JP6002382B2 - 遺伝子発現阻害剤及び阻害方法 - Google Patents

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本発明は、遺伝子発現阻害剤及び阻害方法に関する。
特定の標的遺伝子の遺伝子発現を抑制する方法として、近年、簡便性のためにRNA干渉(RNA interference; RNAi)が最もよく利用されている。
RNA干渉法では、典型的には、標的遺伝子と相同な配列を有する21−23塩基長の二本鎖リボヌクレオチド(siRNA)が用いられ、このsiRNAを細胞内に導入することにより、標的遺伝子の遺伝子発現を抑制できる(特許文献1参照)。
RNA干渉法の成功は、主にsiRNAの設計にかかっており、これまで、修飾塩基の利用やDNAへの置換(特許文献2、非特許文献1参照)など、様々な試みがなされている。
米国特許公報 US2004/0259247 国際特許公報 WO03/044188
Ui-Tei, K., et al. Nuc. Acids Res. 2008, vol.36. p.2136-2151
本発明は、細胞毒性が低く、効率よく遺伝子発現を抑制することのできるsiNAを含有する遺伝子発現阻害剤を提供することを目的としてなされた。
本発明者らは、阻害効率の良いsiRNAは、細胞毒性が強いことに着目し、siRNAの細胞毒性を抑制するための方法を開発しようと鋭意努力した結果、以下に記載の二本鎖ポリヌクレオチドであれば、細胞毒性が低いにもかかわらず、効率よく遺伝子発現を抑制することができることを見出した。このような二本鎖ポリヌクレオチドの発見は、細胞毒性と遺伝子発現抑制能は独立のファクターであることを示す重要な知見であり、この重要な発見を通じて、その二本鎖ポリヌクレオチドを含有する遺伝子発現阻害剤を完成させた。
本発明の一実施形態において、遺伝子発現阻害剤は、パッセンジャー鎖である第一の鎖とガイド鎖である第二の鎖から成り、二重鎖領域が19−23塩基長であって、当該二重鎖領域において、以下の領域がRNAであって、残りの領域がDNAである二本鎖ポリヌクレオチドを含有する。
(1)第一の鎖の当該二重鎖領域の最も5’側の塩基から数えて9乃至15塩基
(2)第一の鎖の当該二重鎖領域の最も3’側の塩基から数えて3塩基までのうちで連続する2塩基以上、好ましくは3’側の塩基から数えて1番目と2番目の2塩基または2番目と3番目の2塩基
(3)第二の鎖の当該二重鎖領域の最も3’側の塩基から数えて9乃至15塩基
(4)第二の鎖の当該二重鎖領域の最も5’側の塩基から数えて3塩基までのうちで連続する2塩基以上、好ましくは5’側の塩基から数えて1番目と2番目の2塩基または2番目と3番目の2塩基
前記二本鎖ポリヌクレオチドを構成する二本のポリヌクレオチド鎖のうち、少なくとも一方が、1−3塩基のヌクレオチドから成るオーバーハングを有しても良い。このオーバーハングを構成する前記ヌクレオチドがDNAであることが好ましい。
本発明の他の実施形態において、細胞内での遺伝子発現阻害方法は、上記いずれかの遺伝子発現阻害剤を、前記細胞に導入することを特徴とする方法。この細胞は、ヒト個体内の細胞であっても、ヒト個体内の細胞でなくてもよい。
本発明のさらなる実施形態において、遺伝子発現阻害剤を製造するための二本鎖ポリヌクレオチドの使用方法であって、当該二本鎖ポリヌクレオチドは、パッセンジャー鎖である第一の鎖とガイド鎖である第二の鎖から成り、二重鎖領域が19−23塩基長であって、当該二重鎖領域において、以下の領域がRNAであって、残りの領域がDNAである。
(1)第一の鎖の当該二重鎖領域の最も5’側の塩基から数えて9乃至15塩基の領域
(2)第一の鎖の当該二重鎖領域の最も3’側の塩基から数えて3塩基までのうちで連続する2塩基以上の領域、好ましくは3’側の塩基から数えて1番目と2番目の2塩基または2番目と3番目の2塩基
(3)第二の鎖の当該二重鎖領域の最も3’側の塩基から数えて9乃至15塩基の領域
(4)第二の鎖の当該二重鎖領域の最も5’側の塩基から数えて3塩基までのうちで連続する2塩基以上の領域、好ましくは5’側の塩基から数えて1番目と2番目の2塩基または2番目と3番目の2塩基
本発明のさらなる実施形態において、遺伝子発現を阻害するための二本鎖ポリヌクレオチドのスクリーニング方法は、パッセンジャー鎖である第一の鎖とガイド鎖である第二の鎖から成り、二重鎖領域が19−23塩基長であって、当該二重鎖領域において、
(1)第一の鎖の当該二重鎖領域の最も5’側の塩基から数えて9乃至15塩基の領域
(2)第二の鎖の当該二重鎖領域の最も3’側の塩基から数えて9乃至15塩基の領域
がRNAであって、残りの領域がDNAであり、前記遺伝子発現の阻害活性を有する二本鎖ポリヌクレオチドにおいて、
(1)第一の鎖の当該二重鎖領域の最も3’側の塩基から順に、
(2)第二の鎖の当該二重鎖領域の最も5’側の塩基から順に、
両方の鎖で少なくとも1塩基ずつRNAに戻した変異二本鎖ポリヌクレオチドを作成する工程と、前記変異二本鎖ポリヌクレオチドについて、前記遺伝子発現の阻害活性と細胞毒性を調べる工程と、を含むスクリーニング方法である。
本発明のさらなる実施形態において、遺伝子発現を阻害するための二本鎖ポリヌクレオチドのスクリーニング方法は、パッセンジャー鎖である第一の鎖とガイド鎖である第二の鎖から成り、二重鎖領域が19−23塩基長であって、当該二重鎖領域において、
(1)第一の鎖の当該二重鎖領域の最も5’側の塩基から数えて9乃至15塩基の領域
(2)第二の鎖の当該二重鎖領域の最も3’側の塩基から数えて9乃至15塩基の領域
がRNAであって、残りの領域がDNAであり、前記遺伝子発現の阻害活性を有する二本鎖ポリヌクレオチドにおいて、
(1)第一の鎖の当該二重鎖領域の最も3’側の塩基から数えて3塩基までのうちで連続する2塩基以上の領域
(2)第二の鎖の当該二重鎖領域の最も5’側の塩基から数えて3塩基までのうちで連続する2塩基以上の領域
をRNAに戻した変異二本鎖ポリヌクレオチドを作成する工程と、前記変異二本鎖ポリヌクレオチドについて、前記遺伝子発現の阻害活性と細胞毒性を調べる工程と、を含むスクリーニング方法である。
なお、本明細書で「二重鎖領域の最も5’(または3’)側の塩基」は、「二重鎖領域の5’(または3’)端」とも称する。
本発明によって、細胞毒性が低く、効率よく遺伝子発現を抑制することのできるsiNAを含有する遺伝子発現阻害剤を提供することができるようになった。
標的遺伝子をFLuc、RLuc、HPV16 E6、及びHPV16 E7とし、siRNAガイド鎖5’端から6塩基と8塩基、およびそのパッセンジャー鎖相補部分をDNAに置換したdsRDC-6およびdsRDC-8の遺伝子発現抑制能を測定した結果を示す図である。 標的遺伝子をFLucとしたdsRDC-8のガイド鎖のDNAを5’端より順次RNAに戻したsiNA(A,B)、及びパッセンジャー鎖のDNAを二重鎖領域の3’端より順次RNAに戻したsiNA(C,D)の遺伝子発現抑制能を測定した結果を示す図である。 標的遺伝子をFLucとし、dsRDC-6およびdsRDC-8のガイド鎖及びパッセンジャー鎖のDNAを二重鎖領域の5’端及び3’端より順次1〜3個分だけRNAに戻したsiNAの遺伝子発現抑制能を測定した結果を示す図である。 標的遺伝子をRLuc、HPV16 E6、またはHPV16 E7とし、dsRDC-8のガイド鎖及びパッセンジャー鎖のDNAを二重鎖領域の5’端及び3’端より順次RNAに戻したsiNAの遺伝子発現抑制能を測定した結果を示す図である。 標的遺伝子をFLucとし、dsRDC-8において置換したDNAを、ガイド鎖及びパッセンジャー鎖で、それぞれ二重鎖領域の5’端及び3’端より、連続した2塩基ずつを順にRNAに戻したsiNAの遺伝子発現抑制能を測定し、dsRDC-6やsiRNAと比較した結果を示す図である。 標的遺伝子をFLucとしたdsRDC-6、及びdsRDCのガイド鎖及びパッセンジャー鎖のDNAを二重鎖領域の5’端及び3’端より順次RNAに戻したsiNAの細胞毒性を測定した結果を示す図である。 E6E7(+)および(-)細胞において、標的遺伝子をHPV16 E6としたdsRDC-6とdsRDC-8において置換したDNAを、両側鎖で、5’端及び3’端より2塩基ずつRNAに戻したsiNAの腫瘍細胞残存率と細胞毒性を測定し、dsRDCやsiRNAと比較した結果を示す図である。 HeLa細胞とFL-SiHa-2細胞において、標的遺伝子をHPV16 E6(配列497)およびHPV16 E7(配列752)としたdsRDC-6とdsRDC-8において置換したDNAを、ガイド鎖及びパッセンジャー鎖で、それぞれ二重鎖領域の5’端及び3’端より2塩基ずつRNAに戻したsiNAの標的腫瘍細胞(FL-SiHa-2)残存率と非標的細胞(HeLa)生存率を測定し、dsRDCやsiRNAと比較した結果を示す図である。 dsRDC-6、及びdsRDCのガイド鎖及びパッセンジャー鎖のDNAを5’端及び3’端より順次RNAに戻したsiNAの血清中での安定性を調べた結果を示す図である。
以下、上記知見に基づき完成した本発明の実施の形態を、実施例を挙げながら詳細に説明する。実施の形態及び実施例に特に説明がない場合には、J. Sambrook, E. F. Fritsch & T. Maniatis (Ed.), Molecular cloning, a laboratory manual (3rd edition), Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, New York (2001); F. M. Ausubel, R. Brent, R. E. Kingston, D. D. Moore, J.G. Seidman, J. A. Smith, K. Struhl (Ed.), Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons Ltd.などの標準的なプロトコール集に記載の方法、あるいはそれを修飾したり、改変した方法を用いる。また、市販の試薬キットや測定装置を用いている場合には、特に説明が無い場合、それらに添付のプロトコルを用いる。
なお、本発明の目的、特徴、利点、及びそのアイデアは、本明細書の記載により、当業者には明らかであり、本明細書の記載から、当業者であれば、容易に本発明を再現できる。以下に記載された発明の実施の形態及び具体的な実施例などは、本発明の好ましい実施態様を示すものであり、例示又は説明のために示されているのであって、本発明をそれらに限定するものではない。本明細書で開示されている本発明の意図並びに範囲内で、本明細書の記載に基づき、様々な改変並びに修飾ができることは、当業者にとって明らかである。
==遺伝子発現阻害剤==
本発明の遺伝子発現阻害剤は、二重鎖領域が15−30塩基長、好ましくは19−23塩基長、より好ましくは19−21塩基長、最も好ましくは19塩基長であって、当該二重鎖領域において、以下の領域(1)〜(4)がRNAであって、残りの領域がDNAである二本鎖ポリヌクレオチドを含有する。なお、本明細書で、二重鎖とは、二重になった2本のポリヌクレオチド鎖からなり、1重のポリヌクレオチド鎖からなる領域は含まないものとし、二本鎖とは、2本のポリヌクレオチド鎖からなればよく、オーバーハングなど1重のポリヌクレオチド鎖からなる領域を含んでも構わないものとする。
(1)第一の鎖の当該二重鎖領域の最も5’側の塩基から数えて9乃至15塩基、より好ましくは10乃至11塩基、最も好ましくは11塩基の領域
(2)第一の鎖の当該二重鎖領域の最も3’側の塩基から数えて3’側の塩基から数えて3塩基までのうちで連続する2塩基以上の領域、好ましくは3’側の塩基から数えて1番目と2番目の2塩基または2番目と3番目の2塩基
(3)第二の鎖の当該二重鎖領域の最も3’側の塩基から数えて9乃至15塩基、より好ましくは10乃至11塩基、最も好ましくは11塩基の領域
(4)第二の鎖の当該二重鎖領域の最も5’側の塩基から数えて3塩基までのうちで連続する2塩基以上の領域、好ましくは5’側の塩基から数えて1番目と2番目の2塩基または2番目と3番目の2塩基
いわゆるsiNAにおいては、第一の鎖はパッセンジャー鎖に相当し、第二の鎖はガイド鎖に相当する。本明細書で、siNAとは、RNA干渉に用いることのできるsiRNA及びその一部又は全部がDNAに置換された分子を含むものとする。この二本鎖ポリヌクレオチドを構成する二本のポリヌクレオチド鎖のうち、少なくとも一方が、その3’末端にオーバーハングを有しても良い。このオーバーハングを構成するヌクレオチドの長さやヌクレオチドの種類や配列は特に限定されないが、1−3塩基のヌクレオチドから成ることが好ましく、安定性の面からDNAであることが好ましい。
二重鎖部分の配列は、発現を抑制する標的遺伝子をコードする塩基配列に基づいて、siDirect(商標)などの公知の方法で決定することができる。二重鎖を構成するDNA及びRNAは、発現抑制能を失わない限り、2'-O-メチル、2'-フルオロなどによって、任意に修飾されていても構わない。
このような構造を有する二本鎖ポリヌクレオチドは、従来のsiRNAと同等の発現抑制活性を有するにもかかわらず、より細胞毒性が低いという特徴を有する。これによって、例えば、2種の細胞が混在しており、一方の細胞のみで特異的に、特定の遺伝子を抑制したい場合に、大いに効果を発揮する。例えば、がん細胞を特異的に殺す遺伝子発現阻害剤は、正常細胞に作用しても細胞毒性が低いため、副作用の少ない抗がん剤を開発できる。
二本鎖ポリヌクレオチドの製造方法は特に限定されず、公知の方法を用いればよいが、化学合成が最も簡便で好ましい。
==遺伝子発現阻害剤の使用方法==
この遺伝子発現阻害剤を細胞に導入することにより、その細胞内で標的遺伝子の発現を阻害することができる。細胞は、培養細胞でも、組織にあっても、個体(ヒト個体であってもヒト以外の動物個体であってもよい)にあってもよく、細胞タイプも限定されず、それぞれに適した公知の導入方法を用いればよい。標的遺伝子の発現抑制の目的は、特に限定されず、研究であっても医療であってもよく、遺伝子発現阻害剤が試薬であっても医薬であっても構わない。
==遺伝子発現阻害剤のスクリーニング方法==
本発明者らは、二重鎖領域において、第一の鎖の当該二重鎖領域の最も5’側の塩基から数えて9乃至15塩基、より好ましくは10乃至11塩基、及び、第二の鎖の当該二重鎖領域の最も3’側の塩基から数えて9乃至15塩基、より好ましくは10乃至11塩基がRNAであって、残りがDNAであるような二本鎖ポリヌクレオチド(本明細書では、dsDRCと称する。)は、細胞毒性が弱いが、発現抑制活性も弱いことを知り、その解決法として、第一の鎖の当該二重鎖領域の最も3’側の塩基から数えて数塩基、及び、第二の鎖の当該二重鎖領域の最も5’側の塩基から数えてほんの数塩基をRNAに戻すことにより、細胞毒性を増強させずに、発現抑制活性だけを増強できることを見出した。
このような二本鎖ポリヌクレオチドは、事実上、以下のようなスクリーニング方法によって見出された。従って、新たな配列に対しても、このスクリーニング方法を用いることにより、細胞毒性が低く、効率よく遺伝子発現を抑制することのできるsiNAを特定することができる。
すなわち、二重鎖領域が19−23塩基長であって、当該二重鎖領域において
(1)第一の鎖の当該二重鎖領域の最も5’側の塩基から数えて9乃至15塩基の領域
(2)第二の鎖の当該二重鎖領域の最も3’側の塩基から数えて9乃至15塩基の領域
がRNAであって、残りの領域がDNAである二本鎖ポリヌクレオチドにおいて
(1)第一の鎖の当該二重鎖領域の最も3’側の塩基から順に、
(2)第二の鎖の当該二重鎖領域の最も5’側の塩基から順に、
両方の鎖で少なくとも1塩基ずつRNAに戻した変異二本鎖ポリヌクレオチドを作成し、遺伝子発現抑制活性と細胞毒性を調べることにより、遺伝子発現抑制活性が強く、かつ細胞毒性の弱い二本鎖ポリヌクレオチドを得ることができる。両方のポリヌクレオチド鎖とも、5番目の塩基まで、好ましくは4番目の塩基まで、さらに好ましくは3番目の塩基まで、RNAへ戻すことで、目的の二本鎖ポリヌクレオチドを見つけることができる。両方のポリヌクレオチド鎖で、RNAに戻す塩基数は異なっていても良く、例えば、4塩基、3塩基、2塩基あるいは1塩基異なっていてもよいが、同じであることが好ましい。
特に、以下のようなスクリーニング方法は、より効率よく、細胞毒性が低く、効率よく遺伝子発現を抑制することのできるsiNAを特定することができる。
すなわち、二重鎖領域が19−23塩基長であって、当該二重鎖領域において
(1)第一の鎖の当該二重鎖領域の最も5’側の塩基から数えて9乃至15塩基の領域
(2)第二の鎖の当該二重鎖領域の最も3’側の塩基から数えて9乃至15塩基の領域
がRNAであって、残りの領域がDNAであり、前記遺伝子発現の阻害活性を有する二本鎖ポリヌクレオチドにおいて、
(1)第一の鎖の当該二重鎖領域の最も3’側の塩基から数えて3塩基までのうちで連続する2塩基以上の領域
(2)第二の鎖の当該二重鎖領域の最も5’側の塩基から数えて3塩基までのうちで連続する2塩基以上の領域
をRNAに戻した変異二本鎖ポリヌクレオチドを作成し、遺伝子発現抑制活性と細胞毒性を調べることにより、遺伝子発現抑制活性が強く、かつ細胞毒性の弱い二本鎖ポリヌクレオチドを得ることができる。
選択された二本鎖ポリヌクレオチドの遺伝子発現抑制活性は、もとの二本鎖ポリヌクレオチドであるdsRDC-6やdsRDC-8よりも強ければよいが、もとの二本鎖ポリヌクレオチドと同じ配列を有するsiRNAに対し、50%以上の活性を有することが好ましく、60%以上の活性を有することがより好ましく、70%以上の活性を有することがより好ましく、80%以上の活性を有することがより好ましく、90%以上の活性を有することがさらに好ましく、95%以上の活性を有することがさらに好ましく、有意差の無い活性を有することがさらに好ましく、より強い活性を有することが最も好ましい。ここで、遺伝子発現抑制活性とは、二本鎖ポリヌクレオチドを導入しない時の標的遺伝子の発現レベルに対する、二本鎖ポリヌクレオチドを導入した時の標的遺伝子の発現レベルの割合(%)を計算し、100から引いた値とする。標的遺伝子の発現レベルの測定方法は、当業者に公知の方法であれば特に限定されない。もし、標的遺伝子の発現を抑制することで、細胞増殖、細胞死、組織の肥厚、高次機能(知能や運動能など)などの特定の機能が抑制され、それが定量的に測定できる効果であれば、発現レベルの低下の代わりに、機能の低下によって、遺伝子発現抑制活性を定義してもよい。例えば、特定の遺伝子の発現を抑制することにより、細胞増殖が抑制される場合、遺伝子発現抑制活性とは、二本鎖ポリヌクレオチドを導入しない時の細胞増殖能に対する、二本鎖ポリヌクレオチドを導入した時の細胞増殖能の割合(%)を計算し、100から引いた値としてもよい。
また、選択された二本鎖ポリヌクレオチドの細胞毒性は、もとの二本鎖ポリヌクレオチドと同じ配列を有しRNAからなる二本鎖ポリヌクレオチドよりも細胞生存率が高ければよいが、もとの二本鎖ポリヌクレオチドに対し、50%以上の細胞生存率を有することが好ましく、60%以上の細胞生存率を有することがより好ましく、70%以上の細胞生存率を有することがより好ましく、80%以上の細胞生存率を有することがより好ましく、90%以上の細胞生存率を有することがさらに好ましく、95%以上の細胞生存率を有することがさらに好ましく、有意差の無い細胞生存率を有することがもっとも好ましい。(ここで、細胞生存率とは、二本鎖ポリヌクレオチドを細胞集団に導入した時に生き残る細胞の割合(%)のことであって、その測定方法は、当業者に公知の方法であれば特に限定されない。
[実験方法]
<1> 細胞株
HPV16陽性子宮頸癌細胞株(SiHa)、HPV18陽性子宮頸癌細胞株(HeLa)は、American Type Culture Collectionから購入した。細胞は、10%仔牛血清加ダルベッコ改変MEM(DMEM)を用いて37℃ 、5% CO2存在下で培養した。
初代培養ヒトケラチノサイトHDKに由来するHPV16 E6E7不死化細胞株HDK1E6E7(Haga,T他、Cancer Sci 98:147-154,2007)およびHDK由来TERT不死化細胞株HDK1Tは、清野透博士(国立がんセンター研究所)より供与された。これらケラチノサイト由来の細胞は、ヒト組換え上皮増殖因子およびウシ下垂体抽出物添加ケラチノサイトSFM (インビトロジェン社)を用いて培養した。
<2> プラスミド(hRL-ΔN16E6/pZeoSV2、 hRL-16E7/pZeoSV2)
HPV16遺伝子(アクセション番号K02718.1)のΔNE6 フラグメント(231-559)と E7フラグメント(562 - 858)が、それぞれpsiCheck-2 (アクセション番号AY535007)に挿入されたプラスミドである16ΔNE6/psiCheck-2及び16E7psiCheck-2(Yamato, K. et al., Cancer Gene Therapy 15:140-153, 2008)から、ウミシイタケルシフェラーゼ遺伝子と各断片が融合したRLuc-ΔN16E6断片とRLuc -16E7断片を制限酵素Nhe IとNot Iで切り出し、pZeoSV2のNhe I/Not Iサイトに挿入し、それぞれhRL-ΔN16E6/pZeoSV2およびhRL-16E7/pZeoSV2と命名した。
<3>トランスフェクション
プラスミドのトランスフェクションにはLipofectamine 2000(インビトロジェン社)を用いた。
また、siNAのトランスフェクションにはLipofectamine RNAiMAX(Invitrogen社)を用いた。具体的には、Lipofectamine RNAiMAX 0.6〜0.8 μLをOpti-MEM I(Invitrogen社)を用いて50 μLに稀釈し、5分間室温で静置後、Opti-MEM Iで50 μL に稀釈したsiRNAと混和し、20分間室温で静置後、培養細胞の培地に0.5 mlに全量を加え、アッセイまでそのまま培養を続けた。不死化ケラチノサイトはトランスフェクション後、5時間通常条件で培養後、培地交換を行い再び培養をおこなった。
プラスミドとsiNAとのコトランスフェクションにはLipofectamine 2000を用いた。
<4>siRNA、dsRDCおよびdsRDC RNA置換体
psiCheck-2プラスミド由来ホタルルシフェラーゼ(2532〜4184)を標的とするsiRNA配列FLuc 2900とpsiCheck-2プラスミド由来ウミシイタケルシフェラーゼ(694〜1629)を標的とするsiRNA配列RLuc 1383について、表1及び表2に、siRNA、dsRDCおよびdsRDC RNA置換体の配列を示す。なお、本明細書で、dsRDC-n(nは整数)とは、siRNAにおいてその塩基配列に関わらず、オーバーハングを除く二重鎖部分について、パッセンジャー鎖の3’端より、n個分の塩基をDNAに置換したsiNAを言うものとする。また、dsRDCとは、dsRDC-nの総称とする。そして、dsRDC-nG12...jP12...k(j及びkは整数)とは、dsRDC-nに対し、置換されたDNAのうち、パッセンジャー鎖で1からkまで、ガイド鎖で1からjまでの塩基がRNAに戻されたことを言うものとする。パッセンジャー鎖またはガイド鎖の一方だけがRNAに戻された場合、dsRDC-nG12...jまたはdsRDC-nP12...kとして表される。
HPV16 E6を標的とするsiRNA配列497、及びE7を標的とするsiRNA配列752とsiRNA配列573(Yamato、 K. et al.、 Cancer Gene Ther 15:140-153、 2008)について、それぞれ表3〜5に、siRNA、dsRDCおよびdsRDC RNA置換体の配列を示す。また、コントロールに用いた配列は表6に示す。
なお、これらの配列は、siDirect ソフトウエアシステム(http://design.RNAi.jp/)を用いて選択された。そして、表中では、RNAは大文字、DNAは小文字で表記されている。
各配列を有する21塩基リボヌクレオチドを化学合成し、脱塩後バッファー(100 mM potassium acetate、30 mM HEPES-KOH pH 7.4、2 mM magnesium acetate)中でアニーリングした。
<5>ウミシイタケルシフェラーゼ-(RLuc)-ΔNE6融合mRNAあるいはRLuc-E7融合mRNAとFLucを安定同時発現するSiHa細胞の作成
ホタルルシフェラーゼ(FLuc)安定発現SiHa細胞(FL-SiHa-2)(Yamato、K. et al., Cancer Gene Therapy vol.15, p.140-153, 2008)にhRL-ΔN16E6/pZeoSV2またはhRL-16E7/pZeoSV2をトランスフェクション後、G418(1 mg/ml)とZeocin (1 mg/ml)存在下で培養し、FLucとRLuc-ΔNE6あるいはFLucとRLuc-E7を同時に発現するSiHa細胞クローンを分離し、それぞれRLE6-FL-SiHa-10、及びRLE7-FL-SiHa-2と命名した。
<6>GFP発現ケラチノサイトの作成
レンチウイルス(ViraPower HiPerform Lentiviral Expression System、インビトロジェン社)を用いてそれぞれpsiCheck-2由来firefly luciferase (FLuc) (プロメガ社)とpd2GFP-N1由来d2EGFP(クロンテック社)の組換えレンチウイルスを作成した。FLuc cDNAおよびd2EGFPは、それぞれpsiCheck2およびpd2EGFP-N1プラスミドを鋳型とし、センスおよびアンチセンスプライマー(表7)とPlatinum PCR Supermix High Fidelity(インビトロジェン社)を用いてPCRによって増幅した。PCR産物は、Topoisomerase I(インビトロジェン社)を用いてpCR8/GW/TOPO (インビトロジェン社)に組み込んだ。さらにそこからFLuc cDNAをLR Clonase II (インビトロジェン社)を用いてレンチウイルス発現プラスミドであるpLenti6.3/V5-DEST(インビトロジェン社)に組み込み、このプラスミドをFLuc/pLenti6.3/V5-DESTおよびd2EGFP/pLenti6.3/V5-DESTと命名した。感染性組換えウイルスは、293FT 細胞(インビトロジェン社)にLipofectamine 2000を用いてレンチウイルス発現プラスミドとパッケージングプラスミド (pLP1, pLP2, pLP/VSVG) (インビトロジェン社)をコトランスフェクションすることによって得られた。トランスフェクション24時間後に培地交換をし、さらに96時間後に、感染性ウイルスを回収した。これらを用いてPolybren (6 μg/ml, シグマ アルドリッチ) 存在下でHDK1TとHDK1E6E7に組換えレンチウイルスを感染させ、ブラストシチジン(2μg/ml)で選択し、ルシフェラーゼ発現HDK1T細胞(HDK1T-luc)とEGFP発現HDK1-E6E7細胞(HDK1-E6E7-EGFP)を作成した。
<7>siRNA、dsRDCおよびdsRDC RNA置換体の血清存在下での安定性
siRNA、dsRDCおよびdsRDC RNA置換体(50 μM溶液)とFCSを1:1で混和、37℃でインキュベーションし、経時的にサンプリングし、Isogen(日本ジーン社)によって核酸を抽出した。サンプルは、10-20% ポリアクリルアミドゲル電気泳動で分離後SYBR Gold(インビトロジェン社)で染色し、FLA2000蛍光イメージ解析装置(富士フイルム社)で画像解析をおこなった。
<8>ルシフェラーゼ活性の測定
細胞におけるルシフェラーゼ活性は、トランスフェクションの48時間後に、Dual Luciferase Reporter Assay System(プロメガ社)を用いて測定した。
なお、FLuc を標的とした時は、RLucを内部コントロールとし、RLuc、E6、E7を標的とした時はFLucを内部コントロールとし、測定値を内部コントロールの値で標準化した。そして、mockのみを導入した細胞のルシフェラーゼ活性を100%とし、得られた測定値を相対値で表した。実験は、独立に三度測定し、グラフでは、平均値±標準偏差を示した。
<9>細胞毒性の測定
HeLa細胞に、各siNAをLipofectamine RNAiMAXを用いて1 nMまたは2 nMの濃度で導入し、5日目にWST-8によって生存細胞をしらべた。mockを導入した細胞の生存細胞を100%とし、各測定値を相対値で表し、細胞生存率とした。
細胞毒性=100%-細胞生存率
[実施例1]
本実施例では、siRNAのRNAをDNAに置換すると、遺伝子発現抑制能が低下することを示す。
ここで、siNAとして用いたdsRDC-6およびdsRDC-8では、それぞれsiRNAガイド鎖5’端から6塩基と8塩基、およびそのパッセンジャー鎖相補部分をDNAに置換した(図1A)。なお、対照として、DNAに置換されていないsiRNAを用いた。
dsRDC-6およびdsRDC-8(図1B,C)またはdsRDC-6(図1D,E,F)を、図1のグラフに示す様々な濃度で、RLuc-E6融合遺伝子とFLuc遺伝子を発現するRLE6-FL-SiHa-10細胞(図1B,C,D)あるいはRLuc-E7融合遺伝子とFLuc遺伝子を発現するRLE7-FL-SiHa-2細胞(図1E,F)に導入して、48時間後、FLuc活性とRLuc活性の測定をおこなった。表8に、細胞と抑制遺伝子の組み合わせをまとめた。図1B〜Fには、各濃度(concentration(pM))におけるルシフェラーゼ活性(relative Luc activity)をプロットしたグラフを示し、表9には、D〜Fにおいて、遺伝子発現を50%抑制するsiNAの濃度(pM)をまとめた。
このように、表8に示したいずれのsiRNAの場合も、6塩基をDNAに置換すると、遺伝子発現抑制能は低下した。FLuc 2900及びRLuc 1383に対して8塩基を置換すると、抑制能はさらに低下した。
[実施例2]
本実施例では、dsRDC-8のガイド鎖のDNAを5’端より順次RNAに戻しても、パッセンジャー鎖のDNAを二重鎖部分の3’端より順次RNAに戻しても、抑制活性が事実上回復しないことを示す。
まず、図2Aに示すように、FLuc 2900の配列を持つdsRDC-8のガイド鎖のDNAを5’端より1-4塩基分だけ、RNAに戻したsiNAを作製し、RLE6-FL-SiHa-10細胞に様々な濃度で導入し、FLuc活性を測定した。次に、図2Cに示すように、FLuc 2900の配列を持つdsRDC-8のパッセンジャー鎖のDNAを、二重鎖部分の3’端より1-4塩基分だけ、RNAに戻したsiNAを作製し、RLE6-FL-SiHa-10細胞に様々な濃度で導入し、FLuc活性を測定した。図2B及びDには、各濃度におけるルシフェラーゼ活性をプロットしたグラフを示し、表10には、遺伝子発現を50%抑制するsiNAの濃度をまとめた。
このように、置換した片側鎖のDNAを1〜4塩基分だけRNAに戻しても、siNAの遺伝子発現抑制能は事実上回復しなかった。
[実施例3]
本実施例では、dsRDC-8のガイド鎖及びパッセンジャー鎖のDNAを二重鎖部分の5’端及び3’端より順次RNAに戻すと、両側で2個以上RNAに戻したときに抑制活性が顕著に回復することを示す。
ここでは、図3A,C,Eに示すように、FLuc 2900の配列を持つdsRDC-6あるいはdsRDC-8のガイド鎖及びパッセンジャー鎖のDNAを、二重鎖部分の5’端及び3’端より1-3塩基分だけ、RNAに戻したsiNAを作製し、RLE6-FL-SiHa-10細胞に様々な濃度で導入し、FLuc活性を測定した。図3B,D,Fには、各濃度におけるルシフェラーゼ活性をプロットしたグラフを示し、表11には、遺伝子発現を50%抑制するsiNAの濃度をまとめた。また、表12には、1.6pM及び8.0pMの濃度で導入した時の遺伝子発現阻害活性(%)を比較した。
このように、置換したDNAを、両側鎖で、二重鎖の5’端及び3’端より順次RNAに戻すと、両側で2個以上RNAに戻したときに(即ち、8G12P12及び8G12P123の場合)、抑制活性が顕著に回復した。
[実施例4]
実施例3と同様の実験を、他の標的遺伝子を用いて行った。用いたsiNAの構造を表13にまとめた。また、用いたsiNA、標的遺伝子、細胞の組み合わせを表14にまとめた。そして、図4A-Dには、各濃度におけるルシフェラーゼ活性をプロットしたグラフを示し、表15には、遺伝子発現を50%抑制するsiNAの濃度をまとめた。また、表16には、1.6pM及び8.0pMの濃度で導入した時の遺伝子発現阻害活性(%)を比較した。
このように、置換したDNAを、両側鎖で、5’端及び3’端より順次RNAに戻すと、標的遺伝子に関わらず、実施例3と同様に、両側で2個以上RNAに戻したときに抑制活性が顕著に回復した。
[実施例5]
本実施例では、dsRDCにおいて置換したDNAを、ガイド鎖及びパッセンジャー鎖の両側鎖で、それぞれ5’端及び3’端より1番目と2番目の2塩基または2番目と3番目の2塩基をRNAに戻したときに、最も効率よく遺伝子発現を抑制できることを示す。
まず、図5Aに示すように、FLuc 2900の配列を有するdsRDC-8のガイド鎖及びパッセンジャー鎖のDNAを、二重鎖部分の5’端及び3’端より1番目と2番目の2塩基、2番目と3番目の2塩基、または3番目と4番目の2塩基をRNAに戻したsiNA(それぞれ、8G12P12、8G23P23、8G34P34と称する)を作製し、RLuc-E6融合遺伝子とFLuc遺伝子を発現するRLE6-FL-SiHa-10細胞に導入して、48時間後、FLuc活性とRLuc活性の測定をおこなった。図5Bは、各濃度(pM)におけるルシフェラーゼ活性をプロットしたグラフを示した。図5Bに示すように、抑制活性において8G23P23は8G12P12と同様の挙動を示し、dsRDC-6や8G34P34に比べて抑制活性が強かった。
[実施例6]
本実施例では、siRNAは細胞毒性が強いこと、dsRDCは細胞毒性が弱く、dsRDCのガイド鎖及びパッセンジャー鎖のDNAを5’端及び3’端より順次RNAに戻すと、両側で3個までRNAに戻しても、細胞毒性が増強しないことを示す。
まず、FLucを標的としたFLuc 2900及びその置換体(1nM)をもちいて、HeLa細胞に対する細胞毒性を調べ、グラフにした。
図6に示したように、HeLa細胞において、いずれの置換体(dsRDC-6、8G12P12、8G12P123、9G123P123)も、siRNAに比べ有意(p<0.01)に低い細胞毒性を示した。
[実施例7]
本実施例では、dsRDCにおいて置換したDNAを、両側鎖で、5’端及び3’端より2塩基ずつRNAに戻したときに、細胞生存に影響を与えず、最も効率よく遺伝子発現を抑制できることを示す。
ここでは、HPV16 E6E7陽性ケラチノサイトおよび陰性ケラチノサイトの混合培養を用いたHPV16 高度異型上皮/早期癌病変モデルを利用した。HPV16 E6E7陽性ケラチノサイトでは、siNAによってHPV16の遺伝子発現を抑制すると増殖することができない。一方、陰性ケラチノサイトでは、siNAが細胞毒性を示すと、細胞の生存が維持できない。従って、HPV16 E6E7陽性ケラチノサイトに対しては増殖抑制し、HPV16 E6E7陰性ケラチノサイト対しては、細胞毒性を示さないsiNAが好ましい。そこで、これらを混合培養した細胞に、HPV16 E6を標的としたsiNA(497)を導入し、その細胞増殖抑制能や細胞毒性を調べた。
具体的には、GFP導入HPV16 E6E7陽性ケラチノサイト(HDK1E6E7-EGFP)とルシフェラーゼ導入HPV16 E6E7陰性ケラチノサイト(HDK1T-Luc)を2:1の細胞比で混和し、総細胞数5000で4ウェルチェンバースライドに播種した。翌日Lipofectamine RNAiMAXを用いてsiRNA、dsRDC-6、8G12P12、または9G123P123の導入を行った(終濃度0.5 nM)。トランスフェクション5日後、PBSで洗浄した後、4%パラホルムアルデヒドにより室温で1時間固定した。PBSにて洗浄後、DAPIを用いて核染色し、蛍光顕微鏡にて観察した。それぞれ無作為に4視野における総細胞数とGFP陽性および陰性細胞数を数え、mockに対する割合(%)を算出した。実験は3重(トリプリケート)でおこない、平均±標準偏差を算出した。その結果、dsRDC-8G12P12は、siRNAにくらべて、HPV16 E6E7陰性ケラチノサイトに対して有意に低い細胞毒性を示し(p<0.001)、またsRDC-8G12P12およびsRDC-9G123P123は、dsRDC-6.0よりも、HPV16 E6E7陽性ケラチノサイトに対する強い増殖抑制効果を示した(p<0.05)。なお、この結果を図7Aにグラフ化し、各siNAの効果を表17にまとめた。また、その時の蛍光顕微鏡観察像を図7Bに示した。
表17及び図7Aに示すように、sRDC-8G12P12は、細胞毒性が最も低く、腫瘍細胞数は顕著に減少させた。
図7Bでは、細胞が大きく明るく緑色に光っているのがHPV16 E6E7陽性ケラチノサイトであり、核だけが小さく暗く青色に光っているのがHPV16 E6E7陰性ケラチノサイトである。siRNAやsRDC-9G123P123を用いた場合、どちらの細胞も死んでしまって、ほとんど残存していない。一方、dsRDC-6.0ではHPV16 E6E7陽性ケラチノサイトがかなり残存していることがわかる。これらに対し、sRDC-8G12P12を用いた場合、HPV16 E6E7陰性ケラチノサイトはかなり残存しているにもかかわらず、HPV16 E6E7陽性ケラチノサイトは顕著に減少している。
このように、置換したDNAを、両側鎖で、5’端及び3’端より2塩基ずつRNAに戻したときに、細胞毒性が最も低く、それにもかかわらず効率よく遺伝子発現を抑制できた。
[実施例8]
本実施例では、正常細胞と腫瘍細胞に対し、腫瘍細胞特異的に細胞死を起こさせるsiRNAを導入し、正常細胞生存率/腫瘍細胞生存率を指標とすることにより、本発明のsiNAが最も副作用の少ない医薬として有効であることを示す。
まず、腫瘍細胞であるHPV16陽性FL-SiHa-2細胞に対し、497、752、及びそれらの置換体(即ち、siRNA、dsRDC-6、8G12P12、9G123P123、各2nM)を導入し、HPV16の遺伝子発現を抑制することにより細胞死を起こさせ、その細胞死を指標に各2本鎖ポリヌクレオチドの遺伝子発現抑制効果を調べた。ここで、細胞生存率は、実施例6と同様に算定し、腫瘍細胞の生存率を、siRNAを用いた場合、<各siRNAによる細胞生存率/対照siRNAによる細胞生存率>として評価し、dsRDC-6及びその置換体を用いた場合、<各siNAによる細胞生存率/対照dsRDC-6による細胞生存率>として評価した。ここでも、実験は3重(トリプリケート)でおこない、平均±標準偏差を算出した。その結果を図8及び表18に示す。
次に、正常細胞として、HPV16陰性HeLa細胞に対し、FL-SiHa-2細胞と同様に各siNAを導入し、細胞生存率を測定し、評価した。その結果を図8及び表19に示す。
そして、各siNAの平均値について<正常細胞の生存率/腫瘍細胞の生存率>を算出し、副作用の少ない医薬となる可能性を評価した。腫瘍細胞の生存率が低く、正常細胞の生存率が高いほど、副作用の少ないと考えられるので、この値が大きいほど医薬として有望になる。
このように、本発明に係るsiNAである8G12P12や9G123P123は、siRNAやdsRDC-6に比べ、医薬として有効であることがわかる。
[実施例9]
本実施例では、dsRDCにおいて置換したDNAを、両側鎖で、5’端及び3’端より2塩基ずつRNAに戻しても、血清中で安定に存在することを示す。
まず、siNA、dsRDC-6、8G12P12または9G123P123(50μM)にウシ胎児血清を1:1で混和し、37℃でインキュベーションし、図9に示した各時間に核酸抽出液(Isogen社)を加えて核酸を精製後、10-20% ポリアクリルアミドゲルにて電気泳動した。
図9に示されるように、インキュベーション30分後、dsRDC-6とdsRDC-8G12P12のバンドの位置は、あまり変化がないのに比べ、siRNAとdsRDC-9G123P123は移動度が大きくなっており、これらのsiNAが分解によって短くなっていた。このように、両側鎖で、5’端及び3’端より2塩基ずつRNAに戻しても、DNAに置換したsiNAと同様に安定であった。

Claims (7)

  1. パッセンジャー鎖である第一の鎖とガイド鎖である第二の鎖から成り、二重鎖領域が19−23塩基長であって、当該二重鎖領域において、以下の(1)〜(4)の全ての領域がRNAであって(1)と(3)のRNA領域の塩基数が同一であり、残りの領域がDNAである二本鎖ポリヌクレオチドを含有する遺伝子発現阻害剤。
    (1)第一の鎖の当該二重鎖領域の最も5’側の塩基から数えて9乃至15塩基までの領域
    (2)第一の鎖の当該二重鎖領域の最も3’側の塩基から数えて3塩基までのうちで連続する2塩基以上の領域
    (3)第二の鎖の当該二重鎖領域の最も3’側の塩基から数えて9乃至15塩基までの領域
    (4)第二の鎖の当該二重鎖領域の最も5’側の塩基から数えて3塩基までのうちで連続する2塩基以上の領域
  2. 第一の鎖の当該二重鎖領域の最も3’側の塩基から数えて1番目と2番目の2塩基及び第二の鎖の当該二重鎖領域の最も5’側の塩基から数えて1番目と2番目の2塩基がRNAである、請求項1に記載の遺伝子発現阻害剤。
  3. 第一の鎖の当該二重鎖領域の最も3’側の塩基から数えて2番目と3番目の2塩基及び第二の鎖の当該二重鎖領域の最も5’側の塩基から数えて2番目と3番目の2塩基がRNAである、請求項1に記載の遺伝子発現阻害剤。
  4. 前記二本鎖ポリヌクレオチドを構成する二本のポリヌクレオチド鎖のうち、少なくとも一方が、その3’末端に、1−3塩基のヌクレオチドから成るオーバーハングを有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の遺伝子発現阻害剤。
  5. 前記オーバーハングを構成する前記ヌクレオチドがDNAであることを特徴とする、請求項4に記載の遺伝子発現阻害剤。
  6. 細胞内での遺伝子発現阻害方法であって、
    請求項1〜5のいずれか1項に記載の遺伝子発現阻害剤を、前記細胞(ヒト個体内の細胞を除く)に導入することを特徴とする方法。
  7. 遺伝子発現を阻害するための二本鎖ポリヌクレオチドのスクリーニング方法であって、
    パッセンジャー鎖である第一の鎖とガイド鎖である第二の鎖から成り、二重鎖領域が19−23塩基長であって、当該二重鎖領域において、
    (1)第一の鎖の当該二重鎖領域の最も5’側の塩基から数えて9乃至15塩基
    (2)第二の鎖の当該二重鎖領域の最も3’側の塩基から数えて9乃至15塩基
    が同数の塩基からなるRNAであって、残りの領域がDNAであり、前記遺伝子発現の阻害活性を有する二本鎖ポリヌクレオチドにおいて、
    (1)第一の鎖の当該二重鎖領域の最も3’側の塩基から数えて3塩基までのうちで連続する2塩基以上の領域
    (2)第二の鎖の当該二重鎖領域の最も5’側の塩基から数えて3塩基までのうちで連続する2塩基以上の領域
    の両方の領域をRNAに戻した変異二本鎖ポリヌクレオチドを作成する工程と、
    前記変異二本鎖ポリヌクレオチドについて、前記遺伝子発現の阻害活性と細胞毒性を調べる工程と、を含むスクリーニング方法。
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