[第1実施形態]
以下、第1実施形態として、本発明に係る寒剤供給装置を用いたNMR装置について説明する。図1は、第1実施形態におけるNMR装置1の全体構成を示す図である。
図1に示すように、第1実施形態におけるNMR装置1は、超伝導磁石ユニット2と、プローブ3と、連結チューブ4と、寒剤供給装置としての液体窒素供給装置5と、を備える。また、NMR装置1は、真空ポンプ6と、エア遮断バルブ7と、エア排出ラインL20と、を備える。
超伝導磁石ユニット2は、外部の電源(不図示)から供給された電力により、一方向に強い静磁場を発生する装置である。超伝導磁石の内部には、超伝導線を巻き回して構成された主コイル(不図示)が配置されている。主コイルは、例えば、液体窒素、液体ヘリウム等により極低温に冷却されている。超伝導磁石ユニット2には、プローブ3を装着可能な筒状の穴部21が設けられている。穴部21は、超伝導磁石ユニット2の中心軸に沿って形成されている。後述するプローブ3は、穴部21の下側の開口部から上方向に向けて挿入される。
プローブ3は、被測定物が核磁気共鳴した際に発する微弱な電気信号を検出する装置である。プローブ3には、被測定物(不図示)が装着されている。プローブ3の構成については、後述する。
連結チューブ4は、プローブ3と液体窒素供給装置5との間を接続するチューブである。連結チューブ4は、プローブ継手41と、トランスファーチューブ42と、を備える。プローブ継手41は、低温となるライン同士を接続するための部品である。トランスファーチューブ42は、プローブ継手41と液体窒素供給装置5との間を接続する部品である。プローブ継手41と液体窒素供給装置5との間を柔軟なトランスファーチューブ42で接続することにより、プローブ3と液体窒素供給装置5との着脱が容易になる。また、液体窒素供給装置5の運転時に発生する振動を、プローブ3に伝達しないようにすることができる。なお、連結チューブ4の内部には、後述する液体窒素供給ラインL11及び窒素ガス排出ラインL22(不図示)が収容されている。
液体窒素供給装置5は、プローブ3に寒剤としての液体窒素LN1を供給すると共に、プローブ3から窒素ガスLN2を回収する装置である。液体窒素供給装置5の構成については後述する。
真空ポンプ6は、プローブ3の内部を真空にするための装置である。NMR装置1の運転中、プローブ3の内部は、断熱のために真空状態に保たれる。プローブ3と真空ポンプ6との間は、エア排出ラインL20により接続されている。エア排出ラインL20は、プローブ3から排出されるガスが流通する経路である。エア排出ラインL20の途中には、エア遮断バルブ7が設けられている。エア遮断バルブ7は、エア排出ラインL20を開閉するための弁であり、プローブ3の内部が真空状態となるまで開状態に制御される。
図2は、第1実施形態におけるプローブ3及び液体窒素供給装置5の構成を示す概略図である。なお、図2において、プローブ3及び液体窒素供給装置5を構成する各部の形状、配置等は模式的に描かれている。また、図2では、電気的な接続を破線で示している。
まず、プローブ3について説明する。プローブ3は、信号検出部としての検出コイル31及びプリアンプ32と、冷却部33と、遮蔽パイプ34と、プローブ側コネクタ35と、プローブ側ジョイント36と、を備える。また、プローブ3は、液体窒素供給ラインL21と、窒素ガス排出ラインL22と、を備える。
プローブ3は、略円柱形に形成された中空の容器である。プローブ3の内部は、上述した真空ポンプ6により真空状態に保たれる。プローブ3の中央部には、遮蔽パイプ34が配置されている。遮蔽パイプ34は、プローブ3の上端側から下端側まで貫通する筒状の部材である。遮蔽パイプ34には、被測定物としての試料SPが上端側から挿入される。遮蔽パイプ34は、試料SPと低温の検出コイル31との間を断熱する。遮蔽パイプ34の下端側からは、温度調整のための温度可変ガスが供給される。
検出コイル31は、プローブ3の遮蔽パイプ34に挿入された試料SPに、高周波の電波を照射する。検出コイル31は、高周波発振器(不図示)と接続されており、この高周波発振器から供給された高周波信号により、パルス状に整形された高周波の電波を発生させる。また、検出コイル31は、高周波の電波が照射されることにより、試料SPに含まれる対象核スピンに磁気共鳴を誘起した後、試料SPから発せられるNMR信号を検出する。このNMR信号は、プリアンプ32に送られる。
プリアンプ32は、検出コイル31で検出されたNMR信号を増幅する電気回路である。増幅されたNMR信号は、外部の分析装置(不図示)に送信される。プリアンプ32は、窒素ガス排出ラインL22(後述)と熱接触するように構成されている。
冷却部33は、検出コイル31を冷却する部分であり、液貯め330を備える。液貯め330は、主に液体窒素LN1を貯留する容器である。液貯め330は、同調回路(不図示)を備えた熱リング37を間に挟んで、検出コイル31と熱接触するように位置されている。
液貯め330は、内部に形成された領域として、液相部331と気相部332とを有する。液相部331は、液体窒素LN1を貯留する領域である。気相部332は、気化した液体窒素である窒素ガスLN2が滞留する領域である。冷却部33において、液貯め330の液相部331に貯留された液体窒素LN1が気化する際に気化熱を奪うことにより、気相部332と熱リング37を介して熱接触する検出コイル31が冷却される。
液貯め330は、第1温度検出手段としての第1温度センサS1と、第2温度検出手段としての第2温度センサS2と、を有する。第1温度センサS1は、液貯め330の上端側に設けられている。第2温度センサS2は、液貯め330において、第1温度センサS1よりも下端側に設けられている。
第1温度センサS1及び第2温度センサS2は、液体窒素供給装置5の制御部100(後述)と電気的に接続されている。第1温度センサS1で検出された温度(検出温度値T1)は、第1温度検出信号として制御部100に出力される。また、第2温度センサS2で検出された温度(検出温度値T2)は、第2温度検出信号として制御部100に出力される。
プローブ側コネクタ35は、第1温度センサS1及び第2温度センサS2と電気的に接続された部品である。プローブ側コネクタ35は、第1温度センサS1及び第2温度センサS2のそれぞれと電気的に接続された電極端子(不図示)を備える。プローブ側コネクタ35は、液体窒素供給装置5の通信ケーブル(符号略)に接続された本体側コネクタ54と連結可能に構成されている。プローブ側コネクタ35と本体側コネクタ54とを連結することにより、第1温度センサS1及び第2温度センサS2のそれぞれから出力された検出信号を、液体窒素供給装置5の制御部100に送信することができる。
また、液貯め330には、液体窒素供給ラインL21と窒素ガス排出ラインL22とが接続されている。液体窒素供給ラインL21は、液体窒素供給装置5から供給された液体窒素LN1を、液貯め330の液相部331に送り込むためのパイプである。液体窒素供給ラインL21の上流側の端部は、プローブ側ジョイント36(後述)に接続されている。液体窒素供給ラインL21の下流側の端部は、液貯め330の底部に接続されている。
窒素ガス排出ラインL22は、液貯め330の気相部332に滞留する窒素ガスLN2を、液体窒素供給装置5に排出するためのパイプである。窒素ガス排出ラインL22の上流側の端部は、液貯め330の気相部332に開放されている。窒素ガス排出ラインL22の下流側の端部は、プローブ側ジョイント36に接続されている。
また、窒素ガス排出ラインL22は、その経路の途中において、プローブ3に設けられたプリアンプ32と熱接触するように構成されている。窒素ガス排出ラインL22を流通する低温の窒素ガスLN2と、プリアンプ32とが窒素ガス排出ラインL22を介して熱接触することにより、プリアンプ32が冷却される。
プローブ側ジョイント36は、液体窒素供給ラインL21及び窒素ガス排出ラインL22と、外部の液体窒素供給ラインL11及び窒素ガス排出ラインL12とを接続するための部品である。プローブ側ジョイント36には、液体窒素供給ラインL21及び窒素ガス排出ラインL22のそれぞれの端部に設けられた口金(不図示)が取り付けられている。プローブ側ジョイント36は、液体窒素供給装置5のプローブ継手41と連結可能に構成されている。なお、図2において、プローブ継手41は、プローブ側ジョイント36と連結する部分のみを図示する。また、図2においては、トランスファーチューブ42(図1参照)の図示を省略する。
プローブ側ジョイント36とプローブ継手41とを連結することにより、液体窒素供給装置5側の液体窒素供給ラインL11とプローブ3側の液体窒素供給ラインL21、及び液体窒素供給装置5側の窒素ガス排出ラインL12とプローブ3側の窒素ガス排出ラインL22が、それぞれ導通する。
このように、プローブ側ジョイント36とプローブ継手41とを連結することにより、液体窒素供給装置5の液体窒素ベッセル51(後述)に貯留されている液体窒素LN1を、液体窒素供給ラインL11及び液体窒素供給ラインL21を介して、プローブ3の液貯め330(液相部331)に供給することができる。また、液貯め330の気相部332に滞留する窒素ガスLN2を、窒素ガス排出ラインL12及び窒素ガス排出ラインL22を介して、液体窒素供給装置5の窒素ガス排出ポンプ52(後述)に送出することができる。
次に、液体窒素供給装置5について説明する。図2に示すように、液体窒素供給装置5は、寒剤タンクとしての液体窒素ベッセル51と、寒剤排出ポンプとしての窒素ガス排出ポンプ52と、バルブ手段としての流量調整バルブ53と、寒剤供給ラインとしての液体窒素供給ラインL11と、寒剤排出ラインとしての窒素ガス排出ラインL12と、制御部100と、を備える。
液体窒素ベッセル51は、プローブ3に供給する液体窒素LN1を貯留する容器である。液体窒素ベッセル51には、液体窒素供給ラインL11の上流側の端部が接続されている。液体窒素ベッセル51において、液体窒素供給ラインL11の上流側の端部は、底面部に近接して開口している。液体窒素ベッセル51は、液体窒素の補給口(不図示)から、液体窒素LN1の継ぎ足しが可能となるように構成されている。また、液体窒素ベッセル51は、液体窒素供給ラインL11の上流側の端部に設けられたコネクタ(不図示)を取り外すことにより、別の液体窒素ベッセル51と交換が可能となるように構成されている。
窒素ガス排出ポンプ52は、窒素ガス排出ラインL12(及びL22)を減圧して、プローブ3の気相部332(液貯め330)に滞留する窒素ガスLN2を、液体窒素供給装置5側に吸引するポンプである。窒素ガス排出ポンプ52は、例えば、ダイアフラムポンプにより構成される。窒素ガス排出ポンプ52には、窒素ガス排出ラインL12の下流側の端部が接続されている。
なお、窒素ガス排出ポンプ52の排出口には、窒素ガス排出ラインL13の上流側の端部が接続されている。窒素ガス排出ラインL13の下流側の端部は、液体窒素供給装置5の外部に向けて開口している。
流量調整バルブ53は、窒素ガス排出ラインL12を流通する窒素ガスLN2の流通量を調節する弁であり、窒素ガス排出ラインL12を流通する窒素ガスLN2の単位時間当たりの流量値を計測する機能を備える。流量調整バルブ53は、窒素ガス排出ラインL12の途中に設けられている。流量調整バルブ53は、制御部100と電気的に接続されている。流量調整バルブ53における弁体の開度は、制御部100から送信される駆動信号により制御される。また、流量調整バルブ53で計測された窒素ガスLN2の流量値は、制御部100に流量検出信号として出力される。
液体窒素供給ラインL11は、液体窒素ベッセル51に貯留された液体窒素LN1を、プローブ3(液貯め330の液相部331)に向けて送り出すためのパイプである。液体窒素供給ラインL11の上流側の端部は、液体窒素ベッセル51に接続されている。液体窒素供給ラインL11の下流側の端部は、プローブ継手41に接続されている。
窒素ガス排出ラインL12は、プローブ3(液貯め330の気相部332)から排出された窒素ガスLN2を、窒素ガス排出ポンプ52に送り込むためのパイプである。窒素ガス排出ラインL12の上流側の端部は、プローブ継手41に接続されている。窒素ガス排出ラインL12の下流側の端部は、窒素ガス排出ポンプ52に接続されている。
制御部100は、CPU及びメモリを含むマイクロプロセッサ(不図示)により構成される。CPUは、メモリとデータバス(不図示)を介してデータの送受信を行う。CPUは、メモリ(ROM)から読み出したプログラムを実行することにより、そのプログラムの内容に応じた処理を実行する。メモリには、各種データを一時的に記憶する機能や演算時の作業領域となる機能を有するRAM、及び各種プログラムを記憶するフラッシュメモリーとしての機能を有するROMが含まれる。
制御部100は、プローブ3(液貯め330)の第1温度センサS1から出力された第1温度検出信号、第2温度センサS2から出力された第2温度検出信号、及び流量調整バルブ53から出力された流量検出信号に基づいて、プローブ3側の窒素ガス排出ラインL22から液体窒素供給装置5側の窒素ガス排出ラインL12を流通する窒素ガスLN2の流通量が調節されるように流量調整バルブ53の弁開度を制御する。
プローブ3の液貯め330においては、液相部331に液体窒素LN1が貯留され、気相部332に気体の窒素ガスLN2が滞留している。液相部331に所定量の液体窒素LN1が貯留されている場合、液貯め330の底部に設けられた第2温度センサS2で検出される温度と、熱リング37を介して検出コイル31と熱接触する、液貯め330の上部に設けられた第1温度センサS1で検出される温度との間に、所定の温度差が生じる。なぜならば、第2温度センサS2は、気化熱として熱を吸収する液相部331と直接に熱接触する位置に設けられ、第1温度センサS1は、気相部332と、RF照射による損失熱や室温温度にあるプローブ壁面等からの輻射熱を吸収している検出コイル31との間に設けられているため、各温度センサにおける熱量の収支が異なるからである。第1温度センサS1と第2温度センサS2との間に生じる温度差は、液相部331の液面が高くなるほど小さくなる。これは、気相部332の領域が少なくなるにつれて、第1温度センサS1と液相部331との距離が近づき、第1温度センサS1で検出される温度が第2温度センサS2で検出される温度に近似するからである。
また、液貯め330の底部に設けた第2温度センサS2で検出される温度が、液体窒素LN1の沸点よりも大きい場合には、液貯め330に液体窒素LN1が貯留されていないことを示唆する。一方、第2温度センサS2で検出された温度が、液体窒素LN1の沸点にほぼ一致する場合には、液貯め330に液体窒素LN1が溜まったことを示唆する。
また、第2温度センサS2で検出された温度が、液体窒素LN1の沸点にほぼ一致する場合において、流量調整バルブ53で検出された流量値が予め設定された所定流量値を超える場合には、液貯め330の内部が液体窒素LN1で満たされ、液体窒素LN1が窒素ガス排出ラインL12に溢れたことを示唆する。一方、第2温度センサS2で検出された温度が、液体窒素LN1の沸点にほぼ一致する場合において、流量調整バルブ53で検出された流量値が予め設定された所定流量値より下回る場合には、液貯め330の内部で液体窒素LN1が固体に相変化したことを示唆する。
そのため、窒素ガス排出ポンプ52の運転中において、制御部100は、液貯め330に液体窒素LN1を溜めるために、第2温度センサS2から出力される第2温度検出信号を監視し、その第2温度検出信号の示す温度値が所定の温度(液体窒素LN1の沸点)に近づくまで、流量調整バルブ53の弁体が最大開度となるように制御する。
制御部100により、流量調整バルブ53の弁体が所定の開度に制御されると、窒素ガス排出ラインL12(及びL22)が減圧される。その結果、液貯め330の気相部332に滞留する窒素ガスLN2は、窒素ガス排出ラインL22からL12を経て窒素ガス排出ポンプ52に吸引され、窒素ガス排出ラインL13から外部に排出される。また、窒素ガス排出ラインL12(及びL22)が減圧されると、液貯め330の気相部332が負圧になる。そのため、液体窒素ベッセル51に貯留された液体窒素LN1が液体窒素供給ラインL11に吸い込まれ、液体窒素供給ラインL21を経由して、液貯め330の液相部331へ供給される。
制御部100は、液貯め330に液体窒素LN1が溜まり始めると、その液面の高さを一定にするために、第1温度センサS1から出力される第1温度検出信号と、第2温度センサS2から出力される第2温度検出信号との温度差を算出する。そして、制御部100は、その温度差が予め設定された温度差閾値未満であれば、流量調整バルブ53の弁体が所定の開度(例えば、最大開度)となるように制御し、その温度差が予め設定された温度差閾値以上の場合には、流量調整バルブ53の弁体が閉状態となるように制御する。
但し、窒素ガス排出ポンプ52の運転中において、制御部100は、液体窒素LN1が固体に相変化しないように監視する必要がある。そのために、制御部100は、流量調整バルブ53で計測された窒素ガスLN2の流量値を監視し、その流量値が予め設定された所定値を下回った場合には、流量調整バルブ53における弁体の開度を小さくして、液体窒素供給ラインL21や窒素ガス排出ラインL22の減圧度を、常圧に近づけるように制御する。
更に、窒素ガス排出ポンプ52の運転中において、制御部100は、液貯め330から液体窒素LN1が溢れないように監視する必要がある。そのために、制御部100は、第2温度センサS2から出力される第2温度検出信号が液体窒素LN1の沸点に近く、且つ流量調整バルブ53で計測された流量値が予め設定された所定値を超える場合には、流量調整バルブ53における弁体の開度を小さくして、液体窒素供給ラインL21を流通する液体窒素LN1の流量を抑えるように制御する。
次に、制御部100において、各温度センサから出力される温度検出信号に基づいて、液貯め330へ液体窒素LN1を供給する制御の処理手順を図3のフローチャートを参照しながら説明する。図3に示すフローチャートの処理は、NMR装置1の運転中において、所定の時間間隔で繰り返し実行される。
図3に示すステップST101において、制御部100は、第1温度センサS1から出力された第1温度検出信号、及び第2温度センサS2から出力された第2温度検出信号をそれぞれ取得する。
ステップST102において、制御部100は、第1温度検出信号の示す検出温度値T1と、第2温度検出信号の示す検出温度値T2との温度差TDを算出する。
ステップST103において、制御部100は、流量調整バルブ53で計測された流量値F1を取得する。
ステップST104において、制御部100は、第1温度検出信号の示す検出温度値T1が、予め設定された温度閾値TL未満か否かを判定する。このステップST104の判定において、制御部100により、検出温度値T1が温度閾値TL未満である(YES)と判定された場合、すなわち、液貯め330に液体窒素LN1が溜まっていると判断される場合には、処理はステップST105へ移行する。また、ステップST104の判定において、制御部100により、検出温度値T1が温度閾値TL以上である(NO)と判定された場合、すなわち、液貯め330に液体窒素LN1が溜まっていないと判断される場合には、処理はステップST110へ移行する。
ステップST105(ステップST104:YES)において、制御部100は、ステップST103で取得した流量値F1が、予め設定された流量下限閾値Flから、同じく予め設定された流量上限閾値FUまでの範囲に入っているか否かを判定する。このステップST105において、制御部100により、流量値F1が、流量下限閾値Flから流量上限閾値FUまでの範囲に入っている(YES)と判定された場合、すなわち、液貯め330から液体窒素LN1が溢れることもなく、且つ液貯め330の内部で液体窒素LN1が固体に相変化していない正常な状態であると判定される場合には、ステップST106へ移行する。また、ステップST105において、制御部100により、流量値F1が、流量下限閾値Flから流量上限閾値FUまでの範囲に入っていない(NO)と判定された場合には、処理はステップST108へ移行する。
ステップST106において、制御部100は、ステップST102で算出した温度差TDが、予め設定された温度差閾値TTH未満か否かを判定する。このステップST106の判定において、制御部100により、温度差TDが温度差閾値TTH未満である(YES)と判定された場合、すなわち液貯め330における液体窒素LN1の液面が、補充を必要とするほど低下した場合には、処理はステップST107へ移行する。また、ステップST106の判定において、制御部100により、温度差TDが温度差閾値TTH以上である(NO)と判定された場合、すなわち液貯め330における液体窒素LN1の液面が、補充を必要とするほど低下していない場合には、処理はステップST108へ移行する。
ステップST107(ステップST106:YES)において、制御部100は、流量調整バルブ53の弁体が所定の開度となるように、流量調整バルブ53に駆動信号を送信する。これにより、本フローチャートの処理は終了する。
ステップST107の処理により、流量調整バルブ53の弁体が所定の開度になると、窒素ガス排出ラインL12(及びL22)が減圧されるため、液貯め330の気相部332に滞留する窒素ガスLN2が窒素ガス排出ラインL22、L12及びL13を介して外部に排出される。また、液貯め330の気相部332が負圧になるため、液体窒素ベッセル51に貯留された液体窒素LN1が、液体窒素供給ラインL11からL21を経由して、液貯め330の液相部331へ供給される。これにより、液体窒素ベッセル51に貯留された液体窒素LN1の一部が液貯め330の液相部331へ補充される。
ステップST108(ステップST105又はステップST106:NO)において、制御部100は、流量調整バルブ53の弁体が開状態か否かを判定する。このステップST108において、制御部100により、流量調整バルブ53の弁体が開状態である(YES)と判定された場合に、処理はステップST109へ移行する。また、ステップST108において、制御部100により、流量調整バルブ53の弁体が開状態でない(NO)と判定された場合に、本フローチャートの処理は終了する。
ステップST109(ステップST108:YES)において、制御部100は、流量調整バルブ53の弁体が所定分閉じられるように、流量調整バルブ53に駆動信号を送信する。これにより、本フローチャートの処理は終了する。
ステップST110(ステップST104:NO)において、制御部100は、流量調整バルブ53の弁体が最大開度となるように、流量調整バルブ53に駆動信号を送信する。これにより、本フローチャートの処理は終了する。
制御部100において、上述した制御を所定の時間間隔で繰り返し実行することにより、液貯め330における液体窒素LN1の液面の高さを所定の範囲に保つことができる。
上述したように、本実施形態のプローブ3は、液貯め330に、第1温度検出手段としての第1温度センサS1と、第2温度検出手段としての第2温度センサS2と、を有している。また、プローブ3は、液貯め330に設けられた各温度センサにおいて検出された温度を、それぞれ検出温度値として出力可能に構成されている。そのため、プローブ3を、本実施形態に示すような液体窒素供給装置5と組み合わせた場合には、液体窒素LN1の気化量が通常よりも大きく変動した場合でも、液貯め330における液体窒素LN1の液面の高さを所定の範囲に保つことができる。これによれば、液貯め330の液相部331に貯留された液体窒素LN1の温度を、その沸点に近い温度で安定化させることができるため、NMR信号をより高精度に検出することができる。
また、本実施形態の液体窒素供給装置5は、窒素ガス排出ポンプ52により窒素ガス排出ラインL12(及びL22)を減圧して、液貯め330の気相部332に負圧を発生させることにより、液体窒素ベッセル51からプローブ3に液体窒素LN1を供給するように構成されている。この構成によれば、液体窒素LN1をプローブ3に供給する際に、液体窒素ベッセル51を加圧する必要がない。そのため、液体窒素供給装置5においては、NMR装置1の運転中に、液体窒素ベッセル51への液体窒素LN1の継ぎ足し及び液体窒素ベッセル51の交換をより安全に行うことができる。
[第2実施形態]
次に、第2実施形態として、第1実施形態の液体窒素供給装置5に、液体窒素再液化装置55を設けた場合の実施形態について説明する。この第2実施形態におけるNMR装置1Aの全体構成は、第1実施形態のNMR装置1(図1参照)と同じであるため、説明を省略する。また、第2実施形態では、第1実施形態との相違点についてのみ説明する。そのため、第2実施形態においては、第1実施形態と共通する部分の説明を適宜に省略する。
図4は、第2実施形態におけるプローブ3及び液体窒素供給装置5Aの構成を示す概略図である。なお、図4において、プローブ3及び液体窒素供給装置5Aを構成する各部の形状、配置等は模式的に描かれている。また、図4では、電気的な接続を破線で示している。
図4に示すように、本実施形態の液体窒素供給装置5Aは、液体窒素再液化装置55を備える。液体窒素再液化装置55は、窒素ガスLN2を液化して、液体窒素LN1を製造する装置である。窒素ガス排出ポンプ52と液体窒素再液化装置55との間は、窒素ガス回収ラインL14により接続されている。窒素ガス回収ラインL14は、プローブ3から排出された窒素ガスLN2を、液体窒素再液化装置55に回収するためのラインである。窒素ガス回収ラインL14の上流側の端部は、窒素ガス排出ポンプ52における窒素ガスLN2の排出口(不図示)に接続されている。また、窒素ガス回収ラインL14の下流側の端部は、液体窒素再液化装置55における窒素ガスLN2の取入口(不図示)に接続されている。
また、液体窒素再液化装置55と液体窒素ベッセル51との間は、寒剤還流ラインとしての液体窒素回収ラインL15により接続されている。液体窒素回収ラインL15は、液体窒素再液化装置55において液化された液体窒素LN1を、液体窒素ベッセル51に回収するためのラインである。液体窒素回収ラインL15の上流側の端部は、液体窒素再液化装置55における液体窒素LN1の排出口(不図示)に接続されている。また、液体窒素回収ラインL15の下流側の端部は、液体窒素ベッセル51における液体窒素LN1の取入口(不図示)に接続されている。
本実施形態の液体窒素供給装置5Aにおいて、窒素ガス排出ラインL12(及びL22)が減圧されることにより、窒素ガス排出ポンプ52に吸引された窒素ガスLN2は、窒素ガス回収ラインL14を介して液体窒素再液化装置55に回収される。液体窒素再液化装置55においては、窒素ガスLN2が液化され、液体窒素LN1が製造される。液体窒素再液化装置55において製造された液体窒素LN1は、液体窒素回収ラインL15を介して液体窒素ベッセル51に回収される。
上述した第2実施形態の液体窒素供給装置5Aによれば、第1実施形態の液体窒素供給装置5と同等の効果を得ることができる。とくに、第2実施形態の液体窒素供給装置5Aにおいては、プローブ3から排出された窒素ガスLN2を外部に排出することなく、液体窒素再液化装置55において再液化し、液体窒素LN1として液体窒素ベッセル51に回収する。そのため、液体窒素供給装置5Aにおいては、液体窒素ベッセル51の液体窒素LN1を継ぎ足すことなしに、プローブ3の検出コイル31及びプリアンプ32を冷却することができる。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されることなく、種々の形態で実施することができる。
上記実施形態では、プローブ3の液貯め330に、第1温度センサS1と第2温度センサS2とを設けた例について説明した。これに限らず、液貯め330に3個以上の温度センサを設けた構成としてもよい。このような構成とすることにより、液相部331において、液体窒素LN1の液面の高さをより正確に検出することができる。また、液貯め330に1個の温度センサを設けた構成としてもよい。このような構成とすることにより、温度センサの数を削減することができる。
上記実施形態では、液貯め330における温度差TDが温度差閾値TTH未満の場合に、流量調整バルブ53の弁体が所定の開度、すなわち予め設定された一定の開度となるように制御する例について説明した。これに限らず、液貯め330における温度差TDが温度差閾値TTH未満の場合に、その温度差TDの大きさに応じて、流量調整バルブ53の弁体の開度を調整するようにしてもよい。これによれば、液貯め330における液体窒素LN1の液面の高さに応じて、窒素ガス排出ラインL12(及びL22)における減圧量を最適な値に調整することができる。
上記実施形態では、プローブ3の検出コイル31及びプリアンプ32を冷却する液体窒素LN1を、液体窒素供給装置5(5A)から供給する例について説明した。これに限らず、NMR装置1の超伝導磁石ユニット2において用いられる液体窒素再液化装置(不図示)から、並列に液体窒素LN1が冷却される構成としてもよい。また、液体窒素再液化装置を備えた、超伝導磁石ユニット2の予冷用の液体窒素を貯留する液体窒素ベッセルから直接に液体窒素LN1が供給される構成としてもよい。
上記実施形態では、本発明に係る寒剤供給装置を、NMR装置に適用した例について説明したが、これに限らず、本発明に係る寒剤供給装置は、電気信号の検出系を冷却することにより、検出感度や分解能が向上する装置一般に適用することができる。