JP6004921B2 - スパッタリング装置、薄膜製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、薄膜形成の技術分野に係り、特に、複数のターゲットをそれぞれ別々の電源に接続して一緒にスパッタリングするときの薄膜製造技術に関する。
ニッケル水素蓄電池は、小型の電子機器の他、ハイブリッド自動車や電気自動車へも使用されており、近年では、ニッケル水素蓄電池に比べてエネルギー密度が高いリチウムイオン電池が注目されている。
リチウムイオン電池では、安全性の面や、小型化の面から、電解液を固体化する技術が研究されており、全固体薄膜リチウム二次電池の固体電解質膜には、窒素置換リン酸リチウム(LiPON)の固体電解質膜が実用化されている。
この固体電解質膜は、Li3PO4ターゲットにN2ガスを用いた反応性RFマグネトロンスパッタリングにより形成することができるが、LiPONの固体電解質膜は電力密度当たりの成膜速度が低いので、生産性を向上させるためには、スパッタリングの際に、複数個のターゲットを真空槽内に配置し、基板が各ターゲットと順次対面するように相対移動させ、基板表面にスパッタリング粒子が到達する時間を長くする必要がある。
しかしながら、限られた大きさの真空槽の内部空間に複数のターゲットを配置して交流電圧を印加すると、隣接するターゲットに印加する交流電圧同士が干渉し、放電状態に差を生じ、スパッタリング速度がターゲットによって異なってしまい、固定電解質膜の形成速度が遅くなるという問題がある。
このようなターゲット間のスパッタリング速度の差を生じる原因は、ターゲット上のプラズマの相互干渉の他に、ターゲットの掘れ量の差や、電源ケーブルやブスバー形状の相違によるターゲット間のインピーダンスの差や、それぞれのターゲットが配置されたアノード電極の有効な面積の違い等が挙げられる。
これらの差により、ターゲットの消耗量が異なるため、交換頻度に差を生じたり、ターゲットの使用効率が低下する等の問題も発生する。
薄膜リチウム二次電池の固体電解質膜は、次の参考文献に記載されている。
特表2009−502011号公報 特開2009−187682号公報 特開2009−179867号公報
本発明は上記従来技術の不都合を解決するために創作されたものであり、その目的は、複数のターゲットに位相が同期した交流電圧を印加してスパッタリングする技術を提供することにある。
上記課題を解決するために本発明は、真空槽と、前記真空槽内に配置された複数のターゲットと、各前記ターゲットに電気的にそれぞれ接続され交流電圧を出力する交流電源と、各前記ターゲットにそれぞれ印加される交流電圧を検出する電圧センサと、前記電圧センサの検出結果から、各前記ターゲットに印加される交流電圧のバイアス電圧の値であるバイアス電圧値を求める制御装置と、を有し、前記交流電源は、出力する前記交流電圧の位相である電源位相を所望の値に変更できるように構成され、前記制御装置は、前記バイアス電圧値を大きくするように、前記電源位相を変化させるスパッタリング装置である。
また、本発明は、前記制御装置は、最大のバイアス電圧値以外のバイアス電圧値の前記ターゲットに接続された前記交流電源の前記電源位相を変化させるスパッタリング装置である。
また、本発明は、前記ターゲットはLiを含有し、前記ターゲットのスパッタリングにより、成膜対象物の表面にLiを含有する固体電解質膜を形成するスパッタリング装置である。
た、本発明は、真空槽内に配置された複数のターゲットにそれぞれ個別に接続された交流電源から交流電圧をそれぞれ出力させ、各前記ターゲット上にプラズマを形成して各前記ターゲットをスパッタリングして、成膜対象物の表面に薄膜を形成する薄膜製造方法であって、各前記ターゲットの電圧を検出してバイアス電圧の値であるバイアス電圧値をそれぞれ求め、前記バイアス電圧値が大きくなるように、前記交流電圧の位相である電源位相を変化させる薄膜製造方法である。
また、本発明は、前記電源位相を変化させる前記交流電源は、最大のバイアス電圧値以外のバイアス電圧値の前記ターゲットに接続された前記交流電源の中から選択する薄膜製造方法である。
また、本発明は、各前記ターゲットの前記バイアス電圧値が所定の電圧一致関係になったと判断した後、前記成膜対象物の表面への前記薄膜の形成を開始する薄膜製造方法である。
また、本発明は、前記成膜対象物の表面に前記薄膜を形成している間は、前記バイアス電圧値が大きくなるように、前記交流電源の前記電源位相を変化させる薄膜製造方法である。
また、本発明は、前記電圧一致関係になったと判断した後、前記電源位相の変化を停止する薄膜製造方法である。
また、本発明は、前記電源位相の変化を停止した後も、前記ターゲットの電圧を測定して前記バイアス電圧値を求め、求めた前記バイアス電圧値が所定の電圧増加制御再開関係になると、前記電源位相を変化させ、前記バイアス電圧値を大きくする薄膜製造方法である。
また、本発明は、前記電圧一致関係と判断された状態で、各前記交流電源の動作状態を記憶しておき、各前記交流電源を停止して前記プラズマを消滅させた後、各前記交流電源を起動し、各前記交流電源を記憶された前記動作状態で動作させ、各前記交流電源を前記電圧一致関係にする薄膜製造方法である。
ターゲットに印加される交流電圧が同期すると、各ターゲット上のプラズマに供給される電力は等しくなり、各ターゲットのスパッタリング速度は等しくなるので、均一な成膜を行うことができる。また、各ターゲット上のプラズマに供給される電力の合計値は最大になるので、スパッタリング速度が速くなる。
各ターゲットのバイアス電圧が等しくなると、各ターゲットのスパッタリング状態が同じになり、均一な成膜を行うことができる。また、バイアス電圧が大きくなるので、各ターゲットのスパッタリング速度が速くなる。
本発明のスパッタリング装置の一例の内部側面図、内部平面図、内部正面図に相当する截断断面図 本発明のスパッタリング装置のターゲット付近の構造を説明するための截断断面図 本発明のスパッタリング装置による薄膜形成方法を説明するための回路ブロック図 カソードに印加される正弦波を示して位相差を説明するための図 本発明により、3個のターゲットのうちの両側の一方のターゲットで成膜した固体電解質薄膜のFT−IRのグラフであり、ターゲット中の(a):上端部分 (b):中央部分 (c):下端部分 本発明により、3個のターゲットのうちの中央のターゲットで成膜した固体電解質薄膜のFT−IRのグラフであり、ターゲット中の(a):上端部分 (b):中央部分 (c):下端部分 本発明により、3個のターゲットのうちの両側の他方のターゲットで成膜した固体電解質薄膜のFT−IRのグラフであり、ターゲット中の(a):上端部分 (b):中央部分 (c):下端部分 比較例により、3個のターゲットのうちの両側の一方のターゲットで成膜した固体電解質薄膜のFT−IRのグラフであり、ターゲット中の(a):上端部分 (b):中央部分 (c):下端部分 比較例により、3個のターゲットのうちの中央のターゲットで成膜した固体電解質薄膜のFT−IRのグラフであり、ターゲット中の(a):上端部分 (b):中央部分 (c):下端部分 比較例により、3個のターゲットのうちの両側の他方のターゲットで成膜した固体電解質薄膜のFT−IRのグラフであり、ターゲット中の(a):上端部分 (b):中央部分 (c):下端部分
複数のターゲットを異なるカソード電極に接続してカソードを構成し、各カソード電極を、それぞれ別々のスパッタリング用の交流電源に接続し、各交流電源から交流電圧を出力し、カソード電極を介してターゲットに印加してターゲット表面にプラズマを形成し、ターゲットをスパッタリングする。
各交流電源からカソード電極に交流電圧を出力し、カソード電極を介して各ターゲットに交流電圧を印加したときに、各ターゲットに印加される交流電圧が同期していれば、各ターゲットがプラズマに出力する電力が同じ値になり、その合計値が最大値になると考えられている。
しかしながら、各交流電源が出力する交流電圧の位相を同期させても、ターゲットの交流電圧の位相であるターゲット位相は必ずしも同期しないことが判明した。
これは、交流電源とカソード電極との間のインピーダンスは交流電源毎に異なることがあり、交流電源の出力端子で交流電圧の位相が一致していても、各ターゲットでは、交流電圧の位相は一致していないことになる。
図4は、三個のカソードを有するスパッタリング装置の各カソード電極に印加される正弦波の交流電圧(高周波電圧)の波形であり、位相差が模式的に示されている。これら交流電圧の波形が一致したとき、カソードの交流電圧の位相差、即ち、ターゲットの交流電圧の位相差は0°となる。
<位相制御>
以下で説明する工程は、制御装置によって制御されている。
制御装置には、電圧センサが検出した複数のターゲットの電圧の電圧値が入力されている。制御装置は、入力された電圧値を電圧が検出された時刻と関連付けることができるので、制御装置は、電圧値と検出した時刻の関係から、電圧変化が分かる。
ターゲットの交流電圧の位相をターゲット位相とすると、制御回路は、各電圧センサが検出したターゲット位相やターゲット位相差を求めることができる。
また、ターゲット位相を求めなくても、電圧センサが検出した電圧の電圧値と、検出した時刻から、ターゲット位相の位相差を求めることができる。
本発明の交流電源は、交流電源が出力する交流電圧の位相である電源位相を変更できるように構成されており、交流電源は制御装置に接続され、電源位相は、制御装置によって制御できるように構成されている。
従って、電源位相は、制御装置によって、所望の値にして出力できるので、制御装置は、ターゲットがスパッタリングされた状態で、ターゲット位相の位相差が小さくなるように、交流電源の電源位相を変化させることができる。
そして、位相差が小さくなって位相差が予め設定された同期関係になると、ターゲット位相は同期したものとして、基板表面への固体電解質膜の成膜を開始する。
ここでは、予め、制御装置に位相差基準値を設定しておき、制御装置は、位相差の最大値が、位相差基準値よりも小さくなったときに、ターゲット位相の位相差は、同期関係になったものと判断する。
各ターゲット表面のスパッタリングが行われることにより、各ターゲットと交流電源との間のインピーダンスの値は変化するため、基板表面への薄膜形成中も、制御装置は、ターゲット位相の位相差を求め、位相差が小さくなるように、交流電源の電源位相を変化させると、ターゲット位相の同期関係は維持される。
他方、インピーダンスの値の変化量が小さい場合は、同期関係になった後は、電源位相を制御しなくても同期関係が維持されるので、電源位相の制御を停止することができる。
この場合でも、電圧センサによる電圧検出は継続して行い、検出された電圧に基づいて位相差を継続して求め、位相差が所定の位相制御再開関係になったと判断したときに、位相差を小さくするための電源位相の制御を再開することができる。
位相制御再開関係については、例えば、位相差基準値よりも大きな位相再開基準値を制御装置に予め設定しておき、継続して求められた位相差の最大値が、位相再開基準値よりも大きくなったときに、制御装置は各ターゲット位相の位相差が位相制御再開関係になったと判断して、位相差を小さくさせる電源位相の制御を再開することができる。
<バイアス電圧増加制御>
位相差を求めずに、電源位相を制御する方法を説明する。
ターゲットに交流電圧を印加して、ターゲット上にプラズマを形成すると、プラズマ中の正電荷粒子と負電荷粒子(電子)の移動度の差に起因して、ターゲットには、直流の負電圧であるバイアス電圧が発生する。このバイアス電圧の値は、ターゲットのスパッタリング状態を反映しており、複数のターゲットを隣接させてスパッタリングする場合には、各ターゲットのバイアス電圧が同じ値になったときに、各ターゲットのスパッタ状態が同じになり、各ターゲットが均一にスパッタリングできようになることが分かった。また、各ターゲットのバイアス電圧が同じ値になったときには、バイアス電圧は最大値になっているから、各ターゲットのスパッタリング速度が向上することが分かった。
このバイアス電圧も、ターゲットに印加される交流電圧の位相であるターゲット位相が変化すると変化するので、バイアス電圧は、電源位相を変化させることで変化させることができることになる。
従って、位相差を求めることに替え、各ターゲットのバイアス電圧値(バイアス電圧の値の絶対値)を求め、各ターゲットのバイアス電圧が増加するように、電源位相を変化させると、各ターゲットのバイアス電圧を最大値にすることができる。各交流電源が出力する交流電圧の周波数は等しく、電圧値も等しいので、各ターゲットのバイアス電圧値がそれぞれ最大値のときは、各ターゲットのバイアス電圧値は互いに等しくなるので、スパッタリング速度は速く、また、各ターゲットのスパッタリング状態が一致して、ターゲット間で均一なスパッタリングが行われる。
電源位相を変えてバイアス電圧を増加させるためには、例えば、各ターゲットのうち、最も大きなバイアス電圧値が求められたターゲットに接続された交流電源を最大値電源と呼び、最大値電源以外の交流電源を調整対象電源と呼ぶこととすると、先ず、複数の調整対象電源の中から一個の調整対象電源を選択し、現在のバイアス電圧値の最大値を目標値として記憶して固定し、選択した調整対象電源に接続されたターゲットのバイアス電圧値が目標値に近づくように、選択した調整対象電源の電源位相を変化させる。
選択した調整対象電源が交流電圧を出力するターゲットのバイアス電圧値が最大になったところで、他の調整対象電源を選択し、目標値を固定し、選択した調整対象電源が出力するターゲットのバイアス電圧値が大きくなるように、選択した調整対象電源の電源位相を変化させる。
このような、調整対象電源の選択と、その電源位相の制御を繰り返す。
但し、選択した調整対象電源の電源位相を変化させてバイアス電圧を増大させると、選択した調整対象電源以外の交流電源が交流電圧を出力するターゲットのバイアス電圧値が低下することがある。
最大値電源が同じ交流電源である間は、各調整対象電源を繰り返し順番に選択して、選択した調整対象電源が出力するターゲットのバイアス電圧が増加するように、選択した電源位相を変化させれば良いが、バイアス電圧値の最大値を示すターゲットが別のターゲットに替わったときは、最大値電源は、現在バイアス電圧値が最大のターゲットに接続されている交流電源に変更され、上記と同様に、各調整対象電源を繰り返し順番に選択し、目標値を固定し、目標値に近づくように選択した調整対象電源の電源位相を変化させる。
以上説明した工程により、各交流電源に接続されたターゲットのバイアス電圧値は最大値に近づき、各ターゲットのバイアス電圧値の差は小さくなる。
そして、バイアス電圧値を増加させることにより、各電圧センサが検出するバイアス電圧値が所定の電圧一致関係になったときに、各ターゲットのバイアス電圧値がそれぞれ最大値になったものとして、基板表面への成膜を開始する。
例えば、制御装置に予め電圧基準値を設定しておき、各バイアス電圧値のうち、最大のバイアス電圧値と最小のバイアス電圧値の差が電圧基準値よりも小さくなったときに、各ターゲットのバイアス電圧は、電圧一致関係になったものとすることができる。
このように、制御装置は、選択した交流電源の位相を変化させてバイアス電圧を大きくしており、各ターゲットのバイアス電圧が電圧一致関係になったと判断すると、基板表面への薄膜形成を開始する。電源位相を変化させる交流電源は、最大値よりも小さいバイアス電圧を出力している交流電源から選択するとよい。
電圧一致関係になったと判断した後も、ターゲットの電圧を継続して検出し、検出結果から各ターゲットのバイアス電圧値を求め、選択した交流電源の位相を変化させてバイアス電圧を大きくするようにすると、電圧一致関係を維持することができる。
ここでも、最大値よりも小さいバイアス電圧を出力している交流電源を選択するとよい。
また、インピーダンス変化が小さい場合は、各ターゲットのバイアス電圧値が電圧一致関係になったと判断した後には、電源位相の制御を停止してもよい。
電源位相の制御を停止する場合は、予め、電圧増加制御再開関係を設定しておき、ターゲットの電圧を検出してバイアス電圧を継続して求め、制御装置が、測定した各バイアス電圧値が、電圧増加制御再開関係になったと判断したときに、上記と同じく、各調整電源の電源位相を変化させ、バイアス電圧の増加を再開させる。
例えば、電圧基準値よりも大きい電圧増加制御再開基準値を予め制御装置に設定しておき、制御装置が求めた各ターゲットのバイアス電圧値の最大値と最小値の差が、電圧増加制御再開基準値よりも大きくなったときに、制御装置が各ターゲットのバイアス電圧が電圧増加制御再開関係になったと判断し、交流電源の選択と電源位相の制御を再開するようにしてもよい。
<位相制御・バイアス電圧制御>
なお、プラズマを一旦消滅させて、スパッタリングを停止する場合であっても、交流電源とカソード電極との間の配線を変更しなければ、そのインピーダンスは変化しない。
従って、交流電源を停止した後、再起動してプラズマを発生させる際には、各交流電源が出力する交流電圧を、同期関係又は電圧一致関係にあったときの電源位相で出力させると、同期関係又は電圧一致関係が再現でき、また、再現できなくても、同期関係又は電圧一致関係に近い電源位相で交流電圧を出力しているので、電源位相の制御により、同期関係又は電圧一致関係を短時間で再現することができる。
各ターゲットのターゲット位相の位相差が同期関係にあるとき、又は、各ターゲットのバイアス電圧が電圧一致関係にあるときの、各交流電源の電源位相を記憶又は記録して、再起動後、電源位相を記憶又は記録した電源位相で各交流電源から交流電圧を出力させるか、同期関係又は電圧一致関係にあるときに各交流電源に入力されている位相制御信号を記憶又は記録しておいて再起動の際に記憶又は記録した位相制御信号を各交流電源に入力させればよい。
なお、本発明の同期関係、位相制御再開関係、電圧一致関係、電圧増加制御再開関係は、上記した工程や装置に限定されるものでは無く、ターゲット位相、位相差やバイアス電圧が、他の関係になったときを、同期関係、位相制御再開関係、電圧一致関係、又は電圧増加制御再開関係になったとすることもできる。
<実施例1>
<スパッタリング装置>
先ず、本発明のスパッタリング装置を説明する。
本発明のスパッタリング装置2の図1、2の概略図を参照し、このスパッタリング装置2は真空槽20を有しており、真空槽20の内部には、複数台(ここでは3台)のスパッタ源221〜223が配置されている。
真空槽20は、立設する壁面を有しており、各スパッタ源221〜223は、その側面に沿って、水平面内で一列に並べられている。
真空槽20の底面には、レール42が、各スパッタ源221〜223が並べられた方向に沿って伸びるように配置されている。符号40は、基板41を配置するキャリアを示しており、キャリア40の下端には移動装置47(ここでは車輪等のローラ)が設けられており、キャリア40は基板41を配置する配置面を鉛直にして、移動装置47がレール42上に乗せられて、キャリア40がレール42上を移動するように構成されている。レール42上を移動するキャリア40は、各スパッタ源221〜223と順番に対面する。
各スパッタ源221〜223の構造は同じであり、筒状の筺体31と、ターゲット21と、磁石装置27と、バッキングプレート35と、揺動機構28とをそれぞれ有している。
筺体31は、金属から成り、筺体31の両端の開口のうち、一方の開口は、キャリア40が通過する経路29に向けられており、揺動機構28は、筺体31の内部の他方の開口付近に配置されている。
筺体31の内部には、金属から成る筒体34が配置されている。筒体34の端部は、絶縁体33を介して真空槽20の壁面に固定されており、筒体34は、真空槽20から電気的に絶縁されている。筺体31は、真空槽20の壁面に固定されて真空槽20と同電位になるようにされている。
図3は、各スパッタ源221〜223に接続された電気回路50を示している。
この電気回路50は、真空槽20の外部に配置された交流電源391〜393と、制御装置38とを有している。
バッキングプレート35は、筺体31の内部に配置され、筺体31とは離間した状態で、筒体34のキャリア40の経路29側の開口に取り付けられており、筒体34と同電位になるようにされている。バッキングプレート35の片面は、筺体31の開口に向けられて筒体34の端部に取り付けられている。
交流電源391〜393は、スパッタ源221〜223の個数と同個数設けられており、各交流電源391〜393は、マッチングボックス521〜523を介して筒体34に接続されている。従って、各交流電源391〜393は、各スパッタ源221〜223のバッキングプレート35に一対一でそれぞれ電気的に接続されていることになり、各交流電源391〜393を動作させると、各スパッタ源221〜223のバッキングプレート35に交流電圧がそれぞれ印加される。
ターゲット21は板状であり、各スパッタ源221〜223のターゲット21は、移動するキャリア40に配置された基板41と順番に対面する。
ターゲット21は、バッキングプレート35に接着されて固定されており、鉛直に設けられ、又は、鉛直から小角度傾いて設けられており、各ターゲット21は、バッキングプレート35の、キャリア40に向く面に対して、平行にされている。
筺体31の開口の周囲に位置する先端には、開口の中心に向けて内部に突出するように、リング形状の金属板から成るシールド32が設けられている。ターゲット21は、シールド32によって、シールド32とは非接触の状態で取り囲まれており、ターゲット21の底面からはみ出したバッキングプレート35は、シールド32の裏面と対面する。シールド32の表面は、ターゲット21の表面と同じ高さに位置している。シールド32と真空槽20と筺体31とは、アース電位に接続されている。
磁石装置27は、揺動機構28に取り付けられてバッキングプレート35の裏面に配置されており、揺動機構28が動作すると、磁石装置27は、ターゲット21の裏面位置で、ターゲット21に対して平行な平面内で移動できるように構成されている。
磁石装置27は、ターゲット21の表面に磁界を形成しており、揺動装置28によって移動されると、ターゲット21の表面の磁界も一緒に移動する。
磁石装置27は、外側磁石25と、外側磁石25によって取り囲まれている直線状の中央磁石24と、外側磁石25と中央磁石24とが配置されたヨーク23とで構成されている。
制御装置38の内部には、測定装置54と位相シフター36とが配置されている。
上述したように、各交流電源391〜393は、出力する交流電圧の位相である電源位相を制御できるように構成されている。
各交流電源391〜393は位相シフター36に接続されており、制御装置38は、その内部の位相シフター36から位相制御信号を各交流電源391〜393にそれぞれ個別に出力し、各交流電源391〜393が出力する交流電圧の位相(電源位相)を決定するように構成されている。
また、各スパッタ源221〜223のバッキングプレート35には、電圧センサ531〜533がそれぞれ接続されており(図3)、各スパッタ源221〜223のバッキングプレート35の交流電圧は、各電圧センサ531〜533で検出され、検出結果である電圧値は制御装置38に出力される。
制御装置38では、各電圧センサ531〜533が検出した電圧値の検出時刻は分かっており、各電圧センサ531〜533の検出結果と時刻とから各電圧センサ531〜533が検出した交流電圧の位相であるターゲット位相を求めることができる。また、ターゲット位相から、ターゲット位相の位相差を算出することもできるし、ターゲット位相を求めずに、検出結果と検出時刻とから位相差を求めることもできる。
また、各電圧センサ531〜533の検出結果から、バッキングプレート35の直流電圧成分を求めて、求めた値を、ターゲット21のバイアス電圧とすることもできる。
真空槽20の外部には、真空排気装置44と、ガス供給装置43とが配置され、真空槽20の内部のターゲット21に近い位置には、ガス噴出管49が配置されている。真空排気装置44は、真空槽20に接続されており、真空排気装置44が動作すると、真空槽20の内部は真空排気されて真空雰囲気にされる。ガス供給装置43は、ガス噴出管49に接続されており、ガス供給装置43が動作すると、ガス噴出管49から真空槽20の内部に向けて、スパッタリングガスが噴出されるようになっている。ここでは、スパッタリングガスは、窒素ガスであり、アルゴンガスや、アルゴンガスと窒素ガスとの混合ガスも供給できる。
<実施例2>
<薄膜製造方法>
次に、本発明の薄膜製造方法を説明する。
制御装置38には、位相測定動作とバイアス電圧測定動作との二種類の動作を行うことができるが、ここでは、先ず、位相測定動作で薄膜を製造する工程を本発明の第一例として説明する。
(1)本発明の第一例(位相測定動作)
[プラズマ形成工程]
真空槽20の内部を真空排気装置44によって真空排気し、真空槽20内が所定の圧力になった後、ガス供給装置43から真空槽内にスパッタリングガスを供給する。
各交流電源391〜393を起動して交流電圧を出力すると、各スパッタ源221〜223のバッキングプレート35を介して、ターゲット21にそれぞれ交流電圧が印加され、各ターゲット21の表面にスパッタリングガスのプラズマが発生し、ターゲット21のスパッタリングが開始される。
[ターゲット位相測定開始工程]
位相測定動作では、スパッタリングが開始されると、制御装置38は、電圧センサ531〜533によって繰り返し電圧を検出し、各スパッタ源221〜223のバッキングプレート35からターゲット21のターゲット位相の位相差を求めることを開始する。
[第一の成膜開始決定工程]
バッキングプレート35を介して検出される各スパッタ源221〜223のターゲット21の電圧の値は、電圧センサ531〜533によって検出され続け、制御装置38に出力されており、制御装置38は、位相差を繰り返し算出し、各ターゲット位相が同期したかどうかを判断する。
同期していないと判断した場合は、位相差が小さくなるように交流電源391〜393の電源位相を変化させ、各ターゲット位相が、予め制御装置38に設定された同期関係になったときに同期したものと判断し、真空槽20の内部に、キャリア40の配置面に配置された基板41を、キャリア40と共に搬入し、レール42上の走行を開始させる。
[薄膜成長工程]
キャリア40に配置された基板41は、一定速度で、各スパッタ源221〜223のターゲット21と順番に対面しながら、真空槽20内部を通過し、表面にターゲット材料の薄膜が形成される。
ここでは、各ターゲット21はLi3PO4の焼結体で構成されており、ターゲット21に対して対面する基板41の表面には、LiPONから成る固体電解質膜が形成される。
固体電解質膜が形成された基板41は、真空槽20から搬出され、次工程の装置内に移動する。
基板41表面への薄膜形成中に、他の基板が、他のキャリアに配置された状態で真空槽20の内部に搬入されており、複数の基板が次ぎ次ぎ各スパッタ源221〜223のターゲット21と対面しながら真空槽20の内部を通過し、各基板の表面に、固体電解質膜が形成されるようになっている。
ターゲット位相は同期していると、各ターゲット21上のプラズマに投入される電力は互いに等しくなっており、各ターゲット21が出力する電力の合計値は最大値になる。
[位相制御工程]
複数の基板表面に薄膜を形成する間にも、各ターゲット21の電圧は、電圧センサ531〜533によって、バッキングプレート35を介して検出されており、各スパッタ源221〜223のターゲット21のターゲット位相の位相差は、制御装置38によって求められており、制御装置38は、ターゲット21間の位相差が小さくなるように電源位相を制御して、位相差の同期関係を維持している。
[第一の制御停止工程]
一旦、位相差が、予め設定された同期関係になった後は、基板41の表面への薄膜形成中でも、電源位相の制御を停止することもできる。
この場合、電圧センサ531〜533と制御装置38とによるターゲット位相の測定を継続して行い、測定したターゲット位相の位相差が、予め制御装置38に設定された位相制御再開関係になると、制御装置38は、位相差が小さくなるように、各交流電源391〜393の電源位相を制御することを再開することができる。
[第一の制御再開工程]
各交流電源391〜393には、制御装置38が出力する位相制御信号が入力されており、各交流電源391〜393は、入力された位相制御信号の内容に応じた電源位相の交流電圧を出力するように構成されている。
従って、制御装置38は、所望の電源位相で、各交流電源391〜393から交流電圧を出力させることができるので、動作中の交流電源391〜393に出力した位相制御信号を記憶又は記録しておけば、メンテナンス作業等のために、一旦交流電源391〜393を停止させた後、再起動したときに、制御装置38から記憶又は記録された位相制御信号を出力して交流電源391〜393に入力させると、交流電源391〜393からは、位相制御信号が記憶又は記録されたときの電源位相で交流電圧が出力される。
配線等のインピーダンスに変化がなければ、記憶又は記録された位相制御信号が入力される交流電源391〜393からは、同期関係にあるときの、電源位相の交流電圧を出力させることができる。
また、位相制御信号を記憶又は記録したときとは配線のインピーダンスが異なっていた場合であっても、各交流電源391〜393には同期関係にあったときの位相制御信号が入力されるから、同期関係に近い電源位相の交流電圧が出力されており、従って、短時間で同期関係に戻ることができる。
位相制御信号を記憶又は記録しなくても、交流電源391〜393を再起動したときに、同期関係にあったときの電源位相で各交流電源391〜393を動作させることができればよい。
[他の構成]
なお、本発明では、電圧センサ531〜533と制御装置38内の測定装置54とが、ターゲット位相を測定していたが、ターゲット位相の位相差を求めることができれば、電圧センサ531〜533を用いることに限定されるものではない。
(2)本発明の第二例(バイアス電圧測定動作)
以上は、位相差の値に基づいて、電源位相を変化させたが、位相差を求めずに、電圧センサ531〜533によって、各ターゲット21のバイアス電圧をバッキングプレート35を介して測定し、バイアス電圧を増加させるように、電源位相を制御するバイアス電圧測定動作を行う本発明の第二例でも、均一なスパッタリングを行うことができる。
本発明の第二例を説明すると、先ず、上記プラズマ形成工程で説明したように、プラズマを形成する。
[バイアス電圧測定開始工程]
バイアス電圧測定動作では、各交流電源391〜393にそれぞれ接続された電圧センサ531〜533が動作を開始して、各スパッタ源221〜223のターゲット21の交流電圧を、バッキングプレート35を介して検出し、検出結果を制御装置38に出力すると、制御装置38は、各ターゲット21のバイアス電圧を求める。
[第二の成膜開始決定工程]
制御装置38は、各ターゲット21のバイアス電圧を継続して測定し、選択した交流電源391〜393の電源位相を変化させ、選択した交流電源391〜393が交流電圧を出力するターゲット21のバイアス電圧を増加させ、バイアス電圧値が制御装置38に予め設定された電圧一致関係になると、各バイアス電圧が等しくなったものとして、真空槽20内に、キャリア40の配置面に配置された基板41を、キャリア40と共に搬入し、レール42上の走行を開始させ、第一例と同様に、薄膜成長工程を行う。
[バイアス電圧制御工程]
複数の基板表面に固体電解質膜を形成する間にも、制御装置38によって、各ターゲット21のバイアス電圧は継続して測定し、制御装置38は、交流電源391〜393のうち、バイアス電圧値が最大のターゲットに接続された交流電源以外の交流電源を選択し、選択した交流電源のバイアス電圧値が増大するように、選択した交流電源の電源位相を変化させると、各ターゲット21のバイアス電圧の電圧一致関係は維持される。
[第二の制御停止工程]
一旦、各ターゲット21のバイアス電圧が電圧一致関係になった後は、基板41の表面への薄膜形成中でも、各交流電源391〜393の電源位相の制御を停止することもできる。
この場合、制御装置38は、電源位相の制御を停止しても、バイアス電圧は継続して求め、測定結果であるバイアス電圧値が、制御装置38に予め設定された電圧増加制御再開関係になったと制御装置38が判断すると、交流電源391〜393の中から一台を選択して電源位相を変更し、選択した交流電源391〜393が交流電圧を出力するターゲット21のバイアス電圧値を大きくする。
調整対象電源から一台の交流電源391〜393の選択と、最大値電源の変更を繰り返し行う。
[第二の制御再開工程]
また、一旦交流電源391〜393を停止し、プラズマを消滅させる場合には、上述した第一の制御再開工程のように、プラズマの形成中に、バイアス電圧が電圧一致関係にある状態での各交流電源391〜393に出力された位相制御信号の内容を記憶又は記録しておき、交流電源391〜393を停止してプラズマを消滅させた後、交流電源391〜393を再起動する際には、制御装置38から交流電源391〜393に記憶又は記録された位相制御信号を出力して、各交流電源391〜393から、記憶又は記録したときの電源位相で交流電圧を出力させるようにしてもよい。配線のインピーダンス変化が小さければ、電圧一致関係が再現できる。電圧一致関係が再現できなくても、電源位相の制御を開始することで、短時間で電圧一致関係にすることができる。
[その他]
なお、上記第一、第二の例では、固体電解質膜の製造に本発明を適用したが、本発明によって、固体電解質膜以外の薄膜を製造することも可能である。
上記スパッタリング装置2は、三個のスパッタ源221〜223を有していたが、2個以上のスパッタ源を有するスパッタリング装置は本発明に含まれる。
また、上記第一、第二例では位相制御信号を記憶又は記録して、同期関係又は電圧一致関係にあるときの電源位相の交流電圧を交流電源391〜393から出力させたが、交流電源391〜393が、動作停止後、再起動するときに、動作停止時の電源位相で交流電圧を出力することができれば、位相制御信号を記憶又は記録しておくことは不要である。
また、上記第一例では、ターゲット位相を求めてから位相差を求めたが、ターゲット位相を求めずに、各ターゲット間の位相差を求めることもできる。
また、上記第二例では、調整対象電源を順番に選択したが、ランダムに選択する場合や、他の規則に従って選択する場合も含まれる。
また、上記第一、第二例では、バッキングプレート35に電圧センサ531〜533を接続して、ターゲット21のターゲット位相、位相差、バイアス電圧を求めたが、ターゲット21のターゲット位相、位相差、バイアス電圧を小さい誤差で測定することができれば、バッキングプレート35に電圧センサ531〜533を接続しなくてもよい。
<実施例3>
上記のスパッタリング装置2の各ターゲット21に、Li3PO4の焼結体ターゲット110mm×1040mm×5tを用い、スパッタリングガスには、N2ガス23sccm、0.25Paを用い、各交流電源391〜393から、それぞれ2.5kW(13.56MHz)の交流電圧を出力し、あらかじめ下部電極膜(Pt/Ti)が形成された0.5mmtのガラス基板から成る基板41の表面に、LiPONから成る固体電解質膜を1μmの膜厚で形成した。
なお、それぞれのカソードの位置での膜質を確認するためにキャリア40を各ターゲット21と対面する位置で静止させて各ターゲット21をスパッタリングし、固体電解質膜を形成した。
各ターゲット21のバイアス電圧とターゲット位相は、バッキングプレート35を介して、電圧センサ531〜533で検出した電圧値から求めた。
各交流電源391〜393の電源位相を制御してバイアス電圧を電圧一致関係にして固体電解質膜を形成した本発明の実施例の電源位相とターゲット位相とバイアス電圧の値を表1に示す。
それに対し、電源位相を制御せずに、固定電解質膜を形成した比較例の値を、表2に示す。
Figure 0006004921
Figure 0006004921
実施例の表1では、3個のターゲット21のバイアス電圧が約366Vで一致しており(表は切り捨て)、電源位相は、中央のターゲット21のターゲット位相を0°として基準にすると、両側のターゲット21のうちの一方のターゲット21に接続された交流電源の電源位相は152.1°、他方のターゲット21に関する電源位相は−160.1°となった。
また、この時のカソードの近傍の位相であるターゲット位相は、同様に中央のターゲット21(カソード2)を0°とすると、一方のターゲット21(カソード1)のターゲット位相は−71.3°、他方のターゲット21(カソード3)のターゲット位相は−45.8°となった。
ターゲット21のバイアス電圧値は、ターゲット21の表面に近い位置で測定することが理想的であるが、電圧センサ531〜533の取り付けには空間的に制限があるため、ある程度の距離をおかなければならない。また、電圧一致関係にあるときの位相差は0°であることが理想であるが、本実験では、上記のように、中央のターゲット位相に対して、位相差は、−71.3°と−45.8°であり、電源停止後、スパッタリングを再開するときには、ターゲット位相がこの位相差になるように、電源位相を変化させておくと良い。
表2の比較例では、位相制御が無く、電源位相をほぼ0°に設定して出力電圧の電源位相を同期させたところ、ターゲット位相は、3個のターゲット21のうち、中央に位置するターゲット21のターゲット位相を0°として基準にすると、両側のターゲット21のうち、一方のターゲット21のターゲット位相が148.8°、他方のターゲット21のターゲット位相が152.5°となり、ターゲット位相は電源位相から大きく異なっており、ターゲット位相の間には位相差が生じていることが分かる。
この原因は、電源ケーブルの長さやブスバーの形状の違い、また、ターゲット21の掘れ量の違い等により生じたインピーダンスの差に起因すると考えられる。
また、この時のバイアス電圧の値は、253V、145V、312Vとなり、本願発明の実施例では、バイアス電圧値が揃っていることに対し、比較例では差を生じることになった。このようなバイアス電圧の大きな差は、成膜速度のバラツキを生じさせ、更に膜質を悪化させる原因になることが発明者の研究により判明している。
上記実施例と比較例で基板41の表面に固体電解質膜(ここではLiPON膜)を形成するときに、固体電解質膜のうち、ターゲット21の長手方向の上端部に対面していた部分と、中央部に対面していた部分と、下端部に対面していた部分をフーリエ変換赤外分光法(FT−IR)で測定した。
測定結果のFT−IRのスペクトルを図5〜図10に示す。
図5〜図7は、本発明の実施例のFT−IRのスペクトルであり、図8〜図10は、比較例のFT−IRのスペクトルである。各図は、横軸は波数、縦軸は強度のグラフである。
図5、図8は、上記一方のターゲット21と対面した部分、図6、図9は、上記中央のターゲット21と対面した部分、図7、図10は、上記他方のターゲット21と対面した部分であり、図5〜図10に於いて、(a)は上端部、(b)は中央部、(c)は下端部のFT−IRのスペクトルである。
網目構造を示すPO4(1030cm-1)及びP−O−P(933cm-1)のピークを観察すると、図5〜図7の本発明の実施例では、各ターゲット21の上端部、中央部、下端部のそれぞれの測定部分において、PO4(1030cm-1)及びP−O−P(933cm-1)の顕著なピークが現れていることが確認され、均一で良好な膜質が得られることが確認された。
また、これと同一条件でキャリアーを通過して行う成膜実験においてLiPON膜を成膜し、更にLiPON膜に上部(Pt)を形成してEIS測定をした結果、1.0〜1.5×10- Scm-1のイオン伝導率が得られた。
他方、図8〜図10の比較例では、PO4(1030cm-1)及びP−O−P(933cm-1)のピークは小さなものになっており、電源位相の制御をしない場合には良好な膜質が得られないことが分かる。
本発明は、スパッタリングによって薄膜を形成する技術に用いることができ、特に、同じ材料の複数のターゲットを一緒に交流スパッタする固体電解質膜、例えば、窒素置換リン酸リチウム(LiPON)膜の形成には、膜質と成膜速度とコスト低減の面から、有利に用いることができる。
2……スパッタリング装置
20……真空槽
21……ターゲット
38……制御装置
391〜393……交流電源
531〜533……電圧センサ

Claims (10)

  1. 真空槽と、
    前記真空槽内に配置された複数のターゲットと、
    各前記ターゲットに電気的にそれぞれ接続され交流電圧を出力する交流電源と、
    各前記ターゲットにそれぞれ印加される交流電圧を検出する電圧センサと、
    前記電圧センサの検出結果から、各前記ターゲットに印加される交流電圧のバイアス電圧の値であるバイアス電圧値を求める制御装置と、
    を有し、
    前記交流電源は、出力する前記交流電圧の位相である電源位相を所望の値に変更できるように構成され、
    前記制御装置は、前記バイアス電圧値を大きくするように、前記電源位相を変化させるスパッタリング装置。
  2. 前記制御装置は、最大のバイアス電圧値以外のバイアス電圧値の前記ターゲットに接続された前記交流電源の前記電源位相を変化させる請求項記載のスパッタリング装置。
  3. 前記ターゲットはLiを含有し、
    前記ターゲットのスパッタリングにより、成膜対象物の表面にLiを含有する固体電解質膜を形成する請求項1又は請求項のいずれか1項記載のスパッタリング装置。
  4. 真空槽内に配置された複数のターゲットにそれぞれ個別に接続された交流電源から交流電圧をそれぞれ出力させ、各前記ターゲット上にプラズマを形成して各前記ターゲットをスパッタリングして、成膜対象物の表面に薄膜を形成する薄膜製造方法であって、
    各前記ターゲットの電圧を検出してバイアス電圧の値であるバイアス電圧値をそれぞれ求め、
    前記バイアス電圧値が大きくなるように、前記交流電圧の位相である電源位相を変化させる薄膜製造方法。
  5. 前記電源位相を変化させる前記交流電源は、最大のバイアス電圧値以外のバイアス電圧値の前記ターゲットに接続された前記交流電源の中から選択する請求項記載の薄膜製造方法。
  6. 各前記ターゲットの前記バイアス電圧値が所定の電圧一致関係になったと判断した後、前記成膜対象物の表面への前記薄膜の形成を開始する請求項記載の薄膜製造方法。
  7. 前記成膜対象物の表面に前記薄膜を形成している間は、前記バイアス電圧値が大きくなるように、前記交流電源の前記電源位相を変化させる請求項記載の薄膜製造方法。
  8. 前記電圧一致関係になったと判断した後、前記電源位相の変化を停止する請求項記載の薄膜製造方法。
  9. 前記電源位相の変化を停止した後も、前記ターゲットの電圧を測定して前記バイアス電圧値を求め、
    求めた前記バイアス電圧値が所定の電圧増加制御再開関係になると、前記電源位相を変化させ、前記バイアス電圧値を大きくする請求項記載の薄膜製造方法。
  10. 前記電圧一致関係と判断された状態で、各前記交流電源の動作状態を記憶しておき、
    各前記交流電源を停止して前記プラズマを消滅させた後、各前記交流電源を起動し、各前記交流電源を記憶された前記動作状態で動作させ、各前記交流電源を前記電圧一致関係にする請求項乃至請求項のいずれか1項記載の薄膜製造方法。
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