以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
本発明は、例えば図1のブロック図に示すような構成の変位検出装置100に適用される。
この変位検出装置100は、変位検出用の照射光Laを対物レンズ5を介して測定対象物の被測定面TGに照射して、上記被測定面TGによる反射光の光量を検出する非接触センサ10による検出信号から、演算処理部20により生成されるフォーカスエラー信号SFEを用いて、サーボ制御部30によりフォーカスサーボをかけて、アクチュエータ40により対物レンズ5の焦点位置が被測定面TGとなるように上記対物レンズ5を変位させ、上記フォーカスサーボによる対物レンズ5の高さ位置の変位を変位量測定部50により被測定面TGの変位として検出するものであって、非接触センサ10、演算処理部20、サーボ制御部30、アクチュエータ40、変位量測定部50、信号処理部60、制御部70、表示部80などからなる。
この変位検出装置100において、上記対物レンズ5は、所定の開口数を有するレンズ等からなる光学素子であり、その焦点位置を被測定面TG近傍に合わせられるように、上記アクチュエータ40によって移動される連結部材41の先端に設けられたレンズ保持部42により保持され、被測定面TGに対して接近及び離間するD1,D2方向に移動可能に構成されている。被測定面TGに入射される照射光Laは、この対物レンズ5によって上記被測定面TG近傍に集光される。
ここで、上記アクチュエータ40には、例えば可動コイル40Aと永久磁石40Bからなるボイスコイルモータが使用されている。ボイスコイルモータは、可動コイル40Aに供給される電流に対して直線的に変位するモータであるから、被測定面TGの変位に対する直線性が高い。したがって、可動コイル40Aに供給される電流を測定することにより簡易に変位量の検出も行うこともできる。なお、上記アクチュエータ40は、ボイスコイルモータに限られず、DCサーボモータ、ステッピングモータあるいは圧電素子等を用いることもできる。
上記対物レンズ5の高さ位置の変位を検出する変位量測定部50は、リニアスケール51と検出ヘッド52からなる。リニアスケール51は、目盛51Aが所定ピッチで形成されたものであり、連結部材41の所定位置に取り付けられている。上記リニアスケール51には、目盛51Aの略中央位置に原点51Bが設けられる。
ここで、リニアスケール51の目盛51Aは、対物レンズ5の光軸Oaの延長線上に合わせて取り付けられている。言い換えれば、リニアスケール51が対物レンズ5の光軸Oaに対して同軸(インライン)上に配置されていることになる。なお、リニアスケール51としては、例えば、光の干渉縞を目盛51Aとして記録した光学式スケール(ホログラムスケール)を用いることができる。光学式スケールに代替して、磁気式スケールまたは容量式スケールを用いても良い。
検出ヘッド52は、例えば格子干渉計からなり、図示しないシャーシ等に固定され、リニアスケール51の目盛51Aを読み取って目盛読み取り信号Svを生成し、生成した目盛読み取り信号Svを信号処理部60に供給する。被測定面TGが変位したときには、対物レンズ5の焦点位置fを被測定面TGに保持するように対物レンズ5とリニアスケール51とが同一方向に同一距離だけ変位するので、検出ヘッド52は、この変位量をリニアスケール51の目盛51Aから読み取る。
上記信号処理部60は、上記変位量測定部50の検出ヘッド52から出力された目盛読み取り信号Svに基づいて被測定面TGの変位量を算出する。そして、この信号処理部60は、制御部70からの制御信号SSに基づいて所定の画像信号処理を行い、算出した変位量に基づく画像信号Siを生成して表示部80に出力する。上記信号処理部60により生成された画像信号Siは、図示しないデータロガーに記憶しても良い。
上記表示部80は、例えばLCD(Liquid Crystal Display),PDP(Plasma Display Panel)またはEL(Electro Luminescence)等から構成される。この表示部80は、信号処理部60から出力された画像信号Siに基づく表示を行い、表示画面上に被測定面TGの変位を表示する。これにより、この変位検出装置100では、容易に自動計測が可能になる。
上記制御部70は、上記サーボ制御部30および信号処理部60の動作を制御するものであり、例えばCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read-Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などから構成される。
そして、この変位検出装置100において、上記非接触センサ10は、光源1、第1のコリメータレンズ2、分離光学系3、ミラー4、対物レンズ5、第2のコリメータレンズ6、非点収差発生部7、受光部8などを備え、上記光源1、第1のコリメータレンズ2、分離光学系3、ミラー4、対物レンズ5によって上記変位検出用の照射光Laを測定対象物の被測定面TGに照射する照射光学系10Aが構成され、また、上記対物レンズ5、ミラー4、分離光学系3、第2のコリメータレンズ6、非点収差発生部7、受光部8によって上記測定対象物の被測定面TGにより上記変位量測定用の照射光Laが反射され変位量測定用の検出光Lbの光量を検出する受光光学系10Bが構成されている。
この非接触センサ10において、上記光源1は、変位検出用の照射光Laとしてレーザ光等の光を出射する。この光源1は、例えば半導体レーザダイオードやスーパールミネッセンスダイオード、発光ダイオード等から構成される。この光源1は、図示しない筐体に着脱可能に取り付けることにより、上記筐体を設置箇所から取り外さなくても、劣化した光源1を新しい光源と交換することができる。
上記光源1から出射された変位検出用の照射光Laは、第1のコリメータレンズ2により平行光に変換されて分離光学系3に入射される。
上記分離光学系3は、上記変位検出用の照射光Laの光路と、上記変位検出用の検出光Laの光路を分離するためのものであって、例えば偏光ビームスプリッタ3Aと位相板3Bからなる。
上記偏光ビームスプリッタ3Aは、上記第1のコリメータレンズ2を介して入射される変位検出用の光ビームの第1の偏光成分(直線偏光)の光を反射して位相板3Bに入射させる。また、この偏光ビームスプリッタ3Aは、上記位相板3Bを介して入射される第2の偏光成分の光(直線偏光)を透過して第2のコリメータレンズ6に入射させる。
ここで、上記第1の偏光成分(直線偏光)の光と第2の偏光成分の光(直線偏光)は、偏光方向が互いに直交している。
また、上記位相板3Bは、偏光ビームスプリッタ3Aとミラー4との間に配置されており、偏光ビームスプリッタ15とミラー5との間に配置されている。この位相板3Bは、上記偏光ビームスプリッタ3Aを介して入射される第1の偏光成分(直線偏光)の光を円(楕円)偏光の変位検出用の照射光Laに変換する。この位相板3Bにより変換された円(楕円)偏光の変位検出用の照射光Laは、ミラー4を介して対物レンズ5に入射される。また、上記位相板3Bは、上記対物レンズ5からミラー4を介して入射される円(楕円)偏光の光を第2の偏光成分(直線偏光)の変位検出用の検出光Lbに変換する。この位相板3Bにより変換された第2の偏光成分(直線偏光)の変位検出用の検出光Lbは、上記偏光ビームスプリッタ3Aを介して上記第2のコリメータレンズ6に入射される。
上記ミラー4は、上記位相板3Bを介して入射される円(楕円)偏光の変位検出用の照射光Laを対物レンズ5に向けて反射し、この第1の対物レンズ5を介して測定対象物の被測定面TGに入射させる。また、このミラー4は、上記対物レンズ5を介して戻されてくる上記被測定面TGからの反射光を上記位相板3Bに向けて反射し、この位相板3Bを介して上記第2の偏光成分(直線偏光)の変位検出用の検出光Lbとして上記偏光ビームスプリッタ3Aに入射させる。
上記ミラー4の表面には、金属皮膜が施されている。これにより、一般的な誘電体多層膜で生じる湿度の変化による偏光や波長特性の変化を抑えることができ、安定な変位検出が可能になる。
また、上記第2のコリメータレンズ6は、偏光ビームスプリッタ3Aと非点収差発生部7との間に配置されている。この第2のコリメータレンズ6は、集光手段の一具体例を示すものであり、偏光ビームスプリッタ3Aを透過した平行光の変位検出用の検出光Lbを集光して非点収差発生部7を介して受光部8に入射させる。
なお、対物レンズ5、第1のコリメータレンズ2及び第2のコリメータレンズ6には、光源1の波長変動による焦点距離の変動を受け難くする色消し対策すなわち色収差補正を施してもよい。このようにすることで、光源1の波長や温度を監視しなくてもよく、被測定面TGの変位量を測定した測定値に補正を行う必要が無くなる。
また、本実施の形態では、光源1から出射された変位検出用の照射光Laの光路中、すなわち、変位検出用の照射光Laを測定対象物の被測定面TGに照射する照射光学系10Aに第1のコリメータレンズ2を配置し、被測定面TGによって反射された反射光の光路中、すなわち、変位検出用の検出光Lbからフォーカスエラー信号SFEを得る受光光学系10Bに第2のコリメータレンズ6を配置した。これにより、変位検出用の照射光Laの光路長と変位検出用の検出光Lbの光路長を任意に設定することが可能になる。その結果、設計の自由度を向上させることができ、最適な部品配置を実現することができる。さらに、第1のコリメータレンズ2によりカップリング効率の向上を図ることができ、第2のコリメータレンズ6によりフォーカスエラー信号SFEの特性を変化させて、例えば、対物レンズ5を変位させるためのサーボ機構が駆動する範囲すなわちサーボ引き込み範囲を広げることができる。
なお、光源1から出た光は第1のコリメータレンズ2で平行光にされるとしたが、第1のコリメータレンズ2を出た光が発散光、収束光であってもよいし、非測定物から反射し対物レンズ5を通過した光が、発散光、収束光であってもよい。
また、非点収差発生部7は、第2のコリメータレンズ6と受光部8との間に配置されており、第2のコリメータレンズ6によって集光された被測定面TGからの変位検出用の検出光Lbに非点収差を発生させる。
この非点収差発生部7は、第2のコリメータレンズ6から受光部8までの変位検出用の検出光Lbの光路中に配置されたシリンドリカル面を含む光学部品により構成されている。
この非点収差発部7としては、一般にシリンドリカルレンズを用いるが、球面とシリンドリカル面を複合させたマルチレンズを採用することにより、非点収差の発生と出力信号波形の調整をすることが可能となり、部品点数を削減することができる。
なお、本実施の形態の非点収差発生部7は、第2のコリメータレンズ6から受光部8までの変位検出用の検出光Lbの光路おける収束光中に斜めに配置された透明な基板により構成することで、部品点数を減らすことができる。
受光部8は、非点収差発生部7により非点収差が発生した変位検出用の検出光Lbの光量を検出するものであって、例えば図2に示すように、変位検出用の検出光Lbの光軸に直交する平面上に並ぶ4つの受光素子8A〜8Dから構成されている。これら4つの受光素子8A〜8Dは、変位検出用の検出光Lbの光軸周りに所定の間隔を空けて配置されており、受光素子8Aと受光素子8Cは、変位検出用の検出光Lbの光軸を挟んで対向している。そして、受光素子8Bと受光素子8Dは、変位検出用の検出光Lbの光軸を挟んで対向している。
これら4つの受光素子8A〜8Dに入射する変位検出用の検出光Lbの照射像は、この検出光Lbに非点収差が発生しているため、対物レンズ5から被測定面TGまでの距離dによって形状と大きさが変化する。
上記受光部8での非点収差発生部7による照射像の一例を図3に示す。
すなわち、図1に示すように被測定面TGが対物レンズ5の焦点位置f0にあるときには、図3の(C)に示すように、集光された光が円形の光スポットになる。これに対し、対物レンズ5が被測定面TGに対して焦点位置f0より遠ざかると、図3の(B)に示すように、受光素子8Bと受光素子8Dが位置する対角線の方向に広がった楕円形の光スポットになり、また、焦点位置f0より近づくと、図3の(D)に示すように、受光素子8Aと受光素子8Cが位置する対角線の方向に広がった楕円形の光スポットになる。なお、図3の(A),(E)は、被測定面TGの前後でのデフォーカス状態を示している。
ここで、4つの受光素子8A〜8Dから出力される各出力信号をA,B,C,Dとすると、焦点位置f0からのずれを表すフォーカスエラー信号SFEは、以下の式(1)で与えられる。
SFE=(A+C)−(B+D) ・・・ (1)
演算処理部20は、上記4つの受光素子8A〜8Dから出力される出力信号A,B,C,Dについて、上記式(1)の演算処理を行うことにより、フォーカスエラー信号SFEを生成する。このフォーカスエラー信号SFEをサーボ制御部30に供給することにより、フォーカスサーボをかけることができる。
図4は、被測定面TGの位置をジャストフォーカス状態とした場合のフォーカスエラー信号SFEの特性を示す図である。
図4中のP,Q,R,S,Tは、図3の(A)〜(E)に示すP,Q,R,S,Tの各フォーカス状態と対応している。図1に示した構成において、対物レンズ5から変位検出用の照射光Laを被測定面TG上に結像させ、被測定面TGにて反射された変位検出用の検出光Lbが通過する受光光学系10Aにおいて非点収差発生部7を介して受光部8に入射される変位検出用の照射光Laの前側焦点と後ろ側焦点の中間になるところに受光部8が配置した状態が、従来の構成である。この従来の構成における被測定面TGと受光面の関係を一般的には光学的に共役の関係といい、被測定面TGが測定方向に対する位置を維持したまま傾いても、受光面上のビームは動かない。
しかしながら、この従来の構成を採用したのでは、上述の如く、被測定面TG上での面粗度、汚れ、微細なゴミ等の付着によって被測定面の変位量の測定に誤差が発生するので、この変位検出装置100では、例えば図5に示すように、非接触センサ10の対物レンズ5から出射された変位検出用の照射光Laを被測定面TG上で結像させずに被測定面TGの前又は後で結像させて被測定面TG上で一定のビーム径を確保することで、上記被測定面TG上での面粗度、汚れ、微細なゴミ等の影響を平均化させて被測定面TGの変位量の測定誤差を減少させる。
すなわち、受光部8の各受光素子8A〜8Dへの照射パターンは、被測定面TGの位置によって変化するだけでなく、受光部8への集光手段である第2のコリメータレンズ6の位置や、非点収差発生部7の位置によって、あるいは、そのビームを受光しその信号を相対位置情報に変換する相対位置情報を出力する各受光素子8A〜8Dの光軸方向の位置によってビームの形状と大きさが変化する。
そこで、この変位検出装置100における非接触センサ10では、受光部8への集光手段である第2のコリメータレンズ6、非点収差発生部7、受光部8のいずれかを光軸方向にずらし、かつ、受光素子8A〜8Dに対する照射パターンを一定に保つよう対物レンズ5にフォーカスサーボをかけ、対物レンズ5と被測定面TGとの相対距離dを変化させて被測定面TG上でのビーム径を大きくしている。
この非接触センサ10における受光光学系10Bでは、図5に示すように、被測定面TGで反射された変位検出用の検出光Lbは、対物レンズ5によって平行光に近づけられるが、発散光となり、ミラー4によって反射されて位相板3Bに導かれる。位相板3Bを通過した変位検出用の検出光Lbは、位相板3Bを通過する前の変位検出用の照射光Laと直交する直線偏光となり、偏光ビームスプリッタ3Aを透過する。その後、変位検出用の検出光Lbは、第2のコリメータレンズ6によって集光され、非点収差発生部7によって非点収差を発生した状態で受光部8に照射される。
非点収差が発生した変位検出用の検出光Lbが4つの受光素子8A〜8Dに照射される領域(照射スポット)は、対物レンズ5から被測定面TGまでの距離によって変化する。
本実施の形態では、対物レンズ5によって集光される変位検出用の照射光Laの焦点位置fが被測定面TGの奥側であって被測定面TGから所定の距離d1だけ離れているときに、図6の(B)に示すように、照射スポットが円形になる。したがって、照射スポットが円形になる場合は、対物レンズ5によって集光された変位検出用の照射光Laが被測定面TGで反射後に結像される。
ここで、照射スポットが円形になるときの対物レンズ5の位置を基準位置とすると、本実施の形態では、対物レンズ5が基準位置よりも被測定面TGから遠ざかると、照射スポットは、図6(C)に示すように、受光素子8A,8C側に延びた楕円形になり、また、対物レンズ5が基準位置よりも被測定面TGに近づくと、図6(A)に示すように、照射スポットは、受光素子8B,8D側に延びた楕円形になる。
上記演算処理部20では、各受光素子8A〜8Dから出力される出力信号A,B,C,Dについて、上述の式(1)の演算処理を行うことにより、上記対物レンズ5の基準位置に対する光軸方向へのずれを表すフォーカスエラー信号SFEを生成する。
上記演算処理部20は、生成したフォーカスエラー信号SFEをアナログデジタル変換して、サーボ制御部30へ出力する。
本実施の形態では、照射スポットが受光素子8A,8C側に延びた楕円形になると、上記サーボ制御部30は、対物レンズ5が基準位置よりも被測定面TGから遠ざかっていると判断し、対物レンズ5を被測定面TGに近づけるようにアクチュエータ40を駆動制御する。その結果、対物レンズ5と被測定面TGとの相対距離を変化させることができ、焦点位置fを被測定面TGの奥側に設定することができる。
上記サーボ制御部30は、フォーカスエラー信号SFEの値が「0」となるような駆動信号をアクチュエータ40に出力して、上記アクチュエータ40の駆動制御を行う。これにより、上記レンズ保持部42に保持されたリニアスケール51が対物レンズ5の光軸方向に移動する。そして、検出ヘッドがリニアスケール51の目盛り51Aを読み取ることにより、被測定面TGの変位量が測定される。
ここで、本実施の形態では、上記対物レンズ5で集光される変位検出用の照射光Laの焦点位置が被測定面TGの奥側にあるときにフォーカスエラー信号SFEの値が「0」になるように、受光部8の光軸上の位置を設定している。
上述の式(1)の演算処理により算出されたフォーカスエラー信号SFEの特性は、図7に示すようになる。
図7に示す特性において、原点0は対物レンズ5の基準位置を示し、被測定面TG上では、変位検出用の照射光Laの所定の径(ビーム径)が確保されている。したがって、ビーム径よりも小さい面粗度、汚れ、ゴミ等の付着があっても、フォーカスエラー信号SFEの値が「0」となり、被測定面TGの変位量の測定に影響しない。
上記演算処理部20は、生成したフォーカスエラー信号SFEをアナログデジタル変換して、サーボ制御部30へ出力する。
上記サーボ制御部30は、フォーカスエラー信号SFEの値が「0」となるような駆動信号をアクチュエータ40に出力して、上記アクチュエータ40の駆動制御を行う。これにより、上記レンズ保持部42に保持されたリニアスケール51が対物レンズ5の光軸方向に移動する。そして、検出ヘッド52がリニアスケール51の目盛り51Aを読み取ることにより、被測定面TGの変位量が測定される。
ここでは、受光部8(受光素子8A〜8D)の光軸上の位置を調整して、焦点位置fを被測定面TGの奥側に設定する例を説明した。しかしながら、本発明の変位測定装置としては、上記受光光学系10Bにおける受光部8への集光手段である第2のコリメータレンズ6や非点収差発生部7の光軸上の位置を調整して、焦点位置fを被測定面TGの手前側に設定することもできる。
なお、上記非点収差発生部7の非点収差発生手段としてシリンドリカル面を含む光学部品(例えば、シリンドリカルレンズ)を用いる場合は、この非点収差発生手段の光軸上の位置を調整すると、受光部8の4つの受光素子8A〜8Dに照射される変位検出用の検出光Lbの照射スポットが変化する。したがって 対物レンズ5により集光される変位検出用の照射光Laの焦点位置fを変位させることができる。
しかし、上記非点収差発生部7の非点収差発生手段としてとして基板を用いる場合は、非点収差発生手段の光軸上の位置を調整しても、受光部8の4つの受光素子8A〜8Dに照射される変位検出用の検出光Lbの照射スポットは変化しない。したがって、非点収差発生手段として基板を用いる場合は、上記受光光学系10Bにおける上記第2のコリメータレンズ6又は受光部8の光軸上の位置を調整して、焦点位置fを変位させる。
本実施の形態では、対物レンズ5により集光される変位検出用の照射光Laの焦点位置fを被測定面TGの奥側に設定するので、被測定面TGで反射して対物レンズ5を通った変位検出用の検出光Lbは、発散光になる。
ここで、上記被測定面TG上のビーム径と発散光(収束光)の角度との関係を図8に示すように、ビーム径と発散光の角度は比例する。なお、図8に示すビーム径と発散光の角度との関係(比例定数)は一例であり、対物レンズ5の焦点距離、対物レンズ5の開口数(NA;Numerlcal Aperture)等によって変化する。
被測定面TG上のビーム径を大きくすれば、被測定面TGの面粗度や傷、ゴミ等の影響を受け難くすることができるが、被測定面TGにより反射して対物レンズ5を通った変位検出用の検出光Lbの発散角度も大きくなる。対物レンズ5を通った変位検出用の検出光Lbの発散角度が大きくなりすぎると、その変位検出用の検出光Lbを受光部8まで導く偏光ビームスプリッタ3Aや第2のコリメータレンズ6等の光学部品が大型化する可能性がある。そのため、被測定面TG上のビーム径は、偏光ビームスプリッタ3Aや第2のコリメータレンズ6等の光学部品の大きさを考慮して決定することが好ましい。
この非接触センサ10における受光光学系10Bでは、被測定面TGで反射された変位検出用の検出光Lbは、逆行し、対物レンズ5によって平行ビームに近づけられるが、平行光にはならず、収束光、もしくは発散光となる。これは対物レンズ5から出射した光の結像位置が被測定面TGより手前なのか、被測定面TGで反射した後なのかで決定される。被測定面TG上のビーム径と、結像位置、被測定面間距離は比例しており、この値を大きくするほど、面粗度、汚れ、微細なゴミ等の付着による被測定面TGの変位量の測定誤差を減少させることが可能となる。
しかしながら、結像位置と被測定面TGとの距離が増大するほど被測定面TGが傾いた際、図9の(A)〜(E)に示すように、受光部8の受光面上で光軸と垂直方向にビームがシフトし、フォーカスエラー信号SFEにオフセットが発生して、本来必要である被測定面TGの変位情報に加わる誤差が増加する。
ここで、受光面上で光軸とは垂直方向にビームがシフトした際にフォーカスエラー信号SFEにオフセットが発生する様子を図9の(A)〜(E)に示す。例えば、被測定面TGが傾いて受光面上のビームが図9に示すとおり、受光素子8Dの方向にシフトした際、フォーカスエラー信号SFEを0とするためのビーム形状は、図6の(B)のジャストフォーカス状態で示した丸ではなく、図9の(C)に示すように、受光素子8A、8C側に伸びた楕円形状になる。これは、ビーム形状が図6の(B)のジャストフォーカス状態で示した丸のままでは、受光素子8A、8C側の光量が少なく、受光素子8B、8D側の光量が多いため、フォーカスエラー信号SFEが0にならないからである。つまり、ビーム形状を円形から楕円形状に変形させる為に必要な対物レンズ5のオフセット量が本来の変位量にそのまま誤差として加わる。
また、被測定面TGが0.1deg傾いた時の焦点・被測定面間距離と受光面上でのビームシフト量の関係を図10に示す(この感度は光学系により異なる。)。
この図10に示すように、焦点・被測定面間距離と受光面上のビームシフト量の関係は、1次比例している。したがって、被測定面TG上でのビーム径を大きくするほど被測定面TGが傾いた際、受光面上でビームがシフトし、フォーカスエラー信号SFEにオフセットが生じ、本来必要である被測定面TGの変位情報に加わる誤差が大きくなる。
そこで、この変位検出装置100では、上記演算処理部20において、上記非接触センサ10の受光部8により検出された変位検出用の検出光Lbの光量から上記被測定面TGの傾斜に起因する当該受光部8上でのビーム位置のシフトによる受光バランスのズレ量を算出し、算出したズレ量により上記被測定面TGの傾斜の影響を補正したチルトキャンセルフォーカスエラー信号STCFEを生成するようにしている。
すなわち、図11に示すように、上記受光部8の各受光素子8A〜8Dから出力される各出力信号をA,B,C,Dとして、受光面上でのビームずれを表すポジション信号として、X方向のポジション信号SPXは次の式(2)で与えられ、Y方向のポジション信号SPYは次の式(3)で与えられる。
SPX=((A+D)−(B+C))/(A+B+C+D)・・・(2)
SPY=((A+B)−(C+D))/(A+B+C+D)・・・(3)
なお、総光量(A+B+C+D)で割って正規化しているのは、上記ポジション信号が受光部8に到達する変位検出用の検出光Lbの光量に依存しないようにするためである。
そして、フォーカスエラー信号SFEから被測定面TGの傾きの影響を補正し除去するチルトキャンセルフォーカスエラー信号STCFEは、以下の式(4)で与えられる。
STCFE=SFE+STC
=SFE+(α×SPX/(A+B+C+D))+(β×SPy/(A+B+C+D))
・・・(4)
被測定面TGの測定方向の位置を変えずに傾きのみ変化させた際、上記(4)式で被測定面TGの変位情報の変動が0になるように任意の係数α、βを選択すると被測定面TGの傾きに依存せず高さ方向の変位のみ検出することが可能となる。なお、この係数α、βは任意の値で固定で用いられるため、被測定面TGのチルトキャンセルループはフィードフォワードとなる。また、このα、βは1次式、2次式、もしくは多項式を用いる。
上記チルトキャンセルフォーカスエラー信号STCFEは、例えば図12に示すような構成の演算処理部20により生成される。
この演算処理部20では、上記受光部8の各受光素子8A〜8Dから出力される各出力信号A,B,C,Dから、加算回路21A〜21E、減算回路22A,22B、除算回路23A,23B、乗算回路24、25、加算回路26によりチルトキャンセル信号STCを得るとともに、加算回路21F,21G、減算回路22Cによりフォーカスエラー信号SFEを得ている。そして、加算回路27において上記フォーカスエラー信号SFEに上記チルトキャンセル信号STCを加算することにより、チルトキャンセルフォーカスエラー信号STCFEを生成する。
なお、演算処理部20では、加算回路21A,21Bと減算回路22Aと除算回路23Aにより正規化したX方向のポジション信号SPXを算出するとともに、加算回路21C,21Dと減算回路22Bと除算回路23Bにより正規化したY方向のポジション信号SPYを算出し、乗算回路24によりX方向のポジション信号SPXに係数αを乗算するとともに、乗算回路25によりY方向のポジション信号SPYに係数βを乗算して、加算回路21Eにより加算することによってチルトキャンセル信号STCを得ている。
この演算処理部20は、上記受光部8の各受光素子8A〜8Dとともに基板上に設けることもできる。
このような構成の変位検出装置100では、対物レンズ5によって集光された変位検出用の照射光Laの焦点が被測定面TGの手前又は奥側で結像されている状態でフォーカスエラー信号SFEが0となり、変位検出用の照射光Laの焦点が被測定面TGからずれた状態で対物レンズ5が基準位置にあると判断する。そのため、被測定面TG上の変位検出用の照射光Laの径(ビーム径)を所定の大きさにすることができ、被測定面TGの面粗度、汚れ、微細なゴミ等を変位量として検出することを抑制することができる。その結果、被測定面TGの面粗度、汚れ、微細なゴミ等の付着によって被測定面TGの変位量の測定に誤差が生じる可能性を減少させることができる。すなわち、対物レンズ5から出た光を被測定面TG上で結像させずに被測定面TGの前後で結像させて被測定面TG上で一定のビーム径を確保するようにフォーカスサーボを掛けることにより、上記被測定面TG上での面粗度、汚れ、微細なゴミ等の影響を平均化させて被測定面TGの変位量の測定誤差を減少させることができる。また、光源1から出射された変位検出用の照射光Laは、被測定面TG上の一点で結像せずに面反射するため、被測定面TGの温度上昇や、被測定面TGの劣化等を防止或いは抑制することができる。
また、この変位検出装置100では、上記被測定面TGの傾斜に起因する受光部8上でのビーム位置のシフトによる受光バランスのズレ量を算出し、算出したズレ量により上記被測定面TGの傾斜の影響を補正したチルトキャンセルフォーカスエラー信号STCFEを生成して上記フォーカスサーボを掛けることにより、上記被測定面TGの傾斜の影響による変位量の測定誤差を減少させることができる。
したがって、この変位検出装置100では、被測定面TGの面粗度、汚れ、微細なゴミ等の付着によって被測定面TGの変位量の測定に誤差が生じる可能性を減少させ、しかも、被測定面TGの傾きの影響を受けることなく本来求められる被測定面TGの変位情報のみを正確に得られるようにすることができる。
なお、上記変位検出装置100において、上記非接触センサ10に備えられる上記光源1は、図13に示すように、波長が略等しい2つの光源1A、1Bをハーフミラー1Cを介して交互に発光できる構成にしておくことで、第1の光源1Aの寿命で検出は不可能になったときに、第2の光源1Bに切り替えてさらに長時間使用することができる。
また、上記変位検出装置100において、光源1を筐体内に配設せずに筐体から離れた位置に配設し、光ファイバを介して筐体内に光を供給するようにしてもよい。これにより、熱源となる光源1を筐体から切り離すことができ、筐体内の温度上昇を防止することができる。また、光源1を光ファイバに着脱可能に取り付ける構造にすることにより、筐体から離れた場所で光源2の交換を行うことができるようになりメンテナンス性を向上させることができる。
また、上記変位検出装置100において、光源1を筐体から離れた位置に配設し、光源1からの出射される変位検出用の照射光Laを気体、液体又は真空の空間を介して筐体内に供給するようにしてもよい。これにより、熱源となる光源1を筐体から切り離すことができると共に、光ファイバ等の筐体に接続される部材が削除され、筐体に振動が伝わらないようにすることができる。
また、上記変位検出装置100では、非点収差発生部7によって非点収差を発生させた変位検出用の検出光Lbを受光部8が直接検出するようにしたが、非点収差が発生した変位検出用の検出光Lbを光ファイバによって上記受光部8に導くようにしてもよい。これにより、受光部8の設置位置を自由に設定することができるため、受光部8を演算処理部20に近接して配置することができる。その結果、電気通信距離の短縮化を図ることができ、応答速度を高速化することができる。
また、上記変位検出装置100において、受光光学系10Bの対物レンズ5と受光部8との間の光路上にアパーチャを配置し、被測定面TGからの特定の反射光を遮断するようして、例えば、被測定面TG上の異物や凹凸による回折光が迷光として受光部8へ入射されることをアパーチャにより防止するようにしてもよい。これにより、対物レンズ5のデフォーカス量に対する受光素子8A〜8Dの受光量の和信号の制御を高精度に行うことができる。
また、上記変位検出装置100において、受光光学系10Bの偏光ビームスプリッタ3と受光部8との間の光路上に、例えばくもりガラス等の光散乱体を配置すれば、受光部8に入射する変位検出用の検出光Lbの光軸方向に垂直な断面内において均一な光強度分布が得られ、被測定面TGの面粗度の影響をより低減することができる。また、こうした光散乱体を例えば1KHz以上で振動させ、散乱方向を様々に変化させると、受光素子21〜24上でのスペックルが平均化され、スペックルコントラストが低減される。
本実施の形態において、上記被測定面TGに、上記変位検出装置100の光源1から出射される変位検出用の照射光Laを反射させるミラー処理を施してもよい。これにより、S/N比の高い信号から位置情報を得ることができる。
また、被測定面TGを有する被測定物に光源1から出射される変位検出用の照射光Laと同一の波長の光を反射させる回折格子を形成してもよい。
また、被測定物に回折格子を形成する場合は、回折格子上の表面に、光源1からの変位検出用の照射光Laを反射させる反射膜を形成して被測定面TGとしてもよい。上記変位検出装置100は、反射膜によって形成された被測定面TGからの変位検出用の検出光Lbを検出することで、高さ方向の変位検出を行う。このとき、光源1から出射された変位検出用の照射光Laには、回折格子による回折光が生じないため、正確な変位検出を行うことができる。なお、リニアスケールは、この反射膜を透過する光源を用いることにより、回折光等の検出を行う。
また、反射膜によって形成された被測定面TGは、回折格子の下地側に形成してもよい。この場合は、光源1から出射された変位検出用の照射光Laが回折格子を形成する材料を透過し、リニアスケールに用いる光が回折格子によって回折光となる。
上記変位検出装置100の光源1の波長を反射させる反射型の回折格子用に出力値を最適化することにより、リニアスケールなどと併用することができ、回折格子面に沿った動きは、リニアスケールで読み取り、回折格子面に垂直な動きは上記変位検出装置100により検出する構成とすることで、ステージなどの3次元の動きを測定する装置を実現することができる。
さらに、上記変位検出装置100では、上記演算処理部20において、上記受光部8の各受光素子8A〜8Dから出力される各出力信号A,B,C,Dから、チルトキャンセル信号STCを得るとともにフォーカスエラー信号SFEを得て、チルトキャンセルフォーカスエラー信号STCFEを生成するようにしたが、フォーカスエラー信号SFEとチルトキャンセル信号STCとを個別の受光部による検出信号から生成するようにしてもよい。
例えば、図14に要部構成を示す変位検出装置100Aのように、受光光学系10Aに変位検出用の検出光Laを少なくとも2つのビームに分離するビーム分離手段としてビームスプリッタ9を設け、図15に示すように、上記ビームスプリッタ9により分離された一方のビームを受光するフォーカスエラー信号SFEを生成するための第1の受光部81Aと、上記ビームスプリッタ9により分離された他方のビームを受光する上記被測定面TGの傾斜に伴う上記第1の受光部81A上でのビーム位置のシフトによる受光バランスのズレ量を算出するための第2の受光部81Bを有する受光部8を用いるようにしてもよい。
上記ビームスプリッタ9には、回折格子やHOE(Holographic Optical Element)等を用いることができる。
上記演算処理部20では、上記受光部8の第1の受光部81Aにより得られる検出信号からフォーカスエラー信号SFEを得るとともに、上記受光部8の第2の受光部81Bにより得られる検出信号からチルトキャンセル信号STCを得て、上記(4)式で示されるチルトキャンセルフォーカスエラー信号STCFEを生成することができる。
上記受光部8は、上記第1の受光部81Aと第2の受光部81Bがひとつのパッケージの中に配置されていてもよいし、複数のパッケージに分けられていてもよい。
なお、変位検出装置100Aにおいて、ビームスプリッタ9A及び受光部8以外の構成要素については、上記変位検出装置100と同じなので、対応する構成要素に同一符号を図14中に付して、その詳細な説明を省略する。
このような構成の変位検出装置100Aにおいても、上記変位検出装置100と同様に、被測定面TGの測定方向の位置を変えずに傾きのみ変化させた際、上記(4)式に被測定面TGの変位情報の変動が0になるように任意の係数αを選択することにより、被測定面TGの傾きに依存せず高さ方向の変位のみ検出することができる。
また、例えば、図16に要部構成を示す変位検出装置100Bのように、受光光学系10Aに変位検出用の検出光Laを少なくとも2つのビームに分離するビーム分離手段として偏光ビームスプリッタや無偏光ビームスプリッタ等のビームスプリッタ9Bを設け、上記ビームスプリッタ9により分離された一方のビームを受光するフォーカスエラー信号SFEを生成するための第1の受光部81と、上記ビームスプリッタ9により分離された他方のビームを受光する上記被測定面TGの傾斜に伴う上記第1の受光部81上でのビーム位置のシフトによる受光バランスのズレ量を算出するための第2の受光部82を有する受光部8を用いるようにしてもよい。
上記演算処理部20では、上記受光部8の第1の受光部81により得られる検出信号からフォーカスエラー信号SFEを得るとともに、上記受光部8の第2の受光部82により得られる検出信号からチルトキャンセル信号STCを得て、上記(4)式で示されるチルトキャンセルフォーカスエラー信号STCFEを生成することができる。
このような構成の変位検出装置100Bにおいても、上記変位検出装置100と同様に、被測定面TGの測定方向の位置を変えずに傾きのみ変化させた際、上記(4)式に被測定面TGの変位情報の変動が0になるように任意の係数αを選択することにより、被測定面TGの傾きに依存せず高さ方向の変位のみ検出することができる。
また、上記変位検出装置100A,100Bにおける受光部8の各第2の受光部81B,82は、受光領域が少なくとも4つに分割された一つあるいは複数の撮像素子、位置検出素子で構成されたものとすることができる。
すなわち、例えば図17に要部構成を示す変位検出装置100Cのように、受光光学系10Aにビーム分離手段として設けた回折格子やHOE(Holographic Optical Element)等のビームスプリッタ9により変位検出用の検出光Laを少なくとも2つのビームに分離し、図18に示すように、フォーカスエラー信号SFEを生成するための第1の受光部81Aにより上記ビームスプリッタ9により分離された一方のビームを受光するとともに、受光領域が少なくとも4つに分割された一つあるいは複数の撮像素子、位置検出素子で構成された第2の受光部81Cで上記ビームスプリッタ9により分離された一方のビームを受光するようにしてもよい。
上記撮像素子としては、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサ、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサ、光学センサ、レーザセンサ等を用いることができ、また、上記位置検出素子としては、フォトダイオードの表面抵抗を利用したスポット光の光位置センサ(PSD:Position Sensitive Detector)等を用いることができる。
上記受光部8は、上記第1の受光部81Aと第2の受光部81Cがひとつのパッケージの中に配置されていてもよいし、複数のパッケージに分けられていてもよい。
上記演算処理部20では、上記受光部8の第1の受光部81Aにより得られる検出信号からフォーカスエラー信号SFEを得るとともに、上記受光部8の第2の受光部81Cにより得られる検出信号からチルトキャンセル信号STCを得て、上記(4)式で示されるチルトキャンセルフォーカスエラー信号STCFEを生成することができる。
なお、変位検出装置100Cにおいて、受光部8以外の構成要素については、上記変位検出装置100Aと同じなので、対応する構成要素に同一符号を図17中に付して、その詳細な説明を省略する。
このような構成の変位検出装置100Cにおいても、上記変位検出装置100Aと同様に、被測定面TGの測定方向の位置を変えずに傾きのみ変化させた際、上記(4)式に被測定面TGの変位情報の変動が0になるように任意の係数αを選択することにより、被測定面TGの傾きに依存せず高さ方向の変位のみ検出することができる。
また、例えば図19に要部構成を示す変位検出装置100Dのように、受光光学系10Aにビーム分離手段として設けた偏光ビームスプリッタや無偏光ビームスプリッタ等を用いたビームスプリッタ9により変位検出用の検出光Laを少なくとも2つのビームに分離し、フォーカスエラー信号SFEを生成するための第1の受光部81により上記ビームスプリッタ9により分離された一方のビームを受光するとともに、受光領域が少なくとも4つに分割された一つあるいは複数の撮像素子、位置検出素子で構成された第2の受光部82Aで上記ビームスプリッタ9により分離された一方のビームを受光するようにしてもよい。
上記撮像素子としては、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサ、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサ、光学センサ、レーザセンサ等を用いることができ、また、上記位置検出素子としては、フォトダイオードの表面抵抗を利用したスポット光の光位置センサ(PSD:Position Sensitive Detector)等を用いることができる。
上記演算処理部20では、上記受光部8の第1の受光部81により得られる検出信号からフォーカスエラー信号SFEを得るとともに、上記受光部8の第2の受光部82Aにより得られる検出信号からチルトキャンセル信号STCを得て、上記(4)式で示されるチルトキャンセルフォーカスエラー信号STCFEを生成することができる。
なお、この変位検出装置100Dにおいて、受光部8以外の構成要素については、上記変位検出装置100Bと同じなので、対応する構成要素に同一符号を図19中に付して、その詳細な説明を省略する。
このような構成の変位検出装置100Dにおいても、上記変位検出装置100と同様に、被測定面TGの測定方向の位置を変えずに傾きのみ変化させた際、上記(4)式に被測定面TGの変位情報の変動が0になるように任意の係数αを選択することにより、被測定面TGの傾きに依存せず高さ方向の変位のみ検出することができる。
ここで、上記変位検出装置100〜100Dでは、上記演算処理部20において、フォーカスエラー信号SFEに生じるオフセットをキャンセルした上記(4)式で示されるチルトキャンセルフォーカスエラー信号STCFEを生成して、上記対物レンズ5によって集光された上記照射光の焦点が上記被測定面TGの手前側又は奥側に位置するときに、上記フォーカスエラー信号STCFEの値が0になるように、フォーカス制御部30によりフォーカスサーボを掛ける。被測定面の傾きの影響を受けることなく本来求められる被測定面の変位情報のみを正確に得られるようにしたが、上記被測定面TGの傾きにより、上記フォーカスエラー信号SFEに生じるオフセットをキャンセルする代わりに、例えば、図20に示す変位検出装置110のように、上記フォーカスエラー信号SFEに生じるオフセット量を位置補正量として用いて、被測定面TGの変位情報に加わる誤差を補正するようにすることもできる。
なお、この変位検出装置110において、演算処理部20Aと信号処理部60A以外の構成要素については、上記変位検出装置100と同じなので、対応する構成要素に同一符号を図20中に付して、その詳細な説明を省略する。
すなわち、この図20に示す変位検出装置110では、演算処理部20Aにおいて、非接触センサ10の受光部8により検出された検出光の光量から上述の式(1)で与えられるフォーカスエラー信号SFEを生成するともに被測定面TGの傾斜に起因する当該受光部8上でのビーム位置のシフトによる受光バランスのズレ量を算出して位置補正信号γ・STCを生成し、フォーカス制御部30は、上記演算処理部20Aにより生成されたフォーカスエラー信号SFEを用いて、対物レンズ5によって集光された照射光の焦点が上記被測定面TGの手前側又は奥側に位置するときに、上記フォーカスエラー信号の値が0になるように、フォーカスサーボを掛ける。
ここで、上記位置補正信号γ・STCは、例えば図21に示すような構成の演算処理部20Aにより生成される。
この演算処理部20Aでは、上記受光部8の各受光素子8A〜8Dから出力される各出力信号A,B,C,Dから、加算回路21A〜21E、減算回路22A,22B、除算回路23A,23B、乗算回路24、25、加算回路26により得られるチルトキャンセル信号STCに乗算回路28により係数γを乗算した位置補正信号γ・STCを得るとともに、加算回路21F,21G、減算回路22Cによりフォーカスエラー信号SFEを得ている。
すなわち、上記演算処理部20Aでは、加算回路21A,21Bと減算回路22Aと除算回路23Aにより正規化したX方向のポジション信号SPXを算出するとともに、加算回路21C,21Dと減算回路22Bと除算回路23Bにより正規化したY方向のポジション信号SPYを算出し、乗算回路24によりX方向のポジション信号SPXに係数αを乗算するとともに、乗算回路25によりY方向のポジション信号SPYに係数βを乗算して、加算回路26により加算することによって得られるチルトキャンセル信号STCを得て、乗算回路28により上記チルトキャンセル信号STCに係数γを掛けることによって、次の式(5)にて示される位置補正信号γ・STCを得ている。
γ・STC
=γ×((α×SPX/(A+B+C+D))+(β×SPy/(A+B+C+D)))
・・・(5)
そして、上記信号処理部60Aは、上記変位量測定部50の検出ヘッド52から出力された目盛読み取り信号Svに基づいて被測定面TGの変位量を算出し、上記演算処理部20Aにより生成された位置補正信号γ・STCを加減算することにより、上記被測定面TGの傾斜の影響を補正した該被測定面TGの位置情報を生成する。
このように、上記被測定面TGの傾斜に起因する受光部8上でのビーム位置のシフトによる受光バランスのズレにともなうフォーカスエラー信号SFEに生じるオフセット量を位置補正量として用いて、被測定面TGの変位情報に加わる誤差を補正することで、上記被測定面TGの傾斜の影響による変位量の測定誤差を減少させることができる。
したがって、この変位検出装置110では、被測定面TGの面粗度、汚れ、微細なゴミ等の付着によって被測定面TGの変位量の測定に誤差が生じる可能性を減少させ、しかも、被測定面TGの傾きの影響を受けることなく本来求められる被測定面TGの変位情報のみを正確に得られるようにすることができる。
ここで、この変位検出装置110は、上述の図14に要部構成を示した変位検出装置100Aと同様に、受光光学系10Aに変位検出用の検出光Laを少なくとも2つのビームに分離するビーム分離手段としてビームスプリッタ9を設け、図15に示すように、上記ビームスプリッタ9により分離された一方のビームを受光するフォーカスエラー信号SFEを生成するための第1の受光部81Aと、上記ビームスプリッタ9により分離された他方のビームを受光する上記被測定面TGの傾斜に伴う上記第1の受光部81A上でのビーム位置のシフトによる受光バランスのズレ量を算出するための第2の受光部81Bを有する受光部8を用いるようにしてもよい。
また、この変位検出装置110は、上述の図16に要部構成を示す変位検出装置100Bと同様に、受光光学系10Aに変位検出用の検出光Laを少なくとも2つのビームに分離するビーム分離手段として偏光ビームスプリッタや無偏光ビームスプリッタ等のビームスプリッタ9Bを設け、上記ビームスプリッタ9により分離された一方のビームを受光するフォーカスエラー信号SFEを生成するための第1の受光部81と、上記ビームスプリッタ9により分離された他方のビームを受光する上記被測定面TGの傾斜に伴う上記第1の受光部81上でのビーム位置のシフトによる受光バランスのズレ量を算出するための第2の受光部82を有する受光部8を用いるようにしてもよい。
また、この変位検出装置110は、上述の図17に要部構成を示した変位検出装置100Cと同様に、受光光学系10Aにビーム分離手段として設けた回折格子やHOE(Holographic Optical Element)等のビームスプリッタ9により変位検出用の検出光Laを少なくとも2つのビームに分離し、図18に示すように、フォーカスエラー信号SFEを生成するための第1の受光部81Aにより上記ビームスプリッタ9により分離された一方のビームを受光するとともに、受光領域が少なくとも4つに分割された一つあるいは複数の撮像素子、位置検出素子で構成された第2の受光部81Cで上記ビームスプリッタ9により分離された一方のビームを受光するようにしてもよい。
さらに、この変位検出装置110は、上述の図19に要部構成を示す変位検出装置100Dと同様に、受光光学系10Aにビーム分離手段として設けた偏光ビームスプリッタや無偏光ビームスプリッタ等を用いたビームスプリッタ9により変位検出用の検出光Laを少なくとも2つのビームに分離し、フォーカスエラー信号SFEを生成するための第1の受光部81により上記ビームスプリッタ9により分離された一方のビームを受光するとともに、受光領域が少なくとも4つに分割された一つあるいは複数の撮像素子、位置検出素子で構成された第2の受光部82Aで上記ビームスプリッタ9により分離された一方のビームを受光するようにしてもよい。
また、上記変位検出装置110では、演算処理部20Aにより、被測定面TGの傾斜に起因する受光部8上でのビーム位置のシフトによる受光バランスのズレ量を算出して位置補正信号γ・STCを生成し、上記演算処理部20Aにより生成された位置補正信号γ・STCを用いて、位置情報生成部60Aより、上記被測定面TGの傾斜の影響を補正した該被測定面TGの位置情報を生成するようにしたが、例えば、図22に示す変位検出装置120のように、補正テーブル61から読み出される位置補正信号Scを用いて、位置情報生成部60Bにより被測定面TGの傾斜の影響を補正した上記被測定面TGの位置情報を生成するようにすることもできる。
なお、この変位検出装置120において、演算処理部20B、信号処理部60B、補正テーブル61以外の構成要素については、上記変位検出装置110と同じなので、対応する構成要素に同一符号を図22中に付して、その詳細な説明を省略する。
この変位検出装置120において、信号処理部60Bは、演算処理部20Bにより生成されるポジション信号SPX,SPYに基づいて補正テーブル61から読み出される位置補正信号Scを用いて、信号処理部60Bにより被測定面TGの傾斜の影響を補正した当該被測定面TGの位置情報を生成する。
ここで、この変位検出装置120における演算処理部20Bは、例えば図23のブロックに示すように、上記受光部8の各受光素子8A〜8Dから出力される各出力信号A,B,C,Dから、加算回路21A〜21E、減算回路22A,22B、除算回路23A,23Bによりビーム位置信号としてポジション信号SPX,SPYを得るとともに、加算回路21F,21G、減算回路22Cにより上述した式(1)で与えられるフォーカスエラー信号SFEを得ている。
すなわち、上記演算処理部20Aでは、加算回路21A,21Bと減算回路22Aと除算回路23Aにより上述した式(2)で与えられる正規化したX方向のポジション信号SPXを算出するとともに、加算回路21C,21Dと減算回路22Bと除算回路23Bにより上述した式(3)で与えられる正規化したY方向のポジション信号SPYを算出している。
そして、上記補正テーブル61には、フォーカス制御部30によりフォーカスサーボを掛けた状態で上記被測定面TGの傾斜に起因してシフトしたビーム位置における上記被測定面TGの位置補正信号Scが上記演算処理部20Bにより生成される上記ポジション信号SPX,SPYすなわちビーム位置信号に対応させて予め記録されている。
上記位置補正信号Scは、この変位検出装置120を実装した工作機械などにおいて、実際に被測定面TGを傾斜させて計測して補正テーブル61に記録するようにしても良い。
この変位検出装置120では、補正テーブル61から読み出される位置補正信号Scを用いて、位置情報生成部60Bにより被測定面TGの傾斜の影響を補正した上記被測定面TGの位置情報を生成することができ、被測定面TGの面粗度、汚れ、微細なゴミ等の付着によって被測定面TGの変位量の測定に誤差が生じる可能性を減少させ、しかも、被測定面TGの傾きの影響を受けることなく本来求められる被測定面TGの変位情報のみを正確に得られるようにすることができる。