JP5991705B2 - 水耕栽培における高機能性植物体の生産方法 - Google Patents
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Description
2.上記1の生産方法であって、該調整栽培の期間が2日以上である、生産方法。
3.上記1又は2の生産方法であって、日長時間が20時間以上である、生産方法。
4.該調整栽培の期間が7日以内である、上記1ないし3の何れかの生産方法。
5.該日長時間における光強度が少なくとも9,000luxである、上記1ないし4の何れかの生産方法。
6.該調整栽培において野菜の硝酸イオン含有量が低下するものである、上記1ないし5の何れかの生産方法。
7.該調整栽培において野菜の糖度、全糖、アスコルビン酸、アントシアニン、ポリフェノール、葉緑素、及び/又はグルコシノレート含有量が増加するものである、上記1ないし6の何れかの生産方法。
8.上記1ないし7の何れかの生産方法により生産された野菜。
(1)光源: 白色蛍光灯
(2)肥料: 大塚ハウスSA処方(表1)。
(4)CO2施肥: 1,500ppm
実験材料種子をウレタン培地に播種し、照射強度5,000〜5,500lux、室温18〜20℃とし、EC(電気伝導度)=1.0mS/cmに調整した養液で6回/日灌水しつつ、5日間水耕栽培を行って植物体を生育させた。次いで根が完全に浸る状態に植物体を定植し、照射強度13,000〜18,000lux、室温20℃とし、EC=1.8mS/cmに調整した養液で、調整栽培の時期まで根が完全に養液に浸る状態とした湛水式水耕栽培を行った。
生育栽培の後、水耕液及び日長時間を変えて湛水式水耕栽培を行い、それらの条件変化が、収穫される野菜の硝酸イオン含有量及びアスコルビン酸含有量、糖度、葉厚にどのような影響を及ぼすかについて検討した。
(栽培方法)
レタスとして、リーフレタスを用いた。播種後30日間水耕栽培(生育栽培)により育苗した植物体を無作為に6群に分け、表2に示したように、うち5群の植物体につき、水耕液を養液から水(水道水:硝酸態窒素濃度1.29ppm以下)に変更し且つ日長時間を12時間、15時間、18時間、21時間及び24時間の何れかに設定して、湛水式水耕栽培を5日間継続した(調整栽培)。残りの1群を対照群とし、日長時間は12時間、水耕液は養液のまま(硝酸態窒素濃度約170ppm、EC=1.8mS/cm)として湛水式水耕栽培を5日間継続した。なお何れの群についても、光強度は10,000〜15,000luxとした。
1.硝酸イオン含有量の測定:
調整栽培を1日、3日、又は5日行った直後の植物体サンプルを採取し、これに一定量の水を加えて希釈しながらミキサーを用いてサンプルを破砕した後、破砕液を12,000rpmで1分間遠心分離した。こうして得られた上澄み液を用い、RQフレックス(藤原製作所製)で硝酸イオン濃度を測定し、植物体100g当たりの硝酸イオン含有量(mg)を算出した。
調整栽培を1日、3日、又は5日行った直後の植物体サンプルを採取し、これに一定量の5%メタリン酸を加えて希釈しながらミキサーを用いてサンプルを破砕した後、破砕液を12,000rpmで1分間遠心分離した。こうして得られた上澄み液を用い、RQフレックス(藤原製作所製)でアスコルビン酸濃度を測定し、植物体100g当たりのアスコルビン酸含有量(mg)を算出した。
調整栽培を1日、3日、又は5日行った直後の植物体サンプルを採取し、これに水100mlを加えてミキサーで破砕し、破砕液を12,000rpmで1分間遠心分離した。上澄み液につきポケット糖度計(PAL−1:アタゴ製)を用いて糖度を測定した。
調整栽培を1日、3日、又は5日行った直後の植物体サンプルにつき、葉先から約5〜10mmの箇所における葉の厚みをクイックミニ(ミツトヨ製)を用いて測定した。
1.硝酸イオン含有量:
各群の植物体の硝酸イオン含有量の推移を図1に示す。図において、「H」は養液、「W」は水による水耕栽培であることをそれぞれ示し、それら記号の前に付された数値は日長時間(単位:時間)を示す(以下の実施例において同じ。)。
図2は、各群の植物体のアスコルビン酸含有量(mg/100g)の推移を示す。図2に見られるように、対照群(12H)では、栽培日数1日、3日、5日とアスコルビン酸含有量には特段の変化が見られなかったのに対し、水耕液を養液から水に置き換えた各群において、植物体のアスコルビン酸含有量は栽培日数に対応して急速に増加し、その増加の程度は日長時間が長い群におけるほど著しかった。具体的には、栽培1日後の時点において、日長時間が24時間の24W群では植物体のアスコルビン酸含有量は対照群の約1.7倍と顕著に増加しており、日長時間18時間の18W群においても約1.2倍と増加していた。また、栽培3日後の時点においては、日長時間15〜24時間の各群においてアスコルビン酸含有量が対照群の約1.2〜2.1倍と増加しており、増加の程度は日長時間が長い群におけるほど顕著であった。栽培5日後においては更に、対照群以外の何れの群についても植物体のアスコルビン酸含有量が増加しており、特に日長時間15〜24時間の群の植物体は、日長時間の長さと相関する形で、対照群の約1.7〜3倍のアスコルビン酸含有量を示した。
結果を図3に示す。5日間の栽培期間中に対照群の植物体の糖度には殆ど変化が見られなかったのに対し、栽培1日後の時点において、糖度は、日長時間を18時間とした18W群の植物体では対照群の約1.1倍、日長時間を21時間及び24時間とした21W群及び24W群においては、対照群の約1.2倍となった。また栽培3日後の時点においては、日長時間を15時間、18時間、21時間及び24時間とした15W群、18W群、21W群及び24W群の植物体で、糖度が対照群のそれぞれ約1.1倍、約1.3倍、約1.4倍及び約1.5倍と、増加が一層顕著となった。対照群以外の群の植物体の糖度は、栽培5日後の時点において更に増加し、特に、日長時間15時間の15W群、18時間の18W群、21時間の21W群及び24時間の24W群で、それぞれ対照群の約1.4倍、約1.6倍、約1.8倍及び約2倍となった。
結果を図4に示す。葉厚についても、日長時間18時間の18W群から24時間の24W群まで、日長時間の長さに対応して対照群より厚くなるのが認められ、またそれは栽培日数を1日、3日及び5日と経るにつれて、一層顕著となった。一般に蛍光灯のような人工照明下での栽培では得られる植物体が軟弱であるという弱点があるが、この結果はその点について改善できることを示している。また、これらの群の植物体は、対照群の植物体に比して外観の緑色が濃く、水耕液中の硝酸態窒素を欠如させても色が薄くなる等の外観への悪影響が防止できることが確認された。
実施例1−1と同一の手順及び条件でリーフレタスを栽培(生育栽培及び調整栽培)し、以下の方法により植物体中のポリフェノール含有量を測定した。
植物体を液体窒素中で凍結させ破砕したサンプル1gに対し80%エタノールを10ml加えて、冷暗所で2時間静置し、3000rpmで5分間遠心分離して得られた上澄みをポリフェノール抽出液とした。抽出液のポリフェノール含有量を、フォーリンチオカルト法により測定した。すなわち抽出液1mlに1/2希釈したフェノール試薬(MPバイオケミカル社製)1mlを加えて混合し、更に10%炭酸ナトリウム水溶液を1ml加えて攪拌し室温で60分間静置した。その後、分光光度計(UV−160;島津製作所)にて吸光度700nmの吸光度を測定した。リファレンス試料としてケルセチンを用いて、試料中のポリフェノール含有量をケルセチン当量(mgケルセチン/100g)として算出した。結果を図5に示す。
葉緑素は、皮膚疾患や火傷等において回復促進作用を示すことが知られている。また葉緑素含有量が多いすなわち緑色の濃い野菜が好まれる傾向があり、葉緑素含有量が多いことは野菜の商品価値の向上につながる。更に、葉緑素含有量とβ−カロテンの含有量とが高い相関を示すことが知られており、葉緑素含有量の増加はβ−カロテン含有量の増加を伴う可能性が高い。β−カロテンは、人体に摂取されるとビタミンAと同様の作用を示し、癌の増殖阻害や免疫機能の強化に有用な成分であることが知られている。そこで本発明の方法が野菜の葉緑素含有量に与える効果について検討した。
実施例1−1と同一の手順及び条件でリーフレタスを栽培(生育栽培及び調整栽培)し、葉緑素計SPAD502(コニカミノルタ製)を用いて、上記光処理を行ったレタスの葉中の葉緑素含有量を測定した。
調整栽培における水耕液中の硝酸態窒素濃度と植物体の硝酸イオン含有量との関係を検討した。
(栽培方法)
レタスとして、リーフレタスを用いた。播種後30日間水耕栽培(生育栽培)により育苗した植物体を無作為に5群に分け、うち4群については水耕液の濃度を硝酸態窒素濃度38〜170ppm(EC=0.4〜1.8mS/cm)とし、残り1群については水耕液を水道水(硝酸態窒素濃度1.29ppm以下)に置き換えて、それぞれ日長時間を18時間、光強度を10,000〜15,000luxとして湛水式水耕栽培を4日間継続した後、植物体を収穫して、実施例1に記載した方法で硝酸イオン含有量を測定した。
結果を図7に示す。水耕液中の硝酸態窒素濃度170ppmで栽培した場合の植物体の硝酸イオン含有量(約390mg/100g)に比して、38ppmまで濃度を下げた栽培での植物体の硝酸イオン含有量はもとの約85%(約330mg/100g)までしか低下しなかった。これに対し、水耕液を水道水に置き換えた場合には、もとの約33%(約130mg/100g)まで低減した。これらの結果からみて、本発明の目的のためには、調整栽培の段階における水耕液の硝酸態窒素濃度は約15ppm以下とするのが好ましい。
水菜、小松菜、春菊について、水耕液および日長時間の変更の効果を以下のようにして検討した。
(栽培方法)
水菜、小松菜、春菊を、それぞれ各野菜についての最適期間である21日間、28日間及び32日間生育栽培した後、野菜毎に無作為に4群に分割し、うち3群について水耕液を水道水に変更すると共に日長時間を12時間、18時間及び21時間にそれぞれ設定して湛水式水耕栽培を1日継続した。残り1群(対照群)については条件を日長時間は12時間、水耕液は養液のまま(硝酸態窒素濃度約170ppm、EC=1.8mS/cm)として湛水式水耕栽培を1日継続した。次いで植物体を収穫し、各群の植物体につき、硝酸イオン含有量及びアスコルビン酸含有量並びに糖度を、実施例1と同様にして測定した。
結果を図8〜10に示す。
1.硝酸イオン含有量
図8に各群の植物体の硝酸イオン含有量を示す。図に見られるとおり、水耕液を水に変更すると共に日長時間を18時間以上とすることにより、僅か1日の調整栽培で、硝酸イオン含有量の低減が認められた。水菜及び小松菜では、水耕液の水への変更及び日長時間を12時間とした群でも硝酸イオン含有量の僅か(10%未満)の低減が認められたものの、水耕液の変更及び日長時間を18時間以上とした群では、硝酸イオン含有量の低減は、はるかに顕著であった。また何れの野菜についても、水耕液を水に変更し日長時間を21時間としたとき、硝酸イオン含有量の一層の低減が認められた。
図9に各群の植物体のアスコルビン酸含有量を示す。図にみられるように、水耕液を水道水に変更し日長時間12時間とした群(12W)では、1日の栽培では何れの植物体においてもアスコルビン酸含有量の増加は認められなかった。しかしながら、水耕液の変更と併せて日長時間を18時間とした群(18W)では、僅か1日の栽培でもアスコルビン酸含有量は顕著に増加した。対照群との比較における増加率は、水菜約33%、小松菜約28%、春菊約16%であった。また日長時間を21時間とした群(21W)ではアスコルビン酸含有量の増加は一層顕著となり、対照群との比較における増加率は、水菜約66%、小松菜約39%、春菊約38%であった。
図10に各群の植物体の糖度を示す。図にみられるように、水耕液を水道水に変更し日長時間12時間とした群(12W)では、1日の水耕栽培では糖度の増加は僅かであったが、日長時間を18時間とした群(18W)では、何れの植物体も、対照群との比較において糖度が15%以上向上していた。また日長時間を21時間とした群(21W)では、何れの植物体も、対照群との比較において糖度が20%以上向上していた。
赤色レタスとしてリーフレタスを用いて、水耕液および日長時間変更の効果を検討した。
(栽培方法)
上記リーフレタスを34日間生育栽培した後、無作為に4群に分割した。うち2群(14W、24W)については水耕液を水道水に変更すると共に日長時間をそれぞれ14時間及び24時間に設定し、残り2群(14H、24H)については水耕液を硝酸態窒素濃度約170ppm、EC=1.8mS/cmの養液とし日長時間を14時間及び24時間にそれぞれ設定して、何れも4日間栽培した。次いで各群の植物体を収穫して以下の項目につき分析・評価した。
1.アントシアニン含有量測定
植物体を液体窒素中で凍結させ破砕したサンプル1gに対し、1%塩酸−メタノールを10ml加えて冷蔵庫に一晩静置し、アントシアニンを抽出した。その後3,000rpmで10分間遠心分離を行い、分光光度計(UV−160:島津製作所製)にて530nm及び657nmにおける吸光度を測定し、以下の計算式:
アントシアニン量 A’530=A530−A657×0.25
により、クロロフィルによる吸光の影響を除いた値をアントシアニン含有量とした(参考文献Plant Physiol. (1991) 96、1079-1085) 。
色相値は色味の違いを示す値であり、外観の赤色の発色を評価することができる。植物体の真上70cmからデジタルカメラ(μ725SW:OLYMPUS製)にて640×480ピクセルの画像を、照明条件を一定にして撮影した。撮影した画像を三原色のカラープレーンに分解し、レタス領域の画素の色情報から、当該画像全体の平均としての色相値を算出した。
植物体を液体窒素中で凍結させ破砕したサンプル1gに蒸留水10mlを加え、95℃で1時間加熱して抽出した。適当な濃度となるよう希釈した分析試料に等量の5%フェノール溶液を加えた後、2.5倍量の濃硫酸を加えてすぐに攪拌した。20分室温で放置し、分光光度計(UV−160:島津製作所製)にて490nmにおける吸光度を測定した。標準溶液(グルコース水溶液)の検量線から、全糖含有量を算出した。
結果を図11及び12に示す。
1.アントシアニン含有量及び色相値
結果を図11に示す。水耕液を水道水に変更すると共に日長時間を24時間とした群(24W)では、アントシアニン含有量は対照群(14H)に比して3.6倍と著しく増加しており、また外観の色の指標である色相値は、赤色を示す方向へ約40°変位しており、また肉眼的にも赤色レタスとしての色を呈していた。これに対し、対照群に比して、水耕液を水道水に変更しただけの群(14W)も、日長時間を24時間に延長しただけの群(24H)の何れも、植物体のアントシアニン量の増加は限定的であり、前者では約1.2倍、後者では約1.8倍に止まり、色相値において赤方への変位は僅か5°程度に過ぎず、肉眼的にも着色は僅かしか見られなかった。このことは、アントシアニン含有量の十分な増加と十分な赤色の着色のためには、水耕液の水への変更と日長時間の延長とを併せて行うことが極めて効果的であることを示している。
結果を図12に示す。植物体の全糖含有量は、対照群(14H)に比して、水耕液を水道水に変更し且つ日長時間を24時間とした群(24W)において、約2.5倍と著しく増加していた。これに対し、対照群に比して、水耕液を水道水に変更しただけの群(14W)及び日長時間を24時間に延長しただけの群(24H)では、植物体の全糖含有量は対照群の1.5〜1.6倍に止まった。このことは、さまざまな有用成分の元となる全糖含有量の十分な増加のためには、水耕液の水への変更と日長時間の延長とを併せて行うことが極めて効果的であることを示している。
実施例4−1と同様にしてリーフレタスを32日間生育栽培した後、無作為に7分割し、うち5群については、水耕液を水道水に変更し且つ日長時間を12時間(12W)、15時間(15W)、18時間(18W)、21時間(21W)及び24時間(24W)にそれぞれ設定した。残り2群については、水耕液を硝酸態窒素濃度約170ppm、EC=1.8mS/cmの養液とし日長時間を12時間及び24時間にそれぞれ設定(12H、24H)した。各群の植物体を1〜3日栽培し、栽培1日後及び3日後の時点での各群の植物体のアントシアニン含有量及び色相値を、実施例4−1の方法に従って求めた。
結果を図13及び14に示す。
図13に栽培1日後における結果を、図14に栽培3日後における結果を、それぞれ示す。対照群(12H)との比較において、水耕液を水道水に変更し日長時間を18時間とした群(18W)では、1日の栽培後に植物体のアントシアニン含有量が約26%増加し色相値も赤方に変位していた。また水耕液を水道水に変更し日長時間を21時間とした群(21W)では、1日の栽培後に植物体のアントシアニン含有量及び色相値の双方共に大幅に向上し、肉眼的にも葉に赤色の発色が認められた。また3日間の栽培後には、前者(18W)でアントシアニン含有量の2.5倍以上への増加及び色相値の15°以上の赤方への変位が、後者(21W)でアントシアニン含有量の3.5倍以上への増加及び色相値の30°以上の赤方への変位が、それぞれ認められ、何れも赤色がより強くなった。これに対し、水耕液として養液を用い日長時間を24時間に設定した群(24H)では、1日の栽培後にアントシアニン含有量及び色相値に向上が見られたものの、3日間の栽培後にはアントシアニン含有量及び色相値共に、対照群(12H)と同程度にまで後退した。
赤色レタスを用いて、水耕液を水に変更して水耕栽培した場合における日長時間24時間での光強度と植物体の硝酸イオン含有量の低減効果との関係を検討した。
(方法)
実施例4−1と同様にして生育栽培した赤色レタスを無作為に3群にわけ、何れの群についても水耕液を水に変更すると共に、光強度10,000〜15,000luxで日長時間12時間(P群)、光強度5,000〜7,500luxで日長時間24時間(Q群)、及び光強度10,000〜15,000luxで日長時間24時間(R群)にそれぞれ設定して4日間栽培した後、各群の植物体の硝酸イオン含有量を測定した。
結果を図15に示す。植物体の硝酸イオン含有量は、光強度を10,000〜15,000luxとし日長時間を12時間としたP群の142mg/100g(日長時間12時間)に比べ、光強度を5,000〜7,500lux、日長時間24時間としたQ群では133mg/100gと僅か7%程度の低下しか示さなかったが、光強度を10,000〜15,000luxとし日長時間を24時間としたR群では93mg/100gと約35%の顕著な低下を示した。また、肉眼的にもQ群では葉に赤色の発色の向上は認められなかったが、R群では顕著な赤色の発色が認められた。このことは、光強度5,000〜7,500luxでは実質的に効果がないことを示している。
植物の養分貯蔵器官(シンク部位)においても本発明の方法による効果が得られるか否かを確認するため、カブを用いて、その養分貯蔵器官である肥大根の硝酸イオン含有量及び糖度が水耕液及び日長時間の変更によりどのように変化するかを調べた。すなわち、カブの種子を播種し28日間育成栽培した後、一部はそのまま養液を用いた日長時間12時間の対照群(12H群)とし、他は水耕液を水道水に変更し日長時間を12時間、18時間及び21時間に変えた群(それぞれ、12W群、18W群及び21W群)として、湛水式水耕栽培を1日又は5日間継続した。なお、光強度は、10,000〜15,000luxとした。次いで植物体を葉部および茎部(地上部)と根の肥大部(地下肥大部)とに分けて収穫し、それぞれの硝酸イオン含有量及び地下肥大部の糖度を測定した。
1.硝酸イオン含有量:
結果を図16に示す。硝酸イオン含有量は、他の葉菜類と同様に水耕液を水に変更し日長時間を18時間、21時間とした群(それぞれ18W群、21W群)では、1日の栽培で、地上部、地下肥大部ともに対照群に比して18%を超える低減が見られた。また5日間の栽培では、硝酸イオンの低減は更に顕著となった。
結果を図17に示す。18W群、21W群では、僅か1日の栽培で対照群より糖度が5.4%以上増加し、5日間の栽培では更に大幅に増加した。これに対して日長時間は対照群と同じ12時間とし水耕液を水に変更したのみの群(12W群)では、糖度の増加は認められなかった。
ケール等のアブラナ科植物を中心に含有されるカラシ油配糖体であるグルコシノレートは、ワサビやダイコンの辛味成分であるイソチオシアネートの前駆物質である。本成分は解毒機能を強化し、また抗癌作用を有することが知られている。またケールに含まれるグルコシノレートの殆どはシニグリンであることが分かっているが、人体に対しては、消化促進作用や利尿作用がある。また本成分の増加は、その独特の食味を増すことにもつながる。そこで、本発明の方法がケールのグルコシノレート含有量に与える効果について検討した。
実施例1−1と同一の手順及び条件でケールを最適期間である30日間生育栽培した後、無作為に6群に分け、うち5群については水耕液を水道水に変更すると共に日長時間を12時間、15時間、18時間、21時間及び24時間にそれぞれ設定して湛水式水耕栽培を1日継続した(それぞれ、12W群、15W群、18W群、21W群、24W群)。対照として残り1群(12H群)については日長時間を12時間、水耕液は養液のまま(硝酸態窒素濃度約170ppm、EC=1.8 mS/cm)として、湛水式水耕栽培を1日継続した。次いで植物体を収穫し、各群の植物体につき次の方法でグルコシノレート含有量を測定した。
Claims (5)
- 生育条件としての栄養,光,水及び温度を管理した状態における人工照明下での水耕栽培による葉菜類野菜の生産方法であって、生育させた野菜を、その収穫直前に養液を水に置き換え且つ日長時間を20時間以上とし該日長時間における光強度の上限を20000luxとして,2日以上5日以内の期間水耕栽培するものである調整栽培に付すことを特徴とする、生産方法。
- 該野菜が、レタス、水菜、ホウレンソウ、春菊、小松菜、チンゲンサイ、キャベツ、白菜、しそ、からし菜、ケール、及びハーブ類よりなる群から選ばれるものである、請求項1の生産方法。
- 該日長時間における光強度が少なくとも9,000luxである、請求項1又は2の何れかの生産方法。
- 該調整栽培において野菜の硝酸イオン含有量が低下するものである、請求項1ないし3の何れかの生産方法。
- 該調整栽培において野菜の糖度、全糖、アスコルビン酸、アントシアニン、ポリフェノール、葉緑素、及び/又はグルコシノレート含有量が増加するものである、上記1ないし4の何れかの生産方法。
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