本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも、以下の事項が明らかとなる。
液体を吐出する複数のノズルと、前記複数のノズルに対して共通に設けられた共通吐出検査部であって、印刷時にノズル毎に吐出検査を行う共通吐出検査部と、を備え、印刷データに基づいて複数のノズルから液体を吐出するとき、その中から検査対象ノズルを選択して当該検査対象ノズルを前記共通検査部で検査する液体吐出装置であって、液体を吐出するノズルを前記印刷データに基づいて特定し、その中の未検査ノズルから、前記印刷データに基づいて吐出回数の少ないノズルを前記検査対象ノズルとして選択することを特徴とする液体噴射装置が明らかとなる。
このような液体吐出装置によれば、印刷中に各ノズルの吐出検査をより確実に行うことができる。
かかる液体吐出装置であって、前記未検査ノズルに吐出回数の同じノズルが複数有る場合、前記印刷データに基づいて液体を吐出していない期間が長いノズルを前記検査対象ノズルとして選択することが望ましい。
このような液体吐出装置によれば、インクの乾燥による影響を考慮した吐出検査を行うことができる。
かかる液体吐出装置であって、前記液体を吐出するノズルに未検査ノズルがない場合、前記印刷データに基づいて、前回の吐出検査をしてからの間隔が長いノズルを前記検査対象ノズルとして選択することが望ましい。
このような液体吐出装置によれば、インクの乾燥による影響を考慮した吐出検査を行うことができる。
かかる液体吐出装置であって、前記複数のノズルにそれぞれ対応して設けられた複数の圧電素子と、各ノズルが1画素に液体を吐出する吐出周期ごとに繰り返される駆動信号であって、各吐出周期の中に検査期間がある駆動信号を生成する駆動信号生成部と、を備え、前記検査対象ノズルに対応する前記圧電素子が前記駆動信号の或る吐出周期内で駆動された後、当該或る吐出周期の前記検査期間に前記検査対象ノズルを前記共通吐出検査部によって検査することが望ましい。
このような液体吐出装置によれば、特定のノズルの吐出検査を、簡素な構成で、且つ、他のノズルの使用状況にかかわらずに行なうことができる。
かかる液体吐出装置であって、前記複数の圧電素子毎に設けられた複数の第1スイッチであって、各圧電素子の一端への前記駆動信号の印加、非印加を切り替える複数の第1スイッチと、前記複数の圧電素子に対して共通に設けられた第2スイッチであって、前記複数の圧電素子の他端に所定電圧を印加することと、前記複数の圧電素子の他端の電圧を前記共通吐出検査部に出力することとを切り替える第2スイッチと、を備え、前記検査期間の前の期間では、少なくとも前記検査対象ノズルに対応する前記圧電素子の一端に前記駆動信号が印加されるとともに、前記複数の圧電素子の他端に前記所定電圧が印加され、前記検査期間では、前記駆動信号は一定であり、且つ、前記検査対象ノズルに対応する前記圧電素子の一端に前記駆動信号が印加されるとともに、非検査対象ノズルに対応する前記圧電素子の一端に前記駆動信号が印加されず、さらに、前記複数の圧電素子の他端の電圧が前記共通吐出検査部に出力されることが望ましい。
このような液体吐出装置によれば、検査期間に検査対象ノズルの吐出検査を確実に行うことができる。
かかる液体吐出装置であって、前記第2スイッチはトランジスタであり、前記共通吐出検査部は、前記圧電素子を前記駆動信号によって駆動した後の残留振動の交流成分を増幅する交流増幅回路と、前記交流増幅回路の出力と基準電圧とを比較する比較回路と、前記第2スイッチの制御電極への制御信号と前記比較回路の出力との論理演算を行う論理回路と、を有することが望ましい。
このような液体吐出装置によれば、圧電素子を駆動させた後の残留振動に基づいて検査対象ノズルの吐出検査を行うことができる。
また、液体を吐出する複数のノズルと、前記複数のノズルに対して共通に設けられた共通吐出検査部であって、印刷時にノズル毎に吐出検査を行う共通吐出検査部と、を備えた液体吐出装置の吐出検査方法であって、液体を吐出するノズルを印刷データに基づいて特定することと、前記液体を吐出するノズルの中の未検査ノズルから、前記印刷データに基づいて吐出回数の少ないノズルを検査対象ノズルとして選択することと、前記印刷データに基づいて各ノズルから液体を吐出した後、前記検査対象ノズルを前記共通検査部で検査することと、を有することを特徴とする吐出検査方法が明らかとなる。
以下の実施形態では、液体吐出装置としてインクジェトプリンター(以下、プリンター1ともいう)を例に挙げて説明する。
===プリンターの構成===
図1は、本実施形態のプリンター1の全体構成のブロック図である。また、図2Aは、プリンター1の斜視図であり、図2Bは、プリンター1の横断面図である。以下、本実施形態のプリンター1の基本的な構成について説明する。
本実施形態のプリンター1は、搬送ユニット20、キャリッジユニット30、ヘッドユニット40、検出器群50、及びコントローラー60を有する。外部装置であるコンピューター110から印刷データを受信したプリンター1は、コントローラー60によって各ユニット(搬送ユニット20、キャリッジユニット30、ヘッドユニット40)を制御する。コントローラー60は、コンピューター110から受信した印刷データに基づいて、各ユニットを制御し、紙に画像を印刷する。プリンター1内の状況は検出器群50によって監視されており、検出器群50は、検出結果をコントローラー60に出力する。コントローラー60は、検出器群50から出力された検出結果に基づいて、各ユニットを制御する。
搬送ユニット20は、媒体(例えば、紙Sなど)を所定の方向(以下、搬送方向という)に搬送させるためのものである。この搬送ユニット20は、給紙ローラー21と、搬送モーター22(PFモーターとも言う)と、搬送ローラー23と、プラテン24と、排紙ローラー25とを有する。給紙ローラー21は、紙挿入口に挿入された紙をプリンター内に給紙するためのローラーである。搬送ローラー23は、給紙ローラー21によって給紙された紙Sを印刷可能な領域まで搬送するローラーであり、搬送モーター22によって駆動される。プラテン24は、印刷中の紙Sを支持する。排紙ローラー25は、紙Sをプリンターの外部に排出するローラーであり、印刷可能な領域に対して搬送方向下流側に設けられている。
キャリッジユニット30は、ヘッドを所定の方向(以下、移動方向という)に移動(「走査」とも呼ばれる)させるためのものである。キャリッジユニット30は、キャリッジ31と、キャリッジモーター32(CRモーターとも言う)とを有する。キャリッジ31は、移動方向に往復移動可能であり、キャリッジモーター32によって駆動される。また、キャリッジ31は、インクを収容するインクカートリッジを着脱可能に保持している。
ヘッドユニット40は、紙にインクを吐出するためのものである。ヘッドユニット40は、複数のノズルを有するヘッド41とヘッド制御部HCを備えている。ヘッド41はキャリッジ31に設けられているため、キャリッジ31が移動方向に移動すると、ヘッド41も移動方向に移動する。そして、ヘッド41が移動方向に移動中にインクを断続的に吐出することによって、移動方向に沿ったドットライン(ラスタライン)が紙に形成される。
ヘッド制御部HCは、ヘッド41の駆動等を制御するためのものである。ヘッド制御部HCは、コントローラー60からのヘッド制御信号に応じて、ヘッド41の各ノズルと対応する圧電式アクチュエータを選択的に駆動させる。これによりヘッド41のノズルからインクが吐出される。
なお、ヘッドユニット40の詳細については後述する。
検出器群50には、リニア式エンコーダー51、ロータリー式エンコーダー52、紙検出センサー53、光学センサー54等が含まれる。リニア式エンコーダー51は、キャリッジ31の移動方向の位置を検出する。ロータリー式エンコーダー52は、搬送ローラー23の回転量を検出する。紙検出センサー53は、給紙中の紙の先端の位置を検出する。光学センサー54は、キャリッジ31に取付けられている発光部と受光部により、紙の有無を検出する。そして、光学センサー54は、キャリッジ31によって移動しながら紙の端部の位置を検出し、紙の幅を検出することができる。また、光学センサー54は、状況に応じて、紙の先端(搬送方向下流側の端部であり、上端ともいう)・後端(搬送方向上流側の端部であり、下端ともいう)も検出できる。
また、本実施形態のプリンター1は、検出器群50としてノズルの吐出検査(以下ノズル検査ともいう)を行うための残留振動検出回路55(共通吐出検査部に相当する)を備えている。なお、残留振動検出回路55の詳細については後述する。
コントローラー60は、プリンターの制御を行うための制御ユニットである。コントローラー60は、インターフェイス部61と、CPU62と、メモリー63と、ユニット制御回路64と、駆動信号生成回路65を有する。インターフェイス部61は、外部装置であるコンピューター110とプリンター1との間でデータの送受信を行う。CPU62は、プリンター全体の制御を行うための演算処理装置である。メモリー63は、CPU62のプログラムを格納する領域や作業領域等を確保するためのものであり、RAM、EEPROM等の記憶素子を有する。CPU62は、メモリー63に格納されているプログラムに従って、ユニット制御回路64を介して各ユニットを制御する。
駆動信号生成回路65は、ヘッド41を駆動させる駆動信号COMを生成する。なお、駆動信号生成回路65の詳細については後述する。
また、本実施形態のコントローラー60は、残留振動検出回路55の検出結果に基づいて、各ノズルの正常、異常を判定する処理も行う(後述する)。
フレキシブルケーブル71は、可撓性を有する配線であり、コントローラー60とヘッドユニット40との間で各種の信号を伝送する。
<印刷手順について>
コントローラー60は、コンピューター110から印刷命令及び印刷データを受信すると、印刷データに含まれる各種コマンドの内容を解析し、各ユニットを用いて、以下の処理を行う。
まず、コントローラー60は、給紙ローラー21を回転させ、印刷すべき用紙Sを搬送ローラー23の所まで送る。次に、コントローラー60は、搬送モーター22を駆動させることによって搬送ローラー23を回転させる。搬送ローラー23が所定の回転量にて回転すると、用紙Sは所定の搬送量にて搬送される。
用紙Sがヘッドユニット40の下部まで搬送されると、コントローラー60は、印刷命令に基づいてキャリッジモーター32を回転させる。このキャリッジモーター32の回転に応じて、キャリッジ31が移動方向に加速→一定速度→減速→反転→加速→一定速度→減速→反転のように往復移動する。また、キャリッジ31が移動することによって、キャリッジ31に設けられたヘッドユニット40も同時に移動方向に移動する。また、ヘッドユニット40が移動方向に移動している間に、コントローラー60は、駆動信号生成回路65に駆動信号COMを生成させて、ヘッド41の圧電式アクチュエータに駆動信号COMを印加する。これにより、ヘッドユニット40が印刷領域で移動方向に移動している間(一定速度の区間)に、ヘッド41から断続的にインク滴が吐出される。このインク滴が、用紙Sにインク滴が着弾することによって、移動方向に複数のドットが並ぶドット列が形成される。なお、移動するヘッド41からインクを吐出することによるドット形成動作のことをパスという。
また、コントローラー60は、ヘッドユニット40が往復移動する合間に搬送モーター22を駆動させる。搬送モーター22は、コントローラー60からの指令された駆動量に応じて回転方向の駆動力を発生する。そして、搬送モーター22は、この駆動力を用いて搬送ローラー23を回転させる。搬送ローラー23が所定の回転量にて回転すると、用紙Sは所定の搬送量にて搬送される。つまり、用紙Sの搬送量は、搬送ローラー23の回転量に応じて定まることになる。このように、パスと搬送動作を交互に繰り返して行い、用紙Sの各画素にドットを形成していく。こうして用紙Sに画像が印刷される。
そして、最後に、コントローラー60は、搬送ローラー23と同期して回転する排紙ローラー25によって印刷が終了した用紙Sを排紙する。
<プリンタードライバーによる処理の概要>
上記の印刷処理は、前述したように、プリンター1に接続されたコンピューター110から印刷データが送信されることにより開始する。当該印刷データは、プリンタードライバーによる処理により生成される。以下、プリンタードライバーによる処理について、図3を参照しながら説明する。図3は、プリンタードライバーによる処理の説明図である。
プリンタードライバーは、アプリケーションプログラムから画像データを受け取り、プリンター1が解釈できる形式の印刷データに変換し、印刷データをプリンターに出力する。アプリケーションプログラムからの画像データを印刷データに変換する際に、プリンタードライバーは、解像度変換処理・色変換処理・ハーフトーン処理・ラスタライズ処理・コマンド付加処理などを行う。
解像度変換処理は、アプリケーションプログラムから出力された画像データ(テキストデータ、イメージデータなど)を、紙に印刷する際の解像度(印刷解像度)に変換する処理である。例えば、印刷解像度が720×720dpiに指定されている場合、アプリケーションプログラムから受け取ったベクター形式の画像データを720×720dpiの解像度のビットマップ形式の画像データに変換する。なお、解像度変換処理後の画像データの各画素データは、RGB色空間により表される多階調(例えば256階調)のRGBデータである。この階調値は、RGB画像データに基づいて定められるものであり、以下指令階調値ともいう。
色変換処理は、RGBデータをCMYK色空間のデータに変換する処理である。なお、CMYK色空間の画像データは、プリンターが有するインクの色に対応したデータである。言い換えると、プリンタードライバーは、RGBデータに基づいて、CMYK平面の画像データを生成する。
この色変換処理は、RGBデータの階調値とCMYKデータの階調値とを対応づけたテーブル(色変換ルックアップテーブルLUT)に基づいて行われる。なお、色変換処理後の画素データは、CMYK色空間により表される256階調のCMYKデータである。
ハーフトーン処理は、高階調数のデータを、プリンターが形成可能な階調数のデータに変換する処理である。このハーフトーン処理により、256階調を示すデータが、2階調を示す1ビットデータや4階調を示す2ビットデータに変換される。ハーフトーン処理後の画像データでは、画素ごとに1ビット又は2ビットの画素データが対応しており、この画素データは各画素でのドットの形成状況(ドットの有無)などを示すデータになる。その後、各ドットのサイズについてドット生成率が決められた上で、ディザ法・γ補正・誤差拡散法等を利用して、ドットを分散して形成するように画素データが作成される。
なお、本実施形態では、このハーフトーン処理において256階調を示すデータが、各画素にドット形成の有無を示す1ビットデータに変換される。そして、プリンター1において、この1ビットデータにノズル検査の有無を示すデータが割り付けられ2ビットデータが生成される。この割り付けの処理については後述する。
ラスタライズ処理は、マトリクス状に並ぶ画素データを、印刷時のドット形成順序に従って並べ替える処理である。例えば、印刷時に数回に分けてドット形成処理が行われる場合、各ドット形成処理に対応する画素データをそれぞれ抽出し、ドット形成処理の順序に従って並べ替える。なお、印刷方式が異なれば印刷時のドット形成順序が異なるので、印刷方式に応じてラスタライズ処理が行われることになる。
コマンド付加処理は、ラスタライズ処理されたデータに、印刷方式に応じたコマンドデータを付加する処理である。コマンドデータとしては、例えば媒体の搬送速度を示す搬送データなどがある。
これらの処理を経て生成された印刷データは、プリンタードライバーによりプリンター1に送信される。
===駆動振動生成回路の構成について===
図4は、駆動信号生成回路65の構成を示すブロック図である。駆動信号生成回路65は、波形メモリー651と、第1ラッチ回路652と、加算器653と、第2ラッチ回路654と、D/A変換器655と、電圧増幅部656と、電流増幅部657とを備えている。
なお、CPU62は、書込みイネーブル信号DENと、書込みクロック信号WCLKと、書込みアドレスデータA0〜A3とを駆動信号生成回路65に出力し、例えば16ビットの波形形成用データDATAを波形メモリー651に書込む。また、CPU62は、この波形メモリー651に記憶された波形形成用データDATAを読出すための読出しアドレスデータA0〜A3、波形メモリー651から読出した波形形成用データDATAをラッチするタイミングを設定する第1のクロック信号ACLK、ラッチした波形データを加算するためのタイミングを設定する第2のクロック信号BCLK及びラッチデータをクリアするクリア信号CLERを駆動信号生成回路65に出力する。
波形メモリー651は、CPU62から入力される駆動信号生成のための波形形成用データDATAを一時的に記憶するものである。
第1ラッチ回路652は、前述した第1のクロック信号ACLKによって波形メモリー651から必要な波形形成用データDATAを読み出して一時的に保持(ラッチ)するものである。
加算器653は、第1ラッチ回路652の出力と後述する第2ラッチ回路654から出力される波形生成データWDATAとを加算する。
第2ラッチ回路654は、加算器653の加算出力を前述した第2のクロック信号BCLKによってラッチする。
D/A変換器655は、第2ラッチ回路654から出力される波形生成データWDATAをアナログ信号に変換する。
電圧増幅部656は、D/A変換器655から出力されるアナログ信号を電圧増幅する。
電流増幅部657は、電圧増幅部656の出力信号を電流増幅して駆動信号COMを出力する。
なお、第1ラッチ回路652及び第2ラッチ回路654にはCPU62から出力されるクリア信号CLERが入力されており、このクリア信号CLERがオフ状態(ローレベル)となったときに、ラッチデータがクリアされる。
図5は、波形メモリー651へのデータ書き込みタイミングを示す図である。
波形メモリー651は、図5に示すように、指示したアドレスに夫々数ビットずつのメモリー素子が配列され、アドレスA0〜A3と共に波形データDATAが記憶される。具体的には、波形メモリー651には、CPU62が指示したアドレスA0〜A3に対して、クロック信号WCLKと共に波形データDATAが入力され、書込みイネーブル信号DENの入力によってメモリー素子に波形データDATAが記憶される。
図6は、波形メモリー651からのデータの読み出しと、駆動信号COMの生成のタイミングを示す図である。この例では、アドレスA0には単位時間当たりの電圧変化量として0となる波形データが書込まれている。同様に、アドレスA1には+ΔV1、アドレスA2には−ΔV2、アドレスA3には+ΔV3の波形データが書込まれている。また、クリア信号CLERによって第1ラッチ回路652及び第2ラッチ回路654の保存データがクリアされる。また、本実施形態では、駆動信号COMは、グランド電位から開始することとする。
この状態から、例えば、図5に示すようにアドレスA1の波形データが読み出され、且つ、第1クロック信号ACLKが入力されると、第1ラッチ回路652に+ΔV1のデジタルデータが保存される。保存された+ΔV1のデジタルデータは、加算器653を経て第2ラッチ回路654に入力され、この第2ラッチ回路654では、第2クロック信号BCLKの立ち上がりに同期して加算器653の出力を保存する。加算器653には、第2ラッチ回路654の出力も入力されるので、第2ラッチ回路654の出力(COM)は、第2クロック信号BCLKの立ち上がりのタイミングで+ΔV1ずつ加算される。この例(図6)では、時間幅T1の間、アドレスA1の波形データが読み出され、その結果、+ΔV1のデジタルデータが3倍になるまで加算されている。
同様にして、アドレスA0の波形データが読み出され、且つ、第1クロック信号ACLKが入力されると第1ラッチ回路652に保存されるデジタルデータは0に切替わる。この0のデジタルデータは、前述と同様に、加算器653を経て、第2クロック信号BCLKの立ち上がりのタイミングで加算されるが、デジタルデータが0であるので、実質的には、それ以前の値が保持される。この例では、時間幅T0の間、駆動信号COMが一定値に保持されている。
次いで、アドレスA2の波形データが読み出され、且つ、第1クロック信号ACLKが入力されると第1ラッチ回路652に保存されるデジタルデータは−ΔV2に切替わる。この−ΔV2のデジタルデータは、前述と同様に、加算器653を経て、第2クロック信号BCLKの立ち上がりのタイミングで加算されるが、デジタルデータが−ΔV2であるので、実質的には第2クロック信号に合わせて駆動信号COMは−ΔV2ずつ減算される。この例では、時間幅T2の間、駆動信号COMは、−ΔV2のデジタルデータが6倍になるまで減算されている。
再びアドレスA0の波形データが読み出され電圧変化量が0になると、それ以前の値が保持される。
このような処理によって駆動信号COMが生成される。なお、この駆動信号COMのうち上昇部分が、後述するキャビティ423の容積を拡大してインクを引き込む段階であり、駆動信号COMの下降部分がキャビティ423の容積を縮小してインク滴を吐出する段階である。ちなみに、駆動信号の波形は、前述からも容易に推察されるように、アドレスA0〜A3に書込まれる波形データ0、+ΔV1、−ΔV2、+ΔV3、第1クロック信号ASCK、第2クロック信号BSCKによって調整可能である。
===ヘッドの構成について===
図7はヘッド41の下面(ノズル面)のノズル配置の一例を示す図である。
ヘッド41には、図7に示すように複数のノズルが配列されている。この図7の例では、4色のインク(Y:イエロー、M:マゼンダ、C:シアン、K:ブラック)を用いる場合のノズルの配列パターンを示しており、これらの色の組合せによりフルカラー印刷が可能となる。
各色についてn個(例えば180個)のノズルが設けられている。図ではY(イエロー)のノズル列の各ノズルに番号(Y(1)〜Y(n))を付している。
なお、本実施形態のヘッド41では圧電式アクチュエータ(いわゆるピエゾ方式)を用いており、各ノズルに対応して圧電式アクチュエータが備えられている。
図8は、ヘッド41のノズルの周辺の断面図である。
ヘッド41は、図8に示すように、振動板421と、この振動板421を変位させる圧電式アクチュエータ422と、内部に液体であるインクが充填され且つ振動板421の変位により内部の圧力が増減されるキャビティ(圧力室)423と、このキャビティ423に連通し且つ当該キャビティ423内の圧力の増減によりインクを液滴として吐出するノズル424と、を少なくとも備えている。
更に詳述すると、ヘッド41は、ノズル424が形成されたノズル基板425と、キャビティ基板426と、振動板421と、複数の圧電素子427を積層した積層型の圧電式アクチュエータ422とを備えている。キャビティ基板426は、図示のように所定形状に形成され、これにより、キャビティ423と、これに連通するリザーバ428とが形成されている。また、リザーバ428は、インク供給チューブ429を介してインクカートリッジCTに接続されている。圧電式アクチュエータ422は、対向して配置される櫛歯状の第1電極431、第2電極432と、その電極(第1電極431、第2電極432)の各櫛歯と交互に配置される圧電素子427とを有している。また、圧電式アクチュエータ422は、その一端側が図8に示すように、中間層430を介して振動板421と接合されている。
このような構成からなる圧電式アクチュエータ422では、第1電極431と第2電極432との間に駆動信号COMが印加されることによって、図8の矢印で示すように上下方向に伸び縮みするモードを利用している。従って、この圧電式アクチュエータ422では、駆動信号COMが印加されると、振動板421に圧電式アクチュエータ422の伸縮による変位が生じてキャビティ423内の圧力が変化し、ノズル424からインク滴が吐出されるようになっている。具体的には、後述するように、キャビティ423の容積を拡大してインクを引き込み、次いでキャビティ423の容積を縮小してインク滴を吐出する。
図9は、圧電式アクチュエータ422の他の例を示す図である。なお、図中の符号は、図8のものを流用している。この図9の圧電式アクチュエータは、一般にユニモルフ型アクチュエータと呼ばれ、圧電素子427を二つの電極(第1電極431、第2電極432)で挟んだ簡単な構造である。この図9の構成の場合では、駆動信号が印加されることによって圧電素子427が図の上下方向に撓む。これにより、図8の積層型アクチュエータと同様に、振動板421に変位が生じて、インク滴を吐出する。この場合もキャビティ423の容積を拡大してインクを引き込み、次いでキャビティ423の容積を縮小してノズル424からインク滴を吐出する。
このようなヘッド41を備えたプリンター1では、インク切れ、インクの増粘、気泡の発生、目詰まり(乾燥)などの原因によって、ノズル424からインク滴が吐出すべきときに吐出しない(不吐出)というインク滴の吐出異常(所謂ドット抜け現象)を生じることがある。このような異常を検出するため、ノズル検査を行なうことが必要になる。
===ノズル検査について===
各ノズル424に対応する圧電式アクチュエータ422に駆動信号COMを印加すると、その際の圧力変動後、キャビティ423内に残留振動(正確には、図8の振動板421の自由振動)が発生する。この残留振動の状態から各ノズル424の状態(キャビティ423内の状態を含む)を検出することが可能である。
図10は、振動板421の残留振動を想定した単振動の計算モデルを示す図である。
駆動信号生成回路65から圧電式アクチュエータ422に駆動信号COM(駆動パルス)が印加されると、圧電式アクチュエータ422は駆動信号COMの電圧に応じて伸縮する。振動板421は圧電式アクチュエータ422の伸縮に応じて撓み、これによりキャビティ423の容積は拡大した後収縮する。このとき、インク室内に発生する圧力により、キャビティ423を満たすインクの一部が、ノズル424からインク滴として吐出される。この一連の振動板421の動作の際に、インク供給口の形状やインク粘度等による流路抵抗rと、流路内のインク重量によるイナータンスmと振動板421のコンプライアンスcによって決定される固有振動周波数で振動板421が自由振動を起こす(残留振動)。
この振動板421の残留振動の計算モデルは、圧力Pと、上述のイナータンスm、コンプライアンスCおよび流路抵抗rとで表せる。図10の回路に圧力Pを与えた時のステップ応答を体積速度uについて計算すると、次式が得られる。
図11は、インクの増粘と残留振動波形の関係の説明図である。図の横軸は時間を示し、縦軸は残留振動の大きさを示している。例えばノズル424付近のインクが乾燥した場合には、インクの粘性が増加(増粘)する。インクが増粘すると、流路抵抗rが増加し振動周期や残留振動の減衰が大きくなる。
また、図12は、気泡混入と残留振動波形の関係の説明図である。図の横軸は時間を示し、縦軸は残留振動の大きさを示している。
例えば、気泡がインクの流路やノズル先端に混入した場合には、ノズル正常時に比べて、気泡が混入した分だけインク重量m(=イナータンス)が減少する。(2)式よりmが減少すると角速度ωが大きくなるので振動周期が短くなる(振動周波数が高くなる)。
これらのような場合、典型的にはノズル424からインクが吐出されなくなる。このため、用紙Sに印刷した画像においてドット抜けが生じる。また、ノズル424からインク滴が吐出されたとしても、インク滴の量が少量であったり、そのインク滴の飛行方向(弾道)がずれたりして目的の位置に着弾しない場合もある。本実施形態ではこれらのノズルのことを異常(吐出異常)ノズルと呼ぶ。
上述したように、異常ノズルにおける残留振動は、正常ノズルにおける残留振動とは異なる。そこで、本実施形態のプリンター1では、前述したようなキャビティ423内の残留振動を残留振動検出回路55で検出することに基づいてノズルの検査(吐出異常の検査)を行なっている。
===残留振動検出回路について===
図13は、残留振動検出回路55の構成の一例を示す回路図である。なお、本実施形態の残留振動検出回路55は、共通吐出検査部に相当し、ヘッド41の各ノズルに対して共通に設けられている。
本実施形態の残留振動検出回路55は、キャビティ423内の圧力変化が圧電式アクチュエータ422に伝達されることを利用して検出するものであり、具体的には圧電式アクチュエータ422の機械的変位によって発生する起電力(起電圧)の変化を検出するものである。この残留振動検出回路55は、圧電式アクチュエータ422のグランド端(HGND印加側)を接地又は開放するスイッチ(トランジスタQ)と、圧電式アクチュエータ422に駆動信号COMのパルスを印加した後にグランド端を開放することで発生する残留振動の交流成分を増幅する交流増幅器56と、増幅された残留振動VaOUTと基準電圧Vrefとを比較する比較器(コンパレータ)57と、比較器57の出力及びトランジスタQのゲート信号DSELが入力され、その論理和を出力する論理和回路ORとを有して構成されている。このうち、交流増幅器56は、直流成分を除去するコンデンサCと、基準電圧Vrefの電位を基準として抵抗R1、R2で決まる増幅率で反転増幅する演算器AMPとで構成されている。また、抵抗R3は、トランジスタQのオンオフの切り替わり時における急激な電圧変化を抑制するために設けられている。なお、トランジスタQは第2スイッチに相当する。
以上の構成により、残留振動検出回路55中のトランジスタQのゲート電圧(ゲート信号DSEL)がハイレベル(以下、Hレベルともいう)になるとトランジスタQがオンし、圧電式アクチュエータ422のグランド端(他端に相当する)が接地された状態になり、駆動信号COMが圧電式アクチュエータ422に供給される。逆に、各残留振動検出回路55中のトランジスタQのゲート電圧(ゲート信号DSEL)がローレベル(以下、Lレベルともいう)になるとトランジスタQがオフし、圧電式アクチュエータ422の起電力が残留振動検出回路55に取り込まれる。そして、残留振動検出回路55によって残留振動の検出が行われ、その検出結果がパルスPOUTとして出力される。なお、図中の符号HGNDは、圧電式アクチュエータ422のグランド端への信号線(接地ライン)である。
図14は、残留振動検出回路55の比較器57の入力と出力の関係の一例を示す図である。
比較器57の非反転入力端子(+端子)には基準電圧Vrefが印加され、反転入力端子(−端子)には残留振動VaOUTが印加される。比較器57は、+端子の電圧(Vref)が−端子の電圧(VaOUT)よりも大きければHレベルを出力し、+端子の電圧(Vref)が−端子の電圧(VaOUT)よりも小さければLレベルを出力する。よって、図に示すように残留振動VaOUTの振動に応じたパルス(COMP出力)が出力される。本実施形態では、このパルス出力(COMP出力)のパルス周期(振動周期Tt)に基づいて、ノズル424の検査を行う。
なお、増粘については、図11よりパルス周期(振動周期Tt)は変化しない。そこで、この場合、パルス数を見て検査を行う。例えば、増粘が大きい場合、増粘が小さい場合と比べてパルスの減衰が大きいのでパルス(残留振動検出経路55で検出されるパルス)の数が少なくなる。よってパルス数に基づいて増粘の検査を行うことができる。
ところで、各ノズル424に対してそれぞれ残留振動検出回路55を設けノズル424毎に対応する吐出検査部で検査を行うようにすると、残留振動検出回路55の数が多くなる(ノズル424数分必要になる)という問題がある。一方、各ノズル424に対して残留振動検出回路55を共通に設けると、印刷時など複数のノズル424を駆動させている最中では、特定のノズル424を検査することができないという問題がある。
そこで、本実施形態では、以下に示すように、複数のノズル424に対して残留振動検出回路55を共通に設けるとともに、駆動信号の吐出周期中(駆動パルスの後)に検査期間を設けている。こうすることによって、印刷中やフラッシングなど、複数のノズル424が駆動されている間にも共通の残留振動検出回路55によって特定のノズル424(検査対象ノズル)を検査することができる。
===ヘッド制御部の構成について===
図15は、ヘッドユニット40のヘッド制御部HCの構成の一例の説明図であり、図16は、各信号のタイミングの説明図である。
図15に示すヘッド制御部HCは、第1シフトレジスタ81Aと、第2シフトレジスタ81Bと、第1ラッチ回路82Aと、第2ラッチ回路82Bと、デコーダー83と、制御ロジック84と、スイッチ86(第1スイッチに相当する)を備えている。なお、制御ロジック84を除いた各部(すなわち、第1シフトレジスタ81A、第2シフトレジスタ81B、第1ラッチ回路82A、第2ラッチ回路82B、デコーダー83、スイッチ86)は、それぞれ圧電式アクチュエータ422毎(ノズル424毎)に設けられている。
なお、本実施形態の残留振動検出回路55は各ノズル424に対して共通に設けられており、残留振動検出回路55には、各圧電式アクチュエータ422のグランド端側への信号線(接地ラインHGND)が入力されている。
本実施形態の場合、フレキシブルケーブル71中の伝送線には、駆動信号COM、ラッチ信号LAT、チャンネル信号CH、画素データSI、転送用クロックSCK、及び接地ラインHGNDの各伝送線がある。そして、ヘッド制御部HCには、コントローラー60からフレキシブルケーブル71の各伝送線を介して、駆動信号COM、ラッチ信号LAT、チャンネル信号CH、画素データSI、転送用クロックSCKが送信される。以下、これらの信号について説明する。
ラッチ信号LATは、繰り返し周期T(1画素の区間をヘッド41が移動する期間)を示す信号である。ラッチ信号LATは、リニア式エンコーダー51の信号に基づいて、コントローラー60によって生成され、制御ロジック84とラッチ回路(第1ラッチ回路82A、第2ラッチ回路82B)に入力される。
チャンネル信号CHは、駆動信号COMに含まれる駆動パルスを圧電式アクチュエータ422に印加する区間を示す信号である。チャンネル信号CHは、リニア式エンコーダー51の信号に基づいてコントローラー60によって生成され、制御ロジック84に入力される。
画素データSIは、各画素にドットを形成するか否か(すなわちノズル424からインクを吐出するか否か)を示す信号である。また、本実施形態では画素データSIはノズル424の検査期間も示す。この画素データSIは、1個のノズル424に対して2ビットずつで構成されている。例えば、ノズル数が64個の場合、2ビット×64の画素データSIが繰り返し周期T毎にコントローラー60から送られてくることになる。なお、画素データSIは、転送用クロックSCKに同期して、第1シフトレジスタ81A及び第2シフトレジスタ81Bに入力される。
転送用クロックSCKは、コントローラー60から送られる画素データSIやチャンネル信号CHを、制御ロジック84や各シフトレジスタ(第1シフトレジスタ81A、第2シフトレジスタ81B)にセットする際に用いられる信号である。
本実施形態の駆動信号COMは、図16に示すように、繰り返し周期Tの間に駆動期間と検査期間の2つの期間が設けられている。このうち、駆動期間には、ドットの形成時(インク吐出時)に圧電式アクチュエータ422に印加される波形が含まれる。また、検査期間は、ノズル検査を行う期間を示すものであり、この検査期間では駆動信号COMは一定である。
駆動信号COMは、圧電式アクチュエータ422毎に設けられたスイッチ86にそれぞれ入力されている。スイッチ86は、画素データSIに基づいて、駆動信号COMを圧電式アクチュエータ422に印加するか否かのオン/オフ制御を行う。このオン/オフ制御により、駆動信号COMの一部分を、選択的に圧電式アクチュエータ422へ印加させることができる。なお、駆動信号COMの各期間を圧電式アクチュエータ422へ印加させるための制御については、後で詳しく説明する。
次に、ヘッド制御部HCで生成される信号について説明する。ヘッド制御部HCでは、選択信号q0〜q3、スイッチ制御信号SW、印加信号が生成される。
選択信号q0〜q3は、ラッチ信号LATとチャンネル信号CHに基づいて、制御ロジック64で生成される。そして生成された選択信号q0〜q3は、圧電式アクチュエータ422毎に設けられたデコーダー83にそれぞれ入力される。
スイッチ制御信号SWは、各ラッチ回路(第1ラッチ回路82A、第2ラッチ回路82B)にラッチされた画素データ(2ビット)に基づいて、選択信号q0〜q3の何れかがデコーダー83によって選択されたものである。各デコーダー83で生成されたスイッチ制御信号SWは、対応するスイッチ86にそれぞれ入力される。
印加信号は、駆動信号COMとスイッチ制御信号SWに基づいてスイッチ86から出力される。この印加信号は、各スイッチ86と対応する圧電式アクチュエータ422にそれぞれ印加される。
<ヘッド制御部HCの動作について>
ヘッド制御部HCは、コントローラー60からの画素データSIに基づき、インクを吐出させるための制御を行う。すなわち、ヘッド制御部HCは、印刷データに基づいてスイッチ86のオン/オフを制御し、駆動信号COMの必要な部分(期間)を選択的に圧電式アクチュエータ422へ印加させている。言い換えると、ヘッド制御部HCは、各圧電式アクチュエータ422の駆動を制御している。本実施形態では、画素データSIが2ビットで構成されている。そして、転送用クロックSCKに同期して、この画素データSIがヘッド41へ送られてくる。さらに、画素データSIの上位ビット群が各第1シフトレジスタ81Aにセットされ、下位ビット群が各第2シフトレジスタ81Bにセットされる。第1シフトレジスタ81Aには第1ラッチ回路82Aが電気的に接続され、第2シフトレジスタ81Bには第2ラッチ回路82Bが電気的に接続されている。そして、コントローラー60からのラッチ信号LATがHレベルになると、各第1ラッチ回路82Aは対応する画素データSIの上位ビット(SIH)をラッチし、各第2ラッチ回路82Bは画素データSIの下位ビット(SIL)をラッチする。第1ラッチ回路82A及び第2ラッチ回路82Bでラッチされた画素データSI(上位ビットと下位ビットの組)はそれぞれ、デコーダー83に入力される。デコーダー83は、第1ラッチ回路82A及び第2ラッチ回路82Bにラッチされた画素データSIに応じて、制御ロジック84から出力される選択信号q0〜q3のうちの一つの選択信号(例えば選択信号q1)を選択し、選択された選択信号をスイッチ制御信号SWとして出力する。各スイッチ86は、スイッチ制御信号SWに応じてオン/オフされて、駆動信号COMの必要な部分(期間)を選択的に圧電式アクチュエータ422へ印加する。
<画素データによるドット形成およびノズル検査の関係について>
図17は、駆動信号COMと画素データSIとの関係を示す図である。
まず、画素データSIの上位ビット(SIH)が0の場合([00]及び[01]の場合)について説明する。この場合、スイッチ制御信号SWとして選択信号q1が出力される。これにより、繰り返し周期Tにおいてスイッチ86がオフ状態(未接続)になり、この結果、駆動信号COMが圧電式アクチュエータ422へ印加されない。この場合、ノズル424からはインク滴は吐出されず、また、ノズル検査も行われない。
次に、画素データSIが[10]の場合について説明する。画素データ[10]がラッチされている場合、スイッチ制御信号SWとして選択信号q2が出力される。これにより、駆動期間においてスイッチ86がオン状態になり、検査期間にはスイッチ86がオフ状態になる。この結果、駆動期間に駆動信号COMの波形が圧電式アクチュエータ422へ印加され、ノズル424からインク滴が吐出される。また、検査期間には圧電式アクチュエータ422への駆動信号COMの印加が遮断される。
次に、画素データSIが[11]の場合について説明する。画素データ[11]がラッチされている場合、スイッチ制御信号SWとして選択信号q3が出力される。これにより、駆動期間と検査期間においてスイッチ86がオン状態になる。この結果、駆動期間に駆動信号COMの波形が圧電式アクチュエータ422へ印加されてインクが吐出される。また、検査期間にも圧電式アクチュエータ422に駆動信号COM(一定電圧)が印加される。
また、図17に示すようにゲート信号DSEL(残留振動検出回路55のトランジスタQの制御信号)は、検査期間のみLレベルであり、それ以外はHレベルになっている。すなわち、図13より、検査期間以外では、残留振動検出回路55のトランジスタQがオンになり圧電式アクチュエータ422のグランド端が接地された状態になる。一方、検査期間では、残留振動検出回路55のトランジスタQがオフになる。なお、検査期間では駆動信号COMは一定であり、検査対象ノズルだけが圧電式アクチュエータ422の一端に印加される。よって検査対象ノズルに対応する圧電式アクチュエータ422の起電力が残留振動検出回路55で取出される。
さらに、図13の論理和回路ORの出力(言い換えると残留振動検出回路55の出力)は、検査期間以外は常にHレベルであり、検査期間では、比較器17の出力に応じた信号になる。具体的には、COMP出力がHレベルのときはPOUTもHレベルになり、COMP出力がLレベルのときは。POUTもLレベルになる。よって、この検査期間での、残留振動検出回路55の出力(POUT)より図14の振動周期Ttを検出することができる。そして、この検出結果に基づいてノズル検査を行うことができる。
このように、本実施形態では、画素データSIのデコードによって、ドット形成の有無を示す情報に加えてノズル検査の有無を示す情報が得られる。これにより、ドット形成の有無を示す情報とノズル検査の有無を示す情報とを別々に送信する場合と比べて、コントローラー60からヘッド制御部HCへの配線数を減らすことができる。
===印刷時のノズル検査の適用例===
<印刷データへの検査対象ノズルの割付について>
図18は、印刷時のノズル検査の適用例を示す図である。
なお、図では説明の簡略化のため、複数のノズル列のうちの一つのノズル列のみを示し、さらにノズル列のノズル424(以下、単にノズルともいう)の数を5つにしている。また、図18のノズルよりも右側の格子状の図は、或るパス(ここでは最初のパス)における印刷データを示しており、各格子は画素と対応している。
図において、搬送方向の各列(D1列〜D12列)に並ぶデータ(画素)は、それぞれノズル列のノズルと対応している。なお、格子内に丸印のあるものはインクを吐出するデータを示し、格子内に丸印の無いものはインクを吐出しないデータを示している。また、丸印の中に数字があるデータは、ノズル検査を行うデータを示しており、この数字は対応するノズルの番号(ノズル番号)と対応している。
本実施形態のコントローラー60は、プリンタードライバーから受信した印刷データ(例えば1パス分の印刷データ)を展開し、この印刷データに基づいて検査対象ノズルの割付を行う。この割付によりドットの形成の有無を示す1ビットデータからドットの形成の有無とノズルの吐出検査を示す2ビットデータが生成される。
本実施形態では、以下に示す優先順位で検査対象ノズルの割付を行う。
(1)未検査ノズルがある場合
まず、未検査ノズルがある場合、吐出回数の少ないノズルを優先してノズル未検査ノズルから検査対象ノズルを選択する(D1列、D2列、D3列参照)。
例えば、図18では印刷を開始するD1列では全てのノズルが未検査ノズルである。また、D1列ではノズル#1〜#3とノズル#5からインクを吐出する。すなわちD1列の検査対象ノズルの候補はノズル#1〜#3とノズル#5である。図より、このパスでの各ノズルの吐出回数は、ノズル#1は4回、ノズル#2は3回、ノズル#3は4回、ノズル#5は6回である。よってコントローラー60は、D1列では上述した候補のうち吐出回数の少ないノズル#2を検査対象ノズルとして選択する。
また、D3列ではノズル#2〜#4からインクを吐出する。このうちノズル#2はD1列で検査対象ノズルに選ばれている。よって、検査対象ノズルの候補は未検査ノズルであるノズル#3とノズル#4ノズルである。図より、このパスでの各ノズルの吐出回数は、ノズル#3は4回、ノズル#4は6回である。よってコントローラー60は、D3列ではノズル#3を検査対象ノズルとして選択する。
同様にD4列ではノズル#1、ノズル#4が検査対象ノズルの候補になり、吐出回数の少ないノズル#1を選択する。
もし、仮にランダムに検査対象ノズルを選択するようにすると、吐出回数の少ないノズルの吐出検査を行う機会が少なくなるおそれがある。これは、各列においてインクを吐出したノズルだけがノズル検査の候補になるので、吐出回数の少ないノズルはノズル検査の候補になりにくい(候補になる回数が少ない)からである。このため、印刷データによっては、吐出回数の少ないノズルのノズル検査が行われなくなるおそれがある。
これに対し、本実施形態では、印刷データに基づいて、未検査ノズルの中で吐出回数の少ないノズルを優先して選択することにより、吐出回数の少ないノズルを確実に検査することができる。
(2)未検査ノズルがあり吐出回数が同じ場合
次に、未検査ノズルが複数あり、吐出回数数が同じ場合には非印刷間隔(インクを吐出していない期間)の長いノズルを優先して選択する(D5列参照)。これは、インクを吐出していない期間が長いほど、インクの乾燥などにより不吐出になる可能性が高いからである。このように、インクのインクを吐出していない期間が長い方を選択することで、乾燥の影響を考慮したノズル検査を行うことができる。
例えば、D5列ではノズル#4とノズル#5からインクを吐出する。また、ここまでノズル#4とノズル#5は検査されていない(未検査ノズルである)。すなわち、検査対象ノズルの候補はノズル#4とノズル#5である。また図より、ノズル#4とノズル#5の吐出回数は共に6回である。この場合インクを吐出していない期間が長いほうを選択する。図より、ノズル#4はD4列でインクを吐出する。一方ノズル#5はD1列でインクを吐出した後、インクを吐出していない。よってD5列では、インクを吐出していない期間の長いノズル#5を検査対象ノズルとして選択する。
(3)未検査ノズルがない場合
例えば各ノズルについてのノズル検査が一巡した場合や、ドットを形成するノズルが既に検査済みのノズルのみの場合、検査間隔の長いノズルを優先する(D8列、D9列、D11列、D12列参照)。これは、検査間隔が長くなるほど、インクの乾燥などにより不吐出になっている可能性が高いからである。このように、未検査ノズルがない場合に検査間隔の長いノズルを優先することで、乾燥の影響を考慮したノズル検査を行うことができる。
なお、図18では、D6列で各ノズル(ノズル#1〜#5)の検査が一巡している。すなわち、ここで未検査ノズルが無くなる。よって、これ以降では上述したように検査間隔の長いノズルを優先する。
例えば、D8列ではノズル#1とノズル#3が検査対象ノズルの候補になる。また図より、ノズル#1について吐出検査を行なうのはD4列であり、ノズル#3について吐出検査を行なうのはD3列である。つまり、ノズル#3のほうが前回の検査からの間隔が長いことになる。よって、D8列ではノズル#3を検査対象ノズルとして選択する。
また、D9列ではノズル#4とノズル#5が検査対象ノズルの候補になる。また図より、ノズル#4について吐出検査を行なうのはD6列であり、ノズル#5について吐出検査を行なうのはD5列である。つまり、ノズル#5のほうが前回の検査からの間隔が長いことになる。よって、D9列ではノズル#5を検査対象ノズルとして選択する。
同様にして、D11列ではノズル#4、D12列ではノズル#2がそれぞれ検査対象ノズルとして選択される。
なお、コントローラー60は、プリンタードライバーから受信した印刷データ(1ビットデータ)に検査対象ノズルを示すデータを割り付ける。具体的には、印刷データは各画素についてドット有(図の丸印)を示す[1]、又は、ドット無を示す[0]の1ビットデータ(上位ビットデータ(SIH))であり、これらの各データに検査対象ノズルには[1]、検査対象ノズル以外には[0]の下位ビットデータ(SIL)を割り付ける。こうして2ビットの画素データSIを生成する。
例えば、図18の場合、D1列の印刷データ(1ビットデータ)はノズル#4が[0]であり、ノズル#4以外は[1]である。コントローラー60はD1列の検査対象ノズル(ノズル#2)のデータに下位ビットデータとして[1]を割り付ける。その他のノズルについて下位ビットデータとして[0]を割り付ける。すなわち、D1列のノズル#2についての画素データSIは、[11]となり、ノズル#1、#2、#5についての画素データSIは[10]となりノズル#4についての画素データSIは[00]となる。他の列についても同様にして検査対象ノズルを割り付ける。
<ドット形成とノズル検査について>
印刷時には、図18の印刷データに基づいてドット形成とノズル検査を行う。
例えば、上述したようにD1列の画素データSIは、ノズル#2では[11]、ノズル#1、#2、#5では[10]、ノズル#4では[00]になる。
よって図17に示すように、駆動信号COMの駆動期間でノズル#1〜#3、およびノズル#5に対応するスイッチ86がオンとなり、各圧電式アクチュエータ422に駆動信号COMの波形が印加される。これにより各圧電式アクチュエータ422が駆動されインクの吐出動作が行われる。なお、この期間にノズル#4に対応するスイッチ86はオフとなり、ノズル#4に対応する圧電式アクチュエータ422には駆動信号COMが印加されない。よってノズル#4からはインクが吐出されない。
また、その後の検査期間には、検査対象ノズル(ノズル#2)に対応するスイッチ86のみがオンになる。これによりノズル#2に対応する圧電式アクチュエータ422の一端には一定の駆動信号COMが印加される。また、検査期間には残留振動検出回路55へのゲート信号DSELはLレベルになり残留振動検出回路55のトランジスタQがオフになる。これにより、圧電式アクチュエータ422の起電力が残留振動検出回路55で取出され、ノズル#2のインク吐出動作後の残留振動に基づいてノズル検査が行われる。
他の列についても同様に、印刷データに基づいて、繰り返し周期T毎にインクの吐出動作と、インクを吐出したノズルの中から選択された検査対象ノズルのノズル検査を行なっていく。
===フラッシング時のノズル検査の適用例===
図19は、フラッシング時のノズル検査の適用例を示す図である。
なお、フラッシングとは、ノズルの吐出能力を回復させるため。各ノズルから連続的にインクを吐出させる動作のことである。
図19においても図18と同様に、説明の簡略化のため複数のノズル列のうちの一つのみを示し、さらにノズル数を5つにしている。また、図19の記載方法は図18と同様である。
なお、フラッシングでは全てのノズルからインクを吐出するので、この例では検査対象ノズルをノズル番号順に選択している。
例えば、D1列では、ノズル#1を検査対象ノズルとして選択し、D2列ではノズル#2を検査対象ノズルとして選択している。また、D3列ではノズル#3を検査対象ノズルとして選択している。なお、後述するフロー(図21)では、印刷時に増粘の異常があったノズルのみをフラッシング時にノズル検査するようにしている。
この場合、D1列では、ノズル#2〜#5の画素データSIとして[10]が設定される。これにより、ノズル#2〜#5では駆動信号COMの駆動期間で波形によるインクの吐出動作のみが行われる。また、D1列のノズル#1の画素データSIとして[11]が設定される。これにより、ノズル#1では駆動信号COMの駆動期間において波形によるインクの吐出動作が行われ、その後の検査期間において残留振動に基づいてノズル検査が行われる。
以下、同様にして、列毎に検査対象ノズルを変更していく。例えば、D2列ではノズル#2の画素データSIのみを[11]に設定し、ノズル#2のノズル検査を行なう。また、D3列ではノズル#3の画素データSIのみを[11]に設定し、ノズル#3のノズル検査を行なう。
図では、各ノズル(#1〜#5)の検査が二巡したところで、ノズル検査結果が正常になったとしてフラッシングを停止している。
このように、フラッシングの際にも、各ノズルに共通の残留振動検出回路55によって、ノズル毎にノズル検査を行うことができる。また、本実施形態では各ノズルについての検査結果が正常であれば、フラッシングの途中であってもフラッシングを終了するようにしている。これによりインクの消費の低減を図ることができる。
===ノズル検査の処理について===
図20および図21は、ノズル検査の処理の一例を示すフロー図である。なお、図20は印刷時のフローを示しており、図21はフラッシング時のフローを示している。
図20において、まず、コントローラー60はプリンタードライバーから印刷データを受信し(S101)、前述したように、検査対象ノズルの割付を行う(S102)。こうして、1ビットデータから2ビットデータの画素データSIを生成する。印刷データについて検査対象ノズルの割付の処理が終わると(S103でY)、印刷データに基づいて印刷動作を行う(S104)。
具体的には、画素データSIと選択信号q0〜q3とに基づいて、ヘッド制御部HCの各デコーダー83が駆動パルス(波形)の選択情報と、検査期間の選択情報とを含むスイッチ信号SWをノズル毎に生成する。そして、ヘッド制御部HCは、繰り返し周期Tの駆動期間に画素データSIに応じたスイッチ信号SWによって対応するスイッチ86をオンにする。こうして、駆動信号COMの波形を選択的に圧電式アクチュエータ422に印加してインクの吐出動作を行う。
また、ヘッド制御部HCは、検査期間においても、スイッチ信号SW(検査期間の選択情報)によって対応するスイッチ86をオンオフする。なお、ここでは、検査対象のノズルに対応するスイッチ86のみをオンとし、検査対象ノズル以外のスイッチ86をオフとする。こうして、検査対象ノズル以外のノズルについては、圧電式アクチュエータ422への駆動信号COMの印加を遮断する。さらに、検査期間において、コントローラー60は残留振動検出回路55へのゲート信号DSELをLレベルとし、残留振動検出回路55のトランジスタQをオフにする。これにより、残留振動検出回路55に検査対象ノズルに対応する圧電式アクチュエータ422の起電力が取り込まれる。こうして残留振動検出回路55により検査対象ノズルの残留振動を検出する(S105)。
そして、コントローラー60は、残留振動検出回路55の検出結果(パルスPOUT)に基づいてノズルの異常の有無を判断する(S106)。
ノズルに異常がある場合(S106でY)、ノズルの異常の原因が気泡であるかを判断する(S107)。すなわち、異常の原因が振動周期Ttに基づくものであるかを判断する。気泡が原因でない場合(S107でN)、さらに、ノズルの異常の原因がインクの増粘であるかを判断する(S108)。すなわち、異常の原因がパルス数に基づくものであるかを判断する。インクの増粘が原因である場合(S108でY)、増粘フラグを例えばメモリー63に記憶し(S109)、印刷終了であるかの判断を行う(S112)。また、コントローラー60は、ステップS107で気泡が原因と判断した場合(S107でY)およびステップS108で増粘が原因でないと判断した場合(S108でN)、印刷を停止し(S110)、回復処理(例えば、クリーニング等)を行う(S111)。
ステップS112において、印刷終了でないと判断すると(S112でN)、ステップS104に戻る。
また、ステップS112で印刷終了であると判断した場合(S112でY)、増粘フラグが無いかの判断を行う(S113)。
増粘フラグが無ければ(S113でY)、処理を終了する。増粘フラグがあれば(S113でN)、図21に示すフロー(フラッシング)を実行する。
図21に示すフラッシング処理では、まず、フラッシングのショット数を予め設定する(S201)。なお、本実施形態では、増粘フラグが記憶されたノズルのみノズル検査を行うこととする。すなわち、増粘フラグ数に応じて各ノズルの吐出回数を設定する。例えば、5つのノズルに対して増粘フラグが記憶されている場合は5ショット(各ノズル5回吐出)分の印刷データを設定する。また、設定された印刷データ(フラッシングデータ)にショット毎にフラッシングのノズルの検査順の割付を行う(S202)。ここでは、増粘フラグが記憶されたノズルが複数ある場合、各ショットにおいてノズル番号順に検査対象ノズルを割り付ける。そして、媒体(紙)への印刷を行っていない間(紙間)において(S203でY)、以下の処理を実行する。
まず、駆動信号COMの繰り返し周期Tの駆動期間において、全てのノズルに対応するスイッチ86をオンにし、駆動信号COMの波形を全ての圧電式アクチュエータ422に印加する。これによりフラッシングを行う(S204)。
また、その後の検査期間では、検査対象のノズルに対応するスイッチ86のみをオンにし、検査対象ノズル以外のスイッチ86をオフにする。これにより、検査対象ノズル以外のノズルについては、圧電式アクチュエータ422への駆動信号COMの印加が遮断される。また、検査対象ノズルノズルについては、対応する圧電式アクチュエータ422に一定の駆動信号COMが印加される。さらにコントローラー60は、検査期間において、残留振動検出回路55へのゲート信号DSELをLレベルとし、残留振動検出回路55のトランジスタQをオフにする。これにより、残留振動検出回路55には検査対象ノズルに対応する圧電式アクチュエータ422の起電力が取り込まれる。そして残留振動検出回路55は、検査対象ノズルの残留振動の検出を行ない(S205)、コントローラー60は、その検出結果から検査対象ノズルの増粘が回復したか否かを判断する(S206)。
そして、コントローラー60は、回復していないと判断すると(S206でN)、そのノズルについての増粘フラグを保持し(S207)、設定したショット数分の吐出動作を行ったかを判断する(S208)。設定したショット数の吐出動作を行っていない場合は(S208でN)、検査対象ノズルを次のノズルにし(S209)、再度ステップS204に戻る。一方、ショット数分行った場合(S208でY)は、図20のステップS110に戻る。
また、ステップS206で回復したと判断すると(S206でY)、そのノズルの増粘フラグをクリアし(S210)、増粘フラグが全てクリアされたかを判断する(S211)。増粘フラグが全てクリアでないと(S211でN)、ステップS208の判断を行う。一方、増粘フラグが全てクリアされていると(S211でY)、処理を終了する。
以上説明したように、本実施形態のプリンター1では、印刷データに基づいて複数のノズルからインクを吐出するとき、その中から検査対象ノズルを1つ選択して、この検査対象ノズルを残留振動検出回路55によってノズル検査している。この選択の際に、インクを吐出するノズルを印刷データに基づいて特定し、その中の未検査ノズルから、印刷データに基づいて吐出回数の少ないノズルを検査対象ノズルとして選択するようにしている。
これにより、吐出回数の少ないノズルが優先的に検査されることになる。よって各ノズルのノズル検査をより確実に行うことができる。
また、未検査ノズルで吐出回数が同じノズルが複数ある場合、吐出間隔の長いノズルを優先して検査するようにしている。さらに、未検査ノズルが無い場合は、前回の検査からの間隔(検査間隔)の長いノズルを優先して検査するようにしている。
これにより、インクの乾燥による影響を考慮したノズル検査を行うことができる。
===その他の実施形態===
一実施形態としてのプリンター等を説明したが、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは言うまでもない。特に、以下に述べる実施形態であっても、本発明に含まれるものである。
<液体吐出装置について>
前述の実施形態では、液体吐出装置の一例としてインクジェットプリンターが説明されている。但し、液体吐出装置はインクジェットプリンターに限られるものではなく、インク以外の他の流体(液体や、機能材料の粒子が分散されている液状体、ジェルのような流状体)を吐出したりする液体吐出装置に具現化することもできる。例えば、カラーフィルタ製造装置、染色装置、微細加工装置、半導体製造装置、表面加工装置、三次元造形機、気体気化装置、有機EL製造装置(特に高分子EL製造装置)、ディスプレイ製造装置、成膜装置、DNAチップ製造装置などのインクジェット技術を応用した各種の装置に、上述の実施形態と同様の技術を適用してもよい。また、これらの方法や製造方法も応用範囲の範疇である。
また、前述した実施形態のプリンターは、搬送動作とドット形成動作とを交互に繰り返すプリンター(いわゆるシリアルプリンター)であったが、これには限定されない。例えば、紙幅分の長さのヘッドを備え、搬送中の媒体に向けてヘッドからインクを吐出するプリンター(いわゆるラインプリンター)であっても良い。
<インクについて>
前述の実施形態は、プリンターの実施形態だったので、インクをノズルから吐出しているが、このインクは水性でも良いし、油性でも良い。また、ノズルから吐出する液体は、インクに限られるものではない。例えば、金属材料、有機材料(特に高分子材料)、磁性材料、導電性材料、配線材料、成膜材料、電子インク、加工液、遺伝子溶液などを含む液体(水も含む)をノズルから吐出しても良い。
<プリンタードライバーについて>
前述の実施形態によれば、コンピューター110側のプリンタードライバーが印刷データの生成を行っていたが、これには限られない。例えば、本実施形態の印刷データの生成を行うのに必要な機能を実現するためのプログラムがプリンター1のメモリー等の各種記憶部に格納されているのであれば、プリンター1が前述の処理を行うことが可能である。
また、前述の実施形態ではコントローラー60が検査対象ノズルの割付を行っていたが、プリンタードライバーが印刷データに基づいて検査対象ノズルの割付を行ってもよい。
<検査対象ノズルの選択について>
前述の実施形態では、1パスにおける吐出回数に基づいて検査対象ノズルを選択していたが、1パス以外の期間での吐出回数に基づいて検査対象ノズルを選択してもよい。
また、前述の実施形態では、未検査ノズルの吐出回数が同じ場合、インクを吐出していない期間の長いノズルを優先して検査対象ノズルとして選択するようにしていたが、残りの吐出回数に基づいて検査対象ノズルを選択してもよい。
例えば、図18のD5列の場合、インクを吐出するノズル#4とノズル#5は共に吐出回数が6回なので、インクを吐出していない期間の長いノズル#5を選択していた。しかし、この場合、D6列以降における吐出回数はノズル#4は3回、ノズル#5は4回なので、残りの期間にインクを吐出する回数はノズル#4の方が少ない。すなわちノズル検査の候補になる機会はノズル#4の方が少ない。よって、この場合、ノズル#4を選択するようにしてもよい。この場合においても、各ノズルの吐出検査を確実に行うことができる。
<ノズル検査について>
前述の実施形態では、印刷時とフラッシング時にノズル検査を行っていたが、印刷時のみにノズル検査を行ってもよい。