以下、本発明の実施の形態を、図面に基づいて詳細に説明する。
<画像形成装置の概要>
図1および図2は、本実施の形態に係る画像形成装置の構成の一例を示す図である。
図1、図2に示す画像形成装置1は、電子写真プロセス技術を利用した中間転写方式のカラー画像形成装置の例である。画像形成装置1は、感光体ドラム413上に形成されたC(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、K(ブラック)の各色トナー像を中間転写ベルト421に転写(1次転写)する。そして、画像形成装置1は、中間転写ベルト421上で4色のトナー像を重ね合わせた後、重ね合わせられたトナー像を、用紙に転写(2次転写)する。これにより、画像形成装置1は、用紙に画像を形成する。
また、画像形成装置1には、タンデム方式が採用されている。タンデム方式は、CMYKの4色に対応する感光体ドラム413を中間転写ベルト421の走行方向に直列配置し、中間転写ベルト421に一回の手順で各色トナー像を順次転写させる方式である。
図1、図2に示すように、画像形成装置1は、画像読取部10、操作表示部20、画像処理部30、画像形成部40、搬送部50、定着部60、記憶部70、および制御部100を備える。
制御部100は、CPU(Central Processing Unit)101、ROM(Read Only Memory)102、RAM(Random Access Memory)103等を備える。
CPU101は、ROM102から処理内容に応じたプログラムを読み出してRAM103に展開し、展開したプログラムと協働して画像形成装置1の各ブロックの動作を制御する。このとき、記憶部70に格納されている各種データが参照される。記憶部70は、例えば不揮発性の半導体メモリ(いわゆるフラッシュメモリ)やハードディスクドライブにより構成される。
画像読取部10は、ADF(Auto Document Feeder)と称される自動原稿給紙装置11および原稿画像走査装置(スキャナー)12等を備える。
自動原稿給紙装置11は、原稿トレイに載置された原稿Dを搬送機構により搬送して原稿画像走査装置12へ送り出す。自動原稿給紙装置11は、原稿トレイに載置された多数枚の原稿Dの画像(両面を含む)を連続して読み取ることができる。
原稿画像走査装置12は、自動原稿給紙装置11からコンタクトガラス上に搬送された原稿、または、コンタクトガラス上に載置された原稿を、光学的に走査する。そして、原稿画像走査装置12は、原稿からの反射光を、CCD(Charge Coupled Device)センサー12aの受光面上に結像させ、原稿画像を読み取る。
画像読取部10は、原稿画像走査装置12による読取結果に基づいて入力画像データを生成する。この入力画像データには、画像処理部30において所定の画像処理が施される。
操作表示部20は、例えばタッチパネル付の液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)により構成され、表示部21および操作部22として機能する。
表示部21は、制御部100から入力される表示制御信号に従って、各種操作画面、画像の状態表示、各機能の動作状況等の表示を行う。
操作部22は、テンキー、スタートキー等の各種操作キーを備える。操作部22は、ユーザーによる各種入力操作を受け付け、その入力操作に対応する操作信号を制御部100に出力する。
画像処理部30は、入力画像データに対して、初期設定またはユーザー設定に応じたデジタル画像処理を行う回路等を備える。例えば、画像処理部30は、制御部100の制御下で、階調補正データにより階調補正テーブルを生成して階調補正を行う。また、画像処理部30は、入力画像データに対して、階調補正の他、色補正、シェーディング補正等の各種補正処理や、圧縮処理等を行う。これらの処理が行われたデジタル画像データに基づいて、画像形成部40が制御される。
画像形成部40は、画像形成ユニット41Y、41M、41C、41Kおよび中間転写ユニット42等を備える。これらのユニットは、入力画像データに基づいて、Y成分、M成分、C成分、K成分の各有色トナーによる画像を形成するためのものである。
Y成分、M成分、C成分、K成分用の画像形成ユニット41Y、41M、41C、41Kは、同様の構成を有する。図示および説明の便宜上、共通する構成要素は同一の符号で示し、それぞれを区別する場合には符号にY、M、C、またはKを添えて示す。図1では、Y成分用の画像形成ユニット41Yの構成要素についてのみ符号が付され、その他の画像形成ユニット41M、41C、41Kの構成要素については符号が省略されている。
画像形成ユニット41の構成を、画像形成ユニット41Yを用いて説明する。
画像形成ユニット41Yは、露光装置411、現像装置412、感光体ドラム413、帯電装置414およびドラムクリーニング装置415等を備える。
感光体ドラム413は、例えば、負帯電型の有機感光体(OPC:Organic Photo-conductor)である。この有機感光体は、例えば、アルミニウム製の導電性円筒体(アルミ素管)の周面に、アンダーコート層(UCL:Under Coat Layer)、電荷発生層(CGL:Charge Generation Layer)、電荷輸送層(CTL:Charge Transport Layer)を順次積層した構成を有する。なお、本実施の形態において、感光体ドラム413は、本発明の像担持体を構成する。
帯電装置414は、光導電性を有する感光体ドラム413の表面を一様に負極性に帯電させる。
露光装置411は、例えば半導体レーザーにより構成され、感光体ドラム413に対してY成分の画像に対応するレーザー光を照射する。
感光体ドラム413では、電荷発生層で正電荷が発生し、電荷輸送層の表面まで輸送される。これにより、感光体ドラム413の表面電荷(負電荷)は、中和される。感光体ドラム413の表面には、周囲との電位差によりY成分の静電潜像が形成される。そして、感光体ドラム413は、形成された静電潜像を担持する。
現像装置412は、Y成分の現像剤を収容している。現像剤は、例えば、小粒径のトナーと磁性キャリアー(以下、単に「キャリアー」という)とからなる2成分現像剤である。現像装置412は、キャリアーとの摩擦により帯電したトナーを、回転部材を用いて感光体ドラム413の表面に供給することにより、感光体ドラム413の表面にトナー像を形成する。より具体的には、現像装置412は、感光体ドラム413の表面にY成分のトナーを付着させることにより、静電潜像を可視化して、トナー像を形成する。すなわち、現像装置412は、回転部材を備え、内部に収容されたトナーを、この回転部材を用いて感光体ドラム413に供給することにより、上記静電潜像の現像を行う。なお、トナーは、1成分トナーであっても良い。現像装置412の構成の詳細については、後述する。
ドラムクリーニング装置415は、感光体ドラム413の表面に摺接されるドラムクリーニングブレードを有する。1次転写後に感光体ドラム413の表面に残存する転写残トナーは、このドラムクリーニングブレードによって掻き取られ、除去される。
中間転写ユニット42は、中間転写体となる中間転写ベルト421、1次転写ローラー422、2次転写ローラー423、駆動ローラー424、従動ローラー425およびベルトクリーニング装置426等を備える。
中間転写ベルト421は無端状ベルトで構成され、駆動ローラー424および従動ローラー425に張架される。中間転写ベルト421は、駆動ローラー424の回転により矢印A方向に一定速度で走行する。1次転写ローラー422によって、中間転写ベルト421が感光体ドラム413に圧接されると、中間転写ベルト421に各色トナー像が順次重ねて1次転写される。そして、中間転写ベルト421が2次転写ローラー423によって用紙Sに圧接されると、中間転写ベルト421に1次転写されたトナー像が用紙Sに2次転写される。
ベルトクリーニング装置426は、中間転写ベルト421の表面に摺接されるベルトクリーニングブレードを有する。2次転写後に中間転写ベルト421の表面に残存する転写残トナーは、このベルトクリーニングブレードによって掻き取られ、除去される。
定着部60は、搬送されてきた用紙Sを定着ニップ部で加熱、加圧する。これにより、定着部60は、用紙Sにトナー像を定着させる。定着部60は、定着ユニット部61とエア分離ユニット部62とを備えて構成されるエア分離式の定着装置である。
定着ユニット部61は、定着ニップ部に用紙Sを通過させて、この用紙S上に転写されたトナー画像に熱源からの熱を与える。これにより、定着ユニット部61は、用紙Sにトナー画像を定着させる。定着ニップ部とは、一対の定着部材を圧接することにより形成される部分である。
エア分離ユニット部62は、定着ニップ部における用紙Sの排紙側から用紙Sに空気を吹き付ける。これにより、エア分離ユニット部62は、定着部材から用紙Sを分離する。
搬送部50は、給紙部51、搬送機構52および排紙部53等を備える。給紙部51を構成する3つの給紙トレイユニット51a〜51cには、用紙の坪量やサイズ等に基づいて識別された用紙(規格用紙、特殊用紙)Sが、予め設定された種類ごとに収容される。
給紙トレイユニット51a〜51cに収容されている用紙Sは、最上部から一枚ずつ送出される。そして、送出された用紙Sは、レジストローラー52a等の複数の搬送ローラーを備えた搬送機構52により、画像形成部40に搬送される。このとき、レジストローラー52aが配設されたレジスト部により、給紙された用紙Sの傾きが補正されるとともに搬送タイミングが調整される。
そして、画像形成部40において、中間転写ベルト421のトナー像が用紙Sの画像形成面に一括して2次転写され、定着部60において定着処理が行われる。定着処理が行われた用紙Sは、排紙ローラー53aを備えた排紙部53により画像形成装置1の外に排紙される。
<現像装置の構成>
図3は、現像装置412の構成の一例を示す図である。
図3に示すように、現像装置412は、トナーとキャリアーとを含む現像剤を用いて、感光体ドラム413上に形成された静電潜像を現像する。これにより、現像装置412は、感光体ドラム413上にトナー像を形成する。現像装置412は、現像ローラー210、供給ローラー220、搬送ガイド部230、撹拌スクリュー240および搬送スクリュー250を備える。
撹拌スクリュー240および搬送スクリュー250は、螺旋形状のスクリュー部材である。撹拌スクリュー240は、第1の現像剤供給室260に収納されている。搬送スクリュー250は、第2の現像剤供給室270に収納されている。撹拌スクリュー240および搬送スクリュー250は、現像剤を、攪拌しながら供給ローラー220へ搬送する。
供給ローラー220は、回転可能な供給スリーブと、供給スリーブの内部に配置された供給マグネットロールとを備え、搬送スクリュー250に対向して配置されている。供給マグネットロール内には、磁界を発生させる複数の磁極が配置されている。この磁極が発生する磁界によって、現像剤は、供給スリーブの外周面に担持される。そして、供給スリーブが図中反時計回りに回転することにより、現像剤は、搬送ガイド部230まで搬送される。
搬送ガイド部230は、現像ローラー210と供給ローラー220との間に架設され、供給ローラー220から搬送された現像剤を、現像ローラー210に供給する。搬送ガイド部230の鉛直上方の面は、平坦面であって、かつ、供給ローラー220から現像ローラー210へ向けて降り斜面をなしている。搬送ガイド部230内には、磁気ブラシ形成部として機能する磁石340が設けられている。搬送ガイド部230における供給ローラー220側の端部と供給ローラー220との間には、間隙(例えば、0.75[mm])が形成されている。
現像ローラー210は、回転可能な現像スリーブ210Aと、現像スリーブ210Aの内部に配置された現像マグネットロール210Bとを備える。現像ローラー210は、感光体ドラム413に近接して配置され、感光体ドラム413に近接する現像領域280へ現像剤を搬送する。現像スリーブ210Aは図中反時計回りで回転する。現像マグネットロール210B内には、磁界を発生させる複数の磁極が配置されている。搬送ガイド部230における現像ローラー210側の端部と現像スリーブ210Aとの間には、所定の間隙(例えば、0.50[mm])が形成されている。なお、本実施の形態において、現像スリーブ210Aは、本発明の回転部材を構成する。
現像スリーブ210Aの近傍には、規制ブレード290が配置されている。規制ブレード290の端部291は、現像スリーブ210Aの回転方向において、搬送ガイド部230との近接部よりも下流であって、かつ、現像領域280よりも上流に位置している。規制ブレード290は、規制ホルダ300により支持されている。
現像ローラー210の一部、供給ローラー220、搬送ガイド部230、撹拌スクリュー240、搬送スクリュー250および規制ブレード290は、現像ケーシング(310,320)の中に収納されている。現像ケーシングは、上部ケーシング310と、下部ケーシング320とからなる。下部ケーシング320は、第1の現像剤供給室260および第2の現像剤供給室270を形成する。第1の現像剤供給室260と第2の現像剤供給室270とは、隔壁部330により仕切られている。上部ケーシング310の内部天井部には、規制ブレード290を支持する規制ホルダ300が固定されている。
第1の現像剤供給室260には、トナー供給部(図示せず)からトナーが供給される。撹拌スクリュー240は、回転することにより第1の現像剤供給室260へ供給されたトナーとキャリアーとを混合攪拌し摩擦帯電する。撹拌スクリュー240は、摩擦帯電した現像剤を第2の現像剤供給室270へ搬送する。搬送スクリュー250は、回転することにより、撹拌スクリュー240から搬送された現像剤を供給ローラー220へ搬送する。
供給ローラー220の供給マグネットロールが発生する磁界によって、供給スリーブの外周面上にキャリアーの磁気ブラシが発生して、磁気ブラシに担持されたトナーを含む現像剤の層が供給スリーブの外周面上に形成される。供給スリーブは、図中反時計回りに回転することによって、現像剤を磁界によって当該供給スリーブの外周面に担持しながら、搬送ガイド部230まで搬送する。
搬送ガイド部230上の現像剤は、現像ローラー210まで導かれる。現像マグネットロール210Bが発生する磁界によって、現像スリーブ210Aの外周面上に磁気ブラシが発生する。これにより、現像剤の層が、現像スリーブ210Aの外周面上に形成される。
そして、現像スリーブ210Aは、図中反時計回りに回転する。これにより、現像スリーブ210Aは、現像剤を、磁界によって現像スリーブ210Aの外周面に担持しながら、感光体ドラム413に最も接近する現像領域280まで搬送する。その途中で、規制ブレード290が現像剤の層の厚さを規制することにより、一定量の現像剤が、現像領域280へ搬送される。
現像領域280において、現像剤の層は感光体ドラム413の表面に接触する。すなわち、現像スリーブ210Aは、現像剤を感光体ドラム413の表面に接触させる。現像領域280において、トナーは、現像スリーブ210Aから感光体ドラム413の表面に形成された静電潜像へ静電的に移行する。
このようにして、現像装置412は、感光体ドラム413上の静電潜像をトナーによって可視化する。
<キャリアーの劣化と現像スリーブのトルクとの関係>
現像剤を構成するキャリアーは、コート膜で覆われた構造を有している。コート膜は、トナーを摩擦帯電させる為に必要であるが、現像剤が現像装置412内で撹拌・使用される事により、徐々に減耗していく。
コート膜がある膜量(厚さ)以下になると、キャリアーの抵抗値が低過ぎる状態となる。すると、キャリアーに不要な電荷が注入され、いわゆるキャリアー付着が発生することになる。また、コート膜がある膜量以下になると、トナーを摩擦帯電させる帯電性能が十分に確保できなくなる。通常は、このような状態になった時点が、現像剤としての使用可能限界となる。
従来技術は、現像剤駆動距離などのパラメーターに基づいて、現像条件に対して補正を加えることにより、画像濃度を所望のレベルに維持するものである。ところが、上述の通り、従来技術では、所望の画質での画像形成を長期間に亘って行うことは困難であった。
この点に関し、本発明者は、現像スリーブ210Aのトルクが、現像剤の劣化(キャリアーの劣化)と密接な関係を有することを見出した。
図4は、現像剤駆動距離に対するキャリアー膜量の変化と現像スリーブ210Aのトルク(つまり、現像剤の搬送に関する回転部材のトルク)との関係を示す、本発明者による実験結果である。なお、以下の説明では、便宜上、「現像スリーブ210Aのトルク」を「現像器トルク」という。
図4において、横軸は現像剤駆動距離[km]を示し、縦軸はキャリアー膜量[μm]を示す。そして、菱形印(◆)は、現像器トルクが350[mN/m]である基準機のキャリアー膜量501を示す。三角印(▲)は、現像器トルクが基準機の現像器トルクよりも大きい400[mN/m]である画像形成装置(以下「トルク大の装置」という)のキャリアー膜量502を示す。四角印(■)は、現像器トルクが基準機の現像器トルクよりも小さい300[mN/m]である画像形成装置(以下「トルク小の装置」という)のキャリアー膜量503を示す。
図4から分かるように、各装置のキャリアー膜量501〜503は、現像剤駆動距離が長くなるにつれて、小さくなっていく。これは、キャリアーに対する負荷が蓄積していくためである。
また、図4から分かるように、トルク大の装置のキャリアー膜量502は、現像剤駆動距離が長くなるにつれて、基準機のキャリアー膜量501から大きくずれていき、より小さい値となる。これは、現像器トルクが高い場合、規制ブレード290の端部291(図3参照)等において現像剤に掛かる負荷が、想定よりも高くなっていることが多く、キャリアー膜量の磨耗がより速く進むためである。
また、図4から分かるように、トルク小の装置のキャリアー膜量503は、現像剤駆動距離が長くなるにつれて、基準機のキャリアー膜量501から大きくずれていき、より大きい値となる。これは、現像器トルクが低い場合、規制ブレード290の端部291(図3参照)等において現像剤に掛かる負荷が、想定よりも低くなっていることが多く、キャリアー膜量の磨耗がより遅く進むためである。
このような実験結果より、現像スリーブ210Aのトルクは、現像剤駆動距離、印字率、および平均使用温度(所定のパラメーター)と同様に、現像剤の劣化に影響するパラメーターであるということがわかった。
そこで、本実施の形態に係る画像形成装置1は、現像条件に対して、現像剤駆動距離に基づいた補正だけでなく、更に、現像器トルクに基づいた2次補正を加えるようにした。
本実施の形態において、補正を加える対象となる現像条件は、現像電界ΔVd[v]およびTCR(Toner Carrier Ratio)センサー(図示せず)のコントロール電圧Vc[v]の値とする。現像電界ΔVdは、感光体ドラム413上に形成される静電荷の電界であり、画像濃度を変化させるパラメーターである。TCRセンサーのコントロール電圧Vcは、現像剤中のトナー濃度Tc%(キャリアーおよびトナーに対する、トナーの重量割合)を検出するTCRセンサーに与えるコントロール電圧であり、トナー濃度Tc%に対して感度のある領域を変化させるパラメーターである。
画像形成装置1は、例えば、制御部100(図2参照)の機能により、上記現像条件に対する補正を実現する。この場合、制御部100は、感光体ドラム413および現像装置412の現像における現像条件を制御するとともに、現像器トルクに基づいて、かかる現像条件を補正する。
なお、現像剤の劣化に大きく影響するパラメーターとしては、現像剤駆動距離の他に、印字率が挙げられる。しかし、ここでは、印字率が非常に低く現像剤劣化への影響が非常に少ないものとして、説明を行う。すなわち、本実施の形態では、画像形成装置1は、現像剤駆動距離に基づいた補正を行い、印字率に基づいた補正は行わないものとして、説明を行う。
<制御部の機能的構成>
図5は、制御部の機能的構成の一例を示す図である。ここでは、現像条件に対する補正に関連する部分についてのみ図示および説明を行う。
図5において、制御部100は、初期現像条件格納部110、1次補正量テーブル格納部120、2次補正量テーブル格納部130、現像剤駆動距離取得部140、トルク取得部150、補正量決定部160、および現像条件補正部170を有する。
初期現像条件格納部110は、初期現像条件を格納する。初期現像条件は、現像電界ΔVd[v]の初期値(例えば、500[v])およびTCRセンサーのコントロール電圧Vcの初期値である。初期現像条件格納部110が格納する初期現像条件は、現像条件補正部170から参照可能となっている。
なお、ここでは、説明の便宜のため、現像電界ΔVd[v]の初期値、および、TCRセンサーのコントロール電圧Vcの初期値は、基準機を含む全ての画像形成装置1に共通であるものとする。但し、実際には、TCRセンサーのコントロール電圧Vcの初期値の適正値は、装置毎に異なる。かかる初期値は、例えば、新しい現像剤が投入された場合や現像器が交換された場合に、トナー濃度Tc%に対する感度調整により決定される。
1次補正量テーブル格納部120は、1次補正量テーブルを格納する。1次補正量テーブルは、基準機における、現像剤駆動距離と、初期現像条件に対して加えるべき1次補正量との関係を記述したテーブルである。
ここでは、初期現状条件に対する1次補正量は、1次ΔVd補正量[v]および1次Vc補正量[v]とする。1次ΔVd補正量は、基準機において、現像電界ΔVd[v]の初期値に対して加えるべき補正の量である。1次Vc補正量は、基準機において、TCRセンサーのコントロール電圧Vcの初期値に対して加えるべき補正の量である。
図6は、1次補正量テーブルの一例を示す図である。
図6に示すように、1次補正量テーブル520は、現像剤駆動距離を、25時間(h)の運転時間間隔で区切った区間(以下「分割区間」という)521を記述している。ここでは、各分割区間521の現像剤駆動距離は、およそ100kmとなっており、各欄には、各分割区間の開始位置を記載している。
そして、1次補正量テーブル520は、分割区間521毎に、その分割区間521において初期現状条件に対して加えるべき1次補正量を記述している。すなわち、1次補正量テーブル520は、各分割区間521に対応付けて、1次ΔVd補正量522および1次Vc補正量523を記述している。
例えば、現像剤駆動距離102.6km〜205.2kmの分割区間である第2の分割区間に対応付けて、「−5」という1次ΔVd補正量522と、「−0.9」という1次Vc補正量523が記述されている。これは、現像剤駆動距離が102.6km〜205.2kmの範囲にある間は、現像電界ΔVdの初期値に対して−5の補正を加え、TCRセンサーのコントロール電圧Vcの初期値に対して−0.9の補正を加えるべきであるということを示す。
現像剤駆動距離は、現像剤摺動距離ともいい、例えば、現像ローラー210の周速に時間を乗じた値の累積量である。すなわち、現像剤駆動距離は、画像形成装置1の使用が開始されてから、現像ローラー210の表面が移動した距離である。
図4で説明した通り、現像剤駆動距離がより長くなるほどキャリアー膜量がより小さくなる。すると、キャリアーのトナーに対する帯電性能が低くなり、トナーの帯電量が低下して、感光体ドラム413にトナーがより付着し易くなる。
このため、画像濃度を一定にするべく、図6に示すように、1次ΔVd補正量522の値および1次Vc補正量523の値は、累積の現像剤駆動距離が長い分割区間521ほど、負の方向により高い値となっている。すなわち、1次補正量テーブル520は、累積の現像剤駆動距離がより長い分割区間521に対して、感光体ドラム413にトナーがより付着し難くなるような、補正内容を定義している。
1次補正量テーブル520では、現像器トルクは考慮されていない。すなわち、1次補正量テーブル520の内容は、初期現状条件に対する従来の補正の内容に相当する。1次補正量テーブル520が格納する1次補正量テーブル520は、補正量決定部160から参照可能となっている。
なお、1次補正量テーブル520は、初期現状条件に対して加えるべき1次補正量ではなく、その時点までに行われた補正の累積に対して更に加えるべき1次補正量を記述してもよい。すなわち、1次補正量テーブル520は、分割区間毎に、初期現状条件に対して加えるべき1次補正量の、直前の分割区間との間の差分を記述するものであってもよい。
図7は、1次補正量テーブルの他の例を示す図である。
図7に示すように、1次補正量テーブル520aは、現像剤駆動距離の分割区間521毎に、直前の分割区間との間の、1次ΔVd補正量の差分524および1次Vc補正量の差分525を記述してもよい。
例えば、現像電界ΔVdの初期値をΔVd0とし、図7に示す1次ΔVd補正量の差分524のうち、i番目の分割区間の値をΔvd(i)とする。この場合、図6に示す1次ΔVd補正量522のうち、k番目の分割区間の値ΔVd(k)は、例えば、以下の式(1)で表される。
なお、現像電界ΔVdの初期値ΔVd0は、環境や機械設定に応じて、異なる値が設定される。
補正量決定部160は、図6に示す1次補正量テーブル520を用いてもよいし、図7に示す1次補正量テーブル520aを用いてもよい。また、補正量決定部160は、1次補正量テーブル520のみを予め保持し、式(1)を用いて、1次補正量テーブル520aに記述される値(1次ΔVd補正量の差分524および1次Vc補正量の差分525)を算出してもよい。あるいは、補正量決定部160は、1次補正量テーブル520aのみを予め保持し、式(1)を用いて、1次補正量テーブル520に記述される値(1次ΔVd補正量522および1次Vc補正量523)を算出してもよい。
本実施の形態では、補正量決定部160は、1次補正量テーブル520のみを予め保持し、1次補正量テーブル520aに記述される値(1次ΔVd補正量の差分524および1次Vc補正量の差分525)を算出するものとする。
また、以下の説明において、初期現状条件に対して1次補正量が加えて得られる値は、「1次補正済み現像条件」という。より具体的には、現像電界ΔVdの初期値に対して1次ΔVd補正量が加えられた値は、「1次補正済み現像電界ΔVd」という。そして、TCRセンサーのコントロール電圧Vcの初期値に対して1次Vc補正量が加えられた値は、「1次補正済みコントロール電圧Vc」という。
2次補正量テーブル格納部130は、2次補正量テーブルを格納する。2次補正量テーブルは、トルクと、1次補正済み現像条件に対して加えるべき2次補正量との関係を記述したテーブルである。
ここでは、現状条件に対する2次補正量は、2次ΔVd補正量および2次Vc補正量とする。2次ΔVd補正量は、現像電界ΔVd[v]の初期値に1次ΔVd補正量を加えて得られる値に対して、加えるべき補正の量である。2次Vc補正量は、TCRセンサーのコントロール電圧Vcの初期値に1次Vc補正量を加えて得られる値に対して、加えるべき(乗じるべき)補正の量である。
図8は、2次補正量テーブルの一例を示す図である。
図8に示すように、2次補正量テーブル530は、測定された現像器トルクの、基準機のトルクとの差分(以下「トルク差分」という)を、25[mN/m]間隔で区切った数値範囲(以下「トルク差分範囲」という)531[mN/m]を記述している。
そして、2次補正量テーブル530は、トルク差分範囲531毎に、1つの分割区間(25時間、約100km)における平均のトルク差分がそのトルク差分範囲531にある場合において、1次補正済み現像条件に対して加えるべき2次補正量を記述している。すなわち、2次補正量テーブル530は、各トルク差分範囲531に対応付けて、2次ΔVd補正量532および2次Vc補正量533を記述している。
例えば、トルク差分が75〜100のトルク差分範囲である第2のトルク差分範囲に対応付けて、「×0.7」という2次ΔVd補正量532と、「×1.2」という2次Vc補正量523が記述されている。これは、1つの分割区間における平均のトルク差分が75〜100である場合に、1次補正済み現像電界ΔVdに対して、×0.7の補正を加え(0.7を乗じ)るべきであるということを示す。また、これは、1つの分割区間における平均のトルク差分が75〜100である場合に、1次補正済みコントロール電圧Vcに対して、×1.2の補正を加える(1.2を乗じる)べきであるということを示す。
現像器トルクが高いと、現像剤に掛かる負荷は基準機に比べて高くなり、キャリアー膜量の減少速度は速くなる。すると、時間の経過と共に、トナー濃度Tc%は、想定値(基準機における値)よりも高くなる。その結果、1次補正を行っても、トナー濃度Tc%を十分に低くすることができず、飛散、かぶり、こぼれ等の発生を十分に防ぐことができない。
したがって、図8に示すように、2次ΔVd補正量532の値および2次Vc補正量533の値は、トルク差分が正の方向により大きい(トルクが大きい)トルク差分範囲531ほど、画像濃度がより低くなるように、設定されている。すなわち、現像電界ΔVdの絶対値およびTCRセンサーのコントロール電圧Vcの絶対値を、より小さくするような値が、設定されている。
また、現像器トルクが低いと、現像剤に掛かる負荷は基準機に比べて低くなり、キャリアー膜量の減少速度は遅くなる。すると、時間の経過と共に、トナー濃度Tc%は、想定値よりも低くなる。その結果、1次補正を行っても、トナー濃度Tc%を十分に高くすることができず、画像濃度を十分に高くすることができない。
したがって、図8に示すように、2次ΔVd補正量532の値および2次Vc補正量533の値は、トルク差分が負の方向に大きい(トルクが小さい)トルク差分範囲531ほど、画像濃度がより高くなるように、設定されている。すなわち、現像電界ΔVdの絶対値およびTCRセンサーのコントロール電圧Vcの絶対値を、より大きくするような値が、設定されている。
2次補正量テーブル530では、現像器トルクを考慮している。すなわち、2次補正量テーブル530の内容は、初期現像条件に対する新たな補正の内容に相当する。2次補正量テーブル格納部130が格納する2次補正量テーブル530は、補正量決定部160から参照可能となっている。
なお、2次補正量テーブル530は、基準機とのトルクの差分ではなく、測定された現像器トルクに対応付けて、2次ΔVd補正量532および2次Vc補正量533を記述してもよい。
図9は、2次補正量テーブルの他の例を示す図である。
図9に示すように、2次補正量テーブル530aは、現像器トルクを25[mN/m]間隔で区切った数値範囲(以下「現像器トルク範囲」という)534[mN/m]を記述してもよい。すなわち、2次補正量テーブル530aは、各現像器トルク範囲534に対応付けて、2次ΔVd補正量532および2次Vc補正量533を記述してもよい。
補正量決定部160は、図8に示す2次補正量テーブル530を用いてもよいし、図9に示す2次補正量テーブル530aを用いてもよい。
本実施の形態では、補正量決定部160は、図8に示す2次補正量テーブル530を用いるものとする。
また、以下の説明において、初期現像条件に対して1次補正量および2次補正量が加えて得られる値は、「2次補正済み現像条件」という。より具体的には、1次補正済み現像電界ΔVdに対して2次ΔVd補正量が加えられた値は、「2次補正済み現像電界ΔVd」という。そして、TCRセンサーの1次補正済みコントロール電圧Vcに対して2次Vc補正量が加えられた値は、「2次補正済みコントロール電圧Vc」という。
図5の現像剤駆動距離取得部140は、現像剤駆動距離を取得する。具体的には、例えば、現像剤駆動距離取得部140は、現像ローラー210の周速を一定間隔で取得し、取得した周速に時間を乗じて得られる値を累積していくことにより、現像剤駆動距離を取得する。そして、現像剤駆動距離取得部140は、取得した現像剤駆動距離を、補正量決定部160へ出力する。
トルク取得部150は、現像器トルクを取得する。具体的には、例えば、トルク取得部150は、予め、現像スリーブ210Aを駆動するモーター(図示せず)の電流値(以下「モーター電流値」という)と、現像器トルクとの関係を記述した現像器トルクテーブル(図示せず)を有している。トルク取得部150は、現像剤駆動距離1m毎に上記電流値を測定し、上記現像器トルクテーブルを参照して、測定結果に対応するトルクを取得する。トルク取得部150は、現像剤駆動距離1km毎に、取得したトルクの平均値を算出し、算出結果を、上記現像器トルクとする。そして、トルク取得部150は、取得した現像器トルクを、補正量決定部160へ出力する。
補正量決定部160は、1次補正量テーブル(図6参照)および2次補正量テーブル(図8参照)を参照して、測定された現像剤駆動距離に対応する1次補正量と、測定された現像器トルクに対応する2次補正量とを、選択する。そして、補正量決定部160は、選択した1次補正量および2次補正量を、現像条件補正部170へ出力する。
現像条件補正部170は、初期現像条件に対して、補正量決定部160により選択された1次補正量を加え、更に、補正量決定部160により選択された2次補正量を加えて得られる値を、2次補正済み現像条件として算出する。そして、現像条件補正部170は、算出した2次補正済み現像条件を、感光体ドラム413およびTCRセンサーに対して設定する。
なお、現像剤に掛かる負荷による影響は、時間と共に累積する。したがって、現像条件補正部170は、分割区間毎の負荷に対応して1次補正量および2次補正量を決定した場合には、分割区間毎に、1次補正量と2次補正量とを統合した補正量(以下「統合補正量」という)を算出する。そして、現像条件補正部170は、その時点までに分割区間毎に算出した統合補正量を累積して得られる値を、2次補正済み現像条件とする。
このような構成により、画像形成装置1は、現像器トルクの基準機との差異を考慮して、現像条件を補正することができる。
<画像形成装置の動作>
次に、画像形成装置1の動作のうち、現像条件の補正に関する動作について、説明する。
図10は、画像形成装置1の動作の一例を示すフローチャートである。
まず、ステップS1100において、現像剤駆動距離取得部140は、現像剤駆動距離を計測する。
そして、ステップS1200において、トルク取得部150は、モーター電流値を計測するタイミング(以下「モーター電流値計測タイミング」という)が到来したか否かを判断する。ここでは、モーター電流値計測タイミングは、現像剤駆動距離1m毎のタイミングとする。この場合、例えば、補正量決定部160は、現像剤駆動距離取得部140により計測された現像剤駆動距離が1mの倍数の値となったか否かを判断し、判断結果をトルク取得部150に通知する。
トルク取得部150は、モーター電流値計測タイミングが到来した場合(S1200:YES)、ステップS1300へ進む。また、トルク取得部150は、モーター電流値計測タイミングが到来していない場合(S1200:NO)、後述のステップS1400へ進む。
ステップS1300において、トルク取得部150は、モーター電流値を計測し、計測結果からトルクを算出し、算出結果を内部メモリ等に記録する。すなわち、トルク取得部150は、現像器トルクを取得する。
そして、ステップS1400において、補正量決定部160は、初期現像条件に対する補正量を検討するタイミング(以下「補正量検討タイミング」という)が到来したか否かを判断する。ここでは、補正量検討タイミングは、25時間(h)毎のタイミングとする。この場合、例えば、補正量決定部160は、画像形成装置1の使用が開始されてからの経過時間が、25時間の倍数に相当する時間となったか否かを判断する。
補正量決定部160は、補正量検討タイミングが到来した場合(S1400:YES),ステップS1500へ進む。また、補正量決定部160は、補正量検討タイミングが到来していない場合(S1400:NO)、後述のステップS2100へ進む。
ステップS1500において、補正量決定部160は、1次補正量テーブル(図6参照)を参照して、現像剤駆動距離から、1次補正量を決定する。より具体的には、補正量決定部160は、現像剤駆動距離に対応する、1次ΔVd補正量の差分を算出する。
そして、ステップS1600において、補正量決定部160は、直前の現像剤駆動距離1kmの間に記録されたトルク(すなわち、直近の1000個のトルク計測結果)の平均値を、現像器トルクとして算出する。
そして、ステップS1700において、補正量決定部160は、2次補正量テーブルを参照して(図8参照)、算出した現像器トルクから、2次補正量を決定する。すなわち、補正量決定部160は、ステップS1300で取得された現像器トルクに基づいて、現像条件に対する補正量を決定する。
そして、ステップS1800において、現像条件補正部170は、初期現像条件に対して、決定された1次補正量を加えて、1次補正済み現像条件を算出する。
そして、ステップS1900において、現像条件補正部170は、1次補正済み現像条件に対して、決定された2次補正量を加えて、2次補正済み現像条件(2次補正済み現像電界ΔVdおよび2次補正済みコントロール電圧Vc)を算出する。このとき、現像条件補正部170は、上述の通り、分割区間毎に1次補正量と2次補正量とから得られた統合補正量の累積値を、2次補正済み現像条件とする。
そして、ステップS2000において、補正量決定部160は、算出された2次補正済み現像条件を、現像装置412に適用する。具体的には、補正量決定部160は、感光体ドラム413に対して2次補正済み現像電界ΔVdを設定し、TCRセンサーに対して2次補正済みコントロール電圧Vcを設定する。すなわち、補正量決定部160は、ステップS1700において決定された補正量を用いて、現像条件を補正する。
そして、ステップS2100において、補正量決定部160は、ユーザー操作等により処理の終了が指示されたか否かを判断する。補正量決定部160は、処理の終了が指示されていない場合(S2100:NO)、ステップS1100へ戻る。また、補正量決定部160は、処理の終了が指示された場合(S2100:YES)、一連の処理を終了する。
このような動作により、画像形成装置1は、継続的に、現像器トルクに基づいた現像条件の補正を行うことができる。
<現像条件の算出例>
次に、現像条件のうち、現像電界ΔVdに対する補正量の算出例について説明する。
図11は、トルク差分の推移の一例を示す図である。
図11に示すように、ある画像形成装置1において、第1〜第9の分割区間541のトルク差分542は、「55、55、80、80、80、55、55、55、55」であったとする。すなわち、現像器トルクが基準機よりも高い状態が、継続していたとする。
図12は、図11に示すトルク差分の推移に対する補正量演算の一例を説明するための図である。
図12に示すように、補正量決定部160は、現像剤駆動距離の分割区間541毎に、その分割区間541に対応する1次ΔVd補正量の差分543を算出する。1次ΔVd補正量の差分543を算出するのは、1つの分割区間を単位としたパラメーターである2次ΔVd補正量と統合させるためである。そして、補正量決定部160は、現像剤駆動距離の分割区間541毎に、取得されたトルク差分に対応する2次ΔVd補正量544を取得する。
現像条件補正部170は、現像剤駆動距離の分割区間541毎に、1次ΔVd補正量の差分543と2次ΔVd補正量544とを統合した、統合補正量545を算出して、内部メモリ等に記録する。そして、現像条件補正部170は、過去の全ての分割区間541の統合補正量545の合計値(累積値)を、現在の分割区間に初期現像条件に対して適用すべき統合補正量546とする。
すなわち、この例では、第1〜第9の分割区間541の統合補正量546は、「−4、−8、−15、−22、−36、−52、−60、−68」となる。第1〜第9の分割区間541の1次ΔVd補正量542「0、−5、−10、−20、−30、−50、−70、−80、−90」と比較すると、補正量の値は、時間と共に(現像剤駆動距離が長くなるに連れて)、絶対値がより小さい値となっている。
<現像器トルクを考慮することによる効果>
図13は、現像器トルクを考慮しない場合(つまり、1次補正のみを行った場合)の、現像剤駆動距離に対するトナー濃度Tc%推移の実験結果を示す図である。
図13において、横軸は現像剤駆動距離[km]を示し、縦軸はトナー濃度Tc%を示す。そして、菱形印(◆)は、基準機のトナー濃度Tc%551を示す。三角印(▲)は、トルク大の装置のトナー濃度Tc%552を示す。四角印(■)は、トルク小の装置のトナー濃度Tc%553を示す。
図13に示すように、現像器トルクを考慮しない場合、現像剤駆動距離が長くなるにつれて、トルク大の装置およびトルク小の装置のトナー濃度Tc%552、553は、基準機のトナー濃度Tc%551から大きくずれていく。
図14は、現像器トルクを考慮しない場合(つまり、1次補正のみを行った場合)の、現像剤駆動距離に対する画像濃度推移の実験結果を示す図である。
図14において、横軸は現像剤駆動距離[km]を示し、縦軸は画像濃度を示す。そして、菱形印(◆)は、基準機の画像濃度561を示す。三角印(▲)は、トルク大の装置の画像濃度562を示す。四角印(■)は、トルク小の装置の画像濃度563を示す。
図14に示すように、現像器トルクを考慮しない場合、現像剤駆動距離が長くなるにつれて、トルク大の装置およびトルク小の装置の画像濃度562、563は、基準機の画像濃度561から大きくずれていく。
図15は、現像器トルクを考慮した場合(つまり、1次補正と併せて2次補正を行った場合)の、現像剤駆動距離に対するトナー濃度Tc%推移の実験結果を示す図であり、図13に対応するものである。
図15に示すように、現像器トルクを考慮した場合、現像剤駆動距離が長くなっても、トルク大の装置およびトルク小の装置のトナー濃度Tc%552、553は、基準機のトナー濃度Tc%551にほぼ一致している。
図16は、現像器トルクを考慮しない場合(つまり、1次補正と併せて2次補正を行った場合)の、現像剤駆動距離に対する画像濃度推移の実験結果を示す図であり、図14に対応するものである。
図16に示すように、現像器トルクを考慮した場合、現像剤駆動距離が長くなっても、トルク大の装置およびトルク小の装置の画像濃度562、563は、基準機の画像濃度561にほぼ一致している。
図13と図15との比較、および、図14と図16との比較から、現像器トルクを考慮した2次補正を行うことにより、基準機に対して1次補正のみを行った場合と同様の品質を、基準機とは別の画像形成装置1で実現可能であることが分かる。
このように、本実施の形態に係る画像形成装置1は、耐用年数を超えて使用されるような場合であっても、画像濃度の維持を十分に行うことが可能であるということが確認された。
以上のように、本実施の形態に係る画像形成装置1は、現像器トルクに基づいて、現像条件に対して2次補正を加える。これにより、本実施の形態に係る画像形成装置1は、所望の画質での画像形成を長期間に亘って行うことができる。
また、本実施の形態に係る画像形成装置1は、特許文献2に記載の光学センサーや、キャリアーの膜減耗を測定するための機器等の、高価で複雑な機構を備える必要が無い。したがって、本実施の形態に係る画像形成装置1は、コスト増加を抑えた状態で、上述の画質維持を実現することができる。
また、本実施の形態に係る画像形成装置1は、特許文献2に記載の画像形成装置のように、現像部分の反射光量を測定するための動作を、通常の画像形成動作とは別に実施する必要がない。したがって、本実施の形態に係る画像形成装置1は、画像形成の生産性を低下させることなく、上述の画質維持を実現することができる。
なお、画像形成装置1による現像器トルクを考慮した現像条件の補正の仕方は、本実施の形態で説明した例に限定されない。例えば、画像形成装置1は、現像剤駆動距離に対して、現像器トルクに基づく補正を加えても良いし、初期現像条件に対して、現像器トルクに基づく補正を加えても良い。但し、いずれの場合においても、画像形成装置1は、実験等に基づいて生成された、適切な内容の2次補正量テーブルを備える必要がある。
また、1次補正の基となるパラメーターは、現像剤距離に限定されない。例えば、画像形成装置1は、印字率(画像面積率)、あるいは、平均使用温度(特許文献1参照)等、現像剤の劣化に関する他のパラメーターに基づいて、現像条件に対して1次補正を加えても良い。
更に、画像形成装置1が補正の対象とする現像条件は、本実施の形態で説明した現像電界に限定されない。例えば、画像形成装置1は、現像θ(現像スリーブ速度/像担持体速度の比。本実施の形態では、現像スリーブ速度/感光体ドラム速度の比)を、現像剤の劣化に関するパラメーターに基づく補正の対象としても良い。
但し、いずれの場合においても、画像形成装置1は、実験等に基づいて生成された、適切な内容の1次補正量テーブルおよび2次補正量テーブルを備える必要がある。
また、本実施の形態において、本発明の回転部材が現像スリーブ210Aである場合について説明したが、本発明の回転部材としては、例えば、供給ローラー220、供給スリーブ、撹拌スクリュー240、または搬送スクリュー250など、現像剤の搬送に関する他の回転部材を適用し得る。なぜなら、これらの回転部材のトルクは、現像スリーブ210Aの実験結果から、現像スリーブ210Aの場合と同様に、現像剤に掛かる負荷と相関を有していることが推定されるためである。
但し、いずれの場合においても、画像形成装置1は、実験等に基づいて生成された、適切な内容の現像器トルクテーブルを備える必要がある。
本開示の画像形成装置は、静電潜像を担持する像担持体と、回転部材を備え、内部に収容された現像剤を、前記回転部材を用いて前記像担持体に供給することにより、前記静電潜像の現像を行う現像装置と、前記現像における現像条件を制御する制御部と、を有する画像形成装置であって、前記制御部は、前記回転部材のトルクに基づいて、前記現像条件を補正する。
また、上記画像形成装置において、前記制御部は、現像剤駆動距離および印字率のうち少なくとも一方と、前記トルクとに基づいて、前記現像条件を補正してもよい。
また、上記画像形成装置において、前記制御部は、前記トルクを、前記回転部材を駆動するモーターの電流値から推定してもよい。
また、上記画像形成装置において、前記現像装置は、前記現像剤を前記像担持体の表面に接触させる現像スリーブを有し、前記トルクは、前記現像スリーブのトルクであってもよい。
また、上記画像形成装置において、前記現像装置は、前記現像剤を前記像担持体の表面に接触させる現像スリーブを有し、前記現像条件は、前記像担持体の現像電界ΔVd、および、前記像担持体と前記現像スリーブとの間の現像θ(現像スリーブ速度/像担持体速度の比)のうち、少なくとも一方を含んでもよい。
また、本開示の現像条件補正方法は、静電潜像を担持する像担持体と、回転部材を備え、内部に収容された現像剤を、前記回転部材を用いて前記像担持体に供給することにより、前記静電潜像の現像を行う現像装置と、前記現像における現像条件を制御する制御部と、を有する画像形成装置における現像条件補正方法であって、前記回転部材のトルクを取得するステップと、取得した前記トルクに基づいて、前記現像条件に対する補正量を決定するステップと、決定した前記補正量を用いて前記現像条件を補正するステップと、を有する。