JP6006677B2 - サイリスタ起動装置 - Google Patents

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Description

この発明は、サイリスタ起動装置に関し、特に、同期機を起動させるサイリスタ起動装置に関する。
発電機および電動機などの同期機を起動するためのサイリスタ起動装置が開発されている。サイリスタ起動装置は、たとえばガスタービンコンバインドサイクル発電に用いられる。サイリスタ起動装置は、同期機に交流電力を供給するインバータを備え、同期機の回転子位置を検出し、検出した回転子位置に基づいて、インバータにおけるサイリスタの点弧位相を制御する。
例えば、特開2006−271038号公報(特許文献1)には、同期機の同期機の起動時の界磁電流の立ち上げに伴なって同期機の電機子に誘起される電圧を交流電圧検出器により検出し、この電圧検出値から同期機の回転子位置を検出する構成が開示される。特許文献1では、検出された同期機の回転子位置に基づいて、ゲートパルス発生器がインバータのサイリスタに与えるゲートパルスを生成する。
特開2006−271038号公報
しかしながら、上記の特許文献1に記載されるサイリスタ起動装置では、交流電圧検出器による電圧検出値の位相ずれが大きくなることにより、同期機の電機子に誘起される交流電圧の位相とサイリスタの点弧位相とがずれてしまうという問題がある。そのため、同期機の回転子に起動トルクを与えることができず、同期機の回転を加速することができなくなる。
この発明は、上述の課題を解決するためになされたもので、その目的は、同期機を安定して起動することが可能なサイリスタ起動装置を提供することである。
この発明によるサイリスタ起動装置は、回転磁界を発生するための電機子、および界磁電流が供給されることにより固定磁界を発生する回転子を備えた同期機を起動する。サイリスタ起動装置は、供給された電力を三相交流電力に変換して同期機の電機子に供給する電力変換部と、同期機の電機子の三相交流電圧を検出する交流電圧検出部と、交流電圧検出部によって検出された三相交流電圧に基づいて、回転子の回転子位置を検出する回転子位置検出部と、回転子位置検出部によって検出された回転子位置に基づいて、電力変換部を制御する電力変換制御部と、同期機の回転子への界磁電流の供給が開始された後において、同期機の電機子への三相交流電力の供給を開始するための開始指令を電力変換制御部へ出力する指令部とを備える。指令部は、同期機の回転子への界磁電流の供給が開始された後において回転子位置検出部によって検出される回転子位置に基づいて、開始指令を出力するタイミングを決定する。
本発明によれば、同期機を安定して起動することができる。
この発明の実施の形態によるサイリスタ起動装置の構成を示す図である。 交流電圧検出器の構成を示す図である。 交流電圧検出器の位相ずれの影響を説明するための図である。 インバータ制御部の構成を示す図である。 この発明の実施の形態によるサイリスタ起動装置における通電制御を説明するための図である。 同期機の電機子への通電中におけるインバータ制御部の構成を示す図である。
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
[サイリスタ起動装置の構成]
図1は、この発明の実施の形態によるサイリスタ起動装置の構成を示す図である。
図1を参照して、サイリスタ起動装置101は、交流電源e1から三相交流電力を受けて同期機4を起動させる。サイリスタ起動装置101は、電力変換部91と、交流電圧検出器8と、交流電流検出器9と、回転子位置検出部11と、インバータ制御部(電力変換制御部)19とを備える。
電力変換部91は、電力線を介して交流電源e1から三相交流電力を受ける。電力変換部91は、交流電源e1からの三相交流電力を所望の周波数の三相交流電力に変換する。具体的には、電力変換部91は、コンバータ1と、インバータ2と、直流リアクトル3とを含む。コンバータ1は、交流電源e1からの三相交流電力を直流電力に変換する。コンバータ1は、少なくとも6個のサイリスタを含む三相全波整流回路である。6個のサイリスタを所定のタイミングでオンさせることにより、三相交流電力を直流電力に変換することできる。
直流リアクトル3は、コンバータ1の高電圧側出力端子とインバータ2の高電圧側入力端子との間に接続され、直流電流を平滑化させる。コンバータ1の低電圧側出力端子とインバータ2の低電圧側入力端子とは直接接続される。
インバータ2は、コンバータ1から直流リアクトル3を介して与えられた直流電力を所望の周波数の三相交流電力に変換する。インバータ2は、少なくとも6個のサイリスタを含む。各サイリスタは、ゲートにインバータ制御部19からのゲートパルスを受ける。6個のサイリスタを所定のタイミングでオンさせることにより、直流電力を所定の周波数の三相交流電力に変換することができる。
インバータ2で生成された三相交流電力は、電力線LNを介して同期機4に与えられる。同期機4は、軸SHを介してモータMに接続されている。同期機4は、たとえば同期発電機または同期電動機であり、固定子である電機子ATU,ATV,ATWと、回転子(界磁)RTとを有する。この固定子および回転子において電機子巻線および界磁巻線がそれぞれ巻回されている。
交流電圧検出器8は、同期機4の電機子ATU,ATV,ATWの三相交流電圧を検出し、電圧検出値V1,V2,V3を回転子位置検出部11へ出力する。具体的には、交流電圧検出器8は、同期機4の電機子ATU,ATV,ATWにおける三相交流電圧の相間電圧のうちの2つの相間電圧(図1では、U相−V相間の交流電圧およびV相−W相間の交流電圧とする)を検出する。このように、U相−V相間の交流電圧、V相−W相間の交流電圧およびW相−U相間の交流電圧のうちの少なくとも2つの相間交流電圧を検出することにより、U相、V相、W相の交流電圧を計算により求めることができる。この相間電圧から相電圧への変換は、交流電圧検出器8または回転子位置検出部11において行なわれる。
交流電流検出器9は、同期機4の電機子ATU,ATV,ATWに供給される三相交流電流を検出し、電流検出値I1,I2,I3を回転子位置検出部11へ出力する。
回転子位置検出部11は、交流電圧検出器8および交流電流検出器9から受けた各検出値に基づいて、同期機4の回転子位置(位相)を検出し、同期機4の回転子位置を示す位置信号POSをインバータ制御部19へ出力する。なお、位置信号POSには、後述するように、同期機4の回転子への界磁電流の供給が開始された時点からインバータ制御部19による同期機4の電機子への交流電力の供給(以下、同期機4の電機子の通電とも称する)が開始される時点までの期間における位置信号POS0と、同期機4の電機子への交流電力の供給が開始された時点以降の期間における位置信号POS1とが含まれる。
インバータ制御部19は、回転子位置検出部11から受けた位置信号POS(POS0,POS1)に基づいてインバータ2を制御することにより、同期機ATU,ATV,ATWにおいて回転磁界を発生する。
[サイリスタ起動装置の動作]
サイリスタ起動装置101は、同期機4、モータM、励磁装置202、および中央制御装置(図示せず)とともに同期機システムを構成する。この同期機システムは、たとえば発電システムである。
同期機システムの動作について簡単に説明すると、まず、同期機4の待機時、同期機4がモータMの回転に伴なって低速回転している状態において、中央制御装置は励磁装置202に起動指令を与える。励磁装置202は、中央制御装置から起動指令を受けると、同期機4の回転子における界磁巻線に一定の界磁電流を供給する。
同期機4の回転子に界磁電流が供給されている状態において、中央制御装置は、サイリスタ起動装置101に起動指令を与える。サイリスタ起動装置101は、中央制御装置から起動指令を受けると、同期機4の電機子への交流電力の供給(通電)を開始する。これにより、同期機4を所定の回転速度まで加速する。詳細には、サイリスタ起動装置101は、外部電源e1から供給された交流電力を所望の周波数の三相交流電力に変換して同期機4の電機子に供給することにより、同期機4の回転を加速する。
サイリスタ起動装置101によって同期機4の回転速度が所定値に達すると、図示しないタービンは火力等のエネルギーによって同期機4をさらに高速に回転させる。励磁装置202は、界磁電流を調整することにより、同期機4の電機子における交流電圧のレベルを一定に保つ。
[通電開始時の問題点]
上述した一連の動作において、励磁装置202から同期機4の回転子に一定の界磁電流が供給されると、同期機4の回転子はモータMによって低速回転しているため、同期機4の電機子には低振幅の交流電圧が誘起される。交流電圧検出器8は、同期機4の電機子ATU,ATV,ATWに誘起される三相交流電圧を検出し、電圧検出値V1,V2,V3を回転子位置検出部11へ出力する。
回転子位置検出部11は、電圧検出値V1,V2,V3に基づいて位置信号POS0を生成し、生成した位置信号POS0をインバータ制御部19へ出力する。
インバータ制御部19は、中央制御装置から起動指令を受けると、同期機4の電機子への通電を開始する。具体的には、インバータ制御部19は、ゲートパルス発生器13を含む。ゲートパルス発生器13は、位置信号POS0に基づいてインバータ2における各サイリスタへゲートパルスを出力する。
図2は、交流電圧検出器8の構成を示す図である。図2では、同期機4の電機子における三相の交流電圧のうち、U相−V相間の交流電圧を検出する構成を代表的に示す。V相−W相間の交流電圧を検出する構成は図2に示す構成と同じであるため、ここでは詳細な説明は繰り返さない。また、U相−V相間の交流電圧およびV相−W相間の交流電圧等の2つの相間交流電圧を検出すれば、U相、V相、W相の交流電圧を計算により求めることができる。この相間電圧から相電圧への変換は、交流電圧検出器8または回転子位置検出部11において行なわれる。
図2を参照して、交流電圧検出器8は、たとえば計器用変圧器であり、1次巻線L1と、1次巻線L1に磁気的に結合された2次巻線L2とを含む。交流電圧検出器8は、U相の交流電圧が供給される電力線LNに電気的に接続された入力ノード1Uと、V相の交流電圧が供給される電力線LNに電気的に接続された入力ノード1Vと、出力ノード2Uおよび2Vとを有する。入力ノード1Uおよび1Vは、1次巻線L1の第1端および第2端にそれぞれ接続されている。出力ノード2Uおよび2Vは、2次巻線L2の第1端および第2端にそれぞれ接続されている。
図2では、同期機4の電機子における三相の交流電圧のうち、U相−V相間の交流電圧すなわち入力ノード1Uおよび1V間の交流電圧E1を所定の変圧比で変圧した交流電圧E2が2次巻線L2すなわち出力ノード2Uおよび2V間に誘起される。
このように、交流電圧検出器8として変圧器を用いる構成としたことにより、高電圧が印加されるインバータ2および電力線LN等の主回路と、回転子位置検出部11等の制御回路との電気的絶縁を確保できるため、制御回路が過大電圧の印加によって故障するのを防止することができる。
しかしながら、その一方で、交流電圧検出器8の1次巻線L1および2次巻線L2は、漏れインダクタンスおよび励磁インダクタンスを含むため、入力電圧E1の位相に対して、出力電圧E2の位相が進んでしまう。すなわち、入力電圧E1と出力電圧E2との位相差である位相ずれが発生する。なお、同期機4の電機子に供給される交流電圧の周波数が高い場合、入力電圧E1および出力電圧E2の位相は略等しくなる。これに対して、周波数が低い場合には上記の位相ずれが顕著となる。
上述のように、サイリスタ起動装置では、同期機4を低い周波数で回転させて起動するため、同期機4の電機子における実際の交流電圧よりも進んだ位相に基づいてインバータ2におけるサイリスタを点弧することになる。その結果、同期機4に起動トルクを与えることができず、同期機4を正常に起動できない場合がある。
上記の問題点について、図3を用いてより詳細に説明する。
図3は、交流電圧検出器8の位相ずれの影響を説明するための図である。図3には、励磁装置202から同期機4の回転子に界磁電流の供給が開始された時点以降の同期機4および電力変換部91の動作が示される。
なお、図3においては、横軸に時間が示され、縦軸には上から順に、同期機4の電機子に誘起される三相交流電圧の波形U,V,Wと、交流電圧検出器8の2次巻線L2に誘起される3つの相間電圧の波形UV,VW,WUと、回転子位置検出部11の三相の検出信号(位置信号POS0)の波形とが示される。縦軸にはさらに、位置信号POS0に基づいて生成されるインバータ2のゲートパルスの波形と、同期機4の電機子における三相交流電圧および三相交流電流の波形とが示される。
図3を参照して、励磁装置202が同期機4の回転子に界磁電流の供給を開始すると、同期機4の電機子ATU,ATV,ATWには低振幅の三相交流電圧が誘起される。交流電圧検出器8は、同期機4の電機子ATU,ATV,ATWにおける三相交流電圧の相間電圧を検出する。交流電圧検出器8の2次巻線L2(図2)には、U相−V相間の交流電圧(図中のUVに相当)、V相−W相間の交流電圧(図中のVWに相当)、およびW相−U相間の交流電圧(図中のWUに相当)が誘起される。
回転子位置検出部11は、交流電圧検出器8から受けた3つの相間電圧UV,VW,WUに基づいて、位置信号POS0を生成する。具体的には、回転子位置検出部11は、3つの相間電圧UV,VW,WUに基づいて、同期機4の電機子に誘起された交流電圧のゼロクロス点の検出を行なう。回転子位置検出部11は、3つの相間電圧UV,VW,WUのレベルがたとえばゼロボルトになるタイミングを検出し、検出したタイミングを示すパルス状の検出信号を生成する。図3に示すように、U相の検出信号は、W相−U相間の交流電圧WUがゼロボルトになるタイミングごとにオン(出力ハイ)とオフ(出力ロー)とが切替わる信号である。また、V相の検出信号は、U相−V相間の交流電圧UVがゼロボルトになるタイミングごとにオンとオフとが切替わる信号であり、W相の検出信号は、V相−W相間の交流電圧VWがゼロボルトになるタイミングごとにオンとオフとが切替わる信号である。回転子位置検出部11は、これら3つの検出信号を位置信号POS0としてインバータ制御部19へ出力する。
インバータ制御部19は、位置信号POS0である上記の3つの検出信号に基づいて、インバータ2の各サイリスタに与えるゲートパルスを生成する。具体的には、ゲートパルス発生器13は、3つの検出信号の立上りおよび立下りに基づいて、インバータ2に含まれる6個のサイリスタ(Ui素子、Vi素子、Wi素子、Xi素子、Yi素子、Zi素子)にそれぞれ与える6個のゲートパルスを生成する。詳細には、Ui素子のゲートパルスは、U相の検出信号の立上りに応じてオフ(出力ロー)からオン(出力ハイ)に活性化され、V相またはW相の検出信号の立上りに応じてオンからオフに非活性化される。一方、Ui素子と直列に接続されるXi素子のゲートパルスは、U相の検出信号の立下りに応じてオフからオンに活性化され、V相またはW相の検出信号の立下りに応じてオンからオフに非活性化される。
Vi素子のゲートパルスは、V相の検出信号の立上りに応じてオフからオンに活性化され、W相またはU相の検出信号の立上りに応じてオンからオフに非活性化される。一方、Vi素子と直列に接続されるYi素子のゲートパルスは、V相の検出信号の立下りに応じてオフからオンに活性化され、W相またはU相の検出信号の立下りに応じてオンからオフに非活性化される。
Wi素子のゲートパルスは、W相の検出信号の立上りに応じてオフからオンに活性化され、U相またはV相の検出信号の立上りに応じてオンからオフに非活性化される。一方、Wi素子と直列に接続されるZi素子のゲートパルスは、W相の検出信号の立下りに応じてオフからオンに活性化され、U相またはV相の検出信号の立下りに応じてオンからオフに非活性化される。
6個のサイリスタの各々がゲートパルスに従って点弧されることにより、インバータ2から同期機4の電機子へ交流電力が供給される。同期機4の電機子ATU,ATV,ATWに交流電流が流れることにより、同期機4の回転子には交流電圧および交流電流の積に応じたトルクが生じる。以下では、同期機4の回転子の回転方向のトルクを正のトルクといい、回転子の逆回転方向のトルクを負のトルクともいう。すなわち、正のトルクは同期機4の回転子の回転をアシストするトルクであるのに対して、負のトルクは同期機4の回転子の負荷となるトルクである。
ここで、交流電圧検出器8による電圧検出値に位相ずれがあると、同期機4の電機子に誘起される交流電圧の実際の位相とサイリスタの点弧位相とがずれてしまう。そして、この位相ずれが大きくなると、同期機4の1回転周期(1サイクル)内に同期機4の回転子に負のトルクが発生する期間が存在することになる。図3においては、一例として、交流電圧検出器8の2次巻線L2に誘起される3つの相間電圧のうち、U相−V相間の交流電圧UVにおける位相ずれ量が最も大きい場合を想定している。この場合、回転子位置検出部11で生成される3つの検出信号のうち、U相−V相間の交流電圧UVのゼロクロス点に基づいて生成されるV相の検出信号における位相ずれ量が最も大きくなる。このため、同期機4の電機子に誘起されるV相の交流電圧と電機子に流れるV相の交流電流との位相ずれが、残りの2相における位相ずれと比較して顕著となる。これにより、図中の白丸k1およびk2で示すように、Vi素子またはYi素子が点弧される期間において負のトルクが発生してしまう。なお、このように負のトルクが発生する期間は、回転子位置検出部11で生成される検出信号における位相ずれが60°以上となるときに現れる。
サイリスタ起動装置においては、従来より、励磁装置202から同期機4の回転子に界磁電流の供給が開始された時点から同期機4の電機子への交流電力の供給(通電)を開始する時点までの時間は、予め一定時間に定められている。一例として、この一定時間は、同期機4の1サイクルに相当する時間に定められている。そのため、図3に示すように、同期機4の電機子への通電を開始する時点が、同期機4の回転子に負のトルクが発生する時点(図中のk2)に一致してしまう場合が起こり得る。
上記のように、負のトルクが発生する時点において同期機4の電機子への通電を開始すると、同期機4の回転子に負荷がかかってしまうため、同期機4の回転を加速することができない。その結果、同期機4の回転速度が上昇せず、同期機4を安定に起動させることが困難となる。
そこで、この発明の実施の形態によるサイリスタ起動装置101では、回転子位置検出部11から出力される位置信号POS0(U相、V相、W相の検出信号)に基づいて、同期機4の電機子への通電を開始するタイミングを決定する。これにより、同期機4の電機子への通電開始によって同期機4の回転子に正のトルクを発生させて同期機4を安定に起動させる。
[本実施の形態によるサイリスタ起動装置]
以下、本実施の形態によるサイリスタ起動装置101における同期機4の通電制御について説明する。
再び、図1を参照して、インバータ制御部19は、ゲートパルス発生器13と、通電指令部15とを含む。なお、図1に示すインバータ制御部19の制御構造は、同期機4の電機子への通電を開始するタイミングを制御するためのものである。
ゲートパルス発生器13は、回転子位置検出部11から位置信号POS0を受ける。この位置信号POS0は、図3で説明したように、交流電圧検出器8の電圧検出値V1,V2,V3のゼロクロス点を検出して生成されたU相、V相、W相の検出信号からなる。ゲートパルス発生器13は、位置信号POS0に基づいて、上述した方法によってインバータ2のサイリスタに与えるゲートパルスを生成する。
通電指令部15は、図示しない中央制御装置から起動指令を受ける。通電指令部15はさらに、回転子位置検出部11から位置信号POS0を受ける。通電指令部15は、起動指令および位置信号POS0に基づいて、同期機4の電機子への通電を実行するための通電開始指令を生成してゲートパルス発生器13へ出力する。
ゲートパルス発生器13は、通電指令部15からの通電開始指令に応答して、生成したゲートパルスをインバータ2のサイリスタへ出力する。これにより、同期機4の電機子への通電が開始される。
図4には、インバータ制御部19のさらに詳細な構成が示される。
図4を参照して、インバータ制御部19には、回転子位置検出部11から位置信号POS0として、U相、V相およびW相の検出信号が与えられる。これら3つの検出信号はゲートパルス発生器13に入力される。
さらに、これら3つの検出信号のうち、位相ずれ量が最も大きくなる検出信号を除いた2つの検出信号が通電指令部15に入力される。図3で示したように、3つの検出信号のうち、V相の検出信号における位相ずれ量が最も大きくなる場合には、U相の検出信号およびW相の検出信号が通電指令部15に入力される。なお、3つの検出信号のうちのどの検出信号を通電指令部15に入力するかについては、交流電圧検出器8による電圧検出値V1,V2,V3の位相ずれ量を予め取得しておくことで定めることができる。
通電指令部15は、位相ずれ量が小さい2つの検出信号および起動指令に基づいて、通電開始指令を生成する。具体的には、通電指令部15は、AND(論理積)回路21,24と、NOR(否定論理和)回路22と、OR(論理和)回路23とを含む。AND回路21は、2つの検出信号の論理積を出力する。NOR回路22は、2つの検出信号を反転させた信号の論理積を出力する。OR回路23は、AND回路21の出力とNOR回路22の出力との論理和を出力する。このような構成とすることにより、2つの検出信号がともにオンに活性化されているとき、または、2つの検出信号がともにオフに非活性化されているとき、OR回路23からHレベルに活性化された信号が出力される。
AND回路24は、起動指令およびOR回路23の出力の論理積を出力する。AND回路24の出力は、通電開始指令としてゲートパルス発生器13へ与えられる。すなわち、起動指令が活性状態(Hレベル)のとき、通電開始指令は、OR回路23の出力が活性状態(Hレベル)の場合にHレベルに活性化され、OR回路23の出力が非活性状態(Lレベル)の場合にLレベルに非活性化される。これにより、起動指令が活性状態のときには、2つの検出信号がともにオンに活性化されている場合、または、2つの検出信号がともにオフに非活性化されている場合に、Hレベルに活性化された通電開始指令が出力される。
図5は、この発明の実施の形態によるサイリスタ起動装置101における通電制御を説明するための図である。図5には、励磁装置202から同期機4の回転子に界磁電流の供給が開始された時点以降の同期機4および電力変換部91の動作が示される。
なお、図5においては、図3と同様に、横軸に時間が示され、縦軸には上から順に、同期機4の電機子に誘起される三相交流電圧の波形U,V,Wと、交流電圧検出器8の2次巻線L2に誘起される3つの相間電圧の波形UV,VW,WUと、回転子位置検出部11の三相の検出信号(位置信号POS0)の波形とが示される。縦軸にはさらに、位置信号POS0に基づいて生成されるインバータ2のゲートパルスの波形と、同期機4の電機子における三相交流電圧および三相交流電流の波形とが示される。
図5を参照して、励磁装置202が同期機4の回転子に界磁電流の供給を開始すると、同期機4の電機子ATU,ATV,ATWには低振幅の三相交流電圧が誘起される。交流電圧検出器8は、同期機4の電機子ATU,ATV,ATWにおける三相交流電圧の相間電圧を検出する。交流電圧検出器8の2次巻線L2(図2)には、U相−V相間の交流電圧(図中のUVに相当)、V相−W相間の交流電圧(図中のVWに相当)、およびW相−U相間の交流電圧(図中のWUに相当)が誘起される。
回転子位置検出部11は、交流電圧検出器8から受けた3つの相間電圧UV,VW,WUに基づいて、位置信号POS0を生成する。具体的には、回転子位置検出部11は、3つの相間電圧UV,VW,WUに基づいて、同期機4の電機子に誘起された交流電圧のゼロクロス点の検出を行なう。回転子位置検出部11は、3つの相間電圧UV,VW,WUのレベルがたとえばゼロボルトになるタイミングを検出し、検出したタイミングを示すパルス状の検出信号を生成する。回転子位置検出部11は、生成したU相、V相、W相の検出信号を位置信号POS0としてインバータ制御部11へ出力する。
インバータ制御部19は、位置信号POS0である上記の3つの検出信号に基づいて、インバータ2の各素子に与えるゲートパルスを生成する。具体的には、ゲートパルス発生器13は、3つの検出信号の立上りおよび立下りに基づいて、インバータ2に含まれる6個のサイリスタ(Ui素子、Vi素子、Wi素子、Xi素子、Yi素子、Zi素子)にそれぞれ与える6個のゲートパルスを生成する。
ゲートパルス発生器13は、通電指令部15からHレベルに活性化された通電開始指令を受けると、生成したゲートパルスをインバータ2のサイリスタへ出力する。通電開始指令は、上述したように、3つの検出信号のうちの位相ずれ量が小さい2つの検出信号に基づいて生成される。図5においては、一例として、交流電圧検出器8の2次巻線L2に誘起される3つの相間電圧のうち、U相−V相間の交流電圧UVにおける位相ずれ量が最も大きい場合を想定している。この場合、回転子位置検出部11で生成される3つの検出信号のうち、U相−V相間の交流電圧UVのゼロクロス点に基づいて生成されるV相の検出信号における位相ずれ量が最も大きくなる。したがって、通電指令部15は、位相ずれ量が小さいU相の検出信号およびW相の検出信号に基づいて通電開始指令を生成する。具体的には、U相の検出信号およびV相の検出信号がともにオンに活性化されている場合、または、U相の検出信号およびV相の検出信号がともにオフに非活性化されている場合に、通電開始指令をHレベルに活性化させる。
図5では、期間t1においてU相の検出信号およびV相の検出信号がともにオンに活性化されている。また、期間t2においてU相の検出信号およびV相の検出信号がともにオフに非活性化されている。これら2つの期間t1,t2ではいずれも、同期機4の回転子に正のトルクが発生する。したがって、これらの期間t1,t2において通電開始指令を活性化して同期機4の電機子への通電を開始することにより、同期機4の回転を加速することができる。例えば、期間t2において同期機4の電機子への通電を開始すると、図中の白丸k4に示すように、通電を開始した時点で同期機4の回転子に正のトルクが発生する。これにより、通電を開始した直後から同期機4の回転が加速されるため、同期機4の回転速度が上昇する。なお、図中の白丸k3に示すように、期間t1において同期機4の電機子への通電を開始した場合においても、通電開始の時点で同期機4の回転子に正のトルクが発生するため、同様の効果を得ることができる。
このように、この発明の実施の形態によるサイリスタ起動装置101によれば、回転子位置検出部11から出力される、位相ずれ量の小さい2つの検出信号に基づいて同期機4の電機子への通電開始指令を生成することにより、同期機4の電機子への通電を開始するタイミングを、同期機4の回転子に正のトルクが発生する期間内に限定することができる。その結果、通電開始直後から同期機4の回転が加速されるため、同期機4を安定に起動することができる。
なお、同期機4の電機子への通電が開始されると、交流電流検出器9は、同期機4の電機子ATU,ATV,ATWに供給される三相交流電流を検出し、電流検出値I1,I2,I3を回転子位置検出部11へ出力する。回転子位置検出部11は、交流電圧検出器8および交流電流検出器9から受けた各検出値に基づいて、同期機4の回転子位置を検出し、同期機4の回転子位置を示す位置信号POS1をインバータ制御部19へ出力する。インバータ制御部19は、回転子位置検出部19から受けた位置信号POS1に基づいてインバータ2を制御することにより、同期機4の電機子ATU,ATV,ATWにおいて回転磁界を発生する。
図6は、同期機4の電機子への通電中におけるインバータ制御部19の構成を示す図である。図6を参照して、インバータ制御部19は、基準正弦波演算器12と、ゲートパルス発生器13と、β指令回路14とを含む。基準正弦波演算器12は、回転子位置検出部11から受けた位置信号POS1に基づいて、基準正弦波sinφを出力する。β指令回路14は、制御進み角指令値βを演算し、ゲートパルス発生器13へ出力する。ゲートパルス発生器13は、基準正弦波演算器12から受けた基準正弦波sinφおよびβ指令回路14から受けた制御進み角指令値βに基づいて、インバータ2における各サイリスタへゲートパルスを出力する。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
1 コンバータ、2 インバータ、3 直流リアクトル、4 同期機、8 交流電圧検出器、9 交流電流検出器、11 回転子位置検出部、12 基準正弦波演算器、13 ゲートパルス発生器、14 β指令回路、15 通電指令部、19 インバータ制御部、21,24 AND回路、22 NOR回路、23 OR回路、101 サイリスタ起動装置、202 励磁装置、e1 交流電源、M モータ。

Claims (1)

  1. 回転磁界を発生するための電機子、および界磁電流が供給されることにより固定磁界を発生する回転子を備えた同期機を起動するためのサイリスタ起動装置であって、
    供給された電力を三相交流電力に変換して前記同期機の電機子に供給する電力変換部と、
    前記同期機の電機子の三相交流電圧を検出する交流電圧検出部と、
    前記交流電圧検出部によって検出された前記三相交流電圧に基づいて、前記回転子の回転子位置を検出する回転子位置検出部と、
    前記回転子位置検出部によって検出された前記回転子位置に基づいて、前記電力変換部を制御する電力変換制御部と、
    前記同期機の回転子への前記界磁電流の供給が開始された後において、前記同期機の電機子への前記三相交流電力の供給を開始するための開始指令を前記電力変換制御部へ出力する指令部とを備え、
    前記交流電圧検出部は、前記同期機の回転子への前記界磁電流の供給を受けて前記同期機の電機子に誘起される三相交流電圧を検出し、
    前記回転子位置検出部は、前記同期機の回転子への前記界磁電流の供給が開始された後において前記交流電圧検出部によって検出される前記三相交流電圧のゼロクロス点を検出して第1から第3の検出信号を生成し、
    前記電力変換制御部は、前記第1から第3の検出信号に基づいて、前記電力変換部の各サイリスタに与えるゲートパルスを生成し、
    前記指令部は、前記第1から第3の検出信号のうち、前記交流電圧検出部による検出値の位相ずれ量が小さい第1の相および第2の相の交流電圧に基づいて生成された前記第1および第2の検出信号がともにオン状態のとき、または、前記第1および第2の検出信号がともにオフ状態のときを、前記開始指令を出力するタイミングに決定する、サイリスタ起動装置。
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