JP6003620B2 - 転写判断装置及び転写判断プログラム - Google Patents

転写判断装置及び転写判断プログラム Download PDF

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本発明は、転写判断装置及び転写判断プログラムに関する。
特許文献1には、トナーとキャリアとからなる2成分現像剤を担持する現像剤担持体に対向する像担持体上に形成される潜像にトナーを付着させる現像プロセスのシミュレーション方法であって、前記現像剤担持体と前記像担持体との空間の一部又は全部を計算領域として3次元的に複数のセルに分割する計算領域分割工程と、前記複数のセルに基いて前記像担持体上に形成される潜像の電荷量を算出する潜像算出工程と、前記複数のセルによって形成される複数の節点における電位をそれぞれ算出する電位算出工程と、を備え、前記計算領域分割工程における前記複数のセルは前記現像剤担持体上にキャリアが担持された条件で形成されて、当該条件に基いて前記潜像算出工程及び前記電位算出工程における算出がおこなわれる構成が記載されている。
また、下記特許文献2には、電極を有する第1の基板上に帯電した粉体粒子を二層以上付着し、第1の基板上に粉体層を形成し、電極を有する第2の基板を、粉体層に接触しないように対置し、第1の基板と、第2の基板と、の間に空気層を設け、第1の基板と、第2の基板と、の基板間に電位差を設け、第1の基板上に付着した一部の粒子を、第2の基板上に移動させ、粉体間の付着力分布を求める粉体付着力測定方法が記載されている。
特開2005−338536 特開2005−291920
本発明の目的は、トナー粒子について運動方程式を解く必要が無く、転写領域においてトナー粒子の挙動を予測することができる転写判断装置及び転写判断プログラムを提供することにある。
上記目的を達成するために、請求項1記載の転写判断装置の発明は、被転写媒体を挟み、転写電圧を作用させて前記被転写媒体にトナーを転写する転写領域において、前記被転写媒体及びこれを挟む部材の形状、回転方向の各位置における空気層の厚さおよび転写電圧に基づいて電界計算を行い、画像保持体表面のトナー粒子に作用する電界強度を求める電界計算手段と、前記画像保持体表面の複数のトナー粒子の電荷量分布に基づき、トナー粒子をグループ化するグループ化手段と、前記各グループに属するトナー粒子の放電による電荷の変化を考慮した電荷量と前記電界計算手段が求めた前記各位置でトナー粒子に作用する電界強度と前記トナー粒子を前記画像保持体表面に留まらせる付着力とに基づき、画像保持体から被転写媒体へのトナー粒子の転写の可否を前記グループ毎に判断する転写可否判断手段と、を備える。
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記トナー粒子を前記画像保持体表面に留まらせる付着力は、前記トナー粒子と前記画像保持体との吸着力とトナー粒子同士の吸着力とトナー粒子と被転写媒体との間の吸着力との合成力であり、前記転写可否判断手段は、前記画像保持体表面に接触しているトナー層の厚さをDt1とし、トナー層全体の厚さから前記Dt1を減じた厚さをDt2としたときに、前記付着力を以下の式により求める。
付着力=(Dt1/(Dt1+Dt2))Fp+(Dt2/(Dt1+Dt2))Ft−F(b)
ただし、Fpは前記トナー粒子と前記画像保持体との吸着力、Ftはトナー粒子同士の吸着力、F(b)はトナー粒子と被転写媒体との間の吸着力である。
また、請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の発明において、前記グループ化手段は、前記画像保持体表面の複数のトナー粒子の電荷量分布に基づき、トナー粒子をグループ化する代わりに、前記画像保持体表面のトナー層を予め定めた厚さで複数層に分割してグループ化し前記転写可否判断手段は、予め求めた分割後の各層の平均電荷量と前記電界計算手段が求めた前記トナー粒子に作用する電界強度と前記トナー粒子を前記画像保持体表面に留まらせる付着力と前記分割後のトナー層間におけるトナー粒子同士の引力とに基づき、前記グループ毎に画像保持体から被転写媒体へのトナー粒子の転写の可否を判断する。
また、請求項4に記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の発明において、前記転写可否判断手段は、前記グループ毎の転写の可否の判断結果と、各グループに属するトナー粒子の数とに基づき、画像保持体から被転写媒体へのトナー粒子の転写率を演算する。
また、請求項5に記載の転写判断プログラムの発明は、コンピュータを、被転写媒体を挟み、転写電圧を作用させて前記被転写媒体にトナーを転写する転写領域において、前記被転写媒体及びこれを挟む部材の形状、回転方向の各位置における空気層の厚さおよび転写電圧に基づいて電界計算を行い、画像保持体表面のトナー粒子に作用する電界強度を求める電界計算手段、前記画像保持体表面の複数のトナー粒子の電荷量分布に基づき、トナー粒子をグループ化するグループ化手段、前記各グループに属するトナー粒子の放電による電荷の変化を考慮した電荷量と前記電界計算手段が求めた前記各位置でトナー粒子に作用する電界強度と前記トナー粒子を前記画像保持体表面に留まらせる付着力とに基づき、画像保持体から被転写媒体へのトナー粒子の転写の可否を判断する転写可否判断手段、として機能させる。
請求項1の発明によれば、トナー粒子について運動方程式を解く必要が無く、転写領域においてトナー粒子の挙動を予測することができる。
請求項2の発明によれば、トナー層の厚さに応じて重み付けを設定し、転写の可否をより正確に判断することができる。
請求項3の発明によれば、トナー層を複数層に分割し、層毎に転写の可否を判断することができる。
請求項4の発明によれば、簡易に転写率の予測を行うことができる。
請求項5の発明によれば、トナー粒子について運動方程式を解く必要が無く、転写領域においてトナー粒子の挙動を予測するプログラムを提供できる。
実施形態にかかる転写判断装置の判断対象である転写装置の概略構成の断面図である。 実施形態にかかる転写判断装置の構成例の機能ブロック図である。 実施形態にかかる演算空間における層構造の例を示す図である。 実施形態にかかる転写判断装置による、感光体ロールから被転写媒体へのトナー粒子の転写可否の判断処理の例を示す図である。 実施形態にかかる転写判断装置による、感光体ロールから被転写媒体へのトナー粒子の転写可否の判断処理の変形例を示す図である。 実施形態にかかる転写判断装置による、感光体ロールから被転写媒体へのトナー粒子の転写可否の判断処理の他の変形例を示す図である。 実施形態にかかる転写判断装置の動作例のフロー図である。
以下、本発明を実施するための形態(以下、実施形態という)を、図面に従って説明する。
図1には、実施形態にかかる転写判断装置の判断対象である転写装置の概略構成の断面図が示される。図1において、感光体ロール100(画像保持体の一例)とバイアス転写ロール(BTR)102との間に中間転写ベルトまたは紙媒体等の被転写媒体104が挟み込まれ、感光体ロール100が矢印R方向に回転して被転写媒体104が通過してゆく。この場合、感光体ロール100とバイアス転写ロール102との間に転写電圧を作用させて、感光体ロール100から被転写媒体104にトナー粒子を転写する転写領域が形成されている。図1では、転写領域が破線で囲まれた領域として示されている。なお、上記転写領域を通過する前の感光体ロール100の表面には、図示しない現像工程によりトナー層106が形成されている。
転写判断装置は、感光体ロール100とバイアス転写ロール102との間の領域を、感光体ロール100の回転軸Pを中心として予め定めた角度δ毎に分割した空間を設定し、電界計算により各部材(感光体ロール100、バイアス転写ロール102、被転写媒体104及びトナー層106)に作用する電界及び各部材からの放電電荷量等を求め、トナー粒子の転写の可否を解析する。上記角度δは、一定の角度であってもよいし、位置に応じて異ならせてもよい。解析方法の詳細は後述する。なお、図1では、感光体ロール100から被転写媒体104へトナー粒子が転写する場合を例示しているが、本実施形態は、中間転写ベルトから紙媒体等へトナー粒子が転写する場合にも適用できる。
図2には、本実施形態に係る転写判断装置の構成例の機能ブロック図が示される。図2において、転写判断装置は、電界計算部10、グループ化部12、転写可否判断部14及び記憶部16を含んで構成されている。なお、上記転写判断装置は、CPU、ROM、RAM、不揮発性メモリ、I/O等を備えており、各種演算を行うコンピュータにより構成されている。
図2において、電界計算部10は、被転写媒体104を挟み、転写電圧を作用させて被転写媒体104にトナーを転写する上記転写領域において、被転写媒体104及びこれを挟む部材である感光体ロール100とバイアス転写ロール102の形状、並びに感光体ロール100、バイアス転写ロール102及び被転写媒体104の間の空気層の厚さに基づいて電界計算を行い、感光体ロール100の表面に形成されたトナー層106のトナー粒子に作用する電界強度を求める。
上記電界計算においては、図1で説明した感光体ロール100の回転軸Pを中心として予め定めた角度δ毎に分割した空間(以後、演算空間という)において、感光体ロール100、バイアス転写ロール102及び被転写媒体104の形状に基づいて、各部材及びこれらの間の空気層を含んだ層構造を設定する。なお、上記角度δは、予め設定して記憶部16に格納しておく。
図3には、上記演算空間における層構造の例が示される。図3において、層構造は、感光体ロール100の感光体層C、感光体ロール100の表面に付着したトナー層T、被転写媒体104の層(被転写媒体層)M、バイアス転写ロール102の層(バイアス転写ロール層)Bが積層されており、感光体層Cとトナー層Tとの間には空気層A1が、トナー層Tと被転写媒体層Mとの間には空気層A2が、被転写媒体層Mとバイアス転写ロール層Bとの間には空気層A3がそれぞれ存在しており、被転写媒体104の進行方向Wの各位置において空気層の厚さが変化する。なお、図3の層構造は矩形に示されており、図1に示された演算空間とは異なるが、電界計算上結論が変わらないため、便宜上矩形で表現している。
図1に示された転写装置では、感光体ロール100、バイアス転写ロール102及び被転写媒体104の相互の表面の距離が、プロセス方向すなわち被転写媒体104が移動する方向であって図1に矢印Wで示された方向に被転写媒体104が移動する工程の間に変化する。このため、上記各空気層A1、A2、A3の厚さもプロセス方向の各位置で変化する。そこで、電界計算部10は、図3に示された層構造において、上記プロセス方向の各位置で空気層A1、A2、A3の厚さを変え、上記各部材(感光体ロール100、バイアス転写ロール102、被転写媒体104及びトナー層106)に作用する電界及び各部材からの放電電荷量等を上記プロセス方向の各位置において算出する。また、電界計算部10は、上記電界計算において算出したトナー層106における放電電荷量から、トナー層106の電荷の変化を算出し、トナー層106の電荷量を求める。なお、トナー層106を構成するトナー粒子は、画像形成プロセスにおける前工程により帯電されており、上記電荷の変化の演算には、この前工程によりトナー層106に付与された初期電荷の平均値を与える。
なお、上記電界計算は、上記プロセス方向について行う一次元電界計算処理であり、感光体ロール100、バイアス転写ロール102、被転写媒体104、トナー層106の体積抵抗率、比誘電率、図3に示された層構造における各層の厚さ、トナー層106の電荷密度、被転写媒体104の搬送速度、転写電圧に基づき、ガウスの法則、オームの法則、電荷保存則等を基礎式として、例えば特開2006−276247号に記載された公知の電界計算方法により行われる。なお、電界計算に使用する上記各データは、適宜な入力装置から入力してもよいし、予め記憶部16に記憶させておき、読み出して使用する構成としてもよい。また、体積抵抗率は、転写電圧への依存性があるので、各部材に作用する電界と体積抵抗率との関係をテーブルとして持ち(記憶部16に記憶させておき)、各部材に作用する分圧Vの変化を監視しつつ、このテーブルを参照して体積抵抗率を変更する構成が好適である。
また、上記グループ化部12は、感光体ロール100の表面に形成されたトナー層106の複数のトナー粒子の電荷分布に基づき、トナー粒子をグループ化する。この場合、グループ化部12は、電界計算部10が算出したトナー層106の放電量と予め実験等により求めた電荷量頻度分布とに基づき、トナー粒子の個々の電荷量を推定してグループ化を行う。上記電荷分布は、トナー粒子に帯電する電荷量の一定範囲毎のトナー粒子数の割合(頻度)として求められる。
また、上記転写可否判断部14は、上記グループ化部12が設定した各グループに属するトナー粒子の電荷量と上記電界計算部10が求めたトナー粒子に作用する電界強度と上記トナー粒子を感光体ロール100の表面に留まらせる付着力とに基づき、感光体ロール100の表面から被転写媒体104へのトナー粒子の転写の可否を判断する。この判断は、上記グループ毎に行われる。
また、上記記憶部16は、ハードディスク装置、ソリッドステートドライブ(SSD)等の不揮発性メモリにより構成され、上記各部材の形状(図3に示された各層の厚さ等)、各部材の比誘電率、導電率、トナー粒子の大きさ、帯電電荷量その他の電界計算に必要となるパラメータ、及びコンピュータを転写判断装置として機能させるプログラム等を格納している。なお、上記電界計算に必要となるパラメータは、固定的な値ではなく、適宜変更して電界計算に使用する。
図4(a)、(b)、(c)には、転写判断装置による、感光体ロール100から被転写媒体104へのトナー粒子の転写の可否の判断処理の例が示される。図4(a)において、感光体ロール100の表面にはトナー層106が付着しており、感光体ロール100と被転写媒体104との間には電界Eが作用している。上述したように、電界計算部10が電界計算を行い、トナー層106に生じている電荷qを求める。この場合の電荷qは、上記演算空間に存在するトナー層106の全体における平均値である。なお、図4(a)に示される電界Eは転写電圧により感光体ロール100と被転写媒体104との間に生じる電界であり、被転写媒体104から感光体ロール100の方向を向いている。また、放電Qは、被転写媒体104とトナー層106との間に生じる放電である。
次に、グループ化部12が、図4(b)に示されるように、トナー層106の電荷qの平均値(以後、平均電荷qという)と、図4(c)に示されるトナー層106中のトナー粒子の電荷量分布の実測値とにより、トナー粒子を一定の電荷量の範囲毎にグループに分ける。上記電荷量分布の実測値は、図4(c)に示されるように、トナー粒子の電荷量(横軸)と出現頻度(縦軸)との関係として予め求めておく。出現頻度は、各電荷量に帯電したトナー粒子の数を表している。なお、図4(c)のqは、上記平均電荷qである。
グループ化部12は、図4(c)の横軸に示される電荷量の値を一定範囲毎に分割してグループとする。また、各グループにおける電荷の出現頻度を重みとして当該範囲の電荷量の平均を求め、当該範囲(グループ)に属するトナー粒子の平均電荷量とする。なお、各グループに対応する電荷量の範囲の中央値を当該グループに属するトナー粒子の電荷量としてもよい。
図4(b)の左図の例では、グループが5個(q1、q2、q3、q4、q5)示されている。各グループを示す符号q1、q2、q3、q4、q5は、それぞれのグループに属するトナー粒子の電荷量を示している。なお、上記グループq1、q2、q3、q4、q5は、トナー層106における各グループの位置を示したものではなく、トナー粒子の電荷量の分布を示しており、各グループに属するトナー粒子は、トナー層106中にランダムに位置している。また、上記トナー粒子の帯電量はq1<q2<q3<q4<q5の順で多くなっている。
上記各グループに属するトナー粒子には、それぞれに帯電している電荷量に応じて電界Eにより感光体ロール100から被転写媒体104に向かう方向の力が作用する。その大きさFcnは、
Fcn=qn・E … (1)
と表せる。ただし、nはグループの番号(1〜5)であり、qnは各グループに属するトナー粒子の電荷量であり、Fcnは電界Eによって各グループに属するトナー粒子に作用する力である。
また、各グループに属するトナー粒子を感光体ロール100の表面に留まらせる付着力Fanは、
Fan=F(p)+F(t)−F(b) … (2)
と表せる。ただし、F(p)はトナー粒子と感光体ロール100との間の吸着力、F(t)はトナー粒子同士の吸着力、F(b)はトナー粒子と被転写媒体104との間の吸着力であり、nはグループの番号である。
ここで、
F(p)=Fm+Fv+Fl … (3)
と表せる。Fmはトナー粒子と感光体ロール100との間の鏡像力、Fvはトナー粒子と感光体ロール100との間のファン・デル・ワールス力、Flはトナー粒子と感光体ロール100に働く液架橋力である。
なお、上記鏡像力Fmは、
Fm=qn/16π・ε・d1 … (4)
となる。εは真空の誘電率であり、d1はトナー粒子と感光体ロール100との間の距離である。
また、ファン・デル・ワールス力Fvは、
Fv=A/6π・d1… (5)
となる。Aはファン・デル・ワールス係数である。
また、液架橋力Flは、
Fl=2π・σ・Dp・cosθ …(6)
となる。σは感光体ロール100の表面張力、Dpはトナー粒子の粒径、θは感光体ロール100の接触角である。なお、ここでの接触角は感光体ロール100の表面の濡れ性を示す指標であり、感光体ロール100の表面に液体(たとえば水)を置いたときの感光体ロール100の表面と液体の表面とがなす角度のことである。
また、F(t)=Fm+Fv+Fl … (7)
と表せる。Fmはトナー粒子間の鏡像力、Fvはトナー粒子間のファン・デル・ワールス力、Flはトナー粒子間に働く液架橋力である。
なお、上記鏡像力Fmは、
Fm=qn/16π・ε・d2 … (8)
となる。d2はトナー粒子間の距離である。
また、ファン・デル・ワールス力Fvは、
Fv=A/6π・d2… (9)
となる。
また、液架橋力Flは、
Fl=2π・σ・Dp・cosθ …(10)
となる。σはトナー粒子の表面張力、θはトナー粒子表面の濡れ性を示す指標である接触角である。
また、F(b) =Fm+Fv+Fl … (11)
と表せる。Fmはトナー粒子と被転写媒体104との間の鏡像力、Fvはトナー粒子と被転写媒体104との間のファン・デル・ワールス力、Flはトナー粒子と被転写媒体104に働く液架橋力である。
なお、上記鏡像力Fmは、
Fm=qn/16π・ε・d3 … (12)
となる。d3はトナー粒子と被転写媒体104との間の距離である。
また、ファン・デル・ワールス力Fvは、
Fv=A/6π・d3… (13)
となる。
また、液架橋力Flは、
Fl=2π・σ・Dp・cosθ …(14)
となる。σは被転写媒体104の表面張力、Dpはトナー粒子の粒径、θは被転写媒体104の表面の濡れ性を示す指標である接触角である。
転写可否判断部14は、トナー粒子に作用する上記電界Eによる力Fcnと付着力Fanとの大小関係により、感光体ロール100から被転写媒体104への転写の可否を判断する。すなわち、Fcn>Fanが成立するグループに属するトナー粒子は被転写媒体104へ転写し、成立しない(Fcn=FanまたはFcn<Fan)グループに属するトナー粒子は被転写媒体104へ転写しないと判断する。
以上に述べた転写可否判断部14の判断の結果、図4(b)の右図に示されるように、各グループに属するトナー粒子の転写の可否が決定される。図4(b)の例では、電荷量の小さいグループであるq1、q2は電界Eに基づく力Fcnが付着力Fanより小さい(Fcn<Fan)ので被転写媒体104へ転写できず、電荷量の大きいグループであるq3、q4、q5はFcnがFanより大きい(Fcn>Fan)ので被転写媒体104へ転写できると判断されている。
なお、上述したように、トナー層106の電荷量分布は図4(c)のように表されるので、図4(c)の横軸に示される電荷量の一定範囲(グループ)毎に図4(c)の縦軸に示される頻度(トナー粒子数)を積分すれば、当該グループに属するトナー粒子数が与えられる。そこで、転写可否判断部14は、上記グループ毎の転写の可否の判断結果と、各グループに属するトナー粒子数とに基づき、感光体ロール100から被転写媒体104へのトナー粒子の転写率を演算することもできる。なお、転写率とは、上記演算空間において、感光体ロール100の表面のトナー層106に含まれるトナー粒子の内被転写媒体104へ転写したトナー粒子の数の割合をいう。
図5には、転写可否判断部14が行う転写可否の判断方法の変形例が示される。図5の例では、上記付着力Fanを感光体ロール100との付着力とトナー粒子同士の付着力とに分類し、トナー層106の厚さから決まる係数を設定して付着力Fanを求める。
すなわち、トナー粒子を上記感光体ロール100の表面に留まらせる付着力Fanは、上記トナー粒子と上記感光体ロール100との吸着力とトナー粒子同士の吸着力との合成力であり、上記転写可否判断部14は、上記感光体ロール100の表面に接触しているトナー層の厚さをDt1とし、トナー層全体の厚さDtから上記Dt1を減じた厚さをDt2としたときに、上記付着力Fanを、上記式(2)の代わりに、以下の重み付きの式(5)により求める。
Fan=(Dt1/(Dt1+Dt2))F(p)+(Dt2/(Dt1+Dt2))F(t)
−F(b) … (15)
ただし、F(p)は上記トナー粒子と上記感光体ロール100との吸着力、F(t)はトナー粒子同士の吸着力、F(b)はトナー粒子と被転写媒体104との間の吸着力であり、それぞれ式(3)、(7)、(11)により求められる。なお、上記トナー層の厚さDt1は、トナー粒子の粒径に基づき予め決定しておく。
また、上記トナー層の厚さに基づく係数Dt1/(Dt1+Dt2)及びDt2/(Dt1+Dt2)の他に、他の要因(必ずしも個別には明らかにならない要因も含む)も考慮した重み付け係数β、γを使用し、
Fan=β(Dt1/(Dt1+Dt2))Fp+γ(Dt2/(Dt1+Dt2))Ft−F(b) … (16)
としてもよい。
本変形例において転写可否判断部14は、上記係数を含む式(15)または(16)から求めたFanと式(1)で求めたFcn(=qn・E)との大小比較に基づき感光体ロール100から被転写媒体104への転写の可否を判断する。なお、本変形例においては、トナー粒子の電荷量は図4(c)の分布に基づいて求めてもよいし、上記平均電荷qを使用してもよい。
図6には、転写可否判断部14が行う転写可否の判断方法の他の変形例が示される。本変形例では、グループ化部12が感光体ロール100の表面に形成されたトナー層106を、予め定めた厚さで複数層に分割し、転写可否判断部14が上記トナー粒子の電荷量と上記電界計算部10が求めたトナー粒子に作用する電界強度Eと上記トナー粒子を上記感光体ロール100の表面に留まらせる付着力Fanとに基づき、各層毎に感光体から被転写媒体へのトナー粒子の転写の可否を判断する。なお、本変形例においては、トナー粒子の電荷量は図4(c)の分布に基づいて上記グループ毎に求めてもよいし、分割後の各層についての上記平均電荷qを使用してもよい。
図6の例では、トナー層106が2層に分割されており、第1層目が感光体ロール100側の層、第2層目が感光体ロール100から遠い側の層となっている。なお、分割数は2層に限定されず、任意の数に分割することができる。
図6において、転写可否判断部14は、まず第2層目について転写の可否を判断する。この場合、第2層目は感光体ロール100の表面に接触しておらず、トナー粒子同士の引力F(t)が第2層目の付着力Fa2の主たる要素となる。次に、第1層目について転写の可否を判断する。この場合、第1層目は感光体ロール100の表面に接触しており、トナー粒子と感光体ロール100との間の引力F(p)が第1層目の付着力Fa1の主たる要素となる。なお、本例においても、グループ化部12によりトナー層を電荷量に基づいてグループに分けて解析してもよい。
また、第1層目及び第2層目に存在している電荷により第1層目及び第2層目に作用する電界の大きさが一定値Eでは無く、それぞれ異なる値E1、E2となっているので、式(1)に上記電界E1、E2を使用して第1層目及び第2層目に作用する被転写媒体104に向かう方向の力Fc1、Fc2を算出するのが好適である。
すなわち、Fc1=qn・E1 Fc2=qn・E2 … (17)
となる。
ここで、転写可否判断部14は、Fc1とFa1、Fc2とFa2の大小関係から第1層目及び第2層目のトナー粒子の転写の可否を判断する。
図7には、本実施形態にかかる転写判断装置の動作例のフロー図が示される。図7において、電界計算部10は、被転写媒体104を挟み、転写電圧を作用させて被転写媒体104にトナーを転写する転写領域において、被転写媒体104及びこれを挟む部材である感光体ロール100とバイアス転写ロール102の形状、並びに感光体ロール100、バイアス転写ロール102及び被転写媒体104の間の空気層の厚さに基づいて、被転写媒体104が移動するプロセス方向について上述した電界計算を行い、感光体ロール100の表面に形成されたトナー層106のトナー粒子に作用する電界強度Eを求める(S1)。
次に、グループ化部12は、感光体ロール100の表面に形成されたトナー層106の複数のトナー粒子について、予め実験等により求めた電荷分布によりトナー粒子の個々の電荷量を推定し、これにより求めたトナー粒子の電荷分布に基づいてトナー粒子をグループ化する(S2)。
次に、転写可否判断部14は、上記グループ化部12が設定した各グループに属するトナー粒子の電荷量と上記電界計算部10が求めたトナー粒子に作用する電界強度Eから式(1)により求まる、感光体ロール100から被転写媒体104に向かう方向の力Fcnと、上記トナー粒子を感光体ロール100の表面に留まらせる付着力Fanとの大小関係に基づき、感光体ロール100の表面から被転写媒体104へのトナー粒子の転写の可否を判断する(S3)。上述したように、この判断はグループ毎に行われる。
転写可否判断部14は、さらに上記転写の可否と図4(c)に示される頻度(トナー粒子数)とに基づき、感光体ロール100から被転写媒体104へのトナー粒子の転写率を演算する(S4)。
以上により、感光体ロール100から被転写媒体104へのトナー粒子の転写の可否及び転写率が求まる。
上述した、図7の各ステップを実行するためのプログラムは、記録媒体に格納することも可能であり、また、そのプログラムを通信手段によって提供しても良い。その場合、例えば、上記説明したプログラムについて、「プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体」の発明または「データ信号」の発明として捉えても良い。
10 電界計算部、12 グループ化部、14 転写可否判断部、16 記憶部、100 感光体ロール、102 バイアス転写ロール、104 被転写媒体、106 トナー層。

Claims (5)

  1. 被転写媒体を挟み、転写電圧を作用させて前記被転写媒体にトナーを転写する転写領域において、前記被転写媒体及びこれを挟む部材の形状、回転方向の各位置における空気層の厚さおよび転写電圧に基づいて電界計算を行い、画像保持体表面のトナー粒子に作用する電界強度を求める電界計算手段と、
    前記画像保持体表面の複数のトナー粒子の電荷量分布に基づき、トナー粒子をグループ化するグループ化手段と、
    前記各グループに属するトナー粒子の放電による電荷の変化を考慮した電荷量と前記電界計算手段が求めた前記各位置でトナー粒子に作用する電界強度と前記トナー粒子を前記画像保持体表面に留まらせる付着力とに基づき、画像保持体から被転写媒体へのトナー粒子の転写の可否を前記グループ毎に判断する転写可否判断手段と、
    を備える転写判断装置。
  2. 前記トナー粒子を前記画像保持体表面に留まらせる付着力は、前記トナー粒子と前記画像保持体との吸着力とトナー粒子同士の吸着力とトナー粒子と被転写媒体との間の吸着力との合成力であり、前記転写可否判断手段は、前記画像保持体表面に接触しているトナー層の厚さをDt1とし、トナー層全体の厚さから前記Dt1を減じた厚さをDt2としたときに、前記付着力を以下の式により求める請求項1に記載の転写判断装置。
    付着力=(Dt1/(Dt1+Dt2))Fp+(Dt2/(Dt1+Dt2))Ft−F(b)
    ただし、Fpは前記トナー粒子と前記画像保持体との吸着力、Ftはトナー粒子同士の吸着力、F(b)はトナー粒子と被転写媒体との間の吸着力である。
  3. 前記グループ化手段は、前記画像保持体表面の複数のトナー粒子の電荷量分布に基づき、トナー粒子をグループ化する代わりに、前記画像保持体表面のトナー層を予め定めた厚さで複数層に分割してグループ化し前記転写可否判断手段は、予め求めた分割後の各層の平均電荷量と前記電界計算手段が求めた前記トナー粒子に作用する電界強度と前記トナー粒子を前記画像保持体表面に留まらせる付着力と前記分割後のトナー層間におけるトナー粒子同士の引力とに基づき、前記グループ毎に画像保持体から被転写媒体へのトナー粒子の転写の可否を判断する請求項1または請求項2に記載の転写判断装置。
  4. 前記転写可否判断手段は、前記グループ毎の転写の可否の判断結果と、各グループに属するトナー粒子の数とに基づき、画像保持体から被転写媒体へのトナー粒子の転写率を演算する請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の転写判断装置。
  5. コンピュータを、
    被転写媒体を挟み、転写電圧を作用させて前記被転写媒体にトナーを転写する転写領域において、前記被転写媒体及びこれを挟む部材の形状、回転方向の各位置における空気層の厚さおよび転写電圧に基づいて電界計算を行い、画像保持体表面のトナー粒子に作用する電界強度を求める電界計算手段、
    前記画像保持体表面の複数のトナー粒子の電荷量分布に基づき、トナー粒子をグループ化するグループ化手段、
    前記各グループに属するトナー粒子の放電による電荷の変化を考慮した電荷量と前記電界計算手段が求めた前記各位置でトナー粒子に作用する電界強度と前記トナー粒子を前記画像保持体表面に留まらせる付着力とに基づき、画像保持体から被転写媒体へのトナー粒子の転写の可否を判断する転写可否判断手段、
    として機能させる転写判断プログラム。
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