JP5996990B2 - 薬剤溶出型フィルム製剤及びその製造方法 - Google Patents

薬剤溶出型フィルム製剤及びその製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP5996990B2
JP5996990B2 JP2012212521A JP2012212521A JP5996990B2 JP 5996990 B2 JP5996990 B2 JP 5996990B2 JP 2012212521 A JP2012212521 A JP 2012212521A JP 2012212521 A JP2012212521 A JP 2012212521A JP 5996990 B2 JP5996990 B2 JP 5996990B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
film
nanoparticle
layer
drug
water
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2012212521A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2014065681A (ja
Inventor
愛子 笹井
愛子 笹井
雄亮 塚田
雄亮 塚田
香織 松▲崎▼
香織 松▲崎▼
辻本 広行
広行 辻本
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Hosokawa Micron Corp
Original Assignee
Hosokawa Micron Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Hosokawa Micron Corp filed Critical Hosokawa Micron Corp
Priority to JP2012212521A priority Critical patent/JP5996990B2/ja
Publication of JP2014065681A publication Critical patent/JP2014065681A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5996990B2 publication Critical patent/JP5996990B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Medicinal Preparation (AREA)

Description

本発明は、生体内の臓器や組織に貼り付けて薬剤を疾患部位に送達する生体貼付用の機能性フィルムに関し、特に生体適合性の高分子に生理活性物質を封入した生体適合性ナノ粒子が分散された薬剤溶出型フィルム製剤、及びその製造方法に関するものである。
近年、薬剤を含有する生体適合性のフィルムを生体内の臓器に直接貼り付ける治療方法が普及しつつある。例えば、特許文献1には、ポリ乳酸・グリコール酸共重合体で形成された薬物含有ナノ粒子を分散させた水溶性のポリビニルアルコール(PVA)フィルム製剤が開示されている。また、特許文献2には、少なくとも1種の疎水性ポリマーを含む第一の層と、少なくとも1種の水溶性治療剤を含む第二の層とを備える、自己支持型多層フィルムが開示されている。
また、特許文献3には、エオシン化ゼラチン等の可視光架橋物質と、ハイドロゲンドナーと、抗腫瘍剤とを含む水溶液を面状に展延し、可視光を照射することにより光架橋・不溶化した抗がん剤徐放シートが開示されている。
特開2011−245293号公報 特開2012−87122号公報 特開2006−335657号公報
このようなフィルム製剤においては、疾患部位への薬物送達を行うドラッグ・デリバリー・システム(DDS)機能を発揮するために、フィルム自体が吸水して溶解し、フィルム内のナノ粒子が外部に放出される必要がある。一方、フィルムはある程度長期間に亘って疾患部位に固定されている必要がある。
しかし、特許文献1のような水溶性のフィルムを臓器に貼り付けた場合、生体内の水分によってフィルムが短期間で溶解して貼付部位から剥がれ落ちてしまい、DDS機能を長期間に亘って発揮できないという問題点があった。
一方、特許文献2に記載の自己支持型多層フィルムは、ポリグリコリドとε−カプロラクトンとのコポリマーのような疎水性ポリマーを基材としている。そのため、特許文献2のフィルム内にナノ粒子を分散させたとしても、ナノ粒子がフィルムから円滑に放出されず、十分なDDS機能を発揮できないおそれがあった。
また、特許文献3に記載の抗がん剤徐放シートは、基材としてエオシン等のキサンテン系色素で修飾されたゼラチンを使用する必要があるため、製造コスト面で不利となる。また、キサンテン系色素による修飾や可視光の照射の程度によってはゼラチンが過度に難溶化してゼラチンの生分解性が損なわれてしまい、薬剤の放出性、人体に対する安全性が低下するという問題点があった。
本発明は、上記問題点に鑑み、生理活性物質が封入された生体適合性ナノ粒子を細胞内へ効率良く到達させることができ、且つ、ある程度長期間に亘って疾患部位に固定可能な薬剤溶出型フィルム製剤を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために本発明の第1の構成は、生体適合性の水溶性高分子で形成されたフィルムと、該フィルム内に分散され、生理活性物質が封入された生体適合性ナノ粒子と、を含む薬剤溶出型フィルム製剤であって、前記フィルムは、一方の面にポリカルボン酸層をカチオン性高分子の水溶液、若しくは2価以上の無機塩の水溶液で難水溶化処理して形成される第1層を有し、他方の面に前記ポリカルボン酸以外の水溶性高分子で形成される第2層を有する多層構成であり、前記生体適合性ナノ粒子が、前記第2層のみに分散されていることを特徴としている。
また本発明の第の構成は、上記構成の薬剤溶出型フィルム製剤において、前記カチオン性高分子が、キトサンであることを特徴としている。
また本発明の第の構成は、上記構成の薬剤溶出型フィルム製剤において、前記無機塩が、炭酸カルシウム、塩化カルシウムから選ばれた1種以上であることを特徴としている。
また本発明の第の構成は、上記構成の薬剤溶出型フィルム製剤において、前記ポリカルボン酸が、アルギン酸であることを特徴としている。
また本発明の第の構成は、上記構成の薬剤溶出型フィルム製剤において、前記生体適合性ナノ粒子が、乳酸・グリコール酸共重合体で形成されることを特徴としている。
また本発明の第の構成は、上記構成の薬剤溶出型フィルム製剤において、前記生理活性物質が、抗がん剤、免疫抑制剤、抗炎症剤、鎮痛剤、血管拡張剤、癒着防止剤、核酸化合物、受容体チロシンキナーゼ阻害剤から選ばれた1種以上であることを特徴としている。
また本発明は、ポリビニルアルコールを溶解させた水溶液に、少なくとも生理活性物質の溶液と生体適合性高分子を有機溶媒に溶解させた溶液との混合液を加えて、前記生理活性物質が前記生体適合性高分子中に封入された生体適合性ナノ粒子を形成するナノ粒子形成工程と、生体適合性の水溶性高分子の水溶液に前記生体適合性ナノ粒子を分散させてシート状に展延することによりナノ粒子含有水溶性フィルムを形成し、該ナノ粒子含有水溶性フィルムの片面にポリカルボン酸の水溶液を塗布して多層構成のナノ粒子含有フィルムを形成するフィルム形成工程と、前記ナノ粒子含有フィルムの片面のポリカルボン酸層をカチオン性高分子の水溶液、若しくは2価以上の無機塩の水溶液で処理することにより、前記ナノ粒子含有フィルムの一方の面に難水溶性の第1層を形成する難水溶化工程と、方の面に前記第1層が形成され、他方の面に前記生体適合性ナノ粒子が分散された水溶性の第2層が形成された前記ナノ粒子含有フィルムを乾燥させる乾燥工程と、を有することを特徴とする薬剤溶出型フィルム製剤の製造方法である。
本発明の第1の構成によれば、生理活性物質が封入された生体適合性ナノ粒子を生体適合性の水溶性高分子で形成されたフィルム内に分散させたフィルムの片面を難水溶化処理することにより、一方の面に難水溶性の第1層が形成され、他方の面に水溶性の第2層が形成された薬剤溶出型フィルム製剤としたので、第2層を生体組織に対向させてフィルムを貼り付けることで、生体内の水分によって第2層が徐々に溶解し、第2層から放出したナノ粒子が生体組織内へ取り込まれ、生体組織内でナノ粒子内部から生理活性物質が徐放される。また、難水溶性の第1層によってある程度長期間に亘りフィルム形状が保持されるため、DDS機能を長期間に亘って発揮することができる。さらに、第1層側からのナノ粒子の放出が規制されるため、ナノ粒子を生体組織に面した第2層側から効率良く放出させることができる。このようにして、フィルムから放出されたナノ粒子の浸透方向を生体組織側に限定することができるため、副作用の低減にもつながる。また、フィルムを片面にポリカルボン酸層を有する多層構成とし、ポリカルボン酸層をカチオン性高分子の水溶液、若しくは2価以上の無機塩の水溶液で難水溶化処理することにより、難水溶性の第1層と水溶性の第2層とが形成された薬剤溶出型フィルム製剤を容易に且つ低コストで製造することができる。また、フィルム全体をカチオン性高分子の水溶液、若しくは無機塩の水溶液に浸漬しても、ポリカルボン酸層のみが難水溶化されて第1層を形成するため、第2層の層厚を一定に保持可能となる。従って、第2層からのナノ粒子の放出時間も確保でき、難水溶化処理法の選択範囲も広くなる。さらに、生体適合性ナノ粒子を、フィルムの第2層のみに分散させることにより、ナノ粒子の放出に寄与しない第1層にはナノ粒子が分散されず、ナノ粒子の放出に寄与する第2層のみにナノ粒子が分散された、フィルム内からのナノ粒子の放出効率の高い薬剤溶出型フィルム製剤となる。
また、本発明の第の構成によれば、上記第1の構成の薬剤溶出型フィルム製剤において、カチオン性高分子として生分解性のキトサンを用いることにより、生体への悪影響がなく、安全性の高い薬剤溶出型フィルム製剤となる。
また、本発明の第の構成によれば、上記第の構成の薬剤溶出型フィルム製剤において、無機塩として炭酸カルシウム、塩化カルシウムから選ばれた1種以上を用いることにより、生体への悪影響がなく、安全性の高い薬剤溶出型フィルム製剤となる。
また、本発明の第の構成によれば、上記第乃至第のいずれかの構成の薬剤溶出型フィルム製剤において、ポリカルボン酸としてアルギン酸を用いることにより、生分解性、生体に対する安全性の面で特に優れた薬剤溶出型フィルム製剤となる。
また、本発明の第の構成によれば、上記第1乃至第のいずれかの構成の薬剤溶出型フィルム製剤において、生体適合性ナノ粒子が、乳酸・グリコール酸共重合体で構成されることにより、生体への刺激・毒性が低く、且つ乳酸・グリコール酸共重合体の分解により生理活性物質の徐放が可能な薬剤溶出型フィルム製剤となる。
また、本発明の第の構成によれば、上記第1乃至第のいずれかの構成の薬剤溶出型フィルム製剤において、生理活性物質として、抗がん剤、免疫抑制剤、抗炎症剤、鎮痛剤、血管拡張剤、癒着防止剤、核酸化合物、受容体チロシンキナーゼ阻害剤から選ばれた1種以上を用いることにより、生体内の臓器や組織への貼り付けによって種々の疾病に有効な治療用ツールとなる薬剤溶出型フィルム製剤を提供可能となる。
また、本発明によれば、片面にポリカルボン酸層を有する多層構成のナノ粒子含有フィルムのポリカルボン酸層をカチオン性高分子の水溶液、若しくは2価以上の無機塩の水溶液で処理してナノ粒子含有フィルムの一方の面に難水溶性の第1層を形成し、他方の面に水溶性の第2層を形成した後、乾燥させることにより、生理活性物質を細胞内へ効率良く、且つ長期間に亘って送達可能であり、取り扱い性にも優れた薬剤溶出型フィルム製剤を簡便且つ低コストで製造することができる。
ポリカルボン酸の単層構成である本発明の薬剤溶出型フィルム製剤1を、生体内の疾患部位4に貼り付けた状態を模式的に示す断面図 片面にポリカルボン酸を有する多層構成である本発明の薬剤溶出型フィルム製剤1を、生体内の疾患部位4に貼り付けた状態を模式的に示す断面図 試験例1における、実施例1及び比較例1、3のPLGAナノ粒子含有アルギン酸フィルムを寒天培地に貼り付けた5分後の状態を示す写真 試験例1における、比較例2のPLGAナノ粒子含有PVAフィルムを寒天培地に貼り付けた5分後の状態を示す写真 試験例2における、実施例1、2及び比較例1のPLGAナノ粒子含有アルギン酸フィルムを寒天培地に貼り付けた直後の状態を示す写真 試験例2における、実施例1、2及び比較例1のPLGAナノ粒子含有アルギン酸フィルムを寒天培地に貼り付けた後、1時間経過した状態を示す写真 試験例2における、実施例1、2及び比較例1のPLGAナノ粒子含有アルギン酸フィルムを寒天培地に貼り付けた後、6時間経過した状態を示す写真 試験例2における、実施例1、2及び比較例1のPLGAナノ粒子含有アルギン酸フィルムを寒天培地に貼り付けた後、24時間経過した状態を示す写真
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。本発明の薬剤溶出型フィルムの製造方法は、脂溶性、或いは親水性の生理活性物質を封入した生体適合性ナノ粒子を形成する工程と、ナノ粒子を分散させた水溶性高分子の水溶液をシート状に展延することによりナノ粒子含有フィルムを形成するフィルム形成工程と、ナノ粒子含有フィルムの片面を難水溶化処理する難水溶化工程と、難水溶化処理されたナノ粒子含有フィルムを乾燥させる乾燥工程とを含むものである。
ナノ粒子含有フィルムの片面を難水溶化処理することにより、水溶性高分子で形成された薬剤溶出型フィルムを生体内の臓器や組織に貼り付けたとき、ある程度の期間はフィルムの形状が保持される。また、難水溶化処理された面を外側にして薬剤溶出型フィルムを貼り付けることで、水溶性のフィルム内面側から疾患部位へのナノ粒子の放出は維持しつつ、難水溶性のフィルム外面側からのナノ粒子の放出を抑制することができる。その結果、フィルム内から徐放されるナノ粒子を長期間に亘って疾患部位へ効率良く送達することができる。以下、ナノ粒子内部への生理活性物質の封入工程からフィルムの乾燥工程までを順を追って説明する。
(ナノ粒子形成工程)
本発明に用いられる生体適合性ナノ粒子は、生理活性物質及び生体適合性高分子を1,000nm未満の平均粒径を有するナノ単位の大きさの粒子(ナノスフェア)に加工することができる球形晶析法を用いて、ナノ粒子の内部に生理活性物質を封入することにより製造される。球形晶析法は高剪断力を発生しない粒子調製法であるため、特に、生理活性物質が外部応力に弱い核酸化合物等の場合にも好適に用いることができる。
球形晶析法は、化合物合成の最終プロセスにおける結晶の生成・成長プロセスを制御することで、球状の結晶粒子を設計し、その物性を直接制御して加工することができる方法である。この球形晶析法の一つに、エマルジョン溶媒拡散法(ESD法)がある。
ESD法は、次に示すような原理によって、ナノスフェアを製造する技術である。本法には、生理活性物質を封入する基剤ポリマーとなるPLGA(乳酸・グリコール酸共重合体)等を溶解できる良溶媒と、これとは逆にPLGAを溶解しない貧溶媒の二種類の溶媒が用いられる。この良溶媒には、PLGAを溶解し、且つ貧溶媒へ混和するアセトン等の有機溶媒を用いる。そして、貧溶媒には、通常、ポリビニルアルコール水溶液等を用いる。
操作手順としては、まず、良溶媒中にPLGAを溶解後、このPLGAが析出しないように、生理活性物質の溶解液を良溶媒中へ添加混合する。このPLGAと生理活性物質の混合液を、貧溶媒中に攪拌下、滴下すると、混合液中の良溶媒(有機溶媒)が貧溶媒中へ急速に拡散移行する。その結果、貧溶媒中で良溶媒の自己乳化が起き、サブミクロンサイズの良溶媒のエマルジョン滴が形成される。さらに、良溶媒と貧溶媒の相互拡散により、エマルジョン内から有機溶媒が貧溶媒へと継続的に拡散していくので、エマルジョン滴内のPLGA並びに生理活性物質の溶解度が低下し、最終的に、生理活性物質を包含した球形結晶粒子のPLGAナノスフェアが生成する。
上記球形晶析法では、物理化学的な手法でナノ粒子を形成でき、しかも得られるナノ粒子が略球形であるため、均質なナノ粒子を、触媒や原料化合物の残留といった問題を考慮する必要がなく、容易に形成することができる。
なお、ナノ粒子内に封入される生理活性物質が、水溶液中で負の電荷を持つアニオン分子として存在するアニオン性薬物であるときは、貧溶媒にカチオン性高分子を添加すると、ナノ粒子内部への生理活性物質の封入率を高めることができる。通常、封入される生理活性物質が親水性(水溶性)の場合、良溶媒中に分散混合した生理活性物質が貧溶媒中に漏出、溶解してしまい、ナノ粒子を形成する高分子だけが沈積するため、生理活性物質がほとんど封入されないが、カチオン性高分子を貧溶媒中に添加した場合は、ナノ粒子表面に吸着したカチオン性高分子がエマルション滴表面に存在するアニオン性薬物と相互作用し、貧溶媒中へのアニオン性薬物の漏出を抑制できるものと考えられる。
さらに、貧溶媒中にカチオン性高分子を添加することにより、ナノ粒子表面を正に帯電させてアニオン性薬物をナノ粒子表面に静電気的に担持させることもできる。具体的には、形成されたナノ粒子の表面がカチオン性高分子により修飾(被覆)され、ナノ粒子表面のゼータ電位が正となる。その後、凍結乾燥によりナノ粒子を複合化する際に、アニオン性薬物をさらに添加することにより、水溶液中で負の電荷を持つアニオン分子となったアニオン性薬物が静電気的相互効果によりナノ粒子表面に所定量担持される。これにより、アニオン性薬物の、ナノ粒子内部及び表面への担持を合わせたトータルの封入率を高めることができる。
カチオン性高分子としては、キトサン及びキトサン誘導体、セルロースに複数のカチオン基を結合させたカチオン化セルロース、ポリエチレンイミン、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン等のポリアミノ化合物、ポリオルニチン、ポリリジン等のポリアミノ酸、ポリビニルイミダゾール、ポリビニルピリジニウムクロリド、アルキルアミノメタクリレート4級塩重合物(DAM)、アルキルアミノメタクリレート4級塩・アクリルアミド共重合物(DAA)等が挙げられるが、特にキトサン或いはその誘導体が好適に用いられる。
キトサンは、エビやカニ、昆虫の外殻に含まれる、アミノ基を有する糖の1種であるグルコサミンが多数結合したカチオン性の天然高分子であり、乳化安定性、保形性、生分解性、生体適合性、抗菌性等の特徴を有するため、化粧品や食品、衣料品、医薬品等の原料として広く用いられている。このキトサンを貧溶媒中に添加することにより、生体への悪影響がなく、安全性の高いナノ粒子を製造することができる。
なお、カチオン性高分子の中でもカチオン性のより強いものを用いることにより、ゼータ電位がより大きな正の値となるため、後述するナノ粒子付着工程での電気的吸着力が増大するとともに、粒子間の反発力が強くなって懸濁液中での粒子の安定性も高くなる。例えば、元来カチオン性であるキトサンの一部を第4級化することで、さらにカチオン性を高めた塩化N−[2−ヒドロキシ−3−(トリメチルアンモニオ)プロピル]キトサン等のキトサン誘導体(カチオニックキトサン)を用いることが好ましい。
また、良溶媒中でのアニオン性薬物の親和性及び分散安定性を向上させるため、良溶媒中にDOTAP等のカチオン性脂質を添加し、アニオン性薬物と複合体を形成させても良い。但し、細胞内において放出されたカチオン性脂質により細胞障害性を示すおそれがあるため、添加量には注意が必要である。
上記球形晶析法で用いられる良溶媒および貧溶媒の種類は、ナノ粒子内に封入される生理活性物質の種類等に応じて決定されるものであり、特に限定されるものではないが、生体適合性ナノ粒子は、人体内へ留置される薬剤溶出型フィルムの材料として用いられるため、人体に対して安全性が高く、且つ環境負荷の少ないものを用いる必要がある。
このような貧溶媒としては、水、或いは界面活性剤を添加した水が挙げられるが、例えば界面活性剤としてポリビニルアルコールを添加したポリビニルアルコール水溶液が好適に用いられる。ポリビニルアルコール以外の界面活性剤としては、レシチン、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等が挙げられる。
良溶媒としては、低沸点且つ難水溶性の有機溶媒であるハロゲン化アルカン類、アセトン、メタノール、エタノール、エチルアセテート、ジエチルエーテル、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン等が挙げられるが、例えば環境や人体に対する悪影響が少ないアセトン、若しくはアセトンとエタノールの混合液が好適に用いられる。
ポリビニルアルコール水溶液の濃度、或いはアセトンとエタノールの混合比や、結晶析出時の条件も特に限定されるものではなく、目的となる生理活性物質の種類や、球形造粒結晶の粒径(本発明の場合ナノオーダー)等に応じて適宜決定すればよいが、ポリビニルアルコール水溶液の濃度が高いほどナノ粒子表面へのポリビニルアルコールの付着が良好となり、乾燥後の水への再分散性が向上する反面、ポリビニルアルコール水溶液の濃度が所定以上になると、貧溶媒の粘度が上昇して良溶媒の拡散性に悪影響を与える。
そのため、ポリビニルアルコールの重合度やけん化度によっても異なるが、ナノ粒子形成後に有機溶媒を留去し、さらに凍結乾燥等により一旦粉末化する場合は、ポリビニルアルコール水溶液の濃度として0.1重量%以上10重量%以下が好ましく、2%程度がより好ましい。なお、ナノ粒子形成後の懸濁液から有機溶媒を留去した後、遠心分離操作によってポリビニルアルコールを除去せずにそのままフィルム形成工程に用いる場合は0.5重量%以下とすることが好ましく、0.1重量%程度が特に好ましい。
本発明に用いられる生体適合性高分子は、生体への刺激・毒性が低く、生体適合性で、投与後分解して代謝される生体内分解性のものが望ましい。また、内包する生理活性物質を持続して徐々に放出する粒子であることが好ましい。このような素材としては、特に乳酸・グリコール酸共重合体(PLGA)を好適に用いることができる。
PLGAの分子量は、5,000〜200,000の範囲内であることが好ましく、15,000〜25,000の範囲内であることがより好ましい。PLGAの乳酸とグリコール酸との組成比は1:99〜99:1であればよいが、乳酸1に対しグリコール酸0.333であることが好ましい。また、乳酸およびグリコール酸の含有量が25重量%〜65重量%の範囲内であるPLGAは、非晶質であり、且つアセトン等の有機溶媒に可溶であるから、好適に使用される。
生体内分解性の生体適合性高分子としては、ほかに、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ乳酸(PLA)等が挙げられる。また、アミノ酸のような荷電基あるいは官能基化し得る基を有していてもよい。
なお、封入される生理活性物質が親水性(水溶性)の場合、PLGAの表面をポリエチレングリコール(PEG)で修飾したもの(以下、PEG−PLGAという)を用いると、親水性の生理活性物質とPLGAとの親和性が向上し、封入が容易になるため好ましい。
上記以外の生体適合性高分子としては、セルロースおよび他の多糖類、ならびにペプチドまたはタンパク質、あるいはそれらのコポリマーまたは混合物が挙げられる。
その後、得られたナノ粒子の懸濁液をそのまま、或いは必要に応じて良溶媒である有機溶媒を減圧留去し(溶媒留去工程)、遠心分離操作によって余剰のポリビニルアルコールを除去し、さらに必要に応じて凍結乾燥等によりナノ粒子を一旦粉末化させた後、再度水に分散させて次のナノ粒子付着工程に用いる。ナノ粒子を懸濁液のまま次工程に用いる場合は、凍結乾燥等を行う必要がなくなり、製造工程が簡略化できるとともに、貧溶媒中へのポリビニルアルコールの添加量も低減できるため好ましい。
なお、ナノ粒子を一旦粉末化する場合、結合剤(例えばトレハロース等)と共に再分散可能な凝集粒子に複合化して複合粒子としておけば、使用前まではナノ粒子が集まった、取り扱いやすい凝集粒子となっており、使用時に水分に触れることで結合剤が溶解して再分散可能なナノ粒子に復元できるため好ましい。
本発明に用いられる生体適合性ナノ粒子は、1,000nm未満の平均粒子径を有するものであれば特に制限はないが、フィルムが貼り付けられる疾患部位に生理活性物質を導入するためナノ粒子を細胞内に取り込ませる必要がある。標的細胞内への浸透効果を高めるためには、平均粒子径を500nm以下とすることが好ましく、100nm以下がより好ましい。
生体適合性ナノ粒子に封入される生理活性物質としては、抗がん剤、免疫抑制剤、抗炎症剤、鎮痛剤、血管拡張剤、癒着防止剤、核酸化合物、受容体チロシンキナーゼ阻害剤等が挙げられるが、これらの物質に限定されるものではない。なお、上記生理活性物質のうち何れか1種のみを封入しても良いが、効能や作用機序の異なる成分を複数種封入しておけば、各成分の相乗効果により薬効の促進が期待できる。
ナノ粒子内部への生理活性物質の封入量は、ナノ粒子形成時に添加する生理活性物質の量やカチオン性高分子の種類及び添加量の調整、ナノ粒子を形成する生体適合性高分子の種類により調整可能である。
(フィルム形成工程)
次に、生理活性物質が封入された生体適合性ナノ粒子を含むナノ粒子含有フィルムを形成する方法について説明する。操作手順としては、先ず、生体適合性の水溶性高分子を水に溶解して水溶液を調製する。次に、水溶性高分子の水溶液中にナノ粒子を分散させた後、シート状に展延し、乾燥して固化させる。
ナノ粒子を分散させた水溶性高分子の水溶液をシート状に展延する方法としては、例えば水溶液を成形型に流し込んで固化させる方法や、刷毛やへら、バーコート等により水溶液を基板上に塗布して固化させる方法が挙げられる。また、水溶液の粘度が高い場合はスリット状のノズル口からシート状に押し出すようにして展延させることもできる。
生分解性の水溶性高分子としては、後述する難水溶化処理を容易に行うことのできるポリカルボン酸が好ましく、海藻(褐藻類)からの抽出により製造されるアルギン酸が生分解性、生体に対する安全性の面で特に好ましい。これらの水溶性高分子の種類や分子量等を適宜選択することにより、フィルム内に分散させたナノ粒子の放出速度を制御可能となる。アルギン酸の水溶液を用いてフィルムを形成する場合、アルギン酸の濃度は1〜10重量%が好ましく、2〜5重量%がより好ましい。
或いは、片面にポリカルボン酸層を有する多層構成のナノ粒子含有フィルムとすることもできる。具体的には、フィルムの一方の面をポリカルボン酸層で形成し、他方の面をポリカルボン酸以外の生体適合性の水溶性高分子(例えば、ポリビニルアルコールや、ヒアルロン酸等の生体内に存在するムコ多糖類)で形成する。このような多層構成のフィルムを用いた場合、ポリカルボン酸層は難水溶化処理されるため、ナノ粒子の放出にはほとんど寄与しない。そこで、ポリカルボン酸層にはナノ粒子を分散させずに、ポリカルボン酸以外の水溶性高分子の層のみにナノ粒子を分散させておけば、フィルム内のナノ粒子を水溶性高分子層から効率良く放出させることができる。
(難水溶化工程)
次に、シート状に展延したナノ粒子含有フィルムの片面を難水溶化処理する。ここでは、フィルムを形成する水溶性高分子としてポリカルボン酸を用いた場合の難水溶化処理法として、カチオン性高分子の水溶液を用いる方法と、2価以上の無機塩の水溶液を用いる方法について説明する。
ポリカルボン酸のカルボキシル基は、水の存在下では水素イオン(H+)が解離してカルボアニオンとなる。ポリカルボン酸で形成されたフィルムの一方の面(表面側)にカチオン性高分子の水溶液を塗布すると、ポリカルボン酸のカルボキシル基がカルボアニオンとなり、カチオン性高分子のカチオン基(−NH3+等)のH+とイオン結合する。その結果、カルボキシル基がカチオン性高分子と結合することで疎水化され、ナノ粒子含有フィルムの表面に難水溶性の層(以下、第1層という)が形成される。一方、カチオン性高分子の水溶液を塗布しないナノ粒子含有フィルムの他方の面(裏面側)は水溶性の層(以下、第2層という)となっている。
カチオン性高分子としては、キトサン及びキトサン誘導体、セルロースに複数のカチオン基を結合させたカチオン化セルロース、ポリエチレンイミン、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン等のポリアミノ化合物、ポリオルニチン、ポリリジン等のポリアミノ酸、ポリビニルイミダゾール、ポリビニルピリジニウムクロリド、アルキルアミノメタクリレート4級塩重合物(DAM)、アルキルアミノメタクリレート4級塩・アクリルアミド共重合物(DAA)等が挙げられるが、特に生体への悪影響が少なく安全性に優れたキトサン或いはその誘導体が好適に用いられる。
また、カルボン酸は、2価以上の金属イオンと反応して難水溶性の塩を形成することが知られている。ポリカルボン酸で形成されたフィルムの一方の面(表面側)に2価以上の無機塩の水溶液を塗布すると、ポリカルボン酸のカルボキシル基がカルボアニオンとなり、金属イオンと難水溶性の塩を形成することで、ナノ粒子含有フィルムの表面に難水溶性の第1層が形成される。一方、無機塩の水溶液を塗布しないナノ粒子含有フィルムの他方の面(裏面側)は水溶性の第2層となっている。
2価以上の無機塩としては、安価で入手が容易であり、生体への悪影響が少ない炭酸カルシウム(CaCO3)、塩化カルシウム(CaCl2)、炭酸マグネシウム(MgCO3)、塩化マグネシウム(MgCl2)等が用いられ、このうち、一般的にアルギン酸との結合性が良好なCa2+イオンを生成する炭酸カルシウム、塩化カルシウムが好適に用いられる。
ナノ粒子含有フィルムがポリカルボン酸の単層構成である場合は、2価以上の無機塩の水溶液を用いて難水溶化処理を行うと、カチオン性高分子の水溶液を用いて難水溶化処理を行う場合に比べてフィルムの内部まで難水溶化が進み易い。そのため、第1層の層厚が増加する一方、第2層の層厚が減少する傾向となり、第2層からのナノ粒子の放出量も減少するおそれがある。従って、カチオン性高分子の水溶液を用いて難水溶化処理を行う方が好ましい。
また、シート状に固化したナノ粒子含有フィルムの片面にカチオン性高分子の水溶液を塗布することにより難水溶化処理を行う方法の他、カチオン性高分子としてキトサンを用いる場合は、ポリカルボン酸とキトサンの接触界面では瞬時に膜形成されるため、ナノ粒子を分散させたポリカルボン酸の水溶液をシート状に展延し、乾燥する前の湿潤状態で片面をキトサン水溶液と反応させて難水溶化処理を行うこともできる。
一方、ナノ粒子含有フィルムが片面にポリカルボン酸層を有する多層構成である場合は、2価以上の無機塩の水溶液を用いて難水溶化処理を行ってもポリカルボン酸層のみが難水溶化されるため、第2層の層厚は確保される。また、一旦乾燥して固化させた多層構成のナノ粒子含有フィルムを、カチオン性高分子の水溶液、若しくは2価以上の無機塩の水溶液に浸漬して、ポリカルボン酸層のみを選択的に難水溶化することができるため、難水溶化処理が容易になるとともに、処理方法の選択範囲も広くなる。また、ポリカルボン酸層以外の水溶性高分子層の材質を選択することで、ナノ粒子の放出速度を制御することもできる。
次に、上記の方法により難水溶化処理されたナノ粒子含有フィルムを自然乾燥させる(乾燥工程)。そして、乾燥したナノ粒子含有フィルムを成形型や基板から剥がし、必要に応じて外装容器等に密封して薬剤溶出型フィルム製剤とする。
以上のようにして得られた、ポリカルボン酸の単層構成である薬剤溶出型フィルム製剤を、生体内の臓器や組織、粘膜、口腔内等の疾患部位に貼り付けた状態を図1に示す。また、片面にポリカルボン酸層を有する多層構成である薬剤溶出型フィルム製剤を、生体内の臓器や組織、粘膜、口腔内等の疾患部位に貼り付けた状態を図2に示す。
図1及び図2に示すように、薬剤溶出型フィルム製剤1は、難水溶性の第1層2と、水溶性の第2層3が形成されており、第2層3を生体組織(例えば臓器壁細胞)4の疾患部位に対向させて貼り付けられる。これにより、生体内の水分によって第2層3が徐々に溶解し、第2層3から放出したナノ粒子5が疾患部位内へと取り込まれる。そして、疾患部位内でナノ粒子5内部から生理活性物質が徐放される。
また、薬剤溶出型フィルム製剤1は、難水溶性の第1層2によってある程度長期間に亘りフィルム形状が保持される。そのため、薬剤溶出型フィルム製剤1が生体組織4から剥がれ落ち難くなり、長期間に亘ってナノ粒子5を生体組織4内へ送達することができる。さらに、第1層2側からのナノ粒子5の放出が抑制されるため、ナノ粒子5を生体組織4に対向する第2層3側から効率良く放出させることができる。
なお、第1層2は難水溶性ではあるが、生体内の水分により第2層3に比べて非常にゆっくりと溶解する。そのため、薬剤溶出型フィルム製剤1は生体組織4に貼り付けてから所定期間が経過した後には、完全に消失する。従って、生体への負荷の極めて少ない薬剤溶出型フィルム製剤1となる。
さらに、図2のような片面にポリカルボン酸層を有する多層構成である薬剤溶出型フィルム製剤1では、ポリカルボン酸層(第1層2)にはナノ粒子5を分散させずに、ポリカルボン酸以外の水溶性高分子の層(第2層3)のみにナノ粒子5を分散させておくことで、薬剤溶出型フィルム製剤1内の全てのナノ粒子5を、第2層3から生体組織4へ効率良く放出させることができる。
また、封入される生理活性物質の種類が異なる複数種のナノ粒子を作製し、それぞれのナノ粒子をフィルム内に分散させても良い。このとき、薬剤溶出型フィルム製剤1の貼り付け後短時間で溶出させたい生理活性物質はナノ粒子の表面に担持させ、所定時間経過後に溶出させたい生理活性物質はナノ粒子に内包させておけば、2種類以上の生理活性物質の目的に合わせてナノ粒子からの溶出時間を制御できる。また、2種類以上の生理活性物質を、生体適合性高分子の種類や分子量の異なるナノ粒子中に封入して溶出時間を制御しても良い。
さらに、ナノ粒子を分散させる水溶性高分子の水溶液中にも生理活性物質を添加することにより、ナノ粒子外部の水溶性高分子層から成るフィルム中に封入された生理活性物質を疾患部位に即効的に作用させるとともに、ナノ粒子内部に封入された生理活性物質を遅効的且つ持続的に作用させることができる。生理活性物質の種類及び封入量は、生理活性物質の作用機序や、要求される即効性、持続性の程度等により適宜設定することができる。
即ち、投与後長期間に亘る効果の持続性が要求される生理活性物質の場合はナノ粒子内部に封入すれば良く、投与直後より効果の発現が要求される生理活性物質の場合はナノ粒子外部のフィルム中に封入すれば良い。フィルム中に封入される生理活性物質としては、ナノ粒子内部に封入される生理活性物質として例示した種々の生理活性物質を用いることができる。
なお、水溶性の第2層に比べて非常にゆっくりと溶解する難水溶性の第1層中にもナノ粒子を分散させておくか、或いはナノ粒子と共に、またはナノ粒子に代えて生理活性物質を封入しておくことで、より長期間に亘ってナノ粒子または生理活性物質の徐放効果が期待できる薬剤溶出型フィルム製剤となる。
ところで、「フィルム」という名称は、一般に薄膜をいうものであり(理化学辞典、岩波書店)、厚さ100〜数100μmで、巻き芯に巻き取られているロール状のものを指すことが多い。一方、「シート」という名称は、フィルムに比べて厚みが厚く(1〜数mm)、所定の形状(矩形状等)に切り取られたものを指すことが多く、両者は慣用的に区別されている。本明細書中でいう「フィルム製剤」は、上記の一般的な「フィルム」に限らず、厚みがやや厚いもの、所定の形状に切り取られたものを指す「シート」を含むものである。
その他、本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。以下、蛍光標識物質であるフルオレセインイソチオシアネート(FITC)を封入したPLGAナノ粒子の調製及びそれを分散させた薬剤溶出型フィルム製剤の作製、並びに細胞内への薬物浸透効果について、参考例、実施例、比較例、及び試験例を用いて具体的に説明する。
[FITC内包PLGAナノ粒子の調製]
[参考例]
1重量%のポリビニルアルコール(PVA EG05、日本合成化学工業製)水溶液200mLを貧溶媒とした。また、乳酸・グリコール酸共重合体(和光純薬工業製PLGA7520)1gをアセトン・エタノール混合液(混合比2:1)120mLに溶解させ、ここにFITC40mgを精製水10mLに溶解させた溶液を添加し、均一に混合し良溶媒とした。
貧溶媒を40℃、400rpmで攪拌下、一定速度(4mL/分)で良溶媒を滴下した。滴下終了後5分間攪拌したのち、減圧下200rpmで攪拌しながら4時間で有機溶媒を留去した。その後、遠心分離操作によって過剰のポリビニルアルコールを除去し、約1日かけて凍結乾燥を行いFITC内包PLGAナノ粒子の凍結乾燥粉末1.2gを得た。
[PLGAナノ粒子含有フィルムの形成]
[実施例1]
アルギン酸ナトリウム(和光純薬工業社製)を水に溶解して2重量%のアルギン酸水溶液を調製した。このアルギン酸水溶液10gに、参考例で調製したFITC封入PLGAナノ粒子粉末を分散させたスラリー(20重量%)1gを加えて均一に混合し、PLGAナノ粒子含有アルギン酸水溶液とした。
このPLGAナノ粒子含有アルギン酸水溶液1.0mLをポリプロピレンプレート上に1mm程度の厚さに展延し、湿潤状態のまま2重量%のキトサン(CHITOSAN GH−400EF、日油製)水溶液1.0mLを重ねて展延した。その後、常温、常圧で一晩風乾させることにより、フィルムの片面に難水溶性の面が形成されたPLGAナノ粒子含有アルギン酸フィルムを作製した。
[実施例2]
2重量%のキトサン水溶液に代えて、10重量%の塩化カルシウム(和光純薬工業社製)水溶液1.0mLを塗布する以外は実施例1と同様の方法により、フィルムの片面に難水溶性の面が形成されたPLGAナノ粒子含有アルギン酸フィルムを作製した。
[実施例3]
ポリビニルアルコール(PVA EG05、日本合成化学工業製)を水に溶解して2重量%のポリビニルアルコール水溶液を調製した。このポリビニルアルコール水溶液4gに、参考例で調製したFITC封入PLGAナノ粒子粉末を分散させたスラリー(5重量%)1gを加えて均一に混合し、PLGAナノ粒子含有ポリビニルアルコール水溶液とした。このPLGAナノ粒子含有ポリビニルアルコール水溶液1.0mLをポリプロピレンプレート上に1mm程度の厚さに展延し、常温、常圧で一晩風乾させることにより、PLGAナノ粒子含有PVAフィルムを作製した。
上記で作製したPLGAナノ粒子含有PVAフィルムの片面に、2重量%のアルギン酸水溶液0.2mLを塗布し、続いて2重量%のキトサン水溶液0.2mLを塗布した。その後、常温、常圧で一晩風乾させることにより、フィルムの片面に難水溶性の面が形成されたPLGAナノ粒子含有PVAフィルムを作製した。
[比較例1]
アルギン酸ナトリウム(和光純薬工業社製)を水に溶解して2重量%のアルギン酸水溶液を調製した。このアルギン酸水溶液10gに、参考例で調製したFITC封入PLGAナノ粒子粉末を分散させたスラリー(20重量%)1gを加えて均一に混合し、PLGAナノ粒子含有アルギン酸水溶液とした。
このPLGAナノ粒子含有アルギン酸水溶液1.0mLをポリプロピレンプレート上に1mm程度の厚さに展延し、そのまま常温、常圧で一晩風乾させて、難水溶性の面が形成されていないPLGAナノ粒子含有アルギン酸フィルムを作製した。
[比較例2]
ポリビニルアルコール(PVA EG05、日本合成化学工業製)を水に溶解して2重量%のポリビニルアルコール水溶液を調製した。このポリビニルアルコール水溶液4gに、参考例で調製したFITC封入PLGAナノ粒子粉末を分散させたスラリー(5重量%)1gを加えて均一に混合し、PLGAナノ粒子含有ポリビニルアルコール水溶液とした。このPLGAナノ粒子含有ポリビニルアルコール水溶液1.0mLをポリプロピレンプレート上に1mm程度の厚さに展延し、常温、常圧で一晩風乾させることにより、難水溶性の面が形成されていないPLGAナノ粒子含有PVAフィルムを作製した。
[比較例3]
アルギン酸ナトリウム(和光純薬工業社製)を水に溶解して2重量%のアルギン酸水溶液を調製した。このアルギン酸水溶液10gに、参考例で調製したFITC封入PLGAナノ粒子を分散させたスラリー(20重量%)1gを加えて均一に混合し、PLGAナノ粒子含有アルギン酸水溶液とした。
このPLGAナノ粒子含有アルギン酸水溶液1.0mLをポリプロピレンプレート上に1mm程度の厚さに展延し、そのまま常温、常圧で一晩風乾させてフィルムとした後、10重量%の塩化カルシウム(和光純薬工業社製)水溶液中に浸漬し、再び常温、常圧で一晩風乾させて、フィルムの両面に難水溶性の面が形成されたPLGAナノ粒子含有アルギン酸フィルムを作製した。
[PLGAナノ粒子含有フィルムの貼り付け性評価試験]
[試験例1]
実施例1および比較例1〜3で作製したPLGAナノ粒子含有フィルムを、それぞれ生体組織に見立てた寒天培地(生理食塩水に1.2重量%の寒天を添加して固化したもの)の表面に貼り付けた。なお、実施例1のPLGAナノ粒子含有アルギン酸フィルムは、難水溶化しなかった面を寒天培地に貼り付けた。そして、寒天培地に貼り付けられた各フィルムの溶解性を目視により観察した。結果を図3及び図4に示す。
図3に示すように、フィルムの片面のみに難水溶性の面が形成された実施例1のPLGAナノ粒子含有アルギン酸フィルム(図3の右側)では、寒天培地に貼り付けた後、5分後においてもフィルム形状が保持されていた。
これに対し、難水溶性の面が形成されていない比較例1のPLGAナノ粒子含有アルギン酸フィルム(図3の左側)では、寒天培地に貼り付けた後、培地表面の水分を吸収してフィルムが溶解し始め、5分後にはフィルムがほぼ溶解した。
また、フィルムの両面に難水溶性の面が形成された比較例3のPLGAナノ粒子含有アルギン酸フィルム(図3の中央)では、フィルムが寒天培地の水分を吸収しないために培地にうまく貼り付かず、5分後にはフィルム側面からの吸湿によってフィルム全体が収縮変形した。
また、難水溶性の面が形成されていない比較例2のPLGAナノ粒子含有PVAフィルムでは、寒天培地に貼り付けた後、培地表面の水分を吸収してフィルムが溶解し始め、3分程度まではフィルム形状を保持していたが、5分後には図4に示すようにフィルムがほぼ溶解し、20分後には培地を傾斜させると液垂れする程度であった。
[PLGAナノ粒子含有フィルムの薬物溶出性評価試験]
[試験例2]
実施例1、2および比較例1、2で作製したPLGAナノ粒子含有フィルムを、試験例1と同様の方法により寒天培地の表面に貼り付けた。貼り付け直後(0時間)、1時間後、6時間後、及び24時間後におけるFITCの溶出挙動を目視により観察した。結果を図5〜図8に示す。図5〜図8中、右から順に実施例1、比較例1、実施例2のPLGAナノ粒子含有フィルムを示している。また、実施例1、2、および比較例1、2のフィルムの組成を表1に示す。
※含有率不明
※※遠心分離処理粒子のため、粒子由来のPVAは0%と仮定
図5〜図8に示すように、実施例1、2、及び比較例1のPLGAナノ粒子含有アルギン酸フィルムのいずれからも、FITC含有ナノ粒子が寒天培地中へ徐々に放出され、6時間経過後には寒天培地全体にFITCが広がっているのが確認された。特に、フィルムの片面のみに難水溶性の面が形成された実施例1、2のPLGAナノ粒子含有アルギン酸フィルムでは、24時間経過後もフィルム形状が保持されていた。
また、図示しないが、難水溶性の面が形成されていない比較例2のPLGAナノ粒子含有PVA酸フィルムからも、FITC含有ナノ粒子が寒天培地中へ徐々に放出され、24時間経過後には寒天培地全体にFITCが広がっているのが確認された。
以上から、PLGAナノ粒子含有アルギン酸フィルムの片面のみに難水溶性の面を形成し、難水溶化しなかった面を生体組織に貼り付けることにより、生体組織に対するフィルムの密着性が良好であり、且つ、貼り付け後長期間に亘ってフィルムの形状が保持されるため、ナノ粒子の生体組織への取り込み性が向上することが確認された。
なお、上記の試験例ではアルギン酸から成る単層構成のPLGAナノ粒子含有フィルムを用いて試験を行ったが、PVAフィルムの片面にアルギン酸水溶液を塗布してアルギン酸層を形成し、アルギン酸層にキトサン水溶液を塗布して難水溶性の面を形成した実施例3のPLGAナノ粒子含有フィルムを用いた場合についても同様の結果が得られるものと推認される。また、ここではナノ粒子内部に蛍光物質であるFITCを封入し、細胞内への浸透効果について調査したが、FITC以外の種々の生理活性物質を封入した場合についても同様に優れた浸透効果が期待できる。
本発明は、生体内の疾患部位に直接貼り付けて使用する薬剤溶出型フィルム製剤に利用可能である。本発明の利用により、生理活性物質を内包したナノ粒子を長期間に亘って疾患部位へ効率よく送達することができ、安全性が高く、安定性、徐放性にも優れた薬剤溶出型フィルム製剤を簡単な方法で提供することができる。
1 薬剤溶出型フィルム製剤
2 第1層
3 第2層
4 生体組織
5 ナノ粒子

Claims (7)

  1. 生体適合性の水溶性高分子で形成されたフィルムと、
    該フィルム内に分散され、生理活性物質が封入された生体適合性ナノ粒子と、
    を含む薬剤溶出型フィルム製剤であって、
    前記フィルムは、一方の面にポリカルボン酸層をカチオン性高分子の水溶液、若しくは2価以上の無機塩の水溶液で難水溶化処理して形成される第1層を有し、他方の面に前記ポリカルボン酸以外の水溶性高分子で形成される第2層を有する多層構成であり、
    前記生体適合性ナノ粒子が、前記第2層のみに分散されていることを特徴とする薬剤溶出型フィルム製剤。
  2. 前記カチオン性高分子が、キトサンであることを特徴とする請求項1に記載の薬剤溶出型フィルム製剤。
  3. 前記無機塩が、炭酸カルシウム、塩化カルシウムから選ばれた1種以上であることを特徴とする請求項1に記載の薬剤溶出型フィルム製剤。
  4. 前記ポリカルボン酸が、アルギン酸であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の薬剤溶出型フィルム製剤。
  5. 前記生体適合性ナノ粒子を形成する生体適合性高分子が、乳酸・グリコール酸共重合体であることを特徴とする請求項乃至請求項4のいずれかに記載の薬剤溶出型フィルム製剤。
  6. 前記生理活性物質が、抗がん剤、免疫抑制剤、抗炎症剤、鎮痛剤、血管拡張剤、癒着防止剤、核酸化合物、受容体チロシンキナーゼ阻害剤から選ばれた1種以上であることを特徴とする請求項乃至請求項のいずれかに記載の薬剤溶出型フィルム製剤。
  7. ポリビニルアルコールを溶解させた水溶液に、少なくとも生理活性物質の溶液と生体適合性高分子を有機溶媒に溶解させた溶液との混合液を加えて、前記生理活性物質が前記生体適合性高分子中に封入された生体適合性ナノ粒子を形成するナノ粒子形成工程と、
    生体適合性の水溶性高分子の水溶液に前記生体適合性ナノ粒子を分散させてシート状に展延することによりナノ粒子含有水溶性フィルムを形成し、該ナノ粒子含有水溶性フィルムの片面にポリカルボン酸の水溶液を塗布して多層構成のナノ粒子含有フィルムを形成するフィルム形成工程と、
    前記ナノ粒子含有フィルムの片面のポリカルボン酸層をカチオン性高分子の水溶液、若しくは2価以上の無機塩の水溶液で処理することにより、前記ナノ粒子含有フィルムの一方の面に難水溶性の第1層を形成する難水溶化工程と、
    一方の面に前記第1層が形成され、他方の面に前記生体適合性ナノ粒子が分散された水溶性の第2層が形成された前記ナノ粒子含有フィルムを乾燥させる乾燥工程と、
    を有することを特徴とする薬剤溶出型フィルム製剤の製造方法
JP2012212521A 2012-09-26 2012-09-26 薬剤溶出型フィルム製剤及びその製造方法 Active JP5996990B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2012212521A JP5996990B2 (ja) 2012-09-26 2012-09-26 薬剤溶出型フィルム製剤及びその製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2012212521A JP5996990B2 (ja) 2012-09-26 2012-09-26 薬剤溶出型フィルム製剤及びその製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2014065681A JP2014065681A (ja) 2014-04-17
JP5996990B2 true JP5996990B2 (ja) 2016-09-21

Family

ID=50742447

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2012212521A Active JP5996990B2 (ja) 2012-09-26 2012-09-26 薬剤溶出型フィルム製剤及びその製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP5996990B2 (ja)

Families Citing this family (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2021201150A1 (ja) * 2020-03-31 2021-10-07 株式会社クレハ 生体吸収性医療材料

Family Cites Families (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH01311031A (ja) * 1988-06-06 1989-12-15 Yasuyuki Sugano 歯科外用薬用担体
KR960016882A (ko) * 1994-11-01 1996-06-17 강재헌 치주염치료를 위한 서방출형 생분해성 제제
DE69720453T2 (de) * 1996-05-23 2004-04-15 Samyang Corp. Lokal verabreichbares biologisch abbaubares arzneimittel mit verzögerter frei-setzung für periodontitis und verfahren zu dessen herstellung
DE19932603A1 (de) * 1999-07-13 2001-01-25 Gruenenthal Gmbh Wirkstoffhaltiger Mehrschichtfilm aus in situ vernetzten hydrophilen Polymeren
JP4759997B2 (ja) * 2004-12-06 2011-08-31 凸版印刷株式会社 ポリウロン酸成形物とその製造方法
US20110293690A1 (en) * 2010-05-27 2011-12-01 Tyco Healthcare Group Lp Biodegradable Polymer Encapsulated Microsphere Particulate Film and Method of Making Thereof

Also Published As

Publication number Publication date
JP2014065681A (ja) 2014-04-17

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Jadach et al. Sodium alginate as a pharmaceutical excipient: novel applications of a well-known polymer
Fonseca-Santos et al. An overview of carboxymethyl derivatives of chitosan: Their use as biomaterials and drug delivery systems
Severino et al. Alginate nanoparticles for drug delivery and targeting
García-González et al. Aerogels in drug delivery: From design to application
Sivasankarapillai et al. Progress in natural polymer engineered biomaterials for transdermal drug delivery systems
Sinha et al. Chitosan microspheres as a potential carrier for drugs
De Cicco et al. Nanospray technology for an in situ gelling nanoparticulate powder as a wound dressing
Thomas et al. Preparation and evaluation of alginate nanoparticles prepared by green method for drug delivery applications
Amanat et al. Carboxymethyl cellulose-based wafer enriched with resveratrol-loaded nanoparticles for enhanced wound healing
Tokárová et al. Development of spray-dried chitosan microcarriers for nanoparticle delivery
N Mengatto et al. Recent advances in chitosan films for controlled release of drugs
Venugopal et al. Continuous nanostructures for the controlled release of drugs
Albisa et al. Polymeric nanomaterials as nanomembrane entities for biomolecule and drug delivery
Gaydhane et al. Electrospun nanofibres in drug delivery: advances in controlled release strategies
Ward et al. Halloysite nanoclay for controlled release applications
Pooresmaeil et al. Chitosan based nanocomposites for drug delivery application
Szczesna et al. Szyk-Warszy nska, L.; Zboi nska, E.; Warszy nski, P.; Wilk, KA Multilayered curcumin-loaded hydrogel microcarriers with antimicrobial function
Chander et al. Role of chitosan in transdermal drug delivery
JP5996990B2 (ja) 薬剤溶出型フィルム製剤及びその製造方法
Manickam et al. Drug/vehicle impacts and formulation centered stratagems for enhanced transdermal drug permeation, controlled release and safety: unparalleled past and recent innovations-an overview
Benko et al. Nanomaterials to aid wound healing and infection control
Deep et al. Prospective of natural gum nanoparticulate against cardiovascular disorders
Devi et al. Nano engineered biodegradable capsules for the encapsulation and kinetic release studies of ciprofloxacin hydrochloride
Adewuyi et al. Design of nano-chitosans for tissue engineering and molecular release
Al-Domi et al. Development of an insulin nano-delivery system through buccal administration

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20150617

RD03 Notification of appointment of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7423

Effective date: 20150617

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20160315

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20160420

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20160802

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20160825

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 5996990

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250