JP6022826B2 - パイプクーリングシステム、及びパイプクーリング方法 - Google Patents
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Description
(1)クーリング終了時期を的確に判断することができるので、不要なクーリングによる無駄なコストや労力を省くことができるうえ、速やかに次工程に移行することができ、ひいては工期短縮に貢献する。
(2)コンクリート材齢に応じてクーリング終了を見極めることから、極めて的確な終了判断を行うことがきる。
(3)流過した冷媒の温度変化に基づいてコンクリート温度を推定することで、躯体内に温度計を設置することなくクーリング終了を判断することができる。あるいは、コンクリート内に設置した温度計が故障するといった不測の事態でも容易に対処することができる。
1.温度ひび割れ
本願発明は温度ひび割れを抑制するパイプクーリングに関する技術であることから、まずは温度ひび割れについて簡単に説明する。コンクリートの養生期間中にコンクリート内部と表面付近で顕著な温度差が生じると、ひび割れが発生することが知られている。これが、いわゆる「温度ひび割れ」という現象である。この温度ひび割れは、内部拘束に起因するものと、外部拘束に起因するものに大別される。
次に、パイプクーリングの概要について説明する。なお、本願発明はパイプクーリングによるクーリング終了を見極める点に技術的特徴を備えるものであり、クーリングを実施するうえでは様々なパイプクーリング形式を採用することが可能である。もちろん水平パイプクーリングでも鉛直パイプクーリングでも実施できるが、ここでは便宜上、鉛直パイプクーリングの場合で説明する。図1は、パイプクーリングシステム、及びパイプクーリング方法を示す全体斜視図である。この図の躯体1は、河川内に構築される橋脚であり、締切矢板2によってドライにした状態で施工されている。躯体1内には、あらかじめ複数(図では10本)のケーシング管31が設置されており、ケーシング管31の中には冷却管32が挿入されている。なお、この図では冷却管32として可撓性ホースが用いられている。
本願発明の技術的特徴であるクーリングの終了判断について、その概要を説明する。図5は、コンクリート最大温度と外気温との温度差が所定の閾値(許容温度差)になるまでクーリングを継続することを示す温度変化図である。この図に示すように本願発明では、コンクリート内部最大温度と、外気温との温度差に基づいて、クーリングの終了を判断する。例えば、この温度差が所定の閾値(許容温度差)を下回る(許容温度差以下、又は許容温度差未満となる)ときにクーリング終了と判断される。なおここで用いる「許容温度差」は、判断時におけるコンクリート材齢に応じて算定される。すなわち、その材齢におけるコンクリートの引張応力度、その材齢におけるコンクリートの弾性係数、及びコンクリートの熱膨張係数に基づいて、その材齢における許容温度差が算出される。
1.冷媒
冷媒は、冷媒管32の中を流過する低温の媒体で、代表的なものとして水が挙げられる。水のほか、空気などを利用することもできるし、水以外の液体や、空気以外の気体を用いることもできる。冷媒は、低温であることが必要で、その温度は適宜設計することができるが、一般的には打設するコンクリート温度より20℃以上低い温度とされる。ここでは、冷媒が「水」の場合で説明することとし、この水を「冷却水」ということとする。
冷却管32は、その中に冷却水を流過させることから中空の管であり、図1では可撓性ホースを用いているが、その他、薄肉鋼管や塩化ビニル管など種々の管を利用することができる。躯体1のうち、コンクリート温度を降下させたい範囲に冷却管32は設置され、例えば躯体1全体を冷却しようとするときは、図1のように平面的に密に、しかも上部から底部にわたって冷却管32は配置される。
冷媒圧送手段は、冷却水を冷却管32内に供給するものであり、図1に示す給水ポンプ33等が好んで用いられる。図1に示すように水槽内に冷却水を溜めて水源とし、ここから給水ポンプ33で汲み上げて送水することもできるし、現場の状況によっては給水ポンプ33を直接河川等の水源に設置して汲み上げることもできる。
コンクリート温度把握手段は、打設後の所定時におけるコンクリート内部最大温度Tcを取得するものである。このとき、コンクリート内部最大温度Tcはコンクリートの材齢dとともに記録される。つまり、いつ取得したものなのかを特定してコンクリート内部最大温度Tcを記録する。ここでは便宜上、材齢dの関数であることを明確にするためコンクリート内部最大温度をTc(d)として表す(以下、コンクリート内部最大温度Tc(d)という。)。なおここでいう材齢dとは、所定の基準時からの経過時間を意味する概念であり、その基準時としてはフレッシュコンクリートの練り上がり時や、コンクリートの打設完了時などとすることができる。
判定手段は、コンクリート冷却(クーリング)の継続の是非を判断するものである。既述のとおり、コンクリート内部最大温度Tc(d)と外気温度Te(d)の温度差が、許容温度差以下(未満)になればクーリングを終了できると判断する(図5)。したがって判定手段は、コンクリート内部最大温度Tc(d)と外気温度Te(d)との温度差Tg(d)を算出する機能(温度差算出機能)を備えている。また、許容温度差Ta(d)は材齢dによって異なるもので、すなわち材齢dを変数として求められるものであり、判定手段はこれを算出する機能(許容温度差算出機能)も備えている。なお、外気温度Te(d)、温度差Tg(d)、及び許容温度差Ta(d)が材齢dの関数であることを明確にするため、コンクリート内部最大温度Tc(d)と同様、それぞれ材齢dを用いて表している。
温度差Tg(d)を算出するためには、コンクリート温度把握手段で取得したコンクリート内部最大温度Tc(d)のほかに外気温度Te(d)を設定する必要がある。この外気温度Te(d)は、その材齢dにおける外気の温度を直接計測して得ることができる。あるいは、過去の実績(気温データ)に基づいて、その材齢dに該当する日時の外気温度Te(d)を推定することもできる。外気温度Te(d)が設定できれば、コンクリート内部最大温度Tc(d)との差を次式により求めて温度差Tg(d)を得る。
温度差Tg(d)=Tc(d)−Te(d) ・・・(式1)
一般的に、温度ひび割れの予測は、温度解析によって「温度ひび割れ指数」を求めることで行われる。温度ひび割れ指数は、所定の材齢におけるコンクリートの引張応力度σi(d)を、コンクリートの最大主引張応力度で除した値であり、温度ひび割れ指数が1.0を下回ると温度ひび割れが発生すると予測される。つまり、コンクリートの最大主引張応力度が引張応力度σi(d)を下回ったことが、クーリングを終了する目安になるといえる。なおコンクリートの引張応力度σi(d)は、図7(b)に示すように材齢dとともに変化することが知られており、ここでも材齢dの関数であることを明確にするため、材齢dを用いて引張応力度を表している。
εc(d)=C×αc×Tg(d) ・・・(式2)
C=m/(1−ν) ・・・(式3)
ここで、νはコンクリートのポアソン比であり、mはコンクリート内の最大温度を示す位置によって定められる係数である。例えば、図6に示すようにコンクリートの躯体1の中心軸(X軸)からHe離れた位置で最大温度を示し、このHeが躯体1全厚Hの1/6である場合、係数mとして3/8が与えられる。また、コンクリートの躯体1の中心軸(X軸)で最大温度を示す場合(つまりHe=0の場合)、係数mとして2/3が与えられる。なお、式2で求められるひずみはいわゆる内部拘束によるものであり、以下ではこのひずみを最大ひずみとした場合で説明しているが、さらに外部拘束によるひずみを加えたものを最大ひずみとして同様に考えることもできる。
σmax(d)=εc(d)×Ee(d)=C×αc×Tg(d)×Ee(d) ・・・(式4)
このコンクリートの最大主引張応力度σmax(d)がコンクリートの引張応力度σi(d)以下となることを、クーリング終了の条件とすれば、次式で表すことができる。
σi(d)≧σmax(d)=C×αc×Tg(d)×Ee(d) ・・・(式5)
∴Tg(d)≦σi(d)/[C×αc×Ee(d)] ・・・(式6)
判定手段は、プログラムとしてコンピュータに処理させるものとすることもできる。このプログラムは、コンクリート内部最大温度Tc(d)、外気温度Te(d)、材齢d、熱膨張係数αcを読みだす機能と、これらを用いて温度差Tg(d)を算出する機能(温度差算出機能)を備え、さらに、コンクリートの弾性係数Ee(d)、引張応力度σi(d)、及び許容温度差Ta(d)を算出する機能(許容温度差算出機能)を備える。また、温度差Tg(d)と許容温度差Ta(d)を比較してクーリングの継続/終了の判断を行う機能(判断機能)や、その判断結果をディスプレイや印刷機に出力する機能を備えることもできる。
1.温度把握工程
温度把握工程は、所定材齢dにおける前記コンクリート内部最大温度Tc(d)を求める工程であり、その内容はパイプクーリングシステムの「コンクリート温度把握手段」の説明と同様である。なお、コンクリート内部最大温度Tc(d)を取得するには、コンクリート温度計測手段を用いる手法、冷却水の温度変化から推定する手法のいずれかを選択できることも、既に述べたとおりである。
外気温設定工程は、所定材齢dにおける外気温度Te(d)を設定する工程であり、その内容はパイプクーリングシステムの「温度差算出機能」の中で説明したのと同様である。
温度差算出工程は、コンクリート内部最大温度Tc(d)と外気温度Te(d)との温度差Tg(d)を算出する工程であり、その内容はパイプクーリングシステムの「温度差算出機能」の中で説明したのと同様である。
判定工程は、所定材齢dにおける許容温度差Ta(d)と温度差Tg(d)との比較に基づいて、コンクリート冷却の継続の是非を判断する工程であり、その内容はパイプクーリングシステムの「判定手段」の説明と同様である。なお、許容温度差Ta(d)は、所定材齢dにおけるコンクリートの引張応力度σi(d)、材齢dにおけるコンクリートの弾性係数Ee(d)、及びコンクリートの熱膨張係数αcに基づいて算出され、その内容はパイプクーリングシステムの「許容温度差算出機能」の説明と同様である。なお、クーリングを継続する(終了しない)と判断した場合、温度把握工程〜判定工程をクーリング終了と判断するまで繰り返し実施することもできる。
2 締切矢板
31 ケーシング管
32 冷却管
33 給水ポンプ
34 第一給水ホース
35 第一分岐管
35a (分岐管の)主管
35b (分岐管の)枝口
36 第二給水ホース
37 第二分岐管
38 排水管
33 給水ポンプ
4 コンクリート温度計
5U 上部の冷媒温度計
5C 中央の冷媒温度計
5L 下部の冷媒温度計
Claims (7)
- コンクリート内に敷設された冷却管に冷媒を流過させることで、コンクリート内部の温度上昇を抑制するパイプクーリングシステムにおいて、
流過している間の前記冷媒の温度変化を計測する冷媒温度計測手段と、
所定材齢dにおけるコンクリート内部最大温度Tc(d)を取得するコンクリート温度把握手段と、
コンクリート冷却の継続の是非を判断する判定手段と、を備え、
前記コンクリート温度把握手段は、前記冷媒温度計測手段によって計測された前記冷媒の温度変化に基づいて、前記コンクリート内部最大温度Tc(d)を推定し、
前記判定手段は、
前記材齢dにおける外気温度Te(d)と、前記コンクリート内部最大温度Tc(d)と、の温度差Tg(d)を算出する温度差算出機能と、
前記材齢dにおける許容温度差Ta(d)を、前記材齢dにおけるコンクリートの引張応力度σi(d)、前記材齢dにおけるコンクリートの弾性係数Ee(d)、及びコンクリートの熱膨張係数αcに基づいて、算出する許容温度差算出機能と、
前記温度差Tg(d)と前記許容温度差Ta(d)を比較し、該比較に基づいてコンクリート冷却の継続の是非を判断する判断機能と、を有することを特徴とするパイプクーリングシステム。 - 前記冷却管は、コンクリートの上部から底部にわたって配置されるとともに、コンクリート内に埋設され、
前記冷媒温度計測手段は、前記冷却管上部の前記冷媒の温度を計測する上部冷媒温度計と、前記冷却管下部の前記冷媒の温度を計測する下部冷媒温度計と、を有し、
前記コンクリート温度把握手段は、前記上部冷媒温度計で計測した温度と前記下部冷媒温度計で計測した温度に基づいて、前記コンクリート内部最大温度Tc(d)を推定する、ことを特徴とする請求項1記載のパイプクーリングシステム。 - ケーシング管が、コンクリートの上部から底部にわたって配置されるとともにコンクリート内に埋設され、前記冷却管は、該ケーシング管内に挿入され、
前記冷媒温度計測手段は、前記ケーシング管下部の前記冷媒の温度を計測する下部冷媒温度計と、前記ケーシング管上部の前記冷媒の温度を計測する上部冷媒温度計と、を有し、
前記コンクリート温度把握手段は、前記下部冷媒温度計で計測した温度と前記上部冷媒温度計で計測した温度に基づいて、前記コンクリート内部最大温度Tc(d)を推定する、ことを特徴とする請求項1記載のパイプクーリングシステム。 - 前記上部冷媒温度計と前記下部冷媒温度計が、前記冷却管に取り付けられた、ことを特徴とする請求項2又は請求項3記載のパイプクーリングシステム。
- コンクリート内に敷設された冷却管に冷媒を流過させることで、コンクリート内部の温度上昇を抑制するパイプクーリング方法において、
流過している間の前記冷媒の温度変化を計測する冷媒温度計測工程と、
所定材齢dにおけるコンクリート内部最大温度Tc(d)を求めるコンクリート温度把握工程と、
前記材齢dにおける外気温度Te(d)を設定する外気温設定工程と、
前記コンクリート内部最大温度Tc(d)と前記外気温度Te(d)との温度差Tg(d)を算出する温度差算出工程と、
前記材齢dにおける許容温度差Ta(d)と前記温度差Tg(d)との比較に基づいて、コンクリート冷却の継続の是非を判断する判定工程と、を備え、
前記コンクリート内部最大温度Tc(d)は、前記冷媒の温度変化に基づいて推定され、
前記許容温度差Ta(d)は、前記材齢dにおけるコンクリートの引張応力度σi(d)、前記材齢dにおけるコンクリートの弾性係数Ee(d)、及びコンクリートの熱膨張係数αcに基づいて算出される、ことを特徴とするパイプクーリング方法。 - 前記冷却管は、コンクリートの上部から底部にわたって配置されるとともに、コンクリート内に埋設され、
前記冷媒温度計測工程では、前記冷却管上部の前記冷媒の温度を計測するとともに、前記冷却管下部の前記冷媒の温度を計測し、
前記コンクリート内部最大温度Tc(d)は、前記冷却管上部の前記冷媒の温度と前記冷却管下部の前記冷媒の温度に基づいて推定される、ことを特徴とする請求項5記載のパイプクーリング方法。 - ケーシング管が、コンクリートの上部から底部にわたって配置されるとともにコンクリート内に埋設され、前記冷却管は、該ケーシング管内に挿入され、
前記冷媒温度計測工程では、前記ケーシング管下部の前記冷媒の温度を計測するとともに、前記ケーシング管上部の前記冷媒の温度を計測し、
前記コンクリート内部最大温度Tc(d)は、前記ケーシング管下部の前記冷媒の温度と前記ケーシング管上部の前記冷媒の温度に基づいて推定される、ことを特徴とする請求項5記載のパイプクーリング方法。
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