JP6022826B2 - パイプクーリングシステム、及びパイプクーリング方法 - Google Patents

パイプクーリングシステム、及びパイプクーリング方法 Download PDF

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Description

本願発明は、主にコンクリートのパイプクーリングに関するものであり、より具体的には、適切なクーリング終了を見極めることのできるパイプクーリングシステム、及びパイプクーリング方法に関するものである。
コンクリートは鋼材とともに最も重要な建設材料であり、ダム、トンネル、橋梁といった土木構造物や、集合住宅、オフィスビルなどの建築構造物をはじめ、様々な構造物に用いられている。このコンクリート構造物は、あらかじめ工場等で製作されて所定の場所まで運搬されることもあるが、土木構造物や建築構造物の場合、所定の場所に直接コンクリートを打設して構築されることが多い。いずれにしろ、セメントと水、骨材等を練り混ぜた状態のコンクリート(フレッシュコンクリート)を型枠の中に打設し、コンクリートの硬化を待って型枠を外すことでコンクリート構造物を構築するのが一般的である。
上記のとおり、コンクリートは時間の経過とともに硬化していく材料であり、詳しくは図7に示すように、時間の経過とともにコンクリートの内部温度が上昇するとともに(図7(a))、その強度も上がり(図7(b))、弾性係数も向上していく(図7(c))材料である。ところで、フレッシュコンクリートから「硬化した状態のコンクリート」になる過程で、あるいは硬化後に構造物として供用されている間に、コンクリートのひび割れが発生することがある。コンクリートのひび割れには、構造物の用途に影響を与えない無害なものもあるが、その用途に重大な影響を及ぼす有害なひび割れもある。そのため、ひび割れが発生する原因や機構についてはこれまで十分に解明されており、その対策に関しても様々な手法が採用されている。
ひび割れの種類はその発生原因によって分けられ、さらにコンクリート硬化前の原因と硬化後の原因で大別される。硬化前の原因としては、型枠の移動やセメントの異常凝結によって生じる「初期ひび割れ」、養生中における表面の急速乾燥によって生じる「プラスチック収縮ひび割れ」等が挙げられる。一方、硬化後の原因としては、水分損失に伴うセメントゲルの収縮によって生じる「乾燥収縮ひび割れ」や、セメントの水和熱に起因して生じる「温度ひび割れ」、鉄筋の腐食やアルカリ骨材反応によって生じる「物理的・化学的なひび割れ」、過大な荷重の作用や構造物沈下によって生じる「構造ひび割れ」等が挙げられる。
これらのひび割れは、適切な設計(配合)、施工、養生によって概ね抑制できることが、これまでの研究や実績により明らになっている。例えば、温度ひび割れの場合、後述するように躯体内部と外部との温度差が原因で発生することから、設計時、施工時でそれぞれ次のような対策が採用されている。すなわち設計時の対策としては、水和熱の上昇を抑えることを目的に、低発熱セメントの使用、セメント量の低減、水和熱を低減する混和剤の使用など、配合設計に工夫がなされる。あるいは、比較的ひび割れが発生しても影響のない箇所にひび割れを誘導する目的で、ひび割れ誘発目地の設置を計画することもある。施工時の代表的な対策としては、プレクーリング、ポストクーリング、長期断熱養生が挙げられる。プレクーリングとは、打設時のフレッシュコンクリート温度を冷却するもので、練り混ぜ水にフレーク状の氷を用いたり、ミキサやトラックアジテータにおける練り混ぜ中に液体窒素を噴射したり、種々の冷却方法が採用されている。
ポストクーリングには、クーリングスロットなど躯体内部に温度拡散面を設けて自然冷却を促進する手法もあるが、躯体内に敷設したパイプ内に冷却水を通水してコンクリートを冷却するパイプクーリングが主流である。このパイプクーリングは、あらかじめ躯体内に薄肉鋼管などのクーリングパイプ(以下、「冷却管」という。)を敷設し、コンクリート打設後に低温(例えば、コンクリート温度―20℃以下)の水や空気等(以下、「冷媒」という。)を冷却管内に送り込むだけの対策で、比較的簡易な設備と作業によって実現でき、合理的かつ経済的な手法である。しかも、コンクリート打設現場付近に河川やため池等があれば、冷媒の調達も容易となり、さらに低コストでひび割れ対策を実施することができる。
また、河川等において渇水期で構造物を完成させなければならない場合や、都市部において限られた工期で施工しなければならない場合など、早期にコンクリート強度を発現させる必要があるときには、低発熱セメントの使用やセメント量の低減などコンクリート配合で対応することが難しいこともある。仮に早強セメントを使用した場合、図7(a)に示すように、早くコンクリート温度が上昇し、つまり引張強度が小さい状態で引張応力が発生することとなり、温度ひび割れが促進される原因となる。他方、プレクーリングによる対策は、比較的コストがかかるうえ、相当の設備が必要であり、コストやヤードの問題から採用できないこともある。パイプクーリングは、このようなケースでも特段の問題なく採用できるため、この点からも有効な温度ひび割れ対策といえる。
ところが、これまでパイプクーリングはそれほど多用されることはなかった。これは、水平に冷却管を配置する「水平パイプクーリング」が主流になっていることに起因する。通常、温度ひび割れ対策は、大きな塊状(マッシブ)のコンクリートであるマスコンクリートで行われることが多い。コンクリート標準仕方書では、広がりのあるスラブで版厚が80〜100cm以上、下端に拘束がある壁では壁厚50cm以上の場合には、マスコンクリートとして温度ひび割れ対策を講じることとしている。平面的に大きな広がりを有するマスコンクリートであれば、冷却管の配置が容易であり、水平パイプクーリングも採用しやすい。ところが、温度ひび割れ対策を必要とするマスコンクリートには、橋脚など柱状のものや、大規模擁壁など壁状のものある。これら柱状、壁状のマスコンクリートは、比較的水平断面が小さく鉛直方向に長いのが一般的で、このような場合、水平パイプクーリングは採用し難い。なぜなら、狭い範囲における水平冷却管の敷設は、鉄筋の存在もあって作業が煩雑を極めることとなり、しかも多数のリフト(鉛直方向の打設ブロック)割りとなるため、この煩雑な配管作業を繰り返し行わなければならないからである。
ところで、パイプクーリングには、水平パイプクーリングのほかに、鉛直方向に冷却管を配置する「鉛直パイプクーリング」という手法がある。鉛直パイプクーリングも、基本的には水平パイプクーリングと同じ内容であるが、細部において種々のノウハウがあるため、多くの実績を持つ一部の者によって主に実施されているのが実情である。この鉛直パイプクーリングは、あらかじめ鉛直方向に冷却管を敷設しておけば、打設リフトごとに冷却管を配管する手間もなく、前出の柱状、壁状のマスコンクリートにも好適に採用することができるうえ、冷却管を流過した水(冷媒)はそのまま表面湛水養生としても利用できることから、極めて合理的な対策手法である。すなわち、この鉛直パイプクーリングと水平パイプクーリングを状況に応じて適宜採用すれば、パイプクーリングはより汎用的な温度ひび割れ対策になると考えられる。
一方で、パイプクーリングを採用した場合、コンクリート打設後もしばらくは冷却(クーリング)を継続しなければならないため、次工程に速やかに移行できないことが問題となるケースもある。
後述するように、温度ひび割れはコンクリート内部と外部(外気)の温度差が原因で生じることから、本来であれば図8(a)に示すように打設後のコンクリートの最大温度が外気温と同等になるまでクーリングすることが望ましい。しかしながら、前出のように短い渇水期で施工する場合、あるいは都市部において限定的な期間で施工しなければならない場合など、クーリングに十分な時間を割くことができないことも多い。また、打設後のコンクリート温度を監視するケースはむしろ稀であり、コンクリート温度が外気温と同等になったことを把握できない場合は多い。そのため、コンクリートの温度状態にかかわらず、打設後7日間でクーリングを終了させるのが一般的となっている。
打設後のコンクリートの温度変化は、パイプクーリングの方法、コンクリートの形状や寸法、養生の方法、外気温などによって異なり、すなわち施工現場ごとに相違するはずである。それにもかかわらずクーリング期間を一律7日間とすることは、図8(b)に示すように、コンクリートが外気温よりも著しく高温のままクーリングが終了してしまうこともある。この場合、せっかくパイプクーリングを実施したにもかかわらず、温度ひび割れが生じるおそれがある。あるいは、図8(c)に示すように、コンクリートは既に十分冷却されているにもかかわらず、無駄にクーリングしていることもある。この場合、不要なコストや労力がかかるうえ、次工程に移行するタイミングを遅らせることにもなる。
さらに、クーリングの終了時期は、単にコンクリート温度が外気温と同等になるまでとするのではなく、本来であればコンクリートの材齢も勘案したうえで決める必要がある。なぜなら、温度ひび割れの発生は、コンクリートの強度が重要な要因であり、このコンクリート強度は、既述のとおり時間の経過(つまりコンクリートの材齢)とともに変化していくからである。コンクリート材齢を勘案したクーリング期間とすることにより、ひび割れのない高品質なコンクリートを提供するとともに、無駄なクーリングが排除できる。
このように、パイプクーリングにとって、その終了のタイミングを計ることは極めて重要であるが、これまでパイプクーリング終了に関する技術について提案されることはなかった。打設後コンクリートの最大温度に着目したものとして特許文献1はあるが、設計や施工でコンクリート温度を調整するものであってパイプクーリングの終了に関するものではない。また、材齢と温度に着目してコンクリートの応力度を推定するものとして特許文献2があるが、これもパイプクーリングの終了に関するものではない。
特開2002−227414号公報 特開2006−010420号公報
既述のとおり、パイプクーリングにとって適切な終了時期を見極めることは極めて重要であるにもかかわらず、これまでその改善を図る技術について提案されることがなかった。本願発明の課題は、コンクリートのパイプクーリングにおいて、コンクリート材齢を勘案した適切なクーリング終了を見極める技術を提供することであり、これを実現するパイプクーリングシステム、及びパイプクーリング方法を提供することである。
本願発明は、パイプクーリングの終了を見極めるに当たって、打設後のコンクリート温度、及び外気温、さらにコンクリートの材齢に着目したものであり、これまでにはなかった発想に基づいて行われたものである。
本願発明のパイプクーリングシステムは、コンクリート内に敷設された冷却管に冷媒を流過させることでコンクリート内部の温度上昇を抑制するものであり、冷媒温度計測手段とコンクリート温度把握手段と判定手段を備えたものである。冷媒温度計測手段は、流過している間の冷媒の温度変化を計測するものであり、コンクリート温度把握手段は、所定材齢dにおけるコンクリートの内部最大温度Tc(d)を取得するものである。このコンクリート温度把握手段は、冷媒温度計測手段によって計測された冷媒の温度変化に基づいてコンクリート内部最大温度Tc(d)を推定する。一方、判定手段は、コンクリート冷却の継続の是非を判断するもので、温度差算出機能、許容温度差算出機能、及び判断機能を有している。ここで温度差算出機能は、材齢dにおける外気温度Te(d)とコンクリート内部最大温度Tc(d)との温度差Tg(d)を算出し、許容温度差算出機能は、材齢dにおけるコンクリートの引張応力度σi(d)、コンクリートの弾性係数Ee(d)、及びコンクリートの熱膨張係数αcに基づいて、材齢dにおける許容温度差Ta(d)を算出する。また判断機能は、温度差Tg(d)と許容温度差Ta(d)を比較し、この比較に基づいてコンクリート冷却の継続の是非を判断する。
本願発明のパイプクーリングシステムは、鉛直パイプクーリングに用いられるものとすることもできる。具体的には、冷却管がコンクリートの上部から底部にわたって配置されるとともにコンクリート内に埋設され、冷媒は冷却管の上方から下方へ向けて流過する。この場合、冷媒温度計測手段は、冷却管上部の冷媒温度を計測する上部冷媒温度計と、冷却管下部の冷媒温度を計測する下部冷媒温度計を有する。そしてコンクリート温度把握手段は、上部冷媒温度計の計測温度と下部冷媒温度計の計測温度に基づいてコンクリート内部最大温度Tc(d)を推定する。
本願発明のパイプクーリングシステムは、冷却管をケーシング管内に挿入する鉛直パイプクーリングに用いられるものとすることもできる。具体的には、ケーシング管がコンクリートの上部から底部にわたって配置されるとともにコンクリート内に埋設され、冷却管はこのケーシング管内に挿入される。冷媒はケーシング管と冷却管の間を下方から上方に向けて流過する。この場合、冷媒温度計測手段は、ケーシング管下部の冷媒温度を計測する下部冷媒温度計と、ケーシング管上部の冷媒温度を計測する上部冷媒温度計を有する。そしてコンクリート温度把握手段は、下部冷媒温度計の計測温度と上部冷媒温度計の計測温度に基づいてコンクリート内部最大温度Tc(d)を推定する。
本願発明のパイプクーリングシステムは、上部冷媒温度計と下部冷媒温度計が冷却管に取り付けられたものとすることができる。
本願発明のパイプクーリング方法は、コンクリート内に敷設された冷却管に冷媒を流過させることでコンクリート内部の温度上昇を抑制する方法であり、冷媒温度計測工程と、コンクリート温度把握工程、外気温設定工程、温度差算出工程、及び判定工程を備えた方法である。冷媒温度計測工程では、流過している間の冷媒の温度変化を計測する。温度把握工程では、所定材齢dにおけるコンクリート内部最大温度Tc(d)を求め、外気温設定工程では、材齢dにおける外気温度Te(d)を設定する。また温度差算出工程では、コンクリート内部最大温度Tc(d)と外気温度Te(d)との温度差Tg(d)を算出し、判定工程では、材齢dにおける許容温度差Ta(d)と温度差Tg(d)との比較に基づいて、コンクリート冷却の継続の是非を判断する。なお、コンクリート内部最大温度Tc(d)は、冷媒の温度変化に基づいて推定され、許容温度差Ta(d)は、材齢dにおけるコンクリートの引張応力度σi(d)、弾性係数Ee(d)、及びコンクリートの熱膨張係数αcに基づいて算出される。
本願発明のパイプクーリング方法は、鉛直パイプクーリングで実施する方法とすることもできる。具体的には、冷却管がコンクリートの上部から底部にわたって配置されるとともにコンクリート内に埋設され、冷媒は冷却管の上方から下方へ向けて流過する。この場合、冷媒温度計測工程では、冷却管上部の冷媒温度を計測するとともに、冷却管下部の冷媒温度を計測する。なおコンクリート内部最大温度Tc(d)は、冷却管上部の冷媒温度と冷却管下部の冷媒温度に基づいて推定される。
本願発明のパイプクーリング方法は、冷却管をケーシング管内に挿入する鉛直パイプクーリングで実施する方法とすることもできる。具体的には、ケーシング管がコンクリートの上部から底部にわたって配置されるとともにコンクリート内に埋設され、冷却管はこのケーシング管内に挿入される。冷媒はケーシング管と冷却管の間を下方から上方に向けて流過する。この場合、冷媒温度計測工程では、ケーシング管下部の冷媒温度を計測するとともに、ケーシング管上部の冷媒温度を計測する。なおコンクリート内部最大温度Tc(d)は、ケーシング管下部の冷媒温度とケーシング管上部の冷媒温度に基づいて推定される。
本願発明のパイプクーリングシステム、及びパイプクーリング方法には、次のような効果がある。
(1)クーリング終了時期を的確に判断することができるので、不要なクーリングによる無駄なコストや労力を省くことができるうえ、速やかに次工程に移行することができ、ひいては工期短縮に貢献する。
(2)コンクリート材齢に応じてクーリング終了を見極めることから、極めて的確な終了判断を行うことがきる。
(3)流過した冷媒の温度変化に基づいてコンクリート温度を推定することで、躯体内に温度計を設置することなくクーリング終了を判断することができる。あるいは、コンクリート内に設置した温度計が故障するといった不測の事態でも容易に対処することができる。
パイプクーリングシステム、及びパイプクーリング方法を示す全体斜視図。 躯体と冷却管に温度計を設置した状況を示す模式図。 コンクリート内に埋設されたケーシング管の中に、冷却管が挿入された状況を示す斜視図。 (a)は並列タイプの分岐管を示す詳細図、(b)は直列タイプの分岐管を示す詳細図。 コンクリート最大温度と外気温との温度差が許容温度差になるまでクーリングを継続することを示す温度変化図。 コンクリート内部の温度分布を2次曲線で近似したモデル図。 (a)はコンクリートの内部温度の経時変化を示す関係図、(b)はコンクリートの引張強度の経時変化を示す関係図、(c)はコンクリートの静弾性係数の経時変化を示す関係図。 (a)はコンクリート温度が外気温と同等になるまでクーリングを続けた場合の温度変化図、(b)は7日間クーリングを続けた結果コンクリート温度が外気温よりも高い状態のままクーリングを終了させたことを示す温度変化図、(c)は7日間クーリングを続けた結果コンクリート温度が外気温と同等になった後もクーリングを続けていることを示す温度変化図。
本願発明のパイプクーリングシステム、及びパイプクーリング方法の実施形態の例を図に基づいて説明する。
[全体概要]
1.温度ひび割れ
本願発明は温度ひび割れを抑制するパイプクーリングに関する技術であることから、まずは温度ひび割れについて簡単に説明する。コンクリートの養生期間中にコンクリート内部と表面付近で顕著な温度差が生じると、ひび割れが発生することが知られている。これが、いわゆる「温度ひび割れ」という現象である。この温度ひび割れは、内部拘束に起因するものと、外部拘束に起因するものに大別される。
コンクリートは硬化する過程で水とセメントの反応が起こるが、その際、水和熱が発生するためコンクリートの内部温度は時間とともに上昇する。ところが、外気温が低温であれば、熱伝達することによってコンクリート表面に近い部分(外周部)はそれほど大きく温度上昇することはない。また、既設コンクリートの上に新たにコンクリートを打ち継ぐ場合は、低温の既設コンクリートに熱伝導することによって、やはりコンクリート外周部はそれほど大きく温度上昇することはない。その結果、コンクリートの内部と外周部で顕著な温度差が生じ、体積膨張の相違から外周部に引張力が作用することで温度ひび割れが発生する。これが、内部拘束による温度ひび割れである。
コンクリートが所定の温度まで達すると、今度は温度降下に転ずる。温度が降下するに伴い、コンクリートは全体的に収縮しようとするが、既設コンクリートと接しているところでは拘束状態となっているため自由に収縮できない。この結果、コンクリート内において体積変化に相違が生じ、内部に引張力が作用することで温度ひび割れが発生する。これが、外部拘束による温度ひび割れである。なお、外部拘束による温度ひび割れは、躯体を貫通するひび割れとなることも少なくない。
このような機構によって発生する温度ひび割れを抑制するためには、コンクリート内部の温度上昇を抑える必要がある。ここで温度上昇の抑制には、コンクリートの最大温度を低下させるという意味と、早期にコンクリート温度を低下させるという意味がある。既述のとおり、温度ひび割れはコンクリートの体積変化による引張応力が原因となる。応力はひずみと弾性係数の積で求められ、当然ながら弾性係数が小さければかかる応力も小さくなる。図7(c)に示すように、材齢が若い間はコンクリートの弾性係数は小さい。すなわち、若材齢のコンクリートであれば、内部温度が上昇してもそれほど大きな引張応力が生じることはない。反面、材齢を重ねたコンクリートは、その弾性係数も大きい値を示し、温度上昇に敏感に反応して相当の引張応力が生じることとなる。また、現実のコンクリートのピーク時期は、温度解析で求めたそれより一般的に遅れる傾向にあり、これが温度ひび割れを発生させる一つの要因となっている。このように、いかに早期に(若材齢の間に)コンクリート温度を降下させるかが、クーリングにおける重要な要素となる。
2.パイプクーリング
次に、パイプクーリングの概要について説明する。なお、本願発明はパイプクーリングによるクーリング終了を見極める点に技術的特徴を備えるものであり、クーリングを実施するうえでは様々なパイプクーリング形式を採用することが可能である。もちろん水平パイプクーリングでも鉛直パイプクーリングでも実施できるが、ここでは便宜上、鉛直パイプクーリングの場合で説明する。図1は、パイプクーリングシステム、及びパイプクーリング方法を示す全体斜視図である。この図の躯体1は、河川内に構築される橋脚であり、締切矢板2によってドライにした状態で施工されている。躯体1内には、あらかじめ複数(図では10本)のケーシング管31が設置されており、ケーシング管31の中には冷却管32が挿入されている。なお、この図では冷却管32として可撓性ホースが用いられている。
この場合、冷却管32内に流過させる冷媒は河川の水であり、取水ポンプによって汲み上げられる。取水ポンプで汲み上げた冷却水(冷媒)は、取水ホースによって水槽に溜められ、さらに給水ポンプ33で汲み上げられ、第一給水ホース34を通じて第一分岐管35に送られる。第一分岐管35から分岐した第二給水ホース36は、第二分岐管37に接続されており、ここからさらに複数の冷却管32に分岐する。このように、冷却管32の一端は第二分岐管37に接続され、他端はケーシング管31の底部付近まで伸びており、これによって冷却水は躯体1の上部から底部へ流過することができる。躯体1の底部まで流過した冷却水は、コンクリート上面まで戻し湛水養生用として躯体1の上面に溜めてもよいし、図1のように、排水管38を通じて河川等に排水することもできる。
3.クーリング終了判断
本願発明の技術的特徴であるクーリングの終了判断について、その概要を説明する。図5は、コンクリート最大温度と外気温との温度差が所定の閾値(許容温度差)になるまでクーリングを継続することを示す温度変化図である。この図に示すように本願発明では、コンクリート内部最大温度と、外気温との温度差に基づいて、クーリングの終了を判断する。例えば、この温度差が所定の閾値(許容温度差)を下回る(許容温度差以下、又は許容温度差未満となる)ときにクーリング終了と判断される。なおここで用いる「許容温度差」は、判断時におけるコンクリート材齢に応じて算定される。すなわち、その材齢におけるコンクリートの引張応力度、その材齢におけるコンクリートの弾性係数、及びコンクリートの熱膨張係数に基づいて、その材齢における許容温度差が算出される。
コンクリートのひび割れは、コンクリートに生ずる最大主引張応力度がコンクリートの引張応力度を超えたときに発生する。さらに、コンクリートの引張応力度は材齢とともに変化し、ひずみから応力を求める際に用いるコンクリートの弾性係数も材齢とともに変化する。したがって、クーリングの終了を的確に判断するためには、コンクリート材齢を勘案する必要がある。
なお、コンクリート内部の温度は、あらかじめコンクリート内部に設置されたコンクリート温度計測手段によって推定することもできるが、冷却管32内を流過する冷却水の温度変化によって推定することもできる。冷却水は、コンクリートと熱交換することによってコンクリート温度を降下させることから、躯体1内に入った直後の冷却水よりも躯体1内を十分流過した後の冷却水の方が温度は上昇しているはずである。例えば、冷却管32を用いて冷却水を上部から下部に流過させ、そのまま下端から放出する場合は、図2に示す上部の冷媒温度計5Uが最も低温であり、以下、中央の冷媒温度計5C、下部の冷媒温度計5Lの順に高い温度を示すはずである。あるいは、ケーシング管31の中に冷却管32を挿入した場合であって、冷却水を冷却管32中に上部から下端まで流過させ、ケーシング管31と冷却管32の間を上方に流過する冷却水で温度降下させる場合は、図2に示す下部の冷媒温度計5Lが最も低温であり、以下、中央の冷媒温度計5C、上部の冷媒温度計5Uの順に高い温度を示すはずである。これらのことを利用すれば、冷媒温度計5U、5C、5Lの計測結果に基づいてコンクリート内部最大温度を推定することができる。
以下、本願発明を「パイプクーリングシステム」と「パイプクーリング方法」に分けて、それぞれ構成する要素ごとに詳述する。なお、パイプクーリングシステムとパイプクーリング方法に共通する内容については、パイプクーリングシステムの例で説明することとし、パイプクーリング方法では特有の内容について説明することとする。
[パイプクーリングシステム]
1.冷媒
冷媒は、冷媒管32の中を流過する低温の媒体で、代表的なものとして水が挙げられる。水のほか、空気などを利用することもできるし、水以外の液体や、空気以外の気体を用いることもできる。冷媒は、低温であることが必要で、その温度は適宜設計することができるが、一般的には打設するコンクリート温度より20℃以上低い温度とされる。ここでは、冷媒が「水」の場合で説明することとし、この水を「冷却水」ということとする。
2.冷却管
冷却管32は、その中に冷却水を流過させることから中空の管であり、図1では可撓性ホースを用いているが、その他、薄肉鋼管や塩化ビニル管など種々の管を利用することができる。躯体1のうち、コンクリート温度を降下させたい範囲に冷却管32は設置され、例えば躯体1全体を冷却しようとするときは、図1のように平面的に密に、しかも上部から底部にわたって冷却管32は配置される。
躯体1のコンクリートを冷却するためには、冷却管32は躯体1内に埋設されることになるが、型枠内の所定位置に冷却管32を設置した状態でコンクリートを打設してもよいし、図3のようにケーシング管31をコンクリート内に埋設しておき、その中に冷却管32を挿入することもできる。ケーシング管31(あるいは冷却管32)は、型枠内で自立させる必要があり、型枠内の配筋や、形鋼(例えば山形鋼)による架台などに取り付けることができる。なお、鉛直パイプクーリングの場合は、ケーシング管31(あるいは冷却管32)を設置した状態でリフトごとにコンクリートを打設できるが、水平パイプクーリングの場合は、リフトごとに打設する都度、コンクリート表面に冷却管32(あるいはケーシング管31)を設置することになる。
3.冷媒圧送手段
冷媒圧送手段は、冷却水を冷却管32内に供給するものであり、図1に示す給水ポンプ33等が好んで用いられる。図1に示すように水槽内に冷却水を溜めて水源とし、ここから給水ポンプ33で汲み上げて送水することもできるし、現場の状況によっては給水ポンプ33を直接河川等の水源に設置して汲み上げることもできる。
通常、多数の冷却管32が躯体1内に設置されることから、給水ポンプ33と冷却管32の間には分岐手段が置かれる。この分岐手段は、1箇所に限らず複数箇所に設置されることもあり、図1では、親分岐管(第一分岐管35)が1箇所、子分岐管(第二分岐管37)が2箇所配置されている。図4は、分岐管を示す詳細図であり、(a)は並列タイプの分岐管、(b)は直列タイプの分岐管を示す。この分岐管は、主管35aと複数(図では6箇所)の枝口35bを備えており、給水ポンプ33から給水される冷却水が主管35aに入り、枝口35に接続された冷却管32に送られる。当然ながら分岐管は、水圧を考慮した材質や構造とすることが望ましい。
4.コンクリート温度把握手段
コンクリート温度把握手段は、打設後の所定時におけるコンクリート内部最大温度Tcを取得するものである。このとき、コンクリート内部最大温度Tcはコンクリートの材齢dとともに記録される。つまり、いつ取得したものなのかを特定してコンクリート内部最大温度Tcを記録する。ここでは便宜上、材齢dの関数であることを明確にするためコンクリート内部最大温度をTc(d)として表す(以下、コンクリート内部最大温度Tc(d)という。)。なおここでいう材齢dとは、所定の基準時からの経過時間を意味する概念であり、その基準時としてはフレッシュコンクリートの練り上がり時や、コンクリートの打設完了時などとすることができる。
コンクリート内部最大温度Tc(d)の取得は、コンクリート温度計測手段を用いる手法と、冷却水の温度変化から推定する手法に大別される。まず、コンクリート温度計測手段を用いる手法について説明する。コンクリート温度計4(コンクリート温度計測手段)は、図2に示すように躯体1内に埋設された状態でコンクリート温度を計測するもので、例えば熱電対が例示できる。なお、コンクリート内に埋設するため、コンクリート温度計4は打設前の鉄筋等を利用して取り付けられる。
温度解析を行うことで、躯体1のうち最大温度を示す位置はあらかじめ把握できる。したがってその位置にコンクリート温度計4を設置しておけば、コンクリート温度計4によって計測されたコンクリート温度が、すなわちその材齢d(計測時)におけるコンクリート内部最大温度Tc(d)として取得できる。なお、ここで行う温度解析は、有限要素法、有限差分法、シュミット法、カールソン法など種々の解析手法を採用することができる。温度解析によって得られた結果(予測温度)は、例えばコンピュータで処理可能な形式として記憶媒体(コンピュータのハードディスクやCD−ROM等)に記録しておくことができる。
一方、必ずしも最大温度を示す位置にコンクリート温度計4を設置できるとは限らない。この場合は、コンクリート温度計4の計測値に基づいてコンクリート内部最大温度Tc(d)を推定することとなる。この推定には、例えば図6に示すような2次曲線をはじめ、3次曲線やその他の高次曲線、指数関数等、種々の推定式や温度解析などを利用することができる。2次曲線により推定する場合は、コンクリート内部の温度分布を2次曲線で近似し、コンクリート温度計4の計測値に基づいてコンクリート内部最大温度Tc(d)を推定する。あるいは、温度解析によって求められる温度分布を利用することもできる。すなわち、コンクリート温度計4によって実際に計測したコンクリート温度を、当該材齢d(計測時)における温度分布に照らし合わせ、計測温度と予測温度(解析上の温度)の温度差から解析上の最大温度を調整し、コンクリート内部最大温度Tc(d)とする。そのため、コンクリート温度計4の設置位置(躯体1内のどこに設置したか)は明らかにしておく必要があり、異なる位置に2箇所以上のコンクリート温度計4を設置しておくのが望ましい。
次に、冷却水の温度変化から推定する手法について説明する。冷却水の温度変化から間接的にコンクリート温度を推定する場合、冷却水の温度変化を把握することとなる。既述のとおり、コンクリートの温度降下は冷却水との熱交換によって行われるものであり、躯体1に入る前と躯体1から出たときの冷却水の温度差を把握することによって、コンクリート温度の降下量を推定することができる。そのため、冷却水の温度は2箇所以上で計測する必要がある。望ましくは、躯体1に入る直前もしくは入った直後の冷却水温度を計測し、躯体1から出た直後もしくは出る直前の冷却水温度を計測し、その温度差を把握する。図2に示すように、さらに中央付近での冷却水温度を計測してもよい。冷却水の温度を計測する場合、冷媒管32の表面(外側)に熱電対等の冷媒温度計(冷媒温度計測手段)を取り付けるか、あるいは冷媒管32の内側に冷媒温度計を取り付けて計測する。冷媒温度計もコンクリート温度計4と同様、熱電対等を利用することができる。
冷却水の温度変化に基づいて解析することで、その材齢dにおけるコンクリートの温度分布を推定することができる。例えば、コンクリートのボリューム、形状、打設温度、及び冷却管32の配置、本数、冷却水の流量(流速)等、諸条件を用いて熱量の計算を行えば、コンクリートの温度分布を求めることができる。さらにこのとき、温度解析による当該材齢dにおける温度分布を利用することもできる。この計算は、計算機を用いた温度推定手段によって実行することが可能で、例えばプログラムとしてコンピュータに処理させることができる。
コンクリート温度計測手段を用いる手法、又は冷却水の温度変化から推定する手法を用いたコンクリート温度把握手段で取得されたコンクリート内部最大温度Tc(d)は、例えばコンピュータで処理可能な形式として記憶媒体(コンピュータのハードディスクやCD−ROM等)に記録することができる。
5.判定手段
判定手段は、コンクリート冷却(クーリング)の継続の是非を判断するものである。既述のとおり、コンクリート内部最大温度Tc(d)と外気温度Te(d)の温度差が、許容温度差以下(未満)になればクーリングを終了できると判断する(図5)。したがって判定手段は、コンクリート内部最大温度Tc(d)と外気温度Te(d)との温度差Tg(d)を算出する機能(温度差算出機能)を備えている。また、許容温度差Ta(d)は材齢dによって異なるもので、すなわち材齢dを変数として求められるものであり、判定手段はこれを算出する機能(許容温度差算出機能)も備えている。なお、外気温度Te(d)、温度差Tg(d)、及び許容温度差Ta(d)が材齢dの関数であることを明確にするため、コンクリート内部最大温度Tc(d)と同様、それぞれ材齢dを用いて表している。
(温度差算出機能)
温度差Tg(d)を算出するためには、コンクリート温度把握手段で取得したコンクリート内部最大温度Tc(d)のほかに外気温度Te(d)を設定する必要がある。この外気温度Te(d)は、その材齢dにおける外気の温度を直接計測して得ることができる。あるいは、過去の実績(気温データ)に基づいて、その材齢dに該当する日時の外気温度Te(d)を推定することもできる。外気温度Te(d)が設定できれば、コンクリート内部最大温度Tc(d)との差を次式により求めて温度差Tg(d)を得る。
温度差Tg(d)=Tc(d)−Te(d) ・・・(式1)
(許容温度差算出機能)
一般的に、温度ひび割れの予測は、温度解析によって「温度ひび割れ指数」を求めることで行われる。温度ひび割れ指数は、所定の材齢におけるコンクリートの引張応力度σi(d)を、コンクリートの最大主引張応力度で除した値であり、温度ひび割れ指数が1.0を下回ると温度ひび割れが発生すると予測される。つまり、コンクリートの最大主引張応力度が引張応力度σi(d)を下回ったことが、クーリングを終了する目安になるといえる。なおコンクリートの引張応力度σi(d)は、図7(b)に示すように材齢dとともに変化することが知られており、ここでも材齢dの関数であることを明確にするため、材齢dを用いて引張応力度を表している。
コンクリートの最大主引張応力度は、ひずみεc(d)とコンクリートの弾性係数Ee(d)との積によって求められる。ひずみεc(d)とコンクリートの弾性係数Ee(d)も材齢dによって異なる値を示すことから、ここでも材齢dの関数であることを明確にするため、材齢dを用いて表している。コンクリートの弾性係数Ee(d)は、例えば図6(c)に示すような経時変化をすることが知られており、この線形を利用して所定の材齢dにおけるコンクリートの弾性係数Ee(d)を求めることができる。
一方、ひずみεc(d)は、コンクリートの熱膨張係数αcを用いて算出することができる。熱膨張係数αcは、温度に伴う膨張や収縮の度合いを表す指標であり、単位は℃の逆数である。つまり、熱膨張係数αcに温度を乗じることでひずみを求めることができ、この温度を温度差Tg(d)とすれば、その材齢におけるコンクリートの最大ひずみを求めることができる。例えば、最大ひずみεc(d)を求めるには、次式を例示することができる。
εc(d)=C×αc×Tg(d) ・・・(式2)
式2で示すCは、所定の定数であり、コンクリート内部の温度分布を推定する際に用いる推定式に応じて定められる値である。例えば、この推定式として2次曲線を選定した場合、Cは次式によって求めることができる。
C=m/(1−ν) ・・・(式3)
ここで、νはコンクリートのポアソン比であり、mはコンクリート内の最大温度を示す位置によって定められる係数である。例えば、図6に示すようにコンクリートの躯体1の中心軸(X軸)からHe離れた位置で最大温度を示し、このHeが躯体1全厚Hの1/6である場合、係数mとして3/8が与えられる。また、コンクリートの躯体1の中心軸(X軸)で最大温度を示す場合(つまりHe=0の場合)、係数mとして2/3が与えられる。なお、式2で求められるひずみはいわゆる内部拘束によるものであり、以下ではこのひずみを最大ひずみとした場合で説明しているが、さらに外部拘束によるひずみを加えたものを最大ひずみとして同様に考えることもできる。
最大ひずみεc(d)とコンクリートの弾性係数Ee(d)とが得られると、コンクリートの最大主引張応力度σmax(d)を、次式により算出できる。
σmax(d)=εc(d)×Ee(d)=C×αc×Tg(d)×Ee(d) ・・・(式4)
このコンクリートの最大主引張応力度σmax(d)がコンクリートの引張応力度σi(d)以下となることを、クーリング終了の条件とすれば、次式で表すことができる。
σi(d)≧σmax(d)=C×αc×Tg(d)×Ee(d) ・・・(式5)
∴Tg(d)≦σi(d)/[C×αc×Ee(d)] ・・・(式6)
つまり、式6がひとつのクーリング終了の条件であり、式6の右辺がその際の許容温度差Ta(d)である。クーリング終了の条件は、最大主引張応力度σmax(d)が引張応力度σi(d)以下である場合に限らず、引張応力度σi(d)未満とする場合や、引張応力度σi(d)の90%以下とするなど、種々の条件が設定できる。いずれにしろ、温度差Tg(d)と許容温度差Ta(d)に基づいてクーリング終了を判断することができる(判断機能)。なお、クーリングを継続する(終了しない)と判断した場合、上記一連の処理をクーリング終了と判断するまで繰り返し実施することもできる。
(プログラムによる処理)
判定手段は、プログラムとしてコンピュータに処理させるものとすることもできる。このプログラムは、コンクリート内部最大温度Tc(d)、外気温度Te(d)、材齢d、熱膨張係数αcを読みだす機能と、これらを用いて温度差Tg(d)を算出する機能(温度差算出機能)を備え、さらに、コンクリートの弾性係数Ee(d)、引張応力度σi(d)、及び許容温度差Ta(d)を算出する機能(許容温度差算出機能)を備える。また、温度差Tg(d)と許容温度差Ta(d)を比較してクーリングの継続/終了の判断を行う機能(判断機能)や、その判断結果をディスプレイや印刷機に出力する機能を備えることもできる。
[パイプクーリング方法]
1.温度把握工程
温度把握工程は、所定材齢dにおける前記コンクリート内部最大温度Tc(d)を求める工程であり、その内容はパイプクーリングシステムの「コンクリート温度把握手段」の説明と同様である。なお、コンクリート内部最大温度Tc(d)を取得するには、コンクリート温度計測手段を用いる手法、冷却水の温度変化から推定する手法のいずれかを選択できることも、既に述べたとおりである。
2.外気温設定工程
外気温設定工程は、所定材齢dにおける外気温度Te(d)を設定する工程であり、その内容はパイプクーリングシステムの「温度差算出機能」の中で説明したのと同様である。
3.温度差算出工程
温度差算出工程は、コンクリート内部最大温度Tc(d)と外気温度Te(d)との温度差Tg(d)を算出する工程であり、その内容はパイプクーリングシステムの「温度差算出機能」の中で説明したのと同様である。
4.判定工程
判定工程は、所定材齢dにおける許容温度差Ta(d)と温度差Tg(d)との比較に基づいて、コンクリート冷却の継続の是非を判断する工程であり、その内容はパイプクーリングシステムの「判定手段」の説明と同様である。なお、許容温度差Ta(d)は、所定材齢dにおけるコンクリートの引張応力度σi(d)、材齢dにおけるコンクリートの弾性係数Ee(d)、及びコンクリートの熱膨張係数αcに基づいて算出され、その内容はパイプクーリングシステムの「許容温度差算出機能」の説明と同様である。なお、クーリングを継続する(終了しない)と判断した場合、温度把握工程〜判定工程をクーリング終了と判断するまで繰り返し実施することもできる。
本願発明のパイプクーリングシステム、及びパイプクーリング方法は、橋梁の下部工やダム等の土木構造物、オフィスビル等の建築構造物、その他種々のコンクリート構造物に利用することができる。本願発明が、温度ひび割れの少ない、いわば高品質のコンクリート構造物を提供することを考えれば、産業上利用できるばかりでなく社会的にも大きな貢献を期待し得る発明といえる。
1 躯体
2 締切矢板
31 ケーシング管
32 冷却管
33 給水ポンプ
34 第一給水ホース
35 第一分岐管
35a (分岐管の)主管
35b (分岐管の)枝口
36 第二給水ホース
37 第二分岐管
38 排水管
33 給水ポンプ
4 コンクリート温度計
5U 上部の冷媒温度計
5C 中央の冷媒温度計
5L 下部の冷媒温度計

Claims (7)

  1. コンクリート内に敷設された冷却管に冷媒を流過させることで、コンクリート内部の温度上昇を抑制するパイプクーリングシステムにおいて、
    流過している間の前記冷媒の温度変化を計測する冷媒温度計測手段と、
    所定材齢dにおけるコンクリート内部最大温度Tc(d)を取得するコンクリート温度把握手段と、
    コンクリート冷却の継続の是非を判断する判定手段と、を備え、
    前記コンクリート温度把握手段は、前記冷媒温度計測手段によって計測された前記冷媒の温度変化に基づいて、前記コンクリート内部最大温度Tc(d)を推定し、
    前記判定手段は、
    前記材齢dにおける外気温度Te(d)と、前記コンクリート内部最大温度Tc(d)と、の温度差Tg(d)を算出する温度差算出機能と、
    前記材齢dにおける許容温度差Ta(d)を、前記材齢dにおけるコンクリートの引張応力度σi(d)、前記材齢dにおけるコンクリートの弾性係数Ee(d)、及びコンクリートの熱膨張係数αcに基づいて、算出する許容温度差算出機能と、
    前記温度差Tg(d)と前記許容温度差Ta(d)を比較し、該比較に基づいてコンクリート冷却の継続の是非を判断する判断機能と、を有することを特徴とするパイプクーリングシステム。
  2. 前記冷却管は、コンクリートの上部から底部にわたって配置されるとともに、コンクリート内に埋設され、
    前記冷媒温度計測手段は、前記冷却管上部の前記冷媒の温度を計測する上部冷媒温度計と、前記冷却管下部の前記冷媒の温度を計測する下部冷媒温度計と、を有し、
    前記コンクリート温度把握手段は、前記上部冷媒温度計で計測した温度と前記下部冷媒温度計で計測した温度に基づいて、前記コンクリート内部最大温度Tc(d)を推定する、ことを特徴とする請求項1記載のパイプクーリングシステム。
  3. ケーシング管が、コンクリートの上部から底部にわたって配置されるとともにコンクリート内に埋設され、前記冷却管は、該ケーシング管内に挿入され、
    前記冷媒温度計測手段は、前記ケーシング管下部の前記冷媒の温度を計測する下部冷媒温度計と、前記ケーシング管上部の前記冷媒の温度を計測する上部冷媒温度計と、を有し、
    前記コンクリート温度把握手段は、前記下部冷媒温度計で計測した温度と前記上部冷媒温度計で計測した温度に基づいて、前記コンクリート内部最大温度Tc(d)を推定する、ことを特徴とする請求項1記載のパイプクーリングシステム。
  4. 前記上部冷媒温度計と前記下部冷媒温度計が、前記冷却管に取り付けられた、ことを特徴とする請求項2又は請求項3記載のパイプクーリングシステム。
  5. コンクリート内に敷設された冷却管に冷媒を流過させることで、コンクリート内部の温度上昇を抑制するパイプクーリング方法において、
    流過している間の前記冷媒の温度変化を計測する冷媒温度計測工程と、
    所定材齢dにおけるコンクリート内部最大温度Tc(d)を求めるコンクリート温度把握工程と、
    前記材齢dにおける外気温度Te(d)を設定する外気温設定工程と、
    前記コンクリート内部最大温度Tc(d)と前記外気温度Te(d)との温度差Tg(d)を算出する温度差算出工程と、
    前記材齢dにおける許容温度差Ta(d)と前記温度差Tg(d)との比較に基づいて、コンクリート冷却の継続の是非を判断する判定工程と、を備え、
    前記コンクリート内部最大温度Tc(d)は、前記冷媒の温度変化に基づいて推定され、
    前記許容温度差Ta(d)は、前記材齢dにおけるコンクリートの引張応力度σi(d)、前記材齢dにおけるコンクリートの弾性係数Ee(d)、及びコンクリートの熱膨張係数αcに基づいて算出される、ことを特徴とするパイプクーリング方法。
  6. 前記冷却管は、コンクリートの上部から底部にわたって配置されるとともに、コンクリート内に埋設され、
    前記冷媒温度計測工程では、前記冷却管上部の前記冷媒の温度を計測するとともに、前記冷却管下部の前記冷媒の温度を計測し、
    前記コンクリート内部最大温度Tc(d)は、前記冷却管上部の前記冷媒の温度と前記冷却管下部の前記冷媒の温度に基づいて推定される、ことを特徴とする請求項5記載のパイプクーリング方法。
  7. ケーシング管が、コンクリートの上部から底部にわたって配置されるとともにコンクリート内に埋設され、前記冷却管は、該ケーシング管内に挿入され、
    前記冷媒温度計測工程では、前記ケーシング管下部の前記冷媒の温度を計測するとともに、前記ケーシング管上部の前記冷媒の温度を計測し、
    前記コンクリート内部最大温度Tc(d)は、前記ケーシング管下部の前記冷媒の温度と前記ケーシング管上部の前記冷媒の温度に基づいて推定される、ことを特徴とする請求項5記載のパイプクーリング方法。
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