JP6016325B2 - ゴキブリ捕獲器 - Google Patents

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Description

本発明は、容器内にゴキブリを捕獲するゴキブリ捕獲器に関するものである。
従来より、容器内にゴキブリを誘導し、該容器内に侵入したゴキブリを捕獲するゴキブリ捕獲器が知られている。このようなゴキブリ捕獲器においては、容器内に誘引剤等を設置することによって、ゴキブリを容器内へ誘引している。しかしながら、ゴキブリは、警戒心が非常に強いため、容器内に誘引剤を設けるだけでは、ゴキブリをゴキブリ捕獲器まで引き寄せることはできても、ゴキブリを容器内まで侵入させることは難しい。そこで、特許文献1に係るゴキブリ捕獲器では、天板をすり鉢状に形成すると共に天板にすべり部を設けている。詳しくは、特許文献1に係るゴキブリ捕獲器は、天板と底部とを有する円筒状の容器を備えている。容器内には、誘引剤が設けられている。容器の天板は、すり鉢状に形成され、すり鉢の最深部には侵入口が形成されている。そして、すり鉢の途中にはすべり部が設けられている。このゴキブリ捕獲器においては、誘引剤に誘引されたゴキブリは、容器の天板によじ登り、すり鉢状の天板を侵入口へ向かって進んでいく。すり鉢の途中にはすべり部が存在するため、ゴキブリはすべり部に足を取られて、侵入口から容器内へ落ちるようになっている。
実用新案登録第3051274号公報
しかしながら、特許文献1に係るゴキブリ捕獲器のように、すべり部を設けたとしても、ゴキブリは、すべり部に対して警戒するようになる。つまり、ゴキブリは、前脚等がすべり部にかかったときに、すべり部の存在に気づき、すべり部に完全に乗り切らない場合がある。このように、容器にすべり部のようなトラップを設ける構成であっても、ゴキブリを効率良く捕獲することは難しい。
ここに開示された技術は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ゴキブリの警戒心を解いて、ゴキブリを効率良く捕獲することにある。
ここに開示された技術は、容器内にゴキブリを捕獲するゴキブリ捕獲器を対象としている。このゴキブリ捕獲器は、前記容器には、ゴキブリが該容器内に侵入するための侵入口が形成されており、前記侵入口から、前記容器における当該侵入口の直下の部分までの距離は、チャバネゴキブリの平均体長の1.2〜2.4倍となっているものとする。
ここで、「原色図鑑 衛生害虫と衣食住の害虫」(安富和男及び梅谷献二著、全国農村教育協会、1983年6月3日、p.34−35)によれば、チャバネゴキブリの体長は、11〜15mmとされる。そこで、チャバネゴキブリの平均体長を13mmとする。
前記の構成によれば、前記侵入口から、容器における当該侵入口の直下の部分までの間には距離がある。ゴキブリは警戒心が強いため、当該距離が長すぎると、容器内に降り難い。それに対して、前記侵入口から、容器における当該侵入口の直下の部分までの距離を、チャバネゴキブリの平均体長の1.2〜2.4倍としている。当該距離は、平均体長よりも長いが、チャバネゴキブリが前脚及び後脚を伸ばした全長は、体長よりも長いため、当該侵入口の直下の部分を触角や前脚等で探ることができる。それにより、チャバネゴキブリの警戒心を軽減することができ、チャバネゴキブリが容器内に降りる傾向が高くなる。
一方、当該距離が短すぎると、容器内に一旦侵入したチャバネゴキブリが容器外へ脱出し易くなる。それに対して、当該距離をチャバネゴキブリの平均体長の1.2〜2.4倍としている。当該距離は、前述の如く、チャバネゴキブリが降りる際に前脚及び後脚を伸ばせば、触角や前脚が届く距離ではあるが、登る際に触角や前脚を侵入口に届かせることは難しい。なぜなら、そもそもゴキブリには後脚だけで立ち上がる習性はない。侵入口によじ登る際には、前脚で何かを支えながら少しずつ体軸を上方へ向けていき、最終的に、後脚をしっかりと伸ばすと共に前脚を侵入口の縁に掛けることによって、立ち上がったような状態となる。つまり、葡匐性昆虫であるゴキブリは、同じ距離であっても、降りるときと登るときとでは状況が異なる。よって、当該距離を前述のように設定することによって、チャバネゴキブリが容器外へ脱出し難くすることができる。
したがって、前記侵入口から容器における当該侵入口の直下の部分までの距離をチャバネゴキブリの平均体長の1.2〜2.4倍とすることによって、容器内へ降りる際にはチャバネゴキブリの警戒を解きつつ、容器から出る際には脱出し難くすることができる。
また、別のゴキブリ捕獲器は、前記容器には、ゴキブリが当該容器内に侵入するための侵入口が形成されており、前記侵入口から、前記容器における当該侵入口の直下の部分までの距離は、クロゴキブリの平均体長の0.81〜1.5倍となっているものとする。
ここで、前記「原色図鑑 衛生害虫と衣食住の害虫」(安富和男及び梅谷献二著、全国農村教育協会、1983年6月3日、p.34−35)によれば、クロゴキブリの体長は、30〜40mmとされる。そこで、クロゴキブリの平均体長を35mmとする。
前記の構成によれば、前記侵入口から、容器における当該侵入口の直下の部分までの間には距離がある。ゴキブリは警戒心が強いため、当該距離が長すぎると、容器内に降り難い。それに対して、前記侵入口から、容器における当該侵入口の直下の部分までの距離を、クロゴキブリの平均体長の0.81〜1.5倍としている。当該距離は、平均体長よりも長いが、クロゴキブリが前脚及び後脚を伸ばした全長は、体長よりも長いため、当該侵入口の直下の部分を触角や前脚等で探ることができる。それにより、クロゴキブリの警戒心を軽減することができ、クロゴキブリが容器内に降りる傾向が高くなる。
一方、当該距離が短すぎると、容器内に一旦侵入したクロゴキブリが容器外へ脱出し易くなる。それに対して、当該距離をクロゴキブリの平均体長の0.81〜1.5倍としている。ゴキブリには後脚だけで立ち上がる習性がないので、当該距離は、クロゴキブリが侵入口に登る際に触角や前脚を侵入口に届かせることが難しい距離である。よって、当該距離を前述のように設定することによって、クロゴキブリが容器外へ脱出し難くすることができる。
したがって、前記侵入口から容器における当該侵入口の直下の部分までの距離をクロゴキブリの平均体長の0.81〜1.5倍とすることによって、容器内へ降りる際にはクロゴキブリの警戒を解きつつ、容器から出る際には脱出し難くすることができる。尚、当該距離は、チャバネゴキブリの距離とは異なるが、これは、クロゴキブリとチャバネゴキブリとの体格、体重、運動能力及び警戒心等の差異によるものと考えられる。
さらに、別のゴキブリ捕獲器は、容器内にゴキブリを捕獲するゴキブリ捕獲器であって、前記容器には、ゴキブリが該容器内に侵入するための侵入口が形成されており、前記侵入口から、前記容器における該侵入口の直下の部分までの距離は、15mm〜53mmであるものとする。
前記の構成によれば、侵入口から、前記容器における該侵入口の直下の部分までの距離が、15mm〜53mmに設定されている。この15mm〜53mmという距離は、チャバネゴキブリ及びクロゴキブリの少なくとも一方の、さらには、それの雄及び雌の少なくとも一方にとって降り易く且つよじ登り難い距離である。そのため、日本の屋内に生息する主なゴキブリの雄及び雌の少なくとも1つを効率良く捕獲することができる。
前記容器における該侵入口の直下の部分までの距離は、15mm〜31mmであってもよい。
これにより、特に、チャバネゴキブリを効率良く捕獲することができる。
また、前記容器における該侵入口の直下の部分までの距離は、29mm〜53mmであってもよい。
これにより、特に、クロゴキブリを効率良く捕獲することができる。
さらに、前記容器には、筒状の侵入路が形成されており、前記侵入口は、前記侵入路の先端に形成されていることが好ましい。
ゴキブリは、接触走性を有し、狭いところを好むため、進入路を設けることによって、容器の側壁や天板に侵入口を直接設ける構成と比べて、ゴキブリを侵入口まで導きやすくなる。それに加えて、ゴキブリは、進入路を経て侵入口へ向かわせることによって、ゴキブリを自然と侵入口へ向かう姿勢、即ち、侵入口から容器に降り易い姿勢にすることができる。その結果、ゴキブリを容器内へスムーズに導くことができる。
前記ゴキブリ捕獲器によれば、前記侵入口から前記容器における当該侵入口の直下の部分までの距離をチャバネゴキブリの平均体長の1.2〜2.4倍とすることによって、チャバネゴキブリを効率良く捕獲することができる。
また、前記侵入口から前記容器における当該侵入口の直下の部分までの距離をクロゴキブリの平均体長の0.81〜1.5倍とすることによって、クロゴキブリを効率良く捕獲することができる。
さらに、前記侵入口から前記容器における当該侵入口の直下の部分までの距離を15mm〜53mmとすることによって、雄のチャバネゴキブリ、雌のチャバネゴキブリ、雄のクロゴキブリ及び雌のクロゴキブリの少なくとも1つを効率良く捕獲することができる。
実施形態1に係るゴキブリ捕獲器の斜視図である。 ゴキブリ捕獲器の断面図である。 実施形態2に係るゴキブリ捕獲器の断面図である。 実施形態3に係るゴキブリ捕獲器の断面図である。 実験Iに用いた装置の斜視図である。 実験IIに用いた装置の斜視図である。 雄のチャバネゴキブリについての、距離Dに対する降り率及び脱出率を示すグラフである。 雌のチャバネゴキブリについての、距離Dに対する降り率及び脱出率を示すグラフである。 雌雄合わせたチャバネゴキブリについての、距離Dに対する降り率及び脱出率を示すグラフである 雄のクロゴキブリについての、距離Dに対する降り率及び脱出率を示すグラフである。 雌のクロゴキブリについての、距離Dに対する降り率及び脱出率を示すグラフである。 雌雄合わせたクロゴキブリについての、距離Dに対する降り率及び脱出率を示すグラフである。 チャバネゴキブリについての、侵入路の長さに対する、ゴキブリを捕獲するまでの所要時間を示すグラフである。 クロゴキブリについての、侵入路の長さに対する、ゴキブリを捕獲するまでの所要時間を示すグラフである。
以下、例示的な実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
《発明の実施形態1》
図1に、本実施形態1に係るゴキブリ捕獲器の斜視図を、図2に、ゴキブリ捕獲器の断面図を示す。
ゴキブリ捕獲器1は、ゴキブリを捕獲するための容器10を備えている。容器10は、上部が開口する容器本体2と、容器本体2の上部開口に取り付けられる蓋部材3と、蓋部材3の周縁から末広がりに垂れ下がるスロープ部4とを有している。このゴキブリ捕獲器1は、チャバネゴキブリを主な捕獲対象としている。ここで、「主な」とは、その対象とするゴキブリが最もよく捕れることを意味し、その対象とするゴキブリ以外のゴキブリが捕れることを排除するものではない。すなわち、例えば、チャバネゴキブリを主な捕獲対象とする場合、ゴキブリ捕獲器1を、チャバネゴキブリとそれ以外の少なくとも1種類のゴキブリとが同数存在する環境下に設置したときに、チャバネゴキブリが最もよく捕れることを意味する。
容器本体2は、円盤状の底部21と、底部21の周縁部から立設する概ね円筒状の側壁22とを有し、有底の略円筒形状をしている。容器本体2内には、粘着剤24が収容されている。容器本体2の底部21の中央には、ゴキブリが着地するための着地台23が設けられている。着地台23の上面(即ち、着地面)は、捕獲能力が無い、即ち、粘着性を有さない面であって、ゴキブリに警戒心を与えないように構成されている。着地台23の上部は、粘着剤24の液面よりも突出している。着地台23上には誘引剤25が載置されている。容器本体2内には、捕らえられて底部に沈み込んだゴキブリが粘着剤24に完全に覆われるだけの量以上の粘着剤24を収容している。この粘着剤24の量は、捕獲するゴキブリの種類、量に応じて設定され得る。
本実施形態では、チャバネゴキブリを主な捕獲対象としているため、粘着剤24の厚さ(粘着剤24の表面から、容器本体2の最も深い部分までの深さ)は、5mm程度に設定されている。ただし、クロゴキブリやワモンゴキブリを主な捕獲対象とする場合には、粘着剤24の厚さは10mm以上に設定することが好ましい。
前記粘着剤24は、ゴキブリCを捕らえると共に、捕らえたゴキブリCを前記容器本体2の底部21へ沈み込ませていくものである。つまり、粘着剤24には、ゴキブリCを逃がすことなく捕らえることができる粘着性と、捕らえたゴキブリCがその自重で沈んでいくだけの柔軟性とを備えている。粘着剤24は、一例として、ポリブテンで構成されている。粘着剤24の、40℃における動粘度は、45000〜320000mm/sであることが好ましい。こうすることで、粘着剤24はそれに触れたゴキブリCに粘り着いて、ゴキブリCを捕らえることができると共に、捕らえたゴキブリCを容器本体2の底部21へ向かって粘着剤24の内部へ沈み込ませることができる。つまり、動粘度を45000mm/s以上とすることによって、粘着剤24の粘着力を十分確保することができる。そのため、粘着剤24に触れたゴキブリCに粘着剤24が粘り着いて、ゴキブリCの自由を奪い、ゴキブリCが粘着剤24から逃げ出すことを抑止することができる。また、動粘度を320000mm/s以下とすることによって、ゴキブリCを沈み込ませるだけの、粘着剤24の軟らかさを確保することができる。そのため、粘着剤24で捕らえたゴキブリCを、容器本体2の底部21へ向かって粘着剤24内へ沈み込ませることができる。
例えば、粘着剤24としては、日石ポリブテン(製品名)のグレードHV−1900(数平均分子量:2900V.P.O、40℃における動粘度:160000mm/s、流動点:17.5℃)を用いることが好ましい。また、粘着剤24としては、日石ポリブテンのグレードHV−300(数平均分子量:1400V.P.O、40℃における動粘度:26000mm/s、流動点:0℃)やHV−3000(数平均分子量:3700V.P.O、40℃における動粘度:320000mm/s、流動点:22.5℃)を用いてもよい。
蓋部材3は、円盤状に形成されている。蓋部材3の周縁部31は、容器本体2の側壁22の上端縁に嵌って係合する溝状に形成されている。また、蓋部材3の中央には円筒状の侵入路32が形成されている。侵入路32は、蓋部材3から容器本体2の内方へ、鉛直方向下方に延びており、その先端には侵入口33が形成されている。侵入口33の直下には、前記着地台23が位置している。
侵入路32の直径は、25mmに設定されている。この直径は、チャバネゴキブリCの狭いところを好む習性(即ち、接触走性)に鑑みて設定された値であり、チャバネゴキブリCが侵入し易い値となっている。また、侵入路32の断面積は、着地台23の着地面の面積よりも小さくなっている。ただし、この侵入路32の直径は、一例であって、チャバネゴキブリCの習性を考慮することなく、大きな直径としてもよい。
また、侵入路32の長さは4mmに設定されている。この侵入路32の長さは、チャバネゴキブリCの体(即ち、体軸)が概ね侵入路32の軸方向(即ち、延びる方向)を向く長さに設定されている。この長さは、任意の値に設定してもよいが、4mm以上の範囲に設定することが好ましい。これにより、チャバネゴキブリCの体軸を侵入口33の方へ向けることができ、その結果、着地台23へ向かわせ易くなる。
ここで、侵入口33から、着地台23までの距離(詳しくは、侵入口33の周縁から、容器10における侵入口33の直下の部分である、着地台23及び誘引剤25までの最短距離)Dは、23mmに設定されている。この距離Dは、チャバネゴキブリCが着地台23へ降り易く且つ、着地台23へ降りたチャバネゴキブリCが侵入路32へよじ登り難い距離に設定されている。尚、距離Dは、15mm〜31mmの範囲であればよい。チャバネゴキブリは、一般的に、体長が11〜15mmであり、前脚及び後脚を伸ばした全長は20〜24mmである。チャバネゴキブリの平均体長を13mmとすると、距離Dは、平均体長の1.2〜2.4倍である。
このように構成されたゴキブリ捕獲器1においては、誘引剤25に誘引されたチャバネゴキブリCは、スロープ部4を介して蓋部材3まで登ってくる。蓋部材3まで登ってきたチャバネゴキブリCは、誘引剤25に誘われて侵入路32内へ侵入する。侵入路32へ侵入したチャバネゴキブリCは、侵入路32に沿って、鉛直下向きの姿勢となる。やがて、チャバネゴキブリCは、鉛直下向きの姿勢のまま、侵入路32の下端の侵入口33まで進む。この侵入口33の直下には、誘引剤25が載置された着地台23が位置している。侵入口33から着地台23までの距離Dは、チャバネゴキブリCが無理なく降りられる距離に設定されている。例えば、距離Dが、チャバネゴキブリCが後脚を侵入口33に掛けた状態で前脚又は触角を着地台23上に接触させることができる距離であれば、チャバネゴキブリCはそのような状態となって着地台23上の危険度を探る。そうして、チャバネゴキブリCは、着地台23上の安全を確認した上で、着地台23へ着地する。あるいは、距離Dが、前脚又は触角を着地台23に接触させることができない距離であってもチャバネゴキブリCにとってあまり離れていない距離である場合には、チャバネゴキブリCは、侵入口33から着地台23へ警戒することなく飛び降りる。
その後、チャバネゴキブリCは、容器10外へ出ようと、着地台23から侵入口33へよじ登ろうとするが、着地台23から侵入口33までの距離Dは、チャバネゴキブリCの触角や前脚が届き難い距離に設定されている。仮に、チャバネゴキブリCの前脚が侵入口33に掛かったとしても、よじ登りのための十分な姿勢をとることができなければ、侵入路32によじ登るのは難しい。そのため、チャバネゴキブリCは容器10外へ逃げ出すことが難しい。侵入口33から脱出できないチャバネゴキブリCは、着地台23の周辺を囲む粘着剤24に脚を踏み入れる。粘着剤24は、粘着剤24に触れたチャバネゴキブリCの身動きが不自由になる程度の粘着性を有している。そのため、粘着剤24は、チャバネゴキブリCに粘り着いてチャバネゴキブリCの身動きを拘束して、チャバネゴキブリCを捕らえる。また、この粘着剤24は、チャバネゴキブリCの自重によりチャバネゴキブリCが容器2の底部に沈み込んでいく程度の動粘度を有している。そのため、粘着剤24が粘り着いて、身動きが取り難くなったチャバネゴキブリCは、容器本体2の底部21に向かって粘着剤24の内部へ、しだいに沈んでいく。ここで、粘着剤24は、粘着剤24に触れたチャバネゴキブリCを逃がすことなく捕獲できる程度の動粘度を有しているため、チャバネゴキブリCは粘着剤24中に瞬時に沈み込むのではなく、時間をかけて徐々に沈み込んでいく。
こうして、チャバネゴキブリCは、歩脚及び胴体が粘着剤24で覆われるため、動けなくなる。その結果、チャバネゴキブリCは動けない、又は死んでいるという安心感をユーザに与えることができる。こうして、チャバネゴキブリCが逃げ出しそうな不安をユーザに与えないようにして、ゴキブリ捕獲器1に対するユーザの不満を解消することができる。
また、容器本体2内には、容器本体2の底部21に沈み込んだチャバネゴキブリCが粘着剤24に完全に覆われるだけの量以上の粘着剤24が収容されているため、捕獲したチャバネゴキブリCを粘着剤24で完全に覆うことができる。その結果、チャバネゴキブリCが逃げ出さないという安心感をより強くユーザに与えることができる。また、捕獲したチャバネゴキブリCが剥き出しになることを防止することができる。その結果、チャバネゴキブリCの見た目の気持ち悪さを軽減することができる。さらに、ゴキブリ捕獲器1を処理する際に、チャバネゴキブリCに触れてしまうという不安をなくすことができる。
それに加えて、粘着剤24を透明に構成することによって、捕獲したチャバネゴキブリCを視認可能にすることができ、チャバネゴキブリCが捕獲できたという効果を顕在化させることができる。尚、粘着剤24中のチャバネゴキブリCの存在が視認できる程度であれば、粘着剤24を半透明にしてもよい。粘着剤24を半透明にすることで、チャバネゴキブリCの気持ち悪さを軽減することもできる。
また、チャバネゴキブリCが容器本体2の底部に沈んで粘着剤24に完全に漬かった状態となると、粘着剤24の表面には新たな粘着面が形成される。その結果、次々にチャバネゴキブリCを捕獲することができる。
また、粘着剤24は、前述の如く、流動性が高いため、ゴキブリ捕獲器1の搬送時や使用時に容器10が傾くと、粘着剤24が流動しやすい。ここで、容器10には、蓋部材3から容器10内に延びる侵入路32が設けられているため、侵入路32を構成する筒状体が漏れ防止として機能する。すなわち、蓋部材3に侵入路32が設けられておらず、侵入口が直接形成されている場合には、容器10が何かの拍子に反転して、粘着剤24が蓋部材3まで流動していったときには、粘着剤24が侵入口から外部へ漏れ出てしまう。それに対して、侵入路32が設けられていると、侵入口33が侵入路32の長さの分だけ蓋部材3から離れているため、粘着剤24が侵入口33から漏れ出ることが防止される。
尚、前記ゴキブリ捕獲器1は、チャバネゴキブリを主な捕獲対象としているが、これに限られるものではない。例えば、ゴキブリ捕獲器1は、チャバネゴキブリを主な捕獲対象としていなくても、少なくともチャバネゴキブリを捕獲するゴキブリ捕獲器であればよい。
また、ゴキブリ捕獲器1は、クロゴキブリを主な捕獲対象とするゴキブリ捕獲器であってもよい。あるいは、ゴキブリ捕獲器1は、少なくともクロゴキブリを捕獲するゴキブリ捕獲器であってもよい(即ち、クロゴキブリを主な捕獲対象とまではしていない)。その場合には、ゴキブリ捕獲器1は、侵入口33から着地台23までの距離Dが29〜53mm、好ましくは、29〜49mmに設定される。この距離Dは、クロゴキブリCが着地台23へ降り易く且つ、着地台23へ降りたクロゴキブリCが侵入路32へよじ登り難い距離に設定されている。また、侵入路32の直径は、クロゴキブリの接触走性に鑑みて設定されることが好ましい。また、侵入路32の長さは、クロゴキブリの体長に鑑みて2mm以上の値に設定されることが好ましい。クロゴキブリの場合、体軸を侵入口33の方へ向けるまでいかなくても、侵入口33の方をのぞき込む程度に体軸を傾けさせることができれば、容器10内への侵入を促すことができる。そのため、少しでも侵入路23があれば、クロゴキブリを着地台23へ向かわせ易くなり、好ましくは、侵入路23の長さが2mm以上あればよい。
《実施形態2》
続いて、実施形態2に係るゴキブリ捕獲器201について説明する。図3は、ゴキブリ捕獲器201の断面図を示す。
実施形態2に係るゴキブリ捕獲器201は、チャバネゴキブリとクロゴキブリとの2種類のゴキブリを主な捕獲対象としている点で、実施形態1に係るゴキブリ捕獲器1と異なる。そこで、実施形態1と同様の構成には同様の符号を付して説明を省略し、異なる部分を中心に説明する。
ゴキブリ捕獲器201は、実施形態1のゴキブリ捕獲器1と同様に、上部が開口する円筒状の容器本体202と、容器本体202の上部開口に取り付けられる蓋部材203と、蓋部材203の周縁から末広がりに垂れ下がるスロープ部4とを有する容器210を備えている。
そして、蓋部材203には、2種類の侵入路及び侵入口が形成されている。詳しくは、第1侵入路232及び第1侵入口233は、チャバネゴキブリ用のものであり、第2侵入路236及び第2侵入口237は、クロゴキブリ用のものである。また、容器本体202には、第1侵入口233に対応した第1着地台223と、第2侵入口237に対応した第2着地台226とが設けられている。第1及び第2着地台223,226には、それぞれ誘引剤25,25が載置されている。
第1侵入路232の形状、直径及び長さは、実施形態1と同様である。また、第1侵入口233から、第1着地台223までの距離D1は、実施形態1と同様に、15〜31mmの範囲内であって、具体的には23mmに設定されている。
第2侵入路236は、円筒状をしている。第2侵入路236の直径は、クロゴキブリC2の接触走性に鑑みて設定されており、第1侵入路232の直径よりも大きい。また、第2侵入路236の長さは、15mmに設定されている。この長さは、15mm以外の任意の値に設定してもよいが、2mm以上の範囲で設定することが好ましい。そして、第2侵入口237から、第2着地台226までの距離D2は、29〜53mmの範囲内で、具体的には39mmに設定されている。この距離D2は、クロゴキブリC2が第2着地台226へ降り易く且つ、第2着地台226へ降りたクロゴキブリC2が侵入路32へよじ登り難い距離に設定されている。クロゴキブリC2は、一般的に、体長が30〜40mmである。クロゴキブリの平均体長を35mmとすると、距離D2は、平均体長の0.81〜1.5倍である。
このように構成されたゴキブリ捕獲器201においては、誘引剤25に誘引されたチャバネゴキブリC1及びクロゴキブリC2は、スロープ部4を介して蓋部材203まで登ってくる。蓋部材203まで登ってきたチャバネゴキブリC1は、誘引剤25に誘われて容器本体202内へ侵入しようとするが、その接触走性から、直径が小さな第1侵入路232内へ侵入する。第1侵入路232へ侵入したチャバネゴキブリC1は、第1侵入路232に沿って、鉛直下向きの姿勢となる。やがて、チャバネゴキブリC1は、鉛直下向きの姿勢のまま、第1侵入路232の下端の第1侵入口233まで進む。この第1侵入口233の直下には、誘引剤25が載置された第1着地台223が位置しているが、第1侵入口233から第1着地台223までの距離D1は、チャバネゴキブリC1が無理なく降りられる距離であるため、チャバネゴキブリC1は、何ら警戒することなく、第1着地台223へ降りる。その後、チャバネゴキブリC1は、容器210外へ出ようと、第1着地台223から第1侵入口233へよじ登ろうとするが、第1着地台223から第1侵入口233までの距離D1は、チャバネゴキブリC1の触角や前脚が届き難い距離に設定されているため、チャバネゴキブリC1は容器210外へ逃げ出すことができない。尚、以上の説明は、チャバネゴキブリC1が第2侵入路236へ侵入することを排除するものではなく、場合によっては第2侵入路236へ侵入するチャバネゴキブリC1も存在する。ただし、第2侵入口237から第2着地台226までの距離D2は、チャバネゴキブリC1が降り易い距離に設定されていないため、警戒心が弱いか又は好奇心が旺盛なチャバネゴキブリC1以外は、第2侵入口237を引き返してくる場合もあり得る。逆に、警戒心が弱いか又は好奇心が旺盛なチャバネゴキブリC1は、第2侵入口237から第2着地台226へ降りる場合もあり得る。
一方、蓋部材203まで登ってきたクロゴキブリC2は、その接触走性から、直径が大きな第2侵入路236内へ侵入する。第2侵入路236へ侵入したクロゴキブリC2は、第2侵入路236に沿って、鉛直下向きの姿勢となる。やがて、クロゴキブリC2は、鉛直下向きの姿勢のまま、第2侵入路236の下端の第2侵入口237まで進む。この第2侵入口237の直下には、誘引剤25が載置された第2着地台226が位置しているが、第2侵入口237から第2着地台226までの距離D2は、クロゴキブリC2が無理なく降りられる距離であるため、クロゴキブリC2は、何ら警戒することなく、第2着地台226へ降りる。その後、クロゴキブリC2は、容器210外へ出ようと、第2着地台226から第2侵入口237へよじ登ろうとするが、第2着地台226から第2侵入口237までの距離D2は、クロゴキブリC2の触角や前脚が届き難い距離に設定されているため、クロゴキブリC2は容器210外へ逃げ出すことができない。また、第2着地台226は、第1着地台223と分離されているため、クロゴキブリC2は、第1着地台223へ渡ることもできない。
そして、第1及び第2侵入口233,237から脱出できないチャバネゴキブリC1及びクロゴキブリC2は、第1及び第2着地台223,226の周辺を囲む粘着剤24に脚を踏み入れる。その結果、チャバネゴキブリC1及びクロゴキブリC2は、粘着剤24に捕らえられると共に、粘着剤24中に沈み込んでいく。こうして、ゴキブリ捕獲器201によって、チャバネゴキブリC1及びクロゴキブリC2が捕獲される。
尚、第1着地台223と第2着地台226とは分離されているが、1つの着地台であってもよい。その場合、第1侵入口233から着地台までの距離D1が15〜31mmとなり且つ第2侵入口237から着地台までの距離D2が29〜53mmとなるように、着地台を段差形状とするか、第1及び際2侵入路232,236の長さを調整する必要がある。ただし、クロゴキブリC2を第1侵入口233から脱出させない観点からは、第1着地台223と第2着地台226とを分離させることが好ましい。
《実施形態3》
続いて、実施形態3に係るゴキブリ捕獲器301について説明する。図4は、ゴキブリ捕獲器301の断面図を示す。
ゴキブリ捕獲器301は、侵入路が鉛直方向ではなく、水平方向に延びる点で、実施形態2に係るゴキブリ捕獲器2と異なる。
ゴキブリ捕獲器301は、上部が開口する円筒状の容器本体302と、容器本体302の上部開口に取り付けられる蓋部材303と、2つのスロープ部341,342とを有する容器310を備えている。
そして、容器本体302には、チャバネゴキブリ用の第1侵入路332及び第1侵入口333と、クロゴキブリ用の第2侵入路336及び第2侵入口337とが設けられている。第1侵入路332は、容器本体302の側壁322から容器本体302の内方へ水平方向(即ち、容器本体の底部と平行)に延びており、その先端に第1侵入口333が形成されている。つまり、第1侵入路332の出口が第1侵入口333を構成している。一方、第2侵入路336は、容器本体302の側壁322における、第1侵入路332とは容器本体302の軸心を挟んで反対側の位置に設けられている。第2侵入路336は、容器本体302の内方へ水平方向に延びており、その先端に第2侵入口337が形成されている。つまり、第2侵入路336の出口が第2侵入口337を構成する。尚、容器本体302における第1侵入路332の高さと、第2侵入路336の高さとは異なっている。具体的には、第1侵入路332の方が、第2侵入路336よりも高い位置に設けられている。ただし、これに限られるものではない。尚、第1及び第2侵入路332,336は、水平ではなく、傾斜していてもよい。
また、第1侵入路332の入口には、スロープ341が繋がっている。一方、第2侵入路336の入口には、スロープ342が繋がっている。スロープ341,342はそれぞれ、容器本体302の設置面(例えば、地面)と第1及び第2侵入路332,336の入口との間に傾斜した状態で掛け渡されている。つまり、スロープ341,342は、容器本体302の全周に設けられているのではなく、対応する侵入路332,336に対応する部分にだけ設けられている。
そして、第1及び第2侵入口333,337の直下には、それぞれ、第1及び第2着地台323,326が位置している。第1及び第2着地台323,326には、それぞれ誘引剤25,25が載置されている。
第1及び第2侵入路332,336の形状及び直径は、実施形態2と同様である。また、第1侵入口333(詳しくは、第1侵入口333の下端縁)から第1着地台323までの距離D1は、実施形態2と同様に、15〜31mmに設定されている。第2侵入口337(詳しくは、第2侵入口337の下端縁)から第2着地台326までの距離D2は、実施形態2と同様に、29〜53mmに設定されている。
ゴキブリ捕獲器301をこのように構成することによって、実施形態2と同様に、チャバネゴキブリC1とクロゴキブリC2を効率良く大量に捕獲することができる。
尚、ゴキブリ捕獲器301は、チャバネゴキブリ用とクロゴキブリ用の2種類の侵入路及び侵入口を必ずしも設ける必要はなく、チャバネゴキブリC1及びクロゴキブリC2の何れか一方を主な捕獲対象として、何れか一方のゴキブリに対応した侵入路及び侵入口を設けるだけであってもよい。
《その他の実施形態》
本発明は、前記実施形態について、以下のような構成としてもよい。
前記ゴキブリ捕獲器1,201,301は、スロープ部4、341,342を有しているが、スロープ部4、341,342の形状は前記の形状に限られるものではない。すなわち、スロープ部4は、容器本体2,202の周縁全体を囲って、円錐台の側周面を形成しているが、これに限られるものではない。例えば、スロープ部4は、容器本体2,202に全周に亘って設けられるのではなく、容器本体2,202の周縁の一部において、容器本体2,202の設置面(例えば、地面)から容器本体2,202の上部へ傾斜した状態で掛け渡される構成であってもよい。尚、スロープ部4,341,342を省略してもよい。ただし、ゴキブリを侵入路の入口まで誘導する点においては、スロープ部4,341,342が設けられている方が好ましい。
また、容器本体2,202,302は、円筒状である必要はなく、平面視多角形状をしていてもよい。
また、容器本体2,202,302内には、ゴキブリCを逃がすことなく捕らえることができる粘着性と、捕らえたゴキブリCがその自重で沈んでいくだけの柔軟性とを備えた粘着剤24が収容されているが、これに限られるものではない。例えば、容器本体2,202,302内には、粘着剤24が設けられておらず、ゴキブリが容器本体2,202,302内を事由に動き回れる状態であってもよい。あるいは、容器本体2,202,302内に、粘着剤24の代わりに、粘着シートを設けた構成であってもよい。かかる場合であっても、ゴキブリに警戒心を与えない観点から、着地台23,223,226,323,326の着地面には粘着シートを設けないことが好ましい。
さらに、容器本体2,202,302内に着地台23,223,226,323,326を設けない構成であってもよい。ただし、ゴキブリに警戒心を与えることなく容器本体2,202,302内に降ろさせるためには、侵入口の直下が粘着剤24ではなく、着地台23,223,226,323,326である方が好ましい。
また、侵入路32,232,236,332,336及び侵入口33,233,237,333,337の形状は、前記実施形態に限られるものではない。例えば、侵入路32,232,236,332,336は、円筒に限られるものではなく、断面多角形であってもよい。あるいは、侵入路32,232,236,332,336が省略され、容器本体2,202,302に侵入口33,233,237,333,337が直接形成されていてもよい。また、侵入口33,233,237,333,337は、円形に限られるものではなく、多角形であってもよい。
尚、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
続いて、本発明の実施例について説明する。尚、以下の実験に用いた各種ゴキブリの平均体長は次の通りである。雄のチャバネゴキブリが12.7mm、雌のチャバネゴキブリが11.6mm、雄のクロゴキブリが29.1mm、雌のクロゴキブリが31.4mmである。
−実験I−
図5は、実験Iに用いた装置の斜視図を示す。実験Iでは、ゴキブリが降り易い距離を調べる実験を行った。具体的には、図5に示すような容器510内に、実験用のゴキブリ捕獲器401を設置した。
容器510は、透明なアクリル板で構成された、24cm×24cm×10cmの略直方体の箱状容器である。
ゴキブリ捕獲器401は、基本的には実施形態1と同様の構成をしている。詳しくは、ゴキブリ捕獲器401は、上部が開口する円筒状の容器本体402、及び、容器本体402の上部開口に取り付けられる蓋部材403を有する容器410と、容器410に隣接された2つのスロープ(図示省略)とを備えている。容器410は、PET製のカップ状容器である。
容器本体402には、粘着剤24が設けられていない。その代わりに、容器本体402の底には、粘着シートを敷き詰めている。そして、粘着シートの上に、誘引剤が設置されている。スロープは、ゴキブリが容器410の蓋部材403上まで登り易くするためのものである。具体的には、スロープは、2つの細長い板を十字に組んで構成したものであって、容器本体402に立て掛けている。
蓋部材403には、赤色のセロファンが貼られている。蓋部材403の中央には、容器本体402の内方へ鉛直方向に延びる円筒状の侵入路432が形成されている。侵入路432の先端に侵入口433が形成されている。容器本体402の底面のうち侵入口433の直下の部分には、着地台の代わりに、紙製の着地部(図示省略)が設けられている。この着地部を設けることによって、ゴキブリが容器本体402内へ降りる際の警戒心を軽減することができる。
容器410は、チャバネゴキブリ用とクロゴキブリ用との2種類ある。チャバネゴキブリ用の容器410は、直径80mm×高さ34mmである。クロゴキブリ用の容器410は、直径100mm×高さ64mmである。侵入路432及び侵入口433の直径は、チャバネゴキブリ用及びクロゴキブリ用ともに、25mmである。侵入路432の長さを、後述するように、適宜調整している。
容器510内にゴキブリを放ち、5時間後に、ゴキブリ捕獲器401内に捕獲されたゴキブリの数を計数した。実験室内の温度は、24℃であり、容器510の周囲の明るさは、400ルクスに設定した。この実験を、侵入路432の長さを変えることによって、侵入口433から、容器本体402における、侵入口433の直下の部分までの距離Dを変更しながら行った。各距離Dについて、10回の実験を行った。また、チャバネゴキブリとクロゴキブリの2種類のゴキブリに対して前記の実験を行った。このとき、各種類において雄と雌とで別々に実験を行った。具体的には、チャバネゴキブリについては、雄雌それぞれ、10匹のチャバネゴキブリを用いて実験を行った。クロゴキブリについては、雄雌それぞれ、6匹のチャバネゴキブリを用いて実験を行った。
−実験II−
図6は、実験IIに用いた装置の斜視図を示す。実験IIでは、ゴキブリが逃げ難い距離を調べる実験を行った。具体的には、図6に示すような容器520内に、実験用のゴキブリ捕獲器401と、別の確認用のゴキブリ捕獲器521とを設置した。
容器520は、透明なアクリル板で構成された、70cm×35cm×18cmの略直方体の箱状容器である。この容器520内に、2つのゴキブリ捕獲器401,401と、3つのゴキブリ捕獲器521,521,521とを配置した。3つのゴキブリ捕獲器521,521,521は、2つのゴキブリ捕獲器401,401をそれぞれ挟むように配置した。
ゴキブリ捕獲器401は、基本的には実験Iで用いたゴキブリ捕獲器と同様の構成をしている。ただし、容器本体2内には、粘着シートが設けられていない。そのため、容器本体2内のゴキブリは、容器本体2内を自由に動き回ることができる。また、容器本体2内には、誘引剤が設けられていない。さらに、容器本体2の側壁の内周面には、ゴキブリが側壁をよじ登らないように、ワセリンが塗布されている。
容器410は、実験Iと同様に、チャバネゴキブリ用とクロゴキブリ用との2種類ある。チャバネゴキブリ用の容器410は、直径80mm×高さ34mmである。クロゴキブリ用の容器410は、直径100mm×高さ64mmである。侵入路432及び侵入口433の直径は、チャバネゴキブリ用及びクロゴキブリ用ともに、25mmである。侵入路432の長さを、後述するように、適宜調整している。
ゴキブリ捕獲器521は、側方に侵入口が設けられた紙製の容器を備え、容器内の床となる面に粘着シートが設けられた、一般的な捕獲器である。このゴキブリ捕獲器521は、ゴキブリ捕獲器401から脱出したゴキブリが再びゴキブリ捕獲器401に侵入しないように、脱出したゴキブリを確保しておくためのものである。
各ゴキブリ捕獲器401に、1匹のゴキブリを入れ、24時間後に、ゴキブリ捕獲器1を脱出したか否かを確認した。実験室内の温度は、25℃であり、容器520の周囲の明るさは、400ルクスに設定した。
この実験を、侵入路432の長さを変えることによって、侵入口433から、容器本体402における、侵入口433の直下の部分までの距離Dを変更しながら行った。各距離Dについて、10回の実験を行った。詳しくは、容器520内に2つのゴキブリ捕獲器401,401を設けているため、各距離Dについて1度に2回の実験を行うことができる。それを、5回繰り返すことで、各距離Dに対して計10回の実験を行った。この実験を、チャバネゴキブリとクロゴキブリとの雄と雌のそれぞれについて、行った。
−チャバネゴキブリの結果−
チャバネゴキブリについての実験Iと実験IIの結果を、図7〜9に示す。図7は、雄のチャバネゴキブリについての、距離Dに対する降り率及び脱出率であり、図8は、雌のチャバネゴキブリについての、距離Dに対する降り率及び脱出率であり、図9は、雌雄合わせたチャバネゴキブリについての、距離Dに対する降り率及び脱出率である。
図7からわかるように、距離Dが7〜29mmであれば、雄のチャバネゴキブリが略50%以上という高い確率で容器本体402内に降りる。好ましくは、距離Dを15〜27mmとすることによって、雄のチャバネゴキブリの降り率を略90%(詳しくは、略80〜100%)とすることができる。一方、距離Dを15mm以上とすることによって、雄のチャバネゴキブリの脱出率を略60%以下という低い確率に抑制できる。好ましくは、距離Dを17mm以上とすることによって、雄のチャバネゴキブリの脱出率を略0%とすることができる。したがって、距離Dを15〜29mmとすることによって、雄のチャバネゴキブリが降り易く且つ脱出し難いゴキブリ捕獲器を実現することができる。好ましくは、距離Dを17〜27mmとすることによって、雄のチャバネゴキブリがより降り易く且つより脱出し難いゴキブリ捕獲器を実現することができる。
尚、降り率が距離Dが15mm未満、さらには7mm未満で減少しているのは、容器本体402の底面と侵入路432との配置によるものと考えられる。すなわち、侵入路432が容器本体402の底面に対して垂直に延び且つ侵入口433と容器本体402の底面との距離が短いため、侵入口433の直下に容器本体402の底面が広がっているというよりはむしろ、侵入口433が容器本体402の底面で塞がれている状態となっている。そのため、侵入路432を降りてきたゴキブリは、侵入路432の先端が塞がっているとして、容器本体402の底面に降りることなく、侵入路432を引き返すものと考えられる。侵入路432が容器本体402の底面と平行に延びる場合には、降り率はより高いと考えられる。
また、図8からわかるように、距離Dが5〜31mmであれば、雌のチャバネゴキブリが略50%以上という高い確率で容器本体402内に降りる。好ましくは、距離Dを13〜29mmとすることによって、雌のチャバネゴキブリの降り率を略90%(詳しくは、略80〜100%)とすることができる。一方、距離Dを19mm以上とすることによって、雌のチャバネゴキブリの脱出率を略20%以下という低い確率に抑制できる。好ましくは、距離Dを21mm以上とすることによって、雌のチャバネゴキブリの脱出率を略0%とすることができる。したがって、距離Dを19〜31mmとすることによって、雌のチャバネゴキブリが降り易く且つ脱出し難いゴキブリ捕獲器を実現することができる。好ましくは、距離Dを21〜29mmとすることによって、雌のチャバネゴキブリがより降り易く且つより脱出し難いゴキブリ捕獲器を実現できる。
以上のことから、距離Dを15〜31mmとすることによって、雄及び雌の少なくとも一方のチャバネゴキブリに対して降り易く且つ脱出し難いゴキブリ捕獲器とすることができる。詳しくは、当該範囲における距離Dが短い領域では、特に雄のチャバネゴキブリに有効であり、当該範囲における距離Dが長い領域では、特に雌のチャバネゴキブリに有効である。例えば、距離Dを15mmとすることによって、少なくとも雄のチャバネゴキブリにとっては降り易く且つ脱出し難いゴキブリ捕獲器とすることができるため、少なくとも雄のチャバネゴキブリを効率よく捕獲することができる。また、15mmという距離は、雌のチャバネゴキブリにとっても、降り易い距離である。そして、距離Dが15mmであれば、雌のチャバネゴキブリであっても、必ず脱出できるわけではなく、脱出率を略60%に抑えることができる。つまり、雌のチャバネゴキブリを容易に容器内に侵入させ、そのうちの一部については容器内に捕獲し続けることができる。さらに、前記実施形態によれば、容器内には粘着剤24が設けられているため、侵入口から脱出する前に粘着剤24に触れたゴキブリは粘着剤24により捕獲されるため、脱出率をさらに低減させることができる。一方、距離Dを31mmとすることによって、少なくとも雌のチャバネゴキブリの降り率を向上させ且つ脱出率を低減させることができるため、少なくとも雌のチャバネゴキブリを効率良く捕獲することができる。また、距離Dが31mmの場合の雄のチャバネゴキブリの降り率は略10%である。すなわち、距離Dが31mmであっても、雄のチャバネゴキブリが容器内に全く降りないわけではなく、一部の雄のチャバネゴキブリは容器内に降りる。そして、この31mmという距離は、雄のチャバネゴキブリにとっては脱出率略0%であるため、容器内に降りた、一部の雄のチャバネゴキブリを容器内に確実に捕獲することができる。よって、距離Dを15〜31mmとすることによって、雄雌のうち少なくとも一方のチャバネゴキブリを効率よく捕獲することができる。
好ましくは、距離Dを17〜29mmとすることによって、雄及び雌の少なくとも一方のチャバネゴキブリに対して、より一層、降り易く且つ脱出し難いゴキブリ捕獲器とすることができる。すなわち、距離Dの下限値である17mmにおいては、雄のチャバネゴキブリの降り率をさらに向上させ且つ脱出率をさらに低下させることができる。一方、距離Dの上限値である29mmにおいては、雌のチャバネゴキブリの降り率をさらに向上させ且つ脱出率をさらに低下させることができる。つまり、雄及び雌の少なくとも一方のチャバネゴキブリをより一層効率良く捕獲することができる。
さらに、チャバネゴキブリの雌雄の平均については、図9からわかるように、距離Dが7〜29mmであれば、チャバネゴキブリが略50%以上という高い確率で容器本体402内に降りる。好ましくは、距離Dを13〜27mmとすることによって、チャバネゴキブリの降り率を略90%(詳しくは、略80〜100%)とすることができる。一方、距離Dを15mm以上とすることによって、チャバネゴキブリの脱出率を略60%以下という低い確率に抑制できる。好ましくは、距離Dを19mm以上とすることによって、チャバネゴキブリの脱出率を略10%以下とすることができる。したがって、距離Dを15〜29mmとすることによって、チャバネゴキブリに対して、降り易く且つ脱出し難いゴキブリ捕獲器とすることができる。好ましくは、距離Dを19〜29mmとすることによって、チャバネゴキブリに対して、さらに降り易く且つ脱出し難いゴキブリ捕獲器とすることができる。さらに好ましくは、距離Dを21〜27mmとすることによって、チャバネゴキブリに対して、より一層降り易く且つ脱出し難いゴキブリ捕獲器とすることができる。
尚、降り率の方が脱出率よりも高く且つその乖離が大きい場合には、ゴキブリを効率良く捕獲できるゴキブリ捕獲器ということができる。この観点から、実験I,IIの結果を考察すると、距離Dを15〜29mmとすることによって、降り率と脱出率との乖離を略30%以上とすることができ、チャバネゴキブリを効率良く捕獲できるゴキブリ捕獲器とすることができる。好ましくは、距離Dを17〜27mmとすることによって、降り率と脱出率との乖離を略50%以上とすることができ、チャバネゴキブリをより一層効率良く捕獲できるゴキブリ捕獲器とすることができる。さらに好ましくは、距離Dを21〜27mmとすることによって、降り率と脱出率との乖離を略90%以上とすることができる。
−クロゴキブリの結果−
クロゴキブリについての実験Iと実験IIの結果を、図10〜12に示す。図10は、雄のクロゴキブリについての、距離Dに対する降り率及び脱出率であり、図11は、雌のクロゴキブリについての、距離Dに対する降り率及び脱出率であり、図12は、雌雄合わせたクロゴキブリについての、距離Dに対する降り率及び脱出率である。
図10からわかるように、距離Dが15〜47mmであれば、雄のクロゴキブリが略40%以上という高い確率で容器本体402内に降りる。好ましくは、距離Dを15〜45mmとすることによって、雄のクロゴキブリの降り率を略50%以上とすることができる。一方、距離Dを29mm以上とすることによって、雄のクロゴキブリの脱出率を略60%以下という低い確率に抑制できる。好ましくは、距離Dを31mm以上とすることによって、雄のクロゴキブリの脱出率を略25%以下とすることができる。より好ましくは、距離Dを39mmとすることによって、雄のクロゴキブリの脱出率を略0%とすることができる。したがって、距離Dを29〜47mmとすることによって、雄のクロゴキブリが降り易く且つ脱出し難いゴキブリ捕獲器を実現することができる。好ましくは距離Dを31〜45mmと、より好ましくは距離Dを39〜45mmとすることによって、雄のクロゴキブリがより一層降り易く且つより脱出し難いゴキブリ捕獲器を実現することができる。
また、図11からわかるように、距離Dが15〜49mmであれば、雌のクロゴキブリが略40%以上という高い確率で容器本体402内に降りる。好ましくは、距離Dを15〜47mmとすることによって、雌のクロゴキブリの降り率を略50%以上とすることができる。一方、距離Dを33mm以上とすることによって、雌のクロゴキブリの脱出率を略60%以下という低い確率に抑制できる。好ましくは、距離Dを39mm以上とすることによって、雌のクロゴキブリの脱出率を略0%とすることができる。したがって、距離Dを33〜49mmとすることによって、雌のクロゴキブリが降り易く且つ脱出し難いゴキブリ捕獲器を実現することができる。好ましくは距離Dを39〜47mmとすることによって、雌のクロゴキブリがより一層降り易く且つより脱出し難いゴキブリ捕獲器を実現できる。
以上のことから、距離Dを29〜49mmとすることによって、雄及び雌の少なくとも一方のクロゴキブリに対して降り易く且つ脱出し難いゴキブリ捕獲器とすることができる。詳しくは、当該範囲における距離Dが短い領域では、特に雄のクロゴキブリに有効であり、当該範囲における距離Dが長い領域では、雄及び雌の両方のクロゴキブリに有効である。例えば、距離Dを29mmとすることによって、少なくとも雄のクロゴキブリにとっては降り易く且つ脱出し難いゴキブリ捕獲器とすることができるため、少なくとも雄のクロゴキブリを効率よく捕獲することができる。また、29mmという距離は、雌のクロゴキブリにとっても、降り易い距離である。そして、距離Dが29mmであれば、雌のクロゴキブリであっても、必ず脱出できるわけではなく、脱出率を略75%に抑えることができる。つまり、雌のクロゴキブリを容易に容器内に侵入させ、そのうちの一部については容器内に捕獲し続けることができる。さらに、前記実施形態によれば、容器内には粘着剤24が設けられているため、侵入口から脱出する前に粘着剤24に触れたゴキブリは粘着剤24により捕獲されるため、脱出率をさらに低減させることができる。一方、距離Dを49mmとすることによって、少なくとも雌のクロゴキブリの降り率を向上させ且つ脱出率を低減させることができるため、少なくとも雌のクロゴキブリを効率良く捕獲することができる。また、距離Dが49mmの場合の雄のクロゴキブリの降り率は略20%である。すなわち、距離Dが49mmであっても、雄のクロゴキブリが容器内に全く降りないわけではなく、一部の雄のクロゴキブリは容器内に降りる。そして、この49mmという距離は、雄のクロゴキブリにとっては脱出率略0%であるため、容器内に降りた、一部の雄のクロゴキブリを容器内に確実に捕獲することができる。よって、距離Dを29〜49mmとすることによって、雄雌のうち少なくとも一方のクロゴキブリを効率よく捕獲することができる。
好ましくは、距離Dを31〜47mmとすることによって、雄及び雌の少なくとも一方のクロゴキブリに対して、さらに降り易く且つ脱出し難いゴキブリ捕獲器とすることができる。すなわち、距離Dの下限値である31mmにおいては、雄のクロゴキブリの降り率をさらに向上させ且つ脱出率をさらに低下させることができる。一方、距離Dの上限値である47mmにおいては、雌のクロゴキブリの降り率をさらに向上させ且つ脱出率をさらに低下させることができる。つまり、雄及び雌の少なくとも一方のクロゴキブリをさらに効率良く捕獲することができる。
また、距離Dを39〜47mmとすることによって、雄及び雌の少なくとも一方のクロゴキブリに対して、より一層、降り易く且つ脱出し難いゴキブリ捕獲器とすることができる。つまり、雄及び雌の少なくとも一方のクロゴキブリをより一層効率良く捕獲することができる。
さらに、クロゴキブリの雌雄の平均については、図12からわかるように、距離Dが15〜49mmであれば、クロゴキブリが略30%以上という高い確率で容器本体402内に降りる。好ましくは、距離Dを15〜47mmとすることによって、クロゴキブリの降り率を略40%とすることができる。一方、距離Dを31mm以上とすることによって、クロゴキブリの脱出率を略45%以下という低い確率に抑制できる。好ましくは、距離Dを35mm以上とすることによって、クロゴキブリの脱出率を略30%以下とすることができる。したがって、距離Dを31〜49mmとすることによって、クロゴキブリに対して、降り易く且つ脱出し難いゴキブリ捕獲器とすることができる。好ましくは、距離Dを35〜47mmとすることによって、クロゴキブリに対して、より一層降り易く且つ脱出し難いゴキブリ捕獲器とすることができる。
尚、降り率が脱出率よりも高い側に乖離しているか否かという観点で図10〜12を考察すると、距離Dを29〜53mmとすることによって、雄及び雌の少なくとも一方のクロゴキブリに対して、降り率と脱出率との乖離を略20%以上とすることができ、クロゴキブリを効率良く捕獲できるゴキブリ捕獲器とすることができる。好ましくは、距離Dを31〜49mmとすることによって、降り率と脱出率との乖離を略30%以上とすることができ、クロゴキブリをさらに効率良く捕獲できるゴキブリ捕獲器とすることができる。さらに好ましくは、距離Dを39〜47mmとすることによって、雄及び雌の何れのクロゴキブリに対しても、降り率と脱出率との乖離を略40%以上とすることができる。
−実験I,IIのまとめ−
したがって、距離Dを15〜53mmの範囲で設定することによって、雄のチャバネゴキブリ、雌のチャバネゴキブリ、雄のクロゴキブリ及び雌のクロゴキブリの少なくとも1つを効率良く捕獲することができる。
すなわち、日本における、家屋、ビル、乗物等の屋内に生息する多くのゴキブリは、チャバネゴキブリかクロゴキブリである。つまり、屋内にはチャバネゴキブリとクロゴキブリとの少なくとも二種類のゴキブリがよく生息している。チャバネゴキブリとクロゴキブリとでは、体格に加えて、警戒心の強弱も異なり、適切なゴキブリ捕獲器の構成も異なり得る。さらに、同一種類のゴキブリであっても、雄と雌とでは、体格が異なるため、適切なゴキブリ捕獲器の構成も異なり得る。すなわち、屋内には、雄のチャバネゴキブリ、雌のチャバネゴキブリ、雄のクロゴキブリ及び雌のクロゴキブリの4種類の、体格及び警戒心の強弱が異なるゴキブリが多く生息している。
つまり、距離Dを15〜53mmとすることによって、日本の屋内によく生息している前記4種類のゴキブリの少なくとも1つを効率良く捕獲することができる。
そして、距離Dを当該範囲の中から適宜設定することによって、前記4種類のゴキブリの何れかに対して特に効果的なゴキブリ捕獲器とすることができる。詳しくは、距離Dを15〜31mmに設定することによって、特にチャバネゴキブリに有効とすることができる。また、距離Dを29〜53mmに設定することによって、特にクロゴキブリに有効とすることができる。
好ましくは、距離Dを15〜49mmとすることによって、雄のチャバネゴキブリ、雌のチャバネゴキブリ、雄のクロゴキブリ及び雌のクロゴキブリの少なくとも1つに対して、降り易く且つ脱出し難いゴキブリ捕獲器とすることができる。そして、距離Dを当該範囲の中から適宜設定することによって、前記4種類のゴキブリの何れかに対して特に効果的なゴキブリ捕獲器とすることができる。詳しくは、距離Dを15〜31mmに設定することによって、特にチャバネゴキブリに有効とすることができる。また、距離Dを29〜49mmに設定することによって、特にクロゴキブリに有効とすることができる。そして、両範囲の重複する29〜31mmに距離Dを設定することによって、チャバネゴキブリにもクロゴキブリにも有効とすることができる。尚、ここで、「有効」とは、該当するゴキブリに特に効果があることを意味するのであって、それ以外のゴキブリにとっては効果がないことを意味するのではなく、それ以外のゴキブリにも効果があり得る。
さらに、チャバネゴキブリに適した15〜31mmの範囲のうち15〜19mmに距離Dを設定することによって、特に雄のチャバネゴキブリに対して有効とすることができる。一方、距離Dを当該範囲のうち29〜31mmに設定することによって、特に雌のチャバネゴキブリに対して有効とすることができる。そして、距離Dを当該範囲のうち19〜29mmに設定することによって、雄及び雌の何れのチャバネゴキブリに対しても有効とすることができる。好ましくは、距離Dを当該範囲のうち21〜27mmに設定することによって、雄及び雌の何れのチャバネゴキブリに対してより一層有効とすることができる。
また、クロゴキブリに適した29〜53mmの範囲のうち29〜31mmに距離Dを設定することによって、特に雄のクロゴキブリに対して有効とすることができる。一方、距離Dを当該範囲のうち51〜53mmに設定することによって、特に雌のクロゴキブリに対して有効とすることができる。そして、距離Dを当該範囲のうち31〜51mmとすることによって、雄及び雌の何れのクロゴキブリに対しても有効とすることができる。好ましくは、距離Dを当該範囲のうち39〜47mmとすることによって、雄及び雌の何れのクロゴキブリに対してより一層有効とすることができる。
−実験III−
続いて、ゴキブリに容器内への侵入を促すために好適な侵入路の長さを調べる実験を行った。具体的には、実験Iと同様の容器510内に、実験用のゴキブリ捕獲器401を設置した。
ゴキブリ捕獲器401は、基本的には実験Iと同様の構成をしている。実験IIIでは、侵入路432の長さが異なる5種類のゴキブリ捕獲器401が用意されている。具体的には、5種類の侵入路432の長さは、0mm(即ち、侵入路432がなく、蓋部材403に侵入口433となる開口が形成されている。),2mm,4mm,9mm,13mmである。また、ゴキブリ捕獲器401には、着地台423が設けられている。着地台423は、侵入路432の長さに応じて5種類、用意されている。侵入路432の長さに応じて着地台423を変えることによって、侵入口433から着地台423までの距離Dを21mmで一定となるように調整している。
ゴキブリ捕獲器401は、実験Iと同様に、チャバネゴキブリ用とクロゴキブリ用との2種類がある。
チャバネゴキブリについては、容器510内に雄5匹、雌5匹のチャバネゴキブリを放し、全てのチャバネゴキブリがゴキブリ捕獲器1内に侵入するまでの時間を計測した。実験室内の温度は、24℃であり、容器510の周囲の明るさは、400ルクスに設定した。
この実験を、侵入路432の長さを0,2,4,9,13mmで変えて行った。このとき、着地台423を適宜選択することによって、距離Dが21mmで一定となるようにしている。侵入路432の各長さについて、5回の実験を行った。
クロゴキブリについては、容器510内に雄3匹、雌3匹のクロゴキブリを放し、全てのクロゴキブリがゴキブリ捕獲器1内に侵入するまでの時間を計測した。実験室内の温度は、24℃であり、容器510の周囲の明るさは、400ルクスに設定した。
この実験を、侵入路432の長さを0,2,6,15,25mmで変えて行った。このとき、着地台423を適宜選択することによって、距離Dが39mmで一定となるようにしている。侵入路432の各長さについて、4回の実験を行った。
−チャバネゴキブリの結果−
チャバネゴキブリについての実験IIIの結果を図13に示す。図13は、チャバネゴキブリについての、侵入路の長さに対する、ゴキブリを捕獲するまでの所要時間を示すグラフである。
図13からわかるように、侵入路432が0mm、即ち、侵入路432が無いゴキブリ捕獲器401と比べて、侵入路432が設けられたゴキブリ捕獲器401の方がチャバネゴキブリを捕獲するまでの所要時間が短い。また、侵入路432が4mm以上の場合には、侵入路432が無い場合と比べて有意な差がある。したがって、侵入路432を2mm以上とすることによって、チャバネゴキブリを捕獲するまでの所要時間が短くなることがわかる。好ましくは、侵入路432を4mm以上とすることによって、チャバネゴキブリを捕獲するまでの所要時間が大幅に短くなることがわかる。
−クロゴキブリの結果−
クロゴキブリについての実験IIIの結果を図14に示す。図14は、クロゴキブリについての、侵入路の長さに対する、ゴキブリを捕獲するまでの所要時間を示すグラフである。
図14からわかるように、侵入路432が0mm、即ち、侵入路432が無いゴキブリ捕獲器401と比べて、侵入路432が設けられたゴキブリ捕獲器401の方がクロゴキブリを捕獲するまでの所要時間が短い。また、侵入路432が2mm以上の場合には、侵入路432が無い場合と比べて有意な差がある。したがって、侵入路432を2mm以上とすることによって、クロゴキブリを捕獲するまでの所要時間が大幅に短くなることがわかる。
−実験IIIのまとめ−
したがって、侵入路432を設けることによって、侵入路432を設けない構成と比較して、ゴキブリをゴキブリ捕獲器401内へ誘導することができる。
そして、チャバネゴキブリに対しては、侵入路432の長さを2mm以上とすることが好ましく、4mm以上とすることがさらに好ましい。
クロゴキブリに対しては、侵入路432の長さを2mm以上とすることが好ましい。
以上説明したように、本発明は、容器内にゴキブリを捕獲するゴキブリ捕獲器について有用である。
1,201,301,401 ゴキブリ捕獲器
10,210,310,410 容器
32,232,236,332,336,432 侵入路
33,233,237,333,337,433 侵入口

Claims (6)

  1. 容器内にチャバネゴキブリを捕獲するゴキブリ捕獲器であって、
    前記容器には、チャバネゴキブリが当該容器内に侵入するための侵入口と、断面積が一定の筒状の侵入路とが形成されており、前記侵入口は、前記侵入路の先端に形成され、
    前記侵入口から、前記容器における当該侵入口の直下の部分までの距離は、21mm〜27mmであるゴキブリ捕獲器。
  2. 請求項1に記載のゴキブリ捕獲器であって、
    前記容器には、断面積が一定の筒状の侵入路が形成されており、
    前記侵入口は、前記侵入路の先端に形成され、
    前記侵入路の長さは、4mm以上であるゴキブリ捕獲器。
  3. 容器内にクロゴキブリを捕獲するゴキブリ捕獲器であって、
    前記容器には、クロゴキブリが当該容器内に侵入するための侵入口と、断面積が一定の筒状の侵入路とが形成されており、前記侵入口は、前記侵入路の先端に形成され、
    前記侵入口から、前記容器における当該侵入口の直下の部分までの距離は、39mm〜47mmであるゴキブリ捕獲器。
  4. 請求項3に記載のゴキブリ捕獲器であって、
    前記容器には、断面積が一定の筒状の侵入路が形成されており、
    前記侵入口は、前記侵入路の先端に形成され、
    前記侵入路の長さは、2mm以上であるゴキブリ捕獲器。
  5. 容器内にチャバネゴキブリ及びクロゴキブリを捕獲するゴキブリ捕獲器であって、
    前記容器には、チャバネゴキブリ及びクロゴキブリが当該容器内に侵入するための複数の侵入口と、断面積が一定の筒状の複数の侵入路とが形成されており、前記侵入口は、前記侵入路の先端に形成され、
    前記複数の侵入口には、侵入口から、前記容器における当該侵入口の直下の部分までの距離が異なる少なくも2種類の侵入口が含まれており、
    2種類のうちの一方の侵入口の前記距離は、15mm〜31mmであり、
    2種類のうちの他方の侵入口の前記距離は、29mm〜53mmであるゴキブリ捕獲器。
  6. 請求項1から5の何れか1つに記載のゴキブリ捕獲器であって、
    前記容器の底部には、粘着剤が設けられ、
    前記容器における前記侵入口の直下には、前記粘着剤を有さない着地部が設けられ、
    前記距離は、前記侵入口から前記着地部までの距離であるゴキブリ捕獲器。
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