JP6006171B2 - キャップトレッドゴム組成物及び重荷重用タイヤ - Google Patents
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Description
タンパク質、リン脂質などの非ゴム成分を除去して高純度化するとともに、ゴムのpHを適切な値にコントロールした改質天然ゴムであるため、低燃費性、耐屈曲亀裂性及び耐摩耗性が改善される。また、非ゴム成分の除去やゴムが塩基性又は強酸性となることで、ゴムの劣化が進行し易くなるが、ゴムのpHを所定範囲に調整することで、保存中の分子量の低下が抑制されるので、良好な耐熱老化性が得られる。従って、低燃費性、耐熱老化性、耐屈曲亀裂性及び耐摩耗性の性能バランスを顕著に改善できる。
(工程1−1)
工程1−1では、天然ゴムラテックスをケン化処理する。これにより、ゴム中のリン脂質やタンパク質が分解され、非ゴム成分が低減されたケン化天然ゴムラテックスが調製される。
工程1−2では、前記工程1−1で得られたケン化天然ゴムラテックスを洗浄する。該洗浄により、タンパク質などの非ゴム成分を除去する。
工程1−3では、工程1−2で得られた洗浄後のゴムに酸性化合物による処理が施される。塩基性化合物の処理などに起因して耐熱老化性が低下する傾向があるが、更に酸性化合物で処理することで、そのような問題を防止し、良好な耐熱老化性が得られる。
このような中和により、優れた耐熱老化性が得られる。該pHの上限は、より好ましくは5以下、更に好ましくは4.5以下である。下限は特に限定されず、浸漬時間にもよるが、酸が強すぎるとゴムが劣化したり、廃水処理が面倒になるため、好ましくは1以上、より好ましくは2以上である。なお、浸漬処理は、酸性化合物の水溶液中に凝集ゴムを放置しておくこと等で実施できる。
(工程2−1)
工程2−1では、天然ゴムラテックスを脱蛋白処理する。これにより、タンパク質などの非ゴム成分が除去された脱蛋白天然ゴムラテックスが調製できる。工程2−1で使用する天然ゴムラテックスとしては、前記と同様のものが挙げられる。
工程2−2では、前記工程2−1で得られた脱蛋白天然ゴムラテックスを洗浄する。該洗浄により、タンパク質などの非ゴム成分を除去する。
工程2−3では、工程2−2で得られた洗浄後のゴムに酸性化合物による処理が施される。塩基性化合物での処理はもちろん、酸凝集においても酸量が少ない場合、最終的に得られたゴムを水で抽出した際、アルカリ性〜中性になることに起因して耐熱老化性が低下する傾向がある。一般的に、好適に脱蛋白できるという理由から、蛋白質分解酵素として、アルカリ領域に至適pHを有する酵素が使用されており、当該酵素反応は、至適pHに合わせてアルカリ条件下で行われることが多い。その後、凝集の時に酸性下で凝固されるが、そのゴムを水洗しただけでは、後述する抽出でpHが抽出液よりも上がり、この場合に特に耐熱老化性の低下が大きかった。これに対して、凝固後、必要に応じて塩基性化合物で処理後に、酸性化合物で処理することで、そのような問題を防止し、良好な耐熱老化性が得られる。
以下に、実施例で用いた各種薬品について説明する。
フィールドラテックス:ムヒバラテックス社から入手したフィールドラテックス
エマールE−27C(界面活性剤):花王(株)製のエマールE−27C(ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、有効成分27質量%)
NaOH:和光純薬工業(株)製のNaOH
Wingstay L(老化防止剤):ELIOKEM社製のWingstay L(ρ−クレゾールとジシクロペンタジエンとの縮合物をブチル化した化合物)
エマルビンW(界面活性剤):LANXESS社製のエマルビンW(芳香族ポリグリコールエーテル)
タモールNN9104(界面活性剤):BASF社製のタモールNN9104(ナフタレンスルホン酸/ホルムアルデヒドのナトリウム塩)
Van gel B(界面活性剤):Vanderbilt社製のVan gel B(マグネシウムアルミニウムシリケートの水和物)
BR:宇部興産(株)製のウベポールBR150B
カーボンブラック:三菱化学(株)製のダイアブラックI(ISAF、N2SA:114m2/g)
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の酸化亜鉛2種
ステアリン酸:日油(株)製のビーズステアリン酸つばき
老化防止剤6C:大内新興化学工業(株)製のノクラック6C(N−フェニル−N’−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニレンジアミン)(6PPD)
硫黄:日本乾溜工業(株)製のセイミ硫黄(オイル分:10%)
加硫促進剤TBBS(NS):大内新興化学工業(株)製のノクセラーNS
(老化防止剤分散体の調製)
水 462.5gにエマルビンW 12.5g、タモールNN9104 12.5g、Van gel B 12.5g、Wingstay L 500g(合計1000g)をボールミルで16時間混合し、老化防止剤分散体を調製した。
フィールドラテックスの固形分濃度(DRC)を30%(w/v)に調整した後、該ラテックス1000gに、10%エマールE−27C水溶液25gと25%NaOH水溶液60gを加え、室温で24時間ケン化反応を行い、ケン化天然ゴムラテックスを得た。次いで、老化防止剤分散体6gを添加し、2時間撹拌した後、更に水を添加してゴム濃度15%(w/v)となるまで希釈した。次いで、ゆっくり撹拌しながらギ酸を添加してpHを4.0に調整した後、カチオン系高分子凝集剤を添加し、2分間撹拌し、凝集させた。これにより得られた凝集物(凝集ゴム)の直径は0.5〜5mm程度であった。得られた凝集物を取り出し、2質量%の炭酸ナトリウム水溶液1000mlに、常温で4時間浸漬した後、ゴムを取出した。これに、水2000mlを加えて2分間撹拌し、極力水を取り除く作業を7回繰り返した。その後、水500mlを添加し、pH4になるまで2質量%ギ酸を添加し、15分間放置した。更に、水を極力取り除き、再度水を添加して2分間撹拌する作業を3回繰返した後、水しぼりロールで水を絞ってシート状にした後、90℃で4時間乾燥して固形ゴムを得た。
製造例1においてpH1になるまで2質量%のギ酸を添加したほかは、同様の手順で固形ゴムを得た。
製造例1においてpH2になるまで2質量%のギ酸を添加したほかは、同様の手順で固形ゴムを得た。
製造例1においてpH3になるまで2質量%のギ酸を添加したほかは、同様の手順で固形ゴムを得た。
製造例1においてpH5になるまで2質量%のギ酸を添加したほかは、同様の手順で固形ゴムを得た。
フィールドラテックスの固形分濃度(DRC)を30%(w/v)に調整した後、該ラテックス1000gに、10%エマールE−27C水溶液25gと25%NaOH水溶液60gを加え、室温で24時間ケン化反応を行い、ケン化天然ゴムラテックスを得た。次いで、老化防止剤分散体6gを添加し、2時間撹拌した後、更に水を添加してゴム濃度15%(w/v)となるまで希釈した。次いで、ゆっくり撹拌しながらギ酸を添加してpHを4.0に調整した後、カチオン系高分子凝集剤を添加し、2分間撹拌し、凝集させた。これにより得られた凝集物(凝集ゴム)の直径は3〜15mm程度であった。得られた凝集物を取り出し、2質量%の炭酸ナトリウム水溶液1000mlに、常温で4時間浸漬した後、ゴムを取出した。これに、水1000mlを加えて2分間撹拌し、極力水を取り除く作業を1回行った。その後、水500mlを添加し、pH4になるまで2質量%ギ酸を添加し、15分間撹拌した。更に、水を極力取り除き、再度水を添加して2分間撹拌する作業を3回繰返した後、90℃で4時間乾燥して固形ゴムを得た。
製造例1において炭酸ナトリウム水溶液で処理し、水洗を7回繰り返した後、2質量%ギ酸による酸処理をすることなく、水しぼりロールで水を絞ってシート状にしたほかは、同様の手順で固形ゴムを得た。
市販のハイアンモニアラテックス〔マレイシアのムヒバラテックス社製、固形ゴム分62.0%〕を、0.12%のナフテン酸ソーダ水溶液で希釈して、固形ゴム分を10%にし、更に燐酸二水素ナトリウムを添加してpHを9.2に調整した。そしてゴム分10gに対して、蛋白質分解酵素(アルカラーゼ2.0M)を0.87gの割合で添加し、更にpHを9.2に再調整した後、37℃で24時間維持した。
次に、酵素処理を完了したラテックスに、ノニオン系界面活性剤〔花王社製の商品名エマルゲン810〕の1%水溶液を加えてゴム分濃度を8%に調整し、11,000r.p.m.の回転速度で30分間遠心分離した。次に、遠心分離により生じたクリーム状留分を、上記エマルゲン810の1%水溶液に分散して、ゴム分濃度が8%になるように調整した後、再度、11,000r.p.m.の回転速度で30分間遠心分離した。この操作を2回繰り返した後、得られたクリーム状留分を蒸留水に分散して、固形ゴム分60%の脱蛋白ゴムラテックスを調製した。
このラテックスに2質量%ギ酸をpH4になるまで添加し、更にカチオン系高分子凝集剤を添加して0.5〜5mmのゴム粒を得た。これの水を極力取り除き、水をゴム分10gに対して50g添加の上、2質量%ギ酸をpH3になるまで添加した。30分後ゴムを引き上げ、クレーパーでシート化した後、90℃で4時間乾燥し、固形ゴムを得た。
製造例6において2質量%ギ酸をpH1になるまで添加したほかは、同様の手順で固形ゴムを得た。
製造例6において2質量%ギ酸をpH2になるまで添加したほかは、同様の手順で固形ゴムを得た。
製造例6において、0.5〜5mmのゴム粒を得た後、2質量%の炭酸ナトリウム水溶液1000mlに30分間浸漬し、このゴムを引き上げ、乾燥ゴム100gに対して水を350gの割合で足して2分間撹拌後静置して水層を極力捨てる作業を5回繰り返し、その後、水をゴム分10gに対して50g添加の上、2質量%ギ酸をpH3になるまで添加したほかは、同様の手順で固形ゴムを得た。
製造例6において2質量%ギ酸をpH5になるまで添加したほかは、同様の手順で固形ゴムを得た。
市販のハイアンモニアラテックス〔マレイシアのムヒバラテックス社製、固形ゴム分62.0%〕を、0.12%のナフテン酸ソーダ水溶液で希釈して、固形ゴム分を10%にし、更に燐酸二水素ナトリウムを添加してpHを9.2に調整した。そしてゴム分10gに対して、蛋白質分解酵素(アルカラーゼ2.0M)を0.87gの割合で添加し、更にpHを9.2に再調整した後、37℃で24時間維持した。
次に、酵素処理を完了したラテックスに、ノニオン系界面活性剤〔花王社製の商品名エマルゲン810〕の1%水溶液を加えてゴム分濃度を8%に調整し、11,000r.p.m.の回転速度で30分間遠心分離した。次に、遠心分離により生じたクリーム状留分を、上記エマルゲン810の1%水溶液に分散して、ゴム分濃度が8%になるように調整した後、再度、11,000r.p.m.の回転速度で30分間遠心分離した。この操作をもう一度繰り返した後、得られたクリーム状留分を蒸留水に分散して、固形ゴム分60%の脱蛋白ゴムラテックスを調製した。
このラテックスにゴムが固まるまで50質量%ギ酸を添加し、凝固したゴムを取り出した。このゴムをクレーパーで水で洗いながらシート化した後、90℃で4時間乾燥し、固形ゴムを得た。
比較製造例3において凝固したゴムを取り出した後、0.5質量%炭酸ナトリウム水溶液に1時間浸漬し、次いでクレーパーで水で洗いながらシート化した後、90℃で4時間乾燥したほかは、同様の手順で固形ゴムを得た。
得られたゴム5gを5mm以下(約1〜2×約1〜2×約1〜2(mm))に切断して100mlビーカーに入れ、常温の蒸留水50mlを加えて2分間で90℃に昇温し、その後90℃に保つように調整しながらマイクロ波(300W)を13分(合計15分)照射した。次いで、浸漬水をアイスバスで冷却して25℃とした後、pHメーターを用いて、浸漬水のpHを測定した。
(アセトン抽出(試験片の作製))
各固形ゴムを1mm角に細断したサンプルを約0.5g用意した。サンプルをアセトン50g中に浸漬して、室温(25℃)で48時間後にゴムを取出し、乾燥させ、各試験片(老化防止剤抽出済み)を得た。
(測定)
得られた試験片の窒素含有量を以下の方法で測定した。
窒素含有量は、微量窒素炭素測定装置「SUMIGRAPH NC95A((株)住化分析センター製)」を用いて、上記で得られたアセトン抽出処理済みの各試験片を分解、ガス化し、そのガスをガスクロマトグラフ「GC−8A((株)島津製作所製)」で分析して窒素含有量を定量した。
ICP発光分析装置(P−4010、(株)日立製作所製)を使用してリン含有量を求めた。
1mm×1mmに切断した生ゴムのサンプル約70mgを正確に計り、これに35mLのトルエンを加え1週間冷暗所に静置した。次いで、遠心分離に付してトルエンに不溶のゲル分を沈殿させ上澄みの可溶分を除去し、ゲル分のみをメタノールで固めた後、乾燥し質量を測定した。次の式によりゲル含有率(質量%)を求めた。
ゲル含有率(質量%)=[乾燥後の質量mg/最初のサンプル質量mg]×100
老化前後における各固形ゴムの重量平均分子量を測定し、下記式により分子量保持率を測地することで耐熱老化性を評価した。なお、老化処理は、各ゴムを2〜5mm角に細断し、80℃で72時間オーブン中に保管して実施し、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフを用いてイソプレンを標準物質として測定した。数値が大きいほど、耐熱老化性が優れている。
(耐熱老化性)=老化後の分子量/老化前の分子量×100(%)で表した。
表2に示す配合処方に従って、1.7Lバンバリーを用いて、硫黄及び加硫促進剤以外の薬品を混練りした。次に、ロールを用いて、得られた混練り物に硫黄及び加硫促進剤を添加して練り込み、未加硫ゴム組成物を得た。得られた未加硫ゴム組成物を150℃で12分間プレス加硫して加硫物を得た。得られた加硫物を下記により評価し、結果を表2に示した。なお、混練りは、前記製造例、比較製造例で作製した10倍量のゴムを用いて行った。
シート状の加硫ゴム組成物から幅1mmまたは2mm、長さ40mmの短冊上試験片を打ち抜き、試験に供した。(株)上島製作所製スペクトロメーターを用いて、動的歪振幅1%、周波数10Hz、温度50℃でtanδを測定した。tanδの値について比較例1を100として指数表示した。数値が小さいほど転がり抵抗が小さく、低燃費性であることを示している。
LAT試験機(Laboratory Abrasion and Skid Tester)を用い、荷重100N、速度20km/h、スリップアングル6°の条件にて、各加硫ゴム組成物の容積損失量を測定した。表2の数値は、比較例1の容積損失量を100としたときの相対値である。当該数値が大きいほど耐摩耗性に優れている。
加硫ゴム組成物を用い、JIS K6260「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム−デマッチャ屈曲亀裂試験方法」に基づいてサンプルを作製し、屈曲亀裂成長試験を行い、70%伸張を100万回繰り返してサンプルを屈曲させた後、発生した亀裂の長さを測定した。そして比較例1の測定値(長さ)を100とし、下記計算式により指数表示した。指数が大きいほど、亀裂の成長が抑制され、耐屈曲亀裂性に優れることを示す。
(耐屈曲亀裂性指数)=(比較例1の測定値)/(各配合の測定値)×100
Claims (7)
- リン含有量が200ppm以下で、かつpHが2〜7である改質天然ゴムと、ブタジエンゴムと、カーボンブラック及び/又は白色充填剤とを含み、
ゴム成分100質量%中の前記ブタジエンゴムの含有量が5〜50質量%である重荷重用タイヤのキャップトレッドゴム組成物。 - 窒素含有量が0.15質量%以下で、かつpHが2〜7である改質天然ゴムと、ブタジエンゴムと、カーボンブラック及び/又は白色充填剤とを含み、
ゴム成分100質量%中の前記ブタジエンゴムの含有量が5〜50質量%である重荷重用タイヤのキャップトレッドゴム組成物。 - 前記ゴム成分100質量%中の前記改質天然ゴムの含有量が5質量%以上であり、前記ゴム成分100質量部に対して、前記カーボンブラック及び/又は前記白色充填剤の合計含有量が5〜150質量部である請求項1又は2記載の重荷重用タイヤのキャップトレッドゴム組成物。
- 天然ゴムの非ゴム成分を除去した後、酸性化合物で処理して、前記改質天然ゴムを得る工程、並びに、
得られた該改質天然ゴムと、前記ブタジエンゴムと、前記カーボンブラック及び/又は前記白色充填剤とを混練する工程を含む請求項1〜3のいずれかに記載の重荷重用タイヤのキャップトレッドゴム組成物の製造方法。 - ケン化天然ゴムラテックスをゴム中のリン含有量が200ppm以下になるまで洗浄し、更に酸性化合物で処理して、前記改質天然ゴムを得る工程、並びに、
得られた該改質天然ゴムと、前記ブタジエンゴムと、前記カーボンブラック及び/又は前記白色充填剤とを混練する工程を含む請求項1又は3記載の重荷重用タイヤのキャップトレッドゴム組成物の製造方法。 - 脱蛋白天然ゴムラテックスをゴム中の窒素含有量が0.15質量%以下になるまで洗浄し、更に酸性化合物で処理して、前記改質天然ゴムを得る工程、並びに、
得られた該改質天然ゴムと、前記ブタジエンゴムと、前記カーボンブラック及び/又は前記白色充填剤とを混練する工程を含む請求項2又は3記載の重荷重用タイヤのキャップトレッドゴム組成物の製造方法。 - 請求項1〜3のいずれかに記載のキャップトレッドゴム組成物を用いて作製した重荷重用タイヤ。
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