JP6005238B1 - 種子の発芽促進方法及び法面表層の安定化方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】凍結融解作用による崩壊が生じにくい法面表層の安定化方法及び混合種子の発芽を促進する種子の発芽促進方法の提供。【解決手段】生竹の稈を二軸圧縮粉砕器により圧縮粉砕して形成した綿状生竹繊維に、植物の種子4を添加し攪拌することにより、種子4が、回転自在な状態で、綿状生竹繊維の絡合体内に分散して担持された、接着剤を含まないクッション材を生成し、該クッション材を地表に敷設することで前記種子を地表に植え付ける。種子は綿状生竹繊維の絡合体内に回転自在・運動自在な状態で担持され、種子の発芽が遅延又は阻害されることが防止される。綿状生竹繊維の柔軟性は長期間維持され、凍結融解作用や紫外線劣化の影響も殆ど生じない。【選択図】図4
Description
本発明は、法面緑化などにおいて播種した種子の発芽を促進させる発芽促進方法、及びそれを利用した法面表層の安定化方法に関する。
従来、法面緑化の技術として、竹を綿状になるまですり潰した資材を法面に吹き付けることにより、法面において窒素固定菌の繁殖を促し、化学肥料を使用することなく緑化植物の生育を長期間にわたり良好とする法面緑化技術が知られている(特許文献1)。この法面緑化技術では、篩分級で目開き1mmの網目を通過する破砕された粒子又は繊維の割合が60重量%以上となるまで竹材を潰砕してなる綿状竹繊維を含む植生基材を法面に吹き付けて植生基盤層を形成し、植生基盤層を自然放置して植生基盤層に窒素固定菌を繁殖させることにより空気中の窒素固定をさせ、植生基盤層内に固定された窒素成分を窒素肥料として法面植物の生育を行う。
上記のように綿状竹繊維を用いて、実際に緑化を行う際には、法面に吹き付けられた植生基盤層が、降雨や風により流出することを防止するため、綿状竹繊維に接着剤を混合して吹き付けることによって固定する手法を用いることが一般的であった。
長沢徹明,梅田安治,「土の耐水食性に及ぼす凍結融解作用の影響」,農業土木学会論文集,1981(94),pp.48-54.
しかしながら、実際に綿状竹繊維に接着剤を混合して吹き付けた植生基盤層を施工したところ、高山や寒冷地においては、接着剤が比較的短期間に劣化し、植生基盤層が比較的短期間に崩壊するという現象がみられた。これは、降雨や降雪により植生基盤層が水分を含んだ状態で地温が氷点下まで低下すると、水の凍結に伴う体積膨張により、固化した接着剤に亀裂が生じ、氷の融解によりその亀裂に水が侵入する、というサイクルを繰り返す事によって崩壊が促進される、所謂、凍結融解作用によるものと考えられる。この凍結融解作用は、高山帯などに於いて岩石の破砕を促進する周氷河作用の一つ(ソリフラクション等)として知られている。また、寒冷地農業に於いても同様の現象による斜面土壌の侵食問題が報告されている(例えば、非特許文献1)。また、接着剤は紫外線により劣化する性質がある。従って、数ヶ月が経過すると、吹き付け斜面の接着剤は紫外線により劣化し粒状に崩壊する。一旦、固結した接着剤が一旦破壊されると、植生基盤層がぼろぼろに砕けた粒状となり、降雨や風により容易に侵食され、植生基盤層が比較的短期間で崩壊する。
図21は、従来の吹き付け工法(綿状竹繊維に接着剤を混合して吹き付ける工法)による実際の吹き付け現場の写真である。写真から分かるように、凍結・融解サイクルや紫外線劣化によって吹き付けた植生基盤層の表面層が崩壊して剥がれ落ち、内部の金網が剥き出しとなっている(図21(a))。また、図21(b)(c)のように、斜面下部に崩壊して粒状となった植生基盤が堆積しているのが分かる。
また、綿状竹繊維に接着剤とともに植物の種子を混合して法面に吹き付けて、種子入りの植生基盤層を構成した場合、接着剤の固化により種子が固定されるが、この接着剤による固定によって種子が発芽しにくくなるという問題もある。
そこで、本発明の目的は、綿状竹繊維を植生基材として使用した植生基盤層を斜面に形成する場合に於いて、凍結融解作用による植生基盤層の崩壊が生じにくい法面表層の安定化方法、及び植生基盤層に種子を混合した場合に、混合された種子を発芽し易くする種子の発芽促進方法を提供することにある。
本発明に係る種子の発芽促進方法は、生竹の稈を二軸圧縮粉砕器により圧縮粉砕して形成した綿状生竹繊維に、植物の種子を添加し攪拌することにより、前記種子が、回転自在な状態で、前記綿状生竹繊維の絡合体内に分散して担持された、接着剤及び肥料を含まない前記綿状生竹繊維及び前記種子のみで構成されるクッション材を生成し、該クッション材を地表に敷設することで前記種子を地表に植え付けることを特徴とする。
この構成によれば、接着剤を含まない綿状生竹繊維のクッション材を地表に敷設することで、綿状生竹繊維に混合された種子は綿状生竹繊維の絡合体内に回転や運動が妨げられない状態で担持される。このように種子を回転や運動が妨げられない状態とすることによって、種子の発芽が遅延又は阻害されることが防止される。また、従来工法のように接着剤で固定すると竹繊維の機能が失われ、紫外線により接着剤が劣化するとともに2〜3カ月程度で崩壊も進むが、本発明に於いて地表に敷設されるクッション材は、生竹繊維の絡みのみにより保持された状態となるため、綿状生竹繊維の柔軟性は長期間維持され、紫外線による劣化の影響も殆ど見られない。
また、本発明では、竹繊維の材料として生竹を使用する。生竹とは、伐採後乾燥前の状態の竹をいい、表皮が茶色く乾燥した状態(枯れ竹)となる前の竹である。枯れ竹を使用した場合、組織が硬く、粉砕すると十分な繊維状とならず多くが粉状となる。また、繊維の柔軟性も乏しく、十分な絡み状態とはならない。一方で、生竹を材料として使用した場合、個々の単繊維が柔軟性に富み、長さも枯れ竹に比べ長いため、互いに十分に絡み合った綿状の繊維となる。また、一旦、綿状生竹繊維とした後に時間が経過して乾燥しても、柔軟性が維持される。
本発明に係る法面表層の安定化方法は、生竹の稈を二軸圧縮粉砕器により圧縮粉砕して形成した綿状生竹繊維に、植物の種子を添加し攪拌することにより、前記種子が、回転自在な状態で、前記綿状生竹繊維の絡合体内に分散して担持された、接着剤及び肥料を含まない前記綿状生竹繊維及び前記種子のみで構成されるクッション材を生成し、
前記クッション材を、法面の地山表面に吹き付けることによりクッション層を形成することで、前記地山表面を被覆することを特徴とする。
前記クッション材を、法面の地山表面に吹き付けることによりクッション層を形成することで、前記地山表面を被覆することを特徴とする。
この構成によれば、接着剤を含まない綿状生竹繊維のクッション材を地表に敷設することで、上述の通り種子の発芽が促進される。また、クッション層は生竹から作られた竹繊維で形成され且つ接着剤を含まないため、水分を含んだ状態で凍結した後に融解しても、繊維の弾性によって復元し、凍結融解作用を極めて受けにくい。また、繊維が絡合した状態にあるため、強風においても飛ばされにくく、地山表面を被覆するクッション層は維持される。これにより、高山や寒冷地においても、植物が生長するまでの期間に亘り侵食を受けにくい状態を維持し、法面表層を安定化させることができる。
また、本発明に係る法面表層の安定化方法において、前記植物の種子は、イネ科又はマメ科植物の種子とすることができる。
マメ科植物は、比較的悪条件の法面でも発芽・生長し、生長後に根粒菌による窒素固定が行われて、他の植物の定着が促進される。
また、本発明に係る法面表層の安定化方法において、前記綿状生竹繊維は嵩比重が0.1〜0.3g/cm3のものを使用するものとすることができる。
また、本発明に係る法面表層の安定化方法において、前記クッション層は、法面の地山表面に0.5〜150mmの厚みで形成するものとすることができる。
本発明によれば、種子を綿状生竹繊維の絡合体内に分散して担持させ、接着剤で固定せずに種子が自由に動けるような状態を維持することで、接着剤で固定する場合に比べて発芽率が高くなり及び発芽速度も早められる。また、綿状生竹繊維の絡合体は、繊維が絡み合ったものであるため、斜面に吹き付けて植生基盤層として敷設した場合に斜面から崩れ落ちることがなく、安定的に斜面に固着させることができる。また、接着剤で固定するものではないため、接着剤の紫外線劣化による崩壊というような問題は生じない。また、綿状竹繊維の柔軟性により、凍結・融解を繰り返すような場所に於いても、凍結・融解による罅割・崩壊というような現象が生じることがないため、長期間に亘って植生基盤層を斜面に安定して設けることができる。
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら説明する。
(1)使用する植生基材
本実施例において植生基材として使用する綿状生竹繊維は、生竹の稈を二軸圧縮粉砕器により圧縮粉砕して形成されたものである。圧縮粉砕は、特許文献1と同様に、噛合し又は近接して回転する二軸スクリュ押出機の二本のスクリュ間に竹材を通すことによって竹材を圧縮し潰砕するとともに、該両スクリュ終端に設けられた固定歯の歯間から圧縮潰砕された竹材を押し出し、該固定歯の歯板面に接して回転する回転刃によって押し出される圧縮潰砕された竹材を切断することによって、綿状に繊維化したものである。このように二軸スクリュ押出機で圧縮し潰砕し、更に固定歯と回転刃により切断することによって、竹材は細かく潰砕されるとともに、繊維細胞の細胞壁が破壊され、細菌や糸状菌の繁殖に適した状態となる。
本実施例において植生基材として使用する綿状生竹繊維は、生竹の稈を二軸圧縮粉砕器により圧縮粉砕して形成されたものである。圧縮粉砕は、特許文献1と同様に、噛合し又は近接して回転する二軸スクリュ押出機の二本のスクリュ間に竹材を通すことによって竹材を圧縮し潰砕するとともに、該両スクリュ終端に設けられた固定歯の歯間から圧縮潰砕された竹材を押し出し、該固定歯の歯板面に接して回転する回転刃によって押し出される圧縮潰砕された竹材を切断することによって、綿状に繊維化したものである。このように二軸スクリュ押出機で圧縮し潰砕し、更に固定歯と回転刃により切断することによって、竹材は細かく潰砕されるとともに、繊維細胞の細胞壁が破壊され、細菌や糸状菌の繁殖に適した状態となる。
また、使用する竹材として、枯れ竹ではなく生竹を使用する。「生竹」とは、伐採して間もない竹であって、乾燥・硬化して茶色く変色する前の竹をいう。竹は枯れると稈が硬化し脆くなる。従って、枯れ竹を二軸圧縮粉砕器により圧縮粉砕すると、粉状に崩壊し、十分な柔軟性が得られない。一方、硬化する前の生竹は繊維の柔軟性が高く、これを二軸圧縮粉砕器により圧縮粉砕すると柔軟な綿状繊維となる。一旦綿状繊維にすると、時間が経過して乾燥しても柔軟性が維持され、硬化したり粉状に崩壊したりし難くなる。
図1は、生竹を材料として生成した綿状生竹繊維(左)及び枯れ竹を材料として生成した綿状枯竹繊維(右)の比較写真である。図1の左右の綿状竹繊維は、同一条件で同一の粉砕器を用いて生成した。左側の綿状生竹繊維は、伐採して30日以内の生竹を材料として使用し、右側の綿状枯竹繊維は、伐採して180日以上経過した枯れ竹を材料として使用した。左側の綿状生竹繊維は、1本ごとの繊維が長く、内部に空気を多く含んでふわふわした性状を示し、各繊維が複雑に交絡して散け難い性質を示す。一方、右側の綿状枯竹繊維は、1本ごとの繊維が短く、粉状となるまで粉砕されたものが多くみられる。1本ごとの繊維が短いため、粉体状に近くなり、柔軟性に乏しく、各繊維の交絡の度合いも小さく風に飛ばされやすい。
尚、生竹から生成される竹繊維の嵩比重を実際に測定したところ、0.1〜0.3g/cm3であった。
(2)クッション層
本発明においては、クッション層は、接着剤を含まない綿状生竹繊維に、植物の種子を添加し攪拌することにより、種子が回転自在な状態で綿状生竹繊維の絡合体内に分散して担持された状態となるように形成される。図2は、本実施例におけるクッション層を形成する綿状生竹繊維を電子顕微鏡写真、図3は、従来の植生基盤層を生成する接着剤を混合した綿状生竹繊維の電子顕微鏡写真である。図2,図3の各写真は、電子顕微鏡(SEM)を用いて撮影した。図2において、各写真の倍率は、(a)は200倍、(b)は1000倍、(c)は900倍、(b)は2000倍である。また、図3において、各写真の倍率は、(a)は150倍、(b)は1000倍、(c)は1000倍、(b)は3000倍である。図2,図3のサンプルは、実際に試験的に吹付機によって吹き付けたものを採取して撮影したものである。接着剤の樹脂には、竹繊維との濡れ性のよい、ローンフィックス(商品名:昭和電工株式会社製)を使用した。
本発明においては、クッション層は、接着剤を含まない綿状生竹繊維に、植物の種子を添加し攪拌することにより、種子が回転自在な状態で綿状生竹繊維の絡合体内に分散して担持された状態となるように形成される。図2は、本実施例におけるクッション層を形成する綿状生竹繊維を電子顕微鏡写真、図3は、従来の植生基盤層を生成する接着剤を混合した綿状生竹繊維の電子顕微鏡写真である。図2,図3の各写真は、電子顕微鏡(SEM)を用いて撮影した。図2において、各写真の倍率は、(a)は200倍、(b)は1000倍、(c)は900倍、(b)は2000倍である。また、図3において、各写真の倍率は、(a)は150倍、(b)は1000倍、(c)は1000倍、(b)は3000倍である。図2,図3のサンプルは、実際に試験的に吹付機によって吹き付けたものを採取して撮影したものである。接着剤の樹脂には、竹繊維との濡れ性のよい、ローンフィックス(商品名:昭和電工株式会社製)を使用した。
従来の植生基盤層を生成する接着剤を混合した綿状生竹繊維では、各繊維の間に樹脂が膜状に絡まり、繊維間が樹脂で固定されていることが観察される。また、図3(d)のように、各繊維の表面は接着剤により被覆されている。一方、本発明のクッション層を形成する綿状生竹繊維は、竹繊維の1本1本がみてとられる。
図3のように、接着剤で被覆された竹繊維は、バクテリアなどによる分解に対して耐性が高く長寿命化が期待できるが、その一方で透水性は低下すると考えられる。
(3)施工方法
上記クッション層を法面に施工する場合、上述の綿状生竹繊維に植物種子を混合したものを、吹き付け機により法面に吹き付けることによって行う。吹き付け機による吹き付け工法は、一般に広く行われているものと同様である。クッション層の厚さは、現場の状況(斜面の傾斜角や日照条件,降雨条件)に応じて適宜調整されるが、一般には0.5〜150mm程度とするのがよい。植物種子としては、イネ科(洋芝、エノコログサ属、ウシノケグサ属等)又はマメ科(シロツメグサ,ヤハズエンドウ、ミヤコグサ属等)の植物を使用することができる。図4は、本発明に係る法面表層の安定化方法により形成される法面表層の構造を表す模式図である。本発明の法面表層構造1においては、法面を形成する地山2の表面に、綿状生竹繊維に植物の種子4を添加し攪拌することにより、種子4が回転や運動が妨げられない状態で綿状生竹繊維の絡合体内に分散して担持された接着剤を含まないクッション材を吹き付けて、クッション層3を形成している。ここで、「回転や運動が妨げられない状態」とは、種子の発芽時に種子が運動(図20参照)する際に、その運動が妨げられない状態をいう。
上記クッション層を法面に施工する場合、上述の綿状生竹繊維に植物種子を混合したものを、吹き付け機により法面に吹き付けることによって行う。吹き付け機による吹き付け工法は、一般に広く行われているものと同様である。クッション層の厚さは、現場の状況(斜面の傾斜角や日照条件,降雨条件)に応じて適宜調整されるが、一般には0.5〜150mm程度とするのがよい。植物種子としては、イネ科(洋芝、エノコログサ属、ウシノケグサ属等)又はマメ科(シロツメグサ,ヤハズエンドウ、ミヤコグサ属等)の植物を使用することができる。図4は、本発明に係る法面表層の安定化方法により形成される法面表層の構造を表す模式図である。本発明の法面表層構造1においては、法面を形成する地山2の表面に、綿状生竹繊維に植物の種子4を添加し攪拌することにより、種子4が回転や運動が妨げられない状態で綿状生竹繊維の絡合体内に分散して担持された接着剤を含まないクッション材を吹き付けて、クッション層3を形成している。ここで、「回転や運動が妨げられない状態」とは、種子の発芽時に種子が運動(図20参照)する際に、その運動が妨げられない状態をいう。
(4)吹付出芽試験
次に、上述の綿状生竹繊維を用いて、本発明の種子の発芽促進方法による吹付出芽試験を行ったので、その結果を説明する。
次に、上述の綿状生竹繊維を用いて、本発明の種子の発芽促進方法による吹付出芽試験を行ったので、その結果を説明する。
(4.1)試験方法
吹付出芽試験に於いては、図4と同様に、栽培容器底部に充填した土壌の表面に、吹き付け機によって種子を混合した綿状生竹繊維を吹き付けて試験区を形成し、これを野外に設置して種子の出芽の本数を観察することにより行った。混合する種子の数は、各試験区で同数とし、日照条件等を同一条件とするため、図5に示したように、日当たりのよい野外に並べて設置した。植物の種子としては、イネ科植物として洋芝(ケンタッキーブルーグラス)とマメ科植物としてシロツメクサの種子とを使用した。また、本発明の効果を比較検証するため、試験区に吹き付ける吹付資材として、以下の(a)〜(f)の配合を用いた。尚、接着剤としては、ローンフィックス(商品名:昭和電工株式会社製)を使用した。各接着剤添加量及び各種子種類の試験区は、3つずつ用意した。灌水は、人為的な灌水は行わず、自然降雨による灌水のみとした。経過日数ごとに、出芽・生存している本数を計数して記録した。各観察日に於いて計数するにあたり、枯死した個体は除外した。
吹付出芽試験に於いては、図4と同様に、栽培容器底部に充填した土壌の表面に、吹き付け機によって種子を混合した綿状生竹繊維を吹き付けて試験区を形成し、これを野外に設置して種子の出芽の本数を観察することにより行った。混合する種子の数は、各試験区で同数とし、日照条件等を同一条件とするため、図5に示したように、日当たりのよい野外に並べて設置した。植物の種子としては、イネ科植物として洋芝(ケンタッキーブルーグラス)とマメ科植物としてシロツメクサの種子とを使用した。また、本発明の効果を比較検証するため、試験区に吹き付ける吹付資材として、以下の(a)〜(f)の配合を用いた。尚、接着剤としては、ローンフィックス(商品名:昭和電工株式会社製)を使用した。各接着剤添加量及び各種子種類の試験区は、3つずつ用意した。灌水は、人為的な灌水は行わず、自然降雨による灌水のみとした。経過日数ごとに、出芽・生存している本数を計数して記録した。各観察日に於いて計数するにあたり、枯死した個体は除外した。
(a)竹繊維99.5wt%,接着剤0.5wt%,洋芝種子混合
(b)竹繊維99.5wt%,接着剤0.5wt%,マメ科植物種子混合
(c)竹繊維99.0wt%,接着剤1.0wt%,洋芝種子混合
(d)竹繊維99.0wt%,接着剤1.0wt%,マメ科植物種子混合
(e)竹繊維100.0wt%,接着剤0.0wt%,洋芝種子混合
(f)竹繊維100.0wt%,接着剤0.0wt%,マメ科植物種子混合
(b)竹繊維99.5wt%,接着剤0.5wt%,マメ科植物種子混合
(c)竹繊維99.0wt%,接着剤1.0wt%,洋芝種子混合
(d)竹繊維99.0wt%,接着剤1.0wt%,マメ科植物種子混合
(e)竹繊維100.0wt%,接着剤0.0wt%,洋芝種子混合
(f)竹繊維100.0wt%,接着剤0.0wt%,マメ科植物種子混合
(4.2)試験結果
表1に、各観察日に於いて計数された各試験区の出芽・生存数を示す。また、図6に、各観察日に於いて計数された各試験区の出芽・生存数の変化を示す。なお、表1及び図5において示した出芽・生存数の値は、同種子種・同接着剤添加量の3試験区の平均数である。本発明に係る発芽促進方法により形成された試験区は(e),(f)である。(a)〜(d)は従来通りに接着剤を混合した綿状竹繊維の吹き付けによって形成した試験区である。
表1に、各観察日に於いて計数された各試験区の出芽・生存数を示す。また、図6に、各観察日に於いて計数された各試験区の出芽・生存数の変化を示す。なお、表1及び図5において示した出芽・生存数の値は、同種子種・同接着剤添加量の3試験区の平均数である。本発明に係る発芽促進方法により形成された試験区は(e),(f)である。(a)〜(d)は従来通りに接着剤を混合した綿状竹繊維の吹き付けによって形成した試験区である。
試験の結果、マメ科植物では、本発明に関わる試験区(f)では7日目で平均91.7本、14日目で平均132.0本,28日目で平均108.7本,49日目で平均81.3本の発芽が観測された。尚、発芽本数が28日目以降に減少しているのは、容器が限られた大きさであったため、早期に発芽し生長したものが枯死したためである。それに対し、従来法による試験区では、試験区(b)が最も早く発芽し、14日目に平均27.7本、28日目に平均55.7本、49日目に平均34.0本の発芽が観察された。試験区(d)は最も遅く、28日目で平均0.7本、49日目で平均3.0本の発芽が観察された。
また、洋芝では、本発明に関わる試験区(e)では14日目で平均0.3本、28日目で平均112.0本、49日目で平均80.0本の発芽が観測された。それに対し、従来法による試験区では、試験区(a)では28日目で平均6.0本、49日目で平均33.0本の発芽が観測された。試験区(c)では49日目で平均12.7本の発芽が観測された。
以上の結果から、同種の種子で比較すると、本発明に関わる試験区(e),(f)が、従来法による他の試験区に比べて種子の発芽速度が顕著に促進されており、本発明の種子の発芽促進方法による種子の発芽速度の促進効果が確認された。
図7は、図6の試験に於いて同時に測定した各試験区の土壌内の水分量の測定結果を示す図である。図7から、各試験区において土壌内の水分量については、試験区(e),(f)の水分量が試験区(a),(b)及び試験区(c),(d)の水分量に比べて若干大きいものの、あまり大きな差は見られなかった。このことから、本発明に関わる試験区における種子の出芽率が高いという上記結果について、土壌水分量の違いの影響は小さいと考えられる。試験区(a)〜(d)と試験区(e),(f)の大きな差違は、接着剤の有無である。試験区(a)〜(d)では、接着剤により種子が固定されているのに対し、試験区(e),(f)では、種子は綿状生竹繊維内に回転や運動が妨げられない状態で担持されており、この差が種子の発芽促進に大きく関与しているものと推察される。
(5)含水量の比較
次に、従来の接着剤を用いた綿状生竹繊維の植生基盤層と、本発明に係る発芽促進方法で使用する植生基盤層との保水性の比較を定量的に行ったので、その結果について説明する。
次に、従来の接着剤を用いた綿状生竹繊維の植生基盤層と、本発明に係る発芽促進方法で使用する植生基盤層との保水性の比較を定量的に行ったので、その結果について説明する。
図8は、接着剤を用いた綿状生竹繊維の植生基盤層と、接着剤を含まない綿状生竹繊維の植生基盤層との吸い上げ吸水試験の結果を表す図である。実験は、まず、植生基盤層を構成する材料を、内径40mm、高さ10mmの円筒形容器に充填して、サンプルを作成した。最初に各サンプルの乾燥重量を測定し、次いで、図8(a)に示すように、各サンプルを水で満たされたトレイ内に下端が水面下に浸かるように立てて設置した。吸水中はトレイ内の水位が変化しないように、常にトレイが満水となるように常時水の補給を行った。約24時間放置して十分に吸水させた後に、各サンプルを取り出して、軸方向の長さ2.5cmごとに輪切りにし、各部分(図8(a)の各サンプル区間)の質量を測定した。質量の測定結果から、各サンプル区間における含水比を、次式によって求めた。
測定の結果を図8(b)に示す。各サンプルの乾燥質量は、接着剤を添加した綿状生竹繊維の植生基盤層Aが16.6g、接着剤を含まない綿状生竹繊維の植生基盤層Bが15.6gであった。実験の結果、植生基盤層Aはサンプル区間8.75cmまで揚水され、植生基盤層Bはサンプル区間11.25cmまで揚水された。各サンプル区間に於いて、植生基盤層Bのほうが植生基盤層Aに比べて、平均で約90mass%程度含水量が多かった。このことから、接着剤を添加しない植生基盤層Bのほうが、接着剤を添加した植生基盤層Aに比べて保水力が高く、また、毛管現象によって底部の水を吸い上げる揚水力も高いことが分かる。
(6)変形・強度試験
(6.1)一軸圧縮試験とは
通常、一軸圧縮試験は、土の剪断強さを得るために行われる。図9は、試験で得られる圧縮応力と圧縮歪みとの関係を模式的に示したものである。乱さない土の圧縮応力はある圧縮歪みでピーク値を示し、この値が一軸圧縮強さである。一方で、練り返し土のような場合、圧縮応力は単調に増加しピーク値を示さない。従って、斯かる場合には、圧縮歪みが15%に達したときの圧縮応力を一軸圧縮強さとみなす。
(6.1)一軸圧縮試験とは
通常、一軸圧縮試験は、土の剪断強さを得るために行われる。図9は、試験で得られる圧縮応力と圧縮歪みとの関係を模式的に示したものである。乱さない土の圧縮応力はある圧縮歪みでピーク値を示し、この値が一軸圧縮強さである。一方で、練り返し土のような場合、圧縮応力は単調に増加しピーク値を示さない。従って、斯かる場合には、圧縮歪みが15%に達したときの圧縮応力を一軸圧縮強さとみなす。
(6.2)試験方法
水と混合した2種類の竹繊維(接着剤添加と無添加)を内径3.5cm,高さ7cmの円筒容器に吹付け、円筒容器の枠を外して一軸圧縮試験用の試料を準備した。これらの試料を異なる期間(0,10,56日)空気中に放置し、乾燥の程度を変化させた。また、凍結・解凍の影響を調べるため、乾燥が進んだ試料(53日放置)に霧吹きで水分を加え、それを凍結・解凍した。このようにして作成した試料を使って一軸圧縮試験を行った。試験は、一種類の試料について3個の供試体を使って3連で行った。
水と混合した2種類の竹繊維(接着剤添加と無添加)を内径3.5cm,高さ7cmの円筒容器に吹付け、円筒容器の枠を外して一軸圧縮試験用の試料を準備した。これらの試料を異なる期間(0,10,56日)空気中に放置し、乾燥の程度を変化させた。また、凍結・解凍の影響を調べるため、乾燥が進んだ試料(53日放置)に霧吹きで水分を加え、それを凍結・解凍した。このようにして作成した試料を使って一軸圧縮試験を行った。試験は、一種類の試料について3個の供試体を使って3連で行った。
(6.3)試験結果
図10から図12に、竹繊維基材の一軸圧縮試験から得られた圧縮応力と圧縮歪みとの関係を示す。図10は吹き付け直後の高い含水比での試験結果、図11は吹き付け後53日が経過し供試体の乾燥が進んだ状態での試験結果、図12は中程度の含水比状態で凍結・解凍を施した供試体についての試験結果である。
図10から図12に、竹繊維基材の一軸圧縮試験から得られた圧縮応力と圧縮歪みとの関係を示す。図10は吹き付け直後の高い含水比での試験結果、図11は吹き付け後53日が経過し供試体の乾燥が進んだ状態での試験結果、図12は中程度の含水比状態で凍結・解凍を施した供試体についての試験結果である。
接着剤添加の有無、含水比の程度、凍結・解凍の有無にかかわらず、圧縮応力はピークを示さず、供試体が破壊に至ることはなかった。これは、竹繊維基材が本来持っている靱性(壊れにくい性質)と展延性(壊れずに変形する性質)が、接着剤の添加、凍結・解凍後も維持されていることを示している。竹繊維の靱性と展延性は、単体の竹繊維の引っ張り強さが大きい(圧縮されても破壊されにくい)こと、それが絡み合うことでさらに引っ張り強さが高まることに起因している。
各供試体の一軸圧縮強さについては、圧縮歪みが15%に達したときの圧縮応力を、一軸圧縮強さに相当するものと見なした。こうして得られた一軸圧縮強さと含水比との関係を図13に示す。図中には、吹きつけによる供試体作成後の経過日数も併記している。吹き付け直後(0日)の含水比は、接着剤添加供試体の場合265〜272wt%、接着剤無添加供試体の場合319〜330wt%であった。接着剤の添加により含水比が低下したのは、接着剤の密度が竹繊維の密度よりも大きいため、及び接着剤の撥水効果のためであると考えられる。吹き付け直後の一軸圧縮強さは、接着剤無添加供試体の場合については11〜15kPa、接着剤添加供試体の場合については8〜9kPaであった。吹き付け後10日が経過すると、接着剤無添加供試体の場合の含水比は269〜272wt%に低下し、それに応じて一軸圧縮強さは14〜19kPaに増加した。一方、接着剤添加供試体の含水比は179wt%に低下したにも関わらず、一軸圧縮強さは殆ど変化しなかった。吹き付け後56日が経過すると、接着剤無添加供試体及び接着剤添加供試体の含水比は、それぞれ19〜32wt%,21〜26wt%まで減少し、両者に殆ど差は見られなかった。それに対し、一軸圧縮強さは、接着剤無添加供試体のほうが接着剤添加供試体よりも大きな値を示した。
以上の結果から、吹き付け後、同じ日数が経過した時点での、接着剤の有無による竹繊維基材の一軸圧縮強さを比較すると、接着剤添加の機材が低い値を示すことが明らかとなった。
次に、凍結・解凍が一軸圧縮強さへ及ぼす影響について述べる。供試体の作成は以下の通りである。まず、吹き付け後56日が経過した乾燥供試体に、スプレーで水を吹きかけて湿潤状態にし、引き続き供試体を凍結して、その後自然解凍した。供試体の含水比は、接着剤無添加供試体で148〜176wt%、接着剤添加供試体で93〜103wt%であった。また、一軸圧縮強さは、それぞれ、23〜29kPa,16〜21kPaであった。これらのデータは、接着剤無添加及び接着剤添加の何れの場合も相関曲線上に位置している。このことは、凍結・解凍が、竹繊維機材の一軸圧縮強さの低下を引き起こさないことを示している。
(7)団粒分析試験による侵食性の評価
(7.1)団粒とは
土壌は、粘土,シルト,砂などの様々な大きさの粒子から構成されている。其々の粒子が単体で存在するとき、それは1次粒子と呼ばれる。通常、砂は一次粒子として存在するが、粘土やシルトの1次粒子は集合して2次粒子(団粒)を形成している。団粒の形成には、1次粒子を結合するための鉄,アルミニウム,ケイ素などの酸化物が重要な役割を果たしている。
(7.1)団粒とは
土壌は、粘土,シルト,砂などの様々な大きさの粒子から構成されている。其々の粒子が単体で存在するとき、それは1次粒子と呼ばれる。通常、砂は一次粒子として存在するが、粘土やシルトの1次粒子は集合して2次粒子(団粒)を形成している。団粒の形成には、1次粒子を結合するための鉄,アルミニウム,ケイ素などの酸化物が重要な役割を果たしている。
(7.2)団粒の大きさの算定
風乾した土壌を水に入れると、弗化(スレーキング)により団粒相互の結応力が失われ、間隙空気の力により団粒は崩壊する。これに外力を作用させると団粒は小さくなるが、最終的にある大きさに落ち着く。このように安定した状態の団粒は耐水性団粒と呼ばれる。外力を作用させるために団粒分析装置が用いられ、団粒分析試験の結果を基に団粒の大きさが算定される。
風乾した土壌を水に入れると、弗化(スレーキング)により団粒相互の結応力が失われ、間隙空気の力により団粒は崩壊する。これに外力を作用させると団粒は小さくなるが、最終的にある大きさに落ち着く。このように安定した状態の団粒は耐水性団粒と呼ばれる。外力を作用させるために団粒分析装置が用いられ、団粒分析試験の結果を基に団粒の大きさが算定される。
(7.3)団粒と浸食の関係
団粒は、土壌構造の安定性、間隙の大きさや形に関係し、土壌の保水性、透水性、通気性に影響を及ぼす。団粒が発達した土壌は、透水性や通気性に優れているため、土壌表面を流れる水量は少なくなり、土壌浸食は抑制される。従って、団粒分析の結果は、土壌浸食の指標として用いることができる。
団粒は、土壌構造の安定性、間隙の大きさや形に関係し、土壌の保水性、透水性、通気性に影響を及ぼす。団粒が発達した土壌は、透水性や通気性に優れているため、土壌表面を流れる水量は少なくなり、土壌浸食は抑制される。従って、団粒分析の結果は、土壌浸食の指標として用いることができる。
(7.4)竹繊維を土壌とみなす
竹繊維は土壌ではないが、竹繊維の吹付基盤(クッション層)を土壌と見なし、竹繊維の集合体(団粒)の大きさを団粒分析試験により算定した。以下、竹繊維については「集合体」という用語を用いる。
竹繊維は土壌ではないが、竹繊維の吹付基盤(クッション層)を土壌と見なし、竹繊維の集合体(団粒)の大きさを団粒分析試験により算定した。以下、竹繊維については「集合体」という用語を用いる。
(7.5)団粒分析試験の方法
図14に団粒分析装置を示す。装置の下部は水槽(直径190mm、深さ370mm)と組篩からなる。組篩の目の大きさは、上から2.0,1.0,0.5,0.25,0.1mmである。試験法は以下の通りである。
(i)水槽に水を満たし、5個の篩を水槽内の水中で組み立てる。これは空気が篩の間に入るのを防ぐためである。
(ii)竹繊維試料約20gを最上部の篩(2.0mm)に薄く広げて1日放置する。
(iii)アームを1分間に32回、3.8cmのストロークで3時間上下運動させて、試料の篩い分けを行う。
(iv)各篩に残った試料を集めて、110℃で炉乾燥した後、その質量を測定する。
図14に団粒分析装置を示す。装置の下部は水槽(直径190mm、深さ370mm)と組篩からなる。組篩の目の大きさは、上から2.0,1.0,0.5,0.25,0.1mmである。試験法は以下の通りである。
(i)水槽に水を満たし、5個の篩を水槽内の水中で組み立てる。これは空気が篩の間に入るのを防ぐためである。
(ii)竹繊維試料約20gを最上部の篩(2.0mm)に薄く広げて1日放置する。
(iii)アームを1分間に32回、3.8cmのストロークで3時間上下運動させて、試料の篩い分けを行う。
(iv)各篩に残った試料を集めて、110℃で炉乾燥した後、その質量を測定する。
(7.6)試料の種類と調整
団粒分析のための竹繊維試料は、吹き付けにより作成した一軸圧縮試験用の円柱供試体を使用した。団粒分析の供試体としては、以下の2種類を使用した:
(a)吹き付けにより作成した円柱供試体を風乾したもの。
(b)湿潤状体の円柱供試体を凍結・解凍した後に風乾したもの。
上記(a)(b)の試料を砕き、各試料についてそのままの状態で使うもの(分散前の供試体)と試料を水中で分散したもの(分散後の供試体)を準備した。分散前の供試体は、大きな竹繊維の集合体からなる。集合体は、竹繊維の絡みにより維持されていると考えられる。一方、分散後の供試体は、水を満たした瓶に試料を入れ、それに30分間振盪による衝撃を与えて作成したものである。竹繊維の集合体は離散して、小さくなっている。
このようにして準備した分散前及び分散後の供試体を(6.5)の要領で団粒分析を行った。
団粒分析のための竹繊維試料は、吹き付けにより作成した一軸圧縮試験用の円柱供試体を使用した。団粒分析の供試体としては、以下の2種類を使用した:
(a)吹き付けにより作成した円柱供試体を風乾したもの。
(b)湿潤状体の円柱供試体を凍結・解凍した後に風乾したもの。
上記(a)(b)の試料を砕き、各試料についてそのままの状態で使うもの(分散前の供試体)と試料を水中で分散したもの(分散後の供試体)を準備した。分散前の供試体は、大きな竹繊維の集合体からなる。集合体は、竹繊維の絡みにより維持されていると考えられる。一方、分散後の供試体は、水を満たした瓶に試料を入れ、それに30分間振盪による衝撃を与えて作成したものである。竹繊維の集合体は離散して、小さくなっている。
このようにして準備した分散前及び分散後の供試体を(6.5)の要領で団粒分析を行った。
(7.7)団粒分析試験の結果
図15に、乾燥竹繊維について分散前と分散後の供試体の団粒分析試験の結果を示す。横軸は集合体の大きさ(粒径)を表す。プロットした点の粒径(0.1,0.25,0.5,1.0,2.0mm)は篩の目の大きさである。0.1は、0.1mm以上0.25mm未満の粒径、0.25は0.25mm以上1.0mm未満の粒径、1.0は1.0mm以上2.0mm未満の粒径、2.0は2.0mm以上の粒径に相当する。縦軸は篩に残った試料の残留率を表しており、各篩に残った試料の質量を全質量で除して求めた。
図15に、乾燥竹繊維について分散前と分散後の供試体の団粒分析試験の結果を示す。横軸は集合体の大きさ(粒径)を表す。プロットした点の粒径(0.1,0.25,0.5,1.0,2.0mm)は篩の目の大きさである。0.1は、0.1mm以上0.25mm未満の粒径、0.25は0.25mm以上1.0mm未満の粒径、1.0は1.0mm以上2.0mm未満の粒径、2.0は2.0mm以上の粒径に相当する。縦軸は篩に残った試料の残留率を表しており、各篩に残った試料の質量を全質量で除して求めた。
図15において、接着剤無添加の場合、分散前には粒径2.0mm(2.0mm以上の大きさ)の集合体が96wt%を占めており、其れより小さな集合体は殆ど存在しなかった。然し、供試体を振盪して分散処理を施すことにより、粒径2.0mmの集合体の残留率は96wt%から44wt%にまで大きく減少した。一方、粒径1.0,0.5,0.25,0.1mmの集合体の残留率は、分散処理前に0wt%であったものが、分散処理後には10−15wt%にまで増加した。これは、大きな集合体が振盪により崩壊し、小さな集合体に変わったことを意味する。このことを竹繊維の吹き付け基盤の雨水侵食と関連して考えると、雨水が基盤に衝撃を与えると竹繊維の集合体は崩壊して小さな集合体となり、基盤は侵食を受け易くなる。
接着剤添加の場合も、無添加の場合と同様に、粒径2.0mmの集合体の残留率は、分散前の95wt%から分散後の38wt%に大幅に減少し、1.0mm以下の粒径の集合体は、分散前の0wt%から分散後の4−20wt%に増加したが、大きな集合体の減少と小さな集合体の増加の割合は、接着剤無添加の場合より顕著であることが分かった。このことは、接着剤を添加することで、竹繊維の集合体は崩壊しやすくなることを示している。従って、現場に於いて接着剤を添加した基盤は、添加していない基盤に比べて侵食を受けやすくなることが予想される。
図16は、凍結・解凍後に乾燥した竹繊維試料についての団粒分析結果を示している。接着剤無添加の場合、粒径2.0mm(2.0mm以上の大きさ)の集合体は95wt%を占めているが、分散により61wt%に減少した。この減少量は、凍結・解凍を受けていない乾燥竹繊維試料の場合(図15参照)に比べて少なく、これは凍結・解凍が分散による竹繊維集合体の崩壊を抑制することを示唆している。当初、凍結・解凍は集合体の崩壊を促進すると予想していたが、これとは逆の結果となった。
また、接着剤を添加すると、粒径2.0mmの集合体は38wt%に減少し、粒径1.0mm以下の集合体は増加した。この傾向は図15の乾燥竹繊維試料の場合と同じである。従って、接着剤の添加により竹繊維基盤の侵食性が高まることが予測される。
(8)種子固定の影響に関する調査
種子が接着剤で固定された場合、種子の発芽にどのような影響が生じるのかを調査した結果を説明する。
種子が接着剤で固定された場合、種子の発芽にどのような影響が生じるのかを調査した結果を説明する。
(8.1)種子固定発芽試験の方法
試験方法としては、接着剤で種子を固定して種子の回転を抑えた試験区(種子固定試験区)と、種子を固定せずに自由に回転・移動することができるようにした試験区(種子フリー試験区)とを用意し、両者の試験区における種子の発芽の様子をインターバル・レコーダにより定位置から一定間隔で撮影することにより記録した。種子の固定は、図17(a)に示したように、金網に種子の片面を接着剤(木工用ボンド)により接着することにより行った。両試験区の日照条件、温度条件、灌水条件を等しくするため、図17(b)に示したように、シャーレ内に吸水性の不織布(下層)及び脱脂綿(上層)を敷設し、脱脂綿の上面を2分して半分を種子固定試験区(左側)、半分を種子フリー試験区(右半分)とした。種子固定試験区では、図17(a)のように片面に種子を接着した金網を、種子が接着された側を下面として脱脂綿上に載置した。また、灌水時に種子が移動することを防止するため、シャーレ内への灌水は、図17(b)に示すように、ビーカーからシャーレ内の不織布の下面まで灌水用の不織布を延設し、ビーカー内の水を浸透圧によりシャーレ内へ給水する浸透圧灌水により行い、脱脂綿が常時湿潤した状態を維持するようにした。試験に使用する種子としては、市販の洋芝(ケンタッキーブルーグラス)の種子を使用した。また、種子数は両試験区で同数とした。
試験方法としては、接着剤で種子を固定して種子の回転を抑えた試験区(種子固定試験区)と、種子を固定せずに自由に回転・移動することができるようにした試験区(種子フリー試験区)とを用意し、両者の試験区における種子の発芽の様子をインターバル・レコーダにより定位置から一定間隔で撮影することにより記録した。種子の固定は、図17(a)に示したように、金網に種子の片面を接着剤(木工用ボンド)により接着することにより行った。両試験区の日照条件、温度条件、灌水条件を等しくするため、図17(b)に示したように、シャーレ内に吸水性の不織布(下層)及び脱脂綿(上層)を敷設し、脱脂綿の上面を2分して半分を種子固定試験区(左側)、半分を種子フリー試験区(右半分)とした。種子固定試験区では、図17(a)のように片面に種子を接着した金網を、種子が接着された側を下面として脱脂綿上に載置した。また、灌水時に種子が移動することを防止するため、シャーレ内への灌水は、図17(b)に示すように、ビーカーからシャーレ内の不織布の下面まで灌水用の不織布を延設し、ビーカー内の水を浸透圧によりシャーレ内へ給水する浸透圧灌水により行い、脱脂綿が常時湿潤した状態を維持するようにした。試験に使用する種子としては、市販の洋芝(ケンタッキーブルーグラス)の種子を使用した。また、種子数は両試験区で同数とした。
(8.2)種子固定発芽試験の結果
図18に、種子固定発芽試験における種子固定試験区及び種子フリー試験区の種子発芽時の変化の様子を示す。図19に、各試験区の発芽率の時間変化を示す。接着剤による種子固定により、種子の発芽が阻害されることは、図18の写真より一見して明らかである。実験の結果、実験開始から216時間経過後に於いて、種子フリー試験区の発芽率は約70%であったのに対し、種子固定試験区の発芽率は約10%であった。従って、接着剤による種子固定によって約60%程度発芽率が低下した。図20は、発芽時における種子の動きを表す図である。発芽時に於いて、種子内部から芽が出る前に種子が開くように動く。接着剤で固定した場合の発芽率低下の要因として、この種子の開き運動が阻害されることが一要因であると推測される。
図18に、種子固定発芽試験における種子固定試験区及び種子フリー試験区の種子発芽時の変化の様子を示す。図19に、各試験区の発芽率の時間変化を示す。接着剤による種子固定により、種子の発芽が阻害されることは、図18の写真より一見して明らかである。実験の結果、実験開始から216時間経過後に於いて、種子フリー試験区の発芽率は約70%であったのに対し、種子固定試験区の発芽率は約10%であった。従って、接着剤による種子固定によって約60%程度発芽率が低下した。図20は、発芽時における種子の動きを表す図である。発芽時に於いて、種子内部から芽が出る前に種子が開くように動く。接着剤で固定した場合の発芽率低下の要因として、この種子の開き運動が阻害されることが一要因であると推測される。
なお、マメ科植物についても同様の実験を実施した。マメ科植物の場合、イネ科植物のように発芽時において種子の回転運動は見られない。しかしながら、灌水を行うとマメ科植物の種子は膨張し、発芽時には種子の表皮が裂開して発芽する。この膨張の際に、種子の表皮が接着剤で固定されていると、発芽前に種子の表皮が裂開して胚芽が表皮内から飛び出し、乾燥・枯死するケースが多数見られた。このように、マメ科植物の場合においても、種子を接着剤で固定することによる発芽率の低下が生じる。
Claims (5)
- 生竹の稈を二軸圧縮粉砕器により圧縮粉砕して形成した綿状生竹繊維に、植物の種子を添加し攪拌することにより、前記種子が、回転自在な状態で、前記綿状生竹繊維の絡合体内に分散して担持された、接着剤及び肥料を含まない前記綿状生竹繊維及び前記種子のみで構成されるクッション材を生成し、該クッション材を地表に敷設することで前記種子を地表に植え付ける、種子の発芽促進方法。
- 生竹の稈を二軸圧縮粉砕器により圧縮粉砕して形成した綿状生竹繊維に、植物の種子を添加し攪拌することにより、前記種子が、回転自在な状態で、前記綿状生竹繊維の絡合体内に分散して担持された、接着剤及び肥料を含まない前記綿状生竹繊維及び前記種子のみで構成されるクッション材を生成し、
前記クッション材を、法面の地山表面に吹き付けることによりクッション層を形成することで、前記地山表面を被覆する、法面表層の安定化方法。 - 前記植物の種子は、イネ科又はマメ科植物の種子であることを特徴とする請求項2記載の法面表層の安定化方法。
- 前記綿状生竹繊維は、嵩比重が0.1〜0.3g/cm3であることを特徴とする請求項2又は3の何れか一記載の法面表層の安定化方法。
- 前記クッション層は、法面の地山表面に0.5〜150mmの厚みで形成することを特徴とする請求項2乃至4の何れか一記載の法面表層の安定化方法。
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