JP5998969B2 - 流体軸受用潤滑油基油及びスピンドルモータ - Google Patents

流体軸受用潤滑油基油及びスピンドルモータ Download PDF

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Description

本発明は、流体軸受用潤滑油基油及びスピンドルモータに関する。
HDD(ハードディスクドライブ)などに搭載されるモータでは、軸受として球軸受やころ軸受が用いられていたが、モータの小型化、低振動・低騒音化などの要請から、近年、流体軸受が開発され、その流体軸受として、動圧流体軸受や焼結含油軸受が実用化されている。
動圧流体軸受は、軸外周面とスリーブ内周面の隙間に介在する潤滑油の油膜圧力によって、回転軸を支持し、軸外周面またはスリーブ内周面の少なくともいずれか一方に動圧溝を設け、その動圧効果によって形成された潤滑油膜によって回転軸の摺動面を浮上支持するものであり、また、焼結含油軸受は、焼結金属などから構成される多孔質体に、潤滑油または潤滑グリースを含浸させて自己潤滑機能を持たせたものである。
AV・OA機器の高性能化、携帯ユースの普及などに伴い、流体軸受を備えたスピンドルモータが使用され、近年、高速化、小型化の要求が強く、そのため、流体軸受にはさらなる低トルク化の要求がある。この低トルク化の要求に対応するため、比較的低粘度の潤滑油基油が選択されてきた。低粘度の潤滑油基油としては、ポリ−α−オレフィンなどの合成炭化水素系潤滑油基油、脂肪族二塩基酸ジエステル、ネオペンチル型ポリオールエステル、脂肪酸モノエステルなどのエステル系潤滑油基油を用いた流体軸受用潤滑油基油が提案されている(特許文献1〜8)。
それらの中でも、流体軸受用潤滑油基油として、粘度特性、耐熱性、導電性等に優れているエステル系潤滑油基油が多く使用されている。
エステル系潤滑油基油にはいくつかの種類があり、それぞれ粘度特性、耐熱性(耐揮発性)、導電性などの特性が異なり、また、低粘度になるにしたがって耐熱性(耐揮発性)が劣る傾向がある。したがって、流体軸受のトルクを低減するために、単に現行より低粘度のエステル系潤滑油基油を選択するだけでは、耐熱性(耐揮発性)を損なうことになり、流体軸受の耐久性を低下させることになる。
また、エステル系潤滑油基油はスピンドルモータ使用時に少しずつ分解が起こり、スピンドルモータを長期に使用する場合、問題となることがあった。
特表平11−514778号公報 特表平11−514779号公報 特開2000−500898号公報 特開2003−119482号公報 国際公開WO2004/018595号パンフレット 特開2004−084839号公報 特開2005−290256号公報 特開2008−007741号公報
本発明は、スピンドルモータ使用時において潤滑油基油の分解を低減させたエステル系の流体軸受用潤滑油基油及当該潤滑油基油を使用したスピンドルモータを提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を達成すべく鋭意検討の結果、特定のジオールエステルを特定の比率で混合した混合エステルを流体軸受用潤滑油基油として使用することで、スピンドルモータ使用時において当該潤滑油基油の分解を低減できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、以下のものである。
[項1]
一般式(1)
[式中、R及びRは、同一又は異なって、それぞれ炭素数5〜11の直鎖状の脂肪族飽和モノカルボン酸からカルボキシル基を除いて得られる残基を表す。]
で表されるジエチルペンタンジオールジエステルの1種又は2種以上、及び、
一般式(2)
[式中、R及びRは、同一又は異なって、それぞれ炭素数7〜11の直鎖状の脂肪族飽和モノカルボン酸からカルボキシル基を除いて得られる残基を表す。]
で表されるメチルペンタンジオールジエステルの1種又は2種以上を含有し、ジエチルペンタンジオールジエステルとメチルペンタンジオールジエステルの重量比が、70:30〜30:70であることを特徴とする流体軸受用潤滑油基油。
[項2]
流体軸受用潤滑油基油中の、ジエチルペンタンジオールジエステルとメチルペンタンジオールジエステルの合計が90重量%以上である、項1に記載の流体軸受用潤滑油基油。
[項3]
前記流体軸受用潤滑油基油が、動圧流体軸受用潤滑油基油又は焼結含油軸受用潤滑油基油である、項1又は項2に記載の流体軸受用潤滑油基油。
[項4]
一般式(1)に記載のR及びRが、同一又は異なって、それぞれ炭素数7〜10の直鎖状の脂肪族飽和モノカルボン酸からカルボキシル基を除いて得られる残基である、項1〜3のいずれかに記載の流体軸受用潤滑油基油。
[項5]
一般式(1)に記載のR及びRが、同一又は異なって、それぞれ炭素数7〜9の直鎖状の脂肪族飽和モノカルボン酸からカルボキシル基を除いて得られる残基である、項1〜4のいずれかに記載の流体軸受用潤滑油基油。
[項6]
一般式(2)に記載のR及びRが、同一又は異なって、それぞれ炭素数8〜10の直鎖状の脂肪族飽和モノカルボン酸からカルボキシル基を除いて得られる残基である、項1〜5のいずれかに記載の流体軸受用潤滑油基油。
[項7]
流体軸受用潤滑油基油の、40℃での動粘度が5〜20mm/s以下、粘度指数が130以上、流動点が0℃以下及び揮発量が5重量%以下である、項1〜6のいずれかに記載の流体軸受用潤滑油基油。
[項8]
項1〜7のいずれかに記載の流体軸受用潤滑油基油及び酸化防止剤を含有することを特徴とする、流体軸受用潤滑油組成物。
[項9]
酸化防止剤が、フェノール系酸化防止剤及び/又はアミン系酸化防止剤である、項8に記載の流体軸受用潤滑油組成物。
[項10]
軸とスリーブとからなる流体軸受において、項8又は項9に記載の流体軸受用潤滑油組成物を用いることを特徴とする流体軸受。
[項11]
項10に記載の流体軸受を備えたスピンドルモータ。
本発明の流体軸受用潤滑油基油を使用することにより、スピンドルモータ使用時において当該潤滑油基油の分解を低減することができ、よって、長期間スピンドルモータを使用することが可能となる。さらに、本発明の流体軸受用潤滑油基油は、広い温度範囲で粘度の変化率が小さく(粘度指数が高い)、低温においても低粘度であり、且つ耐揮発性が良好な流体軸受用潤滑油基油である。
本発明の流体軸受の概略構成を模式的に示した断面図の一例である。 本発明のスピンドルモータの概略構成を模式的に示した断面図の一例である。
<流体軸受用潤滑油基油>
本発明の流体軸受用潤滑油基油は、下記一般式(1)で表されるジエチルペンタンジオールジエステルと下記一般式(2)で表されるメチルペンタンジオールジエステルとを重量比で70:30〜30:70で含有することを特徴とする流体軸受用潤滑油基油である。
(ジエチルペンタンジオールジエステル)
本発明に用いられるジエチルペンタンジオールジエステルは、下記一般式(1)
[式中、R及びRは、同一又は異なって、それぞれ炭素数5〜11の直鎖状の脂肪族飽和モノカルボン酸からカルボキシル基を除いて得られる残基を表す。]
で表されるジエチルペンタンジオールジエステルの1種又は2種以上である。
本発明に係るジエチルペンタンジオールジエステルは、直鎖状の脂肪族飽和モノカルボン酸と、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオールとをエステル化反応する等して得られるジエチルペンタンジオールジエステルである。なお、一般式(1)において、「炭素数5〜11の直鎖状の脂肪族飽和モノカルボン酸からカルボキシル基を除いて得られる残基」に記載の直鎖状の脂肪族飽和モノカルボン酸は、炭素数6〜12の直鎖状の脂肪族飽和モノカルボン酸に相当する。
[直鎖状の脂肪族飽和モノカルボン酸]
直鎖状の脂肪族飽和モノカルボン酸は、炭素数6〜12、好ましくは炭素数8〜11、より好ましくは炭素数8〜10の直鎖状の脂肪族飽和モノカルボン酸である。
直鎖状の脂肪族飽和モノカルボン酸としては、具体的には、n−ヘキサン酸、n−ヘプタン酸、n−オクタン酸、n−ノナン酸、n−デカン酸、n−ウンデカン酸、n−ドデカン酸が例示される。これらの中でも、低温流動性に優れ、低温粘度が低い点で、炭素数6〜10の脂肪族飽和モノカルボン酸が好ましく、具体的には、n−オクタン酸、n−ノナン酸、n−デカン酸が例示される。また、耐熱性に優れる点で、炭素数9〜12の脂肪族飽和モノカルボン酸が好ましく、具体的には、n−ノナン酸、n−デカン酸、n−ウンデカン酸、n−ドデカン酸が例示される。さらには、非常に高い粘度指数、良好な耐熱性及び低温流動性を有する点で炭素数8〜11、特に炭素数8〜10の脂肪族飽和モノカルボン酸が好ましく、具体的にはn−オクタン酸、n−ノナン酸、n−デカン酸が推奨される。これらは、夫々単独で又は2種以上を適宜組み合わせてエステル化反応に供することができる。
本発明に係る上記一般式(1)で表されるジエチルペンタンジオールジエステルにおいて、RとRが同一である場合の具体例としては、ジエチルペンタンジオールジ(n−ヘキサノエート)、ジエチルペンタンジオールジ(n−ヘプタノエート)、ジエチルペンタンジオールジ(n−オクタノエート)、ジエチルペンタンジオールジ(n−ノナノエート)、ジエチルペンタンジオールジ(n−デカノエート)、ジエチルペンタンジオールジ(n−ウンデカノエート)、ジエチルペンタンジオールジ(n−ドデカノエート)が挙げられる。それらの中でも特に好ましいものとして、ジエチルペンタンジオールジ(n−オクタノエート)、ジエチルペンタンジオールジ(n−ノナノエート)が挙げられる。
また、RとRが異なる場合の具体例としては、ジエチルペンタンジオールとn−ヘキサン酸及びn−ヘプタン酸とのジエステル、ジエチルペンタンジオールとn−ヘキサン酸及びn−オクタン酸とのジエステル、ジエチルペンタンジオールとn−ヘキサン酸及びn−ノナン酸とのジエステル、ジエチルペンタンジオールとn−ヘキサン酸及びn−デカン酸とのジエステル、ジエチルペンタンジオールとn−ヘキサン酸及びn−ウンデカン酸とのジエステル、ジエチルペンタンジオールとn−ヘキサン酸及びn−ドデカン酸とのジエステル、ジエチルペンタンジオールとn−ヘプタン酸及びn−オクタン酸とのジエステル、ジエチルペンタンジオールとn−ヘプタン酸及びn−ノナン酸とのジエステル、ジエチルペンタンジオールとn−ヘプタン酸及びn−デカン酸とのジエステル、ジエチルペンタンジオールとn−ヘプタン酸及びn−ウンデカン酸とのジエステル、ジエチルペンタンジオールとn−ヘプタン酸及びn−ドデカン酸とのジエステル、ジエチルペンタンジオールとn−オクタン酸及びn−ノナン酸とのジエステル、ジエチルペンタンジオールとn−オクタン酸及びn−デカン酸とのジエステル、ジエチルペンタンジオールとn−オクタン酸及びn−ウンデカン酸とのジエステル、ジエチルペンタンジオールとn−オクタン酸及びn−ドデカン酸とのジエステル、ジエチルペンタンジオールとn−ノナン酸及びn−デカン酸とのジエステル、ジエチルペンタンジオールとn−ノナン酸及びn−ウンデカン酸とのジエステル、ジエチルペンタンジオールとn−ノナン酸及びn−ドデカン酸とのジエステル、ジエチルペンタンジオールとn−デカン酸及びn−ウンデカン酸とのジエステル、ジエチルペンタンジオールとn−デカン酸及びn−ドデカン酸とのジエステル、ジエチルペンタンジオールとn−ウンデカン酸及びn−ドデカン酸とのジエステルが挙げられる。それらの中でも特に好ましいものとして、ジエチルペンタンジオールとn−オクタン酸及びn−ノナン酸とのジエステル、ジエチルペンタンジオールとn−オクタン酸及びn−デカン酸とのジエステル、ジエチルペンタンジオールとn−オクタン酸及びn−ウンデカン酸とのジエステル、ジエチルペンタンジオールとn−オクタン酸及びn−ドデカン酸とのジエステル、ジエチルペンタンジオールとn−ノナン酸及びn−デカン酸とのジエステル、ジエチルペンタンジオールとn−ノナン酸及びn−ウンデカン酸とのジエステルが挙げられる。
(メチルペンタンジオールジエステル)
本発明に用いられるメチルペンタンジオールジエステルは、下記一般式(2)
[式中、R及びRは、同一又は相異なって炭素数7〜11の直鎖状の飽和脂肪族モノカルボン酸から、カルボキシル基を除いて得られる残基を表す。]
で表される。
上記で表される、一般式(2)において、「炭素数7〜11の直鎖状の脂肪族飽和モノカルボン酸からカルボキシル基を除いて得られる残基」に記載の直鎖状の脂肪族飽和モノカルボン酸は、炭素数8〜12の直鎖状の脂肪族飽和モノカルボン酸に相当する。具体的には、n−オクタン酸、n−ノナン酸、n−デカン酸、n−ウンデカン酸、n−ドデカン酸が挙げられる。これらの中でも、n−オクタン酸、n−ノナン酸、n−デカン酸、n−ウンデカン酸、n−ドデカン酸が好ましい。これらは、夫々単独で又は2種以上を適宜組み合わせることができる。
本発明に係る上記一般式(2)で表されるメチルペンタンジオールジエステルおいて、RとRが同一である場合の具体例としては、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ(n−オクタノエート)、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ(n−ノナノエート)、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ(n−デカノエート)、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ(n−ウンデカノエート)、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ(n−ドデカノエート)が例示される。それらの中でも特に好ましいものとして、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ(n−ノナノエート)、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ(n−デカノエート)、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ(n−ウンデカノエート)が挙げられる。
また、RとRが異なる場合の具体例としては、3−メチル−1,5−ペンタンジオールとn−オクタン酸及びn−ノナン酸とのジエステル、3−メチル−1,5−ペンタンジオールとn−オクタン酸及びn−デカン酸とのジエステル、3−メチル−1,5−ペンタンジオールとn−オクタン酸及びn−ウンデカン酸とのジエステル、3−メチル−1,5−ペンタンジオールとn−オクタン酸及びn−ドデカン酸とのジエステル、3−メチル−1,5−ペンタンジオールとn−ノナン酸及びn−デカン酸とのジエステル、3−メチル−1,5−ペンタンジオールとn−ノナン酸及びn−ウンデカン酸とのジエステル、3−メチル−1,5−ペンタンジオールとn−ノナン酸及びn−ドデカン酸とのジエステル、3−メチル−1,5−ペンタンジオールとn−デカン酸及びn−ウンデカン酸とのジエステル、3−メチル−1,5−ペンタンジオールとn−デカン酸及びn−ドデカン酸とのジエステル、3−メチル−1,5−ペンタンジオールとn−ウンデカン酸及びn−ドデカン酸とのジエステルが挙げられる。それらの中でも特に好ましいものとして、3−メチル−1,5−ペンタンジオールとn−オクタン酸及びn−ノナン酸とのジエステル、3−メチル−1,5−ペンタンジオールとn−オクタン酸及びn−デカン酸とのジエステル、3−メチル−1,5−ペンタンジオールとn−オクタン酸及びn−ウンデカン酸とのジエステル、3−メチル−1,5−ペンタンジオールとn−ノナン酸及びn−デカン酸とのジエステル、3−メチル−1,5−ペンタンジオールとn−ノナン酸及びn−ウンデカン酸とのジエステル、3−メチル−1,5−ペンタンジオールとn−デカン酸及びn−ウンデカン酸とのジエステルが挙げられる。
上記のジエチルペンタンジオールジエステルとメチルペンタンジオールジエステルの組み合わせは、夫々1組で又は2組以上を適宜組み合わせて流体軸受用潤滑油基油に用いることができる。具体的には、ジエチルペンタンジオールジエステルにおいてジエチルペンタンジオールジ(n−ヘキサノエート)、ジエチルペンタンジオールジ(n−ヘプタノエート)、ジエチルペンタンジオールジ(n−オクタノエート)、ジエチルペンタンジオールジ(n−ノナノエート)、ジエチルペンタンジオールジ(n−デカノエート)、ジエチルペンタンジオールジ(n−ウンデカノエート)からなる群より選ばれる少なくとも1種とメチルペンタンジオールジエステルにおいて、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ(n−オクタノエート)、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ(n−ノナノエート)、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ(n−デカノエート)、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ(n−ウンデカノエート)、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ(n−ドデカノエート)からなる群より選ばれる少なくとも1種との組み合わせが好ましく、より好ましくは、ジエチルペンタンジオールジエステルにおいてジエチルペンタンジオールジ(n−オクタノエート)、ジエチルペンタンジオールジ(n−ノナノエート)、ジエチルペンタンジオールジ(n−デカノエート)からなる群より選ばれる少なくとも1種とメチルペンタンジオールジエステルにおいて3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ(n−オクタノエート)、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ(n−ノナノエート)、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ(n−デカノエート)、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ(n−ウンデカノエート)からなる群より選ばれる少なくとも1種との組み合わせが挙げられる。
ジエチルペンタンジオールジエステルとメチルペンタンジオールジエステルの組み合わせとして、具体例としてはジエチルペンタンジオールジ(n−ヘキサエート)と3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ(n−オクタノエート)、ジエチルペンタンジオールジ(n−ヘキサエート)と3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ(n−ノナノエート)、ジエチルペンタンジオールジ(n−ヘキサエート)と3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ(n−デカノエート)、ジエチルペンタンジオールジ(n−ヘキサエート)と3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ(n−ウンデカノエート)、ジエチルペンタンジオールジ(n−ヘキサエート)と3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ(n−ドデカノエート)、ジエチルペンタンジオールジ(n−ヘプタノエート)と3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ(n−オクタノエート)、ジエチルペンタンジオールジ(n−ヘプタノエート)と3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ(n−ノナノエート)、ジエチルペンタンジオールジ(n−ヘプタノエート)と3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ(n−デカノエート)、ジエチルペンタンジオールジ(n−ヘプタノエート)と3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ(n−ウンデカノエート)、ジエチルペンタンジオールジ(n−ヘプタノエート)と3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ(n−ドデカノエート)、ジエチルペンタンジオールジ(n−オクタエート)と3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ(n−オクタノエート)、ジエチルペンタンジオールジ(n−オクタエート)と3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ(n−ノナノエート)、ジエチルペンタンジオールジ(n−オクタエート)と3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ(n−デカノエート)、ジエチルペンタンジオールジ(n−オクタエート)と3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ(n−ウンデカノエート)、ジエチルペンタンジオールジ(n−オクタエート)と3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ(n−ドデカノエート)、ジエチルペンタンジオールジ(n−ノナノエート)と3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ(n−オクタノエート)、ジエチルペンタンジオールジ(n−ノナノエート)と3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ(n−ノナノエート)、ジエチルペンタンジオールジ(n−ノナノエート)と3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ(n−デカノエート)、ジエチルペンタンジオールジ(n−ノナノエート)と3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ(n−ウンデカノエート)、ジエチルペンタンジオールジ(n−ノナノエート)と3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ(n−ドデカノエート)、ジエチルペンタンジオールジ(n−デカノエート)と3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ(n−オクタノエート)、ジエチルペンタンジオールジ(n−デカノエート)と3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ(n−ノナノエート)、ジエチルペンタンジオールジ(n−デカノエート)と3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ(n−デカノエート)、ジエチルペンタンジオールジ(n−デカノエート)と3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ(n−ウンデカノエート)、ジエチルペンタンジオールジ(n−デカノエート)と3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ(n−ドデカノエート)、ジエチルペンタンジオールジ(n−ウンデカノエート)と3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ(n−オクタノエート)、ジエチルペンタンジオールジ(n−ウンデカノエート)と3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ(n−ノナノエート)、ジエチルペンタンジオールジ(n−ウンデカノエート)と3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ(n−デカノエート)、ジエチルペンタンジオールジ(n−ウンデカノエート)と3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ(n−ウンデカノエート)、ジエチルペンタンジオールジ(n−ウンデカノエート)と3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ(n−ドデカノエート)が挙げられる。
本発明の潤滑油基油は、上記のジエチルペンタンジオールジエステルとメチルペンタンジオールエステルとを重量比で70:30〜30:70含有している潤滑油基油であり、好ましくは重量比で55:45〜45:55含有している潤滑油基油である。
流体軸受用潤滑油基油中において、上記のジエチルペンタンジオールジエステルとメチルペンタンジオールエステルの合計が90重量%以上含有していることが好ましく、より好ましくは、95重量%以上、特に98重量%以上が好ましい。
本発明の潤滑油基油の40℃での動粘度は、好ましくは、5〜20mm/sの範囲であり、より好ましくは8〜17mm/s、特に、8〜15mm/sの範囲が推奨される。40℃での動粘度が5mm/s未満では、潤滑性能が低下する傾向が認められ、20mm/sを超えるとエネルギー損失が大きくなる傾向が認められる。なお、上記動粘度は、後記実施例に記載した方法にて得られる値である。
本発明の潤滑油基油の粘度指数は、好ましくは130以上であり、より好ましくは135以上、特に140以上が推奨される。粘度指数が高いものほど粘度−温度特性に優れる。なお、上記粘度指数は、後記実施例に記載した方法にて得られる値である。
本発明の潤滑油基油の低温特性は、例えば、低温流動性試験による流動点によって評価することができる。本発明の潤滑油基油の流動点は、好ましくは0℃以下であり、より好ましくは−10℃以下、特に−20℃以下が推奨される。流動点が低いものほど低温流動性に優れる。なお、上記流動点は、後記実施例に記載した低温流動性試験にて得られる値である。
本発明の潤滑油基油の耐熱性は、例えば、耐熱性試験による揮発量によって評価することができる。本発明の潤滑油基油の揮発量は、好ましくは5重量%未満であり、より好ましくは2重量%未満、特に1.7重量%未満が推奨される。揮発量が少ないものほど耐熱性に優れる。なお、上記揮発量は、後記実施例に記載した耐熱性試験にて得られる値である。
本発明の潤滑油基油の潤滑性は、例えば、潤滑性試験による摩耗痕径によって評価することができる。摩耗痕径は、好ましくは0.70mm以下であり、より好ましくは0.65mm以下、特に好ましくは0.60mm以下が推奨される。摩耗痕径が小さいものほど潤滑性に優れる。なお、上記摩耗痕径は、後記実施例に記載した潤滑性試験にて得られる値である。
本発明の潤滑油基油のスピンドルモータ使用時における安定性は、例えば、上記潤滑性試験後の部分エステル(ジエステル化合物の片方のエステル基が加水分解した化合物)の増加量を測定することにより評価することができる。潤滑油試験後の部分エステルの増加量は、好ましくは0.10GC面積%以下、より好ましくは0.08GC面積%以下、特に好ましくは0.07GC面積%以下が推奨される。部分エステルの増加量が少ないものほど潤滑油基油の安定性に優れる。なお、上記部分エステルの増加量は、後記実施例に記載した部分エステルの増加量測定にて得られる値である。
また、潤滑性試験後の酸価の上昇量でもスピンドルモータ使用時における安定性を評価することができる。潤滑油試験後の酸価の上昇量は、好ましくは0.50mgKOH/g以下、より好ましくは0.30mgKOH/g以下、特に好ましくは0.20mgKOH/g以下が推奨される。酸価の上昇量が少ないものほど潤滑油基油の安定性に優れる。なお、上記部分酸価の上昇量は、後記実施例に記載した全酸価の上昇量測定にて得られる値である。
本発明の流体軸受用潤滑油基油は、動圧流体軸受用又は焼結含油軸受用潤滑油基油として好適に用いられる。
[エステル化反応]
本発明の潤滑油基油にかかる一般式(1)、一般式(2)で表されるエステルの製造方法としては、例えば、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール又は、3−メチル−1,5−ペンタンジオールに脂肪族飽和モノカルボン酸をエステル化反応することにより製造される。製造方法には、特に限定がなく、従来公知の製造方法を用いることができる。
エステル化反応を行うに際し、エステル化触媒存在下で2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオールと脂肪族飽和モノカルボン酸とをエステル化反応させた後、後処理・精製処理することにより、本発明に係るジエチルペンタンジオールジエステルを得る工程が例示される。
エステル化反応の際、脂肪族飽和モノカルボン酸は、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール1モルに対して、通常2.0〜3.0、好ましくは2.02〜2.5モル用いられる。
エステル化触媒としては、ルイス酸、スルホン酸誘導体等が例示される。より具体的には、ルイス酸としては、アルミニウム誘導体、錫誘導体、チタン誘導体が例示される。また、スルホン酸誘導体としてはパラトルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、硫酸等が例示される。その使用量は、例えば、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオールと脂肪族飽和モノカルボン酸の総重量に対して、通常0.01〜5.0重量%程度用いられる。
エステル化反応は、通常120〜250℃、好ましくは140〜230℃の反応温度で、不活性ガスの存在下で行うことが好ましい。反応時間としては、通常3〜30時間程度である。必要に応じて、生成してくる水をベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン等の水同伴剤を用いて系外に共沸留去させてもよい。
エステル化反応終了後、過剰の原料を減圧下又は常圧下にて留去する。引き続き慣用の精製方法、例えば、中和、水洗、液抽出、減圧蒸留、活性炭等の吸着剤精製によりジエチルペンタンジオールジエステルを精製することができる。
また、本発明に係るエステルの製造においては、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオールを3−メチル−1,5−ペンタンジオールに代えて脂肪族飽和モノカルボン酸を用いることで、メチルペンタンジオールエステルが製造される。製造方法については、ジエチルペンタンジオールジエステルを製造する方法と同様である。
本発明の流体軸受用潤滑油基油は、併用基油として鉱物油(石油の精製によって得られる炭化水素油)、ポリ−α−オレフィン、ポリブテン、アルキルベンゼン、アルキルナフタレン、脂環式炭化水素油、フィッシャートロプシュ法によって得られる合成炭化水素の異性化油などの合成炭化水素油、動植物油、本エステル以外の有機酸エステル、ポリアルキレングリコール、ポリビニルエーテル、ポリフェニルエーテル、アルキルフェニルエーテル、シリコーン油などの併用基油の少なくとも1種を適宜併用することができる。
鉱物油としては、溶剤精製鉱油、水素化精製鉱油、ワックス異性化油が挙げられるが、通常、100℃における動粘度が1.0〜25mm/s、好ましくは2.0〜20.0mm/sの範囲にあるものが用いられる。
ポリ−α−オレフィンとしては、炭素数2〜16のα−オレフィン(例えばエチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1ーヘキサデセン等)の重合体又は共重合体であって、100℃における動粘度が1.0〜25mm/s、粘度指数が100以上のものが例示され、特に100℃における動粘度が1.5〜20.0mm/sで、粘度指数が120以上のものが好ましい。
ポリブテンとしては、イソブチレンを重合したもの、イソブチレンをノルマルブチレンと共重合したものがあり、一般に100℃の動粘度が2.0〜40mm/sの広範囲のものが挙げられる。
アルキルベンゼンとしては、炭素数1〜40の直鎖又は分岐のアルキル基で置換された、分子量が200〜450であるモノアルキルベンゼン、ジアルキルベンゼン、トリアルキルベンゼン、テトラアルキルベンゼン等が例示される。
アルキルナフタレンとしては、炭素数1〜30の直鎖又は分岐のアルキル基で置換されたモノアルキルナフタレン、ジアルキルナフタレン等が例示される。
動植物油としては、牛脂、豚脂、パーム油、ヤシ油、ナタネ油、ヒマシ油、ヒマワリ油等が例示される。
脂肪族二価アルコールジエステル以外の有機酸エステルとしては、脂肪酸モノエステル、脂肪族二塩基酸ジエステル、ポリオールエステル及びその他のエステルが例示される。
脂肪酸モノエステルとしては、炭素数5〜22の脂肪族直鎖状又は分岐鎖状モノカルボン酸と炭素数3〜22の直鎖状又は分岐鎖状の飽和若しくは不飽和の脂肪族アルコールとのエステルが挙げられる。
脂肪族二塩基酸ジエステルとしては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,9−ノナメチレンジカルボン酸、1,10−デカメチレンジカルボン酸等脂肪族二塩基酸若しくはその無水物と炭素数3〜22の直鎖状又は分岐鎖状の飽和若しくは不飽和の脂肪族アルコールとのジエステルが挙げられる。
ポリオールエステルとしては、ネオペンチルグリコール、2,2−ジエチルプロパンジオール、2−ブチル2−エチルプロパンンジオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール等のネオペンチル型構造のポリオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,2−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、2−メチル−1,4−ブタンジオール、1,4−ペンタンジオール、2−メチル−1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,5−ヘキサンジオール、2−メチル−1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,6−ヘキサンジオール、1,6−ヘプタンジオール、2−メチル−1,7−ヘプタンジオール、3−メチル−1,7−ヘプタンジオール、4−メチル−1,7−ヘプタンジオール、1,7−オクタンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、3−メチル−1,8−オクタンジオール、4−メチル−1,8−オクタンジオール、1,8−ノナンジオール、2−メチル−1,9−ノナンジオール、3−メチル−1,9−ノナンジオール、4−メチル−1,9−ノナンジオール、5−メチル−1,9−ノナンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、グリセリン、ポリグリセリン、ソルビトール等の非ネオペンチル型構造のポリオールと炭素数3〜22の直鎖状及び/又は分岐鎖状の飽和又は不飽和の脂肪酸とのフルエステルを使用することが可能である。
その他のエステルとしては、ダイマー酸、水添ダイマー酸などの重合脂肪酸、或いは、縮合ヒマシ油脂肪酸、水添縮合ヒマシ油脂肪酸などのヒドロキシ脂肪酸と炭素数3〜22の直鎖状若しくは分岐鎖状の飽和又は不飽和の脂肪族アルコールとのエステルが挙げられる。
ポリアルキレングリコールとしては、アルコールと炭素数2〜4の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキレンオキシドの開環重合体が例示される。アルキレンオキシドとしてはエチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドが挙げられ、これらの1種を用いた重合体、若しくは2種以上の混合物を用いた共重合体が使用可能である。又、片端又は両端の水酸基部分がエーテル化若しくはエステル化した化合物も使用可能である。重合体の動粘度としては、5.0〜1000mm/s(40℃)、好ましくは5.0〜500mm/s(40℃)である。
ポリビニルエーテルとしては、ビニルエーテルモノマーの重合によって得られる化合物であり、モノマーとしてはメチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、sec−ブチルビニルエーテル、tert−ブチルビニルエーテル、n−ペンチルビニルエーテル、n−ヘキシルビニルエーテル、2−メトキシエチルビニルエーテル、2−エトキシエチルビニルエーテル等が挙げられる。重合体の動粘度としては、5.0〜1000mm/s(40℃)、好ましくは5.0〜500mm/s(40℃)である。
ポリフェニルエーテルとしては、2個以上の芳香環のメタ位をエーテル結合又はチオエーテル結合でつないだ構造を有する化合物が挙げられ、具体的には、ビス(m−フェノキシフェニル)エーテル、m−ビス(m−フェノキシフェノキシ)ベンゼン、及びそれらの酸素の1個若しくは2個以上を硫黄に置換したチオエーテル類(通称C−エーテル)等が例示される。
アルキルフェニルエーテルとしては、ポリフェニルエーテルを炭素数6〜18の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基で置換した化合物が挙げられ、特に1個以上のアルキル基で置換したアルキルジフェニルエーテルが好ましい。
シリコーン油としては、ジメチルシリコーン、メチルフェニルシリコーンのほか、長鎖アルキルシリコーン、フルオロシリコーン等の変性シリコーンが挙げられる。
本発明の流体軸受用潤滑油基油に中における併用基油の含有量としては、10重量%未満が推奨されるが、物性のバランスを良くする為には5重量%未満であることがより好ましい。
<流体軸受用潤滑油組成物>
本発明の流体軸受用潤滑油組成物は、上記の流体軸受用潤滑油基油の性能を向上させるために、潤滑油基油(即ち、ジエチルペンタンジオールジエステルとメチルペンタンジオールエステルのみからなる潤滑油基油、又はジエチルペンタンジオールジエステル、メチルペンタンジオールエステル及び併用基油)に加えて、酸化防止剤を配合した流体軸受用潤滑油組成物である。
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤等が挙げられる。その中でも、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤が推奨される。
フェノール系酸化防止剤としては、この分野で使用されている公知のものが特に制限されることなく使用できる。これらフェノール系酸化防止剤のうちでも、特に、分子内に硫黄を含有しない炭素数6〜100、好ましくは10〜80のものが好ましい。
具体的には、2,6−ジ−t−ブチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−イソプロピリデンビスフェノール、2,4−ジメチル−6−t−ブチルフェノール、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、2,2’−ジヒドロキシ−3,3’−ジ(α−メチルシクロヘキシル)−5,5’−ジメチル−ジフェニルメタン、2,2’−イソブチリデンビス(4,6−ジメチルフェノール)、2,6−ビス(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルベンジル)−4−メチルフェノール、1,1’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,5−ジ−t−アミルヒドロキノン、2,5−ジ−t−ブチルヒドロキノン、1,4−ジヒドロキシアントラキノン、3−t−ブチル−4−ヒドロキシアニソール、2−t−ブチル−4−ヒドロキシアニソール、2,4−ジベンゾイルレゾルシノール、4−t−ブチルカテコール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,4,5−トリヒドロキシベンゾフェノン、α−トコフェロール、ビス[2−(2−ヒドロキシ−5−メチル−3−t−ブチルベンジル)−4−メチル−6−t−ブチルフェニル]テレフタレート、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]等が例示される。この中でも、特に、2,6−ジ−t−ブチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−イソプロピリデンビスフェノール、2,4−ジメチル−6−t−ブチルフェノール、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、ビス[2−(2−ヒドロキシ−5−メチル−3−t−ブチルベンジル)−4−メチル−6−t−ブチルフェニル]テレフタレート、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]が好ましく、更には、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノールが最も好ましい。
フェノール系酸化防止剤は1種単独で若しくは2種以上を組み合わせて用いてもよく、その添加量は、通常、流体軸受用潤滑油基油に対して、0.01〜5重量%であり、好ましくは0.1〜2重量%である。
アミン系酸化防止剤としては、この分野で使用されている公知のものが特に制限されることなく使用できる。これらアミン系酸化防止剤のうちでも、特に、分子中に硫黄を含有しない炭素数6〜60のものであり、好ましくは10〜40のものが好ましい。
具体的には、ジフェニルアミン、モノブチル(直鎖及び分岐鎖を含む)ジフェニルアミン、モノペンチル(直鎖及び分岐鎖を含む)ジフェニルアミン、モノヘキシル(直鎖及び分岐鎖を含む)ジフェニルアミン、モノヘプチル(直鎖及び分岐鎖を含む)ジフェニルアミン、モノオクチル(直鎖及び分岐鎖を含む)ジフェニルアミン等のモノアルキルジフェニルアミン、特にモノ(C−Cアルキル)ジフェニルアミン(即ち、ジフェニルアミンの二つのベンゼン環の一方が、アルキル基、特にC−Cアルキル基でモノ置換されているもの、即ち、モノアルキル置換されたジフェニルアミン)、p,p’−ジブチル(直鎖及び分岐鎖を含む)ジフェニルアミン、p,p’−ジペンチル(直鎖及び分岐鎖を含む)ジフェニルアミン、p,p’−ジヘキシル(直鎖及び分岐鎖を含む)ジフェニルアミン、p,p’−ジヘプチル(直鎖及び分岐鎖を含む)ジフェニルアミン、p,p’−ジオクチル(直鎖及び分岐鎖を含む)ジフェニルアミン、p,p’−ジノニル(直鎖及び分岐鎖を含む)ジフェニルアミン等のジ(アルキルフェニル)アミン、特にp,p’−ジ(C−Cアルキルフェニル)アミン(即ち、ジフェニルアミンの二つのベンゼン環の各々が、アルキル基、特にC−Cアルキル基でモノ置換されているジアルキル置換のジフェニルアミンであって、二つのアルキル基が同一であるもの)、ジ(モノC−Cアルキルフェニル)アミンであって、一方のベンゼン環上のアルキル基が他方のベンゼン環上のアルキル基と異なるもの、ジ(ジ−C−Cアルキルフェニル)アミンであって、二つのベンゼン環上の4つのアルキル基のうちの少なくとも1つが残りのアルキル基と異なるもの等のジフェニルアミン類;N−フェニル−1−ナフチルアミン、N−フェニル−2−ナフチルアミン、4−オクチルフェニル−1−ナフチルアミン、4−オクチルフェニル−2−ナフチルアミン等のナフチルアミン類;p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N’−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N’−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニレンジアミン等のフェニレンジアミン類等が例示される。この中でも、特に、p,p’−ジオクチル(直鎖及び分岐鎖を含む)ジフェニルアミン、p,p’−ジノニル(直鎖及び分岐鎖を含む)ジフェニルアミン、N−フェニル−1−ナフチルアミンが好ましい。なお、本明細書において「(直鎖及び分岐鎖を含む」とは、直鎖アルキル及び分岐鎖アルキルの一方又は双方を含むという意味である。
アミン系酸化防止剤は1種若しくは2種以上を組み合わせて用い、その添加量は、通常、流体軸受用潤滑油基油に対して、0.01〜5重量%であり、好ましくは0.1〜2重量%である。
フェノール系酸化防止剤とアミン系酸化防止剤は、それぞれの1種若しくは2種以上を組み合わせて用いることが可能である。両者の比率は、特に制限されず広い範囲から適宜選択できるが、一般にはフェノール系酸化防止剤(I)のアミン系酸化防止剤(II)に対する重量比が、(I):(II)=1:0.05〜20、特に1:0.2〜5となるように併用するのが好ましい。
好ましい組み合わせとしては、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)及び2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノールからなる群から選ばれる1種若しくは2種以上と、p,p’−ジオクチル(直鎖及び分岐鎖を含む)ジフェニルアミン、p,p’−ジノニル(直鎖及び分岐鎖を含む)ジフェニルアミン、及びN−フェニル−1−ナフチルアミンからなる群から選ばれる1種若しくは2種以上からなる組み合わせが例示される。
具体的には、以下の組み合わせが好ましい:
・2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール+p,p’−ジオクチル(直鎖及び分岐鎖を含む)ジフェニルアミン、
・2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール+p,p’−ジノニル(直鎖及び分岐鎖を含
む)ジフェニルアミン、
・2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール+N−フェニル−1−ナフチルアミン、
・4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)+p,p’−ジオクチ
ル(直鎖及び分岐鎖を含む)ジフェニルアミン、
・4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)+p,p’−ジノニル
(直鎖及び分岐鎖を含む)ジフェニルアミン、
・4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)+N−フェニル−1−
ナフチルアミン、
・2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール+p,p’−ジオクチル(直鎖及び分
岐鎖を含む)ジフェニルアミン、
・2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール+p,p’−ジノニル(直鎖及び分岐
鎖を含む)ジフェニルアミン、
・2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール+N−フェニル−1−ナフチルアミン
等が例示される。この中でも耐熱性に優れる点で、より効果的な組み合わせとして、
・4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)+p,p’−ジオクチ
ル(直鎖及び分岐鎖を含む)ジフェニルアミン、
・4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)+p,p’−ジノニル
(直鎖及び分岐鎖を含む)ジフェニルアミン、
・4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)+N−フェニル−1−
ナフチルアミン
等が推奨される。
フェノール系酸化防止剤とアミン系酸化防止剤を組み合わせたその添加量は、通常、流体軸受用潤滑油基油に対して、0.01〜5重量%であり、好ましくは0.1〜2重量%である。
上記の流体軸受用潤滑油組成物の性能をさらに向上させるために、金属清浄剤、無灰分散剤、油性剤、摩耗防止剤、極圧剤、金属不活性剤、防錆剤、粘度指数向上剤、流動点降下剤、消泡剤、加水分解抑制剤等の添加剤の少なくとも1種を適宜配合することも可能である。これらの配合量は、本発明の効果を奏する限り特に限定されるものではないが、その具体的な例を以下に示す。
金属清浄剤としては、Ca−石油スルフォネート、過塩基性Ca−石油スルフォネート、Ca−アルキルベンゼンスルフォネート、過塩基性Ca−アルキルベンゼンスルフォネート、Ba−アルキルベンゼンスルフォネート、過塩基性Ba−アルキルベンゼンスルフォネート、Mg−アルキルベンゼンスルフォネート、過塩基性Mg−アルキルベンゼンスルフォネート、Na−アルキルベンゼンスルフォネート、過塩基性Na−アルキルベンゼンスルフォネート、Ca−アルキルナフタレンスルフォネート、過塩基性Ca−アルキルナフタレンスルフォネート等の金属スルフォネート、Ca−フェネート、過塩基性Ca−フェネート、Ba−フェネート、過塩基性Ba−フェネート等の金属フェネート、Ca−サリシレート、過塩基性Ca−サリシレート等の金属サリシレート、Ca−フォスフォネート、過塩基性Ca−フォスフォネート、Ba−フォスフォネート、過塩基性Ba−フォスフォネート等の金属フォスフォネート、過塩基性Ca−カルボキシレート等が使用可能である。これらの金属清浄剤は、使用する場合、流体軸受用潤滑油基油に対して、通常、1〜10重量%程度、好ましくは2〜7重量%程度添加するのがよい。
無灰分散剤としては、ポリアルケニルコハク酸イミド、ポリアルケニルコハク酸アミド、ポリアルケニルベンジルアミン、ポリアルケニルコハク酸エステル等が例示される。これらの無灰分散剤は、単独で又は組合わせて用いてもよく、これを使用する場合、通常、流体軸受用潤滑油基油に対して、1〜10重量%、好ましくは2〜7重量%添加することが望ましい。
油性剤としては、ステアリン酸、オレイン酸などの脂肪族飽和及び不飽和モノカルボン酸、ダイマー酸、水添ダイマー酸などの重合脂肪酸、リシノレイン酸、12−ヒドロキシステアリン酸などのヒドロキシ脂肪酸、ラウリルアルコール、オレイルアルコールなどの脂肪族飽和及び不飽和モノアルコール、ステアリルアミン、オレイルアミンなどの脂肪族飽和及び不飽和モノアミン、ラウリン酸アミド、オレイン酸アミドなどの脂肪族飽和及び不飽和モノカルボン酸アミド、バチルアルコール、キミルアルコール、セラキルアルコールなどのグリセリンエーテル、ラウリルポリグリセリンエーテル、オレイルポリグリセリルエーテルなどのアルキル若しくはアルケニルポリグリセリルエーテル、ジ(2−エチルヘキシル)モノエタノールアミン、ジイソトリデシルモノエタノールアミンなどのアルキル若しくはアルケニルアミンのポリ(アルキレンオキサイド)付加物等が例示される。これらの油性剤は、単独で又は組合わせて用いてもよく、これを使用する場合、通常、流体軸受用潤滑油基油に対して、0.01重量%〜5重量%、好ましくは0.1重量%〜3重量%添加することが望ましい。
摩耗防止剤・極圧剤としては、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、アルキルフェニルホスフェート類、トリブチルホスフェート、ジブチルホスフェート等のリン酸エステル類、トリブチルホスファイト、ジブチルホスファイト、トリイソプロピルホスファイト等の亜リン酸エステル類及びこれらのアミン塩等のリン系、硫化油脂、硫化オレイン酸などの硫化脂肪酸、ジベンジルジスルフィド、硫化オレフィン、ジアルキルジスルフィドなどの硫黄系、Zn−ジアルキルジチオフォスフェート、Zn−ジアルキルジチオフォスフェート、Mo−ジアルキルジチオフォスフェート、Mo−ジアルキルジチオカルバメートなどの有機金属系化合物等が例示される。これらの摩耗防止剤は、単独で又は組み合わせて用いてもよく、これを使用する場合、通常、流体軸受用潤滑油基油に対して、0.01〜10重量%、好ましくは0.1〜5重量%添加することが望ましい。
金属不活性剤としては、ベンゾトリアゾール系、チアジアゾール系、没食子酸エステル系の化合物等が例示される。これらの金属不活性剤は、単独で又は組み合わせて用いてもよく、これを使用する場合、通常、流体軸受用潤滑油基油に対して、0.01〜0.4重量%、好ましくは0.01〜0.2重量%添加することが望ましい。
防錆剤としては、ドデセニルコハク酸ハーフエステル、オクタデセニルコハク酸無水物、ドデセニルコハク酸アミドなどのアルキル又はアルケニルコハク酸誘導体、ソルビタンモノオレエート、グリセリンモノオレエート、ペンタエリスリトールモノオレエートなどの多価アルコール部分エステル、Ca−石油スルフォネート、Ca−アルキルベンゼンスルフォネート、Ba−アルキルベンゼンスルフォネート、Mg−アルキルベンゼンスルフォネート、Na−アルキルベンゼンスルフォネート、Zn−アルキルベンゼンスルフォネート、Ca−アルキルナフタレンスルフォネートなどの金属スルフォネート、ロジンアミン、N−オレイルザルコシンなどのアミン類、ジアルキルホスファイトアミン塩等が例示される。これらの防錆剤は、単独で又は組み合わせて用いてもよく、これを使用する場合、通常、流体軸受用潤滑油基油に対して、0.01〜5重量%、好ましくは0.05〜2重量%添加することが望ましい。
粘度指数向上剤としては、ポリアルキルメタクリレート、ポリアルキルスチレン、ポリブテン、エチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸エステル共重合体などのオレフィン共重合体が例示される。これらの粘度指数向上剤は、単独で又は組み合わせて用いてもよく、これを使用する場合、通常、流体軸受用潤滑油基油に対して、0.1〜15重量%、好ましくは0.5〜7重量%添加することが望ましい。
流動点降下剤としては、塩素化パラフィンとアルキルナフタレンの縮合物、塩素化パラフィンとフェノールの縮合物、既述の粘度指数向上剤であるポリアルキルメタクリレート、ポリアルキルスチレン、ポリブテン等が例示される。これらの流動点降下剤は、単独で又は組み合わせて用いてもよく、これを使用する場合、通常、流体軸受用潤滑油基油に対して、0.01〜5重量%、好ましくは0.1〜3重量%添加することが望ましい。
消泡剤としては、液状シリコーンが適しており、これを使用する場合、その添加量は、通常、流体軸受用潤滑油基油に対して、0.0005〜0.01重量%である。
加水分解抑制剤としては、アルキルグリシジルエーテル類、アルキルグリシジルエステル類、アルキレングリコールグリシジルエーテル類、脂環式エポキシ類、フェニルグリシジルエーテルなどのエポキシ化合物、ジ−tert−ブチルカルボジイミド、1,3−ジ−p−トリルカルボジイミドなどのカルボジイミド化合物が使用可能であり、通常、流体軸受用潤滑油基油に対して、0.05〜2重量%添加するのが望ましい。
<流体軸受>
本発明の流体軸受は、上記の流体軸受用潤滑油組成物を用いることを特徴とし、流体軸受の具体的な例としては、図1に示すものが挙げられる。図1は、本発明の流体軸受の概略構成を模式的に示した断面図の一例である。
本発明の流体軸受は、ボールベアリング等の機構を有さず、軸とスリーブとからなり、それらの間に収容された潤滑油組成物によって互いに直接接触することがないように間隔が保持される流体軸受であれば、機械的に特に限定されるものではない。図1の流体軸受は、軸(1)に、ラジアル動圧発生溝(3)及び(4)とスラストプレート(7)の上下に、スラスト動圧発生溝(5)及び(6)が設けた流体軸受の例である。これらの動圧溝(3)、(4)、(5)及び(6)は、本例ではヘリングボーン形状に形成されているが、必ずしもこの形状に限定されず、スパイラル形状、円弧形状、直線形状などに形成されても良い。
また、ラジアル動圧発生溝(3)及び(4)は軸(1)の外周面の代わりにスリーブ(2)の内周面に形成されても良く、ストラス動圧発生溝(5)及び(6)は、それぞれスリーブ(2)の下端面とカウンタープレート(8)の上面の代わりにスラストプレート(7)の上面と下面に形成しても良い。これらの動圧溝(3)、(4)、(5)及び(6)と、それぞれが臨む各対向面との間の微小隙間には、本発明の潤滑油組成物(9)が封入されている。
以上の構成を有する流体軸受において、例えば軸(1)が回転駆動されると、動圧溝(3)及び(4)によって微小隙間内の潤滑油組成物にラジアル方向の動圧が発生するとともに、軸受面によって微小隙間内の潤滑油組成物にアキシャル方向の動圧(スラスト力)が発生するため、これらの動圧によってスラストプレート(7)付き軸(1)がスリーブ(2)及びカウンタープレート(8)に対して非接触状態で高速回転する。
本発明の流体軸受は、基油自体の安定性、粘度特性、低温特性、且つ耐揮発性が良好な流体軸受用潤滑油基油を用いた軸受用潤滑油組成物を潤滑油(9)として用いているので、潤滑油組成物の保持量を増やさずに従来の潤滑油組成物を用いた流体軸受よりも長い軸受寿命が得られる。従って、小型で高精度・高速回転が求められるスピンドルモータ等に適用される流体軸受として好適である。
<スピンドルモータ>
本発明のスピンドルモータは、上記の流体軸受を用いることを特徴とし、スピンドルモータの具体的な例としては、図2に示すものが挙げられる。図2は、本発明のスピンドルモータの概略構成を模式的に示した断面図の一例である。
本発明のスピンドルモータは、ベース(11)に形成された壁にステータコイル(12)が設けられ、ハブ(10)の内周面にステータコイル(12)と対向してロータマグネット(13)が取り付けられて、モータ駆動部が構成されている。このモータ駆動部により回転部が回転駆動すると、ラジアル方向、スラスト方向ともに、潤滑油組成物(9)に動圧が発生し、回転部と固定部とが非接触で回転が支持される。
以下に実施例を掲げて本発明を詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。また、各例における潤滑油基油の物理特性及び化学特性は以下の方法により評価した。
(a)全酸価
JIS−K−2501(1992)に準拠して測定した。なお検出限界は0.01mgKOH/gである。
(b)動粘度
JIS−K−2283(2000)に準拠して、40℃、100℃における動粘度を測定した。但し、0℃動粘度はJIS−K−2283(2000)に規定される粘度−温度関係式より算出した。
40℃での動粘度が5〜20mm/sの範囲ときに潤滑性能や省エネルギーの点で良好と評価される。
(c)粘度指数
JIS−K−2283(2000)に準拠して算出した。粘度指数130以上のときは粘度−温度特性が優れていると評価される。
(d)低温流動性試験(流動点)
JIS−K−2269(1987)に準拠して流動点を測定した。流動点が0℃以下のときには低温流動性が優れていると評価される。
(e)耐熱性試験(揮発量)
実施例又は比較例の各々の潤滑油基油に対し、2,2’−メチレンビス−2,6−ジ−tert−ブチルフェノール(東京化成工業社製)、IRGANOX L57(製品名,BASF社製)、各0.5重量%を添加し溶解させて潤滑油組成物を調製した。当該潤滑油組成物を、内径25mm、高さ90mmのガラス管にエステル10gを秤量し、ガラス管を2本取り付けたシリコンゴム栓を付け、片方の管から空気を1.0L/hで送る。150℃に設定したオイルバスにガラス管を浸漬して、20時間加熱した。加熱試験後の揮発量は下記の式に従い算出した。
揮発量(%)=[(W−W)/W]×100
[式中、Wは試験前の重量を示し、Wは試験後の重量を示す。]。
揮発量が5重量%未満のときは耐揮発性が良好であると評価される。
(g)潤滑性試験
JPI−5S−32−90に準拠して、高速四球型摩耗試験機(神鋼造機製)を用いて、回転数1200rpm、荷重40kg、時間60分の条件で試験し、摩耗痕径を測定した。
摩耗痕径が0.60mm以下のときは潤滑性に優れていると評価される。
[安定性評価:潤滑性試験後の潤滑油基油の分析]
(h)部分エステルの増加量測定
潤滑性試験前及び試験後の潤滑油基油をガスクロマトグラフィー(GC)により分析し、部分エステル(ジエステル化合物の片方のエステル基が分解した化合物)を測定し、試験後の部分エステルのGC面積%の増加量を算出した。なお、混合エステルについては、各々の部分エステルを合計した。
[GC分析条件]
機器:島津製作所製 GC−2010
カラム:J&W製TC−5 30mx0.25mm
カラム温度:60〜300℃(昇温速度10℃/min)
インジェクション温度/検出器温度:305℃/305℃
検出器:FID
キャリアガス:ヘリウム
ガス流量:1.08ml/min
(i)全酸価の上昇量測定
潤滑性試験前及び試験後の全酸価を測定し、試験後の全酸価の上昇量を算出した。
[製造例1]
撹拌器、温度計、冷却管付き水分分留受器を備えた1リットルの四ツ口フラスコにn-ノナン酸(OXEA社製を蒸留精製したものを使用)483.5g(3.06モル)、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール(東京化成工業社製)240.0g(1.50モル)、キシレン(酸及びアルコールの総量に対し5重量%)及び触媒として酸化スズ(原料脂肪酸及び原料アルコールの総量に対し0.1重量%)を仕込み、窒素置換した後、徐々に230℃まで昇温した。理論生成水量(54.0g)を目処にして留出してくる生成水を水分分留受器で除去しつつ、還流が起こるように減圧度を調整しながら、エステル化反応を行い、全酸価が20以下となるまで反応を行った。反応終了後、キシレン及び残存ずる原料脂肪酸を蒸留により除去してエステル化粗物を得た。次いで、得られたエステル化粗物の全酸価に対して1.2当量の苛性ソーダ水溶液で中和した後、中性になるまで水洗した。更に、得られたエステル化粗物を活性炭で処理した後、濾過により活性炭を除去して、全酸価が0.01mgKOH/g以下、99.4GC面積%、部分エステル量0.10GC面積%の2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール−ジ(n−ノナノエート)594.0gを得た。以下得られた2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール−ジ(n−ノナノエート)をDEPD/nC9酸と略記する。
[製造例2]
n−ノナン酸の代わりにn−デカン酸(新日本理化社製を蒸留精製したものを使用)491.2g(2.86モル)を使用し、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール(協和発酵ケミカル社製)224.0g(1.40モル)使用した以外は製造例1と同様の方法により、全酸価が0.01mgKOH/g以下、99.7GC面積%、部分エステル量0.10GC面積%の2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール−ジ(n−デカノエート)603.8gを得た。以下得られた2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール−ジ(n−デカノエート)をDEPD/nC10酸と略記する。
[製造例3]
n−デカン酸の代わりにn−ノナン酸483.5g(3.06モル)を使用し、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオールの代わりに3−メチル−1,5−ペンタンジオール(クラレ社製)177.0g(1.50モル)使用した以外は製造例1と同様の方法により、全酸価が0.01mgKOH/g以下、99.5GC面積%、部分エステル量0.40GC面積%の3−メチル−1,5−ペンタンジオール−ジ(n−ノナノエート)537.3gを得た。以下得られた3−メチル−1,5−ペンタンジオール−ジ(n−ノナノエート)をMPD/nC9酸と略記する。
[製造例4]
n−ノナン酸の代わりにn−デカン酸(新日本理化社製を蒸留精製したものを使用)526.3g(3.06モル)使用し、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオールの代わりに3−メチル−1,5−ペンタンジオール177.0g(1.50モル)使用した以外は製造例1と同様の方法により、全酸価が0.01mgKOH/g以下、99.4GC面積%、部分エステル量0.50GC面積%の3−メチル−1,5−ペンタンジオール−ジ(n−デカノエート)575.1gを得た。以下得られた3−メチル−1,5−ペンタンジオール−ジ(n−デカノエート)をMPD/nC10酸と略記する。
[製造例5]
n−ノナン酸の代わりにn−ウンデカン酸(東京化成工業社製を蒸留精製したものを使用)569.2g(3.06モル)使用し、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオールの代わりに3−メチル−1,5−ペンタンジオール177.0g(1.50モル)使用した以外は製造例1と同様の方法により、全酸価が0.01mgKOH/g以下、99.3GC面積%、部分エステル量0.60GC面積%の3−メチル−1,5−ペンタンジオール−ジ(n−ウンデカノエート)612.9gを得た。以下得られた3−メチル−1,5−ペンタンジオール−ジ(n−ウンデカノエート)をMPD/nC11酸と略記する。
[実施例1〜8]
上記製造例1〜5で得られたジエチルペンタンジオールジエステル又はメチルペンタンジオールエステルを表1に記載の混合比率となるように混合して、本発明のスピンドルモータ用潤滑油基油を調製した。調製したそれぞれの基油の全酸価、動粘度、粘度指数、低温流動性試験、耐熱性試験、潤滑性試験及び潤滑性試験後の潤滑油基油の分析を行い、それらの試験結果を表2に示した。
[比較例1〜5]
上記製造例1〜5で調製されたジエチルペンタンジオールジエステル又はメチルペンタンジオールエステルを本発明外の潤滑油基油として評価した。それらの基油の酸価、動粘度、粘度指数、低温流動性試験、耐熱性試験、潤滑性試験及び潤滑性試験後の潤滑油基油の分析を行い、それらの試験結果を表2に示した。
表2から、本発明の潤滑油基油は、製造例1〜5で調製されたエステルを単独で使用する場合と比較すると、潤滑油基油の安定性評価(部分エステル量の増加量、全酸価の上昇量)において極めて優れており、潤滑油基油としての性能(動粘度、粘度指数、低温流動性、耐熱性、潤滑性)においても優れた潤滑油基油であることがわかる。
本発明のジエチルペンタンジオールジエステルとメチルペンタンジオールジエステルを所定量配合した流体軸受用潤滑油基油は、スピンドルモータ使用時において当該潤滑油基油の分解を低減でき、よって、長期間安定してスピンドルモータを使用することができる。
1 軸
2 スリーブ
3、4 ラジアル動圧発生溝
5、6 スラスト動圧発生溝
7 スラストプレート
8 カウンタープレート
9 潤滑油組成物
10 ハブ
11 ベース
12 ステータコイル
13 ロータマグネット

Claims (10)

  1. 一般式(1)
    [式中、R及びRは、同一又は異なって、それぞれ炭素数5〜11の直鎖状の脂肪族飽和モノカルボン酸からカルボキシル基を除いて得られる残基を表す。]
    で表されるジエチルペンタンジオールジエステルの1種又は2種以上、及び、
    一般式(2)
    [式中、R及びRは、同一又は異なって、それぞれ炭素数7〜11の直鎖状の脂肪族飽和モノカルボン酸からカルボキシル基を除いて得られる残基を表す。]
    で表されるメチルペンタンジオールジエステルの1種又は2種以上を含有し、ジエチルペンタンジオールジエステルとメチルペンタンジオールジエステルの重量比が、70:30〜30:70であることを特徴とする流体軸受用潤滑油基油。
  2. 流体軸受用潤滑油基油中の、ジエチルペンタンジオールジエステルとメチルペンタンジオールジエステルの合計が90重量%以上である、請求項1に記載の流体軸受用潤滑油基油。
  3. 前記流体軸受用潤滑油基油が、動圧流体軸受用潤滑油基油又は焼結含油軸受用潤滑油基油である、請求項1又は請求項2に記載の流体軸受用潤滑油基油。
  4. 一般式(1)に記載のR及びRが、同一又は異なって、それぞれ炭素数7〜10の直鎖状の脂肪族飽和モノカルボン酸からカルボキシル基を除いて得られる残基である、請求項1〜3のいずれかに記載の流体軸受用潤滑油基油。
  5. 一般式(2)に記載のR及びRが、同一又は異なって、それぞれ炭素数8〜10の直鎖状の脂肪族飽和モノカルボン酸からカルボキシル基を除いて得られる残基である、請求項1〜4のいずれかに記載の流体軸受用潤滑油基油。
  6. 流体軸受用潤滑油基油の、40℃での動粘度が5〜20mm/s以下、粘度指数が130以上、流動点が0℃以下及び揮発量が5重量%以下である、請求項1〜5のいずれかに記載の流体軸受用潤滑油基油。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の流体軸受用潤滑油基油及び酸化防止剤を含有することを特徴とする、流体軸受用潤滑油組成物。
  8. 酸化防止剤が、フェノール系酸化防止剤及び/又はアミン系酸化防止剤である、請求項7に記載の流体軸受用潤滑油組成物。
  9. 軸とスリーブとからなる流体軸受において、請求項7又は請求項8に記載の流体軸受用潤滑油組成物を用いることを特徴とする流体軸受。
  10. 請求項9に記載の流体軸受を備えたスピンドルモータ。
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