本発明の実施の形態について、図面を参照しながら以下に説明する。図1〜図3は、それぞれ、本発明の透明導電性フィルムの実施形態を模式的に表す断面図である。図1〜図3の透明導電性フィルム100において、透明フィルム基材1の片面に、誘電体層2を介して、透明導電層3が形成されている。誘電体層2は、透明フィルム基材1側から、第1の誘電体層21と第2の誘電体層22の2層により形成されている。図2および図3の実施形態において、透明導電性フィルム100は、第2の誘電体層22上に透明導電層3が形成されているパターン部Pと、透明導電層3が形成されていないパターン開口部Oを有する。また、図3の実施形態においては、第2の誘電体層22も透明導電層と同様にパターン部Pとパターン開口部Oとにパターン化されている。
透明フィルム基材1としては、特に制限されないが、透明性を有する各種のプラスチックフィルムが用いられる。例えば、その材料として、ポリエステル系樹脂、アセテート系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂等が挙げられる。これらの中で特に好ましいのは、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリオレフィン系樹脂である。
図1の実施形態の透明導電性フィルムが、図2や図3の実施形態のように、パターン部Pとパターン開口部Oとのパターン化された場合において、パターン部Pとパターン開口部Oとの間の反射率差をより効果的に低減する観点から、透明フィルム基材1の屈折率は、1.45以上であることが好ましく、1.50〜1.70であることがより好ましく、1.55〜1.70であることがさらに好ましく、1.60〜1.70であることが特に好ましい。屈折率を上記範囲とする観点から、透明フィルム基材1の材料としては、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂が好適に用いられる。
透明フィルム基材1の厚みは、2〜200μmの範囲内であることが好ましく、2〜100μmの範囲内であることがより好ましい。透明フィルム基材1の厚みが2μm未満であると、透明フィルム基材1の機械的強度が不足し、フィルム基材をロール状にして誘電体層2、透明導電層3を連続的に形成する操作が困難になる場合がある。一方、厚みが200μmを超えると、透明導電層3の耐擦傷性やタッチパネル用としての打点特性の向上が図れない場合がある。
透明フィルム基材1には、表面に予めスパッタリング、コロナ放電、火炎、紫外線照射、電子線照射、化成、酸化などのエッチング処理や下塗り処理を施して、フィルム基材上に形成される第1の誘電体層21との密着性を向上させるようにしてもよい。また、誘電体層を形成する前に、必要に応じて溶剤洗浄や超音波洗浄などにより、フィルム基材表面を除塵、清浄化してもよい。
誘電体層21および22は、透明フィルム基材1と透明導電層3の間に設けられるものであり、導電層としての機能を有さないものである。即ち、誘電体層は、透明導電層3の隣接するパターン部P,P間の絶縁性を確保する機能を有する。従って、誘電体層21および22は、表面抵抗が、例えば1×106Ω/□以上であり、好ましくは1×107Ω/□以上、さらに好ましくは1×108Ω/□以上である。なお、誘電体層の表面抵抗の上限は特にない。一般的には、誘電体層の表面抵抗の上限は測定限界である1×1013Ω/□程度であるが、1×1013Ω/□を超えるものであってもよい。
誘電体層の材料としては、NaF(1.3)、Na3AlF6(1.35)、LiF(1.36)、MgF2(1.38)、CaF2(1.4)、BaF2(1.3)、BaF2(1.3)、SiO2(1.46)、LaF3(1.55)、CeF(1.63)、Al2O3(1.63)などの無機物〔( )内の数値は屈折率を示す〕や、屈折率が1.4〜1.6程度のアクリル樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、シロキサン系ポリマー、有機シラン縮合物などの有機物、あるいは上記無機物と上記有機物の混合物が挙げられる。
上記材料の中でも、第1の誘電体層21の材料は、有機物であるか、または有機物と無機物との混合物が好適に用いられる。特に、有機物として、メラミン樹脂とアルキド樹脂と有機シラン縮合物の混合物からなる熱硬化型樹脂を使用するのが望ましい。第1の誘電体層21が有機物であれば、透明導電層3および第2の誘電体層22をエッチングによりパターン化する際に、第1の誘電体層21がエッチングによってパターン化されないようにすることが可能であるため、図3に示すような形態も容易に実施し得る。
第2の誘電体層22の材料は、無機物であるか、または有機物と無機物との混合物であることが好ましい。無機物として、SiO2、MgF2、Al2O3などが好ましく、中でも、SiO2が好ましい。第2の誘電体層22が無機物であれば、エッチングによりパターン化が可能であるため、図3に示すような形態も容易に実施し得る。
第1の誘電体層21および第2の誘電体層22は、上記の材料を用いて、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等のドライコーティング法、およびウェットコーティング法(塗工法)等により製膜できる。中でも、第1の誘電体層21は、ウェットコーティング法により製膜されることが好ましい。透明フィルム基材は、一般にフィルム中のフィラー等の存在に起因して、その表面に凹凸を有しているが、第1の誘電体層21がウェットコーティング法により製膜されると、基材の表面凹凸が緩和された均一な膜が形成されやすい。そのため、誘電体層2の表面も平滑化され、その上に形成される透明導電層3の膜質を良好とすることができる。また、例えば、透明導電層3として酸化錫を含有する酸化インジウム(ITO)を形成する場合、下地層である誘電体層2の表面が平滑であると、透明導電層の結晶化時間を短縮することもできる。かかる観点からは、第2の誘電体層22もウェットコーティング法により製膜されることが好ましい。
また、第1の誘電体層21がウェットコーティング法により製膜されることで、透明フィルム基材1からのオリゴマーの析出も抑制され得る。一般にポリマーを加熱すると、解重合反応により生じたオリゴマーがフィルム表面に析出する場合があるが、特にポリエステル等の縮合ポリマーではその傾向が顕著である。そして、透明導電層3の製膜時やアニール(結晶化)時の加熱により、フィルム基材からオリゴマーが析出し、これが透明導電層3の結晶化を阻害したり、透明導電性フィルムの視認性に悪影響を与える場合がある。これに対して、透明フィルム基材1上の誘電体層21がウェットコーティングにより製膜されている場合は、これがオリゴマー封止層としても作用し得るために、上記のようなオリゴマー析出による悪影響の発生を抑止し得る。
また、透明フィルム基材1からのオリゴマーの析出を抑止する観点からは、第1の誘電体層21の厚みd21は、8nm以上であることが好ましく、10nm以上であることがより好ましく、15nm以上であることがさらに好ましい。
また、第1の誘電体層21の厚みd21は、第2の誘電体層22の厚みd22よりも大きいことが好ましい。第1の誘電体層の厚みを第2の誘電体層の厚みよりも大きくすることで、パターン部Pとパターン開口部Pの可視光領域における反射スペクトル形状の相違が小さくなり、両者の色相の差が小さくなるため、パターンが視認され難くなる。さらには、第1の誘電体層21の厚みd21は、8nm〜40nmであることが好ましく、10nm〜35nmであることがより好ましく、15nm〜35nmであることがさらに好ましい。また、第2の誘電体層22の厚みd22は、3nm〜25nmであることが好ましく、5nm〜20nmであることがより好ましく、5nm〜15nmであることがさらに好ましい。各層の厚みが前記範囲内であれば、透明性を確保できる上、透明導電層3がパターン部Pとパターン開口部Oとにパターン化された場合であっても、両者の反射率差が効果的に低減され、視認性に優れる透明導電性フィルムとすることができる。さらに、本発明においては、透明導電層3のパターン部Pとパターン開口部Oとの視認性の差異を小さくするために、第1の誘電体層21の厚みd21と第2の誘電体層22の厚みd22との差d21−d22を小さくすることが重要である。かかる観点から、本発明の透明導電性フィルムでは、上記厚みの差d21−d22は3nm〜30nmであり、好ましくは5nm〜30nmである。
なお、本明細書において、「反射率」とは、特に断りのない限り、可視光(波長380〜780nm)の領域において5nm間隔で測定した反射率の平均値を表す。また、「色相」とは、JIS Z8729に規定されているL*a*b*表色系における、L*値、a*値、b*のことであり、「色差」とは、L*の差ΔL*、a*の差Δa*、およびb*の差Δb*を用いて、
ΔE={(ΔL*)2+(Δa*)2+(Δb*)2}0.5
で表される値のことである。
本発明の透明導電フィルムは、透明導電層3がパターン化された場合において、パターン部に白色光を照射した際の反射光と、パターン開口部の直下に白色光を照射した際の反射光との反射率差ΔRが1%以下であることが好ましい。また、パターン部の反射光とパターン開口部の直下の反射光の色差ΔEは、6.7以下であることが好ましい。
透明導電層3がパターン化された場合において、パターン部とパターン開口部との反射率をさらに抑制する観点からは、第1の誘電体層21の屈折率n21が、第2の誘電体層22の屈折率n22よりも大きいことが好ましい。さらには、第1の誘電体層21の屈折率n21は、1.5〜1.7であることが好ましく、1.5〜1.65であることがより好ましく、1.5〜1.6であることがさらに好ましい。また、第2の誘電体層22の屈折率n22は、1.4〜1.5であること好ましく、1.41〜1.49であることがより好ましく、1.42〜1.48であることがさらに好ましい。
また、透明導電層3がパターン化された場合において、パターン部とパターン開口部との反射率差を抑制することに加えて、両者の色相の差を抑制する観点からは、第1の誘電体層21と第2の誘電体層22との屈折率の大小関係のみならず、透明フィルム基材1および透明導電層3の屈折率の大小関係も制御されていることが好ましい。すなわち、透明フィルム基材の屈折率n1、第1の誘電体層の屈折率n21、第2の誘電体層の屈折率n22、および透明導電層3の屈折率n3は、n22<n21<n1<n3を満たすことが好ましい。さらには、透明導電層3の屈折率n3と第2の誘電体層の屈折率n22との差n3−n22は、0.1以上であることが好ましい。n3−n22は、0.1〜0.9であることがより好ましく、0.2〜0.8であることがさらに好ましい。
一般に、透明導電層は金属酸化物から形成されるために、屈折率が高く、表面での反射率が高い。一方、透明導電層3がパターン化された場合のパターン開口部直下の誘電体層は透明導電層に比して屈折率が低く、表面での反射率が低い。そのため、パターン部Pとパターン開口部Oとの間に、反射率差が生じて、パターンが視認され易くなる傾向がある。これに対して、本発明では、透明フィルム基材1と透明導電層3との間に屈折率の異なる2層の誘電体層を設け、さらにその厚みや屈折率を上記範囲に調整することで、界面多重反射により、透明導電層表面での反射光を干渉により打ち消して、パターン部Pでの反射率が低減される。そのため、パターン部Pとパターン開口部Oとの、反射率差が低減され、パターンが視認され難くなる。
また、第2の誘電体層に比して第1の誘電体層の屈折率を大きくすることで、反射率差が低減されることに加えて、パターン化部とパターン開口部とのスペクトル形状の相違も小さくなる傾向がある。さらに、パターン部Pとパターン開口部Oとの反射率差を低減する観点においては、図3に示すようにパターン開口部において、第2の誘電体層22が、透明導電層3と同様にパターン化されていることが好ましい。第1の誘電体層21は第2の誘電体層22に比して屈折率が大きく、表面での反射率が大きいため、第2の誘電体層がパターン化されて第1の誘電体層が露出している場合には、パターン開口部における反射が大きくなり、パターン部との反射率差がより低減される。
透明導電層3としては、前述の通り、第2の誘電体層よりも屈折率が大きいものが好適に用いられる。透明導電層3の屈折率n3は、通常、1.95〜2.05程度である。
前記透明導電層3の構成材料は特に限定されず、インジウム、スズ、亜鉛、ガリウム、アンチモン、チタン、珪素、ジルコニウム、マグネシウム、アルミニウム、金、銀、銅、パラジウム、タングステンからなる群より選択される少なくとも1種の金属の金属酸化物が好適に用いられる。当該金属酸化物には、必要に応じて、さらに上記群に示された金属原子を含んでいてもよい。例えば酸化スズを含有する酸化インジウム(ITO)、アンチモンを含有する酸化スズ(ATO)などが好ましく用いられる。
透明導電層3の厚みは特に制限されないが、その表面抵抗を1×103Ω/□以下の良好な導電性を有する連続被膜とするには、厚みを10nm以上とするのが好ましい。膜厚が、厚くなりすぎると透明性の低下などをきたすため、15〜35nmであることが好ましく、より好ましくは20〜30nmの範囲内である。透明導電層の厚みが15nm未満であると膜表面の電気抵抗が高くなり、かつ連続被膜になり難くなる。また、透明導電層の厚みが35nmを超えると透明性の低下などをきたす場合がある。
透明導電層3の形成方法は特に限定されず、従来公知の方法を採用することができる。具体的には、例えば真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法を例示できる。また、必要とする膜厚に応じて適宜の方法を採用することもできる。なお、透明導電層3を形成した後、必要に応じて、加熱アニール処理を施して結晶化することができる。
なお、エッチングにより透明導電層3をパターン化する場合、先に透明導電層3の結晶化を行うと、エッチングが困難となる場合がある。そのため、透明導電層3のアニール処理は、透明導電層3をパターン化した後に行うことが好ましい。さらに第2の誘電体層22をもエッチングによりパターン化する場合には、透明導電層3および誘電体層22をエッチングした後に透明導電層3のアニール処理を行うことが好ましい。
本発明の透明導電性フィルムにおいて、第1の誘電体層21と第2の誘電体層22の光学厚みの合計は、10〜120nmであることが好ましく、15〜100nmであることがより好ましく、20〜80nmであることがさらに好ましい。また、第1の誘電体層21、第2の誘電体層22、および透明導電層3の光学厚みの合計は、45nm〜155nmであることが好ましく、50nm〜140nmであることがより好ましく、55nm〜130nmであることがさらに好ましい。なお、光学厚みは、屈折率と厚みの積で表される。
また、図2または図3に示すように、透明導電層3がパターン化される場合において、パターン部Pとパターン開口部Oとの反射率差を低減する観点から、パターン部の光学厚みの合計とパターン開口部の光学厚みの合計との差は、35nm〜90nmであることが好ましく、40nm〜80nmであることがより好ましく、25nm〜70nmであることがさらに好ましい。
透明導電層3および第2の誘電体層22は、透明導電性フィルムが適用される用途に応じて、各種のパターン形状にパターン化することができる。パターン形状としては、例えば、各パターン部Pが短冊状に形成され、パターン部Pとパターン開口部Oとがストライプ状に配置された形態が挙げられる。図4は、本発明の透明導電性フィルム100の模式的平面図であり、透明導電層がストライプ状にパターン化された形態の一例である。なお、図4では、パターン部Pの幅がパターン開口部Oの幅より大きく図示されているが、本発明は、かかる形態に制限されるものではない。
本発明の透明導電性フィルムは、透明フィルム基材1の片面または両面に、誘電体層21、22および透明導電層3が上記のように積層されるものであれば、その製造方法は特に制限されない。例えば、常法に従って、透明フィルム基材の片面または両面に、透明フィルム基材1側から誘電体層21および22を介して、透明導電層3を有する透明導電性フィルムを作製した後に、必要に応じて透明導電層3および第2の誘電体層22を、エッチングしてパターン化することにより製造することができる。エッチングに際しては、パターンを形成するためのマスクによりパターン部Pを覆って、エッチング液により、透明導電層3および第2の誘電体層22をエッチングする方法が好適に用いられる。
透明導電層3としては、酸化スズを含有する酸化インジウム、アンチモンを含有する酸化スズが好適に用いられるため、エッチング液としては、酸が好適に用いられる。酸としては、例えば、塩化水素、臭化水素、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸、酢酸等の有機酸、およびこれらの混合物、ならびにそれらの水溶液があげられる。
また、第2の誘電体層22を透明導電層3と同様にエッチングによりパターン化する場合、透明導電層3をエッチングした場合と同様のマスクによりパターン部Pを覆って、エッチング液により、第2の誘電体層22をエッチングすることが好ましい。第2の誘電体層22としては、前述通り、SiO2等の無機物が好適に用いられるため、エッチング液としては、アルカリが好適に用いられる。アルカリとしては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、水酸化テトラメチルアンモニウム等の水溶液、およびこれらの混合物があげられる。なお、第2の誘電体層をエッチングによりパターン化する場合、前述のごとく、第1の誘電体層21は、酸またはアルカリによって、エッチングされないような有機物により形成するのが好ましい。
以下、本発明の透明導電性フィルムの変形例および積層形態について、図面を参照して説明する。なお、図5〜図12においては、簡単のために、誘電体層が1つの層2として図示されているが、これらはいずれも透明フィルム基材1側から第1の誘電体層および第2の誘電体層を有している。
図5は、透明フィルム基材1の両側に透明導電層3が形成されている実施形態を示す断面図である。図5の透明導電性フィルム110は、透明フィルム基材1の両面に、誘電体層2を介して透明導電層3が形成されている。なお、図5では、図2と同様に透明導電層3のみがパターン化されている形態が図示されているが、図1のように透明導電層3がパターン化されていない形態や、図3のように第2の誘電体層22が透明導電層3と同様にパターン化されている形態も採用し得る。また、図5では、透明フィルム基材1の両側にパターン化された透明導電層3を有するが、片側の透明導電層3のみがパターン化されていてもよい。その他、透明フィルム基材の片側は透明導電層と第2の誘電体層とがパターン化されており、反対側は透明導電層のみがバターン化されている形態も採用し得る。透明導電層3を2層以上有する図6〜図9および図11の実施形態においても同様である。
また、図5では、透明フィルム基材1の両側の透明導電層3のパターン部とパターン開口部とが一致しているが、これらは一致していなくてもよく、各種の態様にて透明フィルム基材の両側で適宜にパターン化された形態をも採用し得る。透明導電層3を2層以上有する図6〜図9および図11の実施形態においても同様である。
図6〜図9も、本発明の透明導電性フィルムの一例を示す断面図である。図6〜図9の透明導電性フィルムは、図2または図5で示す透明導電性フィルム100が、透明な粘着剤層4を介して2枚積層された形態を表している。図6〜図9の形態において、積層して得られる透明導電性フィルム151〜154は、少なくとも片面にパターン化された透明導電層3が配置されるように積層されていることが好ましい。
図6および図7では、図2の透明導電性フィルム100の2枚が透明な粘着剤層4を介して積層されている。図6の透明導電性フィルム151は、図2の透明導電性フィルム101の透明フィルム基材1に、他の透明導電性フィルム102の透明導電層3が、透明な粘着剤層4を介して積層された形態である。図7の透明導電性フィルム152は、図2に示す透明導電性フィルム101および102の透明フィルム基材1同士が、透明な粘着剤層4を介して積層された形態である。
図8および図9では、図2の透明導電性フィルム100と図5の透明導電性フィルム110とが、透明な粘着剤層4を介して積層されている。図8の透明導電性フィルム153は、図2の透明導電性フィルム100の透明導電層3と図5の透明導電性フィルム110の片面の透明導電層3とが透明な粘着剤層4を介して積層された形態である。図9の透明導電性フィルム154は、図2の透明導電性フィルム100の透明フィルム基材1と図5の透明導電性フィルム110の片面の透明導電層3とが透明な粘着剤層4を介して積層された形態である。
図6〜図9では、図2および/または図5の透明導電性フィルムが、透明な粘着剤層4を介して2枚積層されている場合が例示されているが、図2および/または図5の透明導電性フィルムは、図6〜図9の態様に従って、適宜に2枚あるいは3枚以上を組み合わせることができる。
また、本発明の透明導電性フィルムは、粘着剤層4を設けた態様で用いることもできる。粘着剤層4は、透明導電性フィルムの片面に透明導電層3が配置されるように積層される。図10は、図2に示す透明導電性フィルム100の透明フィルム基材1に、透明な粘着剤層4が積層された透明導電性フィルム161を表している。図11は、図5に示す透明導電性フィルムの片面の透明導電層3に、透明な粘着剤層4が積層された透明導電性フィルム162を表している。粘着剤層4の露出面には、図10、図11に示すようにセパレータ9が添設されていてもよい。なお、図6〜図9に示すように、透明導電性フィルムが2枚以上積層されたものについても、透明導電性フィルムの片面に透明導電層3が配置されるように粘着剤層4を積層することができる。
また、透明導電性フィルムの片面には、透明な粘着剤層4を介して透明基体5を貼り合わせてもよい。図12は、図2の透明導電性フィルム100において、透明フィルム基材1の透明導電層3が設けられていない側の面に、透明な粘着剤層4を介して透明基体5が貼り合わされた透明導電性フィルム120を表している。透明基体5は、1枚の基体フィルムからなっていてもよく、2枚以上の基体フィルムの積層体(例えば透明な粘着剤層を介して積層したもの)であってもよい。また、図12に示すように、透明基体5の外表面にハードコート層(樹脂層)6を設けることもできる。図12は、図2の透明導電性フィルムに透明基体が貼り合わされた形態が例示されているが、図2の構成に代えて、図1、図3の構成を有する透明導電性フィルムを適用することもできる。また、同様に、図5〜図9等の構造の透明導電性フィルムも、さらに粘着剤層4を介して透明基体5を貼り合わせて用いてもよい。
透明基体5の厚みは、通常、90〜300μmであることが好ましく、100〜250μmであることがより好ましい。また、透明基体5を複数の基体フィルムにより形成する場合、各基体フィルムの厚みは10〜200μm、更には20〜150μmであることが好ましく、これら基体フィルムに透明な粘着剤層を含めた透明基体5としての総厚みが前記範囲に入るように制御されることが好ましい。基体フィルムとしては、前記した透明フィルム基材1と同様の材料が好適に用いられる。
透明導電性フィルムと透明基体5との貼り合わせは、透明基体5側に粘着剤層4を設けておき、これに透明導電性フィルムの透明フィルム基材1を貼り合わせるようにしてもよいし、逆に透明導電性フィルムのフィルム基材1側に粘着剤層4を設けておき、これに透明基体5を貼り合わせるようにしてもよい。後者の方法では、透明フィルム基材1をロール状にして粘着剤層4を連続的に形成し得るため、生産性の面で一層有利である。また、透明フィルム基材1に、順次に複数の基体フィルムを粘着剤層を介して貼り合せることにより、透明導電性フィルム100と透明基体5とを積層することもできる。なお、透明基体5の積層に用いる透明な粘着剤層には、下記の透明な粘着剤層4と同様のものを用いることができる。また、透明導電性フィルム同士の貼り合わせに際しても、適宜に粘着剤層4を積層する透明導電性フィルムの積層面を選択して、透明導電性フィルム同士を貼り合せることができる。
粘着剤層4としては、透明性を有するものであれば特に制限なく使用できる。具体的には、例えば、アクリル系ポリマー、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリビニルエーテル、酢酸ビニル/塩化ビニルコポリマー、変性ポリオレフィン、エポキシ系、フッ素系、天然ゴム、合成ゴム等のゴム系などのポリマーをベースポリマーとするものを適宜に選択して用いることができる。特に、光学的透明性に優れ、適度な濡れ性、凝集性及び接着性等の粘着特性を示し、耐候性や耐熱性等にも優れるという点からは、アクリル系粘着剤が好ましく用いられる。
粘着剤層4の構成材料である粘着剤の種類によっては、適当な粘着用下塗り剤を用いることで投錨力を向上させることが可能なものがある。従って、そのような粘着剤を用いる場合には、粘着用下塗り剤を用いることが好ましい。
前記粘着剤層4には、ベースポリマーに応じた架橋剤を含有させることができる。また、粘着剤層4には必要に応じて例えば天然物や合成物の樹脂類、ガラス繊維やガラスビーズ、金属粉やその他の無機粉末等からなる充填剤、顔料、着色剤、酸化防止剤などの適宜な添加剤を配合することもできる。また透明微粒子を含有させて光拡散性が付与された粘着剤層4とすることもできる。
前記粘着剤層4は、通常、ベースポリマー又はその組成物を溶剤に溶解又は分散させた固形分濃度が10〜50重量%程度の粘着剤溶液として用いられる。前記溶剤としては、トルエンや酢酸エチル等の有機溶剤や水等の粘着剤の種類に応じたものを適宜に選択して用いることができる。
この粘着剤層4は、例えば、透明基体5の接着後に於いては、そのクッション効果により、透明フィルム基材の一方の面に設けられた透明導電層3の耐擦傷性やタッチパネル用としての打点特性、いわゆるペン入力耐久性および面圧耐久性を向上させる機能を有し得る。そのため、特に抵抗膜方式のタッチパネルに用いる場合においては、図12に示すような積層形態が好適に採用される。このクッション効果をより良く発揮させる観点からは、粘着剤層4の弾性係数を1〜100N/cm2の範囲、厚みを1μm以上、通常5〜100μmの範囲に設定するのが望ましい。粘着剤層の厚みが上記範囲であると、クッション効果が十分発揮され、かつ透明基体5と透明フィルム基材1との密着力も十分となり得る。粘着剤層4の厚みが上記範囲よりも薄いと上記耐久性や密着性が十分確保できず、また上記範囲よりも厚いと透明性などの外観に不具合が発生する場合がある。なお、透明導電性フィルムに適用する粘着剤層4の弾性係数および厚みの好ましい範囲は、他の態様においても前記同様である。
この様な粘着剤層4を介して貼り合わされる透明基体5は、透明フィルム基材1に対して良好な機械的強度を付与し、ペン入力耐久性および面圧耐久性の他に、カール等の発生防止に寄与し得る。
セパレータ9を用いて粘着剤層4を転写する場合、その様なセパレータとしては、例えばポリエステルフィルムの少なくとも粘着剤層4と接着する面に移行防止層及び/又は離型層が積層されたポリエステルフィルム等を用いるのが好ましい。
前記セパレータ9の総厚は、30μm以上であることが好ましく、60〜100μmの範囲内であることがより好ましい。粘着剤層4の形成後、ロール状態にて保管する場合に、ロール間に入り込んだ異物等により発生することが想定される粘着剤層4の変形(打痕)を抑制する為である。
前記移行防止層としては、ポリエステルフィルム中の移行成分、特に、ポリエステルの低分子量オリゴマー成分の移行を防止する為の適宜な材料にて形成することができる。移行防止層の形成材料として、無機物若しくは有機物、又はそれらの複合材料を用いることができる。移行防止層の厚みは、0.01〜20μmの範囲で適宜に設定することができる。移行防止層の形成方法としては特に限定されず、例えば、塗工法、スプレー法、スピンコート法、インラインコート法などが用いられる。また、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、スプレー熱分解法、化学メッキ法、電気メッキ法等も用いることができる。
前記離型層としては、シリコーン系、長鎖アルキル系、フッ素系、硫化モリブテン等の適宜な剥離剤からなるものを形成することができる。離型層の厚みは、離型効果の点から適宜に設定することができる。一般には、柔軟性等の取り扱い性の点から、該厚みは20μm以下であることが好ましく、0.01〜10μmの範囲内であることがより好ましく、0.1〜5μmの範囲内であることが特に好ましい。離型層の形成方法としては特に制限されず、前記移行防止層の形成方法と同様の方法を採用することができる。
また必要に応じて、前記透明基体5の外表面(粘着剤層4とは反対側の面)に、外表面の保護を目的としたハードコート層(樹脂層)6を設けるようにしてもよい。ハードコート層6としては、例えば、メラミン系樹脂、ウレタン系樹脂、アルキド系樹脂、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂などの硬化型樹脂からなる硬化被膜が好ましく用いられる。ハードコート層6の厚みは、0.1〜30μmが好ましい。厚みが0.1μm未満であると、硬度が不足する場合がある。また、厚みが30μmを超えると、ハードコート層6にクラックが発生したり、透明基体5全体にカールが発生する場合がある。
本発明の透明導電性フィルムには視認性の向上を目的とした防眩処理層や反射防止層を設けることができる。抵抗膜方式のタッチパネルに用いる場合には、前記ハードコート層6と同様に前記透明基体5の外表面(粘着剤層4とは反対側の面)に、防眩処理層や反射防止層を設けることができる。また前記ハードコート層6上に、防眩処理層や反射防止層を設けることができる。一方、静電容量方式のタッチパネルに用いる場合には、防眩処理層や反射防止層は、透明導電層3上に設けられることもある。
本発明の透明導電性フィルムは、例えば、光学方式、超音波方式、静電容量方式、抵抗膜方式などのタッチパネルに好適に適用できる。特に、透明導電層がパターン化された場合であっても、パターン部とパターン開口部の視認性の差、特に反射率の差が小さく抑えられることから、投影型静電容量方式のタッチパネルや、多点入力が可能な抵抗膜方式のタッチパネルのように、所定形状にパターン化された透明導電層を備えるタッチパネルに好適に用いられる。
以下、本発明に関し実施例を用いて詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
<屈折率>
各層の屈折率は、アタゴ社製のアッベ屈折率計を用い、各種測定面に対して測定光(ナトリウムD線)を入射させるようにして、該屈折計に示される規定の測定方法により測定を行った。
<各層の厚み>
フィルム基材、透明基体、ハードコート層、粘着剤層等の1μm以上の厚みを有するものに関しては、ミツトヨ製マイクロゲージ式厚み計にて測定を行った。ハードコート層、粘着剤層等の直接厚みを計測することが困難な層については、各層を設けた基材の総厚みを測定し、基材の厚みを差し引くことで膜厚を算出した。
第1の誘電体層、第2の誘電体層、およびITO膜等の厚みは、大塚電子(株)製の瞬間マルチ測光システム「MCPD2000」(商品名)を用い、干渉スペクトルの波形を基礎に算出した。
<反射特性>
日立ハイテク社製の分光光度計「U−4100」(商品名)の積分球測定モードを用いて、ITO膜への入射角を2度として、波長380〜780nmの領域におけるパターン部とパターン開口部の直下の反射率を5nm間隔で測定した。次いで、パターン部とパターン開口部の直下の平均反射率を算出し、これらの平均反射率の値からパターン部とパターン開口部の直下との間の反射率差ΔRを算出した。なお、前記測定は、透明導電性フィルム(サンプル)の裏面側(PETフィルム側)に黒色スプレーを用いて遮光層を形成し、サンプルの裏面からの反射や裏面側からの光の入射が殆どない状態で測定を行った。また、D65光源を用いて、パターン部及びパターン開口部の直下のそれぞれの反射光のL*、a*及びb*を算出し、以下の式を用いてパターン部の反射光とパターン開口部の直下の反射光の色差ΔEを算出した。
ΔE={(ΔL*)2+(Δa*)2+(Δb*)2}0.5
[実施例1]
(誘電体層の形成)
厚み25μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(以下、PETフィルムという)からなる透明フィルム基材(屈折率n1=1.65)の一方の面に、メラミン樹脂:アルキド樹脂:有機シラン縮合物の重量比2:2:1が熱硬化型樹脂組成物を塗布し、その後、乾燥、硬化させて、膜厚d21が20nmの第1の誘電体層を形成した。第1の誘電体層の屈折率n1は1.54であった。
次いで、シリカゾル(コルコート(株)製,コルコートP)を、固形分濃度が2重量%になるようにエタノールで希釈し、第1の誘電体層上に、シリカコート法により塗布し、その後、乾燥、硬化させて、膜厚d22が10nmの第2の誘電体層を形成した。第2の誘電体層の屈折率n22は1.46であった。
(ITO膜の形成)
次に、第2の誘電体層上に、アルゴンガス98%と酸素ガス2%とからなる0.4Paの雰囲気中で、酸化インジウム97重量%、酸化スズ3重量%の焼結体材料を用いた反応性スパッタリング法により、厚み23nmのITO膜(屈折率n3=2.00)を形成して、透明導電性フィルムを得た。
(ITO膜のパターン化)
透明導電性フィルムの透明導電層に、ストライプ状にパターン化されているフォトレジストを塗布し、乾燥硬化した後、25℃、5重量%の塩酸(塩化水素水溶液)に、1分間浸漬して、ITO膜のエッチングを行った。その後、フォトレジストを除去した。
(ITO膜の結晶化)
ITO膜のエッチングを行った後、140℃で90分間の加熱処理を行って、ITO膜を結晶化した。
[実施例2]
実施例1と同様にして、PETフィルムの一方の面に第1の誘電体層、第2の誘電体層およびITO膜を形成して、透明導電性フィルムを得た。
(ITO膜のパターン化)
透明導電性フィルムの透明導電層に、ストライプ状にパターン化されているフォトレジストを塗布し、乾燥硬化した後、25℃、5重量%の塩酸に、1分間浸漬して、ITO膜のエッチングを行った。
(第2の誘電体層のパターン化)
ITO膜のエッチングを行った後、引き続きフォトレジストを積層したまま、45℃、2重量%の水酸化ナトリウム水溶液に、3分間浸漬して、第2の誘電体層のエッチングを行い、その後、フォトレジストを除去した。
(ITO膜の結晶化)
ITO膜および第2の誘電体層をパターン化した後、140℃で90分間の加熱処理を行って、ITO膜を結晶化した。
[実施例3,4]
実施例3および実施例4においては、それぞれ実施例1および実施例2と同様にして、パターン部とパターン開口部とを有する透明導電性フィルムを作製した。ただし、実施例3および実施例4においては、第1の誘電体層の厚みd21を35nm、第2の誘電体層の厚みd22を5nmとした点において、実施例1および実施例2とは異なっていた。
[実施例5,6]
実施例5および実施例6においては、それぞれ実施例1および実施例2と同様にして、パターン部とパターン開口部とを有する透明導電性フィルムを作製した。ただし、実施例5および実施例6においては、第1の誘電体層の厚みd21を30nm、第2の誘電体層の厚みd22を15nmとした点において、実施例1および実施例2とは異なっていた。
[比較例1]
比較例1においては、実施例1と同様にして、パターン部とパターン開口部とを有する透明導電性フィルムを作製した。ただし、比較例1においては、第1の誘電体層の厚みd21を45nm、第2の誘電体層の厚みd22を10nmとした点において、実施例1とは異なっていた。
[比較例2]
比較例2においては、実施例1と同様にして、パターン部とパターン開口部とを有する透明導電性フィルムを作製した。ただし、比較例2においては、第1の誘電体層の厚みd21を30nm、第2の誘電体層の厚みd22を30nmとした点において、実施例1とは異なっていた。
[比較例3]
比較例3においては、実施例1と同様にして、パターン部とパターン開口部とを有する透明導電性フィルムを作製した。ただし、比較例3においては、第1の誘電体層の厚みd21を40nm、第2の誘電体層の厚みd22を30nmとした点において、実施例1とは異なっていた。
[比較例4]
比較例4においては、実施例1と同様にして、パターン部とパターン開口部とを有する透明導電性フィルムを作製した。ただし、比較例4においては、第1の誘電体層が下記のように形成された点、および第2の誘電体層の厚みd22を35nmとした点において、実施例1とは異なっていた。
(第1の誘電体層の形成)
厚み25μmのPETフィル基材(屈折率n1=1.65)の一方の面に、第1の誘電体層として、膜厚20nmのシリコン錫酸化物をスパッタリング法により形成した。この第1の誘電体層の屈折率は1.70であった。
各実施例および比較例の透明導電性フィルムの評価結果を表1に示す。
表1から、本発明の透明導電性フィルムは、透明導電層がパターン化された場合においても、パターン部とパターン開口部との間の反射率差および色差が小さいため、パターンが視認され難いことがわかる。特に、実施例2,4,6に示すように、第2の誘電体層が透明導電層と同様にパターン化された場合は、パターンがより視認され難く、見栄えが良好であるといえる。