以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお以下に説明する本実施形態は特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが本発明の解決手段として必須であるとは限らない。
1.印刷装置、印刷材収容体の構成
図1は、本実施形態における印刷装置の構成例を示す斜視図である。印刷装置1000は、印刷材収容体100(狭義にはインクカートリッジ)が装着される収容体装着部1100(カートリッジ装着部)と、回動自在なカバー1200と、操作部1300とを有する。収容体装着部1100は、例えばインクカートリッジの「カートリッジホルダー」又は単に「ホルダー」と呼ばれる。図1に示す例では、収容体装着部1100には、4つの印刷材収容体が独立に装着可能であり、例えば、ブラック、イエロー、マゼンタ、シアンの4種類の印刷材収容体100(インクカートリッジ)が装着される。カバー1200は省略可能である。操作部1300は、ユーザーが各種の指示や設定を行うための入力装置であり、また、ユーザーに各種の通知を行うための表示部を備えている。
図2(A)、図2(B)は、印刷材収容体100の外観を示す斜視図である。図2(A)、図2(B)におけるXYZ軸は、図1のXYZ軸に対応している。印刷材収容体100は、扁平な略直方体の外観形状を有しており、3方向の寸法L1、L2、L3のうちで、長さL1(挿入方向のサイズ)が最も大きく、幅L2が最も小さく、高さL3が長さL1と幅L2の中間である。
印刷材収容体100は、先端面(第1の面)Sfと、後端面(第2の面)Srと、天井面(第3の面)Stと、底面(第4の面)Sbと、2つの側面(第5及び第6の面)Sc、Sdとを備えている。印刷材収容体100の内部には、印刷材収容室120(インク収容室、インク収容袋)が設けられている。先端面Sfは、2つの位置決め穴131、132と、印刷材供給口110(インク供給口)とを有している。
天井面stには、回路基板200が設けられている。回路基板200には、印刷材や印刷材収容体に関する情報(インクやカートリッジに関する情報)を格納するための記憶装置(不揮発性のメモリー)が搭載されている。第2の側面Sdと先端面Sfが交わる位置には、凹凸嵌合部134が配置されている。
2.回路基板の構成
図3、図4、図5に本実施形態の回路基板200の構成例を示す。図3は回路基板200を第1の面SF1側(表面側)ら見た図であり、図4、図5は回路基板200を第2の面SF2側(裏面側)から見た図である。そして図4は、記憶装置203や回路素子210の実装後の状態を示す図であり、図5は、記憶装置203や回路素子210の実装前の状態を示す図である。
また図6、図7には、複数の回路基板200がアレイ状に連結された構造の回路基板シート190の例を示す。各回路基板200は、この回路基板シート190から切り離すことで単品分離される。
回路基板200の第1の面SF1は、印刷材収容体100に回路基板200が取り付けられている状態(図2(A)、図2(B))において、外側に露出している面である。第2の面SF2は第1の面SF1の裏面である。また図3における方向DISは、収容体装着部1100への印刷材収容体100の装着方向を示している。この装着方向DISは、図2(A)、図2(B)に示す印刷材収容体100の装着方向であるX方向と一致する。
また回路基板200には、回路基板200を印刷材収容体100に取り付けるための固定用穴HL(ボス穴)が設けられている。更に回路基板200には、固定用溝NT1、NT2、NT3(ボス溝)も設けられている。
また図3〜図5では第1の方向DR1に直交する方向を第2の方向DR2としている。また第1の方向DR1の反対方向を第3の方向DR3とし、第2の方向DR2の反対方向を第4の方向DR4としている。ここで第2の方向DR2は、装着方向DISと一致する。
また略矩形状の回路基板200は、第1〜第4の辺SD1〜SD4を有する。第1の辺SD1に対向する辺が第2の辺SD2であり、第3の辺SD3に対向する辺が第4の辺SD4である。第1、第2の辺SD1、SD2と第3、第4の辺SD3、SD4とは、少なくともその延長線同士において交差(直交)する。なお、第1〜第4の辺SD1〜SD4の交差位置に対応するコーナー部には、切り欠き部が設けられたり、曲線状になっている。
印刷材収容体100に取り付けられる本実施形態の回路基板200は、記憶装置203と、端子群(TA1、TA2)を含む。
図4に示す記憶装置203は、印刷材情報を記憶する。この印刷材情報は、印刷材収容体100に収容された印刷材に関する情報であり、例えばインク量情報(インク消費量情報又はインク残量情報等)、インク色情報などである。また記憶装置203は、印刷材収容体100に関する情報である印刷材収容体情報を更に記憶することができる。印刷材収容体情報は、例えば印刷材収容体100のID情報又は製造情報などである。この記憶装置203は、例えば不揮発性メモリー(EEPROM等)により実現される。
端子群(TA1、TA2)は、回路基板200に設けられる複数の端子を含む。具体的には、端子群は、記憶装置203に接続される複数の記憶装置用端子(RST、SCK、VDD、VSS、SDA)を有する。この端子群は印刷材収容体100が印刷装置本体(収容体装着部)に装着されたときに印刷装置本体側のコネクター端子(収容体装着部に設けられたコネクター端子)に接続されるものである。
そして、この端子群(TA1、TA2)は、回路基板200の第1の辺SD1の第2の方向DR2側において第1の方向DR1に沿って並ぶ複数の端子(CO1、RST、SCK、CO2やDT1、VDD、VSS、SDA、DT2)を有する。
例えば回路基板200に設けられる端子群は、第1の端子群TA1と第2の端子群TA2を有する。
第1の端子群TA1は、回路基板200の第1の辺SD1の第2の方向DR2側において、第1の方向DR1に沿ってM個の端子が並ぶ端子群である。一方、第2の端子群TA2は、第1の端子群TA1の第2の方向DR2側において、第1の方向DR1に沿ってN個の端子が並ぶ端子群である。ここで、M、NはM<Nとなる2以上の整数であり、第1の端子群TA1の端子数Mの方が第2の端子群TA2の端子数Nよりも少なくなっている。
具体的には、第1、第2の端子群TA1、TA2の各端子は、略矩形状に形成され、装着方向DISと垂直(略垂直)な列を2列形成するように配置されている。例えば、これらの2つの列のうち、装着方向DISの手前側の第1のラインA1に沿った列(図3において上側に位置する列)を上側列(第1列)とし、装着方向DISの奥側(装着方向の先端側)の第2のラインA2に沿った列(図3において下側に位置する列)を下側列(第2列)とする。この場合に、第1の端子群TA1は、ラインA1に沿った上側列の端子群であり、第2の端子群TA2は、ラインA2に沿った下側列の端子群である。これらのラインA1、A2は、複数の端子の接触部CPによって形成されるラインであると考えることも可能である。この接触部CPは、印刷材収容体100が印刷装置本体に装着されたときに、装置側回路基板と回路基板200を接続するためにホルダー内部に設けられたコネクター端子が各端子と接触する部分である。
即ち、各端子は、その中央部に、印刷装置本体側の複数のコネクター端子のうちの対応するコネクター端子と接触する接触部CPを含んでいる。ラインA1に沿った第1の端子群TA1の各端子の各接触部CPと、ラインA2に沿った第2の端子群TA2の各端子の各接触部CPは、互い違いに配置され、いわゆる千鳥状の配置を構成している。つまり、第1の端子群TA1の各端子と、第2の端子群TA2の各端子は、互いの端子中心が装着方向DISに並ばないように、互い違いに配置され、千鳥状の配置を構成している。
また本実施形態では、この端子群(TA1、TA2)と、回路基板200の第2の辺SD2との間には、印刷材収容体100への回路基板200の固定用穴HLが設けられる。即ち、図2(A)、図2(B)において、この固定用穴HLを用いて印刷材収容体100に対して回路基板200が取り付けられて固定される。具体的にはこの固定用穴HL、固定用溝NT1、NT2、NT3を用いて回路基板200が取り付けられて固定される。
また、端子群は、第1の端子CO1と第2の端子CO2を有する。これらの第1、第2の端子CO1、CO2は、接続線LCを介して接続される。即ち、回路基板200の第1の面SF1上で、第1、第2の端子CO1、CO2は接続線LCにより短絡されている。
このような第1、第2の端子CO1、CO2を設けることで、後述するように、短絡検出や装着検出(カートリッジアウト検出)などを実現することが可能になる。
そして本実施形態では図3のF1に示すように、第1、第2の端子CO1、CO2の接続線LCは、固定用穴HLを挟んでバイパス配線される。つまり、接続線LCが、固定用穴HLの位置において例えば2つの接続線に分岐して配線される。
具体的には、接続線LCは、メイン接続線LM1とバイパス接続線LB1を有する。メイン接続線LM1は、第1の端子CO1から第2の端子CO2へと、回路基板200の辺SD2と固定用穴HLとの間を通って配線される。一方、バイパス接続線LB1は、一端及び他端がメイン接続線LM1に接続され、端子群(TA2)と固定用穴HLとの間を通って配線される。具体的には固定用穴HLを囲うようにバイパス接続線LB1が配線される。
接続線LCは、図3に示すように、端子群(TA1、TA2)と回路基板200の第2の辺SD2との間の領域に配線される。このため、後に詳述するように、回路基板200の製造工程等において接続線LCが断線して第1、第2の端子CO1、CO2間が電気的に非導通になったり、線幅が細くなって信頼性が低下するなどの不具合が発生するおそれがある。
この点、本実施形態では図3のF1に示すように、接続線LCが固定用穴HLを挟んでバイパス配線されるため、上述のような不具合の発生を効果的に抑止できる。例えば回路基板200の辺SD2と固定用穴HLとの間を通って配線されるメイン接続線LM1が、回路基板200の製造工程における切断工程や基板シートの切り抜き工程において断線したり、線幅が細くなったとしても、端子群と固定用穴HLとの間を通って配線されるバイパス接続線LB1によって、第1、第2の端子CO1、CO2間の電気的な導通性は維持されるようになる。従って、回路基板200の構成要素の破損等による不具合の発生を抑止できる。
次に、このような不具合が発生する理由について更に詳細に説明する。例えば本実施形態では、回路基板200の第2の辺SD2以外の辺に、回路基板200の単品分離における切断工程で切断された切断面を有する。図3を例にとれば、第3の辺SD3に、切断工程で切断された第1の切断面CSFAを有し、第4の辺SD4に、切断工程で切断された第2の切断面CSFBを有する。具体的には、回路基板200の第3の辺SD3において、第2の辺SD2よりも第1の辺SD1に近い位置に第1の切断面CSFAを有する。また、回路基板200の第4の辺SD4において、第2の辺SD2よりも第1の辺SD1に近い位置に第2の切断面CSFBを有する。なお、第1の辺SD1に切断面が形成されていてもよい。
例えば回路基板200は、図6のH1、図7のH2に示すように、回路基板シート190から切断工程により切断することで、単品分離される。即ち、図7のH3、H4に示す部分を切断工程で切断することで、回路基板200が単品分離される。この場合に、H3、H4に示す切断箇所が、図3の第1、第2の切断面CSFA、CSFBに対応する。
図8に回路基板シート及び回路基板の製造工程の例を示す。この製造工程では、まず、図3のスルーホールTH1、TH2や固定用穴HL等の穴部を、基板シートに対して形成する工程が行われる(SP11)。
次に、例えば電気メッキ(電解メッキ)により、端子群TA1、TA2の端子や配線の金属パターンを基板シート上に形成する工程が行われる(SP12)。
次に、図6のH5、H6等に示す隙間部を基板シートから切り取ることで、回路基板200の外形を形成する工程が行われる(SP13)。
次に、図4の記憶装置203や回路素子210を各回路基板200に実装する工程が行われる(SP14)。
最後に、図7のH3、H4に示す切断部を切断して、回路基板200を切り離す単品分離工程が行われる(SP15)。
ステップSP12の金属パターンの形成工程の前に、ステップSP11でスルーホール等の穴部を形成する理由は、スルーホール内に金属を形成して、回路基板200の面SF1、SF2間での電気的導通を実現するためである。
また、ステップSP15の単品分離工程の前に、ステップSP14で記憶装置203や回路素子210の実装を行うのは、回路基板シート190の状態で、多数の記憶装置203や回路素子210をまとめて実装した方が効率が良いからである。即ち、単品分離された後に回路基板200に記憶装置203や回路素子210を実装しようとすると、実装効率が悪く、実装精度も低くなる。これに対して、回路基板シート190の状態で実装を行えば、多数の各記憶装置203や各回路素子210を、回路基板シート190上の各回路基板200に対して、高い実装効率で精度良く実装することが可能になる。
そして本実施形態では、図8のステップSP15に示すように、回路基板の単品分離を最後の工程で行う。例えば、印刷材収容体の製造メーカーは、基板シートの製造メーカーから回路基板シートを納入する。そして図7のH3、H4に示す部分の切断を行うことで、回路基板を単品分離し、印刷材収容体に取り付けることで、印刷材収容体の製造を完成する。この場合に本実施形態で、回路基板の単品分離は、図7のH3、H4の切断工程だけで済むため、印刷材収容体の製造メーカーでの工程作業を簡素化でき、製品の低コスト化等を図れる。
また、ステップSP13の外形の形成工程の前に、ステップSP12で金属パターン形成を行うのは、ステップSP12での金属パターン形成を電気メッキにより実現するためである。
即ち、電気メッキにより金属パターンを形成するためには、図6の回路基板シート190の複数の回路基板200間の配線を接続して、電気メッキ時に同電位に設定する必要がある。このため、図8のステップSP12において図6のH5、H6の隙間部に、電気メッキ用のリード線の金属パターンを形成する必要がある。この電気メッキ用のリード線は、図3の回路基板200のE1、E2等に示す電気メッキ用の接続線に接続され、これにより回路基板200上に電気メッキにより端子や配線の金属パターンを形成できるようになる。この電気メッキ用のリード線は、図8のステップSP13の外形形成工程での隙間部の切り取りの際に、隙間部と共に除去される。そして、このような電気メッキ用のリード線を形成するためには、ステップSP13の外形形成工程前に、金属パターンの形成工程を行って、回路基板200上の端子や配線の形成の際に、隙間部等に電気メッキ用のリード線を形成する必要がある。
このように、図8の製造工程では、ステップSP13の回路基板200の外形形成工程の前に、ステップSP12の端子や配線の金属パターンの形成工程が行われる。これにより、ステップSP12の金属パターンの形成を、電気メッキにより行うことができる。
そしてステップSP13の外形形成工程では、図6のH5、H6に示すように隙間部を切り抜くことで、回路基板200の外形形成を行う。
しかしながら、この外形形成工程の際に、外形形成工程前にステップSP12で形成された金属パターンが断線するなどの不具合が発生するおそれがある。具体的には、図3のF1に示すメイン接続線LM1が、ステップSP13の外形形成工程における隙間部の切り取りの際に断線したり、線幅が細くなって信頼性が低下するなどの不具合が生じる。
この点、図3では、接続線LCは固定用穴HLを囲うようにバイパス配線される。従って、メイン接続線LM1が断線しても、バイパス接続線LB1により電気的導通が維持されるようになる。この結果、電気メッキによる金属パターンの形成のために、図8のステップSP12の後にステップSP13の外形形成を行った場合にも、接続線LCの断線や線幅が細くなることによる不具合の発生を効果的に抑止できるようになる。
3.回路基板の構成の詳細
次に回路基板の構成の詳細について説明する。本実施形態では、上述したように端子群は第1の端子群TA1と第2の端子群TA2を有する。そして第1の端子群TA1は、前述のように接続線LCを介して接続される第1の端子CO1と第2の端子CO2を有する。ここで、第1の端子CO1は、第1の端子群TA1のM個(=4)の端子のうち、第3の辺SD3側に設けられる端子である。即ち、図3において最も第3の辺SD3に近い位置(左端側)に設けられる端子である。一方、第2の端子CO2は、第1の端子群TA1のM個の端子のうち、第4の辺SD4側に設けられる端子である。即ち、最も第4の辺SD4に近い位置(右端側)に設けられる端子である。第1の端子群TA1の他の端子RST、SCKは、これらの第1、第2の端子CO1、CO2の間に設けられる。
このように第1の端子群TA1の両端に第1、第2の端子CO1、CO2を設ければ、図3に示すように、接続線LCにより第1、第2の端子CO1、CO2を、効率的なレイアウト配線で接続できるようになる。
また本実施形態では、図4に示すように回路基板200は回路素子210を有する。この回路素子210は各種検出用の素子であり、例えば抵抗素子(RD)である。なお回路素子210は抵抗素子以外の受動素子(キャパシター等)や能動素子(半導体素子等)であってもよい。
具体的には図3に示すように、回路基板200の第1の面SF1に第1、第2の端子群TA1、TA2が配置される。この第1の面SF1は、印刷装置本体側のコネクター端子の接続側面である。一方、図4に示すように、回路基板200の第1の面SF1の裏面である第2の面SF2に、記憶装置203及び回路素子210が配置(実装)される。
そして第2の端子群TA2は、回路素子210に接続される第1の検出端子DT1と第2の検出端子DT2を有する。
ここで、第1の検出端子DT1は、第2の端子群TA2のN個(=5)の端子のうち、第3の辺SD3側に設けられる端子である。即ち、図3において最も第3の辺SD3に近い位置(左端側)に設けられる端子である。一方、第2の検出端子DT2は、第2の端子群TA2のN個の端子のうち、第4の辺SD4側に設けられる端子である。即ち、最も第4の辺SD4に近い位置(右端側)に設けられる端子である。第2の端子群TA2の他の端子VDD、VSS、SDAは、これらの第1、第2の検出端子DT1、DT2の間に設けられる。
そして、第1、第2の端子CO1、CO2を接続する接続線LCは、第1の端子CO1から、第1の検出端子DT1とDT1の隣の端子VDDとの間を通って配線される。また接続線LCは、固定用穴HCにおいては上述のようにバイパス配線される。そして接続線LCは、第2の検出端子DT2とDT2の隣の端子SDAとの間を通って配線されて、第2の端子CO2に接続される。
このようにすれば、第2の端子群TA2の両端の端子として第1、第2の検出端子DT1、DT2を設けた場合に、第1の端子群TA1の両端の端子として第1、第2の端子CO1、CO2を設け、これらの第1、第2の端子CO1、CO2を接続線LCにより効率的に接続できるようになる。
即ち本実施形態では、切断面CSFA、CSFBから離れた位置に回路素子210を配置している。このため、この回路素子210の両端に接続される検出端子DT1、DT2は、図3の下側の端子群TA2の端子として設けることが望ましい。
そして、このように検出端子DT1、DT2を下側の端子群TA2の端子として設けた場合には、端子数には限りがあるため、端子CO1、CO2については、上側の端子群TA1の端子として設けることが望ましい。また、端子CO1、CO2は、短絡検出等のために、接続線LCにより接続する必要がある。このため、この接続線LCを、回路基板200の面SF1において、どのように配線するかが課題となる。
この点、本実施形態では図3に示すように、検出端子DT1、DT2を端子群TA2の両端に配置し、スルーホールTC1、TC2及び接続線LD1、LD2を介して、図4に示すように回路素子210の両端に接続している。このようにすれば、検出端子DT1とその隣の端子VDDとの間と、検出端子DT2とその隣の端子SDAとの間の空き領域を有効利用して、接続線LCを配線し、この接続線LCにより端子CO1、CO2を接続できるようになる。従って、検出端子DT1、DT2と回路素子210の間の接続と、端子CO1、CO2の間の接続を、効率的なレイアウト配線で接続できるようになる。従って、回路基板200上での効率的なレイアウト配線を実現しながら、後述するように、検出端子DT1、DT2を利用した印刷材収容体100の個別装着検出と、端子CO1、CO2を利用した端子間の短絡検出や装着検出を実現できるようになる。また、このレイアウト配線によれば、端子CO1、CO2を端子群TA1の両端に配置し、検出端子DT1、DT2を端子群TA2の両端に配置できる。従って、後述するようなインクミストにより、記憶装置用の端子(RST、SCK、SDA等)に短絡等が発生する事態も抑止できるようになる。
また本実施形態では図4に示すように、回路素子210が、第2の面SF2において第2の端子群TA2の配置位置(配置位置ライン)に対応する位置(ライン)と、回路基板200の第2の辺SD2との間に配置される。
例えば図3に示すように第2の端子群TA2は、回路基板200の第1の面SF1に配置されており、第2の端子群TA2の配置位置に対応する位置は、第2の端子群TA2の第1の面SF1での配置位置に対応する第2の面SF2での位置である。例えば、図3に示すように、第2の端子群TA2の端子の接触部CPは、下側のラインA2に沿って並んでいる。そして図4に示すように、回路素子210は、第2の面SF2において、このラインA2(配置位置ライン)に対応するラインA2’と、回路基板200の第2の辺SD2との間に配置される。更に具体的には、例えば図3において、第2の端子群TA2の各端子の下側(装着方向の奥側)の端辺を結んだラインをA3とする。この場合には図4に示すように、回路素子210は、第2の面SF2において、このラインA3(配置位置ライン)に対応するラインA3’と、回路基板200の第2の辺SD2との間に配置される。別の言い方をすれば、回路素子210は、第2の面SF2において、記憶装置203と第2の辺SD2との間に配置される。
このように本実施形態では、回路素子210を、回路基板200の第2の辺SD2側に配置している。即ち、第1の辺SD1に比べて第2の辺SD2に近い側に、回路素子210を配置している。
即ち、本実施形態では、前述したように、回路基板200の第2の辺SD2以外の辺に、回路基板200の単品分離における切断工程で切断された第1、第2の切断面CSFA、CSFBを有する。回路基板200は、図6のH1、図7のH2に示すように、この第1、第2の切断面CSFA、CSFBにおいて、回路基板シート190から切断することで、単品分離される。
そして本実施形態では、前述の図8のステップSP15に示すように、回路基板の単品分離を最後の工程で行う。このようにすれば、回路基板の単品分離は、図7のH3、H4の切断工程だけで済むため、印刷材収容体の製造メーカーでの工程作業を簡素化でき、製品の低コスト化等を図れる。
ところが、この単品分離における切断工程で、回路基板の構成要素(端子、配線又は回路素子等)が破損したり切断ストレスにより信頼性が低下するなどの不具合が発生するおそれがある。
一方、本実施形態の回路基板200では図3に示すように、ラインA1に沿った端子群TA1の端子数(M=4)の方が、ラインA2に沿った端子群TA2の端子数(N=5)よりも少なくなっている。即ち、回路基板200が取り付けられる印刷材収容体100が、図3の装着方向DISで装着される場合に、印刷装置本体側のコネクター端子は、図3の下側から上側へと通過して、端子群TA1、TA2の各端子に接触する。このため、端子群TA1、TA2の端子は図3に示すように互い違い千鳥状に配置されると共に、上側の端子群TA1の端子数の方が少なくなっている。
本実施形態では、この点に着目して、単品分離における第1、第2の切断面CSFA、CSFBの位置が、第1の端子群TA1側に位置するようにしている。即ち図3に示すように、回路基板200の第3の辺SD3において、第2の辺SD2よりも第1の辺SD1に近い位置に、第1の切断面CSFAが設けられる。また回路基板200の第4の辺SD4において、第2の辺SD2よりも第1の辺SD1に近い位置に、第2の切断面CSFBが設けられる。
こうすることで、回路基板200上に形成された端子が、図8のステップSP15の単品分離の切断工程時に破損したり、切断ストレスにより信頼性が低下するなどの不具合の発生を抑止できる。例えば第2の端子群TA2の両端の端子DT1、DT2では、後述する図9(A)、図9(B)に示すように、回路基板200の辺との距離Wを狭くしている。従って、切断面がこれらの端子DT1、DT2の近くに設定されると、端子が破損したり切断ストレスにより信頼性が低下するなど不具合が生じるおそれがある。これに対して、図3のように第1、第2の切断面CSFA、CSFBを、第2の端子群TA2よりも第1の端子群TA1に近い側に設ければ、このような不具合の発生を抑止できる。
また本実施形態では、回路素子210を、第1の辺SD1よりも第2の辺SD2に近い側に配置している。従って、回路素子210と切断面CSFA、CSFBとの間の距離も遠くすることが可能になり、切断工程により回路素子210が破損したり切断ストレスにより信頼性が低下するなどの不具合の発生を抑止できるようになる。
また、第1、第2の端子CO1、CO2は接続線LCにより接続されており、この接続線LCの配線のための配線スペースが必要になる。この場合に、図4に示す場所に回路素子210を配置すれば、第1の面SF1において接続線LCの配線スペースを設けるために生じる、第2の面SF2での空きスペースを有効活用して、回路素子210を実装することが可能になる。
また本実施形態では、図4に示すように、回路基板200の第2の面SF2には、その一端が回路素子210の一端に接続される第1の接続線LD1と、その一端が回路素子210の他端に接続される第2の接続線LD2が配線される。この第1の接続線LD1の他端は、回路基板200の第1のスルーホールTC1を介して、図3に示すように第1の面SF1の第1の検出端子DT1に接続される。一方、第2の接続線LD2の他端は、回路基板200の第2のスルーホールTC2を介して、図3に示すように第1の面SF1の第2の検出端子DT2に接続される。
このようにすることで、回路素子210の一端に電気的に接続される第1の検出端子DT1を、図3の第3の辺SD3側に配置し、回路素子210の他端に電気的に接続される第2の検出端子DT2を、図3の第4の辺SD4側に配置することが可能になる。即ち、図4のように切断面CSFA、CSFBから遠くなるように第2の辺SD2側に回路素子210を配置した場合に、この回路素子210の両端に接続される第1、第2の検出端子DT1、DT2を、第2の端子群TA2の端子として第1の面SF1側に設けて、印刷装置本体側のコネクター端子と接続できるようになる。
このように本実施形態では、第1の検出端子DT1は、第1のスルーホールTH1及び第1の接続線LD1を介して回路素子210の一端に接続され、第2の検出端子DT2は、第2のスルーホールTH2及び第2の接続線LD2を介して回路素子210の他端に接続される。
この場合に、図4のF2に示すように、第2の接続線LD2は、回路基板200の第2の面SF2において固定用穴HLを挟んでバイパス配線される。具体的には、第2の接続線LD2は、メイン接続線LM2とバイパス接続線LB2を有する。メイン接続線LM2は、第2のスルーホールTC2から回路素子210の他端へと、回路基板200の辺SD2と固定用穴HLとの間を通って配線される。一方、バイパス接続線LB2は、一端及び他端がメイン接続線LM2に接続され、端子群(TA2)に対応する位置(ラインA2’又はA3’)と固定用穴HLとの間を通って配線される。具体的には固定用穴HLを囲うようにバイパス接続線LB2が配線される。
即ち、前述したように図8の製造工程では、ステップSP13の回路基板200の外形形成工程の前に、ステップSP12の端子や配線の金属パターンの形成工程を行っている。これにより、金属パターンの形成を電気メッキにより行うことが可能になる。
ところが、この外形形成工程の際に、外形形成工程前にステップSP12で形成された金属パターンが断線するなどの不具合が発生するおそれがある。
この点、図4では、接続線LD2は固定用穴HLを囲うようにバイパス配線される。従って、メイン接続線LM2が断線しても、バイパス接続線LB2により電気的導通が維持されるようになる。この結果、電気メッキによる金属パターンの形成のために、図8のステップSP12の後にステップSP13の外形形成を行った場合にも、接続線LD2の断線や線幅が細くなることによる不具合の発生を効果的に抑止できるようになる。
また、前述のように回路素子210は例えば抵抗素子であり、第1、第2の検出端子DT1、DT2は、印刷材収容体100の装着検出に用いられる装着検出端子である。
このようにすれば、後述するように、印刷装置本体側(電圧印加部)が、これらの第1、第2の検出端子DT1、DT2に装着検出用電圧を印加し、回路素子210である抵抗素子に流れる電流を検出することで、印刷材収容体100の装着検出(個別装着検出)を実現できる。即ち、第2の端子群TA2の記憶装置用端子VDD、VSS、SDAの両側に設けられた第1、第2の検出端子DT1、DT2により、印刷材収容体100の装着検出を実現できるようになる。
また、第1、第2の端子CO1、CO2は、他の端子との間の短絡検出に用いられる短絡検出端子である。更に具体的には、第1、第2の端子CO1、CO2は、短絡検出端子であると共に、印刷材収容体100の装着検出に用いられる装着検出端子である。即ち、第1、第2の端子CO1、CO2を設けることで、後述するような他の端子との間の短絡検出や、印刷材収容体100の装着検出(カートリッジアウト検出)などを実現することが可能になる。
また図3ではG1、G2に示すように、第1、第2の端子CO1、CO2を接続する接続線LCにより、回路基板200の識別パターンが形成されている。この識別パターンは、例えば文字、数字及び模様の少なくとも1つのパターンである。この識別パターンは、回路基板200の製造情報(製造元、製造番号)等の各種情報を示すパターンである。
即ち、接続線LCは、第1、第2の端子CO1、CO2間を接続するものであり、第2の端子群TA2の下方(第2の方向DR2側)の空き領域を利用して配線される。具体的には図3のラインA3よりも下方の空き領域に、接続線LCのメイン接続線LM1が配線される。また、図4に示すように、回路基板200の第2の辺SD2側に回路素子210が配置されている。即ち、ラインA3に対応するラインA3’の下方に回路素子210が配置されている。このため、図3に示すように、ラインA3の下方に、比較的余裕のある空きスペースを確保できる。
そこで、図3のG1、G2では、この空きスペースを有効活用して、第1、第2の端子CO1、CO2間の接続線LCにより、回路基板200の識別パターンを形成している。このようにすることで、効率的なレイアウト配線を維持しながら、回路基板200の識別を、接続線LCの識別パターンにより実現できるようになる。
なお図9(A)、図9(B)に示すように、本実施形態では、第1の検出端子DT1の第3の辺SD3側の端辺と回路基板200の第3の辺SD3との距離Wを、非常に狭くしている。例えば回路基板200の配線の最小形成線幅をMNWとした場合に、距離WをMNWの2倍よりも狭くしている。第2の検出端子DT2の第4の辺SD4側の端辺と第4の辺SD4との距離Wも同様であり、W<2×MNWの関係が成り立つようにしている。即ち、回路基板200の辺SD3、SD4から第1、第2の検出端子DT1、DT2の端辺への距離が、ギリギリの距離となる位置に、第1、第2の検出端子DT1、DT2を配置している。
このようにW<2×MNWとして、隙間の幅Wを狭くすれば、回路基板200の方向DR1での幅も小さくすることが可能になる。従って、例えば図6、図7の回路基板シート190からの回路基板200の取れ数等を増加させることが可能になり、回路基板200の低コスト化等を図れるようになる。
次に、端子群TA1、TA2の各端子について更に詳細に説明する。図3において、上側のラインA1に沿って配置された端子群TA1の端子CO1、RST、SCK、CO2と、下側のラインA2に沿って配置された端子群TA2の端子DT1、VDD、VSS、SDA、DT2は、それぞれ以下の機能(用途)を有する。
<端子群TA1>
(1)第1の短絡検出端子CO1
(2)リセット端子RST
(3)クロック端子SCK
(4)第2の短絡検出端子CO2
<端子群TA2>
(5)第1の装着検出端子DT1
(6)電源端子(第1の電源端子)VDD
(7)接地端子(第2の電源端子)VSS
(8)データ端子SDA
(9)第2の装着検出端子DT2
第1、第2の装着検出端子DT1、DT2は、後述するように、印刷材収容体100が収容体装着部1100に正しく装着されているか否かを検出する際に使用される。また、第1、第2の短絡検出端子CO1、CO2は、端子間の短絡検出のために使用される。具合的には、第1、第2の装着検出端子DT1、DT2との短絡を検出する際に使用される。なお、端子CO1、CO2は、カートリッジアウトの検出端子としても使用できる。他の5つの端子RST、SCK、VDD、VSS、SDAは、記憶装置203用の端子であり、「メモリー端子」とも呼ぶ。
具体的には、リセット端子RST、クロック端子SCK、電源端子VDD、データ端子SDA、接地端子VSSは、記憶装置203に電気的に接続される。記憶装置203は、アドレス端子を持たず、クロック端子SCKから入力されるクロック信号のパルス数と、データ端子SDAから入力されるコマンドデータとに基づいてアクセスするメモリーセルが決定され、クロック信号に同期して、データ端子SDAよりデータを受信し、若しくは、データ端子SDAからデータを送信する。クロック端子SCKは、印刷装置本体側からクロック信号を供給するために用いられる。
端子群TA1の第1、第2の短絡検出端子CO1、CO2の各接触部は、端子群TA1の両端部、即ち、端子群TA1の最も外側にそれぞれ配置されている。また、端子群TA2の第1、第2の装着検出端子DT1、DT2の各接触部は、端子群TA2の両端部、即ち、端子群TA2の最も外側に配置されている。記憶装置用端子RST、SCK、VDD、VSS、SDAの接触部は、9つの端子の全体が配置されている領域内の略中央に集合して配置されている。また、第1、第2の短絡検出端子CO1、CO2及び第1、第2の装着検出端子DT1、DT2の接触部は、記憶装置用端子RST、SCK、VDD、VSS、SDAの集合の四隅に配置されている。
4.短絡検出、装着検出
次に本実施形態の短絡検出手法、装着検出手法について説明する。インクジェットプリンターなどの印刷装置においては、導電性のインク等が回路基板200の端子側に付着する可能性がある。図3に示したように、第1の短絡検出端子CO1と第1の装着検出端子DT1とは、上下方向で隣り合っており、第2の短絡検出端子CO2と第2の装着検出端子DT2も、上下方向で隣り合っている。そのために、例えば導電性のインク等が回路基板200の端子側に付着することで、隣り合っている2つの端子CO1とDT1、或いはCO2とDT2が導電性のインク等によって短絡(リーク)する可能性がある。また、第1の装着検出端子DT1と電源端子VDDとが短絡したり、第2の装着検出端子DT2とデータ端子SDAとが短絡したりする可能性もある。
第1、第2の装着検出端子DT1、DT2は、印刷材収容体100の装着(個別装着)を検出するための端子であるが、この装着検出の際には高電圧(例えば42V)がDT1、DT2に印加される。そのため、DT1又はDT2が他の端子と導電性のインク等によって短絡している場合には、例えば記憶装置203などの回路に高電圧が印加され、回路が破壊されるおそれがある。
以下に説明するように、本実施形態の印刷装置によれば、導電性のインク等による端子間の短絡が生じた場合でも、装着検出時に装着検出端子DT1、DT2に印加される高電圧によって記憶装置203などの回路が破壊されることを抑止できる。
図10に、本実施形態の印刷装置における印刷材収容体と装置側回路基板の接続構成例を示す。
制御部300は装置側回路基板450に設けられる。この制御部300は、第1〜第4の印刷材収容体100−1〜100−4(広義には第1〜第nの印刷材収容体。nは2以上の整数)の複数の記憶装置用端子RST、SCK、VDD、VSS、SDAに接続され、記憶装置203に対してデータの読み出し又は書き込みの制御を行う。
なお、印刷材収容体100−1〜100−4は、それぞれ回路基板200−1〜200−4を有し、記憶装置203や各端子は、実際には回路基板200−1〜200−4に設けられている。但し、以下では説明の簡素化のために、適宜、回路基板200−1〜200−4を印刷材収容体100−1〜100−4と記載して説明を行う。
第1〜第4の印刷材収容体100−1〜100−4のうちの第2の印刷材収容体100−2〜第3の印刷材収容体100−3(広義には第i〜第jの印刷材収容体。i、jは1<i<n−1、i<j<nとなる整数)の各々の複数の記憶装置用端子RST、SCK、VDD、VSS、SDAは、バスMBSにより制御部300と共通接続される。第1の印刷材収容体100−1の複数の記憶装置用端子RST、SCK、VDD、VSS、SDAは、バスMBSと分離されて制御部300と接続される。第4の印刷材収容体100−4(第nの印刷材収容体)の複数の記憶装置用端子RST、SCK、VDD、VSS、SDAは、バスMBSと分離されて制御部300と接続される。
装置側回路基板450は印刷装置本体用の回路基板であって、制御部300が実装され、本体側の第1〜第4の端子群TG1〜TG4(広義には本体側の第1〜第nの端子群)と、バスMBSのバス配線とを有する。本体側の第1〜第4の端子群TG1〜TG4は、第1〜第4の印刷材収容体100−1〜100−4(第1〜第4の回路基板200−1〜200−4)が接続される。本体側の第1〜第4の端子群TG1〜TG4は、第1〜第4の印刷材収容体100−1〜100−4が有する記憶装置203−1〜203−4にアクセスするための複数の記憶装置用端子CRST、CSCK、CVDD、CVSS、CSDAをそれぞれ有する。また、第1〜第4の印刷材収容体100−1〜100−4の装着を検出するための装着検出端子CDT1、CDT2をそれぞれ有する。
本体側の第1の端子群TG1は、装置側回路基板450の第1の端辺側に配置され、本体側の第4の端子群TG4(第nの端子群)は、装置側回路基板450の第1の端辺に対向する第2の端辺側に配置される。第1〜第4の端子群TG1〜TG4のうちの第2〜第3の端子群TG2〜TG3(広義には第i〜第jの端子群)は、バスMBSのバス配線により制御部300に共通接続される。また、第1の端子群TG1は、バスMBSのバス配線と分離されて制御部300と接続される。また、第4の端子群TG4は、バスMBSのバス配線と分離されて制御部300と接続される。
このように図10の構成の印刷装置では、装置側回路基板450の第1の端辺側に配置される第1の端子群TG1及び第1の端辺に対向する第2の端辺側に配置される第4の端子群TG4は、バスMBSと分離されて制御部300にそれぞれ接続される。
インクジェット方式の印刷装置などでは、印刷ヘッドからインクが吐出される際にインクの一部が霧状(ミスト)になって空気中に放出される。このインクミストは、装置側回路基板450の端辺側から回り込むから、端辺から離れた印刷材収容体100−2、100−3よりも端辺側にある印刷材収容体100−1、100−4の方がインクミストの付着による端子間の短絡が発生する可能性が大きい。
図10の構成によれば、端辺側にある印刷材収容体100−1、100−4に短絡が発生した場合であっても、他の印刷材収容体100−2、100−3と分離されているから、制御部300と他の印刷材収容体の記憶装置203−2、203−3との間の通信に悪影響を与えることを抑止できる。また、装着検出の際に記憶装置203−2、203−3に高電圧が印加されることなどを抑止できる。その結果、印刷材収容体100−1〜100−4の装着検出を確実で安全に行うことなどが可能になる。
5.印刷装置
図11に、本実施形態の印刷装置の基本構成例を示す。この印刷装置は、印刷装置本体と印刷材収容体100を有する。印刷装置本体は、制御部300が設けられる装置側回路基板450と、主制御部400と、表示部430により構成される。なお図11では1個の印刷材収容体100について例示しているが、本実施形態の印刷装置は複数の印刷材収容体100を含むことができる。
装置側回路基板450は、9個の端子を有する端子群及び端子群の各端子と制御部300とを電気的に接続する複数の配線を含む。具体的には、端子群はリセット端子CRST、クロック端子CSCK、電源端子CVDD、接地端子CVSS、データ端子CSDA、装着検出端子CDT1、CDT2、短絡検出端子CCO1、CCO2を含む。この装置側回路基板450は、例えば図1の収容体装着部1100(カートリッジ装着部)に設けられる。
制御部300は、通信処理部350を含み、主制御部400と共に記憶装置203に対してデータの読み出し又は書き込みの制御を行う。例えば、主制御部400が記憶装置203に対するデータの書き込み又は読み出しの制御を行う場合に、通信処理部350は、書き込みデータ又は読み出しデータの通信の中継などを行う。また制御部300は、装着検出部330、CO検出部340、短絡検出部310、電圧印加部320、高電圧制御部360を含み、装着検出、CO検出、短絡検出、高電圧の遮断などの処理を行う。
主制御部400は、CPU410と、メモリー420とを含み、印刷処理の制御を行う。また、制御部300との間でバスBUSを介して必要な通信を行う。なお、図11に示す構成例では、制御部が主制御部400と制御部300とに分かれているが、1つの制御部として構成してもよい。
表示部430は、ユーザーに印刷装置の動作状態やインクカートリッジの装着状態などの各種の通知を行うためのものである。
低電圧電源441は、低電圧電源電圧(第1の電源電圧)VDDを生成する。電圧VDDは、ロジック回路に用いられる通常の電源電圧(定格3.3V)である。高電圧電源442は、高電圧電源電圧(第2の電源電圧)VHVを生成する。電圧VHVは、印刷ヘッドを駆動してインクを吐出させるために用いられる高い電圧(例えば定格42V)であり、装着検出端子DT1に印加される装着検出用電圧VHOを生成するためにも用いられる。これらの電圧VDD、VHVは、制御部300に供給され、また、必要に応じて他の回路にも供給される。具体的には、例えば高電圧電源電圧VHVは、高電圧電源442から制御部300の電圧印加部320に供給され、電圧印加部320から出力される装着検出用電圧VHOが印刷材収容体100の装着検出端子DT1及び装着検出部330に供給される。装着検出用電圧VHOは、記憶装置203に供給される高電位側電源電圧(例えば3.3V)よりも高い電圧である。
印刷材収容体100の回路基板200(図3)に設けられた9つの端子のうち、端子RST、SCK、VDD、SDA、VSSは、記憶装置203に電気的に接続される。
一方、装着検出端子DT1、DT2は、印刷材収容体100が収容体装着部1100に正しく装着されているか否かを検出する際に使用される。装着検出端子DT1とDT2との間には、装着検出用の抵抗素子RD(広義には回路素子)が設けられる。装着検出部330は、電圧印加部320から出力される装着検出用電圧VHOと、装着検出用抵抗素子RDを流れる電流とに基づいて、印刷材収容体100の装着を検出する。具体的には、電圧印加部320から出力される装着検出用電圧VHOが装着検出端子DT1に印加されることで、装着検出用抵抗素子RDに電圧が印加されて電流が流れ、この電流を装着検出部330が検出することで、装着を検出する。この装着検出の方法については、後に詳細に説明する。
短絡検出端子CO1、CO2は、印刷材収容体100(具体的には回路基板200)の内部で、配線により電気的に接続されている。CO検出部340は、後述するように、CO1とCO2との間の電気的導通を検出することで、CO1及びCO2が収容体装着部1100の対応する端子にそれぞれ電気的に接触しているか否か、即ち、印刷材収容体100が正しく装着されているか否かを検出することができる。もっとも、本実施形態の印刷装置では、装着検出端子DT1、DT2及び装着検出部330が設けられており、これらを用いることで印刷材収容体100の装着を検出することができるから、CO検出部340を省略することができる。
なお、以下の説明において、装着検出部330による装着検出を「装着検出」と呼び、CO検出部340による装着検出を「カートリッジアウト検出」、又は「CO検出」と呼ぶ。
短絡検出部310は、短絡検出端子CO1及びCO2に直接に、又はダイオードD1、D2(広義には所与の回路素子)を介して接続される。そして例えば、短絡検出端子CO1、CO2の少なくとも一方と、装着検出端子DT1、DT2の少なくとも一方との間の短絡により、短絡検出端子CO1、CO2に本来印加されることのない高い電圧が印加されたこと(異常電圧の印加)を、検出ノードNDの電圧と参照電圧との比較に基づいて検出する。即ち、検出ノードNDの電圧が参照電圧より高くなる場合に、短絡(異常電圧)を検出する。短絡検出部310は、短絡を検出すると、高電圧制御部360に対して短絡検出信号VSHTを出力し、高電圧制御部360は、短絡検出信号VSHTに基づいて、電圧印加部320に対して制御信号VCNTを出力する。電圧印加部320は、高電圧制御部360からの制御信号VCNTに基づいて、装着検出用電圧VHOの供給を停止する。
ここで、参照電圧は、上記の短絡が生じた場合に、記憶装置203(或いは、CO検出部340などの回路)が破壊されない電圧値に設定される。こうすることで、短絡検出部310は、検出ノードNDの電圧が記憶装置203などの回路を破壊する電圧値に到達する前に、短絡を検出することができる。
図3に示すように、短絡検出端子CO1と装着検出端子DT1とは隣り合っており、短絡検出端子CO2と装着検出端子DT2とは隣り合っている。そのために、例えば導電性のインク等が回路基板200の端子側に付着することで、隣り合っている2つの端子CO1とDT1、或いはCO2とDT2が導電性のインク等によって短絡(リーク)する可能性がある。また、装着検出端子DT1と電源端子VDDとが短絡したり、装着検出端子DT2とデータ端子SDAとが短絡したりする可能性もある。
上述したように、装着検出部330による装着検出時には、装着検出用電圧VHOが装着検出端子DT1に印加される。従って、導電性インク等により第装着検出端子DT1、DT2と短絡検出端子CO1、CO2とが短絡(リーク)している場合には、装着検出時にCO検出部340に高電圧が印加されるおそれがある。また、装着検出端子DT1、DT2と電源端子VDD又はデータ端子SDAとが短絡している場合には、記憶装置203に高電圧が印加されるおそれがある。
本実施形態の印刷装置によれば、短絡検出部310が端子間に短絡が発生している可能性があることを検出し、短絡が発生している可能性があることが検出された場合には、電圧印加部320が装着検出用電圧VHOの供給を停止することができる。
具体的には、例えば図11のB1に示すように、DT1とCO1とが短絡している場合には、DT1からCO1へ、そしてCO1から検出ノードNDへダイオードD1の順方向電流が流れ、その結果、検出ノードNDの電位が上昇する。また、図11のB2に示すように、DT2とCO2とが短絡している場合には、DT2からCO2へ、そしてCO2から検出ノードNDへダイオードD2の順方向電流が流れ、その結果、検出ノードNDの電位が上昇する。短絡検出部310は、この検出ノードNDの電圧と参照電圧とを比較することで、短絡を検出することができる。
また、本実施形態の印刷装置によれば、制御部300は、電圧印加部320が装着検出端子DT1に装着検出用電圧VHOを印加する際に、複数の記憶装置用端子(RST、SCK、VDD、VSS、SDA)を高インピーダンス状態(フローティング状態)に設定する。こうすることで、例えばDT1とCO1及びVDDとが短絡している場合、或いはDT2とCO2及びSDAとが短絡している場合であっても、装着検出時に記憶装置203に高電圧が印加される前に、短絡検出部310が過電圧がノードNDに印加されたことを検出し、これに基づき制御部300が装着検出用電圧VHOの供給を停止できる。従って、記憶装置203に、記憶装置203の最大定格以上の電圧が印加されることを防止できる。
主制御部400が、記憶装置203からデータを読み出したり、記憶装置203へデータを書き込んだりする場合には、主制御部400は、制御部300の通信処理部350に対して、アクセス開始前に複数の記憶装置用端子RST、SCK、VDD、VSS、SDAの端子の状態を、高インピーダンス状態から接地レベル(GNDレベル、VSSレベル、広義には一定の電圧レベル)に設定するように指示する。そして、複数の記憶装置用端子が接地レベルに設定された後に、主制御部400は、通信処理部350を介して記憶装置203に対してデータの読み出し又は書き込みを行う。
具体的には、複数の記憶装置用端子を接地レベルに設定した後に、通信処理部350が複数の記憶装置用端子を接地レベルから所定の電圧レベルに制御することにより、主制御部400は記憶装置203に対してデータの読み出し又は書き込みを行う。こうすることで、記憶装置203に対する書き込み又は読み出しを実行する前に、全てのメモリー端子を同一電位に設定することができるから、安定なメモリー動作を得ることができる。ここで所定の電圧レベルとは、データの読み出し又は書き込みを実行するために各記憶装置用端子にそれぞれ印加される電圧レベルである。
電圧印加部320は、制御部300が記憶装置203に対してデータの読み出し又は書き込みを行う前に、装着検出用電圧VHOの印加を停止する。こうすることで、記憶装置203に対する読み出し又は書き込みの実行中には、装着検出用電圧VHOが装着検出端子DT1、DT2に印加されないから、VHOに起因するノイズの発生を抑えることができる。その結果、ノイズによる通信エラーやメモリーエラーなどを低減することができる。
また、制御部300が記憶装置203に対してデータの読み出し又は書き込みを終了した後に、複数の記憶装置用端子が接地レベル(広義には一定の電圧レベル)に設定される。そして複数の記憶装置用端子が接地レベルに設定された後に、電圧印加部320が第1の装着検出端子DT1に装着検出用電圧VHOを印加し、複数の記憶装置用端子が高インピーダンス状態に設定される。こうすることで、記憶装置203に対する読み出し又は書き込み以外の時を除き装着検出を行うことができる。
このように、本実施形態の印刷装置によれば、インクなどの印刷材の付着等による端子間の短絡が発生した場合であっても、装着検出時において記憶装置203に高電圧が印加される可能性を少なくすることができる。また、記憶装置203へのアクセス前にメモリー端子を同一電位にし、アクセス中には高電圧の印加を停止することができる。その結果、確実で安全な装着検出及び信頼性の高いメモリーアクセスを実現できる。
図12に、短絡検出及び装着検出に関係する回路の構成例を示す。おお、以下では「印刷材収容体」を、適宜、「インクカートリッジ」又は「カートリッジ」と記載する。
図12に示す構成例は、4個のインクカートリッジ100−1〜100−4(IC1〜IC4)を含む。なお、インクカートリッジの個数は4個に限定されるものではなく、2個、3個、或いは5個以上であってもよい。また、図12では、説明の便宜上、CO検出部340を、CO検出部(出力側)340aとCO検出部(入力側)340bとに分けて示してある。
印刷装置が複数のインクカートリッジを含む場合には、複数のインクカートリッジ(例えばIC1〜IC4)の各インクカートリッジの短絡検出端子CO1、CO2は、複数のダイオード素子(例えばD1〜D5)を介して1つの短絡検出部310の検出ノードNDに接続される。具体的には、例えば図12では、IC1のCO1はダイオードD1を介して、またIC1のCO2とIC2のCO1はダイオードD2を介して、またIC2のCO2とIC3のCO1はダイオードD3を介して、それぞれ検出ノードNDに接続される。各ダイオードのカソード(負極)が検出ノードNDに接続される。このようにすることで、CO検出部340によるカートリッジアウト検出に支障を与えることなく、短絡検出部310が短絡検出を行うことができる。
短絡検出部310は、検出ノードNDの電圧と参照電圧との比較に基づいて検出する。即ち、検出ノードNDの電圧が参照電圧より高くなる場合に、短絡(異常電圧)を検出する。短絡検出部310は、短絡を検出すると、高電圧制御部360に対して短絡検出信号VSHTを出力し、高電圧制御部360は、短絡検出信号VSHTに基づいて、電圧印加部320に対して制御信号VCNTを出力する。電圧印加部320は、高電圧制御部360からの制御信号VCNTに基づいて、装着検出用電圧VHOの供給を停止する。
抵抗素子RB1〜RB4(広義には回路素子)は、装着検出部330による装着検出に用いられるものであって、それぞれ互いに異なる抵抗値を有する。こうすることで、インクカートリッジIC1〜IC4のうちの、どの装着位置にインクカートリッジが非装着であるかを検出することができる。この装着検出の手法については、後で詳細に説明する。
CO検出部340(340a、340b)によるカートリッジアウト検出は、次のように行われる。4個のインクカートリッジが全て装着されている場合には、図12に示すように、IC1の第1の短絡検出端子CO1からIC4の第2の短絡検出端子CO2まで電気的に導通状態となる。従って、CO検出部(出力側)340aから出力された信号DPinsは、CO検出部(入力側)340bにより信号DPresとして検出される。一方、4個のインクカートリッジのうち、いずれか1個でも非装着の場合には、電気的に非導通であるから、CO検出部(入力側)340bは信号DPresを検出しない。このように、CO検出部(入力側)340bが信号DPresを検出するか否かによって、カートリッジアウトを検出することができる。
図13は、本実施形態の印刷装置における装着検出及びメモリーアクセスのフローチャートである。上述したように、本実施形態の印刷装置では、インクカートリッジ100に設けられた記憶装置203にインク情報(広義には印刷材情報)が記憶される。このインク情報は、ヘッドのクリーニングや、印刷実行によりインクカートリッジ内のインクが所定単位量消費される毎に、或いは印刷装置の電源オフ時などに、主制御部400により、制御部300を介して記憶装置203に書き込まれる。また、インク情報は、印刷装置の電源オン時に、主制御部400の要求により、制御部300を介して、記憶装置203から読み出される。このフローは主制御部400と制御部300の制御により実行される。
メモリーアクセスの時を除き、印刷装置の電源がオンになった以降、主制御部400と制御部300は、メモリー端子を常に高インピーダンス状態に設定している。また、装着検出とCO検出を、常に、若しくは、定期的に実行している。なお、CO検出(カートリッジアウト検出)は、メモリーアクセス中でも実行される。
主制御部400がメモリーアクセスを開始すると、まず、装着検出を停止する。即ち、VHOを印加して装着検出をする処理を停止する(ステップSP1)。
ステップSP2では、メモリー端子を高インピーダンス状態HZからGNDレベル(接地レベル、VSSレベル)に設定する。このときにCO端子(CO1もしくはCO2)とメモリー端子間例えばCO1−VDD間、CO2−SDA間)に短絡が発生している場合には、CO検出部340が短絡を検出することができる。
ステップSP3では、インクカートリッジ100が正常であるか否かを判断する。即ち、インクカートリッジ100が適正に装着され、且つ、端子間の短絡が発生していないかどうかを判断する。正常である場合には次のステップSP4に進み、正常でない場合にはエラー処理が実行される。エラー処理は、例えば表示部430にエラーメッセージを表示するなどの処理である。
ステップSP4では、記憶装置203へのメモリーアクセスが行われる。即ち、制御部300が各メモリー端子に必要な信号及び電源電圧を供給して、記憶装置203に対してデータの書き込み処理、若しくは読み出し処理を行う。
ステップSP5では、メモリーアクセスが正常に行われたか否かを判断する。具体的には、書き込み時には、制御部300が記憶装置203に対して、書き込みコマンドと書き込みデータを送信した後の所定のタイミングで、記憶装置203から制御部300に対して書き込み完了信号が送信される。この書き込み完了信号の受信により、制御部300はメモリーアクセスが正常に完了したかどうか判断する。読み出し時には、記憶装置203から読み出され、制御部300に送信されたデータにはパリティビットが付加されているのでパリティチェックを行い、記憶装置203から読み出されたデータが正常であるか否かを判定することができる。メモリーアクセスが正常である場合にはステップSP6に進み、正常でない場合にはエラー処理が実行される。
メモリーアクセスが正常に終了すると、ステップSP6では、メモリー端子をGNDレベルに設定する。ここでCO検出部340によるカートリッジアウト検出を行うことができる。このときに端子間の短絡(例えばCO1−VDD、CO2−SDA)が発生している場合には、CO検出部340が短絡を検出することができる。
ステップSP7では、装着検出用電圧VHOを装着検出端子DT1、DT2に印加して、装着検出を再開する。
ステップSP8では、メモリー端子を高インピーダンス状態HZに設定する。ここで端子間の短絡(例えばDT1−CO1、DT2−CO2)が発生している場合には、短絡検出部310がこれを検出することができる。
図13のフローチャートに示すように、本実施形態の印刷装置によれば、印刷装置が電源オンの時には、常に装着検出とCO検出を実行し、カートリッジが全て装着されているか、カートリッジが正しく装着されているかの検出を行う。メモリーアクセス時には、VHOの印加を停止し、メモリーアクセス時のノイズを低減すると共に、万が一、装着検出端子DT1、DT2とメモリー端子が短絡してもVHOがメモリー端子に印加されることを防止する。
メモリー非アクセス時には、メモリー端子を高インピーダンス状態とすることで、装着検出端子DT1、DT2と短絡検出端子CO1、CO2が短絡すれば、メモリー端子も装着検出端子DT1、DT2と短絡している可能性があるとしてVHOの印加を停止し、記憶装置203にVHOが印加される可能性を低くすることができる。その結果、装着検出を実行しつつ、信頼性の高いメモリーアクセスを実現することなどができる。
以上のように本実施形態の印刷装置は、図11に示すように印刷装置本体と印刷材収容体100を含む。印刷装置本体は、印刷装置本体は、第1、第2の端子CO1、CO2の少なくとも一方と、他の端子(DT1、DT2等)との間の短絡を検出する短絡検出部310を含む。
また図3に示すように回路基板200は回路素子210を含み、この回路素子210は例えば抵抗素子RDである。また端子群は、回路素子210に接続される第1、第2の検出端子DT1、DT2を有する。
そして印刷装置本体は、電圧印加部320と装着検出部330を含む。電圧印加部320は、第1の検出端子DT1に装着検出用電圧VHOを印加する。そして装着検出部330は、装着検出用電圧VHOの印加により抵抗素子RDに流れる電流を検出することで、印刷材収容体100の装着検出を行う。これにより印刷材収容体100の個別装着検出等を実現できるようになる。
6.装着検出の手法
図14(A)、図14(B)は、本実施形態の印刷装置におけるインクカートリッジ(印刷材収容体)の装着検出の手法の詳細な説明図である。図14(A)では、印刷装置の収容体装着部1100に装着可能なカートリッジIC1〜IC4が全て装着された状態を示している。4つのカートリッジIC1〜IC4の装着検出用抵抗素子RDの抵抗値は、同一の値Rに設定されている。各カートリッジの装着検出用抵抗素子RDとそれぞれ直列接続される抵抗素子RB1〜RB4が設けられている。これらの抵抗素子RB1〜RB4の抵抗値は、互いに異なる値に設定されている。具体的には、これらの抵抗素子RB1〜RB4のうち、n番目(n=1〜4)のカートリッジICnに対応づけられた抵抗素子RBnの抵抗値は、(2n−1)R(Rは一定値)に設定されている。この結果、n番目のカートリッジ内の装着検出用抵抗素子RDと、抵抗素子RBnとの直列接続によって、2nRの抵抗値を有する抵抗が形成される。n番目(n=1〜N)のカートリッジに対する2nRの抵抗は、装着検出部330に対して互いに並列に接続される。なお、以下では、装着検出用抵抗素子RDと抵抗素子RB1〜RB4との直列接続により形成される合成抵抗701〜704を単に「抵抗」とも呼ぶ。
装着検出部330で検出される検出電流IDETは、装着検出部330のバイアス電圧をVREFとすると、これらの4つの抵抗701〜704の合成抵抗値Rcで電圧(VHO−VREF)を除した値(VHO−VREF)/Rcである。ここで、カートリッジの個数をNとしたとき、N個のカートリッジが全て装着されている場合には、検出電流IDET、合成抵抗値Rcは以下の式(1)、(2)で与えられる。
1つ以上のカートリッジが未装着であれば、これに応じて合成抵抗値Rcが上昇し、検出電流IDETは低下する。
図14(B)は、カートリッジIC1〜IC4の装着状態と、検出電流IDETとの関係を示している。図の横軸は、16種類の装着状態を示しており、縦軸はこれらの装着状態における検出電流IDETの値を示している。16種類の装着状態は、4つのカートリッジIC1〜IC4から任意に1〜4個を選択することによって得られる16個の組み合わせに対応している。検出電流IDETは、これらの16種類の装着状態を一意に識別可能な電流値となる。換言すれば、4つのカートリッジIC1〜IC4に対応づけられた4つの抵抗701〜704の個々の抵抗値は、4つのカートリッジが取り得る16種類の装着状態が、互いに異なる合成抵抗値Rcを与えるように設定されている。
4つのカートリッジIC1〜IC4が全て装着状態にあれば、検出電流IDETはその最大値Imaxとなる。一方、最も抵抗値の大きな抵抗704に対応づけられたカートリッジIC4のみが未装着の状態では、検出電流IDETは最大値Imaxの0.93倍となる。従って、検出電流IDETが、これらの2つの電流値の間の値として予め設定されたしきい値電流Ithmax以上であるか否かを調べれば、カートリッジIC1〜IC4が装着されているか否かを検出することが可能になる。
上述したカートリッジの装着検出処理は、N個のカートリッジに関する2N種類の装着状態に応じて合成抵抗値Rcが一意に決まり、これに応じて検出電流IDETが一意に決まることを利用している。ここで、抵抗701〜704の抵抗値の許容誤差をεと仮定する。また、全カートリッジIC1〜IC4が装着された状態の第1の合成抵抗値をRc1とし、4番目のカートリッジIC4のみが非装着である状態の第2の合成抵抗値をRc2とすると、Rc1<Rc2が成立する(図14(B))。この関係Rc1<Rc2は、各抵抗701〜704の抵抗値が許容誤差±εの範囲内で変動する場合にも成立することが好ましい。このとき、最悪条件は、許容誤差±εを考慮した場合に、第1の合成抵抗値Rc1がその最大値Rc1maxを取り、第2の合成抵抗値Rc2がその最小値Rc2minを取る場合である。これらの合成抵抗値Rc1max、Rc2minを識別できるようにするためには、Rc1max<Rc2minという条件が満足されていれば良い。この条件Rc1max<Rc2minから、以下の式(3)が導かれる。
即ち、許容誤差±εが式(3)を満足すれば、常にN個のカートリッジの装着状態に応じて合成抵抗値Rcが一意に決まり、これに応じて検出電流IDETが一意に決まることを保証することができる。
なお、以上のように本実施形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項及び効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるであろう。従って、このような変形例は全て本発明の範囲に含まれるものとする。例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義又は同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また回路基板、印刷材収容体及び印刷装置の構成、動作も本実施形態で説明したものに限定されず、種々の変形実施が可能である。