信号の差分をとることで高いS/N比を得ることが可能である。
また、LA層とLB層のドット配置は、上記のように互いにXY座標が異なっているため、層内のドット距離DX、DYに対して層間距離DZを適切な値にすることによって、LA層とLB層のサブ層同士のクロストークノイズ発生を抑制することが可能である。
なお、LA層とLB層のドット配置が、Z方向に重ならないとは言っても、層間距離DZは、層内のドットの最小距離DX、DYに対して、大きくした方がどちらかの層にピントを合わせたときにもう一方の層の影響が小さくなる。しかし、記録時の収差補正を容易にすることなどを考慮するとDZは小さい方が収差補正が楽である。そこで、再生から考えたときのDZの下限値を与えておく。DZの下限値は、再生に用いる対物レンズの焦点深度になる。これは、一方の層にピントを合わせた場合に、もう一方の層の像がぼけるためである。
一方、DX、DYは、再生に用いる対物レンズの分解能より大きい必要がある。焦点深度は、レンズの開口数NAの2乗に反比例し、分解能は、NAに反比例する。つまり、焦点深度は、分解能のNA分の1である。したがって、層間距離DZの下限値は、層内のドットの最短距離DX、DYのNA分の1となる。NAは、液浸でない一般の対物レンズでは、1以下であるため、ペアの層間距離DZの下限は、層内のドットの最短距離DX若しくはDYとなる。ただし、これは下限であり、実用的にはもう少しマージンをもってDZを大きくしておく方が、ドット間隔のばらつきなどを考慮すると安全である。
なお、後述するように、透過光で明るくなった周辺に比べてドット部分が暗く(黒く)見えるフォーカス位置(以下FB位置と記す)と、周辺よりドットが更に明るく(白く)見えるフォーカス位置(以下FW位置)とが存在するが、FB位置とFW位置とで、ドットは黒く見えたり白く見えたりするので、DZをFBとFWの差にほぼ等しくしておくと、ほぼ同じピント位置で、ペア層の片方のドットが暗く、もう片方が明るく見えて、別々にピントを合わせる手間が省けるという利点がある。
なお、LA層とLB層のドットの層内位置のばらつきについて言及しておく。これまでに述べたように、LA層の画像とLB層の画像を合成すると、格子状にドットが並ぶが、その状態でドット同士が重なってしまうほどドットの位置のばらつきが大きいことは望ましくない。1つの目安としては、上記合成画像において、ドットピッチの平均値に比較して、ドットピッチの標準偏差が、1/3以下であることが望ましい。
以上述べてきたように、本実施例によれば、ガラス、プラスチック、あるいはアルミナなどの透明材料に記録されたデータを高いS/N比率で再生することが可能となる。
したがって、例えば、テキスト、音声、あるいは画像情報を長期間保存し、再生することが可能となる。
また、記録したい情報を、所謂2次元バーコードに変換して、本実施例に適用することも可能である。その場合は、記録したい情報を複数のデータの組に分割して、それぞれを2次元バーコードに変換すればよい。通常の2次元バーコードでは、紙などの上に1層データを印刷するが、本実施例によれば、紙への印刷に比べてドットのピッチを小さくでき、より高い記録密度が実現できる。
なお、後述の実施例のように多層化をした場合にも2次元バーコードの適用は可能であり、その場合には、さらに大容量の記録が可能である。
2次元バーコードの規格は、いくつか知られているが、一般に、平面内で、画像が大きく回転していてもデータ位置の検出が容易になるような位置検出マークが定義されており、さらに、強力なエラーコレクション機能も付加されているため、本実施例に適用した場合に、より簡易な光学系での再生が可能になるという利点がある。
本実施例に2次元バーコードを適用するには、LA層に2次元バーコードをLB層にその反転情報を記録すればよい。その場合には、位置の検出マークは、簡便に検出できるため、どちらか一方の層だけに記録して、データ部分だけをLA層とLB層に記録することも可能である。そのようにすれば、記録にかかる時間を短縮することができる。
ところで、位置検出マークは、物理的なビットより大きい領域を使う場合が一般的であるが、本発明においても、複数のドットを用いて、ビットマップで記録すれば、大きな位置検出マークを記録することが可能である。このため、本発明によれば、様々な規格の2次元バーコードの位置検出マークに対応できる。
なお、図1の実施例を更に多数の層に拡張したり、ドットの配列を格子状以外にしたりすることも可能である。それらの実施例については後述することとし、以下では、図2、図3に示した実施例を用いて、図1の実施例を例にとり、データの再生方法について説明する。
図2は、本発明を用いてデータの再生を行うための再生機の基本的な構成を示した一実施例である。なお、図2に限らず本明細書においては、光学系の原理的な構成を単純に示すために、それぞれのレンズを1枚1群で図示するが、実際の装置としては、複数枚、複数群のレンズ構成として、光学系の収差を必要に応じて補正することは言うまでもない。
また、図2では、透過照明を用いた実施例を示すが、対物レンズ側から照明する、所謂落射照明を用いることも可能である。その場合は、反射光を撮像するため、多層にした場合にはクロストークが増加する可能性があるが、媒体の表面のうち、対物レンズ側の一面だけを精度のよい平面に研磨するだけで、両面を精度よく研磨する必要がないというメリットがある。図2において、ILは光源と光学系より構成された照明装置であり、XY−STAGEはXYステージ、OB−LENZは対物レンズ、IM−LENSは結像レンズ、CONNECTORはピント調整機構を内蔵した接続チューブ、CAMERAは2次元の撮像素子を内蔵したカメラである。
なお、後述するようにCAMERAカメラは、1次元光センサを内蔵したスキャナにすることも可能である。また、MONITORはカメラCAMERAで撮影した画像を表示する表示装置で、PCは計算機であり、搭載されたソフトウエアによって、後述のコントローラCTLの制御、カメラからの画像信号のモニタへの表示を行うほか、カメラで撮影した複数の画像を内部のメモリに記録して画像処理を行う機能、処理した画像データから記録されていたデータの再生を行う機能、前記処理画像や再生データの保存を行う機能などを有する。
CTLはコントローラであり、ピント調整機構を内蔵した接続チューブを制御することにより、対物レンズOBをZ方向に移動させてレンズの焦点を調整する機能、照明の明るさを変える機能、XYステージXY−STAGEを動作させて、XYステージ上の記録媒体をカメラの撮影範囲に対して移動させて撮像領域を変える機能などを備えている。
カメラCAMERAは、所謂デジタルカメラであり、その内部にX方向にm画素、Y方向にn画素の画素をもつ撮像素子IM−CHIP(図示せず)を備えているものとする。このカメラCAMERAは、1次元の光センサを内蔵したスキャナにすることも可能である。
結像レンズIM−LENSは、上記の撮像素子から、おおよそ結像レンズの焦点距離f−IMだけ離して設置されている。ピントの合う平面は、対物レンズOB−LENSから、おおよそ対物レンズの焦点距離f−OBだけ離れた位置にある。
上記の構成は、原理的には、カメラを備えた無限遠補正型の顕微鏡と同様の光学系であるので、以下では、顕微鏡として周知のことについての説明は省略し、本発明における記録媒体のデータの再生において重要な項目に重点をおいて説明する。
データの再生にあたっては、照明ILを点灯し、記録媒体Mを上記XYステージXY−STAGEに置き、XY方向に適宜移動した上で対物レンズのフォーカスを媒体内部の層LA付近に合わせてフォーカスを多少前後すると透過光で明るくなった周辺に比べてドット部分が暗く(黒く)見えるフォーカス位置(FB位置)と、周辺よりドットが更に明るく(白く)見えるフォーカス位置(FW位置)が存在することがわかる。これらの位置を検出するには、もちろん肉眼で画像をチェックしながらフォーカスを合わせることも可能であるが、能率を上げるためには、フォーカスを自動的に少しずつ変えながら、画像の平均的な明るさと画像の一次微分(隣接画素の差分など)をリアルタイムで計算するとよい。明るさは、ドットが白く見えれば増加し、黒く見えれば低下する。また、微分画像でエッジを検出すると、ドット画像が先鋭に見えるフォーカス位置を検出することが可能である。
上記のように明るさと、エッジの検出により、FB位置とFW位置を自動的に探索することが可能となるが、記録あるいは再生光学系の収差などによって、読み出し光学系の視野の場所によって、上記2つの位置が異なる場合があり得る。そのような場合には、フォーカスを少しずつ変化させた複数の画像を記録しておいて、視野を複数の領域に分割して上記の明るさやエッジの検出を分割した部分毎に行い、条件に適合した分割領域を、一つの画像として合成することによって、収差が問題とならない場合と同様な自動検出を行うことが可能となる。
なお、FB位置とFW位置のZ方向の差は、記録や再生条件、光学系によって変化すると思われるが、我々の試作サンプル例では、FB位置は、FW位置よりも、10μmほど対物レンズを照明から遠ざけた位置であった。このときの媒体は、石英ガラスであり、観察に用いた対物レンズの倍率は20倍である。開口数は、表記がないもののおおよそ0.6程度と思われる。ドットのZ方向の長さは、約30μm、層内のドットピッチは2.8μmである。このうち、ドットが暗く見えるフォーカス位置、FB位置でLA層のドットパターンの画像を撮像し、画像データを計算機PC内部のメモリに保存する。
なお、以下では、LX層(Xはaまたはb)をFB位置で撮像した画像をimage−iX−Bと記し、LX層をFW位置で撮像した画像をimage−iX−Wと記すことにする。続いて、LB層において同様にしてドットが暗く見えるフォーカス位置、FB位置での画像(image−ib−B)を撮像し、画像データを計算機PC内部メモリに保存する。
次に、image−ia−Bの画像の各画素値から、image−ib−Bの画素値を引算した画像データimage−subを作成する。
なお、2つの画像を減算あるいは加算する場合には、光学的あるいは機械的な要因で、両者の対応するドットの位置がずれていることがあり得る。そのような場合には、両者の位置あわせをしてから減算あるいは加算することはもちろんである。特に上記FB位置とFW位置での画像では、フォーカス位置を変えることによって光学系の伝達関数が変わるので、ドットの位置が微妙にずれることがある。この場合は、どちらか一方の画像の濃淡を反転した画像を用いれば、位置のずれ量の検出を簡単に行うことが可能となる。あるいは10図の実施例で、後述するように、画像毎に設けた位置合わせマークを用いて、画像からあらかじめデータをサンプリングしてから減算や加算をすることで上記位置ずれの影響を少なくすることができる。このときの減算では、image−ib−Bに適当な係数を乗じて引算してもよいことは、もちろんである。
以下、本明細書では、画像の減算処理や加算処理と言った場合、適当な係数を乗じた減算あるいは加算を含むものとする。なお、減算によって濃淡値が負の値になる画素ができる場合には、画像全体を適当にバイアスや階調圧縮などをして、画像フォーマットのダイナミックレンジをオーバしないようにする。このimage−subを画像として表示すると、ドットのない周辺部分と比較して、LB層上でドットであった箇所は明るく(白く)、LA層上のドットであった箇所は、暗く(黒く)見える。したがって、image−subの微小変性領域(ドット)位置の画素値、ドットのない部分の濃淡の平均値をしきい値として‘0’と‘1’に2値化すると記録したデータが再生できる。
上記では、ドットが暗く見えるフォーカス位置、FB位置で撮像したデータを用いたが、容易にわかるようにFW位置の画像を用いても同様な再生が可能である。また、ia層とib層のそれぞれでFB位置の画像とFW位置の画像を用いるなど層によってどちらかを使い分けるという方法でも同様な再生ができることはもちろんである。
本実施例においては、元データ‘0’と‘1’が両方ともドットとして記録されているため、データ‘0’と‘1’の両方が信号(ドットのない部分との濃淡差)をもつ。したがって、通常のように、元データ‘0’と‘1’のいずれか一方に相当する部分だけにドットを形成する場合に比べて、高いS/N比を得ることが可能となる。
また、本実施例では、上記サブ層LAiとLBiのドットを合わせると全ての位置にドットが観察される。このため、別の層に記録された情報を再生するときにLAi及びLAi層から発生するクロストークノイズは、記録領域前面においてドットのピッチの周期でほぼ一様となるので、ほかの層の情報を再生する際にはこれら2層からのノイズが相殺される。
なお、更にS/N比を大きくしたい場合には、FBとFW位置の差分をとった上で処理するとよい。すなわち、FB位置のiaの画像image−ia−Bの各画素値から、FW位置のiaの画像image−ia−Wの各画素値を減算した画像image−ia−B−WをLA層の画像として作成し、同様にLB層の画像としても、FB位置の画像からFW位置の画像を減算した画像image−ib−B−Wを用意する。こうして作成したLA、LB層の画像は、単一のフォーカス位置から作成する場合よりもドットとドットのない部分との濃淡差が大きくなりS/N比が高くなる。したがって、これらから上記と同様に差分画像データimage−subを作成すれば、よりS/N比の高いデータ再生が可能となる。
上記の効果は、ドットの記録条件や再生用光学系の特性にも依存するが、我々の試作したサンプルでは、1dBを超えるS/N比の改善が見られた。なお、FB位置で得られる画像とFW位置で得られる画像におけるドットのXY位置が、微妙にずれることがある。そのような場合には、差分をとる前に、ドット位置の差が小さくなるように位置の補正処理をすると、よりS/N比を上げることができる。
また、前記のように図1の実施例では、LA層上のドット配置とLB層上のドット配置のXY座標は異なっているので、層内のドット距離DX、DYに対して層間距離DZを適切に設定することによって、フォーカスを合わせた層のドットの像に対するもう一方の層上ドットのぼけた像の影響を少なくすることができる。このとき、LA層とLB層の間隔DZをどちらか一方が上記FB位置となり、もう一方がFW位置になるように設定しておくと、1つのフォーカス位置で一度に双方の明暗差が大きい、すなわち、信号量の大きい画像が得られるので撮像の能率を上げることが可能となる。
本実施例の再生装置の計算機PCで画像処理を行うことで、上記の処理の前に撮像した画像自体のS/N比を予め上げておくことも可能である。例えば、カメラの熱ノイズが問題になる場合には、シャッターを閉じた状態で、撮像時と同じ温度、露出時間でノイズ画像を撮像して、それを撮像画像から減算する所謂ダーク処理が有効である。その場合、撮像素子の温度を一定に保つ機能を備えた、冷却CCDカメラなどを用いると、より正確なダークノイズの除去が可能になる。
また、照明ムラや光学系の周辺減光などが問題となる場合には、ドットが記録されていない箇所を撮像して、ドット画像をその画像で除算する所謂フラット処理が有効である。上記のドットの画像、ダークノイズの画像やフラット処理のための画像は、複数枚を撮像して、その加算平均をとることで、更にノイズを減少することができる。
さらに、画像処理を施すことによりS/N比を向上することも可能である。例えば、ドットのZ方向の長さが対物レンズの焦点深度よりも大きいような場合には、焦点の合った画像に、ほかの部分のぼけた画像が重なっていることになる。このような、所謂ぼけ画像を、予め空間フィルタや周波数フィルタなどによる画像処理で改善しておくことはS/N比の改善に効果が大きい。ぼけ画像を改善する処理には、ウイーナフィルタや最大エントロピー法、シャープフィルタ、あるいはフーリエ変換して低周波成分を減じて逆変換するハイパスフィルタなどがある。これらを、処理時間や降下に応じて、適用すればよい。例えば、層内のドットピッチ2.8μm、ドット長30μmの1層サンプルを試作して、アンシャープフィルタと呼ばれるぼけ画像の改善に効果があるフィルタをかけたところ、S/N比率が、最大で8dB改善された。
なお、上記において、ドットの間隔と撮像素子のピクセル間の距離及び光学系の倍率に対して要求される関係及び一度に撮影できる記録領域などについて言及しておく。まず、一度に撮影できる媒体の領域は、撮像素子の大きさを光学倍率で割った寸法になる。例えば、5倍の光学倍率であれば、一度に撮像できる領域の縦及び横の寸法は、撮像素子のそれぞれ寸法の5分の1となる。
一方、媒体内部の層上のドット最小間隔を撮像素子のピクセル間隔の倍以上にしないとサンプリング定理より、最近接ドットを分離することが困難となる。例えば、最近接ドットの層内距離とピクセル間距離が等しい場合には、最低2倍の光学倍率が必要である。ただし、実際には、光学系の収差、媒体の厚みによる球面収差によるぼけ、あるいは、撮像素子の直前に配置されるローパスフィルタの影響、更には撮像素子としてカラーのものを使った場合には、通常は、4ピクセルで1つの画素になるようにしているので、その分倍率を上げる必要がある。
以上のことを考慮して光学倍率を適当な値、例えば、撮像素子上の画像におけるドットの最小間隔が、撮像素子の4ピクセル以上になるように決定する必要がある。なお、言うまでもないが、対物レンズには、最近接ドットの層内距離を分解できるNAをもったものを使用する必要がある。場合によっては、必要な倍率にすると撮像できる領域が記録領域の極一部となり、全体を撮像するための枚数が多くなることが問題になることも考えられる。その場合には、面積の大きな2次元撮像素子を使うのも有効であるが、価格が高くなるので、1次元の光センサを内蔵したスキャナを用いることもできる。1次元の光センサの方が、広い面積を撮像する場合には、より低コストで済むというメリットがある。
また、大きな2次元素子や1次元光センサを使う以外に、次のような方法を用いてもよい。2次元の撮像素子、あるいは1次元の光センサで撮像する場合に、撮像素子あるいは、光センサを、ピクセルサイズの数分の1だけずらして複数の画像を撮影して1枚の画像に合成する方法である。例えば、ピクセルピッチの半分ずつ移動させて撮影すれば、元々のピクセルピッチが半分になったのと同じ効果があり、半分の倍率で同じ解像度を得ることが可能である。その場合、撮像素子あるいは光センサではなく、被写体であるサンプルの方を移動させてもよいことはもちろんである。
最後に、図2の右側に記したフローチャートを用いて、図1の媒体に記録されたデータの再生手順の一実施例を説明する。まず、ステップ1では、撮影準備を行う。すなわち、照明を点灯しサンプルをセットした後、上記のダーク処理やフラット処理に必要な画像を取得して計算機PCの内部メモリに保存する。ダーク処理のためには、レンズに光が入らないようにして熱ノイズのみの画像を取得する。フラット処理用の画像は、サンプルのドットが記録されていない部分、例えば端に近い領域の画像を撮影するとよい。
なお、ダーク処理に必要な画像は、例えば、冷却機能のないカメラを用いる場合などでは、事前に撮影すると、ドット画像を撮影する時点の温度でのノイズとは異なる場合がある。そのような場合には、必要に応じてドット画像の撮影中に撮像すればよい。もちろんカメラの性能など必要に応じてダーク処理やフラット処理のどちらか一方、あるいは両方を省略してもよい。
次に、ステップ2では、XYステージを移動させて、サンプルのドット部分のimage−ia−Bを撮像する。対物レンズのフォーカスをZ方向に移動させながら、上記のように画像のエッジ成分と明暗をチェックすることで、image−ia−Bの画像を取得する。取得した画像は、計算機PCの内部メモリに保存する。LA層とLB層との区別は、Z方向の対物レンズの座標値から判断できる。取得した画像から、PCによる画像処理を通じてデータの再生を試みる。この時点で所望の再生ができれば、XYステージを移動させて、別のブロック領域における再生処理をステップ1から開始する。できないようであれば、ステップ3に進む。
ステップ3ではXYステージを移動させずに、サンプルのドット部分のimage−ib−Bを撮像する。取得した画像は、計算機PCの内部メモリに保存する。PCによる画像処理を通じてimage−ia−Bとimage−ib−Bとの差分画像を計算し、メモリに保存すると共に、これを用いてデータの再生を試みる。この時点で所望の再生ができれば、XYステージを移動させて、別のブロック領域における再生処理をステップ1から開始する。できないようであれば、ステップ4に進む。
ステップ4ではXYステージを移動させずに、サンプルのドット部分のimage−ia−Wを撮像する。取得した画像は、計算機PCの内部メモリに保存する。PCによりimage−ia−Bとimage−ia−Wとの差分画像を計算し、これを保存すると共にこれを用いてデータの再生を試みる。この時点で所望の再生ができれば、XYステージを移動させて、別のブロック領域における再生処理をステップ1から開始する。できないようであれば、保存してあるimage−ib−Bとの差分を更にとって再生を試みる。この時点で所望の再生ができれば、XYステージを移動させて、別のブロック領域における再生処理をステップ1から開始する。できないようであれば、ステップ5に進む。
ステップ5ではXYステージを移動させずに、サンプルのドット部分のimage−ib−Wを撮像する。取得した画像は、計算機PCの内部メモリに保存する。PCによりimage−ib−Bとimage−ib−Wとの差分画像を計算し、これを保存すると共にこれを用いてデータの再生を試みる。この時点で所望の再生ができれば、XYステージを移動させて、別のブロック領域における再生処理をステップ1から開始する。できないようであれば、保存してある(image−ia−Bとimage−ia−Wとの差分)画像と上記の(image−ib−Bとimage−ib−Wとの差分)画像との差分をとって、計算機PCに保存すると共に差分を更にとって再生を試みる。この時点で所望の再生ができれば、XYステージを移動させて、別のブロック領域における再生処理をステップ1から開始する。できないようであれば、今回再生を試みた領域のXYステージの座標と対物レンズのZ座標及びエラーフラグをPCの内部メモリに保存し、XYステージを移動させて、別のブロック領域における再生処理をステップ1から開始する。
ここでは、ステップ2、3で、ドットが暗く見えるフォーカス位置、FB位置で撮像したデータを用い、ステップ4、5で、ドットが明るく見えるフォーカス位置、FW位置で撮像したデータを用いたが、逆に、ステップ2、3でFW位置、ステップ4、5でFB位置で撮像したデータを用いても、同様な再生が可能である。
なお、上記で所望の再生ができたかどうかという判断は、例えば、誤り検出、あるいは誤り訂正が可能なコードとしてデータを記録しておき、誤りがなかった場合や、誤り訂正ができた場合に再生ができたと判断すればよい。
前記したように、図1の実施例を用いることで、特別な記録層をもたない透明な媒体に記録されたドットでも高いS/N比を得ることができる。
記録用レーザのエネルギーが低い場合などには、図2の実施例において撮像する際に、できるだけコントラスト、すなわち、ドットと、ドットのないところとの明暗差を上げる工夫が有効な場合がある。そのような場合に有用な一実施例を図3に示す。
本実施例の光学系は、図2の実施例において、対物レンズOB−LENSと、結像レンズIM−LENSとの間に設置して使用する。図2の実施例は、所謂無限遠補正型の顕微鏡の光学系配置になっているので、無限遠光学系の利点としてよく知られているように対物レンズと結像レンズの間をある程度任意の距離に設定することができる。このため、図3のような追加の光学系を接続チューブCONNECTOR内部に挿入するのに適している。
図3において、レンズLENS−A、LENS−B、LENS−Cの光軸は、対物レンズOB−LENSや結像レンズIM−LENSの光軸と一致している。図では、原理を理解しやすくするために、対物レンズや結像レンズを含めて、全てのレンズを1枚で描いているが、必要に応じて複数枚、複数群で構成することは、もちろんである。レンズLENS−AとLENS−Bの役割は、記録媒体によって生じる球面収差の補正をした上で、レンズLENS−Cの焦点位置に実像を結像することにある。
前述のようにドットDOTは、透明媒体Mの内部にレーザ光を集光して形成される。記録媒体は、空気より高い屈折率をもつため、その内部にあるドットを観察するには、金属の表面を観察するように設計された汎用の工業用顕微鏡の対物レンズやプレパラートの薄いカバーガラスを通して観察するように設計された汎用の生物用顕微鏡の対物レンズを利用したのでは、鮮明なピントを結ばない場合がある。すなわち、ドットの1点から出た光線は、媒体表面で、媒体と空気との屈折率の差による屈折を起こしてから対物レンズに入射する。
本来、観察物体の1点から出た光線は、対物レンズを通過後、結像レンズの間では平行な光束となるべきであるが、上記によって、光軸から離れた位置で対物レンズから出てくる光は、広がりをもつことになる。この収差(媒体による球面収差)をレンズLENS−A及びLENS−Bで修正する。すなわち、レンズLENS−AとLENS−Bによって、対物レンズから出た光線を周辺部ほど収束することによって、上記の媒体由来の収差を補正する。
媒体の材質が常に同一で屈折率が変わらず、なおかつドットの深さが一定であれば、1枚の非球面レンズを用いれば収差の補正が可能であるが、ドットが複数の層に記録されていて、深さが異なる場合や媒体の材質が異なる場合には、収差の量が変化するので、本実施例のように2枚、あるいはそれ以上の複数のレンズを用いて、その間隔を変更できるようにすることが有効である。
なお、上記の媒体由来の収差やそのほかの一般的な収差を補正し、レンズLENS−Bによって結像される実像を良質にするためのレンズの設計については、光学設計の知識を有する者であれば、照明の光学的性質や媒体の屈折率、ドットの深さ、対物レンズの特性を与えれば、設計できるので、ここでは、その詳細は省略する。
図中に点線で示したLENS−Bによって結像された実像面の位置IM−LOCATIONとLENS−Cの距離は、レンズLENS−Cの焦点距離に設定する。これにより、レンズLENS−Bで結像された実像が、平行光束に変換されてマスクMASKを透過して結像レンズIM−LENSに入射する。
マスクMASKは、レンズLENS−Cから、その焦点距離fcだけ結像レンズ側に設置している。マスクMASKは透明な薄い板状の光学ガラス製の平行平板であり、中心付近の領域AREA−Cのみに、透過光を遮蔽あるいは減光するように作られている。
上記のように一部で透過光を遮蔽、あるいは吸収する手段を実現するには、例えばマスクMASKのAREA−Cの部分に、薄い金属を蒸着すればよい。上記のマスクMASKの位置は、レンズLENS−Cについて、所謂フーリエ面の位置に相当する。
上記のように、レンズLENS−Cの一方の焦点面には、対物レンズが観察している物体の実像ができているので、上記の領域C−AREAで遮蔽あるいは減光される画像情報は、上記実像フーリエ成分のうちの低周波成分である。
したがって、結像レンズIM−LENSを透過して撮像素子IM−CHIP上に結像する実像では、空間的に高い周波数が強調される。このため、ドット部分と周辺との屈折率の差が小さい場合でも、屈折率の境界のエッジが強調されてドット画像のコントラストが向上し、信号量を大きくすることができる。
図3には、記録媒体M内部のドットのうち、光軸に近いドットからの光路を2本の折れ線で示した。なお、マスクMASKは、対物レンズあるいは結像レンズのフーリエ面に設置してもよいが、一般に対物レンズや結像レンズでは、それらを構成するレンズ群の間にフーリエ面が存在することが多い。そのためマスクを挿入することが困難である。図3の実施例では、対物レンズと結像レンズの間で一旦実像を作る光学系を挿入し、そのレンズのフーリエ面にマスクを設置しているので、このような問題を回避できる。
前述のように、図2の対物レンズと結像レンズは、無限遠補正型の配置を成すために、両者の間隔は、ある程度自由度が大きく、図3の実施例との組合わせに適している。このように図3の実施例によれば、媒体に由来する収差が補正できるだけではなく、ドットのコントラストの向上を図ることもできる。
この結果、記録ドットの層の数を増加させたり、より深い位置に記録して、記録した情報の損傷が起きることを回避したり、あるいは記録時のエネルギーが低く、ドットの屈折率の変化が小さい場合でも、S/N比の高い再生が可能となる。しかも、汎用の顕微鏡対物レンズや結像レンズとの組合わせが容易なため、低いコストで、再生装置を構成できるというメリットがある。なお、上述のレンズLENS−Cも図3では簡単のため1枚1群で示したが、収差の発生をより少なくするために、必要に応じて複数群、複数枚のレンズで構成してもよいことはもちろんである。
図4の実施例は、図1の実施例を複数の層に拡張した実施例であり、LA−1、LB−1、LA−2、LB−2、・・・、LA−n、LB−nの合計n組のサブ層が記録されている。本図においても、わかりやすくするために図1と同様に、各々の層の一部のXY領域に記録された4×4ドットの配列と対応するデータ行列Dを示した。図の左側にサブ層のドット配列、右側に対応するデータ行列Diを示している。
なお、それぞれの層のドット配列上に層名とZ座標を示した。LAi層のZ座標をZAiとし、ペアとなるサブ層LAiとLBi層のZ方向の距離をDZiとする。また、LAi層とLAj層のZ方向の距離をDZijと記すこととし、特に断らない限り最近接のLA層、すなわち、LAiとLA(i+1)のZ方向の距離を示すこととする。
また、層内のドットピッチのうち、X方向については、DXi、Y方向についてはDYiと表記する。図中では、DXiとDYiの大きさを等しく描いている。このようにすると、図1の実施例の説明で述べたようにLAi層とLBi層を合わせたドットの面内密度を1/F2と最大にすることができる。
上記DZiとDZij及びDXi、DYiの値は、iによらず一定としてもよいし、iによって変化させてもよい。例えば、層の媒体表面からの距離によって、記録あるいは再生時に収差などの問題が生じないような場合であれば、iによらず一定にすることによって、記録再生時の対物レンズあるいは記録媒体の移動距離を一定にできるのでそれらの制御が簡便になるというメリットがある。
一方、記録あるいは再生時に媒体の表面から層までの深さが大きいほど、収差の影響も大きい場合には、これらの値の全てあるいは、少なくとも一部を層の深さによって大きくすると記録・再生のS/N比を上げることができるなどのメリットがある。
なお、上記DZiの大きさとDZijの大きさの関係は、以下のような考えに基づいて設定するとよい。図1と同様に、ペア層の距離の下限は、対物レンズの焦点深度であり、層内のドットの最小距離にほぼ等しい。だが、上限はペアが1つの場合とは、異なる。ペアが1つの場合は、ペア層の距離を非常に大きくすれば、どちらかにピントを合わせたときのもう一方の層からの影響は小さくできるため、上限は特にない。しかし、本実施例では、ペア層が複数あるため、上限が存在する。
話をわかりやすくするために、LA1層とLB1層のペアとLA2層とLB2層のペアの2つのペアについて説明する。媒体の表面に近い順に、LA1層、LB1層、LA2層、LB2層が記録されているとする。LA1層とLA2層のZ方向の距離DZ12を一定にしたまま、LA1層とLB1層との距離Z1を大きくしてゆくと、LB1層は、LA2層に近づいていく。その結果、LB1層にピントを合わせた画像に対して、LA2層の与える影響が、LB2層の与える影響より大きくなっていく。隣接するペア層LA2層とLB2層のドット配置は、相補的になっており、両方からの影響が、ほぼ等しければ、LB1層の画像に与えるノイズはキャンセルされるが、片方からの影響が大きいと、キャンセルされずにノイズとして影響を与えてしまう。どの程度まで、許容できるかは、再生の光学系や記録品質、再生時のS/N比の許容程度にもよるが、我々が試作したサンプルのうち、DZijの50%までZ1を大きくしたサンプルにおいても、S/N比は、14dB以上であった。
なお、このサンプルは、層内のドットの最小ピッチが4.4μmであり、DZijは120μm、DZiを60μmとしたものであった。上記でのS/N比の定義は、信号量に相当する‘1’と‘0’の平均の明暗差を、ばらつき、すなわちノイズに相当する標準偏差の2乗平均で割って、10を底とする対数をとって、20倍したものである。したがって、14dBであるということは、信号量に対するノイズが5分の1以下であることを示している。上記のことから、多層サンプルにおいては、通常は、DZiの上限は、DZijの50%と考えてよいと思われる。
このため、複数の層を用いた本実施例においては、図1の実施例と同様にペア層を設けることにより、S/N比を上げることが可能となる。すなわち、複数の層を記録した媒体Mにおいて、再生時のS/N比率を上げることができ、より高い信頼性、言い換えればより低いエラー率でデータの再生が可能となる。
本実施例の効果を試作サンプルで確認したところ、注目層の前後それぞれ2層を相補的なドット配置のペアにすると、注目しているペア層の片方の画像を用いるだけで、S/N比が最大で8dB上がった。
また、注目している層の画像と、その層とペアを成す層の画像の差分をとることで、更に3dB程度S/N比を上げることができた。なお、差分をとる場合の係数は、注目層から、ペア層の画像の15%程度を減じたときに最もS/Nが高かった。
図1及び図4の実施例では、ペアになるサブ層LA(LAi)層とLB(LBi)層のドット配置を合わせると格子状にドットが並ぶようになっていた。前述のように、この場合、ドット加工の最小値をFとしたときに、LAi層とLBi層を合わせた面内のビット密度は1/F2となる。
図5に示した実施例では、ドットの配置を僅かに変えることにより、ドットの最小加工ピッチをFとしたまま、層内のビット密度を図1や図4の実施例の値である1/F2より小さくできる。図示したように同一行(図面の左右方向)のドットの最小間隔をFとして、1つの行と隣接する行の間隔は、(0.5√3)F、すなわち、およそ0.87Fになっている。
図におけるLAi層とLBi層のドットを合わせると、全てのドットが正三角形の頂点になるような配置になっている。一辺がFの正三角形の面積は、(0.25√3)F2であり、内角の和は180度であるので、1ビットあたりの占有面積は、上記正三角形の倍の面積になる。すなわち(0.5√3)F2となり、およそ0.866F2となり、図1及び図4のような格子状の配置に比べて13.4%程度の高密度を実現できる。
なお、図5では、LAi層とLBi層の1組の層配置だけを示したが、図1のようにペアとなるLA層とLB層の1組だけを記録することも、図4のようにLA1、LB1からLAn、LBnまでn組の層を記録して記録容量を上げることも可能であることは言うまでもないし、それぞれにおける前述のような信頼性の向上効果についても同様である。
なお、図4の実施例あるいは、図5の実施例を複数の層にした場合には、前述のようにペアとなるサブ層を合わせると全てのドットが最小ピッチで均等に並ぶので、フォーカスを合わせた注目層のドット位置にほぼ一様なノイズが重畳され、それによって層間クロストークが削減できるというメリットがあった。
しかし、体積密度を大きくしたいなどの目的により、層の間隔DZijを小さくした場合などでは、注目するサブ層からのノイズが、一様として無視できないケースもありえる。そのような場合には、図6に示した実施例が有効である。
図6には、複数層のうち、奇数番目の層(2k−1)層と、偶数番目の層(2k)層について、それぞれのサブ層のドット配置と記録したデータ行列を示した。本図においても、図4と同様に4×4ドットの配置のみを示している。
本実施例でも、図4の実施例と同様に、ペアとなるサブ層LA(2k−1)とLB(2k−1)層、あるいはLA(2k)とLB(2k)層のドット配置は、‘1’と‘0’に対応している。このため、図4の実施例のメリットである、信号量の増加、クロストークノイズの相殺のメリットをもつ。図4と異なるのは、ドット配置の図に点線の補助線として示したように、奇数層のドットが配置される格子点と、偶数層のドットが配置される格子点の位置がずれていることである。
このため、注目層にフォーカスを合わせた場合に、その前後層のドットのぼけた画像が、注目層のドットとドットの間の空白部に重なり、注目層のドットのフォーカス像へのクロストークが、更に減少することが期待できる。その結果、図4の実施例に比べて、層間距離DZijを小さくできるため、体積密度が上がり、同じデータ量を記録する媒体の厚さ及び面積を低減できる。あるいは、同一の体積の記録媒体により多くのデータを記録できる。
図6では、図4のような格子状の配置に関する実施例を示したが、ほかの様々な配置、例えば、図5のような正三角形状の配置や後述の図7及び図8のようなドットが曲線状に並んでいる場合にも同様に適応できる。それらについても体積密度の向上効果が期待できる。
図7及び図8は、図4の実施例において、ドットの配列を直線状ではなく曲線状にした場合の実施例である。これらは、媒体を回転させながら、ドットの記録を行う場合に適した実施例である。図7の実施例では、層内のドットは、同心円状に配置されている。図7には、わかりやすくするために、4つの同心円の一部だけを拡大して示した。図示したように、媒体は、従来の光ディスクと同様に中心に小さな穴の空いたドーナツ状をしており、この中心の小さな穴は、記録時や再生時に媒体を回転させる際に、媒体を固定するために利用することができる。
なお、図7及び図8では、LAi層とLBi層の1組の層配置だけを示したが、図1のようにペアとなるLA層とLB層の1組だけを記録することも、図4のようにLA1、LB1からLAn、LBnまでn組の層を記録して記録容量を上げることや、図6のように奇数層のドットが配置される格子点と、偶数層のドットが配置される格子点の位置をずらすことも可能であることは言うまでもないし、それぞれにおける前述のような信頼性の向上や体積密度の向上についての効果も同様である。
これまで述べてきたように、1つの記録層を1組の近接した2つのサブ層LAiとLBiによって構成し、いずれか一方の層のドットは、記録したいデータ‘1’に対応して、もう片方の層のドットは‘0’に対応するように構成することによって、1つの層からの再生信号の増大と、近接層からのクロストーク削減の2つの効果が期待できる。
この場合、1つの層を2つのサブ層から構成するので、例えば、大量の記録媒体を製造するような場合には、記録時間の増大が課題となる可能性も考えられる。その場合は、全ての層を2つのサブ層に分離せずに、層間クロストークが許容できる総数k(kは2以上の自然数)ごとにサブ層に分離するとか、k層ごとに何も記録しない層を挿入して層間距離を大きくする、あるいは後述するように、k層ごとにドットが最密に重点されている層を設けることなどの対策が可能である。
層内のドット間隔を余りつめる必要がない場合には記録、再生時に媒体表面からのドットの深さによって発生する球面収差などによるぼけ量がある程度大きくても許容できるので、媒体の深部まで利用して、単純に全ての層をサブ層に分離せずに、層間距離を十分に離すことも有効である。
いずれの場合でも、全ての層を2つのサブ層に分離するよりも、同じデータ量に対して記録するドットの数が減少するので、記録時間の短縮効果がある。ただし、サブ層に分離しない層では、‘1’あるいは‘0’のどちらか一方からの信号しか利用できないので、層間クロストークノイズが許容できたとしても、信号量の点で不足する場合がありえる。
その場合は、前述したように、図2若しくは図2と図3を組合わせた再生装置の実施例において、対物レンズのフォーカスを媒体内部の注目層付近に合わせてフォーカスを多少前後すると周辺に比べてドット部分が暗く(黒く)見えるフォーカス位置、FB位置と、周辺よりドットが明るく(白く)見えるフォーカス位置、FW位置が存在することを利用して、信号量を増大させることが有効である。
すなわち、ドットが暗く見えるフォーカス位置、FB位置で注目層のドットパターンの画像を撮像し、画像データを保計算機PC内部のメモリに保存する。続いて、ドットが明るく見えるフォーカス位置、FW位置で注目層のドットパターンの画像を撮像し、画像データを保計算機PC内部のメモリに保存する。
このようにして得た2つの画像データを上記メモリから読み出して計算機PCでの差分を計算することで、サブ層に分離しない場合でも、ある程度信号量を増加させることが可能である。
図9を用いて、上記で述べた対策のうち、複数層ごとにドットが最密に充填されている層を設ける実施例を説明する。図9において、LAi(iは自然数)は、データ行列Diのうち、‘1’に対応する箇所にだけドットを記録した層である。
本実施例では、LAi層とペアとなるサブ層を設けないかわりに、適当な層数ごとにLCi層を設ける。LCi層では、全てのデータを‘1’として、ドットを記録している。この層は、データを記録するための層ではなく、サブ層を使わずにクロストークを軽減するための層である。LCi層から発生するクロストークノイズは、ドットの最小ピッチに等しい空間周波数をもつ。
したがって、LCi層に隣接する対物レンズに近い層を観察する場合には、LCi層とLCi層より照明に近い複数の層からのクロストークノイズは、ドットの最小ピッチに等しい空間周波数成分が最も強くなるために、観察層では、ほぼ一様なクロストークノイズとなる。
さらに、対物レンズに近い層を観察する場合には、その層とLCi層との間にあるデータ層からのクロストークノイズが重畳されるが、その総数が少ない場合には、LCi層がない場合に比べてクロストークノイズが軽減される。したがって、LCi層を、適当な層数ごとに設けることによって、クロストークノイズを、許容値以下に抑制できることが期待できる。
このように、図9の実施例によれば、全ての層を2つのサブ層に分離する場合と比較して記録するドットの数を少なくしたまま、ある程度クロストークノイズを軽減することが期待できる。
なお、本実施例では、LAi層にて、データ行列Diのうち、‘1’に対応する箇所にだけドットを記録した場合を説明したが、‘0’に対応する箇所だけにドットを記録し、LCi層にて全てのデータを‘0’としてドットを記録しても、同様の効果を奏する。
以上、石英ガラスなどのガラス類、アルミナや透明なセラミックスやプラスチックなどの内部に短パルスレーザを集光照射して形成した微小変性領域を利用してデータを記録する記録媒体において、再生時に高いS/N比を与えるための実施例を説明してきた。
本発明では、図2の実施例に示したように、内部に撮像素子をもったカメラで撮影した画像の濃淡よりデータを読出す。このため、図2及び図2と図3を組合わせた光学系で、注目層の拡大画像を撮影する必要がある。
前述したように、サンプリング定理より、撮像素子上にできる層内のドットの実像における最小ピッチが、撮像素子を構成するピクセルのピッチの2倍以上にならなければならない。これは理想的な場合であり、一般的なカラーカメラなどを用いた場合には、4ピクセルで1画素を構成するために、更に最低拡大率は大きくしなければならない。
ドットの記録位置のばらつきやクロストークノイズ、光学系の収差、記録層と光軸の傾きなどによって、上記の比率は少なくとも4倍以上、できれば10倍程度あることが望ましい。例えば、ドットピッチが2μm、ピクセルピッチが4μmであるとすると、必要な拡大率は20倍となる。
一度に撮像できるサンプルの面積は、撮像素子の面積を、拡大率で割った面積になる。例えば、撮像素子が12×6mmであるとすると、拡大率20倍では、600μm×300μmの領域を一度に撮影できる。これは、記録媒体の一部であるため、記録するドットには、一定面積ごとに、目印となるドット(以下合わせマークと呼ぶ)があると撮像視野のアラインメントに有効である。
また、媒体の撮影領域を移動した場合、記録品質などの条件が変わり、得られた画像の濃淡から記録されたビットが‘1’であるか‘0’であるかの判定をする条件も最適化する必要がある。そのためには、記録データ以外に、正解のわかっているテストデータを一定間隔で、層内に記録しておくことが有効である。
本実施例は、ユーザーデータが記録された前記ドットの外縁部に、位置合わせマークを設けたものである。合わせマークとテストパターンを含んだドット配置の実施例を図10に示す。図10では、図1、あるいは図4に示した格子状のドット配列を例にとったが、同様なことは、図7や図8のような同心円あるいは渦巻状のドット配列でも容易に実現できる。
図10では、層全体を4×4の16のブロックに分割し、1つのブロックには、4×4ビットを記録する例を示した。ここでは、わかりやすいようにブロック数とブロック辺りのビット数を少なくして説明するが、本実施例は、この数に限定を設けるものではないことはもちろんであり、例えば層辺りのブロック数を128×128ブロックとして、ブロック辺りのビット数を64×64などと大きくすることが可能である。
これらの大きさは、撮像素子のピクセルピッチ、素子のピクセル数、撮像倍率、ドットピッチ、記録媒体の大きさなどを考慮して適宜設計すればよい。なお、スペースの関係で、図10には、LAi層のドット配置のみを示したが、サブ層としてLBi層を設ける場合には、この反転パターンを、Z方向、すなわち媒体での深さ方向にΔZiだけ変えた位置に記録すればよい。
前述のように、図10は、16個のブロックをもつ実施例である。このうち、最外周の12個のブロックは、上記のテストパターンであり、中心部の2×2ブロックが、データを記録したデータブロックである。図には、3つのブロックのドット配列を示している。ブロックLAi−DATA−BLKijは、データブロックである。本ブロックのドット配置の4隅にあるドット、MARK1〜MARK4は、上記アラインメントのための合わせマークである。これらのマークは孤立しており、データ部分との識別が容易である。撮像時には、このマークを検出して、撮影視野の中での媒体の位置を調整することが可能である。
また、撮像した画像からデータを抽出する際には、これらのマークのXY座標を基に、撮像素子上のブロック画像の位置、回転角度およびドット画像のピッチと撮像素子のピクセルピッチとの関係等を算出してデータ部分のドットが存在する可能性のある位置のXY座標を計算することにも利用できる。なお、図に示したように左上の合わせマークMARK1では、右に2個、下に1個の補助のドットを形成して、ほかの合わせマークMARK2〜MARK4と容易に区別できるようにしている。MARK1が左上にあり、なおかつMARK1の右側の補助ドットが2個見えるような方向にして撮像すれば、媒体の裏表や90度回転しているかどうかなどを判別することができる。
なお、図にはLAi層のブロックの合わせマークのみを示したが、LBi層のブロックに設ける合わせマークは、LAi層のものと反転関係のものにしてもよいし、同一のものにしてもよい。あるいは、LAi層だけに設けてもよい。LBi層のブロックに設ける合わせマークをLAi層のブロックの合わせマークと反転関係のドット配置にする場合には、データ部分も含めて、LAi層のドットのない部分にドットを記録することで、LBi層のブロックのパターンが簡単に生成できるという利点があるし、合わせマークも含めて反転関係にあると合わせマーク部分から発生するクロストークノイズの影響がキャンセルされるという利点もある。
LAi層とLBi層のブロックの合わせマークを同一とする場合には、画像から、合わせマークを検出する方法を、LAi層とLBi層のブロックとで共通にできるので、検出精度などに差がでにくいというメリットがある。また、記録時にLAi層とその直下にあるLBi層のブロックのXY方向の位置を十分に高い精度で制御できる場合には、LAi層のブロックのみに合わせマークを設けることにより、LBi層のブロックにおける合わせマークの検出が不要であるために、再生速度が、その分高速にできるという利点がある。
なお、図10では、上記のように説明を簡単にするためにブロックを構成するドット数の少ない実施例を示したが、前述のように、ブロックを64x64ドットなど大きなものとする場合には、合わせマークを構成するドットの数を適宜多くすることが可能であることはもちろんである。
その場合には、ブロック中の四隅におけるドットの位置やピッチの変化をより性格に検出することが可能となる。また、合わせマークの形状を矩形あるいは、その他の形状にしたり、あるいは、記録の精度が高く、ドット位置のばらつきが小さいなどの場合には、ブロックの4辺全てではなく、その一部のみに合わせマークを設けるなど様々なバリエーションが可能である。一部の辺だけに合わせマークを設ける場合には、隣接するブロックとの間に、両方のブロックの合わせマークが並ぶことを回避できるためブロック同士の距離をその分小さくでき、その結果、実質的な記録密度を向上する効果がある。
図中に示した3つのブロックのドット配置のうち、下の2つは、テスト用のブロックである。左上のLAi−LEARN−BLK11は空白パターンであり、LAi−LEARN−BLK21は、4×4のドット領域の左2列にドットが並び、右の2列が空白のテストパターンである。これらのテストパターンでは、XY方向の2次元の空間周波数を様々に変えたものを用意すると便利である。
このように、単純なテストパターンでは、記録してあるドットパターンが容易に類推できるためこれらのテストパターンで高いS/N比が上がるように画像処理やサンプリング時のパラメータを調整することが可能である。特に、サンプリングによって得られたアナログ値を‘1’か‘0’を判別するしきい値の設定をこれらのテストパターンの結果から決定するのは有効である。
図11は、図10のように記録されたデータの再生を図2若しくは図2と図3を組合わせた再生装置で行う場合の手順の一実施例を示したものである。以下、これを用いて、データの再生手順を示す。
ここでは、図2に示した再生のフローにおけるステップ2を例に、図11を用いて、図10における合わせマークやテストパターンの使用方法を説明する。
前述のようにステップ2では、LA層の画像をFB位置で撮像して再生を試みる。なお、ステップ3以降もステップ2と同様にして実行できるので説明を省略する。
ステップ0におけるフラット処理のための画像及びダーク処理のための画像は、前述の方法で取得済みであると仮定する。フラット画像からは、ダーク画像を減算して熱ノイズを除去しておく。なお、フラット画像の取得には、空白パターンであるLAi−LEARN−BLK11を利用できる。
ステップ2では、データブロック ブロックLAi−DATA−BLKijのFB位置、すなわちドットが暗く写るピント位置の画像を取得するが、その前にまず、データブロックの周辺にあるテスト用のブロックを用いて、2値化のしきい値などを求める。テストパターンLAi−LEARN−BLK21を視野に導入し、FB位置に対物レンズの焦点を合わせて画像を撮像する。必要に応じて複数枚数の撮像を行い、加算平均することでノイズを低減しておく。
次に、得られた画像からダーク画像を減算して、フラット画像で除算することで、熱ノイズの除去と、照明や撮像素子の画素の感度ばらつきの影響をとり除く。その後、テストブロックのドット配置の4隅にあるドット、MARK1〜MARK4を検出し、その画像上での座標を計算して画像上でのドットピッチを算出する。
続いて、画像の濃淡値のサンプリングを、算出したドットピッチを用いて行う。撮像に用いるカメラが、8ビット階調のモノクロカメラであれば、サンプリング値は、0から255までの256段階のいずれかの値となる。ここで、ドット部分のサンプリング値と空白部分のサンプリング値から、前述したS/N値を算出しておく。
次に、複数のしきい値でサンプリング値の2値化を行い、テストパターンのデータが正しく再生できるような、しきい値を求めておく。このテストパターンLAi−LEARN−BLK21は、4×4のドット領域の左2列にドットが並び、右の2列が空白のテストパターンである。したがって、FB位置で撮像して正しい2値化が行われると、左2列が黒、右2列が白となるはずである。ほかのテストパターンでも同様な再生を行い、正しく2値化が行われることを確認する。なお、全部のテストパターンでうまくいかない場合は、S/N比が数デシベル(dB)と極端に低いものを除外して、しきい値を決定する。
上記のテスト再生が終了したら、データブロックの再生を始める。1つのデータブロック ブロックLAi−DATA−BLKijを視野に導入し、FB位置に対物レンズの焦点を合わせて画像を撮像する。必要に応じて複数枚数の撮像を行い、加算平均することでノイズを低減しておく。
次に、得られた画像からダーク画像を減算して、フラット画像で除算することで、熱ノイズの除去と、照明や撮像素子の画素の感度ばらつきの影響をとり除く。その後、データブロックのドット配置の4隅にあるドット、 MARK1〜MARK4を検出し、その画像上での座標を計算して画像上でのドットピッチを算出する。
続いて、画像の濃淡値のサンプリングを、算出したドットピッチを用いて行い、テスト再生で求めたしきい値で2値化し、それを元に‘1’‘0’のデジタルデータを再生する。エラー訂正可能かどうかをチェックして、可能なら、次のデータブロックの再生に移り、訂正不可能であれば、同じデータブロックで、ステップ3の再生を行う。
このように、図10の実施例によれば、再生したいデータブロックに近接したテストブロックを利用して、しきい値を決定できるので、より信頼性の高い再生が可能となる。
なお、上記において、画像の濃淡値のサンプリングを行う際に、合わせマークを利用して算出したドットピッチを用いて、一定の間隔でサンプリングを行うと、記録時のドット毎の位置のばらつきや、ドットの形状ばらつきに起因するドット画像内部の濃淡のばらつき、あるいは、再生用の画像を撮影する光学系の収差の影響による視野の中心部と周辺でのドット画像の間隔の違いなどから、S/N比が上がらないことがあり得る。そのような場合には、算出したサンプリング位置に最も近接した画素(ピクセル)の値だけではなく、その周辺の画素の値も参照してサンプリング値を決定することが有効である。どの程度の範囲の画素を使うのが適切かは、上記のばらつき要因によって変化するが、例えば、算出したサンプリング位置に最も近接したピクセルを中心として、算出したドットピッチの半分以下の距離の画素を参照するとよい。
我々の試作サンプルを用いた評価例では、後述のような方法を用いて効果があった。
このときの媒体は、石英ガラスであり、観察に用いた光学系の倍率は20倍である。対物レンズの開口数は、表記がないもののおおよそ0.6程度と思われる。ドットのZ方向の長さは、約30μm、層内のドットピッチは2.8μmで、ドットの配置は、格子に並んだ1層サンプルを用いた。
また、撮像に用いたカメラは8ビット階調のカラーカメラであり、カメラの撮像素子の画素のピッチは、3.9μmで、撮像素子上のドットの画像のピッチは、約14画素ピッチに相当していた。このような条件の下で、算出したサンプリング位置を中心にプラスマイナス4画素の矩形の範囲(9x9画素)の画素の最小値をFB位置でのサンプリング値として採用したところ、一定間隔でサンプリングを行った場合に比べて、S/N比が3dB程度上昇した。また、FW位置では、ドットが明るく見えるために、最大値を採用したところ、2.5dBの改善が見られた。
なお、上記の評価では、画素毎の濃淡値のばらつきの影響を削減するために、サンプリング値を決定する9x9画素の領域全体で最小値や最大値を取るのではなく、上記の領域を複数の小領域(3x3画素)に分割して、分割した小領域で平均値を取った上で、それらの最小値あるいは最大値を求めた。場合によっては領域全体での最大値や最小値あるいは単に平均値をサンプリング値として採用した方がよい結果が得られる場合もあり得る。どの程度の範囲を用いて、どの方法を用いると最適化は、前述のテストブロックでS/N比あるいはエラー率を試算することで決定することが可能である。
本発明によれば、頑丈な記録媒体の内部にデータを密閉して保存することができるため、貴重な映像や文献あるいは文化財のデータをデジタルデータとして非常に長期間に渡って保管するのに適している。
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更や工夫が可能であることは言うまでもない。
本発明による情報記録装置は、メモリセルを3次元に配置することによる記録密度の向上を可能とする。また、記録領域MAを固体である記録媒体Mの内部に封印しているので、情報の頑健かつ長期的な保存が可能となる。
以上から、本発明は、例えば、長期的な保存が必要な公文書や文化財に関する画像、音声、テキストデータの保存、あるいは絶滅が危惧される稀少生物の遺伝子情報などを保存し、後世に伝えるなどの利用が可能である。
なお、本発明における記録媒体に、作成日時、記録内容を示すタイトル、作成者や読出し方法などを含むメタデータを付加しておくと、作成されてから長期間が経過しても記録内容に関する情報がわかって便利である。このメタデータは、上記実施例の方法で読出すことのできる形式で記録媒体に書込んでおいてもよいし、容易に判別できるようにわかりやすい文字パターンや模様として記録してもよいことはもちろんである。
なお、本発明は、透明媒体の内部にデータを記録した場合の課題に対して特に有効であるので、上記実施例では、それを中心に説明を行ったが、専用の記録層をもつ記録媒体など、ほかの記録媒体に適用した場合にも、再生時のS/Nを上げることに効果があることは言うまでもない。