JP6011985B2 - ノダフジ由来改変レクチン - Google Patents
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Description
疾患特異的な糖鎖変化を検出する方法として、抗糖鎖抗体とともに古くから使われてきたのが植物や真菌由来の糖鎖結合タンパク質であるレクチンである。レクチンを用いて、組織切片を染色すると、性格の異なった細胞あるいは分化の異なった細胞などを染め分けることが可能であるが、レクチンの糖鎖認識特異性は厳密ではないため、どんな糖鎖構造が変化しているかを特定することはできない。植物レクチンの1つであるノダフジレクチン(Wisteria floribunda agglutinin,WFA)はマメ科レクチンに属するレクチンで、N-アセチルガラクトサミン(GalNAc)残基を含む糖鎖を認識することが知られているが、詳細な特異性は明らかになっていない。それにも関わらず、WFAのユニークな糖鎖認識特異性は様々な生物学的分野でマーカーとして用いられている。例えば、脳神経分野においては、WFAはペリニューロナルネットワーク(PNN)を染色する古典的なマーカーとして知られているし(非特許文献1)、胃においては正常な腺窩上皮細胞を染色する(非特許文献2)。前立腺癌と前立腺肥大症とを鑑別するための鑑別法にも用いられている(特許文献1)。また、最近は診断に用いるバイオマーカーとしての有効性がクローズアップされており、WFA陽性のMUC1は肝内胆管がんの胆汁診断マーカーとなることが報告されている(特許文献2,非特許文献3)。
ノダフジ種子からのレクチンの単離は1970年代に複数のグループから報告されている(表1)。
WFAの生物学的重要性は近年増してきているが、WFAの糖鎖認識の詳細は未だ未解明なままであり、上記のニューロンと胃におけるWFAが認識する糖鎖構造が同じかどうかさえわかっていない。また、その生産についても、Vector Laboratory社やEY Laboratory社より試薬として販売されているWFAは天然のノダフジ種子から精製しており、安定的な供給や精製ロット間の均一性を管理するためには遺伝子工学的手法によるリコンビナントレクチン生産へのシフトが求められている。
以上の知見を得たことで、本発明を完成した。
〔1〕 下記(1)又は(2)に示されるいずれかのアミノ酸配列を含み、かつGal/GalNAc末端糖鎖結合活性又はGalNAc末端糖鎖結合活性を有するポリペプチド;
(1)配列番号2に示されたアミノ酸配列、又はそのアミノ酸配列において272位以外の位置で1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入もしくは付加されたアミノ酸配列(ただし、273位又は274位以降のアミノ酸配列がすべて欠失している場合を除く)、
(2)(1)に示されるアミノ酸配列のN末端側から30番目までのいずれかのアミノ酸配列が欠失しているアミノ酸配列。
〔2〕 前記〔1〕に記載の(1)又は(2)に示されたいずれかのアミノ酸配列をコードする塩基配列を含む、Gal/GalNAc末端糖鎖結合活性を有するポリペプチドをコードする核酸。
〔3〕 下記(1)又は(2)に示されるいずれかの塩基配列を含み、Gal/GalNAc末端糖鎖結合活性を有するポリペプチドをコードする核酸;
(1)配列番号1に記載の塩基配列、又はその相補配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列であって、かつアミノ酸配列上の272位の位置がCysをコードするコドンである塩基配列(ただし、273位又は274位以降のアミノ酸配列に対応する塩基配列がすべて欠失している場合を除く)
(2)(1)に示される塩基配列において、アミノ酸配列のN末端側から30番目までのいずれかのアミノ酸配列に対応する塩基配列が欠失している塩基配列。
〔4〕 下記(1)〜(6)のいずれかのアミノ酸配列を含み、かつGalNAc末端糖鎖を特異的に認識するポリペプチド;
(1)配列番号2に示されたアミノ酸配列において、272位のアミノ酸がCys以外のアミノ酸であるアミノ酸配列、
(2)(1)に示されたアミノ酸配列において、272位以外の位置で1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入もしくは付加されたアミノ酸配列、
(3)配列番号2に示されたアミノ酸配列において、そのC末端側から13〜15番目のいずれかのアミノ酸までが欠失しているアミノ酸配列、
(4)(3)に示されたアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入もしくは付加されたアミノ酸配列、
(5)配列番号2に示されたアミノ酸配列の272位がアルキル化されたCysであるアミノ酸配列、又はそのアミノ酸配列において、272位以外の位置で1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入もしくは付加されたアミノ酸配列、
(6)(1)〜(5)に示されたいずれかのアミノ酸配列において、N末端側から30番目までのいずれかのアミノ酸配列が欠失したアミノ酸配列。
〔5〕 下記(1)〜(5)に示されるいずれかのアミノ酸配列を含み、かつGalNAc末端糖鎖のうちでも特にLDN特異的糖鎖認識能を有するポリペプチド;
(1)配列番号2に示されたアミノ酸配列において、272位のアミノ酸がCys以外のアミノ酸であるアミノ酸配列、
(2)(1)に示されたアミノ酸配列において、272位以外の位置で1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入もしくは付加されたアミノ酸配列、
(3)配列番号2に示されたアミノ酸配列において、そのC末端側から13〜15番目のいずれかのアミノ酸までが欠失しているアミノ酸配列、
(4)(3)に示されたアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入もしくは付加されたアミノ酸配列、
(5)(1)〜(4)に示されたいずれかのアミノ酸配列において、そのN末端側から30番目までのいずれかのアミノ酸配列が欠失しているアミノ酸配列。
〔6〕 前記〔5〕に記載の(1)〜(5)のいずれかのアミノ酸配列をコードする塩基配列を含む、LDN糖鎖を特異的に認識するポリペプチドをコードする核酸。
〔7〕 下記(1)〜(4)に示されるいずれかの塩基配列を含み、LDN糖鎖を特異的に認識するポリペプチドをコードする核酸;
(1)配列番号1に記載の塩基配列において、272位アミノ酸に対応するコドンがCys以外のアミノ酸である塩基配列、
(2)(1)に示された塩基配列の相補配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列であって、かつ272位アミノ酸に対応するコドンがCys以外のアミノ酸である塩基配列、
(3)配列番号1に記載の塩基配列において、3’末端側からC末端側13〜15番目までのいずれかのアミノ酸に対応する塩基配列が欠失している塩基配列、
(4)(1)〜(3)に示されたいずれかの塩基配列において、5’側からN末端アミノ酸〜30番目アミノ酸までのいずれかのアミノ酸配列に対応する塩基配列が欠失している塩基配列。
〔8〕 前記〔2〕,〔3〕,〔6〕又は〔7〕に記載の核酸を含む発現ベクター。
〔9〕 前記〔2〕,〔3〕,〔6〕又は〔7〕に記載の核酸を用いて形質転換された、形質転換細胞。
〔10〕 前記〔9〕に記載の形質転換細胞を培養して得られる培養物から採取することを特徴とする、Gal/GalNAc末端糖鎖結合活性、GalNAc末端糖鎖結合活性又はLDN糖鎖特異的結合活性を有するポリペプチドの製造方法。
〔11〕 前記〔1〕又は〔4〕に記載のポリペプチドを含むことを特徴とするGal/GalNAc末端糖鎖,又はGalNAc末端糖鎖を特異的に検出するための試薬。
〔12〕 前記〔5〕に記載のポリペプチドを含むことを特徴とする、LDN糖鎖を特異的に検出するための試薬。
〔13〕 2量体を形成し、かつGal/GalNAc末端糖鎖結合活性を有する下記(1)又は(2)に示されるアミノ酸配列を含むポリペプチドを還元処理し、次いで前記アミノ酸配列中のCysをアルキル化することを特徴とする、前記糖鎖結合活性をGalNAc末端糖鎖特異的な結合活性に変更する方法;
(1)配列番号2に示されたアミノ酸配列、又はそのアミノ酸配列において、272位以外の位置で1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入もしくは付加されたアミノ酸配列、
(2)(1)に示されたアミノ酸配列において、N末端側から30番目までのいずれかのアミノ酸配列が欠失したアミノ酸配列。
〔14〕 2量体を形成し、かつGal/GalNAc末端糖鎖結合活性を有する下記(1)又は(2)に示されるアミノ酸配列を含むポリペプチドの272位の位置のCysを他のアミノ酸に置換するか、又は前記アミノ酸配列のC末端側から13〜15番目までのいずれかのアミノ酸を欠失させることを特徴とする、前記糖鎖結合活性をLDN糖鎖特異的な結合活性に変更する方法;
(1)配列番号2に示されたアミノ酸配列、又はそのアミノ酸配列において、272位以外の位置で1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入もしくは付加されたアミノ酸配列、
(2)(1)に示されたアミノ酸配列において、N末端側から30番目までのいずれかのアミノ酸配列が欠失したアミノ酸配列。
また、本発明により提供された天然WFAの還元によるWFA単量体は、Gal残基を認識せず、GalNAc残基のみを特異的に認識するWFAレクチンであり、同リコンビナントWFA(rWFA)のシステイン改変によるWFA単量体は、末端GalNAc残基を有する糖鎖のうちでも、LDN(GalNAcβ1,4GlcNAc)糖鎖のみを特異的に認識するWFAレクチンである。このように、本発明においては、極めて有用性の高い糖鎖認識性を改変したWFAレクチンを提供することができた。
1−1.本発明においてクローニングしたノダフジ種子由来レクチン及びリコンビナントレクチン
本発明において、我々は古くから組織マーカーとして用いられてきたノダフジ種子由来レクチンの遺伝子クローニングとリコンビナントレクチンの作製に成功した。
クローニングした遺伝子は286アミノ酸からなる新規タンパク質をコードしていた(図1,配列番号1,2)が、N-末端のシグナル配列やC-末端のプロセシングされる可能性がある領域を除いた成熟型レクチン領域(aa31-273)の予想分子量は26.6KDaであった。種子中では1本のN-glycanが付加されている可能性が考えられるため、その予想分子量およそ1.3KDaを加えると、27.9KDaとなり、市販のWFAレクチンの分子量とよく一致する。また、市販のWFAのLC/MS法によるショットガン・ペプチド配列分析の結果からも、今回クローニングしたレクチンはほぼ市販のWFAと同一であったが、天然物から精製した市販のWFAと比較してみると、C末端に13アミノ酸が付加されたポリペプチドであった。ピーナッツレクチン(Peanut Agglutinin,PNA)などの他のマメ科レクチンでもC末端がプロセスされる例が報告されていること(非特許文献12)からみて、天然WFAでは、C末端13アミノ酸がプロセッシングされていると考えられる。
すなわち、本発明においては、天然WFAにおけるC末端側アミノ酸のプロセッシング前の「前駆体WFA」ともいうべき新規なリコンビナントWFA(rWFA)を提供するものである。本発明において、「rWFA」というとき、天然WFAと比較して、C末端側に13アミノ酸が付加されており、さらにシグナル配列であるN末端20アミノ酸が付加された、もしくは付加されていない「リコンビナントWFA」を指す。
今回クローニングしたWFAレクチンは、これまでにKurokawa(非特許文献6)やCheung(非特許文献7)らが報告したレクチンと分子量、アミノ酸組成ともに似ているが、Toyoshimaらにより精製が報告されたノダフジレクチンWFH(非特許文献5)とは分子量とアミノ酸組成が完全には一致しない。これらの違いは、分析法の違いによるものかも知れないし、ノダフジ種子にはさらに多くのレクチンやmitogenが存在している可能性も考えられる。
今回、大腸菌で発現させたrWFAは天然型WFA(nWFA)とは、糖鎖を有さず、少なくともC末端側に13アミノ酸を有している前駆体であるが、天然WFAとは同じ糖鎖認識活性を持つことが明らかになった。天然型WFAは1本のN-glycanを持っていることが予想されており、アミノ酸配列からみて、唯一のN-glycan(N型糖鎖)結合位置は146位のアスパラギン(N)である。しかし、糖鎖を持たないrWFAが活性を有したことから、この糖鎖は活性には必要ないと考えられる。マメ科レクチンファミリーに属するSoybean agglutinin (SBA)において、N-glycanの付加が活性や多量体形成に寄与しないことが報告されており(非特許文献13)、WFAにおいても同様の傾向が確認された。nWFAはジスルフィド結合で2量体を形成するが、今回アミノ酸配列を決定したことにより、272番目の唯一のシステインがジスルフィド結合の形成に寄与している可能性が強く考えられた。WFAを大腸菌のペリプラズムに発現させた場合、培地から精製したrWFAのおよそ半分は2量体を形成できたが、システインのアラニンへの改変体であるC272Aは2量体を形成できなかったことからこの可能性が正しいと思われる。タンパク質の成熟過程においてC末端の13アミノ酸がプロセシングされると仮定すると、成熟型nWFAタンパク質はほぼC末端で2量体を形成していることになる。我々はさらにC末端の13アミノ酸を予め除いたリコンビナントレクチンの発現も試みたが、それらの発現量は13アミノ酸を含むものと変わらなかったにも関わらず、ほとんど2量体を形成することはできなかった。これらのことから、WFAタンパク質の成熟過程においては2量体を形成した後にC末端のプロセシングが起こると考えられる。
また、SBAやPNAなど同様にマメ科に属するレクチン配列中にはシステインを含んでいないにも関わらず、大腸菌で発現した際に非共有結合により多量体を形成できるが、WFAの場合にはシステインを含んでおり、ジスルフィド結合を形成できる点が上記レクチンと異なっている。Sophora Japonica agglutinin(SJA)の配列中にもWFAと近い位置にシステインが存在しており(図2)、このシステインが同様に2量体形成に寄与する可能性が示唆される。
今回、大腸菌でrWFAを発現・精製し、Glycan arrayを用いて糖鎖結合特異性を調べた結果、rWFAは天然のものと同様にGal/GalNAcに対する糖鎖結合特異性を示した。しかしながら、2量体の形成に寄与する272番目システイン残基の改変体であるC272Aや2量体であるnWFAを還元アルキル化して単量体にしたnWFA-RCAは、糖鎖結合特異性が変化したことから、天然由来WFAのGal/GalNAc認識にはシステインを介した2量体形成が重要であると思われる。一方、nWFAの単量体であるnWFA-RCAはGalNAc末端の糖鎖を特異的に認識し、それ以外のGal末端の糖鎖は認識しなかった。単量体と2量体ではGalNAcに対する結合活性が変わらないことはKurokawaらによって報告されていたが(非特許文献6)、今回の結果ではGalNAcのみならず、末端にGalNAcを含む糖鎖全般に対しても、認識活性が変わらないことが明らかとなった。システイン残基は成熟型WFAのほぼC末端に存在しているので、レクチンの糖鎖結合ポケットの形成に関係していないと予想されるが、2量体を形成することでGal末端糖鎖結合活性が生じたことになる。nWFAがGalNAcとGalを同じポケットで認識しているのか、2量体を形成することでGalを認識するため新たな糖鎖認識部位が生じているのかは解らないが、結晶化してX線構造解析により構造が解ければ、糖鎖結合の分子メカニズムが明らかになるかもしれない。
また、rWFA C272Aは驚くべきことに非常に限定した糖鎖結合活性、つまりLDN特異的認識能を有していた。(図3C)に示すように、rWFAは培地から精製した場合は、およそ半分はシステイン残基を介して2量体を形成し、nWFAと同様にGal/GalNAc結合活性を示した。rWFA C272Aのシステイン残基の改変は糖鎖結合ポケットに影響するのではなく、タンパク質の合成過程において、2量体を形成しないことにより、ポケット以外の構造や安定性に影響を与えている可能性もある。
本発明において提供された新規リコンビナントWFA(rWFA)は、下記(1)又は(2)に示されるいずれかのアミノ酸配列を含み、かつGal末端糖鎖と共にGalNAc末端糖鎖に対する結合活性(以下、Gal/GalNAc末端糖鎖結合活性という。)を有するか、又はGalNAc末端糖鎖結合活性を有するポリペプチドとして表現できる。ここで、2量体を形成したrWFAは、Gal/GalNAc末端糖鎖結合活性を有し、単量体のrWFAはGalNAc末端糖鎖のうちでもLDN特異的な結合活性を有する。
(1)配列番号2に示されたアミノ酸配列、又はそのアミノ酸配列において272位以外の位置で1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入もしくは付加されたアミノ酸配列(ただし、273位又は274位以降のアミノ酸配列がすべて欠失している場合を除く)、
(2)(1)に示されるアミノ酸配列のN末端側から30番目までのいずれかのアミノ酸配列が欠失しているアミノ酸配列。
なお、数個とは、1〜20個を指し、好ましくは1〜10個、より好ましくは1〜5個を意味する。
したがって、rWFA遺伝子の塩基配列は、上記(1)又は(2)に記載のアミノ酸配列をコードする塩基配列であるといえるが、その塩基配列は、下記の(3)又は(4)で表現することもできる。
(3)配列番号1に記載の塩基配列、又はその相補配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列であって、かつアミノ酸配列上の272位の位置がCysをコードするコドンである塩基配列(ただし、273位又は274位以降のアミノ酸配列に対応する塩基配列がすべて欠失している場合を除く)、
(4)(3)に示される塩基配列において、アミノ酸配列のN末端側から30番目までのいずれかのアミノ酸配列に対応する塩基配列が欠失している塩基配列。
なお、ストリンジェントな条件というとき、一般的なハイブリダイズ法において、90%以上、好ましくは95%以上の同一性のある配列がハイブリダイズできる緊縮条件を意味する。
本発明のWFA遺伝子を発現するための発現ベクターの構築に際して、特に分泌シグナルは不要であるが、発現産物の精製のためには、培地中に分泌させて、培地を精製する方が簡便かつ効率的であるため、分泌シグナルを付加することが好ましい。
本発明のリコンビナントWFAを製造するための形質転換宿主としては、哺乳動物細胞、昆虫細胞、植物細胞又は酵母など真核細胞を用いることもできるが、天然体が本来有しているフコース含有糖鎖は、WFAレクチンの糖鎖認識能には関与していないため、大腸菌などの原核細胞宿主が好ましい。
得られたリコンビナントWFAに対しては、通常の精製方法が適用でき、例えば、通常のタグを用いた精製、又は糖鎖リガンドに対するアフィニティーカラムなどを用いて精製することができる。
本発明で得られたリコンビナントWFA(rWFA)は、天然WFAと同様の2量体と共に単量体をほぼ同量形成する。2量体化したrWFAは、天然WFAとほぼ同等の広範な糖鎖認識能を示すが、単量体の状態のrWFAは、後述のリコンビナントWFA改変体と同様に、LDN特異的糖鎖認識能を有する。当該rWFA単量体は、ゲル濾過等の手法で2量体から分離することができる。
(3−1)rWFAの272位Cysへの変異導入によるリコンビナントWFA改変体(C272rWFA)
本発明において、「LDN特異的糖鎖認識能」というとき、Gal末端糖鎖は認識せず、さらにGalNAc末端糖鎖のうちでも、GalNAcβ1,4GlcNAc糖鎖を有する場合のみを認識する糖鎖認識能を意味する。具体的には、正常の胃上皮細胞などに発現することが知られるLDN糖鎖マーカーが検出できる。
本発明において、開発されたLDN特異性を有するリコンビナントWFA改変体のうち、272位Cysへの変異導入によるリコンビナントWFA改変体(C272改変rWFA)は、272位のCysが他のアミノ酸に置換されたアミノ酸配列を有することで、2量体を形成できず、その結果がLDN特異的糖鎖認識能を獲得したWFAレクチンであり、以下のように表現できる。
下記(1)〜(3)に示されるいずれかのアミノ酸配列を含み、かつLDN特異的糖鎖認識能を有するポリペプチド;
(1)配列番号2に示されたアミノ酸配列において、272位のアミノ酸がCys以外のアミノ酸であるアミノ酸配列、
(2)(1)に示されたアミノ酸配列において、272位以外の位置で1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入もしくは付加されたアミノ酸配列、
(3)(1)又は(2)に示されたアミノ酸配列において、そのN末端側から30番目までのいずれかのアミノ酸配列が欠失しているアミノ酸配列。
なお、数個とは、1〜20個を指し、好ましくは1〜10個、より好ましくは1〜5個を意味する。
また、(1)のアミノ酸配列において、272位のアミノ酸としては、Cys以外のアミノ酸であればいずれのアミノ酸であっても良いが、Ala又はGlyなどの反応基を持たないアミノ酸が好ましく、特にAlaが好ましい。
また、当該リコンビナントWFA改変体遺伝子(C272rWFA遺伝子)は、上記(1)〜(3)に示されたアミノ酸配列をコードする塩基配列であるといえるが、その塩基配列は、下記の(4)〜(6)のいずれかの塩基配列として表現することもできる。
(4)配列番号1に記載の塩基配列において、272位アミノ酸に対応するコドンがCys以外のアミノ酸である塩基配列、
(5)(4)に示された塩基配列の相補配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列であって、かつ272位アミノ酸に対応するコドンがCys以外のアミノ酸である塩基配列、
(6)(4)又は(5)に示された塩基配列において、5’側からN末端アミノ酸〜30番目アミノ酸までのいずれかのアミノ酸に対応する塩基配列が欠失している塩基配列。
なお、ストリンジェントな条件というとき、一般的なハイブリダイズ法において、90%以上、好ましくは95%以上の同一性のある配列がハイブリダイズできる緊縮条件を意味する。
また、本発明では、リコンビナントWFA改変体(C272改変rWFA)において、さらにN型糖鎖結合位置の146位アスパラギンをグルタミンに変異(N146Q)させたC272,N146Q改変rWFAのリコンビナントWFA改変体も作製している。当該改変体は、宿主として大腸菌などの細菌以外の酵母、哺乳動物細胞を用いた場合でも糖鎖を持たないことと共に、大腸菌で発現されたリコンビナントWFA改変体(C272改変rWFA)の場合と同一の「LDN特異的糖鎖認識能」を有していることが確認された。
2量体リコンビナントWFAのC末側の部分アミノ酸配列を欠失させることによっても、C272の位置での2量体形成ができなくなり、単量体化できる。その単量体の糖鎖認識能はC272 rWFAと同様であって、LDN糖鎖特異性を示す。天然WFAは、リコンビナントWFAのC末側の13番目以降のアミノ酸配列(275〜293位)を有していないにもかかわらず、272位のCysの位置でS-S結合による2量体を形成している。このことから、天然WFAではタンパク質が生合成され、2量体形成後に、275以下の13アミノ酸部分が切断されると推定できる。一方、予めC末端から13番目までのアミノ酸を欠失させたリコンビナントWFAの場合に、15番目の位置に相当する272 Cysでの2量体形成能を失って単量体化され、かつC272rWFAと同等のLDN糖鎖特異性を獲得することが確認されている(図3)。このことは、272位のCys及びその近傍のアミノ酸配列が除去されていれば、同様のLDN糖鎖特異性を有する単量体が形成できると考えられる。すなわち、C末端側から13〜15番目までのアミノ酸を欠失させたリコンビナントWFA改変体であれば、C272 rWFAと同様のLDN糖鎖特異性を示す単量体を形成するリコンビナントWFA改変体であるといえる。
本発明では、このようなC末側アミノ酸配列欠失リコンビナントWFAを、C末側欠失リコンビナントWFA改変体、又は「rWFA delta」と呼ぶこともある。
「rWFA delta」は、以下のように表現できる。
下記(1)又は(2)に示されるいずれかのアミノ酸配列を含み、かつLDN特異的糖鎖認識能を有するポリペプチド;
(1)配列番号2に示されたアミノ酸配列において、そのC末端側から13〜15番目のいずれかのアミノ酸までが欠失しているアミノ酸配列、
(2)(1)に示されたアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入もしくは付加されたアミノ酸配列。
「rWFA delta」遺伝子は、上記(1)又は(2)に示されたアミノ酸配列をコードする塩基配列であるといえるが、その塩基配列は、下記の(3)〜(6)のいずれかの塩基配列として表現することもできる。
(3)配列番号1に記載の塩基配列において3’末端側からC末端から13〜15番目のいずれかのアミノ酸までに対応する塩基配列が欠失している塩基配列、
(4)(3)に示された塩基配列の相補配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列。
本発明のリコンビナントWFA改変体遺伝子(C272rWFA遺伝子又はrWFA delta遺伝子)を含むベクターを構築する際に、C272rWFA又はrWFA deltaを検出しやすくするために、上流側又は下流側にFLAGtagなどの検出用タグを結合してもよい。これらタグの結合によっても、そのLDN特異的糖鎖認識能は変わらない。
本発明のリコンビナントWFA改変体(C272rWFA又はrWFA delta)発現のための、宿主及び発現ベクターはリコンビナントWFAと同様であり、その精製方法も同様である。
本発明において「還元WFA単量体」というとき、2量体のリコンビナントWFA、又は天然WFAに対して、還元後システイン残基をアルキル化処理することで、単量体化されたWFAを指す。
その際の還元方法、及びアルキル化方法は既知の手法を順次、もしくは同時に適用することが可能である。典型的には、ジチオスレイトール(DTT)を用いた還元処理後にヨードアセトアミドなどのアルキル化剤と反応させる手法が適用できる。
いずれの還元WFA単量体も、Gal末端糖鎖に対する糖鎖認識能が失われ、GalNAc末端糖鎖のみを特異的に認識するようになる。
すなわち、本発明のGalNAc末端糖鎖を特異的認識するWFA単量体レクチンの製造法は、以下のように表現できる。
下記(1)又は(2)に示されるアミノ酸配列をコードする、Gal/GalNAc末端糖鎖結合活性を有するポリペプチドの2量体を、還元条件下でインキュベートし、同時に硫黄含有官能基のアルキル化処理を施すことを特徴とする、GalNAc末端糖鎖を特異的認識するWFA単量体レクチンの製造方法;
(1)配列番号2に示されたアミノ酸配列、又はそのアミノ酸配列において、272位以外の位置で1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入もしくは付加されたアミノ酸配列、
(2)(1)に示されたアミノ酸配列において、N末端側から30番目までのいずれかのアミノ酸配列が欠失したアミノ酸配列。
このような、GalNAc末端糖鎖を特異的認識する「WFA単量体レクチン」も本発明ではじめて提供されたものである。
本発明において提供された各種リコンビナントWFAは、いずれもGal/GalNAc又はGalNAc糖鎖マーカー検出用レクチンとして有用であり、従来の天然WFAを用いて行われていたLDN糖鎖マーカー検出法にも用いることができる。
天然WFAの前駆体WFAといえるrWFAは、天然WFAと同等の糖鎖認識能を保持しており、しかも形質転換大腸菌などからWFA遺伝子発現産物として大量生産できるため、従来のGal/GalNAc末端糖鎖検出のために、天然WFAの代替物として用いることができる。当該rWFAをゲル濾過などで分離して得られる単量体rWFAは、LDN糖鎖を特異的に認識する。
また、本発明のGalNAc末端糖鎖を特異的認識するWFA単量体レクチン及び、さらにGalNAc末端糖鎖のうちでも特にLDN糖鎖のみを特異的に認識することができるC272改変体WFAは、C末側の単量体rWFAと同様、従来の天然WFAを用いて行われていた正常胃粘膜部位の検出のためのLDN糖鎖マーカー検出法に用いる場合に、より高い特異性が発揮できる。
具体的には、LDN糖鎖の高発現が予想される、内分泌腫瘍や肺小細胞癌などを検出するためのプローブとして用いることが考えられる。
なお、本発明で使用されている技術的用語は、別途定義されていない限り、当業者により普通に理解されている意味を持つ。また、本発明で引用した先行文献又は特許出願明細書の記載内容は、本明細書の記載として組み入れるものとする。
精製ノダフジレクチン(nWFA)は、Vector Lab Inc.(Burlingame,CA,USA)より購入した。抗FLAG-tag M2-HRP conjugateは、Sigma-Aldrich社(St.Louis,MO,USA)より購入した。
(1−1)cDNAライブラリーの調製
ノダフジ種子のtotal RNAは内藤らの方法を用いて抽出した(非特許文献9)。およそ150mgの種子を液体窒素中で破砕し、種子破砕物は抽出バッファー(1M Tris-HCl pH9.0 / 1% SDS)とPCI(フェノール:クロロホルム:イソアミルアルコール(25:24:1))に混合し、乳液状になるまで懸濁した。遠心分離後の上清にPCIを加えた後、激しく撹拌し、遠心分離後の上清を回収し、上清に1/10容の3M Na-Acetateと3倍容のethanolを加え、-80℃で冷却し、核酸を沈殿させた。風乾後、H2Oに溶解し、4M LiClを加え氷上に一晩静置後、遠心分離しtotal RNAを沈殿物として回収した。Poly(A)RNAはNucleoTrapR mRNA(MACHEREY-NAGEL GmbH & Co. KG,Duren,Germany)を用いて調製し、cDNA合成に供した。遺伝子クローニングに用いたcDNAライブラリーは上記のように調製したノダフジ種子のmRNAからMarathonR cRNA Amplification Kit(Clontech社,Mountain View,CA,USA)を用いて作製した。
ノダフジレクチンをコードする遺伝子はノダフジ種子由来のcDNAからクローニングした。マメ科レクチンであるSoybean Agglutinin(SBA)のアミノ酸配列(Accession:P05046)をQueryとして用いてBlast検索を行い、Genbank DBより3種類のレクチン様タンパク質のアミノ酸配列を得た(Robinia pseudoacacia,Accession:BAA36414,Sophora japonica,Accession:AAB51441,Cladrastis kentukea,Accession:AAC49150)。それら3種類のレクチン様タンパク質の核酸配列(Robinia pseudoacacia,Accession:AB012633,Sophora japonica,Accession:U63011,Cladrastis kentukea,Accession:U21940)をアライメントし、最も保存されている領域に下記の2本のPCR用のプライマーを設計した。
Fwd-1:5’-CTCTTGCTACTCAACAAGGTGAA-3’(配列番号3)
Rev-1:5’-CAACTCTAACCCACTCCGGAAG-3’(配列番号4)
ノダフジ種子由来cDNAを鋳型にKOD-plus-(TOYOBO,Osaka,Japan)でPCR反応(94℃,1分,(94℃,1分-60℃,30秒-68℃,1分を30サイクル),68℃,1分)を行った結果、およそ650bpのDNA断片が増幅された。この断片をpCR-Blunt II-TOPO(Invitrogen,Carlsbad,CA,USA)にサブクローニングし、3130xl Genetic Analyzer(Applied Biosystems,CA)で核酸配列を決定したところ、新規の核酸配列であった。
この配列は部分配列であり、オープンリーディングフレームのN-末端および,C-末端を欠いていたためRACE(Rapid Amplification of cDNA End)法で全長配列決定を行った。3’-RACE法では、上記Fwd-1と下記のAdapter Primer-1(Clontech) プライマーを用いてPCR反応を行った(94℃ 1min,60℃ 30sec,68℃ 1min,35cycles)。
Adapter Primer-1:5’-CCATCCTAATACGACTCACTATAGGGC-3’(配列番号5)
次いで、増幅した核酸を鋳型に、上記Fwd-2と下記のAdapter Primer-2(Clontech)のプライマーでNested PCRを行った。
Adapter Primer-2:5’-ACTCACTATAGGGCTCGAGCGGC-3’(配列番号6)
その結果得たおよそ700bpのDNA断片の配列決定した結果、終止コドンを含む遺伝子配列が得られた。
さらに5’側の配列未知の部分に関しても、下記のRev-2及びRev-3を設計して、上記Adapter Primer-1及びAdapter Primer-2を用いた5’-Race法を行い、完全長配列を決定した。
Rev-2:5’-ACTATAGACTGGTTCGCCGTCC-3’(配列番号7)
Rev-3:5’-GGGTGAGTTGTAAATGCCCTGA-3’(配列番号8)
ノダフジ種子よりクローニングした新規レクチン遺伝子は861bpのORFからなり、286アミノ酸からなるタンパク質をコードしていた(図1)。この新規アミノ酸配列は、マメ科レクチンに保存されたモチーフ配列を持ち、クエリーに用いたRobinia pseudoacaciaと62.8%、Cladrastis kentukeaと60.9%、Sophora japonicaと60.6%の相同性をそれぞれ有した。また、大豆レクチンSBA(Glycine max:P05046)と58.5%、ピーナッツ豆レクチンPNA(Arachis hypogaea:P02872)とも39.5%の相同性をそれぞれ有していた(図2)。配列中には1カ所のN-結合型糖鎖付加部位が存在し、C-末端近傍に1カ所のシステイン残基を認めた。決定した全長アミノ酸配列を用いて、シグナル配列予測プログラムSignalP4.0(デンマーク工科大学、http://www.cbs.dtu.dk/services/SignalP/ 非特許文献11)を用いて解析したところ、N末端側の疎水性アミノ酸クラスターはシグナル配列であり、30番目のセリンと31番目のリジンの間で切断されることが予測された。
(2−1)レクチン遺伝子による大腸菌の形質転換
実施例1でクローニングしたノダフジレクチンを大腸菌で発現させるために、レクチン活性領域であることが予想されるアミノ酸31-286残基を、ペリプラズム発現型のベクターであるpET20b(Merck4Biosciences,Darmstadt,Germany)のpelB leaderの下流にN末端にHis TagとFLAG Tagを付加して組み込んだ。
また、WFAをコードするDNA断片を、下記WFA-HisFL-Fwd及びWFA-Revを用いて増幅し、pET20bのNcoI-XhoI部位に挿入した。
WFA-HisFL-Fwd:5’-ccatggGACATCATCATCATCATCACCTCGACTACAAGGACGACGATGACAAGGGCAAGCTTGCGGCCGCGAATTCAAAAGAAACAACTTCCTTTGTC-3’(配列番号9)
WFA-Rev-1:5’-ctcgagTTAGATGGAACCGCGCAGAA-3’(配列番号10)
作製した発現用プラスミドは大腸菌BL21-CodonPlus(DE3)-RIPL(Agilent
Technologies,CA)に形質転換され、形質転換体はマニュアルに従って最終濃度100mMのisopropyl β-D-thiogalactopyranoside(IPTG)の添加により発現誘導を行い、25℃で一晩震盪培養を行った。
ペリプラズム画分の抽出はpET System Manual 11thEdition(Merck4Biosciences)に従い行った。可溶性タンパク質の抽出はBugBuster(Merck4Biosciences)を用いて行った。発現誘導後、リコンビナントタンパク質は、ペリプラズム画分に発現が確認できた(図3A,B)。さらに、可溶性画分にも存在し、培地中にも漏れ出してきていることが明らかとなった(図3B,lane 5,7)ので、取扱いが簡便な培地中よりFLAG Tagにてリコンビナントタンパク質を精製した。精製はDDDDK-tagged Protein PURIFICATION GEL(MBL,Nagoya,Japan)を用いて行い、リコンビナントタンパク質の溶出はDDDDK溶出ペプチドを用いた。最終的に、溶出タンパク質はAmicon Ultra 3K(Merck Millipore,MA)で濃縮した。
(3−1)天然由来WFAレクチン(nWFA)のアミノ酸解析
天然由来ノダフジレクチン(Vector Labから購入)のアミノ酸解析をアミノ酸シークエンサーProcise492HT(Applied Biosystems,CA)及び質量分析装置LTQ Orbitrap Velos ETD(Thermo Fisher Scientific,Waltham,MA,USA)を用いて行った。およそ2μgのレクチンタンパク質を2-メルカプトエタノール入りのサンプルバッファー中で100℃、5分間処理し、SDS-PAGE展開した。およそ28KDaのバンドは回収され、還元アルキル化の後、Trypsin消化を行いpeptide断片に分解した。濃縮後LTQ Orbitrap Velos ETDを用いてLC/MS解析し、構成するペプチドのアミノ酸配列を同定した。
実施例1でのノダフジレクチン遺伝子のクローニングで決定されたORFの推定アミノ酸配列が、天然から精製された市販のWFAレクチンと同一かどうかを検証した。(3−1)においてアミノ酸シークエンサーにより、nWFA(Vector
Lab)のN-末端側の31番目のリジン以下の配列が同定された。また、このnWFAを(3−1)のように、トリプシンで消化し、LC/MS法により構成ペプチドのアミノ酸配列を決定した結果、市販レクチンから得られたトリプシン消化ペプチドの93%が新規に決定したレクチン配列(シグナル配列部分を除く)に合致した(図8)。
また、実施例1で決定されたWFA-ORFアミノ配列のC末端の13アミノ酸は、天然由来レクチンから得られたペプチドには含まれておらず、タンパク質の成熟過程においてプロセシングされる可能性が考えられた。
実施例2(2−2)で精製されたリコンビナントWFA(rWFA)は、還元条件のSDS-PAGEで、31KDaの単一バンドとして観察された(図3C,lane2)
一方、市販の天然WFA(nWFA)はリコンビナントより小さいおよそ28KDaの単一バンドとして確認できた(図3C,lane1)。2-メルカプトエタノールを除いた非還元条件でSDS-PAGEした結果、nWFAはおよそ60KDaの単一のバンドとして検出され、S-S結合で2量体を形成していることが示唆された(図3C,lane4)。一方、rWFAは非還元条件では、2量体の分子量と単量体の分子量の両方にバンドが検出できた(図3C,lane5)。
(4−1)天然由来WFAがフコースを含む糖鎖を有していることの確認
天然型WFA(nWFA)はフコースを含む糖鎖を持つことが報告されていたので、フコースを認識するAleuria Aurantia Lectin(AAL)レクチンを用いてレクチンブロットを行った。その結果、nWFAはAALに反応する糖鎖を含む糖タンパク質であることが確認できた(図5)。
天然由来WFAの還元はジチオスレイトール(DTT)を用いて行った。1mg/mL(100mM Tris pH8.5)のnWFA 1mLに10μLの1M DTTを添加し、室温で4時間還元反応を行った。続いて、25μLの1Mヨードアセトアミドを加え、室温、暗所で30分間アルキル化反応を行った。これによりnWFAは還元され、2量体形成に寄与していたシステインはアルキル化され、S-カルボキシアミドメチルシステインとなり、nWFAは単量体となった。反応後の余分な試薬は限外ろ過(Amicon 3K,millipore)にて取り除いた。
(5−1)変異体レクチンC272Aの大腸菌による発現
実施例3(3−3)では、nWFAでは非還元状態では28KDaの、還元状態では60KDaの単一バンドであったことから、nWFAは2量体を形成していると考えられるが、rwFAでは、還元状態では31KDaの単一バンドであったが、非還元条件では、2量体の分子量と単量体の分子量の両方にバンドが検出された(図3C)。
そこで、この2量体形成にシステイン残基が関与しているかどうかを検証するために、rWFAアミノ酸配列中で唯一の272位のシステインをアラニンに置換した変異体(C272A)を作製して大腸菌で発現させた。
変異体レクチンC272Aは、下記C272A-Fwd及びC272A-Revのプライマーを用いてPCRで作製した。
C272A-Fwd:5’-AGCAGTGATGATGCCAACAACTTGCAT-3’(配列番号11)
C272A-Rev:5’-ATGCAAGTTGTTGGCATCATCACTGCT-3’(配列番号12)
FLAG-Tag WFAはそれぞれ以下のN-FLAG及びC-FLAG PCRプライマーを用いて増幅した断片をpET20bのEcoRI-XhoI部位に挿入して作製した。
N-FLAG:
WFA-FLAG-Fwd:
5’-gaattcAGACTACAAGGACGACGATGACAAGAAAGAAACAACTTCCTTTGT-3’(配列番号13)
WFA-Rev-2:5’-ggcctcgagTTAGTTGCAATCATCACTGCTAGGATCT-3’(配列番号14),
C-FLAG:
WFA-Fwd-1:5’-ggaattcaAAAGAAACAACTTCCTTTGT-3’(配列番号15)
WFA-FLAG-Rev:
5’-ctcgagTTACTTGTCATCGTCGTCCTTGTAGTCGTTGGCATCATCACTGCTAGGATCT-3’
(配列番号16)
FLAG tagで精製したC272Aは還元条件、非還元条件ともにSDS-PAGEで単量体の大きさ28KDaにバンドが確認された(図3C,lane3 and 6)。システインの変異体が2量体を形成しなかったことから、システインを介したS-S結合が2量体の形成に必須であることが明らかとなった。
(6−1)糖鎖結合活性の測定
リコンビナントレクチンの糖鎖結合活性は産総研が開発した複合糖質マイクロアレイを用いて解析した(非特許文献10)。リコンビナントレクチンはリジン残基をCy3(GE Healthcare,Buckinghamshire,UK)でラベルし、マイクロアレイに供した。Cy3シグナルはGlycostation Reader 1200(GPバイオサイエンス、Yokohama,Japan)を用いて測定した。
大腸菌で作製したrWFAが糖鎖認識活性を有するかどうかを、糖鎖・糖タンパク質アレイを用いて解析した。Cy3でラベルしたnWFAとrWFAは糖タンパク質アレイに供された。その結果、nWFAとrWFAは非常に類似した糖鎖認識特異性を示した(図4)。両方ともに最も強いシグナルを示したのはAsialo-BSM(bovine submaxillary mucin)であった。また、予想されていたようにGalNAc末端の糖鎖(A-di,βGalNAc,di-GalNAcβ,LDN,GA2,Tn,Forssman)にも結合性を示した。さらに、asialo-AGPやasialo-TF、asialo-TG,asialo-FETなどにも結合性を示した。これらの結果から、大腸菌で発現したrWFAは天然のものと同じ糖鎖認識活性を有することが明らかとなった。
続いて、C末端の13アミノ酸の影響を調べるため、13アミノ酸を除いたrWFAを作製し、糖鎖認識活性を調べた(図5)。13アミノ酸を除いてN末端にFLAG-tagを加えたもの(rWFA N-FLAG)、同じ設計でCys 272をAlaに改変したもの(C272A N-FLAG)、改変型でFLAG tagの位置をC末端に変更したもの(C272A C-FLAG)の3種類を大腸菌で発現させた(図5A)。
精製したリコンビナントレクチンをSDS-PAGEで展開した結果、C末端の13アミノ酸を欠失したrWFA N-FLAGはそのほとんどが2量体を形成することができずに、2ME-の非還元条件でも単量体の分子量に泳動された(図5B,lane6)。
また、予想通り改変型のC272A N-FLAGは単量体であり、C末端にtagを移したC272A C-FLAGも単量体での発現が確認された(図5B,lane7 and 8)。
精製したこれら3種類の単量体リコンビナントレクチンをCy3でラベル化し、糖鎖結合活性を糖鎖タンパク質アレイで検証した。その結果、3種類ともにnWFAで見られた糖鎖認識活性の多くが消失し、LDN(GalNAcβ1,4GlcNAc)とasialo-BSMへの結合活性のみが残存した。ここで、LDNの結合活性に比較するとasialo-BSMへの結合活性は無視できる程度であるため、当該結合活性は、「LDN特異的結合活性」と表現できる。さらに、C末端の13アミノ酸が付帯した改変型C272A WFA(図3C,lane3 and 6)も、同様のLDNとAsialo-BSMへの結合活性、すなわち「LDN特異的結合活性」を持っていた(data is not shown)。
プロセッシングされることが予想されるC末端13アミノ酸を削除し、N末端あるいはC末端にFLAG tagを付加したrWFAの発現を行った結果、13アミノ酸を除いたものは2量体をほとんど形成できなかった。2量体はCBB染色では検出できず、抗FLAG抗体のウエスタンブロットでかろうじて検出できた。C272Aは実施例5(図3)で確認した際と同様に2量体は形成できなかった。これらの精製したrWFAを用いて、糖鎖結合特異性を検討した(図6)。
LDNとasialo-BSMのみを認識したrWFAは単量体のレクチンだったため、nWFAとrWFAの糖鎖結合活性の違いが、単量体化によるものなのか、リコンビナント化によるものなのかを検証するために、実施例4で作製された還元後システイン残基がアルキル化されたnWFA単量体について、糖鎖認識活性を検討した(図7A)。
糖タンパク質アレイで解析した結果、還元したWFA(nWFA-RCA)はnWFAともrWFAとも異なる糖鎖認識を示した。nWFA-RCAはLac,Lec,LN,Asialo-FET,Asialo-AGP,Asialo-TF,Asialo-TG,Tn,Asialo-GP,BSM,αGalに対する結合は消失あるいは大きく減少したのに対し、A-di,bGalNAc,di-GalNAcβ,LDN,GA2,Forssman,Asialo-BSMなど非還元末端がGalNAcである糖鎖に対する結合はほとんど変化が見られなかった(図7B)。
これらの結果からnWFAは単量体ではGalNAc末端の糖鎖に、より特異的に結合できることが示された。すなわち、天然のWFAでは、2量体化されたことで、GalNAc末端の糖鎖に加えて、Gal末端の糖鎖にも結合できるようになることが示された。
大腸菌以外のホストでの改変レクチンの作製を検討するため、ヒト培養細胞(HEK293T株)に、実施例(5−1)に記載されたC272A変異を有するWFAをコードする核酸を導入した。具体的には、C272A改変rWFAをコードする遺伝子をpFLAG-CMV3発現ベクター(Sigma社)に組込み、HEK293T細胞に遺伝子導入した。
遺伝子導入後、10%ウシ血清を含むDMEM培地で48時間培養した培養上清より、抗FLAG抗体カラム(Sigma社)を用いて精製した結果、改変レクチンは、およそ35KDa付近の単一バンドとして検出できたが、糖鎖による分子量の増加が観察された(図12A)。これをCy3で標識し、糖タンパク質アレイに供した結果、大腸菌で作製した改変レクチンと同様の結合特異性(LDNとasialo-BSM)が確認された(図12B)。
この実施例では、C272A改変rWFAに対して、唯一の糖鎖結合部位である146番目のアスパラギンをグルタミンに置換し(N146Q)、真核細胞であっても糖鎖を付与できないC272A改変レクチンのC272A,N146Q改変rWFAをコードする遺伝子を作製した。
当該C272A,N146Q改変rWFAをコードする遺伝子を、実施例7で用いたpFLAG-CMV3発現ベクター(Sigma社)に組込み、ヒト培養細胞(HEK293T株)に遺伝子導入した。
上記形質転換細胞を実施例7と同様に培養し発現誘導を行い、培養上清を回収後、同様の精製方法を適用して、精製C272A,N146Q改変レクチンを得た。
培養上清より精製した改変レクチンは、およそ33KDaの単一バンドとして検出できた(図13A左)。これをCy3で標識し、糖タンパク質アレイに供した結果、大腸菌で作製した改変レクチンと同様の結合特異性(LDNとasialo-BSM)が確認された(図13B上)。
糖鎖付加が起こらない大腸菌で発現させたC272A改変rWFAがLDN結合活性を有していたことから、糖鎖付加が糖鎖認識能には影響を与えないことは十分に予測されていたが、この結果によりその点が明確になった。
酵母(メタノール資化性酵母Ogataea minuta TK10-1-2株)に、実施例8に記載されたC272A,N146Q改変rWFAをコードする遺伝子をHisおよびFLAGタグを有するpOMEA1-10H3F発現ベクターに組込み、O.minutaTK10-1-2株を形質転換した。
上記形質転換酵母を200mlのYPD培地(2%Peptone、1%Yeast Extract、2%グルコース)にて、30℃で2日間培養を行った。遠心分離により培養上清を除いた後、菌体に200 mlのBMMY培地(2%Peptone、1%Yeast Extract、1.34%Yeast Nitrogen Base w/o amino acids、1%MeOH、100mMリン酸カリウムバッファー(pH6.0))を加えて再懸濁し、30℃でさらに2日間培養することでEndo-Omの発現誘導を行った。培養上清を回収後、TBSバッファー(トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン1.24g、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン塩酸塩6.27g、塩化ナトリウム8.77g/L)にて透析を行なった。透析後の粗レクチン液をHisTrap HPカラム(GE Healthcare社)に供し、50mMのイミダゾールを含むTBSバッファーで洗浄した後、500mMイミダゾールを含むTBSバッファーでグラジエント溶出をすることによりタンパク質を溶出した。カラムから溶出されたEndo-Omを含む画分をAmicon Ultra(10,000 MWCO,Millipore社)で限外ろ過濃縮し、さらにTBSバッファーで置換し、精製C272A,N146Q改変レクチンとした。
酵母培養上清より精製した改変レクチンは、およそ34Kda付近の単一バンドとして検出できた(図12A右)。それをCy3で標識し、糖タンパク質アレイに供した結果、大腸菌および培養細胞で作製した改変レクチンと同様の結合特異性(LDNとasialo-BSM)が確認された(図12B下)。
配列番号1 :wisteria floribunda lectin(g)
配列番号2 :wisteria floribunda lectin(a)
配列番号3 :Fwd-1
配列番号4 :Rev-1
配列番号5 :Adapter Primer-1
配列番号6 :Adapter Primer-2
配列番号7 :Rev-2
配列番号8 :Rev-3
配列番号9 :WFA-HisFL-Fwd
配列番号10:WFA-Rev-1
配列番号11:C272A-Fwd
配列番号12:C272A-Rev
配列番号13:WFA-FLAG-Fwd(N-FLAG)
配列番号14:WFA-Rev-2(N-FLAG)
配列番号15:WFA-Fwd-1(C-FLAG)
配列番号16:WFA-FLAG-Rev(C-FLAG)
Claims (23)
- 下記(1)又は(2)に示されるいずれかのアミノ酸配列を含む、GalNAc末端糖鎖と特異的に結合するポリペプチド;
(1)配列番号2に示されたアミノ酸配列、又はそのアミノ酸配列において272位以外の位置で1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入もしくは付加されたアミノ酸配列(ただし、273位又は274位以降のアミノ酸配列がすべて欠失している場合を除く)、
(2)(1)に示されるアミノ酸配列のN末端側から30番目までのいずれかのアミノ酸配列が欠失しているアミノ酸配列。 - 請求項1に記載のポリペプチドと共に当該ポリペプチドが二量体化したポリペプチドを含む組成物であって、GalNAc末端糖鎖と共にGal末端糖鎖結合活性を有するポリペプチド組成物。
- 請求項1に記載のポリペプチドをコードする核酸。
- 下記(1)又は(2)に示されるいずれかの塩基配列を含み、GalNAc末端糖鎖と特異的に結合するポリペプチドをコードする核酸;
(1)配列番号1に記載の塩基配列、又はその相補配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列であって、かつアミノ酸配列上の272位の位置がCysをコードするコドンである塩基配列(ただし、273位又は274位以降のアミノ酸配列に対応する塩基配列がすべて欠失している場合を除く)、
(2)(1)に示される塩基配列において、N末端側アミノ酸から30番目アミノ酸までのいずれかのアミノ酸配列をコードする塩基配列が欠失している塩基配列。 - 請求項3又は4に記載の核酸を含む発現ベクター。
- 請求項3又は4に記載の核酸を用いて形質転換された、形質転換細胞。
- 請求項6に記載の形質転換細胞を培養して得られる培養物から発現産物を採取し、GalNAc末端糖鎖と特異的に結合する単量体ポリペプチドと、Gal/GalNAc末端糖鎖と結合するその二量体ポリペプチドを、両者の混合物として取得する工程を含む、組換えポリペプチドの製造方法。
- さらに単量体と二量体とを分離する工程を含み、GalNAc末端糖鎖と特異的に結合する単量体ポリペプチドと、Gal/GalNAc末端糖鎖と結合するその二量体ポリペプチドとをそれぞれ取得する工程を含む、請求項7に記載の組換えポリペプチドの製造方法。
- 下記(1)又は(2)に示されるいずれかのアミノ酸配列を含み、かつ配列番号2の272位に対応するCysがアルキル化されているポリペプチドであって、GalNAc末端糖鎖と特異的に結合するポリペプチド;
(1)配列番号2に示されたアミノ酸配列、又はそのアミノ酸配列において、272位以外の位置で1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入もしくは付加されたアミノ酸配列、
(2)(1)に示されたいずれかのアミノ酸配列において、N末端側から30番目までのいずれかのアミノ酸配列が欠失したアミノ酸配列。 - 下記(1)〜(5)に示されるいずれかのアミノ酸配列を含み、LDN糖鎖特異的結合活性を有するポリペプチド;
(1)配列番号2に示されたアミノ酸配列において、272位のアミノ酸がCys以外のアミノ酸であるアミノ酸配列、
(2)(1)に示されたアミノ酸配列において、272位以外の位置で1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入もしくは付加されたアミノ酸配列、
(3)配列番号2に示されたアミノ酸配列において、そのC末端側から13〜15番目のいずれかのアミノ酸までが欠失しているアミノ酸配列、
(4)(3)に示されたアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入もしくは付加されたアミノ酸配列、
(5)(1)〜(4)に示されたいずれかのアミノ酸配列において、そのN末端側から30番目までのいずれかのアミノ酸配列が欠失しているアミノ酸配列。 - 請求項10に記載のポリペプチドをコードする核酸。
- 下記(1)〜(4)に示されるいずれかの塩基配列を含み、LDN糖鎖特異的結合活性を有するポリペプチドをコードする核酸;
(1)配列番号1に記載の塩基配列において、272位アミノ酸に対応するコドンがCys以外のアミノ酸である塩基配列、
(2)(1)に示された塩基配列の相補配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列であって、かつ272位アミノ酸に対応するコドンがCys以外のアミノ酸である塩基配列、
(3)配列番号1に記載の塩基配列において、C末端アミノ酸から13〜15番目のいずれかのアミノ酸に対応するアミノ酸配列をコードする塩基配列が欠失している塩基配列、
(4)(1)〜(3)に示されたいずれかの塩基配列において、N末端アミノ酸から30番目アミノ酸までのいずれかのアミノ酸配列をコードする塩基配列が欠失している塩基配列。 - 請求項11又は12に記載の核酸を含む発現ベクター。
- 請求項11又は12に記載の核酸を用いて形質転換された、形質転換細胞。
- 請求項14に記載の形質転換細胞を培養して得られる培養物から発現産物を採取する工程を含む、LDN糖鎖特異的結合活性を有する組換えポリペプチドの製造方法。
- 請求項2に記載のポリペプチド組成物を含むことを特徴とするGal/GalNAc末端糖鎖を検出するための試薬。
- 請求項1に記載のポリペプチドを単量体の状態で含むか、又は請求項9に記載のポリペプチドを含むことを特徴とする、GalNAc末端糖鎖を特異的に検出するための試薬。
- 請求項10に記載のポリペプチドを含むことを特徴とする、LDN糖鎖を特異的に検出するための試薬。
- 請求項18に記載のLDN糖鎖を特異的に検出するための試薬を含む診断用キットであって、LDN糖鎖を高発現することで特徴付けられる疾患への罹患の有無を判定するための診断用キット。
- LDN糖鎖を高発現する疾患が、内分泌腫瘍又は肺小細胞癌である、請求項19に記載の診断用キット。
- 請求項2に記載のポリペプチド組成物に対して還元処理を施すことを特徴とする、GalNAc末端糖鎖結合活性の特異性を増大させる方法。
- 下記(1)又は(2)に示されるいずれかのアミノ酸配列のC末端側から13番目のアミノ酸までが欠失しているアミノ酸配列からなる二量体ポリペプチドであって、Gal/GalNAc末端糖鎖結合活性を有するポリペプチドに対し、還元処理を施すことを特徴とする、前記糖鎖結合活性をGalNAc末端糖鎖特異的な結合活性に変更する方法;
(1)配列番号2に示されたアミノ酸配列、又はそのアミノ酸配列において、272位以外の位置で1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入もしくは付加されたアミノ酸配列、
(2)(1)に示されたアミノ酸配列において、N末端側から30番目までのいずれかのアミノ酸配列が欠失したアミノ酸配列。 - 下記(1)又は(2)に示されるいずれかのアミノ酸配列をコードする核酸において、272位の位置のCysを他のアミノ酸に置換する変異を導入した核酸、又は前記アミノ酸配列のC末端側から13〜15番目のいずれかのアミノ酸に対応するコドンまでを欠失させた核酸、を用いて形質転換することで、得られる組換えポリペプチドの二量体化を防ぐことを特徴とする、LDN糖鎖特異的な結合活性を有する組換えポリペプチドの製造方法;
(1)配列番号2に示されたアミノ酸配列、又はそのアミノ酸配列において、272位以外の位置で1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入もしくは付加されたアミノ酸配列、
(2)(1)に示されたアミノ酸配列において、N末端側から30番目までのいずれかのアミノ酸配列が欠失したアミノ酸配列。
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