JP5997523B2 - 吸着材、その製法及び吸着法 - Google Patents

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本発明は、被処理液体中に含まれる金属を吸着する吸着材、その製法及び吸着法に関連する。
近年、天然存在比の少ないレアメタルのリサイクル技術が注目を集めている。稀有金属又は希少金属とも呼ばれるレアメタルは、リチウム(Li)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、ガリウム(Ga)、モリブデン(Mo)、インジウム(In)、ランタン(La)、セリウム(Ce)等の金属を指称する。レアメタルを産出できない我が国では、外国からの輸入に頼らざるを得ず、効率良くレアメタルを回収して再利用する技術の開発が急務である。
メッキ工場、電子部品製造工場、金属精錬工場等の廃液中に溶解し又は含まれる金(Au)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)等の貴金属、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)等の有価金属の回収・再利用は、循環型社会の構築、持続可能な環境の実現に必要不可欠である。また、工場廃液中にヒ素(As)、カドミウム(Cd)等の有害金属を含む場合、有害金属を完全に除去した後でなければ、廃液を河川に放流できない。廃液中に溶解する貴金属、有価金属及び有害金属を回収・除去するために、特定の金属を選択的に回収できると共に、長期間効果が持続する金属吸着技術が望まれる。
被処理液体中に含まれ又は溶解する金属の回収及び除去技術として、粒状の金属吸着樹脂、例えば、イオン交換樹脂又はキレート樹脂中に金属溶解液を通水して金属を吸着させる方法が知られ、特に、金属吸着選択性の高いキレート樹脂を用いることが多い。しかしながら、粒状の金属吸着樹脂は、所定形状の容器に充填しなければ、吸着処理を実施できない。金属吸着樹脂間を接着すれば、充填容器は不要となるが、金属吸着樹脂が露出しない接着部分は、流動する被処理液体に接触しないために、吸着作用を発揮できない。一方、粒状の金属吸着樹脂を充分に接着しなければ、金属吸着樹脂が分離して、被処理液体中に金属吸着樹脂が流出するおそれがある。
これに対し、不織布製の金属吸着材は、容器も接着剤も使用せずに繊維集合体を形成でき、実際の金属吸着法に広く使用される。最初に、金属吸着樹脂と共に他の樹脂を溶融し紡糸して単繊維を形成し、複数の単繊維をシート状に配置して、繊維を互いに交絡させて物理的に結合すると、高吸着性能の不織布が形成される。
不織布を金属吸着材に使用する特許文献1は、吸着材粒子を含む不織布ウェブが複数巻回された円筒状の吸着材と、吸着材を包囲するハウジングと、吸着材の外表面に連通するハウジング入口と、吸着材の内部空洞に連通するハウジング出口とを備えるカートリッジフィルタを開示し、不織布ウェブをメルトブロー法により形成する。メルトブロー法は、溶融した熱可塑性樹脂を押出機の後に設置したダイから、ネットコンベア上に高速高温の気流で吹き出し自己接着性ウェブを形成する方法である。特許文献1では、金属を含む被処理液体を円筒状の吸着材の外表面から径方向の内部空洞に向けて、即ち、多重巻回された不織布ウェブの厚さ方向に通液して、被処理液体から金属成分を除去する。
図11は、シート状の不織布を複数積層した吸着材(60)を示し、吸着材(60)は、金属吸着繊維を含む不織布からなる複数の吸着層(51)と、吸着層(51)間を結合し吸着層(51)に対し交互に配置される複数のバインダ層(52)とを備える。吸着層(51)及びバインダ層(52)の積層方向(矢印81)に被処理液体を供給することにより、被処理液体中に含まれる金属を吸着する。また、図12は、吸着層(51)とバインダ層(52)とから成る単位積層体を筒状に多層巻回した吸着材(60’)を示し、吸着材(60’)の外表面(82’)から内表面(83’)を通じて被処理液体中の金属を除去し内部空洞(71)から処理液を回収する。
特許文献2は、処理水を集水する筒体と、筒体の外周に多重に巻回されたシートとを備え、シートは、ポリオレフィン等の不織布からなる流路材シートと、流路材シートと共に積層して形成されるイオン交換シートとを有する吸着材を開示する。イオン交換シートは、イオン交換繊維の電界紡糸不織布とイオン交換キャスト膜とから形成される。被処理液体は、流路材シート及びイオン交換シートに沿って吸着材の円周方向に流れ、イオン交換シートにより金属が除去される。
しかしながら、特許文献1のカートリッジフィルタでは、吸着材粒子が不織布ウェブに捕捉されているに過ぎず、吸着材自体を繊維化したものではない。このため、通液時に吸着材粒子が不織布ウェブから離脱し又は溶出するおそれがあり、長時間の使用により、金属吸着特性が大幅に低下する。また、特許文献1のカートリッジフィルタは、不織布ウェブ間を接合するバインダ層を備えていないため、多重に巻回された不織布ウェブ間を十分に接着できず、筒状の形態を保持することが難しい。更に、不織布の吸着材では、織布と異なり、繊維が均一に配列されていないため、繊維の密度が不規則であり、被処理液体が流れ易い箇所と共に流れ難い箇所が生じて被処理液体の不均一な流動が起こる。特に、多重に巻回された不織布ウェブの積層方向に被処理液体を流す場合は、流れ難い箇所が生じることが特に多く、不均一な流れの発生が顕著に現れる。
図11及び図12に示す不織布の吸着材(60,60’)は、特許文献1と同様に、吸着層(51)及びバインダ層(52)の積層方向(矢印81)に被処理液体を流すため、繊維の不規則な配列による不均一な流動が起こり易い。また、図11及び図12の吸着材(60, 60’)では、不均一な加熱下でバインダ層(52)の接着樹脂を溶融及び固化した場合、接着ムラが生じ、バインダ層(52)の厚い部分では被処理液体の流動が少なく、薄い部分では流動が多くなり、この不均一な流れを均一な流れに回復させることはできない。このため、被処理液体が吸着層(51)の吸着繊維に十分に接触しないデッドエリアが形成され、また、特定の箇所だけ被処理液体が流動するブレイクスルーが生じ、吸着材(60,60’)が本来持つ吸着能を十分に発揮できない。更に、吸着材(60,60’)は、吸着層(51)とバインダ層(52)との界面に、金属吸着性及び透水性を有する境界層を備えていないため、極めて透過性が低いバインダ層(52)の厚さが相対的に大きくなる。このため、吸着材(60,60’)の圧力損失は大きく、目詰まりが早期に発生し、金属吸着処理量が大幅に低下すると共に、吸着材(60,60’)の寿命は短い。
特許文献2では、積層シートが巻回され、積層シートの流路材シートに沿って、渦巻状に被処理液体が流れるため、吸着材全体の透水面積は、流路材シート厚さと吸着材全長との積に過ぎず小さい。このため、吸着材の外表面全体を使用する場合に比べて、特許文献2の吸着材は、極端に処理能力が低い。また、特許文献2の吸着材の外表面には、被処理液体の流入口として数個の小さい開口を備えるに過ぎず、開口で目詰まりを生じる可能性が高い。目詰まりを生じた開口の内側は、被処理液体の流動が極めて低く、吸着機能を十分に果たさないデッドエリアとなる。
特表2010−535621公報 特開2011−201289公報
そこで本発明は、被処理液体が吸着材内で均一に分散して流動する吸着材、その製法及び吸着法を提供することを目的とする。また、本発明は、吸着材を通る被処理液体の圧力損失が小さく、大流量の吸着処理を長期間持続できる吸着材、その製法及び吸着法を提供することを目的とする。更に、本発明は、金属吸着繊維により、被処理液体中に含まれる特定の金属を効率良く吸着する吸着材、その製法及び吸着法を提供することを目的とする。
本発明による吸着材は、被処理液体中に含まれる特定の金属を吸着する金属吸着繊維を含む複数の吸着層(1)と、複数の吸着層(1)間に配置され、加熱溶融されて隣り合う吸着層(1)間を結合する複数のバインダ層(2)と、吸着層(1)とバインダ層(2)との間に形成される境界層(16)とを有する積層体を備える。積層体の積層方向に吸着層(1)とバインダ層(2)とを貫通する複数の貫通孔(17)が形成され、境界層(16)は、金属吸着繊維と、金属吸着繊維に融着した熱可塑性繊維とを含み、複数の貫通孔(17)は、バインダ層(2)より大きい積層方向の厚さを有する境界層(16)を積層方向に貫通し、積層体の積層方向に対して実質的に直角方向に積層体内に導入される被処理液体は、貫通孔(17)を通じて流動する。
積層体の積層方向に対して横方向、即ちほぼ直角方向に特定の金属を含む被処理液体を積層体内に導入すると、被処理液体は、吸着層(1)及びバインダ層(2)を通り各層に平行に横方向に流れ、被処理液体中の特定の金属は、吸着層(1)の金属吸着繊維に吸着される。吸着層(1)内の被処理液体(矢印41)が貫通孔(17)に達すると、被処理液体の一部は、抵抗が低い貫通孔(17)内で約90°偏向(矢印41’)して積層方向に流動するので、積層方向に被処理液体が分散され、吸着層(1)内で被処理液体が均一に流動(矢印41”)する。このように、積層体内で被処理液体に不均一な流れ又は流動集中が発生しても、貫通孔(17)を流れる被処理液体の均等分配作用により、貫通孔(17)を通る被処理液体が均一に分散され、吸着層(1)全体で有効に吸着処理を行い、吸着性能を向上することができる。また、熱可塑性繊維が互いに溶融されたバインダ層(2)は被処理液体の透過量が比較的低く、積層体の積層方向に対しほぼ直角に、被処理液体がバインダ層(2)に沿って吸着層(1)内を流動するので、本発明では、圧力損失が小さく、大流量の吸着処理を長期間行うことができる。
本発明による吸着材の製法は、被処理液体中に含まれる特定の金属を吸着する金属吸着繊維を含む吸着層(1)と熱可塑性繊維を含むバインダ層(2)とが積層した単位積層体(4,4’)を形成する工程と、複数の突起状のかえし(3a)を有するニードル(3)を単位積層体(4,4’)に挿通しかつ引き抜くことにより、吸着層(1)の金属吸着繊維とバインダ層(2)の熱可塑性繊維とを交絡させて吸着層(1)とバインダ層(2)とを結合すると同時に、積層方向に貫通する貫通孔(17)を単位積層体(4,4’)に形成する工程と、吸着層(1)とバインダ層(2)とを接触させて複数の単位積層体(4,4’)を積層することにより積層体を形成する工程と、加熱下で積層体に積層方向の圧力を加えることにより、積層体内のバインダ層(2)の熱可塑性繊維を溶融して隣り合う吸着層(1)間を融着すると同時に、積層体を圧密化する工程とを含む。
積層した吸着層(1)とバインダ層(2)とにニードル(3)を挿通して、ニードル(3)のかえし(3a)により、吸着層(1)の金属吸着繊維とバインダ層(2)の熱可塑性繊維とを物理的に絡め、吸着層(1)とバインダ層(2)とを結合した単位積層体(4,4’)を形成することができる。また、ニードル(3)の挿通時に、単位積層体(4,4’)の積層方向に複数の貫通孔(17)が形成され、圧密化後の最終製品である吸着材(10,10’)にも貫通孔(17)が保持される。このため、積層体の積層方向に対し横方向に被処理液体を吸着材(10,10’)内に導入すると、被処理液体は、吸着層(1)内を流れ、金属吸着が行われて、貫通孔(17)に達すると、貫通孔(17)内で約90°方向を偏向して被処理液体が貫通孔(17)内を流れ、更に約90°方向を偏向して、貫通孔(17)全体から吸着層(1)内に拡散され、吸着材(10,10’)内で均一に金属を吸着することができる。更に、ニードル(3)の挿通時に、貫通孔(17)を形成すると同時に、単位積層体(4,4’)の一方の主面(4a又は4b)から毛羽立つ熱可塑性繊維又は金属吸着繊維を含む起毛繊維(6)を形成して、起毛繊維(6)と金属吸着繊維又は熱可塑性繊維とを融着することにより、吸着層(1)とバインダ層(2)との間に、積層方向に貫通する複数の貫通孔(17)を有する境界層(16)を形成することができる。
本発明による吸着法は、本発明の吸着材の製法により製造された吸着材の積層体の積層方向に対して実質的に直角方向に被処理液体を吸着材(10,10’)内に導入する過程と、吸着層(1)の金属吸着繊維により被処理液体中に含まれる特定の金属を吸着する過程とを含む。被処理液体は、貫通孔(17)内を流れて吸着材(10,10’)全体に均一に拡散されると共に、低透水性のバインダ層(2)に沿って吸着層(1)内を被処理液体が流れるので、効率的に金属を吸着し、目詰まりによる圧力損失を大幅に低減することができる。
本発明では、吸着層に対して平行に被処理液体を導入し流動させて、金属を吸着すると同時に、貫通孔を通じて被処理液体を吸着材全体に均一に拡散させて流動させるので、吸着材全体で吸着性能を発揮して、被処理液体中に含まれる特定の金属を効率的かつ確実に吸着でき、レアメタルのリサイクル、有害金属の吸着処理に有効である。また、バインダ層に沿って被処理液体を流動させるので、吸着材内での被処理液体の圧力損失が小さく、大流量の吸着処理を行うことができる。従って、金属の捕捉量が大きく再利用し易く、吸着材の長寿命化を図ることができる。
本発明による吸着材の第1の実施の形態を示す概略断面図 本発明による吸着材の透水機構を示した概念図 本発明による吸着材の第2の実施の形態を示す斜視図 本発明による吸着材の製法を示す概略断面図 本発明による吸着材の製法を示す概略断面図 本発明による吸着材の製法を示す概略断面図 本発明による吸着材の製法を示す概略断面図 本発明による吸着材の製法を示す概略断面図 本発明の吸着材の透水試験を示す断面図 従来の吸着材の透水試験を示す断面図 従来の吸着材を示す概略断面図 従来の吸着材を示す斜視図 通液試験による流量と圧力損失の関係を示すグラフ 通液試験による飽和に対する吸着率と金属除去率の関係を示すグラフ 通液試験後の吸着材の断面図
本発明による吸着材及びその製法並びに吸着法を被処理液体中の金属吸着処理に適用する実施の形態を図1〜図8について以下説明する。
本発明による吸着材(10)は、図1の概略断面図に示すように、金属吸着繊維を含む複数の吸着層(1)と、熱的に溶融する熱可塑性繊維が加熱により溶融し固化して隣り合う吸着層(1)間を結合する複数のバインダ層(2)(熱融着性不織布)と、吸着層(1)とバインダ層(2)との間に形成される境界層(16)とが複数積層して構成される。また、ニードル(3)の挿通により形成され、バインダ層(2)、吸着層(1)及び境界層(16)を積層方向に貫通する貫通孔(17)を複数備える。貫通孔(17)は、繊維中、周囲に比べて空隙率が高いほぼ直線状の空隙部であり、分かり易く説明するため、図では貫通孔(17)の外形を明確に示す。本発明では、境界層(16)、吸着層(1)及びバインダ層(2)の積層方向(貫通孔(17)の長さ方向)に対し実質的に直角方向(矢印31)に被処理液体を流動させる。これにより、吸着材(10)内に供給された被処理液体が貫通孔(17)に到達したとき、方向を実質的に90°変えて貫通孔(17)内を流動し、更に方向を実質的に90°変えて貫通孔(17)の長さ方向全体から吸着層(1)の積層方向全体に被処理液体を均一分散させて、吸着層(1)の金属吸着繊維全体が被処理液体に接触し、被処理液体中に含まれる特定の金属を確実に吸着する。吸着は、ファンデルワールス力(分子間力)による物理吸着と、化学結合(静電相互作用及び配位結合)による化学吸着との何れか又は両方を含む。
吸着材(10)の吸着層(1)は、金属吸着繊維70〜90重量%と、残部として、熱溶融した後の芯鞘複合繊維とを含む。芯鞘複合繊維は、芯部と芯部を被覆する熱融着性の鞘部とを有し、本発明では、後述する吸着ウェブ(11)を製造する工程で、加熱により芯鞘複合繊維の鞘部が溶融される。吸着層(1)中の吸着繊維が70重量%より少ないと吸着性能が低下し、90重量%を超えると吸着性能は向上するが、芯鞘複合繊維間の接着力が弱く吸着繊維を保持できず、被処理液体に吸着繊維が流出するおそれがある。
金属吸着繊維は、繊維母材としてのレーヨンと、ポリアリルアミン(化1)、ポリアリルアミンの誘導体、ポリエチレンイミン(化2)及びポリエチレンイミンの誘導体から選択される1種又は2種以上のキレート性高分子とを含む。湿式紡糸法により、キレート性高分子と繊維母材とを化学的に結合させて金属吸着繊維を形成する。以下、ポリアリルアミン(化1)及びポリエチレンイミン(化2)の化学構造式を示す。
Figure 0005997523
Figure 0005997523
平均分子量2,000〜100,000のポリアリルアミン又は平均分子量600〜150,000のポリエチレンイミンを含む金属吸着繊維は、回収及び除去が不要なナトリウム(Na)、カルシウム(Ca)及びマグネシウム(Mg)を吸着せず、ヒ素(As)、金(Au)、カドミウム(Cd)、銅(Cu)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、チタン(Ti)等を選択的に吸着し、また、pH2以下の酸性溶液中では、金(Au)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)等の貴金属を選択的に吸着する。吸着のメカニズムは、アミンによる静電相互作用及び配位結合である。ポリアリルアミン及びポリエチレンイミンの各誘導体として、以下に化学構造式を示すN−カルボキシメチル化ポリアリルアミン(化3)又はN−カルボキシメチル化ポリエチレンイミン(化4)を用いる。
Figure 0005997523
Figure 0005997523
N−カルボキシメチル化ポリアリルアミン又はN−カルボキシメチル化ポリエチレンイミンを含む金属吸着繊維は、カドミウム(Cd)、コバルト(Co)、銅(Cu)、鉄(Fe)、マンガン(Mn)、モリブデン(Mo)、ニッケル(Ni)、鉛(Pb)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、亜鉛(Zn)等の遷移元素やランタノイドやアクチノイド等の希土類元素を選択的に吸着する。
吸着層(1)に含まれる芯鞘複合繊維の芯部−鞘部の組み合わせは、例えば、ポリプロピレン−エチレンビニルアルコール、ポリプロピレン−ポリエチレン、ポリプロピレン−ポリエチレン、高融点ポリエステル−低融点ポリエステル又はポリエーテルエステル系エラストマー−ポリブチレンテレフタレートである。後述する吸着ウェブ(11)の製造工程により温度90〜160℃で鞘部を熱溶融し固化させた芯鞘複合繊維間に金属吸着繊維を保持する。
溶融によりバインダ層(2)を形成する熱可塑性繊維として、ポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィン等を使用する。本実施の形態では、熱可塑性繊維から形成される熱融着性不織布を温度110〜160℃に加熱し溶融させて一対の吸着層(1)間を強固に結合する。
吸着層(1)とバインダ層(2)との界面を形成する境界層(16)は、金属吸着繊維と金属吸着繊維に融着後固化した熱可塑性繊維とが混在し、溶融した熱可塑性繊維が固化した状態で金属吸着繊維を保持する。境界層(16)に形成される貫通孔(17)は、積層方向に沿って、吸着層(1)の貫通孔(17)に連絡する。積層される一対の吸着層(1)とバインダ層(2)に形成される複数の貫通孔(17)は、隣接する吸着層(1)とバインダ層(2)に形成される複数の貫通孔(17)とは異なる位置に形成される。また、境界層(16)は、バインダ層(2)より大きい積層方向の厚さを有する。吸着繊維を含まずかつ極めて低い透水性のバインダ層(2)をできるだけ薄くすると共に、金属吸着繊維を含みかつバインダ層(2)より高い透水性の境界層(16)を厚くすると、吸着性及びに透水性の優れた吸着材(10)を形成することができる。
本発明による前記吸着材(10)の製法を図4〜図7について以下説明する。
最初に、吸着層(1)を構成する吸着ウェブ(11)を製造する工程では、原料として、金属吸着繊維70〜90重量%と、芯鞘複合繊維10〜30重量%とを混合し開繊して搬送装置に投入し、カード機により繊維シートを形成する。次に、第1のニードルパンチ工程により、繊維シートの金属吸着繊維間、芯鞘複合繊維間及び金属吸着繊維−芯鞘複合繊維間の繊維をそれぞれ三次元的に交絡させる。続いて、温度90〜160℃に繊維シートを加熱して芯鞘複合繊維の鞘部を溶融しながら、金属吸着繊維及び芯鞘複合繊維を圧縮して、厚さ0.5〜4mmの吸着ウェブ(11)を形成する。吸着ウェブ(11)の金属吸着繊維と芯鞘複合繊維とは加熱溶融によっても接着せず、溶融した鞘部を介して芯部同士のみで接着する。即ち、吸着ウェブ(11)中の金属吸着繊維は、芯鞘複合繊維に対して物理的に絡んだ状態のみを維持するので、金属吸着繊維の表面積を減少させずかつ吸着性能を低減しない。原料の芯鞘複合繊維が10重量%より少ないと、芯鞘複合繊維の芯部間に金属吸着繊維を十分に保持することができず、30重量%を超えると、相対的に金属吸着繊維の割合が減り吸着性能が低下する。
バインダ層(2)を形成する際、前記の通り、熱可塑性繊維により構成される厚さ0.2〜1mmのバインダウェブ(12)を用いる。金属吸着繊維を含む吸着ウェブ(11)と熱可塑性繊維を含むバインダウェブ(12)とを準備し、それぞれ重ね合わせて、金属吸着繊維を含む吸着層(1)と熱可塑性繊維を含むバインダ層(2)とが図5に示す通り積層した単位積層体(4,4’)を形成する。その後、第2のニードルパンチ工程により、単位積層体(4,4’)の積層方向に重ねた吸着層(1)及びバインダ層(2)にニードル(3)を挿通しかつ引き抜く。更に、単位積層体(4,4’)に対してニードル(3)を相対的に水平方向に移動して、連続的にニードル(3)による穿孔を行う。これにより、吸着層(1)の金属吸着繊維とバインダ層(2)の熱可塑性繊維とが交絡して吸着層(1)とバインダ層(2)とが強固に面結合すると共に、吸着層(1)及びバインダ層(2)を積層方向に貫通する複数の貫通孔(17)を単位積層体(4,4’)に形成する。
複数の突起状のかえし(3a)を有するニードル(3)を使用して行われる第2のニードルパンチ工程では、ニードル(3)の挿通及び引き抜きにより、単位積層体(4,4’)の一方の主面(4a又は4b)から熱可塑性繊維を含む起毛繊維(6)又は金属吸着繊維と共に溶融固化後の芯鞘複合繊維を含む起毛繊維(6)が毛羽立つ。特に、ニードル(3)を前後左右に振動させ又は回転させながら、ニードル(3)を挿通し引き抜くことにより、起毛繊維(6)が多く毛羽立ち、大きい厚さの境界層(16)を形成できる。吸着層(1)側からニードル(3)を挿通するとき、起毛繊維(6)は、図6に示す通り、バインダ層(2)側の主面(4a)から熱可塑性繊維の毛羽が突出する。
次に、図7に示すように、吸着層(1)とバインダ層(2)とが互いに接触する状態で複数の単位積層体(4)を積層して積層体を形成し、積層体を加熱して、バインダ層(2)の熱可塑性繊維を溶融しながら、積層体に圧力を加えて、隣り合う吸着層(1)間を融着すると同時に、積層体を積層方向に圧密化する。圧密化に要する圧力と温度は、通液量及び除去する金属の含有量に応じて適宜調整できるが、本実施の形態では、初期積層体の1/3〜2/3の厚さに圧縮することが好ましい。圧縮状態で吸着層(1)に熱可塑性繊維を溶融し、冷却固化すれば、複数の吸着層(1)と、吸着層(1)に対し交互に配置される複数のバインダ層(2)と、吸着層(1)とバインダ層(2)との間に、金属吸着繊維及び溶融固化した芯鞘複合繊維と金属吸着繊維に融着した熱可塑性繊維とを含みかつ複数の貫通孔(17)が形成される境界層(16)とを備える図1の吸着材(10)が得られる。吸着層(1)と複数のバインダ層(2)との各界面を形成する境界層(16)では、熱可塑性繊維を含む起毛繊維(6)と金属吸着繊維とが大量に絡み合った状態で熱可塑性繊維が溶融固化されて、吸着層(1)間を強固にかつ均一に結合する。
図1に示す第1の実施の形態では、積層体の積層方向に対して実質的に直角(矢印31)方向に被処理液体を吸着材(10)に導入すると、吸着材(10)全体にわたって被処理液体が均一に流れる。被処理液体が均一に流れる流動メカニズムを図2について以下説明する。
図1の吸着材(10)の断面の一部を模式図で示す図2では、積層方向に対して実質的に直角(矢印41)方向に比較的強い被処理液体の流れが局所的に発生する状態を示す。吸着層(1)の目詰まり、カートリッジ装置の構造上欠陥等に起因して、部分的に不規則な流れが発生すると、吸着層(1)を流れる矢印(41)に示す大容量の被処理液体は、貫通孔(17)内に流入する。この場合、貫通孔(17)に流入する被処理液体は、流動方向を約90°偏向して、抵抗が低い貫通孔(17)内に沿って積層(矢印41’)方向に流動し、更に約90°方向を変えて、貫通孔(17)から吸着層(1)の積層方向全体に被処理液体が均一に分散される(矢印41”)。即ち、ニードルパンチ工程により形成される貫通孔(17)は、液体分配機能を発揮するので、不均一な被処理液体の流れが局所的に発生しても、貫通孔(17)を被処理液体が流れて、均一な流れを回復し、吸着層(1)全体を使用して有効に吸着処理を行うことができる。吸着層(1)全体に均一に被処理液体が流れる状況でも、本発明では、貫通孔(17)の液体分配機能により、より一層均一な被処理液体の流れを持続することができる。また、本発明では、熱可塑性繊維が溶着し固化した状態の透水性の低いバインダ層(2)を横切らず、吸着層(1)及びバインダ層(2)の平面に沿って吸着層(1)内を被処理液体が流動するので、圧力損失が小さく、大流量の吸着処理を長期間行うことができる。
図1は、吸着材(10)の流入平面(32)と流出平面(33)との間で被処理液体を流動させる第1の実施の形態を示すが、図3は、吸着層(1)、バインダ層(2)及び境界層(16)の各内部に円形断面の空洞部(21)を形成し、円筒状の外周面(32’)から内周面(33’)に向けて被処理液体を径方向に流動させて、即ち、積層体の積層方向に対し実質的に直角に外部から積層体内に被処理液体を導入して、吸着処理を行う筒状の吸着材(10’)の第2の実施の形態を示す。
図3に示す吸着材(10’)を形成する際、図示しないトムソン刃により、図6の単位積層体(4,4’)をドーナツ状に切断して、中抜き形状の単位積層体(4’)が形成される。複数枚積層した中抜き形状の単位積層体(4’)を有する積層体を図8に示す。第1の実施の形態と同様に、積層体を加熱しながら積層方向に加圧して圧密化しかつ加圧しながら冷却すると、バインダ層(2)の熱可塑性繊維が吸着層(1)に固着して固化し、吸着層(1)とバインダ層(2)との間に境界層(16)を形成しながら、積層体の内部に実質的に円形断面の空洞部(21)が形成される吸着材(10’)が得られる。加熱される積層体は、空洞部(21)を形成する円筒状内面からも熱が積層体内に伝達されるので、バインダ層(2)の熱可塑性繊維がムラなく吸着層(1)に融着して、境界層(16)を介して吸着層(1)とバインダ層(2)とが均一な接着強度で接着され一体化された吸着材(10’)が得られる。図3に示す吸着材(10’)の周囲から被処理液体を吸着材(10’)内に導入すると、被処理液体は、吸着材(10’)内に均一に流れ、吸着材(10’)全体で吸着処理を行うことができる。
第2の実施の形態で被処理液体が吸着材(10’)全体にわたり均一に流動するメカニズムは、図2について説明した第1の実施の形態と同様である。また、第2の実施の形態では、筒状体の外部から空洞部(21)に向けて径方向内側に被処理液体を流動させると、流入面積の大きい外周面(32’)全体から被処理液体を吸着材(10’)に流入させて、バインダ層(2)に沿って吸着層(1)内を被処理液体が流動するので、詰まりによる圧力損失を抑制することができる。
第1及び第2の実施の形態に本発明の最良の実施の形態を示したが、本発明では、これらに限定されない。例えば、ニードル(3)の挿通により貫通孔(17)を形成する代わりに、ジェット水流を噴射させて、水流交絡により貫通孔を形成しても良い。
本発明による吸着材(10,10’)の通液試験を行った実施例を以下説明する。
[実施例1]
吸着ウェブの製造
N−カルボキシメチル化ポリアリルアミンを含む金属吸着繊維と、ポリプロピレン(芯部)−エチレンビニルアルコール(鞘部)からなる芯鞘複合繊維(「ダイワボウNBF(E)」ダイワボウポリテック社製)とを重量比8対2の割合で混綿し、その後開繊してカード機に投入しシートを形成した。次に、第1のニードルパンチ工程により、シートの上下面両方から針深さ13mm、針密度120本/cm2の複数のニードル(3)をそれぞれ穿孔して、金属吸着繊維間、芯鞘複合繊維間及び金属吸着繊維−芯鞘複合繊維間をそれぞれ三次元的に絡ませて、更に、温度110℃で3秒間ローラプレスを行い、厚さ2mm、目付量350g/m2の吸着ウェブ(11)を形成した。
単位積層体の製造
バインダウェブ(12)として使用する厚さ0.8mmのポリアミド熱接着性不織布(「スパンファブPA1541」日東紡社製)の上に前記吸着ウェブ(11)をベルトコンベア上で重ね合わせた後、針深さ12mm、針密度80本/cm2の複数のニードル(3)を吸着層(1)側からのみ、吸着層(1)及びバインダ層(2)に厚さ方向に挿通しかつ引き抜く第2のニードルパンチ工程を実施した。本工程により、吸着層(1)の金属吸着繊維とバインダ層(2)の熱可塑性繊維とを交絡させると共に、吸着層(1)及びバインダ層(2)の積層方向に貫通する貫通孔(17)と、起毛繊維(6)とを形成して単位積層体(4,4’)を得た。
他方、バインダウェブ(12)として使用する厚さ0.8mmのポリアミド熱接着性不織布(「スパンファブPA1541」日東紡社製)の上に前記吸着ウェブ(11)をベルトコンベア上で重ね合わせ、ローラプレスを行っただけのニードルパンチ工程を実施しない単位積層体を得た。
吸着材の製造
得られた厚さ2mmの前記単位積層体(4,4’)を43枚積層し、圧密化装置を用いて、180℃に加熱しながら120分間積層方向に原形から半分の43mmまで圧縮し冷却して、更に、立方体状に切断して1辺43mmの図1に示す吸着材(10)を得た。
得られた厚さ2mmのニードルパンチ工程を実施しない前記単位積層体を43枚積層し、圧密化装置を用いて、180℃に加熱しながら120分間積層方向に原形から半分の43mmまで圧縮し冷却して、更に、立方体状に切断して1辺43mmの図11に示す従来の吸着材(60)を得た。
通液試験1
得られた前記2つの吸着材(10,60)を図9及び図10のようにハウジング(45)内に配置し、試験溶液A(イオン交換水に硫酸銅五水和物を溶解し、酢酸アンモニウム溶液によりpH5.5に調製した50mg/L銅水溶液)を矢印(31,81)方向、即ち、吸着材(10)では積層方向に対し直角方向に通液し(実施例1)、吸着材(60)では積層方向に通液した(比較例1)。実施例1及び比較例1について、試験溶液Aの流量をそれぞれ0.15、0.3、0.6及び1.0L/分で通液したときの通液開始30分後の各圧力損失値を測定した。
通液試験1の結果
試験溶液Aの各流量に対する圧力損失値の測定結果をプロットしたグラフを図13に示す。図13より、従来の吸着材(60)を使用し積層方向に通液した比較例1に比べ、本発明による吸着材(10)を使用し積層方向と直角方向に通液した実施例1は、圧力損失値が明らかに小さい値を示し、流量が増加するに従い、比較例1の圧力損失が大幅に増大することが判明した。例えば、1.0L/minの流量では、比較例1が70kPaであるのに対し、本発明の実施例1は30kPaに満たない。
[実施例2]
筒状吸着材の製造
前記実施例1で得られた厚さ2mmの単位積層体(4,4’)をトムソン刃により、内径34mm、外形77mmのドーナツ状に切断して、中抜き形状の単位積層体(4’)を形成した。続いて、中抜き形状の単位積層体(4’)を250枚積層し、圧密化装置により120℃で加熱しながら60分間圧縮し冷却して、積層方向厚さ248mmの筒状吸着材(10’)(積層型)を得た。
他方、前記実施例1で得られた厚さ2mmのニードルパンチ工程を実施しない単位積層体を幅248mmに切断して、円柱体(外径34mm)の回りを圧縮しながら単位積層体を3.8m巻き回して筒状体を形成し、圧密化装置を用い120℃で加熱しながら60分間圧縮し冷却して、図12に示す筒状吸着材(60’)(巻回型)を得た。巻回型筒状吸着材(60’)は、積層型筒状吸着材(10’)と同一量の単位積層体を使用し、同一外形及び質量である。
通液試験2
積層型筒状吸着材(10’)をカートリッジ内に配置し、外表面(32’)から内表面(33’)の方向に前記試験溶液A(50mg/L銅水溶液)を通液し(実施例2)、一方、巻回型筒状吸着材(60’)をカートリッジ内に配置し、外表面(82’)から内表面(83’)の方向に試験溶液Aを通液し(比較例2)、それぞれ金属除去特性の試験を行った結果を図14のグラフに示す。図14の横軸に示す飽和に対する吸着率[%]は、筒状吸着材(10’,60’)に含有する吸着成分(N−カルボキシメチル化ポリアリルアミン)の理論吸着量に対する実際の吸着量の割合を表す。
通液試験2の結果
図14より、積層型筒状吸着材(10’)では、飽和に対する吸着率が60%を超えるまで、金属除去率が100%を維持し試験溶液A中の銅成分をほぼ全て除去した。また、飽和に対する吸着率が85%を超えてもなお、金属除去率が50%以上を維持した。従って、本発明による積層型筒状吸着材(10’)を用いた実施例2では、飽和に近い吸着率(85%)でも継続的に吸着処理に使用でき、積層型筒状吸着材(10’)全体を使用して銅の吸着処理が行われ、銅の吸着能が長時間持続することを確認できた。
一方、巻回型筒状吸着材(60’)では、飽和に対する吸着率が5%以下の時点で金属除去率が100%を下回り、試験溶液A中の銅成分が既に処理液に抜け出し、飽和に対する吸着率が47%のとき、金属除去率が50%を下回った。従って、従来技術の巻回型筒状吸着材(60’)を用いた比較例2では、溶液と十分に接触しない金属吸着繊維が存在し、巻回型筒状吸着材(60’)の一部でしか銅の吸着処理が行われていないことを確認できた。
通液試験2の終了後、積層型筒状吸着材(10’)及び巻回型筒状吸着材(60’)を切断した断面図を図15に示す。図15(a)の本発明による積層型筒状吸着材(10’)は、全体にわたって被処理液体が均一に分散して流動したことを示し、金属の吸着性能を長期間持続できたことの証左となる。これに対し、図15(b)の巻回型筒状吸着材(60’)は、一部の特定の流路を形成し、その流路のみで被処理液体が流動するブレイクスルーを生じたため、被処理液体が流動しないデッドエリアが形成され、短時間で金属を吸着できなくなったことが明確に分かる。
本発明の吸着材及びその製法は、レアメタル及び有価金属のリサイクル技術だけでなく、工場廃液処理、飲料水製造、純水製造、大気汚染浄化にも適用可能である。
(1)・・吸着層、 (2)・・バインダ層、 (3)・・ニードル(3)、 (3a)・・かえし、 (4,4’)・・単位積層体(4,4’)、 (4a又は4b)・・一方の主面、 (11)・・吸着ウェブ、 (12)・・バインダウェブ、 (16)・・境界層、 (17)・・貫通孔、 (21)・・空洞部、

Claims (13)

  1. 被処理液体中に含まれる特定の金属を吸着する金属吸着繊維を含む複数の吸着層と、複数の吸着層間に配置され、加熱溶融されて隣り合う吸着層間を結合する複数のバインダ層と、吸着層とバインダ層との間に形成される境界層とを有する積層体を備え、
    積層体の積層方向に吸着層とバインダ層とを貫通する複数の貫通孔が形成され、
    境界層は、金属吸着繊維と、金属吸着繊維に融着した熱可塑性繊維とを含み、
    複数の貫通孔は、バインダ層より大きい積層方向の厚さを有する境界層を積層方向に貫通し、
    積層体の積層方向に対して実質的に直角方向に積層体内に導入される被処理液体は、貫通孔を通じて流動することを特徴とする吸着材。
  2. 筒状に形成される積層体は、吸着層、バインダ層及び境界層を積層方向に貫通する空洞部を有し、
    積層体の積層方向に対し実質的に直角に外部から積層体内に被処理液体が導入される請求項1に記載の吸着材。
  3. 吸着層は、金属吸着繊維70〜90重量%を含む請求項1又は2に記載の吸着材。
  4. 金属吸着繊維は、ポリアリルアミン、ポリアリルアミンの誘導体、ポリエチレンイミン及びポリエチレンイミンの誘導体から選択される1種又は2種以上を含む請求項1〜3の何れか1項に記載の吸着材。
  5. 積層される一対の吸着層とバインダ層に形成される複数の貫通孔は、隣接する吸着層とバインダ層に形成される複数の貫通孔とは異なる位置に形成される請求項1〜4の何れか1項に記載の吸着材。
  6. 被処理液体中に含まれる特定の金属を吸着する金属吸着繊維を含む吸着層と熱可塑性繊維を含むバインダ層とが積層した単位積層体を形成する工程と、
    複数の突起状のかえしを有するニードルを単位積層体に挿通しかつ引き抜くことにより、吸着層の金属吸着繊維とバインダ層の熱可塑性繊維とを交絡させて吸着層とバインダ層とを結合すると同時に、積層方向に貫通する貫通孔を単位積層体に形成する工程と、
    吸着層とバインダ層とを接触させて複数の単位積層体を積層することにより積層体を形成する工程と、
    加熱下で積層体に積層方向の圧力を加えることにより、積層体内のバインダ層の熱可塑性繊維を溶融して隣り合う吸着層間を融着すると同時に、積層体を圧密化する工程とを含むことを特徴とする吸着材の製法。
  7. 貫通孔を単位積層体に形成する工程は、複数の突起状のかえしを有するニードルを単位積層体に積層方向に挿通しかつ引き抜くことにより、単位積層体の一方の主面から毛羽立つ熱可塑性繊維又は金属吸着繊維を含む起毛繊維を形成する工程を含み、
    積層体を圧密化する工程は、起毛繊維と金属吸着繊維又は熱可塑性繊維とを融着することにより、吸着層とバインダ層との間に、積層方向に貫通する複数の貫通孔を有する境界層を形成する工程を含み、
    境界層は、バインダ層より大きい積層方向の厚さを有する請求項6に記載の吸着材の製法。
  8. 単位積層体を切断して中抜き形状の単位積層体を形成する工程を含み、
    吸着層、バインダ層及び境界層の各内部に空洞部を有する筒状体を形成する請求項7に記載の吸着材の製法。
  9. 吸着層は、金属吸着繊維70〜90重量%を含む請求項6〜8の何れか1項に記載の吸着材の製法。
  10. 金属吸着繊維は、ポリアリルアミン、ポリアリルアミンの誘導体、ポリエチレンイミン及びポリエチレンイミンの誘導体から選択される1種又は2種以上を含む請求項6〜9の何れか1項に記載の吸着材の製法。
  11. 請求項6〜10の何れか1項に記載の製法により製造される吸着材の積層体の積層方向に対して実質的に直角方向に被処理液体を吸着材内に導入する過程と、吸着層の金属吸着繊維により被処理液体中に含まれる特定の金属を吸着する過程とを含むことを特徴とする吸着法。
  12. 積層体の積層方向に対して実質的に直角方向に吸着材内に被処理液体を導入する過程と、
    バインダ層の平面に沿って被処理液体を吸着層及び貫通孔内で流動させる過程とを含む請求項11に記載の吸着法。
  13. 積層体の積層方向に対して実質的に直角方向に吸着材内に被処理液体を導入する過程と、
    貫通孔に達する被処理液体の方向を実質的に90°偏向して貫通孔内を流動させる過程と、
    更に流動方向を実質的に90°偏向させて貫通孔の長さ方向全体から吸着層の積層方向全体に被処理液体を分散させる過程とを含む請求項11又は12に記載の吸着法。
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