JP5999275B2 - 空気清浄機 - Google Patents

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Description

本発明は、吸込んだ空気を清浄化して吹出す機能を備えた空気清浄機に関する。
従来技術として、例えば特許文献1に記載されているように、水平方向にスイングする可動式のルーバーを備えた空気清浄機が知られている。従来技術の空気清浄機は、例えば広い室内の空気を効率よく清浄化するために、ルーバーを左右にスイングしながら、センサにより各方向の空気の汚れを検出する構成としている。
日本特開2006−57919号公報
上述した従来技術では、ルーバーを左右にスイングして部屋全体の空気を清浄化するようにしている。しかしながら、空気清浄機の設置環境(例えば空気清浄機が設置される部屋の広さ、室内における空気清浄機、家具等の配置)によっては、ルーバーを左右にスイングしても、部屋の隅々まで空気を循環させるのが難しい場合がある。即ち、従来技術では、空気清浄機の設置環境によって室内の空気の清浄化状態が大きな影響を受けるので、部屋全体の空気を安定的に清浄化するのが難しいという問題がある。
本発明は、上述の課題を解決するためになされたもので、多様な設置環境において室内の気流を適切に制御し、部屋全体の空気を安定的に清浄化することが可能な空気清浄機を提供することを目的としている。
この発明に係る空気清浄機は、室内の空気を吸込む吸込口と当該空気を吹出す吹出口とを有するケーシングと、吸込口からケーシングの内部に空気を吸込んで当該空気を吹出口から吹出すファン装置と、ケーシングの内部を流れる空気を清浄化する清浄化装置と、吹出口から吹出す吹出し空気の風向、風量及び風速である3つの送風パラメータのうち、少なくとも1つの送風パラメータを変更することが可能な送風可変手段と、少なくとも部屋の壁までの距離を含む当該部屋の広がりに関する情報を室内情報として検出する情報検出手段と、情報検出手段の向きを変化させることが可能な検出方向可変手段と、室内情報に基いて送風可変手段を駆動することにより、吹出し空気が室内を循環してからケーシングの位置に戻る循環気流を形成するように送風パラメータを制御する制御装置と、を備えている。
この発明によれば、部屋の広さ、障害物の配置等が異なる多様な設置環境において、例えば部屋全体を循環する循環気流が形成されるように室内の気流を適切に制御することができる。従って、空気の滞留、人に与える不快感等を抑制しつつ、部屋全体の空気を安定的に清浄化することができる。
本発明の実施の形態1による空気清浄機を示す縦断面図である。 空気清浄機を図1中の矢示A−A線に沿って破断した横断面図である。 本発明の実施の形態1による空気清浄機の制御系統を示す構成図である。 本発明の実施の形態1において、循環気流の具体例を示す斜視図である。 本発明の実施の形態1において、空気清浄機で実行される制御の一例を示すフローチャートである。
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。なお、本明細書で使用する各図においては、共通する要素に同一の符号を付し、重複する説明を省略するものとする。また、本発明は以下の実施の形態に限定されることはなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。
実施の形態1.
まず、図1から図5を参照して、本発明の実施の形態1について説明する。図1は、本発明の実施の形態1による空気清浄機を示す縦断面図である。また、図2は、空気清浄機を図1中の矢示A−A線に沿って破断した横断面図である。これらの図に示すように、本実施の形態では、床面設置型の空気清浄機1を例示している。空気清浄機1は、ケーシング2、台座3、吸込口4、吹出口5、ファン装置6、プレフィルタ7、埃帯電部8、埃帯電部保護フィルタ9、脱臭フィルタ10、集塵フィルタ11、可動ルーバー12、駆動部13、首振り機構14、制御装置18等を備えている。
ケーシング2は、例えば略四角形の角筒状に形成され、部屋の床面に設置される台座3により水平方向に回転可能な状態で支持されている。なお、以下の説明では、ケーシング2の側面部のうち、主として室内の空間に面して配置される部分を前面部と表記し、前面部と対向する部分を後面部と表記する。また、ケーシング2の前面部側となる方向を前方と表記し、前方からみたケーシング2の水平方向の両側を左右方向と表記する。空気清浄機1は、後述の図4に示すように、例えば部屋の何れかの壁に近い位置で床面上に設置され、ケーシング2の後面部を当該壁面に向けると共にケーシング2の前面部を室内の空間に向けた状態で使用される。
吸込口4は、室内の空気をケーシング2の内部に吸込むための開口部であり、図2に示すように、例えばケーシング2の前面部の左右両側に設けられている。吹出口5は、ケーシング2の内部に吸込んだ空気を外部に吹出すための開口部であり、ケーシング2の前面部から上面部にかけて設けられ、ケーシング2の左右方向に延在している。なお、以下の説明では、吹出口5から吹出す空気を「吹出し空気」と表記する場合がある。ケーシング2の内部空間のうち、吸込口4から吹出口5に至る風路には、プレフィルタ7、埃帯電部8、埃帯電部保護フィルタ9、脱臭フィルタ10、集塵フィルタ11、ファン装置6及び可動ルーバー12が上流から下流に向けて順に配置されている。また、ケーシング2の内部において風路以外の空間には、制御装置18が収容されている。
ファン装置6は、吸込口4からケーシング2の内部に空気を吸込んで当該空気を吹出口5から吹出すもので、制御装置18により回転数を制御可能な電動ファン等により構成されている。ファン装置6は、吹出口5から吹出す空気の風量をファン装置6の回転数に応じて変更することが可能な送風可変手段の具体例を構成している。プレフィルタ7は、図2に示すように、ケーシング2内の風路の最上流部に配置され、吸込口4から吸込まれる空気中の比較的大きな塵埃等を捕集するものである。埃帯電部8は、空気中の塵埃に帯電させるもので、プレフィルタ7と埃帯電部保護フィルタ9との間に配置されている。脱臭フィルタ10は、空気中の臭気分子を捕捉するもので、集塵フィルタ11は、空気中の塵埃を捕捉するものである。
プレフィルタ7、埃帯電部8、埃帯電部保護フィルタ9、脱臭フィルタ10及び集塵フィルタ11は、ケーシング2の内部を流れる空気を清浄化する清浄化装置の具体例を構成している。ここで、「清浄化」とは、例えば空気中に浮遊する塵埃、煙、ウイルス、菌、カビ、アレルゲン、臭気分子等からなる汚染物質を除去することを意味するもので、より具体的には、これらの汚染物質を捕集したり、不活性化したり、吸着及び分解する動作を意味している。なお、清浄化装置としては、電極間に高電界または放電生成物を発生させて汚染物質を除去する電圧印加デバイス等を用いてもよい。
可動ルーバー12は、吹出し空気の風向を前方と上方との間で上下方向にスイングし、風向の仰角を変更するものである。吹出し空気は、可動ルーバー12と等しい仰角をもって吹出口5から吹出す構成となっている。なお、本明細書において、「仰角」とは、床面と平行な水平方向を基準として、上方に傾斜した角度を意味するものとする。即ち、仰角=0°は水平方向を表し、仰角=90°は鉛直方向の真上を表している。可動ルーバー12は、例えばケーシング2の左右方向に延在する細長い平板等により形成されている。可動ルーバー12の基端側は、駆動部13を介してケーシング2に取付けられ、可動ルーバー12の先端側は、駆動部13により上下方向に揺動可能となっている。図1では、例えば2個の可動ルーバー12を吹出口5に設けた場合を例示したが、本発明は、1個のみまたは3個以上の可動ルーバー12を備える構成としてもよい。
駆動部13は、可動ルーバー12を揺動可能に支持する支軸と、この支軸を回転させるアクチュエータ(図示せず)とを備えている。また、首振り機構14は、吹出口5が設けられたケーシング2を台座3上で左右方向に回転させるもので、ケーシング2と台座3との間に設けられている。可動ルーバー12、駆動部13及び首振り機構14は、吹出し空気の風向を上下方向及び左右方向に変化させることが可能な送風可変手段の具体例を構成している。また、空気清浄機1は、駆動部13を個別に駆動して2個の可動ルーバー12をそれぞれ異なる角度に揺動させることにより、吹出口5の開口面積を変更する機能も有している。これにより、可動ルーバー12及び駆動部13は、吹出し空気の風速を吹出口5の開口面積に応じて変更することが可能な送風可変手段の具体例を構成している。
(制御系統)
次に、図3等を参照して、空気清浄機1の制御系統について説明する。図3は、本発明の実施の形態1による空気清浄機の制御系統を示す構成図である。空気清浄機1は、内部検出装置15及び外部検出装置16を含むセンサ系統と、空気清浄機1を操作するための操作部17と、空気清浄機1の運転状態を制御する制御装置18とを備えている。内部検出装置15は、ケーシング2内に吸込んだ空気中の汚染物質の量を検出するもので、ケーシング2内において、例えば吸込口4の開口端とプレフィルタ7との間に配置されている。内部検出装置15は、例えば埃センサ、ガスセンサ、風速センサ等により構成されるか、または、これらのセンサを組合わせた複合型センサにより構成されている。
ここで、埃センサは、半導体素子、光学素子等により構成され、空気中における塵埃の濃度を検出する。ガスセンサは、半導体素子等により構成され、臭気分子、VOC等の有害ガスを検出する。風速センサは、超音波素子等により構成され、風速の変動を電流値に変換する。そして、これらのセンサによる検出結果は、内部検出装置15から制御装置18に出力される。なお、上記各センサの組合わせは一例に過ぎないもので、本発明は、上記各センサの組合わせによる内部検出装置15に限定されるものではない。一例を挙げれば、内部検出装置15は、温度センサ、湿度センサ、異なる種類のガスを検出する複数種類のガスセンサ等を備える構成としてもよい。
外部検出装置16は、空気清浄機1が設定された部屋の室内情報を検出するもので、情報検出手段の具体例を構成している。室内情報とは、例えば空気清浄機1が設置された部屋の広がり、室内の家具、人及び動物を含む障害物の位置等に関する情報であり、換言すれば、室内の壁及び障害物と、空気清浄機1との位置関係に関する情報として定義される。室内情報には、少なくとも空気清浄機1から部屋の壁までの距離が含まれている。
また、外部検出装置16は、例えば距離センサ、動体センサ、サーモグラフィ、湿度センサ等を組合わせた複合型センサにより構成されている。距離センサは、音波または電磁波を利用して、室内における壁、天井、家具、人、動物等を含む検出対象物までの距離を検出する非接触式のセンサである。具体例を挙げると、距離センサは、超音波センサ、光センサ、画像認識センサ等により構成されている。動体センサは、光センサ、温度センサ等により構成され、照度、温度等の変化を検出することにより、人間及び動物等の動きを捕捉する。サーモグラフィは、人及び動物と、無生物である障害物とを温度に基いて識別することができる。また、湿度センサの出力は、上記各センサの感度を空気中の湿度に応じて補正するときに用いられる。
なお、上述した外部検出装置16の構成は一例に過ぎない。即ち、本発明による外部検出装置16は、少なくとも部屋の壁までの距離を検出する距離センサを備えていればよいもので、上記各センサの組合わせに限定されるものではない。また、外部検出装置16を構成する距離センサとしては、超音波センサを用いるのが好ましい。超音波センサは、発射した超音波が検出対象物で反射して戻ってくるまでの時間に基いて、当該検出対象物までの距離を検出するものである。この検出原理は、光センサ等と同様であるが、超音波は光よりも速度が遅いので、短い距離を検出するのに適している。また、超音波センサによる距離の検出処理は、画像認識センサ等による画像処理よりも応答性が高い。
しかも、超音波センサの検出可能距離は、例えば数cmから20m程度であり、一般的な部屋の広さを検出するのに適している。また、可聴領域を外れる20〜40kHzの帯域では、波長が長いので、振幅(即ち、音圧)を増加させ易くなり、検出可能距離を延ばすことができる。より詳しく述べると、20kHz未満の領域では、上記帯域と比較して検出可能距離を延ばすことができるが、人の耳に聴こえる音となるので、大きな音圧を用いるのが難しい。一方、40kHzを超える領域では、検出可能距離が短くなる。従って、外部検出装置16に用いる超音波センサの周波数帯域は、例えば20〜40kHz、好ましくは30〜40kHzの帯域に設定される。
外部検出装置16は、上述のように距離センサ等を備えているので、特定の検出方向に対して室内情報の検出が可能となる指向性を有している。このため、空気清浄機1は、外部検出装置16の向きを変更することが可能な検出方向可変手段を備えており、室内の広い範囲で室内情報を走査するように構成されている。具体的に述べると、図1に示す一例では、可動機構を有する外部検出装置16がケーシング2の前面部に設けられている。この可動機構は、外部検出装置16の向きを前方と上方との間で上下方向にスイングさせる検出方向可変手段を構成している。一方、首振り機構14は、外部検出装置16の向きを左右方向にスイングさせる検出方向可変手段を構成している。
また、本発明では、例えば図1中に仮想線で示す変形例により、検出方向可変手段を実現してもよい。この変形例では、外部検出装置16を可動ルーバー12の先端側に設けている。従って、外部検出装置16の向きは、駆動部13により前方と上方との間で上下方向にスイングされ、首振り機構14により左右方向にスイングされる。即ち、この変形例において、検出方向可変手段は、可動ルーバー12、駆動部13及び首振り機構14により実現されている。
なお、上記変形例では、外部検出装置16を必ずしも可動ルーバー12に設ける必要はない。具体的に述べると、外部検出装置16は、例えば駆動部13により可動ルーバー12と一緒に揺動される他の構造物に設けてもよい。このように構成される変形例によれば、可動ルーバー12と外部検出装置16の向きを共通の駆動部13により一緒に変更することができるので、空気清浄機1の構成を簡略化することができる。特に、外部検出装置16を可動ルーバー12に設けた場合には、この効果を顕著に発揮できる上に、簡単な構成によって外部検出装置16の向きと風向とを一致させることができる。これにより、外部検出装置16の向きと風向とを一緒に変化させながら、後述の汚れマッピング処理を円滑に実行することができる。
操作部17は、空気清浄機1のユーザが各種の設定及び操作を行うために操作するもので、図1に示すように、例えばケーシング2の前面部に設けられている。操作部17は、空気清浄機1を起動及び停止するための電源スイッチと、空気清浄機1の運転状態等を表示する表示部とを備えている。また、操作部17は、制御装置18に対して双方向の通信が可能な状態で接続されている。
制御装置18は、空気清浄機1の運転状態を制御するもので、図示しない演算処理装置、入出力ポート及び記憶回路等を備えている。制御装置18の入力側には、図3に示すように、内部検出装置15及び外部検出装置16を含むセンサ系統が接続されている。制御装置18の出力側には、ファン装置6、埃帯電部8、駆動部13、首振り機構14等を含むアクチュエータが接続されている。そして、制御装置18は、センサ系統の出力に基いてアクチュエータを駆動することにより、空気清浄機1を作動させる。
(空気清浄機の制御)
本実施の形態による空気清浄機1は上述の如き構成を有するもので、次に、その動作について説明する。まず、基本的な動作について述べると、空気清浄機1の作動時には、制御装置18により埃帯電部8及びファン装置6が駆動される。これにより、ケーシング2の内部には、吸込口4から空気が吸込まれ、この空気は、プレフィルタ7、埃帯電部8、埃帯電部保護フィルタ9、脱臭フィルタ10及び集塵フィルタ11を順次通過することにより清浄化される。そして、清浄化された空気は、ファン装置6及び可動ルーバー12を経由して吹出口5から外部に吹出される。
このとき、制御装置18は、駆動部13により可動ルーバー12を揺動させ、当該揺動角に応じて上下方向における吹出し空気の風向を制御する。また、首振り機構14によりケーシング2を回転させ、当該回転角に応じて左右方向における吹出し空気の風向を制御する。一方、制御装置18は、ファン装置6の回転数に応じて吹出し空気の風量を制御する。また、2個の可動ルーバー12を個別に揺動させることにより吹出口5の開口面積を変更し、当該開口面積に応じて吹出し空気の風速を制御する。このように、空気清浄機1は、吹出し空気の風向、風量及び風速からなる3つの送風パラメータをそれぞれ制御可能に構成されている。
(循環気流制御)
また、制御装置18は、外部検出装置16により検出した室内情報に基いて送風可変手段を駆動することにより、室内に循環気流を形成する循環気流制御を実行する。循環気流とは、吹出し空気が室内(好ましくは、部屋全体)を循環してから空気清浄機1の位置に戻る気流を意味している。図4は、本発明の実施の形態1において、循環気流の具体例を示す斜視図である。循環気流制御では、上記3つの送風パラメータのうち少なくとも1つの送風パラメータを制御することにより、吹出し空気が循環気流を形成するように当該送風パラメータを最適化する。
(室内走査処理)
詳しく述べると、循環気流制御では、まず、外部検出装置16により室内を走査して部屋の広さ、障害物の位置等を検出する室内走査処理を実行する。室内走査処理では、前述した可動機構または駆動部13により、外部検出装置16の向きを前方と上方との間で上下方向に変化させながら、外部検出装置16の距離センサにより距離を検出する。このとき、空気清浄機1の前方側では部屋の壁との距離が検出され、上方側では天井との距離が検出されるので、検出された距離の最大値は、天井と壁との境目となる角隅までの距離Lとなる。
続いて、循環気流制御では、首振り機構14により外部検出装置16の向きを左右方向に変化させながら、吹出し空気が到達可能な複数の箇所で距離Lを検出し、検出された各距離Lのうちの最大値である距離Lmaxを取得する。このとき、距離Lの検出動作は、互いに離れた複数の箇所で実行してもよいし、外部検出装置16の向きを変更しながら連続的に実行してもよい。また、本発明では、外部検出装置16の向きを左右方向に変化させる動作を行わずに、空気清浄機1の前方で検出された距離Lをそのまま距離Lmaxとして採用してもよい。
そして、制御装置18は、距離Lmaxが得られるときの外部検出装置16の向きの仰角γs及び回転角ωsと、距離Lmaxとを記憶する。ここで、回転角ωsは、外部検出装置16の向きが予め設定された初期位置から水平方向に回転した角度を表している。これらの距離Lmax、仰角γs及び回転角ωsには、空気清浄機1が設置された部屋の広さに関する情報が含まれている。即ち、部屋の広さは、距離Lmax及び仰角γsに基いて、部屋の広さ=Lmax×cos(γs)として求められる。
また、距離Lmax、仰角γs及び回転角ωsには、室内で空気清浄機1から最も遠い壁(以下、最遠壁と表記する)に関する情報が含まれている。本願発明者の研究によれば、この最遠壁は、図4に示すように、吹出し空気が当ったときに循環気流を部屋全体に形成するのに最適な壁であることが判明している。より詳しく述べると、最遠壁と天井との境目となる角隅から一定の距離dだけ手前側に位置する天井の部分(目標位置P)に向けて空気を吹出せば、循環気流を部屋全体に形成することができる。なお、距離dは、部屋の大きさ応じて変化するもので、例えば17畳以上の広い部屋では、最遠壁までの距離の半分よりも小さな値となり、一例を挙げれば、d=2m程度となることが確認された。
このように、室内走査処理によれば、循環気流を部屋全体に形成するのに適した風向の目標位置Pを決定することができる。なお、上述した室内走査処理は、循環気流を形成するのに最適な壁を特定する壁特定手段の具体例を構成している。
次の処理では、吹出し空気が天井の目標位置Pに到達するように、仰角γs及び回転角ωsに基いて風向を設定し、この風向を可動ルーバー12及び首振り機構14により実現する。また、目標位置Pに到達した吹出し空気が循環気流を形成するように、距離Lmaxに基いて風量を設定し、この風量をファン装置6の回転数制御により実現する。また、循環気流制御では、例えば室内の広さ、人及び動物の有無等に応じて、2個の可動ルーバー12により吹出口5の開口面積を調整し、強い風を吹付けることで不快感を与えないように吹出し空気の風速を適切に制御してもよい。
このようにして循環気流制御を行うことにより、吹出し空気は、図4に示すように、天井の目標位置P及び最遠壁に当ってから床面に沿って空気清浄機1に戻るようになる。従って、循環気流制御によれば、広さが異なる様々な部屋において、部屋全体を循環する循環気流を安定的に形成することができ、部屋の各部に存在する汚染物質を空気清浄機1の位置に効率よく集めて、室内空気の清浄化に必要な時間を短縮することができる。また、循環気流制御では、首振り機構14により外部検出装置16の向きを左右方向に変化させながら最遠壁の検出動作を行うので、様々な部屋の形状に対して最遠壁を安定的に検出することができる。
また、循環気流制御では、循環気流を形成可能な基準の仰角θaと、この仰角θaよりも大きな仰角として設定された最大仰角θbとの間で、吹出し空気の風向を上下方向にスイングさせ、このスイング動作を繰返す構成としてもよい。ここで、基準の仰角θaは、風向が天井の目標位置Pに到達するように設定されたときの当該風向の仰角である。また、最大仰角θbは、仰角θaよりも大きな任意の角度に設定されるもので、90°に設定してもよいし、外部検出装置16により検出された室内情報に基いて変化させる構成としてもよい。この制御によれば、部屋全体に循環気流を形成しつつ、空気清浄機1からみて真上の天井付近に滞留する空気にも気流を形成することができ、室内の空気を効率よく清浄化することができる。
ここで、床面設置型の空気清浄機1において、循環気流制御を実行することで得られる効果について説明する。一般に、室内の塵埃等は床面に多く存在するので、空気清浄機1は、塵埃を効率よく除去するために床面に設置するのが好ましい。一方、部屋の広さ等を把握して気流を最適化する制御は、空気清浄機1から前方の壁までの水平距離を検出することで可能になるが、床面上には家具等の障害物が設定されていることが多いので、空気清浄機1の位置から水平距離を安定的に検出するのは困難である。このため、本実施の形態では、外部検出装置16により最遠壁と天井との間の角隅を検出する。そして、この角隅までの距離Lmax及び角隅の仰角γsに基いて推定される部屋の広さに応じて、吹出し空気の風向、風量及び風速のうち少なくとも1つの送風パラメータを制御し、吹出口5から前方の斜め上方に向けて空気を吹出す構成としている。
この構成によれば、家具の配置等が異なる多様な部屋において、部屋の広さに相当する室内情報を斜め上方の空間で安定的に検出することができ、当該検出動作が家具等により邪魔されるのを抑制することができる。また、循環気流を形成する空気を吹出口5から斜め上方に向けて吹出すことができるので、吹出し空気の流れが家具等に当って乱されるのを抑制し、部屋の広さに応じた循環気流を安定的に形成することができる。従って、床面設置型の空気清浄機1の利点を活かしつつ、その性能を十分に発揮させることができる。
なお、部屋の広さ、形状等は多様であるから、首振り機構14により外部検出装置16の向きを水平方向に変化させるときの可変範囲、即ち、水平方向の検出対象範囲は、空気清浄機1の正面に位置する壁(通常は最遠壁となることが多い)から左右両側の壁までの範囲をカバーするように設定するのが好ましい。また、水平方向の検出対象範囲は、室内情報の検出結果に基いて変更する構成としてもよく、最遠壁と天井との間の角隅が検出可能な範囲であれば、必ずしも首振り機構14により実現可能な最大の可変範囲に設定する必要はない。また、外部検出装置16の向きを上下方向に変化させるときの可変範囲、即ち、上下方向の検出対象範囲は、少なくとも水平方向から鉛直方向の真上までの範囲(向きの仰角γで表せば、0≦γ≦90°の範囲)を含むように設定するのが好ましい。これにより、様々な形状を有する部屋において、最遠壁と天井との間の角隅を安定的に検出することができる。
また、本実施の形態では、後述のように、外部検出装置16により検出される距離の変化量に基いて壁及び天井と障害物とを識別し、送風状態を制御する。この制御を実行するにあたり、室内で障害物を検出すべき範囲は、循環気流を形成するのに必要な風向の可変範囲よりも広い範囲となることが多い。このため、外部検出装置16の検出対象範囲は、風向の可変範囲を少なくとも範囲の一部として含む広い範囲に設定するのが好ましい。これにより、室内の広い範囲で障害物を検出して対処することができる。
次に、図5を参照して、制御装置18による制御の具体例について説明する。図5は、本発明の実施の形態1において、空気清浄機で実行される制御の一例を示すフローチャートである。なお、この図に示すルーチンは、外部検出装置16を可動ルーバー12に設けた構成を前提として説明する。図5に示すルーチンでは、まず、ステップS1において、空気清浄機1が電源に接続されたことを検出すると、ステップS2では、駆動部13及び首振り機構14を駆動することにより、可動ルーバー12及び吹出口5を初期位置に移動する。即ち、可動ルーバー12の仰角θと、吹出口5の水平方向の回転角ωとを初期値(θ=θ0、ω=ω0)に設定する。
次に、ステップS3では、後述のループ処理で用いる変数i,j,kを零に初期化する。ここで、i,j,kは、それぞれループ処理中に仰角θ、回転角ω、ファン装置6の回転数rを切換えるときに何段階目かを数えるカウンタである。詳しく述べると、可動ルーバー12の仰角θは、設定されている可変範囲内でθ0〜θn1まで段階的に変更される。n1は、仰角θを可変範囲内で変化させるときの段階数を表している。そして、i=0とした状態では、仰角θとしてθ0が選択される。また、i=n1とした状態では、仰角θ=θn1に設定される。
これと同様に、吹出口5の回転角ωは、設定されている可変範囲内でω0〜ωn2まで段階的に変更されるもので、n2は、回転角ωを可変範囲内で変化させるときの段階数を表している。ファン装置6の回転数rは、設定されている可変範囲内でr0〜rn3まで段階的に変更されるもので、n3は、回転数rを可変範囲内で変化させるときの段階数を表している。従って、ステップS3では、制御装置18に通電が行われた時点で、仰角θ、回転角ωがそれぞれθ0、ω0に設定された状態となる。なお、上述したi,j,k,n1,n2,n3は自然数である。
次に、ステップS4では、空気清浄機1の電源スイッチが操作されたか否かを判定し、操作された場合には、ステップ5によりファン装置6を駆動し、送動作を開始する。続いて、ステップS6では、室内空間の各部位の汚れ状態を検出して検出結果を部位毎に記憶する汚れマッピング処理を実行する。制御装置18の記憶回路には、室内各部の汚れ状態を記憶する汚れ記憶マップが設けられている。
汚れ記憶マップは、例えば3次元のデータマップにより構成され、仰角θ、回転角ω、回転数rを引数として決定される各格子点毎に汚れの濃度Cijkが記憶されている。なお、濃度Cijkの添字i,j,kは、前述のカウンタに対応するもので、それぞれ0〜n1、0〜n2、0〜n3の範囲で変化する。また、本発明では、必ずしも汚れの濃度を指標として用いる必要はなく、汚れ度合いと相関がある他の物理量を汚れ記憶マップに記憶させる構成としてもよい。
汚れマッピング処理では、まず、仰角θ=θ0、回転角ω=ω0及び回転数r=r0の条件において、吹出口5から室内に空気を吹出し、所定の時間T1だけ空気清浄動作を実行する。その後、カウンタiを1ずつ増加させては時間T1だけ空気清浄動作を実行する動作を段階数n1まで繰返す。このとき、制御装置18は、室内を循環してから吸込口4に吸込まれた空気中の汚れを内部検出装置15により検出し、検出結果に基いて得られた濃度Cijkを汚れ記憶マップに記憶する。この結果、最初の処理では、回転角ω=ω0及び回転数r=r0の条件において、仰角θ0〜θn1に対応する各部位の濃度C000,C100,C200,…,Cn100が取得される。
次に、カウンタjを1だけ増加し、回転角ω=ω1及び回転数r=r0とした条件において、上述のように仰角θをθ0〜θn1の範囲で変更しつつ、各仰角毎に濃度Cijkを検出する。これにより、回転角ω=ω1での仰角θ0〜θn1に対応する各部位の濃度C010,C110,C210,…,Cn1n20が取得される。そして、これと同様の処理を回転角ω2〜ωn2まで繰返すことにより、回転数r=r0において、仰角θと回転角ωとの全組合わせに対応する濃度Cij0が得られる。さらに、カウンタkを増加して回転数rをr1〜rn3の範囲で変化させつつ、それぞれの回転数rにおいて、仰角θと回転角ωとの全組合わせに対応する濃度Cijkを取得する。これらの処理は、図5に示すように、例えば3重のループ処理として実行される。
これにより、汚れマッピング処理では、汚れ記憶マップ上の全格子点の濃度Cijkを更新することができる。なお、上記の例では、仰角θ、回転角ω、回転数rの順に値を変更しているが、この順番は自由に設定してよいものである。また、本発明では、必ずしも仰角θ、回転角ω及び回転数rの全てを変更する必要はない。また、1箇所において空気清浄動作を継続する時間T1は、例えば空気清浄動作により空気を吹出してから、この空気が内部検出装置15の位置に戻るまでに必要な時間、即ち、空気清浄動作による汚れの減少が検出可能となるような時間に基いて設定される。
また、汚れの濃度を検出する個々の検出箇所では、まず、空気清浄動作を開始したときの汚れの濃度を初期濃度c0として検出する。初期濃度c0が予め設定された判定値Xを超えている場合には、汚れた場所に向けて送風していると判定することができる。判定値Xは、例えば空気清浄動作が不要となるような汚れの少ない状態に基いて設定される。なお、初期濃度c0が判定値X以下の場合には、現在の検出箇所が汚れていないものと判定し、空気清浄動作を直ちに終了して次の検出箇所に移行する構成としてもよい。また、本発明では、初期濃度c0の検出を省略し、初期濃度c0は一定の定数として設定しておく構成としてもよい。
次の処理では、時間T1だけ空気清浄動作を行った後の汚れの濃度を終了時濃度c1として検出する。そして、この終了時濃度c1を現在の検出箇所の濃度Cijkとして汚れ記憶マップに記憶する。なお、本実施の形態では、例えば終了時濃度c1が判定値Xを越えた状態でも、空気清浄動作の開始から時間T1が経過した時点で、次の検出箇所に移行する処理を例示している。
通常の検出箇所では、空気清浄動作を開始すると、検出される汚れの濃度が減少し、初期濃度c0>終了時濃度c1となることが多い。しかし、汚れの発生源が定常的である場合には、c0≦c1となることもある。このため、汚れマッピング処理では、個々の検出箇所において、空気清浄動作による汚れの減衰率αを算出し、汚れ記憶マップ上の各格子点に減衰率αijkとして記憶する構成としてもよい。下記数1の式は、初期濃度c0と終了時濃度c1とに基いて減衰率αを算出する方法の一例を示すものである。なお、減衰率αの利用方法については、ステップS7で説明する。
Figure 0005999275
上記数1の式によれば、減衰率を短時間で算出することができ、動作レスポンスの誤差を抑制し、減衰率の算出精度を高めることができる。また、減衰率は、上記の式以外の方法で算出してもよく、例えば初期濃度c0と終了時濃度c1との差分を時間T1で除算することにより、濃度の時間的な変化を減衰率として算出してもよい。また、部屋の広さと相関する係数により減衰率を補正する構成としてもよい。
また、本発明では、汚れマッピング処理の開始前に、前述した室内走査処理を実行して部屋の広さを検出し、当該検出結果に基いて仰角θ、回転角ω及び回転数rの可変範囲を変更したり、当該検出結果に基いて仰角θ、回転角ω及び回転数rの段階数n1,n2,n3を変更する構成としてもよい。この構成によれば、部屋の広さに応じて仰角θ、回転角ω及び回転数rの可変範囲、段階数n1,n2,n3を最適化することができる。即ち、例えば広い部屋では可変範囲を広げて段階数を増加させることにより、汚れマッピング処理の精度を高めることができる。また、狭い部屋では、可変範囲を狭くして段階数を減少させることにより、室内の走査を効率よく行うことができる。
汚れマッピング処理が完了した後には、ステップS7に移行する。ステップS7以降では、室内を走査した範囲で最も汚れていた部位を汚染部位として抽出し、この汚染部位に風向を向けて当該部位の汚れを優先的に清浄化する処理を行う。この処理は風向を微調整しながら、時間T2だけ実行される。ここで、「微調整」とは、風向を汚染部位の近傍で僅かに変更しつつ、汚染部位から戻ってくる空気の汚れ度合いを検出し、当該検出結果に応じて風向をフィードバック制御する動作である。
詳しく述べると、まず、ステップS7では、汚れ記憶マップの各格子点のうち、Cijk≧X、かつ、減衰率αijk≦Yが成立する格子点を抽出する。ここで、Yは空気清浄動作の効果が十分に得られているか否かを判定するための判定値であり、予め設定されている。ステップS7により抽出される格子点は、汚れが許容範囲を超えており、かつ、空気清浄動作により汚れを減らすことが可能な汚染部位に対応している。なお、ステップS7では、減衰率αijkを用いる場合を例示したが、本発明では、減衰率を使用せず、Cijk≧Xのみが成立する格子点を抽出する構成としてもよい。
次に、ステップS8では、抽出した格子点の中にCijk≧Xとなる格子点が存在するか否かを判定する。この判定が成立した場合には、ステップS9に移行し、抽出した格子点の中でCijkが最大となる格子点を選択する。この格子点は、現存する汚染部位中の最汚染部位に対応しているので、当該格子点の汚れの濃度Cijkを最大濃度Cmaxとして記憶し、この格子点に対応する仰角θi、回転角ωj、回転数rkを駆動部13、首振り機構14及びファン装置6により実現する。これにより、吹出し空気の風向が最汚染部位に向いた状態となるので、ステップS10では、最汚染部位に向けて送風し、時間T2だけ空気清浄動作を実行した後に、ステップS8に戻る。
なお、時間T2は、汚染部位の空気を清浄化するのに必要な時間であり、時間T1との大小関係は任意に設定してよいが、時間T1よりも長い時間に設定するのが好ましい。また、Cijk≧Xとなる汚染部位が複数個所存在する場合には、1つの汚染部位に対して時間T2だけ空気清浄動作を実行したら、その部位で清浄化の効果が得られたか否かに関係なく、次の汚染部位に移行するのが好ましい。そして、全ての汚染部位に対して時間T2だけ空気清浄動作を実行したら、汚れマッピング処理を処理を最初から繰返す。このとき、汚れ記憶マップに記憶した濃度Cijkは、風向を変更するたびに更新し、常に最新の汚れ度合いを記憶した状態を保持する。これより、部屋全体を均一に清浄化することができる。
一方、汚染部位が1箇所だけの場合には、汚れが十分に清浄化されるまで、即ち、Cijk<Xが成立するまで、当該汚染部位の空気清浄動作を継続するのが好ましい。また、固定箇所から汚れが発生し続ける場合には、減衰率αijkに基いて空気清浄効果の有無を判断してもよい。そして、効果が認められる場合には、風向を大きく変化させずに、汚れの濃度あるいは減衰速度が所定の数値となるまで汚れを除去し続けるのが好ましい。
上記制御によれば、ステップS8〜S10の処理は、汚れ記憶マップ中にCijk≧Xとなる格子点が存在する限り繰返されることになり、ステップS7で抽出された汚染部位のうち、汚れ度合いが大きい汚染部位から順に空気清浄動作が実行される。そして、全ての汚染部位が清浄化されると、ステップS8の判定が不成立となるので、ステップS11に移行する。ステップS11では、ファン装置6の回転数rを任意に変更して時間T3だけ送風動作を実行した後に、ステップS6に戻る。
ここで、Cijk≧Xの格子点が存在しない場合、即ち、全ての箇所で汚れ濃度Cijkが判定値X未満となった場合には、室内全体が浄化されたことを意味するので、本来であれば、空気清浄動作を停止してもよい。しかし、室内は密閉された空間ではないので、自然な換気が生じることにより、少量であっても全体的に埃が流入し続ける。また、空気清浄動作を一旦行ってから暫く時間が経過すると、室内に新たな汚れが多量に発生する場合がある。このため、空気清浄機1は、室内の汚れの状態を定期的に監視する必要がある。そこで、空気清浄機1は、ステップS11の実行後にステップS6に戻ることにより、空気清浄動作を継続し、室内に流入してくる新たな汚れを除去し続けるのが好ましい。
このとき、ファン装置6の回転数rは、例えば初期設定またはユーザの操作に基いて設定される任煮の回転数rを用いてもよいが、比較的低い回転数に設定するのが好ましい。何故なら、自然換気により室内に流入してくる汚れの量は比較的微量であるため、回転数r(即ち、風量)を小さく抑えても、汚れの清浄化効果は十分に得られるからである。そして、回転数rを必要以上に大きくしないことにより、空気の清浄度を保ちつつ、ファン装置6等の動作音を低減したり、人等に風が当たることで生じる吹かれ感を抑制することができる。従って、空気清浄機1が作動中であることをユーザに意識させることなく、空気清浄動作をスムーズに行うことができる。
また、ファン装置6の回転数rについては、必ずしも一定値にする必要はない。即ち、自然換気により室内に流入してくる汚れの量は、季節、天候、外気等の影響により大きく変動する。従って、回転数rは、内部検出装置15による汚れの検出結果に基いて変更する構成としてもよい。これにより、各種の変動要因による汚れの増加を最小限に抑制し、ユーザの快適性を維持することができる。
一方、ステップS11において、送風動作を継続する時間T3は、ユーザが選択してもよいし、予め設定された値を用いてもよい。さらには、室内の汚れ状態、また、発生した汚れの拡散時間、除去にかかる時間を考慮して、時間T3を変化させる構成としてもよい。これにより、空気清浄動作をより効率よく行うことができる。なお、ステップS6〜S11の処理については、ユーザが停止ボタンを押したり、電源プラグを抜いたりするまで継続するのが望ましい。また、本実施の形態では、全ての汚染部位を清浄化した時点、即ち、ステップS11を実行する時点において、前述した循環気流制御を行う構成としてもよい。
また、上記制御において、減衰率αijkを用いている場合には、個々の汚染部位に対して空気清浄動作を行うときに、減衰率αijkによる判定処理を追加してもよい。具体例を挙げると、減衰率αijkが判定値Y以下の汚染部位では、空気清浄動作の効果が十分に得られないと判断し、他の汚染部位を優先する構成としてもよい。また、判定値Yは、その設定に応じた使い方をすることができる。まず、Y=0に設定した場合について述べる。この場合、αijk≦Yが成立した汚染部位では、空気清浄動作が全く機能していないか、または、塵埃の発生源となっている可能性があるので、その汚染部位が汚れの除去に適していないと判断することができる。
また、任意の汚染部位において、汚れの濃度Cijkが判定値X以下である場合には、減衰率αijk=Xに設定してもよい。何故なら、例えばY=0と設定した場合には、濃度Cijkを僅かでも減衰させることができれば、時間がかかっても綺麗になるまで空気清浄動作を続けることになり、清浄化の効率が低下し易い。この場合、減衰率αijkを上記のように設定すれば、清浄化の効率を向上させることができる。
また、図5には例示していないが、全ての格子点においてαijk≦0が成立する場合には、空気清浄機1が汚れの発生源となっていると判断することができる。この場合には、ファン装置6の作動不良、フィルタ類の寿命等が原因であると判断し、ユーザに対してメンテナンスを促す報知動作を行う構成としてもよい。
また、本実施の形態では、上述した循環気流制御、汚れマッピング処理等による送風動作中に障害物を検出した場合に、当該障害物に気流を当てないように送風状態を制御する人避け制御を実行してもよい。具体例を挙げると、人避け制御では、外部検出装置16の向きを変化させながら検出対象物までの距離を検出し、当該距離が急に大きく変化した場合に、この距離の変化に基いて室内の障害物を認識する。そして、風向が障害物に向いたときには、例えば送風動作を停止する、気流を弱くする等の回避動作を実行する。この制御によれば、人や動物に気流が当って不快感を与えたり、障害物に当った気流が埃を舞上げるのを抑制することができ、空気清浄時の快適性を向上させることができる。
また、本実施の形態では、循環気流制御、汚れマッピング処理等を含む空気清浄時の送動作と、室内走査処理とを並行して実行する構成としてもよい。この構成によれば、室内走査処理に専用の時間をかけなくても、通常の送風動作と並行して室内情報を走査することができ、例えば障害物の位置が変化する場合でも、この変化に対応して送風動作を速やかに修正することができる。

また、本実施の形態では、空気清浄機1の電源コードがコンセント等の電源に接続された時点で、外部検出装置16の向きを自動的に変更しつつ、室内走査処理を実行する構成としてもよい。この構成によれば、例えば空気清浄機1の室内に設置した時点で室内情報を予め取得しておくことができる。そして、ユーザが電源スイッチを操作したときには、室内を走査しなくても送風動作を直ちに開始することができ、取得済みの室内情報に基いて適切な気流を速やかに形成することができる。従って、空気清浄機1の利便性を向上させることができる。
また、本実施の形態では、ユーザが空気清浄機1の電源スイッチを入れてから、ファン装置6を起動するまでの期間中に室内走査処理を実行する構成としてもよい。この構成によれば、空気清浄動作を行う直前に室内情報を取得することができ、例えば障害物の位置が変化する場合でも、この変化に対応した上で、送風動作を正確に行うことができる。
以上詳述した通り、本実施の形態によれば、多様な設置環境において室内の気流を適切に制御し、部屋全体の空気を安定的に清浄化することができる。詳しく述べると、一般家庭では、間取り、家具の配置、空気清浄機1の配置等がそれぞれ異なるため、空気清浄機1に対して壁が遠すぎると、風が壁まで届かない場合があり、逆に壁が近すぎると、過剰な運転が行われる場合がある。この結果、空気清浄機1の騒音が大きくなったり、風が人に当って不快感、寒さ等を与えるという問題がある。これに対し、本実施の形態では、外部検出装置16により検出した室内情報(特に、壁までの距離)に基いて、風向、風量及び風速のうち少なくとも1つの送風パラメータを適切に制御するので、上記問題を解決することができ、部屋全体に循環気流を安定的に形成することができる。
また、外部検出装置16は、超音波、光、電磁波等のような非透過性の波動を用いて障害物との距離を検出する非接触式の距離センサ、好ましくは超音波センサを少なくとも1個以上備えている。距離の検出は、例えば画像センサのデータに基いて三角測量法等により行うことも可能であるが、この場合には画像情報の処理に時間がかかり、空気清浄動作の応答性が低下し易い。これにより、室内情報を無駄なく短時間に取得することができ、空気清浄機1の応答性を高めることができる。
また、本実施の形態では、外部検出装置16を可動ルーバー12に搭載している。これにより、距離センサ等の向きと風向とを正確に一致させることができ、風向の方向における距離の検出精度を高めることができる。また、外部検出装置16と可動ルーバー12とを駆動する駆動部13を共通化し、装置の可動部を減らして信頼性を向上できると共に、コストダウンを図ることができる。
さらに、本実施の形態では、風向を可変とする手段として、可動ルーバー12と、首振り機構14とを例示し、この手段により外部検出装置16の向きも上下方向及び左右方向に変化させる構成としている。これにより、部屋全体の室内情報を精度よく検出することができる。なお、首振り機構14を用いると、部屋の広さの検出状態、家具の配置による影響等が外部検出装置16の向き(回転角)に応じて異なる場合がある。このため、循環気流制御では、送風動作を行いながら、吹出口5の回転角に応じて送風パラメータを最適な状態に制御するのが好ましい。これより、水平方向の各向きにおいて、循環気流を安定的に形成することができ、また、障害物への対処も円滑に行うことができる。
なお、前記実施の形態では、床面設置型の空気清浄機1を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限らず、壁掛け式の空気清浄機にも適用することができる。また、実施の形態では、風向、風量及び風速からなる3つの送風パラメータのうち、風向と風量を制御する場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明では、少なくとも1つの送風パラメータを制御すればよい。何故なら、例えば風向が一定であっても、風量を大きくすれば部屋全体をカバーする循環気流を形成することも可能であり、風速についても同様である。従って、1つの送風パラメータだけを制御する構成でも、本発明の目的を達成することができる。
また、実施の形態では、首振り機構14により風向を左右方向に変更する構成としたが、本発明では、風向を左方向及び右方向に変化させながら上下方向に往復動させる動作(波打つような動作)が可能な首振り機構を採用してもよい。
また、実施の形態1では、風量を変更する送風可変手段を、ファン装置6により構成する場合を例示した。しかし、本発明はこれに限らず、ファン装置6と異なる他の機構により風量を変更する構成としてもよい。
1 空気清浄機,2 ケーシング,3 台座,4 吸込口,5 吹出口,6 ファン装置(送風可変手段),7 プレフィルタ(清浄化装置),8 埃帯電部(清浄化装置),9 埃帯電部保護フィルタ(清浄化装置),10 脱臭フィルタ(清浄化装置),11 集塵フィルタ(清浄化装置),12 可動ルーバー(送風可変手段,検出方向可変手段),13 駆動部(送風可変手段,検出方向可変手段),14 首振り機構(送風可変手段,検出方向可変手段),15 内部検出装置,16 外部検出装置(情報検出手段,検出方向可変手段),17 操作部,18 制御装置

Claims (16)

  1. 室内の空気を吸込む吸込口と当該空気を吹出す吹出口とを有するケーシングと、
    前記吸込口から前記ケーシングの内部に空気を吸込んで当該空気を前記吹出口から吹出すファン装置と、
    前記ケーシングの内部を流れる空気を清浄化する清浄化装置と、
    前記吹出口から吹出す吹出し空気の風向、風量及び風速である3つの送風パラメータのうち、少なくとも1つの送風パラメータを変更することが可能な送風可変手段と、
    少なくとも部屋の壁までの距離を含む当該部屋の広がりに関する情報を室内情報として検出する情報検出手段と、
    前記室内情報に基いて前記送風可変手段を駆動することにより、前記吹出し空気が室内を循環してから前記ケーシングの位置に戻る循環気流を形成するように前記送風パラメータを制御する制御装置と、
    を備えた空気清浄機。
  2. 前記情報検出手段の向きを変化させることが可能な検出方向可変手段を備える請求項1に記載の空気清浄機。
  3. 前記ケーシングは部屋の床面に設置してなる請求項1または2に記載の空気清浄機。
  4. 前記送風可変手段の少なくとも一部を構成し、前記風向を上下方向にスイングして水平方向に対する当該風向の仰角を変更することが可能な可動ルーバーと、
    前記検出方向可変手段により前記情報検出手段の向きを変化させながら前記情報検出手段により前記室内情報を検出し、当該室内情報に基いて前記吹出し空気が当ったときに前記循環気流を形成するのに最適な壁を特定する壁特定手段と、を備え、
    前記制御装置は、前記循環気流が部屋の天井及び前記最適な壁に当ってから床面に沿って前記ケーシングの位置に戻るように、少なくとも前記可動ルーバーにより前記風向の仰角を制御する構成としてなる請求項に記載の空気清浄機。
  5. 前記制御装置は、前記循環気流を形成可能な基準の仰角と当該基準の仰角よりも大きな仰角として設定された最大仰角との間で、前記風向を上下方向にスイングさせる動作を繰返す構成としてなる請求項に記載の空気清浄機。
  6. 前記情報検出手段は、音波または電磁波を利用して検出対象物までの距離を検出する非接触式の距離センサを備え、
    前記制御装置は、室内で前記吹出し空気が到達可能な複数の箇所において、前記距離センサにより距離を検出する構成としてなる請求項1からのうち何れか1項に記載の空気清浄機。
  7. 前記制御装置は、電源と接続された時点で、前記情報検出手段を起動して前記室内情報の検出動作を開始する構成としてなる請求項1からのうち何れか1項に記載の空気清浄機。
  8. 前記制御装置は、少なくとも前記ファン装置の起動操作が行われてから前記ファン装置により送風動作を開始するまでの期間中に、前記情報検出手段を起動して前記室内情報を検出する構成としてなる請求項1からのうち何れか1項に記載の空気清浄機。
  9. 前記情報検出手段の向きの可変範囲は、前記風向の可変範囲を少なくとも範囲の一部として含む構成としてなる請求項2,4,5のうち何れか1項に記載の空気清浄機。
  10. 前記送風可変手段は、前記風向を上下方向にスイングさせることが可能な可動ルーバーを備え、
    前記検出方向可変手段は、前記可動ルーバーと前記情報検出手段の向きを一緒に変化させる駆動部により構成してなる請求項2,4,5,9のうち何れか1項に記載の空気清浄機。
  11. 前記情報検出手段は前記可動ルーバーに設けてなる請求項10に記載の空気清浄機。
  12. 前記送風可変手段及び前記検出方向可変手段の一部を構成し、前記吹出口及び前記情報検出手段を左右方向にスイングすることが可能な首振り機構を備えてなる請求項2,4,5及び9から11のうち何れか1項に記載の空気清浄機。
  13. 前記制御装置は、前記検出方向可変手段により前記情報検出手段の向きを変化させつつ、前記情報検出手段により部屋の壁及び天井までの距離を検出することにより、当該検出結果に基いて壁と天井との境目を検出し、前記境目の位置に基いて前記送風パラメータを制御する構成としてなる請求項2,4,5及び9から12のうち何れか1項に記載の空気清浄機。
  14. 前記制御装置は、前記検出方向可変手段により前記情報検出手段の向きを変化させるときの可変範囲と、当該可変範囲内で前記情報検出手段の向きを段階的に変化させるときの段階数のうち少なくとも一方を前記室内情報に基いて可変に設定する構成としてなる請求項2,4,5及び9から13のうち何れか1項に記載の空気清浄機。
  15. 前記制御装置は、前記検出方向可変手段により前記情報検出手段の向きを変化させながら前記情報検出手段により検出した検出対象物までの距離の変化に基いて室内の障害物を認識し、前記風向が障害物に向いたときには予め設定された回避動作を実行する構成としてなる請求項2,4,5及び9から14のうち何れか1項に記載の空気清浄機。
  16. 前記制御装置は、前記検出方向可変手段により前記情報検出手段の向きを変化させながら前記情報検出手段により前記室内情報を検出する動作と、前記ファン装置による送風動作とを並行して行う構成としてなる請求項2,4,5及び9から15のうち何れか1項に記載の空気清浄機。
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