JP6015147B2 - 組換えタンパク質の抽出試薬 - Google Patents

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Description

本発明は、組換えタンパク質を発現可能な形質転換体から、前記タンパク質を効率的に抽出可能な試薬、および前記試薬を用いた前記タンパク質の製造方法に関する。
タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むベクターを用いて大腸菌を形質転換して得られる形質転換体を培養し、当該培養した形質転換体内から前記タンパク質を抽出する方法として、従来より超音波破砕処理やフレンチプレス処理等の物理的破砕による方法や、市販の抽出試薬を用いた化学的処理による方法が知られている。しかしながら、これらの方法を用いて、前記タンパク質を工業的に抽出しようとすると、物理的破砕による方法では超音波破砕装置やフレンチプレス等の破砕装置の設置に莫大な費用がかかる問題があり、化学的処理による方法では高価な抽出試薬を大量に用いる問題があった。
前記タンパク質を抽出する方法としては、前述した方法以外にも、非イオン界面活性剤と陰イオン界面活性剤を含んだ試薬で抽出する方法(特許文献1)や、陽イオン界面活性剤を含む試薬で抽出する方法(特許文献2)等が知られている。しかしながら、前記タンパク質がヒトFc受容体等のヒト由来のタンパク質である場合、効率的な抽出ができないという問題があった。
特開2011−051943号公報 特開2006−320313号公報
本発明の目的は、タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むベクターを用いて大腸菌を形質転換して得られる形質転換体を培養し、当該培養した形質転換体内から前記タンパク質を抽出する際に、前記タンパク質を効率的に抽出可能な試薬、および前記試薬を用いた前記タンパク質の製造方法を提供することにある。
本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意検討した結果、抽出試薬に添加する界面活性剤を最適化することで、前記タンパク質の形質転換体内からの抽出を効率的に行なえることを見出し、本発明を完成させた。また前記抽出試薬を用いた抽出操作時のpHについても鋭意検討した結果、最適なpH範囲を見出した。
すなわち本発明は以下の発明を包含する:
(1)タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むベクターを用いて大腸菌を形質転換して得られる形質転換体を培養し、当該培養した形質転換体内から前記タンパク質を抽出するのに用いる抽出試薬であって、少なくとも非イオン界面活性剤と陽イオン界面活性剤を含む前記試薬。
(2)非イオン界面活性剤が終濃度1.5%(w/v)以上のTriton X−100(商品名)であり、陽イオン界面活性剤が終濃度0.1%(w/v)から0.7%(w/v)の臭化セチルトリメチルアンモニウムである、(1)に記載の試薬。
(3)さらに陰イオン界面活性剤を含む、(1)または(2)に記載の試薬。
(4)さらに核酸分解酵素を含む、(1)から(3)のいずれかに記載の試薬。
(5)タンパク質がヒトFc結合性タンパク質である、(1)から(4)のいずれかに記載の試薬。
(6)タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むベクターを用いて大腸菌を形質転換して得られる形質転換体を培養する工程と、培養した前記形質転換体に、少なくとも非イオン界面活性剤と陽イオン界面活性剤を含む抽出試薬を用いて、前記形質転換体内から前記タンパク質を抽出させる工程とを含む、前記タンパク質の製造方法。
(7)前記抽出させる工程をpH7.0から10.0の条件下で実施する、(6)に記載の製造方法。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の抽出試薬は、タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むベクターを用いて大腸菌を形質転換して得られた形質転換体の細胞壁を溶かすことで、当該形質転換体内に発現した前記タンパク質を機械的な破砕処理をせずに抽出可能な試薬であり、少なくとも非イオン界面活性剤と陽イオン界面活性剤を含むことを特徴としている。
本発明の抽出試薬に含まれる非イオン界面活性剤は、膜タンパク質可溶化剤として通常用いられる中から適宜選択することができ、Triton X−100(商品名)、Triton X−114(商品名)、Brij 58(商品名)、Brij 35(商品名)、Tween 20(商品名)、Tween 80(商品名)、1−O−n−オクチル−β−D−グルコピラノシド、n−オクチル−β−D−チオグルコピラノシド、n−ドデシル−β−D−マルトピラノシド、n−ドデシル−α−D−マルトピラノシド、n−ドデシル−N,N-ジメチルアミン−N−オキシド、イソプロピル−β−D−チオガラクトシド、スクロースモノドデカン酸、n−オクチル−β−D−グルコピラノシド、n−ドデシル−β−D−マルトピラノシド、n−トリデシル−β−D−マルトピラノシド等があげられる。
本発明の抽出試薬に含まれる陽イオン界面活性剤も、膜タンパク質可溶化剤として通常用いられる中から適宜選択することができ、アルキルトリメチルアンモニウム塩(例えば塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、臭化ラウリルトリメチルアンモニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム)、ジアルキルジメチルアンモニウム塩(例えば塩化ジステアリルジメチルアンモニウム塩)、アルキルピリジウム塩(例えば塩化セチルピリジウム)、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウム等があげられる。
なお本発明の抽出試薬に陰イオン界面活性剤をさらに含むと、形質転換体(大腸菌)の溶菌が促進されるため好ましい。本発明の抽出試薬に含んでもよい、陰イオン界面活性剤としては、膜タンパク質可溶化剤として通常用いられる中から適宜選択することができ、コール酸、デオキシコール酸、およびそれらの塩等があげられる。
本発明の抽出試薬に含まれる各界面活性剤の濃度については、培養液中の夾雑物、使用する界面活性剤の臨界ミセル濃度などを考慮し、適宜設定すればよい。一例として、非イオン界面活性剤としてTriton X−100(商品名)を、陽イオン界面活性剤として臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTMB)を、陰イオン界面活性剤としてデオキシコール酸ナトリウムを、それぞれ用いる場合は、Triton X−100(商品名)は終濃度1.5%(w/v)以上に、CTMBは終濃度0.1%(w/v)から0.7%(w/v)の範囲に、デオキシコール酸ナトリウムは終濃度0.2%(w/v)前後に、それぞれ設定するとよい。
本発明の抽出試薬には、前述した界面活性剤以外の成分を含んでもよく、特にBenzonase(メルク社製)等のエンドヌクレアーゼ(核酸分解酵素)をさらに含むと、形質転換体内から、前述した界面活性剤によりタンパク質とともに抽出される、核酸による粘度上昇が抑制できるため好ましい。なお、本発明の抽出試薬に核酸分解酵素をさらに含ませる場合、助剤として2mM程度の硫酸マグネシウムを含むとよい。
核酸分解酵素以外で、本発明の抽出試薬にさらに含んでもよい成分としては、緩衝液成分、塩類があげられる。緩衝液成分としては、濃度10mMから100mM程度の酢酸緩衝液、クエン酸−リン酸緩衝液、リン酸緩衝液、Tris−HCl緩衝液、グリシン−NaOH水溶液、MES緩衝液、ADA緩衝液、PIPES緩衝液、ACES緩衝液、コラミン−HCl緩衝液、BES緩衝液、TES緩衝液、HEPES緩衝液、アセトアミドグリシン緩衝液、Tricine緩衝液、グリシンアミド緩衝液、Bicine緩衝液等があげられる。一例として抽出するタンパク質がヒトFc結合性タンパク質の場合、濃度20mMから50mM、pH6.0から8.0のリン酸緩衝液またはTris−HCl緩衝液が好ましく、濃度50mM、pH8.0のTris−HCl緩衝液がもっとも好ましい。塩類としては、終濃度10mMから1000mMの硫酸塩、リン酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、炭酸塩、塩化物等があげられる。一例として抽出するタンパク質がヒトFc結合性タンパク質の場合、終濃度50mMから800mMの塩化ナトリウムおよび終濃度50mMから800mMの塩化カルシウムが好ましく、終濃度650mMの塩化ナトリウムおよび終濃度50mMの塩化カルシウムがもっとも好ましい。
タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むベクターを用いて大腸菌を形質転換して得られた形質転換体から、本発明の抽出試薬を用いて前記形質転換体内から前記タンパク質を抽出する際、タンパク質が失活しない程度のアルカリ性(具体的には、pH7.0から10.0)条件下で抽出操作を行なうと、タンパク質抽出の効率が向上するため好ましい。一例として抽出するタンパク質がヒトFc結合性タンパク質の場合、pH7.5からpH9.5の条件下で抽出操作を行なうと、より効率的にヒトFc結合性タンパク質を抽出することができる。
本発明の抽出試薬を用いて形質転換体内のタンパク質を抽出した後は、当該技術分野において公知の方法を用いて前記タンパク質を精製することで、前記タンパク質を製造すればよい。前記タンパク質の精製方法の一例として、液体クロマトグラフィーを用いた分離・精製があげられる。液体クロマトグラフィーとしては、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィーなどがあげられる。これらのクロマトグラフィーを組み合わせて精製操作を行なうことによって、前記タンパク質を高純度に調製することができる。
本発明の製造方法で得られたタンパク質の分析方法は、培養液、抽出液等から安定的にかつ効率的に定量できる方法であれば特に限定はなく、ELISA法(酵素結合免疫吸着法)やウェスタンブロット法があげられる。
本発明の抽出試薬を用いて抽出するタンパク質は、タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むベクターを用いて大腸菌を形質転換して得られた形質転換体の菌体内に発現するタンパク質であれば特に限定されない。ここでは前記タンパク質の一例である、ヒトFc結合性タンパク質について詳細に説明する。
本明細書においてヒトFc結合性タンパク質は、ヒトFcγRIの細胞外領域(具体的には天然型ヒトFcγRIの場合、配列番号1に記載のアミノ酸配列のうち16番目から292番目までの領域)を構成するタンパク質のことをいう。ただし必ずしもヒトFcγRI細胞外領域の全領域でなくてもよく、ヒトFcγRI細胞外領域を構成するポリペプチドのうち、少なくとも抗体(IgG)のFc領域に結合する本来の機能を発現し得る領域のポリペプチドを含んでいればよい。当該ヒトFc結合性タンパク質の一例として、
(i)配列番号1に記載のアミノ酸配列のうち少なくとも16番目のグルタミンから289番目のバリンまでのアミノ酸を含むタンパク質や、
(ii)配列番号1に記載のアミノ酸配列のうち少なくとも16番目のグルタミンから289番目のバリンまでのアミノ酸を含み、かつ前記アミノ酸のうちの一つ以上が他のアミノ酸に置換、挿入または欠失したタンパク質、
があげられる。前記(ii)の具体例としては、特開2011−206046号公報に開示のFc結合性タンパク質があげられる。
本発明の抽出試薬は、少なくとも非イオン界面活性剤と陽イオン界面活性剤を含むことを特徴としており、タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むベクターを用いて大腸菌を形質転換して得られる形質転換体内に発現した前記タンパク質を効率的に抽出することができる。本発明の抽出試薬を用いたタンパク質の抽出方法は、物理的破砕による方法や市販の抽出試薬を用いた方法と比較し、安価かつ効率的に前記タンパク質を抽出可能であることから、組換えタンパク質の工業的な製造において有用といえる。
本発明の抽出試薬(実施例1)、市販の抽出試薬(比較例1)および超音波破砕(比較例2)による、ヒトFc結合性タンパク質を発現可能な形質転換体からの前記タンパク質の抽出効率を比較した結果を示す図である。 抽出試薬に含まれる界面活性剤の違いによる、ヒトFc結合性タンパク質を発現可能な形質転換体からの前記タンパク質の抽出効率を比較した結果を示す図である。 抽出試薬に含まれる臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)濃度の違いによる、ヒトFc結合性タンパク質を発現可能な形質転換体からの前記タンパク質の抽出効率を比較した結果を示す図である。 抽出試薬に含まれるTriton X−100(商品名)濃度の違いによる、ヒトFc結合性タンパク質を発現可能な形質転換体からの前記タンパク質の抽出効率を比較した結果を示す図である。 本発明の抽出試薬を用いて抽出操作を行なう際のpHの違いによる、ヒトFc結合性タンパク質を発現可能な形質転換体からの前記タンパク質の抽出効率を比較した結果を示す図である。 抽出試薬に含まれるデオキシコール酸ナトリウムの有無の違いによる、ヒトFc結合性タンパク質を発現可能な形質転換体からの前記タンパク質の抽出効率を比較した結果を示す図である。
以下、実施例および比較例を用いて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は当該例に限定されるものではない。
実施例1
(1)特開2011−126827号公報に記載の方法により、Fc結合性タンパク質を生産可能な組換え大腸菌を培養し、得られた培養液から遠心分離により大腸菌菌体(湿潤菌体)を得た。
(2)(1)で得られた湿潤菌体を1mMのEDTAを含む50mMTris−HCl緩衝液(pH8.0)に懸濁させ、均一になるまで室温(20℃から25℃)にて撹拌後、NaClを終濃度0.65Mとなるよう添加し、さらに室温で撹拌した。
(3)希NaOH水溶液を用いてpH9.0となるよう調製し、菌体からの効率的なタンパク質抽出を促した。なお菌体内容物の漏出によりpHが酸性側へ移動するため、都度、希NaOH水溶液を添加することで前記pHを維持した。
(4)臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)水溶液を終濃度0.5(w/v)%となるよう添加し、Triton X−100(商品名)水溶液を終濃度2(v/v)%となるよう添加し、デオキシコール酸ナトリウム水溶液を終濃度0.2(w/v)%となるよう添加後、室温で撹拌することで、Fc結合性タンパク質を抽出した。
(5)核酸分解酵素(Benzonase、メルク社製)を終濃度250unit/Lとなるよう添加し、助剤として硫酸マグネシウムを終濃度2mMとなるよう添加し、塩化カルシウム水溶液を終濃度50mMとなるよう添加後、4℃で撹拌することで、(4)で添加した界面活性剤により菌体内から抽出される核酸による粘度上昇を抑制した。
(6)(5)の抽出液を遠心分離操作し、上清(無細胞抽出液)を得た。
(7)(6)で得られた無細胞抽出液中のFc結合性タンパク質の抽出量を以下に示したELISA法にて、Fc結合性タンパク質以外の夾雑タンパク質濃度をBradford法にて、それぞれ測定した。
(7−1)ヒト抗体であるガンマグロブリン製剤(化学及血清療法研究所製)を、96穴マイクロプレートのウェルに1μg/wellの濃度で固定した(4℃で18時間)。
(7−2)固定化終了後、洗浄緩衝液(0.05%(w/v)のTween 20(商品名)と150mMのNaClを含む10mMのTris−HCl緩衝液(pH8.0))で洗浄し、0.5%BSA(Sigma−Aldrich社製)によりブロッキングした。
(7−3)洗浄緩衝液にて洗浄後、調製したタンパク質抽出液を50mMのTris−HCl緩衝液(pH8.0)で適宜希釈し、固定化ガンマグロブリンと反応させた(30℃で1時間)。
(7−4)反応終了後、洗浄緩衝液で再度洗浄し、Anti−hFcγR1/CD64抗体試薬(R&Dシステムズ社製)を添加した(30℃で1時間)。
(7−5)反応終了後、洗浄緩衝液で再度洗浄し、Horse radish Peroxidase(HRP)標識のGoat anti−Mouse IgG−h+IHRP抗体試薬(BETHYL社製)を添加した。
(7−6)30℃で1時間反応後、洗浄緩衝液で洗浄し、TMB Peroxidase Substrate(KPL社製)を添加し450nmの吸光度を測定した。
結果、無細胞抽出液中の夾雑タンパク質の濃度は18mg/mLであり、Fc結合性タンパク質の抽出量は湿潤菌体1gあたり1.3mgであった。
比較例1
(1)特開2011−126827号公報に記載の方法により、Fc結合性タンパク質を生産可能な組換え大腸菌を培養し、得られた培養液から遠心分離により大腸菌菌体(湿潤菌体)を得た。
(2)(1)で得られた湿潤菌体を、実施例1と同じ菌体濃度となるよう1mMのEDTAを含む50mMトリス塩酸緩衝液(pH8.0)に懸濁させた。
(3)市販の抽出試薬(BugBuster、メルク社製)を用いて、試薬に添付の標準プロトコールに従いFc結合性タンパク質を抽出した。
(4)(3)の抽出液を遠心分離操作し、上清(無細胞抽出液)を得た。
(5)実施例1(7)に記載の方法により、Fc結合性タンパク質の抽出効率、および夾雑タンパク質濃度を測定した。
結果、無細胞抽出液中の夾雑タンパク質の濃度は22mg/mLであり、Fc結合性タンパク質の抽出量は湿潤菌体1gあたり1.0mgであった。
比較例2
(1)特開2011−126827号公報に記載の方法により、Fc結合性タンパク質を生産可能な組換え大腸菌を培養し、得られた培養液から遠心分離により大腸菌菌体(湿潤菌体)を得た。
(2)(1)で得られた湿潤菌体を、実施例1と同じ菌体濃度となるよう1mMのEDTAを含む50mMトリス塩酸緩衝液(pH8.0)に懸濁させた。
(3)超音波破砕機(INSONATOR201M(久保田製作所社製)、130W×10分)を用いて機械的破砕することで、Fc結合性タンパク質の抽出を行なった。
(4)(3)の抽出液を遠心分離操作し、上清(無細胞抽出液)を得た。
(5)実施例1(7)に記載の方法により、Fc結合性タンパク質の抽出効率、および夾雑タンパク質濃度を測定した。
結果、無細胞抽出液中の夾雑タンパク質の濃度は26mg/mLであり、Fc結合性タンパク質の抽出量は湿潤菌体1gあたり1.1mgであった。
実施例1、比較例1および比較例2の結果をまとめたものを図1に示す。少なくとも非イオン界面活性剤と陽イオン界面活性剤を含んだ抽出試薬を用いて大腸菌を抽出(実施例1)することで、市販の抽出試薬を用いた方法(比較例1)や機械的破砕法(比較例2)と比較し、無細胞抽出液画分への夾雑タンパク質の溶出を抑えつつ、組換えタンパク質であるFc結合性タンパク質を効率的に抽出できることがわかる。
比較例3
実施例1(4)で添加する界面活性剤を、Brij35(商品名)およびデオキシコール酸ナトリウムとした他は、実施例1と同様な操作を行なった。結果、無細胞抽出液中の夾雑タンパク質の濃度は11mg/mLであり、Fc結合性タンパク質の抽出量は湿潤菌体1gあたり0.4mgであった。
比較例4
実施例1(4)で添加する界面活性剤を、Tween20(商品名)およびデオキシコール酸ナトリウムとした他は、実施例1と同様な操作を行なった。結果、無細胞抽出液中の夾雑タンパク質の濃度は9mg/mLであり、Fc結合性タンパク質の抽出量は湿潤菌体1gあたり0.1mgであった。
比較例5
実施例1(4)で添加する界面活性剤を、CHAPS(3−[(3−コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]−1−プロパンスルホナート)およびデオキシコール酸ナトリウムとした他は、実施例1と同様な操作を行なった。結果、無細胞抽出液中の夾雑タンパク質の濃度は12mg/mLであり、Fc結合性タンパク質の抽出量は湿潤菌体1gあたり0.8mgであった。
比較例6
実施例1(4)で添加する界面活性剤を、Zwittergent(商品名)およびデオキシコール酸ナトリウムとした他は、実施例1と同様な操作を行なった。結果、無細胞抽出液中の夾雑タンパク質の濃度は11mg/mLであり、Fc結合性タンパク質の抽出量は湿潤菌体1gあたり0.2mgであった。
実施例1および比較例3から6の結果をまとめたものを図2に示す。非イオン界面活性剤と陽イオン界面活性剤と陰イオン界面活性剤を含んだ抽出試薬を用いて大腸菌を抽出(実施例1)することで、界面活性剤として非イオン界面活性剤と陰イオン界面活性剤のみを含んだ抽出試薬(比較例3および4)や、界面活性剤として両性イオン界面活性剤と陰イオン界面活性剤のみを含んだ抽出試薬(比較例5および6)と比較し、組換えタンパク質であるFc結合性タンパク質を効率的に抽出できることがわかる。
実施例2
実施例1(4)で添加するCTABの終濃度を0.1%(w/v)とした他は、実施例1と同様な操作を行なった。結果、無細胞抽出液中の夾雑タンパク質の濃度は5mg/mLであり、Fc結合性タンパク質の抽出量は湿潤菌体1gあたり0.7mgであった。
比較例7
実施例1(4)で添加するCTABの終濃度を1%(w/v)とした他は、実施例1と同様な操作を行なった。結果、無細胞抽出液中の夾雑タンパク質の濃度は29mg/mLであり、Fc結合性タンパク質の抽出量は湿潤菌体1gあたり0.9mgであった。
実施例1、実施例2および比較例7の結果をまとめたものを図3に示す。CTABの終濃度を0.1%(w/v)(実施例2)とすると、CTABの終濃度を0.5%(w/v)としたとき(実施例1)と比較し、無細胞抽出液画分への夾雑タンパク質の溶出を3分の1以下に抑えることができるものの、組換えタンパク質であるFc結合性タンパク質の抽出量も約2分の1に低下していることがわかる。一方、CTABの終濃度を1%(w/v)(比較例7)とすると、無細胞抽出液画分への夾雑タンパク質の溶出が増大し、かつ組換えタンパク質であるFc結合性タンパク質の抽出量も低下しているため、好ましくないことがわかる。そのため、本発明の抽出試薬に含まれる陽イオン界面活性剤として、CTABを用いる場合、その濃度は0.1%(w/v)から0.7%(w/v)の範囲が好ましいといえる。
比較例8
実施例1(4)で添加するTriton X−100(商品名)の終濃度を1%(w/v)とした他は、実施例1と同様な操作を行なった。結果、無細胞抽出液中の夾雑タンパク質の濃度は14mg/mLであり、Fc結合性タンパク質の抽出量は湿潤菌体1gあたり0.4mgであった。
比較例9
実施例1(4)で添加するTriton X−100(商品名)の終濃度を0.2%(w/v)とした他は、実施例1と同様な操作を行なった。結果、無細胞抽出液中の夾雑タンパク質の濃度は11mg/mLであり、Fc結合性タンパク質の抽出量は湿潤菌体1gあたり0.3mgであった。
実施例1、比較例8および比較例9の結果をまとめたものを図4に示す。Triton X−100(商品名)の終濃度を1%(w/v)(比較例8)または0.2%(w/v)(比較例9)とすると、Triton X−100(商品名)の終濃度を2%(w/v)としたとき(実施例1)と比較し、無細胞抽出液画分への夾雑タンパク質の溶出は8割(比較例8)または6割(比較例9)程度に抑えられるものの、組換えタンパク質であるFc結合性タンパク質の抽出量は約3分の1(比較例8)または約4分の1(比較例9)とそれ以上に低下していた。そのため、本発明の抽出試薬に含まれる非イオン界面活性剤として、Triton X−100(商品名)を用いる場合、その濃度は1.5%(w/v)以上が好ましいといえる。
実施例3
抽出操作時のpHを8.0にした他は、実施例1と同様な操作を行なった。結果、無細胞抽出液中の夾雑タンパク質の濃度は10mg/mLであり、Fc結合性タンパク質の抽出量は湿潤菌体1gあたり1.2mgであった。
実施例4
抽出操作時のpHを10.0にした他は、実施例1と同様な操作を行なった。結果、無細胞抽出液中の夾雑タンパク質の濃度は7mg/mLであり、Fc結合性タンパク質の抽出量は湿潤菌体1gあたり1.0mgであった。
比較例10
抽出操作時のpHを11.0にした他は、実施例1と同様な操作を行なった。結果、無細胞抽出液中の夾雑タンパク質の濃度は4mg/mLであり、Fc結合性タンパク質の抽出量は湿潤菌体1gあたり0.3mgであった。
実施例1、実施例3、実施例4および比較例10の結果をまとめたものを図5に示す。組換えタンパク質であるFc結合性タンパク質の抽出量は、抽出操作時のpHが8.0(実施例3)のときとpH9.0(実施例1)のときとで、ほぼ同等であった。一方、抽出操作時のpHを11.0(比較例10)とするとFc結合性タンパク質の抽出量が大きく減少した。このことから、抽出操作時のpHは7.0から10.0の範囲が好ましく、pHを7.5から9.5の範囲とするとより好ましいといえる。
実施例5
実施例1(4)で添加する界面活性剤のうち、デオキシコール酸ナトリウムを添加しない他は、実施例1と同様な操作を行なった。結果、無細胞抽出液中の夾雑タンパク質の濃度は21mg/mLであり、Fc結合性タンパク質の抽出量は湿潤菌体1gあたり1.1mgであった。
実施例1、実施例5、比較例1、比較例2の結果をまとめたものを図6に示す。陰イオン界面活性剤を含まない抽出試薬(実施例5)を用いた場合、陰イオン界面活性剤を含む抽出試薬(実施例1)を用いた場合と比較して、組換えタンパク質であるFc結合性タンパク質の抽出量は減少し、夾雑タンパク質の溶出量は増大した。しかしながら夾雑タンパク質の溶出量に対するFc結合性タンパク質の抽出量で比較すると、市販の抽出試薬(比較例1)や機械的破砕法(比較例2)と比較し、優れていた。したがって、少なくとも非イオン界面活性剤と陽イオン界面活性剤を含む試薬であれば、タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むベクターを用いて大腸菌を形質転換して得られる形質転換体から、前記タンパク質を効率的に抽出できることがわかる。

Claims (4)

  1. タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むベクターを用いて大腸菌を形質転換して得られる形質転換体を培養し、当該培養した形質転換体内から前記タンパク質を抽出するのに用いる抽出試薬であって、少なくとも非イオン界面活性剤と陽イオン界面活性剤を含み、前記タンパク質がヒトFc結合性タンパク質であり、前記非イオン界面活性剤が終濃度2%(w/v)以上のTriton X−100(商品名)であり、前記陽イオン界面活性剤が終濃度0.1%(w/v)から0.5%(w/v)の臭化セチルトリメチルアンモニウムであり、かつpHが8.0〜10.0の条件で使用される、前記試薬。
  2. さらに陰イオン界面活性剤を含む、請求項1に記載の試薬。
  3. さらに核酸分解酵素を含む、請求項1または2に記載の試薬。
  4. タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むベクターを用いて大腸菌を形質転換して得られる形質転換体を培養する工程と、培養した前記形質転換体に、少なくとも非イオン界面活性剤と陽イオン界面活性剤とを含む抽出試薬を用いて、前記形質転換体内から前記タンパク質を抽出させる工程とを含み、前記タンパク質がヒトFc結合性タンパク質であり、前記非イオン界面活性剤が終濃度2%(w/v)以上のTriton X−100(商品名)であり、前記陽イオン界面活性剤が終濃度0.1%(w/v)から0.5%(w/v)の臭化セチルトリメチルアンモニウムであり、かつpHが8.0〜10.0の条件で前記抽出試薬を使用する、前記タンパク質の製造方法。
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