JP5991592B2 - ニトリル関連酵素の酵素活性検出用蛍光基質 - Google Patents

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Description

本発明は、新規化合物及び該化合物を含むニトリル関連酵素の酵素活性を検出するための蛍光基質並びに前記化合物を用いた被検物質の酵素活性の検出方法に関する。
現在、化学品の原料となる化合物の製造工程においては、転換率や選択率の高さ、光学活性化合物の場合には立体選択性の高さから、酵素反応が利用されている。例えば、種々の化学品の原料となるニトリル化合物(アクリルアミド、アクリル酸等)の製造には、ニトリラーゼ、ニトリルヒドラターゼ、アミダーゼ等による酵素反応が用いられている。ニトリラーゼは、ニトリル基を加水分解してカルボン酸基に変換する酵素であり、ニトリルヒドラターゼは、ニトリル基を水和しアミド基に変換する酵素であり、アミダーゼはアミド基を加水分解してカルボン酸基に変換する酵素である。
これらの酵素を有する微生物は、土壌をはじめとする自然界よりスクリーニングされている。スクリーニング方法としては、一般に、ニトリル化合物などを唯一の窒素源または炭素源として生育する微生物を濃縮し、得られた微生物の中から酵素活性を有するものを取得する方法が採用されている。酵素活性は、ニトリル化合物やアミド化合物と微生物とを反応させ、生成物を高速液体クロマトグラフィーやガスクロマトグラフィーなどの機器により解析する。
一方で、自然界に存在する微生物のうち、現在の技術で単離・培養可能であるものは1%未満にすぎないという研究結果が報告されている(非特許文献1:M.S. Rappe and S.J. Giovannoni, Annu. Rev. Microbiol., 57, 369 (2003))。
そこで、従来法のように微生物を単離するのではなく、自然界から遺伝子(環境DNA又はメタゲノム)を直接単離し、その中から有用な酵素遺伝子をスクリーニングするという手法(メタゲノムスクリーニング)が行われるようになってきた。この手法を用いるためには、メタゲノムを利用した極めて多数の組換え体を作製し、これらの中から活性ある組換え体を効率よく選別する技術が求められる。しかしながら、高速液体クロマトグラフィーやガスクロマトグラフィーなどの機器を用いる方法は、ハイスループット性に欠ける。そこで、ハイスループットスクリーニングを可能とする新規な技術が求められるようになった。
他方、蛍光物質に関連する発明として、蛍光プローブ又は蛍光ラベル化剤の発明が知られている(特許文献1:国際公開第2004/005917号、特許文献2:国際公開第2006/019105号)。また、本発明者が開発したニトリル関連酵素の検出用蛍光基質が知られている(特許文献3:国際公開第2011/149109号)。
国際公開第2004/005917号 国際公開第2006/019105号 国際公開第2011/149109号
M.S. Rappe and S.J. Giovannoni, Annu. Rev. Microbiol., 57, 369 (2003)
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、ニトリル関連酵素の酵素活性をより高感度に検出するための蛍光基質及び該蛍光基質を用いた被検物質の酵素活性の検出方法を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、新規化合物の開発に成功し、該化合物をニトリル関連酵素の酵素活性検出用蛍光基質として用いることにより、公知の蛍光基質と比較して、より高感度にニトリル関連酵素の酵素活性を検出することができることを見出した。本発明はこのような知見に基づき発明されたものである。
すなわち、本発明は以下の通りである。
(1)下記式(I):


[式中、R1は、-CN、-CONH2、-CH=CH-CN又は-CH=CH-CONH2を表し、R2はハロベンジル基を表し、R3及びR4は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子又はC1-4アルキル基を表し、R5は、水素原子、C1-4アルキルカルボニル基又はC1-4アルキルカルボニルオキシメチル基を表す]
で示される化合物、その塩又はそれらの水和物。
(2)上記(1)に記載の化合物、その塩又はそれらの水和物を含む、ニトリル関連酵素の酵素活性検出用蛍光基質。
(3)ニトリル関連酵素が、ニトリラーゼ、ニトリルヒドラターゼ及びアミダーゼからなる群から選択される少なくとも1種である、上記(2)に記載の基質。
(4)R1が-CNであり、ニトリル関連酵素がニトリラーゼ又はニトリルヒドラターゼである、上記(2)に記載の基質。
(5)R1が-CONH2であり、ニトリル関連酵素がアミダーゼである、上記(2)に記載の基質。
(6)下記式(II):


で示される化合物、その塩又はそれらの水和物。
(7)上記(6)に記載の化合物、その塩又はそれらの水和物を含む、ニトリラーゼ又はニトリルヒドラターゼの酵素活性検出用蛍光基質。
(8)被検物質の酵素活性を検出する方法であって、以下の工程:
(a) 被検物質と上記(2)〜(5)及び(7)のいずれかに記載の基質とを反応させる工程、及び
(b) 工程(a)における反応により生じた蛍光の強度を測定する工程
を含む、前記方法。
(9)酵素活性が、ニトリラーゼ、ニトリルヒドラターゼ及びアミダーゼからなる群から選択される少なくとも1種の酵素の活性である、上記(8)に記載の方法。
(10)上記(2)〜(5)及び(7)のいずれかに記載の基質を含む、ニトリル関連酵素の酵素活性検出用キット。
本発明の化合物を用いることにより、公知の蛍光基質と比較して、より高感度にニトリル関連酵素の酵素活性を検出することができる。
本発明の化合物と公知化合物の吸収スペクトルを示す図である。 ニトリルヒドラターゼによる蛍光スペクトルの変化を示す図である。 ニトリルヒドラターゼの酵素反応についてHPLC分析を行った結果を示す図である。 ニトリラーゼによる蛍光スペクトルの変化を示す図である。 ニトリラーゼの酵素反応についてHPLC分析を行った結果を示す図である。 ニトリルヒドラターゼの酵素反応による生成物の安定性について、HPLC分析を行った結果を示す図である。 ニトリラーゼの酵素反応による生成物の安定性について、HPLC分析を行った結果を示す図である。
以下、本発明を詳細に説明する。以下の実施の形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明をこの実施の形態のみに限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨を逸脱しない限り、様々な形態で実施をすることができる。
1.概要
本発明は、ニトリル関連酵素の作用により蛍光が変化する化合物(以下、「本発明の化合物」とも称する。)及び該化合物を含むニトリル関連酵素の酵素活性を検出するための蛍光基質に関する。また、本発明は、被検物質と本発明の化合物とを反応させ、この反応で生じた蛍光の波長及び強度を測定することにより、被検物質の酵素活性を検出する方法に関する。
本発明者は、以前ニトリル関連酵素の酵素活性の検出に有用な化合物を開発したが、より高感度に当該活性を検出するための蛍光基質の開発が望まれていた。
そこで、本発明者は新規化合物を開発し、当該化合物を蛍光基質として用いることにより、公知の蛍光基質と比較して、より高感度にニトリル関連酵素の酵素活性を検出することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
2.化合物
本発明において、「ニトリル関連酵素の作用により蛍光が変化する化合物」とは、酵素の作用により、化合物に含まれるニトリル基(シアノ基)(-CN)がアミド基(-CONH2)又はカルボキシル基(-COOH)に、又は化合物に含まれるアミド基がカルボキシル基に変換されるのに伴って蛍光が変化する化合物を意味する。本発明の化合物は、蛍光団及びニトリル基又はアミド基を有するものであり、化合物中のニトリル基がアミド基又はカルボキシル基に変換されることにより、又は化合物中のアミド基がカルボキシル基に変換されることにより、蛍光団に由来する蛍光が変化するという特徴を有するものであれば、限定されるものではない。
また、ニトリル関連酵素の作用により蛍光が変化するメカニズムは一様ではないが、例えば式(I)で示される化合物については以下のように説明することができる。
本化合物においては、ニトリル関連酵素の反応前には、PeT(光誘起電子移動:Photo-induced Electron Transfer)によりほぼ無蛍光又は低蛍光である。しかしながら、酵素反応によりニトリル基やアミド基が加水分解されるとPeTが起こらなくなり、蛍光を発する。PeTは、光励起されることにより生じる電子移動反応である。
例えば、本発明に含まれる化合物1は、そのキサンテン部位からベンゼン環部位へのPeTにより、励起蛍光団であるキサンテン環部位からの蛍光が消光されており、ほぼ無蛍光の状態となっている。しかしながら、化合物1のニトリル基がニトリラーゼにより加水分解され、化合物5が生成すると、PeTが起こらなくなり、化合物5は蛍光を発する。化合物1及び化合物5については、後述する。
本発明において、ニトリル関連酵素とは、ニトリル関連化合物(ニトリル基を有する化合物及びアミド基を有する化合物)に作用する酵素を意味する。このような酵素しては、例えば、ニトリラーゼ、ニトリルヒドラターゼ及びアミダーゼが挙げられる。
ニトリル関連酵素の「作用」とは、水和反応又は加水分解反応を意味する。
蛍光の「変化」とは、蛍光波長のシフト及び/又は蛍光強度の変化を意味する。「変化」したか否かは、以下の基準に基づき判断することができる。蛍光強度が強くなる場合は、1.5倍以上、好ましくは2倍以上、より好ましくは3倍以上になる場合をいい、蛍光強度が弱くなる場合は、2/3以下、好ましくは1/2以下、より好ましくは1/3以下になる場合をいう。また、蛍光波長が変化する場合は、10nm 、好ましくは30nm、より好ましくは60nm以上、長波長側または短波長側にシフトする場合をいう。
本発明において、ニトリル関連酵素の作用により蛍光が変化する化合物としては、例えば、以下の式(I)で示される化合物が挙げられる。

式(I)において、R1で表される置換基としては、ニトリル関連酵素と反応する置換基であれば限定されるものではなく、-CN、-CONH2、-CH=CH-CN又は-CH=CH-CONH2が挙げられる。
R2で表される置換基としては、ハロベンジル基が挙げられる。
R3及びR4で表される置換基としては、水素原子、ハロゲン原子又はC1-4アルキル基が挙げられる。
R5で表される置換基としては、水素原子、C1-4アルキルカルボニル基又はC1-4アルキルカルボニルオキシメチル基が挙げられる。
本発明において、「ハロベンジル基」とは、ベンジル基に含まれるベンゼン環において水素原子の少なくとも1つがハロゲン原子で置換されている置換基を意味し、例えば、2−フルオロベンジル基、3−フルオロベンジル基、4−フルオロベンジル基、2−クロロベンジル基、3−クロロベンジル基、4−クロロベンジル基、2−ブロモベンジル基、3−ブロモベンジル基、4−ブロモベンジル基、2−ヨードベンジル基、3−ヨードベンジル基、4−ヨードベンジル基が挙げられるが、好ましくは4−クロロベンジル基である。
「C1-4アルキル基」とは、炭素数が1〜4個の直鎖状又は分枝鎖状のアルキル基を意味し、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基などが挙げられる。
本発明において「C1-4アルキルカルボニル基」としては、例えば、アセチル基、エチルカルボニル基、プロピオニルカルボニル基、イソブチルカルボニル基などが挙げられるが、好ましくはアセチル基である。
本発明において「C1-4アルキルカルボニルオキシメチル基」としては、例えば、アセトキシメチル基、エトキシメチル基、プロピオニルオキシメチル基、イソブチリルオキシメチル基などが挙げられるが、好ましくはアセトキシメチル基である。
本発明において「ハロゲン原子」としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられるが、好ましくはフッ素原子又は塩素原子である。
R2がハロベンジル基であることが、アルキル基である場合と比較してさらに好ましい理由としては、以下の理由が挙げられる。
Gaussian09Wを用いた軌道計算(6-31+G*使用)によると、R2がアルキル基である場合よりもハロベンジル基である場合の方が、ベンゼン環部位のLUMO(lowest unoccupied molecular orbital)が低くなっている。すなわち、R2がハロベンジル基である場合は、アルキル基である場合と比較して、キサンテン環からベンゼン環へのPeT(光誘起電子移動:Photo-induced Electron Transfer)の効率が上がり、本発明化合物のバックグラウンド蛍光を低減するため、ニトリル関連酵素の作用により大きな蛍光強度変化を引き起こすことができる。なお、この知見は、本発明者が式(I)で示される化合物を開発した後で得られたものであり、本発明の化合物を開発するまでは予測できなかったものである。
本発明の別の態様において、ニトリル関連酵素の作用により蛍光が変化する化合物としては、例えば、以下の式(II)で示される化合物が挙げられる。式(II)で示される化合物は、式(I)で示される化合物に包含される。


式(II)で示される化合物としては、例えば、5-シアノフルオレセイン-4-クロロベンジルエステル、4-シアノフルオレセイン-4-クロロベンジルエステル、3-シアノフルオレセイン-4-クロロベンジルエステル、5-シアノフルオレセイン-3-クロロベンジルエステル、5-シアノフルオレセイン-2-クロロベンジルエステル、4-シアノフルオレセイン-3-クロロベンジルエステル、4-シアノフルオレセイン-2-クロロベンジルエステル、3-シアノフルオレセイン-3-クロロベンジルエステル、3-シアノフルオレセイン-2-クロロベンジルエステルなどが挙げられるが、好ましくは5-シアノフルオレセイン-4-クロロベンジルエステルである。
式(I)で示される化合物の代表例を以下に示す。但し、式(I)で示される化合物はこれらに限定されるものではない。

本発明においては、上記化合物1を5-シアノフルオレセイン-4-クロロベンジルエステル(CFCB)と称することがある。
上記式(I)で示される化合物は、その塩又は水和物を形成してもよい。塩は、本発明の効果を有する限り特に限定されるものではなく、酸との塩を形成しても塩基との塩を形成してもよい。
酸との塩としては、例えば塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、燐酸塩等の無機酸との塩、蟻酸、酢酸、乳酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、クエン酸、酒石酸、安息香酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸などの有機酸との塩などを挙げることができる。
塩基との塩としては、例えばナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩、カルシウム塩、マグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、ピコリン、ジシクロヘキシルアミン、N,N'−ジベンジルエチレンジアミン等の有機塩基との塩(有機アミン塩)、あるいはアンモニウム塩などを挙げることができる。
また、本発明の化合物としては、塩を形成しない、いわゆるフリー体を選択することもできる。
式(I)で示される化合物、例えば上記化合物1は、以下の方法により製造することができる。
まず、出発物質として下記式で示される5-シアノフルオレセインを使用することができる。


5-シアノフルオレセインは、当業者であれば公知の方法、例えば国際公開第2011/149109号に記載の方法に基づく方法により取得することができる。
5-シアノフルオレセインを溶解したDMFに、4-クロロベンジルアルコール、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩、及びN,N-ジメチル-4-アミノピリジンを加え、室温で数時間撹拌する。反応液をエバポレーターにより濃縮し、ジクロロメタンと飽和塩化アンモニウム水溶液を加えて分液操作を行い、有機相を抽出する。この有機相に飽和塩化ナトリウム水溶液を加えて再度分液操作を行い、有機相を抽出し、エバポレーターで濃縮する。得られた残渣を全自動カラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン/メタノール = 96/4)により精製し、化合物1を得ることができる。この合成方法に用いる条件、例えば、各試薬の量、反応時間、温度等は、当業者であれば適宜設定することができる。
3.蛍光基質
上記式(I)で示される化合物、その塩又はそれらの水和物は、ニトリル関連酵素の酵素活性を検出するための蛍光基質として用いることができる。
以下、上記式(I)で示される化合物が蛍光を生じるメカニズムについて説明する。
上記式(I)で示される化合物は、ニトリル関連酵素の反応前には、PeT(光誘起電子移動:Photo-induced Electron Transfer)によりほぼ無蛍光である。しかしながら、酵素反応によりニトリル基やアミド基が加水分解されるとPeTが起こらなくなり、蛍光を発する。PeTは、光励起されることにより生じる電子移動反応である。
例えば、化合物1は、そのキサンテン部位からベンゼン環部位へのPeTにより、励起蛍光団であるキサンテン環部位からの蛍光が消光されており、ほぼ無蛍光の状態となっている。しかしながら、化合物1のニトリル基がニトリラーゼにより加水分解され、化合物5が生成すると、PeTが起こらなくなり、化合物5は蛍光を発する。
蛍光を検出することができれば、被検サンプル中にニトリル関連酵素が存在していること、あるいは当該サンプル中に含まれる被検物質がニトリル関連酵素の酵素活性を有することがわかる。
本発明において、ニトリル関連酵素としては、ニトリラーゼ、ニトリルヒドラターゼ、及びアミダーゼが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
また、式(I)で示される化合物において、R1が-CN又は-CH=CH-CNである場合は、ニトリル関連酵素はニトリラーゼ又はニトリルヒドラターゼであることが好ましく、R1が-CONH2又は-CH=CH-CONH2である場合は、ニトリル関連酵素はアミダーゼであることが好ましい。
4.酵素活性の検出方法
本発明は、酵素活性の検出方法を提供する。具体的には、被検物質の酵素活性を検出する方法であって、(a) 被検物質とニトリル関連酵素の作用により蛍光が変化する化合物又は該化合物を含む蛍光基質とを反応させる工程; 及び(b) 工程(a)における反応により生じた蛍光の波長及び強度を測定する工程を含む。
本発明において、被検物質としては、ニトリル関連酵素の酵素活性を有するタンパク質又は当該タンパク質をコードするDNAを含むと予測されるものであれば限定されるものではないが、例えば、自然界から取得したメタゲノムライブラリー又は変異酵素遺伝子ライブラリーなどに含まれる物質が挙げられる。さらに、被検物質には、DNA及びタンパク質だけでなく、当該タンパク質を産生する細胞も含まれる。このような細胞としては、細菌、真菌(酵母、糸状菌など)、植物細胞、動物細胞などが挙げられる。さらに、前記細胞には、ニトリル関連酵素の酵素活性を有するタンパク質を発現するように形質転換された細胞が含まれる。前記細胞としては、限定されるものではないが、例えば、宿主ベクター系の開発されているエシェリヒア(Escherichia)属、バチルス(Bacillus)属、シュードモナス(Pseudomonas)属、セラチア(Serratia)属、ブレビバクテリウム(Brevibacterium)属、コリネバクテリイウム(Corynebacterium)属、ストレプトコッカス(Streptococcus)属、ラクトバチルス(Lactobacillus)属、ロドコッカス(Rhodococcus)属、ストレプトマイセス(Streptomyces)属等の等の細菌、サッカロマイセス(Saccharomyces)属、クライベロマイセス(Kluyveromyces)属、シゾサッカロマイセス(Schizosaccharomyces)属、チゴサッカロマイセス(Zygosaccharomyces)属、ヤロウイア(Yarrowia)属、トリコスポロン(Trichosporon)属、ロドスポリジウム(Rhodosporidium)属、ピキア(Pichia)属、キャンディダ(Candida)属等の酵母、ノイロスポラ(Neurospora)属、アスペルギルス(Aspergillus)属、セファロスポリウム(Cephalosporium)属、トリコデルマ(Trichoderma)属等の糸状菌、などが挙げられる。
メタゲノムライブラリーとは、自然環境中に存在する多様な微生物のDNAから構築されたゲノムライブラリーであり、微生物の培養を行うことなく環境試料から直接DNAを抽出し、ライブラリー化したものである。変異酵素遺伝子ライブラリーとは、既知の酵素をコードするDNAにランダムに変異を導入し、ライブラリー化したものである。
メタゲノムライブラリーの作製方法については、例えば特開2007-159417に記載され、変異酵素遺伝子ライブラリーの作製方法については、Molecular Cloning: A laboratory Mannual, 2nd Ed., Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, N Y., 1989.や、Current Protocols in Molecular Biology, Supplement 1〜38, John Wiley & Sons(1987-1997) などに記載されており、当業者であればこれらの文献に基づいて前記ライブラリーを作製することができる。
本発明の検出方法は、具体的には、例えば以下のような方法で行うことができる。
メタゲノムライブラリー又は変異酵素遺伝子ライブラリーを被検物質として用いる場合、これらのライブラリーに含まれるDNAを細胞に形質導入し、形質転換体のライブラリーを作製する。次に、形質転換体に本発明の化合物又は蛍光基質を導入することにより、形質転換体中で産生されたタンパク質と本発明の化合物又は蛍光基質とを反応させる。その後、前記反応により生じた蛍光の波長及び強度を測定する。蛍光の測定には、蛍光検出機器である蛍光分光光度計やイメージャー、フローサイトメトリー等を用いることができる。
フローサイトメトリー(flow cytometry)は、レーザー光を用いて光散乱や蛍光測定を行うことにより、フローセル中を通過する単一細胞の大きさ、DNA量、細胞表面抗原の分布状態、細胞内酵素活性などを計測する方法をいう。本発明の方法においては、被検物質とニトリル関連酵素の作用により蛍光が変化する化合物とを反応させ、この反応により生じた蛍光を、フローサイトメトリーを用いて測定することができる。
フローサイトメトリーは、市販されているフローサイトメーターを用い、製造業者の説明書に従って行うことができる。フローサイトメーターは、レーザー発生装置、光学系、ノズル、データ処理装置を含む装置であり、蛍光を生じる細胞の自動分離、蛍光の分析及びコンピューターによる解析をすることができる。特に、細胞の分取機能を有するフローサイトメーター(セルソーター)は、目的の蛍光を生じる細胞のみを高速に選別及び分取することが可能である。セルソーターは、セルソーター内のノズルを超音波振動させることによりシース流に液滴を形成させ、目的の細胞を含むシース流が液滴を形成する瞬間に荷電する。荷電した液滴はマイナスに荷電した偏向板に引き付けられ、チューブに回収される。このようにして、目的の蛍光を有する細胞は選別及び分取される。市販されているフローサイトメーターとしては、例えば、BD FACSCaliburTM フローサイトメーター、BD FACSAriaTM III セルソーター(日本ベクトン・ディッキンソン株式会社)などが挙げられる。
本発明においては、被検物質と本発明の化合物又は蛍光基質との反応により生じた蛍光をフローサイトメトリーを用いて測定し、目的の蛍光を生じる細胞、すなわち目的の酵素活性を有する物質を含む細胞を高速でスクリーニングし、分離又は分取することができる。フローサイトメトリーを用いない場合、一日当たり数百個の細胞の蛍光を測定することが可能であるのに対し、FACS(Fluorescence-activated cell sorting)システムによるフローサイトメトリーを用いた場合、一日あたり数万〜数百万個の細胞の蛍光を測定することが可能である。このことは、FACSによる処理細胞数が1秒当たり数百個である場合、百万個の細胞の測定が1〜2時間で完了することを意味し、より高性能のFACS(1秒当たり約7000個)であれば、百万個の細胞の測定を数分で完了することを意味する。
従って、本発明の方法においてフローサイトメトリーを用いて蛍光を測定することにより、被検物質の酵素活性の検出を自動化及び高速化することができるだけでなく、目的の酵素活性を有する物質を含む細胞の選別及び分取を自動化及び高速化(ハイスループットスクリーニング)することが可能である。
5.キット
本発明は、上記式(I)で示される化合物を含む蛍光基質を含有する、ニトリル関連酵素の酵素活性検出用キットを提供する。本発明のキットは、本発明の蛍光基質の他に、溶解液、緩衝液、使用説明書など、ニトリル関連酵素の酵素活性の検出に必要な他の任意の構成要素を適宜含めることができる。
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
1.ニトリル関連酵素の作用により蛍光が変化する化合物の合成
(1)式(I)で示される化合物
ニトリル関連酵素の作用により蛍光が変化する化合物として、本発明における式(I)で示される化合物の代表例を以下に示す。

(2)式(I)で示される化合物の合成
上記化合物1は、以下の方法に従って合成した。
まず、出発物質である5-シアノフルオレセインは、国際公開第2011/149109号に記載の方法を参照して取得した。
次に、5-シアノフルオレセイン(49.9 mg, 0.140 mmol)を溶解したDMF(2 mL)に、4-クロロベンジルアルコール(203.7 mg、1.43 mmol)、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(30.5 mg、0.159 mmol)、及びN,N-ジメチル-4-アミノピリジン(6.4 mg, 0.0524 mmol)を加え、室温で6時間撹拌した。反応液をエバポレーターにより濃縮し、ジクロロメタンと飽和塩化アンモニウム水溶液を加えて分液操作を行い、有機相を抽出した。この有機相に飽和塩化ナトリウム水溶液を加えて再度分液操作を行い、有機相を抽出し、エバポレーターで濃縮した。得られた残渣を全自動カラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン/メタノール = 96/4)により精製し、オレンジ色の固体として化合物1(6.1 mg, 0.0127 mmol)を得た(収率9.1%)。
化合物1
1H NMR (400 MHz, CD3OD) δ: 8.61 (d, 1H, J = 1.3 Hz), 8.16 (dd, 1H, J = 1.7 and 8.0 Hz), 7.58 (dd, 1H, J = 0.3 and 8.0 Hz), 7.17 (d, 2H, J = 8.5 Hz), 6.92 (d, 2H, J = 9.2 Hz), 6.83 (d, 2H, J = 8.5 Hz), 6.65 (dd, 2H, J = 2.1 and 9.2 Hz), 6.59 (d, 2H, J = 2.1 Hz), 4.93 (s, 2H). HRMS (ESI-): m/zcalculated for [M - H]- 480.06442, found 480.06597.
2.蛍光基質の吸収スペクトル及び蛍光量子収率
本発明の化合物1と公知化合物の吸収スペクトルと蛍光量子収率(Φfl)を測定し、両者を比較した。
公知化合物としては、下記式で示される5-シアノフルオレセイン-メチルエステル(国際公開第2011/149109号)を用いた。


化合物の吸収スペクトルと蛍光量子収率の測定は、以下のようにして行った。
化合物1をDMSOに溶解した1 mMの溶液を調製し、これをpH 2からpH 12の200 mMリン酸ナトリウム緩衝液に加えて0.1%のDMSOを含む1μMのサンプル溶液を調製した。これらの300 nmから600 nmの吸収スペクトルを紫外可視分光光度計UV-2450(島津製作所)を用いて測定した。また、200 mMのリン酸ナトリウム緩衝液(pH 7.3)中に0.02%のDMSOを含む0.2μMの化合物1のサンプル溶液を調製し、絶対PL量子収率測定装置Quantaurus-QY(浜松ホトニクス)を用い、470 nmの励起光を照射して蛍光量子収率を測定した。
その結果、化合物1と公知化合物とは類似した吸収スペクトルを示した(図1)。
他方、化合物1及び公知化合物の蛍光量子収率は、それぞれ、0.154及び0.172であり、化合物1の蛍光量子収率は公知化合物よりも低い値を示した。
この結果は、化合物1のベンゼン部位のLUMO(lowest unoccupied molecular orbital)が公知化合物のLUMOよりも低いことに起因すると考えられた。
ニトリルヒドラターゼによる反応
・ ニトリルヒドラターゼ粗酵素液(細胞抽出液)の調製
ロドコッカス属細菌においてロドコッカス ロドクロウスJ1株由来ニトリルヒドラターゼを構成的に発現させるためのプラスミドpSJ034をロドコッカス ロドクロウスATCC12674株に導入した。pSJ034は、プラスミドpSJ023から特開平10-337185号明細書記載の方法により作製したものである。pSJ023は、形質転換体 R.rhodochrous ATCC12674/pSJ023(FERM BP-6232)として産業総合技術研究所 特許生物寄託センターに寄託されている。
プラスミドpSJ034によりロドコッカス ロドクロウスATCC12674株を形質転換し、ATCC12674株/pSJ034株を作製した。ベクターpK4を導入した12674株を対照実験に用いた。
ATCC12674株の形質転換は次のようにして行った。ATCC12674株の対数増殖期の細胞を遠心分離器により集菌し、氷冷した滅菌水にて3回洗浄し、滅菌水に懸濁した。上記のプラスミド溶液1μlと菌体懸濁液10μlを混合し、氷冷した。これを遺伝子導入装置Gene Pulser(BIO RAD)用キュベットに移し、同装置を用いて2.0KV、200OHMSで電気パルス処理を行った。電気パルス処理液を氷冷下10分静置後、37℃で10分間インキュベートし、MYK培地(0.5%ポリペプトン、0.3%バクトイーストエキス、0.3%バクトモルトエキス、0.2%K2HPO4、0.2%KH2PO4)500μl を加え、30℃、5時間静置した後、50μg/mlカナマイシン入りMYK寒天培地に塗布し、30℃、3日間培養した。得られたコロニーを培養し、プラスミドが導入されていることを確認した。
培養は、次のように行った。カナマイシン(50mg/L)を含むMYK培地10mlに植菌し、30℃にて24時間前培養を行った。培養液を1ml取り100mlの同培地に加え、30℃にて48時間振盪培養した。得られた培養液から遠心分離(3,700×g、10分間、4℃)により菌体を回収し、10mM リン酸−ナトリウム緩衝液(pH7.0)で洗浄した後、同緩衝液に懸濁した。
得られた菌体懸濁液から1mlを用い、超音波破砕機VP-15S(タイテック、日本)を用いて、出力コントロ−ル4、DUTY CYCLE 40%、PULS、TIMER=Bモ−ド10sの条件で氷冷しながら3分間破砕した。次に遠心分離を行い(10,000×g、5分間、4℃)、得られた上清を細胞抽出液として採取した。
2.ニトリルヒドラターゼによる酵素反応の蛍光計による検出
178μLリン酸ナトリウム緩衝液(200 mM, pH7.3)、2μLの1 mM蛍光基質(化合物1又は公知化合物:DMSOに溶解)を混合し、37℃でプレインキュベーションを行った。上記のように調製した細胞抽出液20μLを加えることにより反応を開始した。1時間ごと20 μLの反応液に380 μLのリン酸ナトリウム緩衝液(200 mM, pH 7.3)を加えることによりサンプリングを行い、F-4500形分光蛍光光度計(日立ハイテクノロジーズ)を用いて蛍光を測定した。測定は、490 nmの励起光を用い、スリット幅2.5 nm/2.5 nm、光電子増倍管電圧700 V、37 ℃で行った。
その結果、公知化合物は、細胞抽出液を含まない溶液に比べて約3.9倍の蛍光の増大を示したのに対し、本発明の化合物1は、細胞抽出液を含まない溶液に比べて約7.2倍の蛍光の増大を示した(図2)。すなわち、蛍光増大率は、公知化合物よりも本発明の化合物1の方が1.5倍高いことが示された。なお、図2において「without addition of NH」とは、上記の細胞抽出液を含まない溶液を用いた結果を表し、「shortly after addition of NH」とは上記の細胞抽出液を加えた直後の結果を表し、「5h after addition of NH」とは上記の細胞抽出液を加えてから5時間後の結果を表す。なお、「NH」とは、細胞抽出液(ニトリルヒドラターゼ粗酵素液)を表す。
これらの結果から、本発明の化合物を含む蛍光基質は、公知化合物に比べて、より高感度にニトリル関連酵素の酵素活性を検出できることが示された。
3.ニトリルヒドラターゼ反応液のHPLC分析
上記のようにして37℃で5時間の反応を行い、下記の条件でHPLCにより分析した。
機種:送液ポンプPU-2080(JASCO)
カラム:Inertsil ODS-3(4.6×250 mm)カラム(GL Sciences Inc.)
溶媒:75% アセトニトリル/0.1% TFA水溶液(0 min)から15% アセトニトリル/0.1% TFA水溶液(30 min)へ直線的な勾配で溶出
検出:検出器MD-2010(JASCO)、500 nmの吸収によりモニタリング
その結果、本発明の化合物1のピークは消失し、酵素反応によって生じた新たな生成物のピークが出現した(図3)。
この結果から、ニトリルヒドラターゼによる酵素反応が進行したことが示された。
ニトリラーゼによる反応
1.ニトリラーゼ粗酵素液(細胞抽出液)の調製
ロドコッカス sp. SK92株由来ニトリラーゼを高発現する大腸菌組換え体JM109/pSK002(特開平8−173169)を1mlの50μg/mlアンピシリンを含むLB培地(1%バクトトリプトン、0.5%バクトイーストエキス、0.5%NaCl)に植菌し、37℃にて7時間前培養を行った。培養液を0.1ml取り、100mlの同培地(50μg/mlアンピシリン、1mM IPTG含有)に加え、37℃にて15時間振盪培養した。得られた培養液から遠心分離(3,700×g、10分間、4℃)により菌体を回収し、10mM リン酸−ナトリウム緩衝液(pH7.0)で洗浄した後、同緩衝液に懸濁した。対照株としてJM109/pTrc99A(ニトリラーゼ活性を有さない)を用いた。
得られた菌体懸濁液から1mlを用い、超音波破砕機VP−15S(タイテック、日本)を用いて、出力コントロ−ル4、DUTY CYCLE 40%、PULS、TIMER=Bモ−ド10sの条件で氷冷しながら1分間破砕した。次に遠心分離を行い(10,000×g、5分間、4℃)、得られた上清を細胞抽出液として採取した。
2.酵素反応の蛍光計による検出
実施例2に記載した方法に準じて検出を行った。但し、実験に用いる化合物としては本発明の化合物1を用い、酵素液としてJM109/pSK002由来の細胞抽出液(ニトリラーゼを含む)及び上記対照株JM109/pTrc99A由来の細胞抽出液(ニトリラーゼ活性を有さない)を用いた。
その結果、本発明の化合物1に対し、JM109/pSK002由来の細胞抽出液を反応させた場合は細胞抽出液を加えないものに比べて約7.5倍の蛍光の増大を示したのに対し、JM109/pTrc99A由来の細胞抽出液を反応させた場合は、蛍光の増大はほとんど観測されなかった。
なお、図4Aにおいて、「without addition of pSK002」とは、JM109/pSK002由来細胞抽出液を加えなかった場合の結果を表し、「shortly after addition of pSK002」とは当該細胞抽出液を加えた直後の結果を表し、「5h after addition of pSK002」とは当該細胞抽出液を加えてから5時間後の結果を表す。
また、図4Bにおいて、「without addition of pTrc99A」とは、JM109/pTrc99A由来細胞抽出液を加えなかった場合の結果を表し、「shortly after addition of pSK002」とは当該細胞抽出液を加えた直後の結果を表し、「5h after addition of pSK002」とは当該細胞抽出液を加えてから5時間後の結果を表す。
3.ニトリラーゼ反応液のHPLC分析
実施例2に記載した方法に準じてニトリラーゼ活性を分析した。
その結果、本発明の化合物1のピークは消失し、酵素反応によって生じた新たな生成物のピークが出現した(図4)。すなわち、JM109/pSK002由来細胞抽出液の酵素反応では反応生成物が観測されたが、JM109/pTrc99A由来細胞抽出液の酵素反応では全く反応生成物が観測されなかった。
この結果から、化合物1に対するニトリラーゼによる酵素反応が進行したことが示された。
生成物の安定性
酵素反応後の生成物の安定性をHPLC分析により検討した。
ニトリルヒドラターゼ反応液(160μL)のHPLCによる解析は、前述のポンプ、カラム、溶媒条件、検出器を用い、500 nmの吸収によりモニタリングした。一方のニトリラーゼ反応液(160μL)の解析もニトリルヒドラターゼ反応液の解析と同様に行い、500 nmの吸収をモニタリングした。
その結果、ニトリルヒドラターゼによる酵素反応の生成物である5-CONH2フルオレセイン4-クロロベンジルエステル(化合物3)に相当するピークは観測されたが、そのエステル加水分解生成物である5-CONH2フルオレセインに相当するピークは観測されなかった(図6)。
また、ニトリラーゼによる酵素反応の生成物である5-カルボキシルフルオレセイン4-クロロベンジルエステル(化合物5)に相当するピークは観測されたが、そのエステル加水分解生成物である5-カルボキシルフルオレセインに相当するピークは観測されなかった(図7)。
これらの結果から、酵素溶液中で生成物のエステル加水分解はほとんど生じていないことが確認された。
以上の結果から、本発明の蛍光基質を用いることにより、公知の蛍光基質と比較して、より高感度にニトリル関連酵素の酵素活性を検出することができることが示された。
本発明により、公知の蛍光基質と比較して、より高感度にニトリル関連酵素の酵素活性を検出することができる。

Claims (10)

  1. 下記式(I):

    [式中、R1は、-CN、-CONH2、-CH=CH-CN又は-CH=CH-CONH2を表し、R2はハロベンジル基を表し、R3及びR4は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子又はC1-4アルキル基を表し、R5は、水素原子、C1-4アルキルカルボニル基又はC1-4アルキルカルボニルオキシメチル基を表す]
    で示される化合物、その塩又はそれらの水和物。
  2. 請求項1に記載の化合物、その塩又はそれらの水和物を含む、ニトリル関連酵素の酵素活性検出用蛍光基質。
  3. ニトリル関連酵素が、ニトリラーゼ、ニトリルヒドラターゼ及びアミダーゼからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項2に記載の基質。
  4. R1が-CNであり、ニトリル関連酵素がニトリラーゼ又はニトリルヒドラターゼである、請求項2に記載の基質。
  5. R1が-CONH2であり、ニトリル関連酵素がアミダーゼである、請求項2に記載の基質。
  6. 下記式(II):

    で示される化合物、その塩又はそれらの水和物。
  7. 請求項6に記載の化合物、その塩又はそれらの水和物を含む、ニトリラーゼ又はニトリルヒドラターゼの酵素活性検出用蛍光基質。
  8. 被検物質の酵素活性を検出する方法であって、以下の工程:
    (a) 被検物質と請求項2〜5及び7のいずれか1項に記載の基質とを反応させる工程、及び
    (b) 工程(a)における反応により生じた蛍光の強度を測定する工程
    を含む、前記方法。
  9. 酵素活性が、ニトリラーゼ、ニトリルヒドラターゼ及びアミダーゼからなる群から選択される少なくとも1種の酵素の活性である、請求項8に記載の方法。
  10. 請求項2〜5及び7のいずれか1項に記載の基質を含む、ニトリル関連酵素の酵素活性検出用キット。
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