JP5995200B2 - 可変ピッチプロペラ - Google Patents
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Description
特に、航空機の推進用として1930年代以降多く用いられており、代表的なものとしてハーツウェル社の方式が主流となっているが、この方式は機械的な調速器と油圧ピストン、カム機構等からなり、複雑で維持に手間がかかり、高価であることが問題である。
この問題を解決するために様々な機構が提案されている。
例えば、特許文献1、2に示すように、ブレードの回転軸線をブレードの圧力中心より前に設け、空気力とバネの反力との釣り合いで迎角変更が自律的に行われるものが公知である。
また、特許文献3に示すように、翼先端の後縁を延長し、空気力のみによりブレードの迎角が変更されるものや、特許文献4に示すように、ブレード先端にアレイを装着し、アレイの質量量分布を利用してプロペラブレードのねじれ角が自律的に変化されるものが公知である。
また、バネの弾性を使用するために可動部が多く部品点数も多くなり、メンテナンスに手間がかかるという問題があった。
特許文献3に記載のような公知の可変ピッチプロペラは、機構は単純であるものの、ブレード平面形状を最適化できないためにプロペラ効率が下がるとともに、特許文献1、2に記載のような公知の可変ピッチプロペラと同様に、ブレードの重心位置によるフラッタの問題、プロペラの回転に伴う慣性モーメントの問題があった。
特許文献4に記載のような公知の可変ピッチプロペラでは、ねじれを変化させることで、プロペラ効率は向上するものの、ブレードの構造が複雑であるとともに、迎角の変更の構成は特許文献1、2に記載のような公知の可変ピッチプロペラと同様であり、同様の問題があった。
また、高速になるブレードの先端に空気抵抗が大きいアレイを装着するため、ブレードの空気抵抗が増加するという問題があった。
本請求項3に係る発明は、請求項1または請求項2に係る可変ピッチプロペラの構成に加え、前記カウンターウエイトが、前記迎角変更軸線と直交する平面内の重心位置を調整可能に構成されていることにより、前記課題を解決するものである。
本請求項4に係る発明は、請求項2または請求項3に係る可変ピッチプロペラの構成に加え、前記カウンターウエイトが、前記ブレードまたは迎角変更軸に固定されるベース部材と、該ベース部材に固定されるウエイト本体とを有し、前記ベース部材が、前記ウエイト本体の迎角変更軸線からの距離を変更可能に構成されていることにより、前記課題を解決するものである。
本請求項5に係る発明は、請求項2乃至請求項4のいずれかに係る可変ピッチプロペラの構成に加え、前記カウンターウエイトが、前記ブレードまたは迎角変更軸に固定されるベース部材と、該ベース部材に固定されるウエイト本体とを有し、前記ベース部材が、質量の異なるウエイト本体を交換可能に構成されていることにより、前記課題を解決するものである。
このことで、簡単な構造で可動部や部品点数が少なく、メンテナンスが容易となるとともに、ブレード平面形状を最適化して効率を向上することができ、ブレードおよびカウンターウエイトの全体の重心位置が迎角変更軸線上に位置することでフラッタを起こさず、プロペラの回転に伴う慣性モーメントを調整して0とすることにより、ブレードの有効迎角を自律的に理想的な値に保つことが可能となる。
さらに、逆回転時でも、何らの制御を行うことなく最適な迎角となり、効率を向上することができる。
本発明の可変ピッチプロペラは、ブレードに作用する揚力の作用点が、迎角に応じて翼弦長方向に位置を変えることを利用し、ブレードの迎角変更軸の回転軸線の位置を所定の迎角の時の揚力の作用点に位置させることで安定させ、カウンターウエイトを付加することで、プロペラの回転に伴う慣性モーメントを0とし、回転数の変化による迎角の変化を最適なものとするものである。
例えば、このブレードの回転軸線の位置を迎角が5°の時に揚力が作用する位置とし、前後の重量バランスを取ると、揚力に起因する回転軸線周りのモーメントは、迎角5°未満になった場合は迎角を大きくする方に、迎角5°を超えると迎角を小さくする方に作用するため、揚力のみを考慮すると迎角5°に自律的に安定する。
なお、この揚力はブレードの翼弦方向の対気速度Uの2乗に比例する。
また、ブレードの長手方向の捻れを考慮した場合、長手方向のすべての断面における回転軸線周りのモーメントの総和がゼロになる迎角で自律的に安定する。
しかしながら、実際はプロペラの回転に伴って発生する慣性モーメントが加わり、この慣性モーメントはプロペラの回転数によって変化するため、自律的に安定する迎角はプロペラの回転数によって一定ではない。
図2は半径0.4R、0.6R、0.8Rのブレード断面とカウンターウエイトを模式的に示している。
本発明の可変ピッチプロペラのブレードは、モーメント係数(Cm)が正の翼型であり、0.25以下の定数kを用いてブレード前縁から翼弦長のk倍の位置に迎角変更軸線CPが置かれている。
迎角変更軸線CPと直交する慣性主軸のうち、慣性モーメントが大きい方の軸をy軸とし、小さい方の軸をz軸とし、それぞれの慣性モーメントをIyy、Izzと表記する。
一般にy軸はブレードの前縁と後縁を結ぶ方向にある。
また、ブレードのプロペラ軸側付け根のz軸方向に上下対称のカウンターウエイトが設けられており、上下それぞれの重心の迎角変更軸線CPからの距離をl、質量をmとする。
このカウンターウエイトの重心の迎角変更軸線CPからの距離をlと質量mは可変であり、ブレードとカウンターウエイト全体の迎角変更軸線CP周りの重心位置は、図示しない別途の質量を付加することで迎角変更軸線CPに一致させる。
Iyy=Iyy’+Iyy”
Izz=Izz’+Izz”
となり、
カウンターウエイトのz軸方向の慣性モーメントIzz”は、
Izz”=2ml2
で与えられる。
ブレード単体の慣性モーメントIyy’、Izz’は一定であり、カウンターウエイトのy軸方向の慣性モーメントIyy”は、本モデルでは前後の長さが小さく微小であるため、回転体全体のy軸方向の慣性モーメントIyyは実質一定である。
回転体全体のz軸方向の慣性モーメントIzzは、カウンターウエイトの重心の迎角変更軸線CPからの距離lまたは質量mを変えてIzz”を変えることで調整可能となり、Iyyと同じ値に調整する。
Mi=−1/2Ω2(Iyy−Izz)sin2θ
ここでΩは回転角速度であり、θは回転面からのy軸の傾きである。なお、Miは迎角が大きくなる方向を正とした。
IyyとIzzの値の差が大きくなる程モーメントMiは大きくなり、またモーメントMiはθが45°の時に最大となり、回転角速度Ωの二乗に比例する。よってIyy=Izzとなるよう調整する。
本実施形態に係る可変ピッチプロペラ100は、例えば小型の無人航空機等に用いられるプロペラであり、図3に示すように、モータ102の回転軸が直接プロペラ軸110となっており、プロペラ軸110に固定されたハブ140にブレード120の迎角変更軸121が回動可能に取付けられて構成されている。
モータ102は、プロペラ軸110が突出するようにモータマウント101に固定されるとともに、該モータマウント101にはモータ102の外周を覆うようにモータハウジング103が固定され、該モータハウジング103にはモータ102を収容するようにハウジングベース105が固定されている。
なお、図示では、ベアリング144はスラストおよびラジアルの2列のボールベアリングで構成されている。
迎角変更軸121には、ハブ140に近接してカウンターウエイト130が固定されている。
スピナ142のモータ102側には冷却空気通過孔146が設けられ、冷却空気取入口143から導入された空気は、冷却空気通過孔146を通過しモータ102を冷却して、モータハウジング103のハウジングベース105側に設けられた冷却空気出口104から排出される。
なお、本実施形態に係る可変ピッチプロペラ100は2枚のブレード120をプロペラ軸110に対して回転方向180°の位置に配するものであるため、ハブ140およびスピナ142は、プロペラ軸110の軸線に対して180°回転対称の形状・構造であるが、ブレード120の枚数が3枚、4枚等である場合は、ハブ140およびスピナ142の形状、構造も120°回転対称、90°回転対称等の形状、構造としても良い。
ベース部材134には、ブレード120の迎角変更軸121が挿入されるブレード固定孔137が設けられ、側方からブレード固定孔137内に貫通し内周面にネジ山が設けられたブレード固定ネジ孔138を有している。
ベース部材134は、ブレード固定孔137に迎角変更軸121が挿入し、ブレード固定ネジ(図示せず)をブレード固定ネジ孔138に螺合して締め付けることで、迎角変更軸121に強固に固定されて、ブレード120と一体となってプロペラ軸線回りを回転、および、迎角変更軸線回りを回動する。
アーム部139と固定片132が、ウエイト固定ネジ136を固定片132の固定用長孔133を挿通してウエイト固定ネジ孔135に締め付けることにより強固に固定されることで、ベース部材134とウエイト本体131が一体となってカウンターウエイト130を構成する。
このことで、ウエイト本体131の迎角変更軸121の迎角変更軸線からの距離を調整して固定することが可能で、迎角変更軸線に直交する慣性モーメントを調整可能に構成されている。
また、ウエイト固定ネジ136を完全に取外すことで、ウエイト本体131の交換が可能であり、異なる質量のウエイト本体131を固定することでも、迎角変更軸線に直交する慣性モーメントを調整可能である。
このことで、前者の2つのアーム部139に取り付けられたウエイト本体131により、プロペラの回転に伴う慣性モーメントによって発生するブレード120の迎角を減少させる迎角変更軸線に直交するモーメントを調整して0とすることが可能となる
また、後者の90°の方向に延びるアーム部139に取り付けられたウエイト本体131により、ブレード120全体の迎角変更軸線周りの重心位置を最適に維持することが可能となる。
なお、本実施形態では、3つのアーム部139の形状・寸法、および、それぞれに取り付けられるウエイト本体131の形状・寸法を同一のものとしたが、それぞれ異なる形状・寸法としても良い。
また、各部の形状・構造・寸法は、図示のものに限定されるものではない。
実験に使用したプロペラのブレードは設計点として以下の諸元を用い、公知の設計方法、性能推定方法で、図6に示すような前面投影形状に設計した。
前進速度(U) 27.8m/s(100km/h)
直径(D) 0.2667m(10.5inch)
角速度(回転数n) 1043rad/s(10,000rpm)
入力パワー 225W(0.3hp)
揚力係数 0.4
推力 7.26
効率 89.4%
これに対し、このプロペラを本発明の可変ピッチプロペラの構成とすることにより、設計点の進行率の2倍の条件でも効率は70%を超える。
このように、本発明の可変ピッチプロペラは、進行率、すなわち、前述した対気速度(前進速度)と回転角速度の関係が幅広く変化するような使用条件であっても、高効率を維持することが可能となる。
また、航空機以外の推進用に用いることも可能であり、逆に、空気の流れから回転力を得る風車としての用途に用いることも可能である。
特に、進行率が幅広く変化しても高効率を維持することが可能であり、簡単な構造で可動部や部品点数が少なく、メンテナンスも容易なことから、風力発電等の用途に好適である。
101 ・・・モータマウント
102 ・・・モータ
103 ・・・モータハウジング
104 ・・・冷却空気出口
105 ・・・ハウジングベース
110 ・・・プロペラ軸
120 ・・・ブレード
121 ・・・迎角変更軸
130 ・・・カウンターウエイト
131 ・・・ウエイト本体
132 ・・・固定片
133 ・・・固定用長孔
134 ・・・ベース部材
135 ・・・ウエイト固定ネジ孔
136 ・・・ウエイト固定ネジ
137 ・・・ブレード固定孔
138 ・・・ブレード固定ネジ孔
139 ・・・アーム部
140 ・・・ハブ
142 ・・・スピナ
143 ・・・冷却空気取入口
144 ・・・ベアリング
145 ・・・ナット
146 ・・・冷却空気通過孔
147 ・・・迎角変更軸挿通孔
Claims (5)
- プロペラ軸と、該プロペラ軸を中心として回転する複数枚のブレードと、該ブレードの前記プロペラ軸側に一体的に設けられた迎角変更軸と、前記迎角変更軸を回動可能な状態で前記プロペラ軸と連結するハブとを有する可変ピッチプロペラであって、
前記ブレードは、前記迎角変更軸線が前記ブレードの翼弦長の4分の1より前方に位置する翼型に形成され、
前記ブレードには、固定可能なカウンターウエイトが設けられ、
該カウンターウエイトの前記迎角変更軸線に直交する慣性モーメント最大となる方向が、前記ブレードの前記迎角変更軸線に直交する慣性モーメント最大となる方向と直交するように形成され、かつ、ブレードの慣性モーメント最大値とカウンターウエイトの慣性モーメントが等しく、
前記ブレードおよびカウンターウエイトの全体の重心位置が、前記迎角変更軸線上に位置するように構成されていることを特徴とする可変ピッチプロペラ。 - 前記カウンターウエイトが、前記迎角変更軸線に直交する慣性モーメントを変更可能に構成されていることを特徴とする請求項1に記載の可変ピッチプロペラ。
- 前記カウンターウエイトが、前記迎角変更軸線と直交する平面内の重心位置を調整可能に構成されていることを特徴とする請求項2に記載の可変ピッチプロペラ。
- 前記カウンターウエイトが、前記ブレードまたは迎角変更軸に固定されるベース部材と、該ベース部材に固定されるウエイト本体とを有し、
前記ベース部材が、前記ウエイト本体の迎角変更軸線からの距離を変更可能に構成されていることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の可変ピッチプロペラ。 - 前記カウンターウエイトが、前記ブレードまたは迎角変更軸に固定されるベース部材と、該ベース部材に固定されるウエイト本体とを有し、
前記ベース部材が、質量の異なるウエイト本体を交換可能に構成されていることを特徴とする請求項2乃至請求項4のいずれかに記載の可変ピッチプロペラ。
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